説明

冷凍倉庫の保管管理システム

【課題】フォークリフト運転手の記憶や動作に頼らずに、冷凍倉庫内の保管物の管理を行う。
【解決手段】フォークリフト車4が、フォーク20上の収納籠2の電子タグ3のIDデータを読み取る電子タグリーダ装置と、当該IDデータの検知から検知OFFあるいはその逆の状態に移行した時、同タイミングでフォーク20の高さを検知するフォーク高さセンサから得た高さ情報と、車体本体の現在の位置検出手段から求めた位置情報をIDデータとともに送信する車載コントローラ11とを備え、冷凍倉庫1外部の管理制御装置6は、それらを受信し、当該位置情報および高さ情報をIDデータごとにデータベースに格納する。これをフォークリフト車4が収納籠を納庫・出庫・移動する都度、行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、冷凍倉庫の保管物の保管管理を行うための冷凍倉庫の保管管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
冷凍倉庫、特に、冷凍マグロ等の保管に代表される超低温(マイナス50℃以下)の冷凍倉庫では、倉庫の収容能力を最大限利用するために、保管物は籠に収納され、倉庫の奥から順に多段積みされて倉庫内に収納される。結果として、先に入れた保管物を取り出すときは、手前の保管物を移動しながら、取り出すことになる(例えば、非特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】日本超低温株式会社ホームページ、“事業案内”、“技術・品質・環境”、左側の写真、[online]、copyright 2008(2009年4月1日更新)、日本超低温株式会社、[平成21年11月13日検索]、インターネット<URL: http://www.jsfw.co.jp/business/quality/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
現在、これらの作業はフォークリフト運転手が判断し、作業・記録する場合が多い。庫内作業時間は限られており、作業しながら、あるいは、一連の作業後に、保管場所を記録するので、記入漏れや間違いが発生し、さらにその倉庫担当のフォークリフト運転手が不在だったりすると、品物の保管場所がまったく分らないことがあるという問題点があった。
【0005】
この発明は、かかる問題点を解決するためになされたものであり、冷凍倉庫においてフォークリフト運転手の記憶や動作に頼らずに、冷凍倉庫内の保管物の管理が可能な冷凍倉庫の保管管理システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、冷凍倉庫内に保管する保管物を収納する収納籠に取り付けられた電子タグと、前記収納籠を運搬するときに使うフォークリフト車がフォークで前記収納籠を保持している間、当該収納籠の前記電子タグのIDデータを読み取る電子タグリーダ装置と、前記フォークの高さを検知するフォーク高さセンサと、前記フォークリフト車体の現在位置を取得する現在位置認識手段と、前記電子タグリーダ装置による前記IDデータの読み取りが検知状態から非検知状態あるいは非検知状態から検知状態に移行した時点で、前記現在位置認識手段により得られた前記フォークリフト車体の前記現在位置の情報と前記フォーク高さセンサにより検知された前記フォークの高さ情報とを前記IDデータとともに送信するコントローラと、前記冷凍倉庫の外部に設置され、前記コントローラから送信されてきた、前記フォークリフト車体の現在位置の情報と、前記フォークの高さ情報と、前記IDデータとを受信して、当該IDデータごとに前記現在位置の情報と前記高さ情報とをデータベースに格納する管理制御装置とを備えたことを特徴とする冷凍倉庫の保管管理システムである。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、冷凍倉庫内に保管する保管物を収納する収納籠に取り付けられた電子タグと、前記収納籠を運搬するときに使うフォークリフト車がフォークで前記収納籠を保持している間、当該収納籠の前記電子タグのIDデータを読み取る電子タグリーダ装置と、前記フォークの高さを検知するフォーク高さセンサと、前記フォークリフト車体の現在位置を取得する現在位置認識手段と、前記電子タグリーダ装置による前記IDデータの読み取りが検知状態から非検知状態あるいは非検知状態から検知状態に移行した時点で、前記現在位置認識手段により得られた前記フォークリフト車体の前記現在位置の情報と前記フォーク高さセンサにより検知された前記フォークの高さ情報とを前記IDデータとともに送信するコントローラと、前記冷凍倉庫の外部に設置され、前記コントローラから送信されてきた、前記フォークリフト車体の現在位置の情報と、前記フォークの高さ情報と、前記IDデータとを受信して、当該IDデータごとに前記現在位置の情報と前記高さ情報とをデータベースに格納する管理制御装置とを備えたことを特徴とする冷凍倉庫の保管管理システムであるので、冷凍倉庫へ収納籠を納庫する、あるいは、出庫や庫内で収納籠を移動する都度、自動的に収納籠の保管場所をデータベースに記憶することができるので、冷凍倉庫においてフォークリフト運転手の記憶や動作に頼らずに、冷凍倉庫内の保管物の管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る冷凍倉庫の保管管理システムにおける管理対象となる冷凍倉庫の内部の構成を模式的に記載した構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る冷凍倉庫の保管管理システムにおけるフォークリフト車に搭載された各種機器を示した斜視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る冷凍倉庫の保管管理システムにおけるフォークリフト車の内部構成を示した構成図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る冷凍倉庫の保管管理システムにおけるジャイロ装置とパルスエンコーダとによる位置認識手段の具体的なアルゴリズムを示したフロー図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る冷凍倉庫の保管管理システムにおける管理対象となる冷凍倉庫内の構成を示した平面模式図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る冷凍倉庫の保管管理システムにおけるフォークリフト車に設けられた電子タグリーダアンテナ部の内部構成を示した構成図である。
