説明

内燃機関の排気駆動過給機

【課題】本発明は、内燃機関のエンジンから出る排気ガス流を膨張するためのタービンと、内燃機関のエンジンに供給すべき燃焼空気流を圧縮するための圧縮機とを備え、タービン内で膨張すべき排気ガス流をタービンロータに導入するために、タービンが入口室(10)を有し、そのタービンロータがタービン円板と多数の動翼を有している内燃機関の排気駆動過給機に関する。
【解決手段】本発明に基づいて、タービンロータのタービン円板に冷却空気を導くために、入口室(10)に冷却空気用配管(16)が組み入れられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の前文に記載の内燃機関の排気駆動過給機に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の効率を高めるために、内燃機関に排気駆動過給機を装備することが既に従来において知られている。排気駆動過給運転ないしターボチャージ運転の場合、エンジンから排出される排気ガスが排気駆動過給機のタービンにおいて膨張され、その際、タービンがエンジンに供給すべき燃焼空気を圧縮する排気駆動過給機の圧縮機を駆動する。その圧縮済み燃焼空気を所定の温度に冷却するために、排気駆動過給機の圧縮機とエンジンとの間にインタクーラ(過給空気冷却器)が挿入接続されている。そのような排気駆動過給運転ないしターボチャージ運転によって、内燃機関の効率が向上される。
【0003】
排気駆動過給機のタービンは、タービン内で膨張すべきエンジンの排気ガス流をタービンロータに導入するために、入口室(流入ハウジング)を利用している。そのタービンロータはタービン円板並びにこのタービン円板に固定されタービン円板と共に回転する多数の動翼を有している。タービン内で膨張された排気ガス流は排気室(流出ハウジング)を通してタービンから排出される。特に、排気駆動過給機のタービンのタービンロータは、高い温度および大きな遠心力に耐えねばならない大きく負荷される構造部品である。従来において、タービンロータの負荷容量を増大するために、ますます高級な材料が採用されているが、その材料は高価であり、経費のかかる加工法を必要とする。このために、排気駆動過給機における経費が増大する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の点から出発して、本発明の課題は、内燃機関の新しい排気駆動過給機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は請求項1に記載の内燃機関の排気駆動過給機によって解決される。本発明に基づいて、タービンロータの円板に冷却空気を導くために、入口室に冷却空気用配管が一体に組み入れられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の目的において、タービンロータのタービン円板に冷却空気を導くために、タービンの入口室に冷却空気用配管が一体に組み入れられている。タービンロータのタービン円板の能動的冷却によって、タービンロータへの入熱量が減少される。これは、タービンロータの部位における高級材料の採用を不要にし、これによって、経費のかかる加工法が省かれる。これによって、排気駆動過給機の経費節減が生ずる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の有利な実施態様は従属請求項および以下の説明から理解できる。次に図を参照して本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0008】
以下図1〜図3を参照して本発明を詳細に説明する。
【実施例】
【0009】
図1〜図3には、本発明に基づく排気駆動過給機のタービンの入口室(流入ハウジング)10が断面図で示されている。この入口室10は、排気駆動過給機のタービン内で膨張すべき排気ガス流をタービンに矢印12のように流入するために、入口開口11を有している。図1に示された実施例において、入口室10はいわゆるバルブ(電球)形デフレクタ13を有し、そのバルブ形デフレクタ13は、タービンに導入された膨張すべき排気ガス流を、半径方向外側に転向し、いわゆる環状ノズル14を介してタービンロータ(図示せず)の動翼に導く。図示されていないタービンロータは、動翼のほかにタービン円板を有し、このタービン円板はその上流側が、膨張すべき排気ガス流に対してバルブ形デフレクタ13によって覆われているか分離されている。バルブ形デフレクタ13はそのタービンロータの側に空洞15を取り囲み形成している。タービン内で膨張した排気ガス流をタービンから排出するために、排気駆動過給機の排気室(流出ハウジング、図示せず)が入口室10につながっている。
【0010】
本発明の目的において、本発明に基づく排気駆動過給機のタービンの入口室10に、冷却空気用配管16が一体に組み入れられている。この配管16は互いに約90°の角度を成した入口区域17と吹出し区域18とを有している。その入口区域17は冷却空気を入口室10に供給するために使われ、これに対して、吹出し区域18は入口室10に導入された冷却空気を、タービンロータ(図示せず)のタービン円板にこれを冷却するために向ける。配管16の排気区域18は図1において入口室10の長手軸線19に対してほぼ平行に延び、その長手軸線19はタービンロータ(図示せず)の回転軸線と一致している。図1において、吹出し区域18は入口室10の長手軸線19に同心的に位置している。冷却空気は吹出し区域18を介して、タービンロータのタービン円板の高温側面ないし上流側面に向けて吹き出される。入口区域17は吹出し区域18に対してほぼ垂直に入口室10の半径方向に延びている。
【0011】
図1から理解できるように、冷却空気用配管16の吹出し区域18は、区域20でバルブ形デフレクタ13に案内ないし支持されている。また、吹出し区域18の下流側端21が保持板22に案内ないし支持され、これによって、配管16の安定した固定並びにタービンロータ(図示せず)の被冷却タービン円板に対する同心的方向づけが確立される。吹出し区域18の下流側端21を保持板22に固定するために、吹出し区域18の下流側端21に固定要素23が付設され、この固定要素23に図2における保持板22がねじ24によって取り付けられている。
