説明

共振子型SAWフィルタ

【課題】 縦2重モード型の共振子型SAWフィルタにおいて、1/4波長電極を用いながら、電極指のもつ反射係数を相殺低減して、従来より通過帯域幅の広い共振子型SAWフィルタを提供する。
【解決手段】 共振子型SAWフィルタにおいて、入力側すだれ状電極および出力側すだれ状電極は、前記弾性表面波の波長をλとして電極幅Lがほぼλ/4で構成され、
かつ前記の入力側すだれ状電極および出力側すだれ状電極は、2種類の異なる区間Aと区間Bとを交互に配置してなり、
前記区間Aは、電極幅寸法Lと電極間寸法Sの和である電極周期長PをP=L+Sとした場合に、電極周期長PがPAかつすだれ状電極の対数MAが1対であり、
前記区間Bは、前記電極周期長PがPBかつすだれ状電極の対数MBが1対であり、かつ区間Aと区間Bの電極指はいずれも給電導体に接続し、
さらに、前記制御用すだれ状電極はそれらの電極周期長PCがPAと異ならしめて形成しかつすだれ状電極の対数MCが全反射係数が1程度を成す範囲であることを特徴とする共振子型SAWフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電気現象を有するの圧電体平板上に1/4波長幅の入力側および出力側すだれ状電極とその両側に一対の反射器を形成し、レイリー波とかSTW(Surface Transversal Wave)波あるいはSSBW波、SH波、ラブ波、セザワ波等の弾性表面波を利用して実現する縦3重モード型等の共振子型SAWフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圧電気を有する圧電体として水晶STWカット基板が使われてきた。前記基板は弾性表面波(STWあるいはSSBW)の速度が5100m/sと速く、GHz帯用途のSAWデバイスとして1979年の早くから研究され使用されて来た経緯がある。
【0003】
前記のSTWカット水晶板については、すでによく知られているものであり、水晶結晶の基本軸である電気軸X,機械軸Y,光軸Zからなる直交座標系において、機械軸Yに直交するY板を電気軸X回りにθ度(特に零温度係数が得られるθ=33度から47度)回転した基板において、回転後のY板の光軸方向Z’に伝播するSTWあるいはSSBW(surface skimming bulk acoustic wave)型弾性表面波を利用したものである(参考文献として、非特許文献4をあげることができる)。
【0004】
前記のSTW基板を利用して、縦2重型とか縦3重型等の共振子型SAWフィルタを構成すると、1GHzから3GHz帯のSAWデバイスが実現できる。前記共振子型SAWフィルタの従来技術の例として、たとえば特許文献1及び特許文献2をあげることができる。まは、従来の技術により実現された共振子型SAWフィルタの例として、非特許文献5をあげることができる。
【0005】
【特許文献1】特願昭61−289091公報
【特許文献2】特願平11−562993公報
【特許文献3】USP 5,220,234
【非特許文献1】T.NISHIKAWA et al:“SH-TYPE SURFACE ACOUSTIC WAVES ON ROTATED Y-CUT QUARTZ”,Proc. 34th Ann. Freq.Control Symposium,pp.286−291(May 1980).
【非特許文献2】Hiromi Yatsuda:“SAW Device Assenbly Technology”,International Symposium on Acoustic Wave Device for Future Mobile Communication Systems,Chiba University pp.189−194(5th March 2001)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の従来技術を使用し共振子型SAWフィルタを構成した場合には、通過比帯域幅が500ppm程度の極めて狭帯域なものしか実現できないという第1の課題が存在した(非特許文献5を参照のこと)。ちなみに、通過比帯域幅とは3dB帯域幅をフィルタ中心周波数で割った値である。
【0007】
そこで今回の本発明の第1の考案は、この狭帯域化の原因を究明して、解決策を見出したたものである。本発明において用いた技術的および理論的手段は、周期的構造を有するすだれじょう電極の新規導入と、著者等の考案による“周波数ポテンシャル設計手法”を活用して、このような問題点を解決するものである。前記“周波数ポテンシャル設計手法”を簡単に言えば、周波数ポテンシャル関数FTP(X)、弾性表面波の速度Vs、素子の空間波長2P(X)の関係式 FTP(X)=Vs/{2P(X)} を弾性波動の伝搬制御に利用するものである。ただし、Xは弾性表面波の位相進行方向の位置座標である。
【0008】
つぎに本発明の第2の考案は、第1の考案によって発生する側帯波成分(第2の課題)を改善するための解決策を提供するものである。
【0009】
