説明

冷却機構及び電子機器

【課題】電子機器の低騒音化並びに省電力化を図ることのできる冷却機構を得る。
【解決手段】電子機器を構成する高発熱部品5を含む部品11〜13を搭載した回路基板9を基板固定部品10により、ケースの高さ方向のほぼ中央に固定して、回路基板9の部品搭載面側と、前記回路基板の部品搭載面の反対面側とに前記冷却ファンによる冷却風を流す流路14、15を形成し、高発熱部品5に接触させた受熱部6と、該受熱部6に接続され前記回路基板の部品搭載面の反対面側まで熱輸送を行う熱輸送部7と、該熱輸送部7に接続され前記回路基板の部品搭載面の反対面側の流路15内に設けた放熱部8とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却機構及び電子機器に係り、特に、情報処理装置を含む電子機器等に用いて好適な冷却機構及び該冷却機構を使用した電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に用いられる半導体、とりわけ、情報処理装置のCPUに代表されるような半導体部品は、その進化が急激であり、高密度化・高発熱量化の一途をたどっている。これに伴い、半導体部品を使用する情報処理装置等の電子機器は、それらの半導体部品をはじめとする電子部品の冷却のため、冷却用のファンの実装数あるいは回転数を増加させており、装置の騒音及び消費電力が上昇する傾向にある。
【0003】
一般に、前述したような情報処理装置を含む電子機器は、事務室等に設置されること多いため、ユーザによる低騒音化の要望が強くなっており、また、消費電力についても、環境負荷低減の観点から省電力化の要望が強くなっている。これらのユーザからの要求に応えるため、高効率冷却技術の開発が必要とされており、高効率ファンの開発や、高性能ヒートシンクの開発が行われてきている。
【0004】
図4は半導体等部品の発熱体が設置された回路基板面を含む流路で発熱体の主要な放熱を行う従来技術による冷却機構を持つ電子機器の構成例を示す側面図、図5は図4に示す電子機器の上面の構成例を示す上面図、図6は図4に示す電子機器の下面を示す下面図であり、以下、図4〜図6を参照して従来技術による冷却機構を持つ電子機器の冷却について説明する。
【0005】
従来技術による冷却機構を持つ電子機器は、図4に示すように、回路基板9上に、CPU等の発熱量の大きい半導体部品部品(以下、単に、発熱体5という)、発熱量がCPUほどには多くはない部品11、部品12、部品13が並べられて回路基板9の一方の側から順次搭載され、これらが搭載された回路基板9がケース29内に収納されて構成されている。そして、発熱体5には、その上部にヒートシンク16が取り付けられており、回路基板9の発熱体5が搭載された側の回路基板9の外には、ケース29の外部から冷却用の空気を取り入れる冷却ファン4が設けられている。
【0006】
図4〜図6に示す従来技術による冷却機構を持つ電子機器の例は、図5に示すように、同一の回路基板9上に、発熱体5、部品11〜13によるセットが2セット搭載され、冷却ファン4も前述のセット毎に、図示例では2個設けられている。また、この従来技術は、回路基板9の上面に電子機器を構成する全部品が搭載されているものとしているので、図6に示すように、下面には、何も設けられておらず、回路基板9とケース29の底面との間に僅かな隙間があるだけである。
【0007】
図4〜図6に示す従来技術による電子機器は、発熱体5、部品11、部品12、部品13が、回路基板9上に順次並べて搭載され、回路基板9の発熱体5が搭載された側の回路基板9の外に冷却用の空気を取り入れる冷却ファン4が設けられているため、発熱体5を最上流とした回路基板9の基板面を含む冷却風の流路17が形成されることになる。このため、発熱体5からヒートシンク16を経た熱は流路17内に放熱される。この結果、流路17内の温度上昇が生じ、発熱体5の下流の部品11、部品12、部品13の周囲温度及び排気18の温度も上昇する。これにより、発熱体5の冷却に問題がない場合でも、部品11、部品12、部品13の冷却が困難となる場合があり、発熱体5の下流の部品11、部品12、部品13の冷却が懸念されることとなる。このような発熱体5の下流の部品11、部品12、部品13の冷却に対する懸念をなくすためには、冷却ファン4の回転数を上昇させればよいが、これにより冷却ファン4の騒音及び消費電力が増大してしまうことになる。
【0008】
