説明

円筒タンクの横滑り防止装置

【課題】 地震時の水平方向の大きな荷重にも耐えられるようにする。
【解決手段】 平底円筒タンク6の底板6aの下面に、直交する2つの鉛直面方向にそれぞれ沿って配された平板状のシアプレート7を突設する。一方、タンク設置個所となる基礎コンクリート8の上面には、平底円筒タンク6の底板6aよりもやや小さい径で且つシアプレート7の上下寸法よりもやや深い寸法の凹部9を設けて、ドライサンド10を充填する。このドライサンド10にタンク底板6aの下面側に設けたシアプレート7を挿し込んだ状態で、平底円筒タンク6を、基礎コンクリート8及びドライサンド10の上側に載置する。地震等で平底円筒タンク6に作用する大きな水平方向の荷重は、底板6aに突設したシアプレート7よりドライサンド10へ伝えて受けさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平底円筒タンクの横滑りを未然に防止するために用いる円筒タンクの横滑り防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、低温液化ガスのタンクとして広く用いられている二重殻式の円筒タンクは、図4に示す如く、いずれも中空円筒型で平底形状を有する内槽1及び外槽2からなる金属二重殻タンクであり、内槽1に貯蔵するLNGのような低温液化ガス5の吸熱によるガス化を防止するために、内槽1の底板1aと外槽2の底板2aの間には、底部保冷材3を挟持させるようにしてあり、又、内槽1の側板1bと外槽2の側板2bの間、及び、内槽1の屋根1cと外槽2の屋根2cの間には、保冷材4が充填してある(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、上記二重殻式平底円筒タンクの内槽1は、低温液化ガス5が空の状態の常温時と低温液化ガス5の貯蔵による極低温時との温度差で生じる熱膨張と熱収縮を許容できるようにする必要があり、このために、通常は、上記外槽2の底板2aの上面に、内槽1の底板1aの外周縁部に対応する位置に図示しないコンクリートブロックを周方向に配列して設けると共に、該コンクリートブロックの内側にフォームグラス等の底部保冷材3を平らに敷き詰めて、このコンクリートブロックと底部保冷材3の上側に、上記内槽1の底板1aを載置するようにしてある。
【0004】
更に、上記二重殻式円筒タンクの内槽1の外周部には図示しないアンカーが設けてある。
【0005】
又、図示してないが、特に断熱を必要としない液体の貯蔵を行うために広く用いられている一重殻構造の平底円筒タンクは、通常、底板を平らな基礎コンクリート上に直接載置するようにしてある。
【0006】
【特許文献1】特開平9−137627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、上記二重殻式円筒タンクの内槽1の外周部に設けてある図示しないアンカーは、上記内槽1の熱膨張と熱収縮を阻害しないようにするために、単に上記内槽1の浮き上がりを防止するためのものとしてあり、よって、上記内槽1の水平方向の拘束を行うようにはなっていない。
【0008】
したがって、上記二重殻式円筒タンクの内槽1は、該内槽1の底板1aの下面と上記外槽2の底板2aの上側に設けた図示しないコンクリートブロック及び底部保冷材3の上面との間に生じる摩擦力によって水平方向の位置が保持されるようにしてあることから、地震力のような水平方向の荷重に対する抵抗力が小さく、地震力によって作用する水平方向の荷重が、上記内槽1の底板1aの下面と上記外槽2の底板2aの上側に設けた図示しないコンクリートブロック及び底部保冷材3の上面との間に作用する摩擦力を上回るようになると、上記内槽1の横滑りを防ぐことができない。
【0009】
そのために、横滑りの発生によって上記内槽1の底板1a自体に損傷が生じたり、該底板1aの下面側に設けてあるノズル等の付属品に損傷が発生して、上記低温液化ガス5のような内容液の漏洩に繋がる虞が懸念されるというのが実状である。
【0010】
又、一重殻式平底円筒タンクにおいても、その水平方向の位置の保持は、タンク底板の下面と、基礎コンクリートの表面との間の摩擦力に依存しているため、地震力によって作用する水平方向の荷重が、上記タンク底板の下面と基礎コンクリート表面との間に作用すする摩擦力を上回ると、該一重殻式平底円筒タンクの横滑りが生じてしまう虞が懸念される。よって、上記のような横滑りが生じることで、一重殻式平底円筒タンクにおいても、タンク底板自体の損傷や、該底板の下面側に設けてあるノズル等の付属品に損傷が発生することで、内容液の漏洩に繋がる虞が懸念されるというのが実状である。
