説明

免震装置、及びその設置方法

【課題】摩擦ダンパーの設置時の調整作業負荷を軽減でき、設置後においても圧接力の調整が容易で、計画通りの減衰力を生じさせる。
【解決手段】上部構造体3と下部構造体1との間の上下方向隙間δに介装され、上部構造体を免震支持するアイソレータと、上下方向隙間にアイソレータと並列に介装され、上部構造体と下部構造体との間の水平振動を摩擦減衰力を用いて減衰する摩擦ダンパー20と、を備えた免震装置である。ばね部材30と直列配置される弾発力伝達部材40は上プレート42と下プレート44との間の隙間Gを変更可能であり、これにより設定通りの弾発力を摩擦減衰力生成部21に付与できる。設置後に上下方向隙間が経時変化しても弾発力伝達部材の上下方向長さを変更することにより、ばね部材の圧縮変形量を設置当初の状態に戻すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免震装置、及びその設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物、床、大型装置等を免震支持する免震装置が知られている。図9の概略側断面図に示すように、この免震装置は、積層ゴム等のアイソレータ7と、摩擦ダンパー110とを有する。アイソレータ7は、上部構造体3と下部構造体1との間の上下方向隙間δに介装され、上部構造体3を免震支持する。摩擦ダンパー110は、同上下方向隙間δにアイソレータ7と並列に介装され、上部構造体3と下部構造体1との間の水平振動を減衰する。
【0003】
かかる摩擦ダンパー110の一例として、特許文献1には、(1)上下方向隙間δに介装され、摩擦面121a及び該摩擦面121aに圧接しつつ滑動する滑動面125aを有する摩擦減衰力生成部120と、(2)同上下方向隙間δに摩擦減衰力生成部120と直列に介装され、摩擦減衰力生成部120の圧接力に供される弾発力を発生する一群の皿ばね130,130…(以下、皿ばね群130Gとも言う)と、(3)同上下方向隙間δに摩擦減衰力生成部120及び皿ばね群130Gと直列に介装され、前記弾発力を上下方向に伝達する弾発力伝達部材140と、(4)皿ばね群130Gの前記弾発力の設定時に使用され、皿ばね群130Gに上下方向の圧縮変形を解除可能に付与する圧縮変形付与部材150と、を有した構成が開示されている。
【0004】
そして、かかる摩擦ダンパー110の前記上下方向隙間δへの設置は、次のようにして行われる。先ず、圧縮変形付与部材150のナット155を締めることによって皿ばね群130Gを圧縮変形させておき、その圧縮の弾発力の大きさが前記圧接力の設計値になるようにする。そして、この摩擦ダンパー110を上下方向隙間δに介装する。そうしたら、摩擦ダンパー110の上面110aと上部構造体3の下面3aとの間の隙間Sに側方からフィラプレート190,190…を差し込み挿入して当該隙間Sを埋め、これにより、上部構造体3及び下部構造体1から皿ばね群130Gの弾発力の反力を取れるようにする。そして、最後に、圧縮変形付与部材150のナット155を緩めることにより、圧縮変形付与部材150による皿ばね群130Gの圧縮変形を解除し、これにより、上部構造体3及び下部構造体1から皿ばね群130Gの弾発力の反力を取りながら、当該弾発力を圧接力として、摩擦減衰力生成部110に設計値の圧接力を付与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−238164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のフィラプレート190,190…の挿入は、フィラプレート190,190…の総厚みを上記隙間Sに合った厚みに調整しながら行わねばならず、そのためには、互いに厚みの異なるプレート190,190…を何枚か組み合わせる等の必要があって、甚だ面倒な作業であった。
また、同隙間Sの大きさが、フィラプレート190,190…では補えない程度に大きい場合には、フィラプレート190,190…の挿入後に更にグラウト充填を行うことになるが、その場合には、外周に型枠を組まねばならず、これは、フィラプレート190,190…の挿入以上に手間のかかる作業であった。
【0007】
他方、上述から明らかなように、この種の摩擦ダンパー110は、上下方向隙間δに介装された状態において、その摩擦ダンパー110の全高(上下方向の全長)が、予め定められた計画値になっている場合に限り、皿ばね群130Gも上述の設計値だけ圧縮変形して所期の弾発力を生じ、その結果、当該弾発力を圧接力として計画通りの大きさの摩擦力を減衰力として発生し得るものである。
【0008】
そのため、摩擦ダンパー110の設置後において、前記上下方向隙間δが経時変化した場合には、圧接力の大きさも変化してしまい、その結果、摩擦ダンパー110は所期の減衰能力を発揮しなくなる。よって、その場合には、フィラプレート190,190…の再調整が必要になる。すなわち、上下方向隙間δから摩擦ダンパー110を一旦取り外して、隙間S(δ)の変化分だけ挿入すべきフィラプレート190,190…の量を変更しながら、摩擦ダンパー110を再設置しなければならない。
