説明

内燃機関の制御装置

【課題】EGRVの弁体であるEGRバルブを支持固定するシャフトを回転駆動する電動モータへの供給電力をエンジンの運転状況に対応して通電制御する内燃機関のEGR制御装置において、消費電力の低減および燃費悪化の抑制を図る。
【解決手段】エンジンのアイドル運転(低負荷で、且つ低速回転)時に、電動モータMへの電力供給(通電)をOFFすることにより、リターンスプリング7の付勢力とオーバーターンスプリング8の付勢力とが釣り合う中立位置であるメカオープナ位置(O)にEGRバルブ3が保持(付勢)される。つまりリターンスプリング7のスプリングトルクによってEGRバルブ3をメカオープナ位置(O)に戻す(保持する)ことが可能となる。これにより、消費電力を低減することができるので、燃費悪化等の不具合の発生を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体制御弁の弁体を回転駆動するモータへの供給電力を内燃機関の運転状況に対応して通電制御する内燃機関の制御装置に関するもので、特に排気制御弁の弁体を回転駆動するモータへの供給電力を内燃機関の運転状況に対応して通電制御する内燃機関の制御装置に係わる。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
従来より、内燃機関(エンジン)の燃焼室より排出される排気ガス中に含まれる有害物質(例えば窒素酸化物:NOx)の低減を図るという目的で、排気ガスの一部であるEGRガスを排気通路から吸気通路へ再循環(還流)させるEGRガスパイプと、このEGRガスパイプを流れるEGRガスの流量を制御するEGRガス流量制御弁(EGRV)とを備えた排気ガス循環装置(EGRシステム)が搭載されている。
このEGRシステムは、図9および図10に示したように、吸気通路に還流するEGRガスの流量を、EGRVの弁体であるバルブ101の開閉動作により調整(制御)するように構成されている。
また、EGRVのバルブ101は、EGRガスパイプの途中に接続されたハウジング102に嵌合保持されるノズル103の内部(EGRガス流路104)に回転自在に収容されている。
【0003】
そして、ハウジング102には、バルブ101の回転軸方向に延びる軸受け孔105が形成されている。
そして、EGRVの弁軸であるシャフト106の一端部は、バルブ101を支持固定しており、また、シャフト106の他端部は、軸受け孔105を貫通して減速機構に接続している。
また、軸受け孔105内には、軸受け部材(ブッシュ107やボールベアリング108等)が設置されている。
また、EGRVは、バルブ全閉時におけるEGRガスの洩れ流量を低減するという目的で、バルブ101の外周端面全周に円環状の凹溝109を形成し、この凹溝109内にC字状のシールリング110を嵌め込んでいる。
【0004】
また、EGRVのバルブ101を開弁作動方向または閉弁作動方向に駆動するアクチュエータは、動力源としての電動モータと、この電動モータの回転を2段減速してシャフト106を回転駆動する減速機構とを備えている。
減速機構は、図11に示したように、電動モータの回転動力をバルブ101のシャフト106に伝達する3つの第1〜第3ギヤ111〜113によって構成されている。
第1ギヤ111は、電動モータのモータ軸に固定されている。
第2ギヤ112は、ハウジング102に圧入固定されたギヤ軸の外周に相対回転可能に設置されている。
第3ギヤ113は、バルブ101のシャフト106に固定されている。
ここで、一般的に、減速機構の構造上、第1、第2ギヤ111、112の歯面間、および第2、第3ギヤ112、113の歯面間に、所定の隙間(バックラッシュ)がないと、各第1〜第3ギヤ111〜113が円滑に作動しないようになっている。
【0005】
ところで、EGRシステムは、電動モータへの通電を停止すると、リターンスプリング114の付勢力によりバルブ101がその全閉位置に戻される。このように、リターンスプリング114の付勢力によりバルブ101が全閉位置に保持されている場合、各ギヤの歯面間の隙間(バックラッシュ)によりバルブ101がガタ付く可能性がある。
特に、エンジンの高負荷または高回転時には、自動車等の車両やエンジン振動が、EGRVのハウジング102に伝わり、3つの第1〜第3ギヤ111〜113が激しくガタ付く可能性がある。
なお、バルブ101がガタ付くと、各ギヤの歯面間で衝突や摩擦を繰り返すため、各ギヤの歯面が異常摩耗する可能性がある。
【0006】
そこで、エンジン振動や車両振動による3つの第1〜第3ギヤのガタ付きを抑制して、各ギヤの歯面の異常摩耗を防止するという目的で、図12および図13に示したように、EGRVの弁体であるバルブ101と、このバルブ101と一体回転可能に連結した第3ギヤ(バルブギヤ)と、バルブ101と第3ギヤを開弁作動方向または閉弁作動方向に駆動する電動モータと、この電動モータへの通電停止時にバルブ101の全閉位置(O)よりも開弁側に制御上の全閉ポイント(A)を設定し、バルブ101を全閉作動させる全閉制御時に、バルブ101が制御上の全閉ポイント(A)で停止するように電動モータへの電力の供給を継続するモータ制御手段とを備えたEGR制御装置が公知である(例えば、特許文献1〜3参照)。
このEGRVには、バルブ101を閉弁作動方向に付勢するリターンスプリングと、バルブを開弁作動方向に付勢するオーバーターンスプリングとが設置されている。
【0007】
制御上の全閉ポイント(A)とは、電動モータの駆動力とリターンスプリングの付勢力とが釣り合う中立位置のことである。
また、制御上の全閉ポイント(A)から、バルブ101の全開位置(C)に至るまでの範囲を、電動モータへの供給電力を可変制御してバルブ101を開閉動作させることが可能なバルブ制御範囲(A−C)としている。
モータ制御手段は、エンジン運転中におけるバルブ101の全閉制御時に、電動モータへの通電を停止するのではなく、バルブ101が制御上の全閉ポイント(A)で停止するように電動モータへの通電を継続するように構成されている。これにより、全てのギヤに電動モータの駆動力とリターンスプリングの付勢力とが作用する。したがって、エンジン振動や車両振動による3つの第1〜第3ギヤのガタ付きを抑制することができるので、3つの第1〜第3ギヤの歯面の異常摩耗を防止することができる。
【0008】
ところで、EGRVは、バルブ101の凹溝109内に、C字状のシールリング110が嵌め込まれている。このようなEGRVにおいては、バルブ101の全閉位置(O)の前後にEGRガス洩れ量の変化しない範囲(流量不感帯)がある。このため、モータ制御手段は、制御上の全閉ポイント(A)を、流量不感帯の範囲(α°)内に設定している。 これによって、バルブ101の全閉制御時に、バルブ101の開度が、全閉位置(O)から微小開度だけ開弁した制御上の全閉ポイント(A)となるように電動モータにトルクを発生させた場合であっても、シールリング自体の拡径方向の張力によってバルブ101の外周端面とノズル103のバルブシート面との間の隙間を完全にシールできる。したがって、バルブ101の全閉制御時におけるEGRガス洩れ量をゼロにすることができる。
【0009】
[従来の技術の不具合]
ところが、従来のEGR制御装置においては、エンジン運転中におけるバルブ101の全閉制御時に、EGRVの弁体(バルブ)を制御上の全閉ポイント(中立位置)で保持する方法として、電動モータへの通電を継続して電動モータに保持トルクを発生させる必要があるので、電動モータへの消費電力が増加するという問題が生じる。
さらに、電動モータへの消費電力の増加に伴って燃費が悪化するという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−285123号公報
【特許文献2】特許第4661668号公報
【特許文献3】特開2010−242972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、消費電力の低減および燃費悪化の抑制を図ることのできる内燃機関の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明(内燃機関の制御装置)は、内燃機関の燃焼室に連通する流体流路、およびこの流体流路を開閉するバルブを有する流体制御弁と、バルブを開弁作動方向または閉弁作動方向に駆動するモータと、このモータの動力をバルブに伝達する複数のギヤと、バルブを閉弁作動方向に付勢する第1付勢手段と、バルブを開弁作動方向に付勢する第2付勢手段と、内燃機関の運転状況に対応してモータへの供給電力を可変制御するモータ制御手段とを備えている。
