説明

冷却装置

【課題】電子素子に応じた適切な放熱構造とすることができる冷却装置を提供する。
【解決手段】複数の電子素子21を冷却する冷却装置1であって、電子素子21と対向して配置され、冷媒が流通可能な収容室10aを電子素子21それぞれに対応した位置に画成するベース部10を備え、収容室10aには、当該収容室10aに対応する電子素子21の発熱量に基づいて設定された放熱能力を発揮する冷却フィン12が収容されることにより、部分的な冷却フィン12の設計が可能となる。このため、電子素子21の発熱量にばらつきが生じた場合であっても、適切な放熱構造とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却装置として、電子回路や電子素子で発生する熱を放熱部材に伝導させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の冷却装置を有する電子装置は、回路部分に第1の放熱部材が取り付けられており、この第1の放熱部材に第2の放熱部材を新たに増設できる構成とされている。第2の放熱部材は、ベース部及び複数のフィン領域部に分割されたフィンを有しており、このフィン領域部がベース部に着脱可能に配置されている。ベース部に取り付けるフィン領域部の数は、要求される放熱性能を実現するために加減される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−354954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の冷却装置にあっては、電子素子の発熱量を考慮していないため、電子素子の発熱量に応じたフィン構造、フィン配置とならない場合がある。このため、十分に放熱することができないおそれがある。
【0005】
そこで、本発明はこのような技術課題を解決するためになされたものであって、電子素子に応じた適切な放熱構造とすることができる冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る冷却装置は、複数の電子素子を冷却する冷却装置であって、前記電子素子と対向して配置され、冷媒が流通可能な収容室を前記電子素子それぞれに対応した位置に画成するベース部を備え、前記収容室には、当該収容室に対応する前記電子素子の発熱量に基づいて設定された放熱能力を発揮する放熱フィンが収容されることを特徴として構成される。
【0007】
本発明に係る冷却装置では、複数の電子素子それぞれに対応した収容室が画成され、電子素子の発熱量に基づいて設定された放熱能力を発揮する放熱フィンが収容室それぞれに収容される。このように、複数の電子素子それぞれに対応した収容室を画成することで、電子素子それぞれの発熱量に応じた放熱フィンを配置することができる。これにより、電子素子の発熱量にばらつきが生じた場合であっても、電子素子それぞれに応じた適切な放熱構造とすることが可能となる。
【0008】
ここで、前記収容室は、複数の放熱フィンを収容可能に構成されており、前記放熱フィンは、対応する前記電子素子の発熱量に応じて数量が設定されることが好適である。また、前記放熱フィンは、対応する前記電子素子の発熱量に応じて形状又は材質が設定されることが好適である。このように構成することで、簡易な調整で電子素子それぞれに応じた適切な放熱構造とすることが可能となる。
【0009】
また、前記放熱フィンは、前記電子素子の熱抵抗に応じて形状及び数量が設定されてもよい。
【0010】
さらに、前記放熱フィンは、前記収容室における冷媒の流れ方向を考慮して収容位置が調整されることが好適である。このように構成することで、放熱フィンにより収容室における冷媒の流れを調整することができるので、電子素子それぞれに応じた適切な放熱構造とすることが可能となる。また、収容室の圧損も調整することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子素子に応じた適切な放熱構造とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る冷却装置の斜視図である。
【図2】実施形態に係る冷却装置の一部断面図である。
【図3】実施形態に係る冷却装置の一部分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
本実施形態に係る冷却装置は、複数の電子素子を冷却する冷却装置であって、例えば、一体型構造とされたパワーカード式モジュールを冷却する際に好適に採用されるものである。
【0015】
図1は本実施形態に係る冷却装置1の斜視図、図2は図1の冷却装置1のII-II線に沿った一部断面図である。図1,2に示すように、複数の略板状の一体型モジュール2が冷却装置1の上面側に配置されており、一体型モジュール2と冷却装置1とは熱的に接続されている。