しかし、かかる摩擦ダンパー110の取り外しや再設置作業も、かなり大掛かりな作業となり、手軽に行えるものではない。
【0009】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その目的は、摩擦ダンパーの設置時の調整作業負荷を大幅に軽減でき、また、設置後においても圧接力の調整を容易に実施できて、計画通りの減衰力を確実に生じさせることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
上部構造体と下部構造体との間の上下方向隙間に介装され、前記上部構造体を免震支持するアイソレータと、
前記上下方向隙間に前記アイソレータと並列に介装され、前記上部構造体と前記下部構造体との間の水平振動を、摩擦力を減衰力として用いて減衰する摩擦ダンパーと、を備えた免震装置であって、
前記摩擦ダンパーは、
前記上下方向隙間に介装され、摩擦面及び該摩擦面に圧接しつつ滑動する滑動面を有する摩擦減衰力生成部と、
前記上下方向隙間に前記摩擦減衰力生成部と直列に介装され、前記摩擦減衰力生成部に圧接力を生じさせるべく弾発力を発生するばね部材と、
前記上下方向隙間に前記摩擦減衰力生成部及び前記ばね部材と直列に介装され、前記弾発力を上下方向に伝達する弾発力伝達部材と、を備え、
前記弾発力伝達部材は、上プレートと、前記上プレートの下方に間隔をもって対向配置された下プレートと、前記間隔の大きさを変更することにより前記弾発力伝達部材の全長を所定値に変更するとともに、前記全長を前記所定値に固定するための固定機構と、を有し、
前記間隔は、前記ばね部材に対して前記圧接力に係る前記弾発力を設定する際にジャッキを配置するための空間であり、
前記ジャッキにより前記弾発力が設定値になるまで拡げられた前記間隔の大きさを、前記ジャッキの取り外し後においては、前記固定機構が保持していることを特徴とする。
【0011】
上記請求項1に示す発明によれば、ばね部材と直列配置される弾発力伝達部材は、上プレートと下プレートとの間の間隔の大きさを変更することにより、上下方向の全長を変更可能である。よって、摩擦ダンパーの設置の際に、上下方向隙間の実際の大きさが計画値からずれている場合であっても、当該計画値からのずれに応じて、適宜弾発力伝達部材の上下方向の長さ調整により、このずれを吸収可能である。
また、この長さ調整後にばね部材に対して前記圧接力に係る弾発力を設定する場合には、前記間隔にジャッキを介装するとともに、同ジャッキによって、ばね部材の弾発力が設定値になるまで前記間隔を拡げて、設定値になった状態で固定機構により前記間隔の大きさを変動不能に固定し、しかる後にジャッキを取り取り外せば、これにより、当該ばね部材に付与された弾発力を圧接力として摩擦減衰力生成部に付与することができる。
以上から、上記構成によれば、上下方向隙間のずれを補うべく当該隙間にフィラプレートの挿入やグラウト充填等を行わずとも、設定値通りの弾発力を圧接力として摩擦減衰力生成部に付与することができ、その結果、計画通りの大きさの摩擦力を減衰力として発生させることができる。
【0012】
また、摩擦ダンパーの設置後に上下方向隙間の大きさが経時変化した場合についても、固定機構による弾発力伝達部材の長さ調整によって、当該上下方向隙間の大きさの変化に対応可能である。つまり、当該変化分だけ弾発力伝達部材の上下方向の全長を変更することにより、ばね部材の圧縮変形量を摩擦ダンパーの設置当初の状態に戻すことができる。よって、摩擦ダンパーの設置後も、計画通りの大きさの摩擦力を減衰力として確実に発生させることができる。
【0013】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の免震装置であって、
前記固定機構は、前記上プレートと前記下プレートとを連結する棒体を有し、
前記棒体の上端部及び下端部は、螺合構造によって前記上プレート及び前記下プレートに締結固定され、
前記上プレートと前記下プレートとの間に位置する前記棒体の部分の長さを変更することにより、前記間隔の大きさを変更することを特徴とする。
【0014】
上記請求項2に示す発明によれば、上プレートと下プレートとの間に位置する棒体の部分の長さの変更によって、容易に前記間隔の大きさを変更することができる。よって、摩擦ダンパーを廉価にしながらも、容易且つ確実に減衰力を計画値に設定可能となる。
【0015】
請求項3に示す発明は、請求項1に記載の免震装置であって、
前記固定機構は、前記上プレートの下面に一体に固定された上側部材と、前記下プレートの上面に一体に固定された下側部材と、前記上側部材と前記下側部材とを互いの鉛直面同士において重合させて摩擦接合状態で締結固定する高力ボルトと、を有し、
前記上側部材及び前記下側部材に形成される前記高力ボルトのボルト孔は、少なくとも一方が上下方向に長い長孔に形成されていることを特徴とする。
【0016】