【0011】
そこで、本発明は、地震力のような水平方向の荷重が作用しても二重殻式円筒タンクの内槽となる平底円筒タンクや、その他、一重殻式の平底円筒タンクの横滑りを未然に防止できるようにするための円筒タンクの横滑り防止装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、円筒タンクの設置個所となる基礎コンクリートの表面に所要の深さ寸法を有する凹部を設けて、該凹部にドライサンドを充填し、且つ円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートを、上記ドライサンドに挿し込んだ状態で上記円筒タンクを上記基礎コンクリート及びドライサンド上に載置してなり、上記円筒タンクに作用する水平方向の荷重を、該円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートより上記ドライサンドへ伝えて受けさせることができるようにした構成とする。
【0013】
又、請求項2に対応して、二重殻式円筒タンクの外槽となる円筒タンクの底板上における二重殻式円筒タンクの内槽となる円筒タンクの底板の外周縁部に対応する位置に、コンクリートブロックを周方向に配列して設けると共に、該コンクリートブロックの内側に、底部保冷材を、上記コンクリートブロックよりも所要寸法高さが低くなるように敷き詰め、更に、上記周方向に配したコンクリートブロックの内側で且つ上記底部保冷材の上側に形成される凹部に、ドライサンドを充填し、上記内槽となる円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートを、上記ドライサンドに挿し込んだ状態で上記内槽となる円筒タンクを上記コンクリートブロック及びドライサンド上に載置してなり、上記内槽となる円筒タンクに作用する水平方向の荷重を、該内槽となる円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートより上記ドライサンドへ伝えて受けさせることができるようにした構成とする。
【0014】
上記各構成において、円筒タンクの底板の下面に突設するシアプレートを、上記円筒タンクの底板と同じ材質とした構成とする。
【0015】
更に、上記各構成において、円筒タンクの底板の下面に、シアプレートを、少なくとも互いに直交する2つの鉛直面に沿わせて配設するようにした構成とする。
【0016】
又、上記構成において、円筒タンクの底板の下面に、シアプレートを、上記円筒タンクの底板の径方向の鉛直面に沿わせて設けるようにした構成とする。
【0017】
更に、上記構成において、円筒タンクの底板の下面に、シアプレートを、上記底板の中心より周方向所要の角度間隔で放射方向に延びる鉛直面に沿う配置で設けるようにした構成とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の円筒タンクの横滑り防止装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)円筒タンクの設置個所となる基礎コンクリートの表面に所要の深さ寸法を有する凹部を設けて、該凹部にドライサンドを充填し、且つ円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートを、上記ドライサンドに挿し込んだ状態で上記円筒タンクを上記基礎コンクリート及びドライサンド上に載置してなり、上記円筒タンクに作用する水平方向の荷重を、該円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートより上記ドライサンドへ伝えて受けさせることができるようにした構成としてあるので、上記円筒タンクに地震力等により水平方向の大きな荷重が作用する場合にも該円筒タンクの横滑りを未然に防止することができる。したがって、タンク底板の損傷や、該タンク底板の下側に設けてあるノズル等の付属品の損傷によって内容液の漏洩が生じる虞を解消することができる。
