説明

円筒体の測定方法

【課題】円筒体形状の寸法測定、特には円周形状の測定において測定にかかる負荷が少なく、個々の測定値が正確、かつ測定ポイント数を効率的に低減する測定方法の提供。
【解決手段】本発明は、円筒体の軸に対して直交する断面の円の形状の測定方法において、該断面円内に設定した、被測定円筒の回転軸と断面円が交わる点である基準点に対する該断面円の円周上の3つの所定の点までの距離の該円筒の回転による変化に基づいて、該基準点と該円周との間の距離を算出して該断面円の形状を特定する工程を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は円筒の軸に直交する方向の断面円の形状、及び円筒形状の測定方法並びにこれに用いる測定方法に関する。特に、本発明は精度の良い円筒部材を得る手段として円筒部材の外表面を切削加工した際の精度測定に寄与する技術に関する。本発明で得られた測定技術の適用範囲は多岐にわたるが、本発明者らは、特に電子写真方式の複写機やレーザービームプリンター、同ファクシミリ、又は印刷装置の画像形成部材、又はその基体の測定に本発明を適応し、その効果を確認した。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真方式の複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、印刷機等の画像形成装置における電子写真感光ドラムや現像スリーブは、形状寸法が所定の精度に仕上げられた円筒部材を用いる。電子写真感光ドラムは所定の精度に仕上げられたドラム基体の表面に感光膜を施すことによって製造される。しかしながら該ドラム基体の寸法精度が低いと感光膜に凹凸が生じ、このために画像形成装置の画像に欠陥が生じるという問題がある。従って、精度の高い画像形成装置を得るためには、該ドラム基体の円筒度および真円度等に高い精度が求められる。
【0003】
さらに、こうしたドラム基体を製造する工程においても、その寸法精度を保証することを目的とした高精度な測定機能が必要であり、それを目的とした方法として、以下の従来技術が知られている。回転可能な基台に被測定円筒(測定対象の円筒。以下同じ。)を立ててこれを回転させながら、表面形状を帯状レーザーその他の測定手段によって測定する方法(例えば、特許文献1参照)。被測定円筒の両端を何らかの把持具にて把持して回転させ、帯状レーザーをさえぎる寸法を測定して円筒形状を測定する方法(例えば、特許文献2参照)。回転軸を固定することなく被測定円筒を回転させ、被測定円筒の外周部に臨む変位検出器から得た測定値を近似算出させて測定する方法(例えば、特許文献3参照)等。しかしながら、近年ではこうした画像形成装置の高画質化への要求に加えて、製造コストの低減を目的とした、より簡便な測定方式が不可欠となってきている。さらに、円筒形状の測定方法を工業的な製品評価としてのニーズに則して言及すれば、評価するべき項目をその円筒としての寸法精度と表面の部分的な形状欠陥に切り分け、それぞれの目的に合った測定手段を用いるべきである。ここで寸法精度の測定においては、円筒の円周形状、特には本発明で対象とするようなもともと高い精度レベルを有することを前提とする円筒の円周形状の寸法精度を測定する分野においては、個々の測定値が極めて正確であれば、測定ポイント数は比較的少数であっても十分な評価とすることが可能である。したがって、工業的には測定ポイント数を可能な限り削減して処理時間の短縮を図ることが好ましい。一方、円筒表面の部分的な形状欠陥を評価するにあたって測定ポイント数を増やしても、ヘアライン状の傷欠陥等の微細な欠陥を全て評価するには困難であり、この点においても測定ポイント数を増加させることは好ましくない。したがって、それに代わる画像処理その他の表面欠陥の分析等による評価手段を用いるべきである。すなわち、工業的な製品評価として円筒の円周形状の寸法精度測定を行うに際して、測定効率を追求する観点から、測定にかかる負荷が少なく、個々の測定値が正確であって、かつ測定ポイント数を最小限に抑えることが最も好ましいと言える。この点において、従来の、回転可能な基台に被測定円筒を立ててこれを回転させながら表面形状を帯状レーザーその他の測定手段によって測定する方法(例えば、特許文献1参照)では、非常に高精度な測定値を得ることが可能である反面、測定にあたり基台上の被測定円筒を精密に心出しする等の準備作業が必要で、測定時間と負荷の削減が容易ではない。また被測定円筒の両端を何らかの把持具で把持して回転させ、帯状レーザーをさえぎる寸法を測定して円筒形状を測定する方法(例えば、特許文献2参照)では、比較的簡便な測定が可能である反面、円筒の肉厚の偏りが測定値に影響を及ぼしたり、両端の把持具の勘合隙間寸法や、把持力による端部変形、あるいは被測定円筒を回転させる時点で発生する軸の振れ等が測定誤差を生じたりする原因になり易い。また、回転軸を固定することなく被測定円筒を回転させ、被測定円筒の外周部に臨む変位検出器から得た測定値を近似算出させて測定する方法(例えば、特許文献3参照)では、簡便かつ測定にかかる機器精度の測定結果におよぼす影響を抑制できる反面、測定結果が近似算出値であることから測定ポイント数と近似計算の次数を増加させることによって個々の測定値の正確性を向上させるという特徴を有しており、その測定ポイント数は少なくとも64点、または100点以上が必要とされている。従ってこの方法では測定ポイント数の削減があまり望めず、比較的長い測定時間を要してしまう。
【0004】
このように従来技術においては、測定効率の観点から、測定にかかる負荷を最少にし、個々の測定値が正確であり、かつ測定ポイント数を最小限に抑えることを可能とした、工業的な製品評価としての円筒の円周形状の寸法精度測定方法を提供するにいたっていない。
【0005】
【特許文献1】特開平06−201375号公報
【特許文献2】特開平08−005341号公報
【特許文献3】特開平06−147879号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、こうした問題に鑑み、円筒形状の寸法測定、特には円周形状の測定において測定にかかる負荷が少なく、個々の測定値が正確であり、かつ測定ポイント数を効率的に低減することを主たる目的として成された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち本発明の第一の態様によれば、円筒の軸に対して直交する断面の円の形状の測定方法であって、該断面円内に設定した、被測定円筒の回転軸と断面円が交わる点である基準点に対する該断面円の円周上の3つの所定の点までの距離の該円筒の回転による変化に基づいて、該基準点と該円周との間の距離を算出して該断面円の形状を特定する工程を有することを特徴とする円筒の軸に対して直交する断面の円の形状測定方法が提供される。
【0008】
具体的には、下記(a)および(b)を備えた測定手段を用いる、被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法であって、下記工程(i)から(v)を含むことを特徴とする被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法である:
〈測定手段〉
(a) 円筒受け治具、
(b) 前記断面円を含む断面上に位置し、前記軸と前記断面円との交点である測定基準点(O)に向けられ、前記Oおよび第1センサーを結ぶ線と前記Oおよび第2センサーを結ぶ線との挟角ならびに前記Oおよび第2センサーを結ぶ線と前記Oおよび第3センサーを結ぶ線との挟角がともにθ°になるように配置・固定された、変位を検出するための第1センサー、第2センサーおよび第3センサーを取り付けた台、
〈工程〉
(i) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔL1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔL2)、ならびに、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔL3)をそれぞれ測定する工程、
(ii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L2)、ならびに、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L3)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
L1=LS1−ΔL1
L2=LS2−ΔL2
L3=LS3−ΔL3
(ここで、LS1は前記第1センサーから前記Oまでの距離であり、LS2は前記第2センサーから前記Oまでの距離であり、LS3は前記第3センサーから前記Oまでの距離である)、
(iii) 前記被測定円筒を第1センサーから第2センサーの方向へθ°回転させ、工程(i)および(ii)を繰り返す工程、
(iv) 工程(iii)の回転前には前記Oに一致していた前記被測定円筒の前記断面円上の点である浮動点O’から前記Oを通り前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線までの距離(ΔO1)を、工程(ii)で得られたL1およびL2ならびに工程(iii)で得られたL2およびL3を用いて算出する工程、
(v) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を、工程(iii)で得られたL1ならびに工程(iv)で得られたΔO1を用いて算出する工程。
【0009】
従来の測定方法の殆どが、より高い測定精度を得ることを目的として、測定基準位置として円筒中心の機械的限定の正確さを追求することに負荷を要しているのに対し、本発明で提供する方法では、この円筒中心が回転によって移動してしまうような仮想中心すなわち浮動点(浮動中心)であることを前提として捉えている。よって、本発明の測定方法は、測定基準位置としての円筒中心を機械的に限定することなく、測定に従って順次測定子より得られる数値の変遷を元にこの浮動点の位置を被測定円筒が一刻み毎に回転するたびに追跡して理論的に捕捉、限定することを主たる特徴とする。従って本発明の測定方法によれば、前記した円筒中心、すなわち測定基準位置を正確に限定する必要が無いことから、このような一切の負荷を伴うことなく簡便に、かつ高い精度を伴って円筒の円周形状を測定することが可能である。
【0010】
加えて、本発明で提供する方法では、各測定値は近似算出されること無く直接計測された測定結果を得ることが可能であることから、各測定値は測定ポイント数に影響されることが無い。これにより前述の、本発明で対象とするようなもともと高い精度レベルを有することを前提とする円筒の円周形状(寸法精度)を測定するにあたっての測定ポイント数は必要最小限な数で製品の精度保証に必要な測定を行うことが可能である。したがって、本発明は工業的な製品評価として円筒の精度測定を行うにあたり、測定効率を追求する観点から極めて理想的であるといえる。
