光電式エンコーダ及びその動作制御方法
【課題】小型の検出器ユニットを可能とすると共に、光源による検出器ユニットの熱ひずみを回避して、ロバストで高精度な測定を可能とする。
【解決手段】第1の光学格子132が設けられたスケール110と、該スケール110に対峙して配置される検出器ユニット140と、を有する光電式エンコーダ100において、前記スケール110に、前記第1の光学格子132で変調されて前記検出器ユニット140で受光される光を発光する面状光源120を一体的に備える。
【解決手段】第1の光学格子132が設けられたスケール110と、該スケール110に対峙して配置される検出器ユニット140と、を有する光電式エンコーダ100において、前記スケール110に、前記第1の光学格子132で変調されて前記検出器ユニット140で受光される光を発光する面状光源120を一体的に備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダ及びその動作制御方法に係り、特に、小型の検出器ユニットで且つ高精度な測定を可能にする光電式エンコーダ及びその動作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダが、各種の工作機械や測定装置などで用いられてきた。その光電式エンコーダは、主に検出器ユニットの中にスケール照射のための光源とそのための電気回路、その照射のための光学系を持ち(照射系と称する)、そして、スケールからの信号を検出するための受光素子とそのための電気回路、更には、検出のための光学系を持っている(検出系と称する)。
【0003】
例えば、特許文献1に示される光電式エンコーダ1は、図11に示す如く、所定の光学格子12が形成された反射型スケール10と、スケール10上に照射するための光を発する面状光源20と、面状光源20に近接させて配置されたアレイ型受光素子30A、30Bを有する受光モジュール30と、を備えている。このような光電式エンコーダ1では、面状光源20と受光モジュール30とが配設されて検出器ユニットが構成されることとなる。即ち、照射系(面状光源)と検出系(アレイ型受光素子)が1つの検出器ユニット内に配設されて、スケールと照射系(面状光源)、及びスケールと検出系(アレイ型受光素子)との配置が定められている。
【0004】
又、特許文献2に示される光電式エンコーダにおいては、単一の半導体基板で形成された読取ヘッドに発光ダイオードを設けている。即ち、特許文献2においても、特許文献1と同様に、照射系(発光ダイオード)と検出系とが1つの検出器ユニット内に収納(配設)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−161646号公報
【特許文献2】特開平5−248895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2で示される如く、1つの検出器ユニット内に、照射系と検出系とが配設されるような場合には、機械的、光学的、熱的といった特性が互いに影響を及ぼしてしまう。このため、それを互いに調整しなければならず、設計上、上記特性のトレードオフを行うことが必要となってくる。即ち、1つの検出器ユニット内に理想的な照射系、検出系を配設して光電式エンコーダを構成することが難しい場合が出てきてしまい、最終的な光電式エンコーダ性能へ影響を及ぼすおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、小型の検出器ユニットを可能とすると共に、光源による検出器ユニットの熱ひずみを回避して、ロバストで高精度な測定を可能とする光電式エンコーダ及びその動作制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、第1の光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダにおいて、前記スケールに、前記第1の光学格子で変調されて前記検出器ユニットで受光される光を発光する光源を一体的に備えるようにしたことにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
本願の請求項2に係る発明は、前記光源を面状光源としたものである。
【0010】
本願の請求項3に係る発明は、前記面状光源をEL素子で構成したものである。
【0011】
本願の請求項4に係る発明は、前記面状光源を、前記スケールの端部に設けられた点状光源若しくは線状光源からの光を導光手段により導光して拡散させた拡散光源としたものである。
【0012】
本願の請求項5に係る発明は、前記面状光源自体で、前記第1の光学格子を構成するようにしたものである。
【0013】
本願の請求項6に係る発明は、前記光源のうち、前記検出器ユニットが対峙する部分のみを発光させる制御手段を、更に設けるようにしたものである。
【0014】
本願の請求項7に係る発明は、前記検出器ユニットに、前記第1の光学格子で変調された光を更に変調する第2の光学格子と、該第2の光学格子で変調された光を受光する受光素子と、を備えるようにしたものである。
【0015】
本願の請求項8に係る発明は、前記検出器ユニットに、前記第1の光学格子で変調された光を集光・結像するレンズと、該レンズで集光・結像された光を受光する受光素子と、を備えるようにしたものである。
【0016】
本願の請求項9に係る発明は、前記受光素子を、複数の画素から構成されるアレイ型受光素子としたものである。
【0017】
本願の請求項10に係る発明は、前記受光素子に、光の一部を一定間隔で遮光する光学格子を別体で設けたものである。
【0018】
本願の請求項11に係る発明は、又、第1の光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダの動作制御方法において、前記スケールに一体的に設けられた光源のうち、前記検出器ユニットが対峙する部分のみを発光させる工程を含むことを特徴とする光電式エンコーダの動作制御方法を提供するようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、検出器ユニットに光源を持たないので、小型の検出器ユニットが可能となると共に、検出器ユニットから光源による熱を排除することが可能となる。従って、光源による検出系の熱ひずみを回避して、高精度な測定が可能となる。
【0020】
又、スケール自身が発光することにより、スケールと照射系とのアライメントが不要となる。このため、スケールと検出器ユニットとのアライメント許容度が拡大するので、ロバストな光電式エンコーダを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光電式エンコーダの模式図
【図2】同じく面状光源の構成を示す模式図
【図3】同じくスケールの断面を示す模式図
【図4】同じく検出器ユニットの構成を示す模式図
【図5】本発明の第2実施形態に係る光電式エンコーダのスケール模式図
【図6】本発明の第3実施形態に係る光電式エンコーダのスケール模式図
