説明

冷却装置

【課題】ヒートシンクに備えられる放熱フィン間の暖気を排出する圧電ファンを用いた冷却能力の高い冷却装置を提供する。
【解決手段】圧電素子11と、振動板12と、振動板12の一端を固定する支持体13とを備え、曲げ部より固定端側には圧電素子11が貼付されており、曲げ部より自由端側は複数の分割板に分割されて形成されている圧電ファン10と、ベース部22と、ベース部22の一方主面に設けられている複数の放熱フィン21とを備えるヒートシンク20とを有し、振動板12は、圧電素子11を貼付した面が放熱フィン21の先端部を覆うように設けられており、複数の分割板が放熱フィン21の間にそれぞれ挿入されている冷却装置1であって、ベース部22から振動板12の固定端までの長さに対するベース部22から放熱フィン21の先端部までの長さの比が65.6%以上75.0%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシンクに備えられる放熱フィン間の暖気を排出する圧電ファンを用いた冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器では、機器本体の小型化と部品の高密度化が進んだために、機器内部における発熱対策が課題となっている。例えば、パーソナルコンピュータにおいては、中央演算処理装置(以下、CPU)の高速化が進み発熱体であるCPUの発熱量が増加し、さらに機器本体の小型化の影響により機器内部の通風性が低下してしまう環境になっている。そのため、発熱体の隣接面にヒートシンクを配置し、前記ヒートシンクに備えられる放熱フィン間の暖気を排出する圧電ファンを用いた冷却装置が望まれている。
【0003】
このような冷却装置は、例えば特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示されているのは、図5(A)に示すように、ヒートシンク120に備えられている複数の放熱フィン121の間の暖気を排出する圧電ファン110を用いた冷却装置100である。
【0004】
圧電ファン110は、図5(B)に示すように、圧電素子111と、前記圧電素子111が貼付されている振動板112とを備える。前記振動板112は、一端が固定部材130によってヒートシンク120に固定されて固定端113となり、他端が自由端114となる。前記振動板112は、曲げ部115で90度に折れ曲がって形成されている。曲げ部115より自由端側は放熱フィン121の間隔に合わせて熊手型に複数に分割されて形成されている。
【0005】
前記圧電ファン110は、前記圧電素子111に形成されている電極(図示せず)と導体からなる前記振動板112とに駆動交流電源から電圧を印加して駆動させる。前記圧電素子111が伸縮を行うと、前記振動板112の自由端114がうちわ状に屈曲振動を行う。このようにして、圧電ファンによりヒートシンク120に設けられた放熱フィン121間の空気を交換することで、ヒートシンク120を冷却するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−67909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このような冷却装置では、冷却装置自体の大きさが大きくならないように、圧電ファンの振動板を折り曲げて形成している。しかし、ヒートシンクに設けられた複数の放熱フィンの先端部の直上に振動板の曲げ部より固定端側の面が配置されているために、放熱フィンの周囲の通風性が悪化し、発熱量の大きな機器に対して冷却能力が十分ではないという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、従来よりも冷却能力の高い冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の冷却装置は、電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子と、振動板と、前記振動板の一端を固定する支持体とを備え、前記振動板の一端は固定端、他端は自由端であり、前記振動板には曲げ部が形成されており、前記曲げ部より固定端側には前記圧電素子が貼付されており、前記曲げ部より自由端側は複数の分割板に分割されて形成されている圧電ファンと、ベース部と、前記ベース部の一方主面に設けられている複数の放熱フィンとを備えるヒートシンクとを有し、前記振動板は、前記圧電素子を貼付した面が前記放熱フィンの先端部を覆うように設けられており、前記複数の分割板が前記放熱フィンの間にそれぞれ挿入されている冷却装置であって、前記ベース部から前記振動板の固定端までの長さに対する前記ベース部から前記放熱フィンの先端部までの長さの比が65.6%以上75.0%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
振動板の固定端と放熱フィンの先端部との間に適正な距離を設けることで、圧電素子を貼付した面と放熱フィンの先端部との間の通風性が向上するため、空気の入れ変えが活発になり、冷却装置の冷却能力を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1による冷却装置の斜視図である。
【図2】(A)は実施形態1による冷却装置の一部である圧電ファンの斜視図、(B)は同側面図である。
【図3】実施形態1による冷却装置の正面図である。
【図4】実験例1〜4に基づく熱抵抗を示す図である。