【0011】
また、本発明の第二の態様によれば、下記(a)および(b)を備えた測定手段を用いる、被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法であって、下記工程(i)から(v)を含むことを特徴とする被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法が提供される:
〈測定手段〉
(a) 円筒受け治具、
(b) 前記断面円を含む断面上に位置し、前記軸と前記断面円との交点である測定基準点(O)に向けられ、前記Oおよび第1センサーを結ぶ線と前記Oおよび第2センサーを結ぶ線との挟角ならびに前記Oおよび第3センサーを結ぶ線と前記Oおよび第4センサーを結ぶ線との挟角がともにθ°になるように配置・固定された、変位を検出するための第1センサー、第2センサー、第3センサーおよび第4センサーを取り付けた台、
〈工程〉
(i) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔL1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔL2)、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔL3)、ならびに、前記Oおよび前記第4センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第4センサーまでの距離(ΔL4)をそれぞれ測定する工程、
(ii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L2)、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L3)、ならびに、前記Oおよび前記第4センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L4)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
L1=LS1−ΔL1
L2=LS2−ΔL2
L3=LS3−ΔL3
L4=LS4−ΔL4
(ここで、LS1は前記第1センサーから前記Oまでの距離であり、LS2は前記第2センサーから前記Oまでの距離であり、LS3は前記第3センサーから前記Oまでの距離であり、LS4は前記第4センサーから前記Oまでの距離である)、
(iii) 前記被測定円筒を第1センサーから第2センサーの方向へθ°回転させ、工程(i)および(ii)を繰り返す工程、
(iv) 工程(iii)の回転前には前記Oに一致していた前記被測定円筒の前記断面円上の点である浮動点O’から前記Oを通り前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線までの距離(ΔO1)を、工程(ii)で得られたL1およびL3ならびに工程(iii)で得られたL2およびL4を用いて算出する工程、
(v) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を、工程(iii)で得られたL1ならびに工程(iv)で得られたΔO1を用いて算出する工程。
【0012】
また、本発明者等は、本発明の第三の態様として、前述の測定基準位置を限定しないことに加えて、測定子の被測定円筒に対する位置決めについても高い正確さを必要とせず、前記の軸に対して直交する断面円の形状が真円形状である被測定円筒とは別の円筒体を用いることによって、測定子の被測定円筒に対する位置関係と、測定子同士の位置関係が共に正確であったのと同等の測定を行うことができることを見出した。
【0013】
具体的には、下記(a)および(b)を備えた測定手段ならびに軸に直交する断面円として半径が既知の真円状断面円を有する参照円筒を用いる、被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法であって、下記工程(i)から(vii)を含むことを特徴とする被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法である:
〈測定手段〉
(a) 円筒受け治具、
(b) 前記参照円筒の前記真円状断面円を含む断面上に位置し、前記参照円筒の軸と前記真円状断面円との交点である測定基準点(O)に向けられ、前記Oおよび第1センサーを結ぶ線と前記Oおよび第2センサーを結ぶ線との挟角ならびに前記Oおよび第2センサーを結ぶ線と前記Oおよび第3センサーを結ぶ線との挟角がともにθ°になるように配置・固定された、変位を検出するための第1センサー、第2センサーおよび第3センサーを取り付けた台、
〈工程〉
(i) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔLR1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔLR2)、ならびに、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔLR3)をそれぞれ測定する工程、
(ii) 前記第1センサーから前記Oまでの距離(LS1)、前記第2センサーから前記Oまでの距離(LS2)、ならびに、前記第3センサーから前記Oまでの距離(LS3)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
LS1=d2+ΔLR1
LS2=d2+ΔLR2
LS3=d2+ΔLR3
(ここで、d2は前記参照円筒の前記真円状断面円の半径である)、
(iii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔL1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔL2)、ならびに、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔL3)をそれぞれ測定する工程、
(iv) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L2)、ならびに、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L3)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
L1=LS1−ΔL1
L2=LS2−ΔL2
L3=LS3−ΔL3
(v) 前記被測定円筒を第1センサーから第2センサーの方向へθ°回転させ、工程(iii)および(iv)を繰り返す工程、
(vi) 工程(v)の回転前には前記Oに一致していた前記被測定円筒の前記断面円上の点である浮動点O’から前記Oを通り前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線までの距離(ΔO1)を、工程(iv)で得られたL1およびL2ならびに工程(v)で得られたL2およびL3を用いて算出する工程、
(vii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を、工程(v)で得られたL1ならびに工程(vi)で得られたΔO1を用いて算出する工程。
【0014】
また、本発明の第四の態様によれば、下記(a)および(b)を備えた測定手段ならびに軸に直交する断面円として半径が既知の真円状断面円を有する参照円筒を用いる、被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法であって、下記工程(i)から(vii)を含むことを特徴とする被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法が提供される:
〈測定手段〉
(a) 円筒受け治具、
(b) 前記参照円筒の前記真円状断面円を含む断面上に位置し、前記参照円筒の軸と前記真円状断面円との交点である測定基準点(O)に向けられ、前記Oおよび第1センサーを結ぶ線と前記Oおよび第2センサーを結ぶ線との挟角ならびに前記Oおよび第3センサーを結ぶ線と前記Oおよび第4センサーを結ぶ線との挟角がともにθ°になるように配置・固定された、変位を検出するための第1センサー、第2センサー、第3センサーおよび第4センサーを取り付けた台、
〈工程〉
(i) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔLR1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔLR2)、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔLR3)、ならびに、前記Oおよび前記第4センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第4センサーまでの距離(ΔLR4)をそれぞれ測定する工程、
(ii) 前記第1センサーから前記Oまでの距離(LS1)、前記第2センサーから前記Oまでの距離(LS2)、前記第3センサーから前記Oまでの距離(LS3)、ならびに、前記第4センサーから前記Oまでの距離(LS4)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
LS1=d2+ΔLR1
LS2=d2+ΔLR2
LS3=d2+ΔLR3
LS4=d2+ΔLR4
(ここで、d2は前記参照円筒の前記真円状断面円の半径である)、
(iii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔL1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔL2)、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔL3)、ならびに、前記Oおよび前記第4センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第4センサーまでの距離(ΔL4)をそれぞれ測定する工程、
(iv) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L2)、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L3)、ならびに、前記Oおよび前記第4センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L4)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
