説明

内燃機関排気浄化装置

【課題】 PM再生制御用昇温処理を実行する際に排気浄化用フィルタの上流から排気系内に燃料を添加する内燃機関排気浄化装置にて、高濃度HCの外部への排出を防止する。
【解決手段】 空燃比AF、算出空燃比AFc、排気温度thcoに基づいて高濃度の未燃燃料排出を示すか否かを判定している(S110,S112,S114)。そして高濃度未燃燃料が排出されると判断される場合には(S110,S112,S114のいずれかで「no」)、PM再生制御における添加1回当たりの燃料添加量を減少補正している(S116)。したがって高濃度のHCが排気浄化用フィルタの下流に排出される状況となると、直ちに添加1回当たりの燃料添加量が減少されるので、高濃度HCの外部への排出を防止することができ、白煙の発生を確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気濾過により堆積した粒子状物質を触媒機能により酸化することで再生可能な排気浄化用フィルタを備え、粒子状物質を酸化する際に、排気浄化用フィルタの上流から排気系内に燃料を添加することで排気浄化用フィルタに対して粒子状物質浄化用昇温処理を実行する内燃機関排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関、特にディーゼルエンジンでは、排気中に含まれる粒子状物質が大気中に放出されないように排気系に排気浄化用フィルタを配置する技術が用いられている。このような内燃機関では排気浄化用フィルタに堆積した粒子状物質を除去して再生する必要がある。このために或程度の粒子状物質が堆積すると燃料噴射状態を変更(遅延噴射)して排気浄化用フィルタを高温化することで粒子状物質を酸化させて浄化する技術が存在する。
【0003】
このような遅延噴射の燃料は膨張行程にて燃焼するため、燃料全体が十分に燃焼しない。この結果、高濃度のHC(炭化水素)が排気中に含まれることになるため、排気浄化用フィルタにおいても十分に燃焼できずに白煙などの問題を生じるおそれがある。
【0004】
この白煙防止のためにグロープラグを利用して燃焼室内を加熱することで燃料の霧化を促進して遅延噴射された燃料全体に火炎が伝播するようにし、高濃度のHCが排気中に排出されるのを防止する技術が存在する(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−225579号公報(第6−7頁、図2−3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし排気浄化用フィルタに対して排気系に設けた添加弁から燃料を供給して燃焼させることで触媒床温を高温化させる内燃機関排気浄化装置の場合には、燃焼室内にあるグロープラグでは添加燃料を直接加熱できないため添加燃料の霧化を促進することはできない。このためにエミッション上の問題を生じることがある。
【0006】
例えば、内燃機関の運転状態により、排気浄化用フィルタの再生制御中に急激に燃料噴射量が増加する場合がある。この場合には燃焼室から排出される排気は特に低酸素濃度状態となる。このような低酸素濃度状態の排気中に燃料添加が行われると、通常の燃料添加の場合よりも、添加燃料によるHC濃度は酸素濃度に対して相対的に高濃度側にバランスがくずれる。
【0007】
しかし上述したごとく添加燃料の霧化をグロープラグでは促進できないので、排気浄化用フィルタ内で十分に添加燃料を燃焼することができない状態となることがあり、このために高濃度のHCが排気浄化用フィルタの下流に排出されて、白煙などの問題を生じるおそれがある。
【0008】
本発明は粒子状物質浄化用昇温処理を実行する際に排気浄化用フィルタの上流から排気系内に燃料を添加する内燃機関排気浄化装置において、高濃度HCの外部への排出を防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の内燃機関排気浄化装置は、排気中の粒子状物質を濾過すると共に堆積した粒子状物質を触媒機能により酸化することで再生可能な排気浄化用フィルタを備え、粒子状物質を酸化する際に、前記排気浄化用フィルタの上流から排気系内に燃料を添加することで前記排気浄化用フィルタに対して粒子状物質浄化用昇温処理を実行する内燃機関排気浄化装置であって、前記排気浄化用フィルタの下流の排気中に存在する未燃燃料の濃度を反映する物理量、又は前記未燃燃料の濃度に影響する物理量を検出する未燃燃料濃度物理量検出手段と、前記粒子状物質浄化用昇温処理時に、前記未燃燃料濃度物理量検出手段にて検出された物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合には、前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させる添加燃料濃度低減手段とを備えたことを特徴とする。
【0010】
このように添加燃料濃度低減手段は前記物理量に基づいて高濃度の未燃燃料の排出を示すか否かを判定して、高濃度未燃燃料が排出されると判断した場合には、粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させている。したがって粒子状物質浄化用昇温処理中に急激に燃料噴射量が増加するなどにより、排気浄化用フィルタ内で十分に添加燃料を燃焼することができずに高濃度のHCが排気浄化用フィルタの下流に排出される状態になったとしても、直ちに添加による燃料濃度を低下できるので高濃度HCの排出を抑制できる。
【0011】
