説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】この発明は、活性酸素の存在により高い性能を発揮するメイン触媒に対して、他の触媒と活性酸素供給装置とを適切なレイアウトで併用することを目的とする。
【解決手段】内燃機関10の排気通路14にはAg触媒32を設ける。また、Ag触媒32の下流側には三元触媒34を設け、Ag触媒32の上流側にはオゾン発生器36を設ける。そして、冷間始動時等には、Ag触媒32にオゾンを供給し、Agとオゾンとの反応により排気ガス中のCOを低温状態から浄化する。また、Agとオゾンとが反応するときに生じる反応熱により、下流側の三元触媒34を早期に活性化させる。これにより、低温でも高い浄化能力を発揮することができ、始動時等の排気エミッションを改善することができる。また、上流側のAg触媒32でオゾンを消費することにより、下流側の三元触媒34をオゾンから保護することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に好適に用いられる排気浄化装置に関し、特に、活性酸素を利用する構成とした内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、例えば特許文献1(特開2007−152336号公報)に開示されているように、Agを触媒成分として含むAg触媒の直前にオゾンを添加する構成とした内燃機関の排気浄化装置が知られている。この排気浄化装置によれば、オゾンによりAg触媒の酸化能力を高め、排気ガス中に含まれるCOの浄化を促進することができる。
【0003】
この場合、従来技術では、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)の下流側にAg触媒を配置し、オゾンはDPFに供給する。これにより、従来技術では、DPFに捕捉された排気ガス中の粒子状物質(PM)をオゾンにより燃焼させ、その後にAg触媒を用いて排気ガスを浄化する構成としている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−152336号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した従来技術では、Ag触媒だけでなく、例えばNOx触媒、三元触媒等の触媒をAg触媒と併用したい場合がある。しかしながら、これらの触媒は、Pt、Pd等の貴金属を触媒成分として含むものが一般的である。このような貴金属は、オゾンと接触することにより酸化されると、触媒としての活性が低下し易い。
【0006】
また、これらの貴金属と接触したオゾンは分解されるので、本来の目的と異なる反応でオゾンが消費されることになる。さらに、DPFを構成する基材(母材)は、オゾン分解性を有するセラミックス材料等により形成されているので、オゾンは、この基材と接触することによっても分解、消費される。このため、従来技術では、Ag触媒とオゾンとを備えた排気浄化装置に対して、他の触媒またはDPFからなる浄化材を併用するときに、各部品のレイアウトを適切に設定するのが難しいという問題がある。
【0007】
一方、上述したNOx触媒、三元触媒等は比較的高い温度になってから活性化する。従って、単にこれらの触媒とAg触媒とを併用したとしても、低温領域では、排気ガス中のHCやNOxを効率よく浄化することができないという問題もある。
【0008】
上述した各種の問題は、Agだけに限らず、活性酸素と(オゾン)の組合わせで相乗効果を発揮する触媒成分、即ち、活性酸素の存在下で酸化されつつ、触媒活性温度以下のときに酸素を遊離させることが可能な各種の触媒成分(例えば、Au等)にも当てはまるものである。
【0009】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、本発明の目的は、活性酸素の存在により高い性能を発揮するメイン触媒に対して、他の浄化材と活性酸素供給装置とを併用するときに、全体のレイアウトを適切に設定することができ、排気ガス中の未浄化成分を効率よく浄化することが可能な内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、内燃機関の排気ガスが流通する排気通路に設けられ、活性酸素により酸化された状態で触媒活性温度以下のときに酸素が遊離可能となる触媒成分を含むメイン触媒と、
前記メイン触媒に対して排気ガスの流れ方向の下流側に配置され、排気ガスの未浄化成分を浄化する触媒と排気ガス中の粒子状物質を捕集するPMフィルタとの何れかにより構成された下流側浄化材と、
前記メイン触媒に活性酸素を供給する活性酸素供給装置と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
