説明

内燃機関の潤滑油劣化抑制装置

【課題】センサの使用および電子制御を必要とせずに、最適タイミングで添加剤を内燃機関の潤滑油に添加供給する。
【解決手段】本発明に係る内燃機関の潤滑油劣化抑制装置1は、潤滑油OLの劣化を抑制するように、内燃機関10の油路52に連通可能に設けられて潤滑油への添加剤Dを収容する添加剤収容タンク54と、該添加剤収容タンク内の添加剤Dを油路52から隔てるように設けられると共に油路52の潤滑油によって消費可能な物質を含む栓部材58とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油の劣化を抑制するように構成された内燃機関の潤滑油劣化抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用などの内燃機関では、内部の軸受部や摺動部の摩擦や磨耗を減らすため、これら軸受部や摺動部に潤滑油(オイル)を給油して、それらの潤滑、冷却が図られる。例えば、内燃機関では、オイルパン(油槽)に貯留されたオイルはオイルストレーナを介して吸上げられて、オイルポンプにより圧送されて、内部の軸受部や摺動部に供給される。
【0003】
このように内燃機関内を循環されるオイルには、該オイルの性能をある程度のレベルに継続して維持するように添加剤が入れられる。例えば、その添加剤は、スラッジをオイル中に分散させる機能を有する分散剤、機関内部を清浄する機能を有する清浄剤である。このような添加剤は、オイルに当初から混入されていることが多く、また、該オイルの劣化を抑制するように適宜オイル中に添加され得る。
【0004】
例えば、オイルに添加剤を混入させる、内燃機関の潤滑油供給装置が特許文献1に開示されている。特許文献1の装置は、オイルパンに貯蔵されたオイルを潤滑必要部位に圧送するオイルポンプと、潤滑油の性能を改善する添加剤を潤滑油とは別に備える貯蔵手段と、内燃機関の運転状況ないしは運転履歴に応じてその添加剤を内燃機関のオイルに混入させる混入手段とを備える。そして、その貯蔵手段はシリンダヘッドカバー内に連通可能なタンクであり、その混入手段は該タンクと機関内部とをつなぐ連通路に設けられた電磁弁である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭62−195612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の上記装置では、電磁弁を開くことで添加剤をオイルに添加することができるものの、その添加時期を適切に判断するためには、内燃機関の運転状況や運転履歴を監視するためのセンサを設けたり、累積的にデータを蓄積したりすることが必要とされる。
【0007】
そこで、本発明は、かかる点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、センサの使用および電子制御を必要とせずに、最適タイミングで添加剤を内燃機関の潤滑油に添加供給することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の内燃機関の潤滑油劣化抑制装置は、潤滑油の劣化を抑制するように構成された内燃機関の潤滑油劣化抑制装置であって、前記内燃機関の油路に連通可能に設けられて潤滑油への添加剤を収容する添加剤収容タンクと、該添加剤収容タンク内の添加剤を前記油路から隔てるように設けられると共に前記油路の潤滑油によって消費可能な物質を含む栓部材とを備えることを特徴とする。
【0009】
ただし、潤滑油と接することによる上記物質の消費が、上記添加剤収容タンク内と上記油路との連通をもたらすとよい。
【0010】
また、添加剤収容タンクが複数備えられていてもよい。そして、複数の添加剤収容タンクの各々には、同じ種類の添加剤が収容され、複数の添加剤収容タンクの各々に対する栓部材の厚さは、互いに異なってもよい。また、複数の添加剤収容タンクの各々には、異なるタンクに収容される添加剤とは異なる種類の添加剤が収容されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態の内燃機関の潤滑油劣化抑制装置が適用された内燃機関の概略図である。
【図2】図1の内燃機関の潤滑油劣化抑制装置を誇張して表した内燃機関の概念図である。
【図3】第1実施形態に関する、オイル中の添加剤の機能の変化を説明するための概念的なグラフである。
【図4】第2実施形態の、内燃機関の潤滑油劣化抑制装置を誇張して表した内燃機関の概念図である。
【図5】第2実施形態に関する、オイル中の添加剤の機能の変化を説明するための概念的なグラフである。
【図6】第3実施形態の、内燃機関の潤滑油劣化抑制装置を誇張して表した内燃機関の概念図である。
