説明

免疫疾患を治療するための、p28、EBI3およびWSX/TCCRのアゴニストおよびアンタゴニスト

例えば、免疫疾患および炎症性疾患を処置する目的のために、サイトカイン活性を調節する方法が提供される。IL−27およびIL−27レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストを投与する方法もまた提供される。この方法には、p28、EBI3、またはWSX/TCCRのアゴニストまたはアンタゴニストの有効量を投与する工程が含まれる。ここで、疾患または状態には、以下が含まれる:a)皮膚の炎症状態;b)関節炎;c)クローン病;d)気道過敏性または気道の炎症;e)アテローム性動脈硬化症;あるいはf)エプスタイン・バーウイルスによっては引き起こされたものではない、癌または腫瘍。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が本明細書中に参考として援用される、2004年2月17日に提出された米国仮特許出願番号第60/545,762号の権利を請求する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、概して、哺乳動物のサイトカインの使用に関する。さらに具体的には、本発明により、IL−27レセプターのレセプターサブユニットが開示される。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
免疫系は、個体を感染因子(例えば、細菌、多細胞生物)、さらには癌から防御する。このシステムには、単球、マクロファージ、樹状細胞(DC)、好酸球、T細胞、B細胞、および好中球のような、いくつかのタイプのリンパ球と骨髄細胞が含まれる。これらのリンパ球および骨髄細胞は、多くの場合、サイトカインとして知られているシグナル伝達タンパク質を産生する。免疫応答には、炎症、すなわち、免疫細胞の全身的な、または体の特定の位置での蓄積が含まれる。感染因子または外来物質に応答して、免疫細胞はサイトカインを分泌し、これは次いで、免疫細胞の増殖、発達、分化、または移動を調節する。免疫応答は、しばしば、病理学的結果、すなわち、炎症性疾患を生じる。免疫細胞およびサイトカインが関係しているこれらの炎症性疾患としては、例えば、乾癬、慢性関節リウマチ、クローン病、およびアテローム性硬化症が挙げられる(例えば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;非特許文献4;非特許文献5;非特許文献6;非特許文献7;非特許文献8;非特許文献9を参照のこと)。
【0004】
IL−27はヘテロ二量体サイトカインであり、これには、IL−12、IL−23、およびCNTF/sCNTFRヘテロ二量体のサブユニットと類似している構造である2つの異なるサブユニットが含まれている。IL−27のこの2つのサブユニットは、p28およびエプスタイン・バーウイルスによって誘導される遺伝子3(EBI3)である。IL−27は、例えば、単球および樹状細胞(DC)のような抗原提示細胞(APC)によって発現される。その後、発現されたIL−27はCD4ナイーブT細胞の増殖を刺激する。さらに、IL−27は、CD4ナイーブT細胞がTH1型サイトカインであるインターフェロン−γ(IFNγ)を産生するように誘発することにおいて、IL−12と協働して作用する。IL−27はまた、TH1型免疫応答に特異的な転写因子であるT−betをアップレギュレートさせ、このことは、このIL−27がTH2型免疫応答に特異的な転写因子であるGATA−3をダウンレギュレートさせることと一致する。リポ多糖(LPS)は、単球および単球に由来するDCによるIL−27の両方のサブユニットの発現を誘導し、このことは、先天性免疫におけるIL−27の役割を示している(非特許文献10;非特許文献11;非特許文献12;非特許文献13)。
【0005】
IL−27レセプターにはTCCR(WSX−1;WSX−1/TCCRとしても知られている)が含まれている。TCCR/WSX−1ノックアウトマウス(TCCR/WSX−1 KOマウス)は、TH1型免疫応答が失われている、例えば、IFNγの産生が減少している、リーシュマニア(Leishmania)属、リステリア(Listeria)属、およびトリパンゾーマ(Trypanosoma)属のような細胞内病原体に対して過敏である、TH1型T細胞依存性抗体(IgG2aサブタイプ)の産生量が少ない、バリルス(bacillus)属に応答して異常な肉芽腫を形成する。TH1型T細胞依存性抗体(IgG2aサブタイプ)の産生量が少ないことによって識別される。結核症、サルコイドーシス、およびクローン病は、TH1型の応答と肉芽腫の形成に関係している疾患である。肉芽腫の形成は、これらの疾患の関係している部位で生じる。結核症、サルコイドーシス、およびクローン病の患者に由来する肉芽腫は、IL−27の両方のサブユニットを発現する(例えば、非特許文献14;非特許文献15;非特許文献16;非特許文献17;非特許文献18を参照のこと)。
【0006】
IL−27が関係している免疫学的経路のわずかな変異が見つかっており、これは、明らかに、宿主を惹起させるために使用される病原体の実体、および感染に対する免疫応答の研究のために選択される時点に応じて異なる。例えば、WSX−1/TCCRノックアウトマウスのいくつかの研究では、このマウスが細胞内寄生体(トキソプラズマ(Toxoplasma))への感染に対抗する能力があること、このマウスが過剰なIFNγの産生を生じること、およびIFNγの産生がアップレギュレートされたままであり、その結果、致命的な炎症が生じることが明らかにされている(非特許文献14;非特許文献19;非特許文献20)。非特許文献16(前出)にしたがうと、IL−27は、単独ではTH1型応答を開始することにおいて重要な役割を担っていないが、その代わりに、T細胞のTH1型への分化関与にほとんど影響を及ぼすことなく、初期IFNγの産生を刺激する。
【0007】
乾癬、関節炎のような炎症性疾患および免疫疾患、さらには、免疫系による根絶に抵抗する癌を処置することの必要性は満たされていない。本発明は、IL−27またはIL−27レセプターのアゴニストおよびアンタゴニストを使用する方法を提供することにより、この必要性を満たす。
【非特許文献1】Abbasら(編)Cellular and Molecular Immunology(2000年),W.B.Saunders Co.,Philadelphia,PA
【非特許文献2】OppenheimおよびFeldmann(編)Cytokine Reference(2001年),Academic Press,San Diego,CA
【非特許文献3】Kaufmannら、Immunobiol.(2001年)204:p.603−613
【非特許文献4】SeurezおよびSchultz−Cheery、Dev.Comp.Immunol.(2000年)24:p.269−283
【非特許文献5】van ReethおよびNauwynck、Vet.Res.(2000年)31:p.187−213
【非特許文献6】Garcia−Sastre、Virology (2001年)279:p.375−384
【非特許文献7】Katzeら、Nat.Rev.Immunol.(2002年)2:p.675−687
【非特許文献8】van Reeth、Vet.Microbiol.(2000年)74:p.109−116
【非特許文献9】Tripp、Curr.Pharm.Des.(2003年)9:p.51−59
【非特許文献10】Takedaら、J.Immunol.(2003年)170:p.4886−4890
【非特許文献11】Lucasら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,(2003年)100:p.15047−15052
【非特許文献12】Pflanzら、Immunity(2002年) 16:p.779−790
【非特許文献13】Hashimotoら、Boold(2000年) 96:p.2206−2214
【非特許文献14】Chenら、Nature(2000年) 407:p.916−920
【非特許文献15】Yoshidaら、Immunity(2001年) 15:p.569−578
【非特許文献16】Trinchieriら、Immunity(2003年) 19:p.641−644
【非特許文献17】Larousserieら、J.Pathol.(2004年)202:p.164−171
【非特許文献18】Brombacherら、TRENDS(2003年) Immunol.24:p.207−212
【非特許文献19】Villarinoら、Immunity(2003年) 19:p.645−655
【非特許文献20】Hamanoら、Immunity(2003年) 19:p.657−667
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、IL−27またはIL−27レセプターのアゴニストおよびアンタゴニストが、多数の免疫状態および炎症状態に対する応答を調節するということの発見に一部基づく。
【0009】
本発明により、免疫疾患または免疫状態を調節する方法が提供される。この方法には、p28、EBI3、またはWSX/TCCRのアゴニストまたはアンタゴニストの有効量を投与する工程が含まれる。ここでは、疾患または状態には、以下が含まれる:a)皮膚の炎症状態;b)関節炎;c)クローン病;d)気道過敏性または気道の炎症;e)アテローム性動脈硬化症;あるいはf)エプスタイン・バーウイルスによっては引き起こされたものではない、癌または腫瘍。アンタゴニストが、WSX−1/TCCRおよびgp130のヘテロ二量体複合体を含むレセプターに対するIL−27の結合を阻害するかまたは妨げる上記の方法もまた提供される。
【0010】
別の局面においては、本発明により、皮膚の炎症状態に、乾癬、またはアトピー性皮膚炎が含まれる上記の方法が提供される。ここでは、関節炎には、慢性関節リウマチ;変形性関節症;または乾癬性関節炎が含まれる。ここでは、気道過敏性または気道の炎症疾患には、喘息;アレルギー、または慢性閉塞性肺疾患(COPD)が含まれる。癌または腫瘍に、乳癌、結腸癌;または黒色腫が含まれる上記の方法もまた、提供される。さらに、アゴニストが、癌または腫瘍を含む疾患を阻害または改善する上記の方法も提供される;そして、癌または腫瘍が、正常なコントロール組織による発現と比較して、検出することができるほど増加した量の:a)p28;b)EBI3;またはc)WSX−1/TCCRを発現する上記の方法も提供される。
【0011】
なお別の局面においては、本発明により、アンタゴニストが、a)皮膚の炎症状態;b)関節炎;c)クローン病;d)気道過敏性または気道の炎症;またはe)アテローム性動脈硬化症を改善する上記の方法が提供される。
【0012】
別の実施形態においては、本発明により、免疫疾患または免疫状態を調節する方法が提供される。この方法には、p28、EBI3、またはWSX/TCCRのアゴニストまたはアンタゴニストの有効量を投与する工程が含まれる。ここでは、疾患または状態には、以下が含まれる:a)皮膚の炎症状態;b)関節炎;c)クローン病;d)気道過敏性もしくは気道の炎症;e)アテローム性動脈硬化症;またはf)エプスタイン・バーウイルスによって引き起こされたものではない、癌または腫瘍。ここでは、アゴニストには、IL−27;IL−27ハイパーカイン(hyperkine);p28;EBI3;または核酸が含まれる。また、核酸が、IL−27ハイパーカイン;p28、EBI3;p28、およびEBI3;WSX−1/TCCR;またはWSX1/TCCRおよびgp130をコードする上記の方法も提供される。さらには、アンタゴニストが、IL−27;p28、EBI3;WSX−1/TCCR;またはgp130とWSX−1/TCCRとの複合体に特異的に結合する抗体に由来する結合組成物を含む上記の方法も提供される。抗体に由来する結合組成物にポリクローナル抗体;モノクローナル抗体;ヒト化抗体;またはそれらのフラグメント;Fab、Fv、またはF(ab’)フラグメント;抗体のペプチド模倣物;あるいは検出可能な標識が含まれる上記の方法も提供される。アンタゴニストが、a)WSX−1/TCCRに由来する可溶性レセプター;b)低分子;またはc)核酸を含む上記の方法もまた提供される。さらに、核酸が、p28、EBI3、またはWSX−1/TCCRをコードするポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする上記の方法が提供され、また、核酸に、アンチセンス核酸または低分子干渉RNA(siRNA)が含まれる上記の方法も提供される。
【0013】
本発明のなお別の局面は、アゴニストの投与により、RANKL;TNFα;TEASRL;IL−1αもしくはIL−1β;OX40;またはAPRILの発現が増大し、そしてアンタゴニストの投与により、上記の発現が低下する、上記の方法である。上記の免疫状態または免疫疾患を診断する方法もまた提供される。この方法には、生物学的サンプルに対して結合組成物を接触させる工程(ここでは、結合組成物は、a)IL−27、p28、EBI3、またはWSX−1/TCCR;b)WSX−1/TCCRとgp130との複合体;あるいは、c)p28、EBI3、またはWSX−1/TCCRをコードする核酸に特異的に結合する);および、生物学的サンプルに対する結合組成物の特異的結合を測定するかまたは決定する工程が含まれる。さらに、本発明により、上記の免疫状態または免疫疾患の診断のためのキットも提供される。このキットは、容器と、a)IL−27、p28、EBI3、またはWSX−1/TCCR;b)WSX−1/TCCRとgp130との複合体;あるいは、c)p28、EBI3、またはWSX−1/TCCRをコードする核酸に特異的に結合する結合組成物を備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
添付の特許請求の範囲を含む本明細書中で使用される場合は、「a」、「an」、および「the」のような単数形の言葉には、文脈により他の場所に明記されていない限りは、それらの対応する複数形も含まれる。
【0015】
本明細書中で引用される全ての参考文献は、個々の刊行物または特許出願が具体的かつ個別に参考として示されているかのように、同じ程度に本明細書中に参考として援用される。
【0016】
(I.定義)
「活性化」、「刺激」、および「処置」は、それらが細胞またはレセプターに対して適用される場合は、文脈により、または明確に他の場所に明記されていない限りは、例えば、リガンドでの細胞またはレセプターの活性化、刺激、または処置と同じ意味を有し得る。「リガンド」には、自然界に存在しているリガンドおよび合成のリガンドが含まれ、例えば、サイトカイン、サイトカイン改変体、類似体、突然変異タンパク質、および抗体に由来する結合組成物である。「リガンド」にはまた、低分子、例えば、サイトカインのペプチド模倣物および抗体のペプチド模倣物も含まれる。「活性化」は、内部機構により、さらには、外的要因または環境要因により調節される細胞の活性化を意味し得る。「応答」(例えば、細胞、組織、器官、または生物体の「応答」)には、生化学的性質または生理学的性質、例えば、生物学的区画内での濃度、密度、接着、または移動、遺伝子の発現速度、あるいは分化の状態の変化が含まれる。ここでは、変化は、活性化、刺激、または処置と相関しているか、あるいは、遺伝的プログラムのような内部機構と相関している。
【0017】
分子の「活性化」は、リガンドに対する分子の結合、またはレセプターに対する分子の結合、触媒活性、遺伝子発現または細胞のシグナル伝達、分化、または成熟を刺激する能力、抗原性活性、他の分子の活性の調節などを記載または意味し得る。分子の「活性」はまた、細胞対細胞の相互作用(例えば、接着)を調節または維持する活性を、あるいは、細胞の構造(例えば、細胞膜または細胞骨格)を維持する活性を意味する場合もある。「活性」はまた、特異的活性、例えば、[触媒活性]/[mgタンパク質]または[免疫学的活性]/[mgタンパク質]、生物学的区画内での濃度などをも意味することができる。「増殖活性」には、それが不可欠である促進する活性、または例えば、正常な細胞分裂、さらには、癌、腫瘍、形成異常、細胞の形質転換、転移、および血管形成に特異的に関係している活性が含まれる。
【0018】
「投与」および「処置」は、これらが、動物、ヒト、実験被験体、細胞、組織、器官、生物学的流体に対して適用される場合は、外因性医薬品、治療薬、診断薬、化合物、または組成物の、動物、ヒト、被検体、細胞、組織、器官、または生物学的流体に対する接触を意味する。「投与」および「処置」は、例えば、治療方法、偽薬による方法、薬物動態学的方法、診断方法、研究方法、および実験的方法を意味し得る。「細胞の処置」には、細胞への試薬の接触、さらには、流体への試薬の接触(ここでは、流体は、細胞と接触している)が含まれる。「投与」および「処置」はまた、試薬、診断薬、結合組成物によるか、または別の細胞による、例えば、細胞のインビトロおよびエキソビボでの処置をも意味する。「処置」には、これが、ヒト、獣医学的動物、または研究対象に対して適用される場合には、研究用途および診断用途のための治療的処置、予防的、または防御的測定を意味する。「処置」は、これがヒト、獣医学的動物、または研究用被験体、あるいは細胞、組織、または器官に対して適用される場合は、ヒトまたは動物である被験体、細胞、組織、生理学的区画、または生理学的流体に対する、IL−27アゴニストまたはIL−27アンタゴニストの接触が含まれる。「細胞の処置」にはまた、IL−27アゴニストまたはIL−27アンタゴニストがIL−27レセプター(WSX−1/TCCRとgp130とのヘテロ二量体)と、例えば、液相またはコロイド相中で接触する状況およびアゴニストまたはアンタゴニストが流体と接触する(例えば、流体が細胞またはレセプターと接触する)が、アゴニストまたはアンタゴニストが細胞またはレセプターと接触することは明らかではない状況も含まれる。
