説明

内燃機関の運転システム

【課題】混合燃料から分離した第1燃料及び第2燃料を使用して内燃機関の運転を行なうシステムで、オクタン価がより高い第1燃料に含まれる高オクタン価燃料の濃度を適切に設定しておくことで、高オクタン価燃料の消費量を抑制しつつ、内燃機関の運転を行なう。
【解決手段】燃料分離装置25は、高オクタン価燃料の濃度が所定の上限値以下となる第1燃料を混合燃料から分離し得る能力の装置として構成される。その上限値は、第1燃料用の燃料噴射弁24aの燃料噴射量が下限噴射量となる状態を含む運転モードでの内燃機関1の運転を、燃料分離装置25により得られた第1燃料及び第2燃料を使用して行なった場合に実測される高オクタン価燃料の消費量が、上記運転モードでの内燃機関1の運転を、高オクタン価燃料の濃度がそれぞれ100%、0%である第1燃料及び第2燃料を使用して行なった場合に実測される高オクタン価燃料の消費量よりも所定量以上少なくなるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高オクタン価燃料と低オクタン価燃料とを使用して運転を行なう内燃機関の運転システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1、2に見られる如く、オクタン価が異なる複数種類の燃料成分を含有する混合燃料(原燃料)を、分離装置によって、高オクタン価の燃料成分の含有濃度が原燃料よりも高い第1燃料(原燃料よりもオクタン価が高い第1燃料)と高オクタン価の燃料成分の含有濃度が原燃料よりも低い第2燃料低オクタン価の第2燃料(原燃料よりもオクタン価が低い第2燃料)とに分離し、この分離装置により得られた第1燃料と第2燃料とを用いて内燃機関の運転を行うようにしたシステムが知られている。この種のシステムでは、内燃機関の燃焼室に供給する燃料中の高オクタン価の燃料成分(以下、単に高オクタン価燃料という)の供給量の割合を、内燃機関の運転状態に応じて可変的に制御することで、ノッキングの発生の防止や、燃費の向上が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−293600号公報
【特許文献2】特開2000−329013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の如きシステムの内燃機関では、高負荷運転時に燃焼室への高オクタン価燃料の供給割合を多くすることで、ノッキングの発生を防止できることから、内燃機関の出力性能を向上させる(出力可能なトルクの上限を高める)ことが可能である。
【0005】
ただし、高オクタン価燃料の含有濃度が高い第1燃料を頻繁に使用すると、該第1燃料の残量が少なくなる一方、高オクタン価燃料の含有濃度が低い第2燃料が十分に残存するというような状況が発生する。そして、このような状況では、第1燃料を多用することができなくなるので、高オクタン価燃料の含有濃度が低い第2燃料を多用せざるを得ない。そして、この場合には、高負荷運転時のノッキングの発生を抑制することが困難となることから、内燃機関の出力性能を制限せざるを得なくなる。
【0006】
従って、高オクタン価燃料を内燃機関の燃焼室に供給することが必要となる内燃機関の運転時における該高オクタン価燃料の消費量をできるだけ少なくすることが望まれる。
【0007】
一方、ノッキングの発生を防止しつつ、内燃機関の出力性能を高める上では、基本的には、内燃機関の燃焼室で燃焼させる燃料のオクタン価が高い方が有利である。このため、前記特許文献1,2に見られる如き従来のシステムでは、第1燃料に含まれる低オクタン価の燃料成分の濃度ができるだけ小さくなるように、換言すれば、第1燃料に含まれる高オクタン価の燃料成分の濃度ができるだけ高くなるように(ひいては、第1燃料のオクタン価が高くなるように)、原燃料の分離を行なうようにすることが通例である。
【0008】
しかしながら、詳細は後述するが、本願発明者が各種実験、検討を重ねた結果、第1燃料中の高オクタン価燃料の含有濃度が高いと、内燃機関の燃焼室に、ノッキングの発生を防止する上で適切な本来の必要量よりも過剰な高オクタン価燃料が供給されることとなる状況が、内燃機関の通常的な運転状態で発生することが判明した。
【0009】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、混合燃料から分離した第1燃料及び第2燃料を使用して内燃機関の運転を行なうシステムで、オクタン価がより高い第1燃料に含まれる高オクタン価燃料の濃度を適切に設定しておくことで、高オクタン価燃料の消費量を抑制しつつ、内燃機関の運転を行なうことができる内燃機関の運転システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
まず、本発明の前提となる技術的事項について説明する。
【0011】
本願発明者が各種実験、検討を重ねた結果、高オクタン価燃料と低オクタン価燃料との混合燃料(原燃料)から分離される第1燃料(原燃料よりも高オクタン価燃料の濃度が高い燃料)に含まれる高オクタン価燃料の濃度と、該高オクタン価燃料の消費量との間にはある相関性があり、高オクタン価燃料の消費量を抑制する上では、第1燃料に含まれる高オクタン価燃料の濃度を100%もしくはそれに近い濃度まで高めるよりも、むしろ、該濃度があまり高くならないように制限することが望ましいことを知見した。
【0012】
さらに詳細には、内燃機関のノッキングの発生を防止する上で適切な高オクタン価燃料の供給割合(内燃機関の燃焼室に供給する燃料中の高オクタン価燃料の供給割合)は、一般に、図1(a)に実線aのグラフで示す如く、内燃機関の出力トルクの増加に伴い増加していく。
【0013】
なお、図1(a)の実線aのグラフは、高オクタン価燃料が、例えばエタノール、低オクタン価燃料が例えばガソリンである場合の一例のグラフである。ただし、高オクタン価燃料、低オクタン価燃料がそれぞれエタノール、ガソリン以外の種類であっても、内燃機関のノッキングの発生を防止する上で適切な高オクタン価燃料の供給割合と、内燃機関の出力トルクとの間の関係の基本的傾向は、図1の実線aのグラフと同様である。このことは、後述する図1(b)のグラフについても同様である。
【0014】
一方、内燃機関の燃焼室に供給する第1燃料及び第2燃料をそれぞれ噴射する燃料噴射弁は、一般に、その構造的な制約等によって、その燃料噴射量を、ある下限噴射量よりも少ない微量の燃料噴射量に制御することが困難となる。
【0015】
このため、内燃機関の燃焼室に高オクタン価燃料を供給することが必要となる内燃機関の運転時における高オクタン価燃料の実際の供給割合は、第1燃料用の燃料噴射弁による実際の燃料噴射量が上記下限噴射量以上に保たれるように制限されることとなる。
【0016】
この場合、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が、例えば100%もしくはそれに近い高濃度である場合(以下、本欄では第1の場合という)には、第1燃料用の燃料噴射弁が噴射する燃料の全量もしくはほぼ全量が高オクタン価燃料により構成されることとなる。そして、この場合、第1燃料用の燃料噴射弁の燃料噴射量を下限噴射量以上に保つ必要があることから、高オクタン価燃料を内燃機関の燃焼室に供給すべき状況における高オクタン価燃料の実際の供給割合は、例えば図1(a)の破線b1で示す値R(大)以上の供給割合に制限されることとなる。
【0017】
そして、高オクタン価燃料の実際の供給割合が、上記値R(大)に制限される状況(図1(a)のAの範囲)において、内燃機関の燃焼室に供給される高オクタン価燃料の量が、実線aのグラフで示される供給割合により規定される適切な量よりも余剰なものとなる。
【0018】
