説明

内燃機関の制御装置

【課題】燃料噴射制御系とアイドルストップ制御系の両方の機能を1つのMPUに実装した制御システムにおいて、アイドルストップ制御系の異常によってエンジンが運転不能になるのを防止する。
【解決手段】MPU12に、燃料噴射制御系17と、アイドルストップ領域を車両停止前の減速領域まで拡大したアイドルストップ制御系18の両方の機能を実装し、アイドルストップ制御系18に、ブレーキ負圧を監視するブレーキ負圧監視部26を設け、ブレーキ負圧が不足する場合は、アイドルストップ指令の出力を禁止する。アイドルストップ制御系18のブレーキ負圧監視部26の異常の有無を監視する監視用IC13を設け、ブレーキ負圧監視部26の異常を検出した場合は、アイドルストップ制御系18からのアイドルストップ指令の信号よりも燃料噴射制御系17からの噴射パルスの信号を優先して選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関(エンジン)の運転中に所定の自動停止条件が成立したときに内燃機関を自動停止させるアイドルストップ機能を備えた内燃機関の制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来のアイドルストップ機能を搭載した車両は、例えば、特許文献1(特開2007−331533号公報)、特許文献2(特開2009−121250号公報)に記載されているように、エンジン制御用のECUとアイドルストップ制御用のECUとを別々に設けたものが多い。しかし、この構成では、車両に搭載するECU(MPU)の数が増加してコストアップするという問題がある。
【0003】
そこで、燃料噴射制御系とアイドルストップ制御系の両方の機能を1つのMPUに実装したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−331533号公報
【特許文献2】特開2009−121250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両に搭載するECUは、MPUの他に、MPUの異常の有無を監視する異常監視用IC、アクチュエータを駆動するドライバ等の周辺回路により構成されている。燃料噴射制御系とアイドルストップ制御系の両方の機能を実装したMPUの動作も異常監視用ICで監視する必要があるが、このMPUの全ての機能を異常監視用ICで監視するように構成すると、異常監視のための処理負荷が増大して、異常監視用ICやMPUの処理能力を高める必要があり、コストアップの問題が生じる。
【0006】
そこで、低コスト化のために、MPUのうちの主要な機能(例えば走行安全性に関わる機能)のみを異常監視用ICで監視して、MPUの異常を検出したときに、直ちに燃料噴射弁への噴射パルスの出力をカットしてエンジンを停止させることが考えられている。
【0007】
しかし、この構成では、一旦、異常監視用ICがMPUの異常を検出してエンジンが停止されると、エンジンを再始動できなくなってしまい、車両の再発進や退避走行が不可能になってしまう。
【0008】
また、近年、アイドルストップ領域を車両停止前の減速領域まで拡大して省燃費効果を増大させるために、車両減速中に、車両停止に至ると判断される所定減速状態になった時点で、燃料カットを開始してエンジンを自動停止させることが考えられている。
【0009】
しかし、車両減速中に、エンジンの吸気系からブレーキブースター内に導入されたブレーキ負圧が不足している可能性があるため、車両減速中にアイドルストップが実行されると、ブレーキ負圧の不足からブレーキの利きが悪くなる可能性がある。また、MPUのアイドルストップ制御系の機能を異常監視用ICで監視する構成にした場合、一旦、異常監視用ICがアイドルストップ制御系の異常を検出してエンジンが停止されると、車両の再発進や退避走行が不可能になるという問題が生じる。
【0010】
