説明

免震装置および免震システム

【課題】 対象物を簡便に移動でき、高い免震性能を有する免震装置および免震システムを提供する。
【解決手段】 本実施例の免震装置は、衝撃緩衝装置10および取付部材30からなる。衝撃緩衝装置10は、所定方向に延びるレール40と、床面に設置され、レール40を床面に沿う上述した所定方向に移動可能に保持するベース50と、レール40に取り付けられる2つのストッパー60と、を備えている。
地震の発生時において、対象物3が所定方向に移動すると、キャスター2がストッパー60に接触する。続いて、ストッパー60を取り付けてなるレール40が所定方向に移動する。このとき、レール40とベース50との間に生じる摩擦によって、対象物3が所定方向に移動するエネルギーが奪われるため、所定方向に関する移動の幅が小さく抑えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器の免震に用いる免震装置および免震システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機や医療機器などの比較的重量のある機器には、その移動を容易にするためにキャスターが取り付けられていることが多い。しかしながら、キャスターで移動を容易にしたことにより、地震の発生時には機器類が予想できない動きをして壁面や人と衝突し、壁面や機器を破損する危険や、人体に傷害を与える危険が発生する。
【0003】
このような被害を防ぐために、キャスターを備える機器を固定するための技術が各種提案されている。例えば、床面に取り付けられ、キャスターを基台と固定部材とで固定するキャスター支持体が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−139597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
重量のある機器に対して地震対策をとる場合、特許文献1のような簡易的な固定具では機能不足であり、規模の大きい地震ではキャスターが簡単に外れてしまうという問題がある。そこで、機器を固定するために、キャスターなどを床面にボルトで固定する技術も利用されている。このような技術であれば、機器を床面に対して強固に固定することができるため、地震時にも機器類の移動を抑制することができる。
【0005】
しかしながら、メンテナンスなどで機器を移動させる際にはボルトを外し、再び設置する際にはボルトを取り付ける必要があり、またその作業は機器の足元の狭い空間で行う必要があるため、機器を移動させることが大変不便であった。
【0006】
また、複写機のように、前部に用紙トレイなどの着脱可能な付属品を収容している機器は、その付属品の着脱を容易にするために、付属品と機器本体とを強固に固定していない。そのため、機器本体を床面に強固に固定すると、地震時に付属品が強い勢いで機器本体から飛び出し、周辺に被害を及ぼす危険性があった。
【0007】
本発明は上述した問題に鑑みてなされたものであり、対象物を簡便に移動でき、高い免震性能を有する免震装置および免震システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、対象物のキャスターを載せる積載面を有するレールと、床面に設置され、床面に沿う所定方向に関してレールを移動可能に保持するベースと、レールに取り付けられ、キャスターの所定方向への移動を制限するストッパーと、を備えることを特徴とする免震装置である。
【0009】
このように構成された免震装置であれば、地震の発生時に対象物が所定方向に移動すると、キャスターがストッパーに接触し、ストッパーを取り付けてなるレールが所定方向に移動することになる。このとき、レールとベースとの間に生じる摩擦によって、対象物が所定方向に移動するエネルギーが奪われるため、所定方向に関する移動の幅が小さく抑えられる。
【0010】
また、地震の衝撃が急激に対象物に加わることが防止できるため、対象物の転倒や、付属品の飛び出しを抑制できる。それにより、地震発生後の対象物の故障や破損が抑制されるため、対象物を用いた作業が行えず、仕事等が中断してしまうことを抑制できる。
【0011】
上述した免震装置において、対象物が免震装置に設置されているときのキャスターと免震装置との固定は、キャスターの移動をストッパーにて制限することで実現される。従来のように、対象物またはキャスターを床面に完全に固定する場合には、対象物またはキャスターを強固に固定する必要があったが、本発明の免震装置では、キャスターがレールから脱落さえしなければ、その免震機能を発揮することができる。上記免震装置において、キャスターがストッパーに衝突すると、ストッパーごとレールが移動するため、ストッパーに衝突した際に一点に負荷が掛かってキャスターが飛び出す虞が小さい。よって、キャスターを強固に固定する必要がなく、移動させる際には、例えばストッパーを取り外すなどして積載面から降ろすだけでよいので、対象物の設置および設置の解除の作業が簡便なものとなる。
【0012】
このように、上述した本発明の免震装置であれば、対象物を簡便に設置でき、高い免震効果を得ることができる。
【0013】
なお、ここでいう対象物とは、キャスターを備える機器であって、例えば、複写機や医療機器,冷蔵庫,自動販売機などが該当する。
【0014】
また、ここでいう所定方向とは、レールとベースが摺動して相対的に移動する方向である。免震装置を設置する際には、対象物の移動を最も抑制すべき方向(例えば、用紙トレイなどの付属品が取り付けられている方向)が所定方向となるように設置するとよい。
【0015】
上述した免震装置は、レールとベースとの間に生じる摩擦力に応じて免震性能が変化するが、対象物の物性(重さや重心の位置など)に応じて、適切な摩擦力は異なるので、レールとベースとの間に生じる摩擦力は、対象物に応じて変化させるとよい。
【0016】
摩擦力を変化させるためには、例えば、レールおよびベースの材質を変更することが考えられる。また、それ以外の方法として、請求項2に記載の免震装置のように、レールまたはベースの少なくともいずれか一方に取り付けられ、レールとベースとが摺動する際に、上記一方と異なる他方と接触するレール摩擦部材を備える構成としてもよい。
【0017】
このように構成された免震装置であれば、摩擦力を変化させることで、高い免震性能を得ることができる。また、レール摩擦部材を変更することで、摩擦力の変更を容易に行うことができる。
【0018】
なお、レール摩擦部材は、レールおよびベースのいずれか一方に取り付けられていてもよく、両方に取り付けられていてもよい。
【0019】
また、このレール摩擦部材の形状は特に限定されないが、シート状に形成することで、摺動箇所に貼り付けて用いることができる。また、レール摩擦部材として、レールとベースとの間に何も配置しない場合の摩擦係数よりも、摩擦係数が高くなる材質を用いてもよいし、摩擦係数が低くなる材質を用いてもよい。
【0020】
上述したベースは、床面に対して完全に固定されていてもよいが、床面との間で免震作用を持つように取り付けてもよい。そのためには、請求項3に記載の免震装置のように、ベースが、ベースと床面との間に配置された弾性を有する弾性部材によって床面に取り付けられる構成としてもよい。
【0021】
このように構成された免震装置であれば、地震の発生時に弾性部材が免震装置全体および対象物に伝わる力を吸収するため、免震性能を高めることができる。
【0022】
上述した弾性部材は、粘着性を有するものを用いると、さらに免震性能を高めることができる。また、この弾性部材は、使用状態において免震装置および対象物に圧縮されるため、これに耐える性能が良好なもの(例えば、北川工業株式会社からタックフィットの商品名で販売されているもの)を使用することが望ましい。
【0023】
上述したストッパーは、請求項4に記載の免震装置のように、ストッパーが、キャスターに面する位置に、キャスターと接触した際に弾性変形するストッパー緩衝材を備える構成としてもよい。
【0024】
このように構成された免震装置であれば、地震発生時において、キャスターがストッパーと接触する際の衝撃がストッパー緩衝材によって緩衝される。よって、地震の発生時に対象物が移動し、ストッパーに接触したときの衝撃を抑制できるため、対象物の転倒や、付属品の飛び出しを抑制できる。
【0025】
なお、上述したストッパー緩衝材としては、衝撃を緩衝する材質ならば特に限定されないが、低反発ウレタンや衝撃緩衝ゲルなどを用いると高い衝撃緩衝性能を得ることができる。
【0026】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の免震装置において、床面に設置され、レールが所定方向に移動したときに、レールと摺動することで、レールの移動を抑制する床面摩擦部材を備えることを特徴とする。
【0027】
このように構成された免震装置であれば、地震の発生時において、レールが所定方向に移動し、レールの一部がベースから飛び出している状態であっても、床面摩擦部材によりレールの移動を抑制する力が働くため、免震性能を高めることができる。
【0028】
この床面摩擦部材は、レールにおけるいずれの部分に接触する形状であっても良いが、床面に貼り付けるシート状に形成すると、地震の発生時以外のときに目立たず都合がよい。
【0029】
上述したレールは、請求項6に記載の免震装置のように、積載面における所定方向と交差する方向の端部において、キャスターの前記レールからの脱落を防止する脱落防止部が設けられている構成としてもよい。
【0030】
このように構成された免震装置であれば、キャスターが所定方向と交差する方向へ移動して、レールから脱落することを防止できる。そのため、対象物の所定方向と交差する方向への移動を抑制することができる。
【0031】
また、上述した脱落防止部は、請求項7に記載の免震装置のように、キャスターに面する位置に、キャスターと接触した際に弾性変形するレール緩衝材を備える構成としてもよい。
【0032】
このように構成された免震装置であれば、地震発生時において、キャスターが脱落防止部と接触する際の衝撃がレール緩衝材によって緩衝される。よって、地震の発生時に対象物が移動し、キャスターが脱落防止部に接触したときの衝撃を抑制できるため、脱落防止部が破損したり、対象物が浮き上がって転倒したりする危険を低減できる。
【0033】
地震発生により対象物が移動し、キャスターがストッパーなどに衝突すると、そのときの衝撃で対象物が上方向に浮き上がる虞がある。そのため、請求項8に記載の免震装置のように、対象物に取り付けられる取付部材と、レールに設けられ、キャスターが積載面に乗っている状態で、対象物に取り付けられた取付部材と係合して、取付部材の所定方向への動きをガイドするガイド部材と、を備えており、ガイド部材は、取付部材と係合しているときに、少なくとも床面と直交する方向に関する取付部材の移動を抑制する構成としてもよい。