流体制御弁は、バルブを全閉作動させる際に、流体流路を閉鎖可能な全閉範囲を有している。
また、流体制御弁は、モータへの通電停止時に、第1バルブ付勢手段の付勢力と第2バルブ付勢手段の付勢力とが釣り合う中立位置に保持(付勢)されるバルブ(弁体)を有している。
中立位置は、全閉範囲内に設定されている。
モータ制御手段は、内燃機関が低負荷で、且つ低回転の領域の場合、モータへの通電を停止する。
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、内燃機関が低負荷で、且つ低回転の領域の場合、モータへの通電を停止することにより、第1付勢手段の付勢力と第2付勢手段の付勢力とが釣り合う中立位置に流体制御弁のバルブが保持(付勢)される。つまり第1付勢手段の付勢力および第2付勢手段の付勢力によってバルブを中立位置に戻す(保持する)ことが可能となる。これにより、消費電力を低減することができるので、燃費悪化等の不具合の発生を抑制することができる。
なお、流体流路とは、内燃機関の燃焼室に供給される吸気が流れる吸気通路のことである。また、流体流路とは、内燃機関の燃焼室より排出される排気ガスが流れる排気通路のことである。
【0014】
請求項2に記載の発明(内燃機関の制御装置)は、中立位置よりも開弁作動方向に変位したバルブ位置を、制御上の全閉ポイントとしたとき、制御上の全閉ポイントを、流体制御弁の全閉範囲内に設定している。
モータ制御手段は、内燃機関が高負荷または高回転の領域の場合、制御上の全閉ポイントでバルブを保持するように、モータを通電する。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、内燃機関が高負荷または高回転の領域の場合、モータを通電することにより、中立位置よりも開弁側にある制御上の全閉ポイントで流体制御弁のバルブが保持される。
これによって、複数のギヤのうちで噛み合う2つのギヤの歯面間の所定の隙間(バックラッシュ)を消すことができるので、振動による複数のギヤのガタ付きを抑制することができる。これにより、噛み合う2つのギヤ同士が衝突または摩擦を繰り返すことはない。したがって、各ギヤの歯面の異常摩耗(ギヤ摩耗)を防止することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、流体制御弁は、流体洩れ量が変化しない流量不感帯を有している。
ここで、流体制御弁の全閉範囲とは、流量不感帯の範囲のことである。
したがって、第1付勢手段の付勢力と第2付勢手段の付勢力とが釣り合う中立位置、および中立位置よりも開弁作動方向に変位したバルブ位置である制御上の全閉ポイントは、流量不感帯の範囲内に設定されている。
請求項4に記載の発明によれば、流体制御弁は、バルブを回転自在(開閉自在)に収容するハウジングを有している。このハウジングの内部には、バルブにより開閉(開口面積が変更)される流体流路が形成されている。
なお、バルブの外形形状を円板状に形成しても良い。この場合、流体流路の断面形状は、バルブの外形形状に対応した形状にする。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、流体制御弁は、例えば円筒状のハウジングの流路壁面と例えば円板状のバルブの外周端面との間に形成される隙間をシールする環状のシールリングを有している。
シールリングは、バルブ(の外周端面)に一体回転可能に装着されている。
なお、シールリングの外周に、ハウジングの流路壁面に摺接する摺動部を設けても良い。
また、例えば円板状のバルブの外周端面全周に、例えばC字状を含む円環状のシールリングを装着する環状溝を設けても良い。この環状溝とは、バルブの外周端面に周設された円周方向の凹溝のことである。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、ハウジングは、シールリングに摺接する部分に球面凹部を有している。
この球面凹部は、バルブの回転軸線上に形成される中心点を中心とした曲率半径を有する球面の一部で構成されている。
ここで、請求項1〜3に記載の発明で説明したように、中立位置または制御上の全閉ポイントが、流体洩れ量が変化しない流量不感帯の範囲(流体制御弁の全閉範囲)内に設定されているので、流体制御弁のバルブを全閉作動させる際の、流体洩れ量をゼロまたは極力少なくすることが可能となる。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、バルブは、ハウジングおよびシールリングを伴って、流体流路を流れる流体の流量を制御する流体流量制御弁の弁体を構成している。
請求項8に記載の発明によれば、複数のギヤは、バルブに一体回転可能に連結したバルブギヤを有している。
請求項9に記載の発明によれば、第1付勢手段として、バルブギヤまたはバルブに対して、バルブを中立位置に戻す方向(閉弁作動方向)に荷重を与えるコイル状の第1スプリングを採用している。
請求項10に記載の発明によれば、第2付勢手段として、バルブギヤまたはバルブに対して、バルブを中立位置に戻す方向(開弁作動方向)に荷重を与えるコイル状の第2スプリングを採用している。
請求項7〜10に記載の発明によれば、バルブを全閉作動させる際に、モータの動力をバルブに伝達する動力伝達機構の構成要素を成す各ギヤにモータの動力と第1スプリングまたは第2スプリングの付勢力とが作用する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】エンジン制御システムを示した構成図である(実施例1)。
【図2】EGRガス流量制御弁(EGRV)を示した断面図である(実施例1)。
【図3】アクチュエータを収容するハウジングのギヤ収容凹部を示した平面図である(実施例1)。
【図4】(a)、(b)はエンジン停止時のEGRV開度を示した模式図、断面図である(実施例1)。
【図5】(a)、(b)はアイドル運転(低負荷および低速回転)時のEGRV開度を示した模式図、断面図である(実施例1)。
【図6】(a)、(b)はエンジン運転(低負荷〜中負荷)時のEGRV開度を示した模式図、断面図である(実施例1)。
【図7】(a)、(b)はエンジン運転(高負荷または高速回転)時のEGRV開度を示した模式図、断面図である(実施例1)。
【図8】(a)はエンジンの運転状況(エンジン負荷等)に基づくEGRV制御を示した図で、(b)はEGRV開度の変化を示したタイミングチャートである(実施例1)。
【図9】EGRガス流量制御弁(EGRV)を示した断面図である(従来の技術)。
【図10】EGRガス流量制御弁(EGRV)を示した拡大図である(従来の技術)。
【図11】(a)は3つの第1〜第3ギヤを示した平面図で、(b)は各ギヤの歯面間に形成されるバックラッシュを示した拡大図である(従来の技術)。
【図12】バルブの全閉制御時における制御上の全閉ポイントおよび電動モータによるバルブ制御範囲を示した説明図である(従来の技術)。
【図13】(a)はバルブの全閉位置を示した説明図で、(b)はEGRVの流量不感帯を示した説明図である(従来の技術)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。
本発明は、消費電力の低減および燃費悪化の抑制を図るという目的を、内燃機関が低負荷で、且つ低回転の領域の場合、モータへの通電を停止することで実現した。
また、内燃機関が高負荷または高回転の領域の場合、中立位置よりも開弁作動方向に変位したバルブ位置である制御上の全閉ポイントでバルブを保持するように、モータを通電することで、流路全閉範囲および流量不感帯の範囲内で、制御上の全閉ポイントでバルブが保持される。
【実施例1】
【0022】
[実施例1の構成]
図1ないし図8は本発明の実施例1を示したもので、図1はエンジン制御システムを示した図で、図2はEGRガス流量制御弁(EGRV)を示した図で、図3はアクチュエータを収容するハウジングのギヤ収容凹部を示した図である。