【図7】従来の電子タグリーダアンテナの構成を示した構成図である。
【図8】この発明の実施の形態1に係る冷凍倉庫の保管管理システムにおけるフォークリフト車に設けられた電子タグリーダアンテナ部の構成を示した断面図である。
【図9】この発明の実施の形態1に係る冷凍倉庫の保管管理システムにおけるフォークリフト車に設けられた電子タグリーダアンテナ部の構成を示した斜視図である。
【図10】この発明の実施の形態1に係る冷凍倉庫の保管管理システムにおける収納籠の位置と、フォークリフト車の車輪の位置と、フォークリフト車の車両角度との関係を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1に係る冷凍倉庫の保管管理システムについて説明する。図1は、本システムの管理対象となる冷凍倉庫の内部の構成を模式的に記載した図である。図2は、本システムで用いられるフォークリフト車に搭載された各種機器を示した図であり、図3は、フォークリフト車の内部構成を示したブロック図である。
【0010】
図1〜3において、1は冷凍倉庫、2は収納籠、3は電子タグ、4はフォークリフト車、5は無線機、6は管理制御装置、7は表示操作パネル、8は電子タグリーダアンテナ部、9はフォーク高さセンサ、10はパルスエンコーダ、11は車載コントローラ、12は無線通信装置、13はジャイロ装置、14は車両用バッテリー、15は正弦波インバータ、16はDC電源装置、17はBluetooth端末、18はフォークリフト車側通過センサ、19はフォークリフト車4の車輪、20はフォークリフト車4のフォーク、21は収納籠2のパレット部である。
【0011】
図1に示すように、冷凍魚等の保管物は収納籠2に収納されて、冷凍倉庫1内に保管される。収納籠2は、一般に金属製で、多段積みできる構造のものである。多段積みしやすいように、収納籠2は、原則として、同じ大きさに形成されている。収納籠2は当然平置きしてもよいが、通常は、冷凍倉庫1の収納能力を最大限利用するために、冷凍倉庫1の奥から順に多段積みされて収納される。収納籠2の納庫及び出庫の作業は、フォークリフト車4により収納籠2をピックアップして、フォーク20に収納籠2を載置した状態で運搬して行う。
【0012】
また、図1に示すように、収納籠2は略々直方体形状を有しており、また、収納籠2の底部は板状のパレット部21となっており、フォークリフト車4で収納籠2をピックアップする際には、収納籠2のパレット部21をフォークリフト車4のフォーク20(図2)ですくうようにして、ピックアップする。フォーク20は、上下移動あるいはチルト可能なように設けられている。フォーク20の上下移動距離は略々数メートルである。
フォークリフト車4が収納籠2を把持する要領は、フォーク20の高さをパレット部21のフォーク装入位置(図示せず)にあわせて前進し、少し上昇して収納籠2をフォーク20上に定置する。
また、フォーク20から降ろす場合は、荷降ろし予定位置上部で収納籠2の足部の位置あわせをしたあと、フォーク20を下降させ、収納籠2が安定した状態で、フォーク20がフリーになった状態を確認して、フォークリフト車4を後退させて離れる。
【0013】
また、収納籠2には、図1に示すように、電子タグ3が取り付けられている。電子タグ3は、収納籠2のパレット部21の上部のあたりに取り付けられている。電子タグ2内には、各収納籠2に付された(互いに重複しない)固有識別情報であるIDデータが記憶されている。このIDデータにより、各収納籠2を識別することができる。なお、電子タグ3内には、IDデータの他、必要に応じて、種々のデータを記憶させることが可能である。
【0014】
一方、フォークリフト車4には、図2に示すように、フォーク20の付け根に、電子タグリーダアンテナ部8が取り付けられている。フォーク20で収納籠2をすくった時点(あるいは、接近した時点)から収納籠2を降ろすまでの間、電子タグリーダアンテナ部8は、収納籠2に付された電子タグ3内のIDデータ等の情報を認識(センシング)し続ける。従って、電子タグリーダアンテナ部8が、収納籠2の電子タグ3内のIDデータを検知した場合は、収納籠2がフォーク20でピックアップされた(あるいは、接近された)ことを示し、一方、収納籠2の電子タグ3内のIDデータを検知OFF(検知の状態から非検知の状態に移行)した場合は、当該収納籠2がフォーク20から降ろされたことを示す。電子タグリーダアンテナ部8は、フォーク20が収納籠2をすくう(または、接近した)際の所定の距離範囲内(読み取り可能圏内)で電子タグ3内のIDデータが認識可能となるような大きさおよび能力を有したアンテナから構成される。
【0015】
また、図2に示すように、フォークリフト車4には、運転手に知らせるための情報やメッセージを表示するとともに運転手からの操作の入力を受け付けるタッチパネル等から構成された表示操作パネル7が運転席付近に設けられている。また、表示操作パネル7には、音により運転手に確認や注意を促すためのブザー等の装置を設けるようにしてもよい。また、フォークリフト車4には、フォークリフト車4のフォーク20の高さを計測するフォーク高さセンサ9が設けられている。フォークリフト車4には、さらに、上述の監視制御を行うための車載コントローラ11、および、図1の冷凍倉庫1内の無線機5との間の無線通信を行うための無線通信装置12が設けられている。
【0016】