上記請求項3に示す発明によれば、上側部材及び下側部材にボルト孔として形成された長孔によって、容易に前記間隔の大きさを変更することができる。よって、摩擦ダンパーを廉価にしながらも、容易且つ確実に減衰力を計画値に設定可能となる。
また、上側部材と下側部材とを、高力ボルトを用いた強固な摩擦接合で固定する。よって、ばね部材に高い弾発力が設定された場合にも、上側部材と下側部材の断面性能を上げたり、高力ボルトの本数を増やすことで、滑ることなく耐えて同弾発力を上下方向に確実に伝達可能である。その結果、大きな減衰力も設定可能となって、つまり、減衰力の大きさの調整範囲を拡大することができる。
【0017】
請求項4に示す発明は、請求項1乃至3の何れかに記載の免震装置の設置方法であって、
前記摩擦ダンパーを前記下部構造体上に載置する載置工程と、
前記下部構造体上に載置された前記摩擦ダンパーの上面と前記上部構造体の下面との間の隙間がなくなるまで、前記弾発力伝達部材の前記上プレートと前記下プレートとの間の間隔を拡げる第1拡張工程と、
前記間隔にジャッキを配置し、前記ジャッキによって前記弾発力が前記設定値になるまで前記間隔を拡げる第2拡張工程と、
前記弾発力が前記設定値になった状態で、前記固定機構によって前記間隔の大きさを固定する間隔固定工程と、
前記間隔から前記ジャッキを取り外すジャッキ取り外し工程と、を有することを特徴とする。
【0018】
上記請求項4に示す発明によれば、摩擦ダンパーの設置の際の上下方向隙間の実際の大きさの計画値からのずれを、上プレートと下プレートとの間の間隔の大きさを変更することにより吸収する。よって、上下方向隙間の計画値からのずれを補うべく、フィラプレート挿入やグラウト充填等を行わずに済み、結果、摩擦ダンパーの設置時の調整作業負荷を大幅に軽減可能となる。
また、摩擦ダンパーの設置後に上下方向隙間の大きさが経時変化した場合についても、固定機構による弾発力伝達部材の長さ調整によって、当該上下方向隙間の大きさの変化に対応可能である。つまり、当該変化分だけ弾発力伝達部材の上下方向の全長を変更することにより、ばね部材の圧縮変形量を摩擦ダンパーの設置当初の状態に戻すことができる。よって、摩擦ダンパーの設置後も、計画通りの大きさの摩擦力を減衰力として確実に発生させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、摩擦ダンパーの設置時の調整作業負荷を大幅に軽減でき、また、設置後においても圧接力の調整を容易に実施できて、計画通りの減衰力を確実に生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】第1実施形態の免震装置10の側面図である。
【図2】摩擦ダンパー20の概略中心縦断面図である。
【図3】摩擦ダンパー20の上面図である。
【図4】摩擦ダンパー20を斜め下方から見た斜視図である。
【図5】同分解斜視図である。
【図6】第2実施形態に係る摩擦ダンパー20aの側面図である。
【図7】同摩擦ダンパー20aを斜め下方から見た斜視図である。
【図8】その他の実施の形態の摩擦ダンパー20bの概略中心縦断面図である。
【図9】従来の免震装置に係る摩擦ダンパー110の概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
===第1実施形態===
<<<免震装置10>>>
図1乃至図5は、第1実施形態の免震装置10の説明図である。図1は免震装置10の側面図である。図2は摩擦ダンパー20の概略中心縦断面図であり、図3は同上面図である。また、図4は摩擦ダンパー20を斜め下方から見た斜視図であり、図5は同分解斜視図である。なお、以下の説明で用いる図においては、図の錯綜を防ぐべく、図によっては、本来断面線で示すべき断面部位の断面線を適宜省略したり、あるいは、同断面部位をグレーで着色して示したりしている。
【0022】
図1に示すように、免震装置10は、建物3(上部構造体に相当)と、その下方の基礎コンクリート1(下部構造体に相当)との間の上下方向隙間δに介装されている。そして、これにより、建物3は、地震等の振動から水平免震されて保護される。
免震装置10は、建物3を免震支持するアイソレータ7と、上下方向隙間δにアイソレータ7と並列に介装され、建物3と基礎コンクリート1との間の水平振動を減衰する摩擦ダンパー20と、を備えている。
【0023】
アイソレータ7は、例えば積層ゴムである。そして、積層ゴムの水平方向の剪断弾性変形によって、建物3と基礎コンクリート1との水平方向の相対変位(相対移動)を許容しながら建物3の自重を支持する。なお、このアイソレータ7としては、上述の積層ゴム以外に、転がり支承や滑り支承等を適用できる。
【0024】
図2に示すように、摩擦ダンパー20は、水平振動の減衰力として供される摩擦力を発生する摩擦減衰力生成部21と、摩擦力の垂直抗力となる圧接力に供される弾発力を発生するばね部材としての皿ばね群30Gと、前記弾発力を上下方向に伝達して、上方の建物3から弾発力の反力を取る弾発力伝達部材40とが、この順番で下から上へ直列に重ねて配置されたものを主体とする。そして、この主体に加えて、皿ばね群30Gと並列に相対変位伝達部材60が設けられており、この相対変位伝達部材60により、基礎コンクリート1に対する建物3の水平方向の相対変位が摩擦減衰力生成部21へ伝達されて摩擦減衰力生成部21が滑動し、上記摩擦力を発生する。
