説明

内燃機関の始動制御装置

【課題】 自動車などの始動時に画一的にアルコール検査を義務付けるのではなく、運転停止後の経過時間を考慮してアルコール検査の要否を決定することができる始動制御装置を提供する。
【解決手段】 運転手による検査動作に基づいて呼気中のアルコール濃度を検出するアルコール検出部7と、検査動作の有無に拘わらず自動車を始動可能に維持する許容時間Tmを設定する時間設定部4と、自動車の動作状態を検出する運転検出部12と、自動車の始動動作を禁止又は許可する始動制御部10,11と、装置各部を制御するワンチップマイコン9とを備える。自動車が運転状態から停止状態に変化すると、停止状態の開始からの経過時間を計測する計測処理ST10〜ST12と、経過時間が許容時間Tmを超えると、始動制御部10,11を制御して自動車の始動動作を禁止状態に設定する禁止処理ST2とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の始動制御装置に関し、特に、タクシー、バス、トラックなどの営業車両における飲酒運転を防止する始動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗客を運搬するタクシーや観光バス、或いは昼夜を通して運転される長距離トラックなどでは、自動車事故の未然防止が極めて重要であり、万が一にも飲酒運転や酒気帯び運転があってはならない。そのため、運行管理者には、社員の酒気帯び運転を防止する人事管理上の厳しい責任が課されている。そして、かかる飲酒運転を未然防止する有効な装置として、本出願人は、既に、飲酒運転防止装置を提案している(特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−96663号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この発明は、アルコール検査によって異常が検出されると自動車の始動を禁止するものであり、既存の自動車にも簡単に搭載できる点で優れている。
【0004】
しかしながら、如何にプロのドライバーとは言え、運転途中に誤ってエンストを起こしてしまうこともあり、かかる場合にまでアルコール検査を義務付けるのは妥当でない。また、トラックにおける荷物や積み下ろしや、観光バスの短時間のトイレ休憩などにおいて、画一的にアルコール検査を義務付けたのでは、運行能率は阻害されて妥当性を欠く。しかも、画一的に行われるアルコール検査を回避するには、自動車の停止状態でもアイドリング状態を続けるしかないため、燃料の無駄遣いになるだけなく、環境汚染の問題を更に悪化させることになりかねない。
【0005】
そもそも、営業運転では飲酒運転など通常あり得ないのであるから、自動車始動時に、画一的にアルコール検査を義務付ける必要は必ずしもなく、運転停止後の経過時間を考慮してアルコール検査の要否を決定しても問題がないと考えられる。また、このアルコール検査を免除する経過時間についても、各業務の実情に合わせて運行管理者が適宜に設定できる構成が望まれる。
【0006】
この発明は、これらの着想に基づいてなされたものであって、自動車などの始動時に画一的にアルコール検査を義務付けるのではなく、運転停止後の経過時間を考慮してアルコール検査の要否を決定することができる始動制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、被験者による検査動作に基づいて呼気中のアルコール濃度を検出するアルコール検出部と、前記検査動作の有無に拘わらず内燃機関を始動可能に維持する許容時間を設定する時間設定部と、内燃機関の動作状態を検出する運転検出部と、内燃機関の始動動作を禁止又は許可する始動制御部と、装置各部を制御する中央制御部とを備えると共に、内燃機関が運転状態から停止状態に変化すると、前記停止状態の開始からの経過時間を計測する計測手段と、前記経過時間が前記許容時間を超えると、前記始動制御部を制御して内燃機関の始動動作を禁止状態に設定する禁止手段とを設けたことを特徴とする。
【0008】
本発明は、好ましくは、前記計測手段の動作開始に対応するか、或いは動作開始に先立って、前記始動制御部を制御して内燃機関の始動動作を許可状態に設定する許可手段を設けている。また、前記禁止手段は、前記経過時間が前記許容時間を超えるか、或いは、前記運転検出部からの信号に基づいて内燃機関の再始動を把握すると、前記始動制御部を制御して内燃機関の始動動作を禁止状態に設定しているのが好ましい。
【0009】
