説明

共役リノール酸のジグリセライドの豊富な油脂組成物

本発明は、共役リノール酸のジグリセライドが多量含有された油脂組成物に関するもので、より詳しくは、食用油から製造した共役リノール酸とグリセロールの酵素反応で得られた共役リノール酸のジグリセライドに基づいた体重調節、抗がん、抗酸化および免疫増強の機能を有する油脂組成物に関する。本発明の油脂組成物は、ジグリセライド40〜95重量%、トリグリセライド5〜60%重量%、モノグリセライド0.1〜10重量%および残余物0.02〜10重量%とを含み、全グリセリドに含まれる脂肪酸に対する共役リノール酸(CLA)の割合が5〜98%である。この油脂組成物を利用して抗がん性、免疫増強性、抗酸化性、抗コレステロール性および成長促進などの効果を有している付加価値の高い食品、薬学的組成物、および飼料添加剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役リノール酸のジグリセライドが多量含有された油脂組成物に関し、より詳しくは、食用油脂から製造した共役リノール酸とグリセロールの酵素反応により得られた共役リノール酸のジグリセライドに基づいた体重調節、抗がん、抗酸化および免疫増強の機能を有する油脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
共役リノール酸(Conjugated Linoleic Acid;以下CLA)は、シスあるいはトランス配置(configuration)の共役二重結合(Conjugated double bonds)を有するリノール酸の位置異性体および幾何異性体(positional and geometric isomer)の群を称する一般的な名称である。
【0003】
CLAは、シス7、トランス9−CLA;トランス7、トランス9−CLA;シス8、トランス10−CLA;トランス8、トランス10−CLA;シス9、トランス11−CLA;トランス9、トランス11−CLA;シス10、トランス12−CLA;トランス10、トランス12−CLA;トランス11−CLA;シス11、トランス13−CLA;トランス11、トランス13−CLA異性体など、多様な形態の異性体で存在する。天然食品にはシス9、トランス11−CLA異性体が最も高い濃度で存在し、リノール酸の豊富な食用油から合成されたCLA混合物は、シス9、トランス11−CLAとトランス10、シス12−CLA異性体を主に含有する。
【0004】
多数の報告と文献を通してCLAの栄養・生理学的な重要性が知られている。反芻胃を有する動物から由来したCLAは天然の多機能性脂肪酸であり、抗突然変異作用による皮膚癌、胃癌、乳腺癌、結腸癌の抑制または減少効果(Ha、et al.、Cancer Res.,50;1097[1990].Birt、et al.、Cancer Res.,52;2035[1992])が知られており、ブドウ糖に対する耐性を低下させることによる糖尿病の治療効果、体脂肪を減少させることによる肥満の抑制効果(Cook et al、米国特許第5554646号)があり、高血圧を予防または調整する効果とともに、免疫増強(Cook et al、米国特許第5674901号)、抗酸化、抗コレステロール(Nicolosi et al、Circulation 88(suppl.):2458、1993)、抗カビなど多様な人体に有益な効能が知られている。
【0005】
現在までCLAは、遊離脂肪酸、エステル誘導体、またはトリグリセライドの形態で使用されている。遊離脂肪酸形態であるCLAの場合には、末端のカルボキシル基に毒性があり、酸性化が早く起こり、摂取時の独特な味と匂いのため嗜好性が低下し、動・植物性油脂に添加される場合、油脂の品質低下の恐れがあって使用範囲がカプセル様の製品などに限定されるなどの短所が知られている。
【0006】
そして、エステル誘導体形態のCLAは、大韓民国登録特許第0037151号などに開示されているようにCLAにリン脂質、アスコルビン酸など諸機能性物質を結合させて製造する方法などが知られている。しかし、これらに対する生理的機能及び製品の適用性に対する検証が足りない。さらに、遊離脂肪酸とエステル誘導体の形態で加工されたCLAは耐酸化性および加工性が低く、刺激臭・刺激味などが存在するため、製品への適用が困難である。
【0007】