【0012】
図3において、保持板22は別のねじ25を介して半径方向外側でバルブ形デフレクタ13に固定され、これによって、バルブ形デフレクタで取り囲まれた空洞15はタービンロータの被冷却タービン円板に対して分離されている。これによって、冷却空気で冷却すべき領域が減少され、つまり主に、タービンロータのタービン円板の高温側面ないし上流側面と保持板22との間の空間に減少される。
【0013】
特に、冷却空気用配管16の入口区域17が排気駆動過給機のインタクーラに接続されている本発明に基づく排気駆動過給機の実施例が有利である。この場合、内燃機関のエンジンに供給すべきインタクーラで冷却された圧縮燃焼空気の一部が冷却空気として分岐され、タービンロータを冷却するために、配管16の吹出し区域18を介してタービンロータのタービン円板に向けられる。あるいはまた、タービンロータを冷却するために他の圧縮空気を利用することもできる。
【0014】
好適には、冷却空気用配管16内における冷却空気の圧力を測定するために、その配管16にセンサが付設されている。配管16内の圧力が所定の限界値より低いとき、本発明の目的において、調整装置(同様に図示せず)を介して内燃機関の負荷の減少が開始される。設定圧力を下回っている場合、タービンロータの十分な冷却が保証されず、このために、内燃機関の負荷が減少されねばならない。
【0015】
本発明の目的において、本発明に基づく排気駆動過給機のタービンのタービンロータが能動的に冷却される内燃機関の排気駆動過給機が提案される。このために、冷却空気をタービンロータのタービン円板に導く冷却空気用配管が、タービンの入口室に一体に組み入れられている。特にその冷却空気として、排気駆動過給機のインタクーラから、エンジンに供給すべき圧縮燃焼空気の一部が分岐される。これによって、タービンロータの自給自足的な冷却が実現される。タービンロータの本発明に基づく冷却は運転中においてメンタナンスフリーである。
【0016】
好適には、本発明に基づく排気駆動過給機は、非常に高い排気ガス温度が生ずる4サイクル・ディーゼルエンジンに採用される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】内燃機関の本発明に基づく排気駆動過給機のタービンの入口室の概略断面図。
【図2】図1の部分IIの詳細図。
【図3】図1の部分IIIの詳細図。
【符号の説明】
【0018】
10 入口室(流入ハウジング)
11 入口開口
12 排気ガスの流れ方向矢印
13 バルブ(電球)形デフレクタ
14 環状ノズル
15 空洞
16 配管
17 入口区域
18 吹出し区域
19 長手軸線
20 区域
21 端部
22 保持板
23 固定要素
24 ねじ
25 ねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のエンジンから出る排気ガス流を膨張するためのタービンと、内燃機関のエンジンに供給すべき燃焼空気流を圧縮するための圧縮機とを備え、タービン内で膨張すべき排気ガス流をタービンロータに導入するために、タービンが入口室(10)を有し、タービンロータがタービン円板と複数の動翼を有している内燃機関の排気駆動過給機において、タービンロータのタービン円板に冷却空気を導くために、入口室(10)に冷却空気用配管(16)が組み入れられていることを特徴とする内燃機関の排気駆動過給機。
【請求項2】
配管(16)が入口区域(17)と吹出し区域(18)とを有し、その吹出し区域(18)が入口室(10)の長手軸線(19)に対してほぼ平行に、ないしタービンロータの回転軸線に対してほぼ平行に延びていることを特徴とする請求項1記載の排気駆動過給機。
【請求項3】
配管(16)が冷却流をタービンロータのタービン円板の高温側面ないし上流側面に向けていることを特徴とする請求項1又は2に記載の排気駆動過給機。
【請求項4】
配管(16)の吹出し区域(18)が保持板(22)に支持されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の排気駆動過給機。
【請求項5】
タービンロータのタービン円板が膨張すべき排気ガス流に対してバルブ状デフレクタ(13)によって分離され、そのバルブ状デフレクタ(13)が、膨張すべき排気ガス流をタービンロータの動翼に向けて導くことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の排気駆動過給機。
【請求項6】
配管(16)の吹出し区域(18)が一方ではバルブ状デフレクタ(13)に、他方では保持板(22)に支持され、この保持板(22)が、バルブ状デフレクタ(13)の下流側端でバルブ状デフレクタ(13)に結合され、バルブ状デフレクタ(13)で囲い込まれた空洞(15)をタービンロータのタービン円板に対して分離していることを特徴とする請求項5記載の排気駆動過給機。
【請求項7】
エンジンに供給すべきインタクーラで冷却された燃焼空気の一部をタービンロータのタービン円板にそれを冷却すべく導くために、配管(16)がインタクーラに接続されていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の排気駆動過給機。
【請求項8】
冷却空気用配管(16)内の圧力がセンサによって検出され、圧力限界値を下回っている際、調整装置が内燃機関の荷重低減を開始させることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の排気駆動過給機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−348939(P2006−348939A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−164427(P2006−164427)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【出願人】(390041520)エムアーエヌ ディーゼル エスエー (59)
【Fターム(参考)】