説明

円錐円盤巻掛け伝動装置を制御するための液圧装置

本発明は、円錐円盤巻掛け伝動装置を制御するための液圧装置であって、ポンプを備え、該ポンプが作業媒体を作業媒体タンクからか、又は冷却器戻り弁を介して冷却器戻り管路から吸い込む形式のものに関する。本発明は、前記冷却器戻り弁が最低圧弁として構成されており、該最低圧弁が、前記冷却器戻り管路とポンプ吸込み管路との間の接続を前記冷却器戻り弁によって、前記冷却器戻り管路内の所定の最低圧を下回る限り閉鎖状態に維持し、かつ前記冷却器戻り管路とポンプ吸込み管路との間の接続を前記冷却器戻り弁によって、前記冷却器戻り管路内の所定の最低圧を上回ると直ちに開放することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円錐円盤巻掛け伝動装置(Kegelscheiben−Umschlingungsgetriebe)を制御するための液圧装置であって、ポンプを備え、該ポンプが作業媒体を作業媒体タンクからか、又は冷却器戻り弁を介して冷却器戻り管路から吸い込む形式のものに関する。
【0002】
本発明の課題は、ポンプの吸込み特性を改善できる、ポンプを備え、該ポンプが作業媒体を作業媒体タンクからか、又は冷却器戻り弁を介して冷却器戻り管路から吸い込む形式の、円錐円盤巻掛け伝動装置を制御するための液圧装置を提供することである。
【0003】
上記課題は、円錐円盤巻掛け伝動装置を制御するための液圧装置であって、ポンプを備え、該ポンプが作業媒体を作業媒体タンクからか、又は冷却器戻り弁を介して冷却器戻り管路から吸い込む形式のものにおいて、前記冷却器戻り弁が最低圧弁として構成されており、該最低圧弁が、前記冷却器戻り管路とポンプ吸込み管路との間の接続を前記冷却器戻り弁によって、前記冷却器戻り管路内の所定の最低圧を下回る限り閉鎖状態に維持し、かつ前記冷却器戻り管路とポンプ吸込み管路との間の接続を前記冷却器戻り弁によって、前記冷却器戻り管路内の所定の最低圧を上回ると直ちに開放することにより解決される。これにより、冷却器戻り弁は、絶対圧弁(Absolutdruckventil)として働き、差圧弁(Differenzdruckventil)として働かない。これにより、簡単に、冷却器戻り管路からの空気の不都合な吸込みを防止することができる。さらに、制御部の背圧を低下させることができる。冷却器戻り管路内の所定の最低圧は、有利には約1.8バールである。
【0004】
液圧装置の有利な態様は、前記冷却器戻り弁が、作用面を備える弁ピストンを備え、該作用面が前記弁ピストンの閉鎖位置においてシールエッジに対して予め付勢されていることを特徴とする。閉鎖位置において、冷却器戻り管路とポンプ吸込み管路との間の接続は、弁ピストンによって閉鎖されている。
【0005】
液圧装置の別の有利な態様は、前記弁ピストンが閉鎖ばねによって閉鎖位置へと予め付勢されていることを特徴とする。閉鎖ばねは、有利には、弁ピストンの一端を付勢力あるいは予圧力によって負荷する圧縮ばねとして構成されている。
【0006】
液圧装置の別の有利な態様は、前記作用面が錐形座面として構成されていることを特徴とする。錐形座面は、ポンプに対する極めて良好なシールをなす。
【0007】
液圧装置の別の有利な態様は、前記弁ピストンが、該弁ピストンに作用する付勢力に抗して前記冷却器戻り管路からの圧力で負荷されている戻り圧作用面を備えることを特徴とする。戻り圧作用面は、直接又は間接に、冷却器戻り管路内の作業媒体と連通する。
【0008】
液圧装置の別の有利な態様は、前記戻り圧作用面が、直接前記冷却器戻り管路と連通する部分面を備えることを特徴とする。有利には、冷却器戻り管路は、冷却器戻り管路からの圧力が直接戻り圧作用面の部分面に作用するように冷却器戻り弁に接続されている。
【0009】
液圧装置の別の有利な態様は、前記部分面が前記作用面の半径方向外側に形成されていることを特徴とする。部分面は、有利には、錐形座面が弁ピストンの閉鎖位置で当接する弁ケーシングシールエッジの半径方向外側に設けられている。
【0010】
液圧装置の別の有利な態様は、前記戻り圧作用面が、オリフィスを介して前記冷却器戻り管路と連通する別の部分面を備えることを特徴とする。オリフィスを介して、冷却器戻り管路からの圧力は、間接的にのみ、戻り圧作用面の別の部分面に作用する。
【0011】
