説明

内視鏡システム及び内視鏡システムにおける画像処理方法

【課題】第1の照明条件下で観察した部位を、あたかも第2の照明条件下で観察したかの如くモニタに表示できる内視鏡システムを提供する。
【解決手段】生体内部(被写体1)を照明する第1の照明10の下でカメラ11により撮像された信号(Rout,Gout,Bout)は、カメラ色変換部12にて、第1の照明10、カメラ11、前記生体(被写体1)の特性情報に基づいて、デバイスに依存しない色空間の画像信号(X'1,Y'1,Z'1)に変換される。この生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出される。さらに、この画像信号(X'1,Y'1,Z'1)は、予め記録した第2の照明手段の特性情報に基づいて、第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号(X'2,Y'2,Z'2)に変換される。そして、予め記憶したモニタ15の色空間の特性情報に基づいて、モニタ15に依存する色空間の画像信号(Rin,Gin,Bin)に変換される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織の像を撮像し画像処理する内視鏡システム、及び内視鏡システムにおける画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、照明光を照射して体腔内の内視鏡像を得る内視鏡システムが広く知られている。この種の内視鏡システムでは、光源装置からの照明光を体腔内にライトガイド等を用い導光しその戻り光により被写体を撮像する撮像手段を有する電子内視鏡が用いられ、ビデオプロセッサにより撮像手段からの撮像信号を信号処理することにより観察モニタに内視鏡画像を表示し患部等の観察部位を観察するようになっている。
【0003】
内視鏡システムによる診断、手術は、上記モニタに表示された観察像に基づいて実施される為、正確な診断、手術を実施するためには観察像の色再現性を忠実に観察モニタに再現する事が必要とされている。そこで、この種の内視鏡システムにおいては、使用する光源装置、固体撮像素子の感度差、カラーフィルタの分光感度差、映像信号処理回路のばらつき等に起因する色再現性のばらつきを補正する為に、ホワイトバランス補正(ホワイトバランス調整)機能が設けられている。通常の使用においては、内視鏡システムを起動した後に白色の被写体を撮像し、操作スイッチによってホワイトバランス補正機能を動作させて、ホワイトバランス補正を行なった後に患者の診断、手術を実施する事によって、患部等の色再現性を観察モニタにて行うようになっている。また、近年の内視鏡システムは、上述のホワイトバランス補正に加えて、光源装置のランプの種別に起因する演色性の違いや、ユーザーの好みに対応する為にカラーモード設定手段を設け、使用する光源装置の種類や好みに応じてユーザーが色再現性を設定する事が可能となっている。このような従来の内視鏡システムは、例えば、特許文献1(特開2000−221417号公報)、特許文献2(特開2001−112712号公報)に開示されている。
【特許文献1】特開2000−221417号公報
【特許文献2】特開2001−112712号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、人間の視覚系によって、知覚される色は、照明光の違いによって、目に入ってくる光が同じであっても異なって見えることが知られている。特許文献1や2に記載された従来の内視鏡システムは、色再現性のためにホワイトバランス補正機能や、ユーザー好みのカラーモードを設定する機能を備えるのみであり、このような人間の視覚系のことが考慮されていない。すなわち、従来の内視鏡システムは、患部等の部位を、ユーザーが実際に観察する、例えば無影灯下と同様な忠実色再現を目標としているわけではない。このため、実際に無影灯下、肉眼で観察する場合には容易に分離できる色が、観察モニタ上では分離が難しい色として表示され、検査、治療に支障をきたす場合がある、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するために、請求項1に係る発明は、色空間変換処理を行う内視鏡システムであって、生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、画像信号を出力するための表示デバイスを持ち、該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段、表示デバイスの特性情報、及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、最終的に第2の照明手段環境下での被写体の色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする。
【0006】
また、請求項2に係る発明は、色空間変換処理を行う内視鏡システムにおける画像処理方法であって、生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、画像信号を出力するための表示デバイスを持ち、該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段、表示デバイスの特性情報、及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、最終的に第2の照明手段環境下での被写体の色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする。
【0007】
また、請求項3に係る発明は、色空間変換処理を行う内視鏡システムであって、生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第1の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、前記第1の色空間変換手段から出力される画像信号を、予め記憶した生体の特性情報及び第2の照明手段の特性情報に基づいて、該第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段と、予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第3の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする。
【0008】
また、請求項4に係る発明は、請求項3に記載の内視鏡システムであって、前記第1の色空間変換手段及び第2の色空間変換手段により変換された後の画像信号はXYZ信号であることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、請求項3又は請求項4のいずれかに記載の内視鏡システムであって、前記第1の色空間変換手段はマトリクス変換手段、又はガンマ補正手段とマトリクス変換手段の組み合わせからなることを特徴とする。
【0010】
また、請求項6に係る発明は、請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の内視鏡システムであって、前記第2の色空間変換手段はマトリクス変換手段であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項7に係る発明は、請求項3乃至6のいずれかに記載の内視鏡システムであって、前記第3の色空間変換手段は、マトリクス変換手段、又はマトリクス変換手段とガンマ補正手段の組み合わせ、又はルックアップテーブルであることを特徴とする。
【0012】
また、請求項8に係る発明は、色空間変換処理を行う内視鏡システムにおける画像処理方法であって、生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第1の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、前記第1の色空間変換手段から出力される画像信号を、予め記憶した生体の特性情報及び第2の照明手段の特性情報に基づいて、該第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段と、予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第3の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする。
【0013】
