説明

冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット

【課題】可視光透過率が高く、断熱性能に優れ、ガラス板表面が結露して視認性が低下することがなく、ヒーター等によるガラス板を加熱する手段等が不要であるとともに、重量の小さな冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1を提供する。
【解決手段】庫内側ガラス板4と庫外側ガラス板2との空間にガスが封入されてなる冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1であって、該空間内に、プラスチックフィルムの片面又は両面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルム3が少なくとも1枚配置されて該空間が分割され、庫内側ガラス板4の表面には低放射層2aが形成されておらず、庫内側ガラス板4の外側表面には防曇層5が形成され、かつ、冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の熱貫流率が1.6W/m・K以下であることを特徴とする冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
コンビニエンスストアなどにおける冷蔵ショーケース又は冷凍ショーケースに用いられるガラスユニットとして、冷蔵庫又は冷凍庫内の温度を一定に保つ観点から複層ガラスが採用されている。しかし、複層ガラスの断熱性能がそれほど高くない場合、冷蔵庫又は冷凍庫内の低温空気により徐々に庫外側ガラス板が冷やされてしまう。その結果、庫外側の空気が庫外側ガラス板の外側表面に接した際に結露して視認性が低下する問題があった。この問題を解決する方法として、ヒーター等による加熱手段を庫外側ガラス板に設け、庫外側ガラス板の温度を庫外側の温度に近づけることで、庫外側ガラス板の外側表面が結露するのを防止できるとされている。しかしながら、ヒーター等により庫外側ガラス板を常時加熱する必要があるため、消費電力が大きくなり、エネルギーコストが高くなるという問題があった。
【0003】
一方、複層ガラスの断熱性能を向上させれば、ヒーター等により庫外側ガラス板を加熱しなくても庫外側ガラス板の外側表面が結露するのを防止できることが知られている。例えば、特許文献1には、外側ガラス板、中間ガラス板、内側ガラス板から構成される冷蔵庫扉であって、外側ガラス板及び内側ガラス板の内面が低放射率コーティングにより被覆されており、内側ガラス板の外面に防曇又は霜除けコーティングがされた冷蔵庫扉について記載されている。また、ガラス板とガラス板との空間を空気、クリプトン、アルゴン又はその他適切なガスで満たすことができると記載されている。これによれば、通電によって扉を加熱しなくても外側ガラス板の外面に結露が生じることを防ぐU値を備えるとされている。しかしながら、このようにして得られた冷蔵庫扉は、扉自体の厚みが大きくなるため、寸法が限られた冷蔵庫又は冷凍庫への取り付けが困難となり、また、扉自体の重量も大きくなるため、改善が望まれていた。
【0004】
また、特許文献2には、4枚の実質的に平行なシートより構成された断熱ガラス構造であって、該構造の外側表面に位置する第1シート及び第4シートがガラスからなり、該構造の内部に収容された第2シート及び第3シートがプラスチックからなる断熱ガラス構造について記載されている。また、該プラスチックからなる第2シート及び第3シートが、誘電体/金属/誘電体の多層誘電透過フィルター層とする熱反射層を片面もしくは両面に有していてもよいことが記載されている。更に、シートとシートとの空間に、クリプトン、アルゴンなどの熱伝導率を減少させるために選択されたガスが充填されると記載されている。これによれば、優れた断熱性能を有する多重枠窓構造を提供することができるとされている。しかしながら、このような断熱ガラス構造が取り付けられた冷蔵庫や冷凍庫の扉を開閉した際には、庫外側からの空気が庫内側ガラス板の外側表面に接して曇りや結露が生じて視認性が低下するおそれがあり、改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−513727号公報
【特許文献2】特開平5−502487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、可視光透過率が高く、断熱性能に優れ、ガラス板表面が結露して視認性が低下することがなく、ヒーター等によるガラス板を加熱する手段等が不要であるとともに、重量の小さな冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、庫内側ガラス板と庫外側ガラス板との空間にガスが封入されてなる冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットであって、該空間内に、プラスチックフィルムの片面又は両面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルムが少なくとも1枚配置されて該空間が分割され、庫内側ガラス板の表面には低放射層が形成されておらず、庫内側ガラス板の外側表面には防曇層が形成され、かつ、冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットの熱貫流率が1.6W/m・K以下であることを特徴とする冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットを提供することによって解決される。