【0023】
本実施例の内燃機関の制御装置(エンジン制御システム)は、内燃機関(エンジン)に供給される吸入空気(吸気)の流量を調整する電子スロットル装置と、エンジンから排出される排気ガス(排気)の一部であるEGRガスをエンジンへ再循環(還流)させる排気ガス循環装置(EGRシステム)とを備えている。
なお、エンジンに、EGRシステムおよび電子スロットル装置の他に、エンジンから排出される排気ガスの圧力(排気圧)を利用して吸気を過給(圧縮)するターボチャージャを有する過給システムを搭載しても良い。
【0024】
ここで、エンジンは、自動車等の車両のエンジンルーム内にEGRシステムと共に設置されている。このエンジンは、複数の気筒(シリンダボア)を有する多気筒ガソリンエンジンが採用されている。但し、多気筒ガソリンエンジンに限定されず、直接噴射式の多気筒ディーゼルエンジンに本発明を適用しても構わない。
また、エンジンは、各気筒毎の燃焼室に吸い込まれる吸気が流れる吸気通路を形成する吸気管(吸気ダクト)と、各気筒毎の燃焼室より流出する排気ガスを外部に排出する排気通路を形成する排気管(排気ダクト)と、EGRガスを排気通路から吸気通路へ還流させる排気ガス還流路(EGRガス流路)を形成する排気ガス還流管(EGRガスパイプP)とを備えている。
【0025】
吸気ダクトには、エアクリーナ、電子スロットル装置、サージタンクおよびインテークマニホールド等が設置されている。なお、インテークマニホールドの集合部は、サージタンクに接続されている。また、インテークマニホールドの各分岐管の出口部は、エンジンの各気筒毎の吸気ポートにそれぞれ接続されている。また、吸気ダクトは、排気通路から導入されたEGRガスを、エアクリーナで濾過された清浄な外気(新規吸入空気:新気)に合流させるEGRガス合流部を備えている。
排気ダクトには、エキゾーストマニホールド、排気浄化装置(触媒)およびマフラ等が設置されている。なお、エキゾーストマニホールドの各分岐管の入口部は、エンジンの各気筒毎の排気ポートにそれぞれ接続されている。また、エキゾーストマニホールドの集合部は、エキゾーストパイプを介して排気浄化装置(触媒)に接続されている。また、排気ダクトは、EGRガスをEGRシステムへ分岐させるEGRガス分岐部を備えている。
【0026】
ここで、EGRシステムは、内部にEGRガス流路を形成するEGRガスパイプPと、EGRガスを冷却水と熱交換させて冷却するEGRクーラQと、EGRガスの流量を制御するEGRガス流量制御弁(以下EGRVと言う)と、このEGRVの弁体であるバタフライバルブ(以下EGRバルブと言う)3のシャフト(回転軸)6を回転駆動してEGRバルブ3を開閉動作させるアクチュエータと、EGRバルブ3を閉弁作動方向または開弁作動方向に付勢するスプリングSPと、アクチュエータの動力源である電動モータMを通電制御するエンジン制御ユニット(電子制御装置:以下ECUと言う)10とを備えている。
【0027】
EGRVは、エンジンの各気筒毎の燃焼室に供給する吸入空気の全流量に対するEGRガス量の比率であるEGR率を制御するEGRガス制御弁である。このEGRVは、EGRガスパイプPの途中に結合されるハウジング(バルブボディ)1と、このハウジング1をEGRガスの熱から保護するためのノズル2と、このノズル2の内部に回転自在に収容されるEGRバルブ3と、このEGRバルブ3の外周のシールリング溝(環状溝)4に嵌め込まれたシールリング5と、EGRバルブ3を支持固定するシャフト6とを備えている。
スプリングSPは、EGRバルブ3を閉弁作動方向に付勢するリターンスプリング7と、EGRバルブ3を開弁作動方向に付勢するオーバーターンスプリング8と、リターンスプリング7とオーバーターンスプリング8との結合部を逆U字状に折り曲げることで形成されるU字フック部9とを備えている。
【0028】
アクチュエータは、電力の供給を受けるとEGRバルブ3を駆動する動力を発生する電動モータMと、この電動モータMの回転を減速してEGRバルブ3のシャフト6に伝達する減速機構と、EGRバルブ3のシャフト6の回転角度を検出する回転角度検出装置とを備えている。
減速機構は、電動モータMのモータシャフト(モータ出力軸)11に連動して回転する3つの第1〜第3減速ギヤと、モータシャフト11に対して並列配置された1つの中間ギヤシャフト(支持軸)12とを備えている。また、3つの第1〜第3減速ギヤは、ピニオンギヤ(モータギヤ)13、中間ギヤ14および出力ギヤ(バルブギヤ、最終ギヤ)15等によって構成されている。
なお、EGRシステムおよびEGRVの詳細は後述する。
【0029】
エンジンのエンジン本体(シリンダブロックおよびシリンダヘッド)には、吸気バルブによって開閉される吸気ポート、および排気バルブによって開閉される排気ポートが形成されている。
エンジンの各気筒(シリンダヘッド)には、各気筒毎の燃焼室内に燃料を噴射供給するインジェクタ、および各気筒毎の燃焼室内の混合気を点火するためのスパークプラグが取り付けられている。
また、エンジンの各気筒(シリンダブロック)の内部には、複数の燃焼室(シリンダボア)がそれぞれ形成されている。各シリンダボア内には、連接棒を介して、クランクシャフトに連結されたピストンがその往復移動方向に摺動自在にそれぞれ支持されている。
ここで、エアクリーナは、インレットダクト(外気導入ダクト)の上流端で開口した外気導入口より空気導入通路に導入される外気(吸気)を濾過するフィルタエレメント(濾過エレメント)を有している。
そして、エアクリーナの出口端は、エアクリーナを通過した吸気が流れる吸気通路を形成するインテークダクトを介して、電子スロットル装置のスロットルボディに接続している。
【0030】
ここで、電子スロットル装置は、エアクリーナを通過した吸気が流れる吸気通路を形成する筒状のスロットルボディ、このスロットルボディの内部(スロットルボア)に回転自在(開閉自在)に収容されるスロットルバルブ16と、このスロットルバルブ16のシャフト(回転軸)を回転駆動してスロットルバルブ16を開閉動作させるアクチュエータとを備えている。この電子スロットル装置は、スロットルバルブ16の開閉動作により吸気の流量を調整する空気流量調整装置である。
アクチュエータは、電力の供給を受けるとスロットルバルブ16を駆動する動力を発生する電動モータ17と、この電動モータ17の回転を減速してスロットルバルブ16のシャフトに伝達する減速機構と、スロットルバルブ16のシャフトの回転角度を検出する回転角度検出装置とを備えている。
なお、電動モータ17は、ECU10によって電子制御されるモータ駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載されたバッテリに電気的に接続されている。
【0031】
次に、本実施例のEGRシステムの詳細を図1ないし図8に基づいて簡単に説明する。 EGRシステムは、EGRガスパイプP、EGRクーラQ、EGRV(ハウジング1、ノズル2、EGRバルブ3、シャフト6)、アクチュエータ、リターンスプリング7、オーバーターンスプリング8、回転角度検出装置を備えている。このEGRシステムは、EGRバルブ3が開弁している間、エンジンの排気ガスが、EGRガスパイプPを経由しEGRガスとして吸気通路へ戻される。
EGRガスパイプPは、エンジンの排気ガスを排気通路(EGRガス分岐部)から吸気通路(EGRガス合流部)へ還流させる排気ガス還流管である。このEGRガスパイプPの内部には、エンジンの各気筒毎の燃焼室に連通する排気ガス流路(EGRガス流路)が形成されている。
【0032】
EGRVは、排気ガス還流路(EGRガス流路)21、22を介して、排気通路から吸気通路へ還流されるEGRガスの流量(EGRガス量)をEGRバルブ3の開閉動作(EGRガス流路21、22の開口面積を変更すること)により調整(制御)する。
EGRVのハウジング1は、耐熱性の金属により形成されており、このハウジング1の前後(上流側および下流側)に配置される例えばEGRガスパイプP(あるいは排気ダクトのEGRガス分岐部または吸気ダクトのEGRガス合流部)に締結ボルトを用いて締め付け固定されている。このハウジング1は、EGRバルブ3およびシャフト6を全閉位置から全開位置に至るまで回転方向に開閉自在(回転自在)に保持するバルブボディである。
