説明

冷却装置

【課題】 冷却用ファンによる空気が通過するダクトを低コストで且つ省スペースで設けることができる冷却装置を提供する。
【解決手段】 シールドケース11には凹状の溝部15が金型形成されており、その溝部15の天井をなすようにマイラーシート19がシールドケース11に装着されてダクト20を形成している。溝部15の端部には冷却用ファン9が位置しており、冷却用ファン9の駆動状態では、ダクト20を通じて空気が送風されることにより画像処理用IC8の放熱が促進される。従って、シールドケース11にマイラーシート19を装着するだけでダクト20を構成することができると共に、ダクト20がシールドケース11から突出することもない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却用ファンの駆動状態でダクトを通じて空気を送風することにより電子装置からの放熱を促進する冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両用表示装置では、高速動作が要求される画像処理用ICの発熱量が大きいことから、ケース内に収納された画像処理用ICからの放熱を促進させるべく、冷却用ファンにより送風するようにしている。この場合、ケースにダクトを設け、冷却用ファンの駆動状態でダクトを通じて空気を送風することにより画像処理用ICからの放熱を促進するようにしている。このようなダクトは、樹脂やプレスにより形成された別部品をケースに装着することによりダクトを通じた空気の吸気や排気が円滑に行われるようにしている。
【0003】
尚、本発明の従来例に相当する公知文献が見当たらないため、その記載を省略する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ダクトを構成する部品点数増によるコスト高、また、近年の小型化などによりダクトそのものを別部品で追加するスペースもなくなっており、ダクトの設置が困難になりつつある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、冷却用ファンによる空気が通過するダクトを低コストで且つ省スペースで設けることができる冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明によれば、冷却用ファンの駆動状態では、ダクトを通じて空気が送風されるので、電子装置からの放熱が促進され、電子装置の温度が過度に上昇することが防止される。
ここで、ダクトは、ケースの外面を陥没形成し、その外面にシート状部材を装着して構成されているので、ケース以外の部品として必要な部品はシート状部材だけであり、低コストで且つ省スペースで構成することができる。
【0006】
請求項2の発明によれば、ポリエステルシートは薄くても強度が高いので、重量が大きくなることがないと共にケースの外面からの突出量を抑制して実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を車両用表示装置に適用した一実施例について図面を参照して説明する。
図2は、車両の例えばインストルメントパネルに設けられる表示装置を示している。この図2において、表示装置1は、液晶ユニット2をパネルケース3に収納してなる。このパネルケース3において液晶ユニット2の周囲となる部位には複数のスイッチ4が設けられている。これらのスイッチ4は、表示装置1の表示内容を切り換えるためのもので、カーナビ機能に切り替えられた場合は、例えばカーナビECUからの地図情報を表示し、カーエアコン機能に切り替えられた場合は、カーエアコンを調整するための各種情報を表示する。
【0008】
図1は、液晶ユニット2の縦断側面図である。この図1において、液晶ユニット2の主体をなす液晶パネル5の裏側には、駆動用プリント配線基板6が取付けられ、さらにその駆動用プリント配線基板6には、上述した各種情報を表示するための画像処理用プリント配線基板7が取り付けられている。この画像処理用プリント配線基板7は、液晶パネル5を駆動するためのもので、画像処理の主体をなす扁平矩形状の画像処理用IC(電子装置に相当)8が搭載されている。
【0009】
一方、画像処理用プリント配線基板7には冷却用ファン9が搭載されている。この冷却用ファン9は、伝熱性の良好なゲル10を介して画像処理用IC8の上面に密着しており、画像処理用IC8と伝熱的に接触している。この冷却用ファン9は、扁平形状をなしており、駆動状態で一方の端面から吸い込んだ空気を反対側の他方の端面に向かって吹き出すようになっている。この場合、冷却用ファン9の他方の端面は閉鎖端面であると共に、所定の一つの側面には吹出口9aが形成されており(図3参照)、閉鎖端面に吹き付けられた空気は、その吹出口9aを通じて外部に吹き出されるようになっている。
【0010】
液晶パネル5の裏側にはシールドケース(ケースに相当)11が装着されており、画像処理用IC8が搭載された画像処理用プリント配線基板7全体を覆うことにより外部からシールドするようになっている。
図3は、シールドケース11の斜視図である。この図3において、シールドケース11において、画像処理用プリント配線基板7に搭載されたコネクタ12ないし14に対応した部位には窓部が形成されており、その窓部からコネクタ12ないし14が突出している。
【0011】
シールドケース11の背面の所定部位は陥没形成されて凹状の溝部15が形成されている。この溝部15において画像処理用プリント配線基板7に搭載された冷却用ファン9に対応した部位には窓部16が形成されており、その窓部16に冷却用ファン9が位置して外方を臨んでいる。つまり、溝部15は、シールドケース11の端部から冷却用ファン9が位置する部位までを連結するように形成されている。この場合、溝部15において、冷却用ファン9の吹出口9aに対応する壁面には開口部17が形成されており、その開口部17を通じて冷却用ファン9から吹き出された空気がシールドケース11内に送風されるようになっている。シールドケース11において、溝部15からシールドケース11内に送風された空気が吹き出される部位には開口部18が形成されており、その開口部18からシールドケース11の外部に空気が排出されるようになっている。