【図7】第3実施形態に関する、オイル中の添加剤の機能の変化を説明するための概念的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。まず、第1実施形態について説明する。図1は、第1実施形態の内燃機関の潤滑油劣化抑制装置(以下、抑制装置)1が適用された内燃機関10の機関本体12の概略図である。また、図2は、図1の抑制装置1を誇張して表した内燃機関10の概念図である。図1では、シリンダヘッド14の下方に順に位置するシリンダブロック16、クランクケース18およびオイルパン20の内部が、簡略化して表されている。
【0013】
内燃機関10は、直列4気筒機関である。そして、機関本体12は、ピストン22が内部を往復動するシリンダ24を区画形成するシリンダブロック16と、シリンダブロック16の下側に設けられるクランクケース18と、クランクケース18の下側に取り付けられるオイルパン20と、シリンダブロック16の上側に取り付けられてシリンダブロック16およびピストン22と共に燃焼室を区画形成するシリンダヘッド14と、シリンダヘッド14の上側に取り付けられるシリンダヘッドカバー26とを含んで構成される。クランクケース18にはクランクシャフト28が回転可能に設けられている。なお、図1では、ピストン22は、シリンダ24に接していないが、正しくはシリンダ24に摺動可能に接する。
【0014】
なお、内燃機関10では、既知の如く、図示しない吸気系からの吸入空気と、図示しない燃料噴射弁から噴射された燃料との混合気を燃焼室で燃焼させて、ピストン22を往復動させて、クランクシャフト28を回転させる。そして、燃焼室での混合気の燃焼により生じた排気ガスは、図示しない排気系を介して排出される。
【0015】
そして、このような内燃機関10の軸受部や摺動部の摩擦や磨耗を減らすため、内燃機関10はそれらの潤滑装置(不図示)を備えている。潤滑装置は、それら軸受部や摺動部にオイルを給油するように構成されている。内燃機関10の潤滑装置は、オイルストレーナ、オイルポンプ、およびオイルフィルタを有する。図示しないが、オイルパン20に貯留されるオイルOL中にはオイルストレーナが配置され、オイルストレーナにはオイルポンプが接続されている。そして、オイルパン20に貯留されたオイルからオイルストレーナで比較的大きな異物が除去され、それが除去されたオイルがオイルポンプで吸い上げられて、オイルポンプからオイルフィルタに圧送される。そしてオイルフィルタで比較的小さな異物が除去された後に、内燃機関10の内部の各軸受部や摺動部にオイルが分配されて、それらの潤滑、冷却が図られる。潤滑後のオイルは内燃機関10内のオイル戻し通路Pを伝わって自然落下等により流下する。
【0016】
内燃機関10では、特に、ピストン22が図1中下方に向けて動くときすなわち下降運動をするとき、ピストン22のピストンリング22aと、シリンダブロック16のシリンダ24との隙間からクランクケース18内へガスが漏れ出る(図1の矢印A1〜A4参照)。こういったガスは、ブローバイガスと称され、オイル成分(図1の矢印B1参照)や燃料(図1の矢印B2参照)が混入されていて、多量の炭化水素や水分を含む。このため、ブローバイガスがあまりに多いとオイルの早期劣化や機関内部の錆の原因になる。また、炭化水素が含まれているため、ブローバイガスをこのまま大気に解放することは環境上好ましくない。そのため、ブローバイガスは、一般的に、吸気負圧を利用して、強制的に吸気系統へ戻される。
【0017】
他方、ピストン22の往復動、特にピストン22の上昇運動にしたがって、クランクケース18側からヘッドカバー26側に向かって上昇移動するブローバイガス(図1の矢印C5、C6参照)には、クランクケース18やオイルパン20内でのオイルの攪拌、蒸発によって生成されたオイルミストが含まれる。
【0018】
ブローバイガスは、上記説明から明らかなように、燃料成分であるHC(炭化水素)、既燃焼ガスに含まれるNOxおよびSOx、空気、水分のほか、クランクケース18やオイルパン20内のオイルの攪拌、蒸発によって生成された気体としてのオイルミストを含んでいる。
【0019】
例えば、クランクケース18内のブローバイガスの吸気系統への戻しは、ヘッドカバー26内を通じて行われ、それはその後、燃焼室に導入される。そして、そのようなブローバイガスによって、例えば、ブローバイガス中に含まれるNOxやSOxと、機関内部の水との反応によって、酸性物質が形成され得る。水としては、例えば、ヘッドカバー26の外面が外気に晒されたり冷却風等を受けたりすることでの冷却作用による、ヘッドカバー26内の結露等によって生じる水(凝縮水)がある。こういった酸性物質は、スラッジ生成を促す。そこで、オイルにおける、そのような酸性物質の生成を抑制したり、スラッジをオイル中に分散させたりするように、添加剤として、酸の中和作用を有する分散剤が添加される。
【0020】