【0033】
ハウジング1およびノズル2の内部には、エンジンの各気筒毎の燃焼室に連通するEGRガス流路21、22がそれぞれ形成されている。
EGRガス流路21、22は、排気ダクトのEGRガス分岐部から吸気ダクトのEGRガス合流部へEGRガスを還流させる排気ガス流路(流体流路、ハウジング1の内部流路)である。なお、EGRガス流路21は、EGRガス流路22よりもEGRガス流方向の上流側(または下流側)に形成されている。
また、ハウジング1には、シャフト6を回転方向に摺動自在に支持する軸受け部材(ダストシール23、ブッシング24、オイルシール25およびボールベアリング26等)の周囲を周方向に取り囲む円筒状の軸受保持部が設けられている。
【0034】
軸受保持部の内部には、シャフト6の回転軸方向に延びる軸受け孔31が設けられている。なお、軸受け孔31の内部に侵入した排気ガス中に含まれる不純物(燃焼残滓やカーボン等の微粒子)を、例えば吸気負圧を利用してEGRバルブ3よりもEGRガス流方向の下流側のEGRガス流路(または吸気通路)に戻すための連通孔32を形成しても良い(図9参照)。この場合に、ダストシール23を廃止できる。
また、ハウジング1には、例えば軸受け孔31および軸受け部材の周囲に形成される冷却水流路33にエンジン冷却水を流入させるための2つの冷却水パイプ34、35が接続されている。
【0035】
EGRバルブ3は、耐熱性の金属により円板形状に形成されており、シャフト6の回転軸方向の一端部(後述する)に溶接固定されている。
EGRバルブ3の外周端面には、円環状のシールリング溝4が円周方向に連続して形成されている。このシールリング溝4の内部には、シールリング5が嵌め込まれている。このシールリング5は、耐熱性の金属により円環形状またはC字形状に形成されている。
EGRVのシャフト6は、耐熱性の金属により形成されており、ハウジング1の軸受け孔31の内部に回転自在または摺動自在に収容されている。このシャフト6は、EGRVの弁軸(回転軸)であって、アクチュエータの動力(後述する電動モータMのトルク)により回転駆動される。
【0036】
シャフト6は、ハウジング1の軸受け孔31を貫通して、EGRバルブ3の回転軸方向に延びる軸方向部を有している。この軸方向部は、ハウジング1の軸受け孔31の内部に挿入されている。
シャフト6の回転軸方向の一端部には、ハウジング1の軸受保持部の開口端面からEGRガス流路21、22の内部に向かって突出する第1突出部が設けられている。なお、第1突出部には、EGRバルブ3が溶接固定されている。
また、シャフト6の回転軸方向の他端部には、ハウジング1の軸受保持部の開口端面から減速ギヤ収納空間の内部に向かって突出する第2突出部が設けられている。
【0037】
アクチュエータは、EGRバルブ3を開閉動作させるバルブ駆動装置として使用される。このアクチュエータは、EGRバルブ3を開弁方向または閉弁方向に駆動する電動モータMと、この電動モータMの回転を2段減速してシャフト6に伝達する減速機構(動力伝達機構)と、EGRVのバルブ開度を検出する回転角度検出装置と、これらの各構成部品を収容するアクチュエータケースとを備えている。
アクチュエータケースは、電動モータMを収容保持するモータ収容凹部を有するモータハウジング41と、減速機構を回転自在に収容するギヤ収容凹部を有するギヤハウジング42と、このギヤハウジング42のギヤ収容凹部との間にギヤ収納空間を形成すると共に、ギヤ収容凹部の開口側を塞ぐセンサカバー43とを備えている。
モータハウジング41およびギヤハウジング42は、ハウジング1の外壁部に一体的に形成されている。また、センサカバー43は、電気絶縁性に優れる合成樹脂によって形成されている。
【0038】
電動モータMは、モータハウジング41のモータ収容凹部内に収容保持されている。
減速機構は、電動モータMのモータシャフト11の外周に圧入固定されたピニオンギヤ13、このピニオンギヤ13と噛み合って回転する中間ギヤ14、およびこの中間ギヤ14と噛み合って回転する出力ギヤ15等によって構成されている。なお、3つの第1〜第3減速ギヤ13〜15は、ギヤハウジング42のギヤ収容凹部内において回転自在に収容されている。
中間ギヤ14は、中間ギヤシャフト12の外周に回転自在に嵌め合わされている。この中間ギヤ14の外周には、ピニオンギヤ13と噛み合う複数の凸状歯(大径ギヤ歯)、および出力ギヤ15と噛み合う複数の凸状歯(小径ギヤ歯)が形成されている。
【0039】
出力ギヤ15は、合成樹脂によって一体的に形成されている。この出力ギヤ15の外周側には、円弧状の歯形成部44が一体的に形成されている。この歯形成部44の外周には、中間ギヤ14の凸状歯と噛み合う複数の凸状歯(扇状の出力ギヤ歯)45が所定の角度分だけ扇状に形成されている。
出力ギヤ15の内周部には、合成樹脂製のロータ46が一体的に形成されている。このロータ46の内部には、金属製のバルブギヤプレート47がインサート成形されている。これにより、出力ギヤ15は、バルブギヤプレート47を介して、シャフト6の回転軸方向の他端部(第2突出部)に回り止めされた状態で固定されている。
【0040】
スプリングSPは、ハウジング1の外壁面であるギヤハウジング42の環状凹部51の底面(スプリング座部)と出力ギヤ15の環状凹部52の底面(スプリング座部)との間に渦巻き状に巻装された2つの第1、第2コイルを有している。
第1コイルは、出力ギヤ15に対して、EGRバルブ3を閉弁作動方向に付勢する付勢力(バネ荷重、スプリング力)を発生するリターンスプリング(第1付勢手段)7である。このリターンスプリング7は、EGRバルブ3を、全開位置から中立位置まで戻す方向(閉弁作動方向)に付勢する第1スプリング(コイルスプリング)である。
第2コイルは、出力ギヤ15に対して、EGRバルブ3を開弁作動方向に付勢する付勢力(バネ荷重、スプリング力)を発生するオーバーターンスプリング(第2付勢手段)8である。このオーバーターンスプリング8は、EGRバルブ3を、中立位置を通り越した位置から中立位置まで戻す方向(開弁作動方向)に付勢する第2スプリング(コイルスプリング)である。
【0041】
スプリングSPは、リターンスプリング7の一端部(図示左端部)とオーバーターンスプリング8の他端部(図示右端部)とを異なる方向に巻き込み、リターンスプリング7の他端部(図示右端部)とオーバーターンスプリング8の一端部(図示左端部)とを結合して一体化した1本のコイルスプリングである。
リターンスプリング7の軸線方向の一端側(ハウジング側)には、ギヤハウジング42のスプリング座部に接触する円環状の第1コイル端部が設けられている。
オーバーターンスプリング8の軸線方向の他端側(出力ギヤ側)には、出力ギヤ15のスプリング座部に接触する円環状の第2コイル端部が設けられている。
【0042】
ここで、リターンスプリング7の軸線方向の他端部とオーバーターンスプリング8の軸線方向の一端部とを結合する結合部には、エンジン停止時、あるいは電動モータMへの電力の供給を停止した時に、ギヤハウジング42に一体的に形成されたブロック状のオープナストッパ53に保持されるU字フック部9が設けられている。
スプリングSPは、第1コイル端部の端末部からその接線方向に突出する第1フック部54、第2コイル端部の端末部からその半径方向の外側に向けて延びる第2フック部55を有している。
第1フック部54は、ギヤハウジング42に設けられる第1係止部61に保持されている。また、第2フック部55は、出力ギヤ15に設けられる第2係止部62に保持されている。
【0043】
次に、本実施例のハウジング1、ノズル2、EGRバルブ3および出力ギヤ15の詳細を図1ないし図8に基づいて説明する。
ハウジング1には、スプリングSPのリターンスプリング7の第1フック部54を係止するブロック状の第1係止部61が形成されている。また、出力ギヤ15には、スプリングSPのオーバーターンスプリング8の第2フック部55を係止するブロック状の第2係止部62が形成されている。
ハウジング1は、ダストシール23、ブッシング24、オイルシール25およびボールベアリング26等の軸受け部材を保持する軸受保持部を備えている。この軸受保持部は、内部に軸受け孔31が形成された円筒状の第1ボス部(ブロック)63を有している。この第1ボス部63は、ハウジング1の外壁面であるギヤハウジング42の底面からギヤ収納空間内に突出するように設けられている。