L1=LS1−ΔL1
L2=LS2−ΔL2
L3=LS3−ΔL3
L4=LS4−ΔL4
(v) 前記被測定円筒を第1センサーから第2センサーの方向へθ°回転させ、工程(iii)および(iv)を繰り返す工程、
(vi) 工程(v)の回転前には前記Oに一致していた前記被測定円筒の前記断面円上の点である浮動点O’から前記Oを通り前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線までの距離(ΔO1)を、工程(iv)で得られたL1およびL3ならびに工程(v)で得られたL2およびL4を用いて算出する工程、
(vii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を、工程(v)で得られたL1ならびに工程(vi)で得られたΔO1を用いて算出する工程。
【0015】
また、本発明の第五の態様によれば、下記工程(vi)をさらに有する、本発明の前記第一の態様に記載の被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法が提供される:
(vi) 前記工程(i)から(v)までを1回以上繰り返し、前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記工程(iii)の回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を得る工程。
【0016】
また、本発明の第六の態様によれば、下記工程(vi)をさらに有する、本発明の前記第二の態様に記載の被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法が提供される:
(vi) 前記工程(i)から(v)までを1回以上繰り返し、前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記工程(iii)の回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を得る工程。
【0017】
また、本発明の第七の態様によれば、下記工程(viii)をさらに有する、本発明の前記第三の態様に記載の被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法が提供される:
(viii) 前記工程(iii)から(vii)までを1回以上繰り返し、前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記工程(v)の回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を得る工程。
【0018】
また、本発明の第八の態様によれば、下記工程(viii)をさらに有する、本発明の前記第四の態様に記載の被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法が提供される:
(viii) 前記工程(iii)から(vii)までを1回以上繰り返し、前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記工程(v)の回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を得る工程。
【0019】
また、本発明の第九の態様によれば、被測定円筒の軸に直交する複数の断面円の形状を測定することによって被測定円筒の円筒形状を測定する方法において、
複数の断面円の形状の測定を、本発明の前記第一乃至第八の態様のいずれかに記載の方法によって行うことを特徴とする被測定円筒の円筒形状の測定方法が提供される。
【0020】
なお、上記の「断面円の円周形状を算出」とは、例えば、最小自乗法により該断面円の円中心位置を求めたり、真円度を求めたりすることを意味する。
【0021】
また、本明細書中で述べる距離のうち、センサーによって測定する距離や、センサーの位置を示す距離のような、センサーを伴なって述べる距離は、全てセンサーの測定機能上の基準位置をもとにして述べることとする。その距離の一例としては、電気式マイクロメーターに代表されるような触芯式のセンサーでは図26にて、或いは渦電流式センサーに代表されるような非接触のセンサーでは図27にて、それぞれの図中に矢印で示すような、センサーを構成する部材のうち測定対象物の変位によって動作しない部分から対象物までの距離である。
【0022】
従来の測定方法の殆どが、より高い測定精度を得ることを目的として、測定基準位置として円筒中心の機械的限定の正確さを追求することに負荷を要するのに対し、本発明で提供する方法では、この円筒中心を仮想中心すなわち回転により移動してもよい中心として捉えている。すなわち、図1に例示するように浮動点の始点を基準点として表せば、円筒を所定角度(θ°)で回転させると浮動点は始点から移動し、さらに再度回転させると浮動点は更に移動し、順次回転させ、最終的に360度の円筒の回転により、浮動点は図示するような軌跡をとることとなる。よって、本発明の測定方法は、測定基準位置としての円筒中心を機械的に限定することなく、測定に従って順次測定子より得られる数値の変遷を元にこの浮動点の位置を測定円筒が一刻み毎に回転するたびに追跡して理論的に捕捉し、該浮動点と測定対象たる円の円周上の点との距離を算出することにより、該測定対象たる円の形状を特定することができる。したがって本発明の方法によれば、前記の円筒中心、すなわち測定基準位置を正確に限定する必要が無く、かかる一切の負荷を伴うことなく簡便に、かつ高い精度を伴って円筒を測定することが可能である。加えて、本発明で提供する方法では被測定円筒の測定にあたって回転させる方法が限定されず、両端部を開放させたまま、或いはフランジ等の部品を装着した状態での測定が可能であることから、本発明の測定方法を用いた測定機構を生産ライン中に搭載しても搬送手段との干渉などの問題が発生せず、非常に簡便かつ高精度な測定が可能である。
【0023】
なお、本明細書において使用する、「回転軸」、「円筒の軸」、およびそれらと交わる「点」は、例えば数学的に用いるような太さを持たない直線や面積をもたない点を指すのではなく、例えば図2に示すように、被測定円筒1は自身の外周面を基準として回転させた場合、少なくとも被測定円筒が真円筒でないか、或いはコロ6に当接する外周面が真円形状でない限り、回転軸や点は、ある範囲を持っている。
【0024】
以下にその範囲を示す数値について説明する。回転軸の範囲は、測定される断面円の最小自乗中心を中心として、ΔLを半径とする円を範囲として示したとき、好ましくは、下記式且つΔL´<d・10-3を満たし、さらに好ましくは、下記式且つΔL´<d・10-4を満たし、最も好ましくは、下記式且つΔL´<d・10-5を満たす。
【数1】

d:測定される断面円の平均半径値
T :被測定円筒の円筒度
【0025】
例えば、最も好ましい場合の回転軸の範囲は、d=50.00mmかつT=0.05mmとした場合には、ΔL´<0.0005mm、ΔL<0.274mmとなり、計算による回転軸の範囲はφ0.548mmとなる。
【0026】
またΔLの現実性として、このような精度でのセンサーの位置決めは、現代の機械加工技術の水準(当業界での一般的な限界は、d=50mmのときΔL≒0.002mm程度である。)からすれば、なんら問題なく可能な範囲でもある。
【0027】
また、前記円筒2が備える真円形状の断面円に関して、その真円度は0であることが最も好ましいが、工業的にそのような断面を形成することは不可能である。これについて、本発明の測定方法の測定結果における分解能を前提にすると真円度の範囲は、好ましくは円周の平均直径に対して2×10−3%であり、さらに好ましくは1×10−3%である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下の説明は本発明で用いる方法の一実施形態であって、同様の効果は他の形態においても得られることは当業者であれば容易に理解されよう。
【0029】
本実施態様に係る円筒の断面円の形状測定に用いる装置の一例を図2に示す。当該測定装置は、被測定円筒1を回転可能な円筒受け治具(コロ6)上に載置し、ガイドレール4及びボールねじ5によって被測定円筒1の回転軸に平行に往復可能に取り付けた取り付け台2に、被測定円筒1の回転軸と直角を成す同一断面上に位置し、被測定円筒1の回転軸と、該回転軸と直角を成す断面とが交わる点である測定基準点Oに向けられ、かつ測定基準点Oを中心として互いに所定の角度(θ°)を挟んで扇状に配置して取り付け台2に固定された3個の変位を検出するためのセンサーS1、S2及びS3を有する。3つの変位を検出するためのセンサーS1、S2及びS3と2つのコロ6の回転中心は、同一の機械に固定されており、互いの位置は常に変化しない。
【0030】
また、測定基準点O0は前記3つのセンサ−の検知軸が互いにほぼ交わる点で、機械基準に準じて常に移動しない測定基準位置であると同時に、測定に従って真円ではない被測定円筒1がコロ6上を回転するにつれて移動する仮想中心すなわち浮動点Oの始点(以降On=0と記す)である。浮動点Oの位置は被測定円筒1における被測定円が真円形状でない限り、被測定円筒1が測定に伴って回転するに従って順次移動するが、Oと円周上の各点との間の距離は常に変化しない。
【0031】
次に、当該円筒の、軸と直交する断面の円の形状の測定方法について述べる。ここでは、被測定円筒1の1測定あたりの回転角度θ°を30°とした。従って円周上の測定点は図3に示す通り1から12の12点となる。そして本測定方法では、先ず浮動点の始点(On=0)と被測定円筒における被測定円の円周上の2との距離を測定し、最終には、各点1から12との距離を算出することになる。
【0032】
第一段階として、変位を検出するためのセンサーS1、S2及びS3を用いることで、O(On=0)と被測定円の円周上の点1、12及び11との間の距離L1、L12及びL11を測定する。
【0033】
第二段階として、円筒を右方向に30°回転させると、第一段階での円周上の測定点1、12及び11は、図4に示すように、各々1、12、11に移動し、また変位を検出するためのセンサーS1、S2及びS3は、各々円周上の点2、1及び12と測定基準点Oとの距離を測定可能となる。このとき、浮動点On=0が、被測定円の真の中心と一致していないまたは被測定円が真円形状でないことを前提として、OはOn=1に移動する。この時点では、浮動点On=0と円周上の点2との距離は不明である。次いで、変位を検出するためのセンサーS1、S2及びS3を用いて、各々円周上の点2、1及び12と測定基準点Oとの距離L2、L1及びL12を測定する。
【0034】
ここで、回転による各距離の変化から浮動点Oの現在位置On=1の位置を求める。L1、L12は既知であることから、変位を検出するためのセンサーS2及びS3の各検知軸上におけるOn=0からOn=1への移動距離ΔL1、ΔL12が求まる。
