説明

内燃機関の制御装置

【課題】本発明は、内燃機関の制御装置に関し、特定気筒の排気ガスの全量を吸気系に還流させることのできる内燃機関において、EGR率、過給圧、タービンへの排気ガス供給量などを機関状態に応じて柔軟に調節することを目的とする。
【解決手段】タービン駆動気筒群(#1〜#3)の排気ポートとターボチャージャ16のタービン18の入口とを接続するタービン上流通路(排気マニホールド22)と、還流ガス生成気筒(#4)の排気ポートと吸気マニホールド12との間を接続する排気還流通路34と、排気還流弁36と、排気還流通路34とタービン上流通路との間を連通する上流連通路38と、上流連通路開閉弁40と、排気還流通路34とタービン18の下流側の排気通路24との間を連通する下流連通路42と、下流連通路開閉弁44と、排気還流弁36、上流連通路開閉弁40および下流連通路開閉弁44の各々の開閉を制御する制御手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2003−506619号公報には、特定の気筒から排出される排気ガスの全量を全気筒の吸気に還流させ、上記特定気筒以外の他の気筒の排気ガスをターボチャージャのタービンに流入させるように構成された多気筒内燃機関が開示されている。このような内燃機関では、各気筒の排気ガス量が同じであるとした場合には、還流排気ガスを生成する気筒の数と全気筒数との比によって、還流する排気ガスの割合(EGR率)が決定されるので、機関運転状態にかかわらず、その所定のEGR率を正確に実現することができる。
【0003】
上記のような内燃機関においても、EGR率を、上記所定のEGR率とは異なる値に制御すべき状況がある。上記公報に開示された技術では、そのような場合、還流排気ガス生成気筒の燃料噴射量を他の気筒とは異なる値にすることにより、還流排気ガス生成気筒の排気ガス量を調整し、もってEGR率を可変とするようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−506619号公報
【特許文献2】特許3462445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、燃料噴射量の調節のみで排気ガス量を変化させることのできる範囲は限られている。このため、上記従来の技術では、EGR率を調節可能な範囲が狭い。よって、機関運転状態から要求されるような値にEGR率を制御することが困難な場合がある。また、還流排気ガス生成気筒と他の気筒とで燃料噴射量を異ならせると、還流排気ガス生成気筒の発生トルクが他の気筒の発生トルクと同じにならないため、大きなトルク変動が出易い。
【0006】
更に、上記従来の技術では、ターボチャージャのタービンに流入する排気ガスの量が、常に、一気筒分だけ少なくなる。このため、加速時のターボチャージャの回転上昇が遅くなり、加速レスポンスが劣る。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、特定気筒の排気ガスの全量を吸気系に還流させることのできる内燃機関において、EGR率、過給圧、タービンへの排気ガス供給量などを機関状態に応じて柔軟に調節することのできる内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、上記の目的を達成するため、ターボチャージャを有する多気筒内燃機関を制御する装置であって、
前記内燃機関は、排気ガスの全量を吸気系に還流させることのできる還流ガス生成気筒と、排気ガスの全量を前記ターボチャージャのタービンに供給することのできるタービン駆動気筒群とを含み、
前記タービン駆動気筒群の排気ポートと前記タービンの入口とを接続するタービン上流通路と、
前記還流ガス生成気筒および前記タービン駆動気筒群に吸入空気を分配する吸気マニホールドと、
前記還流ガス生成気筒の排気ポートと、前記吸気マニホールドまたはその上流側の吸気通路との間を接続し、排気ガスを前記還流ガス生成気筒および前記タービン駆動気筒群の吸気側に送る排気還流通路と、
前記排気還流通路の排気ガスを前記吸気側に流入させる全開状態と、前記排気還流通路の排気ガスを前記吸気側に流入させない全閉状態とに切り替え可能な排気還流弁と、
前記排気還流通路と、前記タービン上流通路との間を連通する上流連通路と、
前記上流連通路に排気ガスを流す全開状態と、前記上流連通路に排気ガスを流さない全閉状態とに切り替え可能な上流連通路開閉弁と、