【0019】
「結合組成物」は、標的に結合することができる、分子、低分子、巨大分子、抗体、そのフラグメントまたは類似体、あるいは可溶性レセプターを意味する。「結合組成物」はまた、イオン化された分子に対する分子の複合体(例えば、非共有複合体)、および共有的または非共有的に修飾された分子(例えば、リン酸化、アシル化、架橋、環化、または限定的な切断によって修飾された分子)を意味し得、これらは、標的に結合することができる。「結合組成物」はまた、安定剤、賦形剤、塩、緩衝化剤、溶媒、または添加物と組み合わせられた、標的に結合することができる分子をも意味する場合がある。「結合」は、標的との結合組成物の会合として定義することができる。ここでは、結合組成物が溶液に可溶であるかまたは結合組成物を溶液中に懸濁させることができる場合には、会合により、結合組成物の通常のブラウン運動の減少が生じる。
【0020】
「保存的に修飾された改変体」は、アミノ酸配列と核酸配列の両方に適用することができる。特定の核酸配列について、保存的に修飾された改変体は、同一のアミノ酸配列または本質的に同一であるアミノ酸配列をコードする核酸を意味し、また、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一の核酸配列を意味する。遺伝子コードの縮重が原因で、多数の機能的に同一の核酸によって任意の所定のタンパク質がコードされる場合がある。
【0021】
アミノ酸配列に関して、当業者は、1つのアミノ酸またはコードされる配列のうちの小さい割合のアミノ酸を保存されたアミノ酸で置換する、核酸、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質配列に対する個々の置換が「保存的に修飾された改変体」であることを理解するであろう。機能的に類似するアミノ酸を生じる保存的置換の表は当該分野で周知である。保存的置換の一例は、以下のグループの1つの中のアミノ酸の、同じグループの別のアミノ酸での交換である(Lee,et al.に対して発行された米国特許第5,767,063号、KyteおよびDoolittle(1982)J.Mol.Biol.157:105−132):
(1)疎水性:ノルロイシン、Ile、Val、Leu、Phe、Cys、またはMet;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:Asn、Gln、His、Lys、Arg;
(5)鎖の方向性に影響を与える残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe;
(7)小さいアミノ酸:Gly、Ala、Ser。
【0022】
「誘導された」は、例えば、もとのペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチド(例えば、抗体)からペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドの構造を誘導することを記載するために使用することができる。この状況においては、「誘導された」には、例えば、ペプチドがもとのものに見られる配列と同じ配列を有しているペプチド構造(例えば、ペプチドはもとのものと同一であるが、もとのもののN末端、C末端、またはN末端とC末端との両方が短縮されているもの、あるいは、短縮と融合を有しているもの、あるいは、融合のみを有しているもの)が含まれる。「誘導された」はまた、ペプチドがものとものに見られる同じ配列を有しているが、保存的アミノ酸変化を有しているか、または欠失もしくは挿入を有しており、ここでは、欠失もしくは挿入によってもとのものに特有であるペプチドの生物学的特性が保存されているものも意味される。「誘導された」には、ペプチドまたはポリペプチドが出発化合物としてもとのものを使用して合成される状況、およびペプチドまたはポリペプチドが、ガイドとしてもとのものの構造を使用して新しく合成される状況が含まれる。
【0023】
「有効量」または「治療有効量」は、疾患の症状もしくは症候、または生理学的状態を改善するために十分な量、あるいは、疾患または生理学的状態の診断を可能にするかまたは容易にするために十分な量を意味する。特定の患者または獣医学的被験体についての有効量は、処置される状態、患者の全体的な健康状態、投与方法、経路、および用量、ならびに副作用の重篤度のような要因に応じて変化する場合がある(例えば、Netti,et al.に発行された米国特許第5,888,530号を参照のこと)。有効量は、有意な副作用または毒性の作用を回避する、最大用量または投与プロトコールであり得る。この作用は、診断の測定値、パラメーター、または検出することができるシグナルの、少なくとも5%、通常は少なくとも10%、より通常は少なくとも20%、最も通常は少なくとも30%、好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも60%、理想的には少なくとも70%、より理想的には少なくとも80%、そして最も理想的には少なくとも90%の改善を生じる。ここでは、100%は、正常な被験体によって示される診断上のパラメーターと定義される(例えば、Maynard,et al.,(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,Boca Raton,FL;Dent(2001)Good LaboratoryおよびGood Clinical Practice,Urch Publ.,London,UKを参照のこと)。
【0024】
「外因性」は、状況に応じて、生物体、細胞、または人体の外側で産生された物質を意味する。「内因性」は、状況に応じて、細胞、生物体、または人体の内部で産生された物質を意味する。
【0025】
「疾患」は、病理学的状態、あるいは、病理学的状態または病理学的状態に対する素因に相関している状態を意味する。「感染性疾患」は、例えば、微生物、細菌、寄生体、ウイルスなどによって生じる疾患、ならびに、これらの疾患に対する不適切な、有効性のない、または病理学的な免疫応答を意味する。「癌性疾患」には、癌、形質転換された細胞、腫瘍、形成異常、血管形成、転移など、さらには、これらの疾患に対する不適切な、有効性のない、または病理学的な免疫応答が含まれる。
【0026】
「有効量」は、例えば、疾患、状態、または病理学的状態の症状または症候を改善するために十分な、IL−27アゴニスト、IL−27アンタゴニスト、結合化合物、または結合組成物の量を意味する。「有効量」はまた、疾患、状態または病理学的状態の症状もしくは症候の診断を可能にするかまたは容易にするために十分な、IL−27アゴニスト、アンタゴニスト、または結合化合物もしくは結合組成物の量に関する。
【0027】
「阻害因子(インヒビター)」および「アンタゴニスト」、または「活性化因子」および「アゴニスト」は、例えば、リガンド、レセプター、補因子、遺伝子、細胞、組織、または器官の、例えば、活性化についての、それぞれ、阻害性因子または活性化分子を意味する。調節因子(例えば、遺伝子、レセプター、リガンド、または細胞の調節因子)は、遺伝子、レセプター、リガンド、または細胞の活性を変化させる分子であり、ここでは、活性が活性化させられる場合も、阻害される場合も、また、その調節特性が変化させられる場合もある。調節因子は単独で作用する場合があり、また、補因子、例えば、タンパク質、金属イオン、または低分子を使用する場合もある。阻害因子は、活性を低下させる、活性化をブロックする、妨げる、遅らせる、不活化する、脱感作する、またはダウンレギュレートする化合物であり、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、レセプター、または細胞である。活性化因子は、活性を増大させる、活性化する、促進する、活性を増強する、感作する、またはアップレギュレートする化合物であり、例えば、遺伝子、タンパク質、リガンド、レセプター、または細胞である。阻害因子はまた、構成的活性を低下させる、ブロックする、または不活化させる組成物としても定義することができる。「アゴニスト」は、標的の活性の増大を生じるかまたは促進するために標的と相互作用する化合物である。「アンタゴニスト」は、アゴニストの作用と反対に作用する化合物である。アンタゴニストは、アゴニストの活性を妨げる、低下させる、阻害する、または中和する。アンタゴニストはまた、(同定されていないアゴニストである場合にもなお、)標的(例えば、標的レセプター)の構成的活性を妨げる、阻害する、または低下させることもできる。
【0028】
阻害の程度を試験するために、例えば、所定の、例えば、タンパク質、遺伝子、細胞、または生物体を含むサンプルまたはアッセイが、可能性のある活性化因子または阻害因子で処置され、そして阻害因子を含まないコントロールサンプルと比較される。コントロールサンプル(すなわち、アンタゴニストで処理されていないサンプル)が、100%の相対的活性値とされる。コントロールと比較した活性値が約90%またはそれ未満、通常は85%またはそれ未満、より通常は80%またはそれ未満、最も通常は75%またはそれ未満、一般的には70%またはそれ未満、より一般的には65%またはそれ未満、最も一般的には60%またはそれ未満、通常は55%またはそれ未満、通常は50%またはそれ未満、より通常は45%またはそれ未満、最も通常は40%またはそれ未満、好ましくは35%またはそれ未満、より好ましくは30%またはそれ未満、なおより好ましくは25%またはそれ未満、そして最も好ましくは25%未満である場合に、阻害が達成される。コントロールと比較した活性値が約110%、一般的には少なくとも120%、より一般的には少なくとも140%、より一般的には少なくとも160%、多くの場合には少なくとも180%、より多くの場合には少なくとも2倍、最も多くの場合には少なくとも2.5倍、通常は少なくとも5倍、より通常は少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも40倍、そして最も好ましくは40倍よりも高い場合に、活性化が達成される。
【0029】
活性化または阻害の終点は、以下のようにモニターすることができる。例えば、細胞、生理学的流体、組織、器官、および動物またはヒトである被験体の活性化、阻害、および処置に対する応答は、終点によってモニターすることができる。終点には、例えば、炎症、発癌性、または細胞の脱顆粒もしくは分泌(例えば、サイトカイン、毒性酸素、またはプロテアーゼの放出)の症状の、予め決定された量または割合が含まれる。終点には、例えば、予め決定された量のイオン流出または輸送;細胞の移動;細胞の接着;細胞増殖;転移の可能性;細胞分裂;および表現形の変化(例えば、炎症、アポトーシス、形質転換、細胞周期、または転移に関係している遺伝子の発現の変化)が含まれ得る(例えば、Knight(2000)Ann.Clin.Lab.Sci.30:145−158;HoodおよびCheresh(2002)Nature Rev.Cancer 2:91−100;Timme,et al.,(2003)Curr.Drug Targets 4:251−261;RobbinsおよびItzkowitz(2002)Med.Clin.North Am.86:1467−1495;GradyおよびMarkowitz(2002)Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.3:101−128;Bauer,et al.,(2001)Glia 36:235−243;StanimirovicおよびSatoh(2000)Brain Pathol.10:113−126を参照のこと)。
【0030】
阻害の終点は、一般的には、コントロールの75%またはそれ未満、好ましくはコントロールの50%またはそれ未満、より好ましくは対象の25%またはそれ未満、そして最も好ましくはコントロールの10%またはそれ未満である。一般的には、活性化の終点は、少なくともコントロールの150%、好ましくは、少なくともコントロールの2倍、より好ましくは少なくともコントロールの4倍、そして最も好ましくは少なくともコントロールの10倍である。
【0031】
「発現」は、特異的遺伝子によってコードされるmRNAまたはポリペプチドの測定値を意味する。発現の単位は、例えば、細胞、組織、細胞抽出物、または組織抽出物による発現の測定においては、mRNAまたはポリペプチドの分子の数/1mgのタンパク質、mRNAまたはポリペプチドの分子の数/細胞の測定値であり得る。発現の単位は相対的である場合もあり、例えば、コントロール哺乳動物と実験哺乳動物によるシグナルの比較、またはmRNAまたはポリペプチドに特異的な試薬を用いた場合のシグナルの、非特異的な試薬を用いた場合のシグナルとの比較である。
【0032】
特異的または選択的である「ハイブリダイゼーション」は、通常、少なくとも約30ヌクレオチドのストレッチにわたって少なくとも約55%の相同性が存在している場合、好ましくは、約25ヌクレオチドの範囲にわたって少なくとも約75%、そして最も好ましくは、約20ヌクレオチドにわたって少なくとも約90%の相同性が存在している場合に生じる(例えば、Kanehisa(1984)Nucleic Acids Res.12:203−213を参照のこと)。ストリンジェントな条件下での(例えば、第2の核酸に対する第1の核酸の)ハイブリダイゼーションは、(1)洗浄に低いイオン強度と高温を使用する(例えば、0.015Mの塩化ナトリウム/0.0015Mのクエン酸ナトリウム/0.1%のドデシル硫酸ナトリウム、50℃);(2)ハイブリダイゼーションの間にホルムアミドのような変性剤を使用する(例えば、0.1%のウシ血清アルブミン/0.1%のFicoll(登録商標)(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)/0.1%のポリビニルピロリドン/750mMの塩化ナトリウム、75mMのクエン酸ナトリウムを含む50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5)を含む、50%(vol/vol)のホルムアミド、42℃);(3)50%のホルムアミド、5×SSC(0.75MのNaCl、0.075Mのクエン酸ナトリウム)、50mMのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%のピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト溶液、超音波処理したサケの精子DNA(50ng/ml)、0.1%のSDS、および10%のデキストラン硫酸、42℃を使用し、0.2×SSCおよび0.1%のSDS中で、42℃で洗浄する;または、(4)10%のデキストラン硫酸、2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)、および50%のホルムアミドの緩衝液を55℃で使用し、その後、EDTAを含む0.1×SSC、55℃からなる高ストリンジェンシーでの洗浄を行う、ハイブリダイゼーションである(Botstein,et al.,に対して発行された米国特許第6,387,657)。
【0033】
核酸のハイブリダイゼーションのためのストリンジェントな条件は、塩、温度、有機溶媒、およびカオトロピック剤の関数である。ストリンジェントな温度条件には、通常、約30℃を上回る温度が、より通常は約37℃を上回る温度が、典型的には約45℃を上回る温度が、より典型的には約50℃を上回る温度が、好ましくは約65℃を上回る温度が、そしてより好ましくは約70℃を上回る温度が含まれる。ストリンジェントな塩条件は、通常、約1M未満であり、より通常は約500mM未満であり、通常は約400mM未満であり、より通常は約300mM未満であり、典型的には約200mM未満であり、好ましくは約100mM未満であり、そしてより好ましくは約80mM未満であり、さらには約20mM未満である。しかし、複数のパラメーターの組み合わせが、任意の1つのパラメーターの測定値よりも重要である(WetmurおよびDavidson(1968)J.Mol.Biol.31:349−370)
「免疫状態」または「免疫疾患」には、例えば、病理学的炎症、炎症性疾患、および自己免疫疾患または自己免疫性の疾病が含まれる。「免疫状態」はまた、感染、持続性の感染、および増殖性の状態、例えば、癌、腫瘍、および血管形成をも意味し、これには、免疫系による根絶に抵抗性である、感染、腫瘍、および癌が含まれる。「癌性の状態」には、例えば、癌、癌細胞、腫瘍、血管形成、および形成異常のような前癌状態が含まれる。