ΔL1=L1−L1・・・(1)
ΔL12=L12−L12・・・(2)
【0035】
以降、この2つの距離を用いて変位を検出するためのセンサーS1の検知軸上での浮動点On=1の移動距離ΔL2を求める。そして、L2とΔL2の差をとることで、浮動点On=0と円周上の点2との距離が求まる。即ち、図5に示すようにΔL1をaとし、変位を検出するためのセンサーS1の検知軸と浮動点On=1の最短距離すなわち変位を検出するためのセンサーS1の検知軸をy軸とする直交座標で表すところの浮動点On=1のx軸成分での移動距離をbとし、aとbをそれぞれ図5に示すr及びr’を用いて表せば、
r’・sinθ+r=a・・・(3)
r’+r・sinθ=b・・・(4)
r’=(b−a・sinθ)/(cosθ)・・・(5)
r=a−sinθ・[(b−a・sinθ)/(cosθ)]・・・(6)
更に、図5より、
ΔL2=r・cosθであることから、
ΔL2=a・cosθ−tanθ(b−a・sinθ)・・・(7)
ここで、図6より、
ΔL12−b・sin(θ+θ)=ΔL2・cos(θ+θ)・・・(8)
ΔL2=[ΔL12−b・sin(θ+θ)]/[cos(θ+θ)]・・・(9)
a・cosθ−tanθ・(b−a・sinθ)=[ΔL12−b・sin(θ+θ)]/[cos(θ+θ)]・・・(10)
b=[a(cosθ+sinθ・tanθ)・cos(θ+θ)−ΔL12]/[tanθ・cos(θ+θ)−sin(θ+θ)]・・・(11)
従って、ΔL2は、以下の2つの式に含まれる引数、すなわち変位を検出するためのセンサーの互いの挟角と測定値によって求めることが可能である。
【0036】
上記式(7)より、
ΔL2=ΔL1・cosθ−tanθ(b−ΔL1・sinθ)・・・(12)
b=[ΔL1・(cosθ+sinθ・tanθ)・cos(θ+θ)−ΔL1
]/[tanθ・cos(θ+θ)−sin(θ+θ)]・・・(13)
上記式(12)及び(13)を用いて求められたΔL2から、
L2=L2−ΔL2として、L2を得る。
【0037】
第三段階として、更に被測定円筒を右方向に30°回転させる。すると、上記第二段階に於ける円周上の測定点2、1、12は、各々2、1、12に移動し、また変位を検出するためのセンサーS1、S2、S3は、各々円周上の点3、2及び1と測定基準点Oとの距離を測定可能となる。また浮動点On=1は、更にOn=2に移動する。次いで、変位を検出するためのセンサーS1〜S3を用いて、各々円周上の点3、2及び1とOとの間の距離を測定する。これらの測定値を用いて、上記と同様の方法にて浮動点On=2のOn=0からの移動距離を算出し、更にその計算結果を用いて、変位を検出するためのセンサーS1の測定軸(y軸)上におけるOn=2のOn=0からの移動距離(ΔL3)を求め、そこから浮動点On=0と円周上の点3との距離を求める。以降、同様に円筒を30°ずつ回転させ、浮動点On=0と円周上の点4、5、6、7、8、9及び10各々との距離L4、L5、L6、L7、L8、L9及びL10を求める。このとき、L11、L12、についても同様な方法を用いて算出すれば、より高い精度の測定結果を得ることができる。
【0038】
また、本発明で提供する別の方法では、前記の軸に対して直交する断面円の形状が真円形状である被測定円筒とは別の円筒体を用いることによって、測定子の被測定円筒に対する位置関係と、測定子同士の位置関係が共に正確であったのと同等の測定を行うことができる。
【0039】
先ず、図7に示すように、断面形状が真円形状である参照円筒としての円筒2を用いて、該円筒2の断面の円中心を前記測定基準点On=0としてセンサ−S1、S2、S3からOn=0までの距離を限定する。これに際して、先ず、円筒2を前記2つのコロ6上に載置して、センサ−S1から前記円筒2の外表面までの距離を測定し、ΔS1とする。円筒2は外径値が既知であることから、その半径値、すなわち円中心On=0から円筒2の外表面までの距離をd2とすれば、センサ−S1からOn=0までの距離LS1は以下の式A:
LS1 = ΔS1 + d2
として得られる。同様に、センサ−S2及びS3についてもLS2及びLS3を求める。
【0040】
このとき、センサ−S1、S2、S3のいずれの検知軸も前記測定基準位置On=0を通過することなく、かつ3つの検知軸が互いに1点で交わっていないとき、この検知軸に対する測定基準位置On=0の位置のズレは前記LS1、LS2,LS3の値に誤差を生じる。しかしながらその誤差は極めて小さく、これについてLS1を例として図8を用いて述べる。円筒2の断面円の円中心である測定基準位置On=0とセンサ−S1の検知軸までの最小距離、すなわちセンサ−S1の、検知軸に直交する方向での位置決め誤差距離をΔL、該検知軸と平行かつ測定基準位置On=0を通過する軸が円周と交わる点と測定基準位置On=0との距離、すなわち円筒2断面の半径距離をd2とすれば、LS1に与える誤差ΔL’は以下の式B:
【数2】

として与えられ、ΔL’は非常に小さい。
【0041】
加えて、測定子の位置決め加工によって生じる誤差は、前記の位置決め誤差とは別に角度誤差についても言及されるべきである。これについては、いったん前記位置決め誤差と分離して、センサ−S1の検知軸に対する角度誤差のみに由来する前記ΔLは、以下の式C:
ΔL = ΔS1・tanθ
として与えられる。例えばセンサ−を分解能1μm程度の触芯式センサ−等を用いて位置決めした場合に想定される角度誤差は一般に±14秒(3.9×10−3°)程度であり、センサ−S1と円筒2の外表面までの距離ΔS1が1.0mm程度のときは、ΔLが0.068μmとなる。このとき円筒2の外径が100mmであった場合、ΔL’は上記式Cより約4.6×10−8μmであり、誤差として極めて小さいと言える。また、このΔLが円筒2の断面の真円度に起因して生じた場合についても測定結果に与える影響は同様である。
【0042】
したがってセンサ−S1は、これまで述べた範囲の測定系においては自身の検知軸が円筒2の断面円の円中心を通過していなくとも、該円中心を測定基準位置On=0として測定を行うことができる。また、以上のことからLS2,LS3についても同様に扱うことができる。さらに加えて述べれば、前記浮動点Oの移動距離はあくまで前記LS1、LS2、LS3の数値によって算出されるものであって、前記ΔLの距離に影響を受けるものではない。
【0043】
続いて前記2つのコロ6上に被測定円筒1を載置し、センサ−S1から円筒1の外表面までの距離を測定し、S10とする。このときLS1が既知であることから、LS1からS10を減算して前記L1を算出し、同様に、L12及びL11を測定し、算出する。
【0044】
その後は、前記第二段階以降の方法と同様に測定を進める事によって浮動点On=0と円周上の点4、5、6、7、8、9及び10各々との距離L4、L5、L6、L7、L8、L9及びL10を求めることができる。
【0045】
ここで、前記円筒2が、真円形状であって外径寸法D2である、軸に対して直交する断面円Vを有するものであれば、前記のように3つの変位検出軸が交わる測定基準位置Oが円筒の回転中心と断面円Vの交わる点である必要は無い。この場合、前記式Aに示した要素のうちのd2は断面円Vの円中心から円筒表面までの距離であることから、前記ΔS1にd2を加えても本来のLS1を求める事にはならず、これをLS1´とすれば、センサーS1検知軸上の、円筒表面からOまでの距離とd2の差分が含まれる事になる。同時にLS2´及びLS3´に於いても同様で、かつ前記のように断面円Vが真円形状であれば、それぞれの変位検出軸ごとにOから円筒表面までの距離が異なる事になるが、同時にそのそれぞれの距離について断面円Vが真円形状である事によって浮動点Oの追跡は可能であって、被測定円筒1に対する測定において最終的に求められる被測定断面の円周形状は、実際のそれに対して相似の関係を保つことができる。このとき求められた被測定円筒1の被測定断面に対する円周形状と実際の円周形状の寸法的関係は、先に述べたLS1とLS1´の関係に等しい。具体的には、センサーS1検知軸上の、参照円筒2の測定における浮動点の始点Oと、測定にしたがって円筒2が回転するにつれて浮動点Oが移動する軌跡の平均中心位置との距離が、前記円筒表面から測定基準位置Oまでの距離とd2の差分に相当する。したがってこの差分を求めて測定結果に補正する事によって、結果として測定された円周形状に与えられる寸法はd2を基準としたものと同等とすることができる。
【0046】
したがって、各センサーの検知軸の交点が、前記第二の円筒断面の中心に一致する必要が無いことから、測定機の製作においても高い精度を必要としないし、第二の円筒が重力によって撓んでいてもよい。
【0047】
加えて、断面円Vの円中心は、前記各変位検出軸の交点と合致する必要が無いことから、参照円筒2は断面円V以外の部位に高い精度を有する必要が無い。したがって、参照円筒2の作成にあたっては円筒外周部の一部のみについて独立した真円度を得るような加工を施すだけで良く、例えば参照円筒2の外径がφ100mm程度であれば、現在の工業技術レベルでは、真円度を1μm以下に抑えて加工することは十分可能である。或いは、前記d2は参照円筒2の断面円の中心から円周までの距離であることから、該断面円の形状が真円形状でなくとも既知であれば、予め各センサーの検知軸ごとのd2(例えば、d2-1、d2-2、d2-3)を計算に用いることができる。
【0048】
また、被測定円筒1を測定に従って回転させるときに生じることが予想される、回転角度に起因する誤差について言及すれば、回転誤差角度をθ°、検知軸上の円周と測定基準位置Oとの距離をL、測定基準位置Oで検知軸と前記回転誤差角度を挟んで交差する軸上の、測定基準位置Oから円周までの距離をLとしたとき、検知距離に与える誤差ΔL’は以下の式:
ΔL´ =L−L・cosθ
として与えられ、ΔL’は非常に小さい。一例として、測定対象円の平均半径が50mmであって、回転誤差が0.1°生じた場合のΔL’は、約0.076μmとなる。この数値は、誤差として測定値に対して1.5×10−4%であって、この誤差は前記の一般的な変位測定器の測定再現性に加えて、一般的かつ安価な回転機構の停止精度がその再現性としてほぼ0.04°程度を十分期待できることを考慮すれば、測定結果に与える影響は極めて小さいといえる。
【0049】
続いて、求められた距離L1〜L12から、既知の最小自乗中心法を用いて、直交座標位置における円中心位置および各半径方向距離を算出する。このとき、得られた12の半径方向距離を、互いに180°ごとに相反する方向の距離ごとに、例えばL1とL7を加算すれば、各方向の外径値を得ることができる。
【0050】
次に、浮動点On=0を直交座標における原点(0,0)として、距離L1〜L12から、円周上の測定点1〜12の当該直交座標内における位置を定める。計算の便宜上、いったんnをiに置き換えて測定点1〜12までの引数とし、直交座標位置成分をそれぞれx、yとすれば、以下の式:
【数3】

として求めることができる。なお、上式でθを負の角度として用いているのは、各被測定点の直行座標位置を図3に順じて表すためであって、その角度は、直交座標系のY軸を0°として反時計方向に順次加算する。
【0051】
ここで真の円中心Oの直交座標位置をO(x、y)とすれば、以下の式:
【数4】

として求めることができる。このとき両式右項の分母に与える12は、360°をθすなわち30°で割った数であり、この数はθによって変化する。
【0052】
続いて真円度Aを求める。求めたO(x、y)を直交座標上の原点(0、0)に置き換え、これに伴って移動する円周上の測定点1〜12の位置を1’〜12’とすれば、直交座標位置成分(x、y)は、以下の式:
【数5】

で与えられる。得られた1’〜12’の直交座標位置成分(x、y)より、真の各半径方向の変位量L1’〜L12’は、以下の式:
【数6】

で与えられる。このとき中心軸直角断面円の真円度AはL1’〜L12’の最大値と最小値の差として求めることができる。
【0053】
以上の測定と算出を被測定円筒1の所望の各中心軸と直角を成す断面円について求め、各測定断面円について、円中心位置および半径方向の変位量を得る。
【0054】
次に、被測定円筒1の円筒度を求める。
測定された各中心軸と直角を成す断面円のうち、被測定円筒1の両端2つの中心軸と直角を成す断面円の両円中心同士を結ぶ直線と、その他の各中心軸と直角を成す断面円の交点の位置を、距離比例計算によって求める。続いて、式13に示した方法を用いて、前記各交点と円周上の各測定点を結ぶ直線上の変位量を半径方向の距離として算出する。ここで、得られた全ての距離の、最大値と最小値の差を被測定円筒の円筒度として得ることができる。
【0055】
以上述べた測定方法は、被測定円筒の外径、内径、及び長さによってその機能が影響を受ける度合いが小さいことから、例えば外径においては、φ5mm程度の非常に細いものから数メートルに至る太いものにまで用いることができる。さらに、この測定方法に用いることのできる変位検出手段としては多岐にわたり、例えば、電気式マイクロメーター、渦電流式変位検出器、レーザー変位検出器、ダイヤルゲージ等の手段を用いることが有効である。また、被測定円筒が自身の長さや重量に対して非常に細いか、または材質として軟らかいか、或いは非常に薄肉である等の理由から、測定中に重力の影響を受けて撓む等の弾性変形を生じて測定結果に影響を与える可能性が有る場合は、被測定円筒の円筒中心軸を重力その他の外的作用方向に対して平行に近づけて測定を行うことが有効である。
加えて、最終的に求めるべき円筒度の正確性をより向上させるためには、両端の中心軸と直角を成す断面の位置が、より被測定円筒の両端部に近いことが好ましい。
【0056】
ここで、前記円筒度の測定のような、円筒軸方向の位置を違えた複数の回転(ここでいう回転は、1断面の回転に必要な量の回転であって、360°)によって測定を行う際には、一般に前記ガイドレール4のような円筒軸方向に平行にセンサーを移動させる手段の精度が重要になる。しかしながら、被測定円筒を被測定円筒のほぼ両端部に対してそれぞれ2個ずつ2組、計4個から成るコロ状の円筒受け冶具を用いて載置して回転する場合は、コロ状の円筒受け冶具の回転振れが非常に小さいか、コロの周長が被測定円筒の周長のほぼ整数分の1であれば、被測定円筒は同じ回転を繰り返すこととなる。すなわち被測定円筒が複数回回転しても円筒表面の全ての点は回転毎に常にほぼ同一の軌跡を辿ることになる。このことから、円筒度の測定のような円筒軸方向の位置を違えた複数の回転によって測定を行う際に前記浮動点の軌跡が複数得られても、全ての軌跡、或いは前記被測定円筒の両端部を支持する2組のコロ状の円筒受け冶具同士の円筒軸方向の支持中間部を境として両支持部までの複数測定位置での軌跡は、移動範囲の中心位置を共有する相似の形状を成す。したがって、測定によって得られた複数の断面円を前記中心位置を共通の基準として配置すれば、前記ガイドレール4のようなセンサーの移動手段の精度や、被測定円筒の重力による撓み等の変形に影響を受けない円筒度の算出、測定が可能となる。
【0057】
また、各円筒中心軸と直角を成す断面の円周形状の測定にあたって被測定円筒を回転させる際、各測定位置において回転を停止させることなく変位を検出するためのセンサーによる測定を行うことも、測定時間の短縮において有効である。
【0058】
さらに、変位を検出するためのセンサーを固定する前記取り付け台を複数台使用して、同時に複数の円筒中心軸と直角を成す断面の円周形状を測定することによって、より少ない回転数、特には1回転のみでの測定を行うことも非常に有効である。
【0059】
また、被測定円筒が中空円筒であって、その内周形状、特に内径や、或いは内周部の中心を基準とした外周部の表面変位、円周フレ等を測定する場合に於いてもこれまで述べてきた方法を用いることができる。この場合、外周部に前記のように3つのセンサーを備えて浮動点を追跡すれば、内周部における変位検出軸は少なくとも1つ設ければよいことからセンサーは1個でよい。そしてこれに予め既知の厚みをもったマスター等のサンプルを測定させる事によって正しい位置関係を与え、外周部で追跡した被測定円筒の移動状態を内周部のセンサーの検出結果に与えて補正する事によって、内周部の円周形状を捉えることができる。このとき、内周部のセンサーの変位検出軸は、外周部の前記センサーS1の検知軸に合致させる、すなわち対向する位置に配置することが最も好ましく、この場合は、外周部の測定結果に前記の位置関係を基準とした中空円筒の厚み寸法を加えることで内周部の測定が可能である。また、それ以外の方向を向けて配置したとしても、位相差を計算に加えることで同様の結果を得ることができる。
【0060】
同様に、測定しようとする主円筒の片側、或いは両端に突起した副円筒を伴うような複合円筒を被測定円筒とした場合、例えば、主円筒の中心を測定し、これを基準とした端部の副円筒の表面変位、円周フレ等を測定することも可能である。その方法としては、先に述べた内周部の測定方法と同様に、主円筒を測定するための3つのセンサーを備えて浮動点を追跡すれば、副円筒における変位検出軸は少なくとも1つ設ければ良く、主円筒測定に於いて追跡した被測定円筒の移動状態を副円筒の変位検出軸の検出結果に与えて補正する事によって、副円筒の円周形状を捉えることができる。その、主円筒及び副円筒の測定結果を、機械基準或いは先述の前記浮動点の軌跡の中心点を共通の基準として配置する事によって複合円筒の主円筒と副円筒を共通の基準として測定することが可能である。同様に端部の副円筒の中心を測定し、これを基準とした主円筒の表面変位、円周フレ等を測定することも可能である。このとき、主円筒を測定するセンサーと副円筒を測定するセンサーの位置関係、特には被測定円筒の軸方向の距離と、軸に直交する方向の距離を、予め既知の寸法を有するマスター等のサンプルを用いて位置関係として測定結果に与える必要がある。
【0061】
ここで、被測定円筒が複数の支持部によって支持されているとき、主円筒部分について円筒支持部ごとの外径寸法が違っている場合、被測定円筒の回転軸が、マスターのそれと平行でないことから、副円筒の外径値を正しく算出できない可能性がある。この補正方法については、一般的な方法として、円筒支持部におけるマスターと被測定円筒の外径値の差と、前記軸方向の距離の差を元に、軸方向の距離比例計算によって、副円筒側のセンサーの主円筒側センサーとの位置関係、特には軸に直交する方向の距離を補正することが可能である。加えて、この補正においては、円筒支持部の支持方法を考慮して行う必要がある。例えば、円筒の両片側をそれぞれ2つのコロで支持する場合は、主円筒の外径値の違いによる沈み度合いは2つのコロのピッチ、或いはコロ外径によって変化する。したがって前記距離比例計算の結果(変化度合い)には、さらに円筒支持方法による沈み度合いの補正を加えるべきである。
【0062】
(実施例)
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0063】
(実施例1)
被測定円筒として予め切削加工を施された、加工設定外径がφ84.0mm、内径がφ78.0mm、長さ360.0mmのA3003アルミニウム管を10本準備し、サンプルNo.1〜サンプルNo.10とした。
【0064】
サンプルNo.1の被測定円筒を、図9に示す様に、3つの変位を検出するためのセンサーS0、S45、及びS90を、各変位を検出するためのセンサーの測定軸が、該円筒の軸に直交する方向の断面の円内の所定の点において交わり、且つその点を中心として、それぞれ互いに挟角として45°を挟んで扇状に配置した円筒測定器の円筒受け治具上に載置した。上記3つの変位を検出するためのセンサーは、被測定円筒の一端から円筒中心軸方向に80mmの位置に配置し、変位を検出するためのセンサーは株式会社ミツトヨ製MCH335電気式マイクロメーターを使用した。そして前記の回転駆動伝達機にて一測定回数あたり45°ずつ回転させて測定を計8回行った。なお、前記検出軸同士の交点から各センサーまでの距離は予め計測してあり、本実施例におけるセンサーの測定値は、各検出軸同士の交点から、被測定円筒の回転軸と直角を成す同一断面上の円筒表面と前記各検出軸との交点までの距離を測定したものとして示す。
測定に際して被測定円筒は、毎分6回転の速度で回転させた。このとき測定に要した時間を、被測定円筒を前記円筒受け治具に載置してから被測定円筒が測定のために1回転を終了するまでの間として測定した。
以降、実施例1で使用する図の表枠中では、測定開始時点でS0位置における測定を0°とし、被測定円筒の回転に従ってS0に到達する円周表面上の被測定位置に順次45°を加算して与える。
前記浮動点の移動距離を求めるには、センサーS45、及びS90の検知軸上における各移動距離を、前記式(1)、(2)を用いて算出する。このとき各軸上での移動距離は、S45の検知軸上ではS45の測定値と45°回転前のS0の測定値との差、S90の検知軸上ではS90の測定値と45°回転前のS45の測定値との差としてそれぞれ算出する。
【0065】
次に、前記式13を用いて、直交座標位置におけるΔxを求め、続いてΔyとして、前記式12を用いて算出した。ここでΔx及びΔyは、直交座標位置で示すところの浮動点Oの移動距離である。続いて、このΔyをS0の測定値から減算することによって、S0位置の真値、すなわち浮動点Oを基準とした被測定円筒表面までの距離を求めた。
次に、浮動点Oを基準とした各点までの距離を直交座標位置に変換した。こうして求まったx、yを用いて、真の円中心座標O(x、y)を前記最小自乗中心法で求め、中心X座標および中心Y座標を得た。
続いて、求められた中心座標位置から各点までのX軸成分及びY軸成分の距離、及び該各点までの直線距離すなわち真の各点の半径方向距離、加えてその最大値と最小値の差から真円度を得た。