【0034】
地震の発生時において、キャスターがストッパーや上述した請求項6の脱落防止部などに衝突したときや、地震の上下方向の力を受けたときには、対象物が浮き上がって免震装置から脱落してしまう虞があるが、このように構成された免震装置であれば、対象物が床面から浮き上がり、免震装置から脱落してしまうことを防止できる。
【0035】
さらに、対象物を免震装置に設置する際には、ガイド部材が対象物のキャスターの移動をガイドすることにもなるため、対象物の免震装置への設置が容易となる。
【0036】
上述した取付部材またはガイド部材のいずれか一方には、請求項9に記載の免震装置のように、ローラーが設けられており、取付部材とガイド部材とが接触する際には、ローラーの円周面が上述した一方と異なる他方と接触する構成としてもよい。
【0037】
このように構成された免震装置であれば、上述したガイド部材と取付部材とが接触している状態において、それらの間に働く摩擦力を抑制できる。よって、地震発生時には、ガイド部材と取付部材とが引っ掛かることなく、キャスターがストッパーにスムーズに接触し、レールをベースに対して適切に摺動させることができるため、免震性能を高めることができる。
【0038】
また、上述した取付部材およびガイド部材は、それらが係合している状態で地震が発生したとき、少なくともいずれか一方が変形することで対象物に加わる衝撃を吸収するように構成してもよい。具体的には、取付部材やガイド部材を、適切な強度を持つ材質によって形成することや、取付部材およびガイド部材の板厚や面積を調整することで実現できる。また、これ以外に、免震装置を請求項10に記載のように構成することが考えられる。
【0039】
請求項10に記載の発明は、請求項8に記載の免震装置において、取付部材がガイド部材と接触したときに、変形して衝撃を吸収する変形領域を有することを特徴とする免震装置である。
【0040】
このように構成された免震装置であれば、地震が発生して対象物が浮き上がったときに、取付部材がガイド部材と接触して変形し、衝撃を吸収する。よって、対象物を浮き上がらせる力を低減することができるため、対象物の転倒などを抑制できる。
【0041】
なお、変形領域の具体的な構成としては、例えば、取付部材におけるガイド部材と接触する領域を櫛歯状に形成することが考えられる。
【0042】
ところで、上述した取付部材は、請求項11に記載の免震装置のように、取付部材と対象物との間に配置された弾性を有する貼付部によって対象物に取り付けられる構成としてもよい。
【0043】
地震の発生時などに対象物が床面から浮き上がったとき、取付部材とガイド部材が係合することにより対象物の浮き上がりは抑制される。上記構成の免震装置であれば、そのときのガイド部材と取付部材とに加わる衝撃を貼付部が緩衝することができる。それにより、急に大きな衝撃を受けて取付部材が対象物から外れてしまうことや、取付部材やガイド部材が破損してしまうことなどを抑制できる。
【0044】
上述した貼付部は、弾性を有する一の部材から構成されるものであってもよいが、請求項12に記載の免震装置のように、少なくとも、弾性を有する第1貼付部材と、補強板と、弾性を有する第2貼付部材と、をこの順に層状に配設してなるものであってもよい。
【0045】
このように補強板を用いて貼付部を構成すると、補強板を含まず、第1貼付部材と第2貼付部材とのみからなる貼付部に比べて、同じ荷重を受けたときの貼付部全体としての弾性変形量が大きくなるため、衝撃を緩衝する性能が高くなる。よって、上述した構成の免震装置であれば、取付部材が外れたり取付部材やガイド部材が破損することをより効果的に抑制することができる。
【0046】
なお、第1貼付部および第2貼付部の材質は、衝撃を緩衝する材質ならば特に限定されないが、低反発ウレタンや衝撃緩衝ゲルなどを用いると高い衝撃緩衝性能を得ることができる。また、第1貼付部と第2貼付部とは同一の材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
【0047】
また、この補強板は、請求項13に記載の免震装置のように、上記所定方向に関して取付部材を両側から挟み込む位置関係で配置される挟み込み部を備えるように構成してもよい。
【0048】
このように構成された免震装置であれば、取付部材の所定方向への移動が補強板により制限される。よって、取付部材と補強板との間に捻りが加わり難くなる。第1貼付部または第2貼付部材は、捻ることで外れやすくなる可能性があるが、上記構成であれば、取付部材と補強板との間には捻りが加わり難くなるため、取付部材が補強板から外れにくくなる結果、取付部材が対象物から外れてしまうことを抑制できる。
【0049】
ところで、請求項8から請求項13のいずれかに記載の免震装置において、上述したベースは、請求項14に記載の免震装置のように、上記所定方向と交差する方向、かつ、床面に沿う方向に延び出すベース延出部材を備える構成であってもよい。
【0050】
地震が発生して対象物に上向きの力が加わると、ベースには、ベースを上向きに持ち上げる方向に荷重が掛かるが、上述した構成の免震装置であれば、ベース延出部材が浮き上がりを抑制するため、ベースが床面から剥がれることを抑制できる。
【0051】
請求項15に記載の免震装置は、対象物を載せる積載面を有するレールと、床面に設置され、床面に沿う所定方向に関してレールを移動可能に保持するベースと、を備えることを特徴とする免震装置である。
【0052】
このように構成された免震装置であれば、地震の発生時に対象物が所定方向に移動すると、対象物とレールとの摩擦によりレールが所定方向に移動することになる。このとき、レールとベースとの間に生じる摩擦によって、対象物が所定方向に移動するエネルギーが奪われるため、所定方向に関する移動の幅が小さく抑えられる。
【0053】
また、地震の衝撃が急激に対象物に加わることが防止できるため、対象物の転倒や、付属品の飛び出しを抑制できる。
【0054】
なお、ここでいう対象物とは、キャスターを備えない機器である。
【0055】
上記請求項15の免震装置は、対象物とレールとの間の摩擦力が小さすぎると、地震の発生時にレール上を滑ってしまい、レールとベースとの間の摩擦力を利用できない虞がある。
【0056】
そこで、請求項16に記載の免震装置のように、対象物とレールとの間に配置され、対象物の所定方向への移動を制限する移動制限部材を備える構成としてもよい。
【0057】
このように構成された免震装置であれば、レールとベースとの間に生じる摩擦力を十分に利用することができる。
【0058】
ここでいう移動制限部材とは、例えば、対象物とレールとの間に貼り付けられる粘着性の部材などが該当するが、その部材を弾性を有する部材とすると、地震の発生時に弾性部材が免震装置全体および対象物に伝わる力を吸収するため、免震性能をさらに高めることができる。
【0059】
また、請求項15または請求項16に記載の免震装置は、請求項17に記載のように、レールまたはベースの少なくともいずれか一方に取り付けられ、レールとベースとが摺動する際に、上記一方と異なる他方と接触するレール摩擦部材を備える構成としてもよい。
【0060】
このように構成された免震装置であれば、対象物の物性に応じた適切な摩擦力を得ることができ、高い免震性能を得ることができる。
【0061】
また、請求項15から請求項17のいずれかに記載の免震装置は、請求項18に記載のように、ベースが、ベースと床面との間に配置された弾性を有する弾性部材によって床面に取り付けられる構成としてもよい。
【0062】
このように構成された免震装置であれば、地震の発生時に弾性部材が免震装置全体および対象物に伝わる力を吸収するため、免震性能を高めることができる。
【0063】
また、請求項請求項15から請求項18のいずれかに記載の免震装置は、請求項19に記載のように、床面に設置され、レールが所定方向に移動したときに、レールと摺動することで、レールの移動を抑制する床面摩擦部材を備える構成としてもよい。
【0064】
このように構成された免震装置であれば、地震の発生時において、レールが所定方向に移動し、レールの一部がベースから飛び出している状態であっても、床面摩擦部材によりレールの移動を抑制する力が働くため、免震性能を高めることができる。
【0065】
また、請求項15から請求項19のいずれかに記載の免震装置は、請求項20に記載のように、対象物に取り付けられる取付部材と、レールに設けられ、対象物が積載面に乗っている状態で、対象物に取り付けられた取付部材と係合して、取付部材の所定方向への動きをガイドするガイド部材と、を備えており、ガイド部材は、取付部材と係合しているときに、少なくとも床面と直交する方向に関する取付部材の移動を抑制する構成としてもよい。
【0066】
このように構成された免震装置であれば、対象物が床面から浮き上がり、免震装置から脱落してしまうことを防止できる。
【0067】
上述した請求項20に記載の免震装置において、ベースは、請求項21に記載の免震装置のように、上記所定方向と交差する方向、かつ、床面に沿う方向に延び出すベース延出部材を備える構成であってもよい。
【0068】
このように構成された免震装置であれば、ベースの浮き上がりを抑制できる結果、対象物が浮き上がって転倒することを抑制できる。
【0069】
請求項22に記載の免震装置は、床面に設置され、対象物のキャスターを乗せる積載面を有する床面設置部材と、対象物に取り付けられる取付部材と、床面設置部材に設けられ、キャスターが積載面に乗っている状態で、対象物に取り付けられた取付部材と係合して、取付部材の所定方向への動きをガイドするガイド部材と、を備えており、ガイド部材が、取付部材と係合しているときに、床面に沿い、かつ、所定方向と直交する方向と、床面と直交する上方向と、に関する取付部材の移動を抑制することを特徴とする免震装置である。
【0070】
このように構成された免震装置であれば、対象物が浮き上がると、その動きがガイド部材により制限されるため、対象物が浮き上がって転倒することを抑制できる。
【0071】
上述した請求項22に記載の免震装置において、床面設置部材は、請求項23に記載の免震装置のように、上記所定方向と交差する方向、かつ、床面に沿う方向に延び出す床面延出部材を備える構成であってもよい。
【0072】
このように構成された免震装置であれば、床面設置部材の浮き上がりを抑制できる結果、対象物が浮き上がって転倒することを抑制できる。
【0073】
請求項24に記載の発明は、請求項20から請求項23のいずれかに記載の免震装置において、取付部材が、ガイド部材と接触したときに、変形して衝撃を吸収する変形領域を有することを特徴とする免震装置である。