また、前記アルコール検出部は、アルコールセンサと前記アルコールセンサを加熱する加熱部とを備えて構成され、前記加熱部には、加熱電流の通電を制御する第1スイッチ回路と、加熱電流値を制限する制限抵抗を短絡させる第2スイッチ回路が設けられているのが好ましい。ここで、被験者による開始操作に応答して、前記第1スイッチ回路をON動作させて加熱電流を通電すると共に、前記第2スイッチ回路によって制限抵抗を短絡させる開始手段と、その後、短絡状態を解消して前記制限抵抗の両端電圧を監視する電圧監視手段と、前記制限抵抗の両端電圧が所定値に達すると、被験者に検査動作を開始するよう告知する告知手段とを備えるのが更に好ましい。
【0010】
前記時間設定部は、好ましくは、直流電圧を受ける単一の共通抵抗と、前記共通抵抗に直列接続される複数の分圧抵抗とを備えて、直流電圧を前記抵抗群によって分圧する分圧回路で構成され、前記分圧回路は、前記分圧抵抗それぞれに設定スイッチが直列接続されると共に、直列接続された前記分圧抵抗及び前記設定スイッチの全てが並列接続されて構成され、前記分圧回路によって分圧された電圧値を受けて、前記許容時間を設定するようにしている。ここで、前記設定スイッチは、その何れか一つのみが固定的にON状態にされるのが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
上記した本発明によれば、運転停止後の経過時間を考慮してアルコール検査の要否を決定することができる。また、このアルコール検査を免除する運転停止後の経過時間についても、運行管理者が適宜に設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。図1は、バスやトラックなどに搭載して使用する始動制御装置EQUの概略構成を示すブロック図である。図示の通り、この始動制御装置EQUは、運転手のアルコール濃度を計測するアルコール検出器1と、自動車の電装回路を制御する運転制御器2とが接続されて構成されている。
【0013】
アルコール検出器1は、アルコール検査の動作開始時に操作される開始回路3と、自動車の始動が無条件で許可される許容時間を設定する時間設定部4と、7セグメントLEDやその他のLEDを駆動する表示駆動部5と、ブザー音などによって検査動作を誘導する音声出力部6と、運転手の呼気中エタノール濃度を計測するアルコール濃度検出部7と、運転制御器2から受けたDC電圧を昇圧する電源部8と、装置各部の動作を制御するワンチップマイコン9とを中心に構成されている。
【0014】
開始回路3は、運転制御器2から供給される直流電圧Voutを分圧する2つの抵抗R1,R2と、2つの抵抗R1,R2に直列接続された開始スイッチSW1とで構成されている。開始スイッチSW1は、跳ね返り型のスイッチであり、抵抗R2の両端電圧は、ワンチップマイコン9のデジタル入力ポートに供給されている。なお、R2≫R1であり、この実施例では、Vout≒2.95Vである。
【0015】
時間設定部4は、5つの設定スイッチS1〜S5と、電源電圧Vccの分圧回路を構成する抵抗群R3〜R7とを中心に構成されている。分圧回路は、電源電圧Vccを受ける共通抵抗R3と、共通抵抗R3に直列接続される複数の分圧抵抗R4〜R7とを備えて構成されている。そして、分圧抵抗R4〜R7それぞれに設定スイッチS2〜S5が直列接続される一方、設定スイッチS1は、分圧抵抗R4〜R7及び設定スイッチS2〜S5の全てに並列接続されている。また、抵抗群R4〜R7及び設定スイッチS1〜S5に並列に、ノイズ吸収用のコンデンサC1が接続されている。そして、コンデンサC1の両端電圧は、ワンチップマイコン9のアナログ入力ポートに供給されている。
【0016】
この装置では、自動車の停止後、所定時間内であれば、アルコール検査を経ることなく、無条件で自動車の始動が許可されるようになっている。始動が無条件に許可される許容時間は、ユーザの希望に応じて五段階の何れかとなるが、希望する許容時間に応じて、設定スイッチS1〜S5のいずれ一つが、初期設定時に固定的にON状態に設定される。
【0017】
したがって、設定スイッチS1〜S5の何れがON状態であるかに応じて、ワンチップマイコン9の入力電圧値が相違することになる。このように、本装置では、5つの設定スイッチS1〜S5に対応して、5つのデジタル入力ポートを使用するのではなく、単一のアナログ入力ポートによって、設定スイッチS1〜S5の設定値を読んでいる。そのため、この装置EQUでは、入力ポート数の上限値などに制限されることなく、設定スイッチの個数を自由に増やすことができる。