その目的とするところは、例えば零温度係数を有して周波数温度特性が優れ、かつ材料のQ値が数万と優れかつ高速度な水晶STW基板とλ/4電極を使用し、低挿入損失かつ比帯域幅が2000から4000ppmと比較的広帯域幅で安定な縦多重モード型の共振子型SAWフィルタを実現することにある。さらに本発明のSAWフィルタの用途としては、GPS装置(grobal positioning system)のRF−フィルタ用が最適であり、これによって、従来品に対して、1/10に通過帯域幅を縮小して、益々に輻輳するデジタル無線通信装置が発生する雑音の影響を大幅に低減し、社会的に重要な機能を果すGPS装置の精度を著しく向上し維持することができる他、GPS装置とUWB(Ultru Wide Band)とか他の通信装置の近接使用などにおいて今後多大な利点が期待できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明の共振子型SAWフィルタは、圧電体平板上の位相伝播方向Xに弾性表面波を励振する入力側すだれ状電極と、前記入力側すだれ状電極により励振された弾性表面波を受信する出力側すだれ状電極と、前記入力側すだれ状電極と出力側すだれ状電極の間に弾性表面波の状態を制御するための制御用すだれ状電極を設け、さらには前記入力側すだれ状電極と出力側すだれ状電極の両側に1対の反射器を有する共振子型SAWフィルタにおいて、
前記の入力側すだれ状電極および出力側すだれ状電極は、前記弾性表面波の波長をλとして電極幅Lがほぼλ/4で構成され、
かつ前記の入力側すだれ状電極および出力側すだれ状電極は、2種類の異なる区間Aと区間Bとを交互に配置してなり、
前記区間Aは、電極幅寸法Lと電極間寸法Sの和である電極周期長PをP=L+Sとした場合に、電極周期長PがPAかつすだれ状電極の対数MAが1対であり、
前記区間Bは、前記電極周期長PがPBかつすだれ状電極の対数MBが1対であり、かつ区間Aと区間Bの電極指はいずれも給電導体に接続し、
さらに、前記制御用すだれ状電極はそれらの電極周期長PCがPAと異ならしめて形成しかつすだれ状電極の対数MCが全反射係数が1程度を成す範囲であることを特徴とする。
【0011】
上記(1)の構成によれば、区間Aと区間Bの各電極指からの反射波の総和が相互に相殺して減少するために、基板の実効的な反射係数を低減して広帯域幅な縦2重型および殊に縦3重モード型等の共振子型SAWフィルタが容易に実現できる。また区間Aと区間Bの電極指が電気的に接続して弾性波を励振して途切れないために側帯波成分を十分に小さくできる。さらに区間Aにて発生する不要な弾性表面波を制御用すだれ状電極が作り出す反射効果によって阻止し、区間Bの発生する弾性表面波による動作特性のみとして、低挿入損失かつ広帯域幅な良好なフィルタ特性が実現できる。
【0012】
(2)本発明の共振子型SAWフィルタは、請求項1の記載において、前記圧電体平板と前記すだれ状電極が形成する電極指1本当りの弾性表面波の反射係数γが0.03から0.10の範囲であることを特徴とする請求項1記載の共振子型SAWフィルタ。
【0013】
上記(2)の構成であれば、弾性表面波の速度が5100m/secと高速な、従って高周波数動作が可能な水晶STWカットであるとか、速度が10000m/secのダイヤモンドを用いた基板とかの、高速であるが反射係数γの大きな基板の利用が可能である。さらに前記の基板を用いて1〜3GHzの周波数をもつ共振子型SAWフィルタにおいて、膜厚を増加することによる反射係数γの増加に煩わされずに、十分に厚い膜厚約1000×10-10mのλ/4電極を形成して信頼性のある共振子型SAWフィルタを形成できる。
【0014】
(3)本発明の共振子型SAWフィルタは、請求項1の記載において、前記共振子型SAWフィルタにおいて、利用する共振モードが基本波対称モードS0と基本波斜対称モードA0および1次対称モードS1の3個の共振状態であり、前記3個の共振現象を結合して得られる縦3重モード型であり、かつ前記電極周期長PAおよびPBとを交互に配置してなるすだれ状電極全体が示す反射係数γabが0.01から0.025の範囲であることを特徴とする。
【0015】
上記(3)の構成であれば、基本波対称モードS0と基本波斜対称モードA0から構成される縦2重モード型の2000ppmの帯域幅に対して、約4000ppmとより広帯域幅な共振子型SAWフィルタが実現できるため、ウエハ−状態で素子の周波数調整が可能であり、低コスト化が可能という効果がある。
【0016】
(4)本発明の共振子型SAWフィルタは、請求項1の記載において、前記反射器の中心周波数f(Ref)と、前記電極周期長PBのすだれ状電極が発生する周波数f(IDT)を一致させたことを特徴とする。
【0017】
上記(4)の構成とすれば、圧電体平板とすだれ状電極から形成される本来の大きな反射係数γをもつ反射器が有する反射特性の最大値が利用できるため、反射器の導体本数が少なくでき、共振子型SAWフィルタの小型化ができるという効果がある。
【0018】
(5)本発明の共振子型SAWフィルタは、請求項1の記載において、前記区間Aと区間Bの電極周期長の比PB/PAについて、0.8<PB/PA<1範囲とし、かつ前記制御用すだれ状電極の電極周期長PCと前記PAの比PC/PAを1.01<PC/PA<1.04の範囲としたことを特徴とする。