一方、CLAを摂取した後、グリセリド形態で体内に吸収されることが知られていることから、先述した遊離脂肪酸形態またはエステル誘導体の形態のCLA製品に比べグリセリド形態のCLA製品が摂取後の体内吸収率のみならず、食品および医薬品の適用においてより有利であると予想された。
【0008】
これに関連し、国際公開特許第00/18944号ではトリグリセライド形態のCLAを含む組成物が開示されており、米国特許第6608222号ではピマシ油を原料にCLAとL−カルニチン(carnitine)またはL−カルニチン誘導体を使用した組成物が開示されている。また、その他にグリセリドの脂肪酸の位置にCLAを含む中鎖脂肪酸(medium chain fatty acid)、長鎖脂肪酸(Long chain fatty acid)、ω−3脂肪酸、ω−6脂肪酸、ω−9脂肪酸を含む組成物を開示する国際特許第03/043972号が知られている。
【0009】
その他の特許等では、CLAの機能性を利用するための様々な方法が提示されているが、CLAのトリグリセライドに関するものが大部分を占めている。
【0010】
しかし、トリグリセライドは口から摂取されて胃腸で消化される場合や膵臓から分離されるリパーゼによってトリグリセライドの3個の脂肪酸中2個が分離されて腸内に吸収されるが、人体に吸収された後、体内で再び結合してトリグリセライドを形成した後、血液中を流れ、その後内臓周辺や皮下脂肪に蓄積されることが知られている。
【0011】
一方、ジグリセライドは一般に天然油脂中に微量存在しており、したがって以前から高価な化粧品や医薬品に利用されていたが、汎用的には使用されていない。しかし上述したトリグリセライドの問題点により、近年グリセリド形態の一種であるジグリセライドを食品などに汎用的に使用しようとする試みが活発に行なわれている。
【0012】
これは、ジグリセライドはトリグリセライドとは異なって、構造的に安定であり、かつリパーゼによって分解及び吸収された後に再合成過程が行なわれず、それにより、体内に蓄積されず肝臓と筋肉に運搬されて完全燃焼後、水と二酸化炭素になるからである。
【0013】
そこで、米国特許第6004611号は先述した特性を有し、汎用的に使用することができるジグリセライド製品を開示している。その他にヨーロッパ特許第1135991号はω−3脂肪酸を有するジグリセライドの製造を記載しており、特許第8269478号は中鎖脂肪酸(medium chain fatty acid)を有するジグリセライドの製造を記載している。このように体内脂肪の蓄積防止を目的に、ジグリセライドは現在主に食用油製品として応用されており、日本と米国では既に商品化され市販されている。
【0014】
かかる問題点から、本発明者等はCLAをジグリセライド形態で体内に供給すると、既存のジグリセライド製品より体内の脂肪蓄積防止効果をさらに強化することができ、油脂の構造的安定性以外にCLAの多様な栄養・生理学的な長所を製品に与えることができ、既存製品より優れた製品を提供することができると考えた。従って、従来のトリグリセライド形態のCLA摂取と異なり、本発明ではCLAのジグリセライドを主成分とする油脂組成物及びその適用方法の開発を試み、長期間の研究の末にこれを完成した。
【発明の開示】
【0015】
本発明の目的は、ジグリセライドの形態で形成されたCLAを多量に含有する油脂組成物を提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、上記油脂組成物を含有する食品を提供することである。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、上記油脂組成物を有効成分として含有する体重調節、抗がん、抗酸化および免疫増強用の機能性食品および医薬組成物を提供することである。
【0018】
上記の課題を解決するために、本発明は、ジグリセライド40〜95%重量%、トリグリセライド5〜60重量%、モノグリセライド0.1〜10重量%および残余物0.02〜10重量%を含有し、全グリセリド中に含まれる脂肪酸に対する共役リノール酸(CLA)の割合が5〜98%である油脂組成物を提供する。
【0019】
別の側面において、本発明は油脂組成物を含有する食品を提供する。
【0020】
さらにまた、本発明は上記油脂組成物を有効成分として含有する体重調節、抗がん、抗酸化および免疫増強用の機能性食品および医薬組成物を提供する。
【0021】