第2の発明によると、第1の発明において、
前記メイン触媒は、少なくともAgまたはAuを前記触媒成分として含む構成としている。
【0012】
第3の発明によると、第1または第2の発明において、
前記下流側浄化材は触媒であり、該触媒は、前記メイン触媒と前記活性酸素との反応により生じる熱を伝達可能な位置に設ける構成としている。
【0013】
第4の発明は、第1乃至第3の発明の何れかにおいて、
前記メイン触媒と前記下流側浄化材とを一体化した複合触媒を備え、
前記下流側浄化材は、前記複合触媒上で前記メイン触媒の下流側に配置する構成としている。
【0014】
第5の発明によると、第4の発明において、
前記複合触媒は、
排気ガスの流れ方向に延びた通路として形成され、上流側が排気ガスの流入口として開口すると共に下流側が閉塞された上流ガス通路と、
前記上流ガス通路と通気性の隔壁を挟んで並列に延びた通路として形成され、上流側が閉塞されると共に下流側が排気ガスの流出口として開口した下流ガス通路と、を備え、
前記メイン触媒は前記上流ガス通路に設け、前記下流側浄化材は前記下流ガス通路に設ける構成としている。
【0015】
第6の発明によると、第4の発明において、
前記複合触媒は、排気ガスの流れ方向に延びると共に流れ方向の両側が開口した複数のガス通路を備え、
前記メイン触媒は前記ガス通路の上流部位に設け、前記下流側浄化材は前記ガス通路の下流部位に設ける構成としている。
【0016】
第7の発明によると、第1乃至第6の発明の何れかにおいて、
前記活性酸素供給装置は、前記活性酸素としてオゾンを供給する構成としている。
【0017】
第8の発明は、内燃機関の排気ガスが流通する排気通路に設けられ、活性酸素に対して分解性を有する材料により形成された基材と、
前記基材のうち排気ガスの流れ方向の上流側となる部位にのみ設けられ、活性酸素により酸化された状態で触媒活性温度以下のときに酸素が遊離可能となる触媒成分を含むメイン触媒と、
前記メイン触媒に活性酸素を供給する活性酸素供給装置と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1の発明によれば、メイン触媒と活性酸素が共存する状態では、メイン触媒のCO酸化活性が低温から発現する。従って、例えば下流側浄化材が触媒である場合において、内燃機関の冷間始動時等に活性酸素供給装置を作動させると、この触媒が不活性状態であっても、メイン触媒によりCOを効率よく浄化することができ、排気エミッションを改善することができる。また、メイン触媒が活性酸素と反応するときには、反応熱が生じる。この反応熱を、排気ガスの流れや固体熱伝導により下流側の触媒に効率よく伝達することができる。
【0019】
従って、メイン触媒に活性酸素を供給すれば、CO浄化率を高められるだけでなく、このときの反応熱を利用して下流側の触媒を効率よく加熱することができる。これにより、冷間始動時でも、下流側の触媒を早期に活性化させることができる。つまり、低温でも高い浄化能力を発揮することができ、メイン触媒と下流側の触媒により始動時の排気エミッションを確実に改善することができる。
【0020】
また、メイン触媒は、排気ガス中の活性酸素が下流側の触媒に到達する前に、活性酸素を消費することができる。このため、活性酸素供給装置と下流側の触媒とを併用するシステムであっても、下流側の触媒と接触する活性酸素の量を十分に抑制することができ、当該触媒を活性酸素から保護することができる。従って、下流側の触媒に含まれる金属が活性酸素により酸化されるのを防止でき、活性酸素の使用中でも、触媒を高い活性状態に保持することができる。
【0021】
一方、下流側浄化材がDPF等のPMフィルタである場合には、活性酸素を、PMフィルタの基材よりも先にメイン触媒に接触させることができる。即ち、活性酸素が基材との接触により分解される前に、これをメイン触媒に効率よく供給することができる。従って、メイン触媒とPMフィルタとを組合わせる場合において、メイン触媒に対する活性酸素の供給量が基材の影響で減少するのを回避し、活性酸素を有効に活用することができる。
【0022】
第2の発明によれば、メイン触媒として、銀Ag及び/又は金Auを含む触媒を用いることができる。これらの触媒成分は、活性酸素の存在下で酸化されつつ、触媒活性温度以下のときに酸素を遊離させることができる。そして、遊離した酸素を排気ガス中の未浄化成分(CO等)と反応させることができる。これにより、低温でも未浄化成分を効率よく酸化し、排気ガスの浄化を行うことができる。
【0023】
第3の発明によれば、下流側の触媒を、メイン触媒と活性酸素との反応熱が伝達可能な位置に設けることができる。これにより、メイン触媒の位置で発生する反応熱を下流側の触媒に安定的に伝達することができ、当該触媒を効率よく加熱することができる。