また、請求項9に係る発明は、色空間変換処理を行う内視鏡システムであって、生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第1の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、前記第1の色空間変換手段から出力される画像信号を、予め記憶した第1及び第2の照明手段の特性情報に基づいて、該第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段と、予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第3の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする。
【0014】
また、請求項10に係る発明は、請求項9に記載の内視鏡システムであって、前記第1の色空間変換手段及び第2の色空間変換手段により変換された後の画像信号はXYZ信号であることを特徴とする。
【0015】
また、請求項11に係る発明は、請求項9又は請求項10のいずれかに記載の内視鏡システムであって、前記第1の色空間変換手段はマトリクス変換手段、又はガンマ補正手段とマトリクス変換手段の組み合わせからなることを特徴とする。
【0016】
また、請求項12に係る発明は、請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の内視鏡システムであって、前記第2の色空間変換手段はマトリクス変換手段であることを特徴とする。
【0017】
また、請求項13に係る発明は、請求項9乃至12のいずれかに記載の内視鏡システムであって、前記第3の色空間変換手段は、マトリクス変換手段、又はマトリクス変換手段とガンマ補正手段の組み合わせ、又はルックアップテーブルであることを特徴とする。
【0018】
また、請求項14に係る発明は、色空間変換処理を行う内視鏡システムにおける画像処理方法であって、生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第1の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、前記第1の色空間変換手段から出力される画像信号を、予め記憶した第1及び第2の照明手段の特性情報に基づいて、該第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段と、予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第3の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする。
【0019】
また、請求項15に係る発明は、色空間変換処理を行う内視鏡システムであって、生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする。
【0020】
また、請求項16に係る発明は、請求項15に記載の内視鏡システムであって、前記第1の色空間変換手段はマトリクス変換手段、又はガンマ補正手段とマトリクス変換手段の組み合わせからなることを特徴とする。
【0021】
また、請求項17に係る発明は、請求項15又は16に記載の内視鏡システムであって、前記第2の色空間変換手段は、マトリクス変換手段、又はマトリクス変換手段とガンマ補正手段の組み合わせ、又はルックアップテーブルであることを特徴とする。
【0022】
また、請求項18に係る発明は、色空間変換処理を行う内視鏡システムにおける画像処理方法であって、生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする。
【0023】
また、請求項19に係る発明は、色空間変換処理を行う内視鏡システムであって、生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段の特性情報、被写体となる生体の特性情報、及び表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、第2の照明手段環境下における該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段を有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする。
【0024】
また、請求項20に係る発明は、請求項19に記載の内視鏡システムであって、前記第1の色空間変換手段はマトリクス変換手段、又はガンマ補正手段とマトリクス変換手段の組み合わせからなることを特徴とする。
【0025】
また、請求項21に係る発明は、色空間変換処理を行う内視鏡システムにおける画像処理方法であって、生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段の特性情報、被写体となる生体の特性情報、及び表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、第2の照明手段環境下における該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段を有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る内視鏡システムによれば、第1の照明条件下で観察した部位を、あたかも第2の照明条件下で観察したかの如くモニタに表示できる。すなわち、本発明の内視鏡システムは、第1の照明下における患部等の部位を、ユーザーが実際に観察する(例えば無影灯などの)第2の照明下での色再現を行うので、肉眼で分離できる色はモニタ上でも分離できる色として表示されるため、肉眼での観察により近い状態での検査、治療が可能になる。また、本発明の内視鏡システムによれば、上記のように第2の照明下での色再現を行うので、ユーザーの記憶色に近い色再現を実現し、ユーザーの直感が働きやすい画像をモニタに提供できるので、モニタで患部部位を観察した後、開腹手術に移行した場合のユーザーの違和感をなくし安全性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る内視鏡システムの原理を説明するブロック図である。図1において、1は被写体、10は被写体1を照射する照射光を発する第1の照明、11は体腔内の観察部位を撮影するカメラ、12はカメラ11の出力を画像処理するカメラ色変換部、13はカメラ色変換部12からの出力を処理する照明色変換部、14は照明色変換部13からの出力をモニタ用の入力に変換するモニタ色変換部、15は内視鏡画像を表示し患部等の観察部位を観察するモニタ、20は第1の照明、カメラ、被写体の特性情報、21は第2の照明の特性情報、22はモニタの特性情報をそれぞれ示している。
【0028】
本発明の内視鏡システムは、図1における被写体1以外の全ての構成を含むものである。内視鏡システムにおいては、被写体1を照明する第1の照明10をカメラ11で撮像し、カメラ11はRGB信号を出力する。第1の照明10の下で撮像された映像のカメラ出力を(Rout,Gout,Bout)とすると、カメラ色変換部12では、第1の照明、カメラ、被写体の特性情報20を加味して、これを(X'1,Y'1,Z'1)に変換する。
【0029】
画像を取り込むカメラ11、画像を出力するモニタ15等のデバイス間で画像データを伝送する際、すなわち、入力側である任意のデバイス(以下、入力デバイスと言う。)で取り込まれた画像又は表示出力されている画像を出力側である他のデバイス(以下、出力デバイスと言う。)で表示出力する際、入力デバイス又は出力デバイスでは、デバイス毎に各々定義されたRGBデータ(やCMYKデータなどの)の画像データに基いて各々処理が行われる。このため、例えば入力デバイスであるカメラが内蔵する色フィルタ、出力デバイスであるモニタの蛍光体や色フィルタ等の特性の違いにより、入力デバイスにおける画像と出力デバイスにおける画像で大きな色ずれが生じる。
【0030】
そこで、本発明においては、デバイス毎に定義された画像データの色空間をCIE(国際照明委員会)で定められている、デバイスに依存しない色空間であるXYZ(CIE/XYZ)の中間の色空間に変換することにより、デバイスが有する安定性や色再現領域等の能力の範囲内で、入力デバイスにおける画像の色と、出力デバイスにおける画像の色とを測色値レベルで同一にする画像処理方法を採用する。
【0031】
さて、カメラの分光感度が等色関数の線形変換でなくとも、カメラ出力が入射光に対して線形であり、対象となる被写体の分光反射率が十分限定されている場合、カメラ色変換部12における色変換パラメータ(マトリクス)をPとすると、カメラ色変換部12では、
【0032】
【数1】

