説明

免震装置と制振装置

【課題】簡易な構造により所望の免震性能または制振性能を発揮できる装置とその装置を構成する要素の諸元を容易に設定できる免震装置と制振装置とを提供する。
【解決手段】特定方向の相対変位を回転体の回転量に変換する慣性接続要素30と、特定方向の相対変位に対応して特定方向にそって作用する弾性反力を発生するバネ要素40と、特定方向の相対速度に対応して特定方向にそって作用する減衰抵抗力を発生するダンパー要素50と、を備え、前記慣性接続要素30と前記ダンパー要素50とを並列接続した系と前記バネ要素40とを直列接続した系であるバネ付き粘性マスダンパーが対象構造物10に連結された、ものとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象構造物の振動を免震する免震装置、または制振する制振装置に係る。特に、地震等によって揺すられた対象構造物の振動エネルギーを免震する免震装置、または制振する制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地震が発生すると、建物、構造物等の対象構造物が水平、垂直に揺すられる。
地震等による加速度レベルが大きいと、対象構造物が損傷をうけたり、対象構造物の中にあるものが予想を越えて加速度を受けたり、予想を超える変位をうけたりする。
そこで、基礎から対象構造物へ伝達する振動エネルギーを減少させて振動を免震する免震装置、または対象構造物が振動した際に振動エネルギーを吸収し振動レベルを小さくして振動を制振する制振装置として各種の構造の装置が試されている。
構造とその構造を構成する要素の諸元を適正に設定することにより、所望の免震性能や制振性能を発揮できる。
【0003】
【特許文献1】特開平10−100945号
【特許文献2】特開平10−184757号
【特許文献3】特開2000−017885号
【特許文献4】特開2003−138784号
【特許文献5】特開2004−239411号
【特許文献6】特開2005−180492号
【特許文献7】特開2005−207547号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、所望の免震性能または制振性能を発揮するための構造とその構造を構成する要素の諸元を適正に設定することは容易ではなかった。
【0005】
本発明は以上に述べた問題点に鑑み案出されたもので、簡易な構造により所望の免震性能または制振性能を発揮できる装置とその装置を構成する要素の諸元を容易に設定できる免震装置と制振装置とを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る支持体を基礎として主架構に支持される対象構造物の特定方向の変位を免震する免震装置を、特定方向の相対変位を回転体の回転量に変換する慣性接続要素と、特定方向の相対変位に対応して特定方向にそって作用する弾性反力を発生するバネ要素と、特定方向の相対速度に対応して特定方向にそって作用する減衰抵抗力を発生するダンパー要素と、を備え、前記慣性接続要素と前記ダンパー要素とを並列接続した系と前記バネ要素とを直列接続した系であるバネ付き粘性マスダンパーが支持体と対象構造物との間に連結される、ものとした。
【0007】
上記本発明の構成により、慣性接続要素が特定方向の相対変位を回転体の回転量に変換する。バネ要素が特定方向の相対変位に対応して特定方向にそって作用する弾性反力を発生する。ダンパー要素が特定方向の相対速度に対応して特定方向にそって作用する減衰抵抗力を発生する。前記慣性接続要素と前記ダンパー要素とを並列接続した系と前記バネ要素とを直列接続した系であるバネ付き粘性マスダンパーが、支持体と対象構造物との間に連結する。
その結果、対象構造物が特定方向に振動運動すると、前記慣性接続要素と前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記慣性接続要素が相対変位し、並列接続された前記ダンパー要素が相対変位して振動エネルギーを吸収する。
【0008】
以下に、本発明の実施形態に係る免震装置を説明する。本発明は、以下に記載した実施形態のいずれか、またはそれらの中の二つ以上が組み合わされた態様を含む。
【0009】
また、本発明の実施形態に係る免震装置は、前記バネ要素の弾性係数kbと前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比ω/ωnを横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記ダンパー要素の前記減衰抵抗力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にし、前記応答倍率は、対象構造物を強制加振させた際の加振力による対象構造物の静的変位と応答して振動した対象構造物の振幅との比である絶対応答倍率、支持体を強制加振した際の支持体の変位と応答して振動した対象構造物の変位との比である変位応答倍率、または支持体を強制加振した際の支持体の加速度と応答して振動した対象物の加速度との比である加速度応答倍率のうちのひとつである、ものとした。
上記本発明に係る実施形態の構成により、前記バネ要素の弾性係数kbと前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整して、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記ダンパー要素の前記減衰抵抗力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくする。
その結果、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなり、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
【0010】
さらに、本発明の実施形態に係る免震装置は、前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる様にした。
上記本発明に係る実施形態の構成により、前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる。
その結果、前記ダンパー要素が、適切な減衰係数cを持ち、前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の絶対変位に対応する振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
【0011】
また、本発明の実施形態に係る免震装置は、前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ−sqrt(1−4μ))/2μの90%から110%までの間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(31.095μ−12.041μ+2.581μ+0.038)×ωr×mrの90%から110%までの間の値、または、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ+sqrt(1−4μ))/2μの70%から160%までの間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(−18.558μ+4.880μ−0.717μ+0.612)×ωr×mrの70%から160%までの間の値、のうちのいっぽうであって、
ここで、
0<μ≦0.25、
μ=mr/m、
kは主架構の特定方位に沿った変位に係る弾性係数、mは対象構造物の主架構に支持される質量、
mrは前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量、
kbは前記バネ要素の弾性係数、
ωr=sqrt(kb/mr)、
sqrt(x)はxの平方根、であるものとした。
上記実施形態の構成により、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ−sqrt(1−4μ))/2μの90%から110%までの間の値であり、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(31.095μ−12.041μ+2.581μ+0.038)×ωr×mrの90%から110%までの間の値である。
または、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ+sqrt(1−4μ))/2μの70%から160%までの間の値であり、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(−18.558μ+4.880μ−0.717μ+0.612)×ωr×mrの70%から160%までの間の値である。
その結果、前記バネ要素の弾性係数kbと前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整して、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の変位応答倍率を縦軸としたとき、前記変位応答倍率を示す線の上で前記ダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなり、変位応答倍率が1つの定点での値を越えないので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記変位応答倍率が略等しくなり、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
【0012】
また、本発明の実施形態に係る免震装置は、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(2μ−1+sqrt(1−2μ))/(1−2μ)の90%から110%までの間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(4.436μ−3.619μ+1.729μ+0.056)×ωr×mrの90%から110%までの間の値であって、
ここで、
0<μ≦0.5、
μ=mr/m、
kは主架構の特定方位に沿った変位に係る弾性係数、
mは対象構造物の質量、
mrは前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量、
kbは前記バネ要素の弾性係数、
ωr=sqrt(kb/mr)、
sqrt(x)はxの平方根、
であるものとした。
上記実施形態の構成により、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(2μ−1+sqrt(1−2μ))/(1−2μ)の90%から110%までの間の値であり、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(4.436μ−3.619μ+1.729μ+0.056)×ωr×mrの90%から110%までの間の値である。
その結果、前記バネ要素の弾性係数kbと前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整して、
加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の加速度応答倍率を縦軸としたとき、前記加速度応答倍率を示す線の上で前記ダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなり、加速度応答倍率が2つの定点での値を越えないので、
2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記加速度応答倍率が略等しくなり、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る支持体を基礎として主架構に支持される対象構造物の特定方向の変位を免震する免震装置を、雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と該回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体との隙間に封入された粘性流体とを有する粘性マスダンパーと、弾性体と該弾性体を間に挟んだ第一部材と第二部材とを有するバネ要素と、を備え、前記直動軸の直動方向と特定方向とが略一致し、前記粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の一方を支持体又は対象構造物の一方に連結し、前記粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の他方を前記バネ要素の第一部材に連結し、前記バネ要素の第二部材を支持体又は対象構造物の他方に連結する、のとした。
【0014】
本発明の構成により、前記粘性マスダンパーが、雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体のとの隙間に封入された粘性流体とを有する。前記バネ要素が、弾性体と該弾性体を間に挟んだ第一部材と第二部材とを有する。前記粘性マスダンパーのフレームを支持体又は対象構造物の一方に連結する。前記粘性マスダンパーの直動軸と前記バネ要素の第一部材とを連結する。前記バネ要素の第二部材を支持体又は対象構造物の他方に連結する。
その結果、対象構造物が特定方向に振動運動すると、前記粘性マスダンパーと前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記直動軸が直動方向に相対変位して前記回転体が回転し、前記粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
【0015】
以下に、本発明の実施形態に係る免震装置を説明する。本発明は、以下に記載した実施形態のいずれか、またはそれらの中の二つ以上が組み合わされた態様を含む。
【0016】
本発明の実施形態に係る免震装置は、前記バネ要素を直動方向に相対距離だけ変位させた際に発生する反力を前記相対距離で割った値である弾性係数kbと前記粘性マスダンパーの前記直動軸を直動方向に所定の相対加速度で直動させたさいに前記直動方向に作用する反力を前記相対加速度で割った値であるみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比ω/ωnを横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記粘性マスダンパーの前記直動軸を一定に相対速度で直動させた際に前記直動方向に作用する反力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にし、前記応答倍率は、対象構造物を強制加振させた際の加振力による対象構造物の静的変位と応答して振動した対象構造物の振幅との比である絶対応答倍率、支持体を強制加振した際の支持体の変位と応答して振動した対象構造物の変位との比である前記変位応答該率、または支持体を強制加振した際の支持体の加速度と応答して振動した対象物の加速度との比である前記加速度応答倍率のうちのひとつである。
上記実施形態の構成により、前記バネ要素を直動方向に相対距離だけ変位させた際に発生する反力を前記相対距離で割った値である弾性係数kbと前記粘性マスダンパーの前記直動軸を直動方向に所定の相対加速度で直動させたさいに前記直動方向に作用する反力を前記相対加速度で割った値であるみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整する。加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の絶対応答倍率、相対変位応答倍率、または加速度応答倍率のうちのひとつの応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記粘性マスダンパーの前記直動軸を相対速度で直動させた際に前記直動方向に作用する反力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる。