【図7】本発明の第4実施形態に係る光電式エンコーダの面状光源の構成を示す模式図
【図8】本発明の第5実施形態に係る光電式エンコーダの検出器ユニットの構成を示す模式図
【図9】本発明の第6実施形態に係る光電式エンコーダの検出器ユニットの構成を示す模式図
【図10】本発明の第7実施形態に係る光電式エンコーダの検出器ユニットの構成を示す模式図
【図11】従来例に係る光電式エンコーダの構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る第1実施形態について、図1〜図4を用いて説明する。図1は本実施形態に係る光電式エンコーダの模式図、図2は同じく面状光源の構成を示す模式図、図3は同じくスケールの断面を示す模式図、図4は同じく検出器ユニットの構成を示す模式図、である。本実施形態では、3つの光学格子を用いて位置を求める原理(3格子原理と称する)を適用した光電式エンコーダを示す。
【0024】
最初に、本実施形態に係る光電式エンコーダの構成について説明する。
【0025】
光電式エンコーダ100は、図1に示す如く、第1の光学格子132が設けられたスケール110と、スケール110に対峙して配置される検出器ユニット140と、を有する。
【0026】
スケール110では、図1に示す如く、基材112上に面状光源120が形成され、更にその上に保護膜130と第1の光学格子132が形成されている。即ち、スケール110は、第1の光学格子132で変調される光を発光する面状光源120を一体的に設けた自己発光型スケールとされている。逆に言うならば、面状光源120は、検出器ユニット140に対峙してスケール110に一体的に設けられている。
【0027】
面状光源120は、図1、図2に示す如く、EL発光膜122と電極膜124、126と透明電極膜128とを有する。即ち、面状光源120は、EL素子で構成されている。(なお、必ずしも光源が面状光源でなくてもよく、又面状光源がEL素子でなくてもよい。)基材112上を電極膜124が均一に覆い、その上に測定軸方向Xに短冊形状の複数のEL発光膜122が形成されている。そして、各EL発光膜122の上面にITOなどの透明電極膜128がそれぞれ形成されている。
【0028】
図3に示す如く、電極膜124上に、EL発光膜122とほぼ同等の厚みで絶縁膜125が形成されている。そして、絶縁膜125上に配線としての電極膜126が形成されて、透明電極膜128は電極膜126と導通状態とされている。このため、電極膜124、126同士がショートすることなく、図2に示す如く、電極膜126は各EL発光膜122の一端側で全てが導通して、EL発光膜122が同時に駆動される。なお、EL発光膜122と透明電極膜128とは、共に単一の膜として形成されていても構わない。
【0029】
図1に示す如く、電極膜126と透明電極膜128の上には、光学的に透明な保護膜130が形成されている。そして、その上に第1の光学格子132が形成されている。第1の光学格子132は、測定軸方向Xで一定間隔の複数の遮光パターンを備える。
【0030】
なお、第1の光学格子132の遮光パターンの部分は、図1に示す如く、丁度各EL発光膜122の間にくるように配置される。そして、第1の光学格子132の遮光パターンの部分の幅が各EL発光膜122の間を覆うような態様とされている。このため、EL発光膜122が複数の短冊形状に分割されていても、そのEL発光膜122を発光させることにより、第1の光学格子132全面を均一な光で照射していることと同様な状況にすることができる。面状光源120で発光する光は、第1の光学格子132で変調(一部遮光)される。なお、本実施形態では、図1に示す如く、EL発光膜122の幅は第1の光学格子132の幅の約2倍程度としているが、これに限られるものではない。
【0031】
検出器ユニット140は、図1に示す如く、スケール110にZ方向で所定の間隔dで対峙して配置される。検出器ユニット140は、図4に示す如く、第2の光学格子142と受光素子146とを備える。第2の光学格子142は、スケール110上の第1の光学格子132と距離d1で対峙して配置される。そして、第2の光学格子142は、第1の光学格子132と同様に、測定軸方向Xで一定間隔の複数の遮光パターンを備える。そのため、第2の光学格子142は、第1の光学格子132との位置関係の変化に従い、面状光源120で発光した光で、且つ第1の光学格子132で変調された光を更に変調する。
【0032】
受光素子146は、第2の光学格子142から距離d2(図4でZ軸上側)に配置されている。受光素子146の表面には、第2の光学格子142で変調された光の一部を一定間隔で遮光する光学格子144が別体で設けられている。このため、光学格子144を透過した光が受光素子146で受光されて、受光素子146から出力される。出力された信号は図示せぬ処理系で処理されて、検出した光量に基づいて検出器ユニット140に対してのスケール110の相対的位置が求められる。
【0033】
なお、本実施形態では、第1の光学格子132、第2の光学格子142、光学格子144は同一間隔の遮光パターンを備えている。そして、距離d1=d2とされている。又、検出器ユニット140の測定軸方向Xと直交する方向Y(図4の奥行き方向)において、第2の光学格子142は2列存在し、それらは互いに90度ずれた間隔で配置されている。受光素子146も対応して2つあるので、受光素子146のそれぞれからは、位相が90度異なる出力(正弦波信号)を得ることができる。このため、それら2つの位相の出力により、その移動方向と検出器ユニット140に対するスケール110の相対的位置とを、高精度に計測することが可能となる。
【0034】
なお、上述の如く、原理的には90度位相差の2相正弦波信号があれば、相対位置の変位を検出可能である。しかし、S/N比向上、分解能向上のために逆相を含め、それぞれ90度位相差の4相正弦波信号を検出して、この4相正弦波信号を信号処理して90度位相差の2相正弦波信号を得るように、第2の光学格子142や受光素子146を配置・構成することも可能である。
【0035】
次に、本実施形態に係る光電式エンコーダ100の動作制御について、図1に基づいて説明する。
【0036】
まず、電極膜124、126間に電圧を印加して各EL発光膜122に電流を流す。すると、各EL発光膜122が発光する。発光により出射された光は、スケール110の上面に形成された第1の光学格子132で光の変調(一部の光の遮光)がなされる。
【0037】
変調された光は、検出器ユニット140の第2の光学格子142で更に変調されて、その変調された光は、受光素子146(光学格子144)上に明暗パターンを形成する。その際、受光素子146の表面に設けられた別体の光学格子144を透過した光が、受光素子146で受光されて出力される。そして、その得られた光量に基づいて図示せぬ処理系において検出器ユニット140に対するスケール110の相対位置を算出する。
【0038】
本実施形態は、EL発光膜122は複数の短冊形状とされていることから、EL発光膜122の面積を少なくすることができる。このため、EL発光膜を全面に形成するよりも低コストで低消費電力にすることができる。