【0025】
摩擦減衰力生成部21は、摩擦材22と、摩擦材22の下面たる摩擦面22aに圧接しつつ滑動する滑り面24aを有した滑り材24と、摩擦材22の上方に配置され、下面に摩擦材22が固定された平面視正円形状の下フランジ板26と、を有する。
【0026】
滑り材24は、建物3の基礎コンクリート1の上面に固定される。一方、摩擦材22は、皿ばね群30Gの下に隣接配置された前記下フランジ板26の下面に重ね合わせられてボルト止めされており、この状態で、滑り材24の上面たる滑り面24aに載置されている。よって、これら摩擦材22と滑り材24とが水平方向に相対変位(相対移動)すると、摩擦面22aと滑り面24aとの間に摩擦力が発生する。
【0027】
この例では、滑り材24としてステンレス板を用い、摩擦材22として超高分子量ポリエチレンを用いているが、これらの素材は、必要な摩擦力の大きさ等に基づいて適宜選定される。また、この摩擦力は、摩擦材22の摩擦面22aと滑り材24の滑り面24aとに付与される垂直抗力たる圧接力に応じて変化するが、この圧接力は、皿ばね群30Gの弾発力によって付与される。
【0028】
皿ばね群30Gは、複数枚の皿ばね30,30…を上下に積層した皿ばね積層体である。そして、基本的に圧縮変形した際には、その圧縮変形量に応じた大きさの弾発力を摩擦減衰力生成部21に付与し、当該弾発力を圧接力として摩擦減衰力生成部21は滑動時に摩擦力を発生する。なお、上記弾発力に係る圧縮変形量は、弾発力伝達部材40の伸縮量の調整を通して皿ばね群30Gに付与されるが、これについては後述する。
【0029】
図2に示すように、皿ばね積層体をなす各皿ばね30,30…の平面中心には、互いに同形の貫通孔30hが正円状に形成されており、これら貫通孔30h,30h…の円心は互いに揃っている。よって、これら貫通孔30h,30h…は互いに上下に繋がって、皿ばね群30Gの平面中心の孔部30Ghをなし、当該孔部30Ghに、前述の相対変位伝達部材60をなす円筒シャフト60が上下方向に沿って串刺し状に挿通されている。そして、円筒シャフト60の下端部は、上述の下フランジ板26の上面の嵌合凹部26aに嵌合されつつボルト止めされているとともに、同円筒シャフト60の上端部は、後述する弾発力伝達部材40の上フランジ板42の貫通孔42hに、上下方向の相対移動可能且つ水平方向の相対移動不能に通されている。そして、詳細には後述するが、当該上フランジ板42は、建物3の下面3aに一体に固定されている。よって、当該上フランジ板42を介して、円筒シャフト60は、基礎コンクリート1に対する建物3の水平方向の相対変位を摩擦減衰力生成部21の摩擦材22に伝達する。そして、これにより、摩擦材22は、基礎コンクリート1に固定された滑り材24に対して相対変位し、かかる相対変位と、上述の皿ばね群30Gの弾発力とに基づいて、摩擦減衰力生成部21は摩擦力を発生する。
【0030】
弾発力伝達部材40は、図2及び図3に示すように、平面視正円形状の上フランジ板42(上プレートに相当)と、その下方に配置された平面視正円形状の中間フランジ板44(下プレートに相当)と、これらフランジ板42,44同士の間の間隔Gを一定に維持しつつこれらフランジ板42,44同士を連結する連結ボルト46,46…(棒体に相当)と、を有する。
【0031】
上フランジ板42は、建物3の下面3aに接着材やボルト等により相対移動不能に固定されている。また、上フランジ板42は、その平面中心と同芯に上述の貫通孔42hを有し、この貫通孔42hには、前述したように円筒シャフト60の上端部が、上下方向の相対移動可能、且つ水平方向の相対移動不能に係合している。
【0032】
一方、中間フランジ板44も上記貫通孔42hと同芯の貫通孔44hを有し、この貫通孔44hに対しても、前記円筒シャフト60は適宜なクリアランスをもって略非接触に通されている。そして、この中間フランジ板44の下面44aには、前述の皿ばね群30Gの上端が当接し、当該中間フランジ板44とその下方の下フランジ板26との挟み込みによって皿ばね群30Gが圧縮変形した分だけ、皿ばね群30Gは弾発力を生じ、当該弾発力が、前述の摩擦減衰力生成部21の圧接力となる。
【0033】
連結ボルト46,46…は、それぞれ、ボルト軸方向を上下方向に向けつつ、フランジ板42,44の外周縁に沿って等ピッチで複数本配置されている。そして、各連結ボルト46は、これに螺合するナット48a,48bと協働することにより、弾発力伝達部材40の上下方向の全長Lを伸縮して当該全長Lを所定値に固定する伸縮機構(固定機構に相当)として機能する。すなわち、上フランジ板42と中間フランジ板44との間の間隔Gの大きさの変更を通して、上フランジ板42の上面42aと中間フランジ板44の下面44aとの間の距離Lを伸縮変更し、当該距離Lを所定値に固定することができる。