その結果、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記粘性マスダンパーの慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなり、前記前記粘性マスダンパーが前記フレームと前記直動軸との相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
【0017】
さらに、本発明の実施形態に係る免震装置は、前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる様にした。
上記実施形態の構成により、前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる。
その結果、前記粘性マスダンパーが、適切な減衰係数cを持ち、前記フレームと前記直同軸の相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の絶対変位に対応する振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
【0018】
上記目的を達成するため、本発明に係る対象構造物の特定方向の相対変形伴う振動を制振する制振装置を、特定方向の相対変位を回転体の回転量に変換する慣性接続要素と、特定方向の相対変位に対応して特定方向にそって作用する弾性反力を発生するバネ要素と、特定方向の相対速度に対応して特定方向にそって作用する減衰抵抗力を発生するダンパー要素と、
を備え、前記慣性接続要素と前記ダンパー要素とを並列接続した系と前記バネ要素とを直列接続した系であるバネ付き粘性マスダンパーが対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の間に連結される、ものとした。
【0019】
上記本発明の構成により、前記慣性接続要素が、特定方向の相対変位を回転体の回転量に変換する。前記バネ要素が、特定方向の相対変位に対応して特定方向にそって作用する弾性反力を発生する。前記ダンパー要素が、特定方向の相対速度に対応して特定方向にそって作用する減衰抵抗力を発生する。前記慣性接続要素と前記ダンパー要素とを並列接続した系と前記バネ要素とを直列接続した系であるバネ付き粘性マスダンパーが、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所に連結される。
その結果、対象構造物が特定方向に相対運動するモードで振動すると、前記慣性接続要素と前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記慣性接続要素の相対変位し、並列接続された前記ダンパー要素が相対変位して振動エネルギーを吸収する。
【0020】
以下に、本発明の実施形態に係る制振装置を説明する。本発明は、以下に記載した実施形態のいずれか、またはそれらの中の二つ以上が組み合わされた態様を含む。
【0021】
本発明の実施形態に係る制振装置は、前記バネ要素の弾性係数kbと前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記ダンパー要素の前記減衰抵抗力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にし、前記応答倍率は、対象構造物の一方の前記箇所を強制加振させた際の加振力による対象構造物の一方の前記箇所の静的変位と応答して振動した対象構造物の一方の前記箇所の振幅の比である絶対応答倍率、対象構造物の一方の前記箇所を強制加振した際の一方の前記箇所の変位と応答して振動した対象構造物の他方の前記箇所の変位との比である記変位応答倍率、または対象構造物の一方の前記箇所を強制加振した際の対象構造物の一方の前記箇所の加速度と応答して振動した対象構造物の他方の前記箇所の加速度との比である加速度応答倍率のうちのひとつである。
【0022】
上記実施形態の構成により、前記バネ要素の弾性係数kbと前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整する。加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の絶対応答倍率、相対変位応答倍率、または加速度応答倍率のうちのひとつの応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記ダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる。
その結果、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなり、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルを小さくできる。
【0023】
さらに、本発明の実施形態に係る制振装置は、 前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる様にした。
上記本発明の構成により、前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる。
その結果、前記ダンパー要素が、適切な減衰係数cを持ち、前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
【0024】
また、本発明の実施形態に係る制振装置は、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ−sqrt(1−4μ))/2μの90%から110%の間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(31.095μ−12.041μ+2.581μ+0.038)×ωr×mrの90%から110%の間の値、
または、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ+sqrt(1−4μ))/2μの70%から160%の間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(−18.558μ+4.880μ−0.717μ+0.612)×ωr×mrの70%から160%の間の値、
のうちのいっぽうであって、
ここで、
0<μ≦0.25、
μ=mr/m、
ωr=sqrt(kb/mr)
kは対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動をばねと質点との1質点系に模しときの該ばねの弾性係数、
mは前記1質点系の前記質点の質量、
mrは前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量、
kbは前記バネ要素の弾性係数、
sqrt(x)はxの平方根、
であるものとした。
上記実施形態の構成により、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ−sqrt(1−4μ))/2μの90%から110%の間の値であり、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(31.095μ−12.041μ+2.581μ+0.038)×ωr×mrの90%から110%の間の値である。
または、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ+sqrt(1−4μ))/2μの70%から160%の間の値であり、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(−18.558μ+4.880μ−0.717μ+0.612)×ωr×mrの70%から160%の間の値である。
その結果、前記バネ要素の弾性係数kbと前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整して、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の変位応答倍率を縦軸としたとき、前記変位応答倍率を示す線の上で前記ダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなるので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記変位応答倍率が略等しくなり、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った変位相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルを小さくすることをできる。
【0025】
本発明の実施形態に係る制振装置は、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(2μ−1+sqrt(1−2μ))/(1−2μ)の90%から110%までの間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(4.436μ−3.619μ+1.729μ+0.056)×ωr×mrの90%から110%までの間の値であって、
ここで、
0<μ≦0.5、
μ=mr/m、
ωr=sqrt(kb/mr)、
kは対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動をばねと質点との1質点系に模しときの該ばねの弾性係数、
mは前記1質点系の前記質点の質量、
mrは前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量、
kbは前記バネ要素の弾性係数、
sqrt(x)はxの平方根、
であるものとした。
上記実施形態の構成により、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(2μ−1+sqrt(1−2μ))/(1−2μ)の90%から110%までの間の値であり、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(4.436μ−3.619μ+1.729μ+0.056)×ωr×mrの90%から110%までの間の値である。
その結果、前記バネ要素の弾性係数kbと前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整して、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の加速度応答倍率を縦軸としたとき、前記加速度応答倍率を示す線の上で前記ダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなるので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記加速度応答倍率が略等しくなり、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルを小さくすることをできる。
【0026】
上記目的を達成するため、本発明に係る対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動を制振する制振装置を、雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と該回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体との隙間に封入された粘性流体とを有する粘性マスダンパーと、弾性体と該弾性体を間に挟んだ第一部材と第二部材とを有するバネ要素と、を備え、対象構造物が特定方向に離間した一対の取付部を有し、前記直動軸の直動方向と特定方向とが略一致し、前記粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の一方を一対の前記取付部の一方に連結し、前記粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の他方を前記バネ要素の前記第一部材に連結し、前記バネ要素の前記第二部材を一対の前記取付部の他方に連結する、ものとした。
【0027】
上記本発明の構成により、前記粘性マスダンパーが、雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と該回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体との隙間に封入された粘性流体とを有する。前記バネ要素が、弾性体と該弾性体を間に挟んだ第一部材と第二部材とを有する。前記粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の一方を一対の前記取付部の一方に連結する。前記粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の他方を前記バネ要素の第一部材に連結する。前記バネ要素の第二部材を一対の前記取付部の他方に連結する、
その結果、対象構造物が特定方向に相対運動するモードで振動すると、前記粘性マスダンパーと前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記直動軸が直動方向に相対変位して前記回転体が回転し、前記粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
【0028】
上記目的を達成するため、本発明に係る対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動を制振する制振装置を、雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体との隙間に封入された粘性流体とを有する粘性マスダンパーと、特定方向に交差する方向に延びた板材を有するバネ要素と、を備え、対象構造物が離間した一対の取付部を有し、前記直動軸の直動方向と特定方向とが略一致し、前記バネ要素の前記板材の一端が一対の前記取付部の一方に固定され、前記粘性マスダンパーのフレーム又は直動軸の一方が前記バネ要素の前記板材の他端に連結され、前記粘性マスダンパーのフレーム又は直動軸の他方が対象構造物の一対の前記取付部の他方に連結し、一対の前記取付部の他方が前記板材の他端から特定方向に離間した位置にある、ものとした。
【0029】
上記本発明の構成により、前記粘性マスダンパーが、雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体の隙間に封入された粘性流体とを有する。バネ要素が特定方向に交差する方向に延びた板材を有する。前記バネ要素の前記板材の一端が一対の前記取付部の一方に固定される。前記粘性マスダンパーのフレーム又は直動軸の一方が前記バネ要素の前記板材の他端に連結される。前記粘性マスダンパーのフレーム又は直動軸の他方が対象構造物の一対の前記取付部の他方に連結する。
その結果、対象構造物が特定方向に相対運動するモードで振動すると、前記粘性マスダンパーと前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記直動軸が直動方向に相対変位して前記回転体が回転し、前記粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
【0030】
上記目的を達成するため、本発明に係る対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動を制振する制振装置を、雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体の外面との間に封入された粘性流体とを有する粘性マスダンパーと、弾性体と該弾性体を間に挟んだ第一部材と第二部材とを有するバネ要素と、を備え、対象構造物が特定方向に離間した一対の取付部を有し、前記直動軸の直動方向と特定方向とが略一致し、前記バネ要素の前記第二部材を一対の前記取付部の一方に連結し、前記バネ要素の前記第一部材を前記粘性マスダンパーのフレームに連結し、前記粘性マスダンパーの直動軸の一方の端部を一対の前記取付部の他方に連結し、前記粘性マスダンパーの直動軸の他方の端部を対象構造物の一対の前記取付部の一方を挟んで他方の反対側に連結する、ものとした。
