説明

内燃エンジンのための排気弁スピンドル及びその製造方法

【課題】 排気弁スピンドルにおいて、外側面の高強度を得ること、及び、特に基礎部分への遷移区域の近傍で、強靭な構造を持つ外側面内のマイクロ構造を得ること。
【解決手段】 内燃エンジン特に2ストローククロスヘッドエンジンのための排気弁スピンドル1は、合金鋼の基礎部分4を有する弁ヘッド3と、燃焼室に向かう弁スピンドルの表面を形成する外側面5とを有する。外側面5は、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成され、微粒子種材料は、粘着性の層に結合される。少なくとも基礎部分4への遷移区域において、外側面5の微粒子材料内の粒子は、外側面及び基礎部分を鍛造することにより生じるせん断歪によって卵形状又は細長い形状へと変形され、鍛造された外側面5は少なくとも98.0%の密度を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃エンジン、特に2ストローククロスヘッドエンジン、のための排気弁スピンドルに関する。この排気弁スピンドルは、合金鋼の基礎部分と、燃焼室の方に向かう弁スピンドルの表面を形成する外側面とを有する。この外側面は、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである高温腐食抵抗合金(hot-corrosion-resistant alloy)の微粒子種材料(particulate starting material)から形成され、この微粒子種材料は、粘着層(coherent layer)に結合されている。
【背景技術】
【0002】
引用文献1(米国特許第6,173,702号明細書)は、この種の既知の排気弁スピンドルを記載しており、そこでは、腐食抵抗外側面は、粉末冶金処理により基礎部分上に設けられ、この場合、腐食抵抗合金の微粒子材料は、基礎部分上のモールド(mould;
鋳型)内に配置され、HIP(Hot Isostatic Pressur;高温等静圧)プロセスにより基礎部分と一体化される。モールドは、空気又はガスをできる限り除去するために真空化される。HIPプロセスは、圧力下で加熱及び設定できる室内で遂行される。有効な方法で室を利用するために、室は基礎部分又は他の部品でできる限り満たされ、これらの物体は、室内で同じHIP処理を受ける。処理が開始されたとき、室はHIP状態に加熱及び加圧され、次いで、このような状態は、必要な期間、典型的には少なくとも8時間乃至12時間、維持される。
【0003】
HIP処理中、圧力は等静圧(全ての方向において完全に均一な圧力)で微粒子材料に影響を及ぼし、微粒子材料の体積は、基礎部分上で圧縮されるので、すべての方向において均一に減少する。生じた外側面のマイクロ構造において、粒子は、完成した弁スピンドルから取り出され研磨(ground and polished)されたサンプルにおいて見たときに、円形の輪郭を伴った球状形状として留まるように見える。図1及び図10は、このようなサンプルの写真図である。
【0004】
下方の弁ヘッド表面は、大きな面積を有し、それ故、例えばエンジン負荷が変化されるとき、特にエンジンが始動又は停止するときに、大きな熱応力に曝される。熱の衝撃は、表面の中心で最大となる。それは、部分的には、燃焼ガスが燃焼室の中央近傍で最大温度を有するためであり、部分的には、弁が閉じている間に、弁ヘッドが外側リム(ここでは、上方表面上の座領域が水冷の静止の弁座に接触する)の近傍で冷却されるためである。冷えた周辺材料は、高温の中央材料の熱膨張を阻止し、従って、大きな熱応力を生じさせる。この熱的な影響により生じたゆっくり変化するが大きな熱応力は、外側面の強度及び質に極めて高い要求を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】US6,173,702(米国特許明細書)
【特許文献2】WO97/47862(国際公開パンフレット)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
HIPプロセスは、外側面の高質のマイクロ構造及び優れた粘着性を提供することで知られているが、HIPプロセスは、極めて長い時間を消費し、上昇した温度での長いプロセス時間はまた、1つの合金から他の合金への成分の拡散に似た、望ましくない冶金的なプロセスを生じさせ得る。本発明は、外側面の高強度を得ること、及び外側面の、特に基礎部分への遷移区域の近傍で、強靭な構造を持つマイクロ構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、本発明に係る排気弁スピンドルの特徴とするところは、少なくとも基礎部分への遷移区域において、外側面の微粒子材料内の粒子が、外側面及び基礎部分を鍛造(forging)することによって生じるせん断歪(shear strain)により、卵形状(oval)又は細長い形状へと変形され、鍛造された外側面が少なくとも98.0%の密度を有することである。
【0008】
鍛造により誘起されたせん断歪は、他の粉末粒子に対する粉末粒子の変位を生じさせ、粒子が、互いに擦れ合い、粒子の表面上に存在し得る酸化フィルム層を貫通する。微粒子材料は典型的には無酸素ガス内での微粒化により製造されるので、どんな酸化フィルム層も薄いが、貯蔵中にある酸化物が粒子上に形成されるのは不可避である。せん断歪は、卵形状又は細長い形状として特徴づけられることのある非球形形状へと粒子を変形させる。鍛造中、微粒子材料は密度の高い層へと圧縮され、粒子は隣接する層に接着される粘着性材料として結合する。この隣接する層は、微粒子材料が基礎部分上に直接的に位置する場合は、基礎部分である。少なくとも98.0%の密度は、また、最大2%の多孔性(porosity)として表現することができる。