で十分正確に近似することができる(詳細は後述)。カメラの出力が入射光に対して線形でない場合は、ルックアップテーブル等を用いて線形になるように補正すればよい。次に照明色変換部13では、第1の照明と第2の照明、又は第2の照明と生体の照明の特性情報21を加味して、(X'1,Y'1,Z'1)を(X'2,Y'2,Z'2)に変換する。すなわち、照明色変換部13における色変換パラメータ(マトリクス)をQとすると、照明色変換部13では
【0033】
【数2】

で十分正確に近似することができる(詳細は後述)。ここで、第2の照明とは、不図示のユーザーが患部等の観察部位を実際に観察する際に用いられる照明等である。なお、この第2の照明については図1においては図示されていない。次に、モニタ色変換部14では、照明色変換部13からの出力を受けて、モニタ15に入力するための信号(Rin,Gin,Bin)に変換する。まず、理想的な加法混色を仮定して決定した色変換パラメータ(マトリクス)をRとして、照明色変換部13から出力された(X'2 , Y'2, Z'2)を(R'in, G'in, B'in)に変換する。
【0034】
【数3】

次に、一般にモニタのガンマ特性は非線形であるため、(R'in, G'in, B'in)を次式で(Rin, Gin, Bin)に変換する。
in = 255×( R’in / 255)1/2.2
in = 255×( G’in / 255)1/2.2 (4)
in = 255×( B’in / 255)1/2.2
ここでは、モニタのガンマ特性がR,G,Bともに2.2であり、RGB信号がいずれも8bitの整数値で表されているものとしている。モニタのガンマ特性が2.2以外である場合も同様であることは言うまでもない。また、(4)式の変わりに、モニタのガンマ特性を線形に補正するようなルックアップテーブルを用いても良い。また、(3)式と(4)式の変わりに(X'2 , Y'2, Z'2)を直接(Rin, Gin, Bin)に変換するような3次元ルックアップテーブルを用いても良い。
【0035】
以上のような構成を有する本発明の実施の形態に係る内視鏡システムにおいて、カメラ色変換部12における色変換パラメータ(マトリクス)P、照明色変換部13における色変換パラメータ(マトリクス)Q、モニタ色変換部14における色変換パラメータ(マトリクス)Rをそれぞれ求めることができれば、適正なモニタ15への入力信号(Rin,Gin,Bin)を求めることができる。
【0036】
以下、本発明の実施の形態に係る内視鏡システムにおいて、色変換パラメータ(マトリクス)P、Q、Rを求める方法について説明する。まず、色変換パラメータ(マトリクス)Pの求め方について説明する。
【0037】
CIE(国際照明委員会)で定められた等エネルギースペクトルに対する目の感度をスペクトル刺激値といい、この感度曲線は等色関数とわれている。この等色関数を、
【0038】
【数4】

