説明

免震装置および浮屋根式タンク

【課題】 設置が容易で、位置合わせする必要がなく、確実かつ充分に振動エネルギーを吸収してスロッシングの発生を抑制することができる免震装置およびその免震装置を備える浮屋根式タンクを提供する。
【解決手段】 本発明の免震装置は、容器の底板10aと平坦な地面または基礎16との間に配置され、容器を移動可能に支持する複数の球体12と、容器の周囲を取り囲むように地面または基礎16から鉛直方向に延び、地面または基礎16上に構築されるストッパー13と、容器の外側壁とストッパー13との両方に、互いに対向するように設けられる緩衝材14とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浮屋根を備える容器においてスロッシングの発生を抑制するための免震装置および該免震装置を備える浮屋根式タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガス等のガスや、水、石油、化学薬品等の液体を貯留するためのタンクとして、球形ホルダや、固定屋根式タンク、浮屋根式タンク等が使用されている。これらガスや液体のうち、石油等の揮発性を有する液体を貯留するタンクには、浮屋根式タンクが多く採用されている。これは、浮屋根が、液面を覆い、かつ昇降自在に浮いており、液面がどの位置にあっても浮屋根と液面との間に空間ができず、この結果として、液体が揮発することはなく、液ロスを抑制することができるためである。なお、液体が揮発すると、タンク内の液体量は減少し、液体の使用量は減少する。
【0003】
ここで、浮屋根式タンクの構造について説明する。一般に、円形の底板と、液体を貯留するために中空円筒形に構築される側板と、液面を覆い、液面に浮かべて使用される浮屋根とから構成される。中空円筒形に側板を構築するのは、内部に貯留される液体によって側板に加えられる圧力をほぼ均等にし、タンクを破損しにくくするためである。浮屋根は、液面の中央部を覆うデッキ板と、そのデッキ板の周囲に設けられる中空の箱形構造物で、液面に浮くポンツーンとから構成される。ポンツーンとタンクの側板との間には、わずかな隙間が存在するが、ポンツーンの周囲にシール部材を設け、シール部材によってこの隙間を埋めることで、液体の揮発を抑制することができる。なお、浮屋根は、液面に浮かべて使用され、液体の供給に伴って液面レベルが上昇するにつれて上昇し、液体の取り出しに伴って液面レベルが低下するにつれて降下する。
【0004】
地震が発生した場合、震源を中心とする地震動が発生し、この浮屋根式タンクにもこの地震動が伝えられる。この地震動によってタンクは揺動し、タンク内の液体にもこの揺動が伝えられる。地震動による周期とタンクの固有周期とが重なり合い、共振が発生すると、この共振によって液面が大きく波立つスロッシングと呼ばれる現象が発生する。
【0005】
このスロッシングは、地震が停止しても続き、浮屋根に回転運動を生じさせ、波高を増大させる。この波高の増大は、タンク内容物をオーバーフローさせ、また、浮屋根と液面との間に負圧と正圧とを生じさせて浮屋根を破壊させる場合がある。スロッシングの振動は、地盤等へは伝達されないため、発散する場所がなく、長時間継続する。これは、タンク内容物が石油等の可燃性液体である場合には、可燃性液体をオーバーフローさせ続け、火災等を継続させ、大災害を引き起こす。このため、浮屋根式タンクには、地震時のタンク内部の液体の運動に抵抗を与えたり、浮屋根を固定したりして、スロッシングの振動を減衰させ、また、スロッシングの発生を抑制するための装置が設けられている。
【0006】
高層マンションや戸建て住宅等においては、建造物を構築する際、免震装置を設置したり、免震構造を構築したりして、上部の建造物の揺れを減衰させている。近年、地震の増加や将来起こりうる地震への関心の高まりから、数多くの免震装置が提案されている。
【0007】
一般に、ダンパーやストッパーを多数設置して揺れを減衰させる免震装置が採用されているが、それらは離れた位置に設置されるため、工期が大幅に延長され、また、コストがかかり、取り替え作業にも手間がかかることから、球体を構成要素とした免震装置が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。この免震装置は、地盤側に固定される下部支承板と、この下部支承板上に転がり移動可能に載置されてなる球体と、上部の構造物側に固定され、下部支承板とで球体を挟む上部支承板と、上部支承板と下部支承板の両方に形成されるリング状のストッパ部と、ストッパ部の内周面に固定され、ゴム等からなるリング状の衝撃吸収体とを備えるものとされている。