一方、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が上記第1の場合よりも低い場合には、第1燃料用の燃料噴射弁が噴射する燃料中に、高オクタン価燃料以外の燃料成分が、上記第1の場合よりも多く含まれることとなる。このため、第1燃料用の燃料噴射弁の燃料噴射を下限噴射量で行なった場合に該燃料噴射弁から内燃機関の燃焼室に供給される第1燃料中の高オクタン価燃料の量は、上記第1の場合よりも少なくなる。
【0019】
このため、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が低い場合には、高オクタン価燃料の実際の供給割合は、例えば、図1(b)の破線b2で示す値R(小)(<R(大))以上の供給割合に制限されることとなる。そして、この場合の高オクタン価燃料の供給割合の下限値R(小)は、前記第1の場合の高オクタン価燃料の供給割合の下限値R(大)よりも小さくなるので、図1(a)のAの範囲での高オクタン価燃料の供給割合が、第1の場合よりも、実線aのグラフで示される供給割合に近づくこととなる。
【0020】
このため、図1(a)のAの範囲で内燃機関の燃焼室に供給される高オクタン価燃料の量が、上記第1の場合よりも減少することとなる。
【0021】
従って、第1燃料用の燃料噴射弁の燃料噴射量が、所定の下限噴射量に制限されるような内燃機関の運転状況では、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が高いほど、第1燃料中の高オクタン価燃料が余分に消費されることとなる。逆に、当該状況では、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が低いほど、第1燃料中の高オクタン価燃料の消費が抑制されることとなる。
【0022】
また、車両等に搭載される内燃機関では、一般に、図1(a)に示す如く、出力トルクが大きい高負荷での運転頻度よりも中負荷から低負荷までの負荷領域(図中の高頻度運転領域)での運転頻度の方が高いので、上記のように第1燃料用の燃料噴射弁の燃料噴射量が、所定の下限噴射量に制限されるような運転状況の発生頻度も比較的高い。
【0023】
これらのことから、本願発明者は、前記した如く、高オクタン価の燃料成分の消費量を抑制する上では、第1燃料に含まれる高オクタン価燃料の濃度を100%もしくはそれに近い濃度まで高めるよりも、むしろ、該濃度があまり高くならないように制限することが望ましいことを知見するに至ったものである。
【0024】
本発明は、かかる知見に基づいてなされたものである。以下、本発明を説明すると、本発明の内燃機関の運転システムは、高オクタン価燃料と該高オクタン価燃料よりもオクタン価が低い低オクタン価燃料との混合燃料を、該混合燃料よりも前記高オクタン価燃料の濃度が高い第1燃料と該混合燃料よりも前記高オクタン価燃料の濃度が低い第2燃料とに分離する燃料分離装置と、前記第1燃料及び第2燃料の少なくとも一方を燃焼室で燃焼させることにより運転を行う内燃機関と、前記燃料分離装置により分離された第1燃料及び第2燃料が供給され、前記内燃機関の燃焼室で燃焼させる第1燃料と第2燃料とをそれぞれ所定の下限噴射量以上の燃料噴射量で各別に噴射する第1燃料噴射弁及び第2燃料噴射弁と、前記内燃機関の燃焼室に供給する燃料中の前記高オクタン価燃料の供給量の割合である高オクタン価燃料供給割合の目標値を規定する燃料供給割合パラメータを少なくとも前記内燃機関の出力トルクに応じて変化させるように可変的に設定し、その設定した燃料供給割合パラメータに応じて前記第1燃料噴射弁及び第2燃料噴射弁のそれぞれの燃料噴射量を制御する燃料供給制御手段とを備えた内燃機関の運転システムであって、
前記燃料分離装置は、前記高オクタン価燃料の濃度が所定の上限値以下となる前記第1燃料を前記混合燃料から分離し得る能力の装置として構成されており、
前記所定の上限値は、前記第1燃料噴射弁の燃料噴射量が前記下限噴射量となる内燃機関の運転状態を少なくとも含むあらかじめ定められた運転モードでの該内燃機関の運転を、前記燃料分離装置により得られた第1燃料及び第2燃料を使用して行なった場合に実測される前記高オクタン価燃料の消費量である第1高オクタン価燃料消費量が、前記運転モードでの内燃機関の運転を、前記高オクタン価燃料の濃度がそれぞれ100%、0%である前記第1燃料及び第2燃料を使用して行なった場合に実測される前記高オクタン価燃料の消費量である第2高オクタン価燃料消費量よりも所定量以上少なくなるように設定されていることを特徴とする(第1発明)。
【0025】
なお、本発明における高オクタン価燃料供給割合、高オクタン価燃料の濃度は、それぞれ、より詳しくは体積での割合、濃度である。この場合、高オクタン価燃料供給割合が、X%であるというのは、内燃機関の燃焼室に供給する燃料の全量に対する高オクタン価燃料の量の体積比がX%であることを意味する。同様に、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が、X%であるというのは、該第1燃料の単位量に対する高オクタン価燃料の量の体積比がX%であることを意味する。
【0026】
かかる第1発明によれば、前記燃料分離装置により前記混合燃料(原燃料)から分離される前記第1燃料は、該第1燃料に含有する高オクタン価燃料の濃度が、前記所定の上限値以下の濃度に制限された燃料であるので、高オクタン価燃料と共に、これ以外の燃料成分(低オクタン価燃料)を含有する。
【0027】
ここで、前記第1燃料噴射弁の燃料噴射量が、所定の下限噴射量に制限されるような内燃機関の運転状況では、前記した如く、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が高いほど、第1燃料中の高オクタン価燃料が余分に消費される。
【0028】
そして、第1発明では、このことに鑑み、前記所定の上限値は、あらかじめ定められた前記運転モードでの内燃機関の運転を、前記燃料分離装置により得られた第1燃料及び第2燃料を使用して行なった場合に実測される前記高オクタン価燃料の消費量(第1高オクタン価燃料消費量)が、前記運転モードでの内燃機関の運転を、前記高オクタン価燃料の濃度がそれぞれ100%、0%である前記第1燃料及び第2燃料を使用して行なった場合に実測される前記高オクタン価燃料の消費量(第2高オクタン価燃料消費量)よりも所定量以上少なくなるように設定されている。
【0029】
そして、前記運転モードは、前記第1燃料噴射弁の燃料噴射量が前記下限噴射量となる内燃機関の運転状態を少なくとも含む運転モードである。
【0030】
第1発明によれば、上記のように、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度の上限値が設定されているので、高オクタン価燃料の消費量を抑制しつつ、内燃機関の運転を行なうことができることとなる。
【0031】
また、前記燃料分離装置は、一般に、混合燃料から分離・生成しようとする第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度の目標値が高いほど、第1燃料の生成に時間がかかると共に、該燃料分離装置の構成も大型化する。しかるに、第1発明によれば、燃料分離装置が混合燃料から分離・生成する第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度の目標値を、前記所定の上限値以下の低めの濃度に抑制できることから、該燃料分離装置による第1燃料の分離・生成の時間を短縮できると共に、該燃料分離装置を小型化を実現することができる。
【0032】