【0074】
このように構成された免震装置であれば、地震が発生して対象物が浮き上がったときに、取付部材がガイド部材と接触して変形し、衝撃を吸収する。よって、対象物を浮き上がらせる力を低減することができるため、対象物の転倒などを抑制できる。
【0075】
ところで、請求項20から請求項24のいずれかに記載の免震装置における取付部材は、請求項25に記載の免震装置のように、取付部材と対象物との間に配置された弾性を有する貼付部によって対象物に取り付けられる構成としてもよい。
【0076】
地震の発生時などに対象物が床面から浮き上がったとき、取付部材とガイド部材が係合することにより対象物の浮き上がりは抑制される。そして、上記構成の免震装置であれば、そのときのガイド部材と取付部材とに加わる衝撃を貼付部が緩衝することができる。それにより、急に大きな衝撃を受けて取付部材が対象物から外れてしまうことや、取付部材やガイド部材が破損してしまうことなどを抑制できる。
【0077】
上述した貼付部は、請求項26に記載の免震装置のように、少なくとも、弾性を有する第1貼付部材と、補強板と、弾性を有する第2貼付部材と、をこの順に層状に配設してなるものであってもよい。
【0078】
このように補強板を用いて貼付部を構成すると、補強板を含まず、第1貼付部材と第2貼付部材とのみからなる貼付部に比べて、同じ荷重を受けたときの貼付部全体としての弾性変形量が大きくなるため、衝撃を緩衝する性能が高くなる。よって、上述した構成の免震装置であれば、取付部材が外れたり取付部材やガイド部材が破損することをより効果的に抑制することができる。
【0079】
また、この補強板は、請求項27に記載の免震装置のように、上記所定方向に関し取付部材を両側から挟み込む位置関係で配置される挟み込み部を備えるように構成してもよい。
【0080】
このように補強板を用いて貼付部を構成すると、補強板を含まず、第1貼付部材と第2貼付部材とのみからなる貼付部に比べて、同じ荷重を受けたときの貼付部全体としての変化量が大きくなるため、衝撃を緩衝する性能が高くなる。よって、上述した構成の免震装置であれば、取付部材が外れたり取付部材やガイド部材が破損することをより効果的に抑制することができる。
【0081】
請求項28に記載の免震システムは、請求項1から請求項27のいずれかに記載された免震装置の一対と、床面に設置され、所定方向と直交する方向に一対の前記免震装置を並べて連結する連結部材と、からなることを特徴とする免震システムである。
【0082】
このような免震システムであれば、対象物を2つの免震装置で免震することができるので、非常に高い免震性能を得ることができる。
【0083】
なお、上述した免震システムにおいて、一対の免震装置は、対象物の両側面のキャスターをそれぞれ乗せることができるように配置するとよい。また、連結部材と床面との間に粘着性の弾性部材を配置することで、より高い免震効果を得ることができる。この弾性部材は、上述した請求項3で述べた弾性部材と物性が同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
【実施例1】
【0085】
[全体構成]
本実施例の免震システム1は、図1に示すように、4つのキャスター2を備える対象物3を免震すると共に地震による対象物の移動を抑制するシステムであって、床面に配置され、一方(図1におけるA方向を指す。以降、単に「所定方向」ということがある。図2以降でも同様とする)に長く延びる一対の衝撃緩衝装置10と、床面に配置され、一対の衝撃緩衝装置10を、所定方向と直交する方向(図1におけるB方向を指す。なお、A,Bは何れも床面に沿う方向であり、図2以降も同様とする)に並べて連結する矩形の連結部材20と、対象物3におけるキャスター2付近の側面に取り付けられる取付部材30と、からなる。ここでいう対象物3とは、キャスターを備える機器であって、例えば、複写機や裁断機、医療機器などが該当する。
【0086】
上述した衝撃緩衝装置10は、図2(a)に示すように、所定方向(図2(a)におけるA方向)に延びるレール40と、床面に設置され、レール40を床面に沿う上述した所定方向に移動可能に保持するベース50と、レール40の長手方向の両端付近に取り付けられる2つのストッパー60と、を備えている。レール40が所定方向に移動した状態を図2(b)に示す。
【0087】
レール40は、図3に示すように、所定方向(図3におけるA方向)に延びる矩形のレール底板41を備える。このレール底板41の上面に、対象物3のキャスター2を載せる積載面42が拡がっている。このレール40は、積載面42における上述した所定方向と交差する方向(図3におけるB方向)の端部において、積載面42と直交する方向に延び出し、キャスター2がレール40の積載面42から脱落することを防止する一対の側板43が形成されている。一方、積載面42における所定方向の端部には側板43が形成されていないので、その所定方向の端部においてキャスター2が床面またはベース50から積載面42へ移動することが可能となっている。
【0088】
一対の側板43それぞれの上端には、所定方向の両端においてガイド部材44(44A,44B)が設けられている。
【0089】
また、ガイド部材44それぞれには、ストッパー60がはめ込まれる溝部45が形成されている。
【0090】
レール40の断面図を図4に示す。図4(a)は、図3におけるCの位置での断面図であり、図4(b)は、図3におけるDの位置での断面図である。側板43は、CにおいてDより高く形成される。
【0091】
レール40の裏面には、図3に示すように、シート状のレール摩擦部材46が取り付けられている。このレール摩擦部材46は、レール40とベース50とが摺動する際に、ベース50と接触する。
【0092】
ベース50は、図5に示すように、上述した所定方向(図5におけるA方向)に沿って延びる矩形のベース底板51と、ベース底板51と平行かつ段違いに配置され、ベース底板51の所定方向と交差する方向(図5におけるB方向)の端部においてベース底板51と接続される底板受け52と、からなる。上述したレール40のレール底板41は、ベース底板51と底板受け52の間に配置される。このようにして、ベース50は、レール40を所定方向に移動可能に保持する。また、ベース50の所定方向の一端53は床面方向に折り曲げた形状となっており、キャスター2を床面から容易に乗り上げることが可能となっている。
【0093】
また、ベース50における床面側の面には、粘着性および弾性を有しており、床面,ベース50の両方に取り付けられる弾性部材54が配置される。この弾性部材54としては、衝撃緩衝装置10および対象物3による圧縮に耐える性能が良好なものを使用することが好ましく、例えば、北川工業株式会社からタックフィットの商品名で販売されているものが好ましい。
【0094】
ストッパー60は、レール40の所定方向の両端付近に配置される。よって、1のレール40に乗る2つのキャスター2の外側から挟み込むようにストッパー60が配置されることになる。このストッパー60は、図6に示すように、レール40の溝部45にはめ込み可能な形状である板状部材61と、キャスター2に面する位置に配置され、キャスター2と接触した際に弾性変形するストッパー緩衝材62とを有している。
【0095】
上述した連結部材20における床面側の面には、図1に示すように、粘着性および弾性を有しており、床面,連結部材20の両方に取り付けられる弾性部材21が配置される。
【0096】
また、上述した取付部材30は、図7に示すように、矩形の板部31と、板部31の一方の面に取り付けられる貼り付け部材32と、板部31の下側端部から、板部31と交差する方向、かつ、貼り付け部材32が取り付けられた方向に延び出す延出部33と、延出部33における板部31とは反対側の先端付近に設けられ、板部31の主たる面と直交する方向に回転軸を有するローラー34と、を備える。
【0097】
貼り付け部材32は、取付部材30と対象物3とを取り付けるものであって、粘着性および弾性を有している。この貼り付け部材32は、1の部材で形成されるものであってもよいが、シート状の部材を複数重ねて形成されるものであってもよい。
【0098】
図8(a)には、取付部材30が対象物3に取り付けられ、キャスター2が衝撃緩衝装置10の積載面42に乗っており、取付部材30とレール40のガイド部材44Aとが係合した状態における所定方向から見た側面図を示す。なお、取付部材30とガイド部材44Bとが係合する場合も同様であるため図面は省略する。
【0099】
上記の状態において、ガイド部材44は、取付部材30の上述した所定方向への動きをガイドする。
【0100】
なお、衝撃緩衝装置10および取付部材30が、本発明における免震装置に該当する。[免震システムの作用]
地震発生時以外の通常時において、対象物3のキャスター2は、図1に示すように、各衝撃緩衝装置10のレール40の積載面42に2つづつ位置している。ストッパー60は、レール40の所定方向の両端付近にて、キャスター2の外側から挟み込むように配置されるため、このストッパー60により、キャスター2の所定方向への移動が制限される。また、側板43により、キャスター2の所定方向と交差する方向への移動が制限される。そのため、対象物3は免震システム1上から移動不能となっている。なお、ストッパー60を溝部45から取り外すことで、対象物3は免震システム1上からの移動が可能となる。
【0101】
地震の発生時において、対象物3が所定方向に移動すると、キャスター2がストッパー60に接触する。このとき、キャスター2がストッパー60と接触する際の衝撃がストッパー緩衝材62によって緩衝される。
【0102】
続いて、ストッパー60を取り付けてなるレール40が所定方向に移動する。地震が継続している間、レール40はベース50上を所定方向に往復運動する。このとき、レール40とベース50との摩擦によって、対象物3が所定方向に移動するエネルギーが奪われるため、所定方向に関する移動の幅が小さく抑えられる。
【0103】
一方、対象物3が所定方向と交差する方向に関する移動は、キャスター2がレール40の側板43と接触することで抑制される。
【0104】
また、キャスター2がストッパー60や側板43などに衝突したり、地震の上下方向の力を受けるなどして、対象物3が浮き上がったときには、図8(b)に示すように、ガイド部材44が取付部材30の延出部33におけるローラー34の円周面と接触するため、床面と直交する上方向に関する対象物3のそれ以上の浮き上がりが抑制される。
【0105】
また、連結部材20およびベース50に備えられた粘着性の弾性部材21および弾性部材54が、地震により免震システム1全体および対象物3に伝わる力を抑制する。
[効果]