【0009】
鍛造により誘起されたせん断歪は、少なくとも半径方向に微粒子材料を流れさせ、このような半径方向は、排気弁スピンドルの軸方向に垂直であり、従って、このような半径方向は、弁ヘッドの下方表面に平行であり、外側面の材料と基礎部分の材料との間の実質的に平坦な遷移区域に平行である。せん断歪及びその結果としての遷移区域の近傍における材料内での半径方向の運動は、材料間の有効な接着の発生を保証し、変形中の粒子の相互の擦れ合いの極めて有効な方法に関連して、結果としてのマイクロ構造は、マイクロ構造内での極めて少数の内部欠陥地点のみを有する。従って、遷移区域内での材料の一緒の結合は、強靭なマイクロ構造を有し、外側面と基礎部分との間の幾何学的な係止を完全に不要にすることができる。
【0010】
好ましい実施の形態においては、外側面と基礎部分との間の遷移区域は弁ヘッドのリム領域内部から弁ヘッドの中央領域へ延びる領域内で少なくとも1つの直線的な平面に沿って延びる。リム領域においては、外側面は拡大部を有することができ、この拡大部は、外側面がそれ自体で周辺部に直立の壁を備えた皿形状となるように、上方に延び、周辺部に沿って基礎部分を包囲する。リムからある距離を隔てて、遷移区域は直線的な平面に沿って弁ヘッドの方への延びを開始し、この平面の延長は、外側面の厚さ又は形状の急激な変化が存在せず、従って、鍛造中に外側面内の部粒子材料を処理する方法において大きな局部的変化が存在しないという利点を与える。平坦な遷移区域の近傍において、微粒子材料は、局部領域内で実質上同じ処理を受け、1又はそれ以上の平坦な領域がリム領域の内部から中央領域へ延びるときに、これらは弁ヘッドの大半の領域を覆う。
【0011】
外側面は、基礎部分上に直接位置することが可能である。代わりとして、合金の少なくとも1つのバッファ層が基礎部分と外側面との間に位置する。このようなバッファ層を使用した場合、バッファ層の合金は基礎部分の合金鋼とは異なり、且つ、外側面の高温腐食抵抗合金とは異なる組成を有する第3の合金である。組成の差は、バッファ層の合金の分析が合金化成分において又は合金化成分の1又はそれ以上の量(重量%)において異なることを意味する。バッファ層は異なる量の炭素又は異なる量のクロム、鉄又はニッケルのような他の成分を伴った合金鋼とすることができる。従って、組成という用語は、合金の分析を意味するものとして考えることができる。合金鋼の基礎部分と外側面との間でのバッファ層の位置は、合金鋼がバッファ層の金属のみと直接接触し、外側層(面)の腐食抵抗合金と接触しないという効果を有する。バッファ層は外側面から基礎部分への及び基礎部分から外側面への合金化成分の拡散を減少させ又は阻止するように作用する。
【0012】
好ましくは、バッファ層は、スチール、オーステナイトスチール、ニッケルベースの合金、及び、不可避の不純物は別として、鉄又はニッケル系統である合金からなるグループから選択される。このような合金は基礎部分のスチール及び外側面の合金の双方と両立できるものと考えられる。
【0013】
1つの実施の形態においては、基礎部分の合金鋼はオーステナイトステンレススチールである。長年にわたって、合金NIMONIC80A(スペシャル・メタルズ社(Special Metals)による登録商標)から全体の弁スピンドルを作ることが許されていた。しかし、これに似た特殊合金はオーステナイトステンレススチールのようには容易に入手できず、ステンレススチールはまた高強度を有し、もし腐食抵抗が燃焼室に面する表面上のステンレススチールの能力以上に改善できれば、特に2ストローククロスヘッドエンジンにおいて概して極めて良好に働くものと考えられる。しかし、ステンレススチールは幾分高い炭素含有量を有する。バッファ層は拡散した炭素を吸収し、そのため、排気弁の大半の部分に対してステンレススチールを利用する利点は高温腐食抵抗及び完成した排気弁の長期間の柔軟性のための高い要求により損なわれない。
【0014】
好ましい実施の形態においては、バッファ層は少なくとも2mmの厚さを有する。この厚さは、バッファ層がカーバイド形成能力(この場合、層内へ拡散する炭素はカーバイドに変換され、従って、層の炭素活性化の増大を生じさせない)を示す合金のものである場合でさえも、炭素がバッファ層を横切って拡散できないことを保証するのに十分である。
【0015】
本発明はまた、内燃エンジンのための排気弁スピンドルを製造する方法に関し、この場合、排気弁スピンドルは合金鋼の基礎部分を有する弁ヘッドと、燃焼室の方へ向いた弁スピンドルの表面を形成する外側面とを有し、この外側面は、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成される。
【0016】
本発明に従えば、方法の特徴とするところは、高温腐食抵抗合金の微粒子材料が基礎部分において囲い内に保持されている間、微粒子材料が鍛造温度に加熱されて鍛造され、それによって、微粒子材料が粒子を細長い形状又は卵形状へと変形させるせん断歪を受け、この鍛造は少なくとも98.0%の密度へと微粒子材料を圧縮し、外側面を基礎部分に又はバッファ層及び基礎部分に結合することである。
【0017】
鍛造は、HIP処理に比べて極めて迅速に生じ、従って、合金化成分は、弁部品が上昇した鍛造温度にある間に、1つの合金から隣接する合金への拡散のためのほんの短い時間を有する。上述したように、鍛造は微粒子材料を一緒に押圧し、せん断歪は遷移区域に平行な方向に粒子を移動させ、微粒子材料内の粒子を互いに擦り合わせ、溶合させる。移動、擦合及び溶合中、粒子上に最初に存在するいかなる酸化フィルムもが、分解し、任意の1つの粒子内部のグレン(粒)からの真新しい合金材料は他の粒子内部のグレンからの真新しい合金材料と直接接触し、従って、グレンはマイクロ構造レベルで有効に接続することができる。
【0018】
