説明

内燃機関排気内のNOx吸蔵触媒の再生開始方法および制御装置

【課題】NOx吸蔵触媒の再生を適切な時点で開始するための改善された再生開始方法および制御装置を提供する。
【解決手段】NOx吸蔵触媒の蓄積量を決定するステップと、蓄積量の関数である判定値を決定するステップ(40)と、判定値をしきい値と比較するステップ(42)と、および比較結果の関数として再生を開始するステップ(44)とを有する、内燃機関(10)排気内のNOx吸蔵触媒(30)の再生開始方法(44)が開示される。本方法は、判定値を決定するステップ(40)が、吸蔵触媒のNOx蓄積量の関数である第1の部分判定値を形成するステップ(36)と、内燃機関(10)の運転パラメータの関数である第2の部分判定値を形成するステップ(38)と、両方の部分判定値を判定値に結合するステップ(40)とを有することを特徴とする。さらに、このような方法経過を制御する制御装置が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOx吸蔵触媒の蓄積量を決定するステップと、蓄積量の関数である判定値を決定するステップと、判定値をしきい値とを比較するステップと、比較結果の関数として再生を開始するステップとを有する、内燃機関排気内のNOx吸蔵触媒の再生開始方法に関するものである。
【0002】
さらに本発明はこのような方法を実行する制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0003】
このような方法およびこのような制御装置は、それぞれそれ自身既知である。
内燃機関内における過剰空気での燃料の燃焼においては、燃料および空気からなる理論混合物の燃焼においてよりも多い窒素酸化物が形成される。このきわめて高い窒素酸化物エミッションを転化するために、最新の内燃機関は吸蔵触媒を有し、吸蔵触媒は空気過剰運転において放出された窒素酸化物を排気ガスから受け取り且つ吸蔵する。排気ガスから受け取られた窒素酸化物の、排気ガス内の窒素酸化物全量に対する割合は、吸蔵触媒温度、排気ガス容積流量、排気ガス組成および特に既に吸蔵されている窒素酸化物の量の関数である。
【0004】
吸蔵触媒の窒素酸化物蓄積量の増加と共に低下する吸蔵能力を回復させるために、吸蔵触媒は時々還元性排気ガス雰囲気内で再生されなければならない。還元性排気ガス雰囲気内および特に特定の温度範囲内において、吸蔵されている窒素酸化物は窒素分子の形で放出される。還元性排気ガス雰囲気は、例えば高い燃料配量により形成される。還元性排気ガス雰囲気は排気ガス内の還元剤により形成され、還元剤は、排気ガスに、エンジン内部で即ち例えば燃焼室への高い燃料配量により、または排気ガス内に行われる混合注入により供給される。還元剤として、例えばCOおよび/またはH2および/または炭化水素が作用する。
【0005】
再生が数秒程度の長さの時間を必要とする一方で、吸蔵は数分程度の長さの時間にわたって行われる。したがって、時間平均において、内燃機関は、主として空気過剰で運転可能である。
【0006】
吸蔵触媒がきわめて稀にしか再生されず且つ十分に強力に再生されなかった場合、吸蔵触媒後方に不必要に高い窒素酸化物が発生する。これに対して吸蔵触媒がきわめて頻繁におよび/またはきわめて強力に再生された場合、還元剤消費量が不必要に高くなり且つ吸蔵触媒後方における炭化水素エミッションが上昇することになる。
【0007】
したがって、一般に、NOx吸蔵触媒の吸蔵能力が特定の最小値に低下したとき、またはこれと同じ意味ではあるが、吸蔵触媒の蓄積量が特定のしきい値を超えたとき、正確にその時点において常に再生を実行することが好ましい。
【0008】
時間で制御された再生または運転点の関数としてのみの再生は許容できない程度に前記欠点を伴うことになる。吸蔵触媒の蓄積状態を正しく測定するために、連続計算(制御装置内の蓄積モデル)または1つまたは2つの適切なNOxセンサが必要である。それにより、予め決定された蓄積限界値に到達したときに再生が開始可能である。従来においては、吸蔵触媒の蓄積状態は、内燃機関および吸蔵触媒の運転パラメータから計算によりモデル化され、および/または排気系内NOxセンサの信号から決定されてきた。所定の蓄積しきい値を超えたとき、吸蔵触媒の再生が開始されてきた。
【0009】