このように構成された免震システム1であれば、地震の発生時に、レール40とベース50の間に生じる摩擦力,キャスター2がストッパー60に接触した際のストッパー緩衝材62による緩衝,および,床面に取り付けられた弾性部材21および弾性部材54による免震作用により、対象物3に衝撃が急激に加わることが防止できるため、対象物3の予測できない移動や、付属品の飛び出しによる周囲および対象物3への損害の発生を抑制できる。
【0106】
また、取付部材30とガイド部材44により対象物3の床面からの浮き上がりが抑制されているため、対象物3が免震システム1から脱落してしまうことを防止できる。さらに、ローラー34により、ガイド部材44と取付部材30との間に働く摩擦力を抑制できる。よって、地震発生時には、キャスター2がストッパー60にスムーズに接触し、レール40をベース50に対して適切に摺動させることができ、免震性能を高めることができる。
【0107】
また、上述した免震システム1においては、レール摩擦部材46を取り替えることで容易にレール40とベース50との間に生じる摩擦力を変化させることができるため、対象物3の物性(重さや重心の位置など)に応じた適切な摩擦力に設定することができ、高い免震性能を得ることができる。
【0108】
また、対象物3が免震システム1に設置されているときのキャスター2と免震システム1との固定は、キャスター2の移動をストッパー60にて制限することで実現されているので、ストッパー60をレール40から取り外すだけで対象物3の移動が可能であり、対象物3の設置および設置の解除の作業が簡便なものとなる。
【0109】
また、側板43の高さを所定方向に沿って変化させており、側板43が低い部分(図3におけるDの位置)では、対象物3の下部に何らかの付属品が取り付けられている場合であっても、側板43またはガイド部材44Bなどと接触することなく対象物3を設置することができる。
【0110】
ところで、今日の一般的なオフィスでは、フリーアクセス(床下に配線可能な施工)を施す例が多く、全国平均でも60%以上が上記フリーアクセスフロアとなっているが、上記フロアではアンカーボルトにより対象物を固定することが更に難しくなっている。フリーアクセス以外のフロアでも、アンカーボルト以外の補強工事を行なわないと重量が100kgを超える対象物を固定するだけの強度がないと言われている。
【0111】
また、対象物がキャスター付きのOA機器や医療機器の場合、地震が収まった直後から事業継続性(BCP)の一環としての使用ニーズが高いため、単なる転倒防止以上に、地震の衝撃が対象物に与える影響を軽減して、地震後に対象物が正常に使用できる確率を上げることが求められるが、アンカーボルト等で強固に固定した場合は、たとえ対象物が転倒しなかった場合も、対象物に加わる衝撃が大きいため、対象物の正常使用は難しい。
【0112】
しかしながら、上記実施例の免震システム1は、地震発生時に対象物3へ伝わる衝撃を低減させることが目的であるため、アンカーボルトなどを用いて床面に強固に固定する必要がないうえ、対象物3に大きな衝撃が加わって地震後の事業継続性(BCP)を高めることができる。
[変形例]
以上、本発明の実施例1について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることは言うまでもない。
【0113】
例えば、上記実施例においては、レール40の裏面にレール摩擦部材46が備えられる構成を例示したが、レール40とベース50との間に生じる摩擦力を調整できる位置であれば、具体的な取り付け位置は特に限定されない。例えば、ベース50のレール40と接触する面に取り付けられていても良い。
【0114】
また、上記実施例においては、ストッパー60の取り付けは、レール40に形成された溝部45にはめ込むことで実現される構成を例示したが、レール40に固定できれば、その具体的な固定方法は特に限定されない。例えば、レール40に対してねじ止めにより固定する方法が考えられる。
【0115】
また、上記実施例においては、連結部材20およびベース50には粘着性の弾性部材が取り付けられる構成を例示したが、粘着性および弾性を有しない摩擦部材を備える構成であってもよいし、床面との間には何も配置せず、床面に対して完全に固定する構成であってもよい。
【0116】
また、上記実施形態においては、ローラー34が取付部材30に設けられる構成を例示したが、ガイド部材44にローラーが設けられる構成であってもよいし、ローラーが設けられない構成であってもよい。なお、ローラーが設けられない構成は、後述する実施例2における図12に示される。このときのガイド部材と取付部材による作用は、実施例2に記載される作用と同様である。
【0117】
なお、ローラーが設けられない構成においては、対象物3が浮き上がり、ガイド部材44と延出部33とが接触した際に摩擦力を発生することとなり、対象物3が所定方向に移動するエネルギーが奪われるため、所定方向への移動が抑制される。上記摩擦力を変化させるためには、対象物3が浮き上がったときにガイド部材44と延出部33との接触する位置に、摩擦力を発生する部材を配置してもよい。このように構成することで、ガイド部材44と延出部33とが接触した際に、対象物3が所定方向に移動するエネルギーが奪われるため、所定方向への移動が抑制される。
【0118】
なお、最も免震性能を高くすることができるガイド部材44と取付部材30との間の摩擦力は、対象物3の物性(重さや重心の位置など)に応じて異なるため、対象物3に応じて、適宜ローラーを設けることや、摩擦力を発生する部材の取り付けを行うとよい。
【0119】
また、上記実施例においては、レール40は、ベース50のみと摩擦する構成を例示したが、それ以外の部材と摩擦する構成としてもよい。
【0120】
例えば、摩擦力を有する床面摩擦部材47を、図9(a)に示すように、地震発生時にレール40が移動する床面上の位置に配置しておき、図9(b)に示すように、レール40が所定方向に移動した際に床面摩擦部材47と摺動させ、摩擦力によりレール40の移動を抑制する構成が考えられる。
【0121】
このように構成された免震システムであれば、地震の発生時において、レール40が所定方向に移動し、レール40の一部がベース50から飛び出している状態であっても、レール40の移動を抑制する力が働くため、免震性能を高めることができる。また、レール40の移動を抑制するためにベース50以外の部材を用いることができることから、レール40が移動しうる範囲をカバーするようにベース50を大きく形成する必要が無くなり、衝撃緩衝装置10の小型化および軽量化が可能となる。
【0122】
また、上記実施例においては、2つの衝撃緩衝装置10に対象物3の4つのキャスター2を全て乗せる構成を例示したが、全てのキャスター2が乗せられる構成に限定されない。例えば、キャスターが1つだけ乗るように衝撃緩衝装置10を構成してもよい。
【0123】
また、上記実施例においては、矩形の連結部材20により一対の衝撃緩衝装置10を連結する構成を例示したが、一対の衝撃緩衝装置10の位置関係を、所定方向と直交する方向に並べた状態に維持できれば、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、連結部材を、2つの矩形の板が交差したX字型に形成し、衝撃緩衝装置10それぞれと2箇所で接続する構成が考えられる。
【0124】
また、上記実施例においては、側板43の高さが所定方向に沿って段階的に変化する構成を例示した。しかしながら、対象物3の下部の形状によっては、側板43の高さを変化させる必要はなく、例えば、図10に示すように、側板43の高さが一定である構成としてもよい。
【0125】
このように側板43の高さが一定に構成された免震システムであれば、取付部材30の延出部33と、ガイド部材44とが位置する高さが所定方向に沿って一律に揃うため、取付部材30は、いずれのガイド部材44においても所定方向にガイドされることとなる。よって、対象物3がレール40上を移動する際に、取付部材30が、高さが異なるため適切にガイドされないガイド部材44と干渉する虞がなく、スムーズに対象物3の設置および移動ができるようになる。
【0126】
さらに、高さの異なるガイド部材44が複数存在すると、地震の発生時において対象物3が浮き上がった場合に、ガイド部材44ごとに加わる力が偏る虞があるが、ガイド部材44の高さを一定とすることで、いずれのガイド部材44にも同等に力が加わるため、安定して対象物3の浮き上がりを抑制することができる結果、安定した免震性能を発揮することができる。加えて、レール40の形状が単純なものとなるため、製造コストに優れることとなる。
【0127】
また、上記実施例においては、免震システム1によって、キャスター2を備える対象物3を免震すると共に地震による移動を抑制する構成を例示したが、その対象物としては、キャスターを備えるものに限定されない。例えば、足つきの整理ダンスのようなものであっても、免震システム1の機能を発揮することができる。
【0128】
キャスターを備えておらず、替わりに脚70を備える対象物4を免震システム1に設置した状態を図11に示す。脚70の下面には、粘着性および弾性を備える移動制限部材71が取り付けられており、地震の発生時には、レール40上を滑ることなく、レール40とベース50との間に生じる摩擦力を充分に利用することができる。また、その他の構成は上記実施例と同様であり、上記実施例1と同様の作用および効果を得ることができる。また、上述した床面摩擦部材47を使用することも可能である。
【実施例2】
【0129】
[全体構成]
本実施例の免震装置101は、図12に示すように、キャスター102を備える対象物103を免震すると共に地震による移動を抑制する装置であって、床面に設置され、対象物103のキャスター102を乗せる積載面104を有する床面設置部材105と、対象物103に取り付けられる取付部材110と、床面設置部材105に設けられ、キャスター102が積載面104に乗っている状態で、対象物103に取り付けられた取付部材110と係合して所定方向(図12におけるX方向)への動きをガイドするガイド部材120と、からなる。
【0130】
取付部材110は、図13に示すように、矩形の板部111と、板部111の一方の面に取り付けられる貼り付け部材112と、板部111の下側端部から、板部111と交差する方向、かつ、貼り付け部材112が取り付けられた方向に延び出す延出部113と、延出部113における板部111とは反対側の先端から板部111の主たる面と平行な方向に拡がる係合部114と、を有する。
【0131】
貼り付け部材112は、取付部材110と対象物103とを取り付けるものであって、粘着性および弾性を有している。
【0132】
係合部114は、延出部113を基準として板部111と同一の方向に拡がっている。
【0133】