前記第1発明においては、前記第1燃料を噴射する第1燃料噴射弁と、第2燃料を噴射する第2燃料噴射弁とは、その両方が前記内燃機関の燃焼室の吸気ポートを介して該燃焼室に前記第2燃料を噴射するポート噴射型の燃料噴射弁であってもよいが、そのいずれか一方が、前記内燃機関の燃焼室に直接的に燃料を噴射する直噴型の燃料噴射弁であってもよい。
【0033】
特に、前記第1燃料を噴射する第1燃料噴射弁は、前記内燃機関の燃焼室に直接的に前記第1燃料を噴射する直噴型の燃料噴射弁であり、前記第2燃料を噴射する第2燃料噴射弁は、前記内燃機関の燃焼室の吸気ポートを介して該燃焼室に前記第2燃料を噴射するポート噴射型の燃料噴射弁であることが好ましい(第2発明)。
【0034】
ここで、この第2発明によれば、前記高オクタン価燃料供給割合が一定である場合、前記第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が低いほど、内燃機関の燃焼室に供給する燃料中の第1燃料の供給割合、すなわち、内燃機関の燃焼室に第1燃料噴射弁及び第2燃料噴射弁から供給される全燃料のうち、第1燃料噴射弁から燃焼室に直接的に噴射される燃料の割合(以下、直噴比率ということがある)が、相対的に増える(第2燃料噴射弁から燃焼室に供給される燃料の割合が相対的に減る)こととなる。
【0035】
そして、前記高オクタン価燃料供給割合が一定である場合、一般に、直噴比率が低い場合よりも、該直噴比率が互い場合の方が、内燃機関の出力トルクをより高トルクにすることができる。
【0036】
このため、内燃機関のノッキングの発生を防止する上で適切な高オクタン価燃料供給割合は、例えば図1(b)の実線c1,c2,c2のグラフで例示する如く、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が低いほど、低下する。なお、図1(b)の実線で示すc1,c2,c2のグラフは、高オクタン価燃料を内燃機関の燃焼室に供給すべき状況での高オクタン価燃料供給割合を、第1燃料噴射弁の下限噴射量に対応する下限値(図1(a)のR(大)、R(小)に相当する下限値)以上に制限した状態で示されている。
【0037】
従って、第2発明によれば、高オクタン価燃料の消費量をより一層低減することができる。
【0038】
また、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が、前記所定の上限値以下の濃度に制限されることによって、高オクタン価燃料供給割合が一定である場合、該濃度が該上限値よりも高い場合に比して、直噴型の燃料噴射弁である前記第1燃料噴射弁から噴射する第1燃料がより多くなるので、該第1燃料噴射弁の冷却効果を高めることできる。従って、第1燃料噴射弁が、燃焼熱によって過剰に高温になるのを防止することができる。
【0039】
上記第1発明又は第2発明では、前記所定の上限値は、例えば、前記第1高オクタン価燃料消費量が、前記第2高オクタン価燃料消費量の90%以下の値となるように設定されていることが好ましい(第3発明)。
【0040】
これによれば、高オクタン価燃料の前記運転モードでの内燃機関の運転を、前記燃料分離装置により得られた第1燃料及び第2燃料を使用して行なった場合に実測される前記高オクタン価燃料の消費量(第1高オクタン価燃料消費量)を、前記運転モードでの内燃機関の運転を、前記高オクタン価燃料の濃度がそれぞれ100%、0%である前記第1燃料及び第2燃料を使用して行なった場合に実測される前記高オクタン価燃料の消費量(第2高オクタン価燃料消費量)に対して、10%以上削減できる。
【0041】
この第3発明では、前記所定の上限値としては、例えば75%という上限値を設定できる(第4発明)。この第4発明によれば、前記燃料分離装置を、自動車等の車両に無理なく搭載させ得る適切なサイズで実現することが可能となる。
【0042】
また、前記第1〜第4発明においては、前記燃料分離装置により前記混合燃料から分離・生成する第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度の下限値は、前記所定の上限値よりも一定量だけ小さいような値に設定されていてもよいが、次のような指針で設定しておくことが好ましい。
【0043】
すなわち、前記燃料分離装置は、前記高オクタン燃料の濃度が前記所定の上限値以下となると共に、所定の下限値以上となる前記第1燃料を前記混合燃料から分離し得る能力の装置として構成されており、前記所定の下限値は、前記内燃機関の燃焼室に供給する燃料として、前記高オクタン価燃料の濃度を該所定の下限値に一致させた第1燃料だけを使用して該内燃機関の運転を行った場合に実現される該内燃機関の出力トルクの最大値があらかじめ設定された所定のトルク値以上となるように設定されていることが好ましい(第5発明)。
【0044】
ここで、基本的には、高オクタン価燃料供給割合が高いほど、ノッキングを生じることなく内燃機関に出力させ得る最大トルクを高めることができる。例えば、図2のグラフで例示する如く、内燃機関が出力可能な最大トルクは、高オクタン価燃料供給割合の増加に伴い増加する。なお、図2の縦軸のトルク比率[%]は、高オクタン価燃料供給割合が100%である場合の内燃機関の最大トルクからの低下度合いを表している。
【0045】
また、図2は、高オクタン価燃料が、エタノール、低オクタン価燃料がガソリンである場合の一例のグラフである。ただし、高オクタン価燃料、低オクタン価燃料がそれぞれエタノール、ガソリン以外の種類であっても、高オクタン価燃料供給割合と、内燃機関に出力させ得る最大トルクとの間の関係の基本的傾向は、図2のグラフと同様である。
【0046】
一方、前記高オクタン価燃料供給割合の上限は、前記第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度に依存して制限される。すなわち、前記高オクタン価燃料供給割合をX[%]、前記第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度をY[%]としたとき、高オクタン価燃料供給割合X[%]は、高オクタン価燃料の濃度Y[%]を超えることはできず、Y[%]が、X[%]の上限となる。また、この上限の高オクタン価燃料供給割合は、内燃機関の燃焼室に、第1燃料だけを第1燃料噴射弁から供給することで実現される。
【0047】
そこで、上記第5発明では、内燃機関の燃焼室に供給する燃料として、前記高オクタン価燃料の濃度を前記所定の下限値に一致させた第1燃料だけを使用して該内燃機関の運転を行った場合(第1燃料噴射弁だけから燃料を供給するようにして内燃機関の運転を行った場合)に実現される該内燃機関の出力トルクの最大値があらかじめ設定された所定のトルク値以上となるように、前記所定の下限値を設定した。
【0048】
これにより、高オクタン価燃料の消費量の低減を可能としつつ、内燃機関の所望の最大トルクを実現できる内燃機関の運転システムを構築することができることとなる。
【0049】
かかる第5発明では、前記所定のトルク値は、例えば、前記高オクタン価燃料の濃度が100%である第1燃料だけを使用して前記内燃機関の運転を行った場合に実現される該内燃機関の出力トルクの最大値の95%の大きさのトルク値であることが好適である(第6発明)。
【0050】
この第6発明によれば、前記第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が、前記所定の下限値に一致する場合であっても、内燃機関の出力トルクの最大値を、前記高オクタン価燃料の濃度が100%である第1燃料(その全体が高オクタン価燃料から成る第1燃料)だけを使用して前記内燃機関の運転を行った場合に実現される該内燃機関の出力トルクの最大値との差が十分に小さい高トルクにすることができる。
【0051】