【0019】
上記(5)の構成とすれば、弾性表面波の速度が5100m/secと高速で、従って高周波数動作が可能な水晶STWカットのもつ電気機械結合係数K2が0.002と小さな基板において、電極膜厚を著しく薄くしなくても、通過比帯域幅が3000から4000ppmの縦3重型の共振子型SAWフィルタが実現できる。例えば、1.5GHzにおいて膜厚み約1000×10-10mのλ/4電極を形成して、前記通過比帯域幅の特性をもつものが実現できるという効果がある。
【0020】
(6)本発明の共振子型SAWフィルタは、請求項1の記載において、前記圧電体平板が水晶STWカットであり、前記すだれ状電極はアルミニウム金属により形成されて電極指1本当りの弾性表面波の反射係数γが0.05±0.02であり、かつ前記PB/PAの比が0.9±0.02であり、 かつ前記PC/PAの比が1.02であり、かつ前記MAとMBが1対であり、MCが10対から30対であり、区間Aおよび区間Bの電極指を給電導体に接続し、かつ前記入力側すだれ状電極と出力側すだれ状電極の和Mが100±10対であり、かつ前記すだれ状電極の交差指幅WCRが50〜80波長であり、前記反射器の導体本数は30〜100本であることを特徴とする。
【0021】
上記(6)の構成とすれば、1.57GHz動作のGPS装置用途のRFフィルタが実現でき、通過帯域幅が約3MHzであるため、従来のLiTaO3基板を用いた30MHz幅のものに対して、約1/10の狭帯域幅であることより、受信信号に関して約10倍のS/N比の改善ができるという効果がある。
【0022】
(7)本発明の共振子型SAWフィルタは、請求項6の記載において、前記水晶STWカットは、水晶回転Y板を電気軸(X軸)回り反時計方向にθ=35度から38度回転した水晶平板であることを特徴とする。
【0023】
上記(7)の構成とすれば、請求項(6)の条件が最良に適用でき、基板のもつ周波数温度係数が零温度係数であり、かつ2次温度係数βが−6.4×10-8/℃2であるから、使用温度範囲−45から85℃範囲において、素子自身の周波数変動が270ppm程度と小さく安定であり、従って受信信号のジッタ(時刻精度バラツキ)への影響が小さいという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
水晶からなる圧電体基板すなわち圧電体平板から前述のSTWカットを切り出して、その表面を鏡面研磨した後、レイリー型あるいはSSBW型等の弾性表面波の位相伝搬方向Xに対して直交して、例えば金属アルミニウムからなる多数の平行導体の電極指を周期的に配置した入力側すだれ状電極および出力側すだれ状電極を構成し、かつ前記のすだれ状電極は2種類の異なる区間Aと区間Bとを交互に配置してなり、前記入力側すだれ状電極と出力側すだれ状電極の間に弾性表面波の状態を制御するための制御用すだれ状電極を設け、さらには、前記入力側すだれ状電極と出力側すだれ状電極の両側に1対の反射器を形成して、縦3重モード型の共振子型SAWフィルタを構成することができる。
【0025】
以下本発明の共振子型SAWフィルタの実施形態について、まず理解を容易ならしめるために、図1によって具体的な実施例の構成を説明した後、図2、図3、図4、図5、図7をもちいて基本的動作原理を説明し、図8、図9、図12に従来品の特性を示し、図6、図10、図11、図13において本発明の共振子型SAWフィルタが有する特性を詳細に説明する。
【0026】
(実施例1)
図1は請求項1の発明に係わる共振子型SAWフィルタ(以下略して本素子と称すことがある)の一実施例について、圧電体平板上に形成した電極パターンを図示したものである。
【0027】
図1中の各部位の名称は、100は水晶、LiTaO3等からなる圧電体平板、101および102は反射器、103は入力側すだれ状電極、104は出力側すだれ状電極、105は制御用すだれ状電極、106Aおよび106Bは反射器を構成する導体ストリップ、107は給電導体(ブスバー)に接続された入力側すだれ状電極の正極側の電極指、108は給電導体(ブスバー)に接続された入力側すだれ状電極の負極側の電極指、109は給電導体(ブスバー)に接続された出力側すだれ状電極の正極側の電極指、110は給電導体(ブスバー)に接続された出力側すだれ状電極の負極側の電極指である。また、111等は制御用すだれ状電極の電極指、112と113は各々正極側と負極側の入力側給電導体(ブスバー)、114と115は各々正極側と負極側の出力側給電導体(ブスバー)である。さらに、圧電体平板上の123は利用する弾性表面波の位相伝搬方向であるX軸、121は本素子を駆動するための信号源、122は本素子の負荷となるインピーダンスZLである。
【0028】