前記排気還流通路と、前記タービンの下流側の排気通路との間を連通する下流連通路と、
前記下流連通路に排気ガスを流す全開状態と、前記下流連通路に排気ガスを流さない全閉状態とに切り替え可能な下流連通路開閉弁と、
前記排気還流弁、前記上流連通路開閉弁および前記下流連通路開閉弁の各々の開閉を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、
前記制御手段は、前記排気還流弁を全開状態とし、前記上流連通路開閉弁および前記下流連通路開閉弁を全閉状態とする第1モードを実行する手段を含み、
前記第1モードの実行中は、前記還流ガス生成気筒の排気ガスの全量が前記吸気側に流入するとともに、前記タービン駆動気筒群の排気ガスの全量が前記タービンに供給されることを特徴とする。
【0010】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、
前記制御手段は、前記排気還流弁を全開状態とし、前記上流連通路開閉弁および前記下流連通路開閉弁を中間開度とする第2モードを実行する手段を含み、
前記第2モードの実行中は、前記タービン駆動気筒群の排気ガスの一部が前記上流連通路を通って前記排気還流通路に流入するとともに、前記排気還流通路の排気ガスの一部が前記下流連通路を通って前記タービンの下流側の排気通路に流入することを特徴とする。
【0011】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、
前記制御手段は、前記排気還流弁を全開状態とし、前記上流連通路開閉弁を全開状態または中間開度とし、前記下流連通路開閉弁を全閉状態とする第3モードを実行する手段を含み、
前記第3モードの実行中は、前記タービン駆動気筒群の排気ガスの一部が前記上流連通路を通って前記排気還流通路に流入することにより、該流入した排気ガスと、前記還流ガス生成気筒の排気ガスの全量とを合わせた量の排気ガスが前記吸気側に流入することを特徴とする。
【0012】
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明の何れかにおいて、
前記制御手段は、前記排気還流弁を全開状態とし、前記上流連通路開閉弁を全閉状態とし、前記下流連通路開閉弁を中間開度とする第4モードを実行する手段を含み、
前記第4モードの実行中は、前記排気還流通路に流入した前記還流ガス生成気筒の排気ガスのうち、一部は前記下流連通路を通って前記タービンの下流側の排気通路に流入し、残部は前記上流連通路および前記タービン上流通路を通って前記タービンに供給されることを特徴とする。
【0013】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明の何れかにおいて、前記制御手段は、前記排気還流弁を全閉状態とし、前記上流連通路開閉弁を全開状態とし、前記下流連通路開閉弁を全閉状態とする第5モードを実行する手段を含み、
前記第5モードの実行中は、前記還流ガス生成気筒の排気ガスの全量が前記排気還流通路から前記上流連通路を通って前記タービン上流通路に流入することにより、前記タービン駆動気筒群および前記還流ガス生成気筒の排気ガスの全量が前記タービンに供給されることを特徴とする。
【0014】
また、第7の発明は、第1乃至第6の発明の何れかにおいて、
前記制御手段は、前記排気還流弁を全閉状態とし、前記上流連通路開閉弁を全開状態とし、前記下流連通路開閉弁を中間開度とする第6モードを実行する手段を含み、
前記第6モードの実行中は、前記排気還流通路の排気ガスの一部が前記下流連通路を通って前記タービンの下流側の排気通路に流入することにより、前記タービン駆動気筒群および前記還流ガス生成気筒の排気ガスの全量から、前記下流連通路を通過した排気ガスの分を差し引いた量の排気ガスが前記タービンに供給されることを特徴とする。
【0015】
また、第8の発明は、第1乃至第7の発明の何れかにおいて、
前記制御手段は、前記排気還流弁を全閉状態とし、前記上流連通路開閉弁および前記下流連通路開閉弁を全開状態とする第7モードを実行する手段を含み、
前記第7モードの実行中は、前記タービン駆動気筒群の排気ガスの大部分が、前記タービンを通過することなく、前記上流連通路、前記排気還流通路および前記下流連通路を通って前記タービンの下流側の排気通路に流入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