液圧装置の別の有利な態様は、前記オリフィスが約0.75mmの直径を有することを特徴とする。この値は、本発明の範囲内において特に有利であることが判っている。
【0012】
液圧装置の別の有利な態様は、前記弁ピストンが、前記ポンプ吸込み管路内の圧力により負荷されている吸込み圧作用面を備えることを特徴とする。吸込み圧作用面は、有利には、弁ピストンの、閉鎖ばねとは反対側の端部に設けられている。
【0013】
本発明の別の利点、特徴及び詳細は、図面を参照しながら一実施の形態について詳説する以下の説明から看取される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】円錐円盤巻掛け伝動装置を制御するための液圧装置の液圧回路図である。
【図2】本発明における冷却器戻り弁を示す図1の部分拡大図である。
【0015】
図1は、液圧装置1の部分的に示した回路図である。液圧装置1は、図1に符号3により概略的に示した円錐円盤巻掛け伝動装置を制御するために役立つ。円錐円盤巻掛け伝動装置3は、符号5により概略的に示した自動車5のパワートレーンの一部であってよい。液圧装置1は、液圧エネルギ源7、例えば機械的又は電気的に駆動される液圧ポンプを、液圧媒体を圧送するために有している。駆動のために、液圧エネルギ源7は、自動車5の、詳述しない内燃機関に配設されていてよい。液圧エネルギ源7は、液圧エネルギを液圧装置1に供給するために役立つ。
【0016】
液圧エネルギ源7の下流には、第1の弁装置9が接続されている。第1の弁装置9は、トルクフィーラ11に割り当てられている。第1の弁装置9及びトルクフィーラ11は、特に円錐円盤巻掛け伝動装置3に作用しているトルクに基づいて、円錐円盤巻掛け伝動装置3の円錐円盤あるいはコニカルプーリと、対応する巻掛け手段との間でトルクを伝達するための圧着圧の提供及び/又は制御のために役立つ。下流において、トルクフィーラ11は、図示しない冷却器を介して冷却器戻り管路31に割り当てられている。トルクフィーラ11は、適当な制御エッジによって、かつ作用しているトルクに基づいて、液圧エネルギ源7によって供給されるシステム圧45を昇圧又は降圧可能である。
【0017】
液圧エネルギ源7の下流には、さらに、第2の弁装置13が接続されている。第2の弁装置13は、符号15により概略的に示した円錐円盤に割り当てられており、円錐円盤15を調節する、つまり円錐円盤巻掛け伝動装置3の変速比を調節するために役立つ。
【0018】
液圧エネルギ源7の下流には、さらに、第3の弁装置17が接続されている。第3の弁装置13は、前進クラッチ19及び後進クラッチ21を制御するために割り当てられている。
【0019】
液圧エネルギ源7の下流には、さらに、液圧式のパークロック・ロック解除装置23が接続されている。液圧装置1のパークロック・ロック解除装置23は、符号25により概略的に示した機械式のパークロック25に配設されている。この配設は、適当な機械的な補助手段、例えばレバーによってなすことができる。パークロック・ロック解除装置23によって、自動車5の機械式のパークロック25を入れる、つまりロックを形成し、かつ再び解除することができる。
【0020】
液圧エネルギ源7は、さらに、第4の弁装置27の供給のために役立つ。第4の弁装置27は、やはり液圧エネルギ源7によって提供される冷却油体積流量を提供するために役立つ。このために、第4の弁装置27は、符号29により概略的に示した冷却回路、特に冷却器戻り管路31、能動型の循環式冷却装置(aktive Hydronic−Kuehlung)33、ジェットポンプ35及び遠心油カバー37に割り当てられている。
【0021】
液圧エネルギ源7は、下流において、分岐39を介してパイロット制御圧調整弁41に割り当てられている。パイロット制御圧調整弁41は、下流において、パイロット制御圧43、例えば約5バールのパイロット制御圧43を調整し、液圧エネルギ源7は、より高いシステム圧45を提供する。パイロット制御圧は、公知の形式で、適当な比例弁、例えば電気的に制御可能な比例弁によって、液圧装置1のスイッチングコンポーネントを制御するために役立つ。液圧エネルギ源7によって供給される液圧エネルギの調整及び分配のために、第5の弁装置47が設けられている。第5の弁装置47は、トルクフィーラ11及び第2の弁装置13の優先的な供給、例えば自動車5のエンジンの始動時の優先的な供給を保証する。
【0022】
