説明

免疫調節組成物

式(I)
【化1】


(上記式中、Rは水素、直線または分岐状の未置換のまたは置換した飽和または不飽和アシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択される)
を有する単離された免疫調節(例えば、免疫刺激)ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物、またはそれらの薬学上許容可能な塩または誘導体は、Th1:Th2応答比の増加、血液回復(haemorestoration)、免疫抑制の緩和、サイトカイン刺激、増殖性疾患(例えば、癌)の治療、ワクチン接種、先天的免疫応答の刺激、および内因性NK細胞の作用の増加などの治療や予防に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、免疫調節ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物、およびそれらの薬剤での使用に関する。特に、本発明は、カスアリンおよびある種のカスアリン類似体の免疫調節(免疫刺激または免疫抑制)薬としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
免疫
免疫系が異種抗原によって攻撃されると、防御応答を起こすことによって応答する。この応答は、先天性および後天性免疫系の両方の調整相互作用を特徴とする。これらの系はかっては別々の独立したものと考えられていたが、現在は統合すると、相互に排他的な要件、すなわち敏速さ(先天性の系によって与えられる)および特異性(適応系によって与えられる)、を満足する2つの互いに依存する部分と認められている。
【0003】
先天性免疫系は侵襲病原体に対する防御の第一線として働き、病原体を抑え、一方において適応応答を成熟させる。これは感染の数分以内に抗原とは独立した仕方で誘発され、(これは非特異的ではなく且つ自己と病原体とを識別することができるが)病原体に広汎に保存されたパターンに応答する。極めて重大なことには、これは、適応免疫系を増強し且つこれを感染性物質と戦うのに極めて適当な細胞性または体液性応答に向ける(分極させる)炎症性および補助的刺激環境(時には、危険シグナルと呼ばれる)も生じる(下記において更に詳細に説明する)。
【0004】
適応応答は数日間または数週間にわたって有効になるが、最後に病原体を完全に除去するのに要する抗原特異性が提供され、免疫学的記憶が生成する。これは、生殖細胞系遺伝子再編成を行い且つ鋭敏な特異性および長期間継続する記憶を特徴とするTおよびB細胞によって伝達される。しかしながら、これはまた、専門的な食細胞(マクロファージ、好中球など)および顆粒球(好塩基球、好酸球など)などの、細菌および比較的大型の原生動物寄生生物を包み込む先天性免疫系の成分の個体増加をも伴う。適応免疫応答が成熟してしまったならば、続いて病原体に暴露することによって(通常は感染の症状が現れる前に)急速に除去され、高度に特異的な記憶細胞が生成し、続いてコグネイト抗原に暴露されることによって速やかに活性化されるからである。
【0005】
先天性および適応応答の相互依存性
病原体侵襲に続いて最も早く見られるものは、先天性免疫系の細胞成分によって行われると考えられている。常在性組織マクロファージおよび樹状細胞(DC)が病原体に遭遇して、パターン認識受容体(PRR)と大きな群の微生物によって共有されている病原体関連分子パターン(PAMP)との相互作用によって生じるシグナルによって活性化されるときに、応答が開始する。活性化したマクロファージとDCは刺激されて、各種サイトカイン(ケモカインIL-8、MIP-1αおよびMIP-1βなど)を放出し、これらは「危険シグナル」を構成し、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、未成熟樹状細胞の組織への流入を誘発する。
【0006】
抗原を装填した後、活性化DCはリンパ節に移動する。そこで一旦、それらは抗原提示細胞(APC)として作用することによって適応応答の免疫細胞(主として、ナイーブなBおよびT細胞)を活性化する。次に活性化された細胞は(「危険シグナル」によって誘導される)感染部位に移行し、一旦そこに移行したならば、先天性免疫系の細胞(好酸球、好塩基球、単球、NK細胞および顆粒球など)を増強することによって応答を更に増幅する。この細胞トラフィッキングは大きな配列のサイトカイン(特に、ケモカインサブグループの配列)によって編成され、多数の様々な種類および組織供給源の免疫細胞を伴う(総説については、Luster (2002), Current Opinion in Immunology 14: 129-135を参照)。
【0007】
適応免疫応答の分極
適応免疫応答は、主として、2種類の独立した部分である細胞依存性(1型)免疫と抗体依存性または体液性(2型)免疫を介して行われる。
【0008】
1型免疫は、異種抗原を有する感染細胞に作用するかまたは他の細胞を刺激して乾癬細胞に作用するTリンパ球の活性化を伴う。従って、免疫系のこの分枝は、癌であるかまたは病原体(特に、ウイルス)に感染している細胞を効果的に含み且つ殺す。2型免疫は、Bリンパ球による異種抗原に対する抗体の生成を伴う。この免疫系の抗体依存性分枝は、細胞外異種抗原を攻撃して、効果的に中和する。
【0009】
免疫系の両部分は疾病と闘う上で重要であり、免疫応答の型がその強度またはその期間と同様に重要であるという理解が増してきている。更に、1型および2型応答は必ずしも相互排他的ではなく(多くの情況では、効果的な免疫応答には両方が平行して起こることが必要である)、1型/2型の応答(それぞれの応答に関与する別個のサイトカインとエフェクター細胞のサブセットを参照することによってTh1:Th2応答比/バランスとも呼ばれる。下記参照)免疫防御の有効性(および影響)の決定に役割を演じることもある。
【0010】
多くの情況では、この免疫応答は、抗原に暴露した直ぐ後に1型または2型応答に大きく逸れる。この1型/2型の逸れまたは分極の機構は未だ完全に理解されていないが、少なくとも部分的には先天性免疫系のDCとマクロファージが最初に刺激されるときに初期のPRR-PAMP相互作用の性質によって、続いてナイーブなヘルパーT細胞の抗原の抗原プライミングが生じるサイトカイン環境によって1型/2型分極(またはバランス)が決定される細胞依存性化学伝達物質(サイトカイン、特にケモカイン)の複雑な系を伴うことが知られている。
【0011】
2種類のサイトカインは、特に免疫応答の道筋の決定における初期の役割を有すると思われる。マクロファージによって分泌されるインターロイキン12(IL-12)は、1型応答を支配するヘルパー細胞であるTh1細胞の分化を刺激することによって1型応答を推進する。もう一つのマクロファージサイトカインであるインターロイキン10(IL-10)は、この応答を阻害して、代わりに2型応答を推進する。
【0012】
1型および2型応答は、とりわけプライミングに伴うある種の表現型変化とその後のナイーブなヘルパーT細胞の分極に基づいて識別することができる。これらの表現型変化は、少なくとも部分的には分極したヘルパーT細胞によって分泌されるサイトカインの性質によって特定される。
【0013】
Th1細胞はいわゆるTh1サイトカインを産生し、これはTNF、IL-1、IL-2、IFN-γ、IL-12および/またはIL-18の1種類以上を包含する。Th1サイトカインはマクロファージの活性化に関与し、Th1細胞は1型応答を編成する。対照的に、Th2細胞はいわゆるTh2サイトカインを産生し、これはIL-4、IL-5、IL-10およびIL-13の1種類以上を包含する。Th2サイトカインは様々な抗体の酸性を促進し、1型応答を抑制することができる。
【0014】
1型:2型免疫応答分極におけるTh1およびTh2細胞およびサイトカインの関与により、用語Th1応答およびTh2応答がそれぞれ1型および2型免疫応答を定義するのに用いられるようになった。従って、これらの用語は、本明細書では互換的に用いられる。
【0015】
免疫応答の型は、その強度またはその期間と同様に治療および予防に重要であるという理解が増してきている。例えば、過剰のTh1応答は、自己免疫疾患、不適当な炎症性応答および移植拒絶反応を生じる可能性がある。過剰のTh2応答は、アレルギーおよび喘息を引き起こす可能性がある。更に、Th1:Th2比の動揺は多くの免疫疾患および異常に症候的なものであり、Th1:Th2比を変更する方法の開発が最優先課題である。
【0016】
アルカロイド
アルカロイドという用語は、本明細書では狭義で生物体に天然に存在する任意の塩基性の有機含窒素化合物を定義するのに用いられる。アルカロイドという用語は、本明細書では広義で天然に存在するアルカロイドだけでなく、それらの合成および半合成類似体および誘導体をも包含する一層広い群の化合物を定義するのにも用いられる。
【0017】
ほとんどの既知アルカロイドは二次代謝物として植物組織(そこで防御の役割を演じることがある)に存在する植物化学物質であるが、幾らかは動物、微生物および真菌の組織に二次代謝物として存在する。微生物培養物をスクリーニングするための標準的手法はアルカロイドの多くのクラス(特に、極性の高いアルカロイド、下記参照)の検出には不適当であり、スクリーニング手法は一層複雑になっているので、微生物(細菌および真菌など、特に糸状菌)がアルカロイドの重要な供給源であることが分かることの証拠が増えてきている。
【0018】
構造的には、アルカロイドは大きな多様性を示す。多くのアルカロイドは分子量が250ダルトンを下回る小分子である。構造はアミノ酸から誘導することができるが、幾つかは他の群(ステロイドなど)から誘導される。他のものは、糖類似体と考えることができる。医薬植物と微生物培養物との水溶性画分は、多数の炭水化物類似体などの多くの興味深い新規な極性アルカロイドを含むことが明らかになってきている(Watson et al. (2001) Phytochemistry 56:265-295)。このような類似体は、急速に増大する数のポリヒドロキシル化アルカロイドを包含する。
【0019】
ほとんどのアルカロイドは、N-ヘテロ環の配置に基づいて構造的に分類される。幾つかの重要なアルカロイドとその構造の例は、Kutchan (1995) The Plant細胞 7: 1059-1070に詳しく述べられている。
【0020】
Watson et al. (2001) Phytochemistry 56: 265-295では、包括的範囲のポリヒドロキシル化アルカロイドが、とりわけピペリジン、ピロリン、ピロリジン、ピロリジジン、インドリジジン、およびノルトロパンアルカロイドとして分類されている(Watson et al. (2001)の図1-7参照。上記文献の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)。
【0021】
Watson et al. (2001)(上記引用)は、少なくとも幾つかのアルカロイドをそのグリコシダーゼ阻害プロフィール、すなわち多くのポリヒドロキシル化アルカロイドが強力で選択性の高いグリコシダーゼ阻害剤であることに基づいて機能的に分類することができることも示している。これらのアルカロイドはピラノシルまたはフラノシル残基にあるヒドロキシル基の数、位置および配置をまねることができ、従ってコグネイトグリコシダーゼの活性部位に結合することによってこれを阻害する。この分野は、Legler (1990) Adv. Carbohydr. Chem. Biochem. 48:319-384およびAsano et al. (1995) J. Med. Chem. 38:2349-2356に概説されている。
【0022】
多くのアルカロイドは薬理活性であり、人間はアルカロイドを(典型的には植物抽出物の形態で)毒薬、麻薬、興奮薬、および薬剤として数千年の間用いてきた。ポリヒドロキシル化アルカロイドの治療上の応用は、Watson et al. (2001)(上記引用)に包括的に概説されており、応用としては、癌治療、免疫刺激、糖尿病の治療、感染症(特に、ウイルス感染症)、スフィンゴ糖脂質リソソーム蓄積症の治療、および自己免疫疾患(関節炎および硬化症など)の治療が挙げられる。
【0023】
炭水化物の天然および合成の単環性および二環性窒素類似体はいずれも、化学療法薬としての可能性を有することが知られている。アレキシン(1)およびオーストラリン(2)は、ピロリジジンのネシンファミリーに特徴的な一層普通に見られるC-1の置換基よりはC-3に炭素置換基を有する単離されている最初のピロリジジンアルカロイドであった。
【化1】

アレキシン(1)
【化2】

オーストラリン(2)
【0024】
アレキシンは、Alexa属の総ての種および関連種Castanospermum australeにも存在する。1,7a-ジエピアレキシン(3)などのアレキシンの立体異性体も単離されており(Nash et al. (1990) Phytochemistry (29) 111)、合成されている(Choi et al. (1991) Tetrahedron Letters (32) 5517、およびDenmark and Cotte, l (2001) J. Org. Chem. (66) 4276-4284)。
【化3】

1,7a-ジエピアレキシン (3)
【0025】
7,7a-ジエピアレキシン(後に、1,7a-ジエピアレキシンとして定義)の弱いイン・ビトロでの抗ウイルス特性が報告されていたため、天然産物の単離および類似体の合成に幾らか関心が持たれてきた。
【0026】
インドリジジンアルカロイド(およびピロリジジンアレキシンとは構造的に異なるもの)として、スワインソニン(4)はα-マンノシダーゼの強力で特異的な阻害剤であり、転移抑制、腫瘍増殖防止、および免疫調節薬としての可能性を有することが報告されている(例えば、米国特許第5,650,413号明細書、WO 00/37465号明細書、WO 93/09117号明細書参照)。
【化4】

スワインソニン(4)
【0027】
スワインソニンの六員環の大きさの変動のそのグリコシダーゼ阻害活性に対する効果が研究されてきており、ピロリジジン誘導体(いわゆる「環収縮スワインソニン」)が合成されている。しかしながら、これらの合成誘導体(1S,2R,7R,7aR)-1, 2,7-トリヒドロキシピロリジジン(5)および7S-エピマー(6))は、スワインソニン自身と比較して阻害活性が遙かに弱いことが示された(米国特許第5,075,457号明細書参照)。
【化5】

(1S,2R,7R,7aR)-1,2,7-トリヒドロキシピロリジジン (5)
【化6】

7S-エピマー (6)
【0028】
もう一つの化合物1α,2α,6α,7α,7αβ-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン (7)は1,8-ジエピスワインソニンの類似体であり、欧州特許第0417059号明細書にグリコシダーゼ酵素の「有用な」阻害剤として記載されている。
【化7】

1α,2α,6α,7α,7αβ-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン (7)
【0029】
カスアリン (1R,2R,3R,6S,7S,7aR)-3-(ヒドロキシメチル)-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン(8)は、一層高度に酸素化された1,7a-ジエピアレキシン(3に図示)または1α,2α,6α,7α,7αβ-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン(7に図示)のC(3)ヒドロキシメチル置換類似体と考えることができる高度に酸素化された二環性ピロリジジンアルカロイドである。
【化8】

カスアリン (8)
【0030】
カスアリンは、Casuarine equisetifolia(Casuarinaceae)の樹皮、Eugenia jambolana (Myrtaceae)およびSyzygium guineense (Myrtaceae)の葉および樹皮など幾つかの植物供給源から単離することができる(例えば、Nash et al. (1994) Tetrahedron Letters (35)7849-7852参照)。カスアリンのエピマー、および恐らくはカスアリン自体は、アジドジメシレートのテルル化水素ナトリウムによって誘導される環化によって合成することができる(Bell et al. (1997) Tetrahedron Letters (38) 5869-5872)。
【0031】
Casuarina equisetifoliaの木質、樹皮および葉は、下痢、赤痢および疝痛に有用であると主張されており(Chopra et al. (1956) 「インドの薬用植物用語解説(Glossary of Indian Medicinal Plants)」, 科学工業研究会議(インド)(Council of Scientific and Industrial Research (India)), ニューデリー, p. 55)、樹皮の試料が最近西サモアで乳癌の治療に処方されている。カスアリンを含むアフリカ産植物(Syzygium guineenseとして同定)は、AIDS患者の治療に有益であることが報告されている(Wormald et al. (1996) Carbohydrate Letters (2) 169-174)。
【0032】
カスアリン-6-α-グルコシド(カスアリン-6-α-D-グルコピラノース, 9)も、Eugenia jambolanaの樹皮および葉から単離されている(Wormald et al. (1996) Carbohydrate Letters (2) 169-174)。
【化9】