このようにして粒子状物質浄化用昇温処理を実行する際に排気浄化用フィルタの上流から排気系内に燃料を添加する内燃機関排気浄化装置において、高濃度HCの外部への排出を防止することができる。この結果、白煙等の発生も未然に防止することができる。
【0012】
請求項2に記載の内燃機関排気浄化装置では、請求項1において、前記粒子状物質浄化用昇温処理における燃料添加は複数回の添加に分けて周期的に行われると共に、前記添加燃料濃度低減手段は各回の燃料添加量を減少させることにより前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることを特徴とする。
【0013】
このように周期的に添加される場合には、各回の燃料添加量を減少させることにより添加による燃料濃度を効果的に低下させることができる。こうして高濃度HCの外部への排出を防止でき、白煙等の発生も未然に防止することができる。
【0014】
請求項3に記載の内燃機関排気浄化装置では、請求項1又は2において、前記未燃燃料濃度物理量検出手段は、排気系において燃料添加位置よりも下流での排気の空燃比を前記物理量として検出する空燃比検出手段であり、前記添加燃料濃度低減手段は、前記粒子状物質浄化用昇温処理時に、前記空燃比検出手段にて検出された空燃比が、燃料の高濃度状態を判断するための基準空燃比よりも小さい場合を前記物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合であるとして、前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることを特徴とする。
【0015】
このように前記物理量は燃料添加位置よりも下流での排気の空燃比を用いても良い。この空燃比が基準空燃比よりも小さい場合には高濃度の未燃燃料の排出を示すと考えられることから、添加による燃料濃度を低下させることにより、高濃度HCの外部への排出を防止することができる。この結果、白煙等の発生も未然に防止することができる。
【0016】
請求項4に記載の内燃機関排気浄化装置では、請求項1又は2において、前記未燃燃料濃度物理量検出手段は、内燃機関にて燃焼される燃料量、排気系において添加される燃料量、及び内燃機関の吸入空気量に基づく空燃比計算により排気の空燃比を前記物理量として検出する空燃比検出手段であり、前記添加燃料濃度低減手段は、前記粒子状物質浄化用昇温処理時に、前記空燃比検出手段にて検出された空燃比が、燃料の高濃度状態を判断するための基準空燃比よりも小さい場合を前記物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合であるとして、前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることを特徴とする。
【0017】
このように前記物理量は、内燃機関にて燃焼される燃料量、排気系において添加される燃料量、及び内燃機関の吸入空気量に基づいて算出した排気の空燃比を用いても良い。このことによっても高濃度の未燃燃料の排出を判定でき、添加による燃料濃度を低下させることにより、高濃度HCの外部への排出を防止することができる。この結果、白煙等の発生も未然に防止することができる。
【0018】
請求項5に記載の内燃機関排気浄化装置では、請求項3又は4において、前記未燃燃料濃度物理量検出手段は、前記空燃比検出手段に加えて、前記排気浄化用フィルタの触媒床温を検出する触媒床温検出手段を有し、前記添加燃料濃度低減手段は、前記粒子状物質浄化用昇温処理時に、前記空燃比検出手段にて検出された空燃比が前記基準空燃比よりも小さく、かつ前記触媒床温検出手段にて検出された触媒床温が酸化触媒反応低下を判断するための基準温度よりも低い場合を、前記物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合であるとして、前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることを特徴とする。
【0019】
前述した空燃比に加えて、更に触媒床温を判断対象に含めても良い。触媒床温が低い場合には、酸化触媒反応自体が低下して、排気浄化用フィルタ内において燃料の酸化による消化が困難となる。したがって空燃比が基準空燃比よりも小さく、かつ触媒床温が基準温度よりも低い場合に、高濃度の未燃燃料の排出を示す状態であるとして粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることで、高濃度HCの外部への排出を防止することができる。この結果、より白煙発生の確実性の高い領域に限って燃料添加量を減少できるので、粒子状物質浄化用昇温処理を効率的に早期に処理できる。
【0020】
請求項6に記載の内燃機関排気浄化装置では、請求項1又は2において、前記未燃燃料濃度物理量検出手段は、前記排気浄化用フィルタの触媒床温を前記物理量として検出する触媒床温検出手段であり、前記添加燃料濃度低減手段は、前記粒子状物質浄化用昇温処理時に、前記触媒床温検出手段にて検出された触媒床温が酸化触媒反応低下を判断するための基準温度よりも低い場合を前記物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合であるとして、前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることを特徴とする。
【0021】