既知の方法においては、NOx吸蔵触媒の好ましくない強力な加熱および内燃機関運転への不利な影響が観察されてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
この背景から、前記欠点を回避し、または少なくとも低減させる、NOx吸蔵触媒の改善された再生開始方法を提供することが本発明の課題である。この課題は、このような方法を制御する制御装置の提供にまでも及ぶものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、冒頭記載のタイプの方法において、判定値を決定するステップが、吸蔵触媒のNOx蓄積量の関数である第1の部分判定値を形成するステップと、内燃機関の運転パラメータの関数である第2の部分判定値を形成するステップと、両方の部分判定値を判定値に結合するステップとを有することにより解決される。
【0012】
さらに、この課題は、冒頭記載のタイプの制御装置において、制御装置が、判定値の決定において、吸蔵触媒のNOx蓄積量の関数である第1の部分判定値を形成し、内燃機関の運転パラメータの関数である第2の部分判定値を形成し、両方の部分判定値を判定値に結合することにより解決される。
【0013】
本発明は、単に蓄積量の関数として開始された再生は、実際走行運転において、しばしば不利な条件下において行われるという知見に基づいている。内燃機関に関して、例えばその運転パラメータにおいて、排気温度が不十分であったり、またはエンジン内部における内燃機関の燃焼室への供給によっては十分な還元剤が発生可能ではなかったりするように、運転パラメータが不利なことがある。
【0014】
前記部分判定値の結合により、もはや、固定の蓄積量限界に到達しただけで再生が開始されることはない。その代わりに、異なる部分判定値をフレキシブルに評価する判定値の関数として再生が開始される。例えば第1の部分判定値は小さいが第2の部分判定値が大きいときでも、再生は既に開始可能である。
【0015】
これらの2つの部分判定値を1つの判定値に結合することにより、吸蔵触媒の蓄積量がまだ再生を要求しない段階においても、内燃機関の有利な運転パラメータにより、吸蔵触媒の再生を開始することが可能である。この結果、吸蔵触媒は全体として内燃機関の有利な運転点において、より頻繁に再生されることになる。これにより、不利な条件下において再生が行われることはほとんどない。
【0016】
窒素酸化物の転化は、多数の吸蔵サイクルにわたって平均化されることにより改善され且つ還元剤の過剰消費および溢流が低減される。さらに、再生に伴う吸蔵触媒の強力な加熱により以後の吸蔵過程において吸蔵効率が不必要に顕著に低下するような再生は、短縮または阻止される。
【0017】
方法の形態に関して、増加する蓄積量が再生開始を促進するよう、前記結合が第1の部分判定値を判定値に反映する。この場合、第1の部分判定値の少なくとも3つの値が異なる蓄積量に割り当てられていることが好ましい。
【0018】
開始基準としてただ1つの固定の蓄積量限界が使用される既知の方法に比較して、この形態はフレキシブルな影響変数を提供し、この影響変数により、部分判定値の値および蓄積量からなる対の数により決定される精度で蓄積量の影響が制御される。理想的な場合に、第1の部分判定値と蓄積量との単調関数関係が使用される。
【0019】
さらに、第2の部分判定値は、内燃機関の少なくとも1つの燃焼室を介して排気ガスに配量可能な還元剤の量に対する尺度、または還元剤の組成(COのHCに対する比および残留酸素含有量)の適性に対する尺度であり、この場合、増加する還元剤量が再生開始を促進するよう、前記結合が第2の部分判定値を判定値に反映することが好ましい。
【0020】
さらに、特定の運転点におけるリッチ運転への切換が、騒音変化またはトルク安定性に関して、他の運転点においてよりも不利になることが少なくなる。第2の部分判定値との結合がない場合、再生に対してより適切な運転点がしばしば利用されずに経過し、一方、再生はしばしば不利な運転点において開始されることになる。
【0021】
エンジン後方に還元剤を供給する場合、還元剤の分配、蒸発および活性も同様に、異なる作動ポンプにおいて、異なる大きさとなる。