【0018】
また、自動車を無条件に始動させる動作は、ワンチップマイコン9によってソフトウェア的に実現されるので、無条件始動の設定時間として、任意の値を選択することができる。なお、この実施例では、ON状態となる設定スイッチS1〜S5に対応して、0秒、30秒、60秒、90秒、120秒の五段階の設定時間となっている。
【0019】
アルコール濃度検出部6は、図2に示す通り、半導体ガスセンサRsとヒータコイル(ニクロム線)Lsとで構成されたアルコールセンサSenを中心に構成されている。アルコールセンサSenは、電源電圧Vccに対して、抵抗R8及び抵抗R9//R10と共にブリッジ回路を形成しており、アルコール濃度に比例した出力電圧OUTを抵抗R8の両端から出力している。
【0020】
ここで、ヒータコイルLsと抵抗R9の直列回路には、スイッチングトランジスタQ1が直列接続されており、スイッチングトランジスタQ1は、ワンチップマイコン9からの加熱信号HTに基づいてON動作している。また、抵抗R9と抵抗R10の並列回路には、スイッチングトランジスタQ2が並列接続されており、スイッチングQ2は、ワンチップマイコン9からの急加熱信号HIに基づいてON動作をして、抵抗R9//R10を短絡させている。
【0021】
開始スイッチSW1がON操作されると、ワンチップマイコン9は、先ず、トランジスタQ1とQ2を共にON状態に制御する。そのため、電源電圧Vccは、ヒータコイルLsのみに供給されることになり、ヒータコイルLsが急速に加熱される。その後、ワンチップマイコン9は、トランジスタQ2をON状態からOFF状態に戻すことによって、ヒータコイルLsへの加熱電流値を抑制する。
【0022】
この加熱電流の抑制状態において、ワンチップマイコン9は、抵抗R9//R10の両端電圧FLを読むことによって、ヒータコイルLsが所定温度に達するのを待つ。ヒータコイル(ニクロム線)Lsは、200×10−6程度の抵抗温度係数を持つので、ヒータコイルLsの温度上昇に応じて、抵抗R9//R10の両端電圧FLが変化することになり、ワンチップマイコン9は、両端電圧FLの値に基づいて加熱完了のタイミングを知ることができる。
【0023】
その後、ワンチップマイコン9は、LEDランプやブザー音によって、準備完了状態を運転手に報知するので、運転手は、アルコールセンサSenに向けて呼気を吹付けてアルコール検査を行うことになる。すると、呼気中のアルコール濃度に応じて、半導体ガスセンサRsの抵抗値が変化し、これに応じて出力電圧OUTが変化するので、ワンチップマイコン9は、所定の演算処理によってアルコール濃度を把握することができる。そして、把握したアルコール濃度は、表示駆動部5を通して7セグメントLEDなどに表示される。
【0024】
図1に戻って説明を続けると、電源部8は、PWM昇圧型のDC−DCコンバータで構成されている。そして、運転制御器2から単三電池2個分の直流電圧Vout(2.95V程度)を受けてこれを昇圧している。このDC−DCコンバータ8の出力電圧Vccは、2.2V〜6.0Vの間を0.1Vステップで設定可能であるが、この実施例では、出力電圧としてVcc=5Vに設定している。なお、昇圧された出力電圧Vccは、アルコール検出器1の電源電圧として使用されると共に、運転制御器2にも供給されて、トランジスタ回路の電源電圧となる。
【0025】
このように、実施例のアルコール検出器1は、電池の電圧に対応する電圧値Voutで動作するよう構成されている。したがって、アルコール検出器1に設ける電源部8に代えて、アルコール検出器1に電池を内蔵させれば、運転制御器2からの直流電圧Voutの供給を省略することもできる。但し、この場合には、運転制御器2の降圧回路13において、二つの直流電圧値(Vout,Vcc)を発生させるのが好ましい。もっとも、運転制御器2を、単一の電圧値Vccで動作させるよう構成することも可能である。
【0026】
先に説明した通り、ワンチップマイコン9は、開始スイッチSW1からの動作開始デジタル信号、設定時間を特定する時間設定部4からのアナログ信号、及び、アルコール濃度検出部7からのアナログ信号OUT,FLを受けている。また、これに加えて、ワンチップマイコン9は、運転制御器2からエンジン信号IGNを受けて、自動車が運転状態であるか、停止状態であるかを把握している。
【0027】
