説明

内燃機関の排気浄化装置

【課題】NOX触媒装置から大気中へ放出されるN2Oの大気放出量をさらに十分に減少させることができる内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】機関排気系に配置されたNOX触媒装置2と、NOX触媒装置から排出される排気ガスをNOX触媒装置の上流側へ戻すための戻し通路3と、オゾン供給装置7とを具備し、NOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされている間は、NOX触媒装置から流出する排気ガス中にN2Oが含まれるために、N2Oをオゾン供給装置から供給されるオゾンにより酸化させると共に、NOX触媒装置から流出する排気ガスを戻し通路を介してNOX触媒装置の上流側へ戻すようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンのような希薄燃焼を実施する内燃機関の排気系には、NOX触媒装置が配置されている。NOX触媒装置は、排気ガスがリーン空燃比である時、すなわち、排気ガス中の酸素濃度が高い時に、排気ガス中のNOXを良好に保持する。一方、再生処理として、排気ガスの空燃比を理論空燃比又はリッチ空燃比とすれば、すなわち、排気ガス中の酸素濃度を低下させれば、保持したNOXを離脱し、こうして離脱させたNOXを排気ガス中の還元物質によりN2へ還元浄化することができる。
【0003】
しかしながら、このようなNOX触媒装置の再生処理においてN2O(一酸化二窒素又は亜酸化窒素)が生成されることがあり、N2Oも大気中へ放出することは好ましくない。それにより、再生処理時においてNOX触媒装置からのN2Oの流出量を減少させる内燃機関の排気浄化装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−211676
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の内燃機関の排気浄化装置によれば再生処理時においてNOX触媒装置からのN2Oの流出量を減少させることはできるが、N2Oの大気放出量をさらに減少させる余地が残されている。
【0006】
従って、本発明の目的は、NOX触媒装置から大気中へ放出されるN2Oの大気放出量をさらに十分に減少させることができる内燃機関の排気浄化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置は、機関排気系に配置されたNOX触媒装置と、前記NOX触媒装置から排出される排気ガスを前記NOX触媒装置の上流側へ戻すための戻し通路と、オゾン供給装置とを具備し、前記NOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされている間は、前記NOX触媒装置から流出する排気ガス中にN2Oが含まれるために、N2Oを前記オゾン供給装置から供給されるオゾンにより酸化させると共に、前記NOX触媒装置から流出する排気ガスを前記戻し通路を介して前記NOX触媒装置の上流側へ戻すことを特徴とする。
【0008】
本発明による請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置は、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、前記NOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされた後に前記NOX触媒装置へリーン空燃比の排気ガスを流入させてから設定時間の間は、前記NOX触媒装置から流出する排気ガス中にN2Oが含まれるために、N2Oを前記オゾン供給装置から供給されるオゾンにより酸化させると共に、前記NOX触媒装置から流出する排気ガスを前記戻し通路を介して前記NOX触媒装置の上流側へ戻すことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明による請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置によれば、機関排気系に配置されたNOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされている間は、NOX触媒装置から流出する排気ガス中にN2Oが含まれるために、N2Oをオゾン供給装置から供給されるオゾンにより酸化させてNOXとし、NOX触媒装置から流出する排気ガスを戻し通路を介してNOX触媒装置の上流側へ戻すことにより、N2Oを酸化させて生成されたNOXは、NOX触媒装置へ保持され、こうして、NOX触媒装置から大気中へ放出されるN2Oの大気放出量を十分に減少させることができる。
【0010】