前記物理量としては、排気浄化用フィルタの触媒床温を用いても良い。前述したごとく触媒床温が低い場合には、酸化触媒反応自体が低下して排気浄化用フィルタ内において燃料の酸化による消化が困難となる。したがって触媒床温が基準温度よりも低い場合に、高濃度の未燃燃料の排出を示す状態であるとして粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることで、高濃度HCの外部への排出を防止することができる。この結果、白煙等の発生も未然に防止することができる。
【0022】
請求項7に記載の内燃機関排気浄化装置では、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記添加燃料濃度低減手段は、未燃燃料濃度が白煙を排出しない範囲から逸脱する場合を、前記物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合としていることを特徴とする。
【0023】
このように設定することにより、添加による燃料濃度を低下する処理にて確実に白煙を防止することが可能となる。
請求項8に記載の内燃機関排気浄化装置では、請求項1〜7のいずれかにおいて、排気系内において燃料を添加する位置よりも下流に排気タービンを配置したターボチャージャーを備えた内燃機関に適用されていることを特徴とする。
【0024】
特に燃料が添加された排気が、ターボチャージャーの排気タービンを通過する際には、霧化状態に悪影響を及ぼし、その後、通過する排気浄化用フィルタ内での酸化触媒反応による浄化率が低下する。したがって、このようにターボチャージャーを配置した内燃機関に、前述した構成の内燃機関排気浄化装置を適用することで、高濃度HCの外部への排出防止について顕著な効果を生じさせることができる。この結果、白煙等の発生も顕著に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[実施の形態1]
図1は上述した発明が適用された車両用ディーゼルエンジンと内燃機関排気浄化装置の機能を果たすシステムとの概略を表す構成説明図である。尚、本発明は希薄燃焼式ガソリンエンジンなどについて同様な触媒構成を採用した場合においても適用できる。
【0026】
ディーゼルエンジン2は、複数気筒、ここでは4気筒#1,#2,#3,#4からなる。尚、他の気筒数でも良い。各気筒#1〜#4の燃焼室4は吸気弁6にて開閉される吸気ポート8及び吸気マニホールド10を介してサージタンク12に連結されている。そしてサージタンク12は、吸気通路13を介して、インタークーラ14に連結され、更に過給機、ここでは排気ターボチャージャ16に設けられたコンプレッサ16aの出口側に連結されている。コンプレッサ16aの入口側はエアクリーナ18に連結されている。サージタンク12には、排気再循環(以下、「EGR」と称する)経路20のEGRガス供給口20aが開口している。そしてサージタンク12とインタークーラ14との間の吸気通路13には、スロットル弁22が配置され、コンプレッサ16aとエアクリーナ18との間には吸入空気量センサ24及び吸気温センサ26が配置されている。
【0027】
各気筒#1〜#4の燃焼室4は排気弁28にて開閉される排気ポート30及び排気マニホールド32を介して排気ターボチャージャ16の排気タービン16bの入口側に連結され、排気タービン16bの出口側は排気通路34に接続されている。尚、排気タービン16bは排気マニホールド32において第4気筒#4側から排気を導入している。
【0028】
この排気通路34には、排気浄化触媒が収納されている3つの触媒コンバータ36,38,40が配置されている。最上流の第1触媒コンバータ36にはNOx吸蔵還元触媒36aが収納されている。ディーゼルエンジン2の通常の運転時において排気が酸化雰囲気(リーン)にある時には、NOxはこのNOx吸蔵還元触媒36aに吸蔵される。そして還元雰囲気(ストイキあるいはストイキよりも低い空燃比)ではNOx吸蔵還元触媒36aに吸蔵されたNOxがNOとして離脱しHCやCOにより還元される。このことによりNOxの浄化を行っている。
【0029】
そして2番目に配置された第2触媒コンバータ38にはモノリス構造に形成された壁部を有するフィルタ38a(排気浄化用フィルタに相当)が収納され、この壁部の微小孔を排気が通過するように構成されている。このフィルタ38aの微小孔表面にはコーティングにてNOx吸蔵還元触媒の層が形成されているので、排気浄化触媒として機能し前述したごとくにNOxの浄化が行われる。更にフィルタ壁部には排気中の粒子状物質(以下「PM」と称する)が捕捉されて堆積する。この堆積したPMは、高温の酸化雰囲気とすることで、NOx吸蔵時に発生する活性酸素によりPMの酸化が開始されると共に、更に周囲の過剰酸素によりPM全体が酸化される。このことによりNOxの浄化と共にPMの酸化による浄化を実行している。尚、ここでは第1触媒コンバータ36と第2触媒コンバータ38とは一体化された構成で形成されている。
【0030】
最下流の第3触媒コンバータ40は、酸化触媒40aが収納され、ここではHCやCOが酸化されて浄化される。
尚、NOx吸蔵還元触媒36aとフィルタ38aとの間には第1排気温センサ44が配置されている。又、フィルタ38aと酸化触媒40aとの間において、フィルタ38aの近くには第2排気温センサ46が、酸化触媒40aの近くには空燃比センサ48が配置されている。
【0031】
上記空燃比センサ48は、ここでは固体電解質を利用したものであり、排気成分に基づいて排気の空燃比を検出し、空燃比に比例した電圧信号をリニアに出力するセンサである。又、第1排気温センサ44と第2排気温センサ46とはそれぞれの位置で排気温度thci,thcoを検出するものである。
【0032】
フィルタ38aの上流側と下流側には差圧センサ50の配管がそれぞれ設けられ、差圧センサ50はフィルタ38aの目詰まりの程度、すなわちPMの堆積度合を検出するためにフィルタ38aの上下流での差圧ΔPを検出している。