一方、ワンチップマイコン9は、表示駆動部5への駆動信号、音声出力回路6へのブザー信号、及び、アルコール濃度検出部7への制御信号に加えて、運転制御器2に対して、制御信号CTLを出力している。この制御信号CTLは、アルコール濃度検出部7からのアルコール濃度に基づくON/OFF信号であり、呼気中からアルコールが検出されるとLレベル(NG)の制御信号CTLが出力され、アルコールが検出されなければHレベル(OK)の制御信号CTLが出力される。
【0028】
図3は、運転制御器2の内部構成を示す回路図である。また、図3には、自動車側の電装回路として、自動車のバッテリー電圧を開閉するスタートキーと、スタートモータたる直流モータと、スタートモータを通電させる自動車リレー回路とが示されている。そして、運転制御器2は、自動車バッテリーからのバッテリー電圧、スタートキーを経由するバッテリー電圧、及びエンジンの点火信号BURNを受けている。また、運転制御部2は、自動車リレー回路に対して制御電圧を供給している。
【0029】
図3に示す通り、運転制御器2は、自動車の始動回路の動作を禁止又は許可するリレー回路10と、リレー回路10の動作を制御するリレー制御回路11と、自動車の点火信号BURNを受けて運転状態を検出する運転検出部12と、自動車のバッテリー電圧を降圧するDC−CDコンバータからなる降圧回路13とで構成されている。なお、リレー回路10とリレー制御回路11とで、自動車の始動回路を制御する始動制御部を構成している。
【0030】
リレー回路10は、自動車のスタートキーと始動回路とを接続する配線ケーブルを切断して、その切断箇所を、リレー接点によって開閉するよう構成されている。また、例外的に切断箇所を短絡できるよう、強制始動スイッチSW2が並列に接続されている。この強制始動スイッチSW2は、アルコール検出器1の故障のような異常時に、アルコール検査を経ることなく自動車を始動させるときに例外的に使用される。但し、この強制始動スイッチSW2は、これを使用すると、その痕跡が残るように、一度剥がすと二度と貼ることのできない剥離シールで覆われている。
【0031】
リレー制御回路11は、差動アンプU2と4つの抵抗R15〜R18とで構成される差動増幅回路と、スイッチングトランジスタQ4とを中心に構成されている。そして、アルコール検出器1からの制御信号CTLがHレベル(OKレベル)であると、差動アンプU2の出力がHレベルになることによって、スイッチングトランジスタQ4がON状態となる。
【0032】
その結果、リレーRLYが通電状態となるので、リレー接点がON側に切り替り、自動車のスタートキーと始動回路とが直結状態となる。したがって、この状態では、運転手のスタートキー操作に基づいて、自動車を自由にスタートさせることが可能となる。なお、この始動可能状態は、発光ダイオードD1の点灯によって運転手に報知される。
【0033】
一方、アルコール検出器1からの制御信号CTLがLレベル(NGレベル)であると、アンプU1の出力がLレベルになることによって、スイッチングトランジスタQ4がOFF状態となる。すると、リレーRLYは、引き続き非通電状態を維持するので、リレー接点がOFF側に倒れたままとなり、自動車のスタートキーと始動回路とが切断状態となる。したがって、この状態では、運転手がスタートキーを操作しても自動車を始動させることができず、酒気帯び運転などの発生が未然に防止される。
【0034】
運転検出部12は、アンプU1と抵抗R11〜R13による点火検出回路と、アンプU1の出力でON/OFF動作するスイッチングトランジスタQ3とで構成されている。そして、スイッチングトランジスタQ3が出力するエンジン信号IGNはアルコール検出器1のワンチップマイコン9の伝送されている。
【0035】
自動車が運転状態の場合には、エンジンの点火プラグに対して点火信号BURNが供給されるので、この点火信号BURNを受けることによって、自動車が運転状態を把握することができる。そのため、この装置EQUでは、点火信号BURNに基づくON/OFF信号であるエンジン信号IGNを、ワンチップマイコン9に供給することで、自動車の運転/停止状態を把握するようにしている。
【0036】
以上、図1〜図3に基づいて実施例に係る始動制御装置EQUの回路構成を説明したので、次に、この装置EQUの動作内容を説明する。図4は、ワンチップマイコン9の処理内容を示すフローチャートである。
【0037】
図示の通り、ワンチップマイコン9は、初期動作としてタイマ上限値Tmを取得する(ST1)。具体的には、時間設定部4の出力電圧を、アナログ入力ポートの入力値から把握して、どの設定スイッチS1〜S5がON状態であるかを把握する。例えば、設定スイッチS1がON状態であれば、タイマ上限値Tm=0であって、自動車の無条件始動が許可される許容時間がゼロとなる。また、設定スイッチS2がON状態であれば、例えば、タイマ上限値Tm=30秒となって、自動車の無条件始動が許可される許容時間が30秒となる。