【0016】
図2に示すように、一体型モジュール2は、電子素子21、半田22、放熱部材23及びモールド部材20を備えている。電子素子21は、所定の抵抗値を有する電子部品であって、例えばトランジスタ等である。電子素子21は、半田22を介して放熱部材23上に配置されており、電子素子21と放熱部材23とは半田22を介して熱的に接続されている。すなわち、電子素子21の動作に伴って発生した熱は、半田22を介して放熱部材23へ伝導される。電子素子21、半田22及び放熱部材23は、下から順に放熱部材23、半田22、電子素子21の順に積層された状態で、放熱部材23の下主面のみが露出するようにモールド部材20に覆われて一体化されている。なお、図1では省略したが、一体型モジュール2と冷却装置1との間には絶縁層13が配置されており、絶縁層13と放熱部材23及びモールド部材20とは熱的に接続されている。
【0017】
冷却装置1は、天板11及びベース部10を備えている。ベース部10の上主面には、一体型モジュール2と対応する位置に開口が形成されている。天板11はこの開口を覆うように配置されており、ベース部10の内部に収容室10aが画成される。すなわち、収容室10aは、一体型モジュール2それぞれに対応するように画成されている。この収容室10aは、空気、水、ミスト等の冷媒が流通可能な構成とされている。例えば、収容室10aは、冷媒を供給するポンプ(不図示)等に接続されており、冷媒が供給される構造とされている。
【0018】
収容室10aには、複数の冷却フィン(放熱フィン)12が収容されている。冷却フィン12は、天板11と熱的に接続されている。この冷却フィン12は、本体部12a及び凸部12bを備えている。冷却フィン12は、凸部12bが収容室10aの内面に形成された凹部10bに差し込まれることで、収容室10a内に配置される。すなわち、個々の冷却フィン12は、それぞれが独立して着脱可能に構成されている。なお、冷却フィン12の配置方法はこれに限られるものではなく、接着等により収容室10a内に配置されてもよい。
【0019】
上記構成により、電子素子21から発生した熱は、半田22及び放熱部材23を介して絶縁層13へ伝導し、さらに天板11に伝導される。天板11は、冷却フィン12及び収容室10a内を流通する冷媒によって効率的に冷却される。このように、ベース部10内部のフィン構造によって冷却されることで電子素子21の温度上昇が抑制される。
【0020】
ここで、収容室10aに配置される冷却フィン12は、当該収容室10aに対応する電子素子21からの発熱量に応じた放熱能力を発揮するように、形状、材料、及び数量が選択される。電子素子21の発熱量は、予め計測されたデータに基づいて算出される。例えば、電子素子21の発熱量は、一体型モジュール2の熱抵抗の大きさに依存するため、一体型モジュール2の熱抵抗を予め計測することで電子素子21の発熱量を評価することが可能となる。一体型モジュール2の熱抵抗Rthnは、電子素子21に与える損失をW、電子素子21の温度上昇量をΔTとすると、以下の式1で表すことができる。
【数1】


損失Wは、電子素子21への電流電圧制御により一定値とすることができる。この電流電圧制御により電子素子21に一定の損失Wを与え続けた状態で、電子素子21の温度を計測する。電子素子21の温度は、例えば、サーモカメラ、温度センスダイオード出力、閾値電圧の温度依存性等により実測することができる。このように、一定の損失Wにおける電子素子21の温度上昇量ΔTを計測し、式1を用いて一体型モジュール2の熱抵抗Rthnを算出する。
【0021】
冷却装置1の放熱能力(冷却性能)は、冷却フィン12と冷媒との接触面積、冷却フィン12間の隙間、冷却フィン12の形状による冷媒の流れ(流速、乱流や層流、方向等)の変化、冷却フィン12の材質等を調整することで、変更することができる。例えば、ストレートフィン、オフセットフィン、ウェーブフィン、突起フィン、螺旋フィン又はピンフィン等の様々な形状の冷却フィン12を採用することにより、冷却性能を変更することができる。また、冷却フィン12を多段構造とすることで、冷却性能を変更することができる。また、冷却フィン12はブロック化されているので、収容室10aに収容される数を調整したり、違う形状の冷却フィン12を組み合わせたりすることで、冷却性能を変更することができる。さらに、冷却フィン12の配置位置を冷媒の流れ方向を考慮して決定することで冷却性能及び冷却装置1の圧損を調整することができる。
【0022】
上述のように、一体型モジュール2の熱抵抗Rthを算出し、収容室10aに配置される冷却フィン12の形状、材料、及び数量を変更することにより、算出された一体型モジュール2の熱抵抗Rthnに応じた冷却性能を実現することができる。例えば、一体型モジュール2の熱抵抗Rthnが大きいほど冷却フィン12と冷媒との接触面積を大きくなるように、冷却フィン12の形状、冷却フィン12間の隙間、冷却フィン12の形状による冷媒の流れ(流速、乱流や層流、方向等)の変化、冷却フィン12の材質等が調整される。この調整は、例えば一体型モジュール2を冷却装置1に組み付ける際に行われる。