【0039】
又、面状光源120がEL発光膜122(EL素子)で構成されているので、高輝度である。このため、スケール110の表面に汚れが付着した場合でも、第1の光学格子132で変調される光への影響を低減できるので、耐環境性能に優れた光電式エンコーダ100を実現することができる。
【0040】
又、本実施形態においては、レンズを検出器ユニット140の内部にも用いていないため、検出器ユニット140を小型で低コストとすることができる。
【0041】
このように、検出器ユニット140は、第1の光学格子132で変調された光を受光するための検出系のみを有するものとなる。このため、図11で示した従来例とは異なり、検出器ユニット140は検出系に最適な設定で設計することができ、検出器ユニット140を小型にすることができる。同時に、検出器ユニット140内には面状光源120による熱は生じない。このため、面状光源120による熱ひずみを検出器ユニット140で考慮することがなく、それによる位置誤差などがなく、高精度な位置検出が可能である。
【0042】
又、面状光源120とスケール110との位置関係が固定されて、スケール110自身が発光するので、スケール110とスケール110に光を照射する照射系とのアライメントが不要となる。このため、スケール110と検出器ユニット140とのアライメント許容度が拡大するので、ロバストな光電式エンコーダ100を実現することが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態では、EL発光膜122を面状光源120として用いたが、本発明はこれに限られるものではない。本実施形態の変形例として、スケールの測定軸方向Xに複数の点状光源(たとえばLED)を一定間隔で配置してもよい。
【0044】
次に、本発明に係る第2実施形態について、図5を用いて説明する。
【0045】
第1実施形態においては、光源を面状光源として用いていたが、本実施形態はスケールの端部に設けられた点状光源を用いて面状光源を構成したものである。なお、本実施形態は、第1実施形態と同じ3格子原理を適用した光電式エンコーダである。
【0046】
スケール210は、主に反射シート215と導光板217(導光手段)と拡散シート218と2つのプリズムシート219と第1の光学格子232とから構成される。導光板217には、下面に凹凸パターン216が形成されている。その導光板217の一端側(スケール210の端部)に点状光源であるLED222が設けられている。反射シート215は、導光板217の凹凸パターン216の面を重ねて配置されている。このため、LED222から出射された光は凹凸パターン216と反射シート215とで反射される。反射された光は導光板217の上面に配置された拡散シート218で均一に拡散されて拡散光源とされる。その拡散された光は、互いのプリズムが直交するようにされた2つのプリズムシート219を通過することで、垂直方向(図5の上側(Z方向))に導かれる。
【0047】
このように、本実施形態では、点状光源を用いるので、面状光源をそのまま発光させるよりも消費電力を減らすことができ、検出器ユニットへの熱の影響を更に低減することが可能となる。同時に、発熱源である点状光源をスケール210の端部(局部)に配置できるので、排熱が容易で、且つスケール210自体の熱ひずみも低減できるので、更に高精度な測定が可能となる。
【0048】
なお、本実施形態においては点状光源として1つのLED222を用いていたが、点状光源はLEDに限られず、又、点状光源は複数を並べて使用してもよい。又、点状光源を使わずに小型の蛍光管などの線状光源を用いてもよい。又、点状光源を一端側だけでなく、両端に設けてもよい。又、プリズムシート219を省略した構成であっても構わない。又、点状光源の光を第1の光学格子の透光部分に相当する部分のみに導光して第1の光学格子を直接的に構成しても構わない。
【0049】
次に、本発明に係る第3実施形態について、図6を用いて説明する。
【0050】
本実施形態においては面状光源自体で第1の光学格子を構成している。具体的には、EL発光膜322の部分を第1の光学格子332の透光部分としたものである。このため、光学格子を形成する工程が不要になると共にスケール310を薄くすることができる。なお、本実施形態は、第1、第2実施形態と同じ3格子原理を適用した光電式エンコーダである。
【0051】
次に、本発明に係る第4実施形態について、図7を用いて説明する。
【0052】
上記実施形態においては、面状光源をスケールの全面で発光させていたが、本実施形態においては、例えば面状光源として短冊形状のEL発光膜422を用いた場合に、それらを部分的に駆動させることで省電力化を図るものである。なお、本実施形態は、第1〜第3実施形態と同じ3格子原理を適用した光電式エンコーダである。
【0053】
即ち、本実施形態では、第1、第3実施形態に比べれば、スケール410の測定軸方向Xに伸びる配線としての電極膜426とEL発光膜422との間にフォトセンサアレイ427を更に設けている。フォトセンサアレイ427は、検出器ユニットのスケール410に対峙する表面にLEDアレイ448を設けた場合に、面状光源420のうち、検出器ユニットの対峙するEL発光膜422の部分Aのみを発光させることができる(図7では、図面上での重なりを防ぐために、フォトセンサアレイ427に対して検出器ユニット側のLEDアレイ448をY方向にずらしているが、実際には直接対向(対峙)するように配置することが望ましい)。即ち、フォトセンサアレイ427とLEDアレイ448とが検出器ユニットの対峙する面状光源420の部分Aのみを発光させる制御手段として働く。なお、本実施形態で、他の部分については、第1実施形態と同一なので、説明を省略する。
【0054】
以下に、本実施形態の光電式リニアエンコーダの動作制御について説明する。
【0055】
光電式リニアエンコーダを起動した際に、検出器ユニットのスケール410側の表面のLEDアレイ448を点灯させる。
【0056】
すると、LEDアレイ448に対峙して設けられた部分Aのフォトセンサアレイ427にLEDアレイ448の光が入射して、フォトセンサアレイ427を導通状態とする。このため、フォトセンサアレイ427の導通した部分のEL発光膜422に電流が流れて、EL発光膜422が発光する。即ち、スケール410に一体的に設けられた面状光源420のうち、検出器ユニットが対峙する部分AのみのEL発光膜422を発光させることができる。そして、その発光により出射された光は、第1の光学格子で変調される。その変調された光は、検出器ユニットに入射する。その際に、その変調された光は更に第2の光学格子で変調されて、光学格子を介して受光素子で受光される。
【0057】