(2)二重殻式円筒タンクの外槽となる円筒タンクの底板上における二重殻式円筒タンクの内槽となる円筒タンクの底板の外周縁部に対応する位置に、コンクリートブロックを周方向に配列して設けると共に、該コンクリートブロックの内側に、底部保冷材を、上記コンクリートブロックよりも所要寸法高さが低くなるように敷き詰め、更に、上記周方向に配したコンクリートブロックの内側で且つ上記底部保冷材の上側に形成される凹部に、ドライサンドを充填し、上記内槽となる円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートを、上記ドライサンドに挿し込んだ状態で上記内槽となる円筒タンクを上記コンクリートブロック及びドライサンド上に載置してなり、上記内槽となる円筒タンクに作用する水平方向の荷重を、該内槽となる円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートより上記ドライサンドへ伝えて受けさせることができるようにした構成とすることにより、上記二重殻式円筒タンクの内槽となる円筒タンクに地震力等により水平方向の大きな荷重が作用する場合にも該内槽となる円筒タンクの横滑りを未然に防止することができる。したがって、該内槽となるタンクの底板の損傷や、該底板の下側に設けてあるノズル等の付属品の損傷によって内容液の漏洩が生じる虞を解消することができる。
(3)円筒タンクの底板の下面に突設するシアプレートを、上記円筒タンクの底板と同じ材質とした構成とすることにより、上記円筒タンクの底板の熱膨張、熱収縮に追従して上記シアプレートを熱膨張、熱収縮させることができる。
(4)円筒タンクの底板の下面に、シアプレートを、少なくとも互いに直交する2つの鉛直面に沿わせて配設するようにした構成とすることにより水平方向のいかなる方位から荷重が作用する場合にも、円筒タンクの横滑りを防止することが可能になる。
(5)円筒タンクの底板の下面に、シアプレートを、上記円筒タンクの底板の径方向の鉛直面に沿わせて設けるようにした構成とすることにより、上記円筒タンクの底板が径方向に熱膨張、熱収縮するときには、上記シアプレートが、ドライサンド内で該シアプレートの面に沿う方向に変位することで、ほとんど抵抗を受けることがないため、本発明の円筒タンクの横滑り防止装置を装備した状態であっても、上記円筒タンクの熱膨張、熱収縮を阻害する虞を解消できる。
(6)円筒タンクの底板の下面に、シアプレートを、上記底板の中心より周方向所要の角度間隔で放射方向に延びる鉛直面に沿う配置で設けるようにした構成とすることにより、上記円筒タンクの底板の径方向への熱膨張、熱収縮時に、該底板の下面に設けてあるシアプレートが、ドライサンド内で該シアプレートの面に沿う方向に変位するときに生じる抵抗を、上記底板の周方向に均等化させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
【0020】
図1(イ)(ロ)及び図2(イ)(ロ)は本発明の円筒タンクの横滑り防止装置の実施の一形態として、一重殻構造の平底円筒タンク6に適用する場合を示すもので、該一重殻構造を有する平底円筒タンク6における底板6aの下面に、ほぼ直交する2つの鉛直面方向にそれぞれ沿って配された平板状のシアプレート(リブプレート)7を取り付ける。更に、上記平底円筒タンク6の設置個所となる基礎コンクリート8の上面に、上記平底円筒タンク6の底板6aよりもやや小さい径で且つ上記タンク底板6aの下面に取りつけたシアプレート7の上下寸法よりもやや深い寸法の凹部9を設けて、該凹部9にドライサンド(砂状の断熱材)10を充填し、このドライサンド10に上記タンク底板6aの下面側に設けたシアプレート7を挿し込んだ状態で、上記平底円筒タンク6を、上記基礎コンクリート8並びにドライサンド10の上側に載置した構成とする。
【0021】
詳述すると、図1(ロ)に示すように、互いに接合することでタンク底板6aを構築するための鋼板11、たとえば、矩形状の鋼板11の下面に、図2(イ)(ロ)に示す如く、幅方向(図2(イ)では上下方向)の中央部を通る鉛直面に沿って該鋼板11の長手方向(図2(イ)では左右方向)に延びる所要の高さ寸法を有するシアプレート7の上端部を取り付けると共に、上記鋼板11の長手方向両端部の下面における上記鋼板11の長手方向に延びるシアプレート7と干渉しない位置に、該鋼板11の幅方向(図2(イ)における上下方向)に沿う鉛直面内に配したシアプレート7の上端部をそれぞれ取り付けた構成とする。