カスアリン-6-α-D-グルコピラノース (9)
【0033】
Eugenia jambolanaは、糖尿病および細菌感染症に対するその種子、葉および果実の治療的価値のためにインドでは周知の樹木である。その果実はヒトの血糖値を下げることが示されており、樹皮の水性抽出物は動物におけるグリコーゲン分解およびグリコーゲン貯蔵に影響を与えることが主張されている(Wormald et al. (1996) Carbohydrate Letters (2) 169-174)。
【0034】
樹状細胞およびそれらの免疫療法への使用
(a) 緒論
樹状細胞(DC)は特徴的形態と広汎な組織分布を有する異種細胞個体群である(Steinman (1991) Ann. Rev. Immunol. 9: 271-296)。抗原提示に重要な役割を果たしており、抗原を捕捉し、プロセシングしてペプチドとした後、それらを(MHCの成分と共に)T細胞に提示する。次に、T細胞活性化を、高水準のMHCクラスIおよびII分子、接着分子、および補助的刺激分子のような細胞表面分子の発現によって伝達することができる。
【0035】
従って、樹状細胞は高度に特殊化した抗原提示細胞(APC)として作用し、「天然アジュバント」として働き、適応T細胞性免疫並びに先天性免疫系ナチュラルキラー(NKおよびNKT)細胞の誘導を増強する。従って、樹状細胞は、免疫応答の大きさ、性質および記憶において基本的且つ重要な調節の働きを行う。結果として、様々な免疫調節介入における樹状細胞の使用に関心が高まってきており、これを以下において更に詳細に説明する。
【0036】
樹状細胞は、とりわけその成熟の状態(成熟または未成熟)およびその細胞発生源(個体発生)に基づいて異なるサブセットに分類することができる。これらのサブセットのそれぞれは、下記のようなイン・ビボで独特な役割を果たしていると思われる。
【0037】
(b) 樹状細胞成熟
未成熟(または静止)DCは、皮膚や粘膜のような非リンパ様組織に存在しており、食細胞性が高く、可溶性および顆粒状抗原を容易にインターナライズする。このような抗原に装填された未成熟DCが、食細胞性で移動性細胞からナイーブなT細胞の非食細胞性の高度に効率的な刺激因子へ形質転換する成熟過程を受けるのは、これらが炎症性刺激(成熟刺激)をも受けやすいときに限られる。
【0038】
未成熟なDCは、MIICの形態の高細胞内MHCII、CD1aの発現、ある種の粒子およびタンパク質に対する活発なエンドサイトーシス、FcgRおよび活発な食作用の存在、イン・ビトロでの不十分なT細胞感作、低/無接着および補助的刺激分子(CD40/54/58/80/86)、低/無CD25、CD83、p55、DEC-205、2A1抗原、GM-CSFには敏感であるが、M-CSFおよびG-CSFには敏感でないこと、およびIL-10に対する感受性であって、これにより成熟が阻害されるものを特徴とする。
【0039】
成熟すると、抗原を装填しT細胞をプライミングすることができる成熟DCは非リンパ様組織からリンパ節または脾臓へ移行し、そこで抗原装填を処理し、これを常在性ナイーブCD4+T細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞に提示する。この後者の相互作用は適応免疫応答の細胞アームであるCTLを生じ、これらの細胞がウイルスに感染した細胞および腫瘍細胞を除去する。ナイーブCD4+T細胞は記憶ヘルパーT細胞へと分化して、CD8+CTLおよびB細胞の分化および膨張を支持する。例えば、ヘルパーT細胞は、マクロファージおよびCTLのような重要なエフェクター細胞の活性化により間接的に抗腫瘍作用を発揮する。
【0040】
この方法でT細胞を活性化した後、成熟DCは9-10日以内にアポトーシスを受ける。
【0041】
成熟DC細胞は、移動性と多数の過程(ベールまたは樹状突起)の存在によって形態学的に特徴付けられている。それらは抗原捕捉と提示に対してコンピテントであり(高MHCクラスIおよびII発現を示す)、T細胞結合および補助的刺激に関与する広汎な種類の分子(例えば、CD40、CD54/ICAM-1、CD58/LFA-3、CD80/B7-1、およびCD86/B7-2)並びに各種サイトカイン(IL-12など)を発現する。それらは表現型的に安定であり、マクロファージまたはリンパ球への逆転/転換はない。
【0042】
従って、成熟DCは、T細胞活性化および細胞性免疫に重要な役割を果たしている。対照的に、未成熟DCは、(抗原特異的T細胞アネルギーを誘発する)免疫学的寛容の調節および維持に関与している。
【0043】
(c) 樹状細胞個体発生サブセット
樹状細胞単細胞型によっては表されず、むしろ様々なクラスの細胞であってそれぞれが独特な個体発生を有するものの異種の集まりを含んでなる。少なくとも3種類の発生経路であって、特有の先祖から発生して特定のサイトカインの組合せによって別個の特殊化した機能を有するDCサブセットとするものが報告されている。
【0044】
現在では、総てのDCに共通の最も初期のDCの先祖/前駆体は骨髄に生じると考えられている。これらの原始的先祖はCD34+であり、それらは骨髄から放出されて、血液およびリンパ様器官中を循環する。
【0045】
骨髄から放出されたならば、原始的CD34+であるDC先祖は様々な刺激シグナルを受けやすい。これらのシグナルは、少なくとも3種類の異なる経路であって、それぞれ中間段階、サイトカイン要求、表面マーカー発現および生物学的機能に関して異なるものの一つに沿ってこれらの先祖を指定することができる。
【0046】
・リンパ様DCは、リンパ球系統に緊密に関連しているDCの特有なサブセットである。この系統は、表面抗原CD11b、CD13、CD14およびCD33が欠けていることを特徴とする。リンパ様DCはTおよびナチュラルキラー(NK)細胞と起源を共有しており、総ての先祖は胸腺および二次リンパ様組織のT細胞領域に位置している。リンパ様DCの分化はインターロイキン2、3および15(IL-3、IL-2およびIL-15)によって行われるが、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)によっては行われない。機能的には、リンパ様は(恐らくは、fasによって伝達されるアポトーシスを誘導することにより)胸腺における負の選択を促進し、CD4+およびCD8+T細胞に対して補助刺激である。更に最近、ヒト先祖から誘導されるリンパ様DCがTh2応答を優先的に活性化することも示されている。アポトーシスを誘導するそれらの能力および潜在的に自己反応性T細胞の除去におけるそれらの役割により、リンパ様DCが主として刺激よりはむしろ調節免疫エフェクター機能を伝達することが示唆されている。
【0047】
・骨髄性DCは、食細胞に関連したある種の特徴を発現する発生段階によって識別される。少なくとも2個の構造的および機能的に異なるサブセットがあると思われる。第一のものは、CD14-、CD34+、CD68-およびCD1a+として抗原的に定義され、ときにはランゲルハンス細胞型のDCと呼ばれる。このサブセットはT細胞をプライミングしてTh1応答を優先的に活性化すると思われ、IL-12はこの過程に関係していると思われる。このサブセットはナイーブB細胞を活性化してIgMを分泌することもあり、従って、炎症性Th1応答と主として関連していることがある。第二の骨髄性DCサブセットであって、間質DCとも呼ばれることがあるものは、CD14+、CD68+およびCD1a- として抗原的に定義され、単球に関係している(結果として、それらは単球誘導DCまたはMo-DCとも呼ばれる)。
【0048】
(d) 樹状細胞ワクチン
一つの樹状細胞に基づく治療パラダイム(Schuler et al. (2003) Current Opinion in Immunol 15: 138-147に概説されている)では、DC細胞は患者から(例えば、アフェレーシスによって)採取した後、特定の抗原または複数の抗原(例えば、(複数の)腫瘍抗原)を適用(プライミングまたは投与)する。次に、それらを自家細胞ワクチンとして再投与して、適当な免疫応答を増強する。
【0049】
この治療パラダイムでは、応答性T細胞としては、ヘルパー細胞、特にTh1CD4+細胞(IFN-γを産生する)およびキラー細胞(特に、CD8+細胞傷害性Tリンパ球)が挙げられる。DCは、他のクラスのリンパ球(B、NK、およびNKT細胞)によって応答を伝達することもできる。それらは、ワクチン接種の重大な目標であるT細胞記憶を誘導することもできる。
【0050】
現在のところ、DCワクチンの最適有効性に必要とされる(複数の)DCサブセットの同定についてはほとんど知られておらず、成熟が求められ且つand未成熟DCが回避されるべきであることの見分けがつかない(Dhodapkar and Steinman (2002) Blood 100:174-177)。
【0051】
Hsu et al. (1996) Nat Med 2: 52-58は、血液からエクス・ビボで単離した微量DCを用いた。これらのDCはそれらの個体発生サブセットに関して極めて不均一なものであったが、単離処理中に自発的に成熟した。しかしながら、収率は極めて低かった。
【0052】
この収率の問題は、例えば、Flt3リガンドを用いてエクス・ビボでDCを膨張させる技術の開発によって処理されているが(Fong et al. (2001) PNAS 98: 8809-8814)、これは効果が限定されている。
【0053】
しかしながら、ほとんどの研究は、Mo-DCを用いてきた。これらの細胞は単球をGM-CSFおよびIL-4(またはIL-13)に暴露して未成熟Mo-DCを産生させ、これを次に成熟培地でインキュベーションすることによって成熟させることによって得られる。このような培地は1種類以上の成熟刺激因子を含んでなり、典型的には、トール様受容体(TLR)リガンド(例えば、リポ多糖類および/またはモノホスホリル脂質のような微生物産物)、炎症性サイトカイン(TNF-αなど)、CD40L、単球コンディショニング培地(MCM)またはMCM類似体(IL-1β、TNF-α、IL-β、およびPGE2を含む)を含んでなる。
【0054】
現在のところ、DCワクチン性能に対する成熟培地の影響についてはほとんど知られていないが、MCMまたはMCM類似体が現在は標準となっており、これらの培地を用いて成熟したMo-DCは均一であり、生育力が高く、走化性的刺激に対して良好に移行し、イン・ビトロおよびイン・ビボのいずれでもCTLを誘発する。
【0055】
1つの白血球搬出法による産物を培養するのに十分な大きさの表面積を提供する半密封式の多層連通培養容器(semi-closed, multilayered communicating culture vessels)内で付着単球から多数のMo-DC(アフェレーシス当たり成熟DC 3-5億個)を生成する技術が開発されている。これらのいわゆる細胞工場を用いて、抗原を予め装填したDCの低温保存した部分であって、融解時に生育力が高く且つ最適成熟および凍結手順が報告されているものを産生することができる(Berger et al(2002) J. Immunol. Methods 268: 131-140; Tuyaerts et al. (2002) J. Immunol. Methods 264: 135-151)。
【0056】
ワクチン接種のための樹状細胞は、間質およびランゲルハンス細胞型のDCの混合物を含んでなるCD34+から誘導されたDCからも調製されている。幾人かの研究者は、前者のサブセットは、DCワクチンとして用いるときにはMo-DCより強いと考えている。
【0057】
抗原選択に関しては、様々な方法が用いられている。特徴を定義されているおよび定義されていない抗原のいずれを用いることもできる。抗原は、異種抗原または自己抗原であることができる。1種類以上の特徴を定義されている新抗原を選択することができ、癌治療の場合には、1種類以上の異種抗原が腫瘍関連抗原を構成することができる。しかしながら、最も一般的なものは、9-11個のアミノ酸ペプチドを含む定義された抗原(天然配列またはMHC結合を増強する目的でデザインされた類似体)であり、これらの抗原は優良製造実施(GMP)基準に適合するように製造することができ、容易に標準化される。
【0058】
他の方法は、抗原を免疫複合体として用いており、これはFc-受容体担持DCに伝達され、MHCクラスIおよびMHCクラスIIペプチド配列が形成される。これにより、CTLおよびTh細胞のいずれをも誘導する可能性が提供される(Berlyn et al. (2001) Clin Immunol 101: 276-283)。
【0059】
任意の所定の腫瘍(またはウイルスに感染した細胞のような他のターゲット細胞)の全抗原量を調べる方法も開発されている。例えば、DC-腫瘍細胞ハイブリッドを用いて、腎細胞癌を治療することができたが(Kugler et al. (2000) 6: 332-336)、ハイブリッドは標準化が困難であり、寿命が短い。壊死性またはアポトーシス性腫瘍細胞が様々な細胞溶解物と同様に用いられている。
【0060】
患者特異性抗原の選択は少なくとも幾つかの癌の治療に重要であることがあり、腫瘍細胞系または定義された抗原よりはむしろ新鮮な腫瘍細胞由来の抗原が重要であることが明らかになることがある(Dhodapkar et al. (2002) PNAS 99: 13009-13013)。
【0061】
選択された(複数の)抗原のDCへの伝達に関しては、様々な手法を用いることができる。MHC-ペプチド複合体の数および品質はDCの免疫原性に直接影響するので、抗原装填法はDCワクチン性能に決定的であることが明らかになることがある(van der Burg et al. (1996) J. Immunol. 156: 3308-3314)。DCによるMHC-ペプチド複合体の長期提示により免疫原性が増強され、従って、長期提示を促進する装填法は重要であることがある。これは、細胞貫通部分に結合したペプチドを用いて内部的にDCを装填することによって達成されている(Wang and Wang (2002) Nat Biotechnol 20:149-154)。
【0062】
抗原は、核酸のコード化による(例えば、電気穿孔による)DCのトランスフェクションによって装填して、抗原をDCによって発現させ、加工して、細胞表面に提示することもできる。この方法では、高価なGMPタンパク質および抗体の必要がなくなる。RNAは一過性発現(抗原プロセシングには十分であっても)しか生成せず且つDNAの組込みおよび付随する長期発現/突然変異誘発に関連した潜在的問題を回避するので、RNAはこの目的に好ましい。このようなトランスフェクション法は、全またはPCR増幅した腫瘍RNAの使用によりターゲット細胞の全抗原量を調べることもできる。
【0063】
ヘルパータンパク質(例えば、カサガイヘモシアニン(KLH)および破傷風類毒素(TT))はCTL誘導を非特異的に助けることができる幾らかの証拠があり(Lanzavecchia (1998) Nature 393: 3413-414)、ワクチン接種の前にDCにこのようなヘルパータンパク質を適用するのが有利であることが明らかになることがある。
【0064】
薬量学に関しては、DCワクチン投与の用量、頻度および経路は、臨床試験で最適化されていない。投与される細胞の絶対数は、投与の経路および注入後の体内移行の有効性によって変化することは明らかである。これに関して、直接節内に投与することを用いて皮膚から節への移行の必要を回避してきたが、皮内または皮下投与はTh1応答の発現にとって好ましいことがある(Nestle et al. (1998) Nat Med 4: 328-332)。
【0065】
上記の抗原を適用したDCワクチンパラダイムとは全く異なるものが、各種サイトカインを分泌する樹状細胞を腫瘍中に直接投与してT細胞を節外で刺激することが示されている方法である(Kirk et al. (2001) Cancer Res 61: 8794-8802)。従って、もう一つの治療パラダイムでは、DCは腫瘍に向けられ、活性化されて、エクス・ビボで抗原を装填する必要なしにイン・シテューで免疫応答が顕在化される。
【0066】
イン・シテューでのDCワクチン接種は、もう一つの別個の(しかし関連した)方法を構成する(Hawiger et al.(2001) J Exp Med 194: 769-779)。この治療パラダイムでは、抗原を、膨張してイン・シテューで成熟するように誘導するイン・ビボでのDCに向ける。この方法は、内因性DC(例えば、エクソゾーム(exosomes)を用いる: Thery et al.(2002) Nat Rev Immunol 2: 569-579を参照)への抗原の効率的ターゲッティングと、イン・ビボで(定義された(複数の)DCサブセットの)成熟を効果的に誘導することができる成熟刺激因子の発生とに依存している。
【0067】
(e) 養子CTL免疫療法における樹状細胞の使用
細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を患者に投与して、特定の疾患または感染症(典型的には、癌)に対する免疫応答を付与しまたは追加することができる。例えば、腫瘍特異性T細胞を患者から(例えば、白血球搬出法によって)抽出し、選択的に膨張させ(例えば、テトラマーによって誘導されるクローニングによって: Dunbar et al. (1999) J Immunol 162: 6959-6962を参照)、次に自家細胞ワクチンとして再投与することができる。
【0068】
この種の受動免疫療法の臨床的有効性、応用可能性および加工容易性は、投与前にイン・ビトロでT細胞をプライミングする目的で樹状細胞を用いることによって大幅に増すことができる。
【0069】
(f) 自己免疫疾患の治療に対する樹状細胞に基づく方法
樹状細胞は、免疫学的寛容の調節および維持にも関与しており、成熟の非存在下では、これらの細胞は抗原特異性サイレンシングまたは寛容を誘発する。
【0070】
従って、もう一つの樹状細胞に基づく治療パラダイムでは、未成熟DCを、自己免疫疾患と闘うようにデザインされた免疫調節的介入の一部として投与する。このような用途では、DCの抑制的能力がサイトカインをコード化する遺伝子によるイン・ビトロでのトランスフェクションによって増強された。
【0071】
(g) 樹状細胞の機能におけるIL-2の役割
Granucci et al. (2002) Trends in Immunol. 23: 169-171には、微生物刺激後の樹状細胞におけるIL-2についてのmRNA転写体の一過性アップレギュレーションが報告されている。WO 03012078号明細書では、GranucciはT細胞活性化だけでなくNK細胞の活性化の伝達においてDCによって誘導されるIL-2が重要な役割を果たしていることを報告し、続けてDCによって誘導されるIL-2は先天性および適応免疫の調節および連結する重要な因子であることを示唆している。
【0072】
更に、IL-2の全身投与はDCワクチンの治療効力を高めることが最近示されているが(Shimizu et al. (1999) PNAS 96: 2268-2273)、IL-2の存在は少なくとも幾つかのDCワクチン接種法において樹状細胞によって伝達される特異性ペプチド依存性免疫に本質的であることが示された(Eggert et al. (2002) Eur J Immunol 32: 122-127)。それらの最近の総説では、Schuler et al. (上記引用)「... DCワクチン接種によって誘発されるT細胞応答は増強され且つ治療上一層効果的であると思われるので、DCワクチン接種とIL-2投与との組合せを検討することは注目に値すると思われる」と結論している。
【0073】
上記説明から、樹状細胞は免疫療法(特に、癌の治療)において重要な手段であることが明らかにされているが、DCワクチン接種は比較的初期段階におけることが明らかであろう。DCの調製方法は連続的に進歩しており、増加するフェーズI、IIおよびIIIの臨床試験の数はこの分野における集中的研究および開発を行っている。しかしながら、DC生物学のレベルにおける効力を向上させることが未だ求められている。
【0074】
本発明者らは、意外にもカスアリンおよびある種のカスアリン類似体が予想外の免疫調節活性を有し、この活性はグリコシダーゼ阻害に依存しないことがあることを見出した。
【0075】
本発明の概要
本発明によれば、式
【化10】

(上記式中、Rは水素、直線または分岐状の未置換のまたは置換した飽和または不飽和アシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択される)
を有する、治療または予防に使用するための単離された免疫調節(例えば、免疫刺激)ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体が提供される。
【0076】
好ましくは、本発明の化合物はアルカロイド(上記で定義した通り)である。
【0077】
本発明の化合物は、好ましくは、式
【化11】

(上記式中、Rは水素、直線または分岐状の未置換のまたは置換した飽和または不飽和アシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択される)
を有する化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【0078】
特に好ましいものは、Rが水素であり且つ式
【化12】

を有する(1R,2R,3R,6S,7S,7aR)-3-(ヒドロキシメチル)-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン(カスアリン)、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【0079】
特に好ましいものは、カスアリングルコシド、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【0080】
他の好ましい化合物としては、式
【化13】

を有する6-O-ブタノイルカスアリン、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体が挙げられる。
【0081】
特に好ましいカスアリングルコシドは、式
【化14】

を有するカスアリン-6-α-D-グルコシド、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体である。
【0082】
以下に述べるように、本発明は本発明の化合物のジアステレオ異性体を意図している。特に好ましいものは、3,7-ジエピ-カスアリン (10)、7-エピ-カスアリン (11)、3,6,7-トリエピ-カスアリン (12)、6,7-ジエピ-カスアリン (13)、および3-エピ-カスアリン(14)、並びにその薬学上許容可能な塩および誘導体から選択されるジアステレオ異性体である。.
【化15】

3, 7-ジエピ-カスアリン (10)
【化16】

7-エピカスアリン (11)
【化17】

3,6, 7-トリエピ-カスアリン (12)
【化18】

6, 7-ジエピ-カスアリン (13)
【化19】

3-エピ-カスアリン (14)
【0083】
他の好ましいジアステレオ異性体は、3,7-ジエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド (15)、7-エピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド (16)、3,6,7-トリエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド (17)、6,7-ジエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド (18)、および3-エピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド (19)、並びにそれらの薬学上許容可能な塩および誘導体から選択される。
【化20】