【0034】
より詳しく説明すると、連結ボルト46の上端部の雄ねじ46aは、上フランジ板42に上下に貫通形成された雌ねじ42mに螺着され、更にロックナット47により螺合回転不能に固定されているが、同連結ボルト46の下端部は、中間フランジ板44に上下に貫通形成されたボルト孔44Bhに適宜なクリアランスをもって通されている。そして、同連結ボルト46の下端部の外周面に形成された雄ねじ46bには、中間フランジ板44を上下から挟み込むように一対のナット48a,48bが螺合している。よって、これら一対のナット48a,48bの螺合位置を上下に移動することにより、中間フランジ板44を上フランジ板42に対して相対的に上下方向に移動可能であり、これにより、これらフランジ板42,44を本体とする弾発力伝達部材40の上下方向の全長Lを変更することができる。なお、ナット48a,48bの移動を止めれば、当該全長Lは、その長さで変動不能に固定される。
【0035】
ここで、摩擦ダンパー20として作動している図2の状態においては、この全長Lの設定により、皿ばね群30Gが下方に押し込まれて圧縮変形量を付与された状態になっており、これにより、皿ばね群30Gは弾発力を生じ、当該弾発力が、前述の摩擦減衰力生成部21に伝達されて上述の圧接力となる。
【0036】
このような伸縮機能は、摩擦ダンパー20を前記上下方向隙間δに設置する際に使用され、また、設置後における弾発力の大きさの再調整においても使用される。これについては後述する。
【0037】
なお、かかる連結ボルト46,46…は、前述したように、上フランジ板42及び中間フランジ板44の外周縁に沿った同一円周上に等ピッチで複数本配置されており(図3を参照)、これにより、皿ばね群30Gの全面に亘って均等に圧縮変形を付与可能となっている。
【0038】
<<<摩擦ダンパー20の設置手順>>>
ここで、建物3と基礎コンクリート1との間の上下方向隙間δへの摩擦ダンパー20の設置手順について説明する。なお、以下では、説明の都合上、摩擦ダンパー20から滑り材24を取り外した構成のことも、摩擦ダンパー20と言い、また、摩擦減衰力生成部21から滑り材24を取り外した構成のことも、摩擦減衰力生成部21と言う。
【0039】
先ず、図2に示すように、基礎コンクリート1の上面に滑り材24を載置して移動不能に固定する(第1ステップ)。
次に、適宜な作業場において、摩擦ダンパー20の上下方向の全長L20を短縮することにより、当該摩擦ダンパー20を上下方向隙間δへ差し込み挿入し易い状態にする。詳しくは、弾発力伝達部材40の前記伸縮機構の上下一対のナット48a,48bを螺合回転してこれらナット48a,48bを上方に移動する。すると、弾発力伝達部材40の中間フランジ板44に対して相対的に上フランジ板42が下方へ移動して、弾発力伝達部材40の全長Lが短縮され、これにより、摩擦ダンパー20の全長L20が短縮される(第2ステップ)。
なお、これと並行して又は前後して、摩擦ダンパー20の上フランジ板42の上面42aに接着材を塗布する。接着材としては、高流動性モルタルや高流動性セメント等が使用される(第3ステップ)。
【0040】
次に、短縮状態の摩擦ダンパー20を建物3と基礎コンクリート1との間の上下方向隙間δに側方から差し込んで介装する。すなわち、同摩擦ダンパー20を、既に基礎コンクリート1上に固定した滑り材24の上面24aに載置する(第4ステップ、載置工程に相当)。
【0041】
そうしたら、弾発力伝達部材40の伸縮機構の上下一対のナット48a,48bを螺合回転してこれらナット48a,48bを下方に移動する。すると、弾発力伝達部材40の中間フランジ板44に対して相対的に上フランジ板42が上方へスライド移動して、上フランジ板42と中間フランジ板44との間の間隔Gが広がり、これにより、弾発力伝達部材40が上方に伸長される。そして、この伸長作業を、基礎コンクリート1上に載置された摩擦ダンパー20の上面20u、つまり弾発力伝達部材40の上フランジ板42の上面42aと、建物3の下面3aとの間の隙間が無くなるまで続ける(第5ステップ、第1拡張工程に相当)。
【0042】
そして、当該隙間が無くなって建物3の下面3aに当接したら、弾発力伝達部材40の上フランジ板42を建物3の下面3aにボルト止めし、また、前述の接着材が固化するまで待つ(第6ステップ)。
そうしたら、圧接力の設計値に相当する皿ばね群30Gの撓み量(圧縮変形量)だけ下方へナット48bを移動する。また、上フランジ板42と中間フランジ板44との間の間隔Gに、ジャッキ(不図示)を介装する。なお、かかるジャッキについては、中間フランジ板44の円周方向に沿って等ピッチに複数台を配置すると良い。
そして、中間フランジ板44がナット48bに押し当たるまで、ジャッキを上下方向に伸長させる。これにより、弾発力が上記圧接力の設計値(設定値に相当)になるまで、中間フランジ板44は下方へスライド移動して間隔Gが拡げられる(第7ステップ、第2拡張工程に相当)。