前述したような従来技術において、いま、冷却ファン4への入気1の温度が35℃、発熱体5及びヒートシンク16による流路17の温度上昇が35℃、部品11の部品表面、周囲温度間の温度上昇が15℃、部品11の仕様最大温度が80℃の場合を考えると、部品11の周囲温度は、入気1の温度が35℃、流路17の温度上昇が35℃で合わせて70℃、これに部品11の部品表面、周囲温度間の温度上昇15℃を加えた85℃が部品11の温度となり、仕様最大温度80℃を超えることになる。従って、この場合、冷却ファン4の回転数を上昇させて流路17の冷却風の流量を増大させ、部品11の温度が仕様最大温度80℃を超えないようにする必要がある。
【0009】
なお、本発明に関連する電子機器の冷却に関する従来技術として、例えば、特許文献1等に記載された技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2000−277956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
冷却ファンによる空冷システムを採用した従来技術による電子機器は、CPUに代表されるような半導体部品等の発熱体の放熱により冷却風の風温の上昇を招き、発熱体の下流側の同一基板面上に搭載された他の電子部品の冷却に影響を与えることがあった。また、高効率冷却ファン並びに高性能ヒートシンクによって発熱体の冷却を可能とする風量を確保した場合でも、風温上昇が大きい場合、下流側の部品の冷却が困難となる場合もあった。従来、このような場合には、冷却ファンの回転数を上昇させる等により風量増加を図り、下流側の部品の冷却も可能としていたが、このような方法では、ファン騒音及びファン消費電力が増大してしまって、低騒音化、省電力化を図ることができなかった。
【0012】
本発明の目的は、前述したような従来技術の有する問題点に鑑み、ファン騒音及びファン消費電力を増大させることなく、電子機器の冷却を効率よく行うことができる冷却機構及び該冷却機構を使用した電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば前記目的は、冷却ファンによる空冷の冷却機構を有する電子機器における冷却機構において、電子機器を構成する高発熱部品を含む部品を搭載した回路基板の部品搭載面側と、前記回路基板の部品搭載面の反対面側とに前記冷却ファンによる冷却風を流す流路を形成し、前記高発熱部品に接触させた受熱部と、該受熱部に接続され前記回路基板の部品搭載面の反対面側まで熱輸送を行う熱輸送部と、該熱輸送部に接続され前記回路基板の部品搭載面の反対面側の流路内に設けた放熱部とを備えたことにより達成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ファン騒音及びファン消費電力を増大させることなく、電子機器の冷却を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態による冷却機構を持つ電子機器の構成例を示す側面図である。
【図2】図1に示す電子機器の上面の構成例を示す上面図である。
【図3】図1に示す電子機器の下面を示す下面図である。
【図4】半導体等部品の発熱体が設置された回路基板面を含む流路で発熱体の主要な放熱を行う従来技術による冷却機構を持つ電子機器の構成例を示す側面図である。
【図5】図4に示す電子機器の上面の構成例を示す上面図である。
【図6】図4に示す電子機器の下面を示す下面図である。
【図7】本発明の実施形態での受熱部と熱輸送部とを接続する熱的接合部の詳細な構造を説明する側面図及び熱接合部の拡大図である。
【図8】本発明の実施形態による冷却機構を持つ電子機器がブレードモジュールであるとした場合のブレードサーバの構成例を示す正面図及び側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明による冷却機構及び電子機器の実施形態を図面により詳細に説明する。ここで説明する本発明の実施形態は、受熱部、熱輸送部、放熱部を有する冷却部品を用い、発熱量の大きい半導体部品等の発熱体に受熱部を接触させ、受熱部に接続された熱輸送部が発熱体の設置された回路基板の反対面側まで熱輸送を行い、回路基板の反対面側に形成した冷却風の流路において前述の熱輸送部に接続された放熱部が放熱を行うようにすることにより、発熱体が設置された回路基板面の反対面側で発熱体の主要な放熱を行うこととしたものである。
【0017】