【0008】
このとき、庫外側ガラス板の内側表面に低放射層が形成され、庫内側ガラス板と低放射フィルムとの空間にファブリー・ペロ干渉フィルター面が位置するように低放射フィルムが配置されてなることが好適であり、前記形成された低放射層が、反射防止皮膜を有する低放射層であることが好適である。前記ガスが空気、アルゴン及びクリプトンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好適であり、前記ガスがクリプトンであり、冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットの熱貫流率が0.9W/m・K以下であることが好適であり、防曇層が防曇フィルムからなることが好適である。可視光透過率が60%以上であることが好適であり、紫外線透過率が1%以下であることが好適である。また、低放射フィルムにより分割された空間の厚みが5〜16mmであることが好適であり、全厚みが27mm以下であることも好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットは、可視光透過率が高く、断熱性能に優れるとともに、ガラス板表面が結露して視認性が低下することがない。また、ヒーター等によるガラス板を加熱する手段等が不要であり、消費電力を大幅に節約することが可能である。更に、庫内側ガラス板と庫外側ガラス板との空間にガラス板が設置される場合と比べて、得られるガラスユニットの重量を小さくすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例2における冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットの断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明をより具体的に説明する。図1は、本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の一例の断面概略図であり、庫外側から、庫外側ガラス板2、低放射フィルム3、庫内側ガラス板4、防曇層5がこの順番に配置されてなる例である。
【0012】
本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1は、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間に、プラスチックフィルムの片面又は両面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルム3が少なくとも1枚配置されて該空間が分割されてなる。ここで、庫外側ガラス板2、低放射フィルム3及び庫内側ガラス板4は、平行に配置されてなる。このような構成とすることにより、熱貫流率を低くすることができるため、断熱性能に優れたガラスユニット1が得られる。その結果、ヒーター等による庫外側ガラス板2を加熱する手段等が不要となり、消費電力を大幅に節約することが可能となる利点を有する。また、上述のような構成とすることで、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間に中間ガラス板が設置される場合と比べて、得られる本発明のガラスユニット1の重量を小さくすることが可能となるため、冷蔵庫や冷凍庫の設置等が容易となる利点を有する。更に、得られる本発明のガラスユニット1の全厚みを小さくすることができるため、取付箇所の厚みが限られた冷蔵庫又は冷凍庫に対しても本発明のガラスユニット1を用いることが可能となる。
【0013】
ここで、本発明において、プラスチックフィルムの片面又は両面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルム3とは、可視光を透過し赤外線を反射する機能を有するフィルムであり、プラスチックフィルムの片面又は両面に金属及び金属酸化物等が複数積層されて形成された低放射フィルムである。このような低放射フィルム3としては、プラスチックフィルムの片面又は両面にAg等の金属、及びSnO、ZnO、TiO等の金属酸化物が交互に複数積層されてなる低放射フィルムなどが挙げられる。前記低放射フィルム3としては、冷蔵庫や冷凍庫内に陳列された商品等の視認性を保ちつつ、断熱性能を確保する観点から、可視光透過率が74%以上であって、表面放射率が0.2以下の低放射フィルム3が好適に用いられる。また、ファブリー・ペロ干渉フィルターを形成する方法としては特に限定されないが、スパッタリング等により形成する方法等が挙げられる。前記低放射フィルム3の具体例としては、Southwall社の低放射フィルム「ヒートミラー(登録商標)HM88」などを好適に用いることができる。また、プラスチックフィルムの両面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルム3としては、上記片面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルム3と同様の観点から、可視光透過率が74%以上であって、表面放射率が両面とも0.2以下の低放射フィルム3が好適に用いられる。上記低放射フィルム3としては、例えば、Southwall社製の低放射フィルム「ヒートミラー(登録商標)TC88(ツインコート)」などを用いることができる。
【0014】