【0008】
この免震装置を備える構造物は、球体によって構造物が支持されているため、地震で地盤が揺れても、球体が転がり移動することで、構造物の揺れを低減することができる。この免震装置は、球体上の構造物が、球体から落下しないように、リング状のストッパ部を備え、球体がストッパ部に接触し、その衝撃が構造物に伝達されるのを低減するために、リング状の衝撃吸収体を備える構成とされている。
【0009】
また、上部支承板と下部支承板との間に球体を挟む構造として、転がり移動可能に支承させ、減衰要素と復元要素とを、上部支承板と下部支承部とを接続するように設け、水平滑りを可能にするとともに、転がり移動範囲を中立位置に復元することができるようにした免震装置も提案されている(特許文献3参照)。この免震装置は、振幅の大きさに関係なく共振周波数を低く一定に保つとともに、高次振動成分を乗せることなく地震の衝撃を減衰させ、収束時間の短縮化も相まって安定した制振性能を確実に発揮させることができるものである。
【0010】
これらの免震装置は、構造物の固有周期を長周期化することにより、その構造物に作用する地震力を低減するとともに、吸収体等の減衰力を有する装置を併用して、その構造物の振動エネルギーを吸収するものである。したがって、これらの免震装置を浮屋根式タンクに設置すれば、タンクの固有周期を長周期化して共振を発生させないようにし、吸収体等でタンクの振動エネルギーを吸収することができ、これにより、スロッシングを抑制することができるものと考えられる。
【0011】
しかしながら、複数の上記免震装置を、広いタンクの底面の所定位置にそれぞれ取り付けるのは困難であり、取り付けるには位置合わせする必要があり、また、ストッパ部および吸収体が球体の半径より小さくされているため、タンクの振動エネルギーによっては球体がそのストッパ部および吸収体の上部を超え、外れてしまうといった問題がある。また、球体が直接、吸収体に衝突するため、充分に振動エネルギーを吸収することができないという問題もある。そこで、設置が容易で、位置合わせする必要がなく、確実かつ充分に振動エネルギーを吸収してスロッシングの発生を抑制することができる、浮屋根式タンクに用いる免震装置の提供が望まれている。
【特許文献1】特許第2968260号公報
【特許文献2】特許第3174860号公報
【特許文献3】特開平11−315886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、設置が容易で、位置合わせする必要がなく、確実かつ充分に振動エネルギーを吸収してスロッシングの発生を抑制することができる免震装置および該免震装置を備える浮屋根式タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題は、本発明の免震装置および該免震装置を備える浮屋根式タンクを提供することにより達成される。すなわち、本発明によれば、容器の底板と平坦な地面または基礎との間に配置され、容器を移動可能に支持する複数の球体と、容器の周囲を取り囲むように地面または基礎から鉛直方向に延び、地面または基礎上に構築されるストッパーと、容器の外側壁とストッパーとの両方に、互いに対向するように設けられる緩衝材とを含む免震装置が提供される。
【0014】
上記容器は、内径がLの円筒形の容器であり、容器の外側壁とストッパーとの間の距離が0.25Lより短いことを特徴とする。
【0015】
上記ストッパーは、容器を収容する収容部を形成しており、容器が収容された収容部内に水が貯留されることを特徴とする。
【0016】
上記緩衝材は、リング状のダンパーであり、容器の振動エネルギーを吸収するとともに、上記収容部内に貯留された水のオーバーフローを抑制することを特徴とする。
【0017】
上記複数の球体のそれぞれが挿通可能で互いに離間して設けられる複数の孔を備え、容器の外径より小さい板部材と、板部材を地面または基礎に連結するための連結具とをさらに含んで構成され、複数の孔のそれぞれに複数の球体のそれぞれが回転可能に挿設されることを特徴とする。
【0018】
本発明では、上記免震装置を備える浮屋根式タンクを提供することもできる。この浮屋根式タンクは、液体を貯留するための容器と、液面に浮き、かつ該液面を覆う浮屋根と、
