内燃機関運転状態検出装置
【課題】シリーズ式ハイブリッド車両において車両走行中にエンジンの運転状態検出用のセンサの診断を開始する際に、センサ診断のためのエンジン動作状態を早期に作り出す。
【解決手段】エンジンコントローラ8は、センサの診断前にハイブリッドコントローラ8にセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合にエンジン2をセンサの診断のための動作状態にするとともにセンサの出力を基に該センサの診断を行い、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8からセンサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号をエンジンコントローラ8に送信するとともに発電モータ3をセンサの診断のための動作状態にする。
【解決手段】エンジンコントローラ8は、センサの診断前にハイブリッドコントローラ8にセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合にエンジン2をセンサの診断のための動作状態にするとともにセンサの出力を基に該センサの診断を行い、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8からセンサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号をエンジンコントローラ8に送信するとともに発電モータ3をセンサの診断のための動作状態にする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリーズ式ハイブリッド車両の内燃機関の運転状態を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイブリッド車両において、エンジンの運転状態を検出する技術が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
そして、ハイブリッド車両には、エンジンによって駆動される発電モータと、発電モータの発電電力によって車輪を駆動する駆動モータとを搭載するシリーズ式ハイブリッド車両がある。
【0003】
このようなこのシリーズ式ハイブリッド車両においても、エンジンの運転状態を検出し、さらに、その検出を高い精度で行うためのセンサ診断が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−268711号公報
【特許文献2】特開2008−143321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、シリーズ式ハイブリッド車両では、ガソリン車と異なり車両の加減速(駆動モータによる駆動)とエンジン回転数(エンジンの駆動)とを無関係に動作させることができるために、車両走行中にセンサ診断を実施しようとしても、センサ診断用のエンジン動作状態を長期間作り出すことができない恐れがある。
本発明は、シリーズ式ハイブリッド車両において車両走行中にエンジンの運転状態検出用のセンサの診断を開始する際に、センサ診断のためのエンジン動作状態を早期に作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、(1)本発明の一態様では、内燃機関と、前記内燃機関の動作を制御する内燃機関制御手段と、前記内燃機関によって駆動される発電モータと、前記発電モータの発電電力によって充電されるバッテリと、前記発電モータの発電電力又は前記バッテリの放電電力によって車輪を駆動する駆動モータと、前記内燃機関制御手段と通信可能とされ前記発電モータ及び前記駆動モータを制御するモータ制御手段とを備えるハイブリッド車両の前記内燃機関の運転状態を検出するハイブリッド車両の内燃機関運転状態検出装置において、前記内燃機関の吸気側又は排気側に配置され吸気ガス又は排気ガスを検出するセンサと、前記センサの検出値を基に排気状態を推定する排気状態推定手段とを備え、前記内燃機関制御手段は、前記センサの診断前に前記モータ制御手段にセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記内燃機関を前記センサの診断のための動作状態にするとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記センサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記発電モータを前記センサの診断のための動作状態にすることを特徴とする内燃機関運転状態検出装置を提供できる。
【0007】
(2)本発明の一態様では、アクセル操作状態を検出するアクセル操作検出手段をさらに備え、前記内燃機関制御手段は、前記アクセル操作検出手段が前記アクセル操作されていないことを検出した場合に前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記センサ診断開始信号を送信する。
(3)本発明の一態様では、ブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作検出手段をさらに備え、前記内燃機関制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段が前記ブレーキ操作されていることを検出した場合に前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記センサ診断開始信号を送信する。
【0008】
(4)本発明の一態様では、前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段をさらに備え、前記モータ制御手段は、前記発電モータを前記センサの診断のための動作状態として前記バッテリの放電電力によって発電モータを力行させており、前記モータ制御手段は、前記蓄電量検出手段が検出した前記バッテリの蓄電量が予め設定した値以下の場合に前記返信信号を前記内燃機関制御手段に送信しない。
【0009】
(5)本発明の一態様では、前記内燃機関制御手段は、前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記内燃機関の燃料噴射を停止させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記センサの診断のための前記内燃機関の動作状態として前記内燃機関の燃料噴射を停止させるとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記センサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記センサの診断のための前記発電モータの動作状態として前記バッテリの放電電力によって前記発電モータを力行させる。
【0010】
(6)本発明の一態様では、前記内燃機関制御手段は、前記内燃機関の燃料噴射を停止させて前記センサの診断を行った後に前記モータ制御手段に前記内燃機関の燃料噴射を再開させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記センサの診断のための前記内燃機関の動作状態として前記内燃機関の燃料噴射を再開させるとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記内燃機関の燃料噴射を再開させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記センサの診断のための前記発電モータを動作状態として前記力行する発電モータを回生させる。
【発明の効果】
【0011】
(1)の本発明によれば、内燃機関制御手段に対しセンサ診断開始信号を送信しその返信信号を受信する機能と、モータ制御手段に対しセンサ診断開始信号を受信しその返信信号を送信する機能とをそれぞれ付加することによって、内燃機関制御手段及びモータ制御手段をそれぞれ独立してセンサの診断のための制御動作をさせて、内燃機関制御手段側でセンサの診断を行うことができる。
【0012】
これにより、本発明では、車両走行中におけるセンサ診断の際に内燃機関と発電モータとを協調動作させて、センサ診断のための内燃機関及び発電モータの動作状態を早期に作り出すことができる。
また、本発明では、内燃機関制御手段とモータ制御手段との間で信号をやりとりする構成を付加し、内燃機関制御手段側でセンサ診断を行うため、既存の内燃機関制御手段及びモータ制御手段を流用し、さらには内燃機関制御手段のセンサ診断ロジックを流用して、センサ診断を行うことができる。
【0013】
(2)の本発明によれば、アクセル操作されてなく車両の駆動力が必要とならないような状況下で、内燃機関及び発電モータにセンサ診断のための動作をさせることができる。
これにより、本発明では、駆動モータの駆動によってバッテリの蓄電量が急激に減少してしまう可能性が低いため、センサ診断のためにバッテリの放電電力を利用して発電モータに力行動作させるような場合でもバッテリの蓄電量を確保した状態でその発電モータの力行動作を実施できる。
【0014】
(3)の本発明によれば、ブレーキ操作されており車両の駆動力が必要とならないような状況下で、内燃機関及び発電モータにセンサ診断のための動作をさせることができる。
これにより、本発明では、駆動モータの駆動によってバッテリの蓄電量が急激に減少してしまう可能性が低いため、センサの診断のためにバッテリの放電電力を利用して発電モータに力行動作させるような場合でもバッテリの蓄電量を確保した状態でその発電モータの力行動作を実施できる。
【0015】
(4)の本発明によれば、バッテリの蓄電量が確保されているときにバッテリの放電電力を利用して発電モータを力行動作させ、センサ診断を行うことができるため、安定した発電モータの力行動作によって安定した状態でセンサ診断を行うことができる。
(5)の本発明によれば、内燃機関の燃料噴射を停止させるとともに発電モータによって内燃機関に負荷を与えた状況下のセンサ診断を実現できる。
【0016】
(6)の本発明によれば、内燃機関の燃料噴射を停止させるとともに発電モータによって内燃機関に負荷を与えた状況下のセンサ診断を行った後に、内燃機関の燃料噴射を再開させて発電モータを回生させている状況下のセンサ診断を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態のシリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステムの構成例を示す図である。
【図2】本実施形態のシリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステムの構成例を示す他の図である。
【図3】エンジンコントローラが主(マスタ)として動作し自己診断処理として行うセンサ診断処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】エンジンコントローラが行う第1OBD診断モードの処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図5】エンジンコントローラが行う第1OBD診断モードの合格判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図6】エンジンコントローラが行う第2OBD診断モードの処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図7】エンジンコントローラが行う第2OBD診断モードの合格判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図8】エンジンコントローラが行うOBD診断の終了判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図9】自己診断処理におけるハイブリッドコントローラの処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】自己診断処理におけるハイブリッドコントローラの処理の他の例を示すフローチャートである。
【図11】自己診断処理時の各種情報のタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態は、シリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステムである。
(構成)
図1及び図2は、シリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステム1の構成例を示す図である。図1に示すように、シリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステム1では、エンジン2の出力軸(クランク軸)と発電モータ3の入力軸を直列につなぎ、発電モータ3の発電電力又はバッテリ4からの放電電力で駆動モータ5を回転させて駆動輪31,32を駆動する構成になっている。
【0019】
そのために、図1に示すように、ハイブリッドシステム1を搭載する車両は、エンジン2、発電モータ3、バッテリ(例えば高電圧バッテリ)4、駆動モータ5、リニア空燃比センサ6、残存酸素濃度センサ7、エンジンコントローラ8、及びハイブリッドコントローラ9を有している。さらに、図2に示すように、ハイブリッドシステム1を搭載する車両は、SOC(State Of Charge)センサ11、アクセル開度センサ12、ブレーキ開度センサ13、車速センサ14、発電モータコントローラ(例えば発電モータインバータ)15、及び駆動モータコントローラ(例えば駆動モータインバータ)16を有している。
【0020】
そして、図1に示すように、ハイブリッドシステム1では、CAN(Controller Area Network)等を構成する通信線17を介してハイブリッドコントローラ9等が互いに信号又はデータの送受信を行う。
ここで、リニア空燃比センサ6は、エンジン2の吸気通路に設けられ、エンジン2における空燃比を検出する。そして、リニア空燃比センサ6は、検出値をエンジンコントローラ8に出力する。また、残存酸素濃度センサ7は、エンジン2の排気通路に設けられ、エンジン2における残存酸素濃度を検出する。そして、残存酸素濃度センサ7は、検出値をエンジンコントローラ8に出力する。ここで、リニア空燃比センサ6及び残存酸素濃度センサ7は、エンジン2の運転状態を検出するシステム、具体的には排気ガス浄化システムに含まれるセンサとなる。
【0021】
また、アクセル開度センサ12は、アクセル開度、すなわちアクセルペダルの操作量を検出する。そして、アクセル開度センサ12は、検出値をエンジンコントローラ8に出力する。また、ブレーキ開度センサ13は、ブレーキ開度、すなわちブレーキペダルの操作量を検出する。そして、ブレーキ開度センサ13は、検出値をエンジンコントローラ8に出力する。また、車速センサ14は、車速を検出する。そして、車速センサ14は、検出値をエンジンコントローラ8に出力する。また、SOCセンサ11は、バッテリ4のSOCを検出する。そして、SOCセンサ11は、検出値をハイブリッドコントローラ9に出力する。
【0022】
ハイブリッドコントローラ9は、SOCセンサ11等からのセンサ検出値、発電モータ3及び駆動モータ5のモータ回転数を基に、エンジン2、発電モータ3、及び駆動モータ5について各種の駆動制御を行う。そのために、通常動作として、ハイブリッドコントローラ9は、エンジン2の駆動制御に際してエンジンコントローラ8にエンジン駆動要求を出力する。また、ハイブリッドコントローラ9は、発電モータ3の駆動制御に際して発電モータコントローラ15に発電モータトルク要求を出力する。また、ハイブリッドコントローラ9は、駆動モータ5の駆動制御に際して駆動モータコントローラ16に駆動モータトルク要求を出力する。また、ハイブリッドコントローラ9は、駆動モータコントローラ16(又は直接的に駆動モータ5)から取得した駆動モータ5のモータ回転数に基づいて車速を算出することもできる。
【0023】
エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9からのエンジン駆動要求を実現するようにエンジン2の回転数及びトルクを制御する。エンジンコントローラ8は、例えば、エンジン2のスロットルバルブのスロットル開度、燃料噴射量等を制御してエンジン2の回転数及びトルクを制御する。
また、エンジンコントローラ8は、リニア空燃比センサ6及び残存酸素濃度センサ7の検出値を基に、エンジン2の運転状態又は排気状態を推定する排気状態推定部8aを有する。例えば、排気状態推定部8aは、排気ガス浄化システムに含まれる構成となる。なお、排気状態推定部8aは、エンジンコントローラ8が有することに限定されず、独自の構成として車両に搭載されても良い。
【0024】
ここで、例えば、エンジンコントローラ8及びハイブリッドコントローラ9は、それぞれマイクロコンピュータ及びその周辺回路を備えるコントローラにおいて構成されている。例えば、エンジンコントローラ8及びハイブリッドコントローラ9は、一般的なECU(Electronic Control Unit)と同様にCPU、ROM、RAM等によって構成されている。そして、ROMには、各種処理を実現する1又は2以上のプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されている1又は2以上のプログラムに従って各種処理を実行する。
【0025】
なお、以下の説明では、エンジンコントローラ8をECUという場合もあり、ハイブリッドコントローラ9をHCU(ハイブリッド制御ユニット)という場合もある。
また、発電モータコントローラ(発電モータインバータ)15は、発電モータ3を駆動制御する。具体的には、発電モータコントローラ15は、各相毎の駆動電流によって発電モータ3の各相を制御し、発電モータ3の力行制御又は回生制御を行う。このとき、発電モータコントローラ15は、発電モータ3のモータ回転数をハイブリッドコントローラ9に出力する。ここで、駆動モータ5のモータ回転数は、エンジン回転数と等しい。
【0026】
発電モータ3は、回転軸がエンジン2の出力軸に接続されている。これにより、発電モータ3は、エンジン2の駆動力によって電力を発生する。発電モータ3は、発電電力をバッテリ4又は駆動モータ5に供給する。バッテリ4は、発電モータ3及び駆動モータ5に接続されており、発電モータ3の発電電力又は駆動モータ5の発電電力(回生電力)によって充電される。
【0027】
また、駆動モータコントローラ(駆動モータインバータ)16は、駆動モータ5を駆動制御する。具体的には、駆動モータコントローラ16は、各相毎の駆動電流によって駆動モータ5の各相を制御し、駆動モータ5の力行制御又は回生制御を行う。このとき、駆動モータコントローラ16は、駆動モータ5のモータ回転数をハイブリッドコントローラ9に出力する。