そして、本発明の製造工程から製造された油脂組成物は、この組成物の主成分であるジグリセライドを精製する工程で除去されることなく残存する、遊離脂肪酸とグリセロールの混合物を含有する。該混合物を本明細書では「残余物」と呼ぶ。この際、上記残余物は0.02〜10重量%であることが好ましい。これは遊離脂肪酸とグリセロールを上記組成物から完全に除去する場合には生産コストが上昇するためである。したがって、遊離脂肪酸とグリセロールを完全に除去することなく好ましく使用することができる。
【0022】
また、全グリセリド中に含まれる脂肪酸の中で上記共役リノール酸(CLA)は、 シス−9、トランス−11CLA、トランス−10、シス−12CLA及びその他の異性体から成る群より選択された少なくとも1種以上を含む。
【0023】
しかし、本発明は上記種類の一般に知られた共役リノール酸の異性体に限定されるものではない。
【0024】
そして、本発明において上記CLAは、紅花油、豆油、コーン油、菜種油、米糠油、ゴマ油、エゴマ油、ヒマワリ油、線実油、ピーナッツオイル、オリーブ油、パーム油、パームオレイン油、パームステアリン油、パーム核油(palm kernel oil)、椰子油、牛脂、豚脂、混合植物油、ショートニング、マーガリン油、唐辛子種油、カポック油およびニカ油を含む、リノール酸の豊富な動植物性油脂から成る群より選択された少なくとも1種の食用油脂から得られる。好ましくは、上記CLAは紅花油、コーン油、ツキミソウ種子油(evening primrose oil)、およびヒマワリ油を含む植物性油から得られる。
【0025】
また、本発明の油脂組成物は、一般食用油、サラダ油、フライ用油脂、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、アイスクリーム、生クリーム代替物、ドレーシング、マヨネーズ、製菓用油脂食品などの製造に使用される。
【0026】
さらに、本発明の油脂組成物は体重調節、抗がん、抗酸化および免疫増強用の機能性食品および医薬組成物に有効成分として使用される。
【0027】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0028】
先ず、本発明の油脂組成物を製造するためにCLAは、リノール酸(Linoleic acid)および紅花油、コーン油、ツキミソウ種子油、ヒマワリ油などのリノール酸の豊富な食用油から公知のCLA合成方法(水性アルカリ異性化(aqueous alkali isomerization)、非水性アルカリ異性化(non−aqueous alkali isomerization)、アルカリアルコラート異性化(alkali alcoholate isomerization))により得られる。
【0029】
その後、得られたCLAをグリセロールと混合した後、真空条件でリポザイムRM IMと酵素反応させCLAジグリセライドを多量に含有する未精製の油脂組成物を得る。その後、分別蒸留を利用して脂肪酸とモノグリセライドを分離し、残存物質は通常の油脂精製方法を利用して精製する。
【0030】
このような方法により得られた本発明の油脂組成物は、ジグリセライド40重量%以上、トリグリセライド5〜60重量%、モノグリセライド10重量%未満、および残余物、即ち遊離脂肪酸5重量%未満、及びグリセロール5重量%未満とを含み、全グリセリドに含まれる脂肪酸に対するCLAの割合が5%以上であり、残りの脂肪酸が炭素数4〜22個の飽和脂肪酸および不飽和脂肪酸により構成される。
【0031】
この際、本発明ではリノール酸の含量の少ないパームステアリン(palm stearin)やオリーブ油を原料としてCLA含有脂肪酸組成物を製造した後、これをグリセリド合成酵素であるリポザイムと反応させることにより、総脂肪酸に対するCLA比が5〜20%であるジグリセライドの豊富な油脂組成物を提供する。また、リノール酸含量の高い紅花油、コーン油などを原料としてCLA含有脂肪酸組成物を製造し、これをリポザイムと反応させることにより、総脂肪酸に対するCLAの比が50〜95%であるジグリセライドの豊富な油脂組成物を提供することができる。
【0032】
本発明の油脂組成物は、従来汎用的に使用されていた食用油やショートニング類と物理・化学的性質に差異がないか、殆どなく、従来の食用油やショートニング類の代替食品として使用することができ、既知のCLAの生理学的効果を付加した食品を提供することができる。
【0033】
