説明

六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶及びその製造方法

【課題】転位密度が少なく、熱応力歪みが生じにくい六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶を提供する。
【解決手段】結晶粒原料を主体とし、水熱成長開始時に1℃/min以上、6℃/min以下で昇温し、成長時における育成容器内の上部と下部で下部の温度差が3〜7℃の範囲で水熱成長することによって得られる結晶マイクロドメイン構造Dを有する六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶であって、前記六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶は、連続かつ一様な結晶格子を有するマトリックス領域M内に、該マトリックス領域Mとは結晶格子の配列が異なる島状の結晶マイクロドメインDを含み、該結晶マイクロドメインD内のc軸が、前記マトリックス領域Mのc軸と平行である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶及びその製造方法に関し、より詳細には、六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶及びその製造方法並びにエピタキシャル成長用単結晶基板に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、六方晶系の結晶は、正六角形の平面内で120゜をなす3本のa軸と、それらのa軸に垂直なc軸とを合わせて4本の結晶軸を有している。
【0003】
図1(a)乃至(c)は、六方晶系の結晶を示す図で、図1(a)は斜視図、図1(b)は図1(a)の上面図、図1(c)は図1(b)のm面の正面図である。図1(a)に示すように、c軸に垂直な(0001)面をc面と呼び、c軸と任意のa軸に平行な面をm面と呼び、図1(b)に示すように、c軸に平行で任意のa軸に垂直な面をa面と呼んでいる。a面とm面は、c面に垂直で、c軸方向と平行な面である。また、m面を正面から見ると、図1(c)に示すようになり、c面を横からみた場合の結晶格子が見える。
【0004】
六方晶系のうち、AX(Aは陽性元素、Xは陰性元素)で示される化合物に見られる結晶構造、すなわち、ウルツ鉱型構造の原子配列はA原子とX原子はそれぞれ六方最密構造型に近い配列をとり、A原子にはX原子4個が正四面体形に配位し、逆にX原子にもA原子4個が正四面体形に配位している。
【0005】
それぞれの正四面体クラスタで、図1(a)に示すように、c軸に平行な方向のうちAの直上にXがある方向を+c、図1(b)に示すように、Xの直上にAがある方向を−cと呼び、c軸に垂直なc面であって+cおよび−c方向を、それぞれ(0001)面、(000−1)面と書いて区別する。c面を切り出す場合には、図1(c)に示すように、(0001)面では元素A、(000−1)面では元素Xのみが表面に現れる。成長後の単結晶の場合も表面は同様になる。
【0006】
このような原子配列を取るために、ウルツ鉱型構造ではc軸方向に極性を有する。六方晶系ウルツ鉱型構造をとることが知られている化合物としては、ウルツ鉱である硫化亜鉛(ZnS)をはじめ、酸化亜鉛(ZnO)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、窒化インジウム(InN)などが挙げられる。
【0007】
六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の成長方法としては、気相法、液相法、融液法があるが、気相法、融液法ではそれぞれ欠陥密度が高い、成長に非常に高圧、高温を要するなどの欠点がある。これに対して液相法は、欠陥密度の低い高品位の結晶が比較的低い温度で得られるという特徴がある。中でもソルボサーマル法は欠陥や不純物濃度の低い高品位の結晶成長に適しているといわれている。ソルボサーマル法とは、超臨界状態の溶媒を保持する容器中に、原料と種結晶を装填し、温度差を利用して原料溶解、再析出させて単結晶を得る方法の総称であり、溶媒が水である場合は水熱法、アンモニアである場合はアモノサーマル法と呼ばれる。
【0008】
六方晶系ウルツ鉱型化合物は、直接遷移型のバンドギャップであること、電子移動度が大きいこと、バンドギャップが狭い材料から広い材料まで連続的に形成し得ることから、近年、既に実用化されているGaN系LEDに続き、紫外や緑色のLED,LD,パワーデバイス,高周波デバイスなどへの展開が期待されている。
【0009】
しかしながら、六方晶系ウルツ鉱型結晶を形成する一方の元素である陰性元素は窒素や酸素などの分子ガスもしくは硫黄やセレンなどの揮発性を有する元素であり、結晶成長時に陽性元素との組成を量論比に保つことが困難である。そのため、ソルボサーマル法が密封された高圧容器内で陰性元素成分を含む環境で結晶成長が可能であることを利用して陰性元素が結晶中に欠落する欠陥の発生を抑える検討が成されてきた結果、一定度の成果が得られ、例えば、X線回折における(0002)面のロッキングカーブの半値幅は顕著な改善が成されてきた。
【0010】
しかしながら、それでもなお、大きな欠陥である転位欠陥密度は期待に反して悪化し、さらには熱や応力が加わった際に転位やクラックが発生する課題があるが、全く手が付けられていないのが現状である。全ての課題を解決するユニバーサルな手法は、全く欠陥の無い完全結晶を得ることであるが、上述した六方晶系ウルツ鉱型結晶の特徴を踏まえると非常に難しく現実的な手法とは言えない。
【0011】
以下、六方晶系ウルツ鉱型の結晶構造を有する化合物のうち酸化亜鉛(以下、ZnOという)単結晶、更に詳しくは、青紫、紫外発光素子(用基板),表面弾性波(SAW),ガスセンサ,圧電素子,透明導電体,バリスタなど多方面に用いられ、優れた機能を発現するZnO単結晶とそれを用いた基板を中心に説明する。ただし、本発明の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶はZnOに限定されるものではない。
【0012】
酸化亜鉛(ZnO)は、六方晶系のウルツ鉱型化合物の結晶構造を持ち、直接遷移で禁制帯幅が3.37eVと大きく、かつ励起子結合エネルギー(ZnO:60meV)が他の化合物半導体材料と比べて非常に大きく(GaN:26eV、ZnSe:20eV等)、励起子が発光デバイスの通常の作動温度範囲で有効である。そのため、ZnOをベースとする酸化亜鉛系材料(ZnO、ZnMgO、ZnCdO、ZnCuO等)は、高効率な発光デバイス材料として期待されている。励起子結合エネルギーが非常に高いことは、例えば、発光デバイスに大電流を流して使用する場合の発熱や、大面積化して放熱が悪くなり、デバイス温度が上昇しても発光エネルギー効率が低下しないと言う重要なメリットも有する。
【0013】
一方、ZnOはGaNと同じ結晶構造で格子定数も近い(格子ミスマッチは約2%)こと、GaN単結晶よりも格段に低コストで製造できる可能性があることから、現在用いられているサファイアやSiCに代わるGaN薄膜成長用の基板としても期待を集めている。
【0014】
酸化亜鉛系材料の発光デバイスを形成するには、薄膜を形成するための単結晶基板が必要である。酸化亜鉛の単結晶成長は古くから研究され、固相成長法であるメルト法、気相成長法であるVPT法、液相成長法である水熱法等があるが、得られる結晶の結晶性、結晶成長速度、設備コスト等の観点から、人工水晶の生産で既に広く知られている水熱成長による成長が最も注目され、多くの検討が行われてきた。例えば、非特許文献1、2には水熱法によるZnO単結晶成長の基本技術が記載されており、その成長法によれば、ZnOの焼結体を結晶の育成容器の下部に、ZnO種結晶を該育成容器の上部に各々配置し、次いでKOH及びLiOHからなるアルカリ水溶液の溶媒を充填する。さらに酸素発生剤として過酸化水素を加えた状態で、育成容器内を370〜400℃の育成温度、700〜1000kg/cm2の圧力で、育成容器内の上部と下部で下部の温度が上部の温度より10〜15℃高くなるように運転することで、種結晶上に酸化亜鉛単結晶を成長させる。