駆動モータ5は、駆動輪31,32に連絡する駆動軸に接続されている。この駆動モータ5は、発電モータ3の発電電力又はバッテリ4から出力される電力(放電電力)により駆動される。これにより、発電モータ3は、駆動軸を駆動して駆動輪31,32を駆動する。
【0028】
(自己診断処理)
次に、エンジンコントローラ8が主(マスタ)として動作し自己診断処理(OBD:On-Board Diagnostics)として行うセンサ診断処理の一例を説明する。このセンサ診断処理では、ハイブリッドコントローラ9が従(又はスレーブ、副)として動作する。また、このセンサ診断処理の診断対象は、リニア空燃比センサ6及び残存酸素濃度センサ7である。
以下の説明で参照する図3〜図8は、センサ診断処理においてエンジンコントローラ8が主となり行う処理例を示すフローチャートであり、図9及び図10は、センサ診断処理においてハイブリッドコントローラ9が従となり行う処理例を示すフローチャートである。
【0029】
(エンジンコントローラ8における処理)
先ず、エンジンコントローラ8の処理について説明すると、図3に示すように、先ずステップS1では、エンジンコントローラ8は、電源オン(イグニッションオン)以降にOBD診断合格履歴がないか否かを判定する。例えば、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段にOBD診断合格履歴がないか否かを判定する。また、OBD診断合格履歴がない場合とは、OBD診断が完了していない場合(OBD診断が中断等している場合)やOBD診断が完了しているがその完了したOBD診断で不合格結果しか得られていないような場合である。
【0030】
エンジンコントローラ8は、OBD診断合格履歴がないと判定すると、ステップS2に進む。また、エンジンコントローラ8は、OBD診断合格履歴があると判定すると、該図3に示す処理を終了する。
ステップS2では、エンジンコントローラ8は、OBD診断不合格履歴が連続して2回以下(OBD診断不合格の履歴数が2個以下)であるか、又は連続ではないが9回以下(OBD診断不合格の履歴数が9個以下)であるかを判定する。エンジンコントローラ8は、OBD診断不合格履歴が連続して2回以下であるか、又は連続ではないが9回以下であると判定すると、ステップS3に進む。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、ステップS6に進む。
【0031】
ステップS6では、エンジンコントローラ8は、OBD異常診断処理を行う。そして、エンジンコントローラ8は、該図3に示す処理を終了する。
具体的には、OBD異常診断処理については、エンジンコントローラ8は、車内のメータパネル等の表示部によって警告灯表示を行う。また、警告灯表示として、今回の電源オン期間内に(例えば、前記ステップS2で「No」と判定した時点で)行ったり、次回の電源オン時に行ったりする。
【0032】
ステップS3では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モード(OBD診断モード1)を実行する。この第1OBD診断モードでは、通常のエンジン動作から燃料供給なし(燃料カット状態)でエンジン回転数を一定に維持する状態へ移行したときのセンサ(リニア空燃比センサ6や残存酸素濃度センサ7)の応答状態を基に該センサの状態を診断する。この第1OBD診断モードの処理については後で詳述する。
【0033】
次に、ステップS4では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モード(OBD診断モード2)を実行する。この第2OBD診断モードでは、燃料カット状態から通常の燃料供給あり状態へ復帰するときのセンサ(リニア空燃比センサ6や残存酸素濃度センサ7)の応答状態を基に該センサの状態を診断する。この第2OBD診断モードの処理については後で詳述する。
【0034】
次に、ステップS5では、エンジンコントローラ8は、OBD診断の終了判定処理を行う。そして、エンジンコントローラ8は、該図3に示す処理を終了する。
このOBD診断の終了判定処理では、第1及び第2OBD診断モードの診断結果からOBD診断全体としての診断結果を得る。このOBD診断の終了判定処理の処理については後で詳述する。
【0035】
図4は、前記ステップS4にてエンジンコントローラ8が行う第1OBD診断モードの処理内容の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、先ずステップS21では、エンジンコントローラ8は、アクセル開度センサ12、ブレーキ開度センサ13、及び車速センサ14からアクセル開度、ブレーキ状態、及び車速を取得する。
【0036】
次に、ステップS22では、エンジンコントローラ8は、前記ステップS21で取得した情報を基に、アクセル開度が0%(全閉)又はブレーキがオンか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、アクセル開度が0%(全閉)又はブレーキがオンであると判定すると、ステップS23に進む。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、該図4に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。
【0037】
ステップS23では、エンジンコントローラ8は、前記ステップS21で取得した車速が予め設定した車速(例えば40km/h)よりも大きいか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、車速が予め設定した車速(例えば40km/h)よりも大きいと判定すると、すなわち通常走行している場合、ステップS24に進む。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、すなわち低速走行している場合、該図4に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。
【0038】
ステップS24では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの合格履歴(診断モード1合格履歴)がないか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの合格履歴がないと判定すると、ステップS25に進む。また、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの合格履歴があると判定すると、該図4に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。
【0039】
ステップS25では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの合格判定処理を行う。そして、エンジンコントローラ8は、該図4に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。ここで、第1OBD診断モードの合格判定処理では、第1OBD診断モードによる診断の実施とその診断結果の保存を行う。
図5は、前記ステップS25にてエンジンコントローラ8が行う第1OBD診断モードの合格判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【0040】
図5に示すように、先ずステップS41では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ(HCU)9に第1OBD診断モード要求(診断モード1要求)を送信する。ここで、第1OBD診断モード要求は、エンジンコントローラ8が第1OBD診断モードによる診断を開始することをハイブリッドコントローラ9に知らせる情報、又は、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モードに応じた処理を開始させるための情報となる。
【0041】
次に、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料カット要求(前記ステップS41の第1OBD診断モード要求に対応する返信)を受信したかか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料カット要求を受信したと判定すると、ステップS44に進む。また、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料カット要求を受信していないと判定すると、ステップS43に進む。
【0042】
ステップS43では、エンジンコントローラ8は、受信タイムアウト時間が経過したか否かを判定する。具体的には、エンジンコントローラ8は、前記ステップS41でハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信した時点から前記ステップS42での燃料カット要求の未受信判定時までの時間が予め設定した時間を経過したか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0043】
エンジンコントローラ8は、このステップS43にて受信タイムアウト時間が経過したと判定すると、該図5に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、再び前記ステップS42で判定処理を行う。
ステップS44では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードによる診断を開始する。具体的には、エンジンコントローラ8は、エンジン2の燃料カット(燃料供給オフ)を開始し、タイマを始動させる。
【0044】
次に、ステップS45では、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間内にセンサ測定値が予め設定した設定値に推移したか否かを判定する。すなわち、エンジンコントローラ8は、前記ステップS44のタイマ始動時から予め設定した時間内に予め設定したセンサ応答特性が得られたか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0045】
エンジンコントローラ8は、このステップS45にてタイマ判定時間内にセンサ測定値が予め設定した設定値に推移したと判定すると、ステップS48に進む。また、エンジンコントローラ8は、センサ測定値が設定値に推移していないと判定すると、ステップS46に進む。
ステップS48では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果として「合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段に第1OBD診断モードの合格結果を記憶させる。そして、エンジンコントローラ8は、該図5に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。
【0046】
ステップS46では、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過しているか否かを判定する。具体的には、エンジンコントローラ8は、前記ステップS44のタイマ始動時から予め設定した時間が経過したか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
エンジンコントローラ8は、このステップS46にてタイマ判定時間が経過していると判定すると、ステップS47に進む。また、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過していないと判定すると、該図5に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。例えば、タイマ判定時間が経過していない場合とは、タイマ判定時間内に判定処理が中断したような場合である。
【0047】
ステップS47では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果として「不合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段に第1OBD診断モードの不合格結果を記憶させる。そして、エンジンコントローラ8は、該図5に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。
次に、前記ステップS4にてエンジンコントローラ8が行う第2OBD診断モードの処理を説明する。
【0048】
図6は、その第2OBD診断モードの処理内容の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、先ずステップS61では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの合格履歴(診断モード2合格履歴)ないか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの合格履歴がないと判定すると、ステップS63に進む。また、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの合格履歴があると判定すると、ステップS62に進む。
【0049】
ステップS62では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの合格判定処理を行う。そして、エンジンコントローラ8は、該図6に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。ここで、第2OBD診断モードの合格判定処理では、第2OBD診断モードによる診断の実施とその診断結果の保存を行う。この第2OBD診断モードの合格判定処理については後で詳述する。
【0050】
ステップS63では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9にエンジン通常制御復帰要求を送信する。ここで、エンジン通常制御復帰要求とは、ハイブリッドコントローラ9に通常制御に復帰させるための要求である。また、通常制御とは、目標SOCやアクセル開度等の情報に基づいて発電モータ3の駆動を制御することである。
次に、ステップS64では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求(又は燃料供給復帰要求、前記ステップS63のエンジン通常制御要求に対応する返信)を受信したか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求を受信したと判定すると、ステップS65に進む。また、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求を受信していないと判定すると、ステップS66に進む。
【0051】
ステップS65では、エンジンコントローラ8は、燃料噴射(燃料供給)を再開する。そして、エンジンコントローラ8は、該図6に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。
ステップS66では、エンジンコントローラ8は、受信タイムアウト時間が経過したか否かを判定する。具体的には、エンジンコントローラ8は、前記ステップS63でハイブリッドコントローラ9にエンジン通常制御要求を送信した時点から前記ステップS64での燃料復帰要求の未受信判定時までの時間が予め設定した時間を経過したか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0052】
エンジンコントローラ8は、このステップS66にて受信タイムアウト時間が経過したと判定すると、該図6に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、再び前記ステップS64で判定処理を行う。
図7は、前記ステップS62にてエンジンコントローラ8が行う第2OBD診断モードの合格判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【0053】
図7に示すように、先ずステップS81では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ(HCU)9に第2OBD診断モード要求(診断モード2要求)を送信する。ここで、第2OBD診断モード要求は、エンジンコントローラ8が第2OBD診断モードによる診断を開始することをハイブリッドコントローラ9に知らせる情報、又は、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モードに応じた処理を開始させるための情報となる。
【0054】
次に、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求(前記ステップS81の第2OBD診断モード要求に対応する返信)を受信したか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求を受信したと判定すると、ステップS84に進む。また、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求を受信していないと判定すると、ステップS83に進む。
【0055】
ステップS83では、エンジンコントローラ8は、受信タイムアウト時間が経過したか否かを判定する。具体的には、エンジンコントローラ8は、前記ステップS81でハイブリッドコントローラ9に第2OBD診断モード要求を送信した時点から前記ステップS82での燃料復帰要求の未受信判定時までの時間が予め設定した時間を経過したか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0056】
エンジンコントローラ8は、このステップS83にて受信タイムアウト時間が経過したと判定すると、該図7に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、再び前記ステップS82で判定処理を行う。
ステップS84では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードによる診断を開始する。具体的には、エンジンコントローラ8は、エンジン2の燃料噴射を復帰させ、タイマを始動する。
【0057】
次に、ステップS85では、エンジンコントローラ8は、センサ測定値が予め設定した設定値に推移したか否かを判定する。すなわち、エンジンコントローラ8は、前記ステップS84のタイマ始動時から予め設定した時間内に予め設定したセンサ応答特性が得られたか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した設定値は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0058】