【0043】
次に、中間フランジ板44が下方にスライド移動した分だけ、連結ボルト46のナット48aを螺合回転して下方に移動して当該ナット48aを上方から中間フランジ板44に押し付けた状態にし、これにより、連結ボルト46の軸力で皿ばね群30Gの弾発力を受けられる状態にする。すなわち、連結ボルト46とナット48aとの締結によって、間隔Gの大きさを固定・保持する(第8ステップ、間隔固定工程に相当)。
【0044】
そうしたら、ジャッキを短縮して摩擦ダンパー20から取り外す。すると、皿ばね群30Gの弾発力の作用対象が、ジャッキから連結ボルト46及びナット48aを介して弾発力伝達部材40へと移り、つまり、皿ばね群30Gは、当該弾発力伝達部材40を上方へ押圧し、その反力を建物3から得て、最終的には、摩擦減衰力生成部21の摩擦面22a及び滑り面24aに皿ばね群30Gの弾発力が圧接力として付与される(第9ステップ、ジャッキ取り外し工程に相当)。
【0045】
なお、ここで上述のジャッキの短縮時には、弾発力の作用対象がジャッキから弾発力伝達部材40に切り替わっただけであり、当該弾発力の大きさは、第5乃至第7ステップでセットされた設計値と略同値に維持されている。よって、摩擦減衰力生成部21には略設計値の圧接力が付与されており、もって、水平振動の減衰に必要な計画通りの大きさの摩擦力が、摩擦面22aと滑り面24aとの間に生じることとなる。
【0046】
そして、以上説明したことから明らかなように、当該第1実施形態に係る摩擦ダンパー20の構成によれば、上下方向隙間δの寸法が、所期の計画値からずれている場合であっても、当該計画値からのずれを、伸縮機構による弾発力伝達部材40の上方への伸縮調整によって吸収することができる。よって、フィラプレート挿入やグラウト打設による調整は行わずに済み、結果、調整作業負荷の大幅な軽減を図れる。
【0047】
なお、ここで望ましくは、上述の圧接力の設計値に相応する皿ばね群30Gの撓み量が、皿ばね30の荷重−撓み関係における非線形領域内、つまり、皿ばね30の撓み量(圧縮変形量)の変動に対する弾発力の変動の小さい領域内に設定されるのが好ましい。そして、上記撓み量がこの非線形領域内に収まっていれば、アイソレータ7のクリープ現象や気温変動による膨張収縮等の経時変化に起因して上述の上下方向隙間δが変化する場合であっても、皿ばね群30Gの弾発力変動を小さく抑えることができ、その結果、摩擦面22aと滑り面24aとの間の摩擦力をほぼ一定に維持できる。これにより摩擦ダンパー20は、安定した振動減衰作用を発揮することができる。
【0048】
但し、詳細には後述するが、この第1実施形態の構成によれば、摩擦ダンパー20の設置後の弾発力の調整も容易に行えるので、設置後の上下方向隙間δが経時変化しても、手軽に再調整することができる。よって、必ずしも非線形領域を利用する必要は無い。つまり、場合によっては、皿ばね30に代えてコイルばね等の線形ばねを適用しても良い。
【0049】
また、上述の摩擦ダンパー20の設置手順の説明では、既に構築済みの建物3の下面3aと基礎コンクリート1との間の上下方向隙間δに摩擦ダンパー20を挿入する場合を例に説明したが、摩擦ダンパー20の設置手順は何等これに限るものではない。
例えば、先ず、基礎コンクリート1を構築し、その後、第1ステップ及び第2ステップを行い、次に、建物3の下面3aを構築し、その後、第3ステップから第9ステップを行うようにしても良い。
【0050】
<<<摩擦ダンパー20の設置後の圧接力の調整手順>>>
ところで、摩擦ダンパー20の設置後に上下方向隙間δの大きさが経時変化した場合に圧接力が変化する虞があるが、その場合についても、前記伸縮機構による弾発力伝達部材40の伸縮調整によって、前記隙間δの大きさの変化に対処可能である。つまり、当該変化分だけ弾発力伝達部材40の上下方向の全長Lを伸縮変更することにより、皿ばね群30Gの圧縮変形量を摩擦ダンパー20の設置当初の状態に戻すことができる。これにより、圧接力を速やかに設計値に戻すことができて、その結果、計画通りの大きさの摩擦力を減衰力として発生させることができる。
【0051】
ここで、図2を参照しつつ、この圧接力の調整手順について詳しく説明する。なお、ここでは、上下方向隙間δが、摩擦ダンパー20の設置時と比べて広がってしまった場合を例に説明する。その場合には、隙間δが広がった分だけ皿ばね群30Gの弾発力が弱くなっているので、弾発力伝達部材40の全長Lを長くして弾発力を大きくすることにより、設計値へと戻すことになる。
【0052】
先ず、ナット48bを弾発力伝達部材40の長さ調整分だけ下方へ移動する。次に、上フランジ板42と中間フランジ板44との間の間隔Gに、ジャッキ(不図示)を介装する。そして中間フランジ板44がナット48bに押し当たるまで、ジャッキを上下方向に伸長させる。
【0053】
次に、中間フランジ板44が下方に移動した分だけ、連結ボルト46のナット48aを螺合回転して下方に移動して当該ナット48aを上方から中間フランジ板44に押し付けた状態にし、これにより、連結ボルト46の軸力で皿ばね群30Gの弾発力を受けられるようにする。