そこで、本発明は、上述した課題のうちの少くとも1つの課題を解決することを目的とする発明である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、内燃機関の運転中に燃料噴射弁を駆動するための噴射指令を出力すると共に所定の燃料カット条件が成立したときに噴射指令の出力を停止する燃料噴射制御系の機能と、内燃機関の運転中に所定の自動停止条件が成立したときに内燃機関を自動停止させるための燃料カットの指令(以下「アイドルストップ指令」という)を出力するアイドルストップ制御系の機能とを1つのMPUに実装した内燃機関の制御装置において、前記燃料噴射制御系からの指令と前記アイドルストップ制御系からの指令との組み合わせに基づいていずれか一方の指令を選択して出力する指令選択部を前記MPUと前記燃料噴射弁との間に設けると共に、前記アイドルストップ制御系の異常の有無を監視する異常監視部を設け、前記指令選択部は、(1) 前記異常監視部により前記アイドルストップ制御系の異常が検出されていないときには前記燃料噴射制御系からの噴射指令よりも前記アイドルストップ制御系からのアイドルストップ指令を優先して選択し、(2) 前記異常監視部により前記アイドルストップ制御系の異常が検出されているときには前記アイドルストップ制御系からのアイドルストップ指令よりも前記燃料噴射制御系からの噴射指令を優先して選択するようにしたものである。
【0012】
この構成では、燃料噴射制御系とアイドルストップ制御系の両方の機能を1つのMPUに実装し、更に、異常監視部の監視対象をアイドルストップ制御系に限定することで、低コスト化の要求を満たしながら、異常監視部によりアイドルストップ制御系の異常が検出されているときにはアイドルストップ制御系からのアイドルストップ指令よりも燃料噴射制御系からの噴射指令を優先して選択することで、アイドルストップ制御系の異常時にアイドルストップを禁止して、燃料噴射制御系からの噴射指令によって内燃機関の運転(燃料噴射)を継続させることができ、車両の再発進や退避走行が可能となる。
【0013】
この場合、アイドルストップ制御系は、車両停止中のみに所定の自動停止条件が成立してアイドルストップ指令を出力するようにしても良いが、請求項2のように、車両停止中の他に、車両減速中でも所定の自動停止条件が成立したときにアイドルストップ指令を出力するように構成しても良い。このようにすれば、アイドルストップ領域を車両停止前の減速領域まで拡大することができ、省燃費効果を増大させることができる。
【0014】
しかし、車両減速中に、内燃機関の吸気系からブレーキブースター内に導入されたブレーキ負圧が不足している可能性があるため、車両減速中にアイドルストップが実行されると、ブレーキ負圧の不足からブレーキの利きが悪くなる可能性がある。
【0015】
この対策として、請求項3のように、内燃機関の吸気系からブレーキブースター内に導入されたブレーキ負圧を検出するブレーキ負圧検出手段を設け、前記アイドルストップ制御系は、前記ブレーキ負圧検出手段の検出値に基づいて所定範囲のブレーキ負圧が確保されているか否かを監視するブレーキ負圧監視部と、前記ブレーキ負圧監視部により前記所定範囲のブレーキ負圧が確保されていないと判定されたときにアイドルストップ指令の出力を禁止するアイドルストップ許可/禁止判定手段とを含むように構成すると良い。
【0016】
この構成では、ブレーキ負圧監視部により所定範囲のブレーキ負圧が確保されていないと判定されたときにアイドルストップ指令の出力をアイドルストップ許可/禁止判定手段により禁止できるため、車両減速中にブレーキ負圧が不足している状態でアイドルストップが実行されることを未然に防止でき、アイドルストップよりもブレーキ負圧の確保を優先させることができて、ブレーキの利きが悪くなることを回避できる。
【0017】
この場合、請求項4のように、異常監視部は、アイドルストップ制御系のうちの前記ブレーキ負圧監視部のみの異常の有無を監視するようにすると良い。この構成では、異常監視部の監視対象をブレーキの利きが悪くなることを回避するための重要な部分であるブレーキ負圧監視部に限定することができ、異常監視のための処理負荷を低減して低コスト化を実現できると共に、ブレーキ負圧監視部が異常になった場合に、所定範囲のブレーキ負圧が確保されていない状態をブレーキ負圧が確保されていると誤判定されてアイドルストップが実行されることを未然に防止でき、ブレーキの利きが悪くなることを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の一実施例におけるエンジン制御システムの構成を示すブロック図である。
【図2】図2は信号選択回路の構成を示す回路図である。
【図3】図3は信号選択回路の入出力信号の関係を説明するタイムチャートである。
【図4】図4は異常監視処理の内容を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいてエンジン(内燃機関)の制御装置の構成を説明する。