【0024】
第4の発明によれば、メイン触媒と下流側の触媒とを一体化して複合触媒を構成することができる。これにより、メイン触媒と下流側の触媒とを容易に近接させることができ、メイン触媒から下流側の触媒への熱伝達性を確実に向上させることができる。また、これらの触媒をコンパクトに組立てることができ、小型で高性能な複合触媒を実現することができる。
【0025】
第5の発明によれば、所謂ウォールフロー型の複合触媒を構成することができる。これにより、排気ガスは、上流ガス通路から下流ガス通路に流通しつつ、メイン触媒と下流側の触媒に順次接触することができる。しかも、この構造によれば、薄肉な隔壁を挟んでメイン触媒と下流側の触媒とを隣接させることができる。従って、2つの触媒を可能な限り近接させることができ、メイン触媒から下流側の触媒への熱伝達性を大幅に向上させることができる。
【0026】
第6の発明によれば、ガス通路の上流部位にメイン触媒を設け、ガス通路の下流部位に下流側の触媒を設けることができるので、第4の発明とほぼ同様の作用効果を得ることができる。また、ガス通路の両側が開口しているので、複合触媒の通路構造を簡略化することができ、また複合触媒の通気抵抗を減少させることができる。
【0027】
第7の発明によれば、活性酸素としてオゾンを用いることにより、上記第1乃至第6のの発明の効果をより顕著に発揮させることができる。
【0028】
第8の発明によれば、例えばセラミックス材料等により形成された基材は、活性酸素と接触することによりこれを分解する性質を有している。この場合、メイン触媒を基材の上流側部位にのみ配置すれば、活性酸素を、基材よりも先にメイン触媒に接触させることができる。即ち、活性酸素が基材との接触により分解される前に、これをメイン触媒に効率よく供給することができ、活性酸素を有効に活用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
実施の形態1.
[実施の形態1の構成]
以下、図1乃至図5を参照しつつ、本発明の実施の形態1について説明する。まず、図1は、実施の形態1のシステム構成を説明するための全体構成図を示している。図1に示すように、本実施の形態のシステムは、例えばディーゼルエンジンからなる内燃機関10を備えている。内燃機関10は、気筒内に吸入空気を吸込む吸気通路12と、気筒から排出された排気ガスが流れる排気通路14とを備えている。
【0030】
排気通路14には、後述のAg触媒32と三元触媒34とを一体化した複合触媒16が設けられている。図2は複合触媒16を拡大した拡大断面図を示し、図3は、図2中の一部分を更に拡大した部分拡大断面図を示している。これらの図に示すように、複合触媒16は、多孔質状のセラミックス材料やメタル材料からなるハニカム構造体18を備えている。このセラミックス材料としては、例えばコージェライト、シリカ、アルミナ、SiC、Al23−TiO2、Fe、Cr等が用いられる。
【0031】
また、ハニカム構造体18は、ウォールフロー型と呼ばれる構造を有し、排気ガスの流れ方向に沿って互いに並列に延びた複数のガス通路を備えている。これらのガス通路のうち一部の通路は、複数の上流ガス通路20となり、残りの通路は複数の下流ガス通路22となっている。この場合、上流ガス通路20は、上流側の端部が開口しており、この開口部は排気ガスの流入口24となっている。また、上流ガス通路20の下流側端部は、詰栓26により閉塞されている。
【0032】
一方、下流ガス通路22は、上流側の端部が他の詰栓26により閉塞されている。また、下流ガス通路22の下流側端部は開口しており、この開口部は排気ガスの流出口28となっている。さらに、上流ガス通路20と下流ガス通路22とは、ハニカム構造体18の一部からなる通気性の隔壁30を挟んで互いに隣接している。このため、ハニカム構造体18を排気通路14に配置した状態において、排気ガスは、流入口24から上流ガス通路20内に流入し、隔壁30を通過して下流ガス通路22に流入した後に、流出口28から外部に流出する。
【0033】
このようなハニカム構造体18に対して、本実施の形態では、上流ガス通路20にメイン触媒としてのAg触媒32を設け、下流ガス通路22に下流側浄化材としての三元触媒34を設けている。そして、Ag触媒32には、後述のオゾン発生器36によりオゾンを供給する構成としている。この構成によれば、排気ガス中のCOを効率的に浄化しつつ、三元触媒34を加熱して触媒活性を高めることができる。以下、これらの構成と作用効果について説明する。
【0034】