ガイド部材120は、床面に対してから垂直に立てられる縦板121と、縦板121の上側先端から延び出し、床面と平行に拡がる横板122と、横板122の先端部から下向きに拡がる吊板123と、からなる。横板122は、キャスター102の配置される位置から外側方向に拡がる。
[免震装置の作用および効果]
地震発生時において、対象物103が所定方向と直交する方向(図12におけるY方向)に移動すると、取付部材110の係合部114は、縦板121または吊板123に接触する(若しくは、板部111と吊板123が接触する)ため、対象物103の上記方向の移動が制限される。また、対象物103が上方向(図12におけるZ方向)に浮き上がると、取付部材110の係合部114は、横板122と接触する(若しくは、吊板123が延出部113と接触する)ため、それ以上浮き上がることを抑制できる。
【0134】
このように、本実施例の免震装置であれば、対象物103の上記所定方向と直交する方向への移動を抑制できるため、対象物103が予測不能に移動して周囲に損害を与えることを抑制できる。
[変形例]
床面設置部材105は、図14に示すように、所定方向と交差する方向、かつ、床面に沿う方向(図14におけるY方向)に延び出す床面延出部材106を備える構成であってもよい。
【0135】
床面延出部材106が備えられていない場合、地震の発生時などに対象物103が上下左右方向に動くと、床面設置部材105は取付部材110と係合しているため、床面設置部材105の端部107を回転軸として回転するように浮き上がろうとする。
【0136】
ここで、床面設置部材105が床面延出部材106を備える構成とすると、回転軸が端部108に変化する。床面設置部材105における力が作用する点(取付部材110と接触する点)から回転軸までの距離が遠いほど、床面設置部材105が回転しにくくなるため、床面延出部材106を備えることで、床面設置部材105の回転を抑制し、対象物103の浮き上がりを抑制することができ、さらに床面設置部材105が床面から剥がれることを抑制できる。
【実施例3】
【0137】
[全体構成]
実施例3における免震システム1を図15に示す。本実施例の免震システム1は、基本的に実施例1と同じ構成である。しかし、取付部材30、レール40、ベース50の構成が一部相違するため、その相違点を中心に説明する。
【0138】
本実施例の取付部材30を所定方向(図15におけるA方向)から見た側面図を図16に示す。取付部材30は、上記実施例1と同様に、板部31と、延出部33と、を備える一方、延出部33における板部31とは反対側の先端から板部31の主たる面と平行な方向に延びる変形部35を備える。また、貼り付け部材32に代えて貼付部140により対象物3に取り付けられている。
【0139】
貼付部140は、第1貼付部材141と、補強板142と、第2貼付部材143と、をこの順に層状に配設してなるものであり、第1貼付部材141が対象物3側に配置され、第2貼付部材143が取付部材30の板部31側に配置される。第1貼付部材141および第2貼付部材143は粘着性および弾性を有しており、その粘着性により取付部材30を対象物3に取り付ける。また、取付部材30に荷重が加わると、弾性変形する。
【0140】
この第1貼付部材141および第2貼付部材143としては、例えば、北川工業株式会社からタックフィットの商品名で販売されているものが好ましい。
【0141】
貼付部140を床面と直交する上方からみた上面図を図17に示す。補強板142は、所定方向(図17におけるA方向)に関して取付部材30の板部31を両側から挟みこむ位置関係で配置される挟み込み部144を備えており、上方から見た断面がコの字型になるように形成されている。
【0142】
また、貼付部140の斜視図を図18に示す。図18は、第2貼付部材143を補強板142から取り外した状態を示している。第1貼付部材141および第2貼付部材143は、上下方向(図18におけるE方向)に分割して配置されている。
【0143】
変形部35は、図19に示すように、その延び出した先端が櫛歯状に形成されている。
【0144】
レール40は、図20に示すように、側板43におけるキャスター2に面する位置4箇所に、キャスター2と接触した際に弾性変形するレール緩衝材150を備えている。
【0145】
ベース50は、図15に示すように、上述した所定方向と交差する方向(図15におけるB方向)に延び出す板状の部材であるベース延出部材160を備えている。ベース延出部材160は、ベース50における所定方向の両端側それぞれにおいて、免震システム1における2つのベースにまたがるように配置される。
[免震システムの作用および効果]
地震の発生時において、キャスター2がストッパー60や側板43などに衝突したり、地震の上下方向の力を受けるなどして、対象物3が浮き上がったときには、ガイド部材44が取付部材30の変形部35と接触するため、床面と直交する上方向に関する対象物3のそれ以上の浮き上がりが抑制される。
【0146】
このとき、弾性を有する貼付部140は、上下方向に伸びて弾性変形し、それにより浮き上がる力を緩衝する。貼付部140は、第1貼付部材141と第2貼付部材143との間に補強板142が配置されているため、上方向への浮き上がる力の緩衝効果が大きくなり、対象物3の転倒などを抑制することができる。このことは、補強板142が無い構成と比較して貼付部140全体としての弾性変形量が大きくなる結果であると考えられる。
【0147】
また、第1貼付部材141および第2貼付部材143は、上下方向に分割して取り付けられている。この場合、上下方向に分割せずに1枚で構成された同じ面積の第1貼付部材141または第2貼付部材143を用いる場合と比較して、緩衝効果をより大きくすることができる。このことは、第1貼付部材141および第2貼付部材143を上下方向に分割して取り付けることにより、貼付部140全体としての弾性変形量が大きくなる結果であると考えられる。
【0148】
また、取付部材30の板部31は、補強板142の挟み込み部144により、所定方向に関して両側から挟み込まれているため、所定方向への移動が制限される。よって、板部31と補強板142との間に捻りが加わり難くなる。第2貼付部材143は、捻ることで外れやすくなる可能性があるが、板部31と補強板142との間に捻りが加わり難くなることで、第2貼付部材143に捻りが加わり難くなり、板部31が補強板142から外れ難くなる結果、取付部材30が対象物3から外れてしまうことを抑制できる。
【0149】
また、補強板142が挟み込み部144と合せて断面コの字型であるため、補強板142の剛性が高くなり、地震発生時に荷重が掛かっても補強板142が破損して取付部材30が対象物3から外れてしまうことを抑制できる。
【0150】
さらに、図21に示すように、対象物3が、第1層3Aと第2層3Bと、からなる積層構造である場合、第1層3Aと第2層3Bとにそれぞれ第1貼付部材141が取り付けられるように構成すると、地震の発生時に対象物3が浮き上がる力を受けても、第1層3Aと第2層3Bとが分離してしまうことを抑制できる結果、第2層3Bのみが飛び出して周囲に被害を与えることを抑制できる。
【0151】
なお、このように積層構造である対象物3としては、給紙カセットを下部に積層してなるプリンタなどが該当する。
【0152】
また、変形部35は櫛歯状に形成されているため、板部31や延出部33に比べて剛性が低く、変形部35がガイド部材44に接触したときに変形し易くなっている。そのため、対象物3が浮き上がった際、変形部35はガイド部材44と接触して変形することで衝撃を吸収し、対象物が浮き上がる力を抑制することができ、対象物3の転倒などを抑制することができる。
【0153】
また、レール40の側板43にはレール緩衝材150が備えられているため、キャスター2が側板43などに衝突したときの衝撃は吸収され、その衝突による対象物3が浮き上がる力を抑制することができ、対象物3の転倒などを抑制することができる。
【0154】
また、ベース50がベース延出部材160を備えることから、地震により対象物3に上下左右方向の荷重が加えられても、ベース50の浮き上がりが抑えられ、対象物3が浮き上がって転倒することと、ベース50が床面から剥がれることが抑制できる。このことは、以下のように説明できる。
【0155】
地震の発生時などに対象物3が動いてベース50に荷重が掛かると、ベース50は所定方向と直交する方向(図15におけるB方向)の端部を回転軸として回転するように浮き上がろうとする。このとき、ベース50はベース延出部材160を備えているため、回転軸はベース延出部材160における上記B方向の端部に変化する。
【0156】
対象物3が回転するために必要な力は、対象物3の重心から上記両端部までの距離が長いほど大きくなる。本実施例のベース50は、ベース延出部材160によって、対象物3の重心から離れた位置に回転軸が形成されるため、対象物3が回転しにくくなる結果、ベース50が床面から浮き上がり難くなり、対象物3の浮き上がりを抑制することができる。
【0157】
なお、近年のオフィスではフロア面にカーペットを敷設する事例が増えているが、この場合、ベース50と床面のカーペットとを固定する弾性部材54の粘着強度が強くても、カーペットと床面との粘着性が弱いと、地震発生時にカーペットごと浮き上がる危険性がある。しかし、上述したベース延出部材160は、カーペットと床面と粘着強度に依存せずに対象物3の浮き上がりを抑制できるので、カーペットの剥離による対象物の転倒危険性を低減できる。
【0158】
ところで、実際の地震では、地震が継続している間に対象物3が転倒するほどの強い浮き上がりの力を受けることは多くとも数回程度であるため、その数回の強い浮き上がりの衝撃を抑えることが重要になる。本実施例の構成では、キャスター2が側板43に衝突したときの衝撃を小さくし、また浮き上がったときには貼付部140と変形部35によりその衝撃を小さくすることができるため、これらを組み合わせることで、非常に高い転倒防止性能を得ることができる。
[変形例]
以上、本発明の実施例3について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることは言うまでもない。
【0159】
例えば、上記実施例においては、変形部35がガイド部材44と接触する位置に形成される構成を例示したが、対象物3が浮き上がる力を緩衝することができれば、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、延出部33が変形する構成であってもよい。
【0160】
また、変形部35の形状は、荷重が掛かった際に変形可能な形状であれば特に限定されない。例えば、異なる高さや幅の櫛を混合したもの(図22(a))、T字型のもの(図22(b))、波型のもの(図22(c))などを使用することが考えられる。
【0161】