また、本発明において、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間に配置される上記低放射フィルム3の枚数は、1枚以上であれば特に限定されない。熱貫流率を向上させる観点からは複数枚配置することが好ましい。しかしながら、複数枚配置した場合には、得られるガラスユニット1の可視光透過率が低下するおそれがあるため、熱貫流率と可視光透過率とのバランスを考慮して低放射フィルム3の枚数を選択することが重要である。かかる観点から、プラスチックフィルムの両面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルム3を用いる場合は、1枚のみ配置する実施態様が好適に採用される。また、低放射フィルム3を複数配置する場合は、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間に低放射フィルム3が配置されて該空間が分割される際に、ファブリー・ペロ干渉フィルター面3aが別々の空間に面するように配置されていることが好ましい。このことにより、本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の熱貫流率の値を低くすることができるため、断熱効果が高くなる利点を有する。
【0015】
本発明では、前記低放射フィルム3により分割された空間の厚みが5〜16mmであることが好ましい。該分割された空間の厚みが上記範囲にあることで、断熱効果に優れたガラスユニット1が得られる利点を有する。本発明者らは、該分割された空間の厚みに応じて、熱貫流率に差があることを確認しており、更に該空間に封入されるガスの種類により、該分割された空間の最適な厚みが異なることも確認している。該分割された空間の厚みが5mm未満の場合、温度や気圧の変化によって複層ガラスが膨張・収縮し、ガラスとフィルムが接触するなどにより低放射膜の性能が損なわれるおそれがあり、該分割された空間の厚みの少なくとも1つが6mm以上であることがより好ましく、8mm以上であることが更に好ましく、該分割された空間のいずれもが6mm以上であることが特に好ましく、8mm以上であることが最も好ましい。特に、該空間にアルゴンガスやクリプトンガスを封入する場合には、該分割された空間の厚みの少なくとも1つが6mm以上であることがより好ましく、8mm以上であることが更に好ましく、該分割された空間のいずれもが6mm以上であることが特に好ましく、8mm以上であることが最も好ましい。一方、該分割された空間の厚みが16mmを超える場合、断熱性能が低下するおそれがあり、10mm以下であることがより好ましい。
【0016】
本発明では、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間にガスが封入されてなる。このことにより、断熱効果の高い本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1が得られる。前記ガスとしては特に限定されず、空気、アルゴン及びクリプトンからなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。空気は乾燥空気であることが好ましい。断熱効果をより高くする観点から、前記空間に、アルゴン及びクリプトンからなる群から選択される少なくとも1種のガスが実質的に封入されていることが好ましく、中でも、クリプトンのみからなるガスが実質的に封入されていることがより好ましい。ここで、実質的にとは、アルゴン及びクリプトンからなる群から選択される少なくとも1種のガス、又はクリプトンのみからなるガスが90%以上の充填率で前記空間に封入されていることを示す。
【0017】
本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1は、庫外側ガラス板2の内側表面に低放射層2aが形成され、低放射フィルム3と庫内側ガラス板4との空間側にファブリー・ペロ干渉フィルター面3aが位置するように低放射フィルム3が配置されていることが好ましい。すなわち、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間側に低放射フィルム3が配置されて該空間が分割される際、低放射層2aが形成された面とファブリー・ペロ干渉フィルター面3aとが、別々の空間に面するように配置されていることが好ましい。このことにより、本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の熱貫流率の値を低くすることができるため、断熱効果が高くなる利点を有する。低放射層2aが形成された庫外側ガラス板2としては、特に限定されず、冷蔵庫や冷凍庫内に陳列された商品等の視認性を保ちつつ、断熱性能を確保する観点から、可視光透過率が80%以上であって、表面放射率が0.25以下のものが好適に用いられる。低放射層2aとしては、例えば、Ag等の金属、及びSnO、ZnO、TiO等の金属酸化物が複数積層されてなるものが挙げられる。また、庫外側ガラス板2表面に低放射層2aを形成する方法としては、特に限定されず、例えば、スパッタリング等により庫外側ガラス板2表面を低放射層2aで被覆する方法等が挙げられる。
【0018】