上記免震装置とを含むものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の免震装置および浮屋根式タンクを提供することにより、設置が容易で、位置合わせする必要がなく、確実かつ充分に振動エネルギーを吸収してスロッシングの発生を抑制することができる。また、容器から液体が溢れたとしても、周囲の土壌や河川等へ流出するのを防止することができる。さらに、収容部内に水を貯留しておくことで、より効果的に振動エネルギーを吸収することができるとともに、容器内の可燃性液体が燃焼した際の消化水、タンクを冷却し、液体の揮発を抑制する冷却媒としても使用することができる。また、板部材および連結具を備える構成にすることで、各球体の位置が固定され、容器を確実に支持し、容器に作用する地震力を確実に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の免震装置を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、免震装置を備える浮屋根式タンクの第1実施形態を示した図である。また、図2は、その平面図である。以下、図1および図2を参照してこの実施形態を説明する。浮屋根式タンクは、上述したように、底板10aと側板10bとから構成される本体と、デッキ板とポンツーンとから構成される浮屋根11と、複数の球体12とストッパー13と緩衝材14とから構成される免震装置15とを含んで構成される。
【0021】
底板10a、側板10b、デッキ板は、一般に鋼材から作製され、ポンツーンは、液面に浮くように、中空とされ、ポリ塩化ビニルや繊維強化プラスチック(FRP)等のプラスチック材料やコンクリートから製造される。タンクの本体は、内部に貯留される液体から受ける圧力が均等にかかるように、一般に円筒形とされる。このため、浮屋根11は、円形のデッキ板、その円形のデッキ板に複数のポンツーンが周設され、図2に示す平面図のように、円形とされる。内部に貯留される液体は、石油、重油、ガソリン等の可燃性液体や、水、液状の化学薬品等とされる。この可燃性液体は、容器から流出し、流出した容器の外部に着火源が存在すると火災を発生させる。また、液状の化学薬品は、容器から流出し、土壌や河川に浸透すると、物質によってはその土壌や河川を汚染する。これらの液体は、地震のない通常時においては波立つこともなく、容器から流出することはない。しかしながら、地震が発生すると、液面が大きく波立つスロッシングが発生し、これらの液体が流出するおそれがある。本発明では、免震装置15によって容器に与えられる振動エネルギーを低減させて液面の波立ちを抑制し、これらの液体が容器から流出しないようにすることができる。以下、免震装置15について説明する。
【0022】
免震装置15を構成する複数の球体12は、容器の底板10aと、平坦な地面または基礎16との間に配置され、容器を移動可能に支持する。これら複数の球体12は、地震時に地面または基礎16が揺動しても、容器を地震発生前の位置に維持させるように回転し、容器に作用する振動エネルギーを低減させる。これにより、容器内の液体に作用する振動エネルギーも小さくなり、液面の波立ちも抑制される。ちなみに、地面または基礎16を基準に考えた場合、これら複数の球体12の回転により、容器は所定方向に移動しているように見える。ここで、上記基礎は、例えば、地面上にコンクリートを打設して平坦に形成された面を備える下部構造とすることができる。
【0023】
球体12は、鋼製で、内部に液体が貯留される容器を支持することができる強度を有する鋼やセラミック等の材料により製造される。その径は、適切に回転して容器を移動させることができればいかなる径であってもよく、例えば、0.01m〜0.1mのものとすることができる。なお、球体12は、硬性ゴムとすることもできるが、液体を収容した容器はその質量が大きいため、硬性ゴムでは変形しやすく、変形すると回転しにくくなり、容器をスムーズに移動させることができなくなるため、上記材料のものが好ましい。個々の球体12の配置は、スムーズに回転できれば密集していてもよいが、適切に回転することができるように、互いが離間して配置されているほうが好ましい。
【0024】
ストッパー13は、容器の周囲を取り囲むように離間し、地面または基礎16から鉛直方向に延び、地面または基礎16上に構築される。例えば、鋼板、コンクリートにより構築することができる。ストッパー13は、容器の内径をLとした場合、容器からの距離が0.25Lより短くなるように構築されることが好ましい。スロッシングが発生する場合のスロッシング波長は2Lである。地震が停止し、地面または基礎16の揺動が停止したとしても、本発明では容器が球体12によって支持されているため、容器はストッパー13間を往復動し続け、容器に振動エネルギーが加えられる。例えば、ストッパー13と容器との距離を0.4Lとした場合、上記往復動によって容器が一方の側のストッパー13に接触している時点では他方の側のストッパーとの距離は0.8Lとなっている。すると、ストッパー13間の距離は1.8Lで、スロッシング波長に近く、共振が起こる可能性がある。また、長い波長の波は減衰しにくい。そこで、上記のように0.25Lより短くすることで、共振が起こらないようにし、また、波を減衰させやすくすることができる。