例えば、本発明の油脂組成物はフライ用及び調理用の食用類製品、水中油型または油中水型食品としてフレンチドレッシング等のドレッシング類製品、マヨネーズ類製品、クリーム類製品、チョコレートとポテトチップのような製菓類製品、飲料製品、カプセル製品、タブレット製品、粉末製品、パンまたはクッキー等の製パン製品などに使用することができる。
【0034】
本発明による油脂組成物の用途は、上記の例に限定されず、本発明の油脂組成物を含有する全ての製品に使用され得る。本発明の油脂組成物は多様な濃度で適用されることができ、単独または他の動・植物油と混合して使用することができる。
【0035】
また、本発明の油脂組成物は、粉末、粒子、カプセル、錠剤(pills)、錠剤(tablets)などの固体または分散物、エマルジョンなどの液体の形態など、制限なく医薬品にも使用することができる。また崩解剤、結合剤、賦形剤(excipients)などの一般的な添加剤および薬剤と共に調剤することができる。
【0036】
本発明の油脂組成物は、通常1日あたり1〜4gの投与量で、1回または数回に分けて経口投与することができる。しかし、実際の投与量は経口投与形態、患者の年齢、性別、体重および患者の重病度などの諸関連因子に基づいて定められるべきものであると理解すべきであり、よって上記投与量はいずれの面からも本発明の範囲を限定するものではない。
【0037】
動植物加工食品(ソーセージ、カン詰め製品など)の製造において、本発明の油脂組成物を用いてCLAの多機能性を提供する目的に加え、上記油脂組成物を油脂代用として使用して貯蔵安定性、嗜好性、およびエマルジョン安定性を向上させることもできる。油脂組成物の添加量は制限はなく、例えばソーセージの製造において脂肪の代わりに用いられる本発明の油脂組成物含量を脂肪(fat)当り5%、20%、40%に徐々に上げるに従いソーセージの貯蔵安定性および嗜好性が向上した。上記のように本発明の油脂組成物は動植物加工食品の貯蔵安定性、嗜好性およびエマルジョン安定性の向上を目的として使用濃度を特に制限することなく汎用的に使用することができる。
【0038】
しかも、本発明の油脂組成物は有機栄養素、無機栄養素などの材料と混合して体脂肪蓄積防止、成長促進、疾病予防および栄養分供給などを目的として養鶏用・養豚用・酪農用・肥肉牛用の動物飼料添加剤として添加することができる。
【0039】
以下、本発明の理解を得るために実施例と実験例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより理解し易くするために提供されるものであるのみで、本発明が下記の実施例に限定されるものではない。
[実験例]
【0040】
1.脂肪酸組成分析のためのガスクロマトグラフィー
脂肪酸組成物を次の条件下で分析した。
カラム:HP−INNOWAX(Agilent社、米国)、キャリアーガス:ヘリウム;2.1ml/分、オーブンの温度:150〜260℃、およびサンプル濃度:25g/l(塩化メチレン溶媒)。検出器として炎イオン化検出器(FID)を275℃で使用した。
【0041】
2.グリセリド組成物分析用液体クロマトグラフィー
グリセリド組成物は次の条件下で分析した。
カラム:スペルコシルLC−Si(Supelcosil、LC−Si)5μm、25cm[Aupel Co社、米国]と、移動相溶媒:溶媒A(ベンゼン70:クロロホルム30:酢酸2)と溶媒B(エチルアセテート)と、サンプル濃度:1mg/ml(クロロホルム溶媒)と、検出器:蒸発散乱光検出器(ELSD)。この場合、カラム温度は82℃、流量速度は2.3ml/分とした。
【0042】
3.体脂肪含量測定
食餌を6週間摂取させた後、各実験群のラット(rats)の体重を測定した。その後、頸推脱臼によってラットを殺し、各部位を解剖した後、3倍の蒸留水を加えながらブランダーを用いて一定に粉砕した。粉砕物を80℃で乾燥した後、クロロホルム−メタノール(2:1)溶媒を用いたSoxlet法で脂肪を抽出した。抽出が終わった後溶媒部分を集めて乾燥し、残った脂肪の量を秤量した。
【0043】
実施例1
アルカリ−グリセロール混合物1100gに韓国のL社の紅花油900gを加えた後、窒素雰囲気中、150℃に加熱し、水酸化カルシウム250gを用いて異性化反応させ、CLAを調製した。以上のアルカリ異性化(alkaline isomerization)終了後、反応液をヘキサン500mlで2回抽出し、有機溶媒層を水で3回洗浄し、濃縮して遊離脂肪酸を得た。遊離脂肪酸の組成は上記実験例に記載したガスクロマトグラフィーの方法によって分析し、表1に示す結果を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