1つの例においては、囲い内の微粒子材料は、弁ヘッドのリム領域の内部から弁ヘッドの中央領域へ延びる領域において、実質上均一な厚さの層となって提供される。微粒子材料の層が囲い内で実質上均一の厚さのものであり、実質上均一の鍛造状態が適用された場合、結果としての外側面は実質上均一な厚さを有する。従って、外側面と基礎部分との間の遷移区域は単一の直線的な平面においてその平面に沿って弁ヘッドの半径方向に延びる。
【0019】
別の例においては、囲い内の微粒子材料は、弁ヘッドのリム領域の内部から弁ヘッドの中央領域へ延びる領域において、弁の長手方向の中心軸線の方に向かって増大する厚さの層となって提供される。弁ヘッドの下方表面が普通平坦な表面であるので、基礎部分の下方表面は外側面の一層大きな厚さを許容する窪んだ中央領域を伴って作ることができる。従って、外側面と基礎部分との間の遷移区域はいくつかの直線的な平面に沿って延びることができるか、又は、遷移区域は僅かに湾曲した形状を有することができる。弁ヘッドの下方表面の中央領域での外側面の増大した厚さは微粒子材料の消費量に比較して長寿命を持った排気弁を提供する。
【0020】
その理由は、使用中、作動中の最大の温度衝撃(影響)及び材料の最大損失が弁ヘッドの下方表面の中央領域において生じるからである。材料の損失がリム領域の近傍又は他の局部領域内で最大になるものと予期されるようなエンジンに、排気弁スピンドルを使用する場合、外側面は、代わりに、リム領域の方向において増大した厚さ又はそのような局部領域において増大した厚さを有することができる。
【0021】
本発明に係る更なる方法の特徴とするところは、高温腐食抵抗合金の微粒子材料が予め形成された部品を造るために不活性雰囲気内で高温噴霧され、予め形成された部品及び基礎部分が鍛造温度に加熱されて鍛造され、それによって、微粒子材料が細長い形状又は卵形状へと粒子を変形させるせん断歪を受け、鍛造が少なくとも98.0%の密度へと微粒子材料を圧縮し、外側面を基礎部分に又はバッファ層及び基礎部分に結合することである。
【0022】
この方法により、微粒子材料は十分に安定した形状の予め形成された部品として最初に形状づけられ、微粒子材料が単一の本体として基礎部分上に位置することを許容する。微粒子材料を基礎部分上に直接噴霧することさえ可能である。微粒子材料が相互接続多孔度を有しない場合、囲いの使用を回避することが可能である。囲いを使用した場合は、鍛造の完了後に囲いを機械加工で除去しなければならない。予め造られた部品内の微粒子材料は鍛造前に不規則な形状を有するが、鍛造は第1に述べた方法に関連して説明した効果と同じ効果を生じさせる。しかし、結果としての変形した粒子は完全に不規則な形状を有する。
【0023】
どんな方法が利用されても、鍛造前には、外側面の材料は1×10−4バールよりも低い圧力に減圧されるのが好ましい。減圧は鍛造すべき微粒子材料内の空洞からガスを除去し、これは材料の圧縮を容易にする。外側面の材料内に存在するガスは典型的には不活性ガスのような酸素の無いものであるが、実践的にはできる限り少量のガスを存在させるのが、更に有利である。結果として、外側面の材料は1×10−7バールよりも低い圧力に減圧されるのが好ましい。
【0024】
第3の合金のバッファ層を使用すべき場合、この第3の合金は基礎部分の合金鋼(第1の合金)とは異なり、且つ、外側面の高温腐食抵抗合金(第2の合金)とは異なる組成を有する。第3の合金は、好ましくは、外側面の材料が基礎部分の表面に位置する前に、基礎部分のその表面に適用される。代わりに、第3の合金は外側面の材料に適用することができる。しかし、基礎部分の表面は通常、極めてよく制御された(特に量及び均一な方法での材料の散布に関してよく制御された)方法でその上に第3の合金を適用できるような規則的で円滑な表面である。
【0025】
外側面を備えた弁ヘッドを得るために2以上のステップ即ち工程で鍛造を行うことが可能である。基礎部分及び外側面を結合する鍛造工程に続き、結合された基礎部分及び外側面は最終形状を得るために少なくとも1つの引き続きの工程において鍛造することができる。これは、例えば、基礎部分及び外側面が第1の鍛造工程において結合されたときに円筒形状を有し、これに続いて、弁のヘッド部分が引き続きの工程において鍛造される場合に、有利となることがある。遷移区域を横切る拡散を減少させるため、鍛造は好ましくは10分以下で実行され、外側面を伴った基礎部分は鍛造後直ちに冷却される。
【0026】
方法の更なる開発においては、鍛造の完了後に、弁シャフト部分は基礎部分上に摩擦溶接される。これの1つの利点は、鍛造温度に加熱しなければならない材料の量が、弁シャフト部分が存在しない場合よりも一層少ないことである。別の利点は、基礎部分が、外側面から離れる方に向いた側部へ延びるシャフト部分を有する代わりに、その側部において鋳型内で完全に囲まれ、支持されることである。
【0027】
鍛造された弁ヘッド、又は、弁ヘッド及びシャフトを備えた完成した弁は、随意には、焼戻し又は焼なましのような最終の熱処理を受けることができる。熱処理は遷移区域での合金化成分の拡散を生じさせることができ、材料間の冶金結合を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】外側面が従来のHIP処理により提供された場合の、弁スピンドルから取り出された、砥がれて研磨されたサンプルの顕微鏡写真である。
【図2】本発明に係る排気弁の形をした排気弁スピンドルの断面部品図である。
【図3】本発明に係る弁ヘッドの鍛造を概略的に示す図である。
【図4】本発明に係る弁ヘッドの鍛造を概略的に示す図である。
【図5】本発明に係る弁ヘッド及び弁シャフトを示す図である。
【図6】外側面が本発明に従って提供された場合の、弁スピンドルから取り出された、砥がれて研磨されたサンプルの顕微鏡写真である。
【図7】外側面が本発明に従って提供された場合の、弁スピンドルから取り出された、砥がれて研磨されたサンプルの顕微鏡写真である。