エンジンコントローラ8は、このステップS85にてタイマ判定時間内にセンサ測定値が予め設定した設定値に推移したと判定すると、ステップS88に進む。また、エンジンコントローラ8は、センサ測定値が設定値に推移していないと判定すると、ステップS86に進む。
ステップS88では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの診断結果として「合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段に第2OBD診断モードの合格結果を記憶させる。そして、エンジンコントローラ8は、該図7に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。
【0059】
ステップS86では、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過したか否かを判定する。具体的には、エンジンコントローラ8は、前記ステップS84のタイマ始動時から予め設定した時間が経過したか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
エンジンコントローラ8は、このステップS86にてタイマ判定時間が経過したと判定すると、ステップS87に進む。また、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過していないと判定すると、該図7に示す処理を終了する(前記ステップS8に進む)。
【0060】
ステップS87では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの診断結果として「不合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段に第2OBD診断モードの不合格結果を記憶させる。そして、エンジンコントローラ8は、該図7に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。
次に、前記ステップS5にてエンジンコントローラ8が行うOBD診断の終了判定処理を説明する。
【0061】
図8は、そのOBD診断の終了判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、先ずステップS101では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果が合格であり、且つ第2OBD診断モードの診断結果が合格であるか否かを判定する。すなわち、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段にそれら情報が履歴として記憶されているか否かを判定する。そして、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果が合格であり、且つ第2OBD診断モードの診断結果が合格であると判定すると、ステップS102に進む。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、ステップS103に進む。
【0062】
ステップS102では、エンジンコントローラ8は、OBD診断モード全体の診断結果として「合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段にOBD診断モードの合格結果を記憶させる。そして、エンジンコントローラ8は、該図8に示す処理を終了する(前記図4の処理を終了する)。
ステップS103では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果が不合格であるか、又は第2OBD診断モードの診断結果が不合格であるか否かを判定する。すなわち、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段にそれら情報が履歴として記憶されているか否かを判定する。そして、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの診断結果が不合格であるか、又は第2OBD診断モードの診断結果が不合格であると判定すると、ステップS104に進む。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、該図8に示す処理を終了する(前記図4の処理を終了する)。
【0063】
ステップS104では、エンジンコントローラ8は、OBD診断モード全体の診断結果として「不合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段にOBD診断モードの不合格結果を記憶させる。例えば、エンジンコントローラ8は、不合格カウンタに1を加算する。そして、エンジンコントローラ8は、該図8に示す処理を終了する(前記図4の処理を終了する)。
【0064】
また、ステップS103の判定で第1OBD診断モードの診断結果及び第2OBD診断モードの診断結果がいずれも不合格でないと判定される場合(「No」と判定される場合)とは、第1OBD診断モードや第2OBD診断モードが未完了状態であり、例えば、タイムアウトやSOCが低下した場合等で未完了となっていることが挙げられる。
(ハイブリッドコントローラ9における処理)
次に、自己診断処理(センサ診断処理)におけるハイブリッドコントローラ9側の処理について説明する。
【0065】
図9は、その処理内容の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、先ずステップS121では、ハイブリッドコントローラ9は、SOCセンサ11の検出値を基に、検出したSOC残量が十分か否かを判定する。具体的には、ハイブリッドコントローラ9は、検出したSOC残量がSOC残量判定用に予め設定したしきい値以上か否かを判定する。また、ここでいう予め設定したしきい値は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0066】
ハイブリッドコントローラ9は、このステップS121にて検出したSOC残量が十分であると判定すると、ステップS122に進む。また、ハイブリッドコントローラ9は、検出したSOC残量が十分でないと判定すると、該図9に示す処理を終了する。
ステップS122では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ(ECU)8から第1OBD診断モード要求(診断モード1要求)を受信したか否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、第1OBD診断モード要求を受信したと判定すると、ステップS123に進む。また、ハイブリッドコントローラ9は、第1OBD診断モード要求を受信していないと判定すると、ステップS126に進む。
【0067】
ステップS123では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料カット要求を送信する。
次に、ステップS124では、ハイブリッドコントローラ9は、発電モータ回転数(エンジン回転数)が一定(予め設定した回転数)になるように発電モータ3の力行トルクをフィードバック制御する。
【0068】
次に、ステップS125では、ハイブリッドコントローラ9は、力行回転継続中フラグに1を設定する(力行回転継続中フラグ=1)。そして、ハイブリッドコントローラ9は、ステップS126に進む。
ステップS126では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8から第2OBD診断モード要求(診断モード2要求)又は通常制御復帰要求を受信したか否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、第2OBD診断モード要求又は通常制御復帰要求を受信したと判定すると、ステップS127に進む。また、ハイブリッドコントローラ9は、そうでないと判定すると、該図9に示す処理を終了する。
【0069】
ステップS127では、ハイブリッドコントローラ9は、力行回転継続中フラグが1に設定されているか否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、力行回転継続中フラグが1に設定されていると判定すると(力行回転継続中フラグ=1)、ステップS129に進む。また、ハイブリッドコントローラ9は、力行回転継続中トルクが1に設定されていないと判定すると(力行回転継続中フラグ≠1)、ステップS128に進む。
【0070】
ステップS128では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジン2が燃料噴射を行っていない状況下で力行トルクによって目標値まで発電モータ3を回転させる。そして、ハイブリッドコントローラ9は、ステップS130に進む。例えば、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料噴射停止要求を行い、エンジンコントローラ8の制御によってエンジン2が燃料噴射を行っていない状況を作り出す。
【0071】
ステップS129では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料噴射復帰要求を送信する。
次に、ステップS130では、ハイブリッドコントローラ9は、発電モータ3のトルクを力行から回生に遷移させる。ここで、発電モータ3のモータトルク変化とエンジン2の燃料噴射の開始とにタイムラグがあるような場合に発電モータ回転数(エンジン回転数)が大きく変化しないように、又はエンジンストールしないように、ハイブリッドコントローラ9は、フィードバック制御によって発電モータ3を力行から回生に遷移させる。
【0072】
次に、ステップS131では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジン通常制御復帰完了処理を行う。
次に、ステップS132では、ハイブリッドコントローラ9は、力行回転継続中フラグを0に設定する(力行回転継続中フラグ=0)。そして、ハイブリッドコントローラ9は、該図9に示す処理を終了する。
【0073】
また、前記図9に示す処理では、ハイブリッドコントローラ9は、第1OBD診断モード要求に係る処理(ステップS122以降の処理)の後、必ず第2OBD診断モード要求に係る処理(ステップS126以降の処理)を経由するようになっている。すなわち、前記図9に示す処理では、第1OBD診断モード要求に係る処理と第2OBD診断モード要求に係る処理とが独立した関係になっていない。これに対して、第1OBD診断モード要求に係る処理と第2OBD診断モード要求に係る処理とを独立した関係にすることもできる。
【0074】
図10は、ハイブリッドコントローラ9におけるそのような処理内容の一例を示すフローチャートである。この例は、第2OBD診断モード要求に係る処理が独立している処理例である。
図10に示すように、先ずステップS151では、前記図9に示すステップS121の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、SOCセンサ11の検出値を基に、検出したSOC残量が十分か否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、検出したSOC残量が十分であると判定すると、ステップS152に進む。また、ハイブリッドコントローラ9は、検出したSOC残量が十分でないと判定すると、該図10に示す処理を終了する。
【0075】
ステップS152では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ(ECU)8から第1OBD診断モード要求(診断モード1要求)を受信したか否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、第1OBD診断モード要求を受信したと判定すると、ステップS153に進む。しかし、図9の処理と異なり、図10に示す処理では、ハイブリッドコントローラ9は、第1OBD診断モード要求を受信していないと判定すると、第2OBD診断モード要求(診断モード2要求)に係る処理(後述のステップS155以降の処理)を行うことなく、該図10に示す処理を終了する。
【0076】
ステップS153では、前記図9の示すステップS123の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料カット要求を送信する。
次に、ステップS154では、前記図9の示すステップS128の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、エンジン2が燃料噴射を行っていない状況下で発電モータ3の力行トルクをフィードバック制御する。
【0077】
次に、ステップS155では、前記図9に示すステップS126の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8から第2OBD診断モード要求(診断モード2要求)又は通常制御復帰要求を受信したか否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、第2OBD診断モード要求又は通常制御復帰要求を受信したと判定したときに、ステップS156に進む。
【0078】
次に、ステップS156では、前記図9の示すステップS129の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料噴射復帰要求を送信する。
次に、ステップS157では、前記図9の示すステップS130の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、発電モータ3のトルクを力行から回生にフィードバック制御によって遷移させる。
【0079】
次に、ステップS158では、前記図9に示すステップS131の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、エンジン通常制御復帰完了処理を行う。そして、ハイブリッドコントローラ9は、該図10に示す処理を終了する。
なお、図10には、第2OBD診断モード要求に係る処理を独立して行う場合を示した。これに限らず、第1OBD診断モード要求に係る処理を独立して行うこともできる。具体例は、省略するが、例えば、独立した第1OBD診断モード要求に係る処理として、図9に示すステップS121〜ステップS124の処理だけを行うことが挙げられる。
(動作等)
次に、ハイブリッドシステム1のセンサ診断処理時における動作、作用等を説明する。
【0080】
エンジンコントローラ8は、電源オン以降(毎回走行毎)にOBD診断合格履歴があれば、OBD診断を終了し(ステップS1)、電源オン以降(毎回走行毎)にOBD診断不合格履歴が連続して3回以上、又は連続ではないが10回以上ある場合、OBD異常診断処理(例えば警告灯表示)を行う(ステップS2、ステップS6)。一方、エンジンコントローラ8は、それら以外の場合、第1OBD診断モードの実行処理、第2OBD診断モードの実行処理、及びOBD診断の終了判定処理を順次実施する(ステップS3〜ステップS5)。
【0081】
先ず、第1OBD診断モードの実行処理では、エンジンコントローラ8は、アクセル開度が0%(全閉)又はブレーキがオンであり、且つ車速が予め設定した車速(例えば40km/h)よりも大きく、且つ第1OBD診断モードの合格履歴がない場合、第1OBD診断モードの合格判定処理を行う(図4)。よって、エンジンコントローラ8は、既に第1OBD診断モードの合格履歴がある場合、第1OBD診断モードの合格判定処理を行うことなく、第2OBD診断モードの合格判定処理に進む。
【0082】
第1OBD診断モードの合格判定処理では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信し、ハイブリッドコントローラ9から第1OBD診断モード要求に対応して燃料カット要求が送信されてきたときに、エンジン2の燃料をカットするとともにタイマを始動させて、第1OBD診断モードによる診断を開始する(ステップS41〜ステップS44)。
【0083】
その一方で、ハイブリッドコントローラ9は、SOC残量が十分であることを条件に、エンジンコントローラ8から第1OBD診断モード要求を受信すると、エンジンコントローラ8に燃料カット要求を送信するとともに、発電モータ回転数が一定になるように発電モータ3の力行トルクをフィードバック制御する(ステップS121〜ステップS124)。
【0084】
すなわち、ハイブリッドシステム1では、エンジンコントローラ8がエンジン2の燃料をカットするとともにハイブリッドコントローラ9が発電モータ3を一定回転数に力行制御することで、発電モータ3の力行によりエンジン2に負荷を与えた状態にし、エンジンコントローラ8側で第1OBD診断モードによる診断を開始する。つまり、ハイブリッドシステム1は、通常発電状態からモータリング状態に遷移させ、エンジンコントローラ8によって第1OBD診断モードによる診断を開始する。
【0085】
そして、第1OBD診断モードとして、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間内にセンサ測定値が予め設定した設定値に推移した場合、第1OBD診断モードの診断結果として「合格」を保存する(ステップS45、ステップS48)。すなわち、エンジンコントローラ8は、センサ出力値が一定範囲内に落ち着くまでの推移時間を基に、所望のセンサ応答特性となっていることを推定できる場合、センサ診断結果として「合格」を保存する。
【0086】
また、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過しているがセンサ測定値が予め設定した設定値に推移していない場合、第1OBD診断モードの診断結果として「不合格」を保存する(ステップS45〜ステップS47)。
また、エンジンコントローラ8は、判定処理の中断等によってタイマ判定時間が経過していない場合、第1OBD診断モードの診断結果を保存することなく処理を終了する(ステップS45、ステップS46)。例えば、エンジンコントローラ8は、たとえハイブリッドコントローラ9側でSOC残量が十分であるとして第1OBD診断モード処理を開始した後でもその第1OBD診断モード処理中にSOCが低下しSOC残量が十分でなくなった場合、第1OBD診断モードの診断結果を保存することなく処理を終了する。
【0087】
次に、エンジンコントローラ8は、以上の第1OBD診断モードの実行処理の後、第2OBD診断モードの実行処理として、第2OBD診断モードの合格履歴がない場合に第2OBD診断モードの合格判定処理を行う(図3、図6)。よって、エンジンコントローラ8は、既に第2OBD診断モードの合格履歴がある場合、第2OBD診断モードの合格判定処理を行わず、その一方でハイブリッドコントローラ9にエンジン通常制御復帰要求等を行い、OBD診断の終了判定処理に進む(図6)。