分散剤は、一般に、スラッジやカーボンの分散、可溶および酸中和の3つの作用を有する。分散剤としては、こはく酸イミド、こはく酸エステル、ポリポーラー型ポリマーなどのアルキル基を含む種類のポリマー(高分子化合物)が用いられ得るが、これら以外の物質(既知の物質を含む。)が用いられてもよい。しかし、このような分散剤は、例えば、内燃機関10の使用時間が長くなるに連れて、あるいは、オイル中へ混入されてからの時間が長くなるに連れて、酸中和などにより消費される。それ故、適宜の時期に、その添加剤の補充を行う必要がある。
【0021】
そこで、ここでは、添加剤補充装置50が内燃機関10に設けられている。添加剤補充装置50は、抑制装置1に含まれ、内燃機関10の油路52に連通可能に設けられた添加剤収容タンク(タンク)54と、このタンク54と油路52とをつなぐ連通路56に設けられる栓部材58とを備える。タンク54には、補充用の添加剤、ここでは分散剤Dが収容される。そして栓部材58は、油路52のオイルによって消費可能な物質(以下、栓物質と称する。)を含んで構成される。なお、ここでは、栓部材58に栓物質を保持するように、栓部材58は、栓物質を隙間に有する、図示しない網目状部材を有する。つまり、網目状部材は、栓物質の保持部材として機能する。栓部材58は、栓物質が存在する状態で、少なくとも当初は、タンク54内の分散剤Dを油路52から隔てるように設けられる。そして、栓物質は、油路52のオイルによって消費可能な物質であるので、油路52のオイルと接することで、消費され、その結果、分散剤Dは油路52に移動することが可能になる。
【0022】
分散剤は、図1、2では溶けているように表されているが、例えば100℃から200℃の融点を有するものである。こはく酸イミドは、約125℃の融点を有する。
【0023】
これに対して、栓部材58の栓物質は、内燃機関10の作動時、その熱で溶けない物質である。栓物質は、オイル中の分散剤が十分に存在するときに、タンク54内の分散剤Dをオイルから隔離するべく設けられる。そして、オイル中の添加剤の機能が十分に発揮されなくなったとき、すなわち、オイル中へ添加剤を補充しなければならなくなったときに、適切に栓部材58が開通するように、栓物質は定められる。添加剤である分散剤が酸中和等の目的でここではオイル中へ添加されるので、オイル中の分散剤が消費されることは、オイルの酸濃度が高まることを意味する。それ故、本第1実施形態では、栓物質は、オイルの酸濃度の高まりに基づいて消費される物質とされる。栓物質は、好ましくは固体のアルカリ性物質からなり、このアルカリ性物質としてここでは主として炭酸カルシウム(CaCO3)が用いられる。
【0024】
ただし、栓物質の厚さは、適切な時期に、オイル中へタンク54内の分散剤Dを添加することを可能にするように、予め実験により定められる。なお、栓物質を保持するための保持部材である上記網目状部材は、省かれてもよく、この場合、栓部材58は、栓物質のみから構成され得る。
【0025】
図3の概念的なグラフに基づいて、オイル中の分散剤の機能の変化を説明する。オイル中に分散剤を添加した当初(t1時点)は、分散剤を含むオイルは、十分な分散剤の機能を有するが、内燃機関10の作動時間が長くなるに連れて、その機能は低下する。しかし、上記したように、抑制装置1は、上記構成の添加剤補充装置50を備えるので、オイル中の分散剤が消費されることに起因して、そのオイル、特にその中の酸性物質により栓部材58の栓物質は消費される。栓物質の厚さ(形状および量を含む)は、分散剤Dのオイルへの補充時期を適切に制御するように定められているので、この結果、栓部材58が適切な時期(t2時点)に開通して、タンク54内の分散剤Dが、油路52に供給されて、オイル中に補充される(図3中の矢印参照)。したがって、オイルにおける酸中和機能等の分散剤の機能を回復することが可能になる。
【0026】
以上、上記第1実施形態では、オイルへの添加剤を分散剤とし、栓物質をアルカリ性物質としたが、添加剤および栓物質として他の種々の組合せが許容される。そして、それら添加剤や栓物質としては、既知の種々の物質が用いられ得、それらの種々の組み合わせが許容され得る。例えば、添加剤と栓物質との組み合わせとしては、消泡剤と炭酸カルシウム等のアルカリ性物質との組み合わせ、清浄剤とポリウレタンとの組み合わせ、摩耗防止剤とポリウレタンとの組み合わせ、摩擦調整剤と低融点ろう材との組み合わせがある。また、上記第1実施形態では、添加剤補充装置50はヘッドカバー26に設けられたが、他の箇所に設けられてもよい。添加剤補充装置50は、例えば、添加剤が消泡剤や摩擦調整剤である場合、オイルパン20に設けられ得る。それは、例えば、それら添加剤の劣化が油温と関係があるからである。また、好ましくは、分散剤などの上記添加剤は、対応して用いられる栓物質を消費しないという関係、すなわち栓物質と反応しない関係を、栓物質と有する。こうすることで、栓部材がより適切な時期に開通することが可能になり、添加剤をより適切にオイル中に補充することが可能になる。