【0034】
「炎症性疾患」は、病理学的結果が、その全体または一部が、免疫系の細胞の、例えば、数の変化、移動速度の変化、または活性化の変化による、疾患または病理学的状態を意味する。免疫系の細胞には、例えば、T細胞、B細胞、単球、またはマクロファージ、抗原提示細胞(APC)、樹状細胞、小グリア細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、肥満細胞、または免疫学に特異的に関係している任意の他の細胞(例えば、サイトカインを産生する内皮細胞または上皮細胞)が含まれる。
【0035】
「炎症性疾患」は、病理学的結果が、その全体または一部が、免疫系の細胞(例えば、T細胞、B細胞、単球、またはマクロファージ、肺胞マクロファージ、樹状細胞、NK細胞、NKT細胞、好中球、好酸球、または肥満細胞)の数の増加または活性の増加による、疾患または病理学的状態を意味する。
【0036】
「ノックアウト」(KO)は、遺伝子によってコードされるポリペプチド(例えば、IL−27のp28またはEBI3サブユニット)の少なくとも一部の発現が部分的にまたは完全に減少していることを意味する。ここでは、遺伝子は哺乳動物の1つの細胞、選択された細胞、または全ての細胞に対して内因性である。KOにはまた、生物学的機能が低下しているが、発現は必ずしも減少していない実施形態、例えば、不活性であるペプチド、オリゴペプチド、またはポリペプチドが挿入されている発現させられたp28ポリペプチドを含むp28KOポリペプチドもまた含まれる。コード配列または調節配列の破壊は、ノックアウト技術に含められる。細胞または哺乳動物は、内因性遺伝子の一方の対立遺伝子が破壊されている「ヘテロ接合型ノックアウト」である場合もある。あるいは、細胞または哺乳動物は、内因性遺伝子の両方の対立遺伝子が破壊されている「ホモ接合型ノックアウト」である場合もある。「ホモ接合型ノックアウト」は、両方の対立遺伝子の破壊が同一技術に、またはゲノムに対する同一の結果に限定されるようには意図されない。p28対立遺伝子の一方または両方がノックアウトされている哺乳動物は、本発明の範囲に含まれる。
【0037】
「リガンド」は、例えば、低分子、ペプチド、ポリペプチド、および膜会合分子もしくは膜結合分子、またはそれらの複合体を意味し、これは、レセプターのアゴニストまたはアンタゴニストとしての役割を担うことができる。「リガンド」にはまた、アゴニストまたはアンタゴニストではないが、その生物学的特性(例えば、シグナル伝達または接着)の有意な影響を与えることなくレセプターに結合することができる因子も含まれる。さらに、「リガンド」には、例えば、化学的方法または組み換え方法によって、膜結合リガンドの可溶性バージョンとなるように変化させられている膜結合リガンドが含まれる。慣例によれば、リガンドが第1の細胞上で膜に結合している場合には、レセプターは通常第2の細胞上に存在する。第2の細胞は、第1の細胞と同じである場合も、また異なるものである場合もある。リガンドまたはレセプターは完全に細胞内にある場合もあり、すなわち、細胞質、核、またはいくつかの他の細胞内区画の中に存在する場合がある。リガンドまたはレセプターは、例えば、細胞内区画から原形質膜の外表面に、その位置を変化させることができる場合がある。リガンドとレセプターとの複合体は、「リガンドレセプター複合体」と呼ばれる。リガンドとレセプターがシグナル伝達経路に関係している場合には、リガンドはシグナル伝達経路の上流に存在し、レセプターはシグナル伝達経路の下流に存在する。
【0038】
「第1のポリペプチド鎖」および「第2のポリペプチド鎖」は、従来のペプチド結合により互いに連結されていない2つのポリペプチド鎖を意味する。通常は、第1のポリペプチド鎖には、N末端とC末端が含まれている、第2のポリペプチド鎖には別のN末端と別のC末端が含まれている。すなわち、全部で2つのN末端と2つのC末端がある。第1のポリペプチド鎖は、第1のベクターによってコードされ得、一方、第2のポリペプチド鎖は第2のベクターによってコードされ得る。第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖は、1つのベクターによってコードされる場合もある。この場合、第1のプロモーターを第1のポリペプチド鎖に作動可能であるように連結させることができ、第2のプロモーターを第2のポリペプチド鎖に作動可能であるように連結させることができる。また、別の実施形態においては、第1のポリペプチド鎖と第2のポリペプチド鎖の両方の発現を、同じプロモーターに作動可能であるように連結させることもできる。
【0039】
「感度」、例えば、リガンドに対するレセプターの感度は、レセプターへのリガンドの結合によって、レセプターにおいて検出することができる変化が、またはレセプターと特異的に会合する事象もしくは分子において検出することができる変化、例えば、立体構造の変化、リン酸化状態の変化、レセプターと会合したタンパク質の性質または量の変化、あるいは、レセプターによって媒介されるかまたはレセプターと会合している遺伝子発現の変化が生じることを意味する。
【0040】
「低分子」は、生理機能、腫瘍性の疾患、および癌の処置のために提供される。「低分子」は、10kD未満、通常は2kD未満、好ましくは1kD未満の分子量を有している分子として定義される。低分子としては、無機分子、有機分子、無機成分を含む有機分子、放射性元素を含む分子、合成分子、ペプチド模倣物、および抗体模倣物が挙げられるが、これらに限定されない。治療薬としての低分子は、細胞に対する浸透性がより高く分解されにくく、そして大きい分子よりも免疫応答を誘発する傾向が小さい場合がある。低分子、例えば、抗体およびサイトカインのペプチド模倣物、さらには、低分子毒素が記載されている(例えば、Casset,et al.,(2003)Biochem.Biophys.Res.Commun.307:198−205;Muyldermans(2001)J.Biotechnol.74:277−302;Li(2000)Nat.Biotechnol.18:1251−1256;Apostolopoulos,et al.,(2002)Curr.Med.Chem.9:411−420;Monfardini,et al.,(2002)Curr.Pharm.Des.8:2185−2199;Domingues,et al.,(1999)Nat.Struct.Biol.6:652−656;SatoおよびSone(2003)Biochem.J.371:603−608;Stewart,et al.に対して発行された米国特許第6,326,482号を参照のこと)。
【0041】
「可溶性レセプター」は、水溶性であり、例えば、細胞外流体、細胞内流体の中に存在しているか、または膜と弱く会合しているレセプターを意味する。可溶性レセプターは、さらに、水溶性となるように操作されたレセプターを意味する。
【0042】
「結合の特異性」、「結合の選択性」などは、予め決定されたリガンドと他のリガンドとの間を、または、予め決定されたレセプターと他のレセプターとの間を区別することができる、予め決定されたリガンドと予め決定されたレセプターとの間の結合相互作用を意味する。「特異的な」または「選択的な」結合は、リガンド/レセプター、抗体/抗原、または他の結合対について言及する場合には、異種タンパク質および他の生物製剤の集団の中にそのタンパク質が存在することを決定するものである結合反応を示す。したがって、設計された条件下では、特定のリガンドは特定のレセプターに結合し、そしてサンプル中に存在している他のタンパク質に対しては有意な量では結合しない。抗体、または抗体の抗原結合部位に由来する結合組成物は、任意の他の抗原に対する親和性よりも、少なくとも2倍大きい、好ましくは少なくとも10倍大きい、より好ましくは少なくとも20倍大きい、そして最も好ましくは少なくとも100倍大きい親和性でその抗原に結合する。好ましい実施形態においては、抗体は、約10リットル/モルより大きい親和性を有する(例えば、Munsen,et al.,(1980)Analyt.Biochem.107:220−239を参照のこと)。
【0043】
(II.概要)
本発明により、多数の免疫状態および免疫疾患(例えば、乾癬、慢性関節リウマチ、クローン病(CD))、ならびに特定の癌の調節または処置のための方法が提供される。p28、EBI3、IL−27、またはWSX−1/TCCRの異常な発現を特徴とする疾患の処置および診断のための方法が提供される。
【0044】
IL−27、IL−27レセプター、およびそのサブユニットの生理機能および免疫学はまとめられている。簡単に説明すると、IL−27、またはその一方のサブユニットは、インターフェロン−γ(IFNγ)応答、T細胞の分化、エプスタイン・バーウイルスによって誘導される疾患、妊娠、および潰瘍性大腸炎(クローン病ではない)において役割を担っていることが明らかにされている。
【0045】
詳細には、IL−27は、TNFαによって刺激されたDCが関係しているT細胞の分化の経路に影響を及ぼす。ここでは、TNFαによって刺激されたDCはナイーブT細胞と接触して、ナイーブT細胞のIFNγを産生するT細胞への分化を促進する。IL−27がTNFαによって刺激されたDCのナイーブT細胞への接触の間に存在していれば、これによってT細胞によるIFNγの産生が増強させられる。したがって、IL−27は、ナイーブTH1型T細胞のDC依存性の分化に関与している。IL−27はまた、インターフェロン−β(IFNβ)の作用においても役割を担っている。未熟な樹状細胞(DC)および成熟DCによるEBI3の発現は、多数のサイトカインによって刺激される。これらのサイトカインとしては、インターフェロン−β(IFNβ)、およびCD40Lの組み合わせが続くIFNβ処置、およびIFNγが挙げられる(例えば、Nagai,et al.,(2003)J.Immunol.171:5233−5243;van Seventer,et al.,(2002)J.Neuroimmunol.133:60−71を参照のこと)。
【0046】
EBI3は、エプスタイン・バーウイルスによって誘導される疾患において役割を担っているようである。EBI3は、B細胞がエプスタイン・バーウイルスに感染すると発現され、感染により伝染性単核症が生じる。ホジキンリンパ腫によって誘導された細胞株によって、およびいくつかの鼻咽腔癌において発現されたEBI3は、エプスタイン・バーウイルスに関係している腫瘍(すなわち、特定のホジキンリンパ腫および鼻咽腔癌)に対する免疫応答を阻害するために、腫瘍またはウイルスによって使用されると提案されている。簡単に説明すると、EBI3が免疫抑制機能またはTH2促進機能を有していることが提案されている(例えば、Devergne,et al.,(1996)J.Virol.70:1143−1153;Niedobitek,et al.,(2002)J.Pathol.198:310−316を参照のこと)。
【0047】
IL−27は、妊娠について特異的な役割を有している。IL−27は、妊娠の開始後子宮内で発現され、ここでは、このサイトカインの発現は子宮NK細胞内で生じる。IL−27の1つのサブユニットであるEBI3は、胎盤によって、すなわち、分化したトロホブラスト細胞による発現が増加し、妊娠の間に血清中で増大した量で見られる(例えば、Croy,et al.,(2003)Reproduction 126:149−160;Zhang,et al.,(2003)Biol.Reproduction 69:404−411;Devergne,et al.,(2001)Am.J.Pathol.159:1763−1776を参照のこと)。
【0048】
EBI3ノックアウトマウス(EBI3KOマウス;EBI3−/−マウス)は、(例えば、免疫系の)生理機能に対する結果を決定するために調製された。EBI3KOマウスは、不変のNKT細胞(iNKT細胞)およびCD4T細胞において変化を示した。EBI3KOは、減少した数のiNKT細胞を産生した。EBI3KOを用いると、脾臓に由来するCD4T細胞は、細胞が活性化されると、さらなるIFNγの産生を示したが、IL−4は細胞が活性化されると減少した。これらの作用は、EBI3KOがTH1型応答を促進すること、そしてEBI3がTH2型応答に関係していることを示している。EBI3KOは、iNKT細胞の数を減少させ、また、1つの細胞を基準とする、IL−4を産生するiNKT細胞の能力を低下させた。EBI3KOマウスはまた、TH2型免疫応答によって媒介される大腸炎のモデルであるオキサゾロンによって誘導される大腸炎についての研究によって示されるように、大腸炎に対して耐性ともなったが、EBI3KOマウスはTH1型大腸炎のモデルに対しては耐性ではなかった。同様に、TH2型大腸炎におけるEBI3の役割を示す別の研究においては、EBI3は、TH2型応答が優性な疾患である活性な潰瘍性大腸炎において発現が増強されていたが、TH1型応答が優性であり得る活性なクローン病においてはそうではなかった(Christ,et al.,(1998)Gastroentrol.115:307−313;Niedobitek,et al.,(2002)J.Pathol.198:310−316)。
【0049】
WSX−1/TCCRは、CD4T細胞、CD8T細胞、およびCD19B細胞中で発現される(例えば、Sprecher,et al.,(1998)Biochem.Biophys.Res.Commun.246:82−90を参照のこと)。
【0050】
本発明により、gp130がIL−27レセプターのサブユニットとして同定される。gp130は、サイトカインのIL−6ファミリーのレセプターサブユニットを共有しているレセプターサブユニットである。したがって、gp130は、IL−6、白血病阻害因子(LIF)、IL−11、オンコスタチンM、毛様体神経栄養因子(CNTF)、カルジオトロフィン−1(CT−1)、カルジオトロフィン様サイトカイン(CLC)、およびウイルスのIL−6ホモログのレセプターの1つのサブユニットである。gp130の可溶性バージョンが同定されている(例えば、Hammacher,et al.,(1998)J.Biol.Chem.273:22701−22707;Hammacher,et al.,(2000)Biochem.J.345:25−32;Sanchez−Cuenca,et al.,(1999)Immunol.Today 20:57−59;GadientおよびPatterson(1999)Stem Cells 17:127−137;Peters,et al.,(1996)J.Exp.Med.183:1399−1406;Muller−Newen(2003)Science STKE 2003,pe40を参照のこと)。
【0051】
本発明により、クローン病の処置および診断のための方法が提供される。クローン病は、消化管の任意の領域(例えば、小腸または結腸)に影響を及ぼし得る慢性の炎症性疾患である。クローン病には瘻孔が含まれるが、胃の別の炎症性疾患、潰瘍性大腸炎には、浅い潰瘍性の病変が含まれる。クローン病の病理学には、炎症性サイトカイン、例えば、IL−1、IL−6、および腫瘍壊死因子(TNF)が含まれる。クローン病には、IFN、IL−2、およびIL−12の初期での増加と、TNFαおよびIL−18の後期での増加を伴うTH1型応答が一般的に関係している点において、クローン病は潰瘍性大腸炎と区別される。
【0052】
クローン病と対比されると、潰瘍性大腸炎においては、IL−5、IL−6、IL−10、およびIL−13の発現が増加しており、ここでは、サイトカインのパターンは、TH2型応答のバリエーションと似ている。クローン病および潰瘍性大腸炎はさらに、クローン病においては、粘膜の病変内のT細胞はアポトーシスに対して耐性であり、一方、潰瘍性大腸炎においては、粘膜の病変内のT細胞はFasによって媒介されるアポトーシスに対してより敏感である点でさらに識別される。NOD2遺伝子内の変異は、ヒトのクローン病に関係しており、一方、「白血球抗原領域遺伝子」とMUC3遺伝子は、ヒトの潰瘍性大腸炎に関係している。TH1型の炎症性腸疾患とTH2型の炎症性腸疾患の機構の差は、TH1型のマウスモデルとTH2型のマウスモデルの両方ともを利用することができるという事実によって強調される。例えば、CD45RBhighCD4T細胞を投与したマウスは、ヒトのクローン病に似ているTH1細胞によって媒介される疾患を発症する。炎症性腸疾患のTH2によって駆動されるモデルは、TCRαノックアウトマウスを用いることができる(例えば、ArdizzoneおよびPorro(2002)J.Int.Med.252:475−496;Madsen(2002)Gastroentrol.123:2140−2144;BoumaおよびSTrober(2003)Nat.Rev.Immunol.3.521−533;Stallmach,et al.,(1998)Immunol.Today 19:438−441;Yamamoto,et al.,(2000)J.Immunol.164:4878−4882;Targan,et al.,(1997)New Engl.J.Med.337:1029−1035;Simpson,et al.,(1998)J.Exp.Med.187:1225−1234;Beutler(2001)Immunity 15:5−14を参照のこと)。