【0031】
上記本発明の構成により、前記粘性マスダンパーが、雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体の外面との間に封入された粘性流体とを有する。バネ要素が、弾性体と該弾性体を間に挟んだ第一部材と第二部材とを有する。前記バネ要素の前記第一部材を一対の前記取付部の一方に連結する。前記バネ要素の前記第二部材を前記粘性マスダンパーのフレームに連結する。前記粘性マスダンパーの直動軸の一方の端部を一対の前記取付部の他方に連結する。前記粘性マスダンパーの直動軸の他方の端部を対象構造物の一対の前記取付部の一方を挟んで他方の反対側に連結する。
その結果、対象構造物が特定方向に相対運動するモードで振動すると、前記粘性マスダンパーと前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記直動軸が直動方向に相対変位して前記回転体が回転し、前記粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
【0032】
以下に、本発明の実施形態に係る制振装置を説明する。本発明は、以下に記載した実施形態のいずれか、またはそれらの中の二つ以上が組み合わされた態様を含む。
【0033】
本発明の実施形態にかかる制振装置は、前記バネ要素を特定方向に相対距離だけ変位させた際に発生する反力を前記相対距離で割った値である弾性係数kbと前記粘性マスダンパーの前記直動軸を直動方向に所定の相対加速度で直動させたさいに前記直動方向に作用する反力を前記相対加速度で割った値であるみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記粘性マスダンパーの前記直動軸を一定の相対速度で直動させた際に前記直動方向に作用する反力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にし、前記応答倍率は、対象構造物の一方の前記取付部を強制加振させた際の加振力による対象構造物の一方の前記取付部の静的変位と応答して振動した対象構造物の一方の前記取付部の振幅の比である絶対応答倍率、対象構造物の一方の前記取付部を強制加振した際の一方の前記取付部の変位と応答して振動した対象構造物の他方の前記取付部の変位との比である変位応答倍率、または対象構造物の一方の前記取付部を強制加振した際の対象構造物の一方の前記取付部の加速度と応答して振動した対象構造物の他方の前記取付部の加速度との比である加速度応答倍率のうちのひとつである。
【0034】
前記バネ要素を直動方向に相対距離だけ変位させた際に発生する反力を前記相対距離で割った値である弾性係数kbと前記粘性マスダンパーの前記直動軸を直動方向に所定の相対加速度で直動させたさいに前記直動方向に作用する反力を前記相対加速度で割った値であるみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整する。加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の絶対応答倍率、相対変位応答倍率、または加速度応答倍率のうちのひとつの応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記粘性マスダンパーの前記直動軸を相対速度で直動させた際に前記直動方向に作用する反力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる。
その結果、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記粘性マスダンパーの慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなり、前記前記粘性マスダンパーが前記フレームと前記直動軸との相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の特定方向に離間する一対の取付部の相対的な振動応答のレベルを小さくすることをできる。
【0035】
さらに、本発明の実施形態に係る制振装置は、 前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる様にした。
上記実施形態の構成により、前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる。
その結果、前記粘性マスダンパーが、適切な減衰係数cを持ち、前記フレームと前記直同軸の相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の絶対変位に対応する振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、対象構造物の特定方向に離間する一対の取付部の相対的な振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、本発明に係る免震装置は、その構成により、以下の効果を有する。
相対変位を回転量に変換する慣性接続要素と減衰抵抗力を発生するダンパー要素とを並列接続した系と弾性反力を発生するバネ要素とを直列接続したバネ付き粘性マスダンパーが支持体と対象構造物とを連結する様にしたので、対象構造物が振動運動すると、前記慣性接続要素と前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記慣性接続要素が相対変位し、並列接続された前記ダンパー要素が相対変位して振動エネルギーを吸収する。
また、バネ付き粘性マスダンパーの諸元を対象構造物の振動特性に対応させて設定し、対象構造物の応答倍率を最適化し、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなる様にしたので、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に略極大になる様にしたので、前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の絶対変位に対応する振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
また、バネ要素の弾性係数kbを質量比μと主架構の弾性係数kから求め、ダンパー要素の減衰係数cを質量比μと慣性接続要素のみかけの慣性質量mrとバネ付き粘性マスダンパーの固有振動数ωrとから求めて、対象構造物の変位応答倍率を最適化する様にしたので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなり、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、また、バネ要素の弾性係数kbを質量比μと主架構の弾性係数kから求め、ダンパー要素の減衰係数cを質量比μと慣性接続要素のみかけの慣性質量mrとバネ付き粘性マスダンパーの固有振動数ωrとから求めて、対象構造物の加速度応答倍率を最適化する様にしたので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなり、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、直動軸の雄ねじに嵌め合った回転体を回転自在に支持してフレームと回転体との間に粘性流体を封入した粘性マスダンパーと弾性体でできたバネ要素とを直接接続したバネ付き粘性マスダンパーが支持体と対象構造物とを連結する様にしたので、対象構造物が特定方向に振動運動すると、前記粘性マスダンパーと前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記直動軸が直動方向に相対変位して前記回転体が回転し、前記粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
また、バネ付き粘性マスダンパーの諸元を対象構造物の振動特性に対応させて設定し、対象構造物の応答倍率を最適化し、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記粘性マスダンパーの慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなり、前記前記粘性マスダンパーが前記フレームと前記直動軸との相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に略極大になる様にしたので、前記フレームと前記直同軸の相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の絶対変位に対応する振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
【0037】
以上説明したように、本発明に係る制振装置は、その構成により、以下の効果を有する。
相対変位を回転量に変換する慣性接続要素と減衰抵抗力を発生するダンパー要素とを並列接続した系と弾性反力を発生するバネ要素とを直列接続したバネ付き粘性マスダンパーが対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所を連結したので、対象構造物が特定方向に相対運動するモードで振動すると、前記慣性接続要素と前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記慣性接続要素の相対変位し、並列接続された前記ダンパー要素が相対変位して振動エネルギーを吸収する。
また、バネ付き粘性マスダンパーの諸元を対象構造物の振動特性に対応させて設定し、対象構造物の応答倍率を最適化し、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなる様にしたので、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルを小さくできる。
また、前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に略極大になる様にしたので、前記ダンパー要素が、適切な減衰係数cを持ち、前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
また、バネ要素の弾性係数kbを質量比μと主架構の弾性係数kから求め、ダンパー要素の減衰係数cを質量比μと慣性接続要素のみかけの慣性質量mrとバネ付き粘性マスダンパーの固有振動数ωrとから求めて、対象構造物の変位応答倍率を最適化する様にしたので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなり、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、バネ要素の弾性係数kbを質量比μと主架構の弾性係数kから求め、ダンパー要素の減衰係数cを質量比μと慣性接続要素のみかけの慣性質量mrとバネ付き粘性マスダンパーの固有振動数ωrとから求めて、対象構造物の加速度応答倍率を最適化する様にしたので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなり、前記ダンパー要素が前記慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、直動軸の雄ねじに嵌め合った回転体を回転自在に支持してフレームと回転体との間に粘性流体を封入した粘性マスダンパーと弾性体でできたバネ要素とを直接接続したバネ付き粘性マスダンパーが対象構造物の特定方向に離間する一対の取付部に連結する様にしたので、対象構造物が特定方向に相対運動するモードで振動すると、前記粘性マスダンパーと前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記直動軸が直動方向に相対変位して前記回転体が回転し、前記粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
また、直動軸の雄ねじに嵌め合った回転体を回転自在に支持してフレームと回転体との間に粘性流体を封入した粘性マスダンパーと板材でできたバネ要素とを直接接続したバネ付き粘性マスダンパーが対象構造物の特定方向に離間する一対の取付部に連結する様にしたので、対象構造物が特定方向に相対運動するモードで振動すると、前記粘性マスダンパーと前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記直動軸が直動方向に相対変位して前記回転体が回転し、前記粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
また、直動軸の雄ねじに嵌め合った回転体を回転自在に支持してフレームと回転体との間に粘性流体を封入した粘性マスダンパーをバネ要素を解して対象構造物に連結し、直動軸の両端を対象構造物の他の取付部の連結する様にし、連結した取付部が特定方向に並んでいる様にしたので、対象構造物が特定方向に相対運動するモードで振動すると、前記粘性マスダンパーと前記バネ要素とで構成される振動系が連成振動し、前記直動軸が直動方向に相対変位して前記回転体が回転し、前記粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
また、バネ付き粘性マスダンパーの諸元を対象構造物の振動特性に対応させて設定し、対象構造物の応答倍率を最適化し、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、前記バネ要素の弾性係数Kbと前記粘性マスダンパーの慣性質量mrとで定まる前記応答倍率が略等しくなり、前記前記粘性マスダンパーが前記フレームと前記直動軸との相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、象構造物の特定方向に離間する一対の取付部の相対的な振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に略極大になる様にしたので、前記フレームと前記直同軸の相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の絶対変位に対応する振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、支持体を基礎とする象構造物の特定方向に離間する一対の取付部の相対的な振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
従って、簡易な構造により所望の免震性能または制振性能を発揮できる装置とその装置を構成する要素の諸元を容易に設定できる免震装置と制振装置とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
説明の便宜のために、地震の加速度が建物を揺する場合を例に、説明する。
【0039】
最初に、本発明の第一の実施形態に係る免震装置を、図を基に、説明する
図1は、本発明の第一または第四の実施形態に係る免震装置・制振装置の概念図である。
【0040】
免震装置は、支持体5を基礎として主架構20に支持される対象構造物10の特定方向の変位を免震する装置である。
例えば、主架構20は複数の樹脂製板材を積層したものである。
免震装置は、慣性接続要素30とバネ要素40とダンパー要素50とで構成され、慣性接続要素30とダンパー要素50とを並列接続した系とバネ要素40とを直列接続した系が支持体と対象構造物との間に連結される。
便宜上、慣性接続要素30とダンパー要素50とを並列接続した系を粘性マスダンパーと呼称し、その粘性マスダンパーとバネ要素40とを直列接続した系をバネ付き粘性マスダンパーと呼称する。