また、図3に示すように、フォークリフト車4には、その位置がわかる位置認識手段として、フォークリフト車4の車体の角度変化を計測するジャイロ装置13(角速度計)と、フォークリフト車4の車輪19の回転数を計測するための可逆エンコーダからなるパルスエンコーダ10とが搭載されている。パルスエンコーダ10は、車輪19の回転数に比例したパルスを出力する。ジャイロ装置13の信号と、パルスエンコーダ10の信号から、車載コントローラ11は常に演算処理しながらフォークリフト車4の位置をX,Y座標を距離で得る。また、フォークリフト車4には、位置認識の基準点(0,0)(すなわち、位置検出のためのリセットポイント)として予め定められた冷凍倉庫1の入口を、フォークリフト車4が通過したことを検出するためのフォークリフト車側通過センサ18が設けられている。さらに、フォークリフト車4には、フォークリフト車4を駆動するための、車両用バッテリー14、車載コントローラ11や無線通信装置12の電源を供給する正弦波インバータ15、および、DC電源装置16が設けられている。
【0017】
保管物を冷凍倉庫1内に納庫する場合は、フォークリフト車4が収納籠2をピックアップして冷凍倉庫1内に入り、保管場所に収納籠2を置いたときに、電子タグ3のIDデータが検知OFFとなるので、当該検知OFFとなったタイミングで、フォーク20の高さを検出して、車載コントローラ11に入力する。車載コントローラ11は、フォークリフト車4の現在の位置座標の情報を、フォーク高さセンサ9により検出された高さ情報、収納籠2の電子タグ3のIDデータとともに、無線通信装置12から、冷凍倉庫1内の無線機5に送信する。なお、当該位置座標の情報および高さ情報は、収納籠2の電子タグ3のIDデータが検知OFFされたタイミングで取得されたものであるため、すなわち、収納籠2の保管場所を示すデータとなっている。
【0018】
図1に示すように、冷凍倉庫1の外部には、パソコン等の計算機(コンピュータ)から構成された管理制御装置6が設けられており、冷凍倉庫1内に設けられた無線機5を通じてフォークリフト車4の無線通信装置12との間で無線通信を行う。当該無線通信は、例えば、特定小電力無線通信モデムを用いて行う。また、当該無線通信は、イベント発生ごとおよび数秒間隔等の所定の時間間隔で行われることが望ましい。図1の例では、管理制御装置6と無線機5とは有線接続されているが、この場合に限らず、これらの間も無線接続するようにしてもよい。但し、フォークリフト車4が移動する関係で、フォークリフト車4と無線機5との間は有線通信ではなく、無線通信である。
【0019】
管理制御装置6の内部メモリには、収納籠2のIDデータと収納籠2の保管場所のデータを記憶したデータベースが格納されている。収納籠2の保管場所のデータは、フォークリフト車4から送信されてきた、上述の、冷凍倉庫1内の保管場所の位置座標情報(水平位置であるX座標,Y座標)と高さ情報(垂直位置であるZ座標(すなわち、多段積みの何段目かの情報))とから構成される。また、管理制御装置6には、当該データベース等を表示するためのディスプレイ装置や、文字入力や各種操作を行うためのキーボードやマウスといった入力装置、上位コンピュータとのLAN装置などが設けられている。
【0020】
次に、動作について説明する。
保管物を冷凍倉庫1に納庫する場合は、フォークリフト車4が、収納籠2をフォーク20により抱えて冷凍倉庫1内に入り、保管場所に収納籠2を置いたときに、その時点までは電子タグリーダアンテナ部8によりセンシングしていた電子タグ3が非認識状態となるので、そのタイミングで、フォークリフト車4の位置(X、Y座標距離で与える。)情報を読み出し、フォーク高さセンサ9によりフォーク20の高さ(Z座標で与える。)を検出し、さらに、電子タグリーダアンテナ部8により電子タグ3のIDの記憶データを読み出して、それらの情報を、無線通信装置12により発信し、冷凍倉庫1外に設置した管理制御装置6に無線機5を介して送信する。これにより、管理制御装置6は、その場所に保管物が置かれたと判断し、当該位置情報および高さ情報をIDデータごとに保管日時とともに内部メモリ等の記憶装置(図示せず)内のデータベースに格納する。データベースの一例を示す。
【0021】
保管日時 IDデータ X座標 Y座標 Z座標
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2009/11/02 0005 00100 00100 0050
2009/11/02 0007 00200 00100 0050
2009/11/02 0010 00600 00300 0100
2009/11/02 0011 00600 00300 0200
2009/11/04 0020 00800 00100 0100
2009/11/04 0021 00800 00200 0100
2009/11/04 0022 00800 00300 0100
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【0022】
なお、上記の例ではX,Y,Z座標のデータが格納されているが、冷凍倉庫1内が、例えば、図5のように、平面的に碁盤の目のように、収納籠2の配置箇所が決まっていて、かつ、収納籠2の大きさが全て同じである場合には、X,Y,Z座標の値から、○○行、◇◇列、△△段目であるかが計算により求められるので、データベース内に「○○行、◇◇列、△△段目」というデータも格納するようにしておくと、さらに、分かりやすく、利便性が向上する。また、データベース内には、収納籠2内の保管物に関する他の情報(保管物の所有者の名称や、その固有識別コード、保管物の商品名(マグロ等)や分類コード)も記憶するようにしておけば、さらに、便利である。
【0023】