まず、Ag触媒32について説明すると、Ag触媒32は、銀(Ag)を触媒成分として含む触媒の総称であり、本実施の形態では、その一例として、アルミナに銀を担持させたもの等を用いている。そして、Ag触媒32は、図3に示すように、コーティング等の手段を用いて上流ガス通路20の壁面(隔壁30)に固着されている。
【0035】
なお、本実施の形態では、メイン触媒の一例としてAg触媒32を例に挙げたが、本発明はこれに限らず、例えばAu(金)を触媒成分として含むAu触媒を用いてもよい。また、本発明の触媒は、活性酸素の存在下で酸化されつつ、触媒活性温度以下のときに酸素を遊離させることが可能であれば、Ag,Au以外の触媒成分を含むものでもよい。
【0036】
上述のような触媒成分を用いることにより、低温時における触媒の浄化効率を高めることができる。即ち、低温時には、触媒成分にオゾンを供給すれば、触媒成分から酸素を遊離させることができ、この酸素を排気ガス中の未浄化成分(CO等)と反応させることができる。これにより、低温でも未浄化成分を効率よく酸化することができ、排気ガスの浄化を行うことができる。
【0037】
一方、三元触媒34は、一般的に知られているように、例えば白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の金属を触媒成分として含んでいる。また、三元触媒34は、図3に示すように、コーティング等の手段により下流ガス通路22の壁面(隔壁30)に固着されている。つまり、三元触媒34は、Ag触媒32の下流側で、かつAg触媒32と同一の基材(隔壁30)上に配置されている。
【0038】
そして、三元触媒34は、300℃程度の温度以上で活性化し、排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、酸化窒素(NOx)等の未浄化成分を浄化する。なお、本実施の形態では、下流側浄化材を構成する触媒として三元触媒34を用いたが、本発明はこれに限らず、NOx触媒等を含めて各種の触媒に適用することができる。
【0039】
オゾン発生器36は、本実施の形態の活性酸素供給装置を構成しており、Ag触媒32の上流側に配置されたオゾン供給口38から排気ガス中にオゾン(O)を添加する。オゾン発生器36としては、高電圧を印加可能な放電管内に、原料となる乾燥した空気または酸素を流しつつオゾンを発生させる形態や、他の任意の形式のものを用いることができる。この場合、原料となる乾燥した空気または酸素は、排気通路14の外部から取込まれる外気等の気体である。
【0040】
オゾン発生器36の作動状態は、内燃機関10を運転制御するECU(Electronic Control Unit)40により制御される。即ち、ECU40は、例えば内燃機関の冷間始動時などにオゾン発生器36を作動させる。これにより、排気ガスが複合触媒16の流入口24から上流ガス通路20内に流入するときには、オゾン供給口38から排気ガス中にオゾンが添加される。そして、これらの排気ガスとオゾンは、上流ガス通路20内でAg触媒32と接触する。
【0041】
このように、Ag触媒32とオゾンが共存する状態では、Ag触媒32のCO酸化活性が低温から発現する。図4は、Ag,Pt,Pdをそれぞれ含む3種類の触媒について、触媒の温度とCO浄化率との関係を示している。この図に示すように、Ag触媒は、オゾンが共存していると、他の金属(Pt,Pd等)を含む触媒と比較して、低温でのCO浄化率が高くなる。
【0042】
具体的には、例えば三元触媒34が不活性状態である100℃程度の低温でも、Ag触媒32とオゾンにより排気ガス中のCOを効率よく浄化することができる。この現象は、触媒32中のAgがオゾンと反応することにより、強力な酸化剤であるAg2OまたはAgOに変化し、これらの酸化剤によりCOがCO2に酸化されるものと考えられる。
【0043】
従って、冷間始動時等にオゾン発生器36を作動させると、上記特性をもつAg触媒32とオゾンにより排気ガス中のCOを効率よく酸化することができる。これにより、三元触媒34が不活性状態であっても、COを安定的に浄化することができ、特に排気ガス中のCO濃度が高い場合には、排気エミッションを大幅に改善することができる。
【0044】
また、Agがオゾンと反応するときには、反応熱が生じる。このため、Ag触媒32の位置を通過した排気ガスは前記反応熱により暖められ、オゾンが存在しない場合よりも高い温度となっている。この排気ガスは、上流ガス通路20が下流側で閉塞されているために、隔壁30を通過して下流ガス通路22に流入し、三元触媒34の位置に達する。そして、この排気ガスは、三元触媒34を加熱しつつ、流出口28から外部に流出する。
【0045】