また、本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1は、断熱性能を確保しつつ、視認性をより向上させる観点から、前記庫外側ガラス板2の内側表面に形成される低放射層2aが、反射防止皮膜を有する低放射層2aであることが好ましい。前記反射防止皮膜を有する低放射層2aとしては、低放射層2aの最表面に反射防止皮膜が位置するものが好適に用いられる。このような反射防止皮膜を有する低放射層2aが形成されたガラス板として、例えば、Saint−Gobain Glass社製「PLANITHERM(登録商標)」を用いることができる。このような反射防止皮膜を有する低放射層2aが形成された庫外側ガラス板2を用いることにより、本発明のガラスユニット1を冷蔵ショーケース又は冷凍ショーケースとして使用した場合、断熱性能を確保しつつ、陳列された商品の視認性がより良好となる利点を有する。
【0019】
本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1は、庫内側ガラス板4の表面には低放射層2aが形成されていない。このことにより、後述する庫内側ガラス板4の外側表面に防曇層5を形成する際の操作性が良好となる利点を有する。
【0020】
また、本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1は、庫内側ガラス板4の外側表面に防曇層5が形成されてなる。このことにより、庫内側ガラス板4の外側表面が結露して視認性が低下するのを防止することができる。例えば、本発明のガラスユニット1が取り付けられた冷蔵庫や冷凍庫から商品等を取り出したり補充したりする際には、庫外側からの空気が庫内側ガラス板4の外側表面に接することが想定されるが、このような場合であっても、該庫内側ガラス板4の外側表面が結露して視認性が低下するのを防止することができる。本発明で形成される防曇層5の厚みとしては特に限定されず、1〜300μmであることが好ましい。また、本発明において、形成される防曇層5の可視光透過率としては、冷蔵庫や冷凍庫内に陳列された商品等の視認性を確保する観点から90%以上であることが好ましい。また、本発明において、形成される防曇層5が紫外線遮蔽効果を有していてもよい。このことにより、冷蔵庫や冷凍庫内にある商品等の劣化を防止することが可能となる利点を有する。
【0021】
ここで、庫内側ガラス板4の外側表面に防曇層5を形成する方法としては特に限定されず、庫内側ガラス板4の外側表面に親水性ポリマー等を塗布することにより形成してもよいし、庫内側ガラス板4の外側表面に防曇フィルムを貼付することにより形成してもよい。用いられる防曇フィルムの厚みとしては特に限定されず、30〜300μmであることが好ましい。防曇層5を形成する作業が比較的容易である等の観点から、防曇フィルムを貼付することにより防曇層5を形成する方法が好適に採用される。また、防曇フィルムとしては、例えば、ポリエステルフィルム等の基材フィルムに親水性ポリマー等が形成された防曇フィルムや、トリアセチルセルロースフィルム等吸水性ポリマーからなる防曇フィルムなどを用いることができる。
【0022】
本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1は、熱貫流率が1.6W/m・K以下であることを特徴とする。このように、熱貫流率が一定以下であることにより、断熱性能に優れるため、ヒーター等により庫外側ガラス板2を加熱する手段等が不要となり、消費電力を大幅に節約することが可能となる利点を有する。熱貫流率が1.6W/m・Kを超える場合、断熱性能が不十分で庫外側ガラス板2の外側表面が結露してしまうおそれがあり、熱貫流率は1.4W/m・K以下であることが好ましく、1.2W/m・K以下であることが更に好ましく、1W/m・K以下であることが特に好ましい。熱貫流率は、上記説明した低放射フィルム3の枚数、分割された空間の厚み、封入されるガスの種類、庫外側ガラス板2に形成される低放射層2aの有無等により調整することが可能である。本発明の好適な実施態様としては、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間に封入されるガスがクリプトンであり、冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の熱貫流率が0.9W/m・K以下であることが好ましい。
【0023】
本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の全厚みとしては特に限定されないが、27mm以下であることが好ましい。全厚みが27mmを超える場合、厚みの限られた冷蔵庫又は冷凍庫に対して、本発明のガラスユニット1を取り付けることができないおそれがあり、全厚みは25mm以下であることがより好ましく、23.5mm以下であることが更に好ましい。
【0024】
本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の可視光透過率は60%以上であることが好ましい。可視光透過率が60%未満の場合、冷蔵庫や冷凍庫内に陳列された商品等の視認性が低下するおそれがあり、63%以上であることがより好ましく、65%以上であることが更に好ましく、70%以上であることが特に好ましい。
【0025】
本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の反射率は20%以下であることが好ましい。反射率が20%を超える場合、冷蔵庫や冷凍庫内に陳列された商品等の視認性が低下するおそれがあり、18%以下であることがより好ましい。反射率をより低くする観点からは、上記説明した反射防止皮膜を有する低放射層2aが形成された庫外側ガラス板2が好適に用いられる。ここで、反射率の値は、庫外側ガラス板2から庫内側ガラス板4の方向に可視光を透過させた際に観測される反射光の割合である。