【図5】(A)は従来の冷却装置の斜視図、(B)は従来の圧電ファンの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態に係る冷却装置について説明する。
【0013】
(実施形態1)
以下、実施形態1について、図1と図2を参照しながら説明を行う。本実施形態1の冷却装置1は図1に示すように、圧電ファン10とヒートシンク20とから構成されている。
【0014】
圧電ファン10は、所定周波数の駆動交流電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子11と、圧電素子11が両主面に固着されている振動板12と、振動板12の一方主面に接着されており、前記振動板12の一端を支持する支持体13とを備える。振動板12の支持体13によって固定されている一端を固定端14、他端を自由端15とする。
【0015】
振動板12は、幅46mm×長さ50mm×厚み50μmの薄い板状に形成されている。振動板12は長さ方向の中央にL字型の曲げ部16が設けられており、曲げ部16にて支持体13側に約90度に折り曲げて形成されている。自由端15から曲げ部16までの長さは25mmである。振動板12の幅は曲げ部16を境に変化しており、曲げ部16よりも自由端15側の振動板12の幅は46mm、曲げ部16よりも固定端14側の振動板12の幅は35mmに加工されて形成されている。振動板12の曲げ部16よりも自由端15側では、振動板12が7枚の分割板12aに分割されて熊手型に形成されており、各分割板12aは等間隔に形成されている。各分割板12aの幅はそれぞれ4.5mmである。振動板12は、例えばNi−Fe合金から構成されている。
【0016】
圧電素子11は、幅33.4mm×長さ15.8mm×厚み55μmの板状であり、両主面に電極(図示せず)が形成されている。圧電素子11は、例えばチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成されている。圧電素子11は、振動板12の曲げ部16よりも固定端14側に固着されている。
【0017】
支持体13は、幅48mm×長さ5mm×厚み3mmの直方体形状であり、例えばガラスエポキシ樹脂から構成されている。支持体13は、両端の2箇所でネジ止めされることでヒートシンク20に支持されるものである。
【0018】
図2(B)に示すように、圧電ファン10は、圧電素子11に形成されている一方の電極(図示せず)と導体からなる振動板12とに、駆動交流電源17から電圧を印加して駆動させる。前記圧電素子11が長さ方向に伸縮を行うと、振動板12は一端が固定されているために、曲げ部16が圧電素子11の厚み方向に振動する。その結果、自由端15が圧電素子11の長さ方向にうちわ状に屈曲振動を行い、圧電ファンとして駆動する。
【0019】
ヒートシンク20は、ベース部22と、ベース部22から上方へ互いに平行に延びる複数の放熱フィン21とを備える。ベース部22は、幅50mm×長さ50mm×高さ3mmの板状である。放熱フィン21は、幅1.2mm×長さ50mm×高さ32mmの板状である。ヒートシンク20は例えばアルミニウムから構成されている。
【0020】
圧電ファン10は放熱フィン21の上端部に幅方向に支持されている。振動板12は、圧電素子11を貼付した面が放熱フィン21の先端部を覆うようにヒートシンク20のベース部22に対して平行に設けられており、振動板12の複数の分割板12aが放熱フィン21の間にそれぞれ挿入され、放熱フィン21に当接することなく振動するように設けられている。
【0021】
このような冷却装置は、例えば発熱体にヒートシンク20の底面を当接させて駆動させるものである。このように配置すると、発熱体で発生する熱はヒートシンク20に伝導して、放熱フィン21間から暖気として空気中に放出される。これらの放熱フィン21間の暖気と周囲の冷気とを圧電ファン10が振動して入れ替えることによって、冷却装置として駆動するものである。
【0022】
本実施形態では、ベース部22から振動板12の固定端14までの長さに対するベース部22から放熱フィン21の先端部までの長さの比が65.6%以上75.0%以下として形成されている。このように構成しているので、従来よりも冷却装置の冷却能力を高くすることができる。
【0023】
以下に、上記の範囲が望ましいことを示す実験結果を記述する。
【0024】
本実験では、図1に示す冷却装置1を用いて実験を行った。本実験では、ベース部22から振動板12の固定端14までの長さ、すなわち図3に示す距離Bを変化させずに、ベース部22から放熱フィン21の先端部までの長さ、すなわち図3に示す距離Aを変化させる。
【0025】
このようにして、ベース部22から振動板12の固定端14までの長さに対するベース部22から放熱フィン21の先端部までの長さの比を変化させる。すなわち、図3に示す距離Bに対する距離Aの長さの比を変化させる。詳しい条件については表1に示す。
【0026】
【表1】

【0027】
表1に示す4条件で、冷却装置を駆動させた時の冷却装置の熱抵抗を測定して比較を行った。具体的には、ヒートシンクのベース部の他方主面に20Wの熱源を設置し、冷却装置を駆動させてベース部の一方主面の中央部の熱抵抗を測定した。熱抵抗は、(ヒートシンクの温度−外気温度)/発熱体の発熱量によって決定される。熱抵抗は、1Wあたりの温度上昇のしやすさを表し、一般的に低いと冷却能力が高いといえる。
【0028】