トルクフィーラ11の手前のシステム圧45を調整あるいは閉ループ制御するために、トルクフィーラ11は、図示しない圧力調整弁を有する。トルクフィーラ11の上流に接続されて、第1の弁装置9はシステム圧弁49を有する。システム圧弁49は、第5の弁装置47の下流に接続されており、トルクフィーラ11のための適当な体積流量を通過させる。システム圧45は、下流において、最低システム圧、例えば6バールの最低システム圧に調整可能である。システム圧45を短期的に付加的に上昇させることによって押付け圧を調節するために、システム圧弁49は、論理和素子(Oderglied)63を介して上流において付加的に第2の弁装置13に割り当てられている。
【0023】
第2の弁装置13は、液圧エネルギ源7の下流に接続される、第7の制御ピストン53を備える第7の弁51を有する。第7の制御ピストン53は、下流において、第8の弁55に制御のために割り当てられている。第8の弁55は、制御弁、例えば電気的に制御可能な比例弁であってよい。第7の弁51は、それぞれ円錐円盤15の対応する調節部材に配されている第1の通路若しくは切欠き57及び第2の通路若しくは切欠き59を有する。第7の弁51の第7の制御ピストン53によって、液圧エネルギ源7は、選択的に、連続的に、つまりスムーズに移行するように、第1の通路若しくは切欠き57又は第2の通路若しくは切欠き59に割り当て可能である。その都度、液圧エネルギ源7に割り当てられていない方の通路又は切欠きは、相応にタンク61に割り当て可能である。センタ位置において、両通路又は切欠き57及び59は、液圧エネルギ源7から遮断されて、タンク61に接続可能である。つまり、第2の弁装置13の第7の弁51によって、通路又は切欠き57及び59内には、円錐円盤15の調節のために、所望の圧力状態が設定可能である。さらに、通路又は切欠き57及び59は、システム圧弁49の論理和素子63を介してシステム圧弁49に割り当てられている。この割当てを介して、システム圧弁49によって調整される最低システム圧は、所望される程度で、第7の弁51によって行われる調節運動時にこれに適合、つまり例えば昇圧され得る。
【0024】
第4の弁装置27は、第4の弁65によって制御される冷却油調整弁67を有する。冷却油調整弁67は、第5の弁装置47の下流に接続されており、第5の弁装置47を介して液圧エネルギ源7によって液圧エネルギの供給を受ける。さらに、第4の弁装置27は戻し案内弁69を有する。戻し案内弁69は、上流において、液圧エネルギ源7に直接にか、又は液圧エネルギ源7のポンプインジェクタ(Pumpeninjektor)又はチョーク後オリフィス(Drosselhinterblende)70に割り当てられている。戻し案内弁69は、下流において、戻し案内弁69の通路又は切欠きを介して接続されて遠心油カバー37に割り当てられており、体積流量が上昇したときに部分流を直接ポンプインジェクタ70に導く。冷却油調整弁67は、冷却すべきコンポーネント31,33,35,37への所望の冷却油体積流量の維持及び調整のために役立つ。
【0025】
第3の弁装置17は、第1の制御ピストン73を備える第1の弁71を有する。第1の制御ピストン73を制御するために、第1の制御ピストン73は、下流において、第3の弁75、例えば制御弁、例えば電気的に制御可能な比例弁に割り当てられている。第1の弁71の第1の制御ピストン73は、前進クラッチ19及び後進クラッチ21を制御するために実質的に3つの切換え位置を取ることができる。後進クラッチ21が圧力で負荷されている図1に示した第1の切換え位置において、第1の弁71の第1の通路又は切欠き77は、第1の制御ピストン73によって液圧エネルギ源7に割り当てられている。液圧エネルギ源7への割当ては、第5の弁79を介してなされる。第5の弁79は、第6の弁81、例えば制御弁、例えば電気的に制御可能な比例弁によって制御可能であり、選択的に下流に接続されるクラッチ19及び21の閉鎖のための圧力の提供若しくは開ループ制御及び/又は閉ループ制御のために役立つ。伝達すべきトルクがかかっている場合、圧力は例えば20バールまでであってよい。有利には、第5の弁79は、付加的に、例えば機能障害時に、有利には電流失陥時に、下流に接続された第1の弁71を無圧に切り換える、つまり液圧エネルギ源7を第1の弁71から切り離すために使用され得る。有利には、このために、第1の弁71の入口も、液圧エネルギ源7も、タンク61に接続され得る。
【0026】