ここで、図5は、Ag,Pt,Pdをそれぞれ含む3種類の触媒について、触媒に流入する排気ガスの温度と、触媒温度(床温)との関係を示すものである。この図に示すように、オゾンが存在しない状態でのAg触媒や他の触媒と比較して、オゾン共存下でのAg触媒32は、温度が上昇していることが判る。即ち、Ag触媒32は、オゾンと反応することにより反応熱を発生する。
【0046】
そこで、本実施の形態では、Ag触媒32で発生する反応熱が伝達可能な位置に三元触媒34を配置している。即ち、三元触媒34は、Ag触媒32の下流側で、かつAg触媒32と同一の基材(隔壁30)上に配置されている。この配置によれば、Agがオゾンと反応することにより生じる反応熱を、排気ガスの流れによって三元触媒34に効率よく伝達することができる。また、Ag触媒32で生じた反応熱は、隔壁30を介しても三元触媒34に伝導(固体熱伝導)するので、反応熱をより効率的に伝達することができる。
【0047】
従って、三元触媒34の上流側に配置したAg触媒32にオゾンを供給すれば、Ag触媒32のCO浄化率を高められるだけでなく、このときの反応熱を利用して三元触媒34を効率よく加熱することができる。これにより、冷間始動時でも、三元触媒34を早期に活性化させることができ、HC、CO、NOx等の浄化率を短時間で高めることができる。即ち、複合触媒16によれば、低温でも高い浄化能力を発揮することができ、始動時の排気エミッションを確実に改善することができる。
【0048】
また、Ag触媒32は、三元触媒34の上流側でオゾンと反応するので、排気ガス中のオゾンは三元触媒34の位置に到達する前に消費される。このため、オゾン発生器36と三元触媒34とを併用するシステムであっても、三元触媒34と接触するオゾンの量を十分に抑制することができ、三元触媒34をオゾンから保護することができる。従って、三元触媒に含まれるPt、Pd、Rh等の金属がオゾンにより酸化されるのを防止でき、オゾンの使用中でも、三元触媒34を高い活性状態に保持することができる。
【0049】
さらに、本実施の形態では、Ag触媒32と三元触媒34とをハニカム構造体18上で一体化し、ウォールフロー型の複合触媒16を構成している。これにより、排気ガスは、上流ガス通路20から下流ガス通路22に流通しつつ、Ag触媒32と下流側触媒34に順次接触することができる。
【0050】
しかも、この構造によれば、薄肉な隔壁30を挟んでAg触媒32と三元触媒34とを隣接させることができる。従って、2つの触媒32,34を可能な限り近接させることができ、Ag触媒32から三元触媒34への熱伝達性を大幅に向上させることができる。また、2種類の触媒32,34をハニカム構造体18上にコンパクトに配置することができ、小型で高性能な複合触媒16を実現することができる。
【0051】
実施の形態2.
次に、図6及び図7を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1とほぼ同様のシステム構成(図1)を採用している。しかし、本実施の形態は、複合触媒の構造が実施の形態1と異なるものである。なお、本実施の形態では、前記実施の形態と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0052】
[実施の形態2の特徴]
本実施の形態では、実施の形態1とほぼ同様に、多孔質状のセラミックス材料からなる複合触媒50を採用している。図6は、本実施の形態による複合触媒を拡大した拡大断面図を示し、図7は、図6中の一部分を更に拡大した部分拡大断面図を示している。
【0053】
これらの図に示すように、複合触媒50はハニカム構造体52を備えており、このハニカム構造体52には、排気ガスの流れ方向に沿って互いに並列に延びた複数のガス通路54が設けられている。しかし、各ガス通路54は、排気ガスの流れ方向の両側が開口しており、これらの開口部はそれぞれ排気ガスの流入口56、流出口58となっている。
【0054】
そして、各ガス通路54の上流側部位にはAg触媒32が設けられ、各ガス通路54の下流側部位には三元触媒34が設けられている。これらの触媒32,34は、実施の形態1と同様の方法によりガス通路54の周壁(ハニカム構造体52)に固着されている。また、上記説明における「上流側部位」とは、流入口56と流出口58の中間位置よりも流入口56寄りの部位であり、「下流側部位」とは、前記中間位置よりも流出口58寄りの部位であるものとする。
【0055】
このように構成される本実施の形態でも、前記実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。特に、本実施の形態では、ガス通路54の両側が開口しているので、ハニカム構造体52の通路構造を簡略化することができ、また複合触媒50の通気抵抗を減少させることができる。
【0056】
実施の形態3.