【0053】
本発明により、乾癬、および皮膚の他の炎症性疾患(例えば、接触過敏症)の処置および診断のための方法が提供される。世界中の人口の約2%が罹患している一般的な疾患である乾癬には、皮膚の落屑、および膿疱性の病変が含まれる。米国の乾癬患者のうち、約100万人には、紫外線療法または免疫抑制療法が必要である。乾癬患者の約10%はまた、乾癬性関節炎、衰弱状態をも発症する。乾癬には、角質細胞の過剰な増殖、および皮膚への白血球の浸潤が含まれる。乾癬の炎症は、例えば、T細胞、単球、およびマクロファージ、好中球、肥満細胞、および抗原提示細胞(APC)(例えば、樹状細胞およびランゲルハンス細胞)によって媒介される(例えば、Yu,et al.,(2002)Dermatol.204:94−99;Jiang,et al.,(2001)Int.J.Dermatol.40:699−703を参照のこと)。
【0054】
ケラチン形成細胞の過剰な増殖は、一部、IL−2、IFNγ、TNFβ、IL−5、および他のサイトカインの不適切な発現が原因で生じる。例えば、細菌のリポ多糖(LPS;糖脂質)が関与している、生得的応答は、乾癬の病因の一部に関係があるとされている(例えば、BosおよびDe Rie(1999)Immunology Today 20:40−46;Ellis,et al.,(2001)New Engl.J.Med.345:248−255;BhaleraoおよびBowcock(1998)Human Mol.Genetics 7:1537−1545;van de Kerkhof(2000)Clin.Exp.Dermatol.25:165;Tanaka,et al.,(2000)Brit.J.Dermatol.143:728−732;Nickoloff(1999)J.Clin.Invest.104:1161−1164;Curry,et al.,(2003)Arch.Pathol.Lab.Med.127:178−186;Travers,et al.,(1999)J.Clin.Invest.104:1181−1189;GreavesおよびWeinstein(1995)New Engl.J.Med.332:581−588;RobertおよびKupper(1999)New Engl.J.Med.341:1817−1828;BosおよびDe Rie(1999)Immunol.Today 20:40−46),Shimizu,et al.,(2002)Histochem,Cell Biol.118:251−257,Gottleib,et al.,(1995)Nature Med.1:442−447,Abrams,et al.,(2000)J.Exp.Med.192:681−693;Yu,et al.,(2002)Dermatology.204:94−99を参照のこと)。乾癬性関節炎、アトピー性皮膚炎、および喘息は、乾癬に関係している(McInnes,et al.,(2001)J.Immunol.176:4075−4082;Welp,et al.,(1989)Hautarzt 40:496−500)。
【0055】
本発明により、アテローム性動脈硬化症、および循環器疾患の他の局面の処置および診断のための方法が提供される。免疫細胞(例えば、肥満細胞、樹状細胞、好中球、単球、およびマクロファージ)は、アテローム性動脈硬化症の病因に関係している。腫瘍壊死因子、インターロイキン−1、および他のサイトカインは、例えば、アテローム性動脈硬化症、循環器疾患、および脳卒中の病因と関係している(例えば、Huang,et al.,(2002)Cardiovasc.Res.55:150−160;Kelley,et al.,(2000)Mol.Med.Today 6:304−308;Aicher,et al.,(2003)Circulation 107:604−611;Ozmen,et al.,(2002)Histol.Histopathol.17:223−237;Wanders,et al.,(1994)Transpl.Int.7(Suppl.1:S371−S375;Hallenbeck(2002)Nature Med.8:1363−1368;Young,et al.,(2002)Thromb.Haemost.88:554−567;Loppnow,et al.,(2001)Shock 1:3−9を参照のこと)。
【0056】
さらに、本発明により、関節炎(例えば、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節リウマチ、変形性関節症、および強直性脊椎関節炎)の処置および診断方法が提供される。慢性関節リウマチ(RA)は関節の慢性の破壊性疾患であり、炎症と滑膜の過形成が特徴である。この疾患は治癒が不可能であり、身体障害が生じる。CD4T細胞は関節に浸潤し、IL−1、IL−6、およびTNFαの産生を刺激する。産生されたサイトカインは、線維芽細胞、破骨細胞、および軟骨細胞がプロテイナーゼを放出するように刺激する。プロテイナーゼは、その後、関節の軟骨を分解する。肥満細胞は、RAの病因に関係している重要な免疫細胞である。肥満細胞は腫瘍壊死因子−α(TNFα)を産生し、これにより、IL−1およびIL−6の発現を促進する炎症のカスケードが開始される。肥満細胞はまた、軟骨基質を分解するプロテアーゼの活性化も行う。関節炎のマウスモデルを利用することができ、例えば、コラーゲンによって誘導される関節炎(CIA)、TNFを過剰発現するマウス、およびIL−1αを過剰発現するマウスである(ChoyおよびPanayi(2001)New Engl.J.Med.344:907−916;Woolley(2003)New Engl.J.Med.348:1709−1711;Niki,et al.,(2001)J.Clin.Invest.107:1127−1135;FeldmannおよびMaini(2001)Annu.Rev.Immunol.19:163−196)。
【0057】
本発明により、喘息およびアレルギーの処置および診断のための方法が提供される。蠕虫(例えば、アスペルギルス属(Aspergillus)またはニッポストロンギルス属(Nippostrongylus)への感染は、ヒトにおいては、喘息およびアレルギーと関係がある。さらに、アスペルギルス属(Aspergillus)またはニッポストロンギルス属(Nippostrongylus)への感染、あるいは、蠕虫抗原での処置は、喘息およびアレルギーのモデル研究において使用されている。蠕虫のアレルギー誘発物質に対する免疫応答は、複数の段階(例えば、初期または後期)で生じ得る(例えば、Hurst,et al.,(2001)J.Immunol.166:4922−4930;Hurst,et al.,(2002)J.Immunol.169:443−453;Mehrad,et al.,(1999)J.Immunol.162:1633−1640;SoubaniおよびChandrasekar(2002)Chest 121:1988−1999;Schuh,et al.,(2002)FASEB J.16:1313−1315;Greenberger(2003)Front Biosci.8:s119−s127;Gibson,et al.,(2003)Eur.Respir.J.21:582−588;Black,et al.,(2001)J.Appl.Physiol.90:571−578;Palmer,et al.,(2002)Am.J.Respir.Crit.Care Med.165:1489−1493;Zou,et al.,(2002)Genome Biol.3:20.1−20.13;Abraham,et al.,(1999)Am.J.Respir.Crit.Care Med.159:1205−1214;Jones,et al.,(1998)Can.J.Physiol.Pharmacol.76:210−217;Wright,et al.,(1999)J.Pharmacol.Exp.Therapeutics 289:1007−1014;D’Brot,et al.,(1989)Am.Rev.Respir.Dis.139:915−920を参照のこと)。
【0058】
本発明には、気道過敏性を伴う疾患を含む肺疾患を、例えば、IL−27のアンタゴニストでの処置によって、処置および診断する方法も含まれる。気道過敏性(airway hyperreactivity)は、気道応答症(airway hyperresponsivenesss)としても知られており、これは、種々の気道の疾患(例えば、喘息、アレルギー性鼻炎、気管支炎、細気管支炎、およびおそらくは、慢性閉塞性肺疾患(COPD))の特徴である、刺激に応答した不適切な気道の狭窄と関係している。過敏性は、例えば、気道の感染、発作、および呼吸アレルギー誘発物質によって引き起こされ得る。致命的となり得る慢性疾患である喘息は、米国においてはおよそ子供7人に1人が罹患しており、小児救急の15%を上回る割合を占めている。状態としては、息切れ、および粘液過分泌が挙げられる(例えば、Crain,et al.,(1995)Arch.Pediatr.Adolesc.Med.149:893−901;Grunig,et al.,(1998)Science 282:2261−2263;Crystal,et al.(eds.)(1997)The Lung,Vols.1−2,2nded.、Lippincott−Raven,Phila,PA;Holgate,et al.,(2001)Allergy,2nded.,Mosby,New York;Marone(1998)Immunol.Today 19:5−9;BarnesおよびLemanske(2001)New Engl.J.Med.344:350−362を参照のこと)。
【0059】
気道過敏性は、気道内のT細胞、好酸球、肥満細胞、好中球、および抗原提示細胞(APC)による浸潤を特徴とする。肺のAPCとしては、DC、B細胞、肺胞のマクロファージが挙げられ、これらのそれぞれがサイトカインを発現することができ、気道過敏性に関係している(例えば、Lawrence,et al.,(1998)J.Pharm.Exp.Thera.284:222−227;Alexis,et al.,(2001)Am.J.Physiol.Lung Cell Mol.Physiol.280:L369−L375;Akabari,et al.,(2002)Nature Medicine 8:1024−1032;MacLean,et al.,(1999)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.20:379−387;Hamelmann,et al.,(1999)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.21:480−489;Gonzales,et al.,(2000)Annals Internal Medicine 133:981−991;Li,et al.,(2002)Pulmonary Pharmacol.Therapeutics 15:409−416;Zimmermann,et al.,(2003)J.Allergy Clin.Immunol.111:227−242;Riffo−VasquezおよびSpina(2002)Pharmacol.Therapeutics 94:185−211を参照のこと)。
【0060】
COPDは、マクロファージ、好中球、およびT細胞(例えば、CD8T細胞)の気管支への浸潤に関係している疾患である。COPDは、北米においては第4位の死亡原因であり、気道の平滑筋の肥厚と、気道の炎症を特徴とする。この応答は、単球、マクロファージ、CD4T細胞、CD8T細胞、および好中球の肺への浸潤が原因であるようである。COPDにおいて上昇している肺胞のマクロファージはサイトカインを発現し、これはその後、炎症を促進し、免疫細胞の活性化を増大させる。COPDには、慢性気管支炎および肺気腫が含まれる。肺気腫は、終末細気管支に対して末梢側の空間にある柔組織の恒久的な崩壊を特徴とする(例えば、Hautamaki,et al.,(1997)Science 277:2002−2004;Barnes(2000)Chest 117:10S−14S;Barnes(2003)Annu.Rev.Med.54:113−129;Jeffery(1998)Thorax 53:129−136;Barnes(2000)New Engl.J.Med.343:269−280を参照のこと)。癌の処置および診断方法が本発明に含まれる。IL−27は、マウスにおいて腫瘍を処置することが示されていることを指摘しておく(Hisada,et al.,(2004)Cancer Res.64:1152−1156)。本発明により、TNFα、IL−1α、ならびに、OX40、腫瘍に対する適切な免疫応答に関係しているサイトカイン、および腫瘍の退縮に関係しているサイトカインの産生を増加させるためにIL−27を使用する方法が提供される。本発明により、TNFα、IL−1α、IL−1β、およびOX40のようなサイトカインが関係している抗腫瘍免疫応答の産生を刺激するためにIL−27を使用することによる、癌を処置するための方法が提供される。腫瘍は、多くの場合、CD4T細胞およびCD8T細胞によって浸潤される。T細胞による腫瘍のより多くの浸潤には、多くの場合(例えば、黒色腫および結腸直腸癌の場合)、患者にとってより良好な予後が伴う。腫瘍に対する免疫応答に関する問題点は、T細胞が不完全に活性化される可能性があり、アネルギー状態となる可能性があり、また、不活化される可能性があることである(Dalerba,et al.,(2003)Crit.Revs.Oncology Hematology 46:33−57;Ladanyi,et al.,(2004)Clin.Cancer Res.10:521−530;Toomey,et al.,(1999)Immunol.Invest.28:29−41)。
【0061】
IL−1α、IL−1β、およびTNFαには抗腫瘍作用があり、これにより、腫瘍に対する免疫応答の増強が生じる。IL−1αは、多数の腫瘍のタイプによって発現されることが明らかにされている。例えば、TNFαの抗腫瘍作用は、腫瘍に対する直接的な細胞傷害性によってもたらされるが、これはまた、マクロファージ、CD8T細胞、および好中球の活性化によってももたらされる。対照的に、特定の条件下では、IL−1とTNFαはプロ腫瘍作用(pro−tumor effect)を有し得る。IL−1は、腫瘍の増殖と侵襲性を促進する因子の分泌を誘導することができる。IL−1の産生は、自己分泌の活性化、侵襲性の増大を生じることができる。TNFα、IL−1α、およびIL−1βは、特定の腫瘍(例えば、卵巣腫瘍)の増殖を刺激することができる(例えば、Chen,et al.,(1998)Cancer Res.58:3668−3676;Woods,et al.,(1998)Cancer Res.58:3132−3141;ApteおよびVoronov(2002)Sem.Cancer Biol.12:277−290;Woodward,et al.,(2002)Invest.Ophtalmol.Vis.Sci.43:3144−3152;Smith,et al.,(1990)Cancer Res.50:3146−3153;Wu,et al.,(1993)Cancer Res.53:1939−1944;Noorda,et al.,(2003)Cancer 98:1483−1490;Bazzoni,et al.,(2001)Cancer Res.61:1050−1057;Kamada,et al.,(2000)Cancer Res.60:6416−6420;Kaneda,et al.,(1998)Cancer Res,58:290−295;Gnant,et al.,(1999)Cancer Res.59:4668−4674;Suganuma,et al.,(1999)Cancer Res.59:4516−4518を参照のこと)。
【0062】
OX40はリガンドであり、一方、OX40Rは対応するレセプターである。OX40/OX40Rによって媒介されるシグナル伝達は、抗腫瘍応答の一部を担っている。OX40およびOX40Rは、腫瘍に浸潤するT細胞中でアップレギュレートされるが、末梢血T細胞中ではアップレギュレートされない。OX40リガンドを投与することによるOX40/OX40Rシグナル伝達の誘発は、種々の腫瘍の拒絶を生じ得る。ヒトの乳癌および黒色腫はOX40を発現するT細胞を含むことが明らかにされており、このことは、OX40/OX40Rの抗腫瘍応答における関与を再び意味している(例えば、Morris,et al.,(2001)Breast Cancer Res.Treat.67:71−80;Hurwitz,et al.,(2000)Curr.Opin.Immunol.12:589−596;Ladany,et al.,(2004)Clin.Cancer Res.10:521−530を参照のこと)。
【0063】