エンジン制御装置であるECU11は、MPU12と、監視用IC13(異常監視部)と、信号選択回路14(指令選択部)と、燃料噴射弁15を駆動するドライバ16等の周辺回路とから構成されている。
【0020】
MPU12には、燃料噴射制御系17とアイドルストップ制御系18の両方の機能が実装されている。ここで、燃料噴射制御系17は、噴射量演算部19と通常時燃料カット指令部20と噴射パルス生成部21とから構成され、噴射量演算部19は、エンジン運転状態(吸入空気量、吸気管圧力、エンジン回転速度、冷却水温、排出ガスの空燃比等)を検出する各種センサの出力に基づいて実空燃比を目標空燃比に一致させるように燃料噴射量を演算して噴射パルス生成部21に出力する。
【0021】
通常時燃料カット指令部20は、エンジン回転速度が許容上限回転速度を越えたときに燃料カット指令(高回転時燃料カット指令)を噴射パルス生成部21に出力し、また、エンジン回転速度が所定回転速度以上の領域でスロットル全閉(アクセル全閉)で減速するときに燃料カット指令(減速時燃料カット指令)を噴射パルス生成部21に出力する。
【0022】
噴射パルス生成部21は、通常時燃料カット指令部20から燃料カット指令が入力されないときには、噴射量演算部19で演算した燃料噴射量に応じたパルス幅の噴射パルスを生成して信号選択回路14に出力し、通常時燃料カット指令部20から燃料カット指令が入力されている期間は、噴射パルスを生成しない(信号選択回路14への噴射パルスをカットする)。
【0023】
一方、アイドルストップ制御系18は、車両側システム異常診断部22と、運転者意思判定部23と、アイドルストップシステム要求演算部(以下「ISS要求演算部」と表記する)24と、エンジン停止/再始動判定部25と、ブレーキ負圧監視部26と、アイドルストップ許可/禁止判定部27(アイドルストップ許可/禁止判定手段)とから構成されている。
【0024】
ここで、車両側システム異常診断部22は、エンジンの吸気系からブレーキブースター内に導入されたブレーキ負圧を検出するブレーキ負圧センサ(ブレーキ負圧検出手段)、冷却水温センサ、バッテリ電圧センサ、油圧センサ、クランク角センサ、吸入空気量センサ、吸気管圧力センサ、スロットルセンサ等、車両に搭載された各種センサの出力に基づいて車両側の各システムの異常診断を実行する。
【0025】
運転者意思判定部23は、アクセル開度を検出するアクセルセンサ、ブレーキの作動・非作動を検出するブレーキセンサ、車速を検出する車速センサ等の出力に基づいて、運転者が車両を停止させる意思があるか否かを判定したり、アイドルストップした車両を再発進・再加速する意思があるか否かを判定する。例えば、車両走行中であっても、アクセル全閉且つブレーキが作動されて、車両停止に至ると判断される所定減速状態になれば、運転者が車両を停止させる意思があると判定する。また、停車中に、アクセル全閉且つブレーキが作動されていれば、運転者が車両停止を継続する意思があると判定する。また、アイドルストップ中にアクセル全閉且つブレーキ作動の状態からアクセルが踏み込まれたり、ブレーキ作動が解除されたときには、運転者が車両を発進、再加速する意思があると判定する。
【0026】
ISS要求演算部24は、車両側システム異常診断部22と運転者意思判定部23から入力される情報に基づいてアイドルストップ要求と再始動要求の有無を演算し、エンジン停止/再始動判定部25は、アイドルストップ要求演算部24からアイドルストップ要求が入力されたときにエンジン停止と判定してアイドルストップ指令(燃料カット指令)をアイドルストップ許可/禁止判定部27に出力する。その後、エンジン停止/再始動判定部25は、アイドルストップ要求演算部24から再始動要求が入力されたときに、エンジン再始動と判定してアイドルストップ指令を解除する(エンジン停止/再始動判定部25へのアイドルストップ指令の出力を停止する)。
【0027】
ブレーキ負圧監視部26は、ブレーキ負圧センサで検出したブレーキ負圧がブレーキの利きを確保できる所定範囲内であるか否かを判定し、その判定結果に応じた信号をアイドルストップ許可/禁止判定部27に出力する。
【0028】