【0015】
この報告を基にして多くの研究が成されてきた。例えば、ZnOは酸素欠損起きやすく、0002方向の結晶性が十分でないために、過酸化処理した原料を用い、加えて新たな酸化剤が提案され、X線回折の0002面の半値幅で15arcsecと言う高い結晶性を持つZnO単結晶が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、水熱法によって形成されたZnO基板は、約1cm四方の大きさで既に試験的に販売されており、それらZnO基板のX線回折における0002面の半値幅は、10〜20arcsecと良好な値が得られている(例えば、非特許文献3参照)。
【0016】
しかしながら、これら従来技術で得られているZnO単結晶は、X線回折で観測した結晶性は改善されているが、多くの転位欠陥を含有しているという問題があった。単結晶基板に転位が存在すると、基板上に薄膜を形成した場合にそれが薄膜へ引き継がれ、電流のリーク等の問題をもたらす。また、転位が多く存在すると、デバイスとして作動中に温度が上昇した際に転位が増殖し、デバイス機能が失われる等の問題が生じる。
【0017】
一方、従来水熱法によるZnO単結晶成長ではKOHとLiOHの両方を硬化剤として用いるのが一般的であり、それによりc面、m面の両方向に成長した良好な結晶性のZnO単結晶が得られる。しかし、ここで用いたLiのイオン半径がZnと非常に近い事もあり、Liは成長したZnO単結晶中に取り込まれる。ZnOをベースとした発光デバイスを形成しようとした際に、Liが熱や電場で結晶中を移動してしまい、ZnOのp型化を阻害する、薄膜の電気特性を不安定化する等の問題が指摘されている。そのため、特許文献2には、Liを用いず、代わりにNH4OHを用いる技術が、特許文献3には水熱法によって得たZnO単結晶を熱処理して含有するLiを表層部に移動させ、表面をエッチングして結晶内Liを低減する技術が開示されている。
【0018】
しかし、特許文献2ではLi含有量は顕著に低減するものの、結晶性が大きく低下してしまい、特許文献3では結晶性は良好であるものの、Liは1015/cm3程度までしか低減していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2006−225213号公報
【特許文献2】特開平6−279192号公報
【特許文献3】特開2007−1787号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】「高純度ZnO単結晶の水熱合成とストイキオメオリーの評価」(坂上 登、昭和63年2月、秋田高専研究紀要第23号)
【非特許文献2】「水熱ZnO単結晶の成長の速度論と形態」(坂上 登、和田 正信、窯業学会誌 82−8 1974)
【非特許文献3】「Growth of 2 inch Bulk Crystal by Hydrothermal method」(Katsumi Maeda、Semicond,Sci.Technol.20 No4(April2005)S49−54)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ZnO材料は、従来のデバイス材料と比較して応力、特に熱応力に弱い材料である。そのため、例えば、ZnO基板上に薄膜成長させる場合、基板を周囲から押え付けて応力が掛かった状態で温度を上げると、透過電子顕微鏡レベルで観測される転位が発生し、場合によっては光学顕微鏡で観測される程度のクラックが発生する。成膜時に限らず、ウエハープロセス工程、発光デバイス動作時にも、基板に応力が加わった状態で温度が上がれば、転位等の機械的欠陥を生じる。そのため、転位が少ない基板を用いても、応力と熱の印加によって転位が発生してしまい、ZnOの励起子束縛エネルギーの電子的機能を生かせないと言う課題があった。
【0022】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、転位欠陥が非常に低減しているために薄膜への悪影響が少なく、かつ熱応力に強いために成膜からデバイス作動時において転位が発生しにくい、六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶及びその製造方法を提供することにある。
【0023】
また、六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶がZnO系材料の場合には、さらに加えて、Li含有量が顕著に低減されているためにLiによるデバイス悪影響が回避可能なZnとOを含む材料の六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明者らは、上記課題を解決するため熱応力を受けた際の応力分散性、応力による転位進展の抑制を考慮して検討した結果、意外にも従来の高結晶性と非ドメインの追求と言う単結晶成長の王道とは逆で、一定度以上の結晶性を保持しながら六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶の微細なドメイン構造を有する従来に無い微細構造形成することにより、上記課題を解決するに至った。
【0025】
本発明は、このような目的を達成するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、正六角形の平面内で120°をなすa軸と、該a軸に垂直なc軸とを有する六方晶系のウルツ鉱型化合物単結晶において、連続、かつ一様な結晶格子を有するマトリックス領域内に、該マトリックス領域とは結晶格子の配列が異なる島状の結晶マイクロドメインを含み、該結晶マイクロドメイン内のc軸が、前記マトリックス領域のc軸と平行であることを特徴とする。
【0026】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記結晶マイクロドメインの大きさは3〜50nmであり、任意の面で観察した場合の前記結晶マイクロドメインの断面積の和が、該結晶マイクロドメインの以外の前記マトリックス領域の断面積に対して50%以上あることを特徴とする。
【0027】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、X線回折法によって測定される、0002面のロッキングカーブの半値幅が、25arcsec以上、250arcsec以下であることを特徴とする。
【0028】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1,2又は3に記載の発明において、透過型電子顕微鏡で観測される転位密度が、1×104/cm2以上、9×106/cm2以下であることを特徴とする。
【0029】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれかに記載の発明において、結晶中のLi濃度が、1×1012/cm3以上、9×1015/cm3以下であることを特徴とする。
【0030】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれかに記載の発明において、ZnとOを含む材料であることを特徴とする。
【0031】
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、前記ZnとOを含む材料が、ZnO,ZnMgO,ZnCdO,ZnCuO,ZnOS,ZnOSeから選ばれることを特徴とする。