【0054】
そうしたら、ジャッキを短縮して摩擦ダンパー20から取り外す。すると、ジャッキに作用していた皿ばね群30Gの弾発力は、弾発力伝達部材40の方に作用して当該弾発力伝達部材40を上方へ押圧し、その反力を建物3から得て、最終的には、摩擦減衰力生成部21の摩擦面22a及び滑り面24aに皿ばね群30Gの弾発力が圧接力として付与される。以上をもって、摩擦ダンパー20の圧接力を設計値へ戻す調整が終了する。
【0055】
なお、上述では、設計値からずれた圧接力を設計値に戻す調整を例示したが、当該調整の目的は何等これに限るものではない。例えば、実際の摩擦係数が想定値と違っていた場合には、圧接力を設計値どおりに設定しても、所期の減衰効果を期待できないが、その場合にも、上述と同じ手順により対応可能である。すなわち、摩擦係数の想定値と実績値との相違分だけ、圧接力を設計値からずらして設定すれば、所期の減衰力を得ることができる。
【0056】
===第2実施形態===
図6は、第2実施形態に係る摩擦ダンパー20aの側面図であり、図7は、同摩擦ダンパー20aを斜め下方から見た斜視図である。
上述の第1実施形態との相違点は、弾発力伝達部材40に係る上フランジ板42と中間フランジ板44とを連結する連結構造の構成にある。そして、これ以外の点は概ね上述の第1実施形態と同じである。よって、同じ構成については同じ符号を付し、その説明については省略する。
【0057】
図6に示すように、この第2実施形態の弾発力伝達部材40aも上フランジ板42と中間フランジ板44とを有している。そして、これらフランジ板42,44同士は、互いの間に間隔Gをもたせつつ、所定の連結構造70によって連結されている。
ここで、第1実施形態と同様に、この第2実施形態に係る連結構造70も、弾発力伝達部材40aを上下方向に伸縮する伸縮機構(固定機構に相当)として機能する。
【0058】
すなわち、この連結構造70は、上フランジ板42の下面に溶接等により一体に固定された上側部材71と、中間フランジ板44の上面に溶接等により一体に固定された下側部材72と、これら上側部材71と下側部材72とを互いの鉛直面71a,72a同士において重合させて(面接触させて)摩擦接合状態で締結固定する高力ボルト73a及びナット73bと、を有する。そして、上側部材71及び下側部材72に形成される高力ボルト73aのボルト孔(不図示)は、少なくとも一方が上下方向に長い長孔に形成されている。よって、前記鉛直面71a,72aにおいて上側部材71を下側部材72に対して相対的に上方又は下方にスライド移動させた後に、高力ボルト73a及びナット73bによって相対移動不能な摩擦接合状態に締結固定すれば、上フランジ板42の上面42aと中間フランジ板44の下面44aとの距離Lたる弾発力伝達部材40aの上下方向の全長Lを変更することができる。よって、上述の第1実施形態と同様に、摩擦ダンパー20aの設置時の調整作業負荷を大幅に軽減可能となる。
【0059】
また、この第2実施形態の場合には、高力ボルト73aを用いているので、上側部材71及び下側部材72の断面性能を高めれば、上述の鉛直面71a,72aは、高力ボルト73aの締結により強固な摩擦接合状態を実現可能である。よって、上述の第1実施形態と比べて、弾発力伝達部材40aは、大きな上下方向の圧縮荷重の作用下においても耐えることができ、よって、摩擦力の計画値が大きい場合に好適である。
【0060】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0061】
上述の実施形態では、摩擦ダンパー20の各構成要素のなかで、上下方向隙間δにおいて互いに直列に並ぶ構成要素たる弾発力伝達部材40、皿ばね群30G、及び摩擦減衰力生成部21を、この順番で上から下へと直列に並べた構成を例示したが(図2の概略中心縦断面図を参照)、この並び順は、何等これに限るものではない。例えば、図2の状態の摩擦ダンパー20を上下反転して、上下方向隙間δに介装しても良い。すなわち、図8の摩擦ダンパー20bの概略中心縦断面図に示すように、上から下へと、摩擦減衰力生成部21、皿ばね群30G、及び弾発力伝達部材40の順番で直列に配置しても良い。
【0062】
上述の実施形態では、免震装置10を建物3と基礎コンクリート1との間の上下方向隙間δに介装したが、何等これに限るものではない。例えば、建物3が多層階からなる場合には、上部構造体としてのN+1階の躯体と、下部構造体としてのN階の躯体との間の上下方向隙間に免震装置10を介装しても良い。また、上部構造体として、嫌振装置である半導体製造設備等を設置する床、あるいは、大型装置等に適用してもよい。
【0063】
上述の実施形態では、図2や図3に示すように、下フランジ板26の平面サイズを中間フランジ板44よりも小さくしていたが、何等これに限るものではなく、同サイズでも良い。但し、上述の実施形態のように下フランジ板26のサイズを中間フランジ板44よりも小さくした方が、材料コストの削減を図れて経済的である。