上記以外には、延び出す先端が湾曲した形状、例えば、図23(a)に示すように、変形部35が櫛型を有せず一方に湾曲した形状や、図23(b)に示すように、変形部35が櫛型であって、交互に逆方向に湾曲させる形状などが考えられる。
【0162】
また上記実施例においては、ベース延出部材160は、2つのベース50にまたがるように配置される構成を例示したが、ベース50それぞれが別個にベース延出部材160を備える構成であってもよい。
【実施例4】
【0163】
[全体構成]
本実施例の免震システム200は、図24に示すように、4つのキャスター2を備える対象物3を免震すると共に地震による対象物の移動を抑制するシステムであって、床面に配置され、所定方向(図24における前後方向)に長く延びる一対の衝撃緩衝装置210L,210Rと、床面に配置され、一対の衝撃緩衝装置210L,210Rを、所定方向と直交する方向(図24における左右方向)に並べて連結する矩形の連結部材220と、対象物3におけるキャスター2付近の側面に取り付けられる取付部材230と、を備える。ここでいう対象物3とは、キャスターを備える機器であって、例えば、複写機や裁断機、医療機器などが該当する。本実施例の対象物3は、積層構造を有しており、下側の第1層3Aと、上側の第2層3Bとに分離可能な構造を有している。
【0164】
上述した衝撃緩衝装置210L,210Rのうち、右側に配置される衝撃緩衝装置210Rを図25(a)に示す。
【0165】
衝撃緩衝装置210Rは、前後方向に延びるレール240Rと、床面に設置され、レール240Rを床面に沿う前後方向に移動可能に保持するベース250と、レール240Rの長手方向(前後方向)の両端付近に取り付けられる2つのストッパー(第1ストッパー260、第2ストッパー263)と、を備えている。レール240Rが前方に移動した状態を図25(b)に示す。
【0166】
レール240Rは、図26に示すように、前後方向に延びる矩形のレール底板241を備えており、このレール底板241の上面に、対象物3のキャスター2を載せる積載面242が拡がっている。また、このレール240Rには、積載面242における左右方向の端部において、積載面242と直交する方向に延び出し、キャスター2がレール240Rの積載面242から脱落することを防止する左右一対の側板243が形成されている。なお、積載面242における前後方向の端部には側板243が形成されていないので、その前後方向の端部においてキャスター2が床面またはベース250から積載面242へ移動することが可能となっている。
【0167】
側板243におけるキャスター2に面する面(一対の側板243が対向する面)には、キャスター2と接触した際に弾性変形するレール緩衝材248を備えている。
【0168】
一対の側板243のうち、一方(右側の側板243)の上端には、側板243のキャスター2に面する面と交差して前後方向に延びる面を有するガイド部材244が設けられている。また、側板243(およびガイド部材244)には、第1ストッパー260がはめ込まれる溝部245A、および、第2ストッパー263がはめ込まれる溝部245Bが形成されている。溝部245Aは、側板243の上端から下方向に形成された溝であって、レール240Rの後方の端部付近に形成されている。また、溝部245Bは、側板243の上端から下方向に延び、下端が前方に折れ曲がったL字型の溝であって、レール240Rの前方の端部付近に形成されている。
【0169】
レール240Rの裏面には、シート状のレール摩擦部材246が取り付けられている。このレール摩擦部材246は、レール240Rとベース250とが摺動する際に、ベース250と接触する。
【0170】
なお、本実施例の免震システム200における左側に配置される衝撃緩衝装置210Lは、基本的に衝撃緩衝装置210Rと同様の構成であるが、レール240Rに替えて、レール240Rと左右対称形であるレール240Lを備えている。
【0171】
ベース250は、図27(a)に示すように、前後方向に沿って延びる矩形のベース底板251と、ベース底板251の左右方向の端部においてベース底板251と直交する方向に延び出し、前後方向に拡がる一対の側壁255と、側壁255の上端から延び出し、ベース底板251と平行かつ段違いに配置される底板受け252と、からなる。上述したレール240L,240Rのレール底板241は、ベース底板251と底板受け252の間に配置される。このようにして、ベース250は、レール240L,240Rを前後方向に移動可能に保持する。
【0172】
ベース250の前方の端部253は床面方向に折り曲げた形状となっており、キャスター2を床面から容易に乗り上げることが可能となっている。
【0173】
また、ベース250における底板受け252と側壁255の後方の端部256は、図27(b)に示すように、底板受け252および側壁255が内側に曲げられており、レール240L,240Rが後方から飛び出さないように形成されている。
【0174】
また、ベース250における床面側の面には、粘着性および弾性を有しており、床面,ベース250の両方に取り付けられる弾性部材254が取り付けられる。この弾性部材254としては、衝撃緩衝装置210L,210Rおよび対象物3による圧縮に耐える性能が良好なものを使用することが好ましく、例えば、北川工業株式会社からタックフィットの商品名で販売されているものが好ましい。
【0175】
さらにベース250は、図24に示すように、左右方向に延び出す板状の部材であるベース延出部材257を備えている。ベース延出部材257は、ベース250における前後方向の両端側それぞれにおいて、免震システム200における2つのベース250にまたがるように配置される。
【0176】
第1ストッパー260は、図28に示すように、レール240L,240Rの後方の溝部245Aにはめ込んでレール240L,240Rに取り付け可能な形状である板状部材261と、キャスター2に面する位置に配置され、キャスター2と接触した際に弾性変形するストッパー緩衝材262とを有している。
【0177】
第2ストッパー263は、図29に示すように、レール240L,240Rの前方の溝部245Bにはめ込み可能な形状であるシャフト264と、キャスター2に面する位置に配置され、キャスター2と接触した際に弾性変形するストッパー緩衝材265と、シャフト264およびストッパー緩衝材265を保持する断面コの字形のブラケット266と、からなる。
【0178】
上述したストッパー緩衝材262、265は、1の部材で形成されるものであってもよいが、シート状の部材を複数重ねて形成されるものであってもよい。
【0179】
上述した連結部材220における床面側の面には、図24に示すように、粘着性および弾性を有しており、床面,連結部材220の両方に取り付けられる弾性部材221が配置される。
【0180】
また、上述した取付部材230は、図30に示すように、矩形の板部231と、板部231の下側端部から、板部231と交差する方向に延び出す延出部232と、延出部232における板部231とは反対側の先端から板部231の主たる面と平行な方向に拡がる係合部233と、からなる。係合部233は、延出部232を基準として板部231と同一の方向に拡がっている。
【0181】
図31には、取付部材230が対象物3に取り付けられ、キャスター2が衝撃緩衝装置210Rの積載面242に乗っており、取付部材230と、レール240Rのガイド部材244と、が係合した状態を前方から見た側面図を示す。この、図31は、他の図面とは各構成要素の寸法の比が異なる。
【0182】
上記の状態において、ガイド部材244は、取付部材230の前後方向への動きをガイドする。
【0183】
図31に示されるように、取付部材230は、貼付部270により対象物3に取り付けられている。
【0184】
貼付部270は、第1貼付部材271と、補強板272と、第2貼付部材273と、をこの順に層状に配設してなるものであり、第1貼付部材271が対象物3側に配置され、第2貼付部材273が取付部材230の板部231側に配置される。第1貼付部材271および第2貼付部材273は粘着性および弾性を有しており、その粘着性により取付部材230を対象物3に取り付ける。また、第1貼付部材271および第2貼付部材273は、取付部材230に荷重が加わると弾性変形する。
【0185】
この第1貼付部材271および第2貼付部材273としては、例えば、北川工業株式会社からタックフィットの商品名で販売されているものが好ましい。また、この第1貼付部材271および第2貼付部材273は、1の部材で形成されるものであってもよいが、シート状の部材を複数重ねて形成されるものであってもよい。
【0186】
また、第1貼付部材271および第2貼付部材273は、上下方向に分割して配置されている。本実施例では、対象物3が第1層3Aと第2層3Bとからなる積層構造であるため、第1層3Aと第2層3Bとにそれぞれ第1貼付部材271が取り付けられている。
【0187】
貼付部270を床面と直交する上方からみた上面図を図32に示す。補強板272は、前後方向に関して取付部材230の板部231を両側から挟みこむ位置関係で配置される挟み込み部274を備えており、上方から見た断面がコの字型になるように形成されている。
【0188】
また、摩擦力を有する床面摩擦部材247が、地震発生時にレール240L,240Rが移動する床面上の位置に配置されている。レール240L,240Rが前方に移動した際には、床面摩擦部材247と摺動し、摩擦力によりレール240L,240Rの移動が抑制される。
[免震システムの作用および効果]
地震発生時以外の通常時において、対象物3のキャスター2は、図24に示すように、レール240L,240Rの各積載面242に2つずつ位置している。第1ストッパー260および第2ストッパー263は、レール240の前後方向の両端付近にて、キャスター2の外側から挟み込むように配置されるため、これら第1ストッパー260および第2ストッパー263により、キャスター2の前後方向への移動が制限される。また、側板243により、キャスター2の左右方向への移動が制限される。このようにして、対象物3は免震システム200上から移動不能となっている。
【0189】
地震の発生時において、対象物3が前後方向に移動すると、キャスター2が第1ストッパー260および第2ストッパー263に接触する。このとき、キャスター2が第1ストッパー260および第2ストッパー263と接触する際の衝撃がストッパー緩衝材262,265によって緩衝される。
【0190】