内燃機関からエンジン内部手段により供給可能な還元剤の量および組成は、顕著に、例えば燃焼室充填、回転速度、および温度のような他のパラメータとにより決定される内燃機関運転点の関数である。特定の運転点においては、多量のCOおよびH2を発生すること、および同時に残留酸素含有量および酸化されにくい未燃燃料(HC)成分を小さく保持することが比較的困難である。供給可能な還元剤の量が増加したときに再生を開始することの有利性により、前記不利な条件は十分に回避される。したがって、多数の再生の合計において、内燃機関の順調な運転および再生過程の改善された経過が得られる。
【0022】
判定値を決定するステップが、吸蔵触媒のNOx蓄積量の関数である第1の部分判定値を形成するステップと、内燃機関の運転パラメータの関数である第2の部分判定値を形成するステップと、NOx吸蔵触媒の温度の関数である第3の部分判定値を形成するステップと、3つの部分判定値を判定値に結合するステップとを有することもまた好ましい。
【0023】
吸蔵触媒に関して、高い触媒温度は、発熱反応で行われる再生がこのとき吸蔵触媒をさらに加熱して好ましくないので不利である。例えば、きわめて高い吸蔵触媒温度は再生開始を遅延させるように温度を第3の部分判定値に反映可能である。
【0024】
吸蔵触媒温度の関数である第3の部分判定値はその温度において予想される再生作用に対する尺度であり、この場合、予想される作用の上昇が再生開始を促進するように前記結合が第3の部分判定値を判定値に反映することもまた好ましい。
【0025】
この形態は、再生過程の必要時間が顕著に吸蔵触媒温度の関数であることを考慮している。吸蔵触媒の蓄積量が比較的多い場合、モノリスのウォッシュ・コート温度が高ければ高いほど再生の必要時間はそれだけ短くなる。動的に切り換わる走行運転により、吸蔵体がまだ最大に蓄積されていないときに吸蔵触媒において再生運転のためにきわめて有利な条件が発生することがしばしば存在する。このとき短時間にすぎない再生が再び吸蔵体を完全に空にすることができるので、少ない費用で効率は著しく上昇することになる。
【0026】
他の好ましい形態の範囲内において、第1の部分判定値がさらに吸蔵触媒の温度の関数として形成される。
第1の部分判定値は第1に吸蔵触媒の蓄積量の関数である。この関数関係により、きわめて高い蓄積量のために吸蔵触媒の窒素酸化物吸蔵能力が低下したとき、吸蔵触媒の再生が開始されることになる。しかしながら、窒素酸化物吸蔵能力は蓄積量の関数であるのみならず、蓄積時に作用している温度の関数でもあることがわかっている。前記形態はこの関数関係を考慮している。
【0027】
吸蔵触媒のNOx蓄積量の関数である第1の部分判定値が、排気ガスの流れ方向において吸蔵触媒後方に配置されているNOxセンサの信号から形成され、内燃機関の運転パラメータの関数である第2の部分判定値が内燃機関のNOxエミッションに対する尺度として形成され、判定値がNOx吸蔵触媒の実際効率として形成され、判定値、または目標効率として働くしきい値が、NOx吸蔵触媒の温度の関数として、且つ排気ガスの空間速度の関数として形成されることもまた好ましい。
【0028】
この場合、周知のように、空間速度とは吸蔵触媒容積で正規化された排気ガス容積流量と理解される。低温、高温および高い空間速度もまた、その他の条件が同じときに、吸蔵触媒のNOx蓄積効率を低下させる。実際蓄積効率を提供するその他の特徴に関して、例えば高い空間速度において蓄積量がまだ少ないときの再生の不必要な開始が阻止可能である(その理由は、例えば空間速度が高いときには目標効率は低下されるからである)。これにより、還元剤使用効果が改善される。逆に、有利な蓄積条件において、即ち例えば平均的な温度および小さい空間速度においては、適切な時期における再生の開始が保証される。
【0029】
さらに、実際効率が、第1の部分判定値で正規化された、第1の部分判定値および第2の部分判定値からの差として形成されることと、第1の温度において予想される第1の再生作用が第2の温度においてよりも大きい前記第1の温度が再生開始を促進するように、および、より低い空間速度がより高い空間速度よりも再生開始をより強力に促進するようにしきい値または判定値の関数関係が設定されていることとが好ましい。
【0030】
より詳細に具体化された形態は前項に記載の利点を提供する。
判定値との比較のために設定されているしきい値が、吸蔵触媒の劣化状態および吸蔵触媒のその瞬間の硫黄蓄積量の関数であることもまた好ましい。