【符号の説明】
【0064】
1 基礎コンクリート(下部構造体)、3 建物(上部構造体)、3a 下面、
7 アイソレータ、10 免震装置、20 摩擦ダンパー、
20a 摩擦ダンパー、20b 摩擦ダンパー、20u 上面、
21 摩擦減衰力生成部、22 摩擦材、22a 摩擦面、
24 滑り材、24a 滑り面、26 下フランジ板、26a 嵌合凹部、
30 皿ばね(ばね部材)、30h 貫通孔、
30G 皿ばね群(ばね部材)、30Gh 孔部、
40 弾発力伝達部材、40a 弾発力伝達部材、
42 上フランジ板(上プレート)、42a 上面、42h 貫通孔、
44 中間フランジ板(下プレート)、44Bh ボルト孔、
44a 下面、44h 貫通孔、46 連結ボルト(棒体)、
47 ロックナット、48a ナット、48b ナット、
60 円筒シャフト(相対変位伝達部材)、
70 連結構造、71 上側部材、71a 鉛直面、72 下側部材、
72a 鉛直面、73a 高力ボルト、73b ナット、
δ 上下方向隙間、G 間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部構造体と下部構造体との間の上下方向隙間に介装され、前記上部構造体を免震支持するアイソレータと、
前記上下方向隙間に前記アイソレータと並列に介装され、前記上部構造体と前記下部構造体との間の水平振動を、摩擦力を減衰力として用いて減衰する摩擦ダンパーと、を備えた免震装置であって、
前記摩擦ダンパーは、
前記上下方向隙間に介装され、摩擦面及び該摩擦面に圧接しつつ滑動する滑動面を有する摩擦減衰力生成部と、
前記上下方向隙間に前記摩擦減衰力生成部と直列に介装され、前記摩擦減衰力生成部に圧接力を生じさせるべく弾発力を発生するばね部材と、
前記上下方向隙間に前記摩擦減衰力生成部及び前記ばね部材と直列に介装され、前記弾発力を上下方向に伝達する弾発力伝達部材と、を備え、
前記弾発力伝達部材は、上プレートと、前記上プレートの下方に間隔をもって対向配置された下プレートと、前記間隔の大きさを変更することにより前記弾発力伝達部材の全長を所定値に変更するとともに、前記全長を前記所定値に固定するための固定機構と、を有し、
前記間隔は、前記ばね部材に対して前記圧接力に係る前記弾発力を設定する際にジャッキを配置するための空間であり、
前記ジャッキにより前記弾発力が設定値になるまで拡げられた前記間隔の大きさを、前記ジャッキの取り外し後においては、前記固定機構が保持していることを特徴とする免震装置。
【請求項2】
請求項1に記載の免震装置であって、
前記固定機構は、前記上プレートと前記下プレートとを連結する棒体を有し、
前記棒体の上端部及び下端部は、螺合構造によって前記上プレート及び前記下プレートに締結固定され、
前記上プレートと前記下プレートとの間に位置する前記棒体の部分の長さを変更することにより、前記間隔の大きさを変更することを特徴とする免震装置。
【請求項3】
請求項1に記載の免震装置であって、
前記固定機構は、前記上プレートの下面に一体に固定された上側部材と、前記下プレートの上面に一体に固定された下側部材と、前記上側部材と前記下側部材とを互いの鉛直面同士において重合させて摩擦接合状態で締結固定する高力ボルトと、を有し、
前記上側部材及び前記下側部材に形成される前記高力ボルトのボルト孔は、少なくとも一方が上下方向に長い長孔に形成されていることを特徴とする免震装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の免震装置の設置方法であって、
前記摩擦ダンパーを前記下部構造体上に載置する載置工程と、
前記下部構造体上に載置された前記摩擦ダンパーの上面と前記上部構造体の下面との間の隙間がなくなるまで、前記弾発力伝達部材の前記上プレートと前記下プレートとの間の間隔を拡げる第1拡張工程と、
前記間隔にジャッキを配置し、前記ジャッキによって前記弾発力が前記設定値になるまで前記間隔を拡げる第2拡張工程と、
前記弾発力が前記設定値になった状態で、前記固定機構によって前記間隔の大きさを固定する間隔固定工程と、
前記間隔から前記ジャッキを取り外すジャッキ取り外し工程と、を有することを特徴とする免震装置の設置方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図9】
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【図2】
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【図6】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−62929(P2012−62929A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205894(P2010−205894)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】