【0032】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7のいずれかに記載の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶からなることを特徴とする。
【0033】
また、請求項9に記載の発明は、まず、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体を用い、昇温速度と降温速度とを考慮して形成された微結晶の集合体を粉砕して結晶粒を形成する第1の工程と、次に、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体と酸化亜鉛単結晶の種結晶を用い、昇温速度と降温速度とを考慮して、ZnOバルク単結晶を形成してから板状種結晶を形成する第2の工程と、次に、前記第1の工程で形成された結晶粒と、前記第2の工程で形成された板状種結晶を用い、アルカリ溶液として水酸化カリウム及び水酸化リチウムを使用し、昇温速度と降温速度とを考慮して結晶マイクロドメイン構造を有するZnOバルク単結晶を形成してから単結晶基板を形成する第3の工程とを有することを特徴とする。
【0034】
また、請求項10に記載の発明は、まず、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体を用い、昇温速度と降温速度とを考慮して形成された微結晶の集合体を粉砕して結晶粒を形成する第1の工程と、次に、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体と酸化亜鉛単結晶の種結晶を用い、昇温速度と降温速度とを考慮してZnOバルク単結晶を形成してから板状種結晶を形成する第2の工程と、次に、前記第1の工程で形成された結晶粒と、前記第2の工程で形成された板状種結晶を用い、アルカリ溶液として水酸化カリウムを使用し、昇温速度と降温速度とを考慮して、結晶マイクロドメイン構造を有するZnOバルク単結晶を形成してから単結晶基板を形成する第3の工程とを有することを特徴とする。
【0035】
また、請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載の発明において、前記第3の工程で形成された単結晶基板上に、分子線エピタキシー装置を用いて単結晶ZnO薄膜を形成する第4の工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0036】
本発明の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶は、元来応力歪みが顕著に低減され、かつ薄膜成長からデバイス作動に至るまでの過程において基板の単結晶が受ける熱応力に対する耐性が強いために、元来打ち消されていた六方晶ウルツ鉱型化合物材料の持つ特徴発現を実現できると言う効果がある。同時に、基板のハンドリングが容易であるためにデバイス形成の負担が低減され、かつ耐久性に優れると言う効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)乃至(c)は六方晶系単結晶構造を示す図である。
【図2】本発明に係る結晶マイクロドメイン構造を説明するための図である。
【図3】本発明に係る六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶の製造装置を説明するための構成図である。
【図4】本発明に係る六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶の製造方法の実施例1を説明するための工程図である。
【図5】本発明に係る六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶の製造方法の実施例2を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
本発明の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶とは、六方晶系ウルツ鉱型の結晶構造を有する化合物の単結晶であり、例えばGaN,AlN,InN等の窒化物,ZnO,ZnS,ZnSeなどの亜鉛化合物等を挙げることができる。また、AlGaNやInGaNなどの混晶,ZnMgO,ZnCuO,ZnOSなど,六方晶系ウルツ鉱型の結晶構造を保持する限りにおいては混晶や不純物がドープされた化合物も含まれる。本発明において、六方晶系ウルツ鉱型は特に限定されるものではないが、ZnO,ZnMgO,ZnCuO,ZnOSなどのZnO系材料の場合に、本発明の最も大きな効果である熱応力耐性の改善が顕著に発現する。
【0039】
本発明における六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶は、結晶マイクロドメイン構造を有することが大きな特徴である。
【0040】
図2(a),(b)は、本発明に係る結晶マイクロドメイン構造の一具体例を説明するための図で、図2(a)は図1(c)に示した図中に界面によって囲まれた島状の結晶マイクロドメイン構造が混在している図、図2(b)は図2(a)に示した結晶マイクロドメイン構造の拡大図である。図中Dは結晶マイクロドメイン構造の領域、Mはマトリックス領域、aはマトリックス領域中のc面の配列、bは結晶マイクロドメイン構造の領域内のc面の配列を示している。なお、結晶マイクロドメイン構造Dを楕円形に示したが、これは説明の都合上、便宜的に示したものであって、実際の結晶マイクロドメイン構造が楕円形の形状に限定されるわけではない。
【0041】
図2(b)に示すように、結晶マイクロドメイン構造は六方晶ではあるが、マトリックス領域Mに見える結晶格子面aと、マトリックス領域M内に混在する結晶マイクロドメイン構造の領域D内の結晶格子面bは、「d」だけズレのある不連続な状態になっている。しかし、この不連続な結晶格子面のc軸の方向は同じになっている。
【0042】
つまり、本発明に係る六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶は、正六角形の平面内で120°をなすa軸と、該a軸に垂直なc軸とを有する六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶であって、連続且つ一様な結晶格子を持つマトリックス領域内に、マトリックス領域とは結晶格子の配列が異なる島状の結晶マイクロドメインを含み、結晶マイクロドメイン内のc軸が、マトリックス領域のc軸と平行である結晶マイクロドメイン構造を有している。
【0043】
ここで、結晶マイクロドメイン構造はマトリックス領域と同じ六方晶であるとして説明したが、六方晶だけではなく正方晶をとりうる場合もある。
【0044】
このようなマイクロドメイン構造としては、マトリックス領域の結晶格子の配列に対してc軸が反平行となる結晶格子の配列を持つ場合や、a軸がc軸のまわりに所定の角度だけ回転した配列を持つ場合などがある。
【0045】
このような結晶マイクロドメイン構造を有することにより、熱応力に対する耐性が顕著に発現する。本発明の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶において、結晶マイクロドメイン構造を有するとは、六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の任意の断面を透過型電子顕微鏡により観察倍率150万倍にて、70nm×40nmの領域で無作為に結晶格子像を20箇所観察したときに、結晶格子が連続しているマトリックス領域の中にマトリックス領域と結晶格子の方向性は同一であるが不連続である3〜50nmの大きさを持つ結晶マイクロドメインが存在し該結晶マイクロドメインの面積の割合が、平均で観察箇所全体の50%以上あるような構造を有することである。透過型電子顕微鏡により観察する断面としては、例えば六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶のc軸に平行な断面でもよく、a軸に平行な断面でもよい。
