説明

冷却システム

【課題】従来の冷却塔を必要とせず、省エネルギー化を図り得るプラスチック成形機用の冷却システムを提供する。
【解決手段】冷却水Mを所定の温度に調整してプラスチック成形機2に供給する冷却調整手段3を備える。冷却調整手段3は、冷却水タンク4と、水・空気熱交換器5に室外空気を直接的に当てて冷却水Mを冷却する空冷式熱交換ユニット6を有する。そして、熱交換ユニット6単独にて、冷却水Mを所定冷却設定温度に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック成形機の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック成形機は、油圧駆動式が主流であり(例えば、特許文献1参照)、オイルポンプにより昇圧された油圧を駆動源として、金型の開閉、樹脂の射出注入に必要な動作が行われ、このときオイルポンプの駆動により作動油が昇温される。そこで、昇温を防止するためにオイルクーラが設けられている。一般的に、油圧駆動式のプラスチック成形機では、オイルクーラ,金型,ホッパー下の3箇所が冷却・温調を必要としている。プラスチック成形工場では、屋内の成形機に対応して屋外に冷却塔が設けられており、この冷却塔で冷却された冷却水が、直接的にあるいは冷凍機付水冷却機(チラー)を経由してオイルクーラ,金型,ホッパー下に送られ、冷却が行われている。
最近では、プラスチック成形の省エネルギー化による製造コスト低減や高精度化を目的として、プラスチック成形機が、従来の油圧駆動式から電動モータ駆動式へと急速に変化してきている。プラスチック成形機を電動モータ駆動式にすることによって、油圧駆動式で使用されていたオイルクーラが必要なくなり、冷却熱量負荷が少なくなる。
また、最近のプラスチック成形品では、精密成形品が多くなってきている。精密成形品は、通常の成形品より高い金型温度(例えば60℃〜80℃)で成形するものが多く、そのために冷却水温が高くても成形が可能になっている。
【特許文献1】特開2001−300983号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このように、最近のプラスチック成形機では、冷却熱量負荷が少なくなってきているにもかかわらず、冷却システムは、大きな冷却熱量負荷に耐え得る従来のシステムを使用していたため、無駄が生じていた。
また、従来使用されてきた冷却塔には、開放式冷却塔と密閉式冷却塔が存在するが、開放式冷却塔では、空気中からの汚染物質や藻等の発生によって冷却水中の不純物が濃縮蓄積して機器に悪影響を及ぼすという問題点があった。また、密閉式冷却塔では、冷却水が大気に触れない分、冷却水中に不純物が蓄積するのを防止できるが、密閉式冷却塔内に散水用ポンプとその散布水を循環させる配管が存在しているので、構造が複雑であった。さらに、散布水を補充しなければならないという問題点があった。
また、従来の冷却システムは、季節,時間帯による温度変化や寒冷地における使用等で外気温度が0℃以下になった場合、配管内の冷却水をヒータにて温めながら循環させ、冷却水の凍結防止を図っていた。しかしながら、ヒータの使用は、動かすのに電気代等の多くのコストがかかるという欠点があった。
そこで、本発明は、従来の冷却塔を必要とせず、省エネルギー化を図り得るプラスチック成形機用の冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明に係る冷却システムは、冷却水を所定の温度に調整して電動モータ駆動式のプラスチック成形機に供給する冷却調整手段を備え、上記冷却調整手段は、上記冷却水を貯留する冷却水タンクと、該冷却水が通る水・空気熱交換器に室外空気を直接的に当てて該冷却水を冷却する空冷式熱交換ユニットと、を有し、該熱交換ユニット単独で、該冷却水の冷却を行うものである。