そして、第1ボス部63は、軸受け部材(特にボールベアリング26等)を介して、EGRバルブ3のシャフト6を回転自在に軸支している。また、第1ボス部63の外径は、スプリングSPのリターンスプリング7の内径よりも小さい寸法に設定されている。そして、第1ボス部61の外周部は、リターンスプリング7のコイル内径をガイド(保持)するスプリング内周ガイドとしての機能を有している。
【0044】
出力ギヤ15のロータ46には、内部に2面幅(シャフト6の空回りを防ぐ構造、回り止め構造)を有する貫通孔が形成されたバルブギヤプレート47がインサート成形されている。出力ギヤ15は、内部にロータ46が一体化された円筒状の第2ボス部(ブロック)64を有している。この第2ボス部64は、歯形成部44の内周部からハウジング側に突出するように設けられている。
そして、第2ボス部64の外径は、スプリングSPのオーバーターンスプリング8の内径よりも小さい寸法に設定されている。そして、第2ボス部64の外周部は、オーバーターンスプリング8のコイル内径をガイド(保持)するスプリング内周ガイドとしての機能を有している。
【0045】
ハウジング1には、円筒状のノズル2の周囲を円周方向に取り囲むと共に、ノズル2の外周を嵌合保持する円筒状のノズル嵌合部65が設けられている。
ノズル2は、ハウジング1のノズル嵌合部65の内周に圧入固定されている。なお、ハウジング1およびノズル2の内部には、EGRガス流路21、22が形成されている。
EGRガス流路21、22は、排気ダクトのEGRガス分岐部から吸気ダクトのEGRガス合流部へEGRガスを還流させる排気ガス流路(流体流路)である。このEGRガス流路21、22は、エンジンの各気筒毎の燃焼室に連通している。
ここで、ノズル2は、EGRバルブ3のシールリング溝4に嵌め込まれたシールリング5が摺接する部分(内周面)に球面凹部66を設けている。この球面凹部66は、EGRバルブ3の回転軸線上に形成される中心点(EGRバルブ3の回転中心位置)を中心とした曲率半径を有する球面の一部で構成されている。
【0046】
出力ギヤ15の外周部には、全閉側ストッパ部67が設けられている。この全閉側ストッパ部67は、EGRバルブ3が全閉側限界位置を越えて閉弁作動方向に回転変位した際に、ギヤハウジング42に一体的に形成されたブロック状の全閉側ストッパ68に機械的に係止される。全閉側ストッパ68は、EGRバルブ3等の可動部材(シャフト6および出力ギヤ15)の閉弁作動方向の回転動作範囲を規制する第1規制部として利用されている。これにより、出力ギヤ15の全閉側ストッパ部67が全閉側ストッパ68に当接した際に、EGRバルブ3等の可動部材のこれ以上の閉弁作動方向への回転変位が規制される。
なお、本実施例では、全閉側ストッパ68によって規制される最大全閉開度を、中立位置(O)をθ=0°としたとき、中立位置(O)から微少開度(例えばθ=−17°程度)だけ閉弁作動方向に開弁した開度(バルブ位置)に設定している。
【0047】
また、出力ギヤ15の外周部には、全開側ストッパ部(図示せず)が設けられている。この全開側ストッパ部は、EGRバルブ3が全開側限界位置を越えて開弁作動方向に回転変位した際に、ギヤハウジング42に一体的に形成されたブロック状の全開側ストッパ(図示せず)に機械的に係止される。全開側ストッパは、EGRバルブ3等の可動部材(シャフト6および出力ギヤ15)の開弁作動方向の回転動作範囲を規制する第2規制部として利用されている。これにより、出力ギヤ15の全開側ストッパ部が全開側ストッパに当接した際に、EGRバルブ3等の可動部材のこれ以上の開弁作動方向への回転変位が規制される。
なお、本実施例では、全開側ストッパによって規制される最大全開開度(全開位置)を、中立位置(O)をθ=0°としたとき、中立位置(O)から所定の開度(例えばθ=+60〜90°、望ましくはθ=+70°程度)だけ開弁作動方向に開弁した開度(バルブ位置)に設定している。
【0048】
EGRバルブ3は、中立位置であるメカオープナ位置(O)または制御上の全閉ポイントである制御全閉位置(A)から全開位置に至るまでの動作可能範囲で回転動作されることで、EGRガス流路21、22の開口面積を変更してEGR率を調整する。
EGRバルブ3の外周端面には、シールリング5を装着するシールリング溝4が全周に形成されている。
シールリング5は、その外周側部が、EGRバルブ3の外周端面より径方向外側に突出した状態で、内周側部がシールリング溝4内を径方向、軸線方向および円周方向に移動できるようにシールリング溝4の内部に嵌め込まれて保持されている。
【0049】
したがって、本実施例のEGRVは、エンジン停止時またはEGRガスを導入しない時(EGRカット時)に、EGRバルブ3のシールリング溝4に嵌め込まれたシールリング5の軸線方向に対して直交する径方向(拡径方向)の張力を利用して、ノズル2の内径面(球面凹部66のバルブシート面)とEGRバルブ3の外周端面との間に形成される隙間を密閉(シール)するように構成されている。
ここで、本実施例のEGRVは、EGRバルブ3を全閉作動させる際に、EGRガス流路21、22を気密的に閉鎖可能な流路全閉範囲を有している。また、EGRVは、EGRバルブ3の開閉作動時に、EGRガス洩れ量が変化しない流量不感帯を有している。
なお、流路全閉範囲とは、球面凹部66の形成区間に相当する流量不感帯の範囲のことである。
【0050】
ここで、本実施例のEGRVは、シャフト6を回転駆動することで、EGRバルブ3を開閉動作させるアクチュエータを備えている。このアクチュエータの動力源である電動モータMは、ECU10によって電子制御されるモータ駆動回路を介して、自動車等の車両に搭載されたバッテリに電気的に接続されている。
モータ駆動回路は、ECU10のマイクロコンピュータより与えられる出力信号(例えばPWM信号のデューティ比)に対してして電動モータMへの供給電力(モータ駆動電流またはモータ印加電圧)を可変制御する。
【0051】
ここで、アクチュエータ、特に電動モータMは、ECU10によって通電制御されるように構成されている。
ECU10には、制御処理、演算処理を行うCPU、各種プログラムおよび各種データを保存する記憶装置(ROMやRAM等のメモリ)、入力回路(入力部)、出力回路(出力部)、電源回路、タイマー回路等の機能を含んで構成される周知の構造のマイクロコンピュータが設けられている。このECU10は、エアフロメータ71、クランク角度センサ72、アクセル開度センサ73、スロットル開度センサ74、EGRV開度センサ75、冷却水温度センサおよび排気ガスセンサ(空燃比センサ、酸素濃度センサ)等の各種センサからのセンサ出力信号が、A/D変換回路によってA/D変換された後に、マイクロコンピュータに入力されるように構成されている。
【0052】
マイクロコンピュータは、エアフロメータ71より出力されるセンサ出力信号(AFM信号)またはスロットル開度センサ74より出力されるセンサ出力信号(スロットル開度信号)に基づいて、エンジンの吸気ダクトを流れる新気量を計測(算出)し、この算出した新気量を各種エンジン制御(例えばEGRバルブ3の開度制御:EGRV開度制御)に使用する。
また、マイクロコンピュータは、EGRV開度センサ75より出力されるセンサ出力信号(EGRV開度信号)に基づいて、エンジンの吸気ダクトに還流するEGRガス量を計測(算出)し、この算出したEGRガス量を各種エンジン制御(例えばスロットルバルブ16の開度制御:スロットル開度制御)に使用する。
【0053】
マイクロコンピュータは、エンジンの運転状況(例えばエアフロメータ71のAFM信号から測定された吸入空気量、クランク角度センサ72のNEパルス信号から測定されたエンジン回転速度、アクセル開度センサ73またはスロットル開度センサ74のエンジン負荷信号)に対応して目標EGRV開度を決定し、EGRV開度センサ75のEGRV開度信号から測定されたEGRV開度と目標EGRV開度との偏差がなくなるように、電動モータMを駆動するモータ駆動回路に与えるPWM信号のデューティ比に対して、PID制御(比例積分微分制御)によりフィードバック制御を行うように構成されている。
【0054】
エアフロメータ71は、エンジンの各気筒の燃焼室に吸い込まれる新気量を検出する空気量検出手段である。