【0046】
この結晶マイクロドメイン構造を有する面積の割合が50%未満の場合には、本発明の効果である熱応力耐性が発現しない。結晶格子が連続であるとは、透過型電子顕微鏡で観察される結晶格子ラインがそのライン幅の半分以内しかずれたり、揺らいだりしていない状態を言い、不連続であるとは結晶格子ラインが繋がっていない、もしくは結晶格子ライン幅の半分以上ずれて連結している場合を言う。結晶マイクロドメインの形状は、円形,楕円形,三角形,長方形,ひし形など、様々な形状をとることができる。
【0047】
結晶マイクロドメインの大きさには特に限定されないが、ドメインがあまり小さすぎると、従来の高結晶性の単結晶に類似するために熱応力耐性が発現せず、大きすぎると応力分散効果が発現しないため、3〜50nmの範囲が好ましく、より好ましくは5〜30nmの範囲である。ここで言う結晶マイクロドメインの大きさとは、ドメインの最大幅(最大径)を言う。
【0048】
本発明における六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶は、X線回折法によって測定される、0002面のロッキングカーブの半値幅が、20arcsec〜250arcsecの範囲にあることが好ましい。従来、六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の研究は、高結晶性すなわちロッキングカーブの半値幅をできるだけ狭めることが主眼となっており、20arcsecを下回る高結晶性の単結晶が得られている。しかし、ロッキングカーブの半値幅が20arcsecを下回ると、結晶性の高さが逆に熱応力耐性を低下させる傾向があり好ましくない。
【0049】
一方、250arcsecを越えると、熱応力耐性は発現するが、結晶マイクロドメインが様々な方向を持ってランダムに存在する多結晶体に近づくために、結晶性が低すぎて本来の単結晶特性が発現しなくなる。そのため、0002面のロッキングカーブの半値幅が、20arcsec〜250arcsecの範囲である必要があり、好ましくは25〜200arcsec、より好ましくは30〜150arcsecの範囲である。
【0050】
上述したような結晶マイクロドメイン構造により、熱応力耐性が顕著に向上する理由は現時点では必ずしも明確ではないが、単結晶性を有しながらミクロな微細構造を有することにより、マクロなセラミックス材料の場合と同様に、応力の分散性が向上する、応力転位進展が抑制される(クラックアレスト)のような効果があると推定している。従来、六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の検討においては、薄膜成長用の基板として兎にも角にも高い結晶性が追求されてきた。しかし、六方晶系ウルツ鉱型は元来六方晶のウルツ型と立方晶の閃亜鉛鉱が混合しやすい結晶である。そのため、完全なドメインレスとする事は難しい。本発明では、従来の高結晶性と非ドメインの追求と言う単結晶成長の王道とは逆で、一定度以上の結晶性を保持しながらZnO単結晶の微細なドメイン構造を有する従来に無い微細構造形成することにより、実用的な結晶性と熱応力耐性が本発明によって実現された。
【0051】
本発明における六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶は、透過型電子顕微鏡で観測される転位密度が、1×104/cm2以上、9×106/cm2以下であることが好ましい。結晶マイクロドメイン構造を有するために、熱応力耐性が向上して熱応力による転位の発生や進展が防がれることに加えて、元来転位を内在していない事により、本発明の効果がより顕著に発現する。
【0052】
透過型電子顕微鏡により転位密度を計測する場合には、顕微鏡の観察倍率25000倍にて、7μm×8μmの領域で無作為に結晶格子像を20箇所観察し、転位の数を数える。転位は、点状,直線状,曲線状などの様々な形状を有するが、形状に寄らずに全て形状し総和を転位数とする。転位密度は、多すぎると基板上に形成した薄膜にその転位が引き継がれて膜特性を悪化させるため、9×106/cm2以下であることが好ましく、より好ましくは5×106/cm2以下、さらに好ましくは1×106/cm2以下である。転位密度は低ければ低い程良いが、1×104/cm2が本発明で得られている下限値である。従来追求されてきた高い結晶性の単結晶においては、結晶性は非常に高いものの、転位密度は9×107/cm2程度であり非常に多くの転位を内在していたが、本発明により初めて9×106/cm2以下である顕著に転位密度が低減された単結晶が実現された。
【0053】
本発明における六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶は、結晶中のLi濃度が、1×1012/cm3以上、9×1015/cm3以下であることが好ましい。従来、六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶、特にZnO系材料の単結晶にLiが含有すると、Liが熱や電場で結晶中を移動してしまい、ZnOのp型化を阻害する、薄膜の電気特性を不安定化するなどが問題視され、Liの低減検討が成されてきた。しかし、従来の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶では転位が多く、熱応力耐性が低いためにLiを低減する効果の真偽は不明であった。
【0054】
ところが、本発明における単結晶は、元来転位が少なく、かつ熱応力耐性に優れるために、例えば、ZnとOを含む材料の場合には、Li低減によるp型阻害抑制や電気特性の安定性を向上することが可能になる。Liは、薄膜に通常ドーピングされる濃度1017〜1019/cm3よりも二桁以上低い必要があるため、好ましくは9×1015/cm3以下であり、より好ましくは5×1014/cm3以下、さらに好ましくは1×1014/cm3以下である。Li濃度は低ければ低い程良いが、1×1012/cm3が本発明で得られている下限値である。従来追求されてきた高い結晶性の単結晶においては、結晶性は非常に高いものの、Li濃度は、1016〜1018/cm3程度であり非常に多く含有していたが、本発明により初めて9×1015/cm3以下である、顕著にLi濃度が低減された単結晶が実現された。
【0055】
本発明における六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶は、励起光源としてHe−Cdレーザーを用い、波長325.0nmの光を照射した際のフォトルミネッセンスにおいて、下記特性を有することが好ましい。まず、室温でのフォトルミネッセンスにおいて、380nm近傍にピークを有するバンド端発光の強度(Ibr)に対する420nmから800nmにピークを有するブロードなグリーンバンド発光の強度(Igr)が0.1以下であることが好ましく、より好ましくは0.07以下、さらに好ましくは0.5以下である。また、10Kにおけるフォトルミネッセンスにおいて、380nm近傍にピークを有するバンド端発光の強度(Ibl)に対する420nmから800nmにピークを有するブロードなグリーンバンド発光の強度(Igl)が1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。さらには、10Kにおけるバンド端発光強度(Ibl)に対する室温におけるバンド端発光強度(Ibr)が、2%以上であることが好ましく、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは4%以上である。