続いて、第1ストッパー260および第2ストッパー263を取り付けてなるレール240L,240Rが前後方向に移動する。地震が継続している間、レール240L,240Rはベース250上を前後方向に往復運動する。このとき、レール240L,240Rとベース250との摩擦によって、対象物3が前後方向に移動するエネルギーが奪われるため、前後方向に関する移動の幅が小さく抑えられる。また、レール240L,240Rがベース250の後方の端部256と接触すると、折り曲げられた底板受け252および側壁255が変形することで、接触した際の衝撃を吸収する。
【0191】
一方、地震発生時の対象物3の左右方向に関する移動は、キャスター2がレール240L,240Rの側板243と接触することで抑制される。さらに、側板243にはレール緩衝材248が備えられているため、キャスター2が側板243などに衝突したときの衝撃は吸収される。
【0192】
また、キャスター2が第1ストッパー260および第2ストッパー263や側板243などに衝突したり、地震の上下方向の力を受けるなどして、対象物3が浮き上がったときには、図31(b)に示すように、ガイド部材244が、取付部材230の延出部232または係合部233と接触するため、床面と直交する上方向に関する対象物3のそれ以上の浮き上がりが抑制される。その結果、対象物3が免震システム200から脱落してしまうことを防止できる。
【0193】
なお、取付部材230およびガイド部材244は、大きな負荷を受けると変形するものを用い、地震発生時に対象物3に加わる衝撃を吸収するように構成してもよい。具体的には、取付部材230やガイド部材244を、適切な強度を持つ材質によって形成することや、取付部材230およびガイド部材244の板厚や面積を調整することで実現できる。
【0194】
また、上述した貼付部270の第1貼付部材271および第2貼付部材273は、上下方向に伸びて弾性変形し、それにより浮き上がる力を緩衝する。貼付部270は、第1貼付部材271と第2貼付部材273との間に補強板272が配置されているため、上方向への浮き上がる力の緩衝効果が大きくなる。このことは、補強板272が無い構成と比較して貼付部270全体としての弾性変形量が大きくなる結果であると考えられる。
【0195】
また、第1貼付部材271および第2貼付部材273は、上下方向に分割して取り付けられている。この場合、上下方向に分割せずに1枚で構成された同じ面積の第1貼付部材271または第2貼付部材273を用いる場合と比較して、緩衝効果をより大きくすることができる。このことは、第1貼付部材271および第2貼付部材273を上下方向に分割して取り付けることにより、貼付部270全体としての弾性変形量が大きくなる結果であると考えられる。
【0196】
また、連結部材220およびベース250に備えられた粘着性の弾性部材221および弾性部材254が、地震により免震システム200全体および対象物3に伝わる力を低減する。
【0197】
このように構成された免震システム200であれば、地震の発生時に、レール240L,240Rとベース250の間に生じる免震作用,キャスター2が第1ストッパー260および第2ストッパー263に接触した際のストッパー緩衝材262,265による緩衝,レール緩衝材248による緩衝,および,床面に取り付けられた弾性部材221および弾性部材254による緩衝作用などにより、対象物3に衝撃が急激に加わることが防止できるため、対象物3の予測できない移動や、付属品の飛び出しによる周囲および対象物3への損害の発生、対象物3の転倒や強い衝撃を受けることによる故障の発生などを抑制できる。
【0198】
また、取付部材230の板部231は、補強板272の挟み込み部274により、前後方向に関して両側から挟み込まれているため、前後方向への移動が制限される。よって、板部231と補強板272との間に捻りが加わり難くなる。第2貼付部材273は、捻ることで外れやすくなる可能性があるが、板部231と補強板272との間に捻りが加わり難くなることで、第2貼付部材273に捻りが加わり難くなり、板部231が補強板272から外れ難くなる結果、取付部材230が対象物3から外れてしまうことを抑制できる。
【0199】
また、補強板272が挟み込み部274と合せて断面コの字型であるため、補強板272の剛性が高くなり、地震発生時に荷重が掛かっても、補強板272が破損して取付部材230が対象物3から外れてしまうことを抑制できる。
【0200】
さらに、対象物3が、第1層3Aと第2層3Bと、からなる積層構造であっても、第1層3Aと第2層3Bとにそれぞれ第1貼付部材271が取り付けられているため、地震の発生時に対象物3が浮き上がる力を受けても、第1層3Aと第2層3Bとが分離してしまうことを抑制できる結果、第2層3Bのみが転倒して周囲に被害を与えることを抑制できる。
【0201】
また、ベース250がベース延出部材257を備えることから、地震により対象物3に上下左右方向の荷重が加えられても、ベース250の浮き上がりが抑えられ、対象物3が浮き上がって転倒することと、ベース250が床面から剥がれることが抑制できる。このことは、以下のように説明できる。
【0202】
地震の発生時などに対象物3が動いてベース250に荷重が掛かると、ベース250は前後方向と直交する方向(図24における左右方向)の端部を回転軸として回転するように浮き上がろうとする。このとき、ベース250はベース延出部材257を備えているため、回転軸はベース延出部材257における上記左右方向の端部に変化する。
【0203】
対象物3が回転するために必要な力は、対象物3の重心から上記両端部までの距離が長いほど大きくなる。本実施例のベース250は、ベース延出部材257によって、対象物3の重心から離れた位置に回転軸が形成されるため、対象物3が回転しにくくなる結果、ベース250が床面から浮き上がり難くなり、対象物3の浮き上がりを抑制することができる。
【0204】
なお、近年のオフィスではフロア面にカーペットを敷設する事例が増えているが、この場合、ベース250と床面のカーペットとを固定する弾性部材254の粘着強度が強くても、カーペットと床面との粘着性が弱いと、地震発生時にカーペットごと浮き上がる危険性がある。しかし、上述したベース延出部材257は、カーペットと床面と粘着強度に依存せずに対象物3の浮き上がりを抑制できるので、カーペットの剥離による対象物3の転倒危険性を低減できる。
【0205】
また、上述した免震システム200においては、レール摩擦部材246を取り替えることで容易にレール240とベース250との間に生じる摩擦力を変化させることができるため、対象物3の物性(重さや重心の位置など)に応じた適切な摩擦力に設定することができ、高い免震性能を得ることができる。
【0206】
また、対象物3が免震システム200に設置されているときのキャスター2と免震システム200との固定は、キャスター2の移動を第1ストッパー260および第2ストッパー263にて制限することで実現されている。よって、第1ストッパー260を溝部245Aから取り外すか、第2ストッパー263を溝部245Bから取り外すことで、対象物3は免震システム1上からの移動が可能となり、簡便に対象物3の設置および設置の解除の作業を行うことができる。
【0207】
ところで、今日の一般的なオフィスでは、フリーアクセス(床下に配線可能な施工)を施す例が多く、全国平均でも60%以上が上記フリーアクセスフロアとなっているが、上記フロアではアンカーボルトにより対象物を固定することが更に難しくなっている。フリーアクセス以外のフロアでも、アンカーボルト以外の補強工事を行なわないと重量が100kgを超える対象物を固定するだけの強度がないと言われている。
【0208】
また、対象物がキャスター付きのOA機器や医療機器の場合、地震が収まった直後から事業継続性(BCP)の一環としての使用ニーズが高いため、単なる転倒防止以上に、地震の衝撃が対象物に与える影響を軽減して、地震後に対象物が正常に使用できる確率を上げることが求められるが、アンカーボルト等で強固に固定した場合は、たとえ対象物が転倒しなかった場合も、対象物に加わる衝撃が大きいため、対象物の正常使用は難しい。
【0209】
しかしながら、上記実施例の免震システム200は、地震発生時に対象物3へ伝わる衝撃を低減させることが目的であるため、アンカーボルトなどを用いて床面に強固に固定する必要がないうえ、対象物3に大きな衝撃が加わって地震後の事業継続性(BCP)を高めることができる。
[本実施例の使用例]
本実施例の免震システム200を、対象物3として、コピー、プリンタ、FAXなどの機能を備える複合機5に適用させた状態を図33に示す。複合機5は、用紙カセット5Aと5Bの間で分離可能な積層構造を有しており、貼付部270はその両方にまたがって取り付けられている。また、この貼付部270の補強板272は、挟み込み部274の先端(複合機5と反対側の端部)が取付部材230を抱え込むように内側に向かって折り曲げられている。
【0210】
また、ベース250の長手方向端部にはダンパー258が取り付けられている。このダンパー258は、地震発生時などにレール240が接触した際にその衝撃を吸収するとともに、地震発生時以外においても使用者がベース250の端部に接触して怪我などをすることを防止する。
【0211】
この免震システム200は、地震の発生時に複合機5が転倒したり、用紙カセット5A,5Bなどが飛び出すことを抑制する。また、貼付部270が用紙カセット5A,5Bにまたがって取り付けられているため、その間で分離して複合機5における用紙カセット5Aの上方側が転倒することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】実施例1の免震システムを示す斜視図
【図2】衝撃緩衝装置を示す斜視図
【図3】レールを示す斜視図
【図4】レールの断面図
【図5】ベースを示す斜視図
【図6】ストッパーを示す斜視図
【図7】取付部材を示す斜視図
【図8】対象物を免震装置に設置した状態を示す側面図
【図9】床面摩擦部材を示す斜視図
【図10】実施例1の変形例を示す図
【図11】実施例1の変形例を示す図
【図12】実施例2の免震装置を示す斜視図
【図13】取付部材を示す斜視図
【図14】床面設置部材を示す側面図
【図15】実施例3の免震システムを示す斜視図
【図16】取付部材を示す側面図
【図17】貼付部を示す上面図
【図18】貼付部を示す斜視図
【図19】変形部を示す斜視図
【図20】レールを示す斜視図
【図21】貼付部を示す斜視図
【図22】実施例3の変形例を示す図
【図23】実施例3の変形例を示す図
【図24】実施例4の免震システムを示す斜視図
【図25】衝撃緩衝装置を示す斜視図
【図26】レールを示す斜視図
【図27】ベースを示す斜視図
【図28】第1ストッパーを示す斜視図
【図29】第2ストッパーを示す斜視図
【図30】取付部材を示す斜視図
【図31】対象物を免震装置に設置した状態を示す側面図
【図32】貼付部を示す上面図
【図33】使用例を示す斜視図
【符号の説明】
【0213】