また、冷媒・水熱交換器にて冷却水を冷却する空冷式冷凍機付水冷却機を有し、かつ、該冷却水を所定の温度に調整してプラスチック成形機に供給する既設の冷却調整手段に、該冷却水が通る熱交換器に室外空気を直接的に当てて該冷却水を冷却する空冷式熱交換ユニットが、増設されている。
あるいは、冷媒・水熱交換器にて冷却水を冷却する空冷式冷凍機付水冷却機を有し、かつ、該冷却水を所定の温度に調整してプラスチック成形機に供給する既設の冷却調整手段に、該冷却水が通る熱交換器に室外空気を直接的に当てて該冷却水を冷却する空冷式熱交換ユニットが、増設され、さらに、上記冷却水の冷却設定温度近傍の第1切換え温度よりも外気温度が低い場合に上記熱交換ユニットを使用し、かつ、上記冷却設定温度近傍の第2切換え温度よりも外気温度が高い場合に上記冷凍機付水冷却機を使用するように制御する制御手段が、増設されている。
【0005】
また、上記冷却調整手段は、システム全体休止状態下で、上記冷却水を上記冷却水タンクと上記熱交換ユニットと上記冷凍機付水冷却機に循環させる駆動エンジン付の臨時循環ポンプと、該駆動エンジンの排熱を凍結防止用熱量とするために該冷却水を上記冷却水タンクと該駆動エンジンのラジエータとの間で循環させる排熱活用補助ポンプと、を有する凍結防止手段を備えたものである。
あるいは、上記冷却調整手段は、システム全体休止状態下で、上記冷却水タンクと上記熱交換ユニットとの間で循環させる駆動エンジン付の臨時循環ポンプと、該駆動エンジンの排熱を凍結防止用熱量とするために該冷却水を上記冷却水タンクと該駆動エンジンのラジエータとの間で循環させる排熱活用補助ポンプと、を有する凍結防止手段を備えたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明に係る冷却システムは、従来の冷却塔の代わりに熱交換ユニットを使用し、従来の冷却塔に備わっていた散水ポンプ,散布水を循環させる配管等を省略することができ、冷却システムの簡素化を図り得る。また、散水ポンプ等を駆動させるエネルギーが必要なくなるので、省エネルギー化を図り得る。
【0007】
また、常に外気温度よりも高い金型温度で成形する精密成形品用として冷却システムを構築する場合に、熱交換ユニット単独で常に冷却水を冷却設定温度に維持することができ、従来の冷凍機付水冷却機を省略した分、冷却システムの簡素化と省エネルギー化を図り得る。
また、既設の冷却調整手段を有効利用しつつ、省エネルギー化を図り得る。
また、凍結防止手段を使用する際、駆動エンジンの排熱を利用して冷却水を温めるので、別途ヒータを使用して冷却水を温めていた従来と比較して、省エネルギー化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。まず、本発明と特に関連性のある参考例から説明すると、図1に於て、このプラスチック成形機用の冷却システムは、冷却水Mを所定の温度に調整してプラスチック成形機2に供給する冷却調整手段3を備えている(なお、本発明において冷却水Mとは、通常の水に加えてケミカルクーラントも含むものとする)。
プラスチック成形機2は、例えば電動モータ駆動式が好ましく使用され、外部に設けられたヒータにより加熱される加熱シリンダ46と、加熱シリンダ46の内部に固形のプラスチック原料樹脂を導入するためのホッパー47と、加熱シリンダ46とホッパー47との間に設けられたホッパー下冷却部45と、金型を冷却する金型冷却部48, 48と、金型の開閉及び樹脂の射出動作を行なう駆動手段等を有している。
【0009】
冷却調整手段3は、冷却水Mを貯留する冷却水タンク4と、冷却水Mが通る水・空気熱交換器5に室外空気を直接的に当てて冷却水Mを冷却する空冷式熱交換ユニット6と、冷媒・水熱交換器11にて冷却水Mを冷却する空冷式冷凍機付水冷却機7と、を有している。 冷却水タンク4の底部には、送水ポンプ17によって冷却水Mをプラスチック成形機2へ送るための送り配管15の一端が接続されている。送り配管15の他端は、プラスチック成形機2のホッパー下冷却部45と金型冷却部48, 48に接続され、冷却水Mがそこに送られるようになっている。なお、図1中に2点鎖線にて示すように、温調ユニット49を介設して、金型冷却部48, 48に常に一定の温度と流量を送り、精密成形を安定して行うようにすることが望ましい。