【0022】
又、上記タンク底板6aの構築時に該タンク底板6aの外周部に配される円弧部を備えた各鋼板11の下面には、それぞれの形状に応じて、上記矩形状の鋼板11に設けたシアプレート7と同様の方向に配されるシアプレート7を適宜取り付けるようにしておくようにすればよい。
【0023】
上記のようにして下面側にシアプレート7を取りつけた各鋼板11は、タンク設置個所となる基礎コンクリート8又はドライサンド10上に、タンク底板6aを構築する際の各鋼板11の配置に応じた位置に搬入して、それぞれ下面側に取り付けてあるシアプレート7を、上記ドライサンド10へ挿し込むようにし、この状態で、上記各鋼板11を溶接等により互いに接合してタンク底板6aを構築するようにしてある。なお、12はアニュラープレートであり、該アニュラープレート12を上記各鋼板11の外周側に接合してタンク底板6aの外周縁部を構築するようにしてある。
【0024】
その後、上記のようにして構築されたタンク底板6aの上側で、タンクの側板6bと屋根(図示せず)を順次組み立てることで、一重殻構造の平底円筒タンク6を構築し、これにより、該平底円筒タンク6を、上記したように、タンク底板6aの下面側に設けた各シアプレート7をドライサンド10に挿し込んだ状態で、上記基礎コンクリート8及びドライサンド10上におけるタンク設置個所に載置した構成となるようにしてある。
【0025】
以上の構成としてある平底円筒タンクの横滑り防止装置によれば、上記タンク底板6aの下面側に設けてあるシアプレート7が、タンク設置個所の基礎コンクリート8に設けた凹部9に充填してあるドライサンド10に差し込まれており、しかも、上記シアプレート7は、直交する2つの鉛直面方向に沿う配置としてあるため、上記タンク底板6aに作用する水平方向の荷重は、いかなる方位から作用する場合であっても、該タンク底板6aの下面側に設けたシアプレート7を、上記基礎コンクリート8の凹部9に充填してあるドライサンド10内で動かそうとするときに生じる抵抗によって受けられるようになる。
【0026】
したがって、上記平底円筒タンク6に地震力等により水平方向の大きな荷重が作用する場合にも、その荷重をタンク底板6aよりシアプレート7とドライサンド10を介して基礎コンクリート8側へ伝えて受けさせることができるようになるため、該平底円筒タンク6の横滑りが防止されるようになる。
【0027】
このように、本発明の円筒タンクの横滑り防止装置によれば、平底円筒タンク6の横滑りを未然に防止できるため、従来、平底円筒タンク6が横滑りすることに起因して生じる虞が懸念されていたタンク底板6aの損傷や、該タンク底板6aの下側に設けてあるノズル等の付属品の損傷によって内容液の漏洩が生じる虞を解消することができる。
【0028】
次に、図3(イ)(ロ)は本発明の実施の他の形態として、平底円筒タンクとしての二重殻式円筒タンクの内槽の横ずれ防止に適用する場合を示すもので、以下のようにしてある。
【0029】
すなわち、基礎コンクリート8上に設置した二重殻式円筒タンクの外槽2の底板2aの上側にて、平底円筒タンクとしての内槽1の底板1aの外周縁部に対応する位置に、コンクリートブロック13を周方向に配列して設け、該コンクリートブロック13の内側に、フォームグラス等の底部保冷材3を、上記コンクリートブロック13よりも所要寸法高さが低くなるように敷き詰め、更に、上記周方向に配したコンクリートブロック13の内側で且つ上記底部保冷材3の上側に形成される凹部に、ドライサンド10を充填する。
【0030】
一方、上記二重殻式円筒タンクの内槽1の底板1aの下面の所要個所に、上記底部保冷材3の上側に充填したドライサンド10の深さ寸法よりもやや低い高さ寸法を有し且つ底板1aの径方向の鉛直面に沿って延びるシアプレート7を突設する。より具体的には、上記シアプレート7は、上記底板1aの下面にて、周方向に所要角度間隔で底板1aの中心より放射方向に延びる鉛直面に沿う配置で取り付けるようにしてある。更に、上記シアプレート7は、上記内槽1の底板1aと同じ材質として、該底板1aの熱膨張、熱収縮に追従して熱膨張、熱収縮できるようにしてある。
【0031】