クランク角度センサ72は、エンジンのクランクシャフトの回転角度を検出する回転角度検出手段である。このクランク角度センサ72は、エンジンのクランクシャフトの回転角度を電気信号に変換するピックアップコイルよりなり、例えば30°CA(クランク角度)毎にNEパルス信号が出力される。
また、ECU10は、クランク角度センサ72より出力されたNEパルス信号の間隔時間を計測することによってエンジン回転速度(エンジン回転数:NE)を検出するための回転速度検出手段として機能する。
【0055】
アクセル開度センサ73は、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するエンジン負荷検出手段である。
回転角度検出装置は、マグネットロータの回転角度を測定してスロットルバルブ16のシャフトの回転角度に相当するスロットル開度を検出するスロットル開度センサ(エンジン負荷検出手段)74として使用される。マグネットロータは、スロットルバルブ16に一体回転可能に連結されている。
【0056】
回転角度検出装置は、マグネットロータの回転角度を測定してEGRバルブ3のシャフト6の回転角度に相当するEGRV開度を検出するEGRV開度センサ(バルブ位置検出手段)75として使用される。マグネットロータは、EGRバルブ3に一体回転可能に連結されている。具体的には、EGRバルブ3のシャフト6の第2突出部に固定された出力ギヤ15の内周部にマグネットロータがインサート成形により固定されている。
マグネットロータは、EGRV開度センサ75へ磁束を与える一対のマグネット76、およびこのマグネット76から放出された磁束(磁界)をEGRV開度センサ75に対して集中させるヨーク77等によって構成されている。
【0057】
EGRV開度センサ75は、マグネットロータ(一対のマグネット76、ヨーク77)の回転方向への移動に伴って変化する磁束を検出する非接触式の磁気検出素子である半導体ホール素子を有している。この半導体ホール素子には、マグネットロータ、特に一対のマグネット76の磁極面から印加される磁界の磁束密度(磁束の量)や磁界の強さを感磁する感磁面が設けられている。
そして、EGRV開度センサ75は、センサカバー43のセンサ搭載部からギヤハウジング42のギヤ収容凹部底面側に突出するように設置されている。このEGRV開度センサ75は、半導体ホール素子の感磁面を鎖交する磁束密度に対応した電圧信号(アナログ信号)をECU10へ向けて出力するホールICを主体として構成されている。
なお、ホールICの代わりに、ホール素子単体、磁気抵抗素子等の非接触式の磁気検出素子を使用しても良い。
【0058】
ここで、ECU10は、EGRバルブ3を全閉した全閉開度の状態、すなわち、電動モータMへの電力の供給を停止した際にスプリングSPの付勢力によってEGRバルブ3が付勢されるバルブ停止位置をメカオープナ位置(O)としてマイクロコンピュータのメモリに格納している。
なお、本実施例では、リターンスプリング7の付勢力とオーバーターンスプリング8の付勢力とが釣り合った中立位置が、電動モータMへの電力の供給を停止した際にEGRバルブ3が付勢されるメカオープナ位置(O)となる。
【0059】
ここで、本実施例のEGRVは、EGRバルブ3のシールリング溝4内に、自身の拡径方向の張力を利用してノズル2の球面凹部66に対するシール機能を持つC字状のシールリング5を組み合わ(嵌め合わ)せたバルブ構造を採用している。
このようなEGRVにおいては、シールリング自身の拡径方向の張力による伸びと、ノズル2の球面凹部66とにより、メカオープナ位置(O)の近傍(中立位置の前後:例えば±2.5〜5.5°、あるいは±3.0〜5.0°、あるいは±3.5°程度)にEGRガス洩れ量(流体流量、流体洩れ量、EGR量)の変化しない範囲(流量不感帯)がある。
これは、ノズル2の内周面に、流路全閉範囲および流量不感帯の全領域に渡って、シールリング5の摺動部が接触可能な球面凹部66が形成されており、EGRバルブ3のバルブ位置がメカオープナ位置(O)より外れても、ノズル2の球面凹部66を通り抜けるまでは、ノズル2の球面凹部66のバルブシート面にシールリング5の摺動部が密着し続けることができるからである。
【0060】
メカオープナ位置(O)とは、電動モータMへの通電停止時に、リターンスプリング7の付勢力とオーバーターンスプリング8の付勢力とによって付勢(保持)されるEGRバルブ3のバルブ位置、つまり電動モータMへの通電停止時に、リターンスプリング7の付勢力(第1スプリングトルク)とオーバーターンスプリング8の付勢力(第2スプリングトルク)とが釣り合う中立位置のことである。
制御全閉位置(A)とは、中立位置であるメカオープナ位置(O)よりも開弁作動方向にEGRバルブ3が回転変位したバルブ位置のことである。
【0061】
また、EGRバルブ3の全開位置とは、ノズル2の内周面とEGRバルブ3の外周端面との間の隙間が最大となる位置で、且つEGRガス流路21、22を流れるEGRガス量が最大となるバルブ開度のことである。
そして、ECU10は、制御全閉位置(A)を、流路全閉範囲内および流量不感帯の範囲内に設定している。本実施例では、制御全閉位置(A)を、不感帯最大開度に設定している。
【0062】
[実施例1の制御方法]
次に、本実施例の内燃機関のEGR制御装置の制御方法を図1ないし図8に基づいて簡単に説明する。ここで、図4はエンジン停止時のEGRV開度を示した図で、図5はアイドル運転(低負荷、低速回転)時のEGRV開度を示した図で、図6はエンジン運転(低負荷〜中負荷)時のEGRV開度を示した図で、図7はエンジン運転(高負荷、高速回転)時のEGRV開度を示した図である。また、図8(a)はエンジンの運転状況(エンジン負荷等)に基づくEGRV制御を示した図で、図8(b)はEGRV開度の変化を示したタイミングチャートである。
【0063】
ここで、ECU10は、イグニッションスイッチがオン(IG・ON)されると、エンジンの運転状況に対応してEGR率が最適値となるように、EGRVのバルブ開度を可変制御する。
具体的には、EGRV開度センサ75より出力されるセンサ出力信号(EGRV開度信号、EGRV実開度)が、エンジン運転状況(特にクランク角度センサ72のNEパルス信号から測定されたエンジン回転速度、アクセル開度センサ73またはスロットル開度センサ74のエンジン負荷信号)に対応して設定される制御目標値(目標EGR率)に相当する目標EGR開度と一致するように、EGRバルブ3のシャフト6を駆動する電動モータMへの供給電力をフィードバック制御する。
【0064】
(1)エンジン停止時
ECU10は、イグニッションスイッチがオフ(IG・OFF)されると、電動モータMへの通電をオフ(OFF)する。
このように、EGRバルブ3を駆動する電動モータMへの電力供給が成されていない場合には、バルブ停止位置、つまりメカオープナ位置(O)に、スプリングSPの付勢力(第1、第2スプリングトルク)によってEGRバルブ3が付勢される。
ここで、メカオープナ位置(O)は、流路全閉範囲内および流量不感帯の範囲内に設定されている。本実施例では、メカオープナ位置(O)が、球面凹部66の一方側(閉弁側)の限界点Xと球面凹部66の他方側(開弁側)の限界点Yとの中間点に設定されている。
したがって、EGRバルブ3のシールリング溝4に嵌め込まれたシールリング5の摺動部が、ハウジング1のノズル嵌合部65に嵌合保持されるノズル2の球面凹部66のバルブシート面に密着することで、EGRガス流路21、22が閉鎖される。これにより、EGRガスが、エアクリーナを通過した清浄な吸気に混入しない(EGRカット)。
【0065】
(2)アイドル運転時
ECU10は、イグニッションスイッチがオン(IG・ON)されると、エンジンの運転状況に対応して設定される制御目標値(目標EGR率、目標EGR開度)を演算する。 ここで、エンジン負荷が低負荷で、且つエンジン回転速度が低速回転の領域、つまりアイドル運転時には、エンジンの燃焼を安定させるために、EGRガスの導入を止める。
この場合も、エンジン停止時と同様に、電動モータMへの通電をオフ(OFF)する。これにより、スプリングSPの付勢力(第1、第2スプリングトルク)によってメカオープナ位置(O)、すなわち、電動モータMへの通電停止時に第1スプリングトルクと第2スプリングトルクとが釣り合う中立位置にEGRバルブ3が付勢される。