次に、図8乃至図10を参照して、本発明の実施の形態3について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1とほぼ同様のシステム構成(図1)を採用している。しかし、本実施の形態は、下流側浄化材としてPMフィルタ(DPF)を用いており、この点で実施の形態1と異なるものである。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0057】
[実施の形態3の特徴]
図8は、本発明の実施の形態3において、複合触媒を示す拡大断面図である。また、図9は、図8中の一部分を更に拡大して示す部分拡大断面図である。これらの図に示すように、複合触媒60は、ウォールフロー型のDPF62と、後述のAg触媒76とを一体化することにより構成されている。また、DPF62は、実施の形態1のハニカム構造体18とほぼ同様に、多孔質状のセラミックス材料等により形成されている。このセラミックス材料としては、例えばコージェライト、SiC、アルミナ(Al23)、TiO2、Fe,Cr、シリカ、セリア・ジルコニア(CeO2−ZrO2)等が用いられる。そして、DPF62は、上流ガス通路64、下流ガス通路66、流入口68、詰栓70、流出口72、隔壁74等を備えている。
【0058】
このように構成されるDPF62において、排気ガスは、流入口68から上流ガス通路64内に流入し、隔壁74を通過して下流ガス通路66に流入した後に、流出口72から外部に流出する。このとき、排気ガス中の粒子状物質(PM)を隔壁74の孔内に捕集される。捕集したPMは、後述のようにオゾンを用いて酸化することができる。従って、DPF62によれば、排気ガス中のPMを浄化することができる。
【0059】
一方、Ag触媒76は、実施の形態1と同様の触媒により構成されており、図9に示すように、DPF62の上流ガス通路64にのみ設けられている。即ち、DPF62は、Ag触媒76の下流側に配置されている。このため、複合触媒60の上流側にオゾンが供給されると、このオゾンは、最初にAg触媒76の位置に到達し、COの酸化処理に寄与する。そして、この処理に寄与しなかったオゾンは、DPF62の隔壁74内に流入し、捕集されていたPMを酸化する。
【0060】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、実施の形態1とほぼ同様の作用効果を得ることができる。即ち、冷間始動時のような低温状態でも、Ag触媒76によりCOを効率よく浄化することができ、排気エミッションを改善することができる。そして、特に本実施の形態では、複合触媒60としてDPF62とAg触媒76とを組合わせた上で、Ag触媒76をDPF62の上流ガス通路64にのみ配置する構成としたので、以下に述べる効果を得ることができる。
【0061】
まず、DPF62を構成するセラミックス製の基材は、オゾンと接触することによりこれを分解する性質を有している。図10は、オゾンの分解率とセラミックス材料の有無との関係を示す特性線図である。オゾンと接触させる基材(セラミックス材料)の例としては、図10(a)に示すセリア・ジルコニア(CeO2−ZrO2)と、図10(b)に示すアルミナ(Al23)を用いている。図10に示すように、オゾンが基材と接触した場合(実線)には、基材との接触がない場合(点線)と比較して分解率が上昇していることが判る。
【0062】
このような基材の性質を踏まえて、本実施の形態では、Ag触媒76の下流側にDPF62を配置する構成としている。これにより、上流側から供給されるオゾンを、DPF62の基材よりも先にAg触媒76に接触させることができる。即ち、オゾンが基材との接触により分解される前に、これをAg触媒76に効率よく供給することができる。従って、Ag触媒76とDPF62とを組合わせる場合において、Ag触媒76に対するオゾンの供給量が基材の影響で減少するのを回避し、オゾンを有効に活用することができる。
【0063】
また、本実施の形態の更なる効果としては、Ag触媒76と反応しなかったオゾンをDPF62に供給することができる。これにより、DPF62の隔壁74内に捕集されていたPMをオゾンにより酸化することができる。従って、単一のオゾン発生器36により、COの浄化処理とDPF62の再生処理とを行うことができ、オゾンを有効に活用することができる。
【0064】
実施の形態4.