更に、上記外槽2の底板2a上に設けたコンクリートブロック13及び底部保冷材3の上側に充填したドライサンド10の上側に、上記内槽1を、底板1aの下面側に所定の配置で設けてなるシアプレート7を上記ドライサンド7に挿し込んだ状態で載置した構成とする。
【0032】
なお、上記二重殻式円筒タンクの内槽1は、上記実施の形態の一重殻式円筒タンクと同様に、予め上記所定の配置となるようにそれぞれシアプレート7を下面側に取り付けてある鋼板11を、上記内槽1の設置個所となる上記外槽2の底板2aの上側に配設したコンクリートブロック13並びにドライサンド10の上側に搬入した後、互いに接合することで底板1aを構築し、この構築された底板1aの上側で、内槽1の側壁1bと屋根(図4参照)を順次組み立てることで、上記内槽1を構築するようにすればよい。
【0033】
その他、図4に示したものと同一のものには同一符号が付してある。
【0034】
本実施の形態によれば、内槽1の底板1aの下面に周方向所要の角度間隔で放射方向にシアプレート7が突設してあるため、該底板1aに作用する水平方向の荷重は、いかなる方位から作用する場合であっても、底板1aの下面側に設けたシアプレート7を、上記ドライサンド10内で動かそうとするときに生じる抵抗によって受けられるようになる。
【0035】
したがって、上記二重殻式円筒タンクの内槽1に地震力等により水平方向の大きな荷重が作用する場合にも、該内槽1の横滑りが防止されるようになる。よって、上記内槽1の横滑りを未然に防止できるため、従来、内槽1が横滑りすることに起因して生じる虞が懸念されていた上記内槽1の底板1aの損傷や、該底板1aの下側に設けてあるノズル等の付属品が損傷することを防止できて、内容液の漏洩が生じる虞を解消することができる。
【0036】
しかも、上記シアプレート7は、内槽1の底板1aの下面に、周方向所要の角度間隔で放射方向に沿わせて設けてあるため、上記内槽1の底板1aが、常温の状態と、内槽1内に貯留する低温液化ガス等の内容液の冷熱により極低温に冷却される状態との間で径方向に熱膨張、熱収縮を生じるときには、この内槽1の底板1aの下面に取り付けてある上記シアプレート7が、上記ドライサンド10内にて、該シアプレート7の面に沿う方向に変位するようになるため、ほとんど抵抗を受けることはない。
【0037】
よって、本実施の形態の円筒タンクの横滑り防止装置を装備した状態であっても、上記内槽1の熱膨張、熱収縮を阻害することはない。
【0038】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、図1(イ)(ロ)及び図2(イ)(ロ)の実施の形態では、平底円筒タンク6のタンク底板6aの下面に設けるシアプレート7を、すべて同一の高さ寸法のものとして示したが、シアプレートの高さ寸法に変化を設けるようにしてもよい。このようにすれば、各シアプレート7からの荷重を受けるドライサンド10の深さが不均一になるため、該各シアプレート7がその両側面に接しているドライサンド10と一緒に動く虞を低減できて、平底円筒タンク6の横滑り防止効果を高めることが可能になる。シアプレート7の高さ寸法や幅寸法、及び、シアプレート7の枚数は、地震時に平底円筒タンク6に作用すると推定される水平方向荷重の大きさに応じて適宜変更してもよい。シアプレート7は、少なくともほぼ直交する2つの鉛直面に沿うように配置してタンク底板6aの下面に取り付けるようにしてあれば、たとえば、タンク底板6aを構築するための矩形状の各鋼板11の下面に、十字状やX字状に設ける等、配置は適宜変更してもよい。
【0039】
図3(イ)(ロ)の実施の形態では、平底円筒タンクとしての内槽1の底板1aの下面に設けるシアプレート7は、上記底板1aの径方向への熱膨張、熱収縮時に、該底板1aの下面に設けてあるシアプレート7が、ドライサンド10内で該シアプレート7の面に沿う方向に変位するようになるときの抵抗を、底板1aの周方向に均等化する観点からすると、上記底板1aの下面に、シアプレート7を、周方向に所要角度間隔で底板1aの中心より放射方向に延びる鉛直面に沿う配置で設ける構成とすることが望ましいが、個々のシアプレート7が、上記内槽1の底板1aの径方向に沿う鉛直面内に配置されていれば、周方向所要角度間隔位置以外の位置にシアプレート7を取り付けるようにしてもよい。シアプレート7の高さ寸法や幅寸法、及び、シアプレート7の枚数は、地震時に上記二重殻式円筒タンクの内槽1に作用すると推定される水平方向荷重の大きさに応じて適宜変更してもよい。