【0056】
六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶では、例えば、ZnOの場合酸素欠陥、過剰Znの存在、また各種不純物の存在により、バンド間に多くの準位が形成され、それにより本来のバンド端発光以外にグリーンバンド発光が現れる。室温、10K程度の低温でフォトルミネッセンスを測定することにより、それらを総合的に評価することができる。室温、低温の両方においてバンド端発光強度に対してグリーンバンド発光強度が低い事はバンド間に形成された不必要な準位が少ない事を示す。特に低温で測定した際にグリーンバンド発光強度が顕著に低くなることは、本質的に欠陥、不純物が少ないことを示す。一方、低温でのバンド端発光強度に対する室温でのバンド端発光強度が一定以上であると温度上昇による欠陥発生が少なくなる。
【0057】
次に、本発明の結晶マイクロドメイン構造を有する六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶を製造する方法の好ましい例について、ZnO単結晶の場合について説明する。
【0058】
本発明に係る六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の製造方法は、非特許文献1、2に記載されている水熱法によるZnO単結晶成長の基本技術をベースとする。すなわち、ZnO原料を結晶の育成容器の下部に、(0001)面に平行に切り出したZnO種結晶を該育成容器の上部に各々配置し、次いでKOH及びLiOHなどからなるアルカリ水溶液の溶媒を充填する。さらに酸素発生剤として過酸化水素を加えた状態で、育成容器内を370〜400℃の育成温度、700〜1000kg/cm2の圧力で、育成容器内の上部と下部で下部の温度が上部の温度より一定範囲高くなるように運転することにより、種結晶上に酸化亜鉛単結晶を成長させる。
【0059】
ここで、上記基本技術では開示されていない、本発明における異なる製造条件としては、下記の点を挙げることができる。
1)ZnO原料が主として結晶粒であること。
2)結晶成長開始時における昇温速度が、0.5℃/min以上2℃/min以下であり、かつ成長時における育成容器内の上部と下部で下部の温度差が3〜7℃の範囲であること。
3)結晶成長終了時における降温速度が、0.5℃/min以上2℃/min以下であること。
4)LiOH、KOHの両方を用いてm方向、c方向の両方向を成長させた単結晶をc面に平行にスライスした種結晶を用い、LiOHを含まないアルカリ溶液下で+c方向、−c方向に成長させる二段法であること。
【0060】
本発明の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の製造に用いられるZnO原料は主として結晶粒であることが好ましく、結晶粒は水熱法による自然核形成によって得られたものであることがより好ましく、さらに鉱化剤としてLiOH等のLi含有化合物を用いずに製造させたものであることが好ましい。主として結晶粒であるとは、ZnO原料の50%以上が結晶粒である事を言う。結晶粒の割合は50%以上であれば特に限定されず、全部が結晶粒でも構わない。原料が結晶粒であることにより、アルカリ水溶液への溶解速度が遅くなり、かつアルカリ溶液中の溶解種濃度が低下する。これが、後術の昇温速度効果と相まって結晶マイクロドメイン構造の形成に寄与すると推定している。
【0061】
結晶粒の大きさは、特に限定されるものではないが、小さすぎると比表面積が大きくなって溶解速度が大きくなってしまう、また大きすぎると必要な溶解種濃度が得られない。そのため、好ましくは0.1mm〜10mmの範囲であり、より好ましくは0.5mm〜7mm、さらに好ましくは1mm〜5mmの範囲である。結晶マイクロドメイン構造をより形成しやすくするように、ZnO原料の溶解速度や水溶液中の溶解種濃度を制御する場合には、大きさの異なる結晶粒を敢えて混合して用いることも好ましく行われる。
【0062】
同じ結晶粒でも、水熱法によって得られた結晶粒の方が本発明の結晶マイクロドメイン構造の形成に好ましい理由は現時点では明確ではない。しかし、例えば、気相法によって得られた結晶粒と比較して嵩密度が高く、酸素欠陥などが少ないために、アルカリ水溶液への溶解速度が遅くする効果やアルカリ溶液中の溶解種濃度を低下させる効果を有すると推定している。
【0063】
また、本発明の結晶マイクロドメイン効果をより発現するためにはLiを含有しない単結晶を製造することになるため、原料となる結晶粒にLiを含有させないために、Liフリーで成長させたものであることがより好ましい。
【0064】
本発明の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の製造においては、結晶成長開始時における昇温速度が、0.5℃/min以上2℃/min以下であり、かつ成長時における育成容器内の上部と下部の温度差が3〜7℃の範囲であることが好ましい。水熱超臨界下での結晶成長は、育成容器内の下部(原料部)と上部(結晶成長部)の温度差が重要である。温度差が大きければ、結晶成長部での溶液の過飽和度が高くなるために、溶解種が析出するためのポテンシャル障壁が低くなり、容易に析出が起きる。そのため、溶液中に存在し得る溶解種の大きさは小さく、すなわち、低重合度(=低分子)の溶解種が主体を占め、多角成長が起きやすくなる。析出する分子が低分子のため、エネルギー的に安定な場所に容易に移動して整然と配列しやすく、結果として結晶性は向上する。
【0065】
一方、温度差が小さい場合には、結晶成長部での溶液の過飽和度が非常に低くなるため、低分子は析出できず、一定度以上の中分子が析出する。中程度の分子が互いに結合しようとした場合、自由度が少ないために析出後の移動がしにくく、整然とは配列しにくい。このようにして、温度差が低い場合には、結晶マイクロドメイン構造が形成しやすい。そのため、従来は温度差が10〜15℃程度であったが、本発明においては温度差が3〜7℃の範囲であることが好ましく、より好ましくは4〜6℃である。しかし、単に成長時の温度差を小さくするだけでなく、結晶成長開始時における昇温速度を0.5℃/min以上2℃/min以下にすること、合わせて結晶成長終了時における降温速度が、0.5℃/min以上2℃/min以下であること、が重要である。
【0066】
水熱による単結晶成長は、成長期間が数ヶ月と長く、全体の工程で言えば昇温期間、降温期間は1日以下であるために、その影響は小さいと考えられて注目されることはなかった。しかし、驚くべきことに、結晶粒を原料として用い、成長時の温度差を非常に小さくした本発明においては、昇温速度、降温速度が非常に重要であることが本発明により始めて明らかにされた。
【0067】
現時点で昇温速度、降温速度が本発明の結晶マイクロドメイン構造を有する六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶を可能にするメカニズムは必ずしも明確ではないが、昇温速度が速い場合、原料の結晶粒の表面と内部の温度差が生じ、結晶粒に微細なクラックが生じてアルカリ溶液が内部に入り込むことで溶解速度が速くなってしまい、昇温過程で種結晶表面に多くの核生成が起きてしまうなどの現象を推定している。
【0068】
一方、降温速度が早いと、今度は成長した単結晶表面と内部に温度差が生じ、結晶マイクロドメインを形成して安定した結晶が得られたにも関わらず、降温時期に転位やクラックが入りやすくなる。そのため、昇温速度も、降温速度も、2℃/min以下が好ましく、より好ましくは1.5℃/min以下、さらに好ましくは1℃/min以下である。両速度が長すぎても結晶特性への悪影響は無いが、必要以上に長いと工程が長くなりすぎるため、0.5℃/min以上が好ましい。
【0069】