また、図2のグラフに見られる如く、内燃機関の出力トルクの最大値は、高オクタン価燃料供給割合がある程度大きくなると飽和していき、高オクタン価燃料供給割合の増加に対する出力トルクの最大値の増加度合いが小さくなる。
【0052】
このため、高オクタン価燃料の濃度が100%である第1燃料だけを使用して前記内燃機関の運転を行った場合、換言すれば、高オクタン価燃料供給割合を100%として内燃機関の運転を行なった場合に実現される該内燃機関の出力トルクの最大値(以下、基準最大トルクという)の95%の大きさのトルク値に対応する高オクタン価燃料供給割合は、比較的小さな割合となる。
【0053】
より具体的には、図2のグラフで見られる如く、内燃機関の出力トルクの最大値が、上記基準最大トルクの95%の大きさのトルク値となるような高オクタン価燃料供給割合は、例えば30%程度となる。
【0054】
このため、前記第6発明によれば、内燃機関が出力可能な出力トルクの最大値を、十分に高いトルクに確保し得る範囲内で、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度を極力低くすることが可能となり、ひいては、高オクタン価燃料の消費量をより一層低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明を説明するためのグラフ。
【図2】本発明を説明するためのグラフ。
【図3】本発明の一実施形態における内燃機関の運転システムの構成を示す図。
【図4】図1に示す内燃機関の各気筒の構成を示す図。
【図5】図1に示す運転システムの制御に関する構成を示すブロック図。
【図6】図1及び図5に示す電子制御装置の処理を示すフローチャート。
【図7】図6のSTEP1の処理で使用するマップを示す図。
【図8】図6のSTPE2の処理で使用するマップを示す図。
【図9】図6STPE2の処理で使用するマップを示す図。
【図10】図1及び図5に示す電子制御装置の処理を示すフローチャート。
【図11】図10のSTEP12の処理で使用するマップを示す図。
【図12】図10のSTPE12の処理で使用するマップを示す図。
【図13】高オクタン価燃料の濃度の上限値の設定の仕方を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の一実施形態を以下に説明する。
【0057】
まず、図3及び図4を参照して、本実施形態の内燃機関の運転システムは、車両に走行用の動力源として搭載された内燃機関1と、この内燃機関1の運転制御を行う電子制御装置50とを備えている。
【0058】
内燃機関1は、本実施形態では、例えば4気筒の内燃機関である。但し、内燃機関1の気筒数は、4個である必要はない。例えば内燃機関1は、単気筒もしくは6気筒の内燃機関であってもよい。
【0059】
この内燃機関1の吸気系は、各気筒2の燃焼室3で燃焼させる燃料と混合する空気(新気)を、全気筒2に対して共通の吸気通路4と各気筒2の燃焼室3の吸気ポートに連通するインテークマニホールド5とを順に経由して各気筒2の燃焼室3に供給するように構成されている。
【0060】
この場合、吸気通路4には、これに外部から流入する空気中(大気中)の不要物を除去するエアクリーナ6と、空気の流量を調整するためのスロットル弁7とが上流側から順に介装されている。スロットル弁7は、電動式のスロットル弁であり、その開度が図示しない電動モータを介して制御される。
【0061】
そして、各気筒2の燃焼室3の吸気ポートを開閉するための吸気バルブ8(図4に示す)と、該吸気バルブ8を開閉駆動する吸気バルブ駆動機構9(図3に示す)とが内燃機関1に付設されている。吸気バルブ駆動機構9は、その詳細な図示は省略するが、内燃機関1の出力軸であるクランク軸10に連動して回転する吸気カムによりロッカアームを介して吸気バルブ8の開閉駆動を行なうものである。
【0062】
内燃機関1の排気系は、各気筒2の燃焼室3で生成される排ガスを、各気筒2の燃焼室3の排気ポートに連通するエギゾーストマニホールド12と、全気筒2に対して共通の排気通路13とを順に経由して排気するように構成されている。この場合、排気通路13には、排ガス浄化用の触媒14が介装されている。
【0063】
そして、各気筒2の燃焼室3の排気ポートを開閉するための排気バルブ15(図4に示す)と、該排気バルブ15を開閉駆動する排気バルブ駆動機構16(図3に示す)とが内燃機関1に付設されている。排気バルブ駆動機構16は、その詳細な図示は省略するが、内燃機関1の出力軸であるクランク軸10に連動して回転する排気カムによりロッカアームを介して排気バルブ15の開閉駆動を行なうものである。
【0064】
上記の如く構成された内燃機関1の吸気系及び排気系には、さらにEGR装置18が付設されている。
【0065】
EGR装置18は、排ガスの一部を吸気側に還流させ、その還流させた排ガスを各気筒2の燃焼室3に空気(燃料と混合する新気)と共に供給する装置であり、排気通路13の上流端部(エギゾーストマニホールド12との接続箇所近辺)から分流されてインテークマニホールド5に合流されたEGR通路19(還流される排ガスの通路)を備えている。
【0066】
このEGR通路19には、吸気側に還流させる排ガスを冷却する排ガス冷却手段としてのEGRクーラ20と、該排ガスの流量を制御するための電動式又は電磁式の流量制御弁21(以下、EGR弁21という)とが介装され、EGR弁21の開度を制御することで、EGR率(燃焼室3に供給する空気と排ガスとの総量に対する排ガス量の割合い)を制御することが可能となっている。
【0067】
また、内燃機関1には、各気筒2の燃焼室3で燃焼させる燃料を供給する燃料供給装置23の構成要素として各気筒2毎に設けられた燃料噴射弁24a,24bが付設されている。
【0068】
ここで、本実施形態の内燃機関1は、各気筒2の燃焼室3に、オクタン価(平均的なオクタン価)が互いに相違する第1燃料と第2燃料とをそれぞれ燃料噴射弁24a,24bから各別に供給し得るようにして、該第1燃料及び第2燃料の両方又は一方を各気筒2の燃焼室3で燃焼させることで、運転を行なう機関である。
【0069】
そして、本実施形態における燃料供給装置23は、これらの第1燃料と、第2燃料とを、高オクタン価燃料と低オクタン価燃料とを混合してなる混合燃料(原燃料)から燃料分離装置25によって分離・生成する。この場合、混合燃料(原燃料)は、本実施形態では、高オクタン価燃料としてのエタノールと、それよりもオクタン価が低い低オクタン価燃料としてのガソリンとの混合燃料である。
【0070】
より詳しくは、本実施形態における混合燃料は、該混合燃料中のエタノール(高オクタン価燃料)の濃度(体積濃度)が、該混合燃料中のガソリン(低オクタン価燃料)の濃度よりも小さい混合燃料、例えばE10と言われる混合燃料である。このE10は、約10%(体積比)の濃度でエタノールを含有する混合燃料である。
【0071】
そして、この混合燃料(原燃料)から分離・生成する上記第1燃料は、該混合燃料よりも高オクタン価燃料(エタノール)の濃度が高い燃料であり、上記第2燃料は、該混合燃料よりも高オクタン価燃料(エタノール)の濃度が低い燃料である。この場合、第2燃料中の高オクタン価燃料の濃度は、第1燃焼中の高オクタン価燃料の濃度に比して十分に小さいものとされる。
【0072】
上記燃料分離装置25を有する燃料供給装置23の構成をより具体的に説明すると、該燃料供給装置23は、第1燃料を貯蔵する第1燃料タンク26と、第2燃料を貯蔵する第2燃料タンク27とを備え、第2燃料タンク27に燃料分離装置25が搭載されている。そして、この燃料分離装置25には、前記混合燃料(原燃料)を貯蔵する燃料タンク(図示省略)から該混合燃料が供給されるようになっている。
【0073】