また、ホッパー下冷却部45と金型冷却部48, 48で昇温された冷却水Mは、戻り配管16を通じて、冷却水タンク4へ戻されるようになっている。
また、冷却水タンク4には、タンク内水温センサ35が付設されている。
【0010】
ここで、空冷式熱交換ユニット6は、上記水・空気熱交換器5と、送風機18と、を有している。水・空気熱交換器5は、例えば、蛇行状の配管に多数枚の放熱フィンが付設された構造となっている。この水・空気熱交換器5は、冷却水タンク4と配管19, 20にて接続されている。そして、第1通常循環ポンプ21にて、水・空気熱交換器5と冷却水タンク4との間で冷却水Mの循環が行なわれる。送風機18は、ファンモータ22にて駆動され、水・空気熱交換器5に室外空気を当てるようになっている。つまり、空冷式熱交換ユニット6は、冷却水タンク4から導かれた冷却水Mを直接的に冷却するものであって、冷媒を介して冷却水Mを冷やすものではない。従って、冷媒を循環させる配管は備わっていないし、冷媒ガスを圧縮させるための圧縮機も備わっていない。このため、空冷式熱交換ユニット6の構造は、簡単なものとなっている。また、電力を消費するものは、ファンモータ22のみであるので、電力消費量が非常に小さいものとなっている。
空冷式熱交換ユニット6には、外気温度センサ32が付設され、空冷式熱交換ユニット6の水・空気熱交換器5へ冷却水Mを送る配管19の途中には、凍結防止温度センサ33が付設されている。また、空冷式熱交換ユニット6から冷却水タンク4へ冷却水Mを送る配管20の途中には、冷却水温度センサ34が付設されている。
【0011】
冷凍機付水冷却機7は、上述の冷媒・水熱交換器11と、アキュムレータ23と、冷媒・空気熱交換器24と、圧縮機25と、送風機26と、を有している。冷媒・水熱交換器11は、冷却水タンク4と配管28, 29にて接続されている。そして、第2通常循環ポンプ30にて、冷媒・水熱交換器11と冷却水タンク4との間で冷却水Mの循環が行なわれる。冷媒・水熱交換器11で冷却水Mとの熱交換により蒸発した冷媒は、圧縮機25にて吸引,昇圧され、送風機26にて冷却される冷媒・空気熱交換器24で液化して、アキュムレータ23を通り、再び冷媒・水熱交換器11に入るようになっている。なお、冷凍機付水冷却機7は、送風機26を駆動させるファンモータ27,圧縮機25等により、空冷式熱交換ユニット6よりも電力消費量が大きなものとなっている。
【0012】
ここで、参考例の冷却調整手段3は、図1及び図2(A) ,(B)に示すように、冷却水Mの冷却設定温度T0 近傍の第1切換え温度T1 よりも外気温度が低い場合に熱交換ユニット6を使用し、かつ、冷却設定温度T0 近傍の第2切換え温度T2 よりも外気温度が高い場合に冷凍機付水冷却機7を使用するように制御する制御手段8を、有している。
より詳しく説明すると、この制御手段8は、『冷却水Mの冷却設定温度T0 よりも外気温度が高くなって熱交換ユニット6が無力化する温度範囲において、冷凍機付水冷却機7を使用する』という趣旨に基づき制御を行うものである。つまり、図2(A)に示すように、理想的には、外気温度が冷却設定温度T0 に等しいときを境に熱交換ユニット6と冷凍機付水冷却機7との切換えが行われるのが好ましく、その場合、冷却設定温度T0 ,第1切換え温度T1 ,第2切換え温度T2 は一致する。しかしながら、実際には、配管内の冷却水Mの移動や外気温度の変動を考えると、冷却設定温度T0 の前後でわずかながら熱交換ユニット6と冷凍機付水冷却機7とを同時運転した方がよい場合もある。その場合は、第1切換え温度T1 は冷却設定温度T0 よりもわずかに高く設定され、第2切換え温度T2 は冷却設定温度T0 よりもわずかに低く設定される。なお、冷却水Mが冷却設定温度T0 よりも低くなった場合にファンモータ22を停止し、温度制御を行うようにすれば、さらに電力消費量を削減させることができる。