【0031】
両方の影響は、新しい状態に比較して、吸蔵効率を低下させる。したがって、再生開始に関する判定をこれらの両方の性質の関数として行うことが推奨される。この関数関係は、吸蔵触媒の効率が低下したときに再生が早めに開始されるように形成される。代替態様または補足態様として、熱的に損傷された吸蔵触媒は、きわめて低い温度においては、大部分の還元剤が利用されずに吸蔵触媒内を通過することになるので、もはや再生されない。
【0032】
制御装置の形態に関して、制御装置が上記の形態の少なくとも1つを実行することが好ましい。
その他の利点が以下の説明および添付図面から得られる。
【0033】
上記の特徴および以下に説明される特徴は、それぞれに与えられた組み合わせにおいてのみならず他の組み合わせにおいてまたは単独においても、本発明の範囲を逸脱することなく使用可能であることは明らかである。
【0034】
本発明の実施例が略図の形で図面に示され、および以下に詳細に説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
図1は内燃機関10を示し、内燃機関10の燃焼室12に吸気系14から空気が供給される。空気質量流量計16により測定された吸気質量に基づき、および、その他のセンサの信号を考慮して、制御装置18は噴射弁20を操作するための噴射パルス幅を形成する。その他のセンサとして、特に、回転速度センサ22、ドライバの希望伝送器24、温度センサ26およびNOxセンサ28が挙げられる。この場合、この列挙は単に例として示されたものであること、および、前記センサの代わりにまたはそれに補足して、噴射パルス幅の形成および内燃機関10のその他の制御における他のセンサが使用されてもよいことは明らかである。
【0036】
温度センサ26は、NOx吸蔵触媒30の温度を測定し、NOx吸蔵触媒30は排気系32内に配置され且つその中を内燃機関10の排気ガスが通り抜ける。NOxセンサ28は排気ガス流れ方向においてNOx吸蔵触媒30後方の排気系32内に配置されている。内燃機関10の制御内への介入を通じて、特に、燃料配量への介入を通じて、制御装置18は、NOx吸蔵触媒30の蓄積および再生をも制御する。
【0037】
蓄積および再生を制御するためのプログラム流れが図2に示されている。ここで、ステップ34は、内燃機関10を制御するためのメイン・プログラムに対応し、このメイン・プログラム内において、例えば噴射パルス幅が計算され且つ出力される。内燃機関10が空気過剰で運転され且つその結果としてNOx吸蔵触媒30に窒素酸化物が蓄積される時間区間内において、プログラムは、ステップ34内のメイン・プログラムから、所定の方式で例えば周期的にステップ36に移行し、ステップ36において第1の部分判定値TEW_1が形成される。この場合、TEW_1の形成は、NOx吸蔵触媒30の窒素酸化物蓄積量の関数として行われる。蓄積量は例えば制御装置18により蓄積モデルを用いて決定されてもよく、蓄積モデルは内燃機関10の窒素酸化物未処理エミッションを内燃機関10の運転パラメータの関数として決定する。このような蓄積モデルは、それ自身既知である。次に、ステップ36にステップ38が続き、ステップ38において、第2の部分判定値TEW_2が内燃機関10の運転パラメータの関数として形成される。この場合、この形成は、NOx吸蔵触媒30の再生のために有利な内燃機関10の運転条件が、第2の部分判定値TEW_2内に反映されるように行われる。
【0038】
それに続いて、形成された部分判定値TEW_iが、ステップ40内において判定値EWに累計される。ここでiは、図2の場合、1または2の値をとる。代替態様として、判定値EWは部分判定値の重みづけされた積として決定されてもよい。ステップ42において、形成された判定値EWと所定のしきい値E_Sとの比較が行われる。この場合、しきい値E_Sは、その瞬間の吸蔵触媒の硫黄蓄積量の関数として、および/または先行熱負荷の関数として、即ち劣化ないし損傷の関数として予め決定されることが好ましい。これらの影響は、例えば制御装置内においてモデル化可能である。この比較は、例えば判定値EWがしきい値E_Sを超えたことがステップ44において再生を開始させるように行われる。