例えば、バネ付き粘性マスダンパーは、支持体と対象構造物との間に置かれ、支持体と対象構造物とに両端部を直列に連結される。
【0041】
慣性接続要素30は、特定方向の相対変位を回転体の回転量に変換する要素である。
例えば、慣性接続要素30は特定方向の相対変位を螺旋構造により回転体の回転量に変換する。例えば、回転体が所定の回転慣性能率をもつときに、慣性接続要素は特定方向の相対加速度に比例して回転慣性能率に対応した慣性力を発生する。
バネ要素40は、特定方向の相対変位に対応して特定方向にそった弾性反力を発生する要素である。例えば、バネ要素40が所定の弾性係数をもつときに、バネ要素40は相対変位に比例して弾性係数に対応した弾性力を発生する。
ダンパー要素50は、特定方向の相対速度に対応して減衰抵抗力を発生する要素である。例えば、ダンパー要素50が所定の減衰係数cをもつときに、ダンパー要素50は、相対速度に比例して減衰係数に対応した減衰力を発生する。
【0042】
以下に、免震装置の諸元を決定する方法を説明する。
バネ要素の弾性係数kbと慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比ωr/ωnを調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、応答倍率を示す線の上でダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にする。
ここで、応答倍率は、対象構造物を強制加振させた際の加振力による対象構造物の静的変位と応答して振動した対象構造物の振幅との比である絶対応答倍率、支持体を強制加振した際の支持体の変位と応答して振動した対象構造物の変位との比である変位応答倍率、または支持体を強制加振した際の支持体の加速度と応答して振動した対象物の加速度との比である加速度応答倍率のうちのひとつである。
【0043】
上記の方法により諸元を求める手順は以下の通りである。
免震装置と主架構と対象構造物とで構成される構造を質点モデルして表す。
質点モデルを運動方程式を作成する。
応答倍率が絶対応答倍率である場合は、質点モデルの対象構造物に変位強制加振動を加える運動方程式を作成する。
応答倍率が変位応答倍率である場合は、質点モデルの主架構の端部に変位強制振動を加える運動方程式を作成する。
応答倍率が加速度応答倍率である場合は、質点モデルの主架構の端部に加速度強制振動を加える運動方程式を作成する。
運動方程式を解いて、応答倍率を求める方程式を作成する。
減衰係数c=0の応答倍率のカーブと減衰係数c=∞の応答倍率のカーブとの2つの交点P、Q求める。
カーブは、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたグラフに、描いた応答倍率である。
P点での応答倍率とQ点での応答倍率とを等しくする固有振動数ωrと固有振動数ωnとの比の値を決定する。
ωr/ωnの値から免震装置を構成する要素の諸元を決定する。
ωrは、バネ要素の弾性係数kbと慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数である。
ωnは、主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数である。
【0044】
対象構造物の変位を小さくしたいときには、応答倍率は変位応答倍率であるとよい。
対象構造物の加速度を小さくしたいときは、応答倍率は加速度応答倍率であるとよい。
【0045】
さらに、減衰係数cを調整し、2つの定点での値が各々に実質的に略極大になる様にする。例えば、減衰係数cはカーブがP点で極値をとる減衰係数cpとカーブがQ点で極値をとる減衰係数cqとの平均値である。
この様にすると、応答倍率が、定点での値を越えない。
【0046】
上記の方法により減衰係数を求める手順は、以下の通りである。
上記の手順により求めた諸元を代入された応答倍率の式を作成する。
P点を応答倍率の極値とする減衰係数cpを求める。
Q点を応答倍率の極値とする減衰係数cqを求める。
減衰係数cpと減衰係数cqとの平均値を、2つの定点での値が各々に略極大にする減衰係数cとして採用する。
平均値は、加算平均による値であっても、乗算平均による値であっても、その他の平均による値であってもよい。
【0047】
以下に、対象構造物の支持体に対する変位応答倍率を小さくすることを重視した諸元の決定方法を説明する。
バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ−sqrt(1−4μ))/2μの90%から110%までの間の値であって、
ダンパー要素の減衰係数cが2×(31.095μ−12.041μ+2.581μ+0.038)×ωr×mrの90%から110%までの間の値、または
バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ+sqrt(1−4μ))/2μの70%から160%までの間の値であって、
ダンパー要素の減衰係数cが2×(−18.558μ+4.880μ−0.717μ+0.612)×ωr×mrの70%から160%までの間の値のうちのひとつである。
ここで、
0<μ≦0.25、
μ=mr/m、
kは主架構20の特定方位に沿った変位に係る弾性係数、
mは対象構造物10の質量、
mrは慣性接続要素30の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量、
kbはバネ要素40の弾性係数、
ωr=sqrt(kb/mr)、
sqrt(x)はxの平方根、である。
【0048】
上記の弾性係数kbと減衰係数cとを決定する過程を、図を基に、説明する。
図15は、本発明の実施形態に係る振動数比・減衰定数−質量比のグラフ3である。
グラフ3は、対象構造物の変位応答倍率を小さくする様に最適化された振動数比βoptと質量比μとの関係、最適化された付加系6の減衰定数ζoptと質量比μとの関係を示す。
βopt=sqrt{(1−2μ−sqrt(1−4μ))/2μ}、
βopt=sqrt{(1−2μ+sqrt(1−4μ))/2μ}、
ζopt=31.095μ−12.041μ+2.581μ+0.038、
ζopt=−18.558μ+4.880μ−0.717μ+0.612、
最初に質量比μを決定する。但し、質量比は0.25を越えない。
図15に示す、振動数比・減衰定数−質量比のグラフから振動数比μに対応する最適化された振動数比βoptと最適化された減衰定数ζoptを決定する。
以下の式により、諸元を決定する
Kb=k×βopt×μ
c=2×ζopt×ωr×mr
【0049】
免震装置が上記の式を満足するバネ要素の弾性係数kbを持つと、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の変位応答倍率を縦軸としたとき、変位応答倍率を示す線の上でダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる。
さらに、免震装置が上記の式を満足するバネ要素の弾性係数kbと減衰係数cを持つと、2つの定点での値が各々に実質的に略極大になる。
従って、対象構造物の変位応答倍率を小さくすることをできる。
【0050】
以下に、対象構造物の支持体に対する加速度応答を小さくすることを重視した諸元の決定方法を説明する。
バネ要素の弾性係数kbがk×(2μ−1+sqrt(1−2μ))/(1−2μ)の90%から110%までの間の値であって、
ダンパー要素の減衰係数cが2×(4.436μ−3.619μ+1.729μ+0.056)×ωr/mrの90%から110%までの間の値である。
ここで、
0<μ≦0.5、
μ=mr/m、
kは主架構20の特定方位に沿った変位に係る弾性係数、
mは対象構造物10の質量
mrは慣性接続要素30の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量
kbはバネ要素40の弾性係数、
ωr=sqrt(kb/mr)
sqrt(x)はxの平方根、である。
【0051】
上記の弾性係数kbと減衰係数cとを決定する過程を図を基に、説明する。
図16は、本発明の実施形態に係る振動数比・減衰定数−質量比のグラフ4である。
グラフ4は、対象構造物の加速度応答倍率を小さくする様に最適化された振動数比βoptと質量比μとの関係、最適化された減衰定数ζoptと質量比μとの関係を示す。
βopt=sqrt{(2μ−1+sqrt(1−2μ))/μ(1−2μ)}、
ζopt=4.436μ−3.619μ+1.729μ+0.056、
最初に質量比μを決定する。但し、質量比は0.5を越えない。
図16に示す、振動数比・減衰定数−質量比のグラフから質量比μに対応する最適化された振動数比βoptと最適化された減衰定数ζoptを決定する。
以下の式により
以下の計算により
Kb=k×βopt×μ
c=2×ζopt×ωr×mr
【0052】
免震装置が上記の式を満足するバネ要素の弾性係数kbを持つと、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の加速度応答倍率を縦軸としたとき、加速度応答倍率を示す線の上でダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる。
さらに、免震装置が上記の式を満足するバネ要素の弾性係数kbと減衰係数cを持つと、2つの定点での値が各々に実質的に略極大になる。
従って、対象構造物の加速度応答倍率を小さくすることをできる。
【0053】
次に、本発明の第二の実施形態に係る免震装置を、図を基に、説明する。
図2は、本発明の第二の実施形態に係る免震装置の概念図である。
図12は、本発明の対象構造物の概念図である。
免震装置は、支持体を基礎として主架構に支持される対象構造物の特定方向の変位を免震する装置である。
免震装置は、粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300とで構成され、粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300とを直列接続した系が支持体と対象構造物とを連結する。
図12は、免震装置が、建物の基礎に設けられるのを示している。
【0054】
粘性マスダンパー100を、図を基に、説明する。
図10は、本発明の実施形態に係る粘性マスダンパーの断面図である。
図10は、粘性マスダンパーの構造の一例を示している。
粘性マスダンパー100は、直動軸120と回転体130とフレーム140と粘性流体150とで構成される。
【0055】
直動軸120は、雄ねじを設けられた軸体である。
直動軸120の両端のうち少なくとも1端は後述するフレーム140の外部へ露出する。
【0056】
回転体130は、雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた部材である。
回転体130は、ねじナット131と回転円筒132とで構成される。
ねじナット131は、後述するフレーム140に回転自在に支持され、雄ねじに嵌め合う雌ねじを設けられる。雄ねじと雌ねじとは、一列に並んだベアリング球を介して嵌め合っていてもよい。
回転円筒132は、後述するフレーム140に回転自在に支持された中空の円筒部材である。
ねじナット131と回転円筒132とは、各々の回転中心を一致させて連結される。
ねじナット131が回転すると、回転円筒132も回転する。
フレーム140は、回転体を回転自在に支持する部材であり、ねじナットフレーム141と回転円筒フレーム142と軸受143とで構成される。
ねじナットフレーム141は軸受143と介してねじナット131を回転自在に支持する。回転円筒フレーム142は、軸受143を介して回転円筒132を回転自在に支持する。
粘性流体150は、フレーム140の内面と該回転体との隙間に封入された液体である。
例えば、粘性流体150は、フレーム140の内面と該回転体の外周との隙間に封入される。
【0057】
粘性マスダンパー100は、本発明の第一の実施形態にかかる免震装置で説明した「慣性接続要素とダンパー要素とを並列接続した系」に相当する。
フレーム140と直動軸120との軸心の回りの回転を拘束した状態で、直動軸120を直動方向に相対変位させると、回転体130が雄ねじと雌ねじのねじの傾斜角に対応した回転角だけ回転する。
慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrは、直動軸を直動方向に所定の相対加速度で直動させたさいに直動方向に作用する反力を相対加速度で割った値であるみかけの慣性質量mrに一致する。
回転体130が回転する際に、回転円筒132と回転円筒フレーム142との隙間に封入された粘性流体150が、回転円筒に132に粘性力を作用させる。
ダンパー要素の特定方向の相対速度に対応して減衰抵抗力は、その粘性力により直動軸120の直動方向に作用する力に一致する。
ダンパー要素の減衰抵抗力を相対速度で割った値である減衰係数cは、粘性マスダンパーの直動軸120を相対速度で直動させた際に直動方向に作用する反力を相対速度で割った値である減衰係数cに一致する。
【0058】
バネ要素200は、弾性体210と弾性体を間に挟んだ第一部材220と第二部材230とを有する要素である。
図11は、本発明の実施形態に係るバネ要素の概念図である。
弾性体210は、弾性変形する要素である。
例えば、弾性体210は、剪断力を受けて弾性変形する柔軟材料性の板形状の部材である。
第一部材220は、フランジ221とフランジに固定された一対の弾性体支持部材222とで構成される。
第二部材230は、フランジ231とフランジに固定された弾性体支持部材232とで構成される。
弾性体支持部材222と弾性体支持部材232とが弾性体210を挟む。
第一部材220と第二部材230とが、互いに離間する方向へ移動すると、弾性体に剪断力が発生する。
バネ要素は、第一部材220と第二部材230とが互いに離間する方向を特定方向に一致させる。
【0059】
バネ要素200は、本発明の第一の実施形態にかかる免震装置で説明したバネ要素40に相当する。
バネ要素40の弾性係数kbは、バネ要素200を直動方向に相対距離だけ変位させた際に発生する反力を相対距離で割った値である弾性係数kbに一致する。
【0060】
クレビス300は、2つの機械要素の間に介在し、2つの要素を繋ぐ向きに直交する軸の回りに回転自在になった機械要素である。
例えば、クレビズ300は、粘性マスダンパー100のフレーム140と支持体5との間に介在する。
例えば、クレビス300は、粘性マスダンパー100の直動軸120とバネ要素200との間に介在する。
【0061】
以下に、バネ付き粘性マスダンパーの取り付け構造を説明する。
直動軸120の直動方向と特定方向とが略一致し、粘性マスダンパー100のフレーム140または直動軸120の一方を支持体5又は対象構造物10の一方に連結し、粘性マスダンパー100のフレーム140または直動軸120の他方をバネ要素の第一部材220に連結し、バネ要素200の第二部材230を支持体又は対象構造物の他方に連結する。
図2は、粘性マスダンパー100のフレーム140がクレビス300を介して支持体5に連結され、粘性マスダンパー100の直動軸120がクレビス300を介してバネ要素200の第一部材220に連結され、バネ要素200の第二部材230が対象構造物10の一取付部11に固定される。
支持体5は、対象構造物が設置される基礎から立ち上がった基礎の一部である。
対象構造物の一取付部は、対象構造物の底面かた下方に張りだした対象構造物の一部である。
【0062】
以下に、ばね付き粘性マスダンパーの諸元の設定方法につき、説明する。
バネ要素200を直動方向に相対距離だけ変位させた際に発生する反力を相対距離で割った値である弾性係数kbと粘性マスダンパーの直動軸120を直動方向に所定の相対加速度で直動させたさいに直動方向に作用する反力を相対加速度で割った値であるみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと主架構20と対象構造物10とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとω/ωnの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、応答倍率を示す線の上で粘性マスダンパーの直動軸を相対速度で直動させた際に直動方向に作用する反力を相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にする。