【0040】
平底円筒タンクの底板1a,6aは、矩形の鋼板11を接合して構築する以外の構成としてあってもよいこと、その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の円筒タンクの横滑り防止装置の実施の一形態の概要を示すもので、(イ)は平底円筒タンクの底部外周部分を示す概略切断側面図、(ロ)は平底円筒タンクのタンク底板を下面側から見た図である。
【図2】図1の装置におけるタンク底板を構築する鋼板を拡大して示すもので(イ)は平面図、(ロ)は側面図である。
【図3】本発明の実施の他の形態として二重殻式円筒タンクの内槽に適用した場合を示すもので、(イ)は二重殻式円筒タンクの底部外周部分の概略切断側面図、(ロ)は二重殻式円筒タンクの内槽の底板を下面側から見た図である。
【図4】従来の二重殻式円筒タンクの概要を示す切断側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 内槽(円筒タンク)
1a 底板
2 外槽(円筒タンク)
2a 底板
3 底部保冷材
6 平底円筒タンク(円筒タンク)
6a 底板
7 シアプレート
8 基礎コンクリート
9 凹部
10 ドライサンド
13 コンクリートブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒タンクの設置個所となる基礎コンクリートの表面に所要の深さ寸法を有する凹部を設けて、該凹部にドライサンドを充填し、且つ円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートを、上記ドライサンドに挿し込んだ状態で上記円筒タンクを上記基礎コンクリート及びドライサンド上に載置してなり、上記円筒タンクに作用する水平方向の荷重を、該円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートより上記ドライサンドへ伝えて受けさせることができるようにした構成を有することを特徴とする円筒タンクの横滑り防止装置。
【請求項2】
二重殻式円筒タンクの外槽となる円筒タンクの底板上における二重殻式円筒タンクの内槽となる円筒タンクの底板の外周縁部に対応する位置に、コンクリートブロックを周方向に配列して設けると共に、該コンクリートブロックの内側に、底部保冷材を、上記コンクリートブロックよりも所要寸法高さが低くなるように敷き詰め、更に、上記周方向に配したコンクリートブロックの内側で且つ上記底部保冷材の上側に形成される凹部に、ドライサンドを充填し、上記内槽となる円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートを、上記ドライサンドに挿し込んだ状態で上記内槽となる円筒タンクを上記コンクリートブロック及びドライサンド上に載置してなり、上記内槽となる円筒タンクに作用する水平方向の荷重を、該内槽となる円筒タンクの底板の下面に突設したシアプレートより上記ドライサンドへ伝えて受けさせることができるようにした構成を有することを特徴とする円筒タンクの横滑り防止装置。
【請求項3】
円筒タンクの底板の下面に突設するシアプレートを、上記円筒タンクの底板と同じ材質とした請求項1又は2記載の円筒タンクの横滑り防止装置。
【請求項4】
円筒タンクの底板の下面に、シアプレートを、少なくとも互いに直交する2つの鉛直面に沿わせて配設するようにした請求項1、2又は3記載の円筒タンクの横滑り防止装置。
【請求項5】
円筒タンクの底板の下面に、シアプレートを、上記円筒タンクの底板の径方向の鉛直面に沿わせて設けるようにした請求項1、2又は3記載の円筒タンクの横滑り防止装置。
【請求項6】
円筒タンクの底板の下面に、シアプレートを、上記底板の中心より周方向所要の角度間隔で放射方向に延びる鉛直面に沿う配置で設けるようにした請求項5記載の円筒タンクの横滑り防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−202889(P2009−202889A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−45125(P2008−45125)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】