【0066】
したがって、EGRバルブ3と一体回転可能に装着されたシールリング5の摺動部が、ノズル2の球面凹部66のバルブシート面に密着することで、EGRガス流路21、22が閉鎖される。これにより、EGRガスが、エアクリーナを通過した清浄な吸気に混入しない(EGRカット)。
このとき、電動モータMの駆動力(モータトルク)が、3つの第1〜第3減速ギヤに作用していないので、噛み合う2つの減速ギヤのうちの一方の減速ギヤの歯面が、他方の減速ギヤの歯面に押し付けられず、各減速ギヤに自由度があるため、噛み合う2つの減速ギヤの歯面間(ピニオンギヤ13と中間ギヤ14との歯面間、および中間ギヤ14と出力ギヤ15との歯面間)のバックラッシュが大きくなる。
【0067】
(3)エンジン運転時(EGRガス導入時)
次に、ECU10は、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んで、エンジンが所定の運転領域(例えば低負荷〜中負荷で、且つ低速回転〜中速回転の領域)に入ると、この運転領域(エンジン負荷およびエンジン回転速度)に対応して設定される制御目標値(目標EGR率、目標EGR開度)を演算する。
このとき、ECU10は、EGRバルブ3が所定のバルブ開度以上に開弁するように開弁作動させる。なお、制御目標値は、例えば全開位置(C)に設定される。
そして、電動モータMに電力を供給し、電動モータMのモータシャフト11を開弁作動方向に回転させる。これにより、電動モータMの回転動力(モータトルク)が、ピニオンギヤ13、中間ギヤ14および出力ギヤ15に伝達される。そして、出力ギヤ15からモータトルクが伝達されたシャフト6が、出力ギヤ15の回転に伴って所定の回転角度(バルブ開度)だけ開弁作動方向に回転する。
【0068】
以上のように、エンジンの運転状況に対応して、電動モータMへの供給電力(駆動電流値または印加電圧値)を可変制御することで、EGRVのバルブ開度を変化させることにより、エアクリーナを通過した清浄な吸気に対する、EGRガスの導入量(混入量)が調節される。
すなわち、EGRバルブ3は、制御目標値に相当するバルブ開度に開弁制御される。つまりEGRガス流路21、22が開放される。
これにより、エンジンの各気筒毎の燃焼室より流出した排気ガスの一部であるEGRガスが、排気ダクト内に形成される排気通路(EGRガス分岐部)から、排気ダクト側のEGRガスパイプPの内部(EGRガス流路)→EGRクーラQ→中間のEGRガスパイプPの内部(EGRガス流路)→EGRVのハウジング1の内部流路(EGRガス導入ポート→EGRガス流路21、22→EGRガス導出ポート)→吸気ダクト側のEGRガスパイプPの内部(EGRガス流路)を経由して、吸気ダクト内に形成される吸気通路(EGRガス合流部)に再循環される。したがって、EGRガスがエンジンの各気筒毎の吸気ポートおよび燃焼室に供給される吸気に混入される。
これによって、排気ガス中に含まれる有害物質(例えばNOx等)が低減される。
【0069】
(4)エンジン運転時(高負荷、高回転時)
次に、ECU10は、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んで、エンジンが所定の運転領域(例えば高負荷または高速回転の領域)に入ると、この運転領域(エンジン負荷およびエンジン回転速度)に対応して設定される制御目標値(目標EGR率、目標EGR開度)を演算する。
このとき、ECU10は、制御目標値を、メカオープナ位置(O)よりも開弁作動方向に回転変位したバルブ位置に設定された制御全閉位置(A)に設定する。なお、この制御全閉位置(A)は、流路全閉範囲内および流量不感帯の範囲内に設定されている。
ここで、エンジンの運転領域が高負荷または高速回転の領域に入ると、制御目標値、つまりEGRバルブ3が制御全閉位置(A)に制御される理由は、ドライバーがアクセルペダルを踏み込んでエンジンの出力を最大限に引き出したい時に、EGRガス(エンジンの燃焼に寄与しないガス)が各気筒毎の燃焼室内に導入されることを要因とする、エンジンの出力低下を回避するためである。
【0070】
そして、ECU10は、EGRバルブ3のバルブ位置が、制御全閉位置(A)となるように電動モータMへの電力の供給を継続する。すなわち、EGRV開度センサ75より出力されるセンサ出力信号(EGRV開度信号、EGRV実開度)が、制御全閉位置(A)に到達した時点で、電動モータMへの供給電力を所定値に維持する。例えば電動モータMに微少電流(開弁作動方向の電流小)を供給する。これにより、EGRバルブ3にモータトルクと第1スプリングトルクとが作用するため、EGRバルブ3が制御全閉位置(A)にて保持される。
【0071】
ここで、本実施例のEGRVにおいては、図7に示したように、制御全閉位置(A)が、流路全閉範囲および流量不感帯の範囲内に設けられている。このため、EGRVのバルブ開度が制御全閉位置(A)に保持されると、EGRバルブ3の外周に装着されたシールリング5の摺動部が、シールリング自体の拡径方向の張力によってノズル2の球面凹部66のバルブシート面に張り付くため、シールリング5の摺動部がノズル2の球面凹部66のバルブシート面に密着する。
【0072】
したがって、EGRバルブ3の外周端面とノズル2の球面凹部66のバルブシート面との間に形成される隙間が完全にシールされる。これにより、制御全閉位置(A)でEGRバルブ3が保持される時、すなわち、EGRバルブ3の全閉時に、EGRガスの洩れが確実に抑止されるため、EGRガスが吸入空気に混入しなくなる(EGRカット)。
このとき、モータトルクと第1スプリングトルクとが、3つの第1〜第3減速ギヤに作用しているので、噛み合う2つの減速ギヤのうちの一方の減速ギヤの歯面が、他方の減速ギヤの歯面に押し付けられる。これにより、各減速ギヤに自由度がなくなり、噛み合う2つの減速ギヤの歯面間(ピニオンギヤ13と中間ギヤ14との歯面間、および中間ギヤ14と出力ギヤ15との歯面間)のバックラッシュが非常に小さくなる、あるいはゼロになる。
【0073】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例の内燃機関のEGR制御装置においては、エンジンの運転中に、エンジン負荷が低負荷で、且つエンジン回転速度が低回転の運転領域、所謂、エンジンのアイドル運転時に、EGRバルブ3のシャフト6を駆動する電動モータMへの電力供給(通電)をOFFすることにより、メカオープナ位置(O)にEGRバルブ3が保持(付勢)される。つまりスプリングSPのスプリングトルクによってEGRバルブ3をメカオープナ位置(O)に戻す(保持する)ことが可能となる。これにより、消費電力を低減することができるので、燃費悪化等の不具合の発生を抑制することができる。
【0074】
また、本実施例の内燃機関のEGR制御装置においては、エンジンの運転中に、エンジン負荷が高負荷、あるいはエンジン回転速度が高回転の運転領域の場合、メカオープナ位置(O)よりも開弁作動方向に回転変位したバルブ位置に設定された制御全閉位置(A)でEGRバルブ3を保持するように、電動モータMを通電することにより、流路全閉範囲および流量不感帯の範囲内に設定される制御全閉位置(A)でEGRバルブ3が保持される。
このとき、電動モータMの回転動力をEGRバルブ3に伝達する3つの第1〜第3減速ギヤに、つまり全ての減速ギヤにモータトルクと第1スプリングトルクとが作用する。
【0075】
これにより、噛み合う2つの減速ギヤのうちの一方の減速ギヤの歯面が、他方の減速ギヤの歯面に押し付けられる。すなわち、噛み合う2つの減速ギヤ13、14のうちの一方のピニオンギヤ13の各凸状歯が、他方の中間ギヤ14の各凸状歯に押し付けられる。また、噛み合う2つの減速ギヤ14、15のうちの一方の中間ギヤ14の各凸状歯が、他方の出力ギヤ15の各凸状歯に押し付けられる。
これによって、噛み合う2つの減速ギヤの歯面間(ピニオンギヤ13と中間ギヤ14との歯面間、および中間ギヤ14と出力ギヤ15との歯面間)のバックラッシュを消すことができるので、エンジン振動や車両振動による噛み合う2つの減速ギヤのガタ付きを抑制することができる。これにより、噛み合う2つの減速ギヤ同士が衝突または摩擦を繰り返すことはない。したがって、各減速ギヤの歯面の異常摩耗(ギヤ摩耗)を防止することができる。