【0033】
尚、排気マニホールド32には、EGR経路20のEGRガス吸入口20bが開口している。このEGRガス吸入口20bは第1気筒#1側で開口しており、排気タービン16bが排気を導入している第4気筒#4側とは反対側である。
【0034】
EGR経路20の途中にはEGRガス吸入口20b側から、EGRガスを改質するための鉄系EGR触媒52が配置され、更にEGRガスを冷却するためのEGRクーラ54が設けられている。尚、EGR触媒52はEGRクーラ54の詰まりを防止する機能も有している。そしてEGRガス供給口20a側にはEGR弁56が配置されている。このEGR弁56の開度調節によりEGRガス供給口20aから吸気系へのEGRガス供給量の調節が可能となる。
【0035】
各気筒#1〜#4に配置されて、各燃焼室4内に直接燃料を噴射する燃料噴射弁58は、燃料供給管58aを介してコモンレール60に連結されている。このコモンレール60内へは電気制御式の吐出量可変燃料ポンプ62から燃料が供給され、燃料ポンプ62からコモンレール60内に供給された高圧燃料は各燃料供給管58aを介して各燃料噴射弁58に分配供給される。尚、コモンレール60には燃料圧力を検出するための燃料圧センサ64が取り付けられている。
【0036】
更に、燃料ポンプ62からは別途、低圧燃料が燃料供給管66を介して添加弁68に供給されている。この添加弁68は第4気筒#4の排気ポート30に設けられて、排気タービン16b側に向けて燃料を噴射することにより排気中に燃料添加するものである。この燃料添加により後述する触媒制御モードが実行される。
【0037】
電子制御ユニット(以下「ECU」と称する)70はCPU、ROM、RAM等を備えたデジタルコンピュータと、各種装置を駆動するための駆動回路とを主体として構成されている。そしてECU70は前述した吸入空気量センサ24、吸気温センサ26、第1排気温センサ44、第2排気温センサ46、空燃比センサ48、差圧センサ50、EGR弁56内のEGR開度センサ、燃料圧センサ64及びスロットル開度センサ22aの信号を読み込んでいる。更にアクセルペダル72の踏み込み量(アクセル開度ACCP)を検出するアクセル開度センサ74、及びディーゼルエンジン2の冷却水温THWを検出する冷却水温センサ76から信号を読み込んでいる。更に、クランク軸78の回転数NE(rpm)を検出するエンジン回転数センサ80、クランク軸78の回転位相あるいは吸気カムの回転位相を検出して気筒判別を行う気筒判別センサ82から信号を読み込んでいる。
【0038】
そしてこれらの信号から得られるエンジン運転状態に基づいて、ECU70は燃料噴射弁58による燃料噴射量制御や燃料噴射時期制御を実行する。更にEGR弁56の開度制御、モータ22bによるスロットル開度制御、燃料ポンプ62の吐出量制御、及び添加弁68の開弁制御により後述するPM再生制御、S被毒回復制御あるいはNOx還元制御といった触媒制御やその他の各処理を実行する。
【0039】
ECU70が実行する燃焼モード制御としては、通常燃焼モードと低温燃焼モードとの2種類から選択した燃焼モードを、運転状態に応じて実行する。ここで低温燃焼モードとは、低温燃焼モード用EGR弁開度マップを用いて大量の排気再循環量により燃焼温度の上昇を緩慢にしてNOxとスモークとを同時低減させる燃焼モードである。この低温燃焼モードは、低負荷低中回転領域にて実行し、空燃比センサ48が検出する空燃比AFに基づいてスロットル開度TAの調節による空燃比フィードバック制御がなされている。これ以外の燃焼モードが、通常燃焼モード用EGR弁開度マップを用いて通常のEGR制御(EGRしない場合も含める)を実行する通常燃焼モードである。
【0040】
そして排気浄化触媒に対する触媒制御を実行する触媒制御モードとしては、PM再生制御モード、S被毒回復制御モード、NOx還元制御モード及び通常制御モードの4種類のモードが存在する。
【0041】
PM再生制御モードとは、PMの推定堆積量がPM再生基準値に到達すると、特に第2触媒コンバータ38内のフィルタ38aに堆積しているPMを高温化により前述したごとく燃焼させてCO2とH2Oにして排出するPM浄化用昇温処理を実行するモードである。このモードでは、ストイキ(理論空燃比)よりも高い空燃比状態で添加弁68からの燃料添加を周期的に実行して触媒床温を高温化(例えば600〜700℃)するが、更に燃料噴射弁58による膨張行程あるいは排気行程における燃焼室4内への燃料噴射であるアフター噴射を加える場合がある。
【0042】
尚、PM再生制御モード内において間欠添加処理によるバーンアップ型昇温処理を実行しても良い。この間欠添加処理は、添加弁68からの間欠的な燃料添加により空燃比をストイキ又はストイキよりもわずかに低い空燃比とする空燃比低下処理を、全く燃料添加しない期間を間に置いて行う。ここではストイキよりもわずかに低い空燃比とするリッチ化を行っている。この処理においても燃料噴射弁58によるアフター噴射を加える場合がある。このことにより、PMの焼き尽くし(バーンアップ)作用を生じさせて、NOx吸蔵還元触媒36aの前端面のPM詰まりを解消したり、フィルタ38a内に堆積したPMを焼き尽くす処理を行う。
【0043】
S被毒回復制御モードとは、NOx吸蔵還元触媒36a及びフィルタ38aがS被毒してNOx吸蔵能力が低下した場合にS成分を放出させてS被毒から回復させるモードである。このモードでは、添加弁68から燃料添加を繰り返して触媒床温を高温化(例えば650℃)する昇温処理を実行し、更に添加弁68からの間欠的な燃料添加により空燃比をストイキ又はストイキよりもわずかに低い空燃比とする空燃比低下処理を行う。ここではストイキよりもわずかに低い空燃比とするリッチ化を行っている。このモードも燃料噴射弁58によるアフター噴射を加える場合がある。