癌に関しては、癌、腫瘍、転移、および血管形成の処置のために免疫応答を調節する種々の方法を利用することができる。これらの方法には、IL−2、IL−12、腫瘍壊死因子α(TNFα)、IFNγ、顆粒球マクロファージ−コロニー刺激因子(GM−CSF)、および形質転換成長因子(TGF)のような、サイトカインまたは抗サイトカイン抗体での処置が含まれる。癌細胞がその自身の増殖、またはその自身の生存性を増強するサイトカインを産生することができる場合は、抗サイトカイン抗体が適切な治療薬であり得る(例えば、Ramirez−Montagut,et al.,(2003)Oncogene 22:3180−3187;Braun,et al.,(2000)J.Immunol.164:4025−4031;Shaw,et al.,(1998)J.Immunol.161:2817−2824;CoussensおよびWerb(2002)Nature 420:860−867;Baxevanis,et al.,(2000)J.Immunol.164:3902−3912;Shimizu,et al.,(1999)J.Immunol.163:5211−5218;BelardelliおよびFerrantini(2000)TRENDS Immunol.23:201−208;Seki,et al.,(2002)J.Immunol.168:3484−3492;Casares,et al.,(2003)J.Immunol.171:5931−5939;Oft,et al.,(2002)Nature Cell Biol.4:487−494を参照のこと)。
【0064】
(III.アゴニスト、アンタゴニスト、および結合組成物)
本発明により、IL−27のアゴニストおよびアンタゴニストを使用する方法が提供される。IL−27のアゴニストとしては、例えば、IL−27、IL−27改変体、突然変異タンパク質、ハイパーカイン、またはそれらのペプチド模倣物、WSX−1/TCCRまたはgp130に対するアゴニスト抗体、ならびにこれらのアゴニストをコードする核酸が挙げられる。IL−27のアンタゴニストとしては、例えば、IL−27に対する抗体、p28またはEBI3に対する抗体、WSX−1/TCCRまたはgp130に対するブロック抗体、WSX−1/TCCRまたはgp130のサブユニットの細胞外領域に基づく可溶性レセプター、それらのペプチド模倣物、ならびにこれらのアンタゴニストをコードする核酸が挙げられる。抗イディオタイプ抗体が使用される場合もある。
【0065】
本発明により、p28のアゴニストおよびアンタゴニスト、p28とEBI3との複合体のアゴニストおよびアンタゴニスト、WSX−1/TCCRのアゴニストおよびアンタゴニスト、gp130のアゴニストおよびアンタゴニスト、ならびに、WSX−1/TCCRとgp130との複合体のアゴニストおよびアンタゴニストを使用する方法が提供される。
【0066】
IL−27ハイパーカインには、例えば、p28とEBI3とのポリペプチド配列を含む融合タンパク質が含まれる。この場合、p28とEBI3とは、1つの連続しているポリペプチド鎖として存在する。p28とEBI3の配列は、連続しているポリペプチド鎖において、いずれの順序で存在している場合もある。融合タンパク質には、1つの連続しているポリペプチド鎖の中に、p28とEBI3の配列の間に存在しているリンカー配列が含まれる場合もある。
【0067】
抗体を作成するために使用することができる、抗原性が増大している領域は、Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD)を使用するParkerプロットを用いて容易に見つけることができる。
【0068】
p28、EBI3、WSX−1/TCCR、およびgp130に対する抗体を利用することができる(例えば、Pflanz,et al.,(2004)J.Immunol.172:2225−2231;Larousserie,et al.,(2004)J.Pathol.202:164−171;Devergne,et al.,(2001)Am.J.Pathol.159:1763−1776;Autissier,et al.,(1998)Int.Immunol.10:1881−1889を参照のこと)。p28とEBI3との複合体に特異的に結合する抗体、およびWSX−1/TCCRとgp130との複合体に特異的に結合する抗体もまた、想定される。
【0069】
WSX−1/TCCRとgp130細胞外ドメインに対応する可溶性レセプターも提供される。成熟ヒトWSX−1/TCCRの細胞外ドメインには、GenBank BC028003またはNM_004843のアミノ酸配列のアミノ酸33から514が含まれている。この細胞外ドメインには、一般的なサイトカイン結合ドメインと、また3個のフィブロネクチン(FN)ドメインも含まれている。本発明により、サイトカイン結合ドメインドメインを含み、FNドメインを含まない、FNドメインを1つ含む、FNドメインを2つ含む、またはFNドメインを3つ含む可溶性レセプターが想定される(Sprecher,et al.,前出)。可溶性gp130を利用することができる(例えば、Hui,et al.,(2000)Cytokine 12:151−155を参照のこと)。
【0070】
これらの細胞外領域をベースとするレセプターは、これらの抽出物のN末端およびC末端のアミノ酸には限定されず。リガンド結合特性が実質的に維持される限りにおいて、例えば、1アミノ酸、2アミノ酸、またはさらに多いアミノ酸分、長い場合も、または短い場合もある。例えば、精製を容易にするかまたは安定性を促進するため、あるいは、機能的ドメイン(例えば、毒性ポリペプチド)を提供するための、可溶性レセプターをベースとする融合タンパク質もまた想定される。
【0071】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびヒト化抗体を調製することができる(例えば、SpheperdおよびDean(eds.)(2000)Monoclonal Antibodies,Oxford Univ.Press,New York,NY;KontermannおよびDubel(eds.)(2001)Antibody Engineering,Springer−Verlag,New York;HarlowおよびLane(1988)Antibody A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.pp.139−243;Carpenter,et al.,(2000)J.Immunol.165:6205;He,et al.,(1998)J.Immunol.160:1029;Tang,et al.,(1999)J.Biol.Chem.274:27371−27378;Baca,et al.,(1997)J.Biol.Chem.272:10678−10684;Chothia,et al.,(1989)Nature 342:877−883;FooteおよびWinter(1992)J.Mol.Biol.,224:487−499;Vasquez,et al.,に対して発行された米国特許第6,329,511号を参照のこと)。抗体および可溶性レセプターの突然変異タンパク質および改変体(例えば、脱アミド化Asn残基を除去または置き換えるためのペグ化または突然変異誘発)が想定される。
【0072】
抗原の精製には、抗体の作成は必ずしも必要ではない。免疫化は、DNAベクターでの免疫化によって行うことができる。例えば、Wang,et al.,(1997)Virology 228:278−284を参照のこと。あるいは、動物を、目的の抗原を有している細胞で免疫化することができる。その後、脾細胞を免疫化されたマウスから単離することができ、脾細胞を、ハイブリドーマを生じるように骨髄腫細胞株と融合させることができる(Meyaard,et al.,(1997)Immunity 7:283−290;Wright,et al.,(2000)Immunity 13:233−242;Preston,et al.,(1997)Eur.J.Immunol.27:1911−1918)。得られるハイブリドーマを、機能的アッセイまたは生物学的アッセイにより、所望される抗体の産生についてスクリーニングすることができる。すなわち、アッセイは、精製された抗原の所持には依存しない。細胞での免疫化は、精製された抗原での免疫化よりも抗体の作成に優れている場合があることが証明されている(Kaithamana,et al.,(1999)J.Immunol.163:5157−5164)。
【0073】
抗体は、通常は、少なくとも約10−3MのKで、より通常は少なくとも10−6MのKで、一般的には少なくとも10−7MのKで、より一般的には少なくとも10−8MのKで、好ましくは少なくとも約10−9MのKで、そしてより好ましくは少なくとも10−10MのKで、そして最も好ましくは少なくとも10−11MのKで結合する(例えば、Presta,et al.,(2001)Thromb.Haemost.85:379−389;Yang,et al.,(2001)Crit.Rev.Oncol.Hematol.38:17−23;Carnahan,et al.,(2003)Clin.Cancer Res.(Suppl.)9:3982s−3990sを参照のこと)。
【0074】
WSX−1/TCCRまたはgp130レセプターポリペプチドの細胞外ドメインを含む可溶性レセプターが提供される。可溶性レセプターを調製することができ、これは、標準的な方法にしたがって使用することができる(例えば、Jones,et al.,(2002)Biochim.Biophys.Acta 1592:251−263;Prudhomme,et al.,(2001)Expert Opinion Biol.Ther.1:359−373;Fernandez−Botran(1999)Crit.Rev.Clin.Lab Sci.36:165−224を参照のこと)。siRNA干渉のための組成物もまた提供される(例えば、ArenzおよびSchepers(2003)Naturwissenschaften 90:345−359;SazaniおよびKole(2003)J.Clin.Invest.112:481−486;Pirollo,et al.,(2003)Pharmacol.Therapeutics 99:55−77;Wang,et al.,(2003)Antisense Nucl.Acid Drug Devel.13:169−189を参照のこと)。
【0075】
(IV.治療用組成物、方法)
本発明により、乾癬、クローン病、慢性関節リウマチ、および癌を処置および診断するための方法が提供される。
【0076】
IL−27のアゴニストまたはアンタゴニストを含む薬学的組成物または滅菌組成物を調製するためには、試薬が、薬学的に許容される担体または賦形剤と混合される。治療薬および診断薬の処方物は、生理学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤を、例えば、凍結乾燥させられた粉末、スラリー、水溶液、ローション、または懸濁液の形態で混合することによって調製することができる(例えば、Hardman,et al.,(2001)GoodmanおよびGilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw−Hill,New York,NY;Gennaro(2000)Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avis,et al.,(eds.)(1993)Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.,(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.,(eds.)(1990)Pharmaceutical Dosage Forms;Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;WeinerおよびKotkoskie(2000)Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照のこと)。
【0077】
治療のための投与レジメンの選択は、その物質の血清または組織代謝回転速度、状態のレベル、その物質の免疫原性、および生物学的マトリックス中での標的細胞の可触性を含むいくつかの要因に応じて変化する。好ましくは、投与レジメンは、容認することができる副作用レベルと調和して、患者に投与される治療量を最大にする。したがって、投与される生物製剤の量は、特定の物質、および処置される状態の重篤度に一部依存して変化する。抗体、サイトカイン、および低分子の適切な用量を選択する指針を利用することができる(例えば、Wawrzynczak(1996)Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(ed.)(1991)Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(ed.)(1993)Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baert,et al.,(2003)New Engl.J.Med.348:601−608;Milgrom,et al.,(1999)New Engl.J.Med.341:1966−1973;Slamon,et al.,(2001)New Engl.J.Med.344:783−792;Beniaminovitz,et al.,(2000)New Engl.J.Med.342:613−619;Ghosh,et al.,(2003)New Engl.J.Med.348:24−32;Lipsky,et al.,(2000)New Engl.J.Med.343:1594−1602を参照のこと)。
【0078】
抗体、抗体フラグメント、およびサイトカインは、持続注入によって、または、例えば、1日、1週間、もしくは1週間に1〜7回の間隔での投与によって投与することができる。用量は、静脈内、皮下、局所、経口、鼻孔、直腸、筋肉内、大脳内に投与される場合も、または吸入によって投与される場合もある。好ましい投与プロトコールは、有意な望ましくない副作用を回避する最大用量または用量頻度を含むプロトコールである。1週間の合計用量は、一般的には、少なくとも0.05μg/kg体重であり、より一般的には、少なくとも0.2μg/kgであり、最も一般的には、少なくとも0.5μg/kgであり、通常は、少なくとも1μg/kgであり、より通常は、少なくとも10μg/kgであり、最も通常は、少なくとも100μg/kgであり、好ましくは、少なくとも0.2mg/kgであり、より好ましくは、少なくとも1.0mg/kgであり、最も好ましくは、少なくとも2.0mg/kgであり、最適には、少なくとも10mg/kg体重であり、より最適には、少なくとも25mg/kgであり、そして最も最適には、少なくとも50mg/kg体重である(例えば、Yang,et al.,(2003)New Engl.J.Med.349:427−434;Herold,et al.,(2002)New Engl.J.Med.346:1692−1698;Liu,et al.,(1999)J.Neurol.Neurosurg.Psych.67:451−456;Portielji,et al.,(20003)Cancer Immunol.Immunother.52:133−144を参照のこと)。低分子治療薬(例えば、ペプチド模倣物、自然界に存在している産物、または有機化合物)の所望される用量は、モル/kg体重を基準として、抗体またはポリペプチドについての用量とほぼ同じである。低分子治療薬について所望される血漿濃度は、モル/kg体重を基準として、抗体についての濃度とほぼ同じである。
【0079】
特定の患者についての有効量は、処置される状態、患者の全体的な健康状態、投与方法、経路、および用量、ならびに副作用の重篤度のような要因に応じて変化する場合がある(例えば、Maynard,et al.,(1996)A Handbook of SOPs for Good Clinical Practice,Interpharm Press,Boca Raton,FL;Dent(2001)Good Laboratory and Good Clinical Practice,Urch Publ.,London,UKを参照のこと)。
【0080】
典型的な獣医学的被験体、実験用被験体、または研究用被験体としては、サル、イヌ、ネコ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ウマ、およびヒトが挙げられる。
【0081】
適切な用量の決定は、例えば、処置に影響を及ぼすか、または処置に影響を及ぼすと予想されることが当該分野で知られているかまたは予想されるか、あるいは、その可能性があるパラメーターまたは要因を使用して、医師によって行われる。一般的には、用量は、最適用量よりもいくらか少ない量を用いて開始され、任意のネガティブな副作用と比較して、所望される作用または最適な作用が得られるまで、その後小さい増分ずつ増加される。重要な診断的測定値としては、(例えば、炎症の)状態の測定値、または、産生される炎症性サイトカインのレベルが挙げられる。使用される生物製剤は、処置の標的とされる動物と同じ種に由来することが好ましく、それによって、試薬に対する体液性の応答が最小となる。
【0082】