図1は本発明の一実施形態による冷却機構を持つ電子機器の構成例を示す側面図、図2は図1に示す電子機器の上面の構成例を示す上面図、図3は図1に示す電子機器の下面を示す下面図である。
【0018】
図1〜図3に示す本発明の実施形態による冷却機構を持つ電子機器は、従来技術で説明したものと同様に、同一の回路基板9上に、発熱体5、部品11〜13が搭載され、このような発熱体5、部品11〜13によるセットが2セット搭載され、冷却ファン4も前述のセット毎に、図示例では2個設けられている。そして、本発明の実施形態は、回路基板9の上面に電子機器を構成する全部品を搭載し、回路基板9が、基板固定部品10を用いてケース29の高さ方向のほぼ中央、かつ、冷却ファン4の中心高さとなる位置に取り付けられている。なお、基板固定部品10は、ケース29の内側寸法とほぼ同一サイズの板状の部材、あるいは、この板状の部材の周辺部のみとした枠状の部材であってよい。
【0019】
また、発熱体5には、受熱部6、熱輸送部7、放熱部8を有する冷却部品が取り付けられている。この冷却部品は、発熱体5に接触させる受熱部6、受熱部6が発熱体5から受け取った熱を回路基板9の反対面側まで導く熱輸送部7、熱輸送部7に結合された回路基板9の反対面側に設けられた放熱部8により構成されていて、受熱部6により発熱体5から受け取った熱を、回路基板9の反対面側に設けられた放熱部8から放熱するようにしている。
【0020】
前述したような構成を有する本発明の実施形態による電子機器は、回路基板9が基板固定部品10を用いてケースの高さ方向のほぼ中央、かつ、冷却ファン4の中心高さとなる位置に取り付けられているので、冷却ファン4による冷却風の流路が、回路基板9により基板上側の流路14と、基板下側の流路15とに分割されて形成されることになる。すなわち、発熱体5及び発熱体下流の部品11、部品12、部品13の搭載された同一基板面を含む流路14と、基板9と基板固定部品10を介して形成された反対面側の流路15とが形成される。そして、前述した本発明の実施形態は、発熱体5からの熱が、回路基板9の反対面側に設けられた放熱部8から流路15に放熱されることになる。
【0021】
これにより、発熱体5及び発熱体5の下流に他部品が設置された回路基板面を含む流路14の発熱体5による温度上昇を回避することができる。
【0022】
前述したような本発明の実施形態において、発熱体5及び部品11の物性値及び冷却ファン4の風量が、前述で説明した従来技術の場合と同一であるとし、回路基板9と基板固定部品10とによる流路分割により部品11のある流路14の風量が、従来技術の場合の流路17での風量の3分の1になったと仮定する。流路14の風量が、2分の1ではなく3分の1と仮定したのは、流路14には回路基板9に搭載された発熱体5及び部品11〜13等の気流に対して抵抗となる部材が配置されているのに対して、回路基板9の裏面側流路には、発熱体5、部品11〜13等の部材よりも、気流に対する抵抗の少ない板状のフィンを持つ放熱部8が配置されているだけであるからである。この場合、部品11の周囲温度は、入気1の温度35℃により35℃で、部品11の部品表面、周囲温度間の温度上昇が風量3分の1となったことで26℃となり、これらを加え合わせた61℃が部品11の温度となり、仕様最大温度80℃を満足する。従って、本発明の実施形態では、冷却ファン4の回転数を上昇させる必要がなく、ファン騒音及びファン消費電力の低減を図りながら効率的に冷却を行うことができる。
【0023】
図7は本発明の実施形態での受熱部6と熱輸送部7とを接続する熱的接合部の詳細な構造を説明する側面図及び熱接合部の拡大図である。
【0024】
図7に示すように、受熱部6には、接合凸部19が結合されている。この接合凸部19は、冷却部品の受熱部6に接続されたヒートパイプ等の高熱伝導性材料により構成され、受熱部6の内部を貫通して設けられ、受熱部6の側部から下方向に曲げられている。また、前述で説明した熱輸送部7は、前述の接合凸部19を挿入することができる銅等の熱伝導性に優れた材料で形成された管状の接合凹部20と、接合凹部20に接続されるヒートパイプ等の高熱伝導性材料を用いた接合凹部21によって構成されている。
【0025】