【0044】
NOx還元制御モードとは、NOx吸蔵還元触媒36a及びフィルタ38aに吸蔵されたNOxを、N2、CO2及びH2Oに還元して放出するモードである。このモードでは、添加弁68からの比較的時間をおいた間欠的な燃料添加により、触媒床温は比較的低温(例えば250〜500℃)で空燃比をストイキ又はストイキよりも低下させる処理を行う。
【0045】
尚、これら3つの触媒制御モード以外の状態が通常制御モードとなり、この通常制御モードでは添加弁68からの燃料添加や燃料噴射弁58によるアフター噴射はなされない。
次に図2に、ECU70により実行される高濃度HC排出防止処理のフローチャートを示す。本処理は一定の時間周期で割り込み実行される処理である。なお個々の処理内容に対応するフローチャート中のステップを「S〜」で表す。
【0046】
高濃度HC排出防止処理が開始されると、まずPM再生制御中か否かが判定される(S102)。PM再生制御中でなければ(S102で「no」)、添加1回当たりの燃料添加量に対する減量補正を解除して(S118)、一旦本処理を終了する。この減量補正解除処理は、直前まで後述する燃料添加量減量補正処理(S116)による減量補正が継続していた場合に、その減量補正を解除するものである。減量補正中でなければ、ステップS118では特に処理はなされない。
【0047】
PM再生制御中であれば(S102で「yes」)、次に燃料添加条件が成立しているか否かが判定される(S104)。例えばPM再生制御時に添加弁68から添加される燃料の一部が排気系に付着して堆積する場合があり、加速運転などにより急に排気流量が増加するような場合には堆積した燃料が急速に蒸発して添加燃料に加わるおそれがある。これを防止するために一時的に燃料添加を禁止する処理がなされる場合がある。したがって、このような処理等のために燃料添加条件が成立していない場合がある。このように燃料添加条件が不成立な場合には(S104で「no」)、燃料添加が行われていないので、このまま一旦本処理を終了する。
【0048】
燃料添加条件が成立していれば(S104で「yes」)、次に後述する燃料添加量減量補正処理(S116)による減量補正が実行中でないか否かが判定される(S106)。ここで減量補正中でなければ(S106で「yes」)、次に式1に示すごとく、吸入空気量GA(g/s)、燃料噴射量Finj(g/s)、及び燃料添加量Fadd(g/s)により、計算上で触媒コンバータ36,38側へ流れ込む排気の算出空燃比AFcを求める(S108)。
【0049】
[式1] AFc ← GA/(Finj + Fadd)
吸入空気量GAは吸入空気量センサ24の検出値、燃料噴射量Finjは燃料噴射弁58から噴射される燃料量、及び燃料添加量Faddは添加弁68から排気に添加される燃料量である。尚、燃料噴射量Finj及び燃料添加量Faddは、燃料噴射制御上及び燃料添加制御上、目標値として設定されている燃料量の値を、燃料圧力を考慮して単位時間当たりの噴射量及び添加量に換算したものである。
【0050】
次に現在、空燃比センサ48で検出されている空燃比AFの値が、基準空燃比AFx以上か否かが設定される(S110)。この基準空燃比AFxは、PM再生制御中において周期的に燃料添加がなされている時に、燃料の高濃度状態を判断するための値であり、ここでは空燃比センサ48にて検出される空燃比の内で、白煙を生じることがない範囲の下限値を設定している。
【0051】
したがって実測した空燃比AFがこの基準空燃比AFx以上であれば、フィルタ38aから流出する排気は白煙を生じない空燃比、すなわち白煙を生じないHC濃度以下になっていることを示している。
【0052】
AF≧AFxであれば(S110で「yes」)、次に前述したごとく算出した算出空燃比AFcが基準空燃比AFx以上か否かが設定される(S112)。
計算上の空燃比である算出空燃比AFcも基準空燃比AFx以上であれば(S112で「yes」)、次に現在、第2排気温センサ46にて検出されているフィルタ38a下流直下の排気温度thcoが基準温度THx以上か否かが判定される(S114)。この基準温度THxは、PM再生制御中において周期的に燃料添加がなされている時に、酸化触媒反応低下を判断するための触媒床温基準温度である。ここでは第2排気温センサ46にて検出される排気温度thcoに対する基準温度であり、フィルタ38aの触媒活性が高いことにより燃料の消化(浄化)が進んで白煙を生じることがない下限の触媒床温を設定している。
【0053】
したがって実測した排気温度thcoがこの基準温度THx以上であれば、フィルタ38a内での触媒活性が十分に高く、燃料が十分に消化されて、排気は外部に排出されても白煙を生じないHC濃度以下になっていることを示している。
【0054】
ここで排気温度thcoが基準温度THx以上であれば(S114で「yes」)、このまま一旦本処理を終了する。したがって前述したステップS110,S112,S114の全てが「yes」であれば、燃料添加量の減量補正は行われない。
【0055】
前述したステップS110,S112,S114の1つが「no」であれば、すなわちAF≧AFx、AFc≧AFx、thco≧THxのいずれかの条件が不成立であると、燃料添加量減量補正処理(S116)が実行される。
【0056】