第2の治療薬(例えば、サイトカイン、ステロイド、化学療法薬、抗生物質、または放射線)との同時投与、または第2の治療薬での処置のための方法は当該分野で周知である(例えば、Hardman,et al.,(eds.)(2001)Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,10thed.,McGraw−Hill,New York,NY;PooleおよびPeterson(eds.)(2001)Pharmacotherapeutics for Advanced Practice:A Practical Approach,Lippincott,Williams & Wilkins,Phila.,PA;ChabnerおよびLongo(eds.)(2001)Cancer Chemotherapy and Biotherapy,Lippincott,Williams & Wilkins,Phila.,PAを参照のこと)。有効量の治療薬により、典型的には、少なくとも10%;通常は、少なくとも20%;好ましくは、少なくとも約30%;より好ましくは、少なくとも40%;そして最も好ましくは、少なくとも50%、状態が減少する。
【0083】
投与経路は、例えば、局所塗布または皮膚塗布、静脈内、腹腔内、大脳内、筋肉内、眼内、動脈内、脳脊髄内、病変内、もしくは肺経路による注射または注入;あるいは、徐放システムまたは移植物による(例えば、Sidman,et al.,(1983)Biopolymers 22:547−556;Langer,et al.,(1981)J.Biomed.Mater.Res.15:167−277;Langer(1982)Chem.Tech.12:98−105;Epstein,et al.,(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,82:3688−3692;Hwang,et al.,(1980)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4030−4034;米国特許第6,350,466号および同第6,316,024号を参照のこと)。
【0084】
本発明により、増殖性の状態または増殖性疾患(例えば、子宮癌、子宮頸癌、乳癌、前立腺癌、精巣癌、陰茎癌、消化管の癌(例えば、食道癌、中咽頭癌、胃癌、小腸癌または大腸癌、結腸癌、または直腸癌)、腎臓癌、腎細胞癌、膀胱癌、骨肉腫、骨髄腫、皮膚癌、頭頸部癌、皮膚癌、肝臓癌、胆嚢癌、心臓癌、肺癌、膵臓癌、唾液腺癌、副腎癌、甲状腺癌、脳の癌、神経節の癌、中枢神経系(CNS)の癌および末梢神経系(PNS)の癌、ならびに免疫系(例えば、脾臓または胸腺)の癌)を処置または診断する方法が提供される。本発明により、例えば、免疫原性腫瘍、非免疫原性腫瘍、表面に現れていない腫瘍、ウイルスによって誘導される癌(例えば、上皮細胞癌、内皮細胞癌、扁平上皮癌、パイローマウイルス、腺癌、リンパ腫、癌腫、黒色腫、白血病、骨髄腫、肉腫、奇形癌、化学物質によって誘導される癌、転移、および血管形成を処置する方法が提供される。本発明により、また、例えば、制御性T細胞(Treg)の活性を調節することによる、腫瘍細胞または癌細胞抗原に対する耐性を減少させることも想定される(例えば、Ramirez−Montagut,et al.,(2003)Oncogene 22:3180−3187;Sawaya,et al.,(2003)New Engl.J.Med.349:1501−1509;Farrar,et al.,(1999)J.Immunol.162:2842−2849;Le,et al.,(2000)J.Immunol.167:6765−6772;CannistraおよびNiloff(1996)New Engl.J.Med.334:1030−1038;Osborne(1998)New Engl.J.Med.339:1609−1618;LynchおよびChapelle(2003)New Engl.J.Med.348:919−932;EnzingerおよびMayer(2003)New Engl.J.Med.349:2241−2252;Forastiere,et al.,(2001)New Engl.J.Med.345:1890−1900;Izbicki,et al.,(1997)New Engl.J.Med.337:1188−1194;Holland,et al.,(eds.)(1996)Cancer Medicine Encyclopedia of Cancer,4thed.,Academic Press,San Diego,CAを参照のこと)。
【0085】
本発明により、増殖性の状態、癌、または前癌状態(例えば、過形成)を、少なくとも1つの別の治療薬または診断薬とともにIL−27のアゴニストまたはアンタゴニストで、処置するための方法が提供される。1つ以上の別の治療薬または診断薬は、例えば、サイトカインまたはサイトカインアンタゴニスト(例えば、インターフェロン−α、または抗表皮成長因子レセプター、ドキソルビシン、エピルビシン、および抗葉酸(例えば、メトトレキセートまたはフルオロウラシル)、イリノテカン、シクロホスファミド、放射線治療、ホルモン療法もしくは抗ホルモン療法(例えば、アンドロゲン、エストロゲン、抗エストロゲン、フルタミド、もしくはジエチルスチルベストロール)、外科手術、タモキシフェン、イフォスファミド、ミトラクトール、アルキル化剤(例えば、メルファランもしくはシスプラチン)、エトポシド、ヴィノレルビン、ビンブラスチン、ビンデシン、グルココルチコイド、ヒスタミンレセプターアンタゴニスト、血管形成阻害因子、放射線、放射線増感剤、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、タキサン(例えば、パクリタキセルおよびドセタキセル)、細胞周期阻害因子(例えば、サイクリン依存性キナーゼ阻害因子)、モノクローナル抗体、モノクローナル抗体と毒素との複合体、T細胞アジュバント、骨髄移植、あるいは抗原提示細胞(例えば、樹状細胞療法))から選択することができる。ワクチンは、例えば、可溶性タンパク質として、またはタンパク質をコードする核酸として提供することができる(例えば、Le,et al.,(2001)J.Immunol.167:6765−6772;GrecoおよびZellefsky(eds.)(2000)Radiotherapy of Prostate Cancer,Harwood Academic,Amsterdam;ShapiroおよびRecht(2001)New Engl.J.Med.344:1997−2008;Hortobagyi(1998)New Engl.J.Med.339:974−984;Catalona(1994)New Engl.J.Med.331:996−1004;NaylorおよびHadden(2003)Int.Immunopharmacol.3:1205−1215;The Int.Adjuvant Lung Cancer Trial Collaborative Group(2004)New Engl.J.Med.350:351−360;Slamon,et al.,(2001)New Engl.J.Med.344:783−792;Kudelka,et al.,(1998)New Engl.J.Med.338:991−992;van Netten,et al.,(1996)New Engl.J.Med.334:920−921を参照のこと)。
【0086】
(V.キットおよび診断薬)
炎症性疾患(例えば、乾癬、クローン病、関節リウマチ、喘息、またはアレルギー)、アテローム性動脈硬化症、および癌についての、抗体、核酸のハイブリダイゼーション、およびPCR法に基づく診断方法を利用することができる。
【0087】
本発明により、IL−27のポリペプチド、そのフラグメント、IL−27の核酸、ならびにそれらのフラグメントが、例えば、A型インフルエンザを含むウイルス性疾患、ならびに、呼吸器および粘膜組織のウイルス性疾患の診断のための、診断キットにおいて提供される。IL−27、ならびにその代謝産物および崩壊産物の検出のための、抗体または抗体フラグメントを含む結合組成物もまた提供される。通常は、キットには、IL−27ポリペプチド、またはその抗原性フラグメント、それに対する結合組成物、または核酸(例えば、核酸プローブ、プライマー、または分子ビーコン)のいずれかを含む容器が含まれる(例えば、Rajendran,et al.,(2003)Nucleic Acids Res.31:5700−5713;Cockerill(2003)Arch.Pathol.Lab.Med.127:1112−1120;Zammatteo,et al.,(2002)Biotech.Annu.Rev.8:85−101;Klein(2002)Trends Mol.Med.8:257−260を参照のこと)。
【0088】
診断方法には、被験体(例えば、試験被験体)に由来するサンプルを、IL−27またはIL−27レセプターのポリペプチドまたは核酸に特異的に結合する結合組成物と接触させることが含まれ得る。この方法にはさらに、コントロール被験体、正常な被験体、または試験被験体に由来する正常な組織もしくは正常な流体に由来するサンプルを、結合組成物と接触させることが含まれ得る。さらに、この方法には、加えて、試験被験体に対する組成物の特異的結合を、正常な被験体、コントロール被験体、または試験被験体に由来する正常な組織もしくは流体に対する組成物の特異的結合と比較することが含まれ得る。試験サンプルまたは試験被験体の発現または活性は、コントロールサンプルまたはコントロール被験体に由来する発現または活性と比較することができる。コントロールサンプルには、例えば、免疫疾患に罹患している患者の、罹患していない組織または非炎症組織のサンプルが含まれ得る。コントロール被験体またはコントロールサンプルによる発現または活性は、例えば、コントロール被験体の統計学的に適切なグループから獲得した、予め決定された値として提供することができる。
【0089】
キットには、例えば、試薬と容器が含まれるか、試薬と使用説明書が含まれるか、または容器に入れられた試薬と使用説明書が含まれる場合もある。試薬としては、IL−27のアゴニストもしくはアンタゴニスト、またはその抗原性フラグメント、結合組成物、あるいは、センスおよび/またはアンチセンス方向の核酸を挙げることができる。(例えば、生物学的サンプルから獲得したか、または化学的なライブラリーから獲得した)試験化合物の結合を決定するためのキットには、コントロール化合物、標識された化合物、および結合させられた標識化合物から遊離している標識化合物を分離するための方法が含まれ得る。コントロール化合物には、IL−27またはIL−27レセプターのポリペプチドのセグメント、あるいは、IL−27またはIL−27レセプターレセプターをコードする核酸のセグメントが含まれ得る。セグメントには、0個、1個、2個、またはそれ以上の抗原性フラグメントが含まれ得る。
【0090】
「標識」を、立体的、光化学物質、生化学的、免疫化学的、同位元素、または化学的方法によって、直接または間接的のいずれかによって検出することができる組成物が提供される。例えば、有用な標識としては、32P、33P、35S、14C、H、125I、安定な同位元素、蛍光色素、電子密度の高い物質、基質、エピトープタグ、または酵素(例えば、酵素結合免疫アッセイにおいて使用される場合)、あるいは、蛍光物質(fluorettes)が挙げられる(RozinovおよびNolan(1998)Chem.Biol.5:713−728)。
【0091】
診断アッセイは、生存している細胞、細胞抽出物、細胞溶解物、固定された細胞、細胞培養物、体液、または法医学的サンプルのような、生体マトリックスとともに使用することができる。診断またはキットの目的に有用である結合させられた抗体としては、色素、同位元素、酵素、および金属に結合させられた抗体が挙げられる。例えば、Le Doussal,et al.,(1991)New Engl.J.Med.146:169−175;Gibellini,et al.,(1998)J.Immunol.160:3891−3898;HsingおよびBishop(1999)New Engl.J.Med.162:2804−2811;Everts,et al.,(2002)New Engl.J.Med.168:833−889を参照のこと。放射免疫測定(RIA)、ELISA、およびチップ上での実験のような、様々なアッセイ形式が存在している(米国特許第6,176,962号および同第6,517,234号)。
【0092】
遺伝子の発現データは、疾患および病理学的状態の診断および処置において有用なツールである(例えば、LiおよびWong(2001)Genome Informatics 12:3−13;Lockhart,et al.,(1996)Nature Biotechnol.14:1675−1680;Homey,et al.,(2000)J.Immunol.164:3465−3470;Debets,et al.,(2000)J.Immunol.165:4950−4956を参照のこと)。
【0093】
(VI.用途)
本発明により、皮膚の疾患、消化器疾患、関節の疾患、および血管系の疾患、たとえば、乾癬、クローン病、関節リウマチ、喘息、アレルギー、COPD,気道過敏性、およびアテローム性動脈硬化症を含む、免疫疾患および炎症性疾患を診断、予防、および処置するために、IL−27およびIL−27レセプターのアゴニストおよびアンタゴニストを使用する方法が提供される。本発明にはまた、癌(例えば、乳癌および黒色腫)の間の、不適切なまたは不適当な免疫応答を処置するか、または増強させる方法も含まれる。例えば、乾癬、クローン病、関節リウマチ、喘息、アレルギー、アテローム性動脈硬化症、および癌の間の、細胞に対する免疫応答または細胞の応答を調節するための方法が提供され、これは、IL−27のアゴニスト、またはIL−27のアンタゴニストを投与することによる。この場合、投与は、例えば、細胞、生物学的流体、組織、器官、動物被験体、またはヒト被験体に対して行われる。
【0094】
炎症性疾患(例えば、乾癬、クローン病、および関節リウマチ)をスコアするための多数の生体マーカーおよび方法を利用することができる(例えば、Bresnihan(2003)Arthritis Res.Ther.5:271−278;BarneroおよびDelmas(2003)Curr.Opin.Rheumatol.15:641−646;Gionchetti,et al.,(2003)Dig.Dis.21:157−167;Wiik(2002)Autoimmune Rev.1:67−72;Sostegni,et al.,(2003)Aliment Pharmacol.Ther.17(Suppl.2):11−17を参照のこと)。
【0095】
癌をスコアするための生体マーカーおよび方法もまた記載されている(例えば、Alison(ed.)(2001)The Cancer Handbook,Grove’s Dictionaries,Inc.,St。Louis,MO;Oldman(ed.)(1998)Principles of Cancer Biothrapy,3rded.,Kluwer Academic Publ.,Hingham,MA;Thompson,et al.,(eds.)(2001)Textbook of Melanoma,Martin Dunitz,Ltd.,London,UK;Devita,et al.,(eds.)(2001)Cancer:Principles and Practice of Oncology,6thed.,Lippincott,Phila,PA;Holland,et al.,(eds.)(2000)Holland−Frei Cancer Medicine,BC Decker,Phila.,PA;GarrettおよびSell(eds.)(1995)Cellular Cancer Markers,Humana Press,Totowa,NJ;MacKie(1996)Skin Cancer,2nded.,Mobsy,St.Louis;Moertel(1994)New Engl.J.Med.330:1136−1142;Engleman(2003)Semin.Oncol.30(3Suppl.8):23−29;Mohr,et al.,(2003)Onkologie 26:227−233を参照のこと)。
【0096】
本発明の広い範囲は、以下の実施例を参照して最良の理解が得られる。以下の実施例は、本発明を特異的な実施形態に限定するようには意図されない。
【実施例】
【0097】
(I.一般的方法)
生化学および分子生物学における標準的な方法が記載されている(例えば、Maniatis,et al.,(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;SambrookおよびRussell(2001)Molecular Cloning,3rded.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CAを参照のこと)。標準的な方法は、また、Ausbel,et al.,(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1−4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NYにおいても明らかである。これには、細菌細胞中でのクローニングおよびDNAの突然変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母でのクローニング(Vol.2)、糖結合体およびタンパク質の発現(Vol.3)、ならびに、バイオインフォマティックス(Vol.4)が記載されている。
