説明

光電気複合ケーブル

【課題】電線のノイズ特性に優れた光電気複合ケーブルを提供することを目的とする。
【解決手段】ファイバ被覆層3に覆われた光ファイバ心線2と、光ファイバ心線2の長手方向に沿って延在し、電線被覆層6で覆われた複数の電線5と、光ファイバ心線2および電線5を覆う金属テープ8と金属テープ8の内側に設けられた内側吸収部材6と、金属テープ8の外側面を覆う外被9とを備え、ファイバ被覆層3、電線被覆層6、内側吸収部材6、外被9はそれぞれ磁性体粉末を含有する樹脂で形成されていることを特徴とする光電気複合ケーブル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバ心線と電線とを有する光電気複合ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の通信ネットワークの大容量化・コンピュータの処理能力の向上に伴い、機器間に信号を伝送するケーブルについても伝送速度の向上が求められている。このような要求から、従来の電線を備えたケーブルに代えて光ファイバを備えたケーブルで機器間を接続することが行われている。このようなケーブルの一つとして、高い伝送速度が要求される信号を伝送する光ファイバと、機器間の制御信号のような高い伝送速度が要求されない信号を伝送する電線とを備えた光電気複合ケーブルが知られている。
【0003】
このような光電気複合ケーブルにおいて、光ファイバ中を伝送される光信号は外部からの電磁波等によってノイズが混入することはないが、電線には外部からの電磁波の影響を受けてノイズが混入することがある。また、複数の電線を備える光電気複合ケーブルや、複数の光電気複合ケーブルが互いに並列に配列される場合、あるいは光電気複合ケーブルの近傍に電子機器が配置される場合には、電線自身が発生させるノイズが他の電線や他の光電気複合ケーブルの電線あるいは電子機器にノイズを混入させる虞があるので、光電気複合ケーブル中の電線のノイズ対策が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10―68849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、光ファイバケーブルのノイズ混入防止技術として、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1に記載された光ファイバケーブルは、外部からの電磁波により光ファイバ補強用の補強線に発生するノイズを抑制することを目的とする。しかし、特許文献1に記載の光ファイバケーブルは、信号を伝送しない補強線にノイズが混入することを防止する技術であって、電気信号を伝送する電線自身がノイズを発生して他の電線等にノイズを混入させる問題は考慮していない。このため、電気信号を伝送する電線を有する光電気複合ケーブルにとってはノイズ対策が充分とは言えず、電線のノイズ特性に優れた光電気複合ケーブルを得ることは難しかった。
【0006】
そこで、本発明はノイズ特性に優れた電線を有する光電気複合ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記目的を解決するために、以下が提供される。
(1) ファイバ被覆層に覆われた光ファイバ心線と、
前記光ファイバ心線の長手方向に沿って延在し、電線被覆層で覆われた複数の電線と、
前記光ファイバ心線および前記電線を覆う金属テープと、
前記金属テープの内側に設けられた内側吸収部材と、
前記金属テープの外側面を覆う外被とを備え、
前記ファイバ被覆層、前記電線被覆層、前記内側吸収部材、前記外被はそれぞれ磁性体粉末を含有する樹脂で形成されていることを特徴とする光電気複合ケーブル。
(2) 前記金属テープは、前記光ファイバ心線及び前記電線の長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられていることを特徴とする(1)の光電気複合ケーブル。
(3) 前記内側吸収部材は、前記光ファイバ心線および前記電線とを収容する中空部を内部に有する円筒状であることを特徴とする(1)または(2)の光電気複合ケーブル。
(4) 前記内側吸収部材は、前記光ファイバ心線と前記電線との隙間に配置された電磁波吸収繊維であることを特徴とする(1)または(2)の光電気複合ケーブル。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光電気複合ケーブルによれば、電線が電磁波を吸収する磁性体粉末を含有する樹脂で形成される電線被覆層で覆われているので、電線自身から発せられた電磁波が外部に放射されることを低減することができる。また、電線被覆層を透過した電磁波が金属テープで光電気複合ケーブル内に反射されても、同じくファイバ被覆層、電線被覆層、内側吸収部材に含有された磁性体粉末が電磁波を吸収し、電線中を伝送される電気信号にノイズが混入することを更に抑制できる。
【0009】
また、外部から伝搬してきた電磁波が外被に含有された磁性体粉末に吸収され、外被を透過した電磁波も金属テープで反射されるので、金属テープに覆われる電線中を伝送される電気信号にノイズが混入することを抑制できる。また、電磁波が金属テープを透過しても、ファイバ被覆層、電線被覆層、内側吸収部材に含有された磁性体粉末が電磁波を吸収するので、電線中を伝送される電気信号にノイズが混入することを更に抑制できる。