3,7-ジエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド (15)
【化21】

7-エピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド (16)
【化22】

3,6,7-トリエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド (17)
【化23】

6,7-ジエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド (18)
【化24】

8-エピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド (19)
【0084】
他の好ましいジアステレオ異性体としては、3,7,7a-トリエピ-カスアリン、7,7a-ジエピ-カスアリン、3,6,7,7a-テトラエピ-カスアリン、6,7,7a-トリエピ-カスアリン、および3,7a-ジエピ-カスアリン、並びにその薬学上許容可能な塩および誘導体から選択される7a エピマーが挙げられる。
【0085】
もう一つの態様では、本発明は、免疫調節(例えば、免疫刺激)の方法であって、式
【化25】

(上記式中、Rは水素、直線または分岐状の未置換のまたは置換した飽和または不飽和アシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択される)
を有するポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体を含んでなる組成物を患者に投与することを含んでなる、方法を提供する。
【0086】
本発明の免疫刺激法を、以下に更に詳細に説明する。
【0087】
もう一つの態様では、本発明は、本発明の化合物を化学療法を受けている患者に投与することを含んでなる、化学防御の方法を提供する。
【0088】
本発明は、免疫刺激および/または化学防御に使用する薬剤の製造のための、本発明のポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物の使用、並びに本発明のポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物の使用を特徴とする、免疫刺激および/または化学防御に使用する薬剤の製造方法も意図している。
【0089】
もう一つの態様では、本発明は、本発明のポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物を、免疫刺激薬、および/または細胞傷害性物質(例えば、AZT)、および/または抗微生物(例えば、抗菌)薬、および/または抗ウイルス薬、および/または樹状細胞(例えば、プライムド樹状細胞)と組み合わせて含んでなる、組成物を意図する。このような組成物は、好ましくは薬学上許容可能な賦形剤をも含んでなる。
【0090】
もう一つの態様では、本発明は、本発明のポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物を抗原と組み合わせて含んでなり、化合物がワクチン接種時にアジュバント効果を生じるのに十分な量で存在する、ワクチンを意図している。
【0091】
もう一つの態様では、本発明は、本発明のポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物を免疫刺激薬および/または細胞傷害性物質(例えば、5'-フルオロ-ウラシルおよびリシン)および/または抗微生物(例えば、抗菌)物質および/または抗ウイルス薬(例えば、AZT)と組み合わせて含んでなる成分の医薬キットを意図している。このようなキットは、好ましくは免疫療法での使用説明書をも含んでなる。
【0092】
本発明の化合物は、Th1:Th2応答比を増加させる治療、例えば、Th1関連疾患または障害(例えば、増殖性疾患または微生物感染症)および/またはTh2関連疾患または障害(例えば、アレルギー、例えば、喘息)の治療、並びに血液回復(haemorestoration)、免疫抑制の緩和、サイトカイン刺激、増殖性疾患の治療、ワクチン接種(化合物がアジュバントとして作用する)、樹状細胞ワクチン(例えば、プライムド樹状細胞ワクチンであって、樹状細胞が化合物と接触しているものを用いる)、自己免疫疾患の治療または予防における樹状細胞の投与(樹状細胞が化合物と接触している)、および創傷の治癒など治療および予防に広汎な有用性を有する。これらの医療での使用を、以下において更に詳細に説明する。
【0093】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で用いられ且つ特に断らない限りは、下記の用語は、当該技術分野でこれらの用語が持つことができる任意の一層広義の(または狭義の)意味に加えて、下記の意味を有することを意味する。
【0094】
補助という用語(治療において本発明の薬剤の使用に応用されるような)は、ピロリジジン化合物を1種類以上の他の薬剤、介入、養生法、または治療(手術および/または放射線照射など)と共に投与する使用を定義する。このような補助療法は、本発明のピロリジジン化合物と他の(複数の)治療の同時、別個または逐次投与/適用を含んでなることができる。従って、幾つかの態様では、本発明のピロリジジン化合物の補助使用は本発明の医薬組成物の処方に反映される。例えば、補助使用は、本発明のピロリジジン化合物が補助的に用いられる(または個々の単位用量中の(複数の)他の薬剤と物理的に関連した)(複数の)他の薬剤と混合して存在している特定の単位投薬量または処方に反映されることがある。他の態様では、本発明のピロリジジン化合物の補助使用は本発明の医薬品キットの組成に反映されることがあり、本発明のピロリジジン化合物は、これが補助的に用いられる(複数の)他の薬剤と共に(例えば、単位用量の一部または一系列として)一緒に包装される。更にもう一つの態様では、本発明のピロリジジン化合物の補助使用は、処方および/または薬量学に関してピロリジジン化合物と一緒に包装される情報および/または使用説明書の内容に反映されることがある。
【0095】
新抗原という用語は、任意の新たに発現した抗原決定基を定義するのに本明細書で用いられる。新抗原は、タンパク質のコンホメーション変化により新たに発現した決定基(特に、形質転換または感染した細胞の表面上の)として、1種類以上の分子の複合体形成の結果として、または新たな抗原決定基の結果として生じるディスプレーを有する分子の開裂の結果として生じることがある。従って、本明細書で用いられるように、新抗原という用語は、感染(例えば、ウイルス感染、原生動物感染、または細菌感染)時に、プリオンによって伝達される疾患(例えば、BSEおよびCJD)、細胞上形質転換(癌)において発現した抗原を包含し、後者の場合には、新抗原は腫瘍関連抗原と呼ばれることがある。
【0096】
腫瘍関連抗原という用語は、本明細書では、腫瘍が生じる型の正常細胞には存在しない(または少量でまたは異なる細胞区画に存在する)形質転換(悪性または腫瘍)細胞に存在する抗原を定義するのに用いられる。腫瘍ウイルスは腫瘍抗原の発現を誘導することもでき、この抗原はウイルスによって誘導される宿主タンパク質であることが多い。
【0097】
草本薬という用語は、本明細書では、少なくとも1種類の活性成分は化学的に合成されず且つ植物の植物化学成分である医薬組成物を定義するのに用いられる。ほとんどの場合には、この非合成活性成分は(本明細書で定義されているように)単離されないが、供給源植物で会合している他の植物化学物質と共に存在している。しかしながら、幾つかの場合には、植物から誘導される(複数の)生体作用成分は濃縮画分にあるかまたは単離される(ときには、高精製度を含む)ことがある。しかしながら、多くの場合には、草本薬は植物の多かれ少なかれ粗製抽出物、浸出物または画分、または未加工の全植物体(またはその一部)さえ含んでなるが、そのような場合には、植物(または植物の部分)は通常は少なくとも乾燥されおよび/または粉砕されている。
【0098】
生体作用成分という用語は、本明細書では、これが含まれている草本薬の薬学的効力に必要であるかまたは十分である植物化学物質を定義するのに用いられる。本発明の場合には、生体作用成分は、本発明の免疫調節化合物(例えば、カスアリン、カスアリングルコシド、またはそれらの混合物)を含んでなる。
【0099】
標準仕様という用語は、本明細書では、草本薬の許容可能な品質と相関している特徴または植物化学的プロフィールを定義するのに用いられる。これに関連して、品質という用語は、草本薬の目的とする用途に対する全般的適合性を定義するのに用いられ、上記した1種類以上の(適当な濃度での)生体作用成分の存在、あるいは1種類以上の生体作用マーカーまたは1種類以上の(適当な濃度での)生体作用成分の存在と相関する植物化学的プロフィールの存在を包含する。
【0100】
植物化学的プロフィールという用語は、本明細書では、異なる植物化学成分に関連する特徴の組を定義するのに用いられる。
【0101】
本発明のピロリジジン化合物に適用される単離されたという用語は、本明細書では、化合物が自然に存在するのとは異なる物理的環境に存在していることを示すのに用いられる。例えば、単離された材料は、それが自然に存在する複合体細胞環境に関して実質的に単離(例えば、精製)されていてもよい。単離された材料を精製するときには、純度の絶対的レベルは決定的ではなく、当業者であればその材料を置くべき用途に従って適当な純度のレベルを容易に決定することができる。しかしながら、好ましいものは、90%(w/w)、99%(w/w)以上の純度レベルである。場合によっては、単離された化合物は組成物(例えば、多くの他の物質を含む幾分粗製の抽出物)または緩衝系の一部であって、例えば、他の成分を含むことがあるものを形成する。他の情況では、単離された化合物は、例えば、分光光度法、NMRまたはクロマトグラフィー(例えば、GC-MS)によって決定されるように本質的に均質に精製することができる。
【0102】
本発明のピロリジジン化合物に適用されるような薬学上許容可能な誘導体という用語は、本発明の親ピロリジジン化合物の化学的誘導体形成によって得られる(または得ることができる)化合物を定義する。従って、薬学上許容可能な誘導体は、過度の毒性、刺激またはアレルギー応答なしにヒトの組織への投与または組織と接触した使用に適する(すなわち、合理的な利益/危険比と釣り合っている)。好ましい誘導体は、本発明の親ピロリジジン化合物のアルキル化、エステル化またはアシル化によって得られる(または得ることができる)ものである。誘導体は本質的に免疫調節性であることができ、またはイン・ビボで加工されるまで不活性であることもある。後者の場合には、本発明の誘導体はプロドラッグとして作用する。特に好ましいプロドラッグは、遊離ヒドロキシルの1個以上がエステル化され且つイン・ビボで加水分解によって活性化されるエステル誘導体である。本発明の薬学上許容可能な誘導体は、親化合物の免疫調節活性の幾らかまたは全部を保持している。幾つかの場合には、免疫調節活性は誘導体形成によって増加する。誘導体形成は、化合物の他の生物学的活性、例えば、バイオアベイラビリティーおよび/またはグリコシダーゼ阻害活性および/またはグリコシダーゼ阻害プロフィールを増加させることもできる。例えば、誘導体形成は、グリコシダーゼ阻害能および/または特異性を増加させることができる。
【0103】
本発明のピロリジジン化合物に適用されるような薬学上許容可能な塩という用語は、過度の毒性、刺激、アレルギー応答なしにヒトおよび下等動物の組織と接触して使用するのに適しており且つ合理的な利益/危険比と釣り合っている遊離塩基化合物の任意の毒性がない有機または無機酸付加塩を定義する。適当な薬学上許容可能な塩は、当該技術分野で周知である。例は、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸およびリン酸)、有機カルボン酸(例えば、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、ジヒドロキシマレイン酸、安息香酸、フェニル酢酸、4-アミノ安息香酸、4-ヒドロキシ安息香酸、アントラニル酸、桂皮酸、サリチル酸、2-フェノキシ安息香酸、2-アセトキシ安息香酸およびマンデル酸)、および有機スルホン酸(例えば、メタンスルホン酸およびp-トルエンスルホン酸)との塩である。本発明の薬剤は、アルカリ金属ハロゲン化物、例えば、塩化ナトリウム、ヨウ化ナトリウムまたはヨウ化リチウムとの反応によって塩に転換することもできる。好ましくは、本発明のピロリジジン化合物は、アセトンのような溶媒の存在下にて化学量論的量の塩化ナトリウムと反応させることによってその塩に転換される。
【0104】
これらの塩および遊離塩基化合物は、水和したまたは実質的に無水の形態のいずれで存在することもできる。本発明の化合物の結晶形態も意図され、一般に本発明のピロリジジン化合物の酸付加塩は水および様々な親水性有機溶媒に可溶性であり且つそれらの遊離塩基形態と比較して一層高い融点と増加した溶解度を示す結晶性材料である。
【0105】
最も広義には、本発明は、本発明のピロリジジン化合物の総ての光学異性体、ラセミ形態およびジアステレオ異性体を意図する。当業者であれば、本発明の化合物に含まれる不整置換炭素原子により、本発明のピロリジジン化合物は光学活性およびラセミ形態で存在し、合成および/または単離することができる。従って、本発明のピロリジジン化合物への言及は、ジアステレオ異性体の混合物、個々のジアステレオ異性体、鏡像異性体の混合物としての、並びに個々の鏡像異性体の形態でのピロリジジン化合物を包含する。
【0106】
従って、本発明は、本発明の化合物の総ての光学異性体およびラセミ形態を意図し、特に断らない限り(例えば、ダッシュ-楔構造式の使用によって)、本明細書に示される化合物はそのように描写された化合物の総ての可能な光学異性体を包含することを意図する。化合物の立体化学的形態が薬学的有用性にとって重要である場合には、本発明は単離されたユートマー(eutomer)の使用を意図する。
【0107】
本発明の化合物の生物学的活性
どのような理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明の化合物の免疫調節活性はイン・ビボでのサイトカインの刺激および/または抑制によって生じることがあると考えられる。特に、本発明の化合物の免疫調節活性は、インターロイキン2および/または12(IL-2および/またはIL-12)など1種類以上のサイトカイン(例えば、1種類以上のTh1サイトカイン)の分泌の刺激、および/または1種類以上のTh2サイトカイン(例えば、IL-5)の分泌の抑制によって生じると考えられる。
【0108】
特に、本発明の化合物の免疫刺激活性は、樹状細胞によるIL-12およびIL-2の刺激によって生じると考えられる。これによってNK細胞が刺激されて、IFN-γが産生され、CD4+Th1細胞の発生が誘発される。次に、誘発されたTh1細胞は、IFN-γおよびIL-2を産生する。次いで、IL-2は、Th1細胞の増殖と病原体(例えば、腫瘍およびウイルス)特異性CD8+T細胞の分化を更に高める。IL-2は、先天性免疫系のNK細胞の細胞融解活性も刺激する。
【0109】
IL-12は、1型免疫(Th1応答)の一次メディエーターである。これはナチュラルキラー(NK)細胞を誘導して、先天性免疫応答の一部としてのIFN-γを産生し、CD4+Thl細胞およびIFN-γを産生する細胞傷害性CD8+細胞の膨張を促進する。従って、これは、腫瘍のT細胞侵襲並びに腫瘍細胞のT細胞侵襲に対する感受性を増加する。
【0110】
例えば、本発明の化合物は、好ましくはサイトカイン分泌の刺激因子である。特に好ましいものは、イン・ビボで1種類以上のサイトカイン(例えば、Th1サイトカイン、例えば、IL-12および/またはIL-2であって、場合によっては1種類以上の他のサイトカインと一緒のもの)の放出を誘発し、増し、活性化しまたは刺激する化合物である。
【0111】
本発明の化合物のこの一次免疫調節活性は、ある種の医療用途では特に重要である(以下において、詳細に説明する)。例えば、IL-12の産生増加によって、HIV-1に感染した個体およびAIDS患者の先天性および細胞性免疫の抑制を克服することができる。
【0112】
本発明の化合物によって示されたサイトカイン刺激は、全部または一部が補助刺激物質の存在に依存することがある。このような補助刺激物質としては、例えば、トール様受容体(TLR)リガンドなどの先天性免疫系を刺激する物質が挙げられる。これらのリガンドとしては、リポ多糖類(LPS)および/またはモノホスホリル脂質のような微生物産物、並びに微生物感染に関連した他の分子が挙げられる。多くの用途において、このような補助刺激物質は、本発明の化合物の投与時に治療を受ける患者に存在するであろう。
【0113】
いかなる理論によって束縛されることも望むものではないが、本発明の化合物の薬理作用の少なくとも幾らかは二次的グリコシダーゼ阻害活性に基づく可能性がある。
【0114】
このようなグリコシダーゼ阻害により、イン・ビボで下記の
・腫瘍細胞グリコシル化(例えば、腫瘍抗原グリコシル化)の修飾、
・ウイルスタンパク質グリコシル化(例えば、ビリオン抗原グリコシル化)の修飾、
・感染宿主細胞における細胞-表面タンパク質グリコシル化の修飾、
・細菌細胞壁の修飾
のいずれかまたは全部が生じる可能性がある。
【0115】
従って、この補助的生物活性は、本発明の幾つかの好ましい態様において一次免疫調節活性を増加させることができる。これは、増殖性疾患(例えば、癌)の治療などのある種の医療用途、または感染が免疫抑制に伴う用途で特に望ましいことがある。 例えば、ビリオン抗原グリコシル化の選択的修飾により、感染性ウイルスを低(または非)感染性とし、および/または内在性免疫応答に対して一層感受性にすることがある。特に、本発明の化合物はHIVウイルスエンベロープ糖タンパク質gp120グリコシル化パターンを変更し、これにより細胞表面受容体への結合を緩衝することによって宿主細胞へのHIVの侵入を阻止することができる。
【0116】
従って、本発明の化合物は、好ましくは(しかし、必ずしもというわけではないが)グリコシダーゼ阻害剤である。特に好ましいものは、マンノシダーゼよりはむしろグルコシダーゼIなどのグリコシダーゼ阻害の特異性を示す化合物である。従って、このような好ましい化合物は、スワインソニンおよびその類似体はマンノシダーゼの強力な特異的阻害剤であるので、それらとはそのグリコシダーゼ阻害プロフィールが全く異なっている可能性がある。
【0117】
本発明の化合物の医療用途
本発明は、医療、例えば、治療、予防および/または診断の方法に広汎な用途を見出している。
【0118】
これらの医療用途は、ヒトなどの任意の温血動物に応用することができる。これらの用途としては、獣医用途であって、本発明のピロリジジン化合物を霊長類、イヌ、ネコ、ウマ、ウシおよび羊などのヒト以外の動物に投与するものが挙げられる。
【0119】
本発明のピロリジジン化合物は、免疫調節因子である。従って、それらは、免疫系の刺激、増加または誘導が示されおよび/または免疫応答の一部または全部の抑制または除去が示される疾患の治療または予防に通常応用される。
【0120】
本発明のピロリジジン化合物の特定の医療用途を、以下に詳細に説明する。説明または特許請求の範囲における療法および/または予防という表現は、それ相当に解釈されるべきであり、とりわけ下記の特定の応用を包含するものと解釈される。
【0121】
1. Th1:Th2応答比の増加
一般的考察
最初に述べたように、免疫応答は2種類の異なる型であるTh1応答(1型、細胞または細胞性免疫)およびTh2応答(2型、体液性または抗体依存性免疫)を含んでなる。
【0122】
これらのTh1およびTh2応答は相互に排他的ではなく、多くの場合には平行して起こる。このような場合には、Th1/Th2応答のバランスが(本明細書で説明されるような)免疫学的防御の性質(および影響)を決定する。
【0123】
Th1/Th2バランス(Th1:Th2応答比として表すことができる)は、少なくとも部分的には免疫系を最初に刺激するときにナイーブヘルパーT細胞の抗原プライミングが起こる環境の性質(および特に、サイトカイン環境)によって決定される。
【0124】
Th1およびTh2応答は、とりわけナイーブヘルパーT細胞のプライミングおよびそれに続く分極に付随するある種の表現型変化に基づいて識別される。これらの表現型変化は、少なくとも部分的には、分極したヘルパーT細胞によって分泌されるサイトカインの性質を特徴とする。
【0125】
Th1細胞はいわゆるTh1サイトカインであって、IL-1、TNF、IL-2、IFN-γ、IL-12、および/またはIL-18の1種類以上を包含するものを産生する。Th1サイトカインはマクロファージの活性化に関与し、Th1細胞は、細菌およびウイルスの攻撃並びに悪性細胞に対する防御の重要な部分を形成する細胞依存性防御(細胞傷害性Tリンパ球産生など)を編成する。
【0126】
Th2細胞は、いわゆるTh2サイトカインであって、IL-4、IL-5、IL-10、およびIL-I3の1種類以上を包含するものを産生する。Th2サイトカインは、様々な抗体の産生を促進し、Th1応答を抑制することができる。
【0127】
従って、マウスでは、IFN-γを作るがIL-4は作らない細胞はTh1として分類され、IL-4を発現するがIFN-γを発現しないCD4+細胞はTh2として分類される。この区別はヒトでは明確ではないが(Th1またはTh2サイトカインのみを産生するT細胞はヒトには存在しないと思われる)、T細胞応答の表現型(Th1またはTh2)は、ヒトでは発現したTh1対Th2サイトカインの比(通常は、IFN-γ対IL-4および/またはIL-5の比)に基づいて識別することができる。
【0128】
免疫応答の型がその強度またはその期間と全く同様に治療および予防に重要であることがますます実感されてきている。例えば、過剰のTh1応答は、自己免疫疾患、不適当な炎症性応答および移植拒絶反応を生じる可能性がある。過剰のTh2応答は、アレルギーや喘息を生じる可能性がある。更に、Th1:Th2比の動揺は多くの免疫学的疾患や障害の徴候であり、Th1:Th2比を変更する方法の開発が最優先である。
【0129】
本発明の免疫調節ピロリジジン化合物は、イン・ビボで(例えば、優先的にTh1応答を促進しおよび/または優先的にTh2応答を抑制することによって)Th1:Th2応答比を増加させることができる。
【0130】
例えば、本発明の化合物は、(例えば、優先的にTh1応答を促進しおよび/または優先的にTh2応答を抑制することによって)Th1:Th2応答比を増加させることを含んでなる治療および/または予防の方法に応用される。
【0131】
従って、本明細書で意図される医療用途としては、Th1:Th2応答比の増加が示唆されまたは所望である任意の疾患、疾病または障害が挙げられる。例えば、意図される医療用途としては、Th1応答の刺激および/またはTh2応答の抑制が示唆されまたは所望な疾患、疾病または障害が挙げられる。
【0132】
本発明の化合物がTh1:Th2応答比を増加する(複数の)機構は、依然として完全には理解されていない。活性は、例えば、樹状細胞における選択的Th1サイトカイン誘導(Th1およびTh2サイトカイン相互阻害を示すので)に基づいていると思われる。
【0133】
例えば、本発明の化合物は、1種類以上のTh1サイトカイン(例えば、IFN-γ、IL-12、IL-2およびIL-18から選択される1種類以上のサイトカイン)の放出および/または(イン・ビトロまたはイン・ビボでの)活性を(直接的または間接的に)誘導し、増強し、活性化し、または刺激することができる。特に好ましいものは、IFN-γ、IL-12、および/またはIL-2の放出および/または活性を誘導し、増強し、活性化し、または刺激する化合物である。
【0134】