保管物を出庫する場合は、管理者が、管理制御装置6に、冷凍倉庫1から出庫したい収納籠2のIDデータを入力する。これにより、冷凍倉庫1内に保管されている対象となる収納籠2のIDデータおよびそれの保管場所(X、Y座標、および、高さ(Z座標)など)が、管理制御装置6から、フォークリフト車4の車載コンローラ11に、無線機5を介して無線で伝送され、表示操作パネル7に表示されてフォークリフト車4を運転している運転手に通知される。このとき、データベース内の、「○○行、◇◇列、△△段目」というデータも同時に表示する。運転手は、表示操作パネル7に表示されている収納籠2の保管場所と自車の位置(X、Y座標)とに基づいて、対象となる収納籠2の保管場所まで移動し、対象となる収納籠2をフォーク20によりピックアップする。これにより、対象とする収納籠2の電子タグ3のIDデータがフォークリフト車4の電子タグリーダアンテナ部8によりセンシングされる。このタイミングで、フォークリフト車4は、ジャイロ装置13によりフォークリフト車4の位置(X、Y座標距離で与える。)を検出し、フォーク高さセンサ9によりフォーク20の高さ(Z座標で与える。)を検出して、電子タグ3のIDデータとともに、それらの情報を無線通信装置12から発信し、冷凍倉庫1外に設置した管理制御装置6に無線機5を介して送信する。管理制御装置6は、電子タグ3のIDデータがセンシングされたこと、且つ、フォークリフト車4の位置情報、および、フォーク20の高さ情報で、フォークリフト車4がピックアップした収納籠2が、対象とする収納籠2であることを認識および確認する。その後、フォークリフト車4がその場を離れた(あるいは冷凍倉庫1外に出た)ことをフォークリフト車4の位置(X、Y座標距離で与える。)から判断し、それにより、管理制御装置6は、当該収納籠2の保管情報を内部メモリのデータベースから消去(または出庫の記録情報を格納して更新)する。
【0024】
なお、間違った収納籠2を出庫した場合は、車載コントローラ11が、管理制御装置6から送信されてきた電子タグ3のID情報と現在センシングした収納籠2の電子タグ3のIDデータとを照合し、それらの不一致により、間違った収納籠2であると判定して、運転席の表示操作パネル7に表示するか、および/または、表示操作パネル7に取り付けられたアラーム装置によりブザーを鳴らするなどして、運転手に対して、間違っていることを通知する。運転手はこれにより間違いに気づき、間違えてピックアップした収納籠2を元に戻し、再度やり直して、正しい収納籠2をピックアップするようにする。
ただし、前述したように、奥にある収納籠2を取り出す場合は、手前の収納籠2を移動しなければならないので、指定されない収納籠2をピックアップしただけで、間違いにはならない。
【0025】
また、フォークリフト車4が電子タグ3を検知/検知OFFしたときも、電子タグ3のIDデータの表示/非表示とブザー音とでそれぞれ知らせるようにしてもよい。すなわち、フォークリフト車4が電子タグ3を検知したときは、電子タグ3のIDデータを表示操作パネル7に表示するとともにブザー音でそれを運転手に知らせ、一方、フォークリフト車4が電子タグ3を検知しなくなったとき(非認識状態になったとき)は、それまで表示していた電子タグ3のIDデータを表示操作パネル7から消去するとともにブザー音でそれを運転手に知らせるようにする。
【0026】
また、複数個の収納籠2を同時に出庫する場合は、データベースの情報から複数段になっていることを管理制御装置6が認識しているので(すなわち、X座標およびY座標が同じで、Z座標のみが異なる場合、それらは多段積みされていると認識されるので)、管理制御装置6は、センシングした電子タグ3のIDデータとフォーク高さセンサ9からの高さ情報とに基づいて、複数個の収納籠2を同時に移動(出庫)したと判断し認識する。
【0027】
たとえば、収納籠2が4段積みされている保管場所で3段目の収納籠2を認識したとき、管理制御装置6は、フォークリフト車4が3段目と4段目の2段の収納籠2を同時に運搬していると判断する。
【0028】
一方、複数個の収納籠2を2段同時に搬入するときは、まず、収納籠2をフォークリフト車4にピックアップする際に、収納籠2の2段目に相当する高さで電子タグ3を検知した後にすぐに非検知状態(検知OFF)となり、その後、その同じ位置で、1段目の収納籠2の電子タグ3を検知した状態で、その収納籠2を動かしたとき、2段同時搬入であると、管理制御装置6が判断する。また、フォークリフト車4が冷凍倉庫1内に侵入し、収納籠2の保管場所で、それまでセンシングされていた当該収納籠2の電子タグが、収納籠2の2段目に相当する高さで、非検知状態(検知OFF)にされたときは、2段同時に搬入された2つの収納籠2が、それぞれ、2段目と3段目に保管されたものと、管理制御装置6は認識する。なお、上述の場合に限らず、運転手が2段重ねで収納籠2をピックアップしたときに、運転室の表示操作パネルのタッチパネルを操作して、2段同時搬入であることを管理制御装置6に知らせるようにしてもよい。
【0029】
上記は、冷凍倉庫1に対する搬入/搬出について説明したが、保管物(収納籠2)を冷凍倉庫1内で移動させる場合も同様である。すなわち、センシングした収納籠2の電子タグ3のIDデータとフォークリフト車4の位置情報とに基づいて、保管されていた位置から電子タグが非認識状態になった場所の位置まで保管物(収納籠2)が移動したと、管理制御装置6が認識することになる。なお、収納籠2を複数個同時に移動する場合も同様に管理される。
【0030】
正規に決まられた場所以外の、例えば、冷凍倉庫1の外部または内部の通路部に置かれるような場合は、位置座標データのほかに、フォークリフト車4の角度情報を管理制御装置6に送るのがよい。
【0031】
このようなことは、フォークリフト車4の電子タグ3のアクセス等のイベント発生のたびに、フォークリフト車4が管理制御装置6とデータ通信することで実現可能となる。さらに、所定の時間間隔(例えば、数秒間隔)でデータ通信した場合は、フォークリフト車4の動きが管理制御装置6でトレンド表示することができる。
【0032】
尚、本システムの基本単位は冷凍倉庫室1個ごとであるため、複数個の冷凍倉庫1がある場合は、それぞれに、同じような本システムを構築するようにする。但し、冷凍倉庫1外に設置する管理制御装置6は、それらに対して共通化することができる。
【0033】
なお、図1の例は、同じ大きさの収納籠2を想定したが、異なる大きさの籠やパレットに保管物を保管する場合も、それらの大きさの情報を電子タグ3のIDデータに紐付けして管理制御装置6内に記憶しておけば、保管物をどこに保管したかの管理が可能となる。