【0025】
このストッパー13は、図2の平面図で示すように、円形の容器の周囲を取り囲むように、所定高さに構築される。このため、ストッパー13は、容器を収容する収容部を形成している。また、ストッパー13は、複数の球体12の回転により移動される容器を停止させることができる強度を有する厚さrとされる。ストッパー13の高さは、容器の移動を停止させることができる高さとされ、球体12上に設置した容器が移動した場合に、少なくとも容器の外側壁が衝突する高さで、かつ、その外側壁に対向して緩衝材14を設けることができる高さとされる。したがって、容器の外側壁が衝突する高さであれば、球体12の径より例えば1cmでも高ければ衝突させることができるが、その外側壁に対向して緩衝材14を設けることができないため、球体12の径を約0.1mとし、容器の高さを約10mとした場合、例えば、約1m〜約3mの高さとすることができる。
【0026】
上記では、地面または基礎16上にストッパー13を構築することについて説明したが、本発明では、地面に溝を形成し、または、地盤の凹所を利用し、その溝の地盤の側壁、または、その凹所の地盤の側壁を成形してストッパーとして用いることもできる。この場合、溝または凹所の底面は、そのままであっても良いが、コンクリートを打設するなどして平坦に成形し、所定強度を有する側壁として構築し、緩衝材14を配設することができる。
【0027】
緩衝材14は、容器の外側壁とストッパー13との両方に、互いに対向するように設けられる。緩衝材14は、容器がストッパー13に衝突する際のエネルギーを小さくし、内部の液体に与えられるエネルギーを小さくする。この衝突する際のエネルギーを小さくさせるのみの場合には、容器の外側壁またはストッパー13のいずれかに緩衝材14が設けられていれば良いが、浮屋根式タンクの外側壁を構成する側板10bはその厚さが約0.05mと薄く、損傷しやすいため、また、ストッパー13も、コンクリート製の場合、鋼製の容器の衝突により破壊されやすいため、容器の外側壁とストッパー13との両方に、互いに対向するように設けられる。
【0028】
緩衝材14は、容器下側の外側壁と、それに対向するストッパー13の所定高さ位置に設けられ、図2に示すように、その外側壁一周と、それに対向してストッパー13の内側一周とに設けられることがより好ましい。緩衝材14としては、ダンパーを挙げることができ、ダンパーとしては、ばね、ゴムといった弾性体を用いるものとすることができる。なお、形状は、上記外側壁一周に、ストッパー13の内側一周に設ける場合、リング状のものにすることができる。その他形状および構造については、これまで知られたいかなる形状および構造のものであってもよい。
【0029】
免震装置15によるスロッシングの抑制について、図3を参照して詳細に説明する。地震が発生し、矢線Aに示す方向に振動エネルギーが作用した場合、地面または基礎16は、矢線Aに示す方向に移動する。この地面または基礎16の移動に伴ってストッパー13も移動する。これに対し、容器17は、地震発生前の位置に留まり続けようとする慣性力が作用する。このため、地面または基礎16と容器17との間に介在する複数の球体12が回転し、地面または基礎16を移動させつつ、容器17の位置を維持しようとする。この地面または基礎16の移動に伴い、ストッパー13aが容器17に接近し、その後、容器17の外側壁に設けられる緩衝材14aと、その緩衝材14aに対向してストッパー13aに設けられる緩衝材14bとが衝突する。この衝突により容器17に地震による振動エネルギーが伝えられるものの、互いの緩衝材14a、14bにより振動エネルギーが吸収されるため、低減された振動エネルギーが容器17に伝えられる。
【0030】
続いて、地震による地面または基礎16の揺動により、矢線Aとは反対方向に振動エネルギーが作用する。この場合、複数の球体12は上記とは反対方向に回転し、ストッパー13aに容器17を介して対向するストッパー13bが容器17に接近する。その後、容器17の外側壁に設けられる緩衝材14cと、その緩衝材14cに対向してストッパー13bに設けられる緩衝材14dとが衝突する。これも緩衝材14c、14dにより振動エネルギーが吸収されるため、低減されたエネルギーが容器17に伝えられる。地震により地面または基礎16は揺動するため、免震装置15ではこのような動作が繰り返される。
【0031】