特に好ましいものは、樹状細胞でIL-2およびIL-12の放出を刺激する化合物である。
【0135】
本発明の化合物は、1種類以上のTh2サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-10およびIL-13から選択される1種類以上のサイトカイン)の(イン・ビトロおよび/またはイン・ビボでの)放出および/または活性を(直接または間接的に)抑制または不活性化することもできる。特に好ましいものは、IL-5の(イン・ビトロおよび/またはイン・ビボでの)放出および/または活性を抑制または不活性化する化合物である。
【0136】
従って、特に好ましいものは、Th1サイトカイン刺激活性を補足的なTh2サイトカイン阻害活性と共に示す化合物である。
【0137】
Th1:Th2応答比の増加に基づく一般的クラスの治療の範囲内にある応用の特定例を、次節で説明する。
【0138】
Th1関連疾患
Th1関連疾患は、Th1細胞が疾患、障害、症候群、疾病または感染症の影響の予防、治癒または緩和に関与している疾患、障害、症候群、疾病または感染症である。
【0139】
Th1関連疾患としては、疾患、障害、症候群、疾病または感染症であって、免疫応答のTh1成分が病理学的に抑制されているもの、または疾患、障害、症候群、疾病または感染症であって、Th1応答の刺激が示されるものを挙げることができる。
【0140】
このような疾病は、例えば、ある種の増殖性疾患(典型的には、癌)であって、増殖(例えば、腫瘍)細胞がTh1応答の1種類以上の成分に抑制効果を発揮するものから生じる可能性がある。例えば、腫瘍細胞は樹状細胞を阻害し、T細胞上で阻害受容体を発現させ、MHCクラスI発現をダウンレギュレーションし、抗炎症性因子および免疫細胞の細胞傷害性を失活または抑制する免疫抑制サイトカインの分泌を誘発することができる。
【0141】
例えば、本発明の化合物Th1関連疾患の治療または予防に応用することができる。
【0142】
Th1関連疾患の例としては、感染性疾患(特に、ウイルス感染症)および増殖性疾患(例えば、癌)が挙げられる。
【0143】
例えば、Th1関連疾患としては、任意の悪性または前癌性疾患、増殖性または過剰増殖性疾患、または身体の任意の細胞または組織の増殖能または作用における機能的または他の障害または異常が挙げられる。
【0144】
例えば、本発明は、乳癌、結腸癌、肺癌および前立腺癌の治療または予防に応用することができる。これは、血液およびリンパ系の癌(ホジキン病、白血病、リンパ腫、多発性黒色腫、およびヴァルデンストレーム病など)、皮膚癌(悪性黒色腫など)、消化管の癌(頭部および首部癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、結直腸癌、肛門癌など)、生殖器および泌尿器系の癌(腎臓癌、膀胱癌、精巣癌、前立腺癌など)、女性の癌(乳癌、卵巣癌、婦人科癌、および絨毛上皮癌など)、並びに脳、骨カルチノイド、鼻咽腔、腹膜後、甲状腺および軟部組織腫瘍の治療または予防に応用することもできる。これは、未知の原発性部位の癌の治療または予防に応用することもできる。
【0145】
Th1関連疾患としては、細菌、プリオン(例えば、BSEおよびCJD)、ウイルス、真菌、原生動物および後生動物感染症が挙げられる。例えば、Th1関連感染性疾患としては、呼吸器シンシチウムウイルス(RSV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、エプスタイン-バー、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペス1型および2型、陰部ヘルペス、ヘルペス性角膜炎、ヘルペス脳炎、帯状ヘルペス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型ウイルス、ハンターンウイルス(出血熱)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、結核、ハンセン病、および麻疹による感染症が挙げられる。
【0146】
特に好ましいTh1関連感染性疾患としては、HIV/AIDS、リーシュマニア症、トリパノソーマ症、インフルエンザ、結核およびマラリアなど病原体が細胞内区画を占めるものが挙げられる。
【0147】
本発明の化合物は、Th1免疫応答が欠損している患者の治療にも応用することができる。このような患者としては、新生児、幼児であって、Th1応答が未成熟で完全には発達していないもの、並びに高齢患者であって、Th1応答が老化または経時的に欠陥を生じているものを挙げることができる。このような患者個体群では、本発明の化合物を(例えば、ウイルス)感染の危険性を減少させる全身性1型免疫刺激因子として予防的に用いることができる。
【0148】
Th2関連疾患およびアレルギー
Th2関連疾患は、Th2細胞が疾患、障害、症候群、疾病または感染症の影響に関与する(例えば、支持し、引き起こしまたは伝達する)疾患、障害、症候群、疾病または感染症である。
【0149】
例えば、本発明の化合物は、Th2関連疾患の治療または予防に応用することができる。
【0150】
本発明の化合物により治療可能なTh2関連疾患の一つの重要なクラスは、アレルギー疾患である。
【0151】
遺伝的に病気に罹りやすい個体は、様々な環境的供給源から生じる抗原に感作する(アレルギー性になる)可能性があることは周知である。アレルギー反応は、以前に感作した個体を抗原または構造的に類似したまたは同一源のアレルゲンに再度暴露するときに起こる。従って、本明細書で用いられるように、アレルギーという用語は、後でアレルゲンに暴露されたときに有害なおよび/または苦痛を感じる免疫学的反応を生じる特定の抗原(アレルゲン)に暴露することによって誘発される過敏症の状態を定義するのに用いられる。
【0152】
アレルギーに見られる有害な、苦痛を感じるおよび/または望ましくない免疫学的反応としては、広汎な症状が挙げられる。消化管、皮膚、肺、鼻、および中枢神経系など多くの様々な器官や組織が影響を受けることがある。症状としては、腹痛、腹部鼓脹、腸機能の障害、嘔吐、発疹、皮膚炎症、喘鳴および息切れ、鼻水および鼻づまり、頭痛、および情緒不安定を挙げることができる。重篤な場合には、循環器および呼吸器系が傷つき、アナフィラキシーショックにより極端な場合には死亡する。
【0153】
アレルギーの特徴である有害な、望ましくないおよび/または苦痛を感じる免疫学的反応は、Th2応答成分を有する。
【0154】
上記のように、本発明の化合物は、 of本発明 may suppress or inactivate (either directly or indirectly) the releaseおよび/またはactivity (in vitroおよび/またはin vivo) of1種類以上のTh2サイトカイン(例えば、IL-4、IL-5、IL-10およびIL-13から選択される1種類以上のサイトカイン)の(イン・ビトロおよび/またはイン・ビボでの)放出および/または活性を(直接または間接的に)抑制または不活性化することができる。例えば、本発明の化合物を用いて、アレルゲンに対するTh2応答を阻害し、抑制しまたは除去することによってアレルギー反応の特徴である有害なおよび/または苦痛を感じる免疫学的反応の治療または緩和調節を行うことができる。
【0155】
従って、本発明の化合物は、アレルギーの治療または予防に応用することができる。
【0156】
アトピー性アレルギー、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、アトピー性皮膚炎、過好酸球増加症、過敏性腸管症候群、アレルゲン性偏頭痛、細菌アレルギー、気管支アレルギー (喘息)、接触アレルギー(皮膚炎)、遅延型アレルギー、花粉アレルギー(枯草熱)、薬物アレルギー、刺創アレルギー、噛み傷アレルギー、胃腸または食物アレルギー(潰瘍性大腸炎およびクローン病などの炎症性腸管疾患と関連したアレルギー)、および物理的アレルギーなどのいかなるアレルギーも、本発明によって治療することができる。物理的アレルギーとしては、寒冷アレルギー(寒冷蕁麻疹または血管性水腫)、熱アレルギー(コリン作動性蕁麻疹)、および光線過敏症が挙げられる。
【0157】
特に重要なものは、喘息の治療または予防である。
【0158】
2. 血液回復
本発明のピロリジジン化合物は脾臓および骨髄細胞増殖を増加し、脊髄増殖性 物質として作用することができる。従って、それらは、血液回復薬として応用することができる。
【0159】
血液回復は、免疫抑制療法(シクロスポリンA、アザチオプリンまたは免疫抑制放射線療法など)、化学療法(環特異性および非特異性化学療法剤を用いる治療など)、ステロイド投与、または他の形態の外科的または内科的介入(放射線療法など)の後に指示することができる。例えば、本発明のピロリジジン化合物の血液回復薬としての使用は、脾臓および骨髄細胞個体数を下げる傾向がある他の治療法の補助とすることができる。本発明による特に好ましい補助的療法としては、(a)化学療法、および/または(b)放射線療法、および/または(c)骨髄移植、および/または(d)血液除去的免疫療法(haemoablative immunotherapy)に補助的な本発明のピロリジジン化合物の免疫回復用量の投与が挙げられる。
【0160】
3. 免疫抑制の緩和
本発明のピロリジジン化合物を用いて、免疫系が部分的にまたは完全に抑制されまたは押し下げられている状態を緩和、制御または調節することができる。このような状態は、先天性(遺伝)疾患から生じ、(例えば、感染症または悪性腫瘍によって)獲得され、または(例えば、移植片または癌の処理の一部として故意に)誘導されることがある。
【0161】
例えば、本発明のピロリジジン化合物は、様々な疾患(ある種の癌など)の治療および/または処理、または医療介入(放射線療法、免疫抑制療法(例えば、シクロスポリンA、アザチオプリンの投与、または免疫抑制放射線療法)、化学療法および細胞傷害性薬剤投与(例えば、リシン、シクロホスファミド、コルチゾンアセテート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、アドリアマイシン、 6-メルカプトプリン、5-フルオロウラシル、マイトマイシンC、クロラムフェニコールの投与、および他のステロイド基剤の療法)における補助免疫調節剤(例えば、免疫刺激薬)として応用することができる。従って、それらは、They may therefore be used aschemoprotectants in the management of様々な癌や感染症 (細菌およびウイルス感染症、例えば、NIV感染症)の処理に化学防御薬として用い、または通常の免疫療法中に適当且つ補助的免疫治療活性を誘発させることができる。
【0162】
特に、本発明のピロリジジン化合物は、多くのウイルス感染症 (AIDSにおけるHIV感染など)のような免疫抑制状態と関連した微生物感染症の治療または処理において、および患者の免疫が低下した(例えば、骨髄移植を受けた患者や。化学的または腫瘍によって誘発された免疫抑制の患者におけるC型肝炎、または他のウイルスまたは細菌、真菌および寄生生物などの感染性物質に感染した後に)他の状態において、免疫刺激薬として応用することができる。
【0163】
本発明により治療可能な免疫抑制状態を生じる可能性がある他の疾患または障害としては、毛細管拡張性運動失調、ディ・ジョージ症候群、チェディアック-東症候群、ヨブ症候群、白血球接着不全、汎低γグロブリン血症(panhypogammaglobulinemia)(例えば、ブルトン病または先天的無ガンマグロブリン血症)、IgAの選択的欠損、複合型免疫欠損症、ヴィスコット‐オールドリッチ症候群、および補体欠損症が挙げられる。これは器官および/または組織 (例えば、骨髄)移植または移植術と関連していることがあり、これらの応用において、本発明のピロリジジン化合物を手術および手術後の免疫状態の処理などの全般的治療法の一部として補助的に用いることができる。
【0164】
4. サイトカイン刺激
本発明のピロリジジン化合物を用いて、様々なインターロイキン(例えば、IL-2および/またはIL-12)などの様々なサイトカインをイン・ビボで誘発し、増強し、または活性化することができる。
【0165】
従って、本発明のピロリジジン化合物は、 find general application in the1種類以上のサイトカイン(例えば、IL-12および/またはIL-2)のイン・ビボでの誘導、増強または活性化が指示される疾患の治療または予防に一般的に応用される。このような応用を用いて、樹状細胞、マクロファージ (例えば、組織特異性マクロファージ)、CTL、NK、NKT、BおよびLAK細胞など細胞性免疫系の特定成分を刺激することができる。
【0166】
このような応用では、本発明の化合物を、 as an adjunct to遺伝子therapies designed to increase the産生 of内在性サイトカイン(例えば、IL-2)の産生を増加させるようにデザインされた遺伝子療法の添加物として用いることができる。
【0167】
5. 増殖性疾患の治療
本発明は、様々な癌および癌転移などの増殖性疾患の治療に用いることができる。例えば、本発明のピロリジジン化合物は、特に白血病、リンパ腫、黒色腫、アデノーマ、肉腫、固形組織の癌、黒色腫(目の黒色腫など)、膵臓癌、子宮頸部癌、腎臓、胃、肺、卵巣、直腸、乳、前立腺、腸、胃、肝臓、甲状腺、頸、子宮頸部、唾液腺、脚、舌、口唇、胆管、骨盤、縦隔、尿道、肺、膀胱、食道、および結腸癌、カポシ肉腫(例えば、AIDSに関連したとき)の治療に応用することができる。
【0168】
このような応用では、本発明の化合物は二次的グリコシダーゼ阻害活性を示すことができる。
【0169】
従って、本発明は、腫瘍細胞グリコシル化(例えば、腫瘍抗原グリコシル化)の修飾、ウイルスタンパク質グリコシル化(例えば、ビリオン抗原グリコシル化)の修飾、感染宿主細胞における細胞表面タンパク質グリコシル化の修飾、および/または細菌細胞壁の修飾により免疫応答の増加を促進しまたは成長/感染性を直接阻害することを含んでなる、治療または予防法に応用することができる。
【0170】
6. 抗原性補強剤としての使用
本発明のピロリジジン化合物はワクチン補助薬として用いることができ、この態様では、抗原、特に内在性免疫原性が低い抗原に対する免疫応答を促進し、誘導し、または増強することができる。どのような理論によっても束縛されることを望むものではないが、本発明のピロリジジン化合物はサイトカイン放出によりB細胞およびCTL応答に対するT細胞の援助を促進することによってワクチン免疫原性を増強することができる。それらは、癌またはウイルス抗原のグリコシル化を変化させ、ワクチンの有効性を増加させることもできる。
【0171】
補助薬として用いるときには、本発明の化合物は、ワクチンの投与と同時に、別個にまたは連続して投与することができる。本発明は、いかなるワクチンに応用することもできるが、特にサブユニットワクチン、複合ワクチン、DNAワクチン、形質転換ワクチン、または粘膜ワクチンとして用いることができる。ワクチンは、治療用または予防用であることができる。これは、ヒトおよびヒト以外の患者のいずれでも免疫予防的または免疫治療的に用いることができる。好ましいヒト以外の患者としては、哺乳類および鳥類が挙げられる。特に好ましいものは、家畜への応用である。このような応用としては、飼育動物(例えば、イヌおよびネコ)および家畜(例えば、羊、ウシ、ブタ、ウマ、ニワトリ、七面鳥)の感染症の治療または予防が挙げられる。
【0172】
例えば、幾つかの態様では、本発明のピロリジジン化合物は他の(複数の)ワクチン成分と混合して存在することができ、あるいはこれは補助薬として用いられているが、他のワクチン成分と共に一緒に包装することもできる。もう一つの態様では、補助薬としての本発明のピロリジジン化合物の使用は、ワクチン成分と一緒に包装され且つワクチン接種手順、ワクチン処方および/または薬量学に関する情報および/または説明書の内容に反映されるだけである。
【0173】
7. 樹状細胞に基づく応用
上記のように、本発明のピロリジジン化合物は樹状細胞で持続的且つ顕著なサイトカイン産生(例えば、持続的且つ顕著なIL-12および/またはIL-2の産生)を誘導することができる。例えば、本発明の化合物は、樹状細胞においてサイトカイン産生の誘導を含んでなる、または樹状細胞におけるサイトカイン産生の誘導が指示されまたは必要とされる治療または予防の方法に応用することができる。
【0174】
樹状細胞ワクチン
樹状細胞に基づく治療パラダイムでは、細胞に抗原または複数の抗原(例えば、(複数の)腫瘍抗原)をパルシング(プライミングまたはスパイク)した後、投与してTh1免疫応答を促進する。応答性T細胞としては、ヘルパー細胞、特に、(IFN-γを産生する)Th1CD4+細胞、およびキラー細胞(特に、CD8+細胞傷害性Tリンパ球)が挙げられる。樹状細胞は、他のクラスのリンパ球(B、NK、およびNKT細胞)によって応答を伝達することもできる。それらは、ワクチン接種の決定的目的であるT細胞記憶を誘発することもできる。
【0175】
本発明の樹状細胞ワクチンで使用するための抗原選択に関しては、定義したおよび未定義抗原のいずれも用いることができる。抗原は異種抗原または自己抗原であることができる。1種類以上の新抗原を選択することができ、癌治療の場合には、(複数の)新抗原は腫瘍関連抗原を含んでなることができる。
【0176】
しかしながら、本発明による使用に最も好ましいものは、定義された抗原を含むペプチド(例えば、合成の9-11アミノ酸ペプチド)である。このようなペプチドは、天然配列を含んでなることができる。あるいは、それらはMHC 結合を増強する目的でデザインされた合成類似体であってもよい。
【0177】
他の態様では、本発明によって使用される抗原は免疫複合体の形態で提供される。これらは、好ましくはFc受容体担持DCに伝達され、MHCクラスIおよびMHCクラスIIペプチド配列が形成されるようにする。この方法では、樹状細胞ワクチンを本発明に準じて用いて、CTLおよびTh細胞を両方とも誘導することができる。
【0178】
本発明による使用を目的とする抗原選択のもう一つの方法では、任意の所定の腫瘍の全抗原レパートリー(またはウイルス感染細胞のような他のターゲット細胞)を検討する。例えば、本発明のもう一つの態様では、DC-腫瘍細胞ハイブリッドであって、樹状細胞をハイブリダイゼーションの前または後に化合物で処理する(これによって、IL-2の発現を誘導する)ものが提供される。
【0179】
もう一つの態様では、壊死性またはアポトーシス性腫瘍細胞または細胞溶解物(例えば、感染細胞または腫瘍細胞の溶解物)を用いる。
【0180】
(腫瘍細胞系または定義された抗原よりはむしろ)新鮮な腫瘍細胞から誘導される抗原を、用いることもできる。
【0181】
本発明の化合物を、細胞膜または細胞内区画(例えば、WO 96017614号明細書に記載。上記特許明細書の内容は、その開示の一部として本明細書に引用されている)に導入することによって細胞性抗原に組込むことも意図される。
【0182】
様々な手法を用いて、選択した(複数の)抗原をDCに伝達(当該技術分野では抗原ローディング、パルシング、プライミングまたはスパイキングと様々に呼ばれる)することができる。DCを内部に装填するローディング法が好ましく、これは細胞貫通部分に結合したペプチドを用いて達成することができる。
【0183】
抗原は、核酸のコード化による(例えば、電気穿孔による)DCのトランスフェクションによって装填して、抗原をDCによって発現させ、加工して、細胞表面に提示することもできる。この方法では、高価なGMPタンパク質および抗体の必要がなくなる。RNAは一過性発現(抗原プロセシングには十分であっても)しか生成せず且つDNAの組込みおよび付随する長期発現/突然変異誘発に関連した潜在的問題を回避するので、RNAはこの目的に好ましい。このようなトランスフェクション法は、全またはPCR増幅した腫瘍RNAの使用によりターゲット細胞の全抗原量を調べることもできる。
【0184】
この方法で樹状細胞を使用する最新のやり方は、特異性腫瘍抗原を同定し、それぞれの患者によって発現された特定のMHC対立形質に結合する抗原性ペプチドを同定することに集中している。しかしながら、更に一般的な方法は、存在する抗原とは無関係に、抗原プライミングを用いてまたは用いることなくTh1応答を増強するのに適当な方法での樹状細胞の刺激を伴う。次に、活性化した樹状細胞によるサイトカイン産生が、適当なTh1応答を促進することとなる。
【0185】
本発明の樹状細胞を基剤とするワクチンは、特に、様々な増殖性疾患(下記のような様々な癌など)の治療または予防に応用することができる。このような応用では、樹状細胞を、好ましくはエクス・ビボにて1種類以上の腫瘍抗原とエクス・ビボ(これらの細胞のパルシング前または後)またはイン・ビボ(例えば、樹状細胞と本発明の化合物を同時、別個または連続的に一緒に投与することによる)にて樹状細胞を化合物と接触させることによりワクチンの樹状細胞成分を増強するのに用いる本発明の化合物でパルシング(プライミングまたはスパイキング)する。
【0186】
本発明の樹状細胞を基剤とするワクチンを、任意の悪性または前癌性疾患、増殖性または過剰増殖性疾患、または身体の任意の細胞または組織の増殖能または性における機能または他の障害または異常から生じるまたはに由来する任意の疾患の治療または予防に用いることができる。
【0187】
例えば、本発明は、乳癌、結腸癌、肺癌および前立腺癌の治療または予防に応用することができる。これは、血液およびリンパ系の癌(ホジキン病、白血病、リンパ腫、多発性黒色腫、およびヴァルデンストレーム病など)、皮膚癌(悪性黒色腫など)、消化管の癌(頭部および首部癌、食道癌、胃癌、膵臓癌、肝臓癌、結直腸癌、肛門癌など)、生殖器および泌尿器系の癌(腎臓癌、膀胱癌、精巣癌、前立腺癌など)、女性の癌(乳癌、卵巣癌、婦人科癌、および絨毛上皮癌など)、並びに脳、骨カルチノイド、鼻咽腔、腹膜後、甲状腺および軟部組織腫瘍の治療または予防に応用することもできる。これは、未知の原発性部位の癌の治療または予防に応用することもできる。
【0188】
本発明の樹状細胞を基剤とするワクチンは、細菌、ウイルス、真菌、原生動物および後生動物感染症などの様々な感染症の治療または予防に応用することもできる。 例えば、ワクチンは、呼吸器シンシチウムウイルス(RSV)、エプスタイン-バー、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペス1型および2型、陰部ヘルペス、ヘルペス性角膜炎、ヘルペス脳炎、帯状ヘルペス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、インフルエンザA型ウイルス、ハンターンウイルス(出血熱)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、結核、ハンセン病、および麻疹による感染症の治療または予防に用いることができる。
【0189】
特に好ましいものは、HIV/AIDS、リーシュマニア、トリパノソーマ症、インフルエンザ、結核およびマラリアなどの、治療または予防 of感染症 in which病原体が細胞内区画を占めまたは宿主細胞による新抗原の発現を引き起こす感染症の治療または予防である。
【0190】
本発明は、存在する抗原には関係なく且つ抗原プライミングによりまたはなしで本発明の化合物による樹状細胞の刺激を伴うDC細胞に基づく療法の更に一般的な方法も意図する。
【0191】
例えば、本発明は、本発明の化合物に暴露した樹状細胞を疾患または組織にターゲッティングし(例えば、腫瘍に直接投与し)、細胞が内在性T細胞を節外でプライミングすることができる療法に応用することができる。このような態様では、本発明は、DCの腫瘍へのターゲッティングと、それらのイン・シテューでの活性化によりエクス・ビボでの抗原ローディングの必要なしで免疫応答を誘発することを意図する。