【図8】テストサンプルの頂面図である。
【図9】テストサンプルの側面図である。
【図10】外側面が従来のHIP処理により提供された場合の、弁スピンドルから取り出された、砥がれて研磨されたサンプルの顕微鏡写真である。
【図11】本発明の方法に従った、鍛造前に囲い内に保持された微粒子材料を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び図10において、サンプルはHIP圧縮(compacted)された微粒子材料から取り出され、粒子を通しての切断からの円形形状が示されている。これは、圧縮(compacting)中に粒子がその球形形状を維持することを示す。粒子が球形であることは、HIP圧縮の典型的な証であり、これは、圧縮中に適用された等静圧の結果である。等静圧は、粒子がプロセス中に材料内で動き回らないような方法で微粒子材料を縮ませる。これは、粒子間の相互位置が維持されるような極めて整然としたプロセスである。従来のマイクロ構造を一層明確に識別するために、写真内に現れた粒子の3つを輪郭づけるように3つの円を図10の写真に付加してある。
【0030】
図2は、2ストローククロスヘッドエンジン用の排気弁のための排気弁スピンドル1を概略的に示す。弁の左半分は、外部から見たものを示し、弁の右半分は、外側面5の位置及び程度の例を可視化する断面として示す。弁スピンドル1は、その下方部分のみを図2に示す弁シャフト2と、基礎部分4及び外側面5を備えた弁ヘッド3と、を有する。排気弁の軸方向はシャフトの中心で延びるラインCの方向に指向する矢印Aで示し、矢印Rは、軸方向に垂直である半径方向を示す。
【0031】
弁ヘッド3の上方表面での弁座6は、座のシール表面上での窪みマークの形成を妨害するのに適した高温腐食抵抗合金で製造される。このような座合金は周知であり、座合金に関連して参照としてここに組み込む、本出願人による国際特許出願WO97/47862号明細書に記載されている。
【0032】
弁ヘッド上の外側面5は、排気弁からの材料の剥離を妨害し、排気弁スピンドルがエンジン内に装着されたときに燃焼室の方へ下方に向いた表面7を形成する高温腐食抵抗材料の層である。高温腐食抵抗材料はニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである合金の微粒子種材料から形成される。作動時に、エンジン内において、排気弁スピンドルは、エンジンサイクルの適当な時期に、弁座6が排気弁ハウジング(図示せず)内の静止の弁座に当接するような閉じた位置と、排気弁スピンドル1が下方に移動して、弁座6が静止の弁座からある距離隔てているような開いた位置との間を、移動する。排気弁スピンドル1は、シリンダインナー及びシリンダカバー(図示せず)と一緒になって、内燃エンジンの燃焼室を画定し、従って、燃焼で生じる高温で侵略的な環境に曝される。
【0033】
排気弁スピンドルを利用する内燃エンジンは、4ストロークエンジン又は2ストローククロスヘッドエンジンとすることができる。2ストロークエンジンは、MC又はME形式のようなマン(MAN)製ディーゼルとすることができ、又は、RTA−フレックス(RTA-flex)のRTA形式のようなワルトシーラ(Wartsila)製のものとすることができるか、又は、三菱製のものとすることができる。このような2ストローククロスヘッドエンジンについては、ピストンの直径は250mmから1100mmまでの範囲とすることができ、弁ヘッドの外径は、120mmから600mmまでの範囲とすることができ、典型的には少なくとも170mmとすることができる。
【0034】
このような寸法から、燃焼室に面した排気弁スピンドルの表面は大きな面積を有することが明らかであり、これは、外側面5において及び外側面と基礎部分との間の境界面領域においてそれぞれ大きな熱応力を生じさせる。本発明の実施の形態においては、外側面5は排気弁スピンドルの中心から弁ヘッドのリム領域8の方へ延びる平坦な領域内で基礎部分4に強固に接続される。
【0035】
排気弁スピンドル1はまた、例えば中速又は高速形式の4ストロークエンジンのような一層小さなエンジンにおいて利用することができるが、排気弁スピンドルは、負荷が厳しく、故障を伴わない連続的な要求が優勢であるような大きなエンジンである2ストロークエンジンに特に適用できる。
【0036】
1つの実施の形態においては、外側面5は基礎部分4の表面上に直接適用される。そこから図6、図7の写真に示す見本を取り出した排気弁スピンドルの別の実施の形態においては、バッファ層9は基礎部分4と外側面5との間に位置する。バッファ層9は、不可避の不純物は別として、基礎部分の表面に適用された実質上純ニッケルの層とすることができる。ニッケル層は、基礎部分の頂部上に置かれた微粒子材料として提供されるような、異なる方法で表面に適用することができる。ニッケル層はまた、バッファ層の頂部上に外側面の微粒子材料を配置する前に、別の手順で提供することができる。このような別の手順においては、基礎部分はめっき層内に配置することができ、ニッケルはニッケル電気めっきにより蒸着することができ、30μmから150μm、好ましくは30μmから70μmまでの範囲の厚さを有する層を形成する。電気めっきされた層は、純ニッケルの極めて密度の高い層であるという利点を有する。電気めっきされた層は基礎部分への冶金結合を有する。
【0037】
別の実施の形態においては、バッファ層は、不可避の不純物は別として、鉄の層のものである。純粋な又はほぼ純粋な鉄又はニッケルのバッファ層を作る1つの利点は、バッファ層がカーバイド形成源を全く有しないか又はごく少量しか有しないことである。この場合、バッファ層内でのカーバイドの形成は抑制され、バッファ層内への炭素の拡散はバッファ層内での炭素の活性度を増大させ、従って、層内への炭素の更なる拡散は抵抗を受ける。炭素のみは鉄又はニッケル内で極めて小さな溶解度を有する。例として、500℃の温度でのニッケル内の炭素の溶解度は0.1重量%よりも小さく、そのため、少量の炭素がバッファ層内で拡散した場合でさえ、バッファ層は100%の炭素活性度を得ることができ、従って、層内への炭素の更なる拡散を実質上阻止する。