このため、部分AのEL発光膜422で発熱する熱は、部分A、Bの両方からなるEL発光膜422全体で構成される面状光源420と比べて極めてわずかとすることができる。即ち、省電力化と同時に、スケール410上での発熱量を少なくして、熱の検出器ユニットへの影響を極力少なくすることができる。このような効果は、第1、第3実施形態で用いたEL発光膜の場合だけに限られるものではない。第1実施形態の変形例で示したような複数の点状光源の場合や、第2実施形態で示した両端面に設けられた点状光源の場合には、本実施形態で示したような手段を用いることで、同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、このようなフォトセンサアレイ427とLEDアレイ448とを設けずに、例えば検出器ユニットに磁石を設けて、スケール側に磁気で電極膜の導通を制御する手段を設けるようにしてもよい。又、「検出器ユニットの対峙するEL発光膜422の部分Aのみ」とは、厳密な「対峙」関係だけでなく、EL発光膜422で構成される面状光源のうち、検出器ユニット近傍の局部に限定することを意味するものである。
【0059】
本発明について上記実施形態を上げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことはいうまでもない。
【0060】
例えば、上記実施形態においては、検出器ユニットの受光素子は光学格子を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図8の第5実施形態で示す如く、3格子原理を適用しながら、受光素子を複数の画素から構成されるアレイ型受光素子546とすることもできる。この場合には、光学格子を不要とすることができ、且つ検出器ユニットを更に小型化することができる。
【0061】
又、上記実施形態においては、検出器ユニットに第2の光学格子を備えていたが、本発明はこれに限定されるものでもない。例えば検出器ユニットに第1の光学格子で変調された光を集光・結像するレンズを備えることで、位置検出に2つの光学格子を用いる原理(2格子原理と称する)を適用してもよい。
【0062】
具体的には、図9に示す第6実施形態においては、検出器ユニット640に、スケール610側にレンズ642とレンズ642で集光・結像された光を受光するアレイ型受光素子646を備えてもよい。この場合には、第2の光学格子が不要となるばかりではなく、第2の光学格子を用いるよりも、高い分解能で位置検出をすることが可能となる。
【0063】
或いは、図10に示す第7実施形態においては、検出器ユニット740に、スケール710側にレンズ742と、レンズ742で一旦集光された焦点の位置に配置されるアパチャ743と、アパチャ743を通過した光を再度集光・結像するレンズ744と、レンズ744で集光・結像された光を受光するアレイ型受光素子746と、を備えてもよい。この場合には、主光線が光軸に対して平行なレンズ系であるテレセントリック光学系を構成できる。このため、レンズを用いることで高分解能が達成できると共に、検出器ユニット740とスケール710とのアライメント許容度を更に拡大することが可能となる。なお、第6、第7実施形態においてアレイ型受光素子640、740の代わりに、光学格子を別体で設けた受光素子を用いてもよい。
【0064】
又、上記実施形態においては、光電式エンコーダはリニア型エンコーダであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばロータリ型エンコーダであっても構わない。
【0065】
又、上記実施形態においては、何らかの面状光源を形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。光源がスケールに一体的に設けられていれば、いかなる形状の光源であってもよい。光源を検出器ユニットに備える必要がないので、光源に限定されずに本発明の相応の作用効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1、100…光電式エンコーダ
10、110、210、310、410、510、610、710…スケール
20、120、420…面状光源
30…受光モジュール
30A、30B、146、546、646、746…受光素子
112、312…基材
122、322、422…EL発光膜
124、126、324、426…電極膜
128、328…透明電極膜
130…保護膜
132、232、332、432、532、632、732…第1の光学格子
140、540、640、740…検出器ユニット
142、542…第2の光学格子
144…光学格子
215…反射シート
216…凹凸パターン
217…導光板
218…拡散シート
219…プリズムシート
222…LED
427…フォトセンサアレイ
448…LEDアレイ
642、742、744…レンズ
743…アパチャ
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダ及びその動作制御方法に係り、特に、小型の検出器ユニットで且つ高精度な測定を可能にする光電式エンコーダ及びその動作制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダが、各種の工作機械や測定装置などで用いられてきた。その光電式エンコーダは、主に検出器ユニットの中にスケール照射のための光源とそのための電気回路、その照射のための光学系を持ち(照射系と称する)、そして、スケールからの信号を検出するための受光素子とそのための電気回路、更には、検出のための光学系を持っている(検出系と称する)。
【0003】
例えば、特許文献1に示される光電式エンコーダ1は、図11に示す如く、所定の光学格子12が形成された反射型スケール10と、スケール10上に照射するための光を発する面状光源20と、面状光源20に近接させて配置されたアレイ型受光素子30A、30Bを有する受光モジュール30と、を備えている。このような光電式エンコーダ1では、面状光源20と受光モジュール30とが配設されて検出器ユニットが構成されることとなる。即ち、照射系(面状光源)と検出系(アレイ型受光素子)が1つの検出器ユニット内に配設されて、スケールと照射系(面状光源)、及びスケールと検出系(アレイ型受光素子)との配置が定められている。
【0004】
又、特許文献2に示される光電式エンコーダにおいては、単一の半導体基板で形成された読取ヘッドに発光ダイオードを設けている。即ち、特許文献2においても、特許文献1と同様に、照射系(発光ダイオード)と検出系とが1つの検出器ユニット内に収納(配設)されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−161646号公報
【特許文献2】特開平5−248895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1及び特許文献2で示される如く、1つの検出器ユニット内に、照射系と検出系とが配設されるような場合には、機械的、光学的、熱的といった特性が互いに影響を及ぼしてしまう。このため、それを互いに調整しなければならず、設計上、上記特性のトレードオフを行うことが必要となってくる。即ち、1つの検出器ユニット内に理想的な照射系、検出系を配設して光電式エンコーダを構成することが難しい場合が出てきてしまい、最終的な光電式エンコーダ性能へ影響を及ぼすおそれがあった。
