説明

内燃機関

【課題】内燃機関の潤滑装置に備えられた複数の物質を含むオイルフィルターが仮詰まり状態になった場合であっても、オイルの流通をより適切に確保する。
【解決手段】本発明に係る内燃機関10は、オイル通路34に設けられて所定の成分を吸着する機能を有する複数の物質を収容するオイルフィルター32と、前記オイル通路34に連通して前記オイルフィルター32をバイパスするように延びるバイパス通路40と、該バイパス通路40のオイルの流量を調節する流量調節装置42とを備える。流量調節装置42は、オイルフィルター32におけるオイルの粘度が所定粘度以上であるのでオイルフィルター32が仮詰まり状態にあるときオイルフィルター32の上流側のオイルがバイパス通路40へ流れることを許容するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等に用いることができる内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、内燃機関の潤滑システム内で使用する化学フィルターを開示する。特許文献1の記載によれば、この化学フィルターは、内燃機関潤滑システム内のオイルフィルターのハウジング内に使用されるか、またはそのオイルフィルターのバイパス部分に使用され、イオン交換材料を有することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2008−540123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オイルフィルターにはイオン交換材料を含ませることができる。しかし、一般にオイルの温度が低いほどオイルの粘度は上昇するという特徴をオイルは有するので、オイルの温度が低いときほどイオン交換材料といった物質を複数含むオイルフィルターをオイルは通過し難いという傾向がある。そして、オイルの粘度が高いのでオイルフィルターが仮詰まり状態になった場合には、オイルの流れが滞らないように内燃機関の潤滑装置においてオイルの流通を確保することが望まれる。
【0005】
そこで、本発明はかかる点に鑑みて創案されたものであり、その目的は、複数の物質を含むオイルフィルターが仮詰まり状態になった場合であっても、オイルの流通をより適切に確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る内燃機関は、オイル通路に設けられ、所定の成分を吸着する機能を有する複数の物質を収容するオイルフィルターと、前記オイル通路に連通して前記オイルフィルターをバイパスするように延びるバイパス通路と、該バイパス通路のオイルの流量を調節する流量調節装置であって、前記オイルフィルターにおけるオイルの粘度が所定粘度以上であるので前記オイルフィルターが仮詰まり状態にあるとき前記オイルフィルターの上流側のオイルが前記バイパス通路へ流れることを許容するように構成された流量調節装置とを備えたことを特徴とする。
【0007】
前記流量調節装置は、前記オイルフィルターの上流側のオイルの圧力が所定圧を超えたときに前記バイパス通路を開通させる機構を備えるとよい。
【0008】
前記バイパス通路は、前記オイルフィルターと熱交換可能に構成されているとよい。
【0009】
前記バイパス通路は、前記オイルフィルター内を通るように構成されているとよい。
【0010】
前記バイパス通路は、前記オイルフィルターに接するように構成されているとよい。
【0011】
前記オイル通路におけるオイルの粘度に応じて前記オイルフィルターに向けたオイルの流量を調節する第2流量調節装置がさらに備えられているとよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態に係る内燃機関の概念図である。
【図2】図1の内燃機関のオイルフィルターおよびその周囲の拡大模式図である。
【図3】図1の内燃機関の制御弁の制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1に本発明の一実施形態に係る内燃機関(以下、エンジン)10が概念的に示されている。ここでは、内燃機関10は車両に搭載されている。ただし、本実施形態でのエンジン10は、直列4気筒形式のエンジンであるが、本発明が適用されるエンジンは、その気筒数や気筒配列形式ばかりか、火花点火式機関であるか圧縮着火式機関であるかさえも問わない。