【0038】
別の例として、バッファ層9はスチール又はオーステナイトスチールのものとすることができる。バッファ層は、スチールの板とすることができる。一層特定な例として、基礎部分4は鍛造された弁スチール(SNCrW−表1における合金1)のものであり、外側面5は合金671のものであり、スチールの板は合金W−表2の合金から選択されたNo.1.4332のものである。別の例として、バッファ層9は合金UNS S31603の微粒子材料として提供することができ、外側面5は合金671の微粒子材料のものとすることができる。基礎部分4は鍛造されたスチールのものである。この場合、バッファ層の微粒子材料及び外側面の微粒子材料の双方は、鍛造中に、基礎部分4上の粘着性材料に結合される。
【0039】
代わりの実施の形態として、バッファ層は、ニッケルベースの合金のものとすることができる。この形式の合金は、外側面の合金との十分な結合のために特に適し、20乃至23%のクロムを有する合金IN625、19乃至23%のクロムを有する合金INCOLOY600又は10乃至25%のクロムを有する合金IN718又は約15%のクロムを有する合金NIMONIC合金105又は10乃至25%のクロムを有する合金Rene220の如き、25重量%よりも少ないクロム含有量のような、外側面よりもかなり少ないクロム含有量を有することができる。バッファ層はまた、一層多量のニッケルが炭素の拡散を阻止する傾向を有するので、一層ニッケルの豊富な合金のものとすることができる。
【0040】
微粒子材料は、当業界で周知のいくつかの異なる方法で製造することができる。例えば、微粒子材料は、所望の組成の溶融合金の液体ジェットを不活性雰囲気の室内へ噴霧する(それによって、材料は失活(quenched)し、極めて微細な樹枝状の構造を持つ粒子として固化する)ことにより製造することができる。微粒子材料はまた粉末と呼ぶこともできる。
【0041】
代わりに、微粒子材料は所望の組成の溶融合金の液体ジェットを不活性雰囲気の室内へ噴霧する(この場合、噴霧された粒子のスプレーは固体部品に衝突し、その上に蒸着するように導かれる)ことにより製造することができる。固体部品は冷却することができ、この例では、粒子は固体部品とは別個の予め形成された部品を作る。代わりに、粒子は固体部品に結合することができ、基礎部分4はそれとして使用することができ、そのため、予め形成された部品は基礎部分に直接接着される。
【0042】
基礎部分4のための適当な材料はステンレススチールである。このような材料の例は次の表1に示す。W.−No.は合金のためのドイツの規格番号である。示される百分率は重量%である。
【0043】
【表1】

【0044】
(注:Cは炭素、Siはケイ素、Mnはマンガン、Crはクロム、Niはニッケル、Wはタングステン、Moはモリブデン、Nは窒素である)
随意のバッファ層のための適当な材料は、次の表2に例示したようなスチールである。W.−No.は合金のためのドイツの規格番号である。示される百分率は重量%である。
【0045】
【表2】

【0046】
(注:Cは炭素、Siはケイ素、Mnはマンガン、Crはクロム、Niはニッケル、Nbはニオビウム、Moはモリブデンである)
バッファ層のための別の適当な材料は、0.5−1.0%のマンガン、16.5−18%のクロム、11.5−14%のニッケル、2.5−3.0%のモリブデン、0−0.1%の窒素、0−0.025%の酸素、0−0.03%の炭素及びバランス鉄を含む合金UNS S31603である。バッファ層が板材料のものである場合、通常、窒素及び酸素の含有量に対するいかなる要求も存在しない。しかし、バッファ層が微粒子材料である場合は、窒素の含有量は最大0.1%であることが好ましく、酸素の含有量は最大0.03%であることが好ましい。
【0047】
外側面のための適当な材料は排気弁の業界で周知であり、その例は、ステライト6、タイプ50%クロム及び50%ニッケルの合金、及び、48−52%のクロム、1.4−1.7%のニオビウム、最大0.1%の炭素、最大0.16%のチタン、最大0.2%の炭素+窒素、最大0.5%のケイ素、最大1.0%の鉄、最大0.3%のマグネシウム及びニッケルのバランスを含むタイプIN657の合金である。
【0048】
別の例は、40乃至51%のクロム、0乃至0.1%の炭素、1.0%以下のケイ素、0乃至5.0%のマンガン、1.0%以下のモリブデン、0.05%乃至0.5%以下のボロン、0乃至1.0%のアルミニウム、0乃至1.5%のチタン、0乃至0.2%のジルコニウム、0.5乃至3.0%のニオビウム、最大5.0%のコバルト及び鉄の凝集含有物、最大0.2%の酸素、最大0.3%の窒素及びニッケルのバランスを含む組成を有する合金である。外側面として使用するのに適した他の面合金はロンドンの海洋技術者協会(The Institute of Marine Engineers)からの1990年に発行された「重燃料作動のためのディーゼルエンジン燃焼室材料(Diesel engine combustion chamber materials for heavy fuel operation)」という名称の本における論文「現在の弁材料での作動体験の報告(Review of operating experience with current valve materials)」に記載されている。
【0049】