【0034】
一般に、冷凍倉庫1、特に、超低温倉庫の建屋は、鉄筋コンクリートや断熱材で覆われており、また、複数階になっていることが多い。よって、GPSによる位置検知が期待できない。本実施の形態1に係るフォークリフト車は、無人走行車ではないし、冷凍倉庫という劣悪な環境なので、床面にマーカーを置くことも適当ではない。
【0035】
従って、本システムにおいては、位置認識手段として、フォークリフト車4の前車輪(非方向舵輪)である車輪19に取り付けたパルスエンコーダ10と、角速度検知のジャイロ装置13とで構成する位置認識手段を用いる。
【0036】
なお、このような、ジャイロ装置とパルスエンコーダとを組み合わせた位置認識手段は、多くの事例があるので、原理の詳細はここでは言及せず、既存のものでよいこととする。
【0037】
本実施の形態で用いるジャイロ装置とパルスエンコーダとによる位置認識システムの具体的なアルゴリズムを図4に示す。
【0038】
使用するジャイロ装置13は、一般にレートジャイロと呼ばれ、回転角速度のみを出力するので、車両のどの場所に設置しても運動加速度の影響を受けない。ジャイロ装置13のサンプリングタイムは1msecで、1msecごとの角度偏差を出力する。そのため、それを100回積算(して後述のドリフト補正)することで、フォークリフト車4の100msecの変化角度を得る。それを前回値に加算することにより、フォークリフト車4の車体の現在の水平角度を算出する(ステップS1)。尚、ジャイロ装置13にはドリフト誤差があり、例えば、静止状態が続いたときに、だんだん角度が増加(あるいは減少)する。したがって、必要に応じて、当該ドリフト誤差分を補正する(ステップS1−1)。このドリフト補正は、フォークリフト車4が静止状態の数秒間のジャイロ装置13の出力積算量を測定して行う。角度は、小数点2桁で計算する。
【0039】
一方、フォークリフト車4の車輪19に取り付けたパルスエンコーダ10は、車輪19の回転を検出し、パルスで出力する(ステップS2)。当該出力パルスは、パルスエンコーダ10のカウント値として、内部メモリ等の記憶装置に記憶される。1回転500パルスの出力とすると、車輪19の円周が1000mmとすれば、1パルスで2mm動いたことになる。この値は、実際には補正などの演算処理が入り、また積算処理されるので、0.1mmの精度で計算する。
【0040】
次に、100msec分のパルスエンコーダ10によるカウント値を読み込み、当該値に1カウント(1パルス)あたりの長さを乗算して、車輪19の回転に基づくフォークリフト車4の移動距離を計算する(ステップS3)。
【0041】
次に、ステップS1で求めた100msecごとの水平角度を読み出し、当該角度の正弦(sin)および余弦(cos)を算出して、それらの値に、それぞれ、ステップS3で求めた移動距離を乗算して、X,Y座標成分に分解した移動値を計算する(ステップS4)。
【0042】
次に、ステップS4で求めたX,Y座標成分の移動値を、それらの前回値に加算していくことで、フォークリフト車4の100msecごとのフォークリフト車4の現在位置(X、Y座標値)を得ることができる。
これらのデータを100msecごとに、あるいはもっと間引いてもよいが、データを保持すると、フォークリフト車4の軌跡を得ることができる。
【0043】
なお、フォークリフト車4の現在位置(X、Y座標値)を得る場合に、当然、これらのデータ処理の基準点(リセットポイント)が必要であるが、これについて、倉庫の入り口に通過センサ用反射板または投光器(図示せず)を設けて、そこをゼロ点とする。フォークリフト車4にフォークリフト車側通過センサ18(投受光器一体型または、分離型)を設けておき、フォークリフト車4が、入り口を通過すると、入り口に設けられた通過センサ用反射板または投光器の光線をフォークリフト車側通過センサ18が検知し、それにより、フォークリフト車4の基準点がリセットされ(ステップS0)、当該基準点からの移動距離が求められることになる。ここで、フォークリフト車4は入り口の中央部を通過するものとし、間口の範囲の誤差は無視する。
【0044】
また、上述のステップS3において、車輪19の1カウント(1パルス)あたりの長さを乗算すると述べたが、車輪19の1回転あたりの移動距離は、車輪19にかかる荷重によって変化する。この値は積算誤差となるので無視できない。一般に、冷凍倉庫には、前室が設けられているので、その前室入り口と、冷凍倉庫入り口(=前室出口)間に通過センサの反射板または投光器を設置し、その間をフォークリフト車4が通過するときのパルスカウント値に基づいて、当該荷重による移動距離の誤差の補正を行う(ステップS3−1)。よって入室して、冷凍倉庫1内で最初に荷物を格納あるいは取り出しするまでの移動は、最新の補正データで、位置判断できる。この通過センサの反射板または投光器は、前室入り口に取り付け、冷凍倉庫入り口は上述のゼロ点通過センサの反射板または投光器を利用する。前室がない場合は、車輪円周長さ程度の距離で冷凍倉庫入り口手前に反射板または投光器を設置し、フォークリフト車4を直線進行させることで上述の補正ができる。
【0045】
この方式によるフォークリフト車4の現在位置は、具体的には、パルスエンコーダ10を取り付けた車輪19の位置になる。たとえば、左前輪にパルスエンコーダ10を取り付けて、その車輪19を止めたまま、90°直角に左回転することができるが、この場合も、ジャイロ装置13を使った軌跡は、パルスエンコーダ10の値がゼロなので、左車輪位置で、直角になるような軌跡を描く。よって、格納する収納籠2の位置は、車輪19の位置と、フォークリフト車4の車両角度とから、図10の関係で求められる。すなわち、パルスエンコーダ10が設けられた車輪19の位置座標をX,Yとし、Y軸に対するフォークリフト車4の車両角度をαdeg(左回転方向をプラスとする)とし、格納する収納籠2のセンタ位置をXc,Ycとし、また、フォークリフト車4の進行方向に延びた車両の中心線をA線、収納籠2のセンタ位置を通り、A線と垂直に交わる線をB線とし、車輪19の位置座標(X,Y)からのA線までの最短距離をL1、車輪19の位置座標(X,Y)からのB線までの最短距離をL2としたとき、収納籠2のセンタ位置(Xc,Yc)は、それぞれ、以下の式で求められる。