本発明における六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の製造においては、LiOH、KOHの両方を用いてm方向、c方向の両方向を成長させた単結晶をc面に平行にスライスした種結晶を用い、LiOHを含まないアルカリ溶液下で+c方向、−c方向に成長させる二段法であることが好ましい。従来より、LiOHはm方向、c方向の両方をバランスよく成長させ、KOHはc方向を優先的に成長させることが公知である。そのため、上記の二段法により、薄膜特性の制御、デバイス特性に悪影響を及ぼすLiを含有しない単結晶を得ることが可能になった。
【0070】
本発明における六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の製造においては、酸素発生剤の添加及び添加量,原料温度,育成温度,育成圧力については特に限定されず、従来の水熱法によるZnO単結晶基礎技術の範囲(酸素発生剤の過酸化水素、育成容器内の温度:370〜400℃、圧力:700〜1000kg/cm2)で適宜条件を選択し、それを与える容器内充填率を選択する。中でも好ましい条件としては、成長部温度として380〜390℃、育成圧力1100〜1200kg/cm2と比較的温度が高く、圧力も高い領域で成長させることが好ましい。
【0071】
本発明における六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の製造においては、過酸化水素以外の酸素発生剤の添加、ドーピングされた単結晶を得ようとする場合のドーピング元素原料の添加、ZnO系混晶を得ようとする場合の該当原料の添加などは制限させるものではなく、得ようとする結晶の特性に応じて適宜行われる。
【0072】
本発明における六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の製造においては種結晶を用いるが、種結晶は表面が研磨され、AFM測定におけるRMS値が0.2以下であることが好ましい。従来、水熱法による単結晶成長では、昇温過程を経て上下の温度差が安定するまでは種結晶表面も一部溶解され平滑な清浄面が形成されるために、種結晶は切断しただけ、もしくは多少のケミカルエッチングを施せば良く、種結晶が透明であるほどの平滑性は不要とされてきた。
【0073】
しかし、成長時の上下温度差が低く、昇温速度が遅い本発明においては、昇温過程において表面の溶解を極力押える条件である。そのため、種結晶表面は平滑に研磨されたものであることが好ましい。さらに、種結晶についても、転位密度が9×106/cm2以下である事が好ましい。従来、種結晶の結晶性や内在転位に関してはあまり関心が持たれていない。しかし、種結晶に内在する転位は、その上に水熱成長する単結晶に引き継がれる。従って、従来と異なり転位密度を非常に低減した単結晶が得られる本発明の製造法においては、種結晶の転位が少ないことがより好ましい。
【実施例】
【0074】
以下に、本発明の具体的な実施例について説明する。
図3は、本発明に係る六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶の製造装置を説明するための構成図である。図3(a)は酸化亜鉛単結晶育成装置の構成図、図3(b)は酸化亜鉛単結晶育成装置に使用する酸化亜鉛単結晶育成容器の構成図を示している。図3(a)において、酸化亜鉛単結晶育成装置11は、超臨界条件とすることのできる高圧用オートクレーブ12の温度条件を本発明に育成過程に沿って制御するためにヒータ21,22とからなり、装置全体は、温度条件を一定に保つための断熱材23によって外界と遮断されている。
【0075】
オートクレーブ12は、耐圧容器であってオートクレーブ収容部13内に酸化亜鉛単結晶育成容器31をセットし、蓋体16により開口を閉じて内部を密閉する。この蓋体16はパッキン部材15を具え、オートクレーブ本体14と蓋体16との間をねじ17により強固に締結して、高圧下に密閉状態を保持する。オートクレーブ12の外周上部及び下部は、上下に配置されたヒータ21,22によって一定の温度条件下に保たれる。
【0076】
酸化亜鉛単結晶育成容器31は、図3(b)に示すように、内部の反応条件で不純物を溶出しない材料、白金(Pt)、金(Au)などで形成し、内部は種結晶をセットする単結晶育成領域と出発材料を配置する原料領域とに分けられ、これら2つの領域は内部バッフル板34よって仕切られ、この内部バッフル板34に設けられた多数の孔によって溶媒の流通が制御される。
【0077】
この酸化亜鉛単結晶育成容器31の内部には、同様に不純物を溶出しないよう白金などで形成したフレーム32と支持具33とからなる懸架具により種結晶41a乃至41dを吊り下げてセットする。酸化亜鉛単結晶育成容器31の上端には酸化亜鉛粉末の焼結体や酸化亜鉛の結晶粒などの出発材料51などをセットした後に酸化亜鉛単結晶育成容器31を封止する蓋37が設けられ、この蓋37には、溶媒や酸化剤などを注入する微少開口38が設けられている。また、酸化亜鉛単結晶育成容器31の外周は、同様に流通孔を有するバッフルリング35が設けられて、オートクレーブ収容部13内で、酸化亜鉛単結晶育成容器31を支持している。
【0078】
本発明に用いられる各種の測定方法は以下の通りである。
[単結晶基板の研磨方法]
単結晶成長、切断後のアズカット基板を、SiC研磨紙で粗研磨を行う。粗研磨は、丸本ストルアス製研磨紙の順に#500、#1200、#2400を用い、水を供給しながら行う。その後、丸本ストルアス製ダイヤモンド研磨粉の3μm、1μm、1/4μmを順に用いて研磨し、光学顕微鏡で200倍で観察して傷が無い状態にする。次に、CMP用コロイダルシリカ(丸本ストルアス製)を用いCMPを行う。研磨の際の研磨板回転速度は150rpmで行う。
【0079】
[X線回折]
リガク製X線回折装置(ATX−G)を用い、管球ターゲットはCu(入射X線波長1.54059Å(Cu Kα1)、管電圧50kV、管電流300mAにて測定する。入射単色化は、Ge(440)×4結晶により行う。ZnOの(0002)面のロッキングカーブ測定は、スキャン軸ω軸(2θ=34.430°固定)、連続スキャンモード、ステップ幅0.0001°、スキャンスピード0.02°/minで行う。
【0080】
[TEM観察]
(結晶格子像の観察)
イオンミリング装置(Gatan社:600型)を用い、Arガスによるイオンミリングにより観察切片を作製する。TEM観察は、HITACHI製H−9000NARを用い、加速電圧300kV、撮影倍率30万倍、引延し倍率(5倍)により観察倍率150万倍にて、視野サイズ70nm×40nmを撮影する。結晶マイクロドメイン構造の判定においては、撮影画像を0001方向にのみ5倍引き伸ばした写真を用いて判定する。
【0081】
(転位の観察)
イオンミリング装置(Gatan社:600型)を用い、Arガスによるイオンミリングにより観察切片を作製する。TEM観察は、HITACHI製H−9000NARを用い、加速電圧300kV、撮影倍率5000倍、引延し倍率(5倍)により観察倍率25000倍にて、視野サイズ7μm×8μmを撮影する。
【0082】
[SIMS測定]
導電膜コート処理を施したサンプルを、CAMECA社製 セクター型SIMSで測定する。正イオン測定時は、装置はCAMECA社製IMS−6Fを用い、照射源O2+、加速電圧5.5kV、ラスター領域150μm×150μm、分析領域60μmφ、二次イオン極性をPositive、E−gunによる帯電補償を行いながら測定する。負イオン測定時は、CAMECA社製IMS−4Fを用い、照射源Cs+、加速電圧14.5kV、ラスター領域125μm×125μm、分析領域30μmφ、二次イオン極性をNegativeにて測定する。表面付近より測定しながら約5μm程度切削し、検出値がほぼ一定となった数値を含有量とする。なお、定量は既知濃度の対象元素を含む標準試料(ZnO)を用いて行う。
【0083】
[エッチピット密度]