【0088】
第2OBD診断モードの合格判定処理では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9に第2OBD診断モード要求を送信し、ハイブリッドコントローラ9から第2OBD診断モード要求に対応して燃料復帰要求が送信されてきたときに、燃料噴射を復帰させるとともにタイマを始動させて、第2OBD診断モードによる診断を開始する(ステップS81〜ステップS84)。
【0089】
その一方で、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8から第2OBD診断モード要求を受信すると、エンジンコントローラ8に燃料噴射復帰要求を送信するとともに、発電モータ3を力行動作から回生動作にフィードバック制御によって遷移させる(ステップS126〜ステップS130)。
また、前述のように、既に第1OBD診断モードの合格履歴がある場合には、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの合格判定処理を実施することなく(第1OBD診断モード要求を送信しないで)、次の第2OBD診断モードの合格判定処理を実施している(図4参照)。これに対応して、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8から第1OBD診断モード要求を受信できていない状況下で第2OBD診断モード要求を受信した場合、すなわち、既に第1OBD診断モードの合格履歴がある場合には、エンジン2が燃料噴射を行っていない状況下で力行トルクによって目標値まで発電モータ3を回転させる(ステップS128)。これによって、ハイブリッドシステム1は、第1OBD診断モード時のエンジン2及び発電モータ3の動作状態を擬似的に作り出す。
【0090】
そして、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料噴射復帰要求を送信するとともに、発電モータ3を力行動作から回生動作にフィードバック制御によって遷移させる(ステップS129、ステップS130)。
このように、ハイブリッドシステム1では、エンジンコントローラ8がエンジン2の燃料噴射を復帰させるとともにハイブリッドコントローラ9が発電モータ3の回生制御を行い、エンジンコントローラ8側で第2OBD診断モードによる診断を開始する。つまり、ハイブリッドシステム1は、モータリング状態から再び通常発電状態に戻すことで、エンジンコントローラ8によって第2OBD診断モードによる診断を開始する。
【0091】
そして、第2OBD診断モードとして、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間内にセンサ測定値が予め設定した設定値に推移した場合、第2OBD診断モードの診断結果として「合格」を保存する(ステップS85、ステップS88)。すなわち、エンジンコントローラ8は、センサ出力値が一定範囲内に落ち着くまでの推移時間を基に、所望のセンサ応答特性となっていることを推定できる場合、センサ診断結果として「合格」を保存する。
【0092】
また、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過しているがセンサ測定値が予め設定した設定値に推移していない場合、第2OBD診断モードの診断結果として「不合格」を保存する(ステップS85〜ステップS87)。
また、エンジンコントローラ8は、判定処理の中断等によってタイマ判定時間が経過していない場合、第2OBD診断モードの診断結果を保存することなく処理を終了する(ステップS85、ステップS86)。
【0093】
そして、エンジンコントローラ8は、以上の第1及び第2OBD診断モードの実行処理の後、OBD診断の終了判定処理を行う(図3)。
OBD診断の終了判定処理では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果が合格であり、且つ第2OBD診断モードの診断結果が合格である場合、OBD診断モード全体の診断結果として「合格」を保存する(ステップS101、ステップS102)。
【0094】
また、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果が不合格であるか、又は第2OBD診断モードの診断結果が不合格である場合、OBD診断モード全体の診断結果として「不合格」を保存する(ステップS103、ステップS104)。
また、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードや第2OBD診断モードが未完了状態の場合、OBD診断モード全体の診断結果を保存することなく処理を終了する。
【0095】
以上のようなセンサ診断処理によって、ハイブリッドシステム1は、センサの応答性等の動作を担保するために、エンジンコントローラ8が主となってエンジンコントローラ8とハイブリッドコントローラ9とが協調動作し、センサ応答性確認によるセンサ診断を行う。
また、そのセンサ診断では、ハイブリッドシステム1は、第1及び第2OBD診断モードの診断結果のいずれか一方が合格となった場合には、その合格履歴を保持しつつ、次回の診断以降で第1及び第2OBD診断モードによる診断のいずれか他方のみを実施する。
【0096】
そして、ハイブリッドシステム1は、そのようなセンサ診断によって、一度合格(第1及び第2OBD診断モードでともに合格)判定を得た後は電源オフまでその合格結果を保持する。また、3回の診断を完了したが3回連続して不合格(第1及び第2OBD診断モードでともに不合格)判定となった場合、又は、1度も合格判定を得ることなく10回不合格(第1及び第2OBD診断モードでともに不合格)判定となった場合、ハイブリッドシステム1は、センサが異常(排気ガス診断異常)であるとして警告表示を行う。
【0097】
次に、図11に示す例を参照しつつ動作、作用等を説明する。
図11は、センサ診断処理時の各種情報のタイミングチャートを示す図である。ここで、図11(a)には、エンジンコントローラ8の第1及び第2OBD診断モード要求の送信タイミングを示す。また、図11(b)には、ハイブリッドコントローラ9が判定するSOC条件を示す。また、図11(c)には、ハイブリッドコントローラ9の診断モードの状態を示す。また、図11(d)には、エンジンコントローラ8による燃料カット状態を示す。また、図11(e)には、ハイブリッドコントローラ9による発電モータ3の制御時の発電トルクを示す。また、図11(f)には、エンジン回転数を示す。また、図11(g)には、このセンサ診断処理の診断対象となるリニア空燃比センサ6や残存酸素濃度センサ7のセンサ出力(エンジンコントローラ8によるセンサ検出状態)を示す。
【0098】
図11(a)〜(e)に示すように、エンジンコントローラ8がハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信し、且つハイブリッドコントローラ9においてSOC条件(SOC残量が十分)が成立したとき、エンジンコントローラ8がエンジン2の燃料をカットするとともに、ハイブリッドコントローラ9が発電モータ3を力行させる。そして、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードによって、図11(g)に示すように応答するセンサ出力を検出して該センサの診断(モード1応答診断)を行う。
【0099】
その後、図11(a)〜(e)に示すように、エンジンコントローラ8がハイブリッドコントローラ9に第2診断モード要求を送信し、エンジンコントローラ8がエンジン2の燃料カットを中止する(燃料噴射を復帰させる)とともに、ハイブリッドコントローラ9が発電モータ3を回生させる。そして、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードによって、図11(g)に示すように応答するセンサ出力を検出して該センサの診断(モード2応答診断)を行う。
【0100】
(本実施形態の効果)
以上のように、本実施形態のハイブリッドシステム1では、エンジンコントローラ8に第1及び第2OBD診断モード要求を送信しその返信を受信する機能と、ハイブリッドコントローラ9に第1及び第2OBD診断モード要求を受信しその返信を送信する機能とをそれぞれ付加することによって、エンジンコントローラ8及びハイブリッドコントローラ9をそれぞれ独立してセンサの診断のための制御動作をさせて、エンジンコントローラ8側でセンサの診断を行うことができる。
【0101】
これにより、本実施形態のハイブリッドシステム1では、車両走行中におけるセンサ診断の際にエンジン2と発電モータ3とを協調動作させて、センサ診断ためのエンジン2及び発電モータ3の動作状態を早期に作り出すことができる。
また、本実施形態のハイブリッドシステム1では、エンジンコントローラ8とハイブリッドコントローラ9との間で信号をやりとりする構成を付加し、エンジンコントローラ8側でセンサ診断を行うため、既存のエンジンコントローラ8とハイブリッドコントローラ9とを流用し、さらにはエンジンコントローラ8のセンサ診断ロジックを流用して、センサ診断を行うことができる。よって、本実施形態のハイブリッドシステム1では、エンジンコントローラ8及びハイブリッドコントローラ9の設計変更を抑えて、センサ診断を行うことができる。
【0102】
例えば、エンジンコントローラに備わっている診断機能の多くの部分を活用するようにセンサ診断システムを構築しなければ、システム全体にわたって新しく専用設計の装置を用意する必要があり、膨大な工数がかかる上に、量産効果が低くなる不都合がある。
これに対して、本実施形態のハイブリッドシステム1では、既存のエンジンコントローラ8とハイブリッドコントローラ9とを流用できるため、かかる問題を解決できる。
【0103】
また、例えば、特許文献1、2に開示の技術では、いずれも車両走行中の診断に適しているとは言えない。
これに対して、本実施形態のハイブリッドシステム1では、前述のように、車両走行中でしかもセンサ診断のための動作状態を早期に作り出すことができる。
さらに、特許文献1に開示の技術では、バッテリを充電してから診断を実施している。そのため、特許文献1に開示の技術は、診断時のエンジン回転数や発電モータ回転数の急減な増加が乗員に違和感を与えてしまう恐れがある。
【0104】
これに対して、本実施形態のハイブリッドシステム1では、診断のためにエンジン2や発電モータ3を必要以上に回転させるようなこともないため、診断のためのエンジン2や発電モータ3の回転数の増加が乗員に違和感を与えてしまうといったことも防止できる。
また、本実施形態では、エンジン2は、例えば、内燃機関に構成する。また、エンジンコントローラ8は、例えば、内燃機関制御手段を構成する。また、ハイブリッドコントローラ9は、例えば、モータ制御手段を構成する。また、リニア空燃比センサ6や残存酸素濃度センサ7は、例えば、吸気ガス又は排気ガスを検出するセンサを構成する。また、排気状態推定部8aは、例えば、排気状態推定手段を構成する。
【0105】
(本実施形態の変形例)
本実施形態では、エンジンコントローラ8は、エンジン2の完全暖機完了又は排気浄化システムの暖機(活性化)完了となったことを条件にセンサ診断処理を開始することもできる。これは、エンジン暖気中は、排ガス状態が良好ではなく、センサ診断を適切に行える環境とは言えないからである。
【0106】
また、本実施形態は、エンジン2によって発電モータ3を駆動し、車両の走行状態に相互影響を与えないようにそのエンジン2を始動及び停止できるハイブリッド車両であれば、前述の構成のシリーズ式ハイブリッドに適用されることに限定されない。
また、本実施形態では、エンジンコントローラ8が、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信し、ハイブリッドコントローラ9からその返信である燃料カット要求を受信した場合に、エンジン2の燃料カットを行い第1OBD診断モードによる診断を開始している。これに対して、本実施形態では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信したときにエンジン2の燃料カットを行い第1OBD診断モードによる診断を開始させることもできる。また、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信した時から予め設定した時間(例えば20ms)経過した後、エンジン2の燃料カットを行い第1OBD診断モードによる診断を開始することもできる。このように処理を変更した場合、ハイブリッドコントローラ9からは、そのような処理変更に応じた返信(例えば診断モード開始状態要求)がなされる。
【0107】
また、前述のようにエンジンコントローラ8がハイブリッドコントローラ9側の状態に関係なく第1OBD診断モードによる診断を開始するような場合には、SOC残量が低下している場合にも、第1OBD診断モードによる診断を開始する場合がある。しかし、このような場合には、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過する前に判定処理が中断し、第1OBD診断モードの診断結果を保存することなく処理を終了するようになる(ステップS45、ステップS46)。
【0108】
また、本実施形態では、エンジンコントローラ8が、ハイブリッドコントローラ9に第2OBD診断モード要求を送信し、ハイブリッドコントローラ9からその返信である燃料噴射復帰要求を受信した場合に、エンジン2の燃料噴射を復帰させ第2OBD診断モードによる診断を開始している。これに対して、本実施形態では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9に第2OBD診断モード要求を送信したときにエンジン2の燃料噴射を復帰させ第2OBD診断モードによる診断を開始させることもできる。このように処理を変更した場合、ハイブリッドコントローラ9からは、そのような処理変更に応じた返信(例えば診断モード復帰状態要求)がなされる。
【0109】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項1により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0110】
1 ハイブリッドシステム、2 エンジン、3 発電モータ、4 バッテリ、5 駆動モータ、6 リニア空燃比センサ、7 残存酸素濃度センサ、8 エンジンコントローラ、9 ハイブリッドコントローラ、11 SOCセンサ、12 アクセル開度センサ、13 ブレーキ開度センサ、14 車速センサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリーズ式ハイブリッド車両の内燃機関の運転状態を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ハイブリッド車両において、エンジンの運転状態を検出する技術が提案されている(例えば特許文献1、2参照)。
そして、ハイブリッド車両には、エンジンによって駆動される発電モータと、発電モータの発電電力によって車輪を駆動する駆動モータとを搭載するシリーズ式ハイブリッド車両がある。
【0003】
このようなこのシリーズ式ハイブリッド車両においても、エンジンの運転状態を検出し、さらに、その検出を高い精度で行うためのセンサ診断が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−268711号公報
【特許文献2】特開2008−143321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、シリーズ式ハイブリッド車両では、ガソリン車と異なり車両の加減速(駆動モータによる駆動)とエンジン回転数(エンジンの駆動)とを無関係に動作させることができるために、車両走行中にセンサ診断を実施しようとしても、センサ診断用のエンジン動作状態を長期間作り出すことができない恐れがある。
本発明は、シリーズ式ハイブリッド車両において車両走行中にエンジンの運転状態検出用のセンサの診断を開始する際に、センサ診断のためのエンジン動作状態を早期に作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、(1)本発明の一態様では、内燃機関と、前記内燃機関の動作を制御する内燃機関制御手段と、前記内燃機関によって駆動される発電モータと、前記発電モータの発電電力によって充電されるバッテリと、前記発電モータの発電電力又は前記バッテリの放電電力によって車輪を駆動する駆動モータと、前記内燃機関制御手段と通信可能とされ前記発電モータ及び前記駆動モータを制御するモータ制御手段とを備えるハイブリッド車両の前記内燃機関の運転状態を検出するハイブリッド車両の内燃機関運転状態検出装置において、前記内燃機関の吸気側又は排気側に配置され吸気ガス又は排気ガスを検出するセンサと、前記センサの検出値を基に排気状態を推定する排気状態推定手段とを備え、前記内燃機関制御手段は、前記センサの診断前に前記モータ制御手段にセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記内燃機関を前記センサの診断のための動作状態にするとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記センサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記発電モータを前記センサの診断のための動作状態にすることを特徴とする内燃機関運転状態検出装置を提供できる。
【0007】
(2)本発明の一態様では、アクセル操作状態を検出するアクセル操作検出手段をさらに備え、前記内燃機関制御手段は、前記アクセル操作検出手段が前記アクセル操作されていないことを検出した場合に前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記センサ診断開始信号を送信する。
(3)本発明の一態様では、ブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作検出手段をさらに備え、前記内燃機関制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段が前記ブレーキ操作されていることを検出した場合に前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記センサ診断開始信号を送信する。
【0008】
(4)本発明の一態様では、前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段をさらに備え、前記モータ制御手段は、前記発電モータを前記センサの診断のための動作状態として前記バッテリの放電電力によって発電モータを力行させており、前記モータ制御手段は、前記蓄電量検出手段が検出した前記バッテリの蓄電量が予め設定した値以下の場合に前記返信信号を前記内燃機関制御手段に送信しない。