【0013】
このような制御手段8は、図1及び図3に示すような参考例に於て、タンク内水温センサ35,外気温度センサ32,凍結防止温度センサ33,冷却水温度センサ34等の温度センサと電気的に接続され、また、制御手段8は、空冷式熱交換ユニット6のファンモータ22,冷凍機付水冷却機7の圧縮機25,冷凍機付水冷却機7のファンモータ27,送水ポンプ17,第1通常循環ポンプ21,第2通常循環ポンプ30等と電気的に接続されている。
制御手段8は、タンク内水温センサ35や冷却水温度センサ34からの情報にて冷却水Mの温度を監視し、外気温度センサ32からの情報にて外気温度を監視するようになっている。そして、冷却水Mと外気温度との温度比較を行い、かつ、冷却水Mを冷却設定温度T0 に維持できるように、空冷式熱交換ユニット6や冷凍機付水冷却機7を制御する。具体的には、空冷式熱交換ユニット6を動かす場合、タンク内水温センサ35, 冷却水温度センサ34, 外気温度センサ32の情報に基いて、ファンモータ22,第1通常循環ポンプ21等を制御する。また、冷凍機付水冷却機7を動かす場合、タンク内水温センサ35, 冷却水温度センサ34の情報に基いて、圧縮機25, ファンモータ27,第2通常循環ポンプ30等を制御する。
また、制御手段8は、タンク内水温センサ35,冷却水温度センサ34,外気温度センサ32の情報に基いて、(第1切換え温度T1 ,第2切換え温度T2 を境として)空冷式熱交換ユニット6を動かすか、冷凍機付水冷却機7を動かすかを判断する。
【0014】
また、図1に於て、冷却調整手段3は、システム全体休止状態下で、冷却水Mを冷却水タンク4と熱交換ユニット6と冷凍機付水冷却機7に循環させる駆動エンジン10付の臨時循環ポンプ9と、駆動エンジン10の排熱を凍結防止用熱量とするために冷却水Mを冷却水タンク4と駆動エンジン10のラジエータ13との間で循環させる排熱活用補助ポンプ12と、電動式の臨時循環ポンプ31と、を有する凍結防止手段14を備えている。凍結防止手段14は、システム全体休止状態下で第1通常循環ポンプ21及び第2通常循環ポンプ30が停止し、かつ、配管内を通る冷却水Mの温度が0℃近傍の所定の温度になった場合に、使用されるように設定されている。
臨時循環ポンプ9,排熱活用補助ポンプ12,臨時循環ポンプ31は、図3に示すように、制御手段8と電気的に接続されている。また、臨時循環ポンプ9,排熱活用補助ポンプ12,臨時循環ポンプ31は、制御手段8と電気的に接続される凍結防止温度センサ33の情報に基いて、制御されるようになっている。
【0015】
次に、図4及び図5に於て、本発明の第1の実施の形態に係る冷却システムを示す。
この第1実施形態に係る冷却システムでは、冷却水Mを所定の温度に調整して電動モータ駆動式のプラスチック成形機2に供給する冷却調整手段3を備えている。
冷却調整手段3は、上述した参考例と同様に、プラスチック成形機2のホッパー下冷却部45と金型冷却部48, 48に冷却水Mを送るようになっている。しかしながら、第1実施形態の冷却調整手段3は、図1〜図3の参考例と異なり、常に外気温度よりも高い金型温度(例えば60℃〜80℃)で成形する精密成形品用の冷却システムを構築する場合に使用される。
【0016】
具体的に説明すると、第1実施形態の冷却調整手段3は、冷却水Mを貯留する冷却水タンク4と、冷却水Mが通る水・空気熱交換器5に室外空気を直接的に当てて冷却水Mを冷却する空冷式熱交換ユニット6と、を有している。そして、熱交換ユニット6単独で、冷却水Mの冷却を行うようになっている。つまり、第1実施形態では、図1の参考例と比較すると、冷凍機付水冷却機7が備わっていない。そして、冷凍機付水冷却機7が備わっていない分、配管やポンプ等の機器が大幅に省略されている。具体的には、参考例と比較して、臨時循環ポンプ31,第2通常循環ポンプ30が省略されている。