とする。なお、等色関数は、人間の目に対応する分光感度であるということもできる。図8は、等色関数の特性曲線を示す図である。また、カメラ11の各チャンネルの分光感度特性を、r(λ),g(λ),b(λ) とする。なお、カメラ11の分光感度特性は前記等色関数の線形変換とはなっていない。図9は、カメラ11のr(λ),g(λ),b(λ)の 分光感度特性曲線を示す図である。また、第1の照明手段の分光特性をs1(λ)とする。図10は、第1の照明10の波長分布特性曲線を示す図である。
【0039】
また、代表的な生体における被写体の分光反射率をhi(λ)とする。図11は、代表的な生体(被写体)の分光反射率hi(λ)(i=1〜32)の特性曲線を示す図である。ここで、本発明の実施の形態に係る内視鏡システムにおいて、生体における代表的な被写体の分光反射率hi(λ)をある一定数サンプリングしておき、カメラ色変換部12にて用いられる第1の照明10、カメラ11、被写体1の特性情報を含む色変換パラメータ(マトリクス)Pを求める。生体とは具体的には人間の体腔内の色と近似していると考えられる例えばブタであり、生体の臓器複数箇所のサンプルを計測する。本発明では、この生体における複数点の分光反射率hi(λ) のうちの任意の10点に基づいて、カメラ出力(Rout,Gout,Bout)から(X'1,Y'1,Z'1)を推定するため色変換パラメータ(マトリクス)Pを求めるわけである。このようにいくつかのサンプル点でマトリクスを作れば、他の点も正しく推定することができる。
【0040】
代表的な生体(被写体)の反射率hi(λ)(i=1〜10)に対して、第1の照明条件下でのカメラ出力と測色値をそれぞれ下記の式(5)で計算することができる。ここで、Ri,Gi,Biは、i番目のサンプル生体をカメラ10で撮像したときのRout,Gout,Boutをそれぞれ示している。
【0041】
【数5】

また、第1の照明10条件下での三刺激値は下式(6)にて計算することができる。
【0042】
【数6】

ここで、第1の照明10の条件下での代表的な被写体のカメラ出力(Rout,Gout,Bout)を並べたマトリクスCを以下の式で定義する。
【0043】
【数7】

また、第1の照明10条件下での前記代表的な被写体の三刺激値を並べた行列V1を以下の式で定義する。
【0044】
【数8】

第1の照明10条件下でのカメラ11の出力から第1の照明10条件下での三刺激値を推定するには、
【0045】
【数9】

を満たすマトリクスx1を求めればよく、このようなマトリクスは最小二乗法により以下の式(10)で求められることが知られている。(木村英紀著「線形代数 数理科学の基礎」財団法人東京大学出版会発行、2003年12月19日初版109頁乃至111頁等参照)
【0046】
【数10】

このマトリクスx1を利用して、以下の式でカメラ出力から第1の照明10条件下での被写体の三刺激値を推定できる。
【0047】
【数11】

すなわち、カメラ色変換部12にて用いられる第1の照明10、カメラ11、被写体1の特性情報を含む色変換パラメータ(マトリクス)Pは、
【0048】
【数12】

によって求めることができる。
【0049】
次に、第2の照明と生体の特性情報を用いて照明色変換部13における色変換パラメータ(マトリクス)Qを求める方法について説明する。第2の照明条件下での前記代表的な被写体の三刺激値を並べた行列V2を以下の式で定義する。第2の照明条件下での三刺激値は(6)式のS1(λ)を第2の照明の分光特性S2(λ)に置換することで算出できる。ここで、第2の照明手段とは、具体的には、ハロゲン、無影灯もしくはそれに近い特性を有する太陽光、キセノン等の照明などをいう。
【0050】
【数13】

すると、以下のようにV1とV2との関係は、マトリクスx2によって、
【0051】
【数14】

と表現することができる。したがって、このようなマトリクスは前述の最小二乗法により以下の式(15)として求めることができる。
【0052】
【数15】

このマトリクスx2を利用して、以下の式で第2の照明条件下での被写体の三刺激値を推定できる。
【0053】
【数16】

すなわち、照明色変換部13にて用いられる第2の照明の特性情報を含む色変換パラメータ(マトリクス)Qは、
【0054】
【数17】

によって求めることができる。
【0055】
次に、第1、第2の照明と生体の特性情報を用いて照明色変換部13における色変換パラメータ(マトリクス)Qを求める方法について説明する。第1の照明10の条件下での完全拡散反射面の三刺激値を、
【0056】
【数18】

第2の照明条件下での完全拡散反射面の三刺激値を、
【0057】
【数19】

とするとき、以下のように定義される色変換マトリクスdを利用して、第1の照明条件下での被写体の三刺激値(Xw1,Yw1,Zw1)から第2の照明条件下での三刺激値(Xw2,Yw2,Zw2)を推定することができる。
【0058】
【数20】