【0009】
(5)本発明の一態様では、前記内燃機関制御手段は、前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記内燃機関の燃料噴射を停止させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記センサの診断のための前記内燃機関の動作状態として前記内燃機関の燃料噴射を停止させるとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記センサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記センサの診断のための前記発電モータの動作状態として前記バッテリの放電電力によって前記発電モータを力行させる。
【0010】
(6)本発明の一態様では、前記内燃機関制御手段は、前記内燃機関の燃料噴射を停止させて前記センサの診断を行った後に前記モータ制御手段に前記内燃機関の燃料噴射を再開させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記センサの診断のための前記内燃機関の動作状態として前記内燃機関の燃料噴射を再開させるとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記内燃機関の燃料噴射を再開させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記センサの診断のための前記発電モータを動作状態として前記力行する発電モータを回生させる。
【発明の効果】
【0011】
(1)の本発明によれば、内燃機関制御手段に対しセンサ診断開始信号を送信しその返信信号を受信する機能と、モータ制御手段に対しセンサ診断開始信号を受信しその返信信号を送信する機能とをそれぞれ付加することによって、内燃機関制御手段及びモータ制御手段をそれぞれ独立してセンサの診断のための制御動作をさせて、内燃機関制御手段側でセンサの診断を行うことができる。
【0012】
これにより、本発明では、車両走行中におけるセンサ診断の際に内燃機関と発電モータとを協調動作させて、センサ診断のための内燃機関及び発電モータの動作状態を早期に作り出すことができる。
また、本発明では、内燃機関制御手段とモータ制御手段との間で信号をやりとりする構成を付加し、内燃機関制御手段側でセンサ診断を行うため、既存の内燃機関制御手段及びモータ制御手段を流用し、さらには内燃機関制御手段のセンサ診断ロジックを流用して、センサ診断を行うことができる。
【0013】
(2)の本発明によれば、アクセル操作されてなく車両の駆動力が必要とならないような状況下で、内燃機関及び発電モータにセンサ診断のための動作をさせることができる。
これにより、本発明では、駆動モータの駆動によってバッテリの蓄電量が急激に減少してしまう可能性が低いため、センサ診断のためにバッテリの放電電力を利用して発電モータに力行動作させるような場合でもバッテリの蓄電量を確保した状態でその発電モータの力行動作を実施できる。
【0014】
(3)の本発明によれば、ブレーキ操作されており車両の駆動力が必要とならないような状況下で、内燃機関及び発電モータにセンサ診断のための動作をさせることができる。
これにより、本発明では、駆動モータの駆動によってバッテリの蓄電量が急激に減少してしまう可能性が低いため、センサの診断のためにバッテリの放電電力を利用して発電モータに力行動作させるような場合でもバッテリの蓄電量を確保した状態でその発電モータの力行動作を実施できる。
【0015】
(4)の本発明によれば、バッテリの蓄電量が確保されているときにバッテリの放電電力を利用して発電モータを力行動作させ、センサ診断を行うことができるため、安定した発電モータの力行動作によって安定した状態でセンサ診断を行うことができる。
(5)の本発明によれば、内燃機関の燃料噴射を停止させるとともに発電モータによって内燃機関に負荷を与えた状況下のセンサ診断を実現できる。
【0016】
(6)の本発明によれば、内燃機関の燃料噴射を停止させるとともに発電モータによって内燃機関に負荷を与えた状況下のセンサ診断を行った後に、内燃機関の燃料噴射を再開させて発電モータを回生させている状況下のセンサ診断を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態のシリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステムの構成例を示す図である。
【図2】本実施形態のシリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステムの構成例を示す他の図である。
【図3】エンジンコントローラが主(マスタ)として動作し自己診断処理として行うセンサ診断処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】エンジンコントローラが行う第1OBD診断モードの処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図5】エンジンコントローラが行う第1OBD診断モードの合格判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図6】エンジンコントローラが行う第2OBD診断モードの処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図7】エンジンコントローラが行う第2OBD診断モードの合格判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図8】エンジンコントローラが行うOBD診断の終了判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【図9】自己診断処理におけるハイブリッドコントローラの処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】自己診断処理におけるハイブリッドコントローラの処理の他の例を示すフローチャートである。
【図11】自己診断処理時の各種情報のタイミングチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態は、シリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステムである。
(構成)
図1及び図2は、シリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステム1の構成例を示す図である。図1に示すように、シリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステム1では、エンジン2の出力軸(クランク軸)と発電モータ3の入力軸を直列につなぎ、発電モータ3の発電電力又はバッテリ4からの放電電力で駆動モータ5を回転させて駆動輪31,32を駆動する構成になっている。
【0019】
そのために、図1に示すように、ハイブリッドシステム1を搭載する車両は、エンジン2、発電モータ3、バッテリ(例えば高電圧バッテリ)4、駆動モータ5、リニア空燃比センサ6、残存酸素濃度センサ7、エンジンコントローラ8、及びハイブリッドコントローラ9を有している。さらに、図2に示すように、ハイブリッドシステム1を搭載する車両は、SOC(State Of Charge)センサ11、アクセル開度センサ12、ブレーキ開度センサ13、車速センサ14、発電モータコントローラ(例えば発電モータインバータ)15、及び駆動モータコントローラ(例えば駆動モータインバータ)16を有している。
【0020】
そして、図1に示すように、ハイブリッドシステム1では、CAN(Controller Area Network)等を構成する通信線17を介してハイブリッドコントローラ9等が互いに信号又はデータの送受信を行う。
ここで、リニア空燃比センサ6は、エンジン2の吸気通路に設けられ、エンジン2における空燃比を検出する。そして、リニア空燃比センサ6は、検出値をエンジンコントローラ8に出力する。また、残存酸素濃度センサ7は、エンジン2の排気通路に設けられ、エンジン2における残存酸素濃度を検出する。そして、残存酸素濃度センサ7は、検出値をエンジンコントローラ8に出力する。ここで、リニア空燃比センサ6及び残存酸素濃度センサ7は、エンジン2の運転状態を検出するシステム、具体的には排気ガス浄化システムに含まれるセンサとなる。
【0021】
また、アクセル開度センサ12は、アクセル開度、すなわちアクセルペダルの操作量を検出する。そして、アクセル開度センサ12は、検出値をエンジンコントローラ8に出力する。また、ブレーキ開度センサ13は、ブレーキ開度、すなわちブレーキペダルの操作量を検出する。そして、ブレーキ開度センサ13は、検出値をエンジンコントローラ8に出力する。また、車速センサ14は、車速を検出する。そして、車速センサ14は、検出値をエンジンコントローラ8に出力する。また、SOCセンサ11は、バッテリ4のSOCを検出する。そして、SOCセンサ11は、検出値をハイブリッドコントローラ9に出力する。
【0022】
ハイブリッドコントローラ9は、SOCセンサ11等からのセンサ検出値、発電モータ3及び駆動モータ5のモータ回転数を基に、エンジン2、発電モータ3、及び駆動モータ5について各種の駆動制御を行う。そのために、通常動作として、ハイブリッドコントローラ9は、エンジン2の駆動制御に際してエンジンコントローラ8にエンジン駆動要求を出力する。また、ハイブリッドコントローラ9は、発電モータ3の駆動制御に際して発電モータコントローラ15に発電モータトルク要求を出力する。また、ハイブリッドコントローラ9は、駆動モータ5の駆動制御に際して駆動モータコントローラ16に駆動モータトルク要求を出力する。また、ハイブリッドコントローラ9は、駆動モータコントローラ16(又は直接的に駆動モータ5)から取得した駆動モータ5のモータ回転数に基づいて車速を算出することもできる。
【0023】
エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9からのエンジン駆動要求を実現するようにエンジン2の回転数及びトルクを制御する。エンジンコントローラ8は、例えば、エンジン2のスロットルバルブのスロットル開度、燃料噴射量等を制御してエンジン2の回転数及びトルクを制御する。
また、エンジンコントローラ8は、リニア空燃比センサ6及び残存酸素濃度センサ7の検出値を基に、エンジン2の運転状態又は排気状態を推定する排気状態推定部8aを有する。例えば、排気状態推定部8aは、排気ガス浄化システムに含まれる構成となる。なお、排気状態推定部8aは、エンジンコントローラ8が有することに限定されず、独自の構成として車両に搭載されても良い。
【0024】
ここで、例えば、エンジンコントローラ8及びハイブリッドコントローラ9は、それぞれマイクロコンピュータ及びその周辺回路を備えるコントローラにおいて構成されている。例えば、エンジンコントローラ8及びハイブリッドコントローラ9は、一般的なECU(Electronic Control Unit)と同様にCPU、ROM、RAM等によって構成されている。そして、ROMには、各種処理を実現する1又は2以上のプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されている1又は2以上のプログラムに従って各種処理を実行する。
【0025】
なお、以下の説明では、エンジンコントローラ8をECUという場合もあり、ハイブリッドコントローラ9をHCU(ハイブリッド制御ユニット)という場合もある。
また、発電モータコントローラ(発電モータインバータ)15は、発電モータ3を駆動制御する。具体的には、発電モータコントローラ15は、各相毎の駆動電流によって発電モータ3の各相を制御し、発電モータ3の力行制御又は回生制御を行う。このとき、発電モータコントローラ15は、発電モータ3のモータ回転数をハイブリッドコントローラ9に出力する。ここで、駆動モータ5のモータ回転数は、エンジン回転数と等しい。
【0026】
発電モータ3は、回転軸がエンジン2の出力軸に接続されている。これにより、発電モータ3は、エンジン2の駆動力によって電力を発生する。発電モータ3は、発電電力をバッテリ4又は駆動モータ5に供給する。バッテリ4は、発電モータ3及び駆動モータ5に接続されており、発電モータ3の発電電力又は駆動モータ5の発電電力(回生電力)によって充電される。
【0027】
また、駆動モータコントローラ(駆動モータインバータ)16は、駆動モータ5を駆動制御する。具体的には、駆動モータコントローラ16は、各相毎の駆動電流によって駆動モータ5の各相を制御し、駆動モータ5の力行制御又は回生制御を行う。このとき、駆動モータコントローラ16は、駆動モータ5のモータ回転数をハイブリッドコントローラ9に出力する。
駆動モータ5は、駆動輪31,32に連絡する駆動軸に接続されている。この駆動モータ5は、発電モータ3の発電電力又はバッテリ4から出力される電力(放電電力)により駆動される。これにより、発電モータ3は、駆動軸を駆動して駆動輪31,32を駆動する。
【0028】
(自己診断処理)
次に、エンジンコントローラ8が主(マスタ)として動作し自己診断処理(OBD:On-Board Diagnostics)として行うセンサ診断処理の一例を説明する。このセンサ診断処理では、ハイブリッドコントローラ9が従(又はスレーブ、副)として動作する。また、このセンサ診断処理の診断対象は、リニア空燃比センサ6及び残存酸素濃度センサ7である。
以下の説明で参照する図3〜図8は、センサ診断処理においてエンジンコントローラ8が主となり行う処理例を示すフローチャートであり、図9及び図10は、センサ診断処理においてハイブリッドコントローラ9が従となり行う処理例を示すフローチャートである。
【0029】
(エンジンコントローラ8における処理)
先ず、エンジンコントローラ8の処理について説明すると、図3に示すように、先ずステップS1では、エンジンコントローラ8は、電源オン(イグニッションオン)以降にOBD診断合格履歴がないか否かを判定する。例えば、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段にOBD診断合格履歴がないか否かを判定する。また、OBD診断合格履歴がない場合とは、OBD診断が完了していない場合(OBD診断が中断等している場合)やOBD診断が完了しているがその完了したOBD診断で不合格結果しか得られていないような場合である。
【0030】
エンジンコントローラ8は、OBD診断合格履歴がないと判定すると、ステップS2に進む。また、エンジンコントローラ8は、OBD診断合格履歴があると判定すると、該図3に示す処理を終了する。
ステップS2では、エンジンコントローラ8は、OBD診断不合格履歴が連続して2回以下(OBD診断不合格の履歴数が2個以下)であるか、又は連続ではないが9回以下(OBD診断不合格の履歴数が9個以下)であるかを判定する。エンジンコントローラ8は、OBD診断不合格履歴が連続して2回以下であるか、又は連続ではないが9回以下であると判定すると、ステップS3に進む。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、ステップS6に進む。
【0031】
ステップS6では、エンジンコントローラ8は、OBD異常診断処理を行う。そして、エンジンコントローラ8は、該図3に示す処理を終了する。
具体的には、OBD異常診断処理については、エンジンコントローラ8は、車内のメータパネル等の表示部によって警告灯表示を行う。また、警告灯表示として、今回の電源オン期間内に(例えば、前記ステップS2で「No」と判定した時点で)行ったり、次回の電源オン時に行ったりする。
【0032】
ステップS3では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モード(OBD診断モード1)を実行する。この第1OBD診断モードでは、通常のエンジン動作から燃料供給なし(燃料カット状態)でエンジン回転数を一定に維持する状態へ移行したときのセンサ(リニア空燃比センサ6や残存酸素濃度センサ7)の応答状態を基に該センサの状態を診断する。この第1OBD診断モードの処理については後で詳述する。
【0033】
次に、ステップS4では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モード(OBD診断モード2)を実行する。この第2OBD診断モードでは、燃料カット状態から通常の燃料供給あり状態へ復帰するときのセンサ(リニア空燃比センサ6や残存酸素濃度センサ7)の応答状態を基に該センサの状態を診断する。この第2OBD診断モードの処理については後で詳述する。
【0034】
次に、ステップS5では、エンジンコントローラ8は、OBD診断の終了判定処理を行う。そして、エンジンコントローラ8は、該図3に示す処理を終了する。
このOBD診断の終了判定処理では、第1及び第2OBD診断モードの診断結果からOBD診断全体としての診断結果を得る。このOBD診断の終了判定処理の処理については後で詳述する。
【0035】
図4は、前記ステップS4にてエンジンコントローラ8が行う第1OBD診断モードの処理内容の一例を示すフローチャートである。
図4に示すように、先ずステップS21では、エンジンコントローラ8は、アクセル開度センサ12、ブレーキ開度センサ13、及び車速センサ14からアクセル開度、ブレーキ状態、及び車速を取得する。
【0036】
次に、ステップS22では、エンジンコントローラ8は、前記ステップS21で取得した情報を基に、アクセル開度が0%(全閉)又はブレーキがオンか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、アクセル開度が0%(全閉)又はブレーキがオンであると判定すると、ステップS23に進む。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、該図4に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。
【0037】
ステップS23では、エンジンコントローラ8は、前記ステップS21で取得した車速が予め設定した車速(例えば40km/h)よりも大きいか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、車速が予め設定した車速(例えば40km/h)よりも大きいと判定すると、すなわち通常走行している場合、ステップS24に進む。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、すなわち低速走行している場合、該図4に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。