以上について、サンプルNo.2からサンプルNo.10についても同様に測定し、前記所要時間と真円度を求めた。
【0066】
以上の測定によって得られたデータのうち、前記各変位を検出するためのセンサーの測定値から前記円中心座標位置までについて図10及び図11に示す。続いて、前記中心座標位置から各点までのX軸成分及びY軸成分の距離、該各点までの距離と、及びその最大値と最小値を図12及び図13に示す。
【0067】
(対照例1)
実施例1で測定したサンプルNo.1〜サンプルNo.10のアルミニウム管を、真円度測定器(商品名:ラウンドテストRA−H5000AH;株式会社ミツトヨ社製)を用いて、被測定円筒の載置時下端から円筒中心軸方向80mm位置の外表面真円度を測定した。測定に際しての所要時間を、被測定円筒を回転テーブルに載置してから、自動心出し、自動水平だし、自動測定を全て一連のプログラムによって連続動作させ、これが終了するまでの間として測定した。
なお、前記自動心出し及び自動水平だし工程については、自動かつ高速モードを採用し、心だし位置を被測定円筒下端から20mm、水平だし位置を前記下端から80mmとし、倍率5000倍、領域8μm、回転テーブル回転速度を10rpmと設定して、自動心出し、自動水平だし及び真円度測定を実施した。また、被測定円筒を前記回転テーブル上に載置するにあたっては、測定にかかる時間の短縮を考慮し、同社製三爪チャックその他の固定具を使用せずに直接載置し、かつ載置位置のばらつきによって自動心出し及び自動水平だし動作が複数回動作することから発生する前記所要時間の増長を無くすために、自動心出し又は自動水平だし動作が2回以上必要であった測定についてはデータとして採用せず、自動心出し及び動作水平だし動作が1回のみで終了する測定が得られるまで再試行し、これを所要時間のデータとした。
【0068】
[評価]
実施例1及び対照例1で測定した各真円度の値とそれぞれの差を図14及び図15に示す。また、実施例1及び対照例1で測定した各所要時間を図16に示す。
図14及び図15から、実施例1と対照例1の各測定方法による測定結果の差が、最大でも2.2μmであり、十分小さいと判断できる。
また図16より、実施例1の測定所要時間が、対照例1の測定所要時間に対して平均で54.7%短縮できていることが確認できる。
【0069】
(実施例2)
被測定円筒として予め切削加工を施された、加工設定外径がφ80.0mm、内径がφ74.0mm、長さ360.0mmのA3003アルミニウム管を準備した。
この被測定円筒を図2と同様な円筒測定器の円筒受け治具上に載置した。変位を検出するためのセンサーは、被測定円筒の一端から円筒中心軸方向に30mm中央よりの回転軸と直角を成す同一断面上に位置して被測定円筒の回転軸と該回転軸と直角を成す断面とが交わる点に向けられるような図17に示す取り付け台に、S0とS15、及びS60とS75を、前記交点を中心として、それぞれ互いに挟角として15°を挟んで扇状に配置した。さらにS0とS60を挟角60°になるように配置した。変位を検出するためのセンサーはKAMAN社製渦電流式センサーを使用し、また各センサーは、前記交点からの距離が互いに等しくなるように位置を調整した。そして前記の回転駆動伝達機にて一測定回数あたり15°ずつ回転させて測定を計24回行い、各センサーと被測定円筒表面との変位量を距離として測定した。以降、実施例2で使用する図の表枠中では、測定開始時点でS0位置における測定を0°とし、被測定円筒の回転に従ってS0に到達する円周表面上の被測定位置に順次15°を加算して与える。これを図18に示す。
【0070】
次に算出の便宜上各測定値を差分値として捉えるため、最初の測定値、すなわち被測定円筒が一度も回転していない時点でのセンサーS0の測定値を0として、それ以外の全ての計測結果をS0との差分として算出する。加えて、以降の計算を円滑に行うために全ての差分値を正の数に変換する。本実施例では、任意の定数として50μから全差分値を減算し、正の数値とした。これを図19に示す。
【0071】
次に、前記浮動点の移動距離を求めるにあたり、センサーS15、及びS75の検知軸上における各移動距離を、前記式2を用いて算出する。このとき各軸上での移動距離は、S15の検知軸上ではS15の測定値と15°回転前のS0の測定値との差、S75の検知軸上ではS75の測定値と15°回転前のS60の測定値との差としてそれぞれ算出する。
求めた2軸上での移動距離から、前記式(12)で示した式のうちbの項を用いて直交座標位置におけるΔxを求め、続いてΔyとして、前記式(12)に示したΔL2の項を用いて算出した。続いて、このΔyをS0から減算することによって、S0位置の真値、すなわち浮動点Oを基準とした被測定円筒1表面の変位量が求められる。以降、同様に被測定円筒の一周分の測定を行う。これを図20に示す。
【0072】
次に、円の真の中心を求める。
図20で求まった浮動点Oを基準とした各点の変位量を直交座標成分に変換し、こうして求まったx、yを用いて、真の円中心座標O(x、y)を、前記最小自乗中心法を用いて求め、(−4.5、−0.5)を得た。加えて、浮動点Oを基準とした各点でのX軸成分及びY軸成分の変位量、及び該各点までの真の半径方向の変位量と、それらの最大値(53.3μm)と最小値(47.2μm)の差を求めることによって、真円度として6.1μmを得た。これを図21に示す。
【0073】
(実施例3)
第一の円筒体として予め一般的な切削加工を施された、加工設定外径がψ84.0mm、内径がψ78.0mm、長さ360.0mmのA3003アルミニウム管を準備し、これを被測定円筒サンプルとした。同時に第二の円筒として、円筒の一端から円筒中心軸方向に80mmの位置の真円度が0.20μm、平均外径値が84.000mmである以外は第一の円筒と同様なアルミニウム管を準備した。なお、第二の円筒の外表面真円度の測定は、真円度測定器(商品名:ラウンドテストRA−H5000AH;株式会社ミツトヨ社製)を用いた。
【0074】
第二の円筒を、図22に示す様に、3つの変位を検出するためのセンサ−S0、S45、及びS90を、各センサ−の測定軸が、該円筒の軸に直交する方向の断面の円内の所定の点においてほぼ交わり、且つその点を中心として、それぞれ互いに挟角として45°を挟んで扇状に配置した円筒体測定器の円筒受け治具上に載置した。上記3つのセンサ−は、被測定円筒の一端から円筒中心軸方向に80mmの位置に配置し、KAMAN社製渦電流式センサ−を使用した。このときの各センサ−の検出値は以下のとおりであった。
ΔS0=448μm、ΔS45=273μm、ΔS90=296μm
このときセンサ−ごとに前記式Aを用いて、各センサ−から前記測定基準位置O0までの距離を求め、その結果は以下のとおりであった。
LS0=42.448mm、LS45=42.273mm、LS90=42.296mm
【0075】
次に、受け冶具上の第二の円筒を被測定円筒としての前記第一の円筒と交換し、回転駆動伝達機によって一測定回数あたり45°ずつ回転させて測定を計8回行った。そして得られた検出値ΔS0、ΔS45、ΔS90を、センサ−ごとに前記LS0,LS45,LS90から減算し、各測定ポイントから測定基準位置O0までの距離を求めた。これらを図23に示す。
【0076】
以降、実施例3で使用する図の表枠中では、測定開始時点でS0位置における測定を0°とし、被測定円筒の回転に従ってS0に到達する円周表面上の被測定位置に順次45°を加算して与える。
【0077】
前記浮動点の移動距離を求めるには、センサ−S45、及びS90の検知軸上における各移動距離を、前記式(1)、(2)を用いて算出する。このとき各軸上での移動距離は、S45の検知軸上ではS45の測定値と45°回転前のS0の測定値との差、S90の検知軸上ではS90の測定値と45°回転前のS45の測定値との差としてそれぞれ算出する。
【0078】
次に、前記式13を用いて、直交座標位置におけるΔxを求め、続いてΔyとして、前記式12を用いて算出した。ここでΔx及びΔyは、直交座標位置で示すところの浮動点Oの移動距離である。続いて、このΔyをS0の測定値から減算することによって、S0位置の真値、すなわち浮動点Oを基準とした被測定円筒表面までの距離を求めた。
【0079】
次に、浮動点Oを基準とした各点までの距離を直交座標位置に変換した。こうして求まったx、yを用いて、真の円中心座標O(x、y)を前記最小自乗中心法で求め、中心X座標および中心Y座標を得た。
【0080】
続いて、求められた中心座標位置から各点までのX軸成分及びY軸成分の距離、及び該各点までの直線距離すなわち真の各点の半径方向距離、加えてその最大値と最小値の差から真円度を得、さらに0°−180°及び90°−270°位置での外径値を得た。
【0081】
以上の測定によって得られたデータのうち、前記各センサ−S0、S45、S90の測定値から前記円中心座標位置までについては図24に示す。続いて、前記中心座標位置から各点までのX軸成分及びY軸成分の距離、該各点までの距離と、及びその最大値、最小値、真円度、外径値を図25に示す。なお、図23から図25中の寸法単位は、全てmmである。
【0082】
(実施例4)
第一の円筒体として予め一般的な切削加工を施された、加工設定外径がψ84.0mm、内径がψ78.0mm、長さ360.0mmのA3003アルミニウム管を準備し、これを被測定円筒サンプルとする。また、第二の円筒として、円筒の一端から円筒中心軸方向に80mmの位置の真円度が十分小さな、例えば0.50μmであって、平均外径値が84.000mmである以外は第一の円筒と同様なアルミニウム管を準備する。なお、第二の円筒の外表面真円度の測定は、真円度測定器(商品名:ラウンドテストRA−H5000AH;株式会社ミツトヨ社製)を用いて行う。
次に第二の円筒を図17に示すような円筒測定器の円筒受け治具上に載置し、変位を検出するためのセンサーS0、S15、S60、S75は、各センサ−の測定軸が、該円筒の軸に直交する方向の断面の円内の所定の点においてほぼ交わり、且つS0とS15、及びS60とS75を、前記所定の点を中心として、それぞれ互いに挟角として15°を挟んで扇状に配置する。さらにS0とS60を挟角60°になるように配置する。変位を検出するためのセンサーはKAMAN社製渦電流式センサーを使用することができる。
【0083】
続いて実施例3と同様に、各センサーS0、S15、S60、S75から第二の円筒までの距離を測定した後に、センサ−ごとに前記式Aを用いて、各センサ−から前記測定基準位置O0までの距離を求め、LS0,LS15,LS60,LS75を求める。
その後、受け冶具上の第二の円筒を被測定円筒としての前記第一の円筒と交換し回転駆動伝達機によって一測定回数あたり15°ずつ回転させて測定を計24回行う。そして得られた検出値を、センサ−ごとに前記LS0,LS15,LS60,LS75から減算し、各測定ポイントから測定基準位置O0までの距離を求める。