本発明による請求項2に記載の内燃機関の排気浄化装置によれば、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置において、NOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされた後にリーン空燃比の排気ガスを流入させてから設定時間の間は、NOX触媒装置から流出する排気ガス中にN2Oが含まれるために、N2Oをオゾン供給装置から供給されるオゾンにより酸化させてNOXとし、NOX触媒装置から流出する排気ガスを戻し通路を介してNOX触媒装置の上流側へ戻すことにより、N2Oを酸化させて生成されたNOXは、NOX触媒装置へ保持され、こうして、NOX触媒装置から大気中へ放出されるN2Oの大気放出量をさらに十分に減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明による内燃機関の排気浄化装置を示す概略図である。
【図2】図1の排気浄化装置の制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明による内燃機関の排気浄化装置を示す概略図である。同図において、1はディーゼルエンジン等の内燃機関の排気通路である。排気通路1には、NOX触媒装置2が配置されている。3は戻し通路であり、第一接続位置3a及び第二接続位置3bにおいて、排気通路1のNOX触媒装置2の上流側及び下流側に接続されている。4は閉鎖弁であり、一点鎖線で示すように、戻し通路3の第二接続位置3bより下流側において排気通路1を閉鎖可能とし、好ましくは、実線で示すように、排気通路1を開放すると同時に戻し通路3を閉鎖するものである。
【0013】
こうして、閉鎖弁4により排気通路1が開放されている時には、戻し通路3は閉鎖弁4により閉鎖されているために、排気ガスは、第一接続位置3a及び第二接続位置3bのいずれからも戻し通路3へ流入することなく、戻し通路3を通過しないようにされている。しかしながら、後述されるように戻し通路3にはポンプが配置されているために、閉鎖弁4により戻し通路3が閉鎖されなくても、閉鎖弁1により排気通路1が開放されている時には、ポンプを作動させないようにして戻し通路3を排気ガスが通過しないようにすることもできる。
【0014】
戻し通路3には、N2O吸着装置5が配置されている。N2O吸着装置5は、例えばゼオライトにロジウムRhを担持させたものである。また、戻し通路3において、N2O吸着装置5と第一接続位置3aとの間には、吸引ポンプ6が配置されている。7はN2O吸着装置5に吸着されたN2OにオゾンO3を照射するオゾン供給装置である。
【0015】
NOX触媒装置2は、以下に説明するNOX保持剤と白金Ptのような貴金属触媒とが担持されている。NOX保持剤は、カリウムK、ナトリウムNa、リチウムLi、セシウムCsのようなアルカリ金属、バリウムBa、カルシウムCaのようなアルカリ土類、ランタンLa、イットリウムYのような希土類から選ばれた少なくとも一つである。
【0016】
NOX触媒装置2は、排気ガスがリーン空燃比である時、すなわち、排気ガス中の酸素濃度が高い時に、排気ガス中のNOXを良好に保持し、すなわち、硝酸塩として良好に吸収したり、NO2として良好に吸着したりする。しかしながら、無制限にNOXを保持することはできず、NOX保持量がNOX保持可能量に達してさらにNOXを保持することができなくなる前に、再生処理として、排気ガスの空燃比を理論空燃比又はリッチ空燃比とし、すなわち、排気ガス中の酸素濃度を低下させる。それにより、保持NOXは離脱され、すなわち、吸収NOXは放出され、また、吸着NO2は脱離され、これら離脱NOXは排気ガス中の還元物質によりN2へ還元浄化される。
【0017】
しかしながら、このような再生処理において、N2O(一酸化二窒素又は亜酸化窒素)が生成され(NO+N→N2O)、特に、白金Ptの還元性能が劣化した時、又は、排気ガスの空燃比がリッチとされても酸素濃度が高い時には、離脱NOXの還元が不十分となってN2Oが生成され易くなる。N2Oの大気放出は好ましくない。
【0018】
本排気浄化装置は、図2に示すフローチャートに従って電子制御装置により制御され、N2Oの大気放出量を十分に低減することを目的としている。先ず、ステップ101において、NOX触媒装置2の再生時期であるか否かが判断される。例えば、NOX触媒装置2へ流入する排気ガス中のNOX濃度とNOX触媒装置2から流出する排気ガス中のNOX濃度との差が設定値を下回る時に、NOX触媒装置2のNOX保持量は、NOX保持可能量近傍に到達して、排気ガス中のNOXを十分に保持することができなくなったとして、再生時期と判断することができる。図1において、8はNOX触媒装置2へ流入する排気ガス中のNOX濃度を検出する上流側NOXセンサであり、9はNOX触媒装置2から流出する排気ガス中のNOX濃度を検出する下流側NOXセンサである。