【0192】
更にもう一つの態様では、本発明は、抗原をイン・ビボでDCにターゲッティングした後、これを膨張および誘導させてイン・シテューで成熟させる(1種類以上のDC成熟刺激薬の同時投与による)、イン・シテューでのDCワクチン接種を意図する。このような態様では、抗原を任意の好都合な方法、例えば、エクソソームを用いて内在性DCにターゲッティングする(Thery et al. (2002) Nat Rev Immunol 2: 569-579に記載)。
【0193】
任意のクラスの樹状細胞を、本発明によって用いることができる。例えば、樹状細胞は、脊髄またはリンパ系、またはそれらの混合物でよい。脊髄性樹状細胞を用いる場合には、ランゲルハンス細胞の型または間質DCでよい。あるいは、これらの脊髄性サブセットの混合物を用いてもよい。特に好ましいものは、単球由来のDC(Mo-DC)の使用である。
【0194】
ヘルパータンパク質を用いて、本発明の樹状細胞ワクチン活性を増強してもよい。
【0195】
自己免疫疾患に対する樹状細胞に基づく方法
樹状細胞は、免疫学的寛容の調節および維持にも関与しており、成熟の非存在下では、細胞は抗原特異性サイレンシングまたは寛容を誘発する。例えば、別の樹状細胞に基づく治療パラダイムでは、細胞を自己免疫疾患と闘うようにデザインした免疫調節介入の一部として投与する。
【0196】
このような応用では、樹状細胞の抑制能力は、サイトカインコード化する遺伝子でイン・ビトロでトランスフェクションすることによって増強された。しかしながら、このような遺伝子療法は本質的に危険であり、一層効率的で魅力的な方法は、樹状細胞で適当なサイトカイン分泌パターンを刺激する生物活性化合物で樹状細胞をイン・ビトロでパルシングすることとなる。
【0197】
上記のように、本発明のピロリジジン化合物が樹状細胞で持続的且つ顕著なサイトカイン産生を誘導することができるを見出した。従って、本発明の化合物は、樹状細胞抑制能力の増強に応用することができる。
【0198】
例えば、本発明は、重症筋無力症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、強皮症、多発性筋炎および皮膚骨化症、強直性脊椎炎、およびリウマチ熱、インスリン依存性糖尿病、甲状腺疾患(グレーヴズ病および橋本甲状腺炎など)、アジソン病、多発性硬化症、乾癬、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、および自己免疫男性および女性不妊症の治療または予防に応用することができる。
【0199】
8. 創傷の治癒
本発明のピロリジジン化合物は、通常は非治癒性の感染性疾患モデルにおけるエクス・ビボでのTh2型脾臓細胞応答を逆転することができる。抗原特異性脾臓細胞IFN-γを、そのようなモデルで有意に増加させ且つIL-5産生を有意に減少させ、治癒性応答を示すことができる。
【0200】
例えば、本発明は、創傷の治療に応用することができる。特に、本発明は、創傷および外傷、例えば、手術後の治癒、火傷、感染症(例えば、壊死性外傷)、悪性腫瘍またはトラウマ(例えば、発作のような循環器に関連したまたは外科的介入の一部として誘導される)に関連したものの治療または予防に応用することができる。
【0201】
創傷治療は、Th2応答の(例えば、不適当または有害な炎症性応答を除去しまたは抑制するための)選択的抑制または除去を伴うことがある。
【0202】
薬量学
本発明のピロリジジン化合物は、経口、または静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、経皮、気道(エアゾール)、直腸、膣および局所(口内および舌下)投与などの非経口経路によって投与することができる。
【0203】
投与されるピロリジジン化合物の量は、用いられる特定の投薬単位、治療期間、治療を受ける患者の年齢および性別、治療を行う疾患の性質および程度、および選択される特定のピロリジジン化合物によって広範囲に変動することができる。
【0204】
更に、本発明のピロリジジン化合物は、免疫刺激が指示される(下記に説明するように)疾患、障害または感染症の治療に有用であることが知られている他の薬剤と共に用いることができ、このような態様では、用量をそれに応じて調整することができる。
【0205】
一般に、投与されるピロリジジン化合物の有効量は、一般に1日約0.01mg/kg-500mg/kgの範囲となる。単位投薬量は、ピロリジジン化合物0.05-500mgを含むことができ、1日当たり1回以上投与することができる。ピロリジジン化合物は、下記のような経口、非経口または局所投与の通常の投薬単位形態を用いて、薬学キャリヤーと共に投与することができる。
【0206】
好ましい投与経路は、経口投与である。一般に、適当な用量は、1日当たり患者の体重1kg当たり0.01-500mgの範囲であり、好ましくは1日当たり患者の体重1kg当たり0.1-50mgの範囲であり、最も好ましくは1日当たり患者の体重1kg当たり1-5mgの範囲である。
【0207】
所望な用量は、好ましくは1日投与に対して単回投与として提供される。しかしながら、一日中適当な間隔で投与される2、3、4、5または6回、またはそれ以上の小分け用量(sub-doses)を用いることもできる。
【0208】
これらの小分け用量は、例えば、単位投薬形態当たり活性成分0.001-100mg、好ましくは0.01-10mg、最も好ましくは0.5-1.0mgを含む単位投与形態で投与することができる。
【0209】
処方
本発明の組成物は、本発明のピロリジジン化合物を、場合によっては薬学上許容可能な賦形剤と共に含んでなる。
【0210】
本発明のピロリジジン化合物は、任意の形態を採ることができる。これは、合成的なものでもよく、当該技術分野で報告されている(且つ下記に引用されている)手法を用いて天然供給源(例えば、Casuarina equisetifoliaまたはEugenia jambolana)から精製または単離することもできる。
【0211】
天然供給源から単離するときには、本発明のピロリジジン化合物を精製することができる。しかしながら、本発明の組成物は、上記で定義されているように、草本薬の形態を採ることができる。このような草本薬を、好ましくは分析して使用前に標準的規格に合うかどうかを決定する。
【0212】
本発明によって使用する草本薬は、乾燥植物材料であってもよい。あるいは、草本薬は加工した植物材料であって、加工が物理的または化学的前加工、例えば、粉末化、摩砕、凍結、蒸発、濾過、圧搾、噴霧乾燥、押出、超臨界溶媒抽出、およびチンキ生成を伴うものであってもよい。草本薬を植物全体の形態(またはその部分)で投与または売却する場合には、この植物材料は使用前に乾燥することができる。凍結乾燥、噴霧乾燥または空気乾燥など任意の好都合な形態の乾燥を用いることができる。
か213
本発明のピロリジジン化合物を薬学上許容可能な賦形剤と共に処方する態様では、任意の適当な賦形剤、例えば、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、フレーバー剤、着色料、および防腐剤などを用いることができる。適当な不活性希釈剤としては、炭酸ナトリウムおよびカルシウム、リン酸ナトリウムおよびカルシウム、およびラクトースが挙げられ、一方トウモロコシ澱粉およびアルギン酸は適当な崩壊剤である。結合剤としては、澱粉およびゼラチンを挙げることができ、一方滑沢剤は、含まれる場合には、一般的にはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクである。
【0213】
医薬組成物は任意の適当な形態を採ることができ、例えば、錠剤、エリキシル、カプセル、溶液、懸濁液、粉末、顆粒、およびエアゾールが挙げられる。
【0214】
医薬組成物は部品のキットの形態を採ることができ、このキットは、本発明の組成物を使用説明書および/または単位投薬形態での複数の様々な成分と共に含んでなることができる。
【0215】
経口使用の錠剤は、本発明のピロリジジン化合物を単独で、または(草本薬の態様の場合には)(複数の)植物供給源と関連した他の植物材料と共に包含することができる。錠剤は、不活性希釈剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、甘味料、フレーバー剤、着色料、および防腐剤のような薬学上許容可能な賦形剤と混合した本発明のピロリジジン化合物を含むことができる。適当な不活性希釈剤としては、炭酸ナトリウムおよびカルシウム、リン酸ナトリウムおよびカルシウム、およびラクトースが挙げられ、一方トウモロコシ澱粉およびアルギン酸は適当な崩壊剤である。結合剤としては、澱粉およびゼラチンを挙げることができ、一方滑沢剤は、含まれる場合には、一般的にはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、またはタルクである。所望ならば、錠剤をモノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルのような材料でコーティングして、消化管での吸収を送らせることができる。
【0216】
経口使用のカプセルとしては、硬質ゼラチンカプセルであって、本発明のピロリジジン化合物が固形希釈剤と混合されているもの、および軟質ゼラチンカプセルであって、活性成分が水、または落花生油、流動パラフィン、またはオリーブ油のような油と混合されているものが挙げられる。
【0217】
直腸投与の処方は、例えば、カカオ脂またはサリチル酸塩を含んでなる適当な基剤を有する座薬として提供することができる。
【0218】
膣投与に適する処方は、活性成分の他に当該技術分野で適当であることが知られているキャリヤーを含む膣座薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレー処方として提供することができる。
【0219】
筋肉内、腹腔内、皮下、および静脈内使用については、本発明の化合物は、一般的には適当なpHと等張性に緩衝した滅菌水溶液または懸濁液に提供される。
【0220】
適当な水性ビヒクルとしては、リンゲル溶液および等張性塩化ナトリウムが挙げられる。本発明による水性懸濁液は、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンおよびトラガカントガムのような懸濁剤と、レシチンのような湿潤剤を包含することができる。水性懸濁液に適当な防腐剤としては、p-ヒドロキシ安息香酸エチルおよびn-プロピルが挙げられる。
【0221】
本発明の化合物リポソーム処方として提示することもできる。
【0222】
経口投与には、本発明のピロリジジン化合物を、カプセル、ピル、錠剤、トローチ、ロゼンジ、溶融物、粉末、顆粒、溶液、懸濁液、分散液またはエマルション(これらの溶液、懸濁液、分散液またはエマルションは水性または非水性であることができる)のような固形または液体製剤に処方することができる。固形単位投薬形態は、例えば、界面活性剤、滑沢剤、およびラクトースと、スクロース、リン酸カルシウムおよびトウモロコシ澱粉のような不活性充填剤を含む通常の硬質または軟質殻ゼラチン型のものであることができる。
【0223】
もう一つの態様では、本発明のピロリジジン化合物は、アラビアゴム、トウモロコシ澱粉またはゼラチンのような結合剤、ジャガイモ澱粉、アルギン酸、トウモロコシ澱粉およびグアールガムのような投与後に錠剤の崩壊と解離を補助することを目的とする崩壊剤、例えば、タルク、ステアリン酸、またはステアリン酸マグネシウム、カルシウムまたは亜鉛のような錠剤造粒の流れを改良し且つ錠剤ダイおよびパンチの表面への錠剤材料の付着を防止することを目的とする滑沢剤、錠剤の美的品質を高め且つそれらを患者にとって一層許容可能にすることを目的とする色素、着色料およびフレーバー剤と組み合わせたラクトース、スクロースおよびトウモロコシ澱粉のような通常の錠剤基剤を用いて錠剤化する。
【0224】
経口液状投薬形態で使用するのに適する賦形剤としては、水およびアルコール、例えば、エタノール、ベンジルアルコールおよびポリエチレンアルコールのような希釈剤であって、薬学上許容可能な界面活性剤、懸濁剤または乳化剤を添加したまたはしていないものが挙げられる。
【0225】
本発明のピロリジジン化合物は、非経口的に、すなわち皮下、静脈内、筋肉内または腹腔内に投与することもできる。
【0226】
このような態様では、ピロリジジン化合物は、薬学的キャリヤー(滅菌液体または液体の混合物であることができる)と共に生理学的に許容可能な希釈剤中の注射可能な用量として提供することができる。適当な液体としては、水、食塩水、デキストロースおよび関連した糖水溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、またはヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコール)、グリセロールケタール(例えば、2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノール)、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)400)、油状物、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはグリセリド、またはアセチル化脂肪酸グリセリドに薬学上許容可能な界面活性剤(例えば、石鹸または洗剤)、懸濁剤(例えば、ペクチン、カーホマー(carhomers)、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース)、または乳化剤、および他の薬学的アジュバントを添加したまたは添加しないものが挙げられる。本発明の非経口処方に用いることができる適当な油状物は、石油、動物、植物または合成的起源のもの、例えば、落花生油、大豆油、ゴマ油、綿実油、トウモロコシ油、オリーブ油、ワセリン、および鉱油である。
【0227】
適当な脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。適当な脂肪酸エステルは、例えば、オレイン酸エチル、およびミリスチン酸イソプロピルである。
【0228】
適当な石鹸としては、脂肪族アルカリ金属、アンモニウムおよびトリエタノールアミン塩が挙げられ、適当な洗剤としては、カチオン性洗剤、例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド、アルキルピリジニウムハライド、およびアルキルアミンアセテート、アニオン性洗剤、例えば、アルキル、アリールおよびオレフィンスルホン酸塩、アルキル、オレフィン、エーテルおよびモノグリセリド硫酸塩、およびスルホコハク酸塩、ノニオン性洗剤、例えば、脂肪族アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー、および両性洗剤、例えば、アルキル-β-アミノプロピオン酸塩、および2-アルキルイミダゾリン第四アンモニウム塩、並びに混合物が挙げられる。
【0229】
本発明の非経口組成物は、典型的には、溶液に本発明のピロリジジン化合物約0.5-約25重量%を含む。防腐剤および緩衝剤を用いてもよい。投与部位における刺激を最小限にしまたは除去するために、このような組成物は親水性-親油性バランス(HLB)が12-約17の非イオン性界面活性剤を含むことができる。このような処方における界面活性剤の量は、約5-約15重量%である。界面活性剤は上記HLBを有する単一成分であることができ、または所望なHLBを有する2種類以上の成分の混合物であることもできる。非経口処方に用いられる界面活性剤の例は、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステルのクラスであり、例えば、ソルビタンモノオレエート、およびプロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成されるエチレンオキシドと疎水性塩基との高分子量付加生成物である。
【0230】
本発明のピロリジジン化合物は局所投与することもでき、これを行うときには、キャリヤーは溶液、軟膏またはゲル基剤を適当に含んでなることができる。基剤は、例えば、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、水およびアルコールのような希釈剤、および乳化剤および安定剤の1以上を含んでなることができる。局所処方は、約0.1-約10%(w/v)(単位容積当たりの重量)の濃度の化合物を含むことができる。
【0231】
補助的に用いるときには、本発明のピロリジジン化合物は1種類以上の他の薬剤と共に使用する目的で処方することができる。特に、本発明のピロリジジン化合物は、抗腫瘍薬、抗微生物薬、抗炎症薬、増殖防止薬、および/または他の免疫調節(例えば、免疫刺激)薬と組み合わせて用いることができる。例えば、本発明のピロリジジン化合物は、サイトカイン例えば、インターロイキン-2および12、インターフェロンおよびそれらのインデューサー、腫瘍壊死因子(TNF)および/またはトランスフォーミング増殖因子(TGF)などのような抗ウイルスおよび/または抗増殖薬、並びに骨髄抑制薬および/または化学療法薬(例えば、ドキソルビシン、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、およびメトトレキセート)、イソニアジド(例えば、末梢神経障害の予防または治療における)、および胃十二指腸潰瘍の予防および治療のための鎮痛薬と共に用いることができる。
【0232】
例えば、補助的使用は、例えば、(複数の)薬剤と適合する(または相乗作用する)ようにデザインされた特定の単位調剤に、またはピロリジジン化合物を1種類以上の抗腫瘍薬、抗微生物薬および/または抗炎症薬と混合した(または1回の単位用量中の(複数の)他の薬剤と物理的に関連した)処方に反映させることができる。補助的使用は、本発明の医薬キットの組成物であって、本発明のピロリジジン化合物を抗腫瘍薬、抗微生物薬および/または抗炎症薬と共に(例えば、単位用量の配列の一部として)一緒に包装されているものにも反映させることができる。補助的使用は、ピロリジジン化合物と、抗腫瘍薬、抗微生物薬、および/または抗炎症薬との同時投与に関する処方および/または説明書にも反映させることができる。
【0233】
実例
本発明を、具体例について説明する。これらは、単に例示的なものであり、説明を目的とするものであり、主張した独占権の範囲または記載した発明を制限しようとするものではない。これらの実施例は、本発明の実施について現在考えられる最良の様式を構成する。
【実施例1】
【0234】
実施例1 樹状細胞におけるIL-2分泌の誘導
マウス
通常の条件下でStrathclyde大学で飼育され、維持されたBALB/cの雄および雌マウスを、8週齢で使用した。
【0235】
骨髄の単離および樹状細胞の培養
骨髄をマウスの大腿骨から得た。大腿骨を70%エタノールで洗浄し、清浄なペトリ皿に入れた。樹状細胞(DC)培地(RPMI-1640培地中、2.5%顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、10%熱および活性化ウシ胎仔血清、1%L-グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン)を送液作用によって大腿骨の骨髄に投与し、細胞と培地を集めた。培地中の細胞1mlを、DC培地15mlを加えた75cm2フラスコに加えた。次に、フラスコを37℃、5%CO2でインキュベーションして、DCを増殖させて、発現させた。5日後、DC培地を更に10ml加えた。
【0236】
樹状細胞の採取
骨髄をGM-CSFと共に10日間インキュベーションした後、樹状細胞を採取した。この工程は、組織培養フード(hood)で行った。フラスコの内容物を遠沈管に投入し、浮遊DCを確実に回収した。冷却したリン酸緩衝食塩水(PBS)約10mlをそれぞれの空のフラスコに加え、フラスコを緩やかに攪拌し、内容物を集めた。これにより、付着性DCを確実に回収した。回収したフラスコの内容物を200gで5分間遠心分離し、ペレットをGM-CSFを含まないDC培地2mlに再懸濁した。次に、細胞を計数した。
【0237】
細胞計数および分析条件
細胞を、血球計を用いて計数した。再懸濁した細胞約20μlを血球計のチャンバーにピペットで採取し、細胞を正確な細胞濃度(ウェル当たり約5x104で1x104以上)に調整した後、培養して分析した。
【0238】
プレートを37℃、5%CO2で一晩インキュベーションし、沈澱させた(採取はそれらを刺激する)。翌日、化合物(50μg/mlおよび20μg/ml)とコントロールを加えた後、再度37℃、5%CO2で24時間(または48時間)インキュベーションした。化合物の採取と添加は、総てフードで行った。次に、プレートを凍結して、細胞を殺し、1回回答した上清を下記の方法で分析した。
【0239】
IL-12の測定
酵素結合イムノソーベントアッセイ(ELISA)を用いて、上清中のIL-12濃度を測定した。このアッセイに用いた総ての試薬は、PharMingen製であった。96ウェルの平底ELISAプレートに、50μl/ウェルでのPBS pH9.0中で希釈した2μg/mlの精製したラット抗マウスIL-12(p40/p70)MAb(カタログ番号554478)をコーティングした。次に、プレートを食品包装用ラップで被覆して、4℃でインキュベーションした。インキュベーションの後、プレートを洗浄用緩衝液で3回洗浄し、乾燥した。ブロッキング緩衝液(10%ウシ胎仔血清/PBS、pH7.0)200μlをそれぞれのウェルに加えた後、食品包装用ラップで被覆し、37℃で45分間インキュベーションした。プレートを3回洗浄し、乾燥した。形質転換マウスIL-12標準品を、10ng/mlから開始して、次いで5、2.5、1.25、0.625、0.31、0.156、0.078、0.039、0.020、0.010、0.005ng/mlで2個ずつのウェルに30μlを加えた。標準品を、ブロッキング緩衝液で希釈した。上清試料を50μl/ウェルで加えた。次に、プレートを食品包装用ラップで被覆し、37℃で2時間インキュベーションした。次いで、プレートを4回洗浄し、乾燥して、二次抗体を加えた。
【0240】
1μg/ml(ブロッキング緩衝液で希釈)のビオチン標識した抗マウスIL-12 (p40/p70)MAb(カタログ番号18482D)を、それぞれのウェルに100μl/ウェルの容積で加えた。プレートを食品包装用ラップで被覆し、37℃で1時間インキュベーションした。次に、プレートを5回洗浄し、乾燥して、接合体を加えた。100μl/ウェルのストレプトアビジン-AKP(カタログ番号13043E)をブロッキング緩衝液中1/2000の希釈度で加えた後、食品包装用ラップ下で37℃で45分間インキュベーションした。
【0241】
プレートを最後に6回洗浄し、乾燥して、基質を加えた。1mg/mlのpNPP(Sigma)/グリシン緩衝液を、100μl/ウェルで加えた。次に、プレートをスズ箔で被覆し、37℃でインキュベーションし、30分毎に色の変化をチェックした。
【0242】
次に、プレートをSPECTRAmax 190分光計を用いて405nmで読み取った。結果は図1および2に示し、図中において、LPSはリポ多糖類であり、IFN-gはインターフェロンγであり、462aはカスアリン(8)であり、462bはカスアリン-6-α-D-グルコピラノース(9)であり、23は7-エピカスアリン(11)であり、24は3,7-ジエピ-カスアリン(10)である。
【0243】
同じアッセイで50μg/mlで試験したところ、スワインソニン(4)はIL-12分泌の誘発に失敗した。比較目的のための他の化合物を用いる同様な検討を、下表1.1に示す。
【0244】
【表1】