【0098】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離、および結晶化を含むタンパク質の精製のための方法が記載されている(Coligan,et al.,(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の産生、タンパク質のグリコシル化が記載されている(例えば、Coligan,et al.,(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausbel,et al.,(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.NY,NY,pp.16.0.5−16.22.17;Sigma−Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45−89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384−391を参照のこと)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の産生、精製、およびフラグメント化のための方法が記載されている(Coligan,et al.,(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;HarlowおよびLane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;HarlowおよびLane(前出)を参照のこと)。リガンド/レセプター相互作用を特性決定するための標準的な技術を利用することができる(例えば、Coligan,et al.,(2001)Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照のこと)。
【0099】
蛍光活性化細胞選別装置(FACS)を含む、フローサイトメトリーについての方法を利用することができる(例えば、Owens,et al.,(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan(2001)Flow Cytometry,2nded.;Wiley−Liss,Hoboken,NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照のこと)。核酸プライマーおよびプローブを含む核酸、ポリペプチド、ならびに抗体を、例えば、診断薬として使用するための修飾に適している蛍光試薬を利用することができる(例えば、Molecular Probes(2003)Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR;Sigma−Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,MOを参照のこと)。
【0100】
免疫系の組織学についての標準的な方法が記載されている(例えば、Muller−Harmelink(ed.)(1986)Human Thymus;Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,NY;Hiatt,et al.,(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louis,et al.,(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw−Hill,New York,NYを参照のこと)。
【0101】
動物モデル(例えば、ノックアウトマウス)、および細胞をベースとするアッセイを、診断薬、治療薬、および調合薬の試験、評価、およびスクリーニングのために使用する方法を利用することができる(例えば、CarおよびEng(2001)Vet.Pathol.38:20−30;Kenyon,et al.,(2003)Toxicol.Appl.Pharmacol.186:90−100;Deurloo,et al.,(2001)Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.25:751−760;Zuberi,et al.,(2000)J.Immunol.164:2667−2673;Temelkovski,et al.,(1998)Thorax 53:849−856;Horrocks,et al.,(2003)Curr.Opin.Drug.Discov.Devel.6:570−575;Johnston,et al.,(2002)Drug Discov.Today 7:353−363を参照のこと)。
【0102】
例えば、抗原性フラグメント、リーダー配列、タンパク質の折り畳み、機能的ドメイン、グリコシル化部位、および配列アライメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースを利用することができる(例えば、GenBank,Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menne,et al.,(2000)Bioinformatics 16:741−742;Menne,et al.,(2000)Bioinformatics Appilcations Note 16:741−742;Wren,et al.,(2002)Comput.Methods Programs.Biomed.68:177−181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17−21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683−4690を参照のこと)。
【0103】
(II.IL−27およびIL−27レセプターのサブユニットの発現)
IL−27のサブユニット(すなわち、p28サブユニットおよびEBI3サブユニット)の発現およびIL−27レセプターのサブユニット(すなわち、WSX−1/TCCRサブユニットおよびgp130サブユニット)の発現は、Taqman(登録商標)リアルタイムPCR分析によって決定した(表1)。結果により、p28、EBI3、およびWSX−1/TCCRの発現の増大と乾癬との関係;EBI3、WSX−1/TCCR、およびgp130の発現の増大とクローン病との関係;ならびに、EBI3とWSX/TCCRの発現の増大と関節リウマチとの関係が明らかになった。発現の増大と、乳癌、黒色腫、結腸癌、およびアテローム性動脈硬化症との関係もまた示された(表1)。
【0104】
【表1−1】

【0105】
【表1−2】

【0106】
【表1−3】

臍帯血から得たヒトの初代肥満細胞の、IL−27での処理により、多数の遺伝子の発現が刺激された(表2)。IL−27は、乾癬、関節炎、クローン病、喘息、アレルギー、および気道過敏性のような免疫疾患に関係している多数の遺伝子の発現を誘発した(表2)。
【0107】
【表2】

本発明により、乾癬および他の皮膚疾患(例えば、接触過敏症およびアトピー性皮膚炎)を処置するための方法が提供される。乾癬は、例えば、TNFα、IL−1β、およびTEASRL(リガンド)、TEASR(レセプター)の発現の増加に関係している(表3)。抗TNFα抗体療法は、乾癬の処置に使用されている(例えば、Girolomoni,et al.,(2002)Curr.Opin.Investig.Drugs.3:1590−1595;ZabranieckiおよびFournie(2001)Joint Bone Spine 68:106−108;VictorおよびGottlieb(2002)J.Drugs Dermatol.1:264−275;Reich,et al.,(2002)J Invest Dermatol.118:155−163を参照のこと)。
【0108】
TEASRL(a.k.a.GITRL)は、TEASRLおよびTEASRが関係しているシグナル伝達経路のリガンドであり、一方、TEASR(a.k.a.GITR)はレセプターである。TEASRはまた、例えば、グルココルチコイドによって誘導される腫瘍壊死因子レセプター(GITR)およびTNFRSF18としても知られている。TEASRは、腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリーのメンバーである。TEASRのアゴニストは、CD4T細胞およびCD8T細胞の増殖を、CD4T細胞またはCD8T細胞の直接の刺激によるか、あるいは、制御性T細胞(Treg)によって媒介される抑制を破ることによってのいずれかで生じることができる。Tregは、CD4CD25制御性T細胞であり得る(例えば、Shimizu,et al.,(2002)Nature Immunol.3:135−142;McHugh,et al.,(2002)Immunity 16:311−323を参照のこと)。
【0109】
IL−27の、TEASRLの発現を刺激する能力(表2)と、TEASRLおよびTEASRの発現の増大と乾癬との関係(表3)を考慮すると、本発明により、乾癬の処置のためのIL−27アンタゴニストが提供される。
【0110】
【表3】

本発明により、関節炎および乾癬性関節炎を処置するための方法が提供される。IL−27での処置により高いレベルで発現されるTNFα、RANKL、およびIL−1α(表2)は、破骨細胞の産生を刺激し、これは、骨を消化し、そして分解する細胞である。RANKLは、核因子κBリガンドのレセプター活性化因子である。RANKLの発現は、乾癬性関節炎であるヒト患者の関節部で増大している。IL−1αおよびIL−1βはいずれも、関節炎の病因において役割を担っている。本発明により、関節炎(例えば、慢性関節リウマチ、変形性関節症、および乾癬性関節炎)の、IL−27のアンタゴニストを投与することによる処置のための方法が提供される。この場合、アンタゴニストは、TNFαおよびRANKLの発現を低下させると予想される(表2)(例えば、Reimold(2002)Curr.Drug Targets Inflamm.Allergy 1:377−392;Girolomoni,et al.,(2002)Curr.Opin.Investig.Drugs 3:1590−1595;Ritchlin,et al.,(2003)J.Clin.Invest.111:821−831;Nakashima,et al.,(2003)Curr.Opin.Rheumatol.15:280−287;Williams,et al.,(2000)J.Immunol.165:7240−7245;Arend(2001)Semin.Arthritis Rheum.30(5Suppl.2)1−6;Arend(2002)Cytokine Growth Factor Revs.13:323−340を参照のこと)。
【0111】
本発明により、例えば、OX40および/またはTNFαの産生を阻害するためにIL−27のアンタゴニストを使用することによる、クローン病を処置するための方法が提供される(表2)。OX40に対する抗体は、クローン病の動物モデルを改善するが、一方、OX40とOX40リガンド(OX40L)との両方の発現の増加が、クローン病患者の腸において見られた(例えば、Totsuka,et al.,(2003)Am.J.Physiol,Gastrointest.Liver Physiol.284:G595−G603;Souza,et al.,(1999)Gut 45:856−863;Stuber,et al.,(2000)European J.Clin.Invest.30:594−599を参照のこと)。TNFαはクローン病に寄与している。なぜなら、抗TNFα抗体がこの疾患を処置するために使用されているためである(例えば、Reimold(2002)Curr.Drug Targets Inflamm.Allergy 1:377−392を参照のこと)。
【0112】
本発明により、喘息、アレルギー、および他の肺の状態を処置する方法が提供される。TFNα、IL−1α、IL−1β、およびOX40は、喘息、アレルギー、気道過敏性、およびCOPDの病因に関係していると考えられている。例えば、OX40L欠損マウスまたは抗OX40L抗体で処置したマウスは、モデルアレルギー誘発物質に対して病理学的応答に抵抗する。IL−1欠損マウスもまた、気道過敏性の応答を誘導する作用に抵抗する。TNFαは、気管支過敏性およびCOPDの患者において増加している(例えば、Nakae,et al.,(2003)Int.Immunol.15:483−490;Halasz,et al.,(2002)Respir.Med.96:262−267;Chung(2001)Eur.Respir.J.Suppl.34:50s−59s;Hoshino,et al.,(2003)Eur.J.Immuol.333:861−869を参照のこと)。
【0113】
本発明により、IL−27のアゴニストまたはアンタゴニストを投与することによる、癌を処置するための方法が提供される。IL−27での処置は、サイトカイン、または抗腫瘍応答に関係している他のシグナル伝達分子(例えば、TNFα、IL−1α、IL−1β、およびOX40)の発現を刺激することが明らかにされている。p28、EBI3、またはWSX−1/TCCRを高いレベルで発現する腫瘍サンプルは、腫瘍に対する適切な免疫応答にIL−27によって媒介されるシグナル伝達が含まれていることを示しており、天然に存在する抗腫瘍応答をIL−27のアゴニストを投与することによって増強することができることを示している。p28、EBI3、またはWSX−1/TCCRを高いレベルで発現する腫瘍サンプルとしては、乳癌、黒色腫、および結腸癌が挙げられる(表1)。
【0114】
表2には、他の遺伝子が記載されている。APRIL(A PRoliferation Inducing Ligand)およびBLySは、腫瘍壊死因子(TNF)リガンドファミリーのメンバーである。リンホトキシン−αおよびβ(LTα;LTβ)は、リンパ節の発達において使用されるサイトカインである(例えば、Varfolomeev,et al.,(2004)Mol.Cellular Biol.24:997−1006;Novak,et al.,(2002)Blood 100:2973−2979;Nordelli,et al.,(2002)Leuk.Lymphoma 43:1367−1373;Shakhov,et al.,(2004)Eur.J.Immunol.34:494−503;Kather,et al.,(2003)Immunology 108:338−345を参照のこと)。
【0115】
(III.IL−27はWSX−1/TCCRおよびgp130を介するシグナル伝達を媒介する)
種々のサイトカインレセプタータンパク質を、WSX−1/TCCRと対合させた。WSX−1/TCCRとgp130との組み合わせだけが、IL−27に応答するシグナル伝達を支持した。いずれのレセプターサブユニットも、単独では、シグナル伝達を支持するには不十分であった。抗ヒトgp130抗体(抗hgp130抗体)は、ヒトNK細胞株中でのIL−27によって媒介されるシグナル伝達、およびナイーブCD4T細胞中でのIL−27によって媒介される増殖をブロックした。
【0116】
WSX−1/TCCRサブユニットについての候補のパートナーサブユニットを、マウスのプレB Ba/F3細胞中で発現させ、STAT1およびSTAT3のリン酸化について評価した。もとのBa/F3細胞株は、WSX−1/TCCRを発現する(ユビキチンと比較した発現は約100,000であった)が、比較的少量のgp130を発現する(ユビキチンと比較した発現は約3であった)。もとのBa/F3細胞およびgp130でトランスフェクトしたBa/F3細胞を、IL−3、IL−6/sIL−6Rα、またはIL−27で刺激し、STAT1のリン酸化について評価した。STAT1は、gp130でトランスフェクトされている場合にのみ、IL−27に応答してリン酸化された(表4)。STAT3の種々の刺激に対する応答は、STAT1の応答と類似していた(示さない)。したがって、IL−27によって媒介される細胞のシグナル伝達は、天然にWSX−1/TCCRを発現する細胞においてはgp130によって支持されている(表4)。
【0117】
【表4】