【0027】
次に、本発明に係る第2実施形態を説明する。第2実施形態を図4、図5に基づいて説明する。図4、図5は、上記第1実施形態での図2、図3にそれぞれ対応する図である。以下の説明では、上で説明した構成要素と同じあるいは同様の構成要素に同じあるいは対応関係のある符号を付して、それらの重複説明を省略する。
【0028】
第2実施形態の内燃機関10Aの潤滑油劣化抑制装置1Aは、複数回、ここでは2回、分散剤Dをオイル中に供給できるように、添加剤補充装置50a、50bを2つ備える。添加剤補充装置50aは、添加剤補充装置50bよりも先に、添加剤、ここでは分散剤Dをオイル中に供給可能なように構成されている。具体的には、添加剤補充装置50aの栓部材58aの厚さは、添加剤補充装置50bの栓部材58bの厚さよりも薄くされている。例えば、栓部材58aは、栓部材58bの倍の厚さを有する。したがって、栓部材58aの方が、栓部材58bよりも早くに開通する。ただし、上記第1実施形態の栓部材58と同様に、栓部材58aの厚さは、オイル中に当初添加される分散剤の量に応じて定められるとよく、また栓部材58bの厚さは、添加剤補充装置50aのタンク54a内の分散剤Dの量に応じて定められるとよい。これは、分散剤Dが適切な時期にオイル中に添加補充されるようにするためである。なお、添加剤補充装置50a、50bの設置箇所は、オイルとの接触度合いが概ね同じ箇所になるように定められるとよい。
【0029】
図5の概念的なグラフに基づいて、第2実施形態における、オイル中の分散剤の機能の変化を説明する。オイル中に分散剤を添加した当初(t11時点)は、分散剤を含むオイルは、十分な分散剤の機能を有するが、内燃機関10の作動時間が長くなるに連れて、その機能は低下する。これに伴って、添加剤補充装置50aの栓部材58aの栓物質が消費される。この結果、栓部材58aが適切な時期(t12時点)に開通して、タンク54a内の分散剤Dが、油路52に供給されて、オイル中に補充される(図5中の矢印α1参照)。これにより、オイルにおける分散剤の機能を回復することが可能になる。さらに、時間が経過するに連れて、再び、オイルの分散剤の機能は低下する。これに対して、添加剤補充装置50bの栓部材58bの栓物質が消費され続け、栓部材58bが適切な時期(t13時点)に開通するようになる。その結果、タンク54b内の分散剤Dが、油路52に供給されて、オイル中に補充される(図5中の矢印α2参照)。これにより、オイルにおける分散剤の機能を再度回復することが可能になる。
【0030】
なお、第2実施形態の潤滑油劣化抑制装置1Aは添加剤補充装置を2つ備えたが、添加剤補充装置は3つ以上、複数個設けられてもよい。こうすることで、3回以上、複数回、添加剤をオイルに添加補充することが可能になる。ただし、この場合、複数タンクの各々に対する栓部材の栓物質の厚さは互いに異なるとよく、それら各々の厚さは添加剤の添加時期に基づいて定められるとよい。
【0031】
なお、第2実施形態でも、上記第1実施形態に関して説明したことと同様の変更が許容される。つまり、第2実施形態でも、添加剤と栓物質との異なる組み合わせや、添加剤補充装置の異なる設置箇所等が許容される。
【0032】
次に、本発明に係る第3実施形態を説明する。第3実施形態を図6、図7に基づいて説明する。図6、図7は、上記第1実施形態での図2、図3や上記第2実施形態の図4、図5にそれぞれ対応する図である。以下の説明では、上で説明した構成要素と同じあるいは同様の構成要素に同じあるいは対応関係のある符号を付して、それらの重複説明を省略する。
【0033】
第3実施形態の内燃機関10Bの潤滑油劣化抑制装置1Bは、異なる添加剤をオイル中に供給できるように、添加剤補充装置50c、50dを2つ備える。添加剤補充装置50cは、清浄剤Cを補充するように設けられる。ここでは、タンク54cには清浄剤Cが収容され、栓物質としてポリウレタンが用いられる。これに対して、添加剤補充装置50dは、分散剤Dを補充するように設けられ、上記第1、2実施形態と同様に、栓物質として炭酸カルシウムが用いられる。
【0034】
栓部材58cの栓物質の厚さは、オイル中へ当初添加された清浄剤の量に応じて定められ、栓部材58dの栓物質の厚さは、オイル中へ当初添加された分散剤の量に応じて定められる。なお、添加剤補充装置50c、50dの設置箇所は、オイルとの接触度合いが概ね同じ箇所になるように図6では定められているが、オイルとの接触度合い等が異なる箇所に定められてもよい。
【0035】