【0038】
以上の初期動作が終わると、ワンチップマイコン9は、制御信号CTLをLレベルに設定して、アルコール検査時に運転手が押圧する開始スイッチSW1がON状態になるのを待つ(ST3)。そして、もし開始スイッチSW1がON状態になると、ワンチップマイコン9は検査動作を実行する(ST4)。
【0039】
具体的には、ヒータコイルLsを通電して加熱動作を開始する。そして、ヒータコイルLsが所定温度に達したことを、抵抗R9//R10の両端電圧FLによって確認すると、音声出力部6や表示駆動部5を介して、運転手に準備完了状態を報知する。また、これに呼応して運転手が半導体ガスセンサRsに呼気を吹き込むと、アルコール濃度を算出して、これを表示する。
【0040】
また、アルコール濃度が正常範囲か否かを判定して(ST5)、もし正常値であれば、制御信号CTLをHレベルに変更する(ST6)。その結果、リレー制御回路11の出力レベルがLレベルからHレベルに変化して、リレーRLYの開閉接点がOFF位置からON位置に変化する。その結果、運転手がスタートキーを操作すると自動車の始動回路が機能してエンジンが動作を開始する。
【0041】
一方、アルコール濃度が異常値であれば(ST5がNG)、制御信号CTLはLレベルのままであり、リレーRLYの開閉接点はOFF位置のままである。したがって、再度、開始スイッチSW1を押してアルコール検査を受け直すことしかできない。
【0042】
但し、通常は、運転手からアルコールが検出されることはないので、ステップST6に移行してエンジンの動作が開始される。そこで、ワンチップマイコン9は、運転検出部12を介して入力される点火信号BURNを判定して(ST7)、エンジンの始動状態を把握する。
【0043】
そして、点火信号BURNが確認されると、制御信号CTLをLレベルに戻して、リレーRLYの開閉接点をOFF位置に戻す(ST8)。なお、エンジンは既に始動しているので、ステップST8の動作は自動車に何らの影響を与えない。
【0044】
以上の処理が終わると、ワンチップマイコン9は、エンジンの動作が停止されるのを待つ(ST9)。具体的には、点火信号BURNが自動車から出力されなくなるのを待つ。そして、エンジンが停止したら、制御信号CTLをHレベルに変化させて、タイマ変数Tをリセットすると共に、リレーRLYの開閉接点をON位置に変化させる(ST10)。これは、単なるエンストであるのに、再度のエンジン始動時にアルコール検査を義務付けたのでは、再始動に時間がかかりすぎ危険だからである。また、ちょっとした停車時にまで、その後にアルコール検査を義務付けると、運送業務や輸送業務に大きな支障をきたすからである。
【0045】
ステップST10の処理によって、エンジン停止時にタイマ変数Tをリセットした後は、ソフトウェアによる1秒間の時間消費の後に、タイマ変数Tをデクリメント(−1)する(ST12)。そして、点火信号BURNが検知されるか否かを判定して(ST13)、点火信号BURNが検出されない場合には、タイマ変数Tがタイマ上限値Tmを超えるか否かを判定する(ST14)。なお、タイマ上限値Tmは、無条件始動を許可する許容時間を指定している。
【0046】
ステップST11〜ST14の処理時には、リレーRLYの接点はON位置となっている(ST10参照)。そのため、アルコール検査を経ることなく、自由にエンジンを再始動させることが可能となる。そして、もしエンジンが再始動されると、このことは、点火信号BURNによって確認できるので、このような場合には、ステップST13の判定の後にステップST8に移行する。そして、リレーRLYの接点はOFF位置に戻される。
【0047】
ステップST11〜ST14の処理を経て、タイマ変数Tが上限値Tmを超えた場合も同様であり、ステップST14の判定の後にステップST2に移行して、リレーRLYの接点はOFF位置に戻される。つまり、エンジンの停止時間が上限値Tmを超えると、リレーRLYの開閉接点がOFF位置に戻るので、その後は、アルコール検査を経ない限りエンジンを始動することはできない。したがって、食事休憩などに際に、万一、ビールなどを飲むと、その後の運転が禁止されて酒気帯び運転などが未然に防止される。
【0048】