【0063】
ここで、応答倍率は、対象構造物を強制加振させた際の加振力による対象構造物の静的変位と応答して振動した対象構造物の振幅との比である絶対応答倍率、支持体を強制加振した際の支持体の変位と応答して振動した対象構造物の変位との比である変位応答該率、または支持体を強制加振した際の支持体の加速度と応答して振動した対象物の加速度との比である加速度応答倍率のうちのひとつである。
【0064】
減衰係数cを調整し、2つの定点での値が各々に実質的に略極大になる様にする。
【0065】
上記の粘性マスダンパーとバネ要素とで構成される振動系の固有振動数ωrと主架構20と対象構造物10とで構成される振動系の固有振動数ωnとを調整する方法を、図を基に、説明する。
図13は、本発明の第一の実施形態に係る振動数比−変位応答倍率のグラフ1である。
グラフ1は、横軸に振動数比ω/ωnをとり、縦軸に変位応答倍率をとった際の、支持体の特定方向の変位と対象構造物10の一取付部11の特定方向の変位の比を示している。
実線は、バネ付き粘性マスダンパーが上記の手法で設定され最適化された減衰係数cをもった場合の、変位応答倍率を示している。
破線は、バネ付き粘性マスダンパーが上記の手法で設定されるが減衰係数cがゼロではないが極めて小さな値である場合の、変位応答倍率を示している。
一点破線は、比較のために、バネ要素を除いた場合を示している。
P点、Q点が、2つの定点である。
主架構20と対象構造物10とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnは、加振実験により求めてよいし、地震時の対象構造物に設けた加速度計による特定方向の加速度データを解析して求めてもよいし、主架構の弾性係数kと対象構造物mの質量から固有振動数を求める数式を用いて演算により求めてもよい。
一般には、c=0の変位応答倍率のカーブとc=∞の変位応答倍率のカーブの交差する2つの定点P点とP点の値が等しく成るように、粘性マスダンパーとバネ要素の諸元を選定する。
カーブが2つの定点P1とP2とで実質的に極値をとる様に、減衰係数cを選定する。
例えば、減衰係数cはカーブがP点で極値をとる減衰係数cpとカーブがQ点で極値をとる減衰係数cqとの平均値である。
【0066】
図14は、本発明の実施形態に係る振動数比−加速度応答倍率のグラフ2である。
グラフ2は、横軸に振動数比ω/ωnをとり、縦軸に加速度応答倍率をとった際の、支持体の特定方向の加速度と対象構造物10の取付部11の特定方向の加速度の比を示している。
実線は、バネ付き粘性マスダンパーが上記の手法で設定され最適化された減衰係数cをもった場合の、加速度応答倍率を示している。
破線は、バネ付き粘性マスダンパーが上記の手法で設定されるが減衰係数cがゼロではないが極めて小さな値である場合の、加速度応答倍率を示している。
一点破線は、比較のために、バネ要素を除いた場合を示している。
P点、Q点が、2つの定点である。
主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnは、加振実験により求めてよいし、地震時の対象構造物に設けた加速度計による特定方向の加速度データを解析して求めてもよいし、主架構の弾性係数kと対象構造物mの質量から固有振動数を求める数式を用いて演算により求めてもよい。
一般には、c=0の加速度応答倍率のカーブとc=∞の加速度応答倍率のカーブの交差する2つの定点P1とP2の値が等しく成るように、粘性マスダンパーとバネ要素の諸元を選定する。
カーブが2つの定点P点とQ点とで実質的に極値をとる様に、減衰係数cを選定する。例えば、減衰係数cはカーブがP点で極値をとる減衰係数cpとカーブがQ点で極値をとる減衰係数cqとの平均値である。
【0067】
ばね付き粘性マスダンパーの諸元を求めるのに、本発明の第一の実施形態に係る免震装置で説明した様に、振動数比・減衰定数−質量比のグラフから質量比μに対応する最適化された振動数比βoptと最適化された減衰定数ζoptとを決定し、そのβoptとζoptから諸元を求めてもよい。
【0068】
次に、本発明の第三の実施形態に係る免震装置を、図を基に、説明する。
図3は、本発明の第三の実施形態に係る免震装置の概念図である。
免震装置は、支持体を基礎として主架構20に支持される対象構造物10の特定方向の変位を免震する装置である。
免震装置は、粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300とで構成され、粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300とを直列接続した系が支持体と対象構造物とを連結する。
【0069】
粘性マスダンパー100は、リニアガイド110と直動軸120と回転体130とフレーム140と粘性流体150とで構成される。
図10はリニアガイド110の付いていない粘性マスダンパー100を示している。
リニアガイド110はオプションであり、直動軸120の軸心回りの回転を拘束する機械要素である。
例えば、リニアガイド110は、フレーム140に固定され、直動軸120の側面に長手方向に沿って設けられた溝または突起に噛みあい、直動軸120の軸心回りの回転を拘束しつつ、長手方向への移動を許容する。
【0070】
直動軸120と回転体130とフレーム140と粘性流体150の構造は、第二の実施形態にかかる免震装置のものと同じなので、説明を省略する。
【0071】
バネ要素200は、弾性体210と弾性体を間に挟んだ第一部材220と第二部材230とを有する要素である。
バネ要素200は、第二の実施形態に係る免震装置で説明したものでもよいし、他の形式のものでよい。
以下では、他の形式のものを説明する。
弾性体210は、弾性変形する要素である。
例えば、弾性体210は、特定方向に延びたコイルスプリング(図示せず)である。
第一部材220は、フランジ221とフランジに固定された一対の弾性体支持部材222とで構成される。
第二部材230は、フランジ231とフランジに固定された弾性体支持部材232とで構成される。
弾性体支持部材222と弾性体支持部材232とがコイルスプリングを挟む。
第一部材220と第二部材230とが、互いに離間する方向へ移動すると、コイルスプリングが撓む。
バネ要素は、第一部材220と第二部材230とが互いに離間する方向を特定方向に一致させる。
【0072】
クレビス300は、本発明の第二の実施形態に係る免震装置のものと同じなので、説明を省略する。
【0073】
第三の実施形態にかかる免震装置の使用方法と諸元の設定方法は、第二の実施形態に係る免震装置の場合と同じなので、説明を省略する。
【0074】
次に、本発明の第四の実施形態に係る制振装置を、図を基に、説明する。
図1は、本発明の第一または第四の実施形態に係る免震装置・制振装置の概念図である。
【0075】
制振装置は、対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動を制振する装置である。
例えば、制振装置は、対象構造物の特定方向に離間した一対の取付部の間に設置され、一対の取付部に連結されて、対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動の振動エネルギーを吸収し、制振する。
制振装置は、慣性接続要素30とバネ要素40とダンパー要素50とで構成される。慣性接続要素30とダンパー要素50とを並列接続した系とバネ要素40とを直列接続した系が対象構造物の特定方向に離間する一対の取付部に連結される。
便宜上、慣性接続要素30とダンパー要素50とを並列接続した系を粘性マスダンパーと呼称し、その粘性マスダンパーとバネ要素40とを直列接続した系をバネ付き粘性マスダンパーと呼称する。
例えば、バネ付き粘性マスダンパーを対象構造物の特定方向に離間する一対の取付部の間に置かれ、一対の取付部に両端部を直列に連結される。
【0076】
バネ付き粘性マスダンパーの構造は、本発明の第一の実施形態にかかる免震装置のものと同じなので、説明を省略する。
【0077】
以下に、制振装置の諸元を決定する方法を説明する。
バネ要素の弾性係数kbと慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、応答倍率を示す線の上でダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にする。
ここで、応答倍率は、対象構造物の一方の箇所を強制加振させた際の加振力による対象構造物の一方の箇所の静的変位と応答して振動した対象構造物の一方の箇所の振幅の比である絶対応答倍率、対象構造物の一方の箇所を強制加振した際の一方の箇所の変位と応答して振動した対象構造物の他方の箇所の変位との比である変位応答該率、または対象構造物の一方の箇所を強制加振した際の対象構造物の一方の箇所の加速度と応答して振動した対象構造物の他方の箇所の加速度との比である加速度応答倍率のうちのひとつである。
【0078】
上記の方法により諸元を求める手順は以下の通りである。
対象構造物の制振装置を取り付けた箇所を、対象構造物の特定方向に変位する振動モードとその固有振動数ωnから1質点系にモデル化する。
免震装置と対象構造物とで構成される構造を質点モデルして表す。
質点モデルを運動方程式を作成する。
応答倍率が絶対応答倍率である場合は、質点モデルの対象構造物に変位強制加振動を加える運動方程式を作成する。
応答倍率が変位応答倍率である場合は、質点モデルの主架構の端部に変位強制振動を加える運動方程式を作成する。
応答倍率が加速度応答倍率である場合は、質点モデルの主架構の端部に加速度強制振動を加える運動方程式を作成する。
運動方程式を解いて、応答倍率を求める方程式を作成する。
減衰係数c=0の応答倍率のカーブと減衰係数c=∞の応答倍率のカーブとの2つの交点P、Q求める。
カーブは、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたグラフに描かれた応答倍率である。
P点での応答倍率とQ点での応答倍率とを等しくする様に、固有振動数ωrと固有振動数ωnとの比の値を決定する。
ωr/ωnの値から免震装置を構成する要素の諸元を決定する。
ωrは、バネ要素の弾性係数kbと慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数である。
ωnは、対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数である。
【0079】
対象構造物の変位応答を小さくしたいときには、応答倍率は変位応答倍率であるとよい。
対象構造物の加速度応答を小さくしたいときは、応答倍率は加速度応答倍率であるという。
【0080】
さらに、減衰係数cを調整し、2つの定点での値が各々に実質的に略極大になる様にする。例えば、減衰係数cはカーブがP点で極値をとる減衰係数cpとカーブがQ点で極値をとる減衰係数cqとの平均値である。
【0081】
上記の方法により減衰係数を求める手順は以下の通りである。
上記の手順により求めた諸元を代入された応答倍率の式を作成する。
P点を応答倍率の極値とする減衰係数cpを求める。
Q点を応答倍率の極値とする減衰係数cqを求める。
減衰係数cpと減衰係数cqとの平均値を、2つの定点での値が各々に略極大にする減衰係数cとして採用する。
平均値は、加算平均による値であっても、乗算平均による値であっても、その他の平均による値であってもよい。
この様にすると、応答倍率が、2つの定点での値を実質的に越えない。
【0082】
以下に、対象構造物の一対の箇所の特定方向の変位応答を小さくすることを重視した諸元の決定方法を説明する。
バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ−sqrt(1−4μ))/2μの90%から110%までの間の値であって、
ダンパー要素の減衰係数cが2×(31.095μ−12.041μ+2.581μ+0.038)×ωr×mrの90%から110%までの間の値、または
バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ+sqrt(1−4μ))/2μの70%から160%までの間の値であって、
ダンパー要素の減衰係数cが2×(−18.558μ+4.880μ−0.717μ+0.612)×ωr×mrの70%から160%までの間の値のうちのひとつであってもよい。
ここで、
0<μ≦0.25、
μ=mr/m、
ωr=sqrt(kb/mr)
kは対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動をばねと質点との1質点系に模しときの該ばねの弾性係数、
mは前記1質点系の前記質点の質量、
mrは慣性接続要素30の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量
kbはバネ要素40の弾性係数、
sqrt(x)はxの平方根、である。
この様にすると、対象構造物の変位応答倍率を小さくすることをできる。
【0083】
上記の弾性係数kbと減衰係数cとを決定する過程は、本発明の第一の実施形態に係る免震装置のものと同じなので、説明を省略する。
対象構造物の弾性係数kと質量mは、対象構造物の一対の箇所の特定方向の振動を質量とばねで構成される1質点系に模したときのばねの弾性係数と質点の質量とである。
ここで、対象構造物の質量mを求めるのに、対象構造物の設計データを用いて演算により求めてもよい。
【0084】
免震装置が上記の式を満足するバネ要素の弾性係数kbを持つと、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の特定方向に離間した一対の箇所の変位応答倍率を縦軸としたとき、変位応答倍率を示す線の上でダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる。
さらに、免震装置が上記の式を満足するバネ要素の弾性係数kbと減衰係数cを持つと、2つの定点での値が各々に実質的に略極大になる。
従って、対象構造物の変位応答倍率を小さくすることをできる。
【0085】
以下に、対象構造物の支持体に対する加速度応答を小さくすることを重視した諸元の決定方法を説明する。
バネ要素の弾性係数kbがk×(2μ−1+sqrt(1−2μ))/(1−2μ)の90%から110%までの間の値であって、
ダンパー要素の減衰係数cが2×(4.436μ−3.619μ+1.729μ+0.056)×ωr×mrの90%から110%までの間の値であってもよい。
ここで、
0<μ≦0.5、
μ=mr/m、
ωr=sqrt(kb/mr)、
kは対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動をばねと質点との1質点系に模しときの該ばねの弾性係数、
mは前記1質点系の前記質点の質量、
mrは慣性接続要素30の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量
kbはバネ要素40の弾性係数、
sqrt(x)はxの平方根である。
この様にすると、対象構造物の加速度応答倍率を小さくすることをできる。
【0086】
上記の弾性係数kbと減衰係数cとを決定する過程は、本発明の第一の実施形態に係る免震装置のものと同じなので、説明を省略する。
【0087】
免震装置が上記の式を満足するバネ要素の弾性係数kbを持つと、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の加速度応答倍率を縦軸としたとき、加速度応答倍率を示す線の上でダンパー要素の減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる。
さらに、免震装置が上記の式を満足するバネ要素の弾性係数kbと減衰係数cを持つと、2つの定点での値が各々に実質的に略極大になる。