容器17内では、低減された振動エネルギーが繰り返し液体に作用し、液体に振動エネルギーが与えられる。その振動エネルギーの振動周期は、球体12の回転によって長周期化されており、地震波の周期に比較して長いものとなっている。このため、共振の発生を抑制することができ、スロッシングの発生は抑制される。
【0032】
図4は、免震装置の第2実施形態を示した図である。図4に示す免震装置は、図1に示す免震装置15と同様の構成であるが、ストッパー13により形成された収容部18内に水19が貯留されている。また、緩衝材14が、リング状のダンパーとされ、容器17の振動エネルギーを吸収するとともに、収容部18内に貯留された水19のオーバーフローを抑制している。
【0033】
例えば、約0.1mの径の球体12上に高さ約10mの容器17が設置され、その周囲に高さ約3mのストッパー13が構築され、容器17の外側壁およびストッパー13の内側の高さ約2.5mの位置に緩衝材14が、互いに対向するように設けられているものとする。この場合、高さ約2mまで水19を貯留することができる。この水19は、球体12の回転によるストッパー13の容器17への移動に抵抗を与えることができる。これにより、容器17に作用する振動エネルギーをさらに低減させることができる。
【0034】
この水19は、上記のように容器17に作用する振動エネルギーを低減させるとともに、容器17内の液体が可燃性液体であり、何らかの着火源の存在により火災が発生した場合、その消火水として使用することができる。また、容器17内の液体の揮発を抑制するための冷却媒としても使用することができる。なお、長期にわたって貯留されると、アオコ等が発生するため、適宜入れかえることができる。
【0035】
図5は、免震装置の第3実施形態を示した図である。図5(a)に示す免震装置は、図1に示す免震装置に、さらに、複数の球体12のそれぞれが挿通可能で互いに離間して設けられる複数の孔20を備え、容器17の外径より小さい板部材21と、板部材21を地面または基礎16から離間させて地面または基礎16に連結するための連結具22とを含んで構成されている。この免震装置では、図5(b)に示すように、板部材21に設けられた複数の孔20のそれぞれに複数の球体12のそれぞれが回転可能に挿設されている。なお、図5(b)は、板部材21の平面図を例示したものであり、図5(a)に示す板部材の断面図とは対応していない。
【0036】
図1に示す免震装置では、複数の球体12がランダムに配置されており、球体12の回転により、球体12同士が密接したり、所定箇所に集まったりする場合がある。このように互いに密接した状態になると、回転しにくくなり、スムーズな移動を妨げる。また、所定箇所に集まると、容器17を支持することができなくなる。これは、容器17に直接的に振動エネルギーを与え、液体に伝播し、スロッシングを発生させる。このため、球体12は、互いに離間した状態で維持されることが好ましく、この状態に維持するため、図5に示す板部材21および連結具22を使用することができる。
【0037】
板部材21は、複数の球体12のそれぞれが挿通可能で互いに離間して設けられる複数の孔20を備える。この孔20内に球体12を挿設する。したがって、孔20の径は、球体12の径より大きく形成される。板部材21は、容器17の外径より小さくされ、緩衝材14同士が衝突する前にストッパー13と板部材21とが衝突しないようにされる。板部材21は、複数の球体12で容器17を適切に支持し、移動可能にさせるため、それら球体12の数に対応した数で、適切な大きさで、適切な位置に穿孔される。ただし、板部材21は、球体12によって容器17を支持するため、球体12が容器17と地面または基礎16に隣接するように、球体12の径より小さい厚さとされる。
【0038】
連結具22は、板部材21を、地面または基礎16に連結する。したがって、板部材21を連結することができればいかなる部材でも用いることができる。連結具22をボルトとし、球体12の径を約0.1mとし、厚さ約0.05mの板部材21を用いる場合、板部材21を地面または基礎16にボルトで固定し、各孔20内に球体12を挿設することができる。この場合において、厚さ約0.02mの板部材21を用いる場合、地面または基礎16に直接固定すると、球体12の回転により、孔20内から球体12が簡単に出てしまうため、板部材21は、地面または基礎16から約0.04〜約0.06m離間した位置に配設し、孔20から球体12が出ないようにするとともに回転可能にさせることができる。
【0039】