【0038】
ステップS24では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの合格履歴(診断モード1合格履歴)がないか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの合格履歴がないと判定すると、ステップS25に進む。また、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの合格履歴があると判定すると、該図4に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。
【0039】
ステップS25では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの合格判定処理を行う。そして、エンジンコントローラ8は、該図4に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。ここで、第1OBD診断モードの合格判定処理では、第1OBD診断モードによる診断の実施とその診断結果の保存を行う。
図5は、前記ステップS25にてエンジンコントローラ8が行う第1OBD診断モードの合格判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【0040】
図5に示すように、先ずステップS41では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ(HCU)9に第1OBD診断モード要求(診断モード1要求)を送信する。ここで、第1OBD診断モード要求は、エンジンコントローラ8が第1OBD診断モードによる診断を開始することをハイブリッドコントローラ9に知らせる情報、又は、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モードに応じた処理を開始させるための情報となる。
【0041】
次に、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料カット要求(前記ステップS41の第1OBD診断モード要求に対応する返信)を受信したかか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料カット要求を受信したと判定すると、ステップS44に進む。また、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料カット要求を受信していないと判定すると、ステップS43に進む。
【0042】
ステップS43では、エンジンコントローラ8は、受信タイムアウト時間が経過したか否かを判定する。具体的には、エンジンコントローラ8は、前記ステップS41でハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信した時点から前記ステップS42での燃料カット要求の未受信判定時までの時間が予め設定した時間を経過したか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0043】
エンジンコントローラ8は、このステップS43にて受信タイムアウト時間が経過したと判定すると、該図5に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、再び前記ステップS42で判定処理を行う。
ステップS44では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードによる診断を開始する。具体的には、エンジンコントローラ8は、エンジン2の燃料カット(燃料供給オフ)を開始し、タイマを始動させる。
【0044】
次に、ステップS45では、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間内にセンサ測定値が予め設定した設定値に推移したか否かを判定する。すなわち、エンジンコントローラ8は、前記ステップS44のタイマ始動時から予め設定した時間内に予め設定したセンサ応答特性が得られたか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0045】
エンジンコントローラ8は、このステップS45にてタイマ判定時間内にセンサ測定値が予め設定した設定値に推移したと判定すると、ステップS48に進む。また、エンジンコントローラ8は、センサ測定値が設定値に推移していないと判定すると、ステップS46に進む。
ステップS48では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果として「合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段に第1OBD診断モードの合格結果を記憶させる。そして、エンジンコントローラ8は、該図5に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。
【0046】
ステップS46では、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過しているか否かを判定する。具体的には、エンジンコントローラ8は、前記ステップS44のタイマ始動時から予め設定した時間が経過したか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
エンジンコントローラ8は、このステップS46にてタイマ判定時間が経過していると判定すると、ステップS47に進む。また、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過していないと判定すると、該図5に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。例えば、タイマ判定時間が経過していない場合とは、タイマ判定時間内に判定処理が中断したような場合である。
【0047】
ステップS47では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果として「不合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段に第1OBD診断モードの不合格結果を記憶させる。そして、エンジンコントローラ8は、該図5に示す処理を終了する(前記ステップS4に進む)。
次に、前記ステップS4にてエンジンコントローラ8が行う第2OBD診断モードの処理を説明する。
【0048】
図6は、その第2OBD診断モードの処理内容の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、先ずステップS61では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの合格履歴(診断モード2合格履歴)ないか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの合格履歴がないと判定すると、ステップS63に進む。また、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの合格履歴があると判定すると、ステップS62に進む。
【0049】
ステップS62では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの合格判定処理を行う。そして、エンジンコントローラ8は、該図6に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。ここで、第2OBD診断モードの合格判定処理では、第2OBD診断モードによる診断の実施とその診断結果の保存を行う。この第2OBD診断モードの合格判定処理については後で詳述する。
【0050】
ステップS63では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9にエンジン通常制御復帰要求を送信する。ここで、エンジン通常制御復帰要求とは、ハイブリッドコントローラ9に通常制御に復帰させるための要求である。また、通常制御とは、目標SOCやアクセル開度等の情報に基づいて発電モータ3の駆動を制御することである。
次に、ステップS64では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求(又は燃料供給復帰要求、前記ステップS63のエンジン通常制御要求に対応する返信)を受信したか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求を受信したと判定すると、ステップS65に進む。また、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求を受信していないと判定すると、ステップS66に進む。
【0051】
ステップS65では、エンジンコントローラ8は、燃料噴射(燃料供給)を再開する。そして、エンジンコントローラ8は、該図6に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。
ステップS66では、エンジンコントローラ8は、受信タイムアウト時間が経過したか否かを判定する。具体的には、エンジンコントローラ8は、前記ステップS63でハイブリッドコントローラ9にエンジン通常制御要求を送信した時点から前記ステップS64での燃料復帰要求の未受信判定時までの時間が予め設定した時間を経過したか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0052】
エンジンコントローラ8は、このステップS66にて受信タイムアウト時間が経過したと判定すると、該図6に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、再び前記ステップS64で判定処理を行う。
図7は、前記ステップS62にてエンジンコントローラ8が行う第2OBD診断モードの合格判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
【0053】
図7に示すように、先ずステップS81では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ(HCU)9に第2OBD診断モード要求(診断モード2要求)を送信する。ここで、第2OBD診断モード要求は、エンジンコントローラ8が第2OBD診断モードによる診断を開始することをハイブリッドコントローラ9に知らせる情報、又は、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モードに応じた処理を開始させるための情報となる。
【0054】
次に、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求(前記ステップS81の第2OBD診断モード要求に対応する返信)を受信したか否かを判定する。エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求を受信したと判定すると、ステップS84に進む。また、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9から燃料噴射復帰要求を受信していないと判定すると、ステップS83に進む。
【0055】
ステップS83では、エンジンコントローラ8は、受信タイムアウト時間が経過したか否かを判定する。具体的には、エンジンコントローラ8は、前記ステップS81でハイブリッドコントローラ9に第2OBD診断モード要求を送信した時点から前記ステップS82での燃料復帰要求の未受信判定時までの時間が予め設定した時間を経過したか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0056】
エンジンコントローラ8は、このステップS83にて受信タイムアウト時間が経過したと判定すると、該図7に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、再び前記ステップS82で判定処理を行う。
ステップS84では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードによる診断を開始する。具体的には、エンジンコントローラ8は、エンジン2の燃料噴射を復帰させ、タイマを始動する。
【0057】
次に、ステップS85では、エンジンコントローラ8は、センサ測定値が予め設定した設定値に推移したか否かを判定する。すなわち、エンジンコントローラ8は、前記ステップS84のタイマ始動時から予め設定した時間内に予め設定したセンサ応答特性が得られたか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した設定値は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0058】
エンジンコントローラ8は、このステップS85にてタイマ判定時間内にセンサ測定値が予め設定した設定値に推移したと判定すると、ステップS88に進む。また、エンジンコントローラ8は、センサ測定値が設定値に推移していないと判定すると、ステップS86に進む。
ステップS88では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの診断結果として「合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段に第2OBD診断モードの合格結果を記憶させる。そして、エンジンコントローラ8は、該図7に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。
【0059】
ステップS86では、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過したか否かを判定する。具体的には、エンジンコントローラ8は、前記ステップS84のタイマ始動時から予め設定した時間が経過したか否かを判定する。また、ここでいう予め設定した時間は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
エンジンコントローラ8は、このステップS86にてタイマ判定時間が経過したと判定すると、ステップS87に進む。また、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過していないと判定すると、該図7に示す処理を終了する(前記ステップS8に進む)。
【0060】
ステップS87では、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの診断結果として「不合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段に第2OBD診断モードの不合格結果を記憶させる。そして、エンジンコントローラ8は、該図7に示す処理を終了する(前記ステップS5に進む)。
次に、前記ステップS5にてエンジンコントローラ8が行うOBD診断の終了判定処理を説明する。
【0061】
図8は、そのOBD診断の終了判定処理の処理内容の一例を示すフローチャートである。
図8に示すように、先ずステップS101では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果が合格であり、且つ第2OBD診断モードの診断結果が合格であるか否かを判定する。すなわち、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段にそれら情報が履歴として記憶されているか否かを判定する。そして、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果が合格であり、且つ第2OBD診断モードの診断結果が合格であると判定すると、ステップS102に進む。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、ステップS103に進む。
【0062】
ステップS102では、エンジンコントローラ8は、OBD診断モード全体の診断結果として「合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段にOBD診断モードの合格結果を記憶させる。そして、エンジンコントローラ8は、該図8に示す処理を終了する(前記図4の処理を終了する)。
ステップS103では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果が不合格であるか、又は第2OBD診断モードの診断結果が不合格であるか否かを判定する。すなわち、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段にそれら情報が履歴として記憶されているか否かを判定する。そして、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードの診断結果が不合格であるか、又は第2OBD診断モードの診断結果が不合格であると判定すると、ステップS104に進む。また、エンジンコントローラ8は、そうでないと判定すると、該図8に示す処理を終了する(前記図4の処理を終了する)。
【0063】
ステップS104では、エンジンコントローラ8は、OBD診断モード全体の診断結果として「不合格」を保存する。ここで、エンジンコントローラ8は、RAM等の書き込み可能な記憶手段にOBD診断モードの不合格結果を記憶させる。例えば、エンジンコントローラ8は、不合格カウンタに1を加算する。そして、エンジンコントローラ8は、該図8に示す処理を終了する(前記図4の処理を終了する)。
【0064】
また、ステップS103の判定で第1OBD診断モードの診断結果及び第2OBD診断モードの診断結果がいずれも不合格でないと判定される場合(「No」と判定される場合)とは、第1OBD診断モードや第2OBD診断モードが未完了状態であり、例えば、タイムアウトやSOCが低下した場合等で未完了となっていることが挙げられる。
(ハイブリッドコントローラ9における処理)
次に、自己診断処理(センサ診断処理)におけるハイブリッドコントローラ9側の処理について説明する。
【0065】
図9は、その処理内容の一例を示すフローチャートである。
図9に示すように、先ずステップS121では、ハイブリッドコントローラ9は、SOCセンサ11の検出値を基に、検出したSOC残量が十分か否かを判定する。具体的には、ハイブリッドコントローラ9は、検出したSOC残量がSOC残量判定用に予め設定したしきい値以上か否かを判定する。また、ここでいう予め設定したしきい値は、例えば、実験的、理論的、又は経験的に決定される。
【0066】