次に、上記製造されたCLA283.7gとグリセロール46.2gを混合し、リポザイム(Lipozyme)RM−IM(Novozyme)4.255gを加えた。上記混合物を20Torrの真空中、300rpmで攪拌しながら40℃温度で10時間反応させた。上記酵素をフィルターで除去して約330gの油脂を得た。その後、分子蒸留によって未反応物を除去してジグリセライドとトリグリセライドを主成分として含む油脂300gを得た。その後、脱色および脱臭の通常の精製工程を行って本発明による油脂組成物を得た。
【0046】
上記油脂組成物において脂肪酸とグリセリド分析は実験例に記載された方法で分析した。分析結果を下記表2及び表3に示す。
【0047】
実施例2
韓国のO社の紅花油1000gを水750gに溶解させ、200rpm、40℃の条件でリパーゼ−OFを用いて加水分解し、紅花油から脂肪酸900gを得た。
【0048】
上記製造された脂肪酸283.7gとグリセロール46.2gを混合し、リポザイムRM IM4.255gを加えた。20Torrの真空中、300rpmで攪拌しながら、40℃で10時間反応させた。その後、上記酵素をフィルターを通して除去し、油脂約330gを得た。実施例1に記載の精製工程を行って油脂組成物を得た。
【0049】
上記油脂組成物は上記実施例1と同様に分析した。分析結果を下記表2および表3に示す。
【0050】
実施例3
上記実施例1において製造された油脂組成物と実施例2において製造された油脂組成物を1:7の重量比で混合して油脂組成物を得た。
【0051】
その後、上記実施例1、2に記述したように、油脂組成物を脂肪酸とグリセリドについて分析した。分析結果を下記表2及び表3に示す。
【0052】
比較例
市販されている韓国のO社の紅花油製品を用いて、上記実施例1、2、3と比較した。
【0053】
【表2】

【0054】
【表3】

【0055】
実施例4
体重増加抑制効果
本発明において製造されたCLA含有油脂組成物を実験動物に投与して、体重および体脂肪増加の抑制効果があるか否かについて確認した。
【0056】
上記実施例1〜3の組成物と比較例組成物を投与する2群に実験群を分け、各群毎に生後6週齢のSD−ラット10匹を使用した。
【0057】
一日1匹当たり50mg/kgの上記各組成物を飼料とは別に各々の動物に経口投与した。その後、上記実験例3の方法でラットの体重を期間別に測定した。測定した体重の平均値を下記表4に示す。
【0058】
【表4】

【0059】
表4に示すように、ジグリセライドが高濃度で含有された油脂組成物を投与した実施例1の組成物投与群、実施例2の組成物投与群および実施例3の組成物投与群が比較例の組成物投与群に比べて体重の増加率が減少する傾向を示し、著しく体脂肪量が低いことを見出した。また、CLAのジグリセライドを高濃度で含有した実施例1の組成物投与群と実施例3の組成物投与群が、一般のジグリセライドが含有された実施例2の組成物投与群より体重増加抑制傾向を示し、体脂肪増加を顕著に抑制できることを見出した。
【0060】
実施例5
本発明の油脂組成物を使用した飼料の製造
下記表5に示す組成を有する飼料を実験動物に投与した。この際、液体オイルの成分として上記実施例1の組成物、実施例2の組成物、実施例3の組成物、比較例の組成物各々を各試験の動物群に対して使用した。実験動物はSD−ラットを使用した。
【0061】
【表5】

【0062】
上記飼料を給与する間、実験対象の全ラットは、拒否することなく飼料を摂取することを確認した。
【0063】
従って、飼料に本発明の組成物を添加して使用することができ、それにより上記組成物を含ませるので、CLAとジグリセライドが豊富な良質の飼料を提供することができると予測される。
【0064】
実施例6
本発明の油脂組成物を用いた油揚げ食品
上記実施例1、2、3及び比較例1の各々の油脂組成物を用いて冷凍ジャガイモ50gを揚げ、各組成物について10個のフライドポテトを調製した。油揚げ食品の味、料理時の匂い、油揚げ食品の食感、料理時のスパッタリングの程度、酸化安定性を比較した。この時、官能評価は官能検査人員20名でパネルテスト(チャンコンヒョン(Jang Kun−Hyung)の食品の嗜好性官能検査、開門社、1975による)を実施して味、匂い、食感を評価した。
【0065】