【0015】
エンジン10はクランクケースを一体的に備えたシリンダブロック12と、シリンダヘッド14と、シリンダヘッド14を上方から覆うヘッドカバー16と、オイルパン18とを備える。吸気通路20のスロットルバルブ22を介して取り込まれた空気と燃料噴射弁から噴射された燃料との混合気は燃焼室で燃焼され、排気ガスは排気通路24を介して排出される。
【0016】
シリンダブロック12とシリンダヘッド14には、ヘッドカバー16内またはシリンダヘッド14内とクランクケース内つまりオイルパン18内とを連通するようにオイル戻し通路(オイル落とし通路)26が形成されている(設けられている)。オイル戻し通路26は、例えば動弁系の潤滑を終えたオイルをシリンダヘッド14からオイルパン18内へ向けて戻す(落とす)ための通路であると同時に、クランクケース内のブローバイガスをヘッドカバー16内に向けて上昇移動させるための通路である。なお、オイル戻し通路26の数は幾つであってもよい。
【0017】
ここで、ブローバイガスとは、ピストンのピストンリングと、シリンダブロック12のシリンダボアとの隙間からクランクケース内へ漏れ出るガスのことである。このブローバイガスは多量の炭化水素や水分を含む。このため、ブローバイガスがあまりに多いとそれはエンジンオイルの早期劣化やエンジン内部の錆の原因になる。また、ブローバイガスには炭化水素が含まれているため、それをこのまま大気に解放することは環境上好ましくない。そのため、エンジン10は、図示しないブローバイガス環流装置を備えている。ブローバイガスは、ヘッドカバー16内に導入された後、吸気負圧を利用して後述の経路を通じて強制的に吸気系統へ戻され、燃焼室に供給される。
【0018】
ブローバイガス環流装置は、図示しないが、スロットルバルブ22の下流側の吸気通路と、ヘッドカバー16内とをつなぐPCV通路を備えている。ここでPCVとはPositive Crankcase Ventilationの略称である。また、スロットルバルブ22の上流側の吸気通路と、ヘッドカバー16内とは大気通路によって連通されている。PCV通路にはこれを開閉するPCVバルブが設けられる。PCVバルブは吸気負圧の大きさに応じて開閉し、流量を変えるものであり、ここではヘッドカバー16に固設されている。
【0019】
ところで、そのようなブローバイガス中にはNOx、SOxおよび水分が含まれている。そして、例えば、ヘッドカバー16がエンジンからの熱を伝達されづらくかつその外面が外気に晒されて冷却風等によって冷却されるので、ヘッドカバー16の内面には結露等による凝縮水が生じやすい。よって、特にヘッドカバー16内では、それらの反応により、酸性物質、例えば硝酸、硫酸ができやすい。これら酸性物質は、潤滑油つまりエンジンオイルに混ざり得、エンジン内部におけるスラッジの発生、付着、堆積を促し得る。
【0020】
そこで、エンジンオイルからそのような酸性物質つまり酸性成分を除去するべく、エンジン10の潤滑装置30はオイルフィルター32を有する。潤滑装置30は、図1においてはその一部のみが誇張して模式的に表されている。潤滑装置30は、上記オイル戻し通路26やオイルパン18内を含むオイル通路34をエンジン10において有し、オイル通路34の途中にオイルフィルター32を備える。
【0021】
ただし、図1では、オイルフィルター32を含む実施形態における潤滑装置30の一部を誇張して表すべく、オイルフィルター32を含む潤滑装置30の一部がエンジン本体10´の外側に描かれている。しかし、オイルフィルター32等の設置位置は図1に表された位置に限定されるものではなく、種々の箇所に変更可能であり、例えばエンジン本体10´の各部の外側に接する部分にまたは内側に定められることが可能である。
【0022】