そして、図7に示した熱的接合部は、前述の接合凸部19と、管状の接合凹部20とを機械的、熱的に接合するように構成されている。接合凹部20に接続されるヒートパイプ等の高熱伝導性材料を用いた接合凹部21は、発熱体5が搭載された回路基板面に対して回路基板9及び基板固定部品10を介して反対面側にある放熱部8と接続されている。このような熱接合部は、熱伝導性と着脱容易性との両立のために、接合凸部19あるいは管状の接合凹部20に、シリコングリス等の熱伝導材を塗布した状態で接合凸部19と管状の接合凹部20を接合し、発熱体5と受熱部6とが熱的に接触して固定されるようにされている。
【0026】
図8は本発明の実施形態による冷却機構を持つ電子機器がブレードモジュールであるとした場合のブレードサーバの構成例を示す正面図及び側面図である。
【0027】
図8に示すブレードサーバは、図8(a)に示すように、ブレードサーバ筐体28に、その上段から複数のブレードモジュール、図示例では4台のブレードモジュール22〜25が搭載されて構成され、図8(b)に示すように、ブレードモジュール22〜25の背面側にバックプレーン27、ファンユニット26が備えられている。各ブレードモジュール22〜25の内部は、図1に示して説明した場合と同様に、回路基板9と基板固定部品10とを用いて冷却風の流路が回路基板9の上面側流路と下面側流路とに分割されて形成されている。すなわち、各ブレードモジュール22〜25の内部は、発熱体5及び部品11〜13が搭載された基板面を含む流路14と、回路基板9及び基板固定部品10を介して形成された反対面側の放熱部8が配置されている流路15とが形成されている。冷却風は、ブレードサーバ筐体28の前面側から入気1として取り込まれ、前述の流路14、15を経て排気2、排気3としてバックプレーン27を介してファンユニット26に吸い込まれ、ブレードサーバ筐体28の外部に排出される。これにより、発熱体5による流路14の温度上昇を回避することができる。
【0028】
前述した本発明の実施形態によれば、電子機器筐体外に新たなスペースを設けることなく、従来技術の場合と同等の能力を有する冷却ファン用いて、その回転速度を上げることなく、電子機器の低騒音化及び省電力化を図りつつ効率的な冷却を行うことができる。
【符号の説明】
【0029】
1 入気
2 排気
3、18 排気
4 冷却ファン
5 発熱体
6 受熱部
7 熱輸送部
8 放熱部
9 回路基板
10 基板固定部品
11〜13 部品
14、15、17 流路
16 ヒートシンク
19 接合凸部
20 管状の接合凹部
21 接合凹部
22〜25 ブレードモジュール
26 ファンユニット
27 バックプレーン
28 ブレードサーバ筐体
29 ケース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ファンによる空冷の冷却機構を有する電子機器における冷却機構において、
電子機器を構成する高発熱部品を含む部品を搭載した回路基板の部品搭載面側と、前記回路基板の部品搭載面の反対面側とに前記冷却ファンによる冷却風を流す流路を形成し、
前記高発熱部品に接触させた受熱部と、該受熱部に接続され前記回路基板の部品搭載面の反対面側まで熱輸送を行う熱輸送部と、該熱輸送部に接続され前記回路基板の部品搭載面の反対面側の流路内に設けた放熱部とを備えたことを特徴とする冷却機構。
【請求項2】
前記受熱部と前記放熱部とを接続する熱輸送部の経路中に着脱可能な熱的接合部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の冷却機構。
【請求項3】
冷却ファンによる空冷の冷却機構を有する電子機器において、
前記冷却機構は、前記電子機器を構成する高発熱部品を含む部品を搭載した回路基板の部品搭載面側と、前記回路基板の部品搭載面の反対面側とに前記冷却ファンによる冷却風を流す流路が形成され、
前記高発熱部品に接触させた受熱部と、該受熱部に接続され前記回路基板の部品搭載面の反対面側まで熱輸送を行う熱輸送部と、該熱輸送部に接続され前記回路基板の部品搭載面の反対面側の流路内に設けた放熱部とを備えて構成されることを特徴とする電子機器。
【請求項4】
前記受熱部と前記放熱部とを接続する熱輸送部の経路中に着脱可能な熱的接合部が設けられていることを特徴とする請求項3記載の電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2012−160533(P2012−160533A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18274(P2011−18274)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】