【0046】
Xc=X+L1cosα−L2sinα
Yc=Y+L1sinα+L2cosα
【0047】
また、収納籠2の位置座標(Xc,Y)からのフォークリフト車4の位置補正についても、この関係で数値を逆演算することで求める。
【0048】
ジャイロ装置13による位置認識方式の欠点は、ジャイロ装置13からの角度変化データを積算(累積加算)して角度を得る方式のため、角度誤差(ドリフト)が蓄積して、時間が経過するにつれ、位置の誤差が増大していく傾向にある。そのため、蓄積誤差補正手段等を設けるようにして、誤差を最小にとどめるようにすることが望ましい。
【0049】
蓄積誤差の少ない位置認識手段の一例として、例えば、三菱電機(株)のUWB−IR(Ultra Wideband-Impulse Radio)測位システムを用いることを提案する。この場合には、位置認識手段を、UWB−IR測位方式の位置認識装置から構成する。この方式では、位置誤差が15cm程度で位置検知することが期待できるが、冷凍倉庫1内に通信用アンテナ装置を複数個取り付ける必要があり、また、アンテナ装置および配線材料への低温環境対策も必要となるので、特に既設の冷凍倉庫1の場合は、取付工事への制約が少なからず発生する。
【0050】
蓄積誤差補正手段の一例について説明する。この方式は、冷凍倉庫1内がまったく空の状態のときは対応できないが、冷凍倉庫1内に保管物である収納籠2が1つでも存在する場合には(以下、この籠を収納籠2Aと呼ぶ)、フォークリフト車4が別の収納籠2(以下、この籠を収納籠2Bと呼ぶ)を納庫あるいは出庫するとき、その収納籠2Bの電子タグ3を検知あるいは検知OFFしたタイミングのフォークリフト車4の位置情報を、冷凍倉庫1内にすでに保管されている収納籠2Aの座標位置および収納籠2Aまでの相対距離を基に補正を行うようにする。すなわち、収納籠2Aの電子タグ3のIDデータを読み取り、それを冷凍倉庫1外に設置された管理制御装置6に送信することにより、収納籠2Aの保管場所の情報(X,Y,Z座標)を取得して、当該情報に基づいて、収納籠2Bの現在の位置情報に含まれている蓄積誤差を削除する補正を行う。
【0051】
蓄積誤差補正手段の別の例について説明する。図5は、冷凍倉庫1内の平面模式図である。いま、図5に示すように、冷凍倉庫1内では平面的に碁盤の目のように収納籠2の配置箇所が決まっているとする。そこで、フォークリフト車4が収納籠2を置く(リリースする)、あるいは、ピックアップする時点で、その収納籠2の電子タグ3を検知(あるいは検知OFF)することで、フォークリフト車4の位置認識手段による自身の位置が収納籠2の配置箇所から所定の範囲以内なら、フォークリフト車4の現在位置の値を、その収納籠2の配置箇所に(収納籠2の中心位置からフォークリフト車4の中心位置までの距離修正をして)強制補正する。このような補正を収納籠2の電子タグ3をアクセスする都度行うことで、誤差の蓄積をなくすことができる。また、この方式は、フォークリフト車4に、収納籠2の電子タグ3を読み取るための電子タグリーダアンテナ部8を取り付けるだけで実現でき、倉庫建屋に対する特別な加工や、機器の取り付け等が不要である。
【0052】
電子タグ3の検知あるいは検知OFFの確認には、チャタリングのための確認タイムを置くか、あるいは、電子タグ3を検知するときはフォークリフト車4が前進してアクセスし、一方、電子タグ3を検知OFFするときはフォークリフト車4が後進しているので、この移動距離補正も行うようにすれば、さらに正確に精度高く現在位置を測定することができる。
【0053】
さらに、管理制御装置6との間の通信時間のインターバル時間の補正も行うようにしてもよい。管理制御装置6との間の通信時間のインターバル時間の補正の場合は、フォークリフト車4の現在位置での補正となるので、電子タグ3のIDデータの検知あるいは非検知タイミングの場所との移動距離(座標)補正も行う。
【0054】
なお、これまでの検証において、水分の多い環境においては、各種電子タグのうち、HFタイプ(13.56MHz)の電磁結合の電子タグが、一番強いことがわかった。また、これまでの検証結果で、低温環境、とりわけ、マイナス50℃を超える超低温環境においても、HFタイプの電子タグは動作することがわかっている。このような検証結果から、この発明による低温倉庫での電子タグ3の種類は、マイナス50℃以下での動作を保障するHFタイプの電子タグを使うこととする。
【0055】
電子タグ3は、収納籠2の中央位置で、かつ、フォークリフト車4がアクセスする側で、フォークリフト車4の電子タグリーダアンテナ部8の中心高さに合せて、パレット部21の上部に取り付ける。したがって、フォークリフト車4が収納籠2をピックアップする際に収納籠2の向きを考慮しなくて済むように、例えば、収納籠2の前側と後側に電子タグ3を1個ずつ取り付けてもよい。電子タグ3を複数個取り付ける場合は、両方の電子タグのIDコードは同一番号とするように留意する。
【0056】
また、フォークリフト車4に取り付ける電子タグリーダアンテナ部8およびフォーク高さセンサ9の取り付け場所は、上下あるいはチルトする可動部のフォーク20の付け根に取り付ける必要がある。フォーク20の上下移動距離は、数メートルにもなる。電子タグリーダアンテナ部8及びフォーク高さセンサ9と車載コントローラ11とのデータ通信には、有線においては、一般にUSBケーブルなどの特殊電線が使われている。マイナス50℃にもなる温度に耐えるケーブルの手配あるいは上下するフォーク20の付け根部に設置した装置とのフレキシブルな接続は困難であり、これまで低温環境での実現は例がない。この発明では、電源のみを油圧ホースに沿わせて耐寒性能のあるシリコンケーブルで滑車を使って給電し、電子タグリーダアンテナ部8およびフォーク高さセンサ9と車載コントローラ11との間は、無線を使ってデータ通信することで、可動部であるフォーク20への設置を可能にした。具体的には、電子タグリーダアンテナ部8およびフォーク高さセンサ9及び車載コントローラ11に通信機能としてBluetooth端末17を持たせて実現した。Bluetoothは、赤外線を用いた通信とは異なり、機器間の距離が10m以内であれば障害物があっても通信可能であることは知られている。また、Bluetoothは、小型のトランシーバを用いるため、消費電力が小さく、製造コストも低く抑えられる。また、同様の通信手段としてはZigBeeがある。ZigBeeを用いた場合も同様の効果が得られる。