図1の位置関係で見て右側への第1の弁71の第1の制御ピストン73の移動に相当する第2の切換え位置において、上流に接続された第5の弁79との接続は遮断され得る。同時に、第1の弁71の第1の制御ピストン73によって、第1の通路又は切欠き77は、タンク61に接続され得る。その結果、後進クラッチは無圧である。さらに、この切換え位置において、前進クラッチ19も第1の弁71の第2の通路又は切欠き83を介してタンク61に接続され得る。
【0027】
図1の位置関係で見て第1の制御ピストン71の右方向へのさらなる移動に相当する第3の切換え位置において、第2の通路又は切欠き83を第5の弁79に割り当て、第1の通路又は切欠き77をタンク61に割り当てることができる。つまり、自動車5の前進ギヤが入れられた状態に対応するこの第3の切換え位置において、前進クラッチ19は圧力負荷されており、後進クラッチ21は無圧に切り換えられている。
【0028】
パークロック・ロック解除装置23は、2部分からなるパークロックシリンダ85を有する。パークロックシリンダ85は、パークロック25の、図1には詳細には示さない戻しばねによって、図1の位置関係で見て左方向に予め付勢されていてよい。この付勢に抗して、パークロックシリンダ85は、パークロック25を解除するために、図1の位置関係で見て右方向に移動可能である。適当な液圧力を加えるために、パークロックシリンダ85の端面87は、パークロック・ロック解除装置23の第2の弁89の下流に接続されている。パークロック25のロック解除中にシステム圧45を高めるために、同時に第2の弁装置13の第7の弁51を任意の調節方向に操作することが考えられる。下流に接続された論理和素子及びシステム圧弁49を介して、システム圧45は、例えば50バールまで高められる。
【0029】
パークロック・ロック解除装置23の第2の弁89は、液圧エネルギ源7の下流に接続されている。パークロックシリンダ85の端面87は、液圧エネルギ源7のシステム圧45に、第2の弁89の第2の制御ピストン91によって直接割当て可能である。第2の制御ピストン91の制御を第4の弁装置27の第4の弁65によってなすことができる。第2の制御ピストン91は、下流において、第4の弁65に割り当てられている。つまり、冷却油調整弁67及び第2の弁89は、同様に第4の弁65によって制御される。例えば、パークロック25は、冷却油体積流量の同時の流入制御時に解除されることができ、また逆の制御時にはロックされることができる。しかし、弁67及び89の制御面及び/又は作用方向をそれぞれ異なるものに設計すること、例えばまずパークロック25がロック解除され、第4の弁65のさらなる圧力上昇時に冷却油調整弁67のスプールが冷却の作動のためにも操作されるように設計することも可能である。つまり、この設計では、パークロック25の解除を冷却の同時の強制的な作動なしに解除することができる。
【0030】
図2には、冷却器戻り弁69とも呼ばれる戻し案内弁69の部分拡大図が示されている。拡大図において、ポンプ7が作業媒体をタンク100から吸い込むことが判る。この目的のために、ポンプ7は、ポンプ吸込み管路101を介してタンク100と連通している。さらに、ポンプ7は、別のポンプ吸込み管路102を介して冷却器戻り弁69と連通している。この別のポンプ吸込み管路102内には、オリフィス又はチョークを備えるポンプインジェクタ70が配置されている。この別のポンプ吸込み管路102は、前記ポンプ吸込み管路101に開口している。
【0031】
本発明の重要な観点では、冷却器戻り弁69が最低圧弁105として構成されている。最低圧弁105は弁ケーシング108を有する。弁ケーシング108内には、弁ピストン110が往復運動可能に収容されている。弁ピストン110は、一方の端面に吸込み圧作用面111を有する。吸込み圧作用面111は、吸込み圧室114を弁ケーシング108内に画成する。吸込み圧室114内には、前記別のポンプ吸込み管路102が開口しているので、吸込み圧作用面111は、この別のポンプ吸込み管路102内を支配する吸込み圧により負荷されている。
【0032】
吸込み圧作用面111は、半径方向外側で、本実施の形態では錐形座面あるいは円錐座面として構成されている作用面112に移行している。図2において、弁ピストン110は閉鎖位置にある。閉鎖位置において、錐形座面112は弁ケーシング108のシールエッジに当接する。弁ピストン110の図示の閉鎖位置において、冷却器戻り管路31と吸込み圧室114あるいは前記別のポンプ吸込み管路102との間の接続は、弁ピストン110によって中断若しくは遮断又は閉鎖されている。弁ピストン110は、弁ピストン110の、吸込み圧作用面111とは反対側の端部に作用する閉鎖ばね115によって、その閉鎖位置に向かって予め付勢されている。