【0023】
図3は、図1の冷却装置1の一部を分解した分解斜視図である。なお、図3では、説明理解の容易性を考慮して、予め計測した一体型モジュール2それぞれの熱抵抗Rthn(n:整数)を概念的に示している。図3に示す一体型モジュール2の熱抵抗Rthnは、例えば接合部分のボイド(空洞・気孔)や製造ばらつき等により、それぞれ異なる値となることがある。このため、図3に示すように、一体型モジュール2を冷却装置1に組み付ける前に、一体型モジュール2それぞれの熱抵抗Rthnに応じて、冷却フィン12を適宜選択され、さらに冷媒の流れ方向を考慮して配置位置が決定される。このように冷却フィン12を選択し、配置位置を決定することで、一体型モジュール2それぞれが有する電子素子21の素子最大温度を、同レベルで保持することができる。さらに、冷却装置1の圧損を調整することで冷媒を供給するポンプ等の性能を最大限発揮することが可能となる。
【0024】
以上、本実施形態に係る冷却装置1によれば、複数の電子素子21それぞれに対応した収容室10aを画成することで、一体型モジュール2それぞれの熱抵抗Rthnに応じて冷却フィン12を配置することができる。このように、冷却フィン12の形状を選択可能としたり、レイアウトに自由度を持たせたりすることで、部分的な冷却フィン12の設計が可能となるので、部分的な冷却性能の調整ができる。このため、一体型モジュール2の素子温度上昇をバランスよく調整することが可能となるとともに、電子素子21の発熱量にばらつきが生じた場合であっても、電子素子21それぞれに応じた適切な放熱構造とすることができる。
【0025】
また、本実施形態に係る冷却装置1によれば、一体型モジュール2の熱抵抗Rthnに応じて冷却フィン12の数量、形状又は材質を設定することができるので、簡易な調整で電子素子21それぞれに応じた適切な放熱構造とすることが可能となる。
【0026】
さらに、本実施形態に係る冷却装置1によれば、収容室10aにおける冷媒の流れ方向を考慮して冷却フィン12の収容位置を調整することができるので、電子素子21それぞれに応じた適切な放熱構造とすることが可能となるとともに、例えばポンプの性能条件等に応じて収容室10aの圧損も調整することができる。
【0027】
なお、上述した実施形態は本発明に係る冷却装置の一例を示すものである。本発明に係る冷却装置は、実施形態に係る冷却装置1に限られるものではなく、各請求項に記載した要旨を変更しない範囲で、実施形態に係る冷却装置を変形し、又は他のものに適用したものであってもよい。
【0028】
例えば、上述した実施形態では、冷却装置1の冷却対象として一体型モジュール2を例に説明したが、冷却対象が電子素子21単体であってもよい。
【符号の説明】
【0029】
1…冷却装置、2…一体型モジュール、10…ベース部、10a…収容室、12…冷却フィン(放熱フィン)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子素子を冷却する冷却装置であって、
前記電子素子と対向して配置され、冷媒が流通可能な収容室を前記電子素子それぞれに対応した位置に画成するベース部を備え、
前記収容室には、当該収容室に対応する前記電子素子の発熱量に基づいて設定された放熱能力を発揮する放熱フィンが収容されること、
を特徴とする冷却装置。
【請求項2】
前記収容室は、複数の放熱フィンを収容可能に構成されており、
前記放熱フィンは、対応する前記電子素子の発熱量に応じて数量が設定される請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記放熱フィンは、対応する前記電子素子の発熱量に応じて形状又は材質が設定される請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記放熱フィンは、前記電子素子の熱抵抗に応じて形状及び数量が設定される請求項1〜3の何れか一項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記放熱フィンは、前記収容室における冷媒の流れ方向を考慮して収容位置が調整される請求項1〜4の何れか一項に記載の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−151178(P2011−151178A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−10812(P2010−10812)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】