【0007】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、小型の検出器ユニットを可能とすると共に、光源による検出器ユニットの熱ひずみを回避して、ロバストで高精度な測定を可能とする光電式エンコーダ及びその動作制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の請求項1に係る発明は、第1の光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダにおいて、前記スケールに、前記第1の光学格子で変調されて前記検出器ユニットで受光される光を発光する光源を一体的に備えるようにしたことにより、前記課題を解決したものである。
【0009】
本願の請求項2に係る発明は、前記光源を面状光源としたものである。
【0010】
本願の請求項3に係る発明は、前記面状光源をEL素子で構成したものである。
【0011】
本願の請求項4に係る発明は、前記面状光源を、前記スケールの端部に設けられた点状光源若しくは線状光源からの光を導光手段により導光して拡散させた拡散光源としたものである。
【0012】
本願の請求項5に係る発明は、前記面状光源自体で、前記第1の光学格子を構成するようにしたものである。
【0013】
本願の請求項6に係る発明は、前記光源のうち、前記検出器ユニットが対峙する部分のみを発光させる制御手段を、更に設けるようにしたものである。
【0014】
本願の請求項7に係る発明は、前記検出器ユニットに、前記第1の光学格子で変調された光を更に変調する第2の光学格子と、該第2の光学格子で変調された光を受光する受光素子と、を備えるようにしたものである。
【0015】
本願の請求項8に係る発明は、前記検出器ユニットに、前記第1の光学格子で変調された光を集光・結像するレンズと、該レンズで集光・結像された光を受光する受光素子と、を備えるようにしたものである。
【0016】
本願の請求項9に係る発明は、前記受光素子を、複数の画素から構成されるアレイ型受光素子としたものである。
【0017】
本願の請求項10に係る発明は、前記受光素子に、光の一部を一定間隔で遮光する光学格子を別体で設けたものである。
【0018】
本願の請求項11に係る発明は、又、第1の光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダの動作制御方法において、前記スケールに一体的に設けられた光源のうち、前記検出器ユニットが対峙する部分のみを発光させる工程を含むことを特徴とする光電式エンコーダの動作制御方法を提供するようにしたものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、検出器ユニットに光源を持たないので、小型の検出器ユニットが可能となると共に、検出器ユニットから光源による熱を排除することが可能となる。従って、光源による検出系の熱ひずみを回避して、高精度な測定が可能となる。
【0020】
又、スケール自身が発光することにより、スケールと照射系とのアライメントが不要となる。このため、スケールと検出器ユニットとのアライメント許容度が拡大するので、ロバストな光電式エンコーダを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光電式エンコーダの模式図
【図2】同じく面状光源の構成を示す模式図
【図3】同じくスケールの断面を示す模式図
【図4】同じく検出器ユニットの構成を示す模式図
【図5】本発明の第2実施形態に係る光電式エンコーダのスケール模式図
【図6】本発明の第3実施形態に係る光電式エンコーダのスケール模式図
【図7】本発明の第4実施形態に係る光電式エンコーダの面状光源の構成を示す模式図
【図8】本発明の第5実施形態に係る光電式エンコーダの検出器ユニットの構成を示す模式図
【図9】本発明の第6実施形態に係る光電式エンコーダの検出器ユニットの構成を示す模式図
【図10】本発明の第7実施形態に係る光電式エンコーダの検出器ユニットの構成を示す模式図
【図11】従来例に係る光電式エンコーダの構成を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0023】
本発明に係る第1実施形態について、図1〜図4を用いて説明する。図1は本実施形態に係る光電式エンコーダの模式図、図2は同じく面状光源の構成を示す模式図、図3は同じくスケールの断面を示す模式図、図4は同じく検出器ユニットの構成を示す模式図、である。本実施形態では、3つの光学格子を用いて位置を求める原理(3格子原理と称する)を適用した光電式エンコーダを示す。
【0024】
最初に、本実施形態に係る光電式エンコーダの構成について説明する。
【0025】
光電式エンコーダ100は、図1に示す如く、第1の光学格子132が設けられたスケール110と、スケール110に対峙して配置される検出器ユニット140と、を有する。
【0026】
スケール110では、図1に示す如く、基材112上に面状光源120が形成され、更にその上に保護膜130と第1の光学格子132が形成されている。即ち、スケール110は、第1の光学格子132で変調される光を発光する面状光源120を一体的に設けた自己発光型スケールとされている。逆に言うならば、面状光源120は、検出器ユニット140に対峙してスケール110に一体的に設けられている。
【0027】
面状光源120は、図1、図2に示す如く、EL発光膜122と電極膜124、126と透明電極膜128とを有する。即ち、面状光源120は、EL素子で構成されている。(なお、必ずしも光源が面状光源でなくてもよく、又面状光源がEL素子でなくてもよい。)基材112上を電極膜124が均一に覆い、その上に測定軸方向Xに短冊形状の複数のEL発光膜122が形成されている。そして、各EL発光膜122の上面にITOなどの透明電極膜128がそれぞれ形成されている。
【0028】
図3に示す如く、電極膜124上に、EL発光膜122とほぼ同等の厚みで絶縁膜125が形成されている。そして、絶縁膜125上に配線としての電極膜126が形成されて、透明電極膜128は電極膜126と導通状態とされている。このため、電極膜124、126同士がショートすることなく、図2に示す如く、電極膜126は各EL発光膜122の一端側で全てが導通して、EL発光膜122が同時に駆動される。なお、EL発光膜122と透明電極膜128とは、共に単一の膜として形成されていても構わない。
【0029】
図1に示す如く、電極膜126と透明電極膜128の上には、光学的に透明な保護膜130が形成されている。そして、その上に第1の光学格子132が形成されている。第1の光学格子132は、測定軸方向Xで一定間隔の複数の遮光パターンを備える。
【0030】