第1の発明によれば、特定気筒(還流ガス生成気筒)の排気ガスの全量を吸気系に還流させることのできる内燃機関において、EGR率、過給圧、タービンへの排気ガス供給量などを機関状態に応じて柔軟に調節することができる。このため、EGR率を所定割合にする場合だけでなく、あらゆる機関状態に対して最適な制御が可能となる。また、簡単な構造で、上記効果を達成することができる。
【0017】
第2の発明によれば、還流ガス生成気筒の排気ガスの全量を吸気側に流入させることができるので、還流する排気ガスの割合を一定に保つことができる。すなわち、エンジン回転数やエンジン負荷にかかわらず、EGR率を所定割合に正確且つ確実に維持することができる。
【0018】
第3の発明によれば、EGRを実行しつつ、必要に応じて、過給圧や背圧を低減することが可能となる。
【0019】
第4の発明によれば、上記所定割合を超えるEGR率での運転が可能となる。
【0020】
第5の発明によれば、上記所定割合未満のEGR率での運転が可能となる。
【0021】
第6の発明によれば、タービンに流入する排気ガス量を増大させることができるので、加速時のレスポンスの向上、出力の向上が図れる。
【0022】
第7の発明によれば、タービンに大量の排気ガス量を流入させつつ、必要に応じて、過給圧や背圧を低減することが可能となる。
【0023】
第8の発明によれば、タービンの下流側の排気浄化触媒に流入する排気ガスの温度を最大限に高くすることができる。このため、排気浄化触媒を早期に暖機することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。
【図2】第1モードを説明するための図である。
【図3】第2モードを説明するための図である。
【図4】第3モードを説明するための図である。
【図5】第4モードを説明するための図である。
【図6】第5モードを説明するための図である。
【図7】第6モードを説明するための図である。
【図8】第7モードを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0026】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1のシステム構成を説明するための図である。図1に示すように、本実施形態のシステムは、車両等に搭載される内燃機関10(以下、単に「エンジン10」と称する)を備えている。本実施形態のエンジン10は、#1〜#4の四つの気筒を有する直列4気筒型のものである。エンジン10の各気筒には、燃料インジェクタ、点火プラグ、吸気弁、排気弁等がそれぞれ設けられている。各気筒の吸気ポートは、吸気マニホールド12に接続されている。吸気マニホールド12には、吸気通路14が接続されている。
【0027】
エンジン10は、ターボチャージャ16を備えている。ターボチャージャ16は、排気ガスのエネルギによって回転するタービン18と、このタービン18によって駆動されるコンプレッサ20とを有している。#1、#2および#3気筒の排気ポートは、排気マニホールド22に接続されている。排気マニホールド22は、タービン18の入口に接続されている。タービン18の下流側の排気通路24には、排気ガスを浄化する排気浄化触媒26が設置されている。コンプレッサ20は、吸気通路14の途中に配置されている。吸気通路14の入口には、エアクリーナ28が設置されている。コンプレッサ20と、吸気マニホールド12との間の吸気通路14には、コンプレッサ20で圧縮された吸入空気を冷却するインタークーラ30と、吸入空気量を制御するためのスロットル弁32とが設置されている。スロットル弁32を通過した吸入空気は、吸気マニホールド12により分配されて、#1〜#4の各気筒に流入する。
【0028】
#4気筒の排気ポートは、排気還流通路34の一端と接続されている。排気還流通路34の他端は、吸気マニホールド12に接続されている。排気還流通路34と吸気マニホールド12との接続部には、排気還流弁36が設置されている。排気還流通路34と排気マニホールド22との間には、両者を連通する上流連通路38が設けられている。上流連通路38の途中または端部には、上流連通路開閉弁40が設置されている。また、排気還流通路34と、タービン18の下流側の排気通路24との間には、両者を連通する下流連通路42が設けられている。下流連通路42の途中または端部には、下流連通路開閉弁44が設置されている。なお、排気還流通路34の上記他端は、排気マニホールド22とスロットル弁32との間の吸気通路14に接続されていてもよい。