【0019】
また、下流側NOXセンサ9を使用することなく、上流側NOXセンサによりNOX触媒装置2へ流入する排気ガス中のNOX濃度を検出し、NOX濃度から定まる単位時間当たりの排気ガス中に含まれるNOX量の設定割合が単位時間当たりにNOX触媒装置2へ保持されるとして、単位時間当たりの保持量を積算して現在のNOX保持量を推定し、これが設定量に達した時に再生時期と判断するようにしても良い。また、上流側NOXセンサ8も使用することなく、機関運転状態毎の単位時間当たりの排気ガス中に含まれるNOX量を予め設定しておいて、その設定割合が単位時間当たりにNOX触媒装置2へ保持されるとして、単位時間当たりの保持量を積算して現在のNOX保持量を推定し、これが設定量に達した時に再生時期と判断するようにしても良い。
【0020】
再生時期でない時にはそのまま終了するが、NOX触媒装置2が再生時期である時には、ステップ101の判断が肯定され、ステップ102において、NOX触媒装置2へ流入する排気ガスの空燃比が理論空燃比又はリッチ空燃比とされるリッチ化制御が実施される。このリッチ化制御は、例えば、リーン空燃比の排気ガス中に、NOX触媒装置2の上流側に配置された燃料供給装置10から燃料を供給することにより実現される。また、リッチ化制御は、気筒内へ膨張行程又は排気行程において燃料を噴射して燃焼空燃比はリーンでも気筒内から排出される排気ガスの空燃比を理論空燃比又はリッチ空燃比として実現しても良い。また、燃焼空燃比を理論空燃比又はリッチ空燃比としても良い。
【0021】
次いで、ステップ103において、リッチ化制御によりリッチ空燃比の排気ガスがNOX触媒装置2へ流入する時には、閉鎖弁4によりNOX触媒装置2の下流側において排気通路1を閉鎖する。本実施形態においては、それと同時に、閉鎖弁4により閉鎖されていた戻し通路3が開放される。ステップ104では、閉鎖弁4により排気通路1を閉鎖すると同時に、吸引ポンプ6の作動を開始して第二接続位置3bからNOX触媒装置2を通過した排気ガスを戻し通路3へ流入させて第一接続位置3aを介して再びNOX触媒装置へ流入させる。
【0022】
このような排気ガスの流れにより、再生処理中にNOX触媒装置2において生成されたN2Oは、戻し通路3のN2O吸着装置5に吸着される。ステップ105では、ポンプ6の作動開始と同時に、オゾン供給装置7を作動させてオゾンO3をN2O吸着装置5に吸着させたN2Oへ照射する。それにより、N2OはオゾンO3によりNOXへ酸化されてN2O吸着装置5から離脱し(N2O+O3→2NO+O2)、NOX触媒装置2へ流入して保持される。
【0023】
ステップ106では、リッチ化制御を開始してから(厳密にはリッチ空燃比の排気ガスがNOX触媒装置2へ流入開始してから)第一設定時間が経過したか否かが判断される。第一設定時間は、NOX触媒装置2から再生開始時に保持されているNOX量をほぼ完全に離脱させるための再生処理時間であり、排気ガスの空燃比がよりリッチであるほど(空燃比が小さいほど)短くされるが、一般的には数秒とされる。この判断が否定される時には、前述のステップ102から105の処理が継続される。
【0024】
一方、第一設定時間が経過してステップ106の判断が肯定されると、ステップ107においてリッチ化制御は終了される。次いで、ステップ108において、リッチ化制御を終了してから(厳密にはリーン空燃比の排気ガスがNOX触媒装置2へ流入開始してから)第二設定時間が経過したか否かが判断される。この第二設定時間も数秒とされ、この間においては、再生処理時にリッチ空燃比の排気ガスによりNOX触媒装置2内において生成されたアンモニアNH3がリーン空燃比の排気ガス中の酸素により酸化されてN2Oが生成される(2NH3+2O2→N2O+3H2O)。
【0025】
それにより、ステップ108の判断が否定される時には、ステップ103から105の処理は継続されて、生成されるN2OはオゾンによりNOXに酸化され、このNOXを含む排気ガスは戻し通路3を介してNOX触媒装置2の上流側へ戻される。リッチ化制御を終了してから第二設定時間が経過した時には、ステップ109においてオゾン供給装置7の作動を停止し、それとほぼ同時に、ステップ110において吸引ポンプ6の作動も停止し、それとほぼ同時に、ステップ111において閉鎖弁4により排気通路1を開放する。
【0026】
こうして、本排気浄化装置によれば、NOX触媒装置2において生成されたN2OはオゾンO3によりNOXに酸化されてNOX触媒装置2へ保持されるようにしており、N2Oの大気放出量を殆ど無くすことができる。
【0027】