さらに説明すると、実線にて区分された116は区間Aに対応する出力側すだれ状電極の部分、117は区間Bに対応する出力側すだれ状電極の部分、実線にて区分された119は区間Aに対応する入力側すだれ状電極の部分、120は区間Bに対応する入力側すだれ状電極部分である。118の区間Cは同一電極周期長PCを有する制御用すだれ状電極の区間である。実際の素子においては、103の入力側すだれ状電極は区間A(119)、区間B(120)・・・のように、区間Aと区間Bを交互に配置して構成されており、また104の出力側すだれ状電極も、区間A(116)、区間B(117)・・・のように、区間Aと区間Bを交互に配置して構成されている。このように構成されたすだれ状電極103と104の前記X軸方向の両側に1対の反射器101と102が配置されている。前記反射器は無くても良い場合があるが、付加すると素子の特性を著しく向上できる。
【0029】
さらに説明すると、前記区間Aはすだれ状電極(以下略してIDT:Interdegital Transducerと称す)を構成する正負の電極指を1対として、その対数MAが1対であり、一方、前記区間BはIDTを構成する正負の電極指を1対として、その対数MBが1対かかつ区間Aと区間Bの電極指はいずれも給電導体に接続している。また、前記区間Aは、電極幅寸法Lと電極間寸法Sの和である電極周期長PをP=L+Sとした場合に、電極周期長PがPAであり、前記区間Bは、電極周期長PがPBであるとする。さらに、前記制御用すだれ状電極はそれらの電極周期長PCがPAと異ならしめて形成しかつすだれ状電極の対数MCが全反射係数Γが1程度を成す範囲であるとする。また前記電極周期長については、前記区間Aと区間Bの電極周期長の比PB/PAについて、0.8<PB/PA<1範囲とし、かつ前記制御用すだれ状電極の電極周期長PCと前記PAの比PC/PAを1.01<PC/PA<1.04の範囲に設定する。
【0030】
図1は全体でいわゆる一般的には縦3重モード型の共振子型SAWフィルタを構成している。
【0031】
さらに、前記反射器101、102の中心周波数f(Ref)と、前記区間Bのすだれ状電極が発生する周波数f(IDT)を一致させており、両周波数は区間AのIDTおよび区間BのIDTの電極周期長PAとPBの組み合わせと、反射器101と102の電極周期長PRの関係を適切に設定して、前記f(Ref)=f(IDT)と設定する。
【0032】
以上に述べた図1の構成全体で、入力側のIDTで発生した弾性表面波は1対の反射器101と102で反射して定在波振動状態を形成して利用すべき固有共振モードを発生する。これら固有モードはX軸方向に振動変位が変わる対称モードS0と斜対称モードA0、さらに1次対称モードS1の3個の共振状態であり、前記3個の共振現象を結合して縦3重モード型のSAWフィルタを構成している。ただし、従来の技術と異なる点は、前記区間Aと区間Bの全体が示す反射係数γabが0.01から0.025の範囲であることである。
【0033】
さらに構成条件として、前記圧電体平板100と前記IDT(103、104、105等)が有する電極指1本当りの弾性表面波の反射係数γが0.03から0.1の範囲である場合において、本発明の手段は特に有効である。
【0034】
さらにまた、詳細な構成条件をあげると、前記圧電体平板が水晶STWカットであり、前記すだれ状電極はアルミニウム金属により形成されて電極指1本当りの弾性表面波の反射係数γが0.05±0.02であり、かつ前記PB/PAの比が0.91±0.02であり、かつ前記PC/PAの比が1.02であり、かつ前記MAとMBが1対であり、MCが10対から30対範囲の20対であり、区間Aおよび区間Bの電極指を給電導体に接続し、かつ前記入力側すだれ状電極と出力側すだれ状電極の和Mが100±10対であり、特にMC=20対の場合には、入力および出力側のIDTは40対である。かつ前記すだれ状電極の交差指幅WCRが50〜80波長であり、前記反射器の導体本数は30〜100本である場合において特に良好な特性が得られる。この構成条件に対応する前記電極周期長P(X)の詳細設定の一例を図3に示した。図3において、横軸は素子のX座標位置、縦軸は区間Aの電極周期長PAに対するP(X)の比P(X)/PAである。これらの値は、反射器において0.968、入力および出力側IDTの区間Aにおいて1.0、区間Bにおいて0.91、制御IDT区間Cにおいて1.02の値に設定してある。
【0035】
つぎに、図2において本発明の素子の構造と動作につき説明する。
【0036】
図2は本発明になる図1のような区間Aと区間Bからなる周期的構造を取るIDTを“周波数ポテンシャル設計手法”を活用して表示したものである。図2中の、200と202は前述の区間Aからなるブロックであり、201と203は前述の区間Bからなるブロックである。また、図2中の4つの曲線209等は、弾性表面波の伝搬状態である伝搬帯(斜線領域)および、弾性表面波が伝搬できずに減衰する状態を示めす非伝搬帯(ストップバンドとも呼ばれる白い領域)の特性全体を示す特性曲線であり、波数分散曲線と呼ばれている。波数分散曲線は横軸波数k=2π/λ(1/m)であり、縦軸は周波数FTP(Hz)で表示した。FTPは本発明において活用する“周波数ポテンシャル”の略号である。FTPは利用する弾性表面波の速度をVsとすれば、前述の電極周期長P=PA,PBと、FTP=Vs/(2×P)の関係にある。さらに、基準周波数をFTP0として、周波数の変化率D=(FTP−FTP0)/FTP0で表現することが効率的である。分散曲線上の白丸印204等はIDTによって発生する弾性表面波の動作点を示すもので、208の矢印にて示される右進行波、左進行波が生じている。また206で示される周波数差分量Dは前記の周波数変化率表示であり、区間Aと区間Bの周波数ポテンシャル差である。すなわち、区間AのFTPAは、おおよそFTPA=Vs/(2×PA),区間BのFTPB=Vs/(2×PB)の差D=FTPA−FTPBの関係にある。さらに、205の破線枠で示す領域は、本発明の図1の構成により発生した低反射係数γab(=0〜0.025)をもつ伝搬帯領域である。ちなみに各区間Aおよび区間BはIDTの対数MP(=MA=MB)は検討の結果、1対以上の数対で構成できることがわかった。前記の低反射係数γabをもつ伝搬帯領域の発生メカニズムについては、さらに図5を用いて詳述する。