鍛造は、鍛造位置に弁ヘッドの基礎部分4を配置し、基礎部分の表面へ(もしあるならば)バッファ層9を適用することにより、準備される。外側面5の微粒子材料は、いくつかの異なる方法で提供することができる。図11に示す1つの例においては、外側面5は、基礎部分4において囲い12内に保持された微粒子材料として提供され、囲い及び微粒子材料を伴った基礎部分は、鍛造のための準備として鋳型部品内に配置される。基礎部分上での囲い12及び微粒子材料の配置はいくつかの異なる方法で行うことができる。囲い12は、基礎部分4上に溶接することができ、パイプスタッドを具備することができ、このパイプスタッドは囲い内へ微粒子材料を満たすために使用され、次いで、真空装置を接続するために使用され、次いで、鍛造前に閉鎖される。
【0050】
代わりに、囲い12は、微粒子材料が囲い内に置かれた後に、基礎部分4に固定される。この固定は溶接を使用することにより、又は他の例としては、真空ろう付けにより、行うことができる。更なる代わりとして、囲いが基礎部分に固定され、引き続いて、微粒子材料が囲い内に満たされ、最後に、ろう付けが遂行される。真空ろう付けを使用する場合、囲いはカップ形状とすることができ、内部に粗いネジ部を具備することができ、このネジ部は基礎部分上の外ネジ部と螺合する。ネジ部上にはんだを施す。次いで、真空オーブン内で加熱及び固定を生じさせることができる。別の例においては、外側面5の微粒子材料は図3に示すように基礎部分4上に位置する予め形成された部品として提供される。このような予め形成された部品の形成は、後に一層詳細に説明する。
【0051】
鍛造の前に、外側面5の微粒子材料、及び、可能ならバッファ層9及び囲い12を伴った基礎部分4は、好ましくは950℃乃至1100℃の温度範囲内にある鍛造温度に加熱される。加熱された部品は、下方鋳型部分10、上方鋳型部分11及び機械的に駆動できるか又は液圧的に駆動できる駆動機構を有する鍛造プレス内に導入される。鍛造プレスの作動は一方の鋳型部分を他方の鋳型部分の方へ変位させ、鋳型部分内に保持された材料はこの変位中に機械的に変形される。鍛造を遂行するために必要な力は弁ヘッドの寸法に依存する。約490mmの直径の弁ヘッドに対しては、有効な鍛造作動は約250乃至400MNの範囲の圧縮力を供給できる鍛造プレスにより実行することができる。
【0052】
一層小さな直径の弁ヘッドに対しては、利用される圧縮力は、150mmの直径の弁ヘッドを有する排気弁に対して35MNのように、一層小さくすることができる。鍛造作動は、好ましくは10分以内、一層好ましくは3分以内で実行される。鍛造中、外側面5の微粒子材料は、典型的には、外側面の厚さが微粒子材料の初期の厚さの30乃至70%に減少するように、圧縮される。密度の高い予め形成された部品を使用した場合、密度は鍛造前には幾分高くすることができ、この例においては、外側面の厚さは微粒子材料の初期の厚さの30乃至95%に減少させることができる。外側面の結果としての密度が少なくとも98.0%になるように、微粒子材料はその厚さを減少させる。鍛造を使用してこの程度に圧縮されたとき、適当な密度の微粒子材料が得られる。もちろん、例えば、少なくとも99.0%の密度に、一層良好には少なくとも99.5%の密度に、最も好ましくは100%の密度に、微粒子材料を更に圧縮するのが一層好ましい。
【0053】
鍛造中、微粒子材料はせん断歪を受け、このせん断歪は粒子の位置を移動させ、材料を変形させる。歪は材料内の粒子間の相対変位を表す変形の幾何学的な尺度である。せん断歪は粒子の場所移動を生じさせ、粒子の相互作用時に粒子を変形させる。せん断歪は鍛造により影響を受ける表面に平行に作用する。鍛造は、表面7に垂直である排気弁スピンドルの軸方向においてこの表面7に影響を及ぼし、従ってせん断歪は、この表面に平行に(排気弁スピンドルの半径方向に)作用する。外側層(面)の圧縮中、せん断歪は、粒子を半径方向に変位させ、粒子を互いに擦り合わせ、長方形形状、卵形状又は不規則形状のような非球形形状へと粒子を強制変形させる。鍛造が完了したとき、鍛造された弁ヘッドは鋳型から取り出され、空冷されるか又は他の方法で冷却される。
【0054】
外側面の材料内の有効な歪の量は、少なくとも0.3であるのが好ましい。有効な歪は、2006年のプレンティス・ホール(Prentice Hall)の第5版におけるカルパクジャン及びシュミッド(Kalpakjian and Schmid)による「製造技術工学(Manufacturing engineering and technology)」又は1978年、ストックホルムの国立スエーデン技術大学(Royal Swedish Technical University)の刊行物104におけるゲルト・ヘドナー(Gert Hedner)による「Formelsamgling I Hallfasthetslare」(222−223頁)のような、基礎的な教本に開示された伝統的な方法で、計算される。一層好ましくは、有効な歪は少なくとも0.4である。これは、外側面の粒子と基礎部分又はバッファ層の材料との間の極めて有効で強固な結合を保証する。
【0055】
排気弁スピンドルを製造する第1の方法は、次の通りである。排気弁スピンドルは、合金鋼の基礎部分と、燃焼室に向かう弁スピンドルの表面を形成する外側面とを備えた弁ヘッドを有する。合金鋼の基礎部分は、例えば材料を適当な形状へと鍛造することにより、準備される。外側面を形成するための微粒子種材料が準備される。材料は高温腐食抵抗合金のものである。微粒子種材料は囲い内に包まれ、この囲いの内部は外側面の形状を有する。換言すれば、囲いは、弁ヘッドが鍛造された後に除去されるように準備される。高温腐食抵抗合金の微粒子材料が基礎部分で囲い内に保持されている間、微粒子材料及び基礎部分は、鍛造温度に加熱され、鋳型部分の一方、典型的には、下方鋳型部分10内に位置決めされる。次いで、材料が鍛造され、それによって、微粒子材料は粒子を細長い形状又は卵形状に変形させるせん断歪を受ける。同時に、微粒子材料は、少なくとも98.0%の密度に圧縮され、基礎部分に又はバッファ層及び基礎部分に結合される。