アイドルストップ許可/禁止判定部27は、ブレーキ負圧監視部26により所定範囲内のブレーキ負圧が確保されていると判定されている場合には、エンジン停止/再始動判定部25から入力されるアイドルストップ指令(ハイレベル信号)がそのまま信号選択回路14に出力される。一方、ブレーキ負圧監視部26により所定範囲内のブレーキ負圧が確保されていない(つまりブレーキ負圧が不足する)と判定されている場合は、エンジン停止/再始動判定部25からアイドルストップ指令がアイドルストップ許可/禁止判定部27が入力されても、信号選択回路14へのアイドルストップ指令の出力が禁止される。これにより、所定範囲内のブレーキ負圧が確保されていない場合は、所定の自動停止条件(アイドルストップ条件)が成立しても、アイドルストップが実行されずにエンジンの運転(燃料噴射)が継続されるようになっている。
【0029】
監視用IC13は、MPU12のアイドルストップ制御系18の異常の有無を監視する。この場合、監視用IC13は、アイドルストップ制御系18のうちの少くともブレーキ負圧監視部26とアイドルストップ許可/禁止判定部27の動作を監視するようにしても良いが、本実施例では、監視用IC13の監視対象をブレーキの利きが悪くなることを回避するための重要な部分であるブレーキ負圧監視部26のみに限定することで、異常監視のための処理負荷を低減して低コスト化できるようにしている。
【0030】
本実施例では、ECU11の電源オン期間中に図4の異常監視処理を所定周期で繰り返し実行することで、MPU12のうちのブレーキ負圧監視部26のみの異常の有無を監視用IC13によって監視する。この異常監視処理では、まず、ステップ101で、アイドルストップ制御系18のエンジン停止/再始動判定部25からアイドルストップ指令が出力されているか否かを判定して、アイドルストップ指令が出力されていなければ、そのまま本ルーチンを終了する。
【0031】
上記ステップ101で、アイドルストップ制御系18のエンジン停止/再始動判定部25からアイドルストップ指令が出力されていると判定されれば、ステップ102に進み、ブレーキ負圧監視部26の異常の有無の判定に使用するテスト用入力値とテスト用しきい値を監視用IC13によって生成する。
【0032】
この後、ステップ103aに進み、監視用IC13で生成したテスト用入力値とテスト用しきい値との大小比較を監視用IC13にて行い、その比較結果(どちらが大きいか又は小さいか)を記憶する。この処理と並行して、ステップ103bに進み、監視用IC13で生成したテスト用入力値とテスト用しきい値をMPU12のブレーキ負圧監視部26に送信して、ブレーキ負圧監視部26にてテスト用入力値とテスト用しきい値との大小比較を行い、その比較結果(どちらが大きいか又は小さいか)を監視用IC13に返信する。
【0033】
この後、ステップ104に進み、監視用IC13にて、上記2つの比較結果を照合し、次のステップ105で、上記2つの比較結果が一致するか否かを判定して、上記2つの比較結果が一致すれば、ブレーキ負圧監視部26の異常無し(正常)と判断して、ステップ106に進み、MPU異常無し信号(ハイレベル信号)を信号選択回路14に出力し、上記2つの比較結果が一致しなければ、ブレーキ負圧監視部26の異常有りと判断して、ステップ107に進み、MPU異常有り信号(ローレベル信号)を信号選択回路14に出力する。
【0034】
図2に示すように、信号選択回路14は、3つの入力端子と、1つの出力端子を有し、各入力端子には、燃料噴射制御系17の噴射パルス生成部21からの噴射パルスの信号と、アイドルストップ制御系18のアイドルストップ許可/禁止判定部27からのアイドルストップ指令の信号と、監視用IC13からのMPU異常監視結果の信号が入力され、これら3つの入力信号の組み合わせに基づいて最終噴射パルスを決定してドライバ16に出力してエンジンを運転し、或は、最終噴射パルスをカットして、高回転時燃料カット、減速時燃料カット、アイドルストップのいずれかを実行する。
【0035】
信号選択回路14は、NAND回路31とAND回路32とからなる論理回路により構成され、NAND回路31の2つの入力端子には、アイドルストップ制御系18のアイドルストップ許可/禁止判定部27からのアイドルストップ指令の信号と、監視用IC13からのMPU異常監視結果の信号が入力され、該NAND回路31の出力端子から出力される信号がAND回路32の一方の入力端子に入力される。AND回路32の他方の入力端子には、燃料噴射制御系17の噴射パルス生成部21からの噴射パルスの信号が入力され、該AND回路32の出力端子から最終噴射パルスが出力又はカットされる。
【0036】