【0057】
また、この発明における電子タグ3の電子タグリーダアンテナ部8は、図6で示すように、ループアンテナ部(アンテナコイル)8aと、変調部(発信部)8bと、アンプ部8cと、プロセッサ部8dと、コントーラ部8eと、電源8fとからなる。ループアンテナ部8aと変調部8bとは一体化して構成され、変調部8bとアンプ部8cとは同軸ケーブルで接続され、アンプ部8cとプロセッサ部8dとは互いに近くになるように配置して多芯コネクタで接続され、また、プロセッサ部8dとコントローラ8eとはUSBケーブルで接続されている。
【0058】
ここで、この発明においては、低温環境に設置することから、一般的には一体化されるループアンテナ部8aと変調部8bとをあえて分離させて、ループアンテナ部8aのみをアンテナコイル部とし、変調部8b、アンプ部8c、および、プロセッサ部8dをプリント基板(図8参照)上に配置して電子機器部とした。さらに、ループアンテナ部8aと当該プリント基板上の変調部8bとを背中合わせになるように配置し、ループアンテナ部8aと変調部8bとの一体関係を保つようにした。さらに、低温環境に弱いプリント基板を耐寒材を施した収納ケース内に入れて防寒対策を施した。プリント基板上に設けられた変調部8b、アンプ部8c、および、プロセッサ部8dは電子機器で構成されているため、エナメル銅線のループアンテナ部8aに比べて、低温環境に特に弱く、低温環境で使用すると誤動作したり故障の原因になったりすることが一般に知られている。
【0059】
このように、この発明においては、一般的には一体化されるループアンテナ部8aと変調部8bとを分離しながらも、それらを表裏の位置に配置することにより、ループアンテナ部8aと変調部8bとの一体関係を保ち、また、低温環境に特に弱い電子機器を搭載したプリント基板を1つの収納ケースに収納して防寒対策を施すようにしたので、アンテナ性能を最大限に取り出せるとともに、低温環境でも動作保障することができる。
【0060】
図7に一般的な従来のアンテナ構成、図8および図9にこの発明の実施の形態に係る構成例を示す。図7に示す従来のアンテナ構成においては、ループアンテナと変調部とが一体になってアンテナブロックを構成しており、また、アンプ部とプロセッサ部とが一体化して、それらとアンテナブロックとは比較的長い同軸ケーブルで接続されている構成である。図7の例は、低温環境で用いることを前提としていないので、アンプ部やプロセッサ部は、防寒対策のされた収納ケースには入っていない。
【0061】
これに対して、この発明においては、図8および図9に示すように、低温環境に特に弱い電子機器はプリント基板に搭載して耐寒材を施した収納ケースに入れ、かつ、ループアンテナ部8とプリント基板上の変調部8bとを背中合わせの位置に配置することにより、それらの一体関係を保持する構成としたため、アンテナ性能を最大限に取り出せるとともに、低温環境においても使用可能な構造とすることができた。
【0062】
なお、図8に示すように、電子タグリーダアンテナ部8が周囲の金属構造物の影響を受けないように、電波吸収体(フェライト磁性体シート)からなる電波吸収シートを、ループアンテナ部8aの後方につけることが望ましい。検証の結果、13.65MHz対応の400ミクロンの電波吸収シートを2枚重ねて使用し、かつ、電波吸収シートとループアンテナ部8との間にスペース(実際には、発泡スチロール板を挿入)を設けた。従って、ループアンテナ部8aとプリント基板との間には、電波吸収シートと上記スペースとが設けられていることになる。
【0063】
また、冷凍倉庫1内の温度は、超低温倉庫においては、マイナス50℃以下にもなる。車載コンロトーラ11と管理制御装置6との間の通信として一般的な無線LANがあるが、多数の金属容器(すなわち、収納籠2)や、鉄筋の柱などがある環境では、多数のアンテナを設置しなければならないことが想定される。また、マイナス50℃にもなる環境でのアンテナの設置やケーブル敷設は非実現的な作業となる。そこで、この発明で使用する無線通信装置は、例えば、双葉電子製のFDH01型を想定している。極超短波で障害物に比較的強いこと、SS拡散方式で通信信頼性が高いこと、免許不要であることなどの特徴があり、管理システム側の無線受信器は冷凍倉庫1の外に設置することができる。または、必要最低限のリピータを冷凍倉庫1内に設置してもよい。
【0064】
以上のように、この発明によれば、保管物収納用の収納籠2またはパレット部21に取り付けた電子タグ3と、収納籠2を冷凍倉庫1から出し入れする際に電子タグ3に記憶されたIDデータを読み取るとともに、自車の現在位置の位置情報およびフォーク20の高さ情報を測定し、それらの情報をIDデータとともに送信するフォークリフト車4と、冷凍倉庫1外に設けられ、フォークリフト車4から送信されてきた情報をIDデータごとにデータベースに記憶する管理制御装置とを備えた冷凍倉庫の保管管理システムであるので、収納籠2の納庫の都度、自動的に収納籠2の保管場所の情報がフォークリフト車4から管理制御装置6へ送信され、当該保管場所の情報がデータベースに書き込まれ、また、収納籠2が出庫される場合も、出庫の都度、自動的に収納籠2の保管場所のデータがデータベースから自動的に削除されるので、当該データベースを参照することで保管物の保管場所が一意に分かるので、保管物を実際に保管したフォークリフト車の運転手の記憶や動作に頼らずに、冷凍倉庫1内の保管物の管理を容易にかつ確実に行うことができるという効果が得られる。
【0065】