なお、第1の光学格子132の遮光パターンの部分は、図1に示す如く、丁度各EL発光膜122の間にくるように配置される。そして、第1の光学格子132の遮光パターンの部分の幅が各EL発光膜122の間を覆うような態様とされている。このため、EL発光膜122が複数の短冊形状に分割されていても、そのEL発光膜122を発光させることにより、第1の光学格子132全面を均一な光で照射していることと同様な状況にすることができる。面状光源120で発光する光は、第1の光学格子132で変調(一部遮光)される。なお、本実施形態では、図1に示す如く、EL発光膜122の幅は第1の光学格子132の幅の約2倍程度としているが、これに限られるものではない。
【0031】
検出器ユニット140は、図1に示す如く、スケール110にZ方向で所定の間隔dで対峙して配置される。検出器ユニット140は、図4に示す如く、第2の光学格子142と受光素子146とを備える。第2の光学格子142は、スケール110上の第1の光学格子132と距離d1で対峙して配置される。そして、第2の光学格子142は、第1の光学格子132と同様に、測定軸方向Xで一定間隔の複数の遮光パターンを備える。そのため、第2の光学格子142は、第1の光学格子132との位置関係の変化に従い、面状光源120で発光した光で、且つ第1の光学格子132で変調された光を更に変調する。
【0032】
受光素子146は、第2の光学格子142から距離d2(図4でZ軸上側)に配置されている。受光素子146の表面には、第2の光学格子142で変調された光の一部を一定間隔で遮光する光学格子144が別体で設けられている。このため、光学格子144を透過した光が受光素子146で受光されて、受光素子146から出力される。出力された信号は図示せぬ処理系で処理されて、検出した光量に基づいて検出器ユニット140に対してのスケール110の相対的位置が求められる。
【0033】
なお、本実施形態では、第1の光学格子132、第2の光学格子142、光学格子144は同一間隔の遮光パターンを備えている。そして、距離d1=d2とされている。又、検出器ユニット140の測定軸方向Xと直交する方向Y(図4の奥行き方向)において、第2の光学格子142は2列存在し、それらは互いに90度ずれた間隔で配置されている。受光素子146も対応して2つあるので、受光素子146のそれぞれからは、位相が90度異なる出力(正弦波信号)を得ることができる。このため、それら2つの位相の出力により、その移動方向と検出器ユニット140に対するスケール110の相対的位置とを、高精度に計測することが可能となる。
【0034】
なお、上述の如く、原理的には90度位相差の2相正弦波信号があれば、相対位置の変位を検出可能である。しかし、S/N比向上、分解能向上のために逆相を含め、それぞれ90度位相差の4相正弦波信号を検出して、この4相正弦波信号を信号処理して90度位相差の2相正弦波信号を得るように、第2の光学格子142や受光素子146を配置・構成することも可能である。
【0035】
次に、本実施形態に係る光電式エンコーダ100の動作制御について、図1に基づいて説明する。
【0036】
まず、電極膜124、126間に電圧を印加して各EL発光膜122に電流を流す。すると、各EL発光膜122が発光する。発光により出射された光は、スケール110の上面に形成された第1の光学格子132で光の変調(一部の光の遮光)がなされる。
【0037】
変調された光は、検出器ユニット140の第2の光学格子142で更に変調されて、その変調された光は、受光素子146(光学格子144)上に明暗パターンを形成する。その際、受光素子146の表面に設けられた別体の光学格子144を透過した光が、受光素子146で受光されて出力される。そして、その得られた光量に基づいて図示せぬ処理系において検出器ユニット140に対するスケール110の相対位置を算出する。
【0038】
本実施形態は、EL発光膜122は複数の短冊形状とされていることから、EL発光膜122の面積を少なくすることができる。このため、EL発光膜を全面に形成するよりも低コストで低消費電力にすることができる。
【0039】
又、面状光源120がEL発光膜122(EL素子)で構成されているので、高輝度である。このため、スケール110の表面に汚れが付着した場合でも、第1の光学格子132で変調される光への影響を低減できるので、耐環境性能に優れた光電式エンコーダ100を実現することができる。
【0040】
又、本実施形態においては、レンズを検出器ユニット140の内部にも用いていないため、検出器ユニット140を小型で低コストとすることができる。
【0041】
このように、検出器ユニット140は、第1の光学格子132で変調された光を受光するための検出系のみを有するものとなる。このため、図11で示した従来例とは異なり、検出器ユニット140は検出系に最適な設定で設計することができ、検出器ユニット140を小型にすることができる。同時に、検出器ユニット140内には面状光源120による熱は生じない。このため、面状光源120による熱ひずみを検出器ユニット140で考慮することがなく、それによる位置誤差などがなく、高精度な位置検出が可能である。
【0042】
又、面状光源120とスケール110との位置関係が固定されて、スケール110自身が発光するので、スケール110とスケール110に光を照射する照射系とのアライメントが不要となる。このため、スケール110と検出器ユニット140とのアライメント許容度が拡大するので、ロバストな光電式エンコーダ100を実現することが可能となる。
【0043】
なお、本実施形態では、EL発光膜122を面状光源120として用いたが、本発明はこれに限られるものではない。本実施形態の変形例として、スケールの測定軸方向Xに複数の点状光源(たとえばLED)を一定間隔で配置してもよい。
【0044】
次に、本発明に係る第2実施形態について、図5を用いて説明する。
【0045】
第1実施形態においては、光源を面状光源として用いていたが、本実施形態はスケールの端部に設けられた点状光源を用いて面状光源を構成したものである。なお、本実施形態は、第1実施形態と同じ3格子原理を適用した光電式エンコーダである。
【0046】
スケール210は、主に反射シート215と導光板217(導光手段)と拡散シート218と2つのプリズムシート219と第1の光学格子232とから構成される。導光板217には、下面に凹凸パターン216が形成されている。その導光板217の一端側(スケール210の端部)に点状光源であるLED222が設けられている。反射シート215は、導光板217の凹凸パターン216の面を重ねて配置されている。このため、LED222から出射された光は凹凸パターン216と反射シート215とで反射される。反射された光は導光板217の上面に配置された拡散シート218で均一に拡散されて拡散光源とされる。その拡散された光は、互いのプリズムが直交するようにされた2つのプリズムシート219を通過することで、垂直方向(図5の上側(Z方向))に導かれる。
【0047】