その結果、下記表6に示すように、油揚げ食品の味と食感はジグリセライドの豊富な実施例1、2、3の油脂組成物がトリグリセライド製品である比較例1の油脂組成物よりさらに良好であり、料理時のスパッタリング程度と匂いは全ての実験油脂組成物において類似した。
【0066】
【表6】

注:評価基準5;非常に良い、4;良い、3;普通、2;悪い、1:非常に悪い
【0067】
また、揚げた前後の色価は通常の色価測定に使用されるロビボンド(Lovibond)法を適用して濃度の異なる標準色ガラス板(Glass color Filters)セットを相互比較して試料の色と一致するフィルター番号を読み取った後、総色価の値に表した。酸価測定時、適正量の試料をエーテルとエタノール(1:1)の溶媒20mlに溶解させた後、1%フェノールフタレインを加えて0.1N水酸化カリウム(KOH)で滴定した。さらに、120℃、20l/時の通気量条件でメトローム743ランシマット(Metrohm 743 Rancimat)を使用して酸化誘導時間(induction time)を測定した。結果を下記表7に示す。
【0068】
【表7】

*揚げ前の酸価を基準に揚げ前後の酸価変化を百分率で計算する。
**総色価(10XR+Y)を基準に揚げ前後の総色価変化を百分率で計算する。
【0069】
上記結果は、比較例組成物と比較して実施例1の組成物と実施例3の組成物が長い酸化誘導期間を示した。これは実施例1及び実施例2の組成物が化学的および物理的に安定であることを示唆している。
【0070】
実施例7
水中油型食品の製造
実施例1の油脂組成物80重量%、卵黄7重量%、酢9重量%、砂糖2重量%、からし0.5重量%、コショウ0.5重量%とを含むマヨネーズを通常の方法によって製造した。また、実施例3の油脂組成物を用いた以外、上記のマヨネーズと同様の組成を有するマヨネーズを製造した。対照群には既存のマヨネーズ(オトギ社、韓国)を使用してエマルジョン安定性を比較した。
【0071】
エマルジョン安定性実験では、目盛付試験管にマヨネーズを入れ、85℃の恒温水槽中で5時間振盪した。次いで室温に放置し、全マヨネーズ体積に対する分離された油脂量を測定し、百分率で表した。本発明の油脂組成物を含むマヨネーズが従来のマヨネーズと同様のエマルジョン安定性を示した。結果を下記表8に示す。
【0072】
【表8】

【0073】
実施例8
油中水型食品の製造
実施例1の油脂組成物35.0重量%、硬化大豆油(IV=43)45.0重量%、天然クリーム香料0.7重量%、レシチン0.4重量%、油溶性ビタミンA0.06重量%、水16.0重量%、脱脂粉乳2.5重量%、塩0.3重量%、デヒドロ酢酸ナトリウム0.04重量%を均質器(homomixer)で混合してマーガリンを製造した。同様に実施例3の油脂組成物を用いた以外、上記のマーガリンと同様の組成を有するマーガリンを製造した。
【0074】
その後、上記製造された本発明のマーガリンと既存のマーガリン(オトギ社、植物性マーガリン、韓国)のエマルジョン安定性を測定し、比較した。
【0075】
エマルジョン安定性の測定において、各マーガリンを15℃で7日間保存した後、目盛付試験管に入れ、40℃で5時間放置し、全マーガリン体積に対する分離された油脂量を測定し、百分率で表した。本発明の油脂組成物を含むマーガリンは従来のマーガリンに比べエマルジョン安定性が大きく異なっていないことを示した。結果を下記表9に示す。
【0076】
【表9】

【0077】
実施例9
アイスクリームの製造
実施例1の油脂組成物12重量%、バター10重量%、脱脂粉乳12重量%、脱加糖煉乳10重量%、砂糖6重量%、ゼラチン0.5重量%および水49.5重量%を混合し、殺菌、エージングおよび冷却過程を経てアイスクリームを製造した。別に実施例3の油脂組成物を用いた以外、上記のアイスクリームと同様の組成を有するアイスクリームを製造した。
【0078】
その後、一般食用油で製造したアイスクリームと上記のとおり調製したアイスクリームの食感を比較した。この際、食感に対する官能評価は専門官能人員20名を対象にして調査した。結果を表10に示す。表10から明らかなように、本発明の油脂組成物を使用したアイスクリームと従来のアイスクリームとの食感の差は殆どないことが分かる。
【0079】
【表10】

非常に優秀:5、優秀:4、良好:3、悪い:2、非常に悪い:1
【0080】
実施例10
医薬組成物の製造
1.錠剤(tablets)