潤滑装置30はストレーナ36およびオイルポンプ38を備え、オイルパン18内のオイルはストレーナ36を通じてオイルポンプ38によって汲み上げられる(吸引される)。こうして汲み上げたオイルは図示しない(オイルフィルター32とは別の)オイルフィルターを介して、エンジン10に形成された主オイル通路34a(各供給部位に対応した複数の油路を含む。)を通じて、エンジン10内の各部、例えばカムシャフトジャーナル、クランクジャーナル、コンロッド、ピストンに供給される。そして、こうして各部に供給された潤滑油つまりオイルは自らの自重により最終的にはオイルパン18に戻る。なお、オイルがこのようにエンジン10内で循環するように流れる空間をここでは「オイル通路」と称している。
【0023】
オイル通路34は、ここでは上記主オイル通路34aと該主オイル通路34aにつながる副オイル通路34bとを備えている。上記オイルフィルター32は副オイル通路34bに位置づけられている。しかし、オイルフィルター32は主オイル通路34aに設けられてもよく、例えばオイル戻し通路26に設けられてもよい。なお、副オイル通路34bに流入したオイルは最終的にはその自重によりオイルパン18に流れ得る。
【0024】
このような潤滑装置30における上記オイルフィルター32は、フィルター部32a、32b、外殻部材32c、および、これらフィルター部32a、32bに挟まれるように外殻部材32cとフィルター部32a、32bとによって区画形成された収容部(収容室)32dを有する(図2参照)。フィルター部32a、32bは、それぞれ多孔質部材であり、ここでは具体的に流路方向(図2の矢印a1、a2の方向)に実質的に延びるオイルが流通可能な複数の細孔を有する。フィルター部32a、32bは、オイル中の固体粒等の固形物を捕捉するように備えられている。また、フィルター部32a、32bは、収容部32dの形状、大きさを維持し、収容部32d内に設けられた複数の反応体(またはろ過体)つまり物質を保護および保持するように設けられている。
【0025】
収容部32dに収容された複数の反応体は、主に、イオン交換体(イオン交換材料)である(イオン交換体の働きをする)ハイドロタルサイトからなる。ハイドロタルサイトは所定のイオン(イオン成分)を吸着する機能を有する。換言すると、所定のイオンをエンジンオイルから除去するべく、そのような所定のイオンを吸着する機能を収容部32dの反応体は有する。具体的には、ブローバイガス中のNOxと水とにより生じ得る硝酸イオン(NO)、ブローバイガス中のSOxと水とにより生じ得る硫酸イオン(SO2−)をオイル中から除去するべくハイドロタルサイトは設けられている。なお、ハイドロタルサイトとして、種々のハイドロタルサイトが用いられ得、例えば和光純薬工業株式会社製の「MgAl(OH)(CO16」が用いられることができる。
【0026】
したがって、潤滑装置30のオイル通路34のうちの副オイル通路34bに設けられたオイルフィルター32をオイルが通過するとき、オイルフィルター32の収容部32dの複数の反応体の作用によってオイル中の上記したような成分をオイルから除去することが可能になる。
【0027】
ところで、このようなハイドロタルサイトは、ここでは非常に細かな状態で、例えば微細粒の状態で、オイルフィルター32の収容部32dに収容されている。換言すると、オイルフィルター32の収容部32dには多数の(複数の)微細なハイドロタルサイトが収容されている。
【0028】
他方、潤滑装置30のオイル通路34を流通するエンジンオイルは、一般に、その温度が低下するほどその粘度が高まるという特性を有する。一般にオイルの粘度が低いときには、オイルはオイルフィルター32の複数の反応体の間を流れ得る。しかし、オイルの粘度が所定粘度以上であるときには、オイルはオイルフィルター32の複数の反応体の間を流れ難く、例えば一時的にそれらの間に留まり得る。このような場合、複数の反応体はそのオイルと混ざって泥状になっていて、オイルフィルター32は仮詰まり状態にある。このような場合であっても、副オイル通路34bにおけるオイルの流通を確保することが望まれる。そこで、オイルフィルター32をバイパスするように延びるバイパス通路40が設けられている。
【0029】
バイパス通路40はオイル通路34のうちの副オイル通路34bに連通している。バイパス通路40はオイルフィルター32の上流側部分から分岐してその下流側部分に合流するように形成されている。そして、バイパス通路40の上流側端部40aはその下流側端部40bよりも鉛直方向上方に位置付けられている。それ故、オイルフィルター32においてオイルの流通が難しくなったとき、オイルフィルター32よりも鉛直方向上方の上流側に溜まるオイルをその自重によりバイパス通路40を介してオイルフィルター32よりも下流側に導くことができる。