【表2】

【表3】

【実施例2】
【0245】
実施例2 樹状細胞によるIL-2産生の刺激
IL-2の決定のための適当なMabおよび標準品を置換したことを除き、上記実施例1に記載のプロトコールを行った。結果を下表2.1に示す。
【0246】
【表4】

【実施例3】
【0247】
実施例3 脾臓細胞におけるサイトカイン修飾
通常の条件下でStrathclyde大学で飼育され、維持されたBALB/cの雄および雌マウスを、様々な週齢で使用した。
【0248】
脾臓細胞の単離および脾臓細胞の培養
マウス脾臓を無菌的に取り出し、5mlの完全培地(RPMI、1%L-グルタミン、1%ペニシリン/ストレプトマイシン、および10%ウシ胎仔血清)を含む滅菌ペトリ皿に入れた。細胞懸濁液を注射器の末端を用い、脾臓をワイヤーメッシュを通して粉砕することによって調製した。細胞懸濁液を、次に1000rpmで5分間遠心分離した。赤血球を除去するため、細胞ペレットをボイル溶液(Tris 0.17Mおよび塩化アンモニウム0.16M)に再懸濁し、再度5分間遠心分離した。次に、ペレットを培地で更に2回洗浄した後、3mlの培地に再懸濁した。次に、細胞計数を行った。
【0249】
実験プロトコール
総ての脾臓細胞実験は、96ウェル組織培養プレートで行った。5x105個/ウェルの100μl分量を総てのウェルに加え、それぞれのウェルの最終容積を200μlとした。未刺激ウェルは、100μlの細胞と100μlの培地を含んでいた。刺激したウェルは100μlの細胞と、1μg/mlのLPSを50μlまたは0.5μg/mlの抗CD3を50μl、および50μlの培地を含んでいた。残りのウェルは、100μlの細胞、50μlのMNLP化合物、および50μlの抗CD3または培地のみを含んでいた。
【0250】
IL-12、IL-2、IL-5およびIFN-γの測定
適当なMabおよび標準品を、IL-12について記載したプロトコールに準じて用いた(上記の実施例1に記載)。結果を、下表3.1-3.3に示す。
【0251】
【表5】

【0252】
【表6】

【0253】
表3.1および3.2に示される結果から分かるように、本発明の化合物は脾臓細胞でIFN-γ分泌/産生を刺激し、一方カスタノスペルミン(カスタノスペルミン)はこのようなアッセイにおいてこのサイトカインの産生を阻害する。1-デオキシノジリマイシン(DNJ)(21)を用いて行った同様な試験は、このイミノ糖も脾臓細胞でのIFN-γ分泌/産生を阻害することが示した(データーは示さず)。
【実施例4】
【0254】
実施例4 グリコシダーゼ活性の阻害
総ての酵素は、適当なp-ニトロフェニル基質と同様に、Sigma社から購入した。アッセイは、マイクロタイタープレートで行った。酵素は、酵素についての最適pHで0.1Mクエン酸/0.1Mリン酸水素二ナトリウム(Mcllvaine)緩衝液中で分析した。総てのアッセイは20℃で行った。スクリーニングアッセイについては、インキュベーションアッセイは、10μlの酵素溶液、10μlのインヒビター溶液(水中で作成)、および酵素についての最適pHでのMcllvaine緩衝液中で作成した適当な5mM p-ニトロフェニル基質(3.57mM最終濃度)の50μlからなっていた。
【0255】
反応は、水によるブランクを用いるアッセイの開始時に決定した反応の対数期中に0.4Mグリシン(pH10.4)で停止し、これをある期間インキュベーションして、5mM基質溶液を用いて反応速度を測定した。終点の吸光度を、Bioradマイクロタイタープレートリーダー(Benchmark)を用いて405nmで読み取った。ブランクでは、インヒビターの代わりに水を用いた。試験した酵素を、下表4.1に示す。
【0256】
【表7】

【0257】
試験した化合物を、下表4.2に示す。
【0258】
【表8】

【表9】

【0259】
多数の異なる化合物(総て1mg/ml)についての結果(阻害率)を、下表4.3に示す。
【0260】
【表10】

【0261】
これらの結果は、本発明の化合物についての阻害のプロフィールはカスタノスペルミンのプロフィールとは全く異なっていることを示している。いずれも、マンノシダーゼを有意に阻害しない(下記のデーターも参照されたい)。試験した化合物の幾つか(例えば、3, 7-ジエピ-カスアリン)は、試験した酵素のいずれをも有意に阻害しない。
【0262】
更に行った検討では、カスアリン(8)と酵母α-D-グルコシダーゼとのKiは217μMであることを示した(カスタノスペルミンは800μMの濃度では阻害性ではない)。カスタノスペルミン(20)とアーモンドのβ-D-グルコシダーゼとのKiは9μMであった(カスアリンは800μMでは阻害性ではない)。更に、カスアリンは、カスタノスペルミンについてはIC50値が8μMであるのと比較して、ウサギ消化管粘膜α-D-グルコシダーゼを210μMのIC50値で阻害した。カスアリンとカスタノスペルミンは、いずれもウサギ小腸スクラーゼを700μMの濃度で阻害した。カスタノスペルミンはまた、この濃度ではウサギ小腸ラクターゼおよびトレハラーゼを50%を上回るまで阻害した。
【実施例5】
【0263】
実施例5 マンノシダーゼおよびグルコシダーゼの示差的阻害
マンノシダーゼおよびグルコシダーゼに関するスワインソニン(4)、カスアリン(8)およびカスアリングルコシド(9)のグリコシダーゼ阻害プロフィールを比較した。結果(総て、<0.1mg/ml)を、下表5.1に示す。
【0264】
【表11】

【実施例6】
【0265】
実施例6 ネズミHSV-1感染症の治療
マウスは、3-4週齢のBALB/cであった。マウスに、頸部皮膚法を用いて104 p.f.u.のHSV-1(SG16)を接種した。この用量は致死量以下であるが、炎症(耳介の厚みの増加によって測定)などの臨床症状を生じる。
【0266】
マウスに、1日目およびその後毎日5日間カスアリン(8)の2用量の一方を投与した(100ml i.p.)。群1には15mg/kgをPBSに溶解したものを投与し、群2には150mg/kgをPBSに溶解したものを投与した。ネガティブコントロール群3は感染していたが、カスアリンを投与しなかった。ポジティブコントロール群4にはファムシクロビールを(同一期間1mg/mlを加えた飲料水を介して)投与した。
【0267】
マウスを毎日チェックし、選択した日に殺したマウスから試料を得た。結果を、下表6.1-6.3に示す。
【0268】
【表12】