【0059】
【数21】

すなわち、
【0060】
【数22】

となる。
【0061】
次に、モニタ色変換部14における色変換パラメータ(マトリクス)Rを求める方法について説明する。モニタ色変換部14は、モニタ15の従来よく知られている、該モニタ15に入力される表示色彩データにより規定される色彩と、該表示色彩データに基づきモニタ15が実際に表示する色彩との関係を示す色再現特性であるモニタの特性情報を予め記憶している。一般に、Xr,Yr,ZrをRの三刺激値、Xg,Yg,ZgをGの三刺激値、Xb,Yb,ZbをBの三刺激値とすると、(R,G,B)と(X.Y.Z)との間には、理想的には、
【0062】
【数23】

ただし、
【0063】
【数24】

の関係が成立することが知られているので、モニタ色変換部14におけるRは、
【0064】
【数25】

から、
【0065】
【数26】

と求めることができる。
【0066】
以上の本実施形態による方法にて、図11に示される代表的な生体(被写体)の分光反射率hi(λ)のうちの任意の10点によって求めた、第1の照明10、カメラ11、被写体1の特性情報を含む色変換パラメータ(マトリクス)Pは、
【0067】
【数27】

であった。このマトリクスの計算によって、i=1〜32のカメラ出力(Rout,Gout,Bout)から(X'1,Y'1,Z'1)を求めたものが表1である。すなわち、カメラ出力(Rout,Gout,Bout)に基づいて(X'1,Y'1,Z'1)を推定したものの結果である。
【0068】
【表1】

次に、本実施形態において、推定値と測定値との間の評価に用いたL***表色系について説明する。L***表色系とは、CIEが1976年に定めた均等色空間のひとつである。次の三次元直交座標を用いる色空間を L***色空間といい、この色空間を用いた表色系を L***表色系またはCIELAB表色系(シー・アイ・イー・エル・エー・ビーまたはシーラブ)といいう。
明度指数を
【0069】
【数28】

と定義する。
また、クロマティクネス指数
【0070】
【数29】

と定義する。
ただし、
【0071】
【数30】

である。
【0072】
ここで、X、Y、Zは試料のXYZ表色系における三刺激値である。Xn、Yn、Znは完全拡散反射面の三刺激値である。X/Xn、Y/Yn、Z/Znに0.008856以下のものがある場合は、式(30)で対応する立方根の項をそれぞれ以下の式に置き換えて計算を行う。
【0073】
【数31】

なお、本実施形態ではXn=1169.588、Yn=1176.48、Zn=1114.788とした。
【0074】
これに対してi=1〜32の生体の代表箇所の実測値が表2に示されている。なお、表中(X1,Y1,Z1)は、マトリクスを用いて推定していない実測値であることを示しており、先の(X'1,Y'1,Z'1)の比較対象に相当する。また、推定値のL***と実測値のL***との差をそれぞれΔL* 、Δa*、Δb*とすると、色差ΔEは、
【0075】
【数32】

で求められる。
【0076】
【表2】

表1におけるL***色度座標(推定値)と表2におけるL***色度座標(実測値)とを、L***色度図に図示したものが図12である。図12に示すように、L***色度図中、推定値と実測値とはほぼ同一点にプロットされていることがわかる。また、表2において示すように、推定値と測色値との色差ΔEについても充分小さな値に集束していることがわかる。
【0077】
次に第1の照明条件下での被写体の三刺激値X'1,Y'1,Z'1(推定値)から、第2の照明と生体の特性情報を用いて第2の照明条件下での被写体の三刺激値X'2,Y'2,Z'2を推定した結果を表3に示す。また、表4には、三刺激値の実測値X2,Y2,Z2を示す。色差ΔEの定義は前述と同様である。ここでは、Xn=1321.493、Yn=1361.721、Zn=759.275とした。また、色変換パラメータQは、
【0078】
【数33】

を用いた。また、表3におけるL***色度座標(推定値)と表4におけるL***色度座標(実測値)とを、L***色度図に図示したものが図13である。
【0079】
【表3】

【0080】
【表4】

次に第1の照明条件下での被写体の三刺激値X'1,Y'1,Z'1(推定値)から、第1及び第2の照明の特性情報を用いて、第2の照明条件下での被写体の三刺激値X'2,Y'2,Z'2を推定した結果を表5に示す。また、表6には、三刺激値の実測値X2,Y2,Z2を示す。色差ΔEの定義は前述と同様である。ここでは、Xn=1321.493、Yn=1361.721、Zn=759.275とした。また、比例変換マトリクスは次のものを用いた。
【0081】
【数34】