マウスの線維芽細胞株NIH3T3はgp130を発現し、ここでは、gp130の発現は、WSX−1/TCCRの発現よりもはるかに大きい、すなわち、定量的PCR分析によって決定した場合には、約1000倍であった(表5)。NIH3T3細胞を、flagタグをつけたマウスWSX−1/TCCR(mWSX−1/TCCR)をコードするレトロウイルスベクター、コントロールベクターでトランスフェクトしたか、または、全くトランスフェクトしなかった。WSX−1/TCCRでトランスフェクトした細胞だけが、STAT1のリン酸化によってIL−27に応答した(表5)。STAT3のリン酸化もまたモニターし、この応答は、IL−6/sIL−6Rα処理した場合のSTAT3のリン酸化が、IL−27処理した場合のSTAT3のリン酸化よりもいくらか多いことをのぞいて、STAT1の応答と同様の応答を生じた。したがって、IL−27によって媒介されるシグナル伝達は、天然にgp130を発現する細胞中では、WSX−1/TCCRによって支持されている(表5)。
【0118】
【表5】

抗ヒトgp130抗体(抗hgp130抗体)は、IL−27に対する短期応答および長期応答をブロックすることが明らかにされている。このことは、再び、IL−27がgp130を介してシグナルを伝達することを示している(表6)。短期応答は、ヒト白血病性ナチュラルキラー細胞(NKL細胞)を用いて決定した。ヒト白血病性ナチュラルキラー細胞株は、STAT1およびSTAT3のチロシンリン酸化によってIL−27に応答する細胞株である(Hibbert,et al.,(2003)J.Interferon Cytokine Res.23:513−522)。細胞を、抗hgp130抗体(抗体B−T2)とともに、または抗体を伴わずにインキュベートし、その後、IL−27で処理した(Wijdenes,et al.,(1995)Eur.J.Immunol.25:3474−3481)。NKL細胞を抗hgp130抗体またはイソ型コントロールモノクローナル抗体と共に事前にインキュベートした。抗体は、25,500および10,000ng/mlで使用した(表6)。細胞を飽和量のIL−27で刺激したか、または刺激しないまま放置した。IL−27に対する応答、および抗gp130による阻害は、IL−27によるシグナル伝達が、gp130によって媒介されており、gp130によって媒介されるシグナル伝達により、STAT1およびSTAT2のリン酸化が誘発されることを示している(表6)。
【0119】
別の短期間の研究は、IL−27が、初代ヒト単球をSTAT1およびSTAT3をリン酸化するように刺激することを明らかにした(データは示さない)が、t=2時間、6時間、および24時間の時点を含む経時的な実験は、IL−27が、t=24時間の時点でのみ、IL−1β、TNFα、およびIL−18の発現の測定可能な増加を誘発したことを明らかにした(データは示さない)。単球は、IL−27に応答してIL−27を産生し、IL−27レセプターの両方のサブユニットを発現する。このことは、単球が自己刺激のために自己分泌経路を使用することを示唆している。
【0120】
【表6】

IL−27の長期作用、およびこれらの長期作用についてのgp130に対する依存性を、ナイーブヒトT細胞の増殖アッセイによって決定した(表7)。T細胞を、アッセイで使用する前にFACSによって精製した。増殖はチミジンの取り込みによって測定した。T細胞には、示したように、IL−27(飽和レベル)、アゴニスト抗CD3抗体、アゴニスト抗CD28抗体、および中和抗IL−2抗体を投与した。細胞を、抗GP130抗体で、またはコントロール抗体で滴定した。[H]チミジンの取り込みは細胞増殖の指標である。トリチウム化したチミジンの最大の取り込みは、約21,000cpmであった。最大の半分の阻害は、約1.0ng/mlの抗gp130抗体濃度で見られ、一方、最大の阻害(7,000cpm)は約30ng/mlの抗gp130抗体で見られた(表7)。細胞に培地のみを補充した場合は、トリチウムの取り込みはゼロであり、すなわち、検出されなかった。
【0121】
【表7】

(IV.材料および方法)
組換えhIL−6/shIL−6Rα、hIL−2およびmIL−3は、R&D Systems,Inc.(Minneapolis,MN)から入手した。組換えヒトおよびマウスIL−27融合タンパク質を利用することができた(Pflanz,et al.,前出)。抗hgp130モノクローナル抗体B−T2は、Institute of Biochemistry,RWTH Aachen,Germanyから入手した。抗hWSX−1ポリクローナル抗体は、U.S.Biological,Swampscott,MAから入手した。STAT1およびSTAT3のチロシンリン酸化形態に対する抗体は、Cell Signaling,Beverly,MAから入手し、一方、全STAT1またはSTAT3を検出するための抗体は、Transduction Labs,Lexington,KY,およびSanta Cruz Biologicals,Santa Cruz,CAから入手した。マウスの骨髄前駆体Ba/F3細胞およびヒト白血病性NK細胞株(NKL)は、それぞれ、mIL−3(5ng/ml)またはhIL−2(5ng/ml)の存在下で、RPMI/10%のウシ胎児血清(FCS)中で培養した。マウスの線維芽細胞株NIH3T3は、DMEM/10%のFCS中で培養した。ナイーブヒト初代CD4T細胞は、記載されているように(Pflanz,et al.,前出)調製し、培養した。新たに単離したヒトの臍帯血は、単核の白血球になるように、Ficoll(登録商標)/Hypaque(登録商標)遠心分離によって分離させた。臍帯血単核細胞は、2%のヒト血清、100ng/mlの幹細胞因子、および50ng/mlのIL−6を補充したYseel培地(Gemini Bioproducts,Woodland,CA)中で培養した。培養物を、1週間ごとに培地を交換しながら、約7〜8週間の間維持した。8週目に、培養物に1ng/mlのIL−4および10μg/mlのヒトIgEを補充した。9〜10週目に、培養物を回収し、残っている骨髄細胞を、CD15、CD14、およびCD11b陽性細胞の磁気ビーズによる枯渇によって除去した(Miltenyi Biotec,Inc.,Auburn,CA)肥満細胞の純度(CD117、FcepsilonRI)は、FACS分析によって97%を上回っていることを確認した。初代ヒト単球は、ヒトの軟膜からPercoll(登録商標)密度勾配遠心分離によって得た。
【0122】
STATチロシンリン酸化アッセイは以下のように行った。一般的には、細胞をDMEM/2%のFCS中で12時間の間、飢えさせ、その後、遠沈させ、2.5×10細胞/mlの密度になるように再度懸濁した。細胞を飽和濃度(100ng/ml)のそれぞれのサイトカインで、37℃で15分間刺激した。その後、5分間氷上で冷却し、遠沈させ、溶解緩衝液(2mMのEDTA、0.875%のBrij 97(Sigma,St.Louis,MO)、0.125%のNP40(Sigma)、1mMのバナジウム酸ナトリウム、1mMのフッ化ナトリウム、プロテアーゼ阻害因子混合物一式(Roche Applied Science,Indianapolis,IN)および3mMのPefabloc(登録商標)(Roche Applied Science)を補充した、2×PBS)中に再懸濁した。溶解物を遠心分離し、上清をSDS−PAGEによって分析し、その後、上記に記載した抗体を使用してウェスタンブロットを行った。NKL細胞を、IL−27で刺激する前に20分間それぞれの抗体とともにインキュベートした。
【0123】
レトロウイルス感染は以下のように行った。Ba/F3およびNIH3T3細胞の、それぞれ導入されたレセプターをコードするレトロウイルス構築物での感染は、記載されているように(Kitamura(1998)Int.J.Hematol.67:351−359)行った。簡単に説明すると、WSX−1の成熟部分と、gp130のオープンリーディングフレーム全体をコードするDNAを、cDNAライブラリー(Clontech,Mountain View,CA)から、標準的なPCR技術によって増幅した。gp130アンプリコンをレトロウイルスベクターpMXにクローニングし、WSX−1アンプリコンは、pMXベクターに、CD8リーダーペプチド配列とflagタグ配列の3プライムにクローニングした。これらの構築物を用いた場合のトランスフェクション効率は、通常、80%を上回る。
【0124】
ナイーブCD4T細胞についての増殖アッセイは以下のとおりであった。FACSで選別したCD3CD45RA細胞を得、これについて、記載されているように(Pflanz,et al.,前出)飽和量のIL−27を用いた増殖実験を行った。抗体をアッセイにおいて滴定した。
【0125】
cDNAライブラリーを、Sybrグリーンプロトコール(Halfon,et al.,(1998)J.Biol.Chem.273:16400−16408;Bolin,et al.,(1997)J.Neurosci.17:5493−5502)を使用してmRNAの発現について分析した。Ba/F3またはNIH3T3細胞に由来するmRNAを、RNAeasy(登録商標)キット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して調製した。以下の順方向および逆方向PCRプライマーを使用した。ヒトgp130についてのプライマーは、GenBank E06613の塩基2174−2194(順方向)および塩基2276−2295(逆方向)である。マウスgp130についてのプライマーは、GenBank X62646の塩基1943−1965(順方向)および2065−2085(逆方向)である。マウスWSX−1/TCCRについてのプライマーは、GenBank NM_016671の塩基1054−1074(順方向)および1101−1121逆方向である。ヒトWSX−1/TCCRについてのプライマーは、GenBank BC028003の塩基1665−1684(順方向プライマー)および塩基1726−1746(逆方向プライマー)である。
【0126】
本明細書中の全ての参考文献は、それぞれの個々の刊行物、特許出願、または特許が、全ての図面および図表を含み、参考として援用されるように詳細かつ個々に示されているかのように、同程度に本明細書中に参考として援用される。
【0127】
当業者明らかであるように、日本発明の多くの変更およびバリエーションは、本発明の目的、精神、および範囲を保つように、特定の状況、材料、物質の組成物、プロセス、処理工程(単数または複数)に適合させることができる。全てのこのような変更は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に添付される特許請求の範囲に入ると意図される。本明細書中に記載された特異的な実施形態は単なる例として提供され、本発明は、添付される特許請求の範囲のよって限定され、そのような特許請求の範囲と同等の全ての範囲に権利が与えられる。そして、本発明は、例として本明細書中に示されている特異的な実施形態によっては限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫疾患または免疫状態を調節するための組成物であって、p28、EBI3、またはWSX/TCCRの有効量のアゴニストまたはアンタゴニストを含み、該疾患または該状態には:
a)皮膚の炎状態態;
b)関節炎;
c)クローン病;
d)気道過敏性もしくは気道の炎症;
e)アテローム性動脈硬化症;または
f)エプスタイン・バーウイルスによって引き起こされたものではない、癌もしくは腫瘍
が含まれる、組成物。
【請求項2】
前記アンタゴニストが、WSX−1/TCCRおよびgp130の複合体を含むヘテロ二量体レセプターに対するIL−27の結合を阻害するかまたは妨げる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記皮膚の炎症状態に:
a)乾癬;または
b)アトピー性皮膚炎
が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記関節炎に:
a)慢性関節リウマチ;
b)変形性関節症;または
c)乾癬性関節炎
が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記気道過敏性または気道の炎症疾患に:
a)喘息;
b)アレルギー;または
c)慢性閉塞性肺疾患(COPD)
が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記癌または腫瘍に:
a)乳癌;
b)結腸癌;または
c)黒色腫
が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記アゴニストが、癌または腫瘍を含む前記疾患を阻害または改善する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記癌または腫瘍が、正常なコントロール組織による発現と比較して、検出することができるほど増加した量の:
a)p28;
b)EBI3;または
c)WSX−1/TCCR
を発現する、請求項6に記載の組成物。
【請求項9】
前記アンタゴニストが:
a)皮膚の炎症状態;
b)関節炎;
c)クローン病;
d)気道過敏性もしくは気道の炎症;または
e)アテローム性動脈硬化症
を改善する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記アゴニストには:
a)IL−27;
b)IL−27ハイパーカイン;
c)p28;
d)EBI3;または
e)核酸
が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記核酸が:
a)IL−27ハイパーカイン;
b)p28;
c)EBI3;
d)第1のp28ポリペプチド鎖および第2のEBI3ポリペプチド鎖;
e)WSX−1/TCCR;または
f)WSX−1/TCCRおよびgp130
をコードする、請求項11に記載の組成物。
【請求項12】
前記アンタゴニストに:
a)IL−27;
b)p28;
c)EBI3;
d)WSX−1/TCCR;または
e)gp130およびWSX−1/TCCRの複合体
に特異的に結合する抗体に由来する結合組成物が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
抗体に由来する前記結合組成物に:
a)ポリクローナル抗体;
b)モノクローナル抗体;
c)ヒト化抗体、またはそのフラグメント;
d)Fab、FvもしくはF(ab’)フラグメント;
e)抗体のペプチド模倣物;または
f)検出可能な標識
が含まれる、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記アンタゴニストに:
a)WSX−1/TCCRに由来する可溶性レセプター;
b)低分子;または
c)核酸
が含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
前記核酸が:
a)p28;
b)EBI3;または
c)WSX−1/TCCR
をコードするポリヌクレオチドと特異的にハイブリダイズする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記核酸に:
a)アンチセンス核酸;または
b)低分子干渉RNA(siRNA)
が含まれる、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記アゴニストが:
a)RANKL;
b)TNFα;
c)TEASRL;
d)IL−1αもしくはIL−1β;
e)OX40;または
f)APRIL
の発現を増大する、請求項1に記載の組成物。
【請求項18】
前記アンタゴニストが:
a)RANKL;
b)TNFα;
c)TEASRL;
d)IL−1αもしくはIL−1β;
e)OX40;または
f)APRIL
の発現を低下する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
請求項1に記載の免疫状態または免疫疾患の診断を補助する方法であって、生物学的サンプルに結合組成物を接触させる工程を包含し、ここで該結合組成物は:
a)IL−27、p28、EBI3もしくはWSX−1/TCCR;
b)WSX−1/TCCRとgp130との複合体;または
c)p28、EBI3もしくはWSX−1/TCCRをコードする核酸
に特異的に結合し、そして、該生物学的サンプルに対する該結合組成物の該特異的結合を測定する工程または決定する工程を包含する、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の免疫状態または免疫疾患の診断のためのキットであって、容器および:
a)IL−27、p28、EBI3もしくはWSX−1/TCCR;
b)WSX−1/TCCRとgp130との複合体;または
c)p28、EBI3もしくはWSX−1/TCCRをコードする核酸
に特異的に結合する結合組成物を備える、キット。

【公表番号】特表2007−523169(P2007−523169A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554178(P2006−554178)
【出願日】平成17年2月15日(2005.2.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/004902
【国際公開番号】WO2005/079848
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】