このような再生は、例えば燃料配量を変化させることによって行われてもよく、これにより内燃機関10排気ガス内の還元剤が予め設定される。これに対して、しきい値E_Sが超えられなかった場合、プログラムはステップ42からステップ34のメイン・プログラムに戻される。したがって、ステップ34、36、38、40および42からなるループは、ステップ42におけるしきい値超過がステップ44において再生を開始させるまでの間実行される。再生は、例えば制御装置内において計算された時間区間の間行われ、この時間区間の経過後に内燃機関10は改めて空気過剰で運転可能である。代替態様として、再生はセンサ例えばHCセンサの特定の信号に基づいて終了されてもよい。
【0039】
図3は、図2のステップ38および40の間で実行される追加ステップ46を有する、図2の方法の一形態を示す。ステップ46において第3の部分判定値TEW_3の形成が行われ、第3の部分判定値TEW_3は、NOx吸蔵触媒30の温度の関数である。それに続く図3のステップ40において、それに対応して、部分判定値TEW_i、i=1、2、3が判定値EWに累計される。
【0040】
したがって、図2および3のステップ列は、特に部分判定値TEW_1の値が小さくても、両方の他の部分判定値TEW_2、TEW_3の少なくとも1つが十分に大きいときには再生を開始可能であることにおいて共通している。
【0041】
図4は、曲線48、50、52からなる群により、吸蔵触媒30の蓄積量Bの関数である部分判定値TEW_1の特性を、吸蔵触媒30の温度Tをパラメータとして定性的に示している。この場合、Tにより示されている矢印はパラメータとしてより高い温度を有する曲線の方向を向いている。曲線48、50および52のそれぞれ1つの線図から、部分判定値TEW_1の値は、吸蔵触媒30の蓄積量Bの増加と共に上昇することがわかり、これが再生開始を促進させる。したがって、図4は第1の部分判定値TEW_1と蓄積量Bとの単調関数関係を示す。代替態様として、この関数関係が、少なくとも3つの値a1、a2、a3が異なる蓄積量b1、b2、b3に割り当てられているように形成されていてもよく、この場合、a1は例えばB<b1の全ての蓄積量を包含している。
【0042】
図5は内燃機関10の運転パラメータに対する部分判定値TEW_2の線図を定性的に示す。図5において、負荷Lが運転パラメータとして使用される。ここで、曲線54の線図は、部分判定値TEW_2が還元剤の量に対する尺度であるように予め決定され、還元剤の量は内燃機関10の少なくとも1つの燃焼室12を介して配量されても、またはエンジン後方における排気ガスへの還元剤の供給を介して配量されてもよい。図5内の曲線54の定性線図から、例えば、内燃機関の中間負荷においては多量の還元剤が予め設定可能であること、または、低負荷および高負荷においてよりもリッチ運転への切換による不利が少ないことがわかる。
【0043】
図6は吸蔵触媒30の温度Tの関数である第3の部分判定値TEW_3の線図を定性的に示す。TEW_3の線図は異なる温度Tにおいて予想される再生作用を表わしている。曲線56の線図からわかるように、中間温度Tにおいて予想される作用は、低い温度Tおよび高い温度Tにおいてよりも大きくなっている。
【0044】
再生開始は3つの部分判定値TEW_1、TEW_2、およびTEW_3の合計の関数であるので、1つの部分判定値の低い値は、他の2つの部分判定値のより高い値によって補正されることがあり、これにより、例えば中間負荷Lおよび中間温度Tにおいては蓄積量Bが小さくても予め再生されることになる。これにより、吸蔵触媒30は最大可能な蓄積量Bに到達する前に、予め有利な条件下において再生されることになる。
【0045】
図7は、図2のステップ40および42が、以下に説明されるステップ58、60および62により置き換えられている、本発明による方法の他の実施例を示す。図2〜6に関する以上の説明においては、いわゆる蓄積モデルに基づく、制御装置18内における蓄積量Bの計算から出発されてきた。このように計算された蓄積量は、吸蔵触媒の吸蔵能力に大きな影響を有し、この場合、吸蔵能力は蓄積量の増加と共に低下する。しかしながら、さらに、その瞬間の吸蔵能力は空間速度即ち触媒容積で正規化された排気ガス容積流量および吸蔵触媒30の温度の関数であるので、小さい吸蔵能力からは、再生を要求する吸蔵触媒30の高い蓄積量が自動的に推測可能ではない。言い換えると、高い空間速度において、および/または吸蔵触媒30のきわめて低い温度またはきわめて高い温度においては、吸蔵触媒が完全に空になっているにもかかわらずその瞬間の吸蔵能力がきわめて低いことがある。この場合には、その瞬間の低い吸蔵能力に基づく再生判定は無意味となるであろう。図7の他の実施例は、空間速度VRおよび吸蔵触媒30の温度Tの影響を考慮する可能性を示している。