このように、本実施形態では、点状光源を用いるので、面状光源をそのまま発光させるよりも消費電力を減らすことができ、検出器ユニットへの熱の影響を更に低減することが可能となる。同時に、発熱源である点状光源をスケール210の端部(局部)に配置できるので、排熱が容易で、且つスケール210自体の熱ひずみも低減できるので、更に高精度な測定が可能となる。
【0048】
なお、本実施形態においては点状光源として1つのLED222を用いていたが、点状光源はLEDに限られず、又、点状光源は複数を並べて使用してもよい。又、点状光源を使わずに小型の蛍光管などの線状光源を用いてもよい。又、点状光源を一端側だけでなく、両端に設けてもよい。又、プリズムシート219を省略した構成であっても構わない。又、点状光源の光を第1の光学格子の透光部分に相当する部分のみに導光して第1の光学格子を直接的に構成しても構わない。
【0049】
次に、本発明に係る第3実施形態について、図6を用いて説明する。
【0050】
本実施形態においては面状光源自体で第1の光学格子を構成している。具体的には、EL発光膜322の部分を第1の光学格子332の透光部分としたものである。このため、光学格子を形成する工程が不要になると共にスケール310を薄くすることができる。なお、本実施形態は、第1、第2実施形態と同じ3格子原理を適用した光電式エンコーダである。
【0051】
次に、本発明に係る第4実施形態について、図7を用いて説明する。
【0052】
上記実施形態においては、面状光源をスケールの全面で発光させていたが、本実施形態においては、例えば面状光源として短冊形状のEL発光膜422を用いた場合に、それらを部分的に駆動させることで省電力化を図るものである。なお、本実施形態は、第1〜第3実施形態と同じ3格子原理を適用した光電式エンコーダである。
【0053】
即ち、本実施形態では、第1、第3実施形態に比べれば、スケール410の測定軸方向Xに伸びる配線としての電極膜426とEL発光膜422との間にフォトセンサアレイ427を更に設けている。フォトセンサアレイ427は、検出器ユニットのスケール410に対峙する表面にLEDアレイ448を設けた場合に、面状光源420のうち、検出器ユニットの対峙するEL発光膜422の部分Aのみを発光させることができる(図7では、図面上での重なりを防ぐために、フォトセンサアレイ427に対して検出器ユニット側のLEDアレイ448をY方向にずらしているが、実際には直接対向(対峙)するように配置することが望ましい)。即ち、フォトセンサアレイ427とLEDアレイ448とが検出器ユニットの対峙する面状光源420の部分Aのみを発光させる制御手段として働く。なお、本実施形態で、他の部分については、第1実施形態と同一なので、説明を省略する。
【0054】
以下に、本実施形態の光電式リニアエンコーダの動作制御について説明する。
【0055】
光電式リニアエンコーダを起動した際に、検出器ユニットのスケール410側の表面のLEDアレイ448を点灯させる。
【0056】
すると、LEDアレイ448に対峙して設けられた部分Aのフォトセンサアレイ427にLEDアレイ448の光が入射して、フォトセンサアレイ427を導通状態とする。このため、フォトセンサアレイ427の導通した部分のEL発光膜422に電流が流れて、EL発光膜422が発光する。即ち、スケール410に一体的に設けられた面状光源420のうち、検出器ユニットが対峙する部分AのみのEL発光膜422を発光させることができる。そして、その発光により出射された光は、第1の光学格子で変調される。その変調された光は、検出器ユニットに入射する。その際に、その変調された光は更に第2の光学格子で変調されて、光学格子を介して受光素子で受光される。
【0057】
このため、部分AのEL発光膜422で発熱する熱は、部分A、Bの両方からなるEL発光膜422全体で構成される面状光源420と比べて極めてわずかとすることができる。即ち、省電力化と同時に、スケール410上での発熱量を少なくして、熱の検出器ユニットへの影響を極力少なくすることができる。このような効果は、第1、第3実施形態で用いたEL発光膜の場合だけに限られるものではない。第1実施形態の変形例で示したような複数の点状光源の場合や、第2実施形態で示した両端面に設けられた点状光源の場合には、本実施形態で示したような手段を用いることで、同様の効果を得ることができる。
【0058】
なお、このようなフォトセンサアレイ427とLEDアレイ448とを設けずに、例えば検出器ユニットに磁石を設けて、スケール側に磁気で電極膜の導通を制御する手段を設けるようにしてもよい。又、「検出器ユニットの対峙するEL発光膜422の部分Aのみ」とは、厳密な「対峙」関係だけでなく、EL発光膜422で構成される面状光源のうち、検出器ユニット近傍の局部に限定することを意味するものである。
【0059】
本発明について上記実施形態を上げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことはいうまでもない。
【0060】
例えば、上記実施形態においては、検出器ユニットの受光素子は光学格子を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば図8の第5実施形態で示す如く、3格子原理を適用しながら、受光素子を複数の画素から構成されるアレイ型受光素子546とすることもできる。この場合には、光学格子を不要とすることができ、且つ検出器ユニットを更に小型化することができる。
【0061】
又、上記実施形態においては、検出器ユニットに第2の光学格子を備えていたが、本発明はこれに限定されるものでもない。例えば検出器ユニットに第1の光学格子で変調された光を集光・結像するレンズを備えることで、位置検出に2つの光学格子を用いる原理(2格子原理と称する)を適用してもよい。
【0062】
具体的には、図9に示す第6実施形態においては、検出器ユニット640に、スケール610側にレンズ642とレンズ642で集光・結像された光を受光するアレイ型受光素子646を備えてもよい。この場合には、第2の光学格子が不要となるばかりではなく、第2の光学格子を用いるよりも、高い分解能で位置検出をすることが可能となる。
【0063】
或いは、図10に示す第7実施形態においては、検出器ユニット740に、スケール710側にレンズ742と、レンズ742で一旦集光された焦点の位置に配置されるアパチャ743と、アパチャ743を通過した光を再度集光・結像するレンズ744と、レンズ744で集光・結像された光を受光するアレイ型受光素子746と、を備えてもよい。この場合には、主光線が光軸に対して平行なレンズ系であるテレセントリック光学系を構成できる。このため、レンズを用いることで高分解能が達成できると共に、検出器ユニット740とスケール710とのアライメント許容度を更に拡大することが可能となる。なお、第6、第7実施形態においてアレイ型受光素子640、740の代わりに、光学格子を別体で設けた受光素子を用いてもよい。
【0064】
又、上記実施形態においては、光電式エンコーダはリニア型エンコーダであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えばロータリ型エンコーダであっても構わない。