上記燃料分離装置25は、詳細な図示は省略するが、例えば混合燃料の分離を行なう分離膜を備える膜分離装置であり、供給される混合燃料から、高オクタン価燃料の濃度があらかじめ設定された所定値(目標値)に概ね一致するような第1燃料を分離・生成することができるように構成されている。このような燃料分離装置25は、公知の構造のものでよく、例えば特開2007−278298号公報等に見られるものを採用することができる。
【0074】
そして、燃料分離装置25は、混合燃料から分離・生成した第1燃料を前記第1燃料タンク26に移送して該第1燃料タンク26に貯蔵し、この第1燃料を混合燃料から除いた残燃料を第2燃料として第2燃料タンク27に貯蔵する。
【0075】
ここで、本実施形態では、混合燃料から分離・生成する第1燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度の目標値は、あらかじめ定められた所定の上限値(<100%)と下限値(>0%)との間の範囲内の値に設定されている。この濃度(体積比での濃度)の上限値及び下限値は、例えば、それぞれ75%、30%である。従って、燃料分離装置25で生成する第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度の目標値は、30〜75%の範囲内の値(例えば50%等である)。そして、燃料分離装置25は、高オクタン価燃料の実際の濃度が、30〜75%の範囲に収まりつつ、上記目標値にほぼ一致するような第1燃料を生成し得るように、分離膜のサイズや分離速度等に関する構成が設計されている。
【0076】
なお、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度の上限値、下限値を上記の如く設定した理由については後述する。
【0077】
そして、燃料供給装置23は、第1燃料タンク26の高オクタン価燃料をポンプ等により構成される昇圧機構28により昇圧して、燃料噴射弁24a,24bのうちの燃料噴射弁24aに供給し、また、第2燃料タンク27の低オクタン価燃料をポンプ等により構成される昇圧機構29により昇圧して、燃料噴射弁24a,24bのうちの燃料噴射弁24bに供給するように構成されている。
【0078】
燃料噴射弁24a,24bのうちの第1燃料用の燃料噴射弁24aは、本実施形態では、各気筒2の燃焼室3に直接的に第1燃料を噴射する直噴型のものであり、図4に示す如く、各気筒2の燃焼室3の頂部に取り付けられている。また、第2燃料用の燃料噴射弁24bは、本実施形態では、各気筒2の燃焼室3に吸気ポートを介して第2燃料を供給するポート噴射型のものであり、図4に示す如くインテークマニホールド5に取り付けられている。そして、各燃料噴射弁24a,24bは、その開弁時間を制御することで、燃料噴射量(燃焼室3への燃料供給量)を制御することが可能となっている。
【0079】
上記のように第1燃料用の燃料噴射弁24aと、第2燃料用の燃料噴射弁24bとを各別に備えることで、各気筒2の燃焼室3に供給する第1燃料の量と第2燃料の量とを各別に制御できる。この場合、燃料分離装置25により生成される第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度はほぼ一定の値であり、また、第2燃料中の高オクタン価濃度は、第1燃料中の高オクタン価濃度に比して十分に小さい。
【0080】
このため、各気筒2の燃焼室3に1燃焼サイクル当たりで供給されるトータルの燃料中の高オクタン価燃料の供給割合は、実質的に、該トータルの燃料の量(第1燃料と第2燃料との総量)に対する第1燃料の量の比率(体積比)と、該第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度とに応じて規定されることとなる。従って、燃料噴射弁24a,24bのそれぞれの燃料噴射量を制御することで、各気筒2の燃焼室3に供給されるトータルの燃料中の高オクタン価燃料の供給割合(トータルの燃料の量に対する高オクタン価燃料の量の体積比)を制御できることとなる。
【0081】
また、内燃機関1には、各気筒2の燃焼室3で圧縮される混合気に点火する点火装置の構成要素として各気筒2毎に設けられた点火プラグ30が付設されている。
【0082】
点火プラグ30は、各気筒2の燃焼室3の頂部に装着され、所要のタイミングで図示しないディストリビュータから高電圧が供給されて火花放電を発生する。
【0083】
以上が本実施形態のシステム(内燃機関1及びこれに付帯するシステム)の機構的な構成である。
【0084】
電子制御装置50は、CPU、RAM、ROM等を含む電子回路ユニットであり、図5のブロック図に示す如く、前記スロットル弁7、EGR装置18のEGR弁21、燃料供給装置23の燃料噴射弁24a,24b、点火プラグ30の動作を制御する。
【0085】
これらの制御を担う電子制御装置50には、各種のセンサの検出信号が入力される。本実施形態のシステムでは、以下に示すようなセンサが備えられており、これらのセンサの検出信号が電子制御装置50に入力される。
【0086】
すなわち、本実施形態のシステムでは、内燃機関1のクランク軸10の回転数NE(回転速度)を検出するための信号(詳しくは、クランク軸10の所定の回転角度毎に発生するパルス信号)を出力する回転数センサ51が内燃機関1に付設されている。
【0087】
また、吸気通路4を流れる空気の流量Qを検出する空気流量センサ52と、スロットル弁7に流入する空気の圧力P2を検出する圧力センサ53とが図3に示す如く吸気通路4に設けられている。
【0088】
さらに、本実施形態のシステムには、図示を省略する車両のアクセルペダルの踏み込み量(以下、アクセル操作量という)を検出するアクセルセンサ54が備えられている。
【0089】
次に、本実施形態のシステムの作動を説明する。前記電子制御装置50は、内燃機関1の運転を制御するために、各気筒2の燃焼室3に供給する空気量を前記スロットル弁7等を介して制御する制御処理と、各気筒2の燃焼室3に供給する燃料を前記燃料噴射弁24a,24bを介して制御する制御処理と、前記点火プラグ30による点火時期を制御する制御処理とを実行する。
【0090】
この場合、各気筒2の燃焼室3に供給する空気量に関する制御処理は、例えば図6フローチャートに示す如く実行される。
【0091】
この処理では、電子制御装置50は、まず、STEP1で、吸気通路4の空気流量Qの目標値である目標空気量を決定する。
【0092】
具体的には、電子制御装置50は、内燃機関1の要求トルク(出力トルクの目標値)と、回転数センサ51の出力により認識される回転数NEの計測値とから、図7に示す如く設定されたマップ(要求トルクと回転数NEと目標空気量との間の関係を規定するマップ)に基づいて、要求トルクを実現するために必要な目標空気量を決定する。
【0093】
図7に示すマップの基本的傾向は、要求トルクが大きいほど、目標空気量が大きくなり、また、回転数NEが高いほど、目標空気量が大きくなるように設定されている。なお、要求トルクは、前記アクセルセンサ54の出力により認識されるアクセル操作量の計測値から、あるいは、該アクセル操作量の計測値と車速の計測値とから、図示しないマップに基づき決定される。この場合、基本的には、要求トルクは、アクセル操作量が大きいほど、大きくなるように決定される。
【0094】
次いで、STEP2に進んで、電子制御装置50は、目標空気量を実現するためのEGR率の目標値と、スロットル開度の目標値とを設定する。
【0095】