表5におけるL***色度座標(推定値)と表6におけるL***色度座標(実測値)とを、L***色度図に図示したものが図14である。
【0082】
【表5】

【0083】
【表6】

このように本発明の内視鏡システムによれば、第1の照明条件下で観察した部位を、あたかも第2の照明条件下で観察したかの如くモニタ15に表示できる。すなわち、本発明の内視鏡システムは、第1の照明下における患部等の部位を、ユーザーが実際に観察する(例えば無影灯などの)第2の照明下での色再現を行うので、肉眼で分離できる色はモニタ上でも分離できる色として表示されるため、肉眼での観察により近い状態での検査、治療が可能になる。また、本発明の内視鏡システムによれば、上記のように第2の照明下での色再現を行うので、ユーザーの記憶色に近い色再現を実現し、ユーザーの直感が働きやすい画像をモニタに提供できるので、モニタで患部部位を観察した後、開腹手術に移行した場合のユーザーの違和感をなくし安全性を高めることができる。
【0084】
次に、本発明の他の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。図2は、本発明の他の実施の形態に係る内視鏡システムの原理を説明するブロック図である。図2において、1は被写体、10は被写体1を照射する照射光を発する第1の照明、11は体腔内の観察部位を撮影するカメラ、16はカメラ色変換部及び照明色変換部、14はカメラ色変換部及び照明色変換部16からの出力をモニタ用の入力に変換するモニタ色変換部、15は内視鏡画像を表示し患部等の観察部位を観察するモニタ、23は第1の照明、第2の照明、カメラ、被写体の特性情報、22はモニタの特性情報をそれぞれ示している。先の実施形態では、カメラ色変換部12と照明色変換部13とが別々であったが、本実施形態においては、これらがカメラ色変換部及び照明色変換部16として纏められている。
【0085】
本実施形態の内視鏡システムは、図2における被写体1以外の全ての構成を含むものである。内視鏡システムにおいては、被写体1を照明する第1の照明10をカメラ11で撮像し、カメラ11はRGB信号を出力する。第1の照明10の下で撮像された映像のカメラ出力をRout,Gout,Boutとすると、カメラ色変換部及び照明色変換部16では、第1の照明、第2の照明、カメラ、被写体の特性情報23を加味して、これをX'2,Y'2,Z'2に変換する。すなわち、カメラ色変換部及び照明色変換部16における色変換パラメータ(マトリクス)をLとすると、カメラ色変換部及び照明色変換部16では、
【0086】
【数35】

が成立する。(X'2,Y'2,Z'2)をモニタ15に入力するための信号(Rin,Gin,Bin)に変換するためのモニタ色変換部14における色変換パラメータ(マトリクス)Rについては、左記の実施形態と同様なので説明を省略する。
【0087】
次に、カメラ色変換部及び照明色変換部16における色変換パラメータ(マトリクス)Lを求める方法について説明する。第1の照明10条件下での被写体1の測色値の推定を行わず、カメラ11出力から第2の照明条件下での三刺激値を推定するには、
【0088】
【数36】

となるマトリクスx3を求めればよい。このようなマトリクスは前述の最小二乗法により以下の式(38)として求めることができる。
【0089】
【数37】

このマトリクスx3を利用して、以下の式でカメラ出力から第2の照明10条件下での被写体の三刺激値を推定できる。
【0090】
【数38】

すなわち、カメラ色変換部及び照明色変換部16にて用いられる第1の照明、第2の照明、カメラ、被写体の特性情報23を含む色変換パラメータ(マトリクス)Lは、
【0091】
【数39】

によって求めることができる。
【0092】
次にカメラ出力(Rout,Gout,Bout)から第2の照明条件下での被写体の三刺激値(X'2,Y'2,Z'2)を直接推定した結果について表7に示す。また、表8には、三刺激値の実測値X2,Y2,Z2を示す。色差ΔEの定義は前述と同様である。ここでは、Xn=1321.493、Yn=1361.721、Zn=759.275とした。また、色推定マトリクスは次のものを用いた。
【0093】
【数40】