図7の概念的なグラフに基づいて、第3実施形態における、オイル中の清浄剤や分散剤の機能の変化を説明する。オイル中にそれら添加剤を添加した当初(t21時点)は、そのオイルは、十分な清浄剤の機能と十分な分散剤の機能とを有するが、内燃機関10の作動時間が長くなるに連れて、それらの機能は低下する。これに伴って、添加剤補充装置50c、50dの栓部材58c、58dの各栓物質が消費される。ここでは、まず、栓部材58cの栓物質が消費され、栓部材58cが適切な時期(t22時点)に開通して、タンク54c内の清浄剤Cが、油路52に供給されて、オイル中に補充される(図5中の矢印β1、点線参照)。これにより、オイルにおける清浄剤の機能を回復することが可能になる。他方、時間が経過するに連れて、同様に、オイルの分散剤の機能は低下するが、これに対応して添加剤補充装置50dの栓部材58dが適切な時期(t23時点)に開通するようになる。その結果、タンク54d内の分散剤Dが、油路52に供給されて、オイル中に補充される(図5中の矢印β2、実線参照)。これにより、オイルにおける分散剤の機能を回復することが可能になる。
【0036】
なお、第3実施形態の潤滑油劣化抑制装置1Bは添加剤補充装置を2つ備えたが、添加剤補充装置は3つ以上、複数個もうけられてもよい。こうすることで、3種類以上、複数種類の添加剤をオイルに添加補充することが可能になる。
【0037】
なお、第3実施形態でも、上記第1実施形態に関して説明したことと同様の変更が許容される。つまり、第3実施形態でも、添加剤と栓物質との異なる組み合わせや、添加剤補充装置の異なる設置箇所等が許容される。
【0038】
以上、本発明を3つ実施形態やその変更例等に基づいて説明したが、本発明に係る、このような上記実施形態の各態様等は、矛盾が生じない限りにおいて、部分的に又は全体的に組み合わせることが可能である。
【0039】
以上、本発明を種々の実施形態等に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されない。本発明には、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。したがって本発明は、限定的に解釈されるべきではなく、本発明の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0040】
1、1A、1B 内燃機関の潤滑油劣化抑制装置
10、10A、10B 内燃機関
12 機関本体
14 シリンダヘッド
16 シリンダブロック
18 クランクケース
20 オイルパン
22 ピストン
24 シリンダ
26 ヘッドカバー
50、50a、50b、50c、50d 添加剤補充装置
52 油路
54、54a、54b、54c、54d 添加剤収容タンク
56、56a、56b、56c、56d 連通路
58、58a、58b、58c、58d 栓部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油の劣化を抑制するように構成された内燃機関の潤滑油劣化抑制装置であって、
前記内燃機関の油路に連通可能に設けられて潤滑油への添加剤を収容する添加剤収容タンクと、
該添加剤収容タンク内の添加剤を前記油路から隔てるように設けられると共に前記油路の潤滑油によって消費可能な物質を含む栓部材と
を備えることを特徴とする内燃機関の潤滑油劣化抑制装置。
【請求項2】
潤滑油と接することによる前記物質の消費が、前記添加剤収容タンク内と前記油路との連通をもたらすことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関の潤滑油劣化抑制装置。
【請求項3】
前記添加剤収容タンクが複数備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関の潤滑油劣化抑制装置。
【請求項4】
前記複数の添加剤収容タンクの各々には、同じ種類の添加剤が収容され、
前記複数の添加剤収容タンクの各々に対する栓部材の厚さは、互いに異なることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の潤滑油劣化抑制装置。
【請求項5】
前記複数の添加剤収容タンクの各々には、異なるタンクに収容される添加剤とは異なる種類の添加剤が収容されていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関の潤滑油劣化抑制装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−185303(P2010−185303A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−28641(P2009−28641)
【出願日】平成21年2月10日(2009.2.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】