以降、実施例2と同様にして第一の円筒の断面円の円周形状、真円度を求める。
【0084】
(実施例5)
実施例2に記載の機器を用いて、被測定円筒1の一方の端から他方の端に向かって30mm、35mm、40mm、60mm、80mm、90mm、120mm、140mm、150mm、180mm、200mm、210mm、240mm、260mm、270mm、300mm、310mm、320mm、330mm、350mmの、20の円筒中心軸と直角を成す断面円を被測定円とし、これらに対してそれぞれ一測定周あたり15°ずつ計24点の測定を行い、各変位を検出するためのセンサーS0、S15、S60、S75と被測定円筒表面との距離を得た。
次に、測定値を実施例2と同様の方法を用いて正の差分値とし、続いて実施例2と同様に各被測定円の浮動点Oを基準とした被測定円筒表面の変位量を求めた。
次に、実施例2と同様に各被測定円の中心座標、浮動点Oを基準とした各点の変位量のX軸成分及びY軸成分と、これらの各最大値と最小値、およびこれらによる真円度を求めた。
【0085】
続いて、測定した20の被測定円のうち両端に位置する2つの被測定円、すなわち円筒中心軸方向の30mm位置と350mm位置の両円中心同士を結ぶ直線と、その他の各被測定円との交点の位置を、距離比例計算により求めた。次に、各被測定円ごとに前記各交点を基準とした円周上の各測定点のx、y座標成分としての変位量を算出し、さらに、前記各座標成分としての変位量から前記各交点を基準とした円周上の各測定点の半径方向の変位量を求めた。これを図28に示す。ここで、得られた全ての距離の、最大値(54.5μm)と最小値(45.5μm)の差をもって被測定円筒の円筒度9.0μmを得た。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】被測定円筒を所定の角度回転させた場合の、円筒の360度の回転による浮動点の始点を基準とした実際の浮動中心の移動の軌跡を示す図である。
【図2】測定機概略図である。
【図3】測定位置説明図である。
【図4】浮動中心の移動に関する説明図である。
【図5】浮動中心位置の算出に関する説明図(1)である。
【図6】浮動中心位置の算出に関する説明図(2)である。
【図7】第二の円筒とセンサ−との位置を示す図である。
【図8】センサ−の位置決め誤差を示す図である。
【図9】実施例1の変位を検出するためのセンサー位置を示す図である。
【図10】実施例1で得た、サンプルNo.1からNo.5の、変位を検出するためのセンサーの測定値から円中心座標位置までのデータである。
【図11】実施例1で得た、サンプルNo.6からNo.10の、変位を検出するためのセンサーの測定値から円中心座標位置までのデータである。
【図12】実施例1で得た、サンプルNo.1からNo.5の、中心座標位置を基準とした各点の直交座標位置、及び各点までの距離と、その最大値と最小値である。
【図13】実施例1で得た、サンプルNo.6からNo.10の、中心座標位置を基準とした各点の直交座標位置、及び各点までの距離と、その最大値と最小値である。
【図14】実施例1及び対照例1で得た真円度である。
【図15】実施例1及び対照例1で得た真円度を比較するグラフである。
【図16】実施例1及び対照例1で得た、測定所要時間と差である。
【図17】実施例2の変位を検出するためのセンサー位置を示す図である。
【図18】実施例2で得た、変位を検出するためのセンサーと被測定円筒表面までの距離である。
【図19】実施例2で得た、図17の回転によって生じた差分値と、定数から減算して正の整数とした数値である。
【図20】実施例2で得た、浮動中心を基準とした被測定円筒1表面の変位量である。
【図21】実施例2で得た、図20を直交座標位置に変換した座標値と距離である。
【図22】実施例3の変位を検出するためのセンサー位置を示す図である。
【図23】実施例3の各測定ポイントから測定基準位置O0までの距離である。
【図24】実施例3の測定によって得られたデータのうち、前記各センサ−の測定値から前記円中心座標位置までを示す図である。
【図25】実施例3の測定によって得られた、中心座標位置から各点までのX軸成分及びY軸成分の距離、該各点までの距離と、及びその最大値、最小値、真円度、外径値を示す図である。
【図26】触芯式センサーの測定距離を示す。
【図27】渦電流式センサーの測定距離を示す。
【図28】実施例5で得た、各座標位置から前記各交点と円周上の各測定点までの距離と、最大値と、最小値である。
【符号の説明】
【0087】
1 被測定円筒
2 取り付け台
3 支持台
4 ガイドレール
5 ボールねじ
6 円筒受け冶具(コロ)
S1、S2、S3 センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)および(b)を備えた測定手段を用いる、被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法であって、下記工程(i)から(v)を含むことを特徴とする被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法:
〈測定手段〉
(a) 円筒受け治具、
(b) 前記断面円を含む断面上に位置し、前記軸と前記断面円との交点である測定基準点(O)に向けられ、前記Oおよび第1センサーを結ぶ線と前記Oおよび第2センサーを結ぶ線との挟角ならびに前記Oおよび第2センサーを結ぶ線と前記Oおよび第3センサーを結ぶ線との挟角がともにθ°になるように配置・固定された、変位を検出するための第1センサー、第2センサーおよび第3センサーを取り付けた台、
〈工程〉
(i) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔL1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔL2)、ならびに、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔL3)をそれぞれ測定する工程、
(ii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L2)、ならびに、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L3)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
L1=LS1−ΔL1
L2=LS2−ΔL2
L3=LS3−ΔL3
(ここで、LS1は前記第1センサーから前記Oまでの距離であり、LS2は前記第2センサーから前記Oまでの距離であり、LS3は前記第3センサーから前記Oまでの距離である)、
(iii) 前記被測定円筒を第1センサーから第2センサーの方向へθ°回転させ、工程(i)および(ii)を繰り返す工程、
(iv) 工程(iii)の回転前には前記Oに一致していた前記被測定円筒の前記断面円上の点である浮動点O’から前記Oを通り前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線までの距離(ΔO1)を、工程(ii)で得られたL1およびL2ならびに工程(iii)で得られたL2およびL3を用いて算出する工程、
(v) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を、工程(iii)で得られたL1ならびに工程(iv)で得られたΔO1を用いて算出する工程。
【請求項2】
下記(a)および(b)を備えた測定手段を用いる、被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法であって、下記工程(i)から(v)を含むことを特徴とする被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法:
〈測定手段〉
(a) 円筒受け治具、
(b) 前記断面円を含む断面上に位置し、前記軸と前記断面円との交点である測定基準点(O)に向けられ、前記Oおよび第1センサーを結ぶ線と前記Oおよび第2センサーを結ぶ線との挟角ならびに前記Oおよび第3センサーを結ぶ線と前記Oおよび第4センサーを結ぶ線との挟角がともにθ°になるように配置・固定された、変位を検出するための第1センサー、第2センサー、第3センサーおよび第4センサーを取り付けた台、
〈工程〉
(i) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔL1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔL2)、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔL3)、ならびに、前記Oおよび前記第4センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第4センサーまでの距離(ΔL4)をそれぞれ測定する工程、
(ii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L2)、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L3)、ならびに、前記Oおよび前記第4センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L4)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
L1=LS1−ΔL1
L2=LS2−ΔL2
L3=LS3−ΔL3
L4=LS4−ΔL4
(ここで、LS1は前記第1センサーから前記Oまでの距離であり、LS2は前記第2センサーから前記Oまでの距離であり、LS3は前記第3センサーから前記Oまでの距離であり、LS4は前記第4センサーから前記Oまでの距離である)、
(iii) 前記被測定円筒を第1センサーから第2センサーの方向へθ°回転させ、工程(i)および(ii)を繰り返す工程、
(iv) 工程(iii)の回転前には前記Oに一致していた前記被測定円筒の前記断面円上の点である浮動点O’から前記Oを通り前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線までの距離(ΔO1)を、工程(ii)で得られたL1およびL3ならびに工程(iii)で得られたL2およびL4を用いて算出する工程、
(v) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を、工程(iii)で得られたL1ならびに工程(iv)で得られたΔO1を用いて算出する工程。
【請求項3】