【0029】
本実施形態のシステムは、更に、以下に述べる各センサを含むセンサ系統と、エンジン10に対して設けられた各アクチュエータの作動を制御するECU(Electronic Control Unit)50とを備えている。空燃比センサ46は、排気浄化触媒26に流入する排気ガスの空燃比を検出する。クランク角センサ52は、エンジン10のクランク軸の回転に同期した信号を出力する。ECU50は、クランク角センサ52の出力に基いてエンジン回転数およびクランク角を検出することができる。エアフローメータ54は、吸気通路14に吸入される新気量を検出する。吸気温センサ56は、吸入空気の温度を検出する。過給圧センサ58は、コンプレッサ20の出口側の圧力(過給圧)を検出する。アクセル開度センサ60は、車両の運転者によるアクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出する。車速センサ62は、車両の速度を検出する。
【0030】
また、センサ系統には、上記の他にも、車両やエンジンの制御に必要な各種のセンサ(例えばエンジン冷却水の温度を検出する水温センサ等)が含まれており、これらのセンサはECU50の入力側に接続されている。また、ECU50の出力側には、上述したスロットル弁32、排気還流弁36、上流連通路開閉弁40、下流連通路開閉弁44のほか、燃料インジェクタ、点火プラグ等を含む各種のアクチュエータが接続されている。
【0031】
ECU50は、センサ系統によりエンジンの運転情報を検出し、その検出結果に基いて各アクチュエータを駆動することにより、運転制御を行う。具体的には、クランク角センサ52の出力に基いてエンジン回転数とクランク角とを検出し、エアフローメータ54により吸入空気量を検出する。また、吸入空気量、エンジン回転数等に基いて燃料噴射量を算出し、クランク角に基いて燃料噴射時期、点火時期等を決定した後に、燃料インジェクタおよび点火プラグを駆動する。
【0032】
更に、ECU50は、センサ系統により検出されたエンジン運転情報と、所定のEGR率マップとに基づいて、目標EGR率を算出し、その目標EGR率が実現されるように、排気還流弁36、上流連通路開閉弁40および下流連通路開閉弁44の各々の開閉や開度を制御する。その際、ECU50は、排気還流弁36、上流連通路開閉弁40および下流連通路開閉弁44の制御モードとして、後述する第1〜第7モードを選択的に実行可能になっている。以下、図2乃至図8を参照して、各制御モードについて、順次説明する。なお、図2乃至図8の中では、排気還流弁36、上流連通路開閉弁40および下流連通路開閉弁44の開閉状態を次のようにして表す。白地は、全開状態を表す。黒い塗り潰しは、全閉状態を表す。網掛けは、全開状態と全閉状態との間にある開度(以下、「中間開度」と称する)を表す。全開状態では、排気ガスの流通が許容される。全閉状態では、排気ガスの流通が遮断される。中間開度においては、その開度に応じて、排気ガスの通過量が制限される。
【0033】
(第1モード)
図2は、第1モードを説明するための図である。図2に示すように、第1モードでは、排気還流弁36を全開状態とし、上流連通路開閉弁40および下流連通路開閉弁44を全閉状態とする。この第1モードの実行中は、#4気筒の排気ガスの全量が、排気還流通路34を通って吸気マニホールド12に送られ、#1〜#4気筒の吸気側に還流する。一方、#1〜#3気筒の排気ガスは、その全量がタービン18に供給される。このような第1モードでは、全4気筒のうち、一つの気筒(#4気筒)の排気ガスの全量が排気還流ガスとなる。このため、各気筒の排気ガス量が等しいとした場合、EGR率は、正確に25%(1/4)となる。従って、第1モードによれば、エンジン回転数やエンジン負荷にかかわらず、EGR率を所定割合(本実施形態では25%)に正確且つ確実に維持することができる。
【0034】
(第2モード)