各圧電ファンに印加する電圧は正弦波交流電圧であり、電圧は20Vppまたは30Vpp、周波数は42.3Hzとした。ヒートシンクの温度は、ヒートシンクのベース部の一方主面の中央部に熱電対を設けて測定を行った。また、外気温度は25℃であった。
【0029】
実験結果を図4と表1に示す。
【0030】
印加電圧が20Vppのとき、実験例1〜4を比較すると、実験例1の冷却装置の熱抵抗は2.65K/W、実験例2の冷却装置の熱抵抗は2.61K/W、実験例3の冷却装置の熱抵抗は2.56K/W、実験例4の冷却装置の熱抵抗は2.77K/Wであった。
【0031】
実験結果から、実験例2及び実験例3は実験例1よりも冷却装置の熱抵抗が低くなっているので、ベース部から振動板の固定端までの長さに対するベース部から放熱フィンの先端部までの長さの比が小さくなると、振動板の圧電素子を貼付した面と放熱フィンの先端部との間への空気の流入量が増加し、冷却装置の熱抵抗が減少する傾向があるといえる。
【0032】
これに対して、実験例4ではベース部から振動板の固定端までの長さに対するベース部から放熱フィンの先端部までの長さの比が小さくなっているにもかかわらず、実験例1よりも冷却装置の熱抵抗が高くなっている。これは、ヒートシンクの表面積が減少することにより、ヒートシンクの放熱性が悪くなり、冷却装置の熱抵抗が増加したためである。
【0033】
また、印加電圧が30Vppのとき、同様に実験例1〜4を比較すると、図4と表1に示すように、実験例1の冷却装置の熱抵抗は2.26K/W、実験例2の冷却装置の熱抵抗は2.01K/W、実験例3の冷却装置の熱抵抗は2.20K/W、実験例4の冷却装置の熱抵抗は2.26K/Wであった。
【0034】
この結果から、印加電圧が30Vppのときにも印加電圧が20Vppのときと同様の傾向があるといえる。
【0035】
前記の結果から、ベース部から振動板の固定端までの長さに対するベース部から放熱フィンの先端部までの長さの比には適正な値があり、ベース部から振動板の固定端までの長さに対するベース部から放熱フィンの先端部までの長さの比が65.6%以上75.0%以下として形成されていると、より望ましいといえる。
【0036】
一般的には、従来例は放熱フィンの周囲の空気をより多く排出するため、放熱フィンを振動板の圧電素子を貼付した面にめいっぱい近づけ、実験例4のように振動板の圧電素子を貼付した面と放熱フィンの先端部との間の距離が短くなるような条件にしがちである。しかし、従来例に比べて上記範囲の方が冷却装置の熱抵抗が低くなっているという結果から、ベース部から振動板の固定端までの長さに対するベース部から放熱フィンの先端部までの長さの比が小さくなると、振動板の圧電素子を貼付した面と放熱フィンの先端部との間への空気の流入量が増加し、従来よりも冷却装置の冷却能力が高くなる傾向があるといえる。
【0037】
なお、本発明に係る冷却装置は前記実施形態に限定するものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更できる。
【0038】
前記実施形態では、圧電素子11はチタン酸ジルコン酸鉛系セラミックスから構成しているが、これに限るものではない。例えば、ニオブ酸カリウムナトリウム系及びアルカリニオブ酸系セラミックス等の非鉛系圧電体セラミックスの圧電材料などから構成してもよい。
【0039】
前記実施形態では、振動板12はNi−Fe合金から形成されているが、これに限るものではない。例えばSUSなど、ばね性のある材料であればどのようなものを用いてもよい。
【0040】
前記実施形態では、振動板12を両面から挟むように圧電素子11をそれぞれ固着して、バイモルフ型振動子を構成したが、振動板12の一方主面のみに圧電素子11を接合したユニモルフ型振動子を構成してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1、100…冷却装置
10、110…圧電ファン
11…圧電素子
12…振動板
12a…分割板
13…支持体
14…固定端
15…自由端
16…曲げ部
17…駆動交流電源
20…ヒートシンク
21…放熱フィン
22…ベース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧の印加に応じて伸縮する圧電素子と、振動板と、前記振動板の一端を固定する支持体とを備え、前記振動板の一端は固定端、他端は自由端であり、前記振動板には曲げ部が形成されており、前記曲げ部より固定端側には前記圧電素子が貼付されており、前記曲げ部より自由端側は複数の分割板に分割されて形成されている圧電ファンと、
ベース部と、前記ベース部の一方主面に設けられている複数の放熱フィンとを備えるヒートシンクとを有し、
前記振動板は、前記圧電素子を貼付した面が前記放熱フィンの先端部を覆うように設けられており、前記複数の分割板が前記放熱フィンの間にそれぞれ挿入されている冷却装置であって、
前記ベース部から前記振動板の固定端までの長さに対する前記ベース部から前記放熱フィンの先端部までの長さの比が65.6%以上75.0%以下であることを特徴とする冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−182185(P2012−182185A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−42358(P2011−42358)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006231)株式会社村田製作所 (3,635)
【Fターム(参考)】