【0033】
弁ピストン110には、さらに、戻り圧作用面の部分面116が設けられている。本実施の形態では、戻り圧作用面の部分面116は、錐形座面112の、弁ケーシング108に設けられるシールエッジの半径方向外側に配置されている領域によって形成される。戻り圧作用面の部分面116は、冷却器戻り管路31を介して直接、冷却器戻り管路31内を支配する戻り圧によって負荷されている。
【0034】
戻り圧作用面は、部分面116に対して付加的に、弁ピストン110の段部118に設けられている別の部分面117を有する。この別の部分面117も、部分面116と同様に、閉鎖ばね115とは反対側にある。別の部分面117は、チョーク121が設けられた冷却器戻り接続管路120を介して間接的にのみ、すなわちチョーク121を介して、冷却器戻り管路31と連通している。
【0035】
冷却器戻り管路31内の圧力が0バール又は周囲圧若しくは大気圧にある初期状態において、弁ピストン110は、冷却器戻り管路31からポンプ吸込み管路102への経路あるいは接続を錐形座112によって閉鎖する。錐形座112は、ポンプ7に対する極めて良好なシールをなす。弁ピストン110の閉鎖位置において、ポンプ7は作業媒体を、タンク100のみから吸い込む。
【0036】
冷却器戻り管路31内の圧力が上昇すると、両部分面116,117を有する戻り圧作用面には、閉鎖ばね115のばね力に抗して作用する力が生じる。一方が直接に、他方が間接に冷却器戻り圧によって負荷されている両部分面116,117に戻り圧作用面を分割したことは、最低圧弁105の必要な減衰を提供する。
【0037】
戻り圧作用面116,117に作用する圧力が、例えば1.8バールの所定の最低圧を上回ると、弁ピストン110は、閉鎖ばね115に向かって、すなわち図2で見て左方向に運動し、かつ錐形座112の領域において開口横断面を開放する。その結果、作業媒体、特に油は、冷却器戻り管路31から前記別のポンプ吸込み管路102を通り、ポンプインジェクタ70を介してポンプ7へと流動する。弁ピストン110の対応する(図示しない)位置は、開放位置とも呼ばれる。
【0038】
弁ピストン110の開放位置における体積流量によって、ポンプ吸込み管路102内には、ポンプインジェクタ70において、弁ピストン110の吸込み圧作用面111に作用する吸込み圧が形成される。この吸込み圧は、体積流量がより高くなると、あるいは吸込み圧室114内の圧力がより高くなると、弁ピストン110がさらに閉鎖ばね115に向かって、すなわち図2で見て左方向に、対応するストッパに向かって運動することに至らしめる。ストッパは、閉鎖ばね115がブロック化するあるいは密着状態になることによって実現されていてよい。
【0039】
本発明における解決手段の主な利点は、冷却器戻り弁69のより単純な構造形式と、冷却器戻り弁69が絶対圧弁として作用するので背圧がより低く維持されることにある。他方、この圧力の低下は、伝動装置全体の効率改善を生じる。最低圧弁105によって、特に、冷却器戻り管路31内の圧力が低いとき、ポンプ7が空気を冷却器戻り管路31から吸い込むことが防止される。空気の吸込みは、ポンプ7の機能をかなり悪化させることになる。最低圧弁105によって、常に最低圧が存在していることが保証される。最低圧弁105は、最低圧が超過されて初めて開弁する。
【符号の説明】
【0040】
1 液圧装置、 3 円錐円盤巻掛け伝動装置、 5 自動車、 7 液圧エネルギ源、 9 第1の弁装置、 11 トルクフィーラ、 13 第2の弁装置、 15 円錐円盤、 17 第3の弁装置、 19 前進クラッチ、 21 後進クラッチ、 23 パークロック・ロック解除装置、 25 機械式のパークロック、 27 第4の弁装置、 29 冷却回路、 31 冷却器戻り管路、 33 能動型の循環式冷却装置、 35 ジェットポンプ、 37 遠心油カバー、 39 分岐、 41 パイロット制御圧調整弁、 43 パイロット制御圧、 45 システム圧、 47 第5の弁装置、 49 システム圧弁、 51 第7の弁、 53 第7の制御ピストン、 55 