表7におけるL***色度座標(推定値)と表8におけるL***色度座標(実測値)とを、L***色度図に図示したものが図15である。
【0094】
【表7】

【0095】
【表8】

次に、これまでに述べた本発明のより詳細な実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図3は図1に示される実施の形態を、実際の内視鏡システムにおける処理に即したブロック図にしたものである。カメラ色変換部12において示されているマトリクスは前記の色変換パラメータ(マトリクス)Pに、照明色変換部13で示されているマトリクスは前記の色変換パラメータ(マトリクス)Qに、またモニタ色変換部14で示されているマトリクスは前記の色変換パラメータ(マトリクス)Rにそれぞれ対応している。
【0096】
図4は、本発明の他の実施の形態に係る内視鏡システムのブロック図である。図4に示される実施形態は、図3に示される実施形態の変形例である。カメラ色変換部12において示されているマトリクスは前記の色変換パラメータ(マトリクス)Pに、照明色変換部13で示されているマトリクスは前記の色変換パラメータ(マトリクス)Qに、またモニタ色変換部14で示されているマトリクスは前記の色変換パラメータ(マトリクス)Rにそれぞれ対応していることは先の実施の形態同様であるが、本実施形態で異なる点は、カメラ色変換部14において、カメラ出力が入射光に対して非線形である場合を考え、マトリクスの前でカメラ出力を線形に補正するようなガンマ補正処理を行っている点である。
【0097】
図5は、本発明の他の実施の形態に係る内視鏡システムのブロック図である。図5に示される実施形態は、図3に示される実施形態の変形例である。カメラ色変換部12において示されているマトリクスは前記の色変換パラメータ(マトリクス)Pに、照明色変換部13で示されているマトリクスは前記の色変換パラメータ(マトリクス)Qにそれぞれ対応していることは先の実施の形態同様であるが、本実施形態で異なる点は、モニタ色変換部14においては色変換パラメータ(マトリクス)R及びその後のガンマ補正に代わり、3次元ルックアップテーブル3D-LUTを使用している点である。本実施形態では、マトリクスに代えてルックアップテーブルを用いるため、マトリクス計算と比較してモニタ出力時の誤差を小さく抑えることができる。
【0098】
次に、本発明のより詳細な実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図6は図2に示される実施の形態を、実際の内視鏡システムにおける処理に即したブロック図にしたものである。カメラ色変換部及び照明色変換部16において示されているマトリクスは前記の色変換パラメータ(マトリクス)Lに、またモニタ色変換部14で示されているマトリクスは前記の色変換パラメータ(マトリクス)Rにそれぞれ対応している。
図7は、本発明の他の実施の形態に係る内視鏡システムのブロック図である。本実施形態においては、図3に示される実施形態のカメラ色変換部12、照明色変換部13、モニタ色変換部14内のマトリクスを全て纏めた、カメラ色変換部及び照明色変換部及びモニタ色変換部17を用いることを特徴としている。なお、カメラ色変換部及び照明色変換部及びモニタ色変換部17で用いる色変換パラメータ(マトリクス)としては、例えばP、Q、Rのマトリクスを処理の順番通りに掛け合わせて算出したマトリクスRQPを用いればよい。本実施形態では、全てのマトリクスを一つに纏めることで、マトリクス計算回路の規模を小さくすることができる。この効果は、全てのマトリクスを一つに纏めた場合だけでなく、一部の複数のマトリクスを一つに纏めた場合も同様であることは言うまでもない。
【0099】
以上、本発明のいずれの変形例においても、第1の照明条件下で観察した部位を、あたかも第2の照明条件下で観察したかの如くモニタ15に表示できる。すなわち、本発明の内視鏡システムは、第1の照明下における患部等の部位を、ユーザーが実際に観察する(例えば無影灯などの)第2の照明下での色再現を行うので、肉眼で分離できる色はモニタ上でも分離できる色として表示されるため、肉眼での観察により近い状態での検査、治療が可能になる。また、本発明の内視鏡システムによれば、上記のように第2の照明下での色再現を行うので、ユーザーの記憶色に近い色再現を実現し、ユーザーの直感が働きやすい画像をモニタに提供できるので、モニタで患部部位を観察した後、開腹手術に移行した場合のユーザーの違和感をなくし安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】本発明の実施の形態に係る内視鏡システムの原理を説明するブロック図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る内視鏡システムの原理を説明するブロック図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る内視鏡システムのブロック図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る内視鏡システムのブロック図である。
【図5】本発明の他の実施の形態に係る内視鏡システムのブロック図である。
【図6】本発明の他の実施の形態に係る内視鏡システムのブロック図である。
【図7】本発明の他の実施の形態に係る内視鏡システムのブロック図である。
【図8】等色関数の特性曲線を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る内視鏡システムのカメラのr(λ),g(λ),b(λ) 分光感度特性曲線を示す図である。
【図10】第1の照明10の波長分布特性曲線を示す図である。
【図11】代表的な生体(被写体)の分光反射率hi(λ)(i=1〜32)の特性曲線を示す図である。
【図12】表1におけるL***色度座標(推定値)と表2におけるL***色度座標(実測値)とを、L***色度図に示した図である。
【図13】表3におけるL***色度座標(推定値)と表4におけるL***色度座標(実測値)とを、L***色度図に示した図である。
【図14】表5におけるL***色度座標(推定値)と表6におけるL***色度座標(実測値)とを、L***色度図に示した図である。
【図15】表7におけるL***色度座標(推定値)と表8におけるL***色度座標(実測値)とを、L***色度図に示した図である。
【符号の説明】
【0101】
1・・・被写体、10・・・第1の照明、11・・・カメラ、12・・・カメラ色変換部、13・・・照明色変換部、14・・・モニタ色変換部、15・・・モニタ、16・・・カメラ色変換部及び照明色変換部、20・・・第1の照明、カメラ、被写体の特性情報、21・・・第2の照明の特性情報、22・・・モニタの特性情報、23・・・第1の照明、第2の照明、カメラ、被写体の特性情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色空間変換処理を行う内視鏡システムであって、
生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、画像信号を出力するための表示デバイスを持ち、
該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段、表示デバイスの特性情報、及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、最終的に第2の照明手段環境下での被写体の色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項2】
色空間変換処理を行う内視鏡システムにおける画像処理方法であって、
生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、画像信号を出力するための表示デバイスを持ち、
該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段、表示デバイスの特性情報、及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、最終的に第2の照明手段環境下での被写体の色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする内視鏡システムにおける画像処理方法。
【請求項3】
色空間変換処理を行う内視鏡システムであって、
生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、
該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第1の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、
前記第1の色空間変換手段から出力される画像信号を、予め記憶した生体の特性情報及び第2の照明手段の特性情報に基づいて、該第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段と、