図3は、第2モードを説明するための図である。図3に示すように、第2モードでは、排気還流弁36を全開状態とし、上流連通路開閉弁40および下流連通路開閉弁44を中間開度とする。この第2モードの実行中は、排気マニホールド22内にある#1〜#3気筒の排気ガスの一部が、上流連通路38を通って排気還流通路34に流入する。また、排気還流通路34の排気ガスの一部が、下流連通路42を通ってタービン18の下流側の排気通路24に流入する。この場合、排気マニホールド22内にある#1〜#3気筒の排気ガスの一部が、タービン18を通過することなく、上流連通路38、排気還流通路34および下流連通路42を通ってタービン18の下流側の排気通路24に流入する。従って、過給圧を低下させる必要のある場合(例えば、ノッキングを防止する場合)や、#1〜#3気筒の背圧(以下、単に「背圧」と称する)を低下させる必要のある場合(例えば、燃費を改善する場合)には、この第2モードとすることにより、過給圧や背圧を低下させることができる。
【0035】
また、第2モードでは、上流連通路開閉弁40および下流連通路開閉弁44の開度を制御することにより、上流連通路38を通る排気ガス量と下流連通路42を通る排気ガス量との比率を制御することができる。上流連通路38を通る排気ガス量と下流連通路42を通る排気ガス量とが等しくなるように制御した場合には、EGR率を25%に維持することができる。一方、EGR率を25%未満に制御する必要のある場合には、下流連通路42を通る排気ガス量が上流連通路38を通る排気ガス量がより少なくなるように制御することにより、25%未満のEGR率を実現することができる。また、25%を超えるEGR率に制御する必要のある場合には、下流連通路42を通る排気ガス量が上流連通路38を通る排気ガス量がより少なくなるように制御することにより、25%を超えるEGR率を実現することができる。
【0036】
(第3モード)
図4は、第3モードを説明するための図である。図4に示すように、第3モードでは、排気還流弁36を全開状態とし、上流連通路開閉弁40を全開状態または中間開度とし、下流連通路開閉弁44を全閉状態とする。この第3モードの実行中は、排気マニホールド22内にある#1〜#3気筒の排気ガスの一部が上流連通路38を通って排気還流通路34に流入する。従って、排気還流量は、#4気筒の排気ガスの全量と、排気マニホールド22から上流連通路38を通って排気還流通路34に流入した排気ガス量との合計になる。このため、25%を超えるEGR率となる。目標EGR率が25%を超える場合には、この第3モードとし、上流連通路開閉弁40の開度を制御することにより、目標EGR率を実現することができる。
【0037】
(第4モード)
図5は、第4モードを説明するための図である。図5に示すように、第4モードでは、排気還流弁36を全開状態とし、上流連通路開閉弁40を全閉状態とし、下流連通路開閉弁44を中間開度とする。この第4モードの実行中は、排気還流通路34の排気ガスの一部が下流連通路42を通ってタービン18の下流側の排気通路24に流入する。このため、排気還流量は、#4気筒の排気ガスの全量から、下流連通路42を通過した排気ガス量を差し引いた量となる。従って、この場合は、25%を下回るEGR率となる。目標EGR率が25%を下回る場合には、この第4モードとし、下流連通路開閉弁44の開度を制御することにより、目標EGR率を実現することができる。
【0038】
(第5モード)
図6は、第5モードを説明するための図である。図6に示すように、第5モードでは、排気還流弁36を全閉状態とし、上流連通路開閉弁40を全開状態とし、下流連通路開閉弁44を全閉状態とする。この第5モードの実行中は、#4気筒の排気ガスの全量が、排気還流通路34から上流連通路38を通って排気マニホールド22に流入する。従って、EGR率は0%となり、#1〜#4の全気筒の排気ガスの全量がタービン18に供給される。このため、ターボチャージャ16の回転数を迅速に上昇させることができる。加速時など、大出力の要求される場合には、この第5モードに制御される。これにより、加速時のレスポンスの向上、出力の向上が図れる。
【0039】
(第6モード)
図7は、第6モードを説明するための図である。図7に示すように、第6モードでは、排気還流弁36を全閉状態とし、上流連通路開閉弁40を全開状態とし、下流連通路開閉弁44を中間開度とする。この第6モードの実行中は、排気還流通路34の排気ガス、つまり#4気筒の排気ガスのうち、一部は、下流連通路42を通ってタービン18の下流側の排気通路24に流入する。そして、#4気筒の排気ガスのうち、上記一部を除いた残部は、上流連通路38を通って排気マニホールド22に流入し、#1〜#3の気筒の排気ガスと合流して、タービン18に供給される。この場合、タービン18に供給される排気ガスの量は、#1〜#4の全気筒の排気ガスの全量から、下流連通路開閉弁44を通過した排気ガスの分を差し引いた量になる。この第6モードでは、下流連通路開閉弁44は、一般的なターボチャージャのウェイストゲート弁と同様の機能を果たす。すなわち、下流連通路開閉弁44の開度を制御することにより、タービン18を通らずにタービン18の下流側の排気通路24に流れる排気ガスの量を制御することができる。過給圧を低減する必要のある場合には、この第6モードとし、下流連通路開閉弁44の開度を制御することにより、過給圧が目標値となるように制御することができる。