【0046】
このために、部分判定値TEW_1およびTEW_2を形成したのち、ステップ58において、判定値EWが、第1の部分判定値TEW_1で正規化された、TEW_1およびTEW_2からの差として決定される。吸蔵触媒30のNOx蓄積量の関数である第1の部分判定値TEW_1は、排気ガスの流れ方向において吸蔵触媒30後方に配置されているNOxセンサ28の信号から形成される。
【0047】
内燃機関10の運転パラメータの関数である第2の部分判定値TEW_2は、内燃機関10のNOx未処理エミッションに対する尺度として、内燃機関10の運転パラメータから計算により形成される。したがって、ステップ58において形成された判定値EWは、吸蔵触媒30の吸蔵能力に対する吸蔵触媒30の実際効率を示す。ステップ60において、しきい値E_Sが、内燃機関30の温度Tおよび空間速度VRの関数として形成される。しきい値E_Sの形成において、特性曲線群64、66内に定性的に示されている関数関係が考慮される。言い換えると、中間温度範囲の外側においては、しきい値E_Sに作用する温度の影響は小さくなり、しきい値E_Sはさらに空間速度VRの増加と共に低下する。
【0048】
それに続くステップ62において、判定値EWとしきい値E_Sとの比較が行われる。しきい値E_Sは、空間速度VRおよび吸蔵触媒30の温度Tの関数である最小吸蔵能力に対応する。判定値EWにより表わされる実際吸蔵能力が最小吸蔵能力E_Sより大きいかぎり、プログラムはステップ62からステップ34に戻され、ステップ34において内燃機関を制御するためのメイン・プログラムが処理される。これに対して、判定値EWにより表わされる実際吸蔵能力が最小値E_S以下に低下したとき、ステップ44への分岐により再生が開始される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の技術的周辺図である。
【図2】本発明による方法の第1の実施例の流れ図である。
【図3】図2の実施例の変更実施例の流れ図である。
【図4】吸蔵触媒の蓄積量Bに対する第1の部分判定値TEW_1の、温度の関数としての定性線図である。
【図5】内燃機関の運転パラメータLに対する第2の部分判定値TEW_2の定性線図である。
【図6】吸蔵触媒温度Tに対する第3の部分判定値TEW_3の定性線図である。
【図7】本発明による方法の他の実施例の流れ図である。
【符号の説明】
【0050】
10 内燃機関
12 燃焼室
14 吸気系
16 空気質量流量計
18 制御装置
20 噴射弁
22 回転速度センサ
24 ドライバの希望伝送器
26 温度センサ
28 NOxセンサ
30 NOx吸蔵触媒
32 排気系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NOx吸蔵触媒の蓄積量を決定するステップと、
前記蓄積量の関数である判定値を決定するステップ(40)と、
前記判定値をしきい値と比較するステップ(42)と、
前記比較の結果の関数として再生を開始するステップ(44)と、
を有する、内燃機関(10)排気内のNOx吸蔵触媒(30)の再生開始方法(44)において、
前記判定値を決定する前記ステップ(40)が、更に、
前記吸蔵触媒のNOx蓄積量の関数である第1の部分判定値を形成するステップ(36)と、
前記内燃機関(10)の運転パラメータの関数である第2の部分判定値を形成するステップ(38)と、
前記第1及び第2の部分判定値を前記判定値に結合するステップ(40)と、
を備えることを特徴とする内燃機関排気内のNOx吸蔵触媒の再生開始方法。
【請求項2】