【0037】
つぎに図4は、0.05の反射係数γを有する基板において、前述の図2の周期的構造を取るIDTを用いて構成した正規型のトランスバーサルフィルタの特性から得られるIDTがもつ全反射係数Γと電極周期長の比PB/PAの関係である。ちなみに前記正規型のトランスバーサルフィルタとは、図1の実施例において反射器101と102が存在しない構成の素子である。図4はまた本発明の前述の実施例1および図2の周期的構造が有する、弾性表面波の反射現象について物理的な特徴を示するものである。図4において、横軸はPB/PAであり、縦軸は前述のΓ値をとって、これらの関係を図示した特性曲線400である。同図4において、PB/PAが0.78±0.02付近(Q点)となると、前記の全反射係数Γがほぼゼロとなっている。また、PB/PA=0.9付近(P点)では、従来品の反射係数に対して約6dBの減少が認められる。これは、基板の反射係数が0.05とすると、約半分の0.25程度となったことが推定できる。
【0038】
つぎに図5は、前述のQ点である無反射係数γab=0をもつ伝搬帯領域の発生メカニズムについて図示したものである。図中の縦軸のFは周波数軸であり、右側半面に位置する横軸は、反射係数γの振幅を表し、左側半面に位置した横軸は、前記反射係数γの位相角θであり、反射波の位相角θに相当する。図中の曲線500は前述の区間Aがつくる反射係数γaの振幅特性であり、502は反射係数γaの位相特性である。位相が0度の場合は、反射波は入射波と同位相状態であり、位相が180度の場合には入射波と反射波は逆位相状態であることを意味する。一方、500から上方に周波数変化率にして+0.22シフトした曲線501は、前記区間Bのもつ反射係数γbの振幅特性である。また503はγbの位相特性である。まず区間Aと区間BのIDTはいずれも給電導体に接続しており弾性表面波を励振しかつ500と502の反射特性を有する。500は電極周期長がPAの区間AのIDT対数が4対で、電極指1本当りの反射係数が0.05の場合につき計算したものである(図4に対応)。前記反射特性500においてγ=0となる周波数点は弾性表面波の伝搬点を示すものであり、入射波は反射せずに区間Aを通過する。下側の伝搬点と上側の伝搬点の幅であるストップバンド幅BWは、この場合0.25(25%)の大きな幅となっている。これはIDTの対数MPが4対と極めて小さいことによる。反射特性501は、電極周期長がPBの区間BのIDT対数が4対で、電極指1本当りの反射係数が0.05の場合につき同様に計算したものである。特性501は特性500を0.22(22%)上昇させたもので、これは電極周期長PBがPAの78%に設定されていることによる。特性501のストップバンド幅BWは0.25(25%)であり、区間Aと同一である。前記の励起された弾性表面波は、おおむね振幅動作点B1と位相動作点B2の近傍の周波数成分を持ち、この発生した弾性表面波は、区間Aに至り同一周波数の振幅動作点A1と位相動作点A2で動作する。位相動作点A2とB2は位相がほぼ反転するような配置であり、区間Aと区間Bからの反射波は合成され、相殺されて全体の反射波がゼロとなるため、反射係数γab=0が実現する。従って、前記動作点(B1,B2)のつくる近傍の周波数は無反射の伝搬帯となるわけである。以上が本発明の基礎となる現象の説明である。また、周波数上昇量が0から+0.22の範囲であれば、前記区間Aと区間Bの多数繰り返しが作るトータルな反射係数Γは1から0の間の値を取ることになる。前述の図4の特性はこの状態を示していると解釈できる。
【0039】
また区間Bは動作点B1に対応する周波数の弾性表面波を励振して本発明の素子のフィルタ特性を形成する。一方、区間Aの動作点A0に対応する周波数の弾性表面波も励振されるが、こちらは本来のフィルタ特性を阻害するものとなる。そこで本発明においては前述の制御IDTにおいて、電極周期長PCをPAより大きめに設定して、それらが形成する反射特性が前記の動作点A0の弾性表面波を反射するように周波数配置して構成する。図5の502が制御IDTのなす反射特性Γである。
【0040】
本発明は以上の動作原理にもとづき、前記区間Aと区間Bの全体が示す反射係数γabが0.01から0.025の範囲である状態を実現し、対称モードS0と斜対称モードA0、一次対称モードS1の3個の共振状態を利用して、共振子型のSAWフィルタを実現するものである。
【0041】
つぎに、本発明の前述の実施例図1が示すフィルタ特性について説明する。