予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第3の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項4】
前記第1の色空間変換手段及び第2の色空間変換手段により変換された後の画像信号はXYZ信号であることを特徴とする請求項3に記載の内視鏡システム。
【請求項5】
前記第1の色空間変換手段はマトリクス変換手段、又はガンマ補正手段とマトリクス変換手段の組み合わせからなることを特徴とする請求項3又は請求項4のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項6】
前記第2の色空間変換手段はマトリクス変換手段であることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項7】
前記第3の色空間変換手段は、マトリクス変換手段、又はマトリクス変換手段とガンマ補正手段の組み合わせ、又はルックアップテーブルであることを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項8】
色空間変換処理を行う内視鏡システムにおける画像処理方法であって、
生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、
該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第1の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、
前記第1の色空間変換手段から出力される画像信号を、予め記憶した生体の特性情報及び第2の照明手段の特性情報に基づいて、該第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段と、
予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第3の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする内視鏡システムにおける画像処理方法。
【請求項9】
色空間変換処理を行う内視鏡システムであって、
生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、
該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第1の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、
前記第1の色空間変換手段から出力される画像信号を、予め記憶した第1及び第2の照明手段の特性情報に基づいて、該第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段と、
予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第3の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項10】
前記第1の色空間変換手段及び第2の色空間変換手段により変換された後の画像信号はXYZ信号であることを特徴とする請求項9に記載の内視鏡システム。
【請求項11】
前記第1の色空間変換手段はマトリクス変換手段、又はガンマ補正手段とマトリクス変換手段の組み合わせからなることを特徴とする請求項9又は請求項10のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項12】
前記第2の色空間変換手段はマトリクス変換手段であることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項13】
前記第3の色空間変換手段は、マトリクス変換手段、又はマトリクス変換手段とガンマ補正手段の組み合わせ、又はルックアップテーブルであることを特徴とする請求項9乃至12のいずれかに記載の内視鏡システム。
【請求項14】
色空間変換処理を行う内視鏡システムにおける画像処理方法であって、
生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、
該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第1の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、
前記第1の色空間変換手段から出力される画像信号を、予め記憶した第1及び第2の照明手段の特性情報に基づいて、該第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段と、
予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第3の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする内視鏡システムにおける画像処理方法。
【請求項15】
色空間変換処理を行う内視鏡システムであって、
生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、
該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、
予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項16】
前記第1の色空間変換手段はマトリクス変換手段、又はガンマ補正手段とマトリクス変換手段の組み合わせからなることを特徴とする請求項15に記載の内視鏡システム。
【請求項17】
前記第2の色空間変換手段は、マトリクス変換手段、又はマトリクス変換手段とガンマ補正手段の組み合わせ、又はルックアップテーブルであることを特徴とする請求項15又は16に記載の内視鏡システム。
【請求項18】
色空間変換処理を行う内視鏡システムにおける画像処理方法であって、
生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、
該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段の特性情報及び被写体となる生体の特性情報に基づいて、第2の照明手段環境下におけるデバイスに依存しない色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段と、
予め記憶した表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第2の色空間変換手段とを有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする内視鏡システムにおける画像処理方法。
【請求項19】
色空間変換処理を行う内視鏡システムであって、
生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、
該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段の特性情報、被写体となる生体の特性情報、及び表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、第2の照明手段環境下における該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段を有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする内視鏡システム。
【請求項20】
前記第1の色空間変換手段はマトリクス変換手段、又はガンマ補正手段とマトリクス変換手段の組み合わせからなることを特徴とする請求項19に記載の内視鏡システム。
【請求項21】
色空間変換処理を行う内視鏡システムにおける画像処理方法であって、
生体内部を照明する第1の照明手段と、該第1の照明手段によって照明された部位を撮像する撮像手段と、
該撮像手段から出力される画像信号を、予め記憶した該第1の照明手段、第2の照明手段、撮像手段の特性情報、被写体となる生体の特性情報、及び表示デバイスの色空間の特性情報に基づいて、第2の照明手段環境下における該表示デバイスに依存する色空間の画像信号に変換する第1の色空間変換手段を有し、最終的に第2の照明手段環境下での色を表示デバイスに出力し、前記生体の特性情報は、生体における複数点の分光反射率から算出することを特徴とする内視鏡システムにおける画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−93225(P2008−93225A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−279497(P2006−279497)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】