従って、対象構造物の加速度応答倍率を小さくすることをできる。
【0088】
次に、本発明の第五の実施形態に係る制振装置を、図を基に、説明する。
図4は、本発明の第五の実施形態に係る制振装置の概念図である。
図12は、本発明の対象構造物の概念図である。
制振装置は、対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動を制振する装置である。
制振装置は、粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300とで構成され、粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300とを直列接続した系が対象構造物の一対の取付部を連結する。
図12は、制振装置が、建物の3階に設けられるのを示している。
【0089】
粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300の構造は、本発明の第二の実施態様に係る免震装置で使用したものと同じなので、説明を省略する。
【0090】
以下に、バネ付き粘性マスダンパーの取り付け構造を説明する。
対象構造物が特定方向に離間した一対の取付部12,13を有し、
直動軸の直動方向と特定方向とが略一致し、
粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の一方を一対の取付部の一方に連結し、
粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の他方をバネ要素の第一部材に連結し、
バネ要素の第二部材を一対の取付部の他方に連結する。
図4は、粘性マスダンパー100のフレーム140がクレビス300を介して対象構造物の一対の取付部の一方の取付部12に連結され、粘性マスダンパー100の直動軸120がバネ要素200の第一部材220に連結され、バネ要素の第二部材230が対象構造物10の他の取付部13に固定される。
対象構造物の一方の取付部12は、対象構造物の梁材に固定された取り付け座である。
対象構造物の他方の取付部13は、対象物の梁材の2箇所から斜めに突き出た一対の斜材の下端の交点である。
バネ付き粘性マスダンパーを取り付ける向きは反対であっても良い。
【0091】
以下に、バネ付き粘性マスダンパーの諸元の設定方法につき、説明する。
バネ要素を特定方向に相対距離だけ変位させた際に発生する反力を相対距離で割った値である弾性係数kbと粘性マスダンパーの直動軸を直動方向に所定の相対加速度で直動させたさいに直動方向に作用する反力を相対加速度で割った値であるみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、応答倍率を示す線の上で粘性マスダンパーの直動軸を相対速度で直動させた際に直動方向に作用する反力を相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にしてもよい。
【0092】
ここで、応答倍率は、対象構造物の一方の箇所を強制加振させた際の加振力による対象構造物の一方の取付部の静的変位と応答して振動した対象構造物の一方の箇所の振幅の比である絶対応答倍率、対象構造物の一方の箇所を強制加振した際の一方の箇所の変位と応答して振動した対象構造物の他方の箇所の変位との比である変位応答倍率、または対象構造物の一方の箇所を強制加振した際の対象構造物の一方の箇所の加速度と応答して振動した対象構造物の他方の箇所の加速度との比である加速度応答倍率のうちのひとつである、
【0093】
減衰係数cを調整し、2つの定点での値が各々に実質的に略極大になる様にする。
【0094】
上記の粘性マスダンパーとバネ要素とで構成される振動系の固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとを調整する方法を、図を基に、説明する。
図13は、本発明の実施形態に係る振動数比−変位応答倍率のグラフ1である。
図13は、横軸に振動数比ω/ωnをとり、縦軸に変位応答倍率をとった際の、対象構造物の一対の取付部の一方の取付部12の特定方向の変位と対象構造物10の他方の取付部13の特定方向の変位の比を示している。
実線は、バネ付き粘性マスダンパーが上記の手法で設定され最適化された減衰係数cをもった場合の、変位応答倍率を示している。
破線は、バネ付き粘性マスダンパーが上記の手法で設定されるが減衰係数cが限りなくゼロに近い小さな値である場合の、変位応答倍率を示している。
一点破線は、比較のために、バネ要素を除いた場合を示している。
P点、Q点が、2つの定点である。
対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnは、加振実験により求めてよいし、地震時の対象構造物に設けた加速度計による一対の取付部の特定方向の加速度データを解析して求めてもよいし、対象構造物の設計データから固有振動数を求めてもよい。
一般には、c=0の変位応答倍率のカーブとc=∞の変位応答倍率のカーブの交差する2つの定点P点とP点の値が等しく成るように、粘性マスダンパーとバネ要素の諸元を選定する。
その後、カーブが2つの定点P1とP2とで実質的に極値をとる様に、減衰係数cを選定する。
【0095】
図14は、本発明の実施形態に係る振動数比−加速度応答倍率のグラフ1である。
図14は、横軸に振動数比ω/ωnをとり、縦軸に加速度応答倍率をとった際の、対象構造物の一対の取付部の一方の取付部12の加速度と対象構造物10の他方の取付部13の特定方向の加速度の比を示している。
実線は、バネ付き粘性マスダンパーが上記の手法で設定され最適化された減衰係数cをもった場合の、変位応答倍率を示している。
破線は、バネ付き粘性マスダンパーが上記の手法で設定されるが減衰係数cが限りなくゼロに近い小さな値である場合の、変位応答倍率を示している。
一点破線は、比較のために、バネ要素を除いた場合を示している。
P点、Q点が、2つの定点である。
主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnは、加振実験により求めてよいし、地震時の対象構造物に設けた加速度計による特定方向の加速度データを解析して求めてもよいし、主架構の弾性係数kと対象構造物mの質量から固有振動数を求める数式を用いて演算により求めてもよい。
一般には、c=0の変位応答倍率のカーブとc=∞の変位応答倍率のカーブの交差する2つの定点P1とP2の値が等しく成るように、粘性マスダンパーとバネ要素の諸元を選定する。
カーブが2つの定点P1とP2とで実質的に極値をとる様に、減衰係数cを選定する。例えば、減衰係数cはカーブがP点で極値をとる減衰係数cpとカーブがQ点で極値をとる減衰係数cqとの平均値である。
【0096】
ばね付き粘性マスダンパーの諸元を求めるのに、本発明の実施形態に係る制振装置で説明した様に、振動数比・減衰定数−質量比のグラフから質量比μに対応する最適化された振動数比βoptと最適化された減衰定数ζoptとを決定し、そのβoptとζoptから諸元を求めてもよい。
【0097】
次に、本発明の第六の実施形態にかかる制振装置を、図を基に、説明する。
図5は、本発明の第六の実施形態に係る制振装置の概念図である。
【0098】
制振装置は、対象構造物の特定方向の相対変形を制振する装置である。
制振装置は、粘性マスダンパー100とバネ要素400とクレビス300とで構成され、粘性マスダンパー100とバネ要素400とクレビス300とを直列接続した系を対象構造物の一対の取付部に連結する。
図12は、制振装置が建物の4階に設けられるのを示している。
【0099】
粘性マスダンパー100の構造は、本発明の第五の実施形態にかかる免震装置のものと同じなので、説明を省略する。
【0100】
バネ要素400は、特定方向に交差する方向に延びた板材410と板材の一方の端部に固定された取り付けフランジ420とを有する。
板材410は、板厚方向へ弾性限度内で曲る。
例えば、板材410は、ばね鋼でできた板材である。
例えば、板材410は、複数の板材を板厚方向に積層した板材である。
例えば、板材410は、金属板と樹脂板とを板厚方向に積層した複合材である。
【0101】
以下に、バネ付き粘性マスダンパーの取り付け構造を説明する。
対象構造物10が離間した一対の取付部を有し、直動軸120の直動方向と特定方向とが略一致し、バネ要素400の板材410の一端411が一対の取付部の一方の取付部に固定され、粘性マスダンパー100のフレーム140又は直動軸120の一方がバネ要素400の板材の他端412に連結され、粘性マスダンパー100のフレーム140又は直動軸120の他方が対象構造物10の一対の取付部の他方の取付部に連結し、一対の取付部の他方が板材の他端412から特定方向に離間した位置にある。
図5は、バネ要素400の取り付け用フランジ420が対象構造物の上方の梁材に固定され、板材410の下端が下方に垂れ下がるのを示している。
粘性マスダンパー100のフレーム140がクレビス300を介して対象構造物の下方の梁材の取付部12に連結され、粘性マスダンパー100の直動軸120がクレビス300を介してバネ要素400の板材410の下端412に連結される。
【0102】
ばね付き粘性マスダンパーの諸元の設定方法は、第五の実施形態に係る制振装置のものと同じなので、説明を省略する。
【0103】
次に、本発明の第七の実施形態に係る制振装置を、図を基に、説明する。
図6は、本発明の第七の実施形態に係る制振装置の概念図である。
図12は、本発明の対象構造物の概念図である。
制振装置は、粘性マスダンパー100とバネ要素400と一対のクレビス300とで構成され、粘性マスダンパー100とバネ要素400とクレビス300とを直列接続した系が対象構造物の一対の取付部に連結される。
図12は、制振装置が、建物の4階に設けられるのを示している。
【0104】
粘性マスダンパー100とバネ要素400とクレビス300の構造は、本発明の第一の免震装置で使用したものと同じなので、説明を省略する。
【0105】
以下に、バネ付き粘性マスダンパーの取り付け構造を説明する。
対象構造物10が離間した一対の取付部を有し、直動軸120の直動方向と特定方向とが略一致し、粘性マスダンパー100のフレーム140または直動軸120の一方を一対の取付部の一方の取付部12に連結し、粘性マスダンパー100のフレーム140または直動軸120の他方をバネ要素200の第一部材220に連結し、バネ要素200の第二部材230を一対の取付部の他方の取付部13に連結する。
図6は、粘性マスダンパー100のフレーム140が対象構造物の一対の取付部の一方12に固定され、粘性マスダンパー100の直動軸120が直列に連なった2つのクレビス300を介してバネ要素400の他端412に連結されるのを、示している。
【0106】
ばね付き粘性マスダンパーの諸元の設定方法は、第五の実施形態に係る制振装置のものと同じなので、説明を省略する。
【0107】
次に、本発明の第八の実施形態に係る制振装置を、図を基に、説明する。
図7は、本発明の第八の実施形態に係る制振装置の概念図である。
図12は、本発明の対象構造物の概念図である。
制振装置は、粘性マスダンパー100とバネ要素200と一対のクレビス300とで構成され、粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300とを直列接続した系が対象構造物の一対の取付部に連結される。
図12は、制振装置が、建物の2階に設けられるのを示している。
【0108】
粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300の構造は、本発明の第一の免震装置で使用したものと同じなので、説明を省略する。
【0109】
以下に、バネ付き粘性マスダンパーの取り付け構造を説明する。
対象構造物10が特定方向に離間した一対の取付部12、13を有し、直動軸120の直動方向と特定方向とが略一致し、粘性マスダンパー100のフレーム140または直動軸120の一方を一対の取付部の一方の取付部12に連結し、粘性マスダンパー100のフレーム140または直動軸120の他方をバネ要素200の第一部材220に連結し、バネ要素200の第二部材230を一対の取付部の他方の取付部13に連結する。
特定方向が、対象構造物の斜め方向に向いている。
対象構造物の一方の取付部12が下段の梁の上部に位置し、他方の取付部13が上段の梁の下面に位置する。
図7は、直動方向が斜めになった粘性マスダンパー100のフレーム140がクレビス300を介して対象構造物の一対の取付部の一方の取付部12に固定され、粘性マスダンパー100の直動軸120がバネ要素200を介して対象構造物10の第一部材に連結されるのを、示している。
【0110】
ばね付き粘性マスダンパーの諸元の設定方法は、第五の実施形態に係る制振装置のものと同じなので、説明を省略する。
【0111】
次に、本発明の第九の実施形態に係る制振装置を、図を基に、説明する。
図8は、本発明の第九の実施形態に係る制振装置の概念図である。
図12は、本発明の対象構造物の概念図である。
制振装置は、粘性マスダンパー100とバネ要素200と一対のクレビス300とで構成され、粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300とを直列接続した系が対象構造物の一対の箇所を連結する。
図12は、制振装置が、建物の1階に設けられるのを示している。
【0112】
粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300の構造は、本発明の第一の免震装置で使用したものと同じなので、説明を省略する。
【0113】
以下に、バネ付き粘性マスダンパーの取り付け構造を説明する。
対象構造物が特定方向に離間した一対の取付部を有し、
直動軸120の直動方向と特定方向とが略一致し、粘性マスダンパー100のフレーム140または直動軸120の一方を一対の取付部の一方の取付部12に連結し、粘性マスダンパー100のフレーム140または直動軸120の他方をバネ要素200の第一部材220に連結し、バネ要素200の第二部材を230一対の取付部の他方の取付部13に連結する。
特定方向が、対象構造物の上下方向に向いている。
対象構造物の一方の取付部12が下段の梁の上部に位置し、他方の取付部13が上段の梁の下面に位置する。
図8は、直動方向が上下方向に沿った粘性マスダンパー100のフレーム140がクレビス300を介して対象構造物の一対の取付部の一方の取付部12に固定され、粘性マスダンパー100の直動軸120がバネ要素を介して対象構造物10の第一部材に連結されるのを、示している。
【0114】
ばね付き粘性マスダンパーの諸元の設定方法は、第五の実施形態に係る制振装置のものと同じなので、説明を省略する。
【0115】
次に、本発明の第十の実施形態に係る制振装置を、図を基に、説明する。
図9は、本発明の第九の実施形態に係る制振装置の概念図である。
図12は、本発明の対象構造物の概念図である。
制振装置は、粘性マスダンパー100とバネ要素200とで構成され、粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300とを直列接続した系が対象構造物の一対の取付部に連結される。
図12は、制振装置が、建物の1階に設けられるのを示している。
【0116】
粘性マスダンパー100とバネ要素200とクレビス300の構造は、本発明の第一の免震装置で使用したものとほとんど同じなので、同一の説明を省略し、異なる点を説明する。
異なるのは、直動軸の両端が各々のフレームから露出する点である。
【0117】
以下に、バネ付き粘性マスダンパーの取り付け構造を説明する。
対象構造物10が特定方向に離間した一対の取付部を有し、直動軸120の直動方向と特定方向とが略一致し、バネ要素200の第一部材220を一対の取付部の一方に連結し、バネ要素200の第二部材230を粘性マスダンパー100のフレームに連結し、粘性マスダンパー100の直動軸120の一方の端部を一対の取付部の他方に連結し、粘性マスダンパー100の直動軸120の他方の端部を対象構造物10の一対の取付部の一方の取付部13を挟んでの反対側の取付部14に連結する。