【0026】
また、本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1における可視光透過率と反射率との比(透過率/反射率)が3.5以上であることが好ましい。このことにより、例えば、庫内の明るさに比べて庫外の明るさが10倍程度大きくても、冷蔵庫や冷凍庫内に陳列された商品等の視認性が低下しないことを本発明者らは確認している。このことから、冷蔵庫又は冷凍庫に備える照明を削減することが可能となる。当該比(透過率/反射率)は3.7以上であることがより好ましく、4以上であることが更に好ましい。
【0027】
また、本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の紫外線透過率が1%以下であることが好ましい。このように、紫外線透過率を1%以下とする方法としては特に限定されないが、例えば、紫外線遮蔽効果を有する低放射フィルム3を用いることが好適な実施態様として挙げられる。紫外線透過率が1%を超える場合、冷蔵庫や冷凍庫内に陳列された商品等が劣化したり、庫外側ガラス板2の外側表面に形成された防曇層5が劣化したりするおそれがある。
【0028】
また、本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1は、可視光透過率が一定以上であるだけでなく、色差ΔEが4.5以下であることが好ましい。ここで、本発明において色差ΔEは、フロートガラス板を3枚用いて得られる複層ガラスにおけるΔEabの値を基準とし、この値と本発明のガラスユニット1におけるΔEabの値との差により求められる。また、ΔEabは、明度L、クロマティクネス指数a、bの値から以下の式(1)により求められる。
ΔEab=(ΔL+Δa+Δb1/2 (1)
本発明では、色差ΔEが一定以下であることにより、冷蔵庫や冷凍庫内に陳列された商品等を自然な色合いで確認することができる。色差ΔEは2以下であることがより好ましい。
【0029】
以下、本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の製造方法について、図1を参照しながら説明する。金属製のスペーサー7に庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4とを平行に配置し、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間に、プラスチックフィルムの片面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルム3を少なくとも1つ配置する。このとき、庫外側ガラス板2と該低放射フィルム3との距離で示される空間の厚みt、及び該低放射フィルム3と庫内側ガラス板4との距離で示される空間の厚みtが一定となるように該低放射フィルム3を配置し、該低放射フィルム3はスペーサー7、1次シール材8及び2次シール6を用いて保持される。次いで、該低放射フィルム3を展張することにより、該空間が分割される。その後、庫外側ガラス板2と該低放射フィルム3との空間、及び該低放射フィルム3と庫内側ガラス板4との空間に、断熱性を向上させるためガスを充填し、スペーサー7、1次シール材8、及び2次シール材6により該空間が密閉される。ガスを充填するにあたっては、予めガス充填部としてスペーサー7に、低放射フィルム3により分割された空間1つにつき2箇所穴が開けられおり、該2箇所の穴のうちの1箇所の穴からガスが充填される。その後、ガス充填部がビス留めされ、その上から2次シール材6により密封される。次いで、庫内側ガラス板4の外側表面に防曇層5を形成することにより、本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1を得ることができる。
【0030】
本発明において、防曇層5を形成する際には、予め庫内側ガラス板4の外側表面に防曇層5を形成してから、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間に該低放射フィルム3を少なくとも1つ配置する実施態様であってもよいし、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間に配置された該低放射フィルム3を展張することにより該空間を分割し、該空間を密閉してから庫内側ガラス板4の外側表面に防曇層5を形成する実施態様であってもよい。製造効率が良好となる観点からは、予め庫内側ガラス板4の外側表面に防曇層5を形成しておくことが好ましい。一方、該低放射フィルム3を加熱しながら展張した場合には、予め庫内側ガラス板4の外側表面に防曇層5が形成されていると、加熱した際に防曇層5の機能が損なわれるおそれがあり、かかる観点から、庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間に配置された該低放射フィルム3を展張することにより該空間を分割し、該空間を密閉してから庫内側ガラス板4の外側表面に防曇層5を形成する実施態様が好適に採用される。
【0031】