これまで本発明の免震装置を、図面を参照して詳細に説明してきたが、本発明の免震装置は図面に示された実施形態に限定されるものではない。本発明では、これらの免震装置に加え、スロッシングの発生を抑制することができる、これらの免震装置を備える浮屋根式タンクを提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】免震装置を備える浮屋根式タンクを例示した図。
【図2】図1に示す浮屋根式タンクの平面図。
【図3】免震装置を用いてスロッシングを抑制しているところを示した図。
【図4】免震装置の第2実施形態を示した図。
【図5】免震装置の第3実施形態を示した図。
【符号の説明】
【0041】
10a…底板
10b…側板
11…浮屋根
12…球体
13、13a、13b…ストッパー
14、14a、14b、14c、14d…緩衝材
15…免震装置
16…地面または基礎
17…容器
18…収容部
19…水
20…孔
21…板部材
22…連結具
























【特許請求の範囲】
【請求項1】
液面に浮き、かつ該液面を覆う浮屋根を備える容器に用いられ、スロッシングの発生を抑制するための免震装置であって、
前記容器の底板と平坦な地面または基礎との間に配置され、前記容器を移動可能に支持する複数の球体と、
前記容器の周囲を取り囲むように前記地面または基礎から鉛直方向に延び、前記地面または基礎上に構築されるストッパーと、
前記容器の外側壁と前記ストッパーとの両方に、互いに対向するように設けられる緩衝材とを含む、免震装置。
【請求項2】
前記容器は、内径がLの円筒形の容器であり、前記容器の外側壁と前記ストッパーとの間の距離が0.25Lより短いことを特徴とする、請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記ストッパーは、前記容器を収容する収容部を形成しており、前記容器が収容された前記収容部内に水が貯留されることを特徴とする、請求項1または2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記緩衝材は、リング状のダンパーであり、前記容器の振動エネルギーを吸収するとともに、前記収容部内に貯留された前記水のオーバーフローを抑制する、請求項3に記載の免震装置。
【請求項5】
前記複数の球体のそれぞれが挿通可能で互いに離間して設けられる複数の孔を備え、前記容器の外径より小さい板部材と、前記板部材を、前記地面または基礎に連結するための連結具とをさらに含み、前記複数の孔のそれぞれに前記複数の球体のそれぞれが回転可能に挿設される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の免震装置。
【請求項6】
スロッシングの発生を抑制するための免震装置を備える浮屋根式タンクであって、
液体を貯留するための容器と、
液面に浮き、かつ該液面を覆う浮屋根と、
前記容器の底板と平坦な地面または基礎との間に配置され、前記容器を移動可能に支持する複数の球体と、前記容器の周囲を取り囲むように前記地面または基礎から鉛直方向に延び、前記地面または基礎上に構築されるストッパーと、前記容器の外側壁と前記ストッパーとの両方に、互いに対向するように設けられる緩衝材とを含む免震装置とを含む、浮屋根式タンク。
【請求項7】
前記容器は、内径がLの円筒形の容器であり、前記容器の外側壁と前記ストッパーとの間の距離が0.25Lより短いことを特徴とする、請求項6に記載の浮屋根式タンク。
【請求項8】
前記ストッパーは、前記容器を収容する収容部を形成しており、前記容器が収容された前記収容部内に水が貯留されることを特徴とする、請求項6または7に記載の浮屋根式タンク。
【請求項9】
前記緩衝材は、リング状のダンパーであり、前記容器の振動エネルギーを吸収するとともに、前記収容部内に貯留された前記水のオーバーフローを抑制する、請求項8に記載の浮屋根式タンク。
【請求項10】
前記複数の球体のそれぞれが挿通可能で互いに離間して設けられる複数の孔を備え、前記容器の外径より小さい板部材と、前記板部材を、前記地面または基礎に連結するための連結具とをさらに含み、前記複数の孔のそれぞれに前記複数の球体のそれぞれが回転可能に挿設される、請求項6〜9のいずれか1項に記載の浮屋根式タンク。









【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−253968(P2007−253968A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−78266(P2006−78266)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】