この燃料添加量減量補正処理では、添加1回当たりの燃料添加量に対して減量補正が実行される。具体的には通常のPM再生制御用として設定された添加1回当たりの燃料添加量より小さい値として予め設定している白煙対策時燃料添加量を添加1回当たりの目標添加燃料量として用いる。又は、通常時の添加1回当たりの燃料添加量と予め設定した減量係数Kdel(<1)との積、あるいは通常時の添加1回当たりの燃料添加量から予め設定した一定量(<添加1回当たりの燃料添加量)を減算した値を、添加1回当たりの目標添加燃料量として用いる。
【0057】
このことにより以後、継続しているPM再生制御においては、通常のPM再生制御に比較して各回の添加において少ない燃料添加量にてPM再生が実行されることになる。この結果、個々のPM再生期間は延びることになる。
【0058】
そして高濃度HC排出防止処理(図2)の次の制御周期においては、ステップS102,S104にて「yes」と判定されても減量補正中であることから(S106で「no」)、再度、ステップS110,S112,S114の判定が実行されることはない。
【0059】
この後、PM再生制御が終了すれば(S102で「no」)、添加1回当たりの燃料添加量に対して行われていた減量補正の解除がなされて(S118)、本処理を一旦終了する。以後は、次のPM再生制御が開始されない限り、ステップS102で「no」と判定される処理が継続する。再度、PM再生制御が開始されれば(S102で「yes」)、上述した処理が繰り返される。
【0060】
図3は算出空燃比AFcが基準空燃比AFxより小さくなった場合の制御例を示すタイミングチャートである。AFc<AFxとなることにより(S112で「no」)、添加1回当たりの燃料添加量を減量している(S116:t0)。このことにより算出空燃比AFcと更に実測した空燃比AFとが上昇して、外部への高濃度HCの排出による白煙発生を防止している。
【0061】
図4は排気温度thcoが基準温度THxより低くなった場合の制御例を示すタイミングチャートである。thco<THxとなることにより(S114で「no」)、添加1回当たりの燃料添加量を減量している(S116:t10)。このことにより算出空燃比AFcと実測の空燃比AFとが上昇して、外部への高濃度HCの排出による白煙発生を防止している。
【0062】
上述した構成において、請求項との関係は次のごとくである。すなわち、ECU70が未燃燃料濃度物理量検出手段、添加燃料濃度低減手段及び空燃比検出手段に相当し、空燃比センサ48が空燃比検出手段に相当し、第2排気温センサ46が触媒床温検出手段に相当する。高濃度HC排出防止処理(図2)のステップS108の処理が空燃比検出手段としての処理に相当し、ステップS108以外の処理が添加燃料濃度低減手段としての処理に相当する。
【0063】
以上説明した本実施の形態1によれば、以下の効果が得られる。
(イ).高濃度HC排出防止処理(図2)のステップS110,S112,S114の判定により、各物理量(空燃比AF、算出空燃比AFc、触媒床温に相当する排気温度thco)に基づいて高濃度の未燃燃料の排出を示すか否かを判定している。そして、高濃度未燃燃料が排出されると判断される場合には(S110,S112,S114のいずれかで「no」)、PM再生制御(粒子状物質浄化用昇温処理に相当)における添加1回当たりの燃料添加量を減少補正している(S116)。
【0064】
したがって、例えばPM再生制御中に急激に燃料噴射量Finjが増加することで排気が低酸素濃度化してフィルタ38a内で十分に添加燃料を燃焼することができずに高濃度のHCがフィルタ38aの下流に排出される状況となると、直ちに添加1回当たりの燃料添加量が減少される。このため高濃度HCの外部への排出を防止することができる。
【0065】
特に、各判定(S110,S112,S114)においては、未燃燃料濃度が白煙を排出しない範囲(基準空燃比AFx以上の範囲、基準温度THx以上の範囲)から逸脱する場合を、高濃度の未燃燃料の排出を示す場合であるとして添加1回当たりの燃料添加量を減量している。このため特に白煙の発生を確実に防止することができる。
【0066】
(ロ).排気系において添加弁68による添加位置よりも下流に排気ターボチャージャ16の排気タービン16bを配置している。このため添加弁68から燃料添加された排気は、排気タービン16bを通過する際に添加燃料の霧化状態に悪影響が及び、その後、通過するフィルタ38a内での酸化触媒反応による浄化率が低下する。このため高濃度HCが外部へ排出され易くなる。
【0067】
しかし本実施の形態によって、高濃度HCの外部への排出を十分に防止できるので、排気ターボチャージャ16を配置したディーゼルエンジン2にて、特に顕著な効果を生じさせることができ、白煙等の発生も顕著に防止することができる。
【0068】
[実施の形態2]
本実施の形態では、図2の代わりに図5に示す高濃度HC排出防止処理が実行される点が異なる。これ以外の構成は、前記実施の形態1と同じであるので図1を参照して説明する。
【0069】
高濃度HC排出防止処理(図5)においてステップS102〜S112,S116,S118は図2にて同一符号にて説明した処理と同じ処理である。異なる点は、ステップS112にて「yes」と判定された後は一旦本処理を終了すると共に、ステップS110にて「no」あるいはS112にて「no」と判定された場合に、排気温度thcoが基準温度THxより低いか否かの判定(S115)がなされる点である。そして、thco<THxであれば(S115で「yes」)、燃料添加量減量補正処理(S116)が実行され、thco≧THxであれば(S115で「no」)、このまま一旦本処理を終了する。
【0070】