これにより、信号選択回路14の入出力信号の関係は、図3に示すようになる。すなわち、信号選択回路14は、監視用IC13からのMPU異常監視結果の信号が「MPU異常無し」を意味するハイレベル信号の場合(ブレーキ負圧監視部26の異常無しの場合)は、燃料噴射制御系17からの噴射パルスの信号よりもアイドルストップ制御系18からのアイドルストップ指令の信号を優先して選択する。従って、ブレーキ負圧監視部26の異常無しの場合は、アイドルストップ制御系18からアイドルストップ指令(ハイレベル信号)が出力されていれば、最終噴射パルスをカットしてアイドルストップを実行し、アイドルストップ制御系18からアイドルストップ指令(ハイレベル信号)が出力されていなければ、燃料噴射制御系17からの噴射パルスをそのまま最終噴射パルスとして出力してエンジンの運転(燃料噴射)を継続する。高回転時燃料カットや、減速時燃料カットの場合には、燃料噴射制御系17からの噴射パルスがカットされることで、最終噴射パルスもカットされ、高回転時燃料カットや、減速時燃料カットが実行される。
【0037】
これに対して、信号選択回路14は、監視用IC13からのMPU異常監視結果の信号が「MPU異常有り」を意味するローレベル信号の場合(ブレーキ負圧監視部26の異常有りの場合)は、アイドルストップ制御系18からのアイドルストップ指令の信号よりも燃料噴射制御系17からの噴射パルスの信号を優先して選択する。従って、ブレーキ負圧監視部26の異常有りの場合は、アイドルストップ制御系18からアイドルストップ指令(ハイレベル信号)が出力されている場合でも、燃料噴射制御系17からの噴射パルスをそのまま最終噴射パルスとして出力してエンジンの運転(燃料噴射)を継続する。但し、高回転時燃料カットや、減速時燃料カットの場合には、燃料噴射制御系17からの噴射パルスがカットされることで、最終噴射パルスもカットされ、高回転時燃料カットや、減速時燃料カットが実行される。
【0038】
以上説明した本実施例によれば、燃料噴射制御系17とアイドルストップ制御系18の両方の機能を1つのMPU12に実装し、更に、監視用IC13の監視対象をアイドルストップ制御系18に限定することで、低コスト化の要求を満たしながら、監視用IC13によりアイドルストップ制御系18の異常が検出されているときにはアイドルストップ制御系18からのアイドルストップ指令よりも燃料噴射制御系17からの噴射指令を優先して選択することで、アイドルストップ制御系18の異常時にアイドルストップを禁止して、燃料噴射制御系17からの噴射指令によってエンジンの運転を継続させることができ、車両の再発進や退避走行が可能となる。
【0039】
しかも、本実施例のように、アイドルストップ制御系18は、車両停止中の他に、車両減速中でも所定の自動停止条件が成立したときにアイドルストップ指令を出力するように構成したので、アイドルストップ領域を車両停止前の減速領域まで拡大することができ、省燃費効果を増大させることができる利点がある。
【0040】
この場合、車両減速中に、エンジンの吸気系からブレーキブースター内に導入されたブレーキ負圧が不足している可能性があるため、車両減速中にアイドルストップが実行されると、ブレーキ負圧の不足からブレーキの利きが悪くなる可能性がある。
【0041】
この対策として、本実施例では、アイドルストップ制御系18は、ブレーキ負圧センサの検出値に基づいて所定範囲のブレーキ負圧が確保されているか否かを監視するブレーキ負圧監視部26と、このブレーキ負圧監視部26により所定範囲のブレーキ負圧が確保されていないと判定されたときにアイドルストップ指令の出力を禁止するアイドルストップ許可/禁止判定部27とを含むように構成したので、ブレーキ負圧監視部26により所定範囲のブレーキ負圧が確保されていないと判定されたときにアイドルストップ指令の出力をアイドルストップ許可/禁止判定部27により禁止できるため、車両減速中にブレーキ負圧が不足している状態でアイドルストップが実行されることを未然に防止でき、アイドルストップよりもブレーキ負圧の確保を優先させることができて、ブレーキの利きが悪くなることを回避できる。
【0042】
しかも、本実施例では、監視用IC13の監視対象をブレーキの利きが悪くなることを回避するための重要な部分であるブレーキ負圧監視部26に限定するように構成したので、異常監視のための処理負荷を低減して低コスト化を実現できると共に、ブレーキ負圧監視部26が異常になった場合に、所定範囲のブレーキ負圧が確保されていない状態をブレーキ負圧が確保されていると誤判定されてアイドルストップが実行されることを未然に防止でき、ブレーキの利きが悪くなることを回避できる。