なお、自動倉庫においても、保管物の位置は自動管理できるが、しかしながら、自動倉庫設備は設備費が高く、且つ、スペースファクターが小さくなるという欠点がある。これに対して、この発明は、既存の倉庫設備で設置可能であり、保管物の収納籠やパレットに電子タグを取り付け、かつ、必要な機器を既存のフォークリフト車に追加取り付けることで実現可能となるので、低コストで、かつ、小規模な冷凍倉庫から大規模な冷凍倉庫に至るまで、幅広く適用できるというメリットがある。
【0066】
なお、上記の説明においては、車載コントローラ11がフォークリフト車4に搭載されている例について説明したが、その場合に限らず、例えば、冷凍倉庫1内に設置されていて、複数のフォークリフト車で共有するようにしてもよい。その場合には、フォーク高さセンサ9や電子タグリーダアンテナ部8だけでなく、ジャイロ装置13とパルスエンコーダ10からなる位置判別手段との間の通信も無線で行うようにする。この場合も、同様の効果が得られることはいうまでもない。また、上記の説明では、フォークリフト車4の現在位置を検知する手段として、フォークリフト車4に搭載したジャイロ装置13およびパルスエンコーダ10を用いる例について説明したが、フォークリフト車4の現在位置が検出できるものであれば、他の装置でもよく、また、必ずしもフォークリフト車4に搭載する必要もなく、例えば、冷凍倉庫1内の天井に設けられている装置によりフォークリフト車4の現在位置を検知するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 冷凍倉庫、2 収納籠、3 電子タグ、4 フォークリフト車、5 無線機、6 管理制御装置、7 表示操作パネル、8 電子タグリーダアンテナ部、8a ループアンテナ部、8b 変調部、8c アンプ部、8d プロセッサ部、8e コントローラ、8f 電源、8g 収納ケース、9 フォーク高さセンサ、10 パルスエンコーダ、11 車載コントローラ、12 無線通信装置、13 ジャイロ装置、14 車両用バッテリー、15 正弦波インバータ、16 DC電源装置、17 Bluetooth端末、18 フォークリフト車側通過センサ、19 車輪、20 フォーク、21 パレット部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍倉庫内に保管する保管物を収納する収納籠に取り付けられた電子タグと、
前記収納籠を運搬するときに使うフォークリフト車がフォークで前記収納籠を保持している間、当該収納籠の前記電子タグのIDデータを読み取る電子タグリーダ装置と、
前記フォークの高さを検知するフォーク高さセンサと、
前記フォークリフト車体の現在位置を取得する現在位置認識手段と、
前記電子タグリーダ装置による前記IDデータの読み取りが検知状態から非検知状態あるいは非検知状態から検知状態に移行した時点で、前記現在位置認識手段により得られた前記フォークリフト車体の前記現在位置の情報と前記フォーク高さセンサにより検知された前記フォークの高さ情報とを前記IDデータとともに送信するコントローラと、
前記冷凍倉庫の外部に設置され、前記コントローラから送信されてきた、前記フォークリフト車体の現在位置の情報と、前記フォークの高さ情報と、前記IDデータとを受信して、当該IDデータごとに前記現在位置の情報と前記高さ情報とをデータベースに格納する管理制御装置とを備えたことを特徴とする冷凍倉庫の保管管理システム。
【請求項2】
前記現在位置認識手段は、
前記フォークリフト車体の角度変化を検出するジャイロ装置と、
前記フォークリフト車の車輪の回転数を検出するパルスエンコーダと、
前記ジャイロ装置および前記パルスエンコーダからの出力に基づいて、前記フォークリフト車体の現在位置を演算する現在位置演算手段と
から構成されることを特徴とする請求項1に記載の冷凍倉庫の保管管理システム。
【請求項3】
前記現在位置認識手段は、UWB−IR測位方式の位置認識装置から構成されることを特徴とする請求項1に記載の冷凍倉庫の保管管理システム。
【請求項4】
前記現在位置認識手段により検知される前記現在位置の情報は、前回からの変化量が前回値に加算されて、現在位置の情報として出力されるものであって、
順次前回値に積算していくことによって発生し得る蓄積誤差分を補正するために、前記冷凍倉庫内に先に納庫されている他の収納籠に設けられた電子タグの情報からその収納籠の収納位置情報を取得し、当該収納位置情報に基づいて前記現在位置認識手段により出力される前記フォークリフト車の現在位置の情報の蓄積誤差分を補正する蓄積誤差補正手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の冷凍倉庫の保管管理システム。
【請求項5】
前記電子タグリーダ装置および前記フォーク高さセンサは、前記フォークに取り付けられるものであって、
前記電子タグリーダ装置および前記フォーク高さセンサと前記コントローラとの間の通信は無線通信であることを特徴とする請求項1に記載の冷凍倉庫の保管管理システム。
【請求項6】
前記電子タグリーダ装置は、アンテナコイル部と電子機器部とを備えているものであって、
前記アンテナコイル部と前記電子機器部とを背中合わせになるように配置して一体関係を保ち、かつ、前記電子機器部を耐寒材を施した収納ケース内に配置して防寒対策を施したことを特徴とする請求項1に記載の冷凍倉庫の保管管理システム。
【請求項7】
前記コントローラと前記管理制御装置との間の通信は、イベント発生ごとおよび所定の時間間隔で行われることを特徴とする請求項1に記載の冷凍倉庫の保管管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−111323(P2011−111323A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272246(P2009−272246)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
2.ZIGBEE
【出願人】(599041606)三菱電機プラントエンジニアリング株式会社 (21)
【Fターム(参考)】