したがって燃料添加量減量補正処理(S116)の実行は、AF<AFx(S110で「no」)であってかつthco<THx(S115で「yes」)である場合、又はAFc<AFx(S112で「no」)であってかつthco<THx(S115で「yes」)である場合になされる。
【0071】
図6は算出空燃比AFcが基準空燃比AFxより小さくなった場合の制御例を示すタイミングチャートであるが、AFc<AFxとなっても(S112で「no」:t20)、排気温度thcoが基準温度THx以上(S115で「no」)である間は、添加1回当たりの燃料添加量の減量はなされない。しかしthco<THxとなり(t21)、そしてAFc<AFxとなることで(t22)、ステップS112で「no」でかつステップS115で「yes」となると、添加1回当たりの燃料添加量の減量がなされる(S116)。このことにより算出空燃比AFcと共に、実測の空燃比AFも上昇して、外部への高濃度HCの排出による白煙発生を防止している。
【0072】
上述した構成において、請求項との関係は次のごとくである。すなわち、ECU70が未燃燃料濃度物理量検出手段、添加燃料濃度低減手段及び空燃比検出手段に相当し、空燃比センサ48が空燃比検出手段に相当し、第2排気温センサ46が触媒床温検出手段に相当する。高濃度HC排出防止処理(図5)のステップS108の処理が空燃比検出手段としての処理に相当し、ステップS108以外の処理が添加燃料濃度低減手段としての処理に相当する。
【0073】
以上説明した本実施の形態2によれば、以下の効果が得られる。
(イ).高濃度HC排出防止処理(図5)のステップS110,S115の組み合わせ、あるいはステップS112,S115の組み合わせにより、高濃度の未燃燃料の排出を示す状態であるか否かを判断している。すなわち、空燃比AF又は算出空燃比AFcが基準空燃比AFxより小さく、かつ排気温度thcoが基準温度THxより低い場合に、高濃度の未燃燃料の排出、特に白煙排出を示す状態であると判定している。このような高濃度未燃燃料が排出されると判断される場合にPM再生制御における添加1回当たりの燃料添加量を減少補正している(S116)。
【0074】
このことにより、高濃度HCの外部への排出を防止すると共に、より白煙発生の確実性の高い領域に限って添加1回当たりの燃料添加量を減少できるので、PM再生制御処理を効率的に早期に処理できる。
【0075】
(ロ).前記実施の形態1の(ロ)の効果を生じる。
[その他の実施の形態]
(a).前記実施の形態1の高濃度HC排出防止処理(図2)において、ステップS110,S112,S114の3つ条件が設けられていたが、この3つの条件の内、いずれか1つ又は2つのみの処理としても良い。
【0076】
前記実施の形態2の高濃度HC排出防止処理(図5)についても、ステップS110,S112,S115の3つ条件が設けられていたが、この3つの条件の内、ステップS110,S115の組み合わせ、あるいはステップS112,S115の組み合わせのみの処理としても良い。
【0077】
(b).前記各実施の形態において、触媒床温としては、第2排気温センサ46により検出されるフィルタ38a下流直下の排気温度thcoを検出して用いていたが、フィルタ38a中に温度センサを設けている場合には、この温度センサの検出温度を用いても良い。
【0078】
(c).前記各実施の形態では、排気浄化用のフィルタ38aとしては、「DPNR」と称されるNOx浄化用触媒と捕集したパティキュレートを酸化する触媒とを担持したディーゼルパティキュレートフィルタが用いられていたが、NOx浄化用触媒が存在しないフィルタでも良い。すなわち「DPF」と称される捕集したパティキュレートを酸化する触媒を担持したディーゼルパティキュレートフィルタを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】実施の形態1の車両用ディーゼルエンジンと内燃機関排気浄化装置の機能を果たすシステムとの概略構成説明図。
【図2】実施の形態1の高濃度HC排出防止処理のフローチャート。
【図3】実施の形態1の処理の一例を示すタイミングチャート。
【図4】実施の形態1の処理の一例を示すタイミングチャート。
【図5】実施の形態2の高濃度HC排出防止処理のフローチャート。
【図6】実施の形態2の処理の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
【0080】
2…ディーゼルエンジン、4…燃焼室、6…吸気弁、8…吸気ポート、10…吸気マニホールド、12…サージタンク、13…吸気通路、14…インタークーラ、16…排気ターボチャージャ、16a…コンプレッサ、16b…排気タービン、18…エアクリーナ、20…EGR経路、20a…EGRガス供給口、20b…EGRガス吸入口、22…スロットル弁、22a…スロットル開度センサ、22b…モータ、24…吸入空気量センサ、26…吸気温センサ、28…排気弁、30…排気ポート、32…排気マニホールド、34…排気通路、36…第1触媒コンバータ、36a…NOx吸蔵還元触媒、38…第2触媒コンバータ、38a…フィルタ、40…第3触媒コンバータ、40a…酸化触媒、44…第1排気温センサ、46…第2排気温センサ、48…空燃比センサ、50…差圧センサ、52…EGR触媒、54…EGRクーラ、56…EGR弁、58…燃料噴射弁、58a…燃料供給管、60…コモンレール、62…燃料ポンプ、64…燃料圧センサ、66…燃料供給管、68…添加弁、70…ECU、72…アクセルペダル、74…アクセル開度センサ、76…冷却水温センサ、78…クランク軸、80…エンジン回転数センサ、82…気筒判別センサ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気中の粒子状物質を濾過すると共に堆積した粒子状物質を触媒機能により酸化することで再生可能な排気浄化用フィルタを備え、粒子状物質を酸化する際に、前記排気浄化用フィルタの上流から排気系内に燃料を添加することで前記排気浄化用フィルタに対して粒子状物質浄化用昇温処理を実行する内燃機関排気浄化装置であって、