具体的には、電子制御装置50は、STEP1で決定した目標空気量と、前記圧力センサ53の出力により認識される圧力P2(スロットル弁7に流入する空気の圧力)の計測値と、内燃機関1の回転数NEの計測値とから図8に示す如く設定されたマップ(目標空気量と圧力P2と回転数NEとEGR率の目標値との間の関係を規定するマップ)に基づいて、EGR率の目標値を設定する。図8に示すマップの基本的な傾向は、目標空気量が大きいほど、EGR率の目標値が減少し、また、圧力P2が大きいほど、EGR率の目標値が増加し、また、回転数NEが高いほど、EGR率の目標値が増加するように設定されている。
【0096】
また、電子制御装置50は、目標空気量と、圧力P2の計測値と、回転数NEの計測値とから図9に示す如く設定されたマップ(目標空気量と圧力P2と回転数NEとスロットル開度の目標値との間の関係を規定するマップ)に基づいて、スロットル開度の目標値を設定する。図9に示すマップの基本的な傾向は、目標空気量が大きいほど、スロットル開度の目標値が増加し、また、圧力P2が大きいほど、スロットル開度の目標値が減少し、また、回転数NEに対しては、スロットル開度の目標値がほぼ一定になるように設定されている。
【0097】
なお、前記目標空気量は、内燃機関1の要求トルクが高いほど、大きくなるように設定されるので、図8のマップを用いて決定される前記EGR率の目標値は、結果的に、該要求トルクが高いほど、該EGR率の目標値が小さくなるような特性で決定されることなる。
【0098】
また、図9のマップを用いて決定される前記スロットル開度の目標値は、結果的に、該要求トルクが高いほど、該スロットル開度の目標値が大きくなるような特性で決定されることなる。
【0099】
次いで、STEP3に進んで、電子制御装置50は、前記空気流量センサ52の出力により認識される空気流量Qの計測値が、STEP1で決定した目標空気量に一致するか否かを判断する。なお、ここで空気流量Qの計測値が目標空気量に一致するというのは、厳密に等しいということを意味するものではなく、それらの差の絶対値がある所定値以下に収まる状態を意味する。
【0100】
このSTEP3の判断結果が肯定的である場合には、電子制御装置50は、図6のフローチャートの今回の処理を終了し、次回の演算処理周期まで待機する。この場合には、EGR弁21の開度と、スロット開度とは現状の状態に維持される。
【0101】
一方、STEP3の判断結果が否定的である場合には、電子制御装置50は、STEP4の処理を実行する。このSTEP4では、電子制御装置50は、実際の空気流量Q(計測値)を目標空気量に近づけるように、実際の実効圧縮比と、実際のEGR率と、実際のスロットル開度とを現状の状態から変更する。
【0102】
そして、電子制御装置50は、STEP3と同じ判断処理をSTEP4に続くSTEP5で実行し、このSTEP5の判断結果が肯定的となるまで、STEP4の処理を繰り返す。
【0103】
この場合、上記のように繰り返されるSTEP4の処理はより具体的には次のように行なわれる。すなわち、STEP3の次の最初のSTEP4の処理では、EGR弁21の実際の開度と、実際のスロットル開度とが、それぞれ、STEP2で設定したEGR率の目標値に応じて決定したEGR弁21の基準の開度、STEP2で設定したスロットル開度の目標値に制御される。この場合、EGR弁21の基準の開度は、STEP2で設定したEGR率の目標値を実現するための開度であり、該目標値に応じて、あらかじめ設定されたマップ等により決定される。
【0104】
そして、STEP5の判断処理で空気流量Qが目標空気量よりも小さい場合におけるSTEP4の処理では、EGR弁21の実際の開度を現在の開度から所定量だけ減少させる(ひいてはEGR率を減少させる)ことと、実際のスロットル開度を現在の開度から所定量だけ増加させることとが実行される。
【0105】
また、STEP5の判断処理で空気流量Qが目標空気量よりも大きい場合におけるSTEP4の処理では、EGR弁21の実際の開度を現在の開度から所定量だけ増加させる(ひいてはEGR率を増加させる)ことと、実際のスロットル開度を現在の開度から所定量だけ減少させることとが実行される。
【0106】
このようにして、上記STEP4の処理を繰り返すことによって、EGR弁21の実際の開度と、実際のスロットル開度とが、それぞれ、EGR率の目標値に対応する基準の開度、スロットル開度の目標値の近辺で調整される。これにより、実際の空気流量Q(計測値)が目標空気量に一致するように、EGR弁21の実際の開度と、実際のスロットル開度とがそれぞれ制御されることとなる。
【0107】
以上が、図4のフローチャートの処理の詳細である。
【0108】
また、燃料と点火時期とに関する制御処理は、例えば図10のフローチャートに示す如く実行される。
【0109】
この処理では、電子制御装置50は、まず、STEP11で、空気流量Qの計測値を取得する。
【0110】
次いで、STEP12に進んで、電子制御装置50は、各気筒2の燃焼室3に供給するトータルの燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の供給割合(以降、エタノール比率ということがある)の目標値と、点火時期の目標値とを設定する。
【0111】
具体的には、電子制御装置50は、空気流量Qの計測値と、圧力P2の計測値と、内燃機関1の回転数NEの計測値とから図11に示す如く設定されたマップ(空気流量Qと圧力P2と回転数NEとエタノール比率の目標値との間の関係を規定するマップ)に基づいて、エタノール比率の目標値を決定する。図11に示すマップの基本的な傾向は、空気流量Qが大きいほど、エタノール比率の目標値が増加し、また、圧力P2が大きいほど、エタノール比率の目標値が減少し、また、回転数NEが高いほど、エタノール比率の目標値が減少するように設定されている。
【0112】
なお、図11のマップにおけるエタノール比率の目標値は、燃料噴射弁24aの燃料噴射量が下限噴射量以上に保たれるように設定されている。このため、図11のマップでは、エタノール比率の目標値が、“0”に近い値(>0)で、ほぼ一定となるような領域が設定されている。
【0113】
補足すると、図11のマップによりエタノール比率の目標値を設定することで、結果的には、該エタノール比率の目標値(高オクタン価燃料の供給割合の目標値)は、図1(b)のグラフで示したような特性(第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度がある一定値(40%等)である場合のグラフの特性)で、内燃機関1の出力トルクに対して変化するように設定されることとなる。
【0114】
また、電子制御装置50は、空気流量Qの計測値と、圧力P2の計測値と、内燃機関1の回転数NEの計測値とから図12に示す如く設定されたマップ(空気流量Qと圧力P2と回転数NEと点火時期の目標値との間の関係を規定するマップ)に基づいて、点火時期の目標値を決定する。図12に示すマップの基本的な傾向は、内燃機関1の高負荷運転以外の運転時(中負荷又は低負荷運転時)においては、点火時期の目標値を最適点火時期(所謂、MBT)に保持し、内燃機関1の高負荷運転時には、空気流量Qが大きいほど、点火時期の目標値の最適点火時期からの遅角量が増加し、また、圧力P2が小さいほど、点火時期の目標値の上記遅角量が増加し、また、回転数NEが高いほど、点火時期の目標値の上記遅角量が減少するように設定されている。
【0115】
次いで、STEP13に進んで、電子制御装置50は、各気筒2毎の燃料噴射弁24a,24bの実際の燃料噴射量を、上記の如く決定したエタノール比率の目標値を満たすように制御すると共に、各気筒2毎の点火プラグ30の実際の点火時期を目標値に制御する。
【0116】