次に、図11及び図12を参照して、本発明の実施の形態4について説明する。本実施の形態は、前記実施の形態1とほぼ同様のシステム構成(図1)を採用している。しかし、本実施の形態は、ストレートフロー型と呼ばれる基材の上流側部位にのみメイン触媒を配置する構成としており、この点で実施の形態1と異なるものである。なお、本実施の形態では、実施の形態1と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0065】
[実施の形態4の特徴]
図11は、本発明の実施の形態4において、触媒装置を示す拡大断面図である。また、図12は、図11中の一部分を更に拡大して示す部分拡大断面図である。これらの図に示すように、触媒装置80は、ストレートフロー型と呼ばれる形状の基材82を備えている。この場合、基材82には、複数のガス通路84が設けられており、これらのガス通路84は、排気ガスの流れ方向に沿って延びると共に、流れ方向の両側が開口している。また、基材82は、例えばセリア・ジルコニア(CeO2−ZrO2)、アルミナ(Al23)、コージェライト、シリカ等のセラミックス材料により形成されている。
【0066】
また、触媒装置80は、基材82に配置されたAg触媒86を備えている。Ag触媒86は、実施の形態1と同様の触媒により構成されており、図12に示すように、基材82のうち排気ガスの流れ方向の上流側となる部位にのみ設けられている。
【0067】
かくして、このように構成される本実施の形態でも、実施の形態3とほぼ同様の作用効果を得ることができる。即ち、本実施の形態では、Ag触媒86を、オゾン分解性を有する基材82の上流側部位にのみ配置している。従って、オゾンが基材82との接触により分解される前に、オゾンをAg触媒86に効率よく供給することができる。
【0068】
なお、前記実施の形態では、Ag触媒32と三元触媒34とを、所謂ウォールフロー型の複合触媒16として一体化する場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は、Ag触媒(メイン触媒)と下流側浄化材とを必ずしも一体化する必要はない。即ち、本発明では、例えばメイン触媒と下流側浄化材とをそれぞれ別個の浄化装置として形成し、これらの浄化装置を互いに近接させた状態で配置する構成としてもよい。この場合、浄化装置の基材(ハニカム構造体等)は、メイン触媒から下流側浄化材(触媒)への熱伝達に関与しなくなるが、この熱伝達は排気ガスによっても行われるので、前記実施の形態とほぼ同様の作用効果を得ることができる。
【0069】
また、実施の形態1では、複合触媒16(ハニカム構造体18)の隔壁30に排気ガスを流通させる構成とした。この場合、複合触媒16は、排気ガス中の粒子状物質(PM)を隔壁30により捕捉するディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)として構成してもよい。捕捉・収集したPMは、オゾンにより焼却することができる。
【0070】
また、実施の形態では、下流側浄化材を構成する触媒として三元触媒34を例に挙げて説明した。しかし、本発明における下流側の触媒はこれに限らず、例えばNOx触媒を用いてもよく、さらに他の触媒を用いる構成としてもよい。
【0071】
また、実施の形態では、Ag触媒32,76,86を用いる構成としたが、本発明の触媒は、Ag触媒に限定されるものではない。より詳しく述べると、本発明では、少なくともオゾンにより酸化された状態で、触媒活性温度以下のときに酸素を遊離させることが可能であれば(つまり、酸化された状態から酸素が遊離して元の状態に戻り易い材料であれば)、任意の触媒をメイン触媒として用いることができる。従って、本発明のメイン触媒としては、例えばAuを触媒成分として含むAu触媒を用いてもよく、更にはCu、Pt、Rh等の金属成分、金属錯体、有機触媒等を触媒成分として含む各種の触媒を広く用いることができる。
【0072】
また、実施の形態では、排気ガス中に添加する活性酸素として、オゾンを例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限らず、オゾンに代えて、他の種類の活性酸素(例えば、O-,O2-,O2-,O3-,On-等で表される酸素マイナスイオン)を排気ガス中に添加するようにしてもよい。
【0073】
また、実施の形態では、オゾン発生器36を排気ガスの流路外に設け、Ag触媒32とは別個に配置する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、オゾン発生器を排気ガスの流路中に配置したり、メイン触媒の内部に配置する構成としてもよい。そして、このような配置を採用した場合には、例えば排気ガスの流路中や浄化機器の内部で高電圧放電等によりプラズマを発生させ、これにより活性酸素(オゾン等)を生成する構成としてもよい。
【0074】
さらに、実施の形態では、ディーゼルエンジンからなる内燃機関10に適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えばガソリンエンジン等を含めて各種の内燃機関に広く適用し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施の形態1によるシステム構成を示す全体構成図である。