解析用に研磨されたサンプルを用い、Zn面を用いて評価する。サンプルを予め作製した10wt%のHCl溶液に3分浸漬し、純水で十分洗浄、乾燥した後にZn面を光学顕微鏡で観察する。観察領域は5×5mmで、倍率200倍で観察し、六角形状のエッチピットの個数を数える。
【0084】
[PL測定]
励起光源としてHe−Cdレーザーを用い、波長325.0nmの光を照射した際の発光(フォトルミネッセンス)を検出する。測定は、室温、及び低温(10K)で実施する。発光は380nm近傍にピークを有するバンド端発光、420nmから800nmにピークを有するブロードなグリーンバンド発光が観測される。室温、低温にてスペクトルを測定し、各々のピークの発光強度を測定して評価する。
【実施例1】
【0085】
図4は、本発明に係る六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶の製造方法の実施例1を説明するための工程図である。本実施例1の六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶の製造方法は、まず、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体を用い、昇温速度と降温速度とを考慮して形成された微結晶の集合体を粉砕して結晶粒を形成する第1の工程(S11)と、次に、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体と酸化亜鉛単結晶の種結晶を用い、昇温速度と降温速度とを考慮してZnOバルク単結晶を形成してから板状種結晶を形成する第2の工程(S12)と、次に、第1の工程で形成された結晶粒と、第2の工程で形成された板状種結晶を用い、アルカリ溶液として水酸化カリウム及び水酸化リチウムを使用し、昇温速度と降温速度とを考慮して結晶マイクロドメイン構造を有するZnOバルク単結晶を形成してから単結晶基板を形成する第3の工程(S13)を有している。
【0086】
以下に、各工程について具体的に説明する。
[水熱法による結晶粒の形成工程]
白金製の育成容器の下部(原料部)に高純度科学社製高純度酸化亜鉛粉末より得られた粒度3mm〜10mmの焼結体190部を充填し、その上部にはバッフル板を介して白金製メッシュを配置し、4mol/Lの水酸化カリウム水溶液203部を注入した。次いで、過酸化水素とアルカリの反応を抑制しながら酸化剤として過酸化水素0.5部を注入し、育成容器を密封した。
【0087】
次に、育成容器を合金製オートクレーブに入れ、育成容器とオートクレーブの間に蒸留水57部を入れてからオートクレーブを密封し、昇温速度5℃/minで加熱し、育成容器下部を404〜407℃、上部を392から394℃まで温度を上げ、その後20日間維持し、降温速度5℃/minで常圧、常温に戻してLiフリーの不定形微結晶の集合体を得た。得られた集合体を粉砕し、粒径0.1mm〜10mmの結晶粒を得た。
【0088】
[水熱法による種結晶の形成工程]
白金製の育成容器の下部(原料部)に高純度科学社製高純度酸化亜鉛粉末より得られた粒度3mm〜10mmの焼結体190部を充填し、その上部にはバッフル板を介して、種結晶として酸化亜鉛単結晶のc軸に垂直な(0001)面の板状小片を懸垂させ、水酸化カリウム水溶液濃度3.5mol/L、水酸化リチウム濃度1.5mol/Lのアルカリ溶液201部を注入した。次いで、過酸化水素とアルカリの反応を抑制しながら酸化剤として過酸化水素0.7部を注入し、育成容器を密封した。
【0089】
次に、育成容器を合金製オートクレーブに入れ、育成容器とオートクレーブの間に蒸留水61部を入れてからオートクレーブを密封し、昇温速度5℃/minで加熱し、育成容器下部を383℃、上部を373℃まで温度を上げ、その後36日間維持し、降温速度5℃/minで常圧、常温に戻してc軸、m軸の両方向に成長したZnOバルク単結晶を得た。この単結晶をc軸に垂直に厚さ0.8〜1.5mmの板状に切断、アルカリ洗浄、表面研磨を行い、(0001)面の板状種結晶を得た。
【0090】
[単結晶の成長工程]
白金製の育成容器の下部(原料部)に上記水熱法で得られた粒径0.1mm〜10mmの結晶粒200部を充填し、その上部にはバッフル板を介して、種結晶として上記水熱法で予め作成したc軸に垂直な(0001)面の板状種結晶を懸垂させ、水酸化カリウム水溶液濃度3.5mol/L、水酸化リチウム濃度1.5mol/Lのアルカリ溶液201部を注入した。次いで、過酸化水素とアルカリの反応を抑制しながら酸化剤として過酸化水素0.7部を注入し、育成容器を密封した。
【0091】
次に、育成容器を合金製オートクレーブに入れ、育成容器とオートクレーブの間に蒸留水61部を入れてからオートクレーブを密封し、昇温速度3℃/minで加熱し、育成容器下部を388℃、上部を383℃まで温度を上げ、その後36日間維持し、降温速度3℃/minで常圧、常温に戻してc軸、m軸の両方向に成長したZnOバルク単結晶を得た。この単結晶をc軸に垂直に厚さ0.8〜1.5mmの板状に切断し、研磨を実施して(0001)面の単結晶基板を得た。尚、成長中のオートクレーブ内力は1190気圧であった。
【0092】
得られた基板の特性評価を行った結果を表1に示す。
【0093】
【表1】

【実施例2】
【0094】
図5は、本発明に係る六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶の製造方法の実施例2を説明するための工程図である。
水熱法による結晶粒の形成工程及び種結晶の形成工程については、上述した実施例1と同様である。つまり、まず、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体を用い、昇温速度と降温速度とを考慮して形成された微結晶の集合体を粉砕して結晶粒を形成する第1の工程(S21)と、次に、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体と酸化亜鉛単結晶の種結晶を用い、昇温速度と降温速度とを考慮して結晶マイクロドメイン構造を有するZnOバルク単結晶を形成してから板状種結晶を形成する第2の工程(S22)とを有する。
【0095】
次に、本実施例2においては、上述した実施例1とは異なり、第1の工程で形成された結晶粒と、第2の工程で形成された板状種結晶を用い、アルカリ溶液として水酸化カリウムを使用し、昇温速度と降温速度とを考慮してZnOバルク単結晶を形成してから単結晶基板を形成する第3の工程(S23)を有している。
【0096】
上述した第3の工程(S23)においては、白金製の育成容器の下部(原料部)にアルカリ溶液として4.0mol/L水酸化カリウム溶液を250部を注入したこと以外は、実施例1と同様にしてZnOバルク単結晶を得た。この単結晶をc軸に垂直に厚さ0.8〜1.5mmの板状に切断し、研磨を実施して(0001)面の単結晶基板を得た。なお、成長中のオートクレーブ内力は1183気圧であった。
【0097】
得られた基板の特性評価を行った結果を表1に示す。
【実施例3】
【0098】
実施例1、2で得られた単結晶基板上に、分子線エピタキシー装置を用いて以下の条件にて単結晶のZnO薄膜を成長した。まず、インコネル製の基板ホルダーに−c面が表面になるように単結晶基板を乗せて固定し、分子線エピタキシー装置内に導入した。
【0099】
これを真空中で基板温度が800℃になるまで加熱し、この状態で約10秒間維持することによって清浄な基板表面を得た。所望とする清浄な表面が得られたかどうかは、熱処理中に反射高速電子線回折パターンがストリーク状になることによって確認することが出来る。
【0100】