ところで、NOX触媒装置2は、NOXと同様に排気ガス中のSOXを硫酸塩の形で吸収してしまう。硫酸塩は硝酸塩より安定な物質であり、再生処理時においても放出されずに徐々に吸収量が増大して、NOX保持可能量を減少させる。それにより、SOX吸収量を推定して設定量に達した時には、SOXを放出させる回復処理が必要となる。
【0028】
この回復処理は、NOX触媒装置2を約600°Cに昇温してからリッチ空燃比の排気ガスを流入させるものである。この回復処理においてもNOX触媒装置2においても同様にN2Oが生成されるために、回復処理においてリッチ空燃比の排気ガスを流入させている間及びその後のリーン空燃比の排気ガスを流入させてから設定時間の間は、前述同様に、NOX触媒装置2において生成されたN2OをオゾンO3によりNOXに酸化してNOX触媒装置2へ保持させるようにすることが好ましい。もちろん、再生処理及び回復処置に限定されることなく、NOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされている間及びその後のリーン空燃比の排気ガスを流入させてから設定時間の間は、NOX触媒装置2において生成されたN2OをオゾンO3によりNOXに酸化してNOX触媒装置2へ保持させるようにすることが好ましい。
【0029】
本実施形態において、NOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされている間及びその後の設定時間の間は、閉鎖弁4により排気通路1を閉鎖するために排気抵抗が増加するが、短時間であるために特に問題はない。また、意図的にNOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比をリッチ空燃比とする再生処理(又は回復処理)を排気ガス量の少ない低負荷時に実施すれば、このような排気抵抗の増加の影響を少なくすることができる。また、NOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされている間及びその後の設定時間の間は、閉鎖弁4により排気通路1を完全に閉鎖するのではなく、僅かに排気通路1を開放するようにしても良い。また、NOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされている間だけ排気通路1を閉鎖して、NOX触媒装置2において生成されたN2OをオゾンO3によりNOXに酸化してNOX触媒装置2へ保持させるようにしても良い。
【0030】
2O吸着装置5は必ずしも必要ではなく、排気ガス中においてN2OをオゾンO3によりNOXに酸化させるようにしても良い。この場合において、オゾン供給装置7のオゾン供給位置は、戻し通路3ではなく、排気通路1のNOX触媒装置2の下流側としてもよく、また、排気通路1のNOX触媒装置2の上流側として、戻し通路3により戻されてNOX触媒装置2へ流入する直前でN2OをNOXへ酸化させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0031】
1 排気通路
2 NOX触媒装置
3 戻し通路
4 閉鎖弁
5 N2O吸着装置
7 オゾン供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機関排気系に配置されたNOX触媒装置と、前記NOX触媒装置から排出される排気ガスを前記NOX触媒装置の上流側へ戻すための戻し通路と、オゾン供給装置とを具備し、前記NOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされている間は、前記NOX触媒装置から流出する排気ガス中にN2Oが含まれるために、N2Oを前記オゾン供給装置から供給されるオゾンにより酸化させると共に、前記NOX触媒装置から流出する排気ガスを前記戻し通路を介して前記NOX触媒装置の上流側へ戻すことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
【請求項2】
前記NOX触媒装置へ流入する排気ガスの空燃比がリッチ空燃比とされた後に前記NOX触媒装置へリーン空燃比の排気ガスを流入させてから設定時間の間は、前記NOX触媒装置から流出する排気ガス中にN2Oが含まれるために、N2Oを前記オゾン供給装置から供給されるオゾンにより酸化させると共に、前記NOX触媒装置から流出する排気ガスを前記戻し通路を介して前記NOX触媒装置の上流側へ戻すことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−229820(P2010−229820A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74919(P2009−74919)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】