図9は、バネ要素200の第一部材220が直動方向が水平方向に沿った粘性マスダンパー100のフレーム140に固定し、バネ要素200の第二部材230が対象構造物の一対の取付部の一方の取付部12に固定され、直動軸の両端が各々に対象構造物に固定されるのを、示している。
【0118】
ばね付き粘性マスダンパーの諸元の設定方法は、第五の実施形態に係る制振装置のものと同じなので、説明を省略する。
【実施例1】
【0119】
第一または第四の実施形態にかかる免震装置・制振装置の諸元を、3つの形式の応答倍率の毎に、最適化して評価した数値解析結果を説明する。
図17は、本発明の実施例1の数値解析結果を示すグラフである。
図17の上のグラフが変位応答倍率を示す。
図17の下のグラフが加速度応答倍率を示す。
図17の凡例において、動的最適設計時は絶対応答倍率を小さくすることの重点をおいて諸元を決定した場合、変位最適設計時は変位応答倍率を小さくすることに重点をおいて諸元を決定した場合、加速度最適設計時は加速度応答倍率を小さくすることに重点をおいて諸元を決定した場合、である。
質量比μが0.1と0.2との場合を評価した。
図17から、動的最適設計の系のピークは変位、加速度ともに最もピークが大きい、変位最適設計と加速度最適設計を比較すると、共振曲線のピーク値は低い法の共振点では加速度最適設計の方が、高い方の共振点では変位最適設計のほうがピーク値が小さい。最適設計としてどちらがより適切かは、系の外乱の特性による。ことが判明した。
【実施例2】
【0120】
第七の実施形態にかかる制振装置の制振性能を模型試験により確認した。
図18は、本発明の実施例2の模型試験装置の外観図である。
図19は、本発明の実施例2の模型試験の結果表である。
模型試験装置では、LMガイドに支持された鋼板が対象構造物を模擬し、コイルバネが主架構または対象構造物の一対の箇所の間の弾性を模擬する。バネ要素の板材の上端が鋼板の下面に固定される。慣性接続要素の端部が、バネ要素の板材の下端に連結される。
べースを加振し、鋼板の上部においた加速度計で鋼板の加速度を測定する。加速度を積分して変位に変換する。
図19が、設計用人工地震波(BCL−L2)と4つの実地震波における最適設計システムの最大応答値と応答低減率を示す。
図19の表から、変位応答倍率を最適化した場合、または加速度応答倍率を最適化した場合に、対象構造物の振動をよく免震または制振できることが明らかである。
【0121】
以上説明したように、本発明に係る免震装置は、その構成により、以下の効果を有する。
相対変位を回転量に変換する慣性接続要素30と減衰抵抗力を発生するダンパー要素50とを並列接続した系と弾性反力を発生するバネ要素40とを直列接続したバネ付き粘性マスダンパーが支持体5と対象構造物10とを連結する様にしたので、主架構に支持される対象構造物10が振動運動すると、慣性接続要素30とバネ要素40とで構成される振動系が連成振動し、慣性接続要素30が相対変位し、並列接続されたダンパー要素50が相対変位して振動エネルギーを吸収する。
また、バネ付き粘性マスダンパーの諸元を対象構造物の振動特性に対応させて設定し、対象構造物の応答倍率を最適化し、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、バネ要素40の弾性係数Kbと慣性接続要素30の慣性質量mrとで定まる応答倍率が略等しくなる様にしたので、ダンパー要素50が慣性接続要素30の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体5を基礎とする対象構造物10の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、減衰係数cを調整し、2つの定点P、Qでの値が各々に略極大になる様にしたので、慣性接続要素30の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体5を基礎とする対象構造物10の絶対変位に対応する振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、支持体5を基礎とする対象構造物10の振動応答のレベルが2つの定点p、Qに対応する応答倍率を越えないようにできる。
また、バネ要素の弾性係数kbを質量比μと主架構の弾性係数kから求め、ダンパー要素の減衰係数cを質量比μと慣性接続要素のみかけの慣性質量mrとバネ付き粘性マスダンパーの固有振動数ωrとから求めて、対象構造物の変位応答倍率を最適化する様にしたので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、バネ要素の弾性係数Kbと慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる応答倍率が略等しくなり、ダンパー要素が慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、また、バネ要素の弾性係数kbを質量比μと主架構の弾性係数kから求め、ダンパー要素の減衰係数cを質量比μと慣性接続要素のみかけの慣性質量mrとバネ付き粘性マスダンパーの固有振動数ωrとから求めて、対象構造物の加速度応答倍率を最適化する様にしたので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、バネ要素の弾性係数Kbと慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる応答倍率が略等しくなり、ダンパー要素が慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、直動軸120の雄ねじに嵌め合った回転体130を回転自在に支持してフレーム130と回転体130との間に粘性流体150を封入した粘性マスダンパーと弾性体でできたバネ要素200とを直接接続したバネ付き粘性マスダンパーが支持体5と対象構造物10とを連結する様にしたので、対象構造物10が特定方向に振動運動すると、粘性マスダンパー100とバネ要素200とで構成される振動系が連成振動し、直動軸120が直動方向に相対変位して回転体130が回転し、粘性流体150に剪断力が発生し、粘性流体150が振動エネルギーを吸収する。
また、バネ付き粘性マスダンパーの諸元を対象構造物10の振動特性に対応させて設定し、対象構造物10の応答倍率を最適化し、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、バネ要素の弾性係数Kbと粘性マスダンパーの慣性質量mrとで定まる応答倍率が略等しくなり、粘性マスダンパーがフレームと直動軸との相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、減衰係数cを調整し、2つの定点での値が各々に略極大になる様にしたので、フレームと直同軸の相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の絶対変位に対応する振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、支持体を基礎とする対象構造物の振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
【0122】
また、以上説明したように、本発明に係る制振装置は、その構成により、以下の効果を有する。
相対変位を回転量に変換する慣性接続要素30と減衰抵抗力を発生するダンパー要素50とを並列接続した系と弾性反力を発生するバネ要素40とを直列接続したバネ付き粘性マスダンパーが対象構造物10の特定方向に離間する一対の箇所を連結したので、対象構造物10が特定方向に相対運動するモードで振動すると、慣性接続要素とバネ要素とで構成される振動系が連成振動し、慣性接続要素の相対変位し、並列接続されたダンパー要素が相対変位して振動エネルギーを吸収する。
また、バネ付き粘性マスダンパーの諸元を対象構造物の振動特性に対応させて設定し、対象構造物の応答倍率を最適化し、2つの定点P、Qに対応する加振周波数ωの付近の周波数において、バネ要素40の弾性係数Kbと慣性接続要素30の慣性質量mrとで定まる応答倍率が略等しくなる様にしたので、ダンパー要素50が慣性接続要素30の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物10の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルを小さくできる。
また、減衰係数cを調整し、2つの定点P、Qでの値が各々に実質的に略極大になる様にしたので、ダンパー要素50が、適切な減衰係数cを持ち、慣性接続要素30の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物10の振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、対象構造物10の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
また、バネ要素の弾性係数kbを質量比μと主架構の弾性係数kから求め、ダンパー要素の減衰係数cを質量比μと慣性接続要素のみかけの慣性質量mrとバネ付き粘性マスダンパーの固有振動数ωrとから求めて、対象構造物の変位応答倍率を最適化する様にしたので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、バネ要素の弾性係数Kbと慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる応答倍率が略等しくなり、ダンパー要素が慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、バネ要素の弾性係数kbを質量比μと主架構の弾性係数kから求め、ダンパー要素の減衰係数cを質量比μと慣性接続要素のみかけの慣性質量mrとバネ付き粘性マスダンパーの固有振動数ωrとから求めて、対象構造物の加速度応答倍率を最適化する様にしたので、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、バネ要素の弾性係数Kbと慣性接続要素の慣性質量mrとで定まる応答倍率が略等しくなり、ダンパー要素が慣性接続要素の特定方向に沿った相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、直動軸120の雄ねじに嵌め合った回転体130を回転自在に支持してフレーム140と回転体130との間に粘性流体150を封入した粘性マスダンパー100と弾性体でできたバネ要素200とを直接接続したバネ付き粘性マスダンパーが対象構造物10の特定方向に離間する一対の箇所に連結する様にしたので、対象構造物10が特定方向に相対運動するモードで振動すると、粘性マスダンパー100とバネ要素200とで構成される振動系が連成振動し、直動軸120が直動方向に相対変位して回転体が回転し、粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
また、直動軸120の雄ねじに嵌め合った回転体130を回転自在に支持してフレーム140と回転体130との間に粘性流体150を封入した粘性マスダンパー100と板材でできたバネ要素200とを直接接続したバネ付き粘性マスダンパーが対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所に連結する様にしたので、対象構造物10が特定方向に相対運動するモードで振動すると、粘性マスダンパー100とバネ要素200とで構成される振動系が連成振動し、直動軸が直動方向に相対変位して回転体が回転し、粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
また、直動軸120の雄ねじに嵌め合った回転体130を回転自在に支持してフレーム140と回転体130との間に粘性流体150を封入した粘性マスダンパー100をバネ要素200を介して対象構造物10に連結し、直動軸120の両端を対象構造物10の他の箇所の連結する様にし、連結した箇所が特定方向に並んでいる様にしたので、対象構造物が特定方向に相対運動するモードで振動すると、粘性マスダンパー100とバネ要素200とで構成される振動系が連成振動し、直動軸120が直動方向に相対変位して回転体が回転し、粘性流体に剪断力が発生し、粘性流体が振動エネルギーを吸収する。
また、バネ付き粘性マスダンパーの諸元を対象構造物の振動特性に対応させて設定し、対象構造物10の応答倍率を最適化し、2つの定点に対応する加振周波数ωの付近の周波数において、バネ要素の弾性係数Kbと粘性マスダンパーの慣性質量mrとで定まる応答倍率が略等しくなり、粘性マスダンパーがフレームと直動軸との相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルを小さくすることをできる。
また、減衰係数cを調整し、2つの定点での値が各々に略極大になる様にしたので、フレームと直同軸の相対変位に伴って振動エネルギーを吸収し、支持体を基礎とする対象構造物の絶対変位に対応する振幅、相対変位、または加速度をより小さくし、支持体を基礎とする象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の相対的な振動応答のレベルが2つの定点に対応する応答倍率を越えないようにできる。
【0123】
本発明は以上に述べた実施形態に限られるものではなく、発明の要旨を逸脱しない歯非で各種の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明の第一・第四の実施形態に係る免震装置・制振装置の概念図である。
【図2】本発明の第二の実施形態に係る免震装置の概念図である。
【図3】本発明の第三の実施形態に係る免震装置の概念図である。
【図4】本発明の第五の実施形態に係る制振装置の概念図である。
【図5】本発明の第六の実施形態に係る制振装置の概念図である。
【図6】本発明の第七の実施形態に係る制振装置の概念図である。
【図7】本発明の第八の実施形態に係る制振装置の概念図である。
【図8】本発明の第九の実施形態に係る制振装置の概念図である。
【図9】本発明の第十の実施形態に係る制振装置の概念図である。
【図10】本発明の実施形態に係る粘性マスダンパーの断面図である。
【図11】本発明の実施形態に係るバネ要素の概念図である。
【図12】本発明の対象構造物の概念図である。
【図13】本発明の実施形態に係る振動数比−変位応答倍率のグラフ1である。
【図14】本発明の実施形態に係る振動数比−変位応答倍率のグラフ2である。
【図15】本発明の実施形態に係る振動数比・減衰定数−質量比のグラフ3である。
【図16】本発明の実施形態に係る振動数比・減衰定数−質量比のグラフ4である。
【図17】本発明の実施例1の数値解析結果を示すグラフである。
【図18】本発明の実施例2の模型試験装置の外観図である。
【図19】本発明の実施例2の模型試験の結果表である。
【符号の説明】
【0125】
5 支持体
6 付加系
10 対象構造物
11 取付部
12 取付部
13 取付部
20 主架構
30 慣性接続要素
40 バネ要素
50 ダンパー要素
100 粘性マスダンパー
110 リニアガイド
120 直動軸
130 回転体
131 ねじナット
132 回転円筒
140 フレーム
141 ねじナットフレーム
142 回転円筒フレーム
143 軸受
150 粘性流体
200 バネ要素
210 弾性体
220 第一部材
221 フランジ
222 弾性体支持部材
230 第二部材
231 フランジ
232 弾性体支持部材
300 クレビス
400 バネ要素
410 板材
411 一端
412 他端
420 取り付けフランジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体を基礎として主架構に支持される対象構造物の特定方向の変位を免震する免震装置であって、
特定方向の相対変位を回転体の回転量に変換する慣性接続要素と、