第8の弁、 57 第1の通路、 59 第2の通路、 61 タンク、 63 論理和素子、 65 第4の弁、 67 冷却油調整弁、 69 戻し案内弁、70 ポンプインジェクタ、 71 第1の弁、 73 第1の制御ピストン、 75 第3の弁、 77 第1の通路、 79 第5の弁、 81 第6の弁、 83 第2の通路、 85 パークロックシリンダ、 87 端面、 89 第2の弁、 91 第2の制御ピストン、 93 第1の部分シリンダ、 100 タンク、 101 ポンプ吸込み管路、 102 ポンプ吸込み管路、 105 最低圧弁、 108 弁ケーシング、 110 弁ピストン、 111 吸込み圧作用面、 112 作用面、 114 吸込み圧室、 115 閉鎖ばね、 116 部分面、 117 部分面、 118 段部、 120 冷却器戻り接続管路、 121 チョーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円錐円盤巻掛け伝動装置(3)を制御するための液圧装置であって、ポンプ(7)を備え、該ポンプ(7)が作業媒体を作業媒体タンク(100)からか、又は冷却器戻り弁(69)を介して冷却器戻り管路(31)から吸い込む形式のものにおいて、前記冷却器戻り弁(69)が最低圧弁(105)として構成されており、該最低圧弁(105)が、前記冷却器戻り管路(31)とポンプ吸込み管路(102)との間の接続を前記冷却器戻り弁(69)によって、前記冷却器戻り管路(31)内の所定の最低圧を下回る限り閉鎖状態に維持し、かつ前記冷却器戻り管路(31)とポンプ吸込み管路(102)との間の接続を前記冷却器戻り弁(69)によって、前記冷却器戻り管路(31)内の所定の最低圧を上回ると直ちに開放することを特徴とする、円錐円盤巻掛け伝動装置を制御するための液圧装置。
【請求項2】
前記冷却器戻り弁(69)が、作用面(112)を備える弁ピストン(110)を備え、該作用面(112)が前記弁ピストン(110)の閉鎖位置においてシールエッジに対して予め付勢されている、請求項1記載の液圧装置。
【請求項3】
前記弁ピストン(110)が閉鎖ばね(115)によって閉鎖位置へと予め付勢されている、請求項2記載の液圧装置。
【請求項4】
前記作用面(112)が錐形座面として構成されている、請求項2又は3記載の液圧装置。
【請求項5】
前記弁ピストン(110)が、該弁ピストン(110)に作用する付勢力に抗して前記冷却器戻り管路(31)からの圧力で負荷されている戻り圧作用面を備える、請求項2から4までのいずれか1項記載の液圧装置。
【請求項6】
前記戻り圧作用面が、直接前記冷却器戻り管路(31)と連通する部分面(116)を備える、請求項5記載の液圧装置。
【請求項7】
前記部分面(116)が前記作用面(112)の半径方向外側に形成されている、請求項4から6までのいずれか1項記載の液圧装置。
【請求項8】
前記戻り圧作用面が、オリフィス(121)を介して前記冷却器戻り管路(31)と連通する別の部分面(117)を備える、請求項6又は7記載の液圧装置。
【請求項9】
前記オリフィス(121)が約0.75mmの直径を有する、請求項8記載の液圧装置。
【請求項10】
前記弁ピストン(110)が、前記ポンプ吸込み管路(102)内の圧力により負荷されている吸込み圧作用面(111)を備える、請求項2から9までのいずれか1項記載の液圧装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−505529(P2011−505529A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536316(P2010−536316)
【出願日】平成20年11月17日(2008.11.17)
【国際出願番号】PCT/DE2008/001899
【国際公開番号】WO2009/071048
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(390009070)ルーク ラメレン ウント クツプルングスバウ ベタイリグングス コマンディートゲゼルシャフト (236)
【氏名又は名称原語表記】LuK Lamellen und Kupplungsbau  Beteiligungs KG
【住所又は居所原語表記】Industriestrasse 3, D−77815 Buehl, Germany
【Fターム(参考)】