下記(a)および(b)を備えた測定手段ならびに軸に直交する断面円として半径が既知の真円状断面円を有する参照円筒を用いる、被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法であって、下記工程(i)から(vii)を含むことを特徴とする被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法:
〈測定手段〉
(a) 円筒受け治具、
(b) 前記参照円筒の前記真円状断面円を含む断面上に位置し、前記参照円筒の軸と前記真円状断面円との交点である測定基準点(O)に向けられ、前記Oおよび第1センサーを結ぶ線と前記Oおよび第2センサーを結ぶ線との挟角ならびに前記Oおよび第2センサーを結ぶ線と前記Oおよび第3センサーを結ぶ線との挟角がともにθ°になるように配置・固定された、変位を検出するための第1センサー、第2センサーおよび第3センサーを取り付けた台、
〈工程〉
(i) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔLR1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔLR2)、ならびに、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔLR3)をそれぞれ測定する工程、
(ii) 前記第1センサーから前記Oまでの距離(LS1)、前記第2センサーから前記Oまでの距離(LS2)、ならびに、前記第3センサーから前記Oまでの距離(LS3)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
LS1=d2+ΔLR1
LS2=d2+ΔLR2
LS3=d2+ΔLR3
(ここで、d2は前記参照円筒の前記真円状断面円の半径である)、
(iii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔL1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔL2)、ならびに、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔL3)をそれぞれ測定する工程、
(iv) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L2)、ならびに、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L3)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
L1=LS1−ΔL1
L2=LS2−ΔL2
L3=LS3−ΔL3
(v) 前記被測定円筒を第1センサーから第2センサーの方向へθ°回転させ、工程(iii)および(iv)を繰り返す工程、
(vi) 工程(v)の回転前には前記Oに一致していた前記被測定円筒の前記断面円上の点である浮動点O’から前記Oを通り前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線までの距離(ΔO1)を、工程(iv)で得られたL1およびL2ならびに工程(v)で得られたL2およびL3を用いて算出する工程、
(vii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を、工程(v)で得られたL1ならびに工程(vi)で得られたΔO1を用いて算出する工程。
【請求項4】
下記(a)および(b)を備えた測定手段ならびに軸に直交する断面円として半径が既知の真円状断面円を有する参照円筒を用いる、被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法であって、下記工程(i)から(vii)を含むことを特徴とする被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法:
〈測定手段〉
(a) 円筒受け治具、
(b) 前記参照円筒の前記真円状断面円を含む断面上に位置し、前記参照円筒の軸と前記真円状断面円との交点である測定基準点(O)に向けられ、前記Oおよび第1センサーを結ぶ線と前記Oおよび第2センサーを結ぶ線との挟角ならびに前記Oおよび第3センサーを結ぶ線と前記Oおよび第4センサーを結ぶ線との挟角がともにθ°になるように配置・固定された、変位を検出するための第1センサー、第2センサー、第3センサーおよび第4センサーを取り付けた台、
〈工程〉
(i) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔLR1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔLR2)、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔLR3)、ならびに、前記Oおよび前記第4センサーを結ぶ線と前記参照円筒の前記真円状断面円の円周との交点から前記第4センサーまでの距離(ΔLR4)をそれぞれ測定する工程、
(ii) 前記第1センサーから前記Oまでの距離(LS1)、前記第2センサーから前記Oまでの距離(LS2)、前記第3センサーから前記Oまでの距離(LS3)、ならびに、前記第4センサーから前記Oまでの距離(LS4)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
LS1=d2+ΔLR1
LS2=d2+ΔLR2
LS3=d2+ΔLR3
LS4=d2+ΔLR4
(ここで、d2は前記参照円筒の前記真円状断面円の半径である)、
(iii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第1センサーまでの距離(ΔL1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第2センサーまでの距離(ΔL2)、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第3センサーまでの距離(ΔL3)、ならびに、前記Oおよび前記第4センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記第4センサーまでの距離(ΔL4)をそれぞれ測定する工程、
(iv) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L1)、前記Oおよび前記第2センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L2)、前記Oおよび前記第3センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L3)、ならびに、前記Oおよび前記第4センサーを結ぶ線と前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点から前記Oまでの距離(L4)を下記式にしたがってそれぞれ算出する工程:
L1=LS1−ΔL1
L2=LS2−ΔL2
L3=LS3−ΔL3
L4=LS4−ΔL4
(v) 前記被測定円筒を第1センサーから第2センサーの方向へθ°回転させ、工程(iii)および(iv)を繰り返す工程、
(vi) 工程(v)の回転前には前記Oに一致していた前記被測定円筒の前記断面円上の点である浮動点O’から前記Oを通り前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線までの距離(ΔO1)を、工程(iv)で得られたL1およびL3ならびに工程(v)で得られたL2およびL4を用いて算出する工程、
(vii) 前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を、工程(v)で得られたL1ならびに工程(vi)で得られたΔO1を用いて算出する工程。
【請求項5】
下記工程(vi)をさらに有する請求項1に記載の被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法:
(vi) 前記工程(i)から(v)までを1回以上繰り返し、前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記工程(iii)の回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を得る工程。
【請求項6】
下記工程(vi)をさらに有する請求項2に記載の被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法:
(vi) 前記工程(i)から(v)までを1回以上繰り返し、前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記工程(iii)の回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を得る工程。
【請求項7】
下記工程(viii)をさらに有する請求項3に記載の被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法:
(viii) 前記工程(iii)から(vii)までを1回以上繰り返し、前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記工程(v)の回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を得る工程。
【請求項8】
下記工程(viii)をさらに有する請求項4に記載の被測定円筒の軸に直交する断面円の形状の測定方法:
(viii) 前記工程(iii)から(vii)までを1回以上繰り返し、前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線と前記工程(v)の回転後の前記被測定円筒の前記断面円の円周との交点において前記Oおよび前記第1センサーを結ぶ線に直交する線から前記O’までの距離を得る工程。
【請求項9】
被測定円筒の軸に直交する複数の断面円の形状を測定することによって被測定円筒の円筒形状を測定する方法において、
複数の断面円の形状の測定を請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって行うことを特徴とする被測定円筒の円筒形状の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2007−263940(P2007−263940A)
【公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230430(P2006−230430)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】