なお、第1実施形態でも参考例と同様に凍結防止手段38が備わっており、この凍結防止手段38は、システム全体休止状態下で、冷却水Mを冷却水タンク4と熱交換ユニット6との間で循環させる駆動エンジン10付の臨時循環ポンプ9と、駆動エンジン10の排熱を凍結防止用熱量とするために冷却水Mを冷却水タンク4と駆動エンジン10のラジエータ13との間で循環させる排熱活用補助ポンプ12と、を備えている。
その他の構成は参考例と同様である。但し、第1実施形態の制御手段8は、主に、冷却水Mの水温異常等の監視と、凍結防止温度センサ33の情報に基づく臨時循環ポンプ9,排熱活用補助ポンプ12の制御を行うようになっている(図1のように、熱交換ユニット6と冷凍機付水冷却機7とのどちらを動かすかを判断する制御は行わない)。
【0017】
次に、図6に於て、本発明の第2の実施の形態に係る冷却システムを示す。上述の参考例では、冷却システムの構築時に、熱交換ユニット6と冷凍機付水冷却機7との両方を設置する場合を例示していた。しかしながら、第2実施形態では、冷媒・水熱交換器11にて冷却水Mを冷却する空冷式冷凍機付水冷却機7を有し、かつ、冷却水Mを所定の温度に調整してプラスチック成形機2に供給する既設の冷却調整手段3Aに、冷却水Mが通る熱交換器5に室外空気を直接的に当てて該冷却水Mを冷却する空冷式熱交換ユニット6を、増設した場合を例示している。
【0018】
より具体的に説明すると、既設の冷却調整手段3Aは、本発明の空冷式熱交換ユニット6を増設する以前から、プラスチック成形工場の冷却システムを構築していたものであり、上記冷凍機付水冷却機7の他、送水ポンプ17,冷却水タンク4,第2通常循環ポンプ30等を備えていた。
第2実施形態では、このような既設の冷却調整手段3Aに、図1の参考例と同様の空冷式熱交換ユニット6が増設されている。そして、冷却水Mを冷却水タンク4と水・空気熱交換器5に循環させる第1通常循環ポンプ21と、冷却水Mの冷却設定温度T0 近傍の第1切換え温度T1 よりも外気温度が低い場合に熱交換ユニット6を使用し、かつ、冷却設定温度T0 近傍の第2切換え温度T2 よりも外気温度が高い場合に冷凍機付水冷却機7を使用するように制御する制御手段8も、増設されている。
さらに、システム全体休止状態下で、冷却水Mを冷却水タンク4と熱交換ユニット6と冷凍機付水冷却機7に循環させる駆動エンジン10付の臨時循環ポンプ9と、駆動エンジン10の排熱を凍結防止用熱量とするために冷却水Mを冷却水タンク4と駆動エンジン10のラジエータ13との間で循環させる排熱活用補助ポンプ12と、電動式の臨時循環ポンプ31と、を有する図1の参考例と同様の凍結防止手段も増設されている。
つまり、第2実施形態では、既設の冷却調整手段3Aを使用して、参考例と同様の構成の冷却システムが構築されている。
【0019】
なお、本発明は上述の実施の形態に限定されない。例えば、第2実施形態では、空冷式熱交換ユニット6を動かすときは第1通常循環ポンプ21を駆動させ、冷凍機付水冷却機7を動かす場合には第2通常循環ポンプ30を駆動させるように構成したが、本発明はこれに限らず、配管の途中に3方バルブを設ける等して、通常循環ポンプを1台としてもよい。 また、冷凍機付水冷却機7は、屋内・屋外のどちらに設置してもよい。
また、凍結防止手段14, 38は冷却水Mを冷却水タンク4と熱交換ユニット6と冷凍機付水冷却機7に循環させる(あるいは、冷却水タンク4と熱交換ユニット6との間で循環させる)臨時循環ポンプ9と、駆動エンジン10のラジエータ13の排熱活用補助ポンプ12と、(電動式の臨時循環ポンプ31と、)で構成したが、本発明はこれに限らず、容量を増加した1台のポンプ(及び分岐配管)によって構成してもよい。
【0020】