1…免震システム、2…キャスター、3…対象物、3A…第1層、3B…第2層、4…対象物、5…複合機、5A,5B…用紙カセット、10…衝撃緩衝装置、20…連結部材、21…弾性部材、30…取付部材、31…板部、32…貼り付け部材、33…延出部、34…ローラー、35…変形部、40…レール、41…レール底板、42…積載面、43…側板、44(44A、44B)…ガイド部材、45…溝部、46…レール摩擦部材、47…床面摩擦部材、50…ベース、51…ベース底板、52…底板受け、53…一端、54…弾性部材、60…ストッパー、61…板状部材、62…ストッパー緩衝材、70…脚、71…移動制限部材、101…免震装置、102…キャスター、103…対象物、104…積載面、105…床面設置部材、106…床面延出部材、107…端部、108…端部、110…取付部材、111…板部、112…貼り付け部材、113…延出部、114…係合部、120…ガイド部材、121…縦板、122…横板、123…吊板、141…第1貼付部材、142…補強板、143…第2貼付部材、144…挟み込み部、150…レール緩衝材、160…ベース延出部材、200…免震システム、210(210L、210R)…衝撃緩衝装置、220…連結部材、221…弾性部材、230…取付部材、231…板部、232…延出部、233…係合部、240…レール、240L…レール、240R…レール、241…レール底板、242…積載面、243…側板、244…ガイド部材、245A…溝部、245B…溝部、246…レール摩擦部材、247…床面摩擦部材、248…レール緩衝材、250…ベース、251…ベース底板、252…底板受け、253…端部、254…弾性部材、255…側壁、256…端部、257…ベース延出部材、258…ダンパー、260…第1ストッパー、261…板状部材、262…ストッパー緩衝材、263…第2ストッパー、264…シャフト、265…ストッパー緩衝材、266…ブラケット、270…貼付部、271…第1貼付部材、272…補強板、273…第2貼付部材、274…挟み込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物のキャスターを載せる積載面を有するレールと、
床面に設置され、前記床面に沿う所定方向に関して前記レールを移動可能に保持するベースと、
前記レールに取り付けられ、前記キャスターの前記所定方向への移動を制限するストッパーと、を備える
ことを特徴とする免震装置。
【請求項2】
前記レールまたは前記ベースの少なくともいずれか一方に取り付けられ、前記レールと前記ベースとが摺動する際に、前記一方と異なる他方と接触するレール摩擦部材を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記ベースは、前記ベースと前記床面との間に配置された弾性を有する弾性部材によって前記床面に取り付けられる
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記ストッパーは、前記キャスターに面する位置に、前記キャスターと接触した際に弾性変形するストッパー緩衝材を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の免震装置。
【請求項5】
前記床面に設置され、前記レールが前記所定方向に移動したときに、前記レールと摺動することで、前記レールの移動を抑制する床面摩擦部材を備える
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の免震装置。
【請求項6】
前記レールは、前記積載面における前記所定方向と交差する方向の端部において、前記キャスターの前記レールからの脱落を防止する脱落防止部が設けられている
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の免震装置。
【請求項7】
前記脱落防止部は、前記キャスターに面する位置に、前記キャスターと接触した際に弾性変形するレール緩衝材を備える
ことを特徴とする請求項6に記載の免震装置。
【請求項8】
前記対象物に取り付けられる取付部材と、
前記レールに設けられ、前記キャスターが前記積載面に乗っている状態で、前記対象物に取り付けられた前記取付部材と係合して、前記取付部材の前記所定方向への動きをガイドするガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材は、前記取付部材と係合しているときに、少なくとも前記床面と直交する方向に関する前記取付部材の移動を抑制する
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の免震装置。
【請求項9】
前記取付部材または前記ガイド部材のいずれか一方には、ローラーが設けられており、前記取付部材と前記ガイド部材とが接触する際には、前記ローラーの円周面が前記一方と異なる他方と接触する
ことを特徴とする請求項8に記載の免震装置。
【請求項10】
前記取付部材は、前記ガイド部材と接触したときに、変形して衝撃を吸収する変形領域を有する
ことを特徴とする請求項8に記載の免震装置。
【請求項11】
前記取付部材は、前記取付部材と前記対象物との間に配置された弾性を有する貼付部によって前記対象物に取り付けられる
ことを特徴とする請求項8から請求項10のいずれかに記載の免震装置。
【請求項12】
前記貼付部は、少なくとも、弾性を有する第1貼付部材と、補強板と、弾性を有する第2貼付部材と、をこの順に層状に配設してなるものである
ことを特徴とする請求項11に記載の免震装置。
【請求項13】
前記補強板は、前記所定方向に関して前記取付部材を両側から挟み込む位置関係で配置される挟み込み部を備える
ことを特徴とする請求項12に記載の免震装置。
【請求項14】
前記ベースは、前記所定方向と交差する方向、かつ、前記床面に沿う方向に延び出すベース延出部材を備える
ことを特徴とする請求項8から請求項13のいずれかに記載の免震装置。
【請求項15】
対象物を載せる積載面を有するレールと、
床面に設置され、前記床面に沿う所定方向に関して前記レールを移動可能に保持するベースと、を備える
ことを特徴とする免震装置。
【請求項16】
前記対象物と前記レールとの間に配置され、前記対象物の前記所定方向への移動を制限する移動制限部材を備える
ことを特徴とする請求項15に記載の免震装置。
【請求項17】
前記レールまたは前記ベースの少なくともいずれか一方に取り付けられ、前記レールと前記ベースとが摺動する際に、前記一方と異なる他方と接触するレール摩擦部材を備える
ことを特徴とする請求項15または請求項16に記載の免震装置。
【請求項18】
前記ベースは、前記ベースと前記床面との間に配置された弾性を有する弾性部材によって前記床面に取り付けられる
ことを特徴とする請求項15から請求項17のいずれかに記載の免震装置。
【請求項19】
前記床面に設置され、前記レールが前記所定方向に移動したときに、前記レールと摺動することで、前記レールの移動を抑制する床面摩擦部材を備える
ことを特徴とする請求項15から請求項18のいずれかに記載の免震装置。
【請求項20】
前記対象物に取り付けられる取付部材と、
前記レールに設けられ、前記対象物が前記積載面に乗っている状態で、前記対象物に取り付けられた前記取付部材と係合して、前記取付部材の前記所定方向への動きをガイドするガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材は、前記取付部材と係合しているときに、少なくとも前記床面と直交する方向に関する前記取付部材の移動を抑制する
ことを特徴とする請求項15から請求項19のいずれかに記載の免震装置。
【請求項21】
前記ベースは、前記所定方向と交差する方向、かつ、前記床面に沿う方向に延び出すベース延出部材を備える
ことを特徴とする請求項20に記載の免震装置。
【請求項22】
床面に設置され、対象物のキャスターを乗せる積載面を有する床面設置部材と、
前記対象物に取り付けられる取付部材と、
前記床面設置部材に設けられ、前記キャスターが前記積載面に乗っている状態で、前記対象物に取り付けられた前記取付部材と係合して、前記取付部材の所定方向への動きをガイドするガイド部材と、を備え、
前記ガイド部材は、前記取付部材と係合しているときに、前記床面に沿い、かつ、前記所定方向と直交する方向と、前記床面と直交する上方向と、に関する前記取付部材の移動を抑制する
ことを特徴とする免震装置。
【請求項23】
前記床面設置部材は、前記所定方向と交差する方向、かつ、前記床面に沿う方向に延び出す床面延出部材を備える
ことを特徴とする請求項22に記載の免震装置。
【請求項24】
前記取付部材は、前記ガイド部材と衝突したときに、変形して衝撃を吸収する変形領域を有する
ことを特徴とする請求項20から請求項23のいずれかに記載の免震装置。
【請求項25】
前記取付部材は、前記取付部材と前記対象物との間に配置された弾性を有する貼付部によって前記対象物に取り付けられる
ことを特徴とする請求項20から請求項24のいずれかに記載の免震装置。
【請求項26】
前記貼付部は、少なくとも、弾性を有する第1貼付部材と、補強板と、弾性を有する第2貼付部材と、をこの順に層状に配設してなるものである
ことを特徴とする請求項25に記載の免震装置。
【請求項27】
前記補強板は、前記所定方向に関して前記取付部材を両側から挟み込む位置関係で配置される挟み込み部を備える
ことを特徴とする請求項26に記載の免震装置。
【請求項28】
請求項1から請求項27のいずれかに記載された免震装置の一対と、
前記床面に設置され、前記所定方向と直交する方向に一対の前記免震装置を並べて連結する連結部材と、からなる
ことを特徴とする免震システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【図15】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図33】
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【図8】
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【図12】
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【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2009−162379(P2009−162379A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−296780(P2008−296780)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】