【0269】
【表13】

【0270】
【表14】

【0271】
結果は、耳介の厚みが増加し、4日目に最大になる予想パターンを示す。ファムビールは、耳の肥厚応答をほぼ完全に打ち消した。カスアリンは、試験したいずれの用量でも耳の厚みを減少させた。
【実施例7】
【0272】
実施例7 マウスでの肺転移の制御
マウス(C57/bl6、腹腔内ケタミン麻酔下)に、0日目にマウス当たり100μlの最終容積の5x104個のB16-F10腫瘍細胞を静脈内(尾静脈)に投与した。試験化合物(50mg/kg、200μlの滅菌発熱性物質不含食塩水)を、2および4日目に皮下(右脇腹)に投与した。14日目に、マウスを屠殺して、肺を摘出し、インディアンインク溶液(150mlの2回蒸留水、30mlのインドインク、NH4OH4滴)で10分間染色した後、Fakete溶液(90mlの37%ホルムアルデヒド、900mlの70%EtOH、および45mlの氷酢酸)中で少なくとも24時間固定した。染色して固定した肺における転移を明視化し、計数し、写真撮影することができた。
【0273】
結果を、下表7.1に示す。
【0274】
【表15】

【実施例8】
【0275】
実施例8 乳癌細胞のグリコシル化に対する効果
細胞培養
MGF-7細胞(European Collection of Cell Cultures Ref. 86012803)を液体窒素ストックから取り出して、室温にて融解し、10% v/vウシ胎仔血清(FCS: BioWest Labsカタログ番号 S02755, Lot. No. S1800)を補足したHams F12、15mM HepesおよびL-グルタミンを有するダルベッコ改良イーグル培地(DMEM : Cambrexカタログ番号 BE12-719F)10mlに移した。FCSは、0.2μmの滅菌フィルターにより予備濾過した。
【0276】
次に、細胞をCentaurベンチトップ型遠心分離機で1,500rpmで遠心分離し、上清を除いた。細胞を新鮮な培地に加え、2個のT75cm3 Nunclon組織培養フラスコに播種し、5%CO2インキュベーター中で37℃にて一晩沈澱させた。フラスコを食品包装用ラップで包んで交差汚染を予防し、翌日、感染に対する予防対策として培地を抗生物質ペニシリンおよびストレプトマイシン(それぞれ、1mg/cm3および5mg/cm3の濃度)を含むものに代えた。
【0277】
細胞をコンフルエンス附近まで増殖させた後、1/4に分割して再懸濁した。実験に用いた細胞は、継代数31のものであった。細胞の2個のフラスコを10%ジメチルスルホキシド中20%v/v FCSを含む培地で調製し、必要ならば、後で使用するために液体窒素中に保存した。
【0278】
全部で16個のT25cm3のフラスコを用いた。それぞれのフラスコに8.5x105個の細胞/cm3を播種し、4cm3の培地を加えた。細胞を、一晩培養フラスコに付着させた。翌朝、フラスコを光学顕微鏡で観察し、細胞は50-60%コンフルエントであった。2個のフラスコからの細胞t=0の時点で採取した(下記参照)。
【0279】
残りの14個のフラスコは、カスアリン(8)を用いる試験に利用可能であった。これらの7個(未処理群)の培地を、10%FCS、ペニシリンおよびストレプトマイシン(同前)を含む新鮮な培地7cm3に替え、残りの7個は0.75mMカスアリンを補足した新鮮な培地でインキュベーションした(処理群)。
【0280】
細胞を、t=1.5時間、t=28時間、t=62時間およびt=86時間に採取した。
【0281】
細胞の採取および細胞計数
細胞を、非酵素的方法を用いて採取した。それぞれの時点に、細胞を倒立光学顕微鏡で観察し、その形態を評価した。採取前に、細胞を滅菌PBSで洗浄当たり7cm3で3回洗浄した。次に、細胞を滅菌スクレーパーを用いてフラスコからかき集め、Grenier試験管に移した。細胞を速やかに21 G2ゲージニードルを通過させ、細胞をバラバラにした。次に、細胞を1500gで5分間遠心分離してペレット化し、既知容積のPBSに再懸濁した。次に、細胞の数を血球計で計数し、 それぞれの細胞懸濁液0.1cm3をトリパンブルー溶液1滴と混合することによって細胞成長能力を評価した。それぞれの細胞ペレットを、グリカン放出および分析まで- 80℃で冷凍した。
【0282】
均質化
細胞ペレットを氷水槽に入れ、融解させた。次に、ペレットを全量4cm3(脱イオン水でその容積にした)で均質化した。翼の速度を22,500rpmに設定したUltraturrax T25ホモジナイザージを、この目的に用いた。試料を氷上に保持し、それぞれの均質化段階の間に約1分間の時間を置いて泡を治め、それぞれ10秒間の3回のバーストを加えた。それぞれの試料の間には、翼を注意深く洗浄し、交差汚染を防止した。ホモジェネートを1cm3の分量で-80℃で保管した後、タンパク質アッセイおよびグリカン放出を行った。
【0283】
タンパク質アッセイ
BioRadタンパク質アッセイを用いて、製造業者の指示に従って評価を行った。BSAを標準品として用いた。それぞれのホモジェネート試料を、それぞれの時点から100μlの分量を用いて2回ずつ試験した。
【0284】
グリカン放出
62時間および86時間の時点について、タンパク質25μgの相当量を採取し、遠心エバポレーターで3時間(加熱せずに)乾燥した。初期の時点については、タンパク質濃度はタンパク質アッセイでは評価することができず、200μlを採取し、乾燥してグリカン放出の準備をした。放出は、ウシ胎仔血清からのフェチュイン25μgを用いて確認した。
【0285】
グリカンは、N-グリコシダーゼ F(Roche Biosciencesカタログ番号1365185、ロット番号9280212/31)を用い、いずれも20mMリン酸ナトリウム緩衝液pH7.2中5U酵素の最終濃度で一晩37℃でインキュベーションした。インキュベーション段階の後、試料を予備洗浄してプライミングしたLudger Clean Eカートリッジ(カタログ番号LC-E10-A6)に加えた。グリカンを製造業者の指示に従って溶出し、遠心エバポレーターにより一晩乾燥した。
【0286】
グリカン標識
グリカンを、Bigge et al.(1995) Anal. Biochem. 230 (2): 229-238に記載の方法によって65℃で2時間還元的アミノ化によって標識した。次に、インキュベーション混合物を「清浄化」して、試料をWhatman 3MM濾紙にスポットし、4:1:1のブタノール:エタノール:水の移動相を用いて降下式クロマトグラフィータンクで展開することによってあらゆる未接合蛍光団を除去した。次に、グリカンを0.5cm3メタノールおよび2x1cm3HPLC級水で溶出した後、0.2μmシリンジトップフィルターで濾過した。
【0287】
正常相HPLCを用いる分析
グリカンは、サイズが4.6x25cmの正常相(親水性相互作用)HPLCカラム(LudgerSep N1アミド)上で分離した。
【0288】
分離の基本は、Guile et al. (1996) Anal. Biochem. 240 (2): 210-226に記載されている。カラムを、オートサンプラーおよび切替ポンプヘッドおよびインラインミキサーを備えたDionex BioLC装置に取り付けた。カラムを30℃に保持し、グリカンを励起波長λ=330nmおよび発光波長λ=420nmのPerkin Elmer LS30蛍光計を用い、ゲインを2に設定して検出した。用いた緩衝系は、緩衝液Aとしてアセトニトリルと緩衝液Bとして0.25Mギ酸アンモニウムpH4.4を有する高塩系であった。流速は、終始0.3cm3/分に保持した。
【0289】
用いたプロトコールを、下表8.1にまとめる。
【0290】
【表16】

【0291】
それぞれのグリカン混合物の80μl分量をカラムに加え、デキストランの加水分解生成物に対する溶出位置を比較した。
【0292】
結果のまとめおよび結論
最初の採取時点および28時間の時点では、処理済および未処理細胞から放出したグリカンには明確な差異はなかった(データーは示さず)。しかしながら、62および86時間の時点では、未処理細胞はその処理済のものと比較して大きなN結合グリカンが著しく優勢となった(データーは示さず)。更に、全般的シグナル(蛍光標識グリカンの量)は、未処理群より大きかった。
【0293】
この結果は、カスアリンが乳癌細胞でグリカン合成および/またはN結合グリコシル化を阻害することができることを示している。
【実施例9】
【0294】
実施例9 グルコース輸送に対する影響
カスアリン(8)およびカスタノスペルミン(20)のヒツジ腸の刷毛縁膜小胞へのNa+依存性D-グルコース摂取の初期速度に対する影響を、標識したD-グルコースを用いる競合アッセイで検討した。結果を、下表9.1に示す。
【0295】
【表17】

【0296】
グルコース輸送はカスタノスペルミンによって僅かに阻害されるが、カスアリンによって僅かに刺激されることが分かる。
【実施例10】
【0297】
実施例10 非治癒性リーシュマニア症モデルにおけるTh1:Th2応答比の増加
リーシュマニア症は、Th1疾患の古典的モデルであり、非治癒性皮膚障害は著しくTh2歪曲した免疫応答の好ましくない分極により生じる。
【0298】
この疾患モデルでのTh1:Th2応答比を増加させる(且つこれにより治癒性Th1応答を促進する)本発明の化合物の能力を検討するため、非治癒性皮膚感染症を有する森林型熱帯リーシュマニアに感染したBALB/cマウスからの脾臓細胞を寄生生物抗原で(表10.1)または3,7-ジエピ-カスアリン(10)の存在下にて抗CD3でポリクローン的に(表10.2)刺激した。
【0299】
【表18】