また、エンジン振動や車両振動による噛み合う2つの減速ギヤのガタ付きを抑制することができるので、歯打ち音の発生を抑制することができる。したがって、騒音の発生を防止することが可能となる。
【0076】
[変形例]
本実施例では、本発明の内燃機関の制御装置を、内燃機関のEGR制御装置に適用しているが、本発明の内燃機関の制御装置を、内燃機関(エンジン)の燃焼室に供給する吸気を吸気制御弁の弁体であるバルブの開閉動作により制御する内燃機関の吸気制御装置に適用しても良い。また、本発明の内燃機関の制御装置を、内燃機関(エンジン)の燃焼室より流出する排気ガスを排気制御弁の弁体であるバルブの開閉動作により制御する内燃機関の排気制御装置に適用しても良い。
【0077】
また、吸気制御弁としては、タンブル制御弁、スワール制御弁、吸気流量制御弁、吸気圧力制御弁、流路切替弁等が考えられる。
また、排気制御弁としては、ウェイストゲート弁、スクロール切替弁、排気流量制御弁、排気圧力制御弁、排気切替弁等が考えられる。
本実施例では、EGRバルブ3を駆動するアクチュエータ(バルブ駆動装置)を、電動式アクチュエータによって構成したが、バルブを開弁駆動または閉弁駆動するバルブ駆動装置を、電磁式または電動式負圧制御弁を備えた負圧作動式アクチュエータや、電磁式流体制御弁等の電磁式アクチュエータによって構成しても良い。
【0078】
本実施例では、ハウジング1のノズル嵌合部65の内周に円筒状のノズル2を嵌合保持し、更にノズル2の内部にEGRバルブ3を開閉自在(回転自在)に収容しているが、ハウジング1の内部に直接EGRバルブ3を開閉自在(回転自在)に収容しても良い。この場合には、ノズル2は不要となり、部品点数や組付工数を削減できる。
なお、EGRバルブ3の外周端面にシールリング溝(環状溝)4を設けなくても良い。また、EGRバルブ3の外周端面にシールリング5を装着しなくても良い。この場合には、シールリング5は不要となり、部品点数や組付工数を削減できる。
【0079】
本実施例では、内燃機関(エンジン)の運転時、特に高負荷時または高速回転時に、メカオープナ位置(O)よりも開弁作動方向に回転変位したバルブ位置に設定された制御全閉位置(A)でEGRバルブ3を保持するように、電動モータMを通電しているが、内燃機関(エンジン)の運転時、特に高負荷時または高速回転時に、メカオープナ位置(O)よりも閉弁作動方向に回転変位したバルブ位置に設定された制御全閉位置(A)でEGRバルブ3を保持するように、電動モータMを通電しても良い。
この場合には、電動モータMの回転動力をEGRバルブ3に伝達する3つの第1〜第3減速ギヤに、つまり全ての減速ギヤに電動モータMのモータトルクとオーバーターンスプリング8の付勢力(第2スプリングトルク)とが作用することになる。これによって、噛み合う2つの減速ギヤの歯面間のバックラッシュを消すことができるので、実施例1と同様に、各減速ギヤの歯面の異常摩耗(ギヤ摩耗)を防止することができる。
【符号の説明】
【0080】
M 電動モータ
1 ハウジング(バルブボディ)
2 ノズル
3 EGRバルブ(EGRVの弁体)
4 シールリング溝(環状溝)
5 シールリング
6 シャフト(EGRVの弁軸)
7 リターンスプリング(第1付勢手段、第1スプリング)
8 オーバーターンスプリング(第2付勢手段、第2スプリング)
9 U字フック部
10 ECU(モータ制御手段)
13 ピニオンギヤ(第1減速ギヤ、モータギヤ)
14 中間ギヤ(第2減速ギヤ)
15 出力ギヤ(第3減速ギヤ、バルブギヤ)
21 EGRガス流路(流体流路)
22 EGRガス流路(流体流路)
66 球面凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)内燃機関の燃焼室に連通する流体流路、およびこの流体流路を開閉するバルブを有する流体制御弁と、
(b)前記バルブを開弁作動方向または閉弁作動方向に駆動するモータと、
(c)このモータの動力を前記バルブに伝達する複数のギヤと、
(d)前記バルブを閉弁作動方向に付勢する第1付勢手段と、
(e)前記バルブを開弁作動方向に付勢する第2付勢手段と、
(f)前記内燃機関の運転状況に対応して前記モータへの供給電力を可変制御するモータ制御手段と
を備えた内燃機関の制御装置において、
前記流体制御弁は、前記バルブを全閉作動させる際に、前記流体流路を閉鎖可能な全閉範囲を有し、
前記バルブは、前記モータへの通電を停止した際に、前記第1付勢手段の付勢力と前記第2付勢手段の付勢力とが釣り合う中立位置に保持され、
前記中立位置は、前記全閉範囲内に設定され、
前記モータ制御手段は、前記内燃機関が低負荷で、且つ低回転の領域の場合、前記モータへの通電を停止することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の制御装置において、
前記中立位置よりも開弁作動方向に変位したバルブ位置を制御上の全閉ポイントとしたとき、
前記制御上の全閉ポイントは、前記全閉範囲内に設定され、
前記モータ制御手段は、前記内燃機関が高負荷または高回転の領域の場合、前記制御上の全閉ポイントで前記バルブを保持するように、前記モータを通電することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の内燃機関の制御装置において、
前記流体制御弁は、流体洩れ量が変化しない流量不感帯を有し、
前記全閉範囲とは、前記流量不感帯の範囲のことであることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置において、 前記流体制御弁は、内部に前記流体流路を形成するハウジングを有し、
前記バルブは、前記流体流路内に回転自在に収容されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の内燃機関の制御装置において、
前記流体制御弁は、前記ハウジングの流路壁面と前記バルブの外周端面との間に形成される隙間をシールする環状のシールリングを有し、
前記シールリングは、前記バルブに一体回転可能に装着されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載の内燃機関の制御装置において、
前記ハウジングは、前記シールリングに摺接する部分に球面凹部を有し、
前記球面凹部は、前記バルブの回転軸線上に形成される中心点を中心とした曲率半径を有する球面の一部で構成されていることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の内燃機関の制御装置において、
前記バルブは、前記ハウジングおよび前記シールリングを伴って、前記流体流路を流れる流体の流量を制御することを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のうちのいずれか1つに記載の内燃機関の制御装置において、 前記複数のギヤは、前記バルブに一体回転可能に連結したバルブギヤを有していることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載の内燃機関の制御装置において、
前記第1付勢手段とは、前記バルブギヤまたは前記バルブに対して、前記バルブを前記中立位置に戻す方向に荷重を与えるコイル状の第1スプリングのことであることを特徴とする内燃機関の制御装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の内燃機関の制御装置において、
前記第2付勢手段とは、前記バルブギヤまたは前記バルブに対して、前記バルブを前記中立位置に戻す方向に荷重を与えるコイル状の第2スプリングのことであることを特徴とする内燃機関の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−44309(P2013−44309A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184312(P2011−184312)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】