【0043】
但し、本発明は、監視用IC13の監視対象をブレーキ負圧監視部26とアイドルストップ許可/禁止判定部27の両方としても良く、更に、アイドルストップ制御系18の他の部分を監視用IC13の監視対象に追加しても良い。
【0044】
また、アイドルストップ制御系18は、車両停止中のみにアイドルストップを実行するようにしても良い。
その他、本発明は、監視用IC13からのMPU異常監視結果の信号のハイレベル/ローレベルの関係や、アイドルストップ制御系18からのアイドルストップ指令の信号のハイレベル/ローレベルの関係を反対にしても良く(この場合は信号のハイレベル/ローレベルの変更に応じて信号選択回路14の論理回路構成を変更すれば良く)、また、MPU12にスロットル制御系、点火制御系等の他の制御系の機能を追加しても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。
【符号の説明】
【0045】
11…ECU、12…MPU、13…監視用IC(異常監視部)、14…信号選択回路(指令選択部)、15…燃料噴射弁、17…燃料噴射制御系、18…アイドルストップ制御系、19…噴射量演算部、20…通常時燃料カット指令部、21…噴射パルス生成部、22…車両側システム診断部、23…運転者意思判定部、24…アイドルストップシステム要求演算部(ISS要求演算部)、25…エンジン停止/再始動判定部、26…ブレーキ負圧監視部、27…アイドルストップ許可/禁止判定部(アイドルストップ許可/禁止判定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の運転中に燃料噴射弁を駆動するための噴射指令を出力すると共に所定の燃料カット条件が成立したときに噴射指令の出力を停止する燃料噴射制御系の機能と、内燃機関の運転中に所定の自動停止条件が成立したときに内燃機関を自動停止させるための燃料カットの指令(以下「アイドルストップ指令」という)を出力するアイドルストップ制御系の機能とを1つのMPUに実装した内燃機関の制御装置において、
前記MPUと前記燃料噴射弁との間に設けられ、前記燃料噴射制御系からの指令と前記アイドルストップ制御系からの指令との組み合わせに基づいていずれか一方の指令を選択して出力する指令選択部と、
前記アイドルストップ制御系の異常の有無を監視する異常監視部とを備え、
前記指令選択部は、(1) 前記異常監視部により前記アイドルストップ制御系の異常が検出されていないときには前記燃料噴射制御系からの噴射指令よりも前記アイドルストップ制御系からのアイドルストップ指令を優先して選択し、(2) 前記異常監視部により前記アイドルストップ制御系の異常が検出されているときには前記アイドルストップ制御系からのアイドルストップ指令よりも前記燃料噴射制御系からの噴射指令を優先して選択することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記アイドルストップ制御系は、車両停止中に所定の自動停止条件が成立したときにアイドルストップ指令を出力し、更に、車両減速中でも所定の自動停止条件が成立したときにアイドルストップ指令を出力することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
内燃機関の吸気系からブレーキブースター内に導入されたブレーキ負圧を検出するブレーキ負圧検出手段を備え、
前記アイドルストップ制御系は、前記ブレーキ負圧検出手段の検出値に基づいて所定範囲のブレーキ負圧が確保されているか否かを監視するブレーキ負圧監視部と、前記ブレーキ負圧監視部により前記所定範囲のブレーキ負圧が確保されていないと判定されたときにアイドルストップ指令の出力を禁止するアイドルストップ許可/禁止判定手段とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記異常監視部は、前記アイドルストップ制御系のうちの前記ブレーキ負圧監視部のみの異常の有無を監視することを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−127439(P2011−127439A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−283790(P2009−283790)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】