増加する蓄積量が再生開始(44)を促進するよう、前記結合(40)が前記第1の部分判定値を前記判定値に反映し、第1の部分判定値の少なくとも3つの値が異なる蓄積量に割り当てられていることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記第2の部分判定値は、前記内燃機関(10)の少なくとも1つの燃焼室(12)を介して排気ガスに配量可能な還元剤の量に対する尺度であり、前記結合(40)が、増加する還元剤の量が再生開始を促進するよう、前記第2の部分判定値を前記判定値に反映することを特徴とする請求項1または2の方法。
【請求項4】
前記判定値を決定するステップ(40)が、
前記吸蔵触媒のNOx蓄積量の関数である第1の部分判定値を形成するステップ(36)と、
前記内燃機関(10)の運転パラメータの関数である第2の部分判定値を形成するステップ(38)と、
前記NOx吸蔵触媒(30)の温度の関数である第3の部分判定値を形成するステップ(46)と、
前記3つの部分判定値を前記判定値に結合するステップ(40)と、
を特徴とする請求項1〜3の少なくともいずれかの方法。
【請求項5】
前記第3の部分判定値は、その温度において予想される再生作用に対する尺度であり、前記結合が、予想される作用の上昇が再生開始を促進するよう、前記第3の部分判定値を前記判定値に反映することを特徴とする請求項1〜4の少なくともいずれかの方法。
【請求項6】
前記第1の部分判定値が、さらに前記吸蔵触媒(30)の温度の関数として形成されることを特徴とする請求項1〜5の少なくともいずれかの方法。
【請求項7】
前記吸蔵触媒(30)のNOx蓄積量の関数である前記第1の部分判定値が、排気ガスの流れ方向において前記吸蔵触媒(30)後方に配置されているNOxセンサ(28)の信号から形成され、前記内燃機関(10)の運転パラメータの関数である前記第2の部分判定値が、前記内燃機関(10)のNOxエミッションに対する尺度として形成され、前記判定値が、前記NOx吸蔵触媒(30)の実際効率として形成され、更に、前記判定値、または目標効率として働くしきい値が、前記NOx吸蔵触媒(30)の温度の関数として、および排気ガスの空間速度の関数として形成されることを特徴とする請求項1の方法。
【請求項8】
前記実際効率が、前記第1の部分判定値で正規化された、前記第1の部分判定値と前記第2の部分判定値との差として形成されることと、
第1の温度において予想される第1の再生作用が第2の温度においてよりも大きい前記第1の温度が再生開始を促進するように、および、より低い空間速度がより高い空間速度よりも再生開始をより強力に促進するように前記しきい値または前記判定値の関数関係が設定されていることと、
を特徴とする請求項7の方法。
【請求項9】
前記ステップ(42)において行われる前記判定値との比較に対して設定されているしきい値が、前記吸蔵触媒の劣化状態および前記吸蔵触媒のその瞬間の硫黄蓄積量の関数であることを特徴とする請求項1〜8の少なくともいずれかの方法。
【請求項10】
内燃機関(10)排気内のNOx吸蔵触媒(30)の再生を開始させる制御装置(18)であって、前記NOx吸蔵触媒(30)の蓄積量を決定し、該蓄積量の関数である判定値を決定し、前記判定値をしきい値と比較し、比較結果の関数として再生を開始させる前記制御装置(18)において、
前記制御装置(18)が、前記判定値の決定において、前記吸蔵触媒(30)のNOx蓄積量の関数である第1の部分判定値を形成し、前記内燃機関(10)の運転パラメータの関数である第2の部分判定値を形成し、前記第1及び第2の部分判定値を前記判定値に結合することを特徴とする制御装置。
【請求項11】
請求項2〜9の方法の少なくともいずれかを実行することを特徴とする請求項10の制御装置(18)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−161815(P2006−161815A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−350312(P2005−350312)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(591245473)ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング (591)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【Fターム(参考)】