次の成分を用い大韓薬典製剤総則による錠剤の製造方法に従って、錠剤1錠当り実施例1の油脂組成物200mgを含む錠剤を製造した。
実施例1の油脂組成物+澱粉 400mg
マグネシウムステアレート 5mg
カルシウムカルボキシメチルセルロース 25mg
軽質無水ケイ酸 70mg
合計 500mg
【0081】
2.ソフトカプセル剤
次の成分を用い大韓薬典製剤総則による錠剤の製造方法に従って、錠剤1錠当り実施例1の油脂組成物500mgを含む錠剤を製造した。
実施例1の油脂組成物 500mg
ゼラチン 497mg
パラオキシメチルベンゾエート 1.5mg
パラオキシプロピルメチルベンゾエート 1.5mg
合計 1,000mg
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、体内に蓄積されることなく殆どが燃焼されるCLAジグリセライドを形成するよう、抗がん、免疫増強、抗酸化、抗コレステロールおよび成長促進などの効果を有するCLAとグリセロールの反応から得られる多量のCLAジグリセライドを含む油脂組成物を提供するものである。
【0083】
また、本発明は上記油脂組成物を有効成分とし、薬学的に許容された担体を含む医薬組成物および機能性食品を提供する。
【0084】
これにより、本発明は抗がん、免疫増強、抗酸化、抗コレステロールおよび成長促進並びに体重の調節が可能な食品と医薬組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグリセライド40〜95%重量%、トリグリセライド5〜60重量%、モノグリセライド0.1〜10重量%および残余物0.02〜10重量%を含有し、全グリセリドに含まれる脂肪酸に対する共役リノール酸(CLA)の割合が5〜98%である、油脂組成物。
【請求項2】
前記残余物が、組成物の総重量に基づいて遊離脂肪酸0.01〜5重量%およびグリセロール0.01〜5重量%を含んでなる、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項3】
前記共役リノール酸(CLA)が、シス−9、トランス−11CLA、トランス−10、シス−12CLAおよびその他のCLA異性体から成る群より選択された少なくとも1種を含む、請求項1に記載の油脂組成物。
【請求項4】
前記CLAが、紅花油、豆油、コーン油、菜種油、米糠油、ゴマ油、エゴマ油、ヒマワリ油、線実油、ピーナッツオイル、オリーブ油、パーム油、パームオレイン油、パームステアリン油、パーム核油、椰子油、牛脂、豚脂、混合植物油、ショートニング、マーガリン油、唐辛子種子油、カポック油およびニカ油を含む、リノール酸の豊富な動植物性油脂から成る群より選択された少なくとも1種の食用油脂から得られる、請求項1または3に記載の油脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の油脂組成物を含有する食品。
【請求項6】
食用油、サラダ油、フライ用油脂、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、アイスクリーム、生クリーム代替物、ドレッシング、マヨネーズおよび製菓用油脂食品から成る群より選択される、請求項5に記載の食品。
【請求項7】
請求項1に記載の油脂組成物を有効成分として含有する、体重調節、抗がん、抗酸化および免疫増強用の機能性食品および医薬組成物。
【請求項8】
錠剤、カプセル、粉末または液状タイプである、請求項7に記載の機能性食品および医薬組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の油脂組成物を含有する、飼料添加剤。

【公表番号】特表2007−512407(P2007−512407A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−541042(P2006−541042)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【国際出願番号】PCT/KR2004/003083
【国際公開番号】WO2005/052102
【国際公開日】平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願人】(506179413)オンビオ コーポレーション (1)
【氏名又は名称原語表記】ONBIO CORPORATION
【Fターム(参考)】