特定方向の相対変位に対応して特定方向にそって作用する弾性反力を発生するバネ要素と、
特定方向の相対速度に対応して特定方向にそって作用する減衰抵抗力を発生するダンパー要素と、
を備え、
前記慣性接続要素と前記ダンパー要素とを並列接続した系と前記バネ要素とを直列接続した系であるバネ付き粘性マスダンパーが支持体と対象構造物との間に連結される、
ことを特徴とする免震装置。
【請求項2】
前記バネ要素の弾性係数kbと前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比ω/ωnを横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記ダンパー要素の前記減衰抵抗力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にし、
前記応答倍率は、対象構造物を強制加振させた際の加振力による対象構造物の静的変位と応答して振動した対象構造物の振幅との比である絶対応答倍率、支持体を強制加振した際の支持体の変位と応答して振動した対象構造物の変位との比である変位応答倍率、または支持体を強制加振した際の支持体の加速度と応答して振動した対象物の加速度との比である加速度応答倍率のうちのひとつである、
ことを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項3】
前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる様にした、
ことを特徴とする請求項2に記載の免震装置。
【請求項4】
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ−sqrt(1−4μ))/2μの90%から110%までの間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(31.095μ−12.041μ+2.581μ+0.038)×ωr×mrの90%から110%までの間の値、
または、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ+sqrt(1−4μ))/2μの70%から160%までの間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(−18.558μ+4.880μ−0.717μ+0.612)×ωr×mrの70%から160%までの間の値、
のうちのいっぽうであって、
ここで、
0<μ≦0.25、
μ=mr/m、
kは主架構の特定方位に沿った変位に係る弾性係数、
mは対象構造物の質量、
mrは前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量、
kbは前記バネ要素の弾性係数、
ωr=sqrt(kb/mr)、
sqrt(x)はxの平方根、
であることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項5】
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(2μ−1+sqrt(1−2μ))/(1−2μ)の90%から110%までの間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(4.436μ−3.619μ+1.729μ+0.056)×ωr×mrの90%から110%までの間の値であり、
ここで、
0<μ≦0.5、
μ=mr/m、
kは主架構の特定方位に沿った変位に係る弾性係数、
mは対象構造物の主架構に支持される質量、
mrは前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量、
kbは前記バネ要素の弾性係数、
ωr=sqrt(kb/mr)、
sqrt(x)はxの平方根、
であることを特徴とする請求項1に記載の免震装置。
【請求項6】
支持体を基礎として主架構に支持される対象構造物の特定方向の変位を免震する免震装置であって、
雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と該回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体との隙間に封入された粘性流体とを有する粘性マスダンパーと、
弾性体と該弾性体を間に挟んだ第一部材と第二部材とを有するバネ要素と、
を備え、
前記直動軸の直動方向と特定方向とが略一致し、
前記粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の一方を支持体又は対象構造物の一方に連結し、
前記粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の他方を前記バネ要素の第一部材に連結し、
前記バネ要素の第二部材を支持体又は対象構造物の他方に連結する、
ことを特徴とする免震装置。
【請求項7】
前記バネ要素を直動方向に相対距離だけ変位させた際に発生する反力を前記相対距離で割った値である弾性係数kbと前記粘性マスダンパーの前記直動軸を直動方向に所定の相対加速度で直動させたさいに前記直動方向に作用する反力を前記相対加速度で割った値であるみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと主架構と対象構造物とで構成される系の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比ω/ωnを横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記粘性マスダンパーの前記直動軸を一定に相対速度で直動させた際に前記直動方向に作用する反力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にし、
前記応答倍率は、対象構造物を強制加振させた際の加振力による対象構造物の静的変位と応答して振動した対象構造物の振幅との比である絶対応答倍率、支持体を強制加振した際の支持体の変位と応答して振動した対象構造物の変位との比である前記変位応答該率、または支持体を強制加振した際の支持体の加速度と応答して振動した対象物の加速度との比である前記加速度応答倍率のうちのひとつである、
ことを特徴とする請求項6に記載の免震装置。
【請求項8】
前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる様にした、
ことを特徴とする請求項7に記載の免震装置。
【請求項9】
対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動を制振する制振装置であって、
特定方向の相対変位を回転体の回転量に変換する慣性接続要素と、
特定方向の相対変位に対応して特定方向にそって作用する弾性反力を発生するバネ要素と、
特定方向の相対速度に対応して特定方向にそって作用する減衰抵抗力を発生するダンパー要素と、
を備え、
前記慣性接続要素と前記ダンパー要素とを並列接続した系と前記バネ要素とを直列接続した系であるバネ付き粘性マスダンパーが対象構造物の特定方向に離間する一対の箇所の間に連結される、
ことを特徴とする制振装置。
【請求項10】
前記バネ要素の弾性係数kbと前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記ダンパー要素の前記減衰抵抗力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にし、
前記応答倍率は、対象構造物の一方の前記箇所を強制加振させた際の加振力による対象構造物の一方の前記箇所の静的変位と応答して振動した対象構造物の一方の前記箇所の振幅の比である絶対応答倍率、対象構造物の一方の前記箇所を強制加振した際の一方の前記箇所の変位と応答して振動した対象構造物の他方の前記箇所の変位との比である変位応答倍率、または対象構造物の一方の前記箇所を強制加振した際の対象構造物の一方の前記箇所の加速度と応答して振動した対象構造物の他方の前記箇所の加速度との比である加速度応答倍率のうちのひとつである、
ことを特徴とする請求項9に記載の制振装置。
【請求項11】
前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる様にした、
ことを特徴とする請求項10に記載の制振装置。
【請求項12】
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ−sqrt(1−4μ))/2μの90%から110%の間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(31.095μ−12.041μ+2.581μ+0.038)×ωr×mrの90%から110%の間の値、
または、
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(1−2μ+sqrt(1−4μ))/2μの70%から160%の間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(−18.558μ+4.880μ−0.717μ+0.612)×ωr×mrの70%から160%の間の値、
のうちのいっぽうであって、
ここで、
0<μ≦0.25、
μ=mr/m、
ωr=sqrt(kb/mr)
kは対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動をばねと質点との1質点系に模しときの該ばねの弾性係数、
mは前記1質点系の前記質点の質量、
mrは前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量、
kbは前記バネ要素の弾性係数、
sqrt(x)はxの平方根、
であることを特徴とする請求項9に記載の制振装置。
【請求項13】
前記バネ要素の弾性係数kbがk×(2μ−1+sqrt(1−2μ))/(1−2μ)の90%から110%までの間の値であって、
前記ダンパー要素の減衰係数cが2×(4.436μ−3.619μ+1.729μ+0.056)×ωr×mrの90%から110%までの間の値であり、
ここで、
0<μ≦0.5、
μ=mr/m、
ωr=sqrt(kb/mr)、
kは対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動をばねと質点との1質点系に模しときの該ばねの弾性係数、
mは前記1質点系の前記質点の質量、
mrは前記慣性接続要素の特定方向の相対加速度に対するみかけの慣性質量、
kbは前記バネ要素の弾性係数、
sqrt(x)はxの平方根、
であることを特徴とする請求項9に記載の制振装置。
【請求項14】
対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動を制振する制振装置であって、
雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と該回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体との隙間に封入された粘性流体とを有する粘性マスダンパーと、
弾性体と該弾性体を間に挟んだ第一部材と第二部材とを有するバネ要素と、
を備え、
対象構造物が特定方向に離間した一対の取付部を有し、
前記直動軸の直動方向と特定方向とが略一致し、
前記粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の一方を一対の前記取付部の一方に連結し、
前記粘性マスダンパーのフレームまたは直動軸の他方を前記バネ要素の前記第一部材に連結し、
前記バネ要素の前記第二部材を一対の前記取付部の他方に連結する、
ことを特徴とする制振装置。
【請求項15】
対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動を制振する制振装置であって、
雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体との隙間に封入された粘性流体とを有する粘性マスダンパーと、
特定方向に交差する方向に延びた板材を有するバネ要素と、
を備え、
対象構造物が離間した一対の取付部を有し、
前記直動軸の直動方向と特定方向とが略一致し、
前記バネ要素の前記板材の一端が一対の前記取付部の一方に固定され、
前記粘性マスダンパーのフレーム又は直動軸の一方が前記バネ要素の前記板材の他端に連結され、
前記粘性マスダンパーのフレーム又は直動軸の他方が対象構造物の一対の前記取付部の他方に連結し、
一対の前記取付部の他方が前記板材の他端から特定方向に離間した位置にある、
ことを特徴とする制振装置。
【請求項16】
対象構造物の特定方向の相対変形を伴う振動を制振する制振装置であって、
雄ねじを設けられた直動軸と該雄ねじに嵌めあう雌ねじを設けられた回転体と回転体を回転自在に支持するフレームと該フレームの内面と該回転体の外面との間に封入された粘性流体とを有する粘性マスダンパーと、
弾性体と該弾性体を間に挟んだ第一部材と第二部材とを有するバネ要素と、
を備え、
対象構造物が特定方向に離間した一対の取付部を有し、
前記直動軸の直動方向と特定方向とが略一致し、
前記バネ要素の前記第一部材を一対の前記取付部の一方に連結し、
前記バネ要素の前記第二部材を前記粘性マスダンパーのフレームに連結し、
前記粘性マスダンパーの直動軸の一方の端部を一対の前記取付部の他方に連結し、
前記粘性マスダンパーの直動軸の他方の端部を対象構造物の一対の前記取付部の一方を挟んで他方の反対側に連結する、
ことを特徴とする制振装置。
【請求項17】
前記バネ要素を特定方向に相対距離だけ変位させた際に発生する反力を前記相対距離で割った値である弾性係数kbと前記粘性マスダンパーの前記直動軸を直動方向に所定の相対加速度で直動させたさいに前記直動方向に作用する反力を前記相対加速度で割った値であるみかけの慣性質量mrとに対応する固有振動数ωrと対象構造物の特定方向に変位する振動モードの固有振動数ωnとの比を調整し、加振周波数ωと固有振動数ωnとの比を横軸とし、対象構造物の応答倍率を縦軸としたとき、前記応答倍率を示す線の上で前記粘性マスダンパーの前記直動軸を一定の相対速度で直動させた際に前記直動方向に作用する反力を前記相対速度で割った値である減衰係数cの値のいかんにかかわらず一定値となる2つの定点での値が略等しくなる様にし、
前記応答倍率は、対象構造物の一方の前記取付部を強制加振させた際の加振力による対象構造物の一方の前記取付部の静的変位と応答して振動した対象構造物の一方の前記取付部の振幅の比である絶対応答倍率、対象構造物の一方の前記取付部を強制加振した際の一方の前記取付部の変位と応答して振動した対象構造物の他方の前記取付部の変位との比である変位応答倍率、または対象構造物の一方の前記取付部を強制加振した際の対象構造物の一方の前記取付部の加速度と応答して振動した対象構造物の他方の前記取付部の加速度との比である加速度応答倍率のうちのひとつである、
ことを特徴とする請求項14乃至請求項16のうちのひとつに記載の制振装置。
【請求項18】
前記減衰係数cを調整し、2つの前記定点での値が各々に実質的に略極大になる様にした、
ことを特徴とする請求項17に記載の制振装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−68659(P2009−68659A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−240283(P2007−240283)
【出願日】平成19年9月15日(2007.9.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2007年3月20日 社団法人 日本建築学会発行の「構造工学論文集 Vol.53B」に発表
【出願人】(593063161)株式会社NTTファシリティーズ (475)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【Fターム(参考)】