こうして得られた本発明のガラスユニット1は、冷蔵庫又は冷凍庫に取り付けられて用いられる。本発明のガラスユニット1は、断熱性能に優れるため、ヒーター等による庫外側ガラス板2を加熱する手段等が不要となる。その結果、消費電力を大幅に節約することが可能であり、コンビニエンスストアなどにおける冷蔵ショーケース又は冷凍ショーケースとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。図1は本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の一例の断面概略図である。図1中の庫内側ガラス板4はソーダ石灰ガラス(FL4)であり、縦1485mm、横545mm、厚さ4mmのガラス板を用いた。また、図1中の庫外側ガラス板2として、庫内側ガラス板4と同じガラス板である庫外側ガラス板2の片面に、反射防止皮膜を有する低放射層2aが形成されたガラス板(Saint−Gobain Glass社製「PLANITHERM(登録商標)Future Neutral」を用いた。
【0033】
実施例1:FL4/A/HM88/A/FL4
金属製のスペーサー7に固定された庫外側ガラス板2と庫内側ガラス板4との空間(A)に、プラスチックフィルムの片面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルム3「HM88」(Southwall社製「ヒートミラー(登録商標)」)を、庫外側ガラス板2と低放射フィルム3との間の距離で示される空間の厚みtが9.5mm、低放射フィルム3と庫内側ガラス板4との間の距離で示される空間の厚みtが9.5mmとなるように配置した。該低放射フィルム3はスペーサー7、1次シール材8及び2次シール6を用いて保持される。ここで、スペーサー7には予めガス充填部として、低放射フィルム3により分割された空間1つにつき2箇所穴が開けられており、該穴には樹脂製プラグが差し込まれている。次いで、2次シール材6が固まった後に、温風対流式加熱炉を用いて100℃に加熱しながら該低放射フィルム3を展張した。その後、ガス充填部に差し込まれていたプラグを取り外し、庫外側ガラス板2と低放射フィルム3との間の空間、及び低放射フィルム3と庫内側ガラス板4との間との空間に、ガス充填部からクリプトンガスを充填した。次いで、ガス充填部をビス留めし、その上から2次シール材6により封入した。更に、庫内側ガラス板4の外側表面に防曇フィルム(株式会社きもと製「グラステクトCV」)を貼付することにより防曇層5を形成し、15kg/mの本発明の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1を得た。こうして得られた冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1の特性評価として、庫内温度−25℃、庫外温度25℃、風速0m/sの条件下での熱貫流率であるU値(W/m・K)をJIS R3107に準じて求めた。更に、可視光透過率、庫外側からの反射率、紫外線透過率を紫外可視近赤外分光光度計「JASCO V−670」、積分球ユニット「ISN−723」を用いて求め、JIS Z8729に準じてΔEabの値を求めた。また、庫外側ガラス板2と低放射フィルム3との間の距離で示される空間の厚みt、低放射フィルム3と庫内側ガラス板4との間の距離で示される空間の厚みt、封入するガスの種類を表1のようにそれぞれ変更し、上記と同様に特性評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0034】
実施例2:FL4/A/HM88/A/PFNN4
実施例1において、庫外側ガラス板2を片面に反射防止皮膜を有する低放射層2aが形成されたガラス板「PFNN4」(Saint−Gobain Glass社製「PLANITHERM(登録商標)Future Neutral」に変更した以外は、実施例1と同様にして15kg/mの冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1を得て、特性評価を行った。また、低放射層2aが形成された庫外側ガラス板2と低放射フィルム3との間の距離で示される空間の厚みt、低放射フィルム3と庫内側ガラス板4との間の距離で示される空間の厚みt、封入するガスの種類を表1のようにそれぞれ変更し、上記と同様に特性評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0035】
実施例3:FL4/A/HM88/A/PUNN4
実施例1において、庫外側ガラス板2を片面に反射防止皮膜を有する低放射層2aが形成されたガラス板「PUNN4」(Saint−Gobain Glass社製「PLANITHERM(登録商標)Ultra Neutral」に変更した以外は、実施例1と同様にして15kg/mの冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1を得て、特性評価を行った。また、低放射層2aが形成された庫外側ガラス板2と低放射フィルム3との間の距離で示される空間の厚みt、低放射フィルム3と庫内側ガラス板4との間の距離で示される空間の厚みt、封入するガスの種類を表1のようにそれぞれ変更し、上記と同様に特性評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0036】
実施例4:FL4/A/TC88/A/FL4
実施例1において、低放射フィルム3をプラスチックフィルムの両面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルム3「TC88」(Southwall社製「ツインコート」)に変更した以外は、実施例1と同様にして15kg/mの冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット1を得た。また、庫外側ガラス板2と低放射フィルム3との間の距離で示される空間の厚みt、低放射フィルム3と庫内側ガラス板4との間の距離で示される空間の厚みt、封入するガスの種類を表1のようにそれぞれ変更し、上記と同様に特性評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0037】