【0030】
しかし、通常は、オイルフィルター32にオイルを通すことでオイルから上記したような成分を除去することが望まれる。そこで、上記したようにオイルフィルター32をオイルが通過し難くなった場合に、つまり、オイルフィルター32におけるオイルの粘度が所定粘度以上であってオイルフィルター32が仮詰まり状態にあるときに、バイパス通路40にオイルが流れることを許容するように、流量調節装置42が設けられている。
【0031】
流量調節装置42は、バイパス通路40のオイルの流量を調節する装置であり、オイルフィルター32におけるオイルの通路抵抗に応じてバイパス通路40へオイルが流れることを許容するように構成されている。具体的には、流量調節装置42は、図2に模式的に示すように、弁座42aに対して進退移動可能でそこに着座することができる弁体42bと、弁体42bを弁座42aに対して付勢する付勢部材としてのばね42cとを有している。付勢部材はばね42cに限定されず、他の弾性体から構成されることも可能である。ばね42cは、オイルフィルター32におけるオイルの通路抵抗が所定レベルよりも高いときにバイパス通路40へオイルを流すことを可能にするように設計選択されている。換言すると、オイルフィルター32が上記仮詰まり状態にあるときに、オイルフィルター32の上流側にオイルが溜まり得るが、その場合にその溜まったオイルの圧力がばね32による付勢力を超えるようにばね32は構成されている。このように、流量調節装置42は、オイルフィルター32の上流側のオイルの圧力が所定圧を超えたときにバイパス通路40を開通させる機構を備えている。そのため、そのようなとき、オイルフィルター32の上流側に溜まるオイルはバイパス通路40に流れ込むことができ、オイルフィルター32をバイパスしてオイルパン18に流れ込むことができる(図2の矢印a3、a4参照)。よって、エンジン10の潤滑装置30において、オイルの流れが滞ることを防ぐことが可能になる。
【0032】
また、上記バイパス通路40はオイルフィルター32と熱交換可能に、ここでは特にその収容部32dと熱交換可能に構成されている。具体的には、図2に示すように、それらの間で熱交換が可能なように、上記バイパス通路40はオイルフィルター32の収容部32d内を通るように構成されている。したがって、バイパス通路40を流れるオイルからオイルフィルター32の収容部32dに熱を供給して、収容部32dを温めることができる。なお、バイパス通路40はオイルフィルター32に接するように、例えばその収容部32dの周囲に接するように構成されてもよく、この場合には周囲からオイルフィルター32に熱を供給することができる。また、バイパス通路40は、オイルフィルター32の他の部分と熱交換可能に構成されることもできる。
【0033】
例えば、オイルフィルター32の収容部32dにおいて複数の反応体が粘度の高いオイルと混ざって泥状になっているとき、上記したように流量調節装置42を介してオイルがバイパス通路40に流れ込むことができる。エンジン10が作動開始して所定時間経過したときなどには、オイルの温度は所定温度を超えている。したがって、そのようなときにバイパス通路40を流れるオイルは所定温度を超えていて温かいまたは熱いので、そのオイルの熱が伝達されることで収容部32dは加熱される。その結果、オイルフィルター32が上記したように仮詰まり状態になっていても、迅速にオイルフィルター32におけるオイルの温度を上昇させてその流動性を高めて、複数の反応体の凝集を弱めることができる。よって、オイルフィルター32の仮詰まりを迅速に解消することができる。
【0034】
そして、潤滑装置30では、エンジンオイルの温度が低いのでその粘度が高いときに、オイルフィルター32に向けてオイルが流れることを抑制するように、第2流量調節装置44が設けられている。第2流量調節装置44は、流量調節弁である制御弁46と、その開閉動作を制御するための制御手段として機能する図示しない電子制御ユニット(ECU)の一部とを含んで構成されている。
【0035】