【0300】
【表19】

【0301】
3,7-ジエピ-カスアリン(10)の存在はIFN-γ(治癒性Th1応答と関連)を増強し、Th2応答を(Th2サイトカインIL-5のダウンレギュレーションによって)抑制することが分かる。非治癒性疾患に関連するTh2によって歪曲した免疫応答プロフィールは、3,7-ジエピ- カスアリン(10)によりエクス・ビボで明らかに逆転した。
【実施例11】
【0302】
実施例11 3,7-ジエピ-カスアリン(10)の合成
一般的実験
総ての反応は、特に断らない限り無水溶媒を用いてアルゴン雰囲気下で室温にて行った。無水溶媒はFluka Chemicalsから購入し、供給されたまま使用した。試薬はAldrich、FlukaおよびFisherから供給を受け、供給されたまま使用した。薄層クロマトグラフィー(Tlc)は、Merck 60 F254を前コーティングしたアルミニウムシート上で行い、紫外線およびエタノール中6%ホスホモリブデン酸を用いる染色により明視化した。シリカゲルクロマトグラフィーは、ポジティブ雰囲気下でSorbsil C60 40/60シリカゲルを用いて行った。強酸性イオン交換樹脂であるAmberlite IR-120は、樹脂を少なくとも2時間2M塩酸に浸漬した後、溶離液がpH5になるまで蒸留水で溶出することによって調製した。Dowex 50WX8-100は、樹脂を少なくとも2時間2M塩酸に浸漬した後、中性になるまで蒸留水で溶出することによって調製した。赤外スペクトルは、塩化ナトリウムプレート上のフィルムを用いてPerkin-Elmer 1750 IRフーリエ変換分光光度計上で記録した。特徴的ピークのみを記録する。旋光度は、光路長が1dmのPerkin-Elmer 241偏光計で測定した。濃度は、g/100mlで表した。核磁気共鳴スペクトルは、公認の重水素化溶媒中Bruker DQX 400分光計で記録した。総てのスペクトルは、周囲温度で記録した。化学シフト(δ)はppmで表し、標準品としての残留溶媒に対するものである。プロトンスペクトル(δH)は、400MHzで記録し、炭素スペクトル(δC)は100MHzで記録した。
【0303】
2,3:5,6:7,8-トリ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン(Qc)
5,6:7,8-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-ガラクト-オクトノ-1,4-ラクトン(Qb)
シアン化ナトリウム(7.02g, 142ミリモル)を、D-グリセロ-D-グロ-ヘプトース(Qa, 21g, 100ミリモル)を水(300ml)に攪拌溶解したものに加えた。反応混合物を室温で48時間攪拌し、48時間加熱還流し、Amberlite IR-120(強酸性イオン交換樹脂, 300ml)を含むカラムを通過させた。溶離液を減圧濃縮し、残渣を24時間真空乾燥した。生成するフォームを、無水硫酸銅(10g, 62ミリモル)の存在下にてアセトン(500ml)と硫酸(5.4ml)で室温にて48時間処理した。T.l.c.分析は、2個の主要生成物の存在を示唆していた(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1; Rf 0.72, 0.18)。反応混合物を濾過して、濾液を重炭酸ナトリウム(50g)で室温にて24時間処理した。固形残渣を濾別し、濾液を減圧濃縮した。生成する粗製の黄色シロップをシリカゲルクロマトグラフィーによって精製し、無色シロップ状の3:5,6:7,8-トリ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qc (Rf 0.72; 7.672g; 21%)および透明油状の5,6:7,8-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-ガラクト-オクトノ-1,4-ラクトン Qb(Rf 0.18; 8.105g; 25%)を得た。 2,3:5,6:7,8-トリ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qc:δH(CDCl3) 1. 29, 1.33, 1.35, 1.38, 1.42, 1.48(6xs, 18H, 3xC(CH32), 3.93-3.99 (m, 2H, H-8a, H-7), 4.03-4.07 (m, 2H, H-5, H-6),4.15(dd, 1H, J8a,8b 8.7 J8b,7 6.1, H-8b), 4.75-4.78 (m, 3H, H-2, H-3, H-4); δC (CDCl3) 25.23, 25.51, 26.00, 26.71, 26.73, 27.16(3xC(CH32), 67.93, 74.93, 76.33, 76.69, 78.65, 79.40, 80.06, 109.95, 110.72, 113.19, 174.27;νmax (フィルム) 1793。5,6:7,8-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-ガラクト-オクトノ-1,4-ラクトン Qb: δH (d6-アセトン) 1.28, 1.32, 1.34, 1.35(4s, 12H, 2xC(CH32), 3.92 (1H, m, H-8a), 3.98 (m, 1 H, H-7), 4.14 (m, 2H, H-5, H-8b), 4.23-4.25 (m, 2H, H-4, H-6), 4.35-4.40 (m, 2H, H-2, H-3); δC (d6-アセトン) 25.31, 25.87, 26.72, 27.31, 68.06, 75.15, 75.23, 77.51, 78.05, 78.41, 79.01, 110.06, 110.31, 174.25; νmax(フィルム) 1793, 3541。
【0304】
2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qd
2,3:5,6:7,8-トリ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン(Qc, 3.8 g, 10.6ミリモル)を、酢酸:水(2:3, 100ml)で50℃にて2時間処理した。T.l.c.分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1)は、出発材料(Rf 0.72)が消失し、一層極性の化合物(Rf 0.15)が存在することを示していた。溶媒を減圧留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1-3:1)によって精製し、透明油状の2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qd(3.23g, 94%)を得た。
δH (CD3OD) 1.28, 1.38, 1.43 (3xs, 12H, 2xC(CH32), 3.59 (dd, 1H, J8a,7 5.40 J8a,8b 11.41, H-8a), 3.66-3.69 (m, 1H, H-7), 3.74 (dd, 1H, J8b,72.90Hz, H-8b), 4.01 (ほぼt, 1H, J6,77.62Hz, H-6), 4.24 (dd, 1H, J5,68.17 Hz J5,40.89Hz, H-5), 4.79-4.81 (m, 2H, H-3, H-4), 4.89-4.91 (m, 1H, H-2); δC (CD3OD) 24.62, 25.42, 26.05, 26.49, 63.86, 73.81, 75.40, 75.91, 79.18, 79.90, 80.78, 110.53, 113.09, 175.76; νmax (フィルム) 1791, 3478; [α]D -35.7 (c 1, CHCl3)。
【0305】
8-O-第三ブチルジメチルシリル-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qe
2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン (Qd, 3.18g, 10ミリモル)をN,N-ジメチルホルムアミド(40ml)に溶解したものに、第三ブチルジメチルシリルクロリド(1.808g, 12ミリモル)とイミダゾール(1.361g, 20ミリモル)を加えた。反応混合物を室温で16時間攪拌した後、t.l.c.分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1)では出発材料(Rf 0.15)が見られず、1個の主生成物(Rf; 0.63)が形成されていた。溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチルと塩水とに分配した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過して、溶媒を除去した。生成する淡青色油状生成物をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン, 0:1-1:2)によって精製し、透明油状の8-O-第三ブチルジメチルシリル-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qe(3.612g, 85%)を得た。
δH (CDCl3) 0.04 (br s, 6H, 2xCH3), 0.86 (s, 9H, C(CH33), 1.23, 1.30, 1.32, 1.41(4xs, 12H, 2xC(CH32), 3.63-3.67 (m, 2H, H-8a, H-7), 3.76 (brd, 1H, H-8b), 3.96 (ほぼt, J6,78.21 J6,57.98, H-6), 4.08 (br d, 1H, H-5), 4.72 (br s, 2H, H-2, H-3), 4.78 (br s, 1H, H-4); δC (CDCl3) -5.52, -5.45, 18.25, 25.51, 25.80, 25.93, 26.68, 27.18, 63.95, 72.97, 74.88, 74.93, 78.71, 79.63, 79.87, 110.34, 113.00, 174.42;νmax (フィルム) 1794, 3570;[α]D-20.1 (c 1, CHCl3)。
【0306】
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qf
8-O-第三ブチルジメチルシリル-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-D-エリトロ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン(Qe, 3.5g, 8.2ミリモル)をピリジン:ジクロロメタン混合物 (1:4, 25ml)に溶解したものを-30℃に冷却した。無水トリフルオロメタンスルホン酸(3.5g, 2.09ml, 12.4モル)を少量ずつ添加し、混合物を2時間攪拌した。T.l.c.分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:3)では、出発材料(Rf 0.38)が消失し、極性の小さな生成物(Rf 0.48)が存在することを示していた。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチルと0.5M塩酸とに分配した。有機層を塩水で洗浄し、乾燥して(MgSO4)、濾過し、減圧濃縮した。生成する粗製の淡橙色残渣を、N,N-ジメチルホルムアミド(25ml)中ナトリウムアジド(807mg, 12.4ミリモル)で16時間処理した。T.l.c.分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:4)では、中間体のトリフレート(Rf 0.42)が消失し、極性の大きな化合物(Rf 0.40)が存在することを示していた。反応溶媒を真空留去し、残渣を酢酸エチルと塩水とに分配した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過して、真空濃縮した。生成する粗製残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン, 0:1-1:4)によって精製し、無色油状の7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン Qf(3.026g, 81%)を得た。
δH(CDCl3) 0.11 (2xs, 6H, 2xCH3), 0.91 (s, 9H, C(CH33), 1.30, 1.38, 1.41, 1.47(4xs, 12H, 2xC(CH32), 3.41-3.45 (m, 1H, H-7), 3.87 (dd,1H, J8a,75.37Hz J8a,8b10.81Hz, H-8a), 3.92 (dd, 1H, J8b,77.32Hz, H-8b), 4.19-4.24 (m, 2H, H-5, H-6), 4.61 (br s, 1H, H-4), 4.75-4.79 (m, 2H, H-2, H-3); δC(CDCl3) -5.59, -5.56, 18.14, 25.54, 25.73, 26.09, 26.71, 26.98, 61.61, 63.19, 67.94, 74.84, 74.94, 75.47, 78.36, 78.66, 110.90, 113.37, 174.02;νmax (フィルム) 1796, 2111 ; [α]D+36.7(c 1, CHCl3)。
【0307】
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qg
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクトノ-1,4-ラクトン (Qf, 3.00g, 6.6ミリモル)をテトラヒドロフラン(40ml)に溶解し、0℃に冷却した。水素化ホウ素リチウム(216mg, 9.9ミリモル)を加え、混合物を0℃-室温で2時間攪拌した。T.l.c.分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1)では、出発材料(Rf 0.76)が消失し、極性の大きな化合物(Rf 0.45)が存在することを示していた。反応を塩化アンモニウム(飽和水溶液)を加えて停止させ、酢酸エチルと塩水とに分配した。水層を酢酸エチル(2x)で抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過して、溶媒を除去した。生成する粗製残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:3-1:1)によって精製し、無色シロップ状の7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qg(2.476g, 82%)を得た。
δH (CDCl3) 0.10 (s, 6H, 2xCH3), 0.91 (s, 9H, C(CH33), 1.36, 1.41, 1.42, 1.48(4xs, 12H, 2xC(CH32), 3.43-3.47 (m, 1H, H-7), 3.66(br d, 1H, H-4), 3.79-3.92 (m, 4H, H-1, H-1a, H-8, H-8a), 4.10-4.14 (m, 2H, H-2, H-3), 4.30-4.38 (m, 2H, H-5, H-6); δC (CDCl3) -5,61, -5.51, 18.14, 25.18, 25.71, 26.87, 27.07, 27.86. 60.65, 62.39, 63.66, 67.62, 75.90, 76.91, 77.18, 77.49. 108.63. 110.16;νmax(フィルム) 2109, 3536;
[α]D+46.6(c 1, CHCl3)。
【0308】
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qh
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-L-トレオ-L-タロ-オクチトール (Qg, 2.4g, 5.3ミリモル)をピリジン(20ml)に溶解し、4-ジメチルアミノピリジン(64mg, 0.53ミリモル)とメタンスルホニルクロリド(4.814g, 3.253ml, 42ミリモル)をピリジン(20ml)に溶解したものに加え、2時間攪拌した。T.l.c.分析(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:2, 二重溶出)では、出発材料(Rf 0.33)が消失し、疎水性の大きな生成物(Rf 0.43)が存在した。溶媒を減圧留去し、残渣を酢酸エチルと塩水とに分配した。水層を酢酸エチルで抽出し、合わせた有機層を乾燥し(MgSO4)、濾過して、減圧濃縮した。生成する粗製残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:2)によって精製し、無色油状の7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qh(2.973g, 92%)を得た。
δH (CDCl3) 0.11, 0.12 (2xs, 6H, 2xCH3), 0.91 (s, 9H, C(CH33), 1.41, 1.44, 1.46, 1.56 (4xs, 12H, 2xC(CH32), 3.08(s, 3H, SO2CH3), 3.21 (s, 3H, SO2CH3), 3.49 (ddd, 1H, J7,62.82Hz, J7,85.46Hz, J7,8a7.94Hz, H-7), 3.87-3.97 (m, 2H, H-8, H-8a), 4.19 (dd, 1H, J6,52.30Hz, H-6), 4.24-4.31 (m, 2H, H-1, H-5), 4.36 (dd, 1H, J3,42.96Hz, J3,26.62Hz, H-3), 4.49-4.53 (m, 1H, H-2), 4.69 (dd, 1H, J1a,22.39Hz, J1a,110.83Hz, H-1a), 5.11 (ほぼt, 1H, H-4); δC (CDCl3) -5,56, 18.18, 25.76, 26.24, 26.78, 26.89, 27.56, 37.75, 39.02, 60.90, 63.57, 70.44, 76.00, 76.07, 76.46, 77.18, 77.32, 109.01, 110.68; νmax(フィルム) 2113; [α]D-16.2 (c 1, CHCl3)。
【0309】
7-アジド-7-デオキシ-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qi
7-アジド-8-O-第三ブチルジメチルシリル-7-デオキシ-2,3:5,6-ジ-O-イソプロピリデン-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L-タロ-オクチトール (Qh, 2.90g, 4.7ミリモル)を、トリフルオロ酢酸:水混合物(1:1, 40ml)で3時間処理した。T.l.c.分析(酢酸エチル)では、出発材料(Rf 0.9)が消失し、極性の大きな生成物(Rf 0.12)が存在した。溶媒を減圧留去し、残渣をトルエンを用いて共沸蒸発させ、真空乾燥した。シリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル:シクロヘキサン, 1:1-1:10)によって精製し、無色油状の7-アジド-7-デオキシ-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L-タロ-オクチトール Qi(1.677g, 85%)を得た。
δH (CD3OD) 3.12 (s, 3H, SO2CH3), 3.21 (s, 3H, SO2CH3), 3.61-3.71 (m, 2H, H-7, H-8), 3.78-3.82 (m, 2H, H-6, H-8a), 3.98-4.05 (m, 2H, H-2, H-3), 4.11-4.13 (m, 1H, H-5), 4.34 (dd, 1H, J1,24.87Hz, J1,1a10.44Hz, H-1), 4.45 (dd, 1H, J1a,21.87Hz, H-1a), 5.00 (dd, 1H, J4,31.91Hz, J4,56.15Hz, H-4); δC (CDCl3) 36.17, 38.11, 61.84, 66.62, 69.09, 70.33, 70.45, 71.08, 72.55, 86.41; νmax(フィルム) 2113; [α]D-9.1 (c 1, H2O)。
【0310】
(1R,2R,3S,6S,7R,7aR)-3-(ヒドロキシメチル)-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン Qi [3,7-ジエピ-カスアリン]
7-アジド-7-デオキシ-1,4-ジ-O-メタンスルホニル-L-トレオ-L-タロ-オクチトール(Qi, 1.6g, 3.78ミリモル)を水(30ml)に溶解し、10%パラジウム/炭素(400mg)で水素雰囲気下にて16時間処理した。T.l.c.分析(酢酸エチル:メタノール, 9:1)では、出発材料(Rf 0.75)は消失し、極性の大きな生成物(Rf 0.05)の存在することを示していた。パラジウムを濾去し、濾液を酢酸ナトリウム(930mg, 11.34ミリモル)で60℃にて16時間処理した。反応混合物を冷却し、溶媒を真空留去した。粗製の褐色油状生成物をイオン交換クロマトグラフィー(Dowex 50WX8-100, 2M水酸化アンモニウムで溶出)によって精製し、褐色ガラス状の(1R,2R,3S,6S,7R,7aR)-3-(ヒドロキシメチル)-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン [3,7-ジエピ-カスアリン] Qj (671mg, 87%)を得た。
δH(D2O) 2.81-2.92 (m, 2H, H-5, H-5a), 3.16 (dd, 1H, J3,2 5.91Hz, J3.810.74Hz, H-3), 3.30 (ほぼt, 1H, J3.78Hz, H-7a), 3.76 (dd, 1H, J8,8a6.35Hz, H-8), 3.87 (dd, 1H, H-8a), 4.01 (d, 1H, J2,13.55Hz, H-2), 4.04-4.12 (m, 2H, H-6, H-7), 4.29 (ほぼt, IH, H-1); δC(D2O) 49.32, 57.29, 63.78, 70.41, 72.59, 72.65, 74.47, 78.25; [α]D-21.1 (c 0.5. H2O)。
【0311】
相当物
上記の説明は、本発明の現在の好ましい態様を詳述したものである。これらの説明を考察するとき、当業者には、それらの実施において多数の修飾および変更が予想される。これらの修飾および変更は、特許請求の範囲内に包含されると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0312】
【図1】化合物20および50mgでのIL-12の濃度。
【図2】化合物20および50μgでのIL-12の濃度。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(上記式中、Rは水素、直線または分岐状の未置換のまたは置換した飽和または不飽和アシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択される)
を有する、治療または予防に使用するための単離された免疫調節(例えば、免疫刺激)ポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体。
【請求項2】

【化2】

(上記式中、Rは水素、直線または分岐状の未置換のまたは置換した飽和または不飽和アシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択される)
を有する、請求項1に記載の化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体。
【請求項3】
1種類以上のサイトカイン(例えば、Th1サイトカイン)をイン・ビボで誘導し、増強しまたは活性化し、および/または1種類以上のサイトカイン(例えば、(複数の)Th2サイトカイン)をイン・ビボで抑制する、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
1種類以上のサイトカインが1種類以上のインターロイキンを含んでなる、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
誘導され、増強されまたは活性化された1種類以上のインターロイキンがIL-12および/またはII-2(例えば、樹状細胞中)を含んでなる、請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
グリコシダーゼ阻害剤である、請求項1-5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
グルコシダーゼを阻害する、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
マンノシダーゼを阻害しない、請求項1-6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
イン・ビボで投与したときに、
(a) 腫瘍細胞グリコシル化(例えば、腫瘍抗原グリコシル化)を変更し、および/または
(b) ウイルスタンパク質グリコシル化(例えば、ビリオン抗原グリコシル化)を変更し、および/または
(c) 感染宿主細胞における細胞表面タンパク質グリコシル化を変更し、および/または
(d) 細菌細胞壁を変更する、
請求項1-8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
アシル誘導体である、請求項1-9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
(a) 過アシル化された、または
(b) C-3ヒドロキシメチルがアシル化された、
(c) C-6がアシル化された、
(d) C-3ヒドロキシメチルおよびC-6がアシル化された、
請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
アシル誘導体がアルカノイルまたはアロイルである、請求項10または11に記載の化合物。
【請求項13】
アシル誘導体がアセチル、プロパノイルまたはブタノイルから選択されたアルカノイルである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Rが糖残基である、請求項1-13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項15】
Rがグルコシドまたはアラビノシド残基である、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
1R,2R,3R,6S,7S,7aR-3-(ヒドロキシメチル)-1,2,6,7-テトラヒドロキシピロリジジン(カスアリン)(但し、Rは水素である)であり且つ式
【化3】

を有する、請求項2に記載の化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体。
【請求項17】
カスアリングリコシドである、請求項2に記載の化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体。
【請求項18】

【化4】

を有するカスアリン-6-α-D-グルコシドである、請求項17に記載の化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体。
【請求項19】
6-O-ブタノイルカスアリンである、請求項2に記載の化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体。
【請求項20】
(a) 3, 7-ジエピ-カスアリン、
(b) 7-エピ-カスアリン、
(c) 3,6,7-トリエピ-カスアリン、
(d) 6,7-ジエピ-カスアリン、
(e) 3-エピ-カスアリン、
(f) 3,7-ジエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、
(g) 7-エピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、
(h) 3,6,7-トリエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、
(i) 6,7-ジエピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド、および
(j) 3-エピ-カスアリン-6-α-D-グルコシド
から選択される請求項1に記載の化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体。
【請求項21】
免疫調節(例えば、免疫刺激)の方法であって、式
【化5】

(上記式中、Rは水素、直線または分岐状の未置換のまたは置換した飽和または不飽和アシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択される)
を有するポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体を含んでなる組成物を患者に投与することを含んでなる、方法。
【請求項22】
化合物が、式
【化6】

(上記式中、Rは水素、直線または分岐状の未置換のまたは置換した飽和または不飽和アシル、アルキル(例えば、シクロアルキル)、アルケニル、アルキニルおよびアリール基を含んでなる群から選択される)
を有する、請求項21に記載の化合物、またはその薬学上許容可能な塩または誘導体。
【請求項23】
化合物が請求項1-20のいずれか一項に記載の通りである、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
組成物が、単離化合物または請求項のいずれか一項に記載の化合物の1種類以上の組合せを含んでなる(例えば、組成物がカスアリンとカスアリン-6-α-D-グルコシドとの組合せを含んでなる)、請求項21-23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
組成物が草本薬である、請求項21-24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
草本薬の植物起源が、
(a) 分類群Myffaceae(例えば、Myrfus spp.(例えば、M. communis)、Syzygium spp.(例えば、S. guineense)またはEugenia spp.(例えば、E. jambolana))の一員、または
(b) 分類群Casuarinaceaeの一員、
(c) (a)と(b)の分類群の両方から選択された2種類以上の植物種の組合せ
から選択される1種類以上の植物種を含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
血液回復(haemorestoration)を含んでなる、請求項21-26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
血液回復(haemorestoration)が、
(a) 化学療法、および/または
(b) 放射線療法、および/または
(c) 骨髄移植、および/または
(d) 血液除去的免疫療法(haemoablative免疫療法)
の補助的なものである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
免疫抑制の緩和を含んでなる、請求項21-28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
免疫抑制が先天的、後天的(例えば、感染症または悪性腫瘍による)、または誘導されたもの(例えば、移植片または癌の処理の一部として故意に)である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
1種類以上のサイトカイン(例えば、IL-l2および/またはIL-2)のイン・ビボでの誘導、増強または活性化を含んでなる、請求項21-30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
増殖性疾患、例えば、癌および癌転移から選択される増殖性疾患の治療を含んでなる、請求項21-30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項1-20のいずれか一項に記載の化合物または請求項21-32のいずれか一項に記載の組成物を、化学療法を受けている患者に投与することを含んでなる、化学防御の方法。
【請求項34】
免疫調節(例えば、免疫刺激)および/または化学防御に使用する薬剤の製造のための、請求項1-20のいずれか一項に記載のポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物または請求項21-32のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項35】
請求項1-20のいずれか一項に記載のポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物または請求項21-32のいずれか一項に記載の組成物の使用を特徴とする、免疫調節(例えば、免疫刺激)および/または化学防御に使用する薬剤の製造方法。
【請求項36】
免疫調節および/または化学防御が請求項21-33のいずれか一項に記載の通りである、請求項34に記載の使用または請求項35に記載の方法。
【請求項37】
請求項1-36のいずれか一項に記載のポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物を、
(a) 免疫刺激薬、および/または
(b) 細胞傷害性物質(例えば、シクロホスファミド、コルチゾンアセテート、ビンブラスチン、ビンクリスチン、アドリアマイシン、6-メルカプトプリン、5-フルオロウラシル、マイトマイシンCまたはクロラムフェニコール)、および/または
(c) 抗微生物(例えば、抗菌)薬、および/または
(d) 抗ウイルス薬(例えば、AZT)
(e) 樹状細胞(例えば、プライムド樹状細胞)
と組み合わせて含んでなる、組成物。
【請求項38】
更に薬学上許容可能な賦形剤を含んでなる、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
請求項1-20のいずれか一項に記載のポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物または請求項21-32のいずれか一項に記載の組成物を抗原と組み合わせて含んでなり、化合物がワクチン接種時にアジュバント効果を生じるのに十分な量で存在する、ワクチン。
【請求項40】
請求項1-20のいずれか一項に記載のポリヒドロキシル化ピロリジジン化合物または請求項21-32のいずれか一項に記載の組成物を請求項37(a)-(d)に記載の補助治療薬のいずれかまたは総てと組み合わせて含んでなる成分の医薬キット。
【請求項41】
更に使用説明書を含んでなる、請求項40に記載のキット。
【請求項42】
治療または予防が
(a) Th1:Th2応答比の増加、
(b) 血液回復、
(c) 免疫抑制の緩和、
(d) サイトカイン刺激、
(e) 増殖性疾患(例えば、癌)、
(f) 化合物がアジュバントとして作用するワクチン接種、
(g) 樹状細胞が化合物と接触している、樹状細胞ワクチン(例えば、プライムド樹状細胞ワクチン)によるワクチン接種、
(h) 樹状細胞が化合物と接触している、自己免疫疾患の治療または予防における樹状細胞の投与、および/または
(i) 創傷の治癒、
(j) 先天性免疫応答の刺激、
(k) 内因性NK細胞の作用の増強
を含んでなる、治療または予防に使用するための請求項1-20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項43】
治療または予防が、
(a) Th1関連疾患または障害の治療、
(b) Th2関連疾患または障害(例えば、喘息などのアレルギー)、
(c) 細菌感染症の治療、
(d) ウイルス感染症の治療、
(e) プリオン(例えば、BSEおよびCJD)、真菌、原生動物または後生動物感染症の治療、
(f) 細胞内病原体に関連した疾患(例えば、リーシュマニア症、トリパノソーマ症またはマラリア)の治療
を含んでなる、請求項1-20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項44】
ウイルス感染症が、呼吸器シンシチウムウイルス(RSV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、Epstein-Barrウイルス、C型肝炎ウイルス(HCV)、単純ヘルペス1および2型、陰部ヘルペス、ヘルペス角膜炎、ヘルペス脳炎、帯状疱疹、ヒト免疫不全症ウイルス(HIV)、インフルエンザA型ウイルス、ハンターンウイルス(出血熱)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、および麻疹から選択される、請求項43(d)に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−515357(P2006−515357A)
【公表日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500223(P2006−500223)
【出願日】平成16年1月21日(2004.1.21)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000198
【国際公開番号】WO2004/064715
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(505279880)エム.エヌ.エル.ファーマ、リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】M N L PHARMA LIMITED
【Fターム(参考)】