この場合、燃料噴射弁33a,33bの実際の燃料噴射量の制御においては、燃料噴射弁33a,33bのそれぞれの実際の燃料噴射量の総和(各気筒2の燃焼室3に供給するトータルの燃料供給量)が吸気通路4の空気流量Qの計測値に応じて決定される。そして、このトータルの燃料供給量とエタノール比率の目標値と第1燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度とから各燃料噴射弁24a,24bの燃料噴射量が決定され、その決定された燃料噴射量に応じて各燃料噴射弁24a,24bの開弁時間が制御される。
【0117】
なお、各燃料噴射弁24a,24bの燃料噴射量を決定するために用いる第1燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度の値については、前記燃料分離装置25における目標値でもよいが、第1燃料タンク26内の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度を適宜のセンサによって検出するようにした場合には、その濃度の検出値を用いてもよい。
【0118】
次いで、STEP14に進んで、電子制御装置50は、図示しないノックセンサによって内燃機関1のノッキングが発生するか否かを判断する。そして、この判断結果が否定的である場合には、電子制御装置50は、図10のフローチャートの今回の処理を終了し、次回の演算処理周期まで待機する。
【0119】
一方、STEP14の判断結果が肯定的である場合には、電子制御装置50はSTEP15の処理を実行する。このSTEP15の処理では、電子制御装置50は、エタノール比率を現状の値から所定量だけ増加させるように、各気筒2毎の燃料噴射弁24a,24bの燃料噴射量を調整する。
【0120】
そして、電子制御装置50は、STPE16において、STEP14と同じ判断処理を実行し、このSTEP16の判断結果が否定的になるまで、STEP15の処理を繰り返す。
【0121】
以上が図10のフローチャートの制御処理である。
【0122】
補足すると、電子制御装置50は、本発明における燃料供給制御手段としての機能を含んでいる。この場合、燃料供給制御手段としての機能は、図10のフローチャートの処理(STEP11〜16の処理のうち、点火時期に関する処理を除く処理)によって実現される。この場合、前記エタノール比率が本発明における燃料供給割合パラメータに相当する。
【0123】
なお、本実施形態では、前記エタノール比率(高オクタン価燃料の供給割合)そのものを本発明における燃料供給割合パラメータとしても用いたが、本実施形態では、各気筒2の燃焼室3に供給するトータルの燃料中の第1燃料の供給割合によって、高オクタン価燃料の供給割合がほぼ規定される。従って、例えば、該第1燃料の供給割合を、本発明における燃料供給割合パラメータとしても用いてもよい。
【0124】
本実施形態では、電子制御装置50によって図6及び図10のフローチャートの処理が上記の如く実行される。これにより、内燃機関1の出力トルクが要求トルクになるように制御される。この場合、前記した如く設定されるエタノール比率(高オクタン価燃料の供給割合)は、結果的に、内燃機関1の出力トルクに対して図1(b)のグラフのような特性(第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度がある一定値(40%等)である場合のグラフの特性)で変化するように制御されることとなる。
【0125】
次に、前記第1燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度の上限値と下限値とをそれぞれ、前記した如く75%、30%に設定した理由を以下に説明する。
【0126】
まず、第1燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度の上限値に関しては、この上限値を決定するために、本実施形態では、事前に次のような実験を行なった。すなわち、前記混合燃料(E10燃料)から分離・生成した第1燃料と第2燃料との組を複数組、あらかじめ作成した。この場合、第1燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度を、所定の範囲(例えば体積比で40〜100%の範囲)内で種々様々な値に設定して、第1燃料及び第2燃料の組を複数組作成した。なお、いずれの組についても、第2燃料中の高オクタン価燃料の濃度は約0%である。
【0127】
そして、形式の異なる複数種類の内燃機関1を用意し、各種類の内燃機関1毎に、各組の第1燃料及び第2燃料を用いて、あらかじめ定められた運転モードでの内燃機関1の運転を行い、その運転中における第1燃料中の高オクタン価燃焼の消費量を計測した。この場合、運転モードを複数種類のパターンで定めておき、各パターンの運転モード毎に、上記の如く高オクタン価燃料の消費量を計測した。なお、いずれの運転モードも、第1燃料量の燃料噴射弁24aの燃料噴射量が、下限噴射量に制限されることとなるような運転状態、すなわち、図1(a),(b)に示す高頻度領域での内燃機関1の運転状態を含むように定められた運転モードである。
【0128】
かかる計測実験により得られた結果のデータを図13に示す。図13は、第1燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度が100%である場合に計測された高オクタン価燃料(エタノール)の消費量を基準(“1”)とする相対消費量と、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度との関係を表したものであり、図中の実線d1とd2との間の領域が、高オクタン価燃料の消費量の計測値に相当する相対消費量の分布領域を示している。
【0129】
すなわち、第1燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度の各値に対して、高オクタン価燃料の消費量の計測値に相当する相対消費量は、図13の実線d1とd2との間の範囲内に収まる。この図13に見られる如く、高オクタン価燃料の消費量は、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が高いほど、増加する傾向となる。
【0130】
本実施形態では、このようにして得られた図13のデータに基づいて、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度の上限値を設定した。具体的には、図13において、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度が100%である場合の高オクタン価燃料の消費量の、90%以下の消費量となる(相対消費量が0.9以下となる)となる高オクタン価燃料の濃度の値を、高オクタン価燃料の上限値とした。その上限値は、図13に示す如く、75%程度である。
【0131】
次に、第1燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度の下限値は、前記した図2のグラフに基づいて設定した。なお、図2のグラフは、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3に供給するトータルの燃料中の高オクタン価燃料の供給割合を種々様々な値に設定して内燃機関1の運転を行った場合の実験データに基づいて作成されたものである。
【0132】
この場合、図2のグラフにおいて、高オクタン価燃料の供給割合(エタノール比率)を100%とした場合(すなわち、燃料噴射弁24a,24bのうちの燃料噴射弁24aのみから、高オクタン価燃料(エタノール)の濃度が100%である第1燃料を各気筒2の燃焼室3に供給した場合)における内燃機関1の最大出力トルク(トルク比率が0%のトルク)の95%のトルク(トルク比率が−5%のトルク)となる高オクタン価燃料の供給割合(エタノール比率)の値を、該高オクタン価燃料の供給割合の下限値とした。その下限値は、30%である。