【0056】
排気弁スピンドルを製造する第2の方法は、予め形成された部品を造るために高温腐食抵抗合金の微粒子材料を高温噴霧することである。予め形成された部品は、噴霧手順中に基礎部分上に直接形成することができるか、又は部品は別個に形成し、基礎部分上に配置し、鍛造温度に加熱することができる。次いで、予め形成された部品及び基礎部分並びに随意のバッファ層は、排気弁部品として鍛造することができる。鍛造中、微粒子材料は、粒子を細長い形状又は卵形状に変形させるせん断歪を受け、鍛造は微粒子材料を少なくとも98.0%の密度に圧縮し、外側面を基礎部分に又はバッファ層及び基礎部分に結合する。
【0057】
微粒子材料の高温噴霧は、溶融合金を伴った噴霧ドライヤーノズルを供給し、霧化した粒子を基礎部分4上に噴霧することにより、行うことができ、この場合、粒子は部分的に結合するが、密度の高くない状態に留まる。高温噴霧を適用された予め形成された部品を伴った基礎部分は、鍛造温度に加熱され、上述の説明で述べたような一方の鋳型部分内に配置され、次いで、密度の高い状態に鍛造される。外側面のために準備される微粒子材料は、粒子に存在する酸素の量を減少させるために、鍛造前に真空化するのが好ましい。このようにして、粒子上での酸化フィルムの形成が妨害される。
【0058】
鍛造において、外側面5は、初期の厚さに比べて約25%小さい厚さのような一層小さな厚さに圧縮される。同時に、外側面内の材料の密度は約65%から100%の近くまで減少する。結果としての密度は少なくとも98.0%であるのが好ましい。
【0059】
上述の方法のうちの任意の方法で製造された弁ヘッド3は、燃焼室の方へ指向した表面において外側面5を有する弁ヘッドである。弁ヘッド3の基礎部分4が弁シャフト2と一体的に形成される場合は、弁ヘッドは弁シャフトを有することができるか、代わりに、一層簡単にしたいと考える場合は、弁ヘッドは、弁シャフト2を伴わずに製造することもできる。後者の場合、弁シャフトは、弁ヘッドの製造完了後に弁ヘッドに装着しなければならない。図5は完成した弁ヘッド及び弁シャフト2を示す。これらの2つの部品は周知の方法で摩擦溶接により結合することができる。このような摩擦溶接においては、典型的には弁ヘッドである一方の部品は固定的に保持され、弁シャフトのような他方の部品は、最初に回転させられ、次いで、弁ヘッドに当接するように軸方向に移動させられ、その結果、これらの2つの部品は単一の排気弁スピンドルとなって一緒に摩擦溶接される。
【0060】
得られた強靭なマイクロ構造は、遷移区域において材料の強固な結合を生じさせる。本発明に従えば、この結合は、試験することができる。せん断負荷による材料の引き裂きに対する強度を試験するため、排気弁から切断したサンプルに基づき、特別な試験片を準備する。試験片は、図8、図9に示すような形状を有する。試験片は、幅(w=)9.0mm、長さ(L=)40.0mm、引っ張り穴の中心間の距離(d=)25.4mm、基礎部分の厚さ(t=)3.5mm及び外側面の厚さTを有する。外側面の厚さが測定され、厚さTに設定する。次いで、全体の材料を通して、いずれかの側から、少なくとも2mmの幅の溝を切削し、長手方向におけるこのような相互分離により、層の相互結合による結果としての重なりは外側面の測定した厚さTよりも小さくなる。
【0061】
8つの例を実行し、その結果を表3に示す。得られたせん断強度が高いレベルにあることが明らかに分かる。このレベルは固形材料のせん断強度に対応する。従って、本発明に従って得られた結合は材料の弱化を生じさせない。
【0062】
【表3】

【0063】
更なる実施の形態においては、高温腐食抵抗合金の微粒子材料はセラミック材料ジルコニア(ZrO)に似た隔離材料の粒子と混合される。隔離材料は外側面の外表面の近傍で一層大きな濃縮度を有することができ、好ましくは、外側面と基礎部分との間の遷移区域には、隔離材料が存在しない。外側面の微粒子材料は5乃至60重量%の隔離材料を含むことができるが、好ましくは、隔離材料の量は外側面の40重量%を越えない。
【0064】
特許請求の範囲の要旨内で、上述の実施の形態の詳細を他の実施の形態として組み合わせることが可能である。更に、特許請求の範囲の要旨内で、上述の実施の形態の詳細について変形を行うことが可能である。例えば、弁座6は、弁ヘッドと同じ合金のものとすることができ、バッファ層9は弁座6で終端することができ、(弁座6の下の領域において)最大の直径で傾斜した又は垂直の広がりを有することができる。上述の実施の形態の任意のものは、焼戻し又は焼なましのような最終熱処理を受けることができる。例えば、熱処理は2乃至6時間の範囲の期間を有することができ、800乃至1050℃の範囲の温度で生じることができる。他の温度も可能である。
【0065】
排気弁スピンドルは、重要なエンジン部品であり、特定の排気弁スピンドルの特定及び可能な製造詳細の資料のための情報は排気弁スピンドルに埋設したタグ内に記憶させることができる。好ましくは、タグは、遠隔的に読み書きできるRFID形式のものであり、更に好ましくは、追跡性を提供する個々の証明データを含む。所望なら、特定のスピンドルは2つ以上のタグを具備することができる。タグは、熱及び他のタグ危害パラメータから十分にシールドされるような、排気弁スピンドル内の位置に位置決めできる。
【符号の説明】
【0066】
1:排気弁スピンドル、2:弁シャフト、3:弁ヘッド、4:基礎部分、5:外側面、6:弁座、7:表面、8:リム領域、9:バッファ層、10:下方鋳型部分、11:上方鋳型部分、12:囲い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジン、特に2ストローククロスヘッドエンジンの排気弁スピンドルであって、