【0042】
まず図6は、水晶STWカットが示す反射係数γの特性図である。前記STWカットはオイラー角(φ,θ,ψ)表示で、(0°,127±2°,90°)のものであり、前述の表面集中型のSH波あるいはSSBW弾性表面波と呼ばれる弾性波により動作する。図6の横軸は、電極指の導体幅Lと電極周期長Pとの比である線幅比η=L/Pであり、縦軸は電極指1本当りのもつ反射係数γの値を%表示したものである。図中の特性曲線600は電極膜厚Hに対する弾性表面波の波長λの比が0.03の場合であり、特性曲線601はH/λ=0.05の場合である。仮に素子の動作周波数が1.5GHzの場合については、波長λはSSBW弾性表面波の速度が約5100(m/s)であるから、λ=5100/1.5×10+9=3.4×10-6mであり、この場合のHは、H/λ=0.03において1020×10-10m、H/λ=0.05において1700×10-10mとなる。電極膜の安定な形成においては、1000×10-10m程度の膜厚みが必要であり、この状態における反射係数γは約5〜6%程度となる。
【0043】
つぎに、図7は前述の反射係数を有する圧電体平板上に本発明の縦3重モード型のSAW共振子を構成した状態を示す概念図である。図中の700は圧電体平板、701と702は反射器、703と704は入力および出力側のIDTであり、これらは区間Aと区間Bを交互に配置して構成してある。705は制御用IDTの領域である。この状態において、前記素子の709のX座標位置に対応して、前記素子において利用する固有の共振モードの振動変位分布U(X)の相対値を図示した。図中の706が対称な変位状態をもつS0モード(基本波)であり、707が斜対称な変位状態をもつA0モード(基本波)である。また、708は1次対称モードS1である。ちなみに、横軸のX座標は1/2波長単位で記述した。
【0044】
ここで、本発明のフィルタの特性を説明する前に、理解を容易ならしめるために、従来技術によって得られるフィルタ特性につき例を示して説明しておく。
【0045】
図8は、本発明において定義した設計変数では、前記H/λ=0.03であり、電極指1本の反射係数が0.05の状態において、従来技術の条件である区間Aと区間Bの電極周期長PAとPBを等しくした場合である。また1区間のIDT対数MP=4対、入力と出力のIDT全体の対数は120対、反射器の本数は80本、電極指の交差幅は50波長の場合である。同図の横軸は、周波数変化率df/f(ppm)であり、縦軸はフィルタの動作伝送量SB(f)デシベル(dB)表示したものである。ちなみに、fは周波数である。特性曲線800が前記のSB(f)特性、800においてピークを示す801がフィルタの通過帯域幅付近を示すものであり、みての通り、単峰性の狭帯域特性を有していることがわかる。本発明はこのような特性状態を改善して、広い通過帯域幅をもたせる手段を提供する。
【0046】
つぎに、図9は従来の設計条件の場合(PB/PA=1)であり、電極指1本当りの反射係数γの値を変えた場合のフィルタの伝送特性を計算したものである。図9の上段はγ=0.05の場合であり、全IDT対数M=80対、電極指交差幅WCR=100、反射器の導体ストリップ本数N=80、1区間のIDT対数MP=4である。この場合の通過帯の比帯域幅は1200ppmである。また、図9の下段はγ=0.015の場合であり、全IDT対数M=160対と倍に設定し、電極指交差幅WCR=50、N=80、MP=4である。この場合の通過帯の比帯域幅は約1000ppmである。図9が示す意味は、全IDT対数Mを小さくすれば通過帯域幅を広げることができること、反射係数を小さくすれば、全IDT対数Mが大きくても、通過帯域幅を広くすることができることを意味している。本発明は上記の結論であるMを小さくすることと、反射係数を小さくすることを利用して1〜3GHz帯で動作する比帯域幅4000ppmの共振子型SAWフィルタを実現したものである。従来の技術ではすでに述べた通り約500ppmmが限界であった。原因は実用的な電極膜厚みにあっては、反射係数γが5〜10%に至るからである。
【0047】
つぎに本発明の図1の実施例が示すフィルタ特性について説明する。
【0048】
図10はフィルタの伝送特性1001を上段に示し、下段には本素子を構成する反射器の反射特性1002を図示したものである。本発明においては、反射器の中心周波数f(Ref)とフィルタの通過帯域幅の中心周波数f(IDT)を一致させている。このような状態では、区間BのIDTが放射する弾性表面波を完全に反射できるため(反射係数がΓ=1)、反射器の構成本数を少なくできる。このために、反射器の電極周期長PRを0.968PAとした。他の条件は、PPT=PB/PA=0.91であり、全IDT対数M=100対、N=100本、WCR=60波長、MA=MB=1対、制御IDTは20対、Pc/PA=1.02、電極指1本の反射係数は0.05である。前記γが0.05であれば、20本の導体ストリップがあれば、全反射係数Γは1となる勘定であるが、現実には20〜80本、さらには100本程度あれば十分な反射特性が得られる。
【0049】