【0133】
そして、その下限値(30%)以上の高オクタン価燃料の供給割合を実現するためには、第1燃料中の高オクタン価燃料(エタノール)の濃度が、高オクタン価燃料の供給割合の当該下限値(30%)以上であることが必要であることから、高オクタン価燃料の供給割合の当該下限値(30%)をそのまま、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度の下限値として設定した。
【0134】
以上が、本実施形態において、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度の上限値、下限値をそれぞれ75%、30%に設定した理由である。
【0135】
以上説明した実施形態では、燃料分離装置25により分離・生成される第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度を上記の如く設定した上限値以下の濃度に制限したので、内燃機関1の運転の上記の運転モードで行なった場合の高オクタン価燃料の消費量を少なくできる。また、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度を上記の如く設定した下限値以上の濃度に制限したので、内燃機関1が出力可能な最大トルクを、高オクタン価燃料の供給割合を100%とする場合の最大トルク(基準最大トルク)に十分に近い高トルクにすることができる。
【0136】
また、前記燃料分離装置25が分離・生成する第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度を低めの濃度にすることができるので、該燃料分離装置25に要求される能力が軽減される。このため、該燃料分離装置25の小型に構成することができると共に、目標とする高オクタン価燃料の濃度の第1燃料を作成する時間を短縮することができる。
【0137】
さらに、前記燃料分離装置25が分離・生成する第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度を低めの濃度にすることができるので、内燃機関1の各気筒2の燃焼室3に供給する燃料中の高オクタン価燃料の供給割合が一定である場合、第1燃料中の高オクタン価燃料の濃度がより高い場合に比して、直噴型の燃料噴射弁である第1燃料用の燃料噴射弁24aに供給する第1燃料の量を多くする(すなわち前記直噴比率を高める)ことができる。
【0138】
このため、該燃料噴射弁24aの冷却効果を高めることができ、該燃料噴射弁24aが過剰に高温になるのを防止することができる。
【0139】
なお、以上説明した実施形態では、高オクタン価燃料がエタノールであり、低オクタン価燃料がガソリンである場合を例にとって説明したが、高オクタン価燃料は、エタノール以外に、メタノール等の他のアルコール、あるいは、芳香族炭化水素等であってもよい。さらに、該高オクタン価燃料は、複数種類の燃料成分から構成される燃料であってもよい。
【0140】
また、前記実施形態では、第1燃料用の燃料噴射弁24aを直噴型のものとしたが、第2燃料用の燃料噴射弁24bと同様に、ポート噴射型のものであってもよい。
【符号の説明】
【0141】
1…内燃機関、3…燃焼室、24a,24b…燃料噴射弁、25…燃料分離装置、50…電子制御装置(燃料供給制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高オクタン価燃料と該高オクタン価燃料よりもオクタン価が低い低オクタン価燃料との混合燃料を、該混合燃料よりも前記高オクタン価燃料の濃度が高い第1燃料と該混合燃料よりも前記高オクタン価燃料の濃度が低い第2燃料とに分離する燃料分離装置と、前記第1燃料及び第2燃料の少なくとも一方を燃焼室で燃焼させることにより運転を行う内燃機関と、前記燃料分離装置により分離された第1燃料及び第2燃料が供給され、前記内燃機関の燃焼室で燃焼させる第1燃料と第2燃料とをそれぞれ所定の下限噴射量以上の燃料噴射量で各別に噴射する第1燃料噴射弁及び第2燃料噴射弁と、前記内燃機関の燃焼室に供給する燃料中の前記高オクタン価燃料の供給量の割合である高オクタン価燃料供給割合の目標値を規定する燃料供給割合パラメータを少なくとも前記内燃機関の出力トルクに応じて変化させるように可変的に設定し、その設定した燃料供給割合パラメータに応じて前記第1燃料噴射弁及び第2燃料噴射弁のそれぞれの燃料噴射量を制御する燃料供給制御手段とを備えた内燃機関の運転システムであって、
前記燃料分離装置は、前記高オクタン価燃料の濃度が所定の上限値以下となる前記第1燃料を前記混合燃料から分離し得る能力の装置として構成されており、
前記所定の上限値は、前記第1燃料噴射弁の燃料噴射量が前記下限噴射量となる内燃機関の運転状態を少なくとも含むあらかじめ定められた運転モードでの該内燃機関の運転を、前記燃料分離装置により得られた第1燃料及び第2燃料を使用して行なった場合に実測される前記高オクタン価燃料の消費量である第1高オクタン価燃料消費量が、前記運転モードでの内燃機関の運転を、前記高オクタン価燃料の濃度がそれぞれ100%、0%である前記第1燃料及び第2燃料を使用して行なった場合に実測される前記高オクタン価燃料の消費量である第2高オクタン価燃料消費量よりも所定量以上少なくなるように設定されていることを特徴とする内燃機関の運転システム。
【請求項2】
請求項1記載の内燃機関の運転システムにおいて、
前記第1燃料を噴射する第1燃料噴射弁は、前記内燃機関の燃焼室に直接的に前記第1燃料を噴射する直噴型の燃料噴射弁であり、前記第2燃料を噴射する第2燃料噴射弁は、前記内燃機関の燃焼室の吸気ポートを介して該燃焼室に前記第2燃料を噴射するポート噴射型の燃料噴射弁であることを特徴とする内燃機関の運転システム。
【請求項3】
請求項1又は2記載の内燃機関の運転システムにおいて、
前記所定の上限値は、前記第1高オクタン価燃料消費量が、前記第2高オクタン価燃料消費量の90%以下の値となるように設定されていることを特徴とする内燃機関の運転システム。
【請求項4】
請求項3記載の内燃機関の運転システムにおいて、
前記所定の上限値は、75%であることを特徴とする内燃機関の運転システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の内燃機関の運転システムにおいて、
前記燃料分離装置は、前記高オクタン燃料の濃度が前記所定の上限値以下となると共に、所定の下限値以上となる前記第1燃料を前記混合燃料から分離し得る能力の装置として構成されており、
前記所定の下限値は、前記内燃機関の燃焼室に供給する燃料として、前記高オクタン価燃料の濃度を該所定の下限値に一致させた第1燃料だけを使用して該内燃機関の運転を行った場合に実現される該内燃機関の出力トルクの最大値があらかじめ設定された所定のトルク値以上となるように設定されていることを特徴とする内燃機関の運転システム。
【請求項6】
請求項5記載の内燃機関の運転システムにおいて、
前記所定のトルク値は、前記高オクタン価燃料の濃度が100%である第1燃料だけを使用して前記内燃機関の運転を行った場合に実現される該内燃機関の出力トルクの最大値の95%の大きさのトルク値であることを特徴とする内燃機関の運転システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−163003(P2012−163003A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22017(P2011−22017)
【出願日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】