制御弁46は、ここでは、副オイル通路34bのオイルフィルター32へのオイルの流量を調節するように副オイル通路34bの上流側端部に設けられている(図1参照)。制御弁46は、具体的には全開状態と全閉状態とに選択的に制御され、ここではECUからの作動信号に基づいてアクチュエータが作動することで開閉動作する。
【0036】
エンジン10は、上記ECUを備える。ECUは、CPU、ROM、RAM、A/D変換器、入力インタフェース、出力インタフェース等を含むマイクロコンピュータで構成されている。入力インタフェースには、エンジン回転速度を検出するためのエンジン回転速度センサ、エンジン負荷を検出するためのエンジン負荷センサ、エンジンオイルの粘度を検出するための粘度検出手段としての粘度センサ48等を含む各種センサ類が電気的に接続されている。これら各種センサ類からの出力信号(検出信号)に基づき、予め設定されたプログラムにしたがって円滑なエンジン10の運転ないし作動がなされるように、ECUは出力インタフェースから電気的に燃料噴射弁、スロットルバルブ22用のアクチュエータ、制御弁46用のアクチュエータ等に作動信号(駆動信号)を出力する。
【0037】
このようなECUの一部は第2流量調節装置44の制御弁46に対する制御手段として機能する。また、粘度検出手段としての上記粘度センサ48とECUの一部とはエンジンオイルの粘度を検出する粘度検出装置を実質的に構成する。なお、粘度センサ48はオイルパン18に設けられているが、オイル通路34の他の箇所に設けられることも可能である。
【0038】
次に、上記制御弁46の作動制御に関して図3に基づいて説明する。なお、図3のフローは、エンジン10が起動された後、繰り返される。
【0039】
まず、エンジンオイルの粘度が所定粘度以上か否かが判定される(ステップS301)。オイルの粘度は粘度センサ48からの出力信号に基づいて検出される。所定粘度はオイルフィルター32にその粘度のオイルが流れ込んだときにオイルフィルター32におけるオイルの流通が悪影響を受ける可能性がある粘度として予め実験に基づいて定められている。より具体的には、ここでは、この所定粘度は、上記したようにオイルがオイルフィルター32の複数の反応体と混ざったときにそれらが泥状になり、オイルフィルター32が仮詰まり状態になるか否かに基づいて定められている。
【0040】
例えば、冷間始動時などにはオイルの温度が所定温度以下であるのでその粘度が所定粘度以上である。したがって、そのようなときにはオイルの粘度が所定粘度以上であるので(ステップS301で肯定判定)、制御弁46は閉じるようにECUによって制御される(ステップS303)。なお、ここでは、通常、制御弁46は閉じられている。
【0041】
他方、例えばオイルの温度が所定温度を超えてその粘度が所定粘度を下回ったときには(ステップS301で否定判定)、制御弁46は開くようにECUによって制御される(ステップS305)。したがって、オイルフィルター32に向けてオイルが流れるようになる。
【0042】
これにより、例えば、オイルフィルター32の収容部32dにおけるオイルの通路抵抗が所定レベルを超えていないとき、オイルフィルター32にオイルが流れてオイル中から上記所定成分を除くことが可能になる。他方、オイルフィルター32の収容部32dにおけるオイルの通路抵抗が所定レベルよりも高いとき、つまりオイルフィルター32が仮詰まり状態にあるとき、オイルの一部はオイルフィルター32を通過する場合があり得るが、オイルは上記したようにバイパス通路40に流れ得る。これにより、バイパス通路40のオイルによってオイルフィルター32の収容部32dを上記したように加熱することができる。よって、オイルフィルター32の収容部32dの反応体やオイルの流動性が高まりまたはそれら反応体の一体性が緩和され、オイルフィルター32の通路抵抗を下げることが可能になる。
【0043】
なお、上記実施形態では、エンジンオイルの粘度を検出するべく粘度センサ48が設けられたが、それと共にまたは代わりにエンジンオイルの温度を検出するための温度センサ(温度検出手段)が設けられることができる。この場合、温度センサとECUの一部とはエンジンオイルの温度を検出する温度検出装置またはエンジンオイルの粘度を検出するための粘度検出装置を実質的に構成し、ECUはエンジンオイルの温度または粘度に基づいて制御弁46の開閉動作を制御することができる。エンジンオイルの粘度は、その温度と相関関係を有するからである。なお、ECUは別々に検出されたエンジンオイルの温度および粘度の両方に基づいて制御弁46の開閉動作を制御してもよい。