つぎに図11は、本発明になる前述の図10の縦3重モード型SAWフィルタを2段縦続接続した場合のフィルタの動作伝送量特性SB(f)をデシベル表示で示したものである。横軸は周波数変化率df/f(ppm)であり、縦軸はフィルタの動作伝送量SB(f)である。本素子はフィルタのインピーダンスが50Ωとなるように設計されている。本素子の動作周波数は1.5GHzとしてある。この場合において伝送特性は上段の図(11−a)の特性曲線1100のようになり、挿入損失の最小値は約2.0dBであり、通過帯域である平坦領域の幅(比帯域幅)は約4000ppmが得られている。また、1101はフィルタの影像インピーダンスZ00(f)(Ω)である。特性曲線1100の周波数9000ppm付近がS1モードであり、1200ppm付近がA0モードであり、14000ppm付近がS0モードである。下段の図(11−b)は周波数範囲を広げた場合のフィルタ特性1102である。帯域外の抑圧特性は一部に狭い周波数を除き50dB程確保されており、良好な特性が得られていることがわかる。また、1103は反射器のもつ反射特性を100倍にしてあわせ表示した。
【0050】
以上が第1の課題に対する第1の考案の説明である。第1の考案によって発生する側帯波成分の発生(第2の課題)に対するを改善結果をつぎに説明する。この側帯波の発生原因につき解析した結果、発生原因には2つの要因があることがわかった。発生原因の第1は、入力IDTの区間Aと区間Bにおいて弾性表面波の励振の有無にもとずく振幅変調による場合。第2は区間Aと区間Bの電極周期長PA,PBが異なることにより周波数変調によるものである。この観点に立って、図12の状況を説明する。
【0051】
図12は、区間Aの電極指を給電電極に接続しない場合で、かつ区間Aと区間Bの電極指本数NPMを変化させた場合の側帯波の発生状況である。最上段の図(a)はNPM=2本の場合であり、中段の図(b)はNPM=6本の場合いであり、下段の図(c)はNPM=8本の場合である。図中の1200は所望の通過帯域であり、1201、1202、1203の各ピークは、各NPMに対応する側波帯の成分である。これらの振幅の大きさは62dBから30dBと大きく問題である。また、NPMの値は遇数値のものを示したが、奇数値でも同様な側波帯の成分の値を示した。図12において、NPM=2本すなわち、MA=MB=1対の場合が最も側波帯の成分が小さく62dBとなっている。
【0052】
そこでつぎに、前述の側波帯成分の発生原因の内の第1の原因を取り除いてみた。すなわち、区間Aの電極指を給電導体に接続してみた。その結果、最小の側波帯成分が実現するNPM=2において、図13のフィルタ特性が得られた。図中の1301は所望の通過帯であり、1302が側波帯の成分である。その大きさは90dBとなって通常のノイズレベルであり使用可能な大きさに改善されているのがわかる。
【0053】
以上のとおり、本発明が水晶のみからなる基板について、STW型の弾性表面波を利用した弾性表面波フィルタの構成および特性につき説明したが、前記基板が水晶以外の材料例えばダイヤモンド基板からなるものでも、また基板表面にSiO2、ZnO、等の薄膜が本素子の特性を損なわない程度に形成されても、本発明の構成条件が満足される範囲であれば有効であることをつけくわえる。
【0054】
最後に、本発明の共振子型SAWフィルタの具体的な用途を考えてみる。
【0055】
水晶STW基板等を利用して、1.57GHzのRF−フィルタを製作した場合につき特徴を列記すると、
1)周波数温度特性が零温度係数をもち安定である(約-45°〜+85°範囲において、周波数変動量が270ppmと小さい)。
2)材料のQ値が優れ、1.5GHzにおいて共振子のQ値が6000程度と高いため、2dB程度の低損失フィルタが実現できる。
3)区間Aおよび区間Bを周期的に構成しIDTの有する反射係数を低減させて、約3000ppm程度が実現でき、この帯域幅は3MHzの通過帯域幅となって、必要十分にGPS装置に利用される信号の周波数成分範囲2MHzをカバーできる。
4)通過帯域幅内の振幅リップルが小さい50Ωフィルタができる。
【0056】
本発明になる前記共振子型のSAWフィルタをGPS装置用のRFフィルタに用いれば、1.57GHzにおいて約3MHzの通過帯域幅が確保でき、従来のLiTaO3基板を用いて作られる通過帯域幅が30MHz程のフィルタに対して、約1/10に装置が受信する雑音レベルが低減できる他、温度環境の変化に対して周波数変動が小さいために、位相変動が少なく低ジッタかつ低位相ノイズなデジタル信号が受信できるため、測地精度にバラツキが無く、高精度な位置精度が計測可能なGPS装置を市場に提供できる。
【0057】
さらに昨今は、3〜10GHz帯にて使用するUWB(Ultru Wide Band)等の微弱近距離無線が商品化段階にある他、GPS装置とUWBあるいは他の通信装置の近接使用などの手段も研究中であり、本発明の共振子型SAWフィルタはこれらの分野において使用されれば、測地精度の維持のために益々有益な素子となることが考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の共振子型SAWフィルタの一実施例が有する電極パターンを示す平面図。