【図2】図1中の複合触媒を拡大して示す拡大断面図である。
【図3】図2中の一部分を更に拡大して示す部分拡大断面図である。
【図4】Ag,Pt,Pdをそれぞれ含む3種類の触媒について、触媒温度とCO浄化率との関係を示す特性線図である。
【図5】Ag,Pt,Pdをそれぞれ含む3種類の触媒について、触媒に流入する排気ガスの温度と、触媒温度との関係を示す特性線図である。
【図6】本発明の実施の形態2による複合触媒を示す拡大断面図である。
【図7】図6中の一部分を更に拡大して示す部分拡大断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3において、DPFを示す拡大断面図である。
【図9】図8中の一部分を更に拡大して示す部分拡大断面図である。
【図10】オゾンの分解率とセラミックス材料の有無との関係を示す特性線図である。
【図11】本発明の実施の形態4において、触媒装置を示す拡大断面図である。
【図12】図11中の一部分を更に拡大して示す部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0076】
10 内燃機関
12 吸気通路
14 排気通路
16,50,60 複合触媒
18,52 ハニカム構造体
20,64 上流ガス通路
22,66 下流ガス通路
24,56,68 流入口
26,70 詰栓
28,58,72 流出口
30,74 隔壁
32,76,86 Ag触媒(メイン触媒)
34 三元触媒(下流側浄化材)
36 オゾン発生器(活性酸素供給装置)
38 オゾン供給口
40 ECU
54,84 ガス通路
62 DPF(下流側浄化材)
80 触媒装置
82 基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気ガスが流通する排気通路に設けられ、活性酸素により酸化された状態で触媒活性温度以下のときに酸素が遊離可能となる触媒成分を含むメイン触媒と、
前記メイン触媒に対して排気ガスの流れ方向の下流側に配置され、排気ガスの未浄化成分を浄化する触媒と排気ガス中の粒子状物質を捕集するPMフィルタとの何れかにより構成された下流側浄化材と、
前記メイン触媒に活性酸素を供給する活性酸素供給装置と、
を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記メイン触媒は、少なくともAgまたはAuを前記触媒成分として含む構成としてなる請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項3】
前記下流側浄化材は触媒であり、該触媒は、前記メイン触媒と前記活性酸素との反応により生じる熱を伝達可能な位置に設けてなる請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項4】
前記メイン触媒と前記下流側浄化材とを一体化した複合触媒を備え、
前記下流側浄化材は、前記複合触媒上で前記メイン触媒の下流側に配置してなる請求項1乃至3のうち何れか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項5】
前記複合触媒は、
排気ガスの流れ方向に延びた通路として形成され、上流側が排気ガスの流入口として開口すると共に下流側が閉塞された上流ガス通路と、
前記上流ガス通路と通気性の隔壁を挟んで並列に延びた通路として形成され、上流側が閉塞されると共に下流側が排気ガスの流出口として開口した下流ガス通路と、を備え、
前記メイン触媒は前記上流ガス通路に設け、前記下流側浄化材は前記下流ガス通路に設けてなる請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項6】
前記複合触媒は、排気ガスの流れ方向に延びると共に流れ方向の両側が開口した複数のガス通路を備え、
前記メイン触媒は前記ガス通路の上流部位に設け、前記下流側浄化材は前記ガス通路の下流部位に設けてなる請求項4に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項7】
前記活性酸素供給装置は、前記活性酸素としてオゾンを供給する構成としてなる請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
【請求項8】
内燃機関の排気ガスが流通する排気通路に設けられ、活性酸素に対して分解性を有する材料により形成された基材と、
前記基材のうち排気ガスの流れ方向の上流側となる部位にのみ設けられ、活性酸素により酸化された状態で触媒活性温度以下のときに酸素が遊離可能となる触媒成分を含むメイン触媒と、
前記メイン触媒に活性酸素を供給する活性酸素供給装置と、
を備えることを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−1883(P2010−1883A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−297202(P2008−297202)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】