以上のように、冷却水Mを所定の温度に調整して電動モータ駆動式のプラスチック成形機2に供給する冷却調整手段3を備え、冷却調整手段3は、冷却水Mを貯留する冷却水タンク4と、冷却水Mが通る水・空気熱交換器5に室外空気を直接的に当てて冷却水Mを冷却する空冷式熱交換ユニット6と、を有し、熱交換ユニット6単独で、冷却水Mの冷却を行うので、従来の冷却塔の代わりに熱交換ユニット6を使用し、従来の冷却塔に備わっていた散水ポンプ,散布水を循環させる配管等を省略することができる。これにより、冷却システムの簡素化を図り得る。また、散水ポンプ等を駆動させるエネルギー(燃料,電力)が必要なくなるので、省エネルギー化を図り得る。また、冷却設備を簡素化できる分、冷却システム全体としてのCO2 排出量を抑制できる。即ち、従来の冷却塔と比較すれば、補給水が不要となってCO2 の排出量が削減される。また、冷凍機と比較すれば、電力量削減によってCO2 の排出量が削減される。
また、常に外気温度よりも高い金型温度(例えば60℃〜80℃)で成形する精密成形品用として冷却システムを使用する場合に、熱交換ユニット6単独で、常に、冷却水Mを冷却設定温度T0 に維持することができる。これにより、従来の冷凍機付水冷却機を省略した分、冷却システムの簡素化と省エネルギー化を図り得る。
【0021】
また、冷媒・水熱交換器11にて冷却水Mを冷却する空冷式冷凍機付水冷却機7を有し、かつ、冷却水Mを所定の温度に調整してプラスチック成形機2に供給する既設の冷却調整手段3Aに、冷却水Mが通る熱交換器5に室外空気を直接的に当てて該冷却水Mを冷却する空冷式熱交換ユニット6が、増設されているので、従来のプラスチック成形工場において冷却設備として配設されていた冷凍機付水冷却機7,冷却水配管,冷却水タンク等と共に空冷式熱交換ユニット6を併用することによって、外気温度がある温度以下の場合に、熱交換ユニット6より多くの電力を消費する従来の冷凍機付水冷却機7を停止し、熱交換ユニット6のみで冷却水Mを所望の冷却設定温度T0 に維持することができる。これにより、省エネルギー化を図り得る。また、熱交換ユニット6にて冷却設定温度T0 に維持できないほど外気温度が高い場合には、従来の冷凍機付水冷却機7を使用することができる。これにより、既設の冷却調整手段3Aを有効利用しつつ、省エネルギー化を図り得る。さらに、従来の冷却塔と比較すれば、補給水が不要となってCO2 の排出量が削減される。また、冷凍機を使用する場合と比較すれば、電力量削減によってCO2 の排出量が削減される。
【0022】
また、冷却調整手段3,3Aは、システム全体休止状態下で、冷却水Mを冷却水タンク4と熱交換ユニット6と冷凍機付水冷却機7に循環させる(あるいは、冷却水タンク4と熱交換ユニット6との間で循環させる)駆動エンジン10付の臨時循環ポンプ9と、駆動エンジン10の排熱を凍結防止用熱量とするために冷却水Mを冷却水タンク4と駆動エンジン10のラジエータ13との間で循環させる排熱活用補助ポンプ12と、を有する凍結防止手段14を備えたものであるので、システム全体休止状態において、季節,時間帯による温度変化や寒冷地における使用等で外気温度が0℃以下になった場合、熱交換ユニット6,冷凍機付水冷却機7,配管等の破損を防ぐことができる。また、凍結防止手段14を使用する際、駆動エンジン10の排熱を利用して冷却水Mを温めるので、別途ヒータを使用して冷却水Mを温めていた従来と比較して、省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】参考例を示す概略図である。
【図2】冷却設定温度と熱交換ユニットの第1切換え温度と冷凍機付水冷却機の第2切換え温度との関係を示す説明図であって、(A)は理想的な切換えを示した説明図、(B)は現実的に起こりえる切換えを示した説明図である。
【図3】制御手段と、制御手段と電気的に接続される機器と、の関係を示した概略図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る冷却システムを示す概略図である。