ハイブリッドコントローラ9は、このステップS121にて検出したSOC残量が十分であると判定すると、ステップS122に進む。また、ハイブリッドコントローラ9は、検出したSOC残量が十分でないと判定すると、該図9に示す処理を終了する。
ステップS122では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ(ECU)8から第1OBD診断モード要求(診断モード1要求)を受信したか否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、第1OBD診断モード要求を受信したと判定すると、ステップS123に進む。また、ハイブリッドコントローラ9は、第1OBD診断モード要求を受信していないと判定すると、ステップS126に進む。
【0067】
ステップS123では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料カット要求を送信する。
次に、ステップS124では、ハイブリッドコントローラ9は、発電モータ回転数(エンジン回転数)が一定(予め設定した回転数)になるように発電モータ3の力行トルクをフィードバック制御する。
【0068】
次に、ステップS125では、ハイブリッドコントローラ9は、力行回転継続中フラグに1を設定する(力行回転継続中フラグ=1)。そして、ハイブリッドコントローラ9は、ステップS126に進む。
ステップS126では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8から第2OBD診断モード要求(診断モード2要求)又は通常制御復帰要求を受信したか否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、第2OBD診断モード要求又は通常制御復帰要求を受信したと判定すると、ステップS127に進む。また、ハイブリッドコントローラ9は、そうでないと判定すると、該図9に示す処理を終了する。
【0069】
ステップS127では、ハイブリッドコントローラ9は、力行回転継続中フラグが1に設定されているか否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、力行回転継続中フラグが1に設定されていると判定すると(力行回転継続中フラグ=1)、ステップS129に進む。また、ハイブリッドコントローラ9は、力行回転継続中トルクが1に設定されていないと判定すると(力行回転継続中フラグ≠1)、ステップS128に進む。
【0070】
ステップS128では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジン2が燃料噴射を行っていない状況下で力行トルクによって目標値まで発電モータ3を回転させる。そして、ハイブリッドコントローラ9は、ステップS130に進む。例えば、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料噴射停止要求を行い、エンジンコントローラ8の制御によってエンジン2が燃料噴射を行っていない状況を作り出す。
【0071】
ステップS129では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料噴射復帰要求を送信する。
次に、ステップS130では、ハイブリッドコントローラ9は、発電モータ3のトルクを力行から回生に遷移させる。ここで、発電モータ3のモータトルク変化とエンジン2の燃料噴射の開始とにタイムラグがあるような場合に発電モータ回転数(エンジン回転数)が大きく変化しないように、又はエンジンストールしないように、ハイブリッドコントローラ9は、フィードバック制御によって発電モータ3を力行から回生に遷移させる。
【0072】
次に、ステップS131では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジン通常制御復帰完了処理を行う。
次に、ステップS132では、ハイブリッドコントローラ9は、力行回転継続中フラグを0に設定する(力行回転継続中フラグ=0)。そして、ハイブリッドコントローラ9は、該図9に示す処理を終了する。
【0073】
また、前記図9に示す処理では、ハイブリッドコントローラ9は、第1OBD診断モード要求に係る処理(ステップS122以降の処理)の後、必ず第2OBD診断モード要求に係る処理(ステップS126以降の処理)を経由するようになっている。すなわち、前記図9に示す処理では、第1OBD診断モード要求に係る処理と第2OBD診断モード要求に係る処理とが独立した関係になっていない。これに対して、第1OBD診断モード要求に係る処理と第2OBD診断モード要求に係る処理とを独立した関係にすることもできる。
【0074】
図10は、ハイブリッドコントローラ9におけるそのような処理内容の一例を示すフローチャートである。この例は、第2OBD診断モード要求に係る処理が独立している処理例である。
図10に示すように、先ずステップS151では、前記図9に示すステップS121の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、SOCセンサ11の検出値を基に、検出したSOC残量が十分か否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、検出したSOC残量が十分であると判定すると、ステップS152に進む。また、ハイブリッドコントローラ9は、検出したSOC残量が十分でないと判定すると、該図10に示す処理を終了する。
【0075】
ステップS152では、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ(ECU)8から第1OBD診断モード要求(診断モード1要求)を受信したか否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、第1OBD診断モード要求を受信したと判定すると、ステップS153に進む。しかし、図9の処理と異なり、図10に示す処理では、ハイブリッドコントローラ9は、第1OBD診断モード要求を受信していないと判定すると、第2OBD診断モード要求(診断モード2要求)に係る処理(後述のステップS155以降の処理)を行うことなく、該図10に示す処理を終了する。
【0076】
ステップS153では、前記図9の示すステップS123の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料カット要求を送信する。
次に、ステップS154では、前記図9の示すステップS128の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、エンジン2が燃料噴射を行っていない状況下で発電モータ3の力行トルクをフィードバック制御する。
【0077】
次に、ステップS155では、前記図9に示すステップS126の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8から第2OBD診断モード要求(診断モード2要求)又は通常制御復帰要求を受信したか否かを判定する。ハイブリッドコントローラ9は、第2OBD診断モード要求又は通常制御復帰要求を受信したと判定したときに、ステップS156に進む。
【0078】
次に、ステップS156では、前記図9の示すステップS129の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料噴射復帰要求を送信する。
次に、ステップS157では、前記図9の示すステップS130の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、発電モータ3のトルクを力行から回生にフィードバック制御によって遷移させる。
【0079】
次に、ステップS158では、前記図9に示すステップS131の処理と同様に、ハイブリッドコントローラ9は、エンジン通常制御復帰完了処理を行う。そして、ハイブリッドコントローラ9は、該図10に示す処理を終了する。
なお、図10には、第2OBD診断モード要求に係る処理を独立して行う場合を示した。これに限らず、第1OBD診断モード要求に係る処理を独立して行うこともできる。具体例は、省略するが、例えば、独立した第1OBD診断モード要求に係る処理として、図9に示すステップS121〜ステップS124の処理だけを行うことが挙げられる。
(動作等)
次に、ハイブリッドシステム1のセンサ診断処理時における動作、作用等を説明する。
【0080】
エンジンコントローラ8は、電源オン以降(毎回走行毎)にOBD診断合格履歴があれば、OBD診断を終了し(ステップS1)、電源オン以降(毎回走行毎)にOBD診断不合格履歴が連続して3回以上、又は連続ではないが10回以上ある場合、OBD異常診断処理(例えば警告灯表示)を行う(ステップS2、ステップS6)。一方、エンジンコントローラ8は、それら以外の場合、第1OBD診断モードの実行処理、第2OBD診断モードの実行処理、及びOBD診断の終了判定処理を順次実施する(ステップS3〜ステップS5)。
【0081】
先ず、第1OBD診断モードの実行処理では、エンジンコントローラ8は、アクセル開度が0%(全閉)又はブレーキがオンであり、且つ車速が予め設定した車速(例えば40km/h)よりも大きく、且つ第1OBD診断モードの合格履歴がない場合、第1OBD診断モードの合格判定処理を行う(図4)。よって、エンジンコントローラ8は、既に第1OBD診断モードの合格履歴がある場合、第1OBD診断モードの合格判定処理を行うことなく、第2OBD診断モードの合格判定処理に進む。
【0082】
第1OBD診断モードの合格判定処理では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信し、ハイブリッドコントローラ9から第1OBD診断モード要求に対応して燃料カット要求が送信されてきたときに、エンジン2の燃料をカットするとともにタイマを始動させて、第1OBD診断モードによる診断を開始する(ステップS41〜ステップS44)。
【0083】
その一方で、ハイブリッドコントローラ9は、SOC残量が十分であることを条件に、エンジンコントローラ8から第1OBD診断モード要求を受信すると、エンジンコントローラ8に燃料カット要求を送信するとともに、発電モータ回転数が一定になるように発電モータ3の力行トルクをフィードバック制御する(ステップS121〜ステップS124)。
【0084】
すなわち、ハイブリッドシステム1では、エンジンコントローラ8がエンジン2の燃料をカットするとともにハイブリッドコントローラ9が発電モータ3を一定回転数に力行制御することで、発電モータ3の力行によりエンジン2に負荷を与えた状態にし、エンジンコントローラ8側で第1OBD診断モードによる診断を開始する。つまり、ハイブリッドシステム1は、通常発電状態からモータリング状態に遷移させ、エンジンコントローラ8によって第1OBD診断モードによる診断を開始する。
【0085】
そして、第1OBD診断モードとして、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間内にセンサ測定値が予め設定した設定値に推移した場合、第1OBD診断モードの診断結果として「合格」を保存する(ステップS45、ステップS48)。すなわち、エンジンコントローラ8は、センサ出力値が一定範囲内に落ち着くまでの推移時間を基に、所望のセンサ応答特性となっていることを推定できる場合、センサ診断結果として「合格」を保存する。
【0086】
また、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過しているがセンサ測定値が予め設定した設定値に推移していない場合、第1OBD診断モードの診断結果として「不合格」を保存する(ステップS45〜ステップS47)。
また、エンジンコントローラ8は、判定処理の中断等によってタイマ判定時間が経過していない場合、第1OBD診断モードの診断結果を保存することなく処理を終了する(ステップS45、ステップS46)。例えば、エンジンコントローラ8は、たとえハイブリッドコントローラ9側でSOC残量が十分であるとして第1OBD診断モード処理を開始した後でもその第1OBD診断モード処理中にSOCが低下しSOC残量が十分でなくなった場合、第1OBD診断モードの診断結果を保存することなく処理を終了する。
【0087】
次に、エンジンコントローラ8は、以上の第1OBD診断モードの実行処理の後、第2OBD診断モードの実行処理として、第2OBD診断モードの合格履歴がない場合に第2OBD診断モードの合格判定処理を行う(図3、図6)。よって、エンジンコントローラ8は、既に第2OBD診断モードの合格履歴がある場合、第2OBD診断モードの合格判定処理を行わず、その一方でハイブリッドコントローラ9にエンジン通常制御復帰要求等を行い、OBD診断の終了判定処理に進む(図6)。
【0088】
第2OBD診断モードの合格判定処理では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9に第2OBD診断モード要求を送信し、ハイブリッドコントローラ9から第2OBD診断モード要求に対応して燃料復帰要求が送信されてきたときに、燃料噴射を復帰させるとともにタイマを始動させて、第2OBD診断モードによる診断を開始する(ステップS81〜ステップS84)。
【0089】
その一方で、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8から第2OBD診断モード要求を受信すると、エンジンコントローラ8に燃料噴射復帰要求を送信するとともに、発電モータ3を力行動作から回生動作にフィードバック制御によって遷移させる(ステップS126〜ステップS130)。
また、前述のように、既に第1OBD診断モードの合格履歴がある場合には、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの合格判定処理を実施することなく(第1OBD診断モード要求を送信しないで)、次の第2OBD診断モードの合格判定処理を実施している(図4参照)。これに対応して、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8から第1OBD診断モード要求を受信できていない状況下で第2OBD診断モード要求を受信した場合、すなわち、既に第1OBD診断モードの合格履歴がある場合には、エンジン2が燃料噴射を行っていない状況下で力行トルクによって目標値まで発電モータ3を回転させる(ステップS128)。これによって、ハイブリッドシステム1は、第1OBD診断モード時のエンジン2及び発電モータ3の動作状態を擬似的に作り出す。
【0090】
そして、ハイブリッドコントローラ9は、エンジンコントローラ8に燃料噴射復帰要求を送信するとともに、発電モータ3を力行動作から回生動作にフィードバック制御によって遷移させる(ステップS129、ステップS130)。
このように、ハイブリッドシステム1では、エンジンコントローラ8がエンジン2の燃料噴射を復帰させるとともにハイブリッドコントローラ9が発電モータ3の回生制御を行い、エンジンコントローラ8側で第2OBD診断モードによる診断を開始する。つまり、ハイブリッドシステム1は、モータリング状態から再び通常発電状態に戻すことで、エンジンコントローラ8によって第2OBD診断モードによる診断を開始する。
【0091】
そして、第2OBD診断モードとして、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間内にセンサ測定値が予め設定した設定値に推移した場合、第2OBD診断モードの診断結果として「合格」を保存する(ステップS85、ステップS88)。すなわち、エンジンコントローラ8は、センサ出力値が一定範囲内に落ち着くまでの推移時間を基に、所望のセンサ応答特性となっていることを推定できる場合、センサ診断結果として「合格」を保存する。
【0092】
また、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過しているがセンサ測定値が予め設定した設定値に推移していない場合、第2OBD診断モードの診断結果として「不合格」を保存する(ステップS85〜ステップS87)。
また、エンジンコントローラ8は、判定処理の中断等によってタイマ判定時間が経過していない場合、第2OBD診断モードの診断結果を保存することなく処理を終了する(ステップS85、ステップS86)。
【0093】
そして、エンジンコントローラ8は、以上の第1及び第2OBD診断モードの実行処理の後、OBD診断の終了判定処理を行う(図3)。
OBD診断の終了判定処理では、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果が合格であり、且つ第2OBD診断モードの診断結果が合格である場合、OBD診断モード全体の診断結果として「合格」を保存する(ステップS101、ステップS102)。
【0094】
また、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードの診断結果が不合格であるか、又は第2OBD診断モードの診断結果が不合格である場合、OBD診断モード全体の診断結果として「不合格」を保存する(ステップS103、ステップS104)。
また、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードや第2OBD診断モードが未完了状態の場合、OBD診断モード全体の診断結果を保存することなく処理を終了する。
【0095】
以上のようなセンサ診断処理によって、ハイブリッドシステム1は、センサの応答性等の動作を担保するために、エンジンコントローラ8が主となってエンジンコントローラ8とハイブリッドコントローラ9とが協調動作し、センサ応答性確認によるセンサ診断を行う。
また、そのセンサ診断では、ハイブリッドシステム1は、第1及び第2OBD診断モードの診断結果のいずれか一方が合格となった場合には、その合格履歴を保持しつつ、次回の診断以降で第1及び第2OBD診断モードによる診断のいずれか他方のみを実施する。
【0096】
そして、ハイブリッドシステム1は、そのようなセンサ診断によって、一度合格(第1及び第2OBD診断モードでともに合格)判定を得た後は電源オフまでその合格結果を保持する。また、3回の診断を完了したが3回連続して不合格(第1及び第2OBD診断モードでともに不合格)判定となった場合、又は、1度も合格判定を得ることなく10回不合格(第1及び第2OBD診断モードでともに不合格)判定となった場合、ハイブリッドシステム1は、センサが異常(排気ガス診断異常)であるとして警告表示を行う。
【0097】
次に、図11に示す例を参照しつつ動作、作用等を説明する。