次に、基板温度が500℃になるまで降温し、亜鉛と酸素を供給してZnO薄膜を成長した。典型的な成長条件として、亜鉛の分子線等価圧力は1.5×10-7Torr、酸素はRFプラズマソースを通して活性化した後、ラジカル状酸素を4.2×10-6Torrの圧力なるように供給した。成長した膜の膜厚は、成長時にマスクされていた部分との段差を測ることによって測定し、本実施例においては2時間の成長によって4000ÅのZnO薄膜を成長した。
【0101】
成長後の膜が良好な結晶性を有しているかどうかは、成長後の反射高速電子線回折パターンがストリーク状になるかどうかによって大まかに判断することが出来るが、断面TEMを観察することによって確認することが出来る。本実施例においても断面TEMを観察した結果、成長後の膜内に転位は全く観察されず、転位密度として少なくとも6×10-7cm-2以下であり、エピタキシャル成長用の基板として有用であることを確認した。
【0102】
(比較例1)
単結晶成長を実施する際の温度が、育成容器下部を383℃、上部を373℃としたこと以外は、実施例1と同様にしてZnOバルク単結晶、並びに(0001)面の単結晶基板を得た。得られた基板の特性評価を行った結果を表1に示す。
【0103】
(比較例2)
単結晶成長を実施する際の昇温速度が8℃/minとしたこと以外は、実施例1と同様にしてZnOバルク単結晶、並びに(0001)面の単結晶基板を得た。得られた基板の特性評価を行った結果を表1に示す。
【0104】
(比較例3)
単結晶成長に用いる原料として、高純度科学社製高純度酸化亜鉛粉末より得られた粒度3mm〜10mmの焼結体を用いたこと以外は実施例1と同様にしてZnOバルク単結晶、並びに(0001)面の単結晶基板を得た。得られた基板の特性評価を行った結果を表1に示す。
【0105】
(比較例4)
市販(A社)のZnO単結晶基板を購入し、特性評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
(比較例5)
市販(B社)のZnO単結晶基板を購入し、特性評価を行った。結果を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、転位欠陥が非常に低減され、かつ熱応力に強い六方晶ウルツ鉱型化合物単結晶及びそれより得られるエピタキシャル成長用単結晶基板を提供できる。そのため、基板上に薄膜を成膜した際の薄膜への悪影響が少なく、成膜からデバイス作動時における転位発生の顕著な低減を実現する、発光素子用の基板として好適である。
【符号の説明】
【0108】
11 酸化亜鉛単結晶育成装置
12 高圧用オートクレーブ
13 オートクレーブ収容部
14 オートクレーブ本体
15 パッキン部材
16 蓋体
17 ねじ
21,22 ヒータ
23 断熱材
31 酸化亜鉛単結晶育成容器
32 フレーム
33 支持具
34 内部バッフル板
35 バッフルリング
37 蓋
38 微少開口
41a乃至41d 種結晶
51 出発材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正六角形の平面内で120°をなすa軸と、該a軸に垂直なc軸とを有する六方晶系のウルツ鉱型化合物単結晶において、
連続、かつ一様な結晶格子を有するマトリックス領域内に、該マトリックス領域とは結晶格子の配列が異なる島状の結晶マイクロドメインを含み、該結晶マイクロドメイン内のc軸が、前記マトリックス領域のc軸と平行であることを特徴とする六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶。
【請求項2】
前記結晶マイクロドメインの大きさは3〜50nmであり、任意の面で観察した場合の前記結晶マイクロドメインの断面積の和が、該結晶マイクロドメインの以外の前記マトリックス領域の断面積に対して50%以上あることを特徴とする請求項1に記載の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶。
【請求項3】
X線回折法によって測定される、0002面のロッキングカーブの半値幅が、25arcsec以上、250arcsec以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶。
【請求項4】
透過型電子顕微鏡で観測される転位密度が、1×104/cm2以上、9×106/cm2以下であることを特徴とする請求項1,2又は3に記載の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶。
【請求項5】
結晶中のLi濃度が、1×1012/cm3以上、9×1015/cm3以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶。
【請求項6】
ZnとOを含む材料であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶。
【請求項7】
前記ZnとOを含む材料が、ZnO,ZnMgO,ZnCdO,ZnCuO,ZnOS,ZnOSeから選ばれることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶からなることを特徴とするエピタキシャル成長用単結晶基板。
【請求項9】
まず、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体を用い、昇温速度と降温速度とを考慮して形成された微結晶の集合体を粉砕して結晶粒を形成する第1の工程と、
次に、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体と酸化亜鉛単結晶の種結晶を用い、昇温速度と降温速度とを考慮して、ZnOバルク単結晶を形成してから板状種結晶を形成する第2の工程と、
次に、前記第1の工程で形成された結晶粒と、前記第2の工程で形成された板状種結晶を用い、アルカリ溶液として水酸化カリウム及び水酸化リチウムを使用し、昇温速度と降温速度とを考慮して結晶マイクロドメイン構造を有するZnOバルク単結晶を形成してから単結晶基板を形成する第3の工程と
を有することを特徴とする六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の製造方法。
【請求項10】
まず、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体を用い、昇温速度と降温速度とを考慮して形成された微結晶の集合体を粉砕して結晶粒を形成する第1の工程と、
次に、水熱法により、酸化亜鉛粉末の焼結体と酸化亜鉛単結晶の種結晶を用い、昇温速度と降温速度とを考慮してZnOバルク単結晶を形成してから板状種結晶を形成する第2の工程と、
次に、前記第1の工程で形成された結晶粒と、前記第2の工程で形成された板状種結晶を用い、アルカリ溶液として水酸化カリウムを使用し、昇温速度と降温速度とを考慮して、結晶マイクロドメイン構造を有するZnOバルク単結晶を形成してから単結晶基板を形成する第3の工程と
を有することを特徴とする六方晶系ウルツ鉱型化合物単結晶の製造方法。
【請求項11】
前記第3の工程で形成された単結晶基板上に、分子線エピタキシー装置を用いて単結晶ZnO薄膜を形成する第4の工程を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の六方晶系のウルツ鉱型化合物単結晶の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−202454(P2010−202454A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49503(P2009−49503)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(303046277)旭化成エレクトロニクス株式会社 (840)
【出願人】(599120211)ユーエムケー・テクノロジ−株式会社 (2)
【Fターム(参考)】