合金鋼の基礎部分を有する弁ヘッドと、燃焼室に向かう排気弁スピンドルの表面を形成し、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成された外側面と、を有し、
前記微粒子種材料が粘着性の層に結合されており、
少なくとも基礎部分への遷移区域において、外側面の微粒子材料内の粒子が外側面及び基礎部分を鍛造することにより生じるせん断歪によって卵形状又は細長い形状へと変形され、鍛造された外側面が少なくとも98.0%の密度を有することを特徴とする排気弁スピンドル。
【請求項2】
前記弁ヘッドのリム領域の内部から弁ヘッドの中央領域へ延びる領域において、外側面と基礎部分との間の遷移区域が少なくとも1つの直線的な平面に沿って延びることを特徴とする請求項1の排気弁スピンドル。
【請求項3】
前記基礎部分と外側面との間に合金の少なくとも1つのバッファ層が位置され、該バッファ層の合金が基礎部分の合金鋼とは異なり、且つ外側面の高温腐食抵抗合金とは異なる組成を有する第3の合金であることを特徴とする請求項1又は2の排気弁スピンドル。
【請求項4】
前記バッファ層がスチール、オーステナイトスチール、ニッケルベースの合金、及び、不可避な不純物は別として、鉄又はニッケルのものである合金からなるグループから選択されることを特徴とする請求項3の排気弁スピンドル。
【請求項5】
前記基礎部分の合金鋼がオーステナイトステンレススチールであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかの排気弁スピンドル。
【請求項6】
前記バッファ層が少なくとも2mmの厚さを有することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかの排気弁スピンドル。
【請求項7】
合金鋼の基礎部分を有する弁ヘッドと、燃焼室に向かう排気弁スピンドルの表面を形成し、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成された外側面とを有する、内燃エンジンのための排気弁スピンドルの製造方法であって、
高温腐食抵抗合金の微粒子材料が基礎部分において囲い内に保持されている間、微粒子材料が鍛造温度に加熱されて鍛造され、それによって、微粒子材料が粒子を細長い形状又は卵形状へと変形させるせん断歪を受け、鍛造が少なくとも98.0%の密度へと微粒子材料を圧縮し、外側面を基礎部分に又はバッファ層及び基礎部分に結合することを特徴とする排気弁スピンドルの製造方法。
【請求項8】
前記弁ヘッドのリム領域の内部から弁ヘッドの中央領域へ延びる領域において、囲い内の部粒子材料が実質上均一な厚さの層として提供されることを特徴とする請求項7の排気弁スピンドルの製造方法。
【請求項9】
前記弁ヘッドのリム領域の内部から弁ヘッドの中央領域へ延びる領域において、囲い内の部粒子材料が弁の中心に向かって増大する厚さの層として提供されることを特徴とする請求項7の排気弁スピンドルの製造方法。
【請求項10】
合金鋼の基礎部分を有する弁ヘッドと、燃焼室に向かう排気弁スピンドルの表面を形成し、ニッケルベース、クロムベース又はコバルトベースである高温腐食抵抗合金の微粒子種材料から形成された外側面とを有する、内燃エンジンのための排気弁スピンドルの製造方法であって、
高温腐食抵抗合金の微粒子材料が予め形成された部品を造るように高温噴霧され、予め形成された部品及び基礎部分が鍛造温度に加熱されて鍛造され、それによって、微粒子材料が粒子を細長い形状又は卵形状へと変形させるせん断歪を受け、鍛造が少なくとも98.0%の密度へと微粒子材料を圧縮し、外側面を基礎部分に又はバッファ層及び基礎部分に結合することを特徴とする排気弁スピンドルの製造方法。
【請求項11】
前記鍛造の前に、外側面の材料が、1×10−4バール以下、好ましくは1×10−7バール以下の圧力に減圧されることを特徴とする請求項10の排気弁スピンドルの製造方法。
【請求項12】
前記外側面の材料が基礎部分の表面に位置する前に、基礎部分の合金鋼とは異なり、且つ外側面の高温腐食抵抗合金とは異なる組成を有する第3の合金が基礎部分の上記表面に適用されることを特徴とする請求項7乃至11のいずれかの排気弁スピンドルの製造方法。
【請求項13】
前記基礎部分及び外側面を結合する鍛造工程に続き、結合された基礎部分及び外側面が最終形状を得るために少なくとも1つの引き続きの工程において鍛造されることを特徴とする請求項7乃至12のいずれかの排気弁スピンドルの製造方法。
【請求項14】
前記鍛造が10分以内、好ましくは2分以内で実行され、外側面を伴った基礎部分が鍛造後に直ちに冷却されることを特徴とする請求項7乃至13のいずれかの排気弁スピンドルの製造方法。
【請求項15】
前記鍛造の完了後に、弁シャフト部分が基礎部分に摩擦溶接されることを特徴とする請求項7乃至14のいずれかの排気弁スピンドルの製造方法。


【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図11】
image rotate

【図1】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2011−94605(P2011−94605A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−143301(P2010−143301)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(594140904)マン・ディーゼル・アンド・ターボ,フィリアル・アフ・マン・ディーゼル・アンド・ターボ・エスイー,ティスクランド (22)
【住所又は居所原語表記】Center Syd,161 Stamholmen,DK−2650 HVIDOVRE,Denmark
【Fターム(参考)】