【0044】
以上、本発明を上記実施形態に基づいて説明したが、例えば流量調節装置42は上記したような構成に限定されない。オイルフィルター32が仮詰まり状態になるほどオイルフィルター32におけるオイルの粘度が高いとき、オイルフィルター32の上流側にはオイルが溜まり得る。そこで、流量調節装置42は、そのように溜まったオイルの存在を検知してバイパス通路40を開通させるように構成されることができる。この場合、流量調節装置42は、バイパス通路におけるオイルの流量を調節するための制御弁と、オイルフィルター32上流側に溜まったオイルの量を検出するためのオイル量検出手段としてのセンサと、該センサからの出力に基づいて前記制御弁の開閉動作を制御するための制御手段とを備えることができる。その制御手段の機能は上記ECUの一部に担われ得る。オイルフィルター32上流側に溜まったオイルの量を検出するためのオイル量検出手段としてのセンサは、例えば、オイルフィルター32上流側のオイル通路のオイル溜部に設けられ得る。
【0045】
また、オイルフィルターで用いられる反応体は、上記の如きハイドロタルサイトに限定されない。反応体は所定の成分をオイル中から吸着除去する機能を有する物質であり得、例えばイオン交換樹脂であってもよい。反応体として種々のアニオン性イオン交換樹脂やカチオン性イオン交換樹脂を用いることが可能である。なお、イオン交換樹脂としては、例えば、三菱化学社製ダイヤイオン(登録商標)シリーズのイオン交換樹脂、ローム・アンド・ハース社製アンバーライト(登録商標)シリーズのイオン交換樹脂がある。
【0046】
アニオン性イオン交換樹脂等の反応体の使用によりオイル中から除去することが望まれるイオン成分には、硝酸イオン(NO3−)、硫酸イオン(SO2−)ばかりでなく、例えば、ブローバイガスから生じ得る酢酸イオン(CHCOO)、同様にブローバイガスから生じ得るギ酸イオン(HCOO)、塩化物イオン(Cl)、クロム酸イオン(CrO2−)がある。これらを含む群またはこれらからなる群から選択された少なくとも1つのイオン成分を吸着する機能を有する反応体が用いられ得る。
【0047】
また、スラッジ生成を抑制するようにオイル通路、例えばヘッドカバー16内面にアルカリ性物質、例えば炭酸カルシウムが設けられた場合、Caイオンを吸着する機能を有する反応体が用いられるとよい。また、オイル中に添加剤としてカルシウムスルホネートが添加されている場合には、このカルシウムスルホネートからCaイオンが生じ得るので、このような場合にもCaイオンを吸着する機能を有する反応体が用いられるとよい。
【0048】
なお、カチオン性イオン交換樹脂等の反応体の使用によりオイル中から除去することが望まれるイオンには、そのようなCaイオン(Ca2+)ばかりでなく、例えば、Al3+、Fe2+、Fe3+、Cr3+、Pb2+、Ni2+、Cu2+、Mg2+、Tiがある。これらは、オイルへの添加剤、例えばZnDTPから生じたり、エンジンの構成部材の磨耗および/または溶出により生じたりする。特に、エンジンの摺動部の摩耗によりエンジンオイル中に生じるCuイオン、Alイオン、Feイオン等は、除去されることが望まれる。これらを含む群またはこれらからなる群から選択された少なくとも1つのイオン成分を吸着する機能を有する反応体が用いられ得る。
【0049】
また、反応体といった物質は、ハイドロタルサイトやイオン交換樹脂以外のものであってもよい。無機イオン交換体、キレート樹脂、合成吸着剤等の反応体を用いることが可能である。反応体として、所定の成分を吸着する機能を有する種々の物質や、所定の成分を吸着する機能と別の所定の成分を放出する機能とを有する種々の物質を用いることができる。
【0050】
また、反応体によって吸着除去されるべき成分は、上記したような硝酸イオン、硫酸イオン等の酸、添加物から生じた成分、エンジンの構成部材の磨耗および/または溶出により生じた成分であって、オイル中の不要成分または不純物であるとよい。なお、吸着されるべき成分は、上記イオン成分に限定されず、また、イオン成分以外の成分をも含み得る。またオイルへ反応体から放出されるべき成分はエンジンオイルに無害である成分またはオイルへの添加剤として機能する有用成分であるとよい。なお、同様に、放出されるべき成分は、上記イオンに限定されず、イオン以外の成分も含み得る。