【0010】
したがって、光電気複合ケーブル内部の電線から放射される電磁波、及び光電気複合ケーブル外部の電磁波のいずれに対しても、電線中を伝送される電気信号が影響を受けることを抑制できるので、ノイズ特性に優れた電線を有する光電気複合ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る光電気複合ケーブルの断面図である。
【図2】本発明の変形例に係る光電気複合ケーブルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係る光電気複合ケーブルを図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る光電気複合ケーブル1の断面図である。光電気複合ケーブル1は、少なくとも1本の光信号を伝送する光ファイバ心線2とその外周を覆うファイバ被覆層3とからなる光ファイバコード4と、それぞれ電気信号を伝送する複数本(図示の例では3本)の電線5とを備える。電線5の外周にも電線被覆層6が被覆されている。また、それぞれ光ファイバコード4及び電線被覆層6で被覆された電線5は、内部に収容空間が形成された円筒状の内側吸収チューブ(内側吸収部材)7によって覆われている。この内側吸収チューブ7の外周面には金属テープ8が設けられ、金属テープ8の外側には外被9が形成される。
【0014】
光ファイバ心線2としては、クラッドが高硬度プラスチックから形成されて折れ曲がり(キンク)に強く破断しにくいプラスチッククラッドファイバ(PCF)を用いることが好ましい。また、コア及びクラッドがプラスチックからなるものであってもよいし、コア及びクラッドがガラスからなるものであってもよい。本実施形態に係る光ファイバ心線2は、コアと、コアの外側に設けられるクラッドと、クラッドを覆う被覆層とを有し、その直径は0.5mmである。また、ファイバ被覆層3を含む光ファイバコード4の直径は2mmである。
【0015】
電線5は、例えば錫メッキが施された軟銅線または銅合金線からなる素線を撚り合わせた金属線であり、AWG(American Wire Gauge)の規格によるAWG26〜30のものを用いることができる。また、電線5としては他に、同軸ケーブルやツイストペアケーブルあるいは絶縁ケーブルを用いることができる。電線5の直径は、電線被覆層6を被覆した状態で1〜2mmである。
【0016】
また、上述の寸法の光ファイバ心線2および電線5を用いた場合には、内側吸収チューブ7の肉厚は0.5〜1.0mm程度、金属テープ8の肉厚は0.03〜0.05mm程度、外被9の肉厚は1.0mm程度に設定すると、後述するノイズの低減に効果的であり、しかも細径で光電気複合ケーブル1の取り回しが容易であり、好ましい。
【0017】
なお、光ファイバコード4及び電線5は互いに撚り合わせて直径4mmの内部コアを形成し、この内部コアを内側吸収チューブ6の内側に配置してもよい。このように光ファイバコード4及び電線5は互いに撚り合わせると、光電気複合ケーブル1を屈曲させた時に、曲げの内側と外側の線路長の差が生じにくく、断線しにくいので好ましい。
【0018】
ファイバ被覆層3、電線被覆層6、内側吸収チューブ7、外被9はいずれも電磁波を吸収できる部材であり、磁性体粉末を含有する樹脂で形成される。磁性体粉末は、高周波において高い透磁率を有する鉄、コバルト、鉄・ニッケル合金、ケイ素鋼、センダスト、フェライト等からなる粉末が好ましい。このうち、特に高い透磁率を示す鉄・ニッケル合金からなる粉末が好ましい。
【0019】
磁性体粉末は、粉末寸法のばらつきが少なく、粒の内部歪みが小さく、かつ、粒が扁平なことが望ましい。磁性体粉末の粉末寸法にばらつきがある場合には周波数によって電磁波の吸収特性が変化したり、粒の内部歪みが大きいと磁性体粉末の透磁率を低下させてしまう虞があるからである。また、磁性体粉末の粒が扁平であれば、粒の形状異方性に基づき高周波域にて磁気共鳴が起こり、透磁率が大きくなるので好ましい。
【0020】
このような磁性体粉末を塩素化ポリエチレン等の絶縁性の樹脂に含有させて、ファイバ被覆層3、電線被覆層6、内側吸収チューブ7、外被9を形成する。なお、電磁波の入射方向と磁性体粉末の扁平粉末の法線方向とが平行となるように磁性体粉末を含有させると、磁性体粉末が効果的に電磁波を吸収することができる。このため、磁性体粉末の扁平粉末の法線方向が電線5の長手方向と直交するようにファイバ被覆層3、電線被覆層6、内側吸収チューブ7、外被9を形成することが好ましい。
【0021】
金属テープ8は、体積抵抗率が低く、透磁率が高い金属で形成されることが好ましい。好ましい金属として例えば、銅、銀、金、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル等を挙げることができる。また、金属テープ8は電線5の長手方向に沿って内側吸収テープ7の外周面に螺旋状に巻回すると、光電気複合ケーブル1を容易に曲げることができるので好ましい。このとき、金属テープ8は、テープ幅の1/4〜1/3を重ねるように内側吸収チューブ7の外周面に螺旋状に巻くと可撓性に優れた光電気複合ケーブル1が得られる。
【0022】