【0040】
(第7モード)
図8は、第7モードを説明するための図である。図8に示すように、第7モードでは、排気還流弁36を全閉状態とし、上流連通路開閉弁40および下流連通路開閉弁44を全開状態とする。この第7モードの実行中は、#4気筒の排気ガスの全量が、下流連通路42を通ってタービン18の下流側の排気通路24に流入する。また、排気マニホールド22から上流連通路38、排気還流通路34および下流連通路42を通ってタービン18をバイパスする経路を通過する抵抗は、タービン18を通過する抵抗よりも小さい。このため、#1〜#3気筒の排気ガスの大部分は、タービン18を通過することなく、上流連通路38、排気還流通路34および下流連通路42を通ってタービン18の下流側の排気通路24に流入する。従って、この第7モードでは、#1〜#4の全気筒の排気ガスの大部分を、タービン18を通すことなく、直接に排気浄化触媒26に流入させることができる。冷間始動時など、排気浄化触媒26の暖機が必要な場合には、この第7モードとすることにより、排気ガスがタービン18に対して行う仕事量が最小限となるので、排気浄化触媒26に流入する排気ガスの温度を最大限に高くすることができる。このため、排気浄化触媒26を早期に暖機することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、エンジン10の状態に応じて第1〜第7モードを選択的に実行することにより、EGR率、過給圧、背圧、タービン18へ供給される排気ガス量、触媒暖機状態などを柔軟に調節することが可能となる。このため、EGR率を所定割合にする場合(第1モード)だけでなく、あらゆるエンジン状態に対して最適な制御が可能となる。
【0042】
上述した実施の形態1においては、#4気筒が前記第1の発明における「還流ガス生成気筒」に、#1〜#3気筒が前記第1の発明における「タービン駆動気筒群」に、排気マニホールド22が前記第1の発明における「タービン上流通路」に、それぞれ相当している。
【0043】
なお、本発明は、直列4気筒エンジンに限らず、例えば、直列3気筒、直列6気筒、V型6気筒、V型8気筒など、各種の多気筒エンジンに適用可能である。また、還流ガス生成気筒の数が一つである構成に限らず、二つ以上としてもよい。
【符号の説明】
【0044】
10 内燃機関
12 吸気マニホールド
14 吸気通路
16 ターボチャージャ
18 タービン
20 コンプレッサ
22 排気マニホールド
24 排気通路
26 排気浄化触媒
34 排気還流通路
36 排気還流弁
38 上流連通路
40 上流連通路開閉弁
42 下流連通路
44 下流連通路開閉弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボチャージャを有する多気筒内燃機関を制御する装置であって、
前記内燃機関は、排気ガスの全量を吸気系に還流させることのできる還流ガス生成気筒と、排気ガスの全量を前記ターボチャージャのタービンに供給することのできるタービン駆動気筒群とを含み、
前記タービン駆動気筒群の排気ポートと前記タービンの入口とを接続するタービン上流通路と、
前記還流ガス生成気筒および前記タービン駆動気筒群に吸入空気を分配する吸気マニホールドと、
前記還流ガス生成気筒の排気ポートと、前記吸気マニホールドまたはその上流側の吸気通路との間を接続し、排気ガスを前記還流ガス生成気筒および前記タービン駆動気筒群の吸気側に送る排気還流通路と、
前記排気還流通路の排気ガスを前記吸気側に流入させる全開状態と、前記排気還流通路の排気ガスを前記吸気側に流入させない全閉状態とに切り替え可能な排気還流弁と、
前記排気還流通路と、前記タービン上流通路との間を連通する上流連通路と、
前記上流連通路に排気ガスを流す全開状態と、前記上流連通路に排気ガスを流さない全閉状態とに切り替え可能な上流連通路開閉弁と、
前記排気還流通路と、前記タービンの下流側の排気通路との間を連通する下流連通路と、