以上本発明の一実施例について具体的に説明したが、具体的な記載内容は何ら本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨を逸脱することなく各種の変更が可能である。特に、図4のフローチャートにおいて、点火信号IGNが消滅すると(ST9)、タイマ変数Tをゼロクリアすると同時に、リレーRLYの接点をON側に切替えているが、このような動作に何ら限定されず、点火信号IGNの消滅時にリレーRLYの接点がON側に位置すれば足りる。
【0049】
具体的には、例えば、図5に示すように、ステップST8の処理を省略することができ、図5のような処理手順が最も簡易的である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】実施例に係る始動制御装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】アルコール濃度検出部を示す回路図である。
【図3】運転制御器を示す回路図である。
【図4】図1の始動制御装置の動作を説明するフローチャートである。
【図5】図1の始動制御装置の動作を説明する別のフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
7 アルコール検出部
4 時間設定部
12 運転検出部
10,11 始動制御部
9 中央制御部(ワンチップマイコン)
ST10〜ST12 計測手段
ST2 禁止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者による検査動作に基づいて呼気中のアルコール濃度を検出するアルコール検出部と、前記検査動作の有無に拘わらず内燃機関を始動可能に維持する許容時間を設定する時間設定部と、内燃機関の動作状態を検出する運転検出部と、内燃機関の始動動作を禁止又は許可する始動制御部と、装置各部を制御する中央制御部とを備えると共に、
内燃機関が運転状態から停止状態に変化すると、前記停止状態の開始からの経過時間を計測する計測手段と、
前記経過時間が前記許容時間を超えると、前記始動制御部を制御して内燃機関の始動動作を禁止状態に設定する禁止手段とを設けたことを特徴とする始動制御装置。
【請求項2】
前記計測手段の動作開始に対応するか、或いは動作開始に先立って、前記始動制御部を制御して内燃機関の始動動作を許可状態に設定する許可手段を設けた請求項1に記載の始動制御装置。
【請求項3】
前記禁止手段は、前記経過時間が前記許容時間を超えるか、或いは、前記運転検出部からの信号に基づいて内燃機関の再始動を把握すると、前記始動制御部を制御して内燃機関の始動動作を禁止状態に設定している請求項1に記載の始動制御装置。
【請求項4】
前記アルコール検出部は、アルコールセンサと前記アルコールセンサを加熱する加熱部とを備えて構成され、
前記加熱部には、加熱電流の通電を制御する第1スイッチ回路と、加熱電流値を制限する制限抵抗を短絡させる第2スイッチ回路が設けられている請求項1に記載の始動制御装置。
【請求項5】
被験者による開始操作に応答して、前記第1スイッチ回路をON動作させて加熱電流を通電すると共に、前記第2スイッチ回路によって制限抵抗を短絡させる開始手段と、
その後、短絡状態を解消して前記制限抵抗の両端電圧を監視する電圧監視手段と、
前記制限抵抗の両端電圧が所定値に達すると、被験者に検査動作を開始するよう告知する告知手段とを備える請求項4に記載の始動制御装置。
【請求項6】
前記時間設定部は、直流電圧を受ける単一の共通抵抗と、前記共通抵抗に直列接続される複数の分圧抵抗とを備えて、直流電圧を前記抵抗群によって分圧する分圧回路で構成され、
前記分圧回路は、前記分圧抵抗それぞれに設定スイッチが直列接続されると共に、直列接続された前記分圧抵抗及び前記設定スイッチの全てが並列接続されて構成され、
前記分圧回路によって分圧された電圧値を受けて、前記許容時間を設定するようにしている請求項1に記載の始動制御装置。
【請求項7】
前記設定スイッチは、その何れか一つのみが固定的にON状態にされる請求項6に記載の始動制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−38872(P2007−38872A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225681(P2005−225681)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(396005575)株式会社東洋マーク製作所 (4)
【Fターム(参考)】