【図5】制御手段と、制御手段と電気的に接続される機器と、の関係を示した概略図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る冷却システムを示す概略図である。
【符号の説明】
【0024】
2 プラスチック成形機
3 冷却調整手段
4 冷却水タンク
5 水・空気熱交換器
6 熱交換ユニット
7 冷凍機付水冷却機
8 制御手段
9 臨時循環ポンプ
10 駆動エンジン
11 冷媒・水熱交換器
12 補助ポンプ
14, 38 凍結防止手段
M 冷却水
0 冷却設定温度
1 第1切換え温度
2 第2切換え温度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却水(M)を所定の温度に調整して電動モータ駆動式のプラスチック成形機(2)に供給する冷却調整手段(3)を備え、
上記冷却調整手段(3)は、上記冷却水(M)を貯留する冷却水タンク(4)と、該冷却水(M)が通る水・空気熱交換器(5)に室外空気を直接的に当てて該冷却水(M)を冷却する空冷式熱交換ユニット(6)と、を有し、該熱交換ユニット(6)単独で、該冷却水(M)の冷却を行うことを特徴とする冷却システム。
【請求項2】
冷媒・水熱交換器(11)にて冷却水(M)を冷却する空冷式冷凍機付水冷却機(7)を有し、かつ、該冷却水(M)を所定の温度に調整してプラスチック成形機(2)に供給する既設の冷却調整手段(3A)に、該冷却水(M)が通る熱交換器(5)に室外空気を直接的に当てて該冷却水(M)を冷却する空冷式熱交換ユニット(6)が、増設されていることを特徴とする冷却システム。
【請求項3】
冷媒・水熱交換器(11)にて冷却水(M)を冷却する空冷式冷凍機付水冷却機(7)を有し、かつ、該冷却水(M)を所定の温度に調整してプラスチック成形機(2)に供給する既設の冷却調整手段(3A)に、該冷却水(M)が通る熱交換器(5)に室外空気を直接的に当てて該冷却水(M)を冷却する空冷式熱交換ユニット(6)が、増設され、
さらに、上記冷却水(M)の冷却設定温度(T0 )近傍の第1切換え温度(T1 )よりも外気温度が低い場合に上記熱交換ユニット(6)を使用し、かつ、上記冷却設定温度(T0 )近傍の第2切換え温度(T2 )よりも外気温度が高い場合に上記冷凍機付水冷却機(7)を使用するように制御する制御手段(8)が、増設されていることを特徴とする冷却システム。
【請求項4】
上記冷却調整手段(3)(3A)は、システム全体休止状態下で、上記冷却水(M)を上記冷却水タンク(4)と上記熱交換ユニット(6)と上記冷凍機付水冷却機(7)に循環させる駆動エンジン(10)付の臨時循環ポンプ(9)と、該駆動エンジン(10)の排熱を凍結防止用熱量とするために該冷却水(M)を上記冷却水タンク(4)と該駆動エンジン(10)のラジエータ(13)との間で循環させる排熱活用補助ポンプ(12)と、を有する凍結防止手段(14)を備えた請求項2又は3記載の冷却システム。
【請求項5】
上記冷却調整手段(3)は、システム全体休止状態下で、上記冷却水タンク(4)と上記熱交換ユニット(6)との間で循環させる駆動エンジン(10)付の臨時循環ポンプ(9)と、該駆動エンジン(10)の排熱を凍結防止用熱量とするために該冷却水(M)を上記冷却水タンク(4)と該駆動エンジン(10)のラジエータ(13)との間で循環させる排熱活用補助ポンプ(12)と、を有する凍結防止手段(38)を備えた請求項1記載の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−137070(P2007−137070A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−8383(P2007−8383)
【出願日】平成19年1月17日(2007.1.17)
【分割の表示】特願2005−300775(P2005−300775)の分割
【原出願日】平成17年10月14日(2005.10.14)
【出願人】(393027729)株式会社カンネツ (8)
【Fターム(参考)】