【0065】
又、上記実施形態においては、何らかの面状光源を形成していたが、本発明はこれに限定されるものではない。光源がスケールに一体的に設けられていれば、いかなる形状の光源であってもよい。光源を検出器ユニットに備える必要がないので、光源に限定されずに本発明の相応の作用効果を得ることが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1、100…光電式エンコーダ
10、110、210、310、410、510、610、710…スケール
20、120、420…面状光源
30…受光モジュール
30A、30B、146、546、646、746…受光素子
112、312…基材
122、322、422…EL発光膜
124、126、324、426…電極膜
128、328…透明電極膜
130…保護膜
132、232、332、432、532、632、732…第1の光学格子
140、540、640、740…検出器ユニット
142、542…第2の光学格子
144…光学格子
215…反射シート
216…凹凸パターン
217…導光板
218…拡散シート
219…プリズムシート
222…LED
427…フォトセンサアレイ
448…LEDアレイ
642、742、744…レンズ
743…アパチャ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダにおいて、
前記スケールに、前記第1の光学格子で変調されて前記検出器ユニットで受光される光を発光する光源を一体的に備えることを特徴とする光電式エンコーダ。
【請求項2】
前記光源は面状光源であることを特徴とする請求項1に記載の光電式エンコーダ。
【請求項3】
前記面状光源はEL素子で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光電式エンコーダ。
【請求項4】
前記面状光源は、前記スケールの端部に設けられた点状光源若しくは線状光源からの光を導光手段により導光して拡散された拡散光源であることを特徴とする請求項2に記載の光電式エンコーダ。
【請求項5】
前記面状光源自体は、前記第1の光学格子を構成していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の光電式エンコーダ。
【請求項6】
前記光源のうち、前記検出器ユニットが対峙する部分のみを発光させる制御手段が、更に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光電式エンコーダ。
【請求項7】
前記検出器ユニットは、前記第1の光学格子で変調された光を更に変調する第2の光学格子と、該第2の光学格子で変調された光を受光する受光素子と、を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光電式エンコーダ。
【請求項8】
前記検出器ユニットは、前記第1の光学格子で変調された光を集光・結像するレンズと、該レンズで集光・結像された光を受光する受光素子と、を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光電式エンコーダ。
【請求項9】
前記受光素子は、複数の画素から構成されるアレイ型受光素子であることを特徴とする請求項7又は8に記載の光電式エンコーダ。
【請求項10】
前記受光素子に、光の一部を一定間隔で遮光する光学格子が別体で設けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の光電式エンコーダ。
【請求項11】
第1の光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダの動作制御方法において、
前記スケールに一体的に設けられた光源のうち、前記検出器ユニットが対峙する部分のみを発光させる工程を含むことを特徴とする光電式エンコーダの動作制御方法。
【請求項1】
第1の光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダにおいて、
前記スケールに、前記第1の光学格子で変調されて前記検出器ユニットで受光される光を発光する光源を一体的に備えることを特徴とする光電式エンコーダ。
【請求項2】
前記光源は面状光源であることを特徴とする請求項1に記載の光電式エンコーダ。
【請求項3】
前記面状光源はEL素子で構成されていることを特徴とする請求項2に記載の光電式エンコーダ。
【請求項4】
前記面状光源は、前記スケールの端部に設けられた点状光源若しくは線状光源からの光を導光手段により導光して拡散された拡散光源であることを特徴とする請求項2に記載の光電式エンコーダ。
【請求項5】
前記面状光源自体は、前記第1の光学格子を構成していることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の光電式エンコーダ。
【請求項6】
前記光源のうち、前記検出器ユニットが対峙する部分のみを発光させる制御手段が、更に設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の光電式エンコーダ。
【請求項7】
前記検出器ユニットは、前記第1の光学格子で変調された光を更に変調する第2の光学格子と、該第2の光学格子で変調された光を受光する受光素子と、を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光電式エンコーダ。
【請求項8】
前記検出器ユニットは、前記第1の光学格子で変調された光を集光・結像するレンズと、該レンズで集光・結像された光を受光する受光素子と、を備えることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光電式エンコーダ。
【請求項9】
前記受光素子は、複数の画素から構成されるアレイ型受光素子であることを特徴とする請求項7又は8に記載の光電式エンコーダ。
【請求項10】
前記受光素子に、光の一部を一定間隔で遮光する光学格子が別体で設けられていることを特徴とする請求項7又は8に記載の光電式エンコーダ。
【請求項11】
第1の光学格子が設けられたスケールと、該スケールに対峙して配置される検出器ユニットと、を有する光電式エンコーダの動作制御方法において、
前記スケールに一体的に設けられた光源のうち、前記検出器ユニットが対峙する部分のみを発光させる工程を含むことを特徴とする光電式エンコーダの動作制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−256080(P2010−256080A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104095(P2009−104095)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】
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