図11は、センサ診断処理時の各種情報のタイミングチャートを示す図である。ここで、図11(a)には、エンジンコントローラ8の第1及び第2OBD診断モード要求の送信タイミングを示す。また、図11(b)には、ハイブリッドコントローラ9が判定するSOC条件を示す。また、図11(c)には、ハイブリッドコントローラ9の診断モードの状態を示す。また、図11(d)には、エンジンコントローラ8による燃料カット状態を示す。また、図11(e)には、ハイブリッドコントローラ9による発電モータ3の制御時の発電トルクを示す。また、図11(f)には、エンジン回転数を示す。また、図11(g)には、このセンサ診断処理の診断対象となるリニア空燃比センサ6や残存酸素濃度センサ7のセンサ出力(エンジンコントローラ8によるセンサ検出状態)を示す。
【0098】
図11(a)〜(e)に示すように、エンジンコントローラ8がハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信し、且つハイブリッドコントローラ9においてSOC条件(SOC残量が十分)が成立したとき、エンジンコントローラ8がエンジン2の燃料をカットするとともに、ハイブリッドコントローラ9が発電モータ3を力行させる。そして、エンジンコントローラ8は、第1OBD診断モードによって、図11(g)に示すように応答するセンサ出力を検出して該センサの診断(モード1応答診断)を行う。
【0099】
その後、図11(a)〜(e)に示すように、エンジンコントローラ8がハイブリッドコントローラ9に第2診断モード要求を送信し、エンジンコントローラ8がエンジン2の燃料カットを中止する(燃料噴射を復帰させる)とともに、ハイブリッドコントローラ9が発電モータ3を回生させる。そして、エンジンコントローラ8は、第2OBD診断モードによって、図11(g)に示すように応答するセンサ出力を検出して該センサの診断(モード2応答診断)を行う。
【0100】
(本実施形態の効果)
以上のように、本実施形態のハイブリッドシステム1では、エンジンコントローラ8に第1及び第2OBD診断モード要求を送信しその返信を受信する機能と、ハイブリッドコントローラ9に第1及び第2OBD診断モード要求を受信しその返信を送信する機能とをそれぞれ付加することによって、エンジンコントローラ8及びハイブリッドコントローラ9をそれぞれ独立してセンサの診断のための制御動作をさせて、エンジンコントローラ8側でセンサの診断を行うことができる。
【0101】
これにより、本実施形態のハイブリッドシステム1では、車両走行中におけるセンサ診断の際にエンジン2と発電モータ3とを協調動作させて、センサ診断ためのエンジン2及び発電モータ3の動作状態を早期に作り出すことができる。
また、本実施形態のハイブリッドシステム1では、エンジンコントローラ8とハイブリッドコントローラ9との間で信号をやりとりする構成を付加し、エンジンコントローラ8側でセンサ診断を行うため、既存のエンジンコントローラ8とハイブリッドコントローラ9とを流用し、さらにはエンジンコントローラ8のセンサ診断ロジックを流用して、センサ診断を行うことができる。よって、本実施形態のハイブリッドシステム1では、エンジンコントローラ8及びハイブリッドコントローラ9の設計変更を抑えて、センサ診断を行うことができる。
【0102】
例えば、エンジンコントローラに備わっている診断機能の多くの部分を活用するようにセンサ診断システムを構築しなければ、システム全体にわたって新しく専用設計の装置を用意する必要があり、膨大な工数がかかる上に、量産効果が低くなる不都合がある。
これに対して、本実施形態のハイブリッドシステム1では、既存のエンジンコントローラ8とハイブリッドコントローラ9とを流用できるため、かかる問題を解決できる。
【0103】
また、例えば、特許文献1、2に開示の技術では、いずれも車両走行中の診断に適しているとは言えない。
これに対して、本実施形態のハイブリッドシステム1では、前述のように、車両走行中でしかもセンサ診断のための動作状態を早期に作り出すことができる。
さらに、特許文献1に開示の技術では、バッテリを充電してから診断を実施している。そのため、特許文献1に開示の技術は、診断時のエンジン回転数や発電モータ回転数の急減な増加が乗員に違和感を与えてしまう恐れがある。
【0104】
これに対して、本実施形態のハイブリッドシステム1では、診断のためにエンジン2や発電モータ3を必要以上に回転させるようなこともないため、診断のためのエンジン2や発電モータ3の回転数の増加が乗員に違和感を与えてしまうといったことも防止できる。
また、本実施形態では、エンジン2は、例えば、内燃機関に構成する。また、エンジンコントローラ8は、例えば、内燃機関制御手段を構成する。また、ハイブリッドコントローラ9は、例えば、モータ制御手段を構成する。また、リニア空燃比センサ6や残存酸素濃度センサ7は、例えば、吸気ガス又は排気ガスを検出するセンサを構成する。また、排気状態推定部8aは、例えば、排気状態推定手段を構成する。
【0105】
(本実施形態の変形例)
本実施形態では、エンジンコントローラ8は、エンジン2の完全暖機完了又は排気浄化システムの暖機(活性化)完了となったことを条件にセンサ診断処理を開始することもできる。これは、エンジン暖気中は、排ガス状態が良好ではなく、センサ診断を適切に行える環境とは言えないからである。
【0106】
また、本実施形態は、エンジン2によって発電モータ3を駆動し、車両の走行状態に相互影響を与えないようにそのエンジン2を始動及び停止できるハイブリッド車両であれば、前述の構成のシリーズ式ハイブリッドに適用されることに限定されない。
また、本実施形態では、エンジンコントローラ8が、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信し、ハイブリッドコントローラ9からその返信である燃料カット要求を受信した場合に、エンジン2の燃料カットを行い第1OBD診断モードによる診断を開始している。これに対して、本実施形態では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信したときにエンジン2の燃料カットを行い第1OBD診断モードによる診断を開始させることもできる。また、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9に第1OBD診断モード要求を送信した時から予め設定した時間(例えば20ms)経過した後、エンジン2の燃料カットを行い第1OBD診断モードによる診断を開始することもできる。このように処理を変更した場合、ハイブリッドコントローラ9からは、そのような処理変更に応じた返信(例えば診断モード開始状態要求)がなされる。
【0107】
また、前述のようにエンジンコントローラ8がハイブリッドコントローラ9側の状態に関係なく第1OBD診断モードによる診断を開始するような場合には、SOC残量が低下している場合にも、第1OBD診断モードによる診断を開始する場合がある。しかし、このような場合には、エンジンコントローラ8は、タイマ判定時間が経過する前に判定処理が中断し、第1OBD診断モードの診断結果を保存することなく処理を終了するようになる(ステップS45、ステップS46)。
【0108】
また、本実施形態では、エンジンコントローラ8が、ハイブリッドコントローラ9に第2OBD診断モード要求を送信し、ハイブリッドコントローラ9からその返信である燃料噴射復帰要求を受信した場合に、エンジン2の燃料噴射を復帰させ第2OBD診断モードによる診断を開始している。これに対して、本実施形態では、エンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ9に第2OBD診断モード要求を送信したときにエンジン2の燃料噴射を復帰させ第2OBD診断モードによる診断を開始させることもできる。このように処理を変更した場合、ハイブリッドコントローラ9からは、そのような処理変更に応じた返信(例えば診断モード復帰状態要求)がなされる。
【0109】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項1により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0110】
1 ハイブリッドシステム、2 エンジン、3 発電モータ、4 バッテリ、5 駆動モータ、6 リニア空燃比センサ、7 残存酸素濃度センサ、8 エンジンコントローラ、9 ハイブリッドコントローラ、11 SOCセンサ、12 アクセル開度センサ、13 ブレーキ開度センサ、14 車速センサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関と、前記内燃機関の動作を制御する内燃機関制御手段と、前記内燃機関によって駆動される発電モータと、前記発電モータの発電電力によって充電されるバッテリと、前記発電モータの発電電力又は前記バッテリの放電電力によって車輪を駆動する駆動モータと、前記内燃機関制御手段と通信可能とされ前記発電モータ及び前記駆動モータを制御するモータ制御手段とを備えるハイブリッド車両の前記内燃機関の運転状態を検出するハイブリッド車両の内燃機関運転状態検出装置において、
前記内燃機関の吸気側又は排気側に配置され吸気ガス又は排気ガスを検出するセンサと、
前記センサの検出値を基に排気状態を推定する排気状態推定手段とを備え、
前記内燃機関制御手段は、前記センサの診断前に前記モータ制御手段にセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記内燃機関を前記センサの診断のための動作状態にするとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、
前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記センサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記発電モータを前記センサの診断のための動作状態にすることを特徴とする内燃機関運転状態検出装置。
【請求項2】
アクセル操作状態を検出するアクセル操作検出手段をさらに備え、
前記内燃機関制御手段は、前記アクセル操作検出手段が前記アクセル操作されていないことを検出した場合に前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記センサ診断開始信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関運転状態検出装置。
【請求項3】
ブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作検出手段をさらに備え、
前記内燃機関制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段が前記ブレーキ操作されていることを検出した場合に前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記センサ診断開始信号を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関運転状態検出装置。
【請求項4】
前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段をさらに備え、
前記モータ制御手段は、前記発電モータを前記センサの診断のための動作状態として前記バッテリの放電電力によって発電モータを力行させており、
前記モータ制御手段は、前記蓄電量検出手段が検出した前記バッテリの蓄電量が予め設定した値以下の場合に前記返信信号を前記内燃機関制御手段に送信しないことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の内燃機関運転状態検出装置。
【請求項5】
前記内燃機関制御手段は、前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記内燃機関の燃料噴射を停止させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記センサの診断のための前記内燃機関の動作状態として前記内燃機関の燃料噴射を停止させるとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、
前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記センサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記センサの診断のための前記発電モータの動作状態として前記バッテリの放電電力によって前記発電モータを力行させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の内燃機関運転状態検出装置。
【請求項6】
前記内燃機関制御手段は、前記内燃機関の燃料噴射を停止させて前記センサの診断を行った後に前記モータ制御手段に前記内燃機関の燃料噴射を再開させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記センサの診断のための前記内燃機関の動作状態として前記内燃機関の燃料噴射を再開させるとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、
前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記内燃機関の燃料噴射を再開させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記センサの診断のための前記発電モータを動作状態として前記力行する発電モータを回生させることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関運転状態検出装置。
【請求項1】
内燃機関と、前記内燃機関の動作を制御する内燃機関制御手段と、前記内燃機関によって駆動される発電モータと、前記発電モータの発電電力によって充電されるバッテリと、前記発電モータの発電電力又は前記バッテリの放電電力によって車輪を駆動する駆動モータと、前記内燃機関制御手段と通信可能とされ前記発電モータ及び前記駆動モータを制御するモータ制御手段とを備えるハイブリッド車両の前記内燃機関の運転状態を検出するハイブリッド車両の内燃機関運転状態検出装置において、
前記内燃機関の吸気側又は排気側に配置され吸気ガス又は排気ガスを検出するセンサと、
前記センサの検出値を基に排気状態を推定する排気状態推定手段とを備え、
前記内燃機関制御手段は、前記センサの診断前に前記モータ制御手段にセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記内燃機関を前記センサの診断のための動作状態にするとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、
前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記センサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記発電モータを前記センサの診断のための動作状態にすることを特徴とする内燃機関運転状態検出装置。
【請求項2】
アクセル操作状態を検出するアクセル操作検出手段をさらに備え、
前記内燃機関制御手段は、前記アクセル操作検出手段が前記アクセル操作されていないことを検出した場合に前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記センサ診断開始信号を送信することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関運転状態検出装置。
【請求項3】
ブレーキ操作状態を検出するブレーキ操作検出手段をさらに備え、
前記内燃機関制御手段は、前記ブレーキ操作検出手段が前記ブレーキ操作されていることを検出した場合に前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記センサ診断開始信号を送信することを特徴とする請求項1又は2に記載の内燃機関運転状態検出装置。
【請求項4】
前記バッテリの蓄電量を検出する蓄電量検出手段をさらに備え、
前記モータ制御手段は、前記発電モータを前記センサの診断のための動作状態として前記バッテリの放電電力によって発電モータを力行させており、
前記モータ制御手段は、前記蓄電量検出手段が検出した前記バッテリの蓄電量が予め設定した値以下の場合に前記返信信号を前記内燃機関制御手段に送信しないことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の内燃機関運転状態検出装置。
【請求項5】
前記内燃機関制御手段は、前記センサの診断前に前記モータ制御手段に前記内燃機関の燃料噴射を停止させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記センサの診断のための前記内燃機関の動作状態として前記内燃機関の燃料噴射を停止させるとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、
前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記センサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記センサの診断のための前記発電モータの動作状態として前記バッテリの放電電力によって前記発電モータを力行させることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載の内燃機関運転状態検出装置。
【請求項6】
前記内燃機関制御手段は、前記内燃機関の燃料噴射を停止させて前記センサの診断を行った後に前記モータ制御手段に前記内燃機関の燃料噴射を再開させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を送信してその送信に対応する返信信号を受信した場合に前記センサの診断のための前記内燃機関の動作状態として前記内燃機関の燃料噴射を再開させるとともに前記センサの出力を基に該センサの診断を行い、
前記モータ制御手段は、前記内燃機関制御手段から前記内燃機関の燃料噴射を再開させて行うセンサ診断の開始を示すセンサ診断開始信号を受信した場合にその受信に対する返信信号を前記内燃機関制御手段に送信するとともに前記センサの診断のための前記発電モータを動作状態として前記力行する発電モータを回生させることを特徴とする請求項5に記載の内燃機関運転状態検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−82286(P2013−82286A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222739(P2011−222739)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】
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