尚、シールドケース11に形成された凹状の溝部15は、金型によりシールドケース11の形成時に一括して形成することができるものであり、シールドケース11の製造コストが上昇することはない。
【0012】
ここで、図4に示すようにシールドケース11にはマイラー(登録商標)シート(ポリエステルシート、シート状部材に相当)19が装着されており、溝部15の天井部を構成している。このような構成により、シールドケース11には、端部から冷却用ファン9まで連結するダクト20が構成されるもので、その端面がダクト20の吸気口として機能する。
【0013】
図1に戻って、シールドケース11には接続用プリント配線基板21が搭載されている。この接続用プリント配線基板21は、外部機器と液晶ユニット2との連結を図るもので、図示しないコネクタにより画像処理用プリント配線基板7のコネクタに連結されると共に、外部機器からのケーブルが接続されるコネクタ22が搭載されている。
【0014】
さて、上記構成の表示装置1への給電状態で例えばカーナビECUから表示指令が与えられると、画像処理用プリント配線基板7の処理により液晶パネル5には地図情報などの画像が表示される。
このような画像処理は高速処理が要求されることから、画像処理用プリント配線基板7の主体をなす画像処理用IC8が発熱し、その熱が画像処理用IC8から適切に放熱されないと、画像処理用IC8の温度が過度に上昇してその動作に異常を生じることになる。従って、表示装置1への電源投入状態では、冷却用ファン9を駆動するようにしている。つまり、冷却用ファン9が駆動されると、シールドケース11とマイラーシート19とから構成されるダクト20を通じて空気が吸い込まれて冷却用ファンの閉鎖端面に送風される。この空気は、冷却用ファンの閉鎖底面に当たってから、側面の吹出口9aを通じてシールドケース11内を通過し、最終的にシールドケース11に形成された開口部18を通じて外部に排気される。
【0015】
ここで、冷却用ファン9と画像処理用IC8とは伝熱的に接触しているので、冷却用ファン9により送風されると、冷却用ファン9の閉鎖端面に伝熱的に接触している画像処理用IC8の放熱を促進することができる。これにより、画像処理用IC8の温度が過度に上昇してしまうことはないので、画像処理用IC8の動作に異常を生じてしまうことを防止できる。
【0016】
このような実施例によれば、シールドケース11の外面に凹状の溝部15を形成すると共に、その溝部15の天井として機能するマイラーシート19をシールドケース11に取り付けることによりダクト20を構成し、冷却用ファン9の駆動状態でダクト20を通じて送風することにより冷却用ファン9と伝熱的に設けられた画像処理用IC8の放熱を促進するようにしたので、ダクト20を構成する手段としては、マイラーシート19のみで済む。従って、樹脂やプレスにより形成された別部品を追加して吸気や排気のダクトを実現する従来例のものと違って、部品点数が大幅に削減できるので、低コストで実施することができると共に、シールドケース11から突出することなくダクト20を設けることができる。
【0017】
しかも、シールドケース11に凹状の溝部15を、金型によりシールドケース11の形成時に一括して形成するようにしたので、製造コストが上昇せず、ダクト20を設けるコストを大幅に抑制することができる。
本発明は、上記実施例に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
空気を吸い込むためのダクトだけではなく、空気を吐き出すためのダクトにも適用するようにしてもよい。
ダクト20の天井を構成する部材として、金属板を用いるようにしてもよい。
冷却用ファン9により画像処理用IC8に直接空気を送風するようにしてもよい。
ケース内部に電子装置を有する構成であれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例を示す液晶ユニットの縦断側面図
【図2】全体の斜視図
【図3】マイラーシートを外して示すシールドケースの斜視図
【図4】マイラーシートを装着して示す図3相当図
【符号の説明】
【0019】
図面中、1は表示装置、2は液晶ユニット、8は画像処理用IC(電子装置)、9は冷却用ファン、11はシールドケース(ケース)、15は溝部、19はマイラーシート(シート状部材、ポリエステルシート)、20はダクトである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケース内に配置された電子装置と、
前記ケースに設けられたダクトと、
このダクト内に位置する冷却用ファンとを備え、
前記冷却用ファンの駆動状態で前記ダクトを通じて空気を送風することにより前記電子装置からの放熱を促進する冷却装置において、
前記ダクトは、
前記ケースの外面が陥没形成され、少なくとも前記ケースの端部から前記冷却用ファンが位置する部位までを連結する凹状の溝部と、
前記ケースの外面に装着され、前記溝部の天井をなすシート状部材とから構成されていることを特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記シート状部材は、ポリエステルシートであることを特徴とする請求項1記載の冷却装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−73721(P2006−73721A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−254227(P2004−254227)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】