【図2】本発明の共振子型SAWフィルタの周期構造を説明する概説図。
【図3】本発明の共振子型SAWフィルタの一実施例が有する電極周期長を示す図。
【図4】本発明の共振子型SAWフィルタの周期構造が有する反射特性を示す特性図。
【図5】本発明の共振子型SAWフィルタの動作原理を説明する概説図。
【図6】本発明の共振子型SAWフィルタにおいて使用するSTWカット基板が示す反射係数γ特性図。
【図7】本発明の共振子型SAWフィルタが有する振動変位の状態を示す図。
【図8】従来の技術による共振子型SAWフィルタの伝送特性図。
【図9】従来の技術による共振子型SAWフィルタの他の伝送特性図。
【図10】本発明の共振子型SAWフィルタの一実施例が示す伝送特性図。
【図11】本発明の2段縦続接続共振子型SAWフィルタの一実施例が示す他の伝送特性図。
【図12】従来の技術による2段縦続接続した共振子型SAWフィルタの側帯波成分を示す伝送特性図。
【図13】本発明の2段縦続接続した共振子型SAWフィルタの側帯波成分を示す伝送特性図。
【符号の説明】
【0059】
100 圧電体平板
101,102 反射器
103,104 入出力IDT
105 制御用IDT
112,113 給電導体
116 区間AのIDT
117 区間BのIDT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体平板上の位相伝播方向Xに弾性表面波を励振する入力側すだれ状電極と、前記入力側すだれ状電極により励振された弾性表面波を受信する出力側すだれ状電極と、前記入力側すだれ状電極と出力側すだれ状電極の間に弾性表面波の状態を制御するための制御用すだれ状電極を設け、さらには前記入力側すだれ状電極と出力側すだれ状電極の両側に1対の反射器を有する共振子型SAWフィルタにおいて、
前記の入力側すだれ状電極および出力側すだれ状電極は、前記弾性表面波の波長をλとして電極幅Lがほぼλ/4で構成され、
かつ前記の入力側すだれ状電極および出力側すだれ状電極は、2種類の異なる区間Aと区間Bとを交互に配置してなり、
前記区間Aは、電極幅寸法Lと電極間寸法Sの和である電極周期長PをP=L+Sとした場合に、電極周期長PがPAかつすだれ状電極の対数MAが1対であり、
前記区間Bは、前記電極周期長PがPBかつすだれ状電極の対数MBが1対であり、かつ区間Aと区間Bの電極指はいずれも給電導体に接続し、
さらに、前記制御用すだれ状電極はそれらの電極周期長PCがPAと異ならしめて形成しかつすだれ状電極の対数MCが全反射係数が1程度を成す範囲であることを特徴とする共振子型SAWフィルタ。
【請求項2】
前記圧電体平板と前記すだれ状電極が形成する電極指1本当りの弾性表面波の反射係数γが0.03から0.10の範囲であることを特徴とする請求項1記載の共振子型SAWフィルタ。
【請求項3】
前記共振子型SAWフィルタにおいて、利用する共振モードが基本波対称モードS0と基本波斜対称モードA0および1次対称モードS1の3個の共振状態であり、前記3個の共振現象を結合して得られる縦3重モード型であり、かつ前記電極周期長PAおよびPBとを交互に配置してなるすだれ状電極全体が示す反射係数γabが0.01から0.025の範囲であることを特徴とする請求項1記載の共振子型SAWフィルタ。
【請求項4】
前記反射器の中心周波数f(Ref)と、前記電極周期長PBのすだれ状電極が発生する周波数f(IDT)を一致させたことを特徴とする請求項1記載の共振子型SAWフィルタ。
【請求項5】
前記区間Aと区間Bの電極周期長の比PB/PAについて、0.8<PB/PA<1範囲とし、かつ前記制御用すだれ状電極の電極周期長PCと前記PAの比PC/PAを1.01<PC/PA<1.04の範囲としたことを特徴とする請求項1記載の共振子型SAWフィルタ。
【請求項6】
前記圧電体平板が水晶STWカットであり、前記すだれ状電極はアルミニウム金属により形成されて電極指1本当りの弾性表面波の反射係数γが0.05±0.02であり、かつ前記PB/PAの比が0.9±0.02であり、 かつ前記PC/PAの比が1.02であり、かつ前記MAとMBが1対であり、MCが10対から30対の範囲であり、区間Aおよび区間Bの電極指を給電導体に接続し、かつ前記入力側すだれ状電極と出力側すだれ状電極の和Mが100±10対であり、かつ前記すだれ状電極の交差指幅WCRが50〜80波長であり、前記反射器の導体本数は30〜100本であることを特徴とする請求項1記載の共振子型SAWフィルタ。
【請求項7】
前記水晶STWカットは、水晶回転Y板を電気軸(X軸)回り反時計方向にθ=35度から38度回転した水晶平板であることを特徴とする請求項6記載の共振子型SAWフィルタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−14165(P2006−14165A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−191366(P2004−191366)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】