前記排気浄化用フィルタの下流の排気中に存在する未燃燃料の濃度を反映する物理量、又は前記未燃燃料の濃度に影響する物理量を検出する未燃燃料濃度物理量検出手段と、
前記粒子状物質浄化用昇温処理時に、前記未燃燃料濃度物理量検出手段にて検出された物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合には、前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させる添加燃料濃度低減手段と、
を備えたことを特徴とする内燃機関排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、前記粒子状物質浄化用昇温処理における燃料添加は複数回の添加に分けて周期的に行われると共に、前記添加燃料濃度低減手段は各回の燃料添加量を減少させることにより前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることを特徴とする内燃機関排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記未燃燃料濃度物理量検出手段は、排気系において燃料添加位置よりも下流での排気の空燃比を前記物理量として検出する空燃比検出手段であり、前記添加燃料濃度低減手段は、前記粒子状物質浄化用昇温処理時に、前記空燃比検出手段にて検出された空燃比が、燃料の高濃度状態を判断するための基準空燃比よりも小さい場合を前記物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合であるとして、前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることを特徴とする内燃機関排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記未燃燃料濃度物理量検出手段は、内燃機関にて燃焼される燃料量、排気系において添加される燃料量、及び内燃機関の吸入空気量に基づく空燃比計算により排気の空燃比を前記物理量として検出する空燃比検出手段であり、前記添加燃料濃度低減手段は、前記粒子状物質浄化用昇温処理時に、前記空燃比検出手段にて検出された空燃比が、燃料の高濃度状態を判断するための基準空燃比よりも小さい場合を前記物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合であるとして、前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることを特徴とする内燃機関排気浄化装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、前記未燃燃料濃度物理量検出手段は、前記空燃比検出手段に加えて、前記排気浄化用フィルタの触媒床温を検出する触媒床温検出手段を有し、前記添加燃料濃度低減手段は、前記粒子状物質浄化用昇温処理時に、前記空燃比検出手段にて検出された空燃比が前記基準空燃比よりも小さく、かつ前記触媒床温検出手段にて検出された触媒床温が酸化触媒反応低下を判断するための基準温度よりも低い場合を、前記物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合であるとして、前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることを特徴とする内燃機関排気浄化装置。
【請求項6】
請求項1又は2において、前記未燃燃料濃度物理量検出手段は、前記排気浄化用フィルタの触媒床温を前記物理量として検出する触媒床温検出手段であり、前記添加燃料濃度低減手段は、前記粒子状物質浄化用昇温処理時に、前記触媒床温検出手段にて検出された触媒床温が酸化触媒反応低下を判断するための基準温度よりも低い場合を前記物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合であるとして、前記粒子状物質浄化用昇温処理における添加による燃料濃度を低下させることを特徴とする内燃機関排気浄化装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかにおいて、前記添加燃料濃度低減手段は、未燃燃料濃度が白煙を排出しない範囲から逸脱する場合を、前記物理量の値が高濃度の未燃燃料の排出を示す場合としていることを特徴とする内燃機関排気浄化装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかにおいて、排気系内において燃料を添加する位置よりも下流に排気タービンを配置したターボチャージャーを備えた内燃機関に適用されていることを特徴とする内燃機関排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−291824(P2006−291824A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112850(P2005−112850)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】