【0051】
このような反応体を用いて、オイル中の不要成分または不純物を除去できるので、オイル中にそのような不要成分または不純物を供給する可能性のある種々の材料および/または薬剤等の物質を、酸化防止剤、金属系洗浄剤、摩擦調整剤、無灰分散剤、pH調整剤としてオイルへ加えることも可能になる。
【0052】
なお、オイルフィルターに収容される物質は上記反応体に限定されない。所定の成分を吸着する機能を有する種々の物質がオイルフィルターに収容され得る。そして、特に、本発明は、オイルフィルターに収容される複数の物質がそれぞれ微細物である場合に有効である。
【0053】
また、オイルフィルターでは、金網ケース、金網や樹脂などを用いて形成された袋状ケース、メッシュタイプの筒状ケース(内筒と外筒との間に収納領域を有する。)等が用いられて収容部が形成され得、その中に複数の物質が入れられ得る。
【0054】
以上、本発明を上記実施形態およびその変形例に基づいて説明した。しかし、本発明は、それら実施形態等に限定されず、他の実施形態を許容する。本発明には、特許請求の範囲によって規定される本発明の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が含まれる。
【符号の説明】
【0055】
10 エンジン
12 シリンダブロック
14 シリンダヘッド
16 ヘッドカバー
18 オイルパン
20 吸気通路
22 スロットルバルブ
24 排気通路
26 オイル戻し通路
30 潤滑装置
32 オイルフィルター
34 オイル通路
38 オイルポンプ
40 バイパス通路
42 流量調節装置
44 第2流量調節装置
48 粘度センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル通路に設けられ、所定の成分を吸着する機能を有する複数の物質を収容するオイルフィルターと、
前記オイル通路に連通して前記オイルフィルターをバイパスするように延びるバイパス通路と、
該バイパス通路のオイルの流量を調節する流量調節装置であって、前記オイルフィルターにおけるオイルの粘度が所定粘度以上であるので前記オイルフィルターが仮詰まり状態にあるとき前記オイルフィルターの上流側のオイルが前記バイパス通路へ流れることを許容するように構成された流量調節装置と
を備えたことを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記流量調節装置は、前記オイルフィルターの上流側のオイルの圧力が所定圧を超えたときに前記バイパス通路を開通させる機構を備えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記バイパス通路は、前記オイルフィルターと熱交換可能に構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記バイパス通路は、前記オイルフィルター内を通るように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記バイパス通路は、前記オイルフィルターに接するように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記オイル通路におけるオイルの粘度に応じて前記オイルフィルターに向けたオイルの流量を調節する第2流量調節装置をさらに備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれかに内燃機関。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−197690(P2012−197690A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61107(P2011−61107)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】