このような光電気複合ケーブル1によれば、光電気複合ケーブル1の外部に電磁波発生源があっても、外被9に含有される磁性体粉末が電磁波の大部分を吸収する。更に、外被9を透過してきた電磁波も金属テープ8で反射させることで、光電気複合ケーブル1の内部に電磁波が侵入することを抑制できる。その上、外部の電磁波が金属テープ8を透過しても、ファイバ被覆層3、電線被覆層6、内側吸収チューブ7に含有される磁性体粉末が電磁波を吸収するので、電線5中を伝送される電気信号に外部の電磁波が影響を及ぼすことを抑制できる。
【0023】
また、電線5中を伝送される電気信号により生じ電線5から放射される電磁波は、電線被覆層6に含有された磁性体粉末によって大部分が吸収される。また、電線被覆層6中の磁性体粉末によって吸収されなかった電磁波が光電気複合ケーブル1の内部に放射されたり、一つの電線5から別の電線5へ電磁波が伝搬しようとしても、ファイバ被覆層3、電線被覆層6、内側吸収チューブ7に含有される磁性体粉末が電磁波を吸収する。したがって、電線5中を伝送される電気信号へのノイズ混入を抑制できる。
【0024】
また、電線5から生じ、電線被覆層6やファイバ被覆層3、内側吸収チューブ7中の磁性体粉末によって吸収されなかった電磁波は、金属テープ8によって光電気複合ケーブル1の内側に反射されるので、光電気複合ケーブル1の外部に電磁波が漏出することを抑制できる。また、電線5から生じた電磁波が金属テープ8を透過しても、外被9に含有される磁性体粉末が電磁波を吸収する。したがって、別の電気信号線を光電気複合ケーブル1と並列に配置したり、電子機器が近傍に配置されていても、光電気複合ケーブル1の外部への電磁波の漏出が少ないので、別の電気信号線や電子機器にノイズを与えることが少ない。
【0025】
以上のように本実施形態に係る光電気複合ケーブル1によれば、光電気複合ケーブル1の内部である電線5から放射される電磁波、及び光電気複合ケーブル1の外部から放射される電磁波のいずれに対しても電線5中を伝送される電気信号にノイズが混入することを抑制することができる。したがって、ノイズ特性に優れた電線5を備えた光電気複合ケーブル1を提供できる。
【0026】
なお、上述の実施形態の例では内側吸収部材として円筒状の内側吸収チューブ7を例に挙げて説明したが、この形状に限られない。例えば、図2の変形例に係る光電気複合ケーブル10のように、内側吸収部材は光ファイバコード4と電線5との間に配置された電磁波吸収繊維7aで構成してもよい。
【0027】
電磁波吸収繊維7aは、上述の磁性体粉末を含有する樹脂製繊維である。樹脂としては、低熱収縮のポリプロピレンヤーンやアラミド繊維を挙げることができる。なお、内側吸収部材以外の部材については上述の実施形態と同様なので、同じ符号を付して変形例に係る光電気複合ケーブル10の詳細な説明は省略する。
【0028】
変形例に係る光電気複合ケーブル10も、電磁波吸収繊維7aが光ファイバコード4と電線5との間に配置されており、電磁波吸収繊維7aに含有される磁性体粉末が光電気複合ケーブル10内部で伝搬する電磁波を吸収することができる。したがって、上述の実施形態と同様に電線5中を伝送される電気信号へのノイズ混入を抑制できる。
【0029】
なお、図1の内側吸収チューブ7と図2の電磁波吸収繊維7aとを合わせて用いて、内側吸収チューブ7の内側に、電磁波吸収繊維7aとともに光ファイバコード4及び電線5を撚り合わせても良い。
【0030】
また、光ファイバ心線2及び電線5の本数は上述の実施形態に限定されない。更に必要に応じて抗張力線を金属テープの内側領域に配置して、光電気複合ケーブル1の強度を高めても良い。
【符号の説明】
【0031】
1,10 光電気複合ケーブル、2 光ファイバ心線、3 ファイバ被覆層、4 光ファイバコード、5 電線、6 電線被覆層、7 内側吸収チューブ(内側吸収部材)、7a 電磁波吸収繊維(内側吸収部材)、8 金属テープ、9 外被

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ファイバ被覆層に覆われた光ファイバ心線と、
前記光ファイバ心線の長手方向に沿って延在し、電線被覆層で覆われた複数の電線と、
前記光ファイバ心線および前記電線を覆う金属テープと、
前記金属テープの内側に設けられた内側吸収部材と、
前記金属テープの外側面を覆う外被とを備え、
前記ファイバ被覆層、前記電線被覆層、前記内側吸収部材、前記外被はそれぞれ磁性体粉末を含有する樹脂で形成されていることを特徴とする光電気複合ケーブル。
【請求項2】
前記金属テープは、前記光ファイバ心線及び前記電線の長手方向に沿って螺旋状に巻き付けられていることを特徴とする請求項1に記載の光電気複合ケーブル。
【請求項3】
前記内側吸収部材は、前記光ファイバ心線および前記電線とを収容する中空部を内部に有する円筒状であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電気複合ケーブル。
【請求項4】
前記内側吸収部材は、前記光ファイバ心線と前記電線との隙間に配置された電磁波吸収繊維であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光電気複合ケーブル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−249022(P2011−249022A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117963(P2010−117963)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】