前記下流連通路に排気ガスを流す全開状態と、前記下流連通路に排気ガスを流さない全閉状態とに切り替え可能な下流連通路開閉弁と、
前記排気還流弁、前記上流連通路開閉弁および前記下流連通路開閉弁の各々の開閉を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記排気還流弁を全開状態とし、前記上流連通路開閉弁および前記下流連通路開閉弁を全閉状態とする第1モードを実行する手段を含み、
前記第1モードの実行中は、前記還流ガス生成気筒の排気ガスの全量が前記吸気側に流入するとともに、前記タービン駆動気筒群の排気ガスの全量が前記タービンに供給されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記排気還流弁を全開状態とし、前記上流連通路開閉弁および前記下流連通路開閉弁を中間開度とする第2モードを実行する手段を含み、
前記第2モードの実行中は、前記タービン駆動気筒群の排気ガスの一部が前記上流連通路を通って前記排気還流通路に流入するとともに、前記排気還流通路の排気ガスの一部が前記下流連通路を通って前記タービンの下流側の排気通路に流入することを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記排気還流弁を全開状態とし、前記上流連通路開閉弁を全開状態または中間開度とし、前記下流連通路開閉弁を全閉状態とする第3モードを実行する手段を含み、
前記第3モードの実行中は、前記タービン駆動気筒群の排気ガスの一部が前記上流連通路を通って前記排気還流通路に流入することにより、該流入した排気ガスと、前記還流ガス生成気筒の排気ガスの全量とを合わせた量の排気ガスが前記吸気側に流入することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記排気還流弁を全開状態とし、前記上流連通路開閉弁を全閉状態とし、前記下流連通路開閉弁を中間開度とする第4モードを実行する手段を含み、
前記第4モードの実行中は、前記排気還流通路に流入した前記還流ガス生成気筒の排気ガスのうち、一部は前記下流連通路を通って前記タービンの下流側の排気通路に流入し、残部は前記上流連通路および前記タービン上流通路を通って前記タービンに供給されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記排気還流弁を全閉状態とし、前記上流連通路開閉弁を全開状態とし、前記下流連通路開閉弁を全閉状態とする第5モードを実行する手段を含み、
前記第5モードの実行中は、前記還流ガス生成気筒の排気ガスの全量が前記排気還流通路から前記上流連通路を通って前記タービン上流通路に流入することにより、前記タービン駆動気筒群および前記還流ガス生成気筒の排気ガスの全量が前記タービンに供給されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記排気還流弁を全閉状態とし、前記上流連通路開閉弁を全開状態とし、前記下流連通路開閉弁を中間開度とする第6モードを実行する手段を含み、
前記第6モードの実行中は、前記排気還流通路の排気ガスの一部が前記下流連通路を通って前記タービンの下流側の排気通路に流入することにより、前記タービン駆動気筒群および前記還流ガス生成気筒の排気ガスの全量から、前記下流連通路を通過した排気ガスの分を差し引いた量の排気ガスが前記タービンに供給されることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記排気還流弁を全閉状態とし、前記上流連通路開閉弁および前記下流連通路開閉弁を全開状態とする第7モードを実行する手段を含み、
前記第7モードの実行中は、前記タービン駆動気筒群の排気ガスの大部分が、前記タービンを通過することなく、前記上流連通路、前記排気還流通路および前記下流連通路を通って前記タービンの下流側の排気通路に流入することを特徴とする請求項1乃至7の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−208596(P2011−208596A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78522(P2010−78522)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】