比較例1:FL4/A/FL4/A/FL4
実施例1において、低放射フィルム3を庫内側ガラス板4と同じガラス板に変更した以外は、実施例1と同様にして23kg/mの複層ガラスを得て、特性評価を行った。また、庫外側ガラス板2と中間ガラス板との間の距離で示される空間の厚みt、中間ガラス板と庫内側ガラス板4との間の距離で示される空間の厚みt、封入するガスの種類を表1のようにそれぞれ変更し、上記と同様に特性評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0038】
比較例2:FL4/A/FL4/A/NN4
実施例1において、低放射フィルム3を庫内側ガラス板4と同じガラス板に変更し、庫外側ガラス板2を低放射層2aが形成されたガラス板「NN4」(Pilkington社製「Energy Advantage K−glass」)に変更した以外は、実施例1と同様にして23kg/mの複層ガラスを得て、特性評価を行った。また、庫外側ガラス板2と中間ガラス板との間の距離で示される空間の厚みt、中間ガラス板と庫内側ガラス板4との間の距離で示される空間の厚みt、封入するガスの種類を表1のようにそれぞれ変更し、上記と同様に特性評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0039】
比較例3:FL4/A/FL4/A/SG4
実施例1において、低放射フィルム3を庫内側ガラス板4と同じガラス板に変更し、庫外側ガラス板2を低放射層2aが形成されたガラス板「SG4」(PPG社製「Sungate500」)に変更した以外は、実施例1と同様にして23kg/mの複層ガラスを得て、特性評価を行った。また、庫外側ガラス板2と中間ガラス板との間の距離で示される空間の厚みt、中間ガラス板と庫内側ガラス板4との間の距離で示される空間の厚みt、封入するガスの種類を表1のようにそれぞれ変更し、上記と同様に特性評価を行った。得られた結果を表1にまとめて示す。
【0040】
【表1】

【符号の説明】
【0041】
1 ガラスユニット
2 庫外側ガラス板
2a 低放射層
3 低放射フィルム
3a ファブリー・ペロ干渉フィルター面
4 庫内側ガラス板
5 防曇層
6 2次シール材
7 スペーサー
8 1次シール材
庫外側ガラス板と低放射フィルムとの間の距離で示される空間の厚み、庫外側ガラス板と中間ガラス板との間の距離で示される空間の厚み
低放射フィルムと庫内側ガラス板との間の距離で示される空間の厚み、中間ガラス板と庫内側ガラス板との間の距離で示される空間の厚み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内側ガラス板と庫外側ガラス板との空間にガスが封入されてなる冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットであって、
該空間内に、プラスチックフィルムの片面又は両面にファブリー・ペロ干渉フィルターが形成された低放射フィルムが少なくとも1枚配置されて該空間が分割され、
庫内側ガラス板の表面には低放射層が形成されておらず、
庫内側ガラス板の外側表面には防曇層が形成され、
かつ、冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットの熱貫流率が1.6W/m・K以下であることを特徴とする冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット。
【請求項2】
庫外側ガラス板の内側表面に低放射層が形成され、庫内側ガラス板と低放射フィルムとの空間にファブリー・ペロ干渉フィルター面が位置するように低放射フィルムが配置されてなる請求項1記載の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット。
【請求項3】
前記形成された低放射層が、反射防止皮膜を有する低放射層である請求項2記載の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット。
【請求項4】
前記ガスが空気、アルゴン及びクリプトンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか記載の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット。
【請求項5】
前記ガスがクリプトンであり、冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニットの熱貫流率が0.9W/m・K以下である請求項1〜4のいずれか記載の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット。
【請求項6】
防曇層が防曇フィルムからなる請求項1〜5のいずれか記載の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット。
【請求項7】
可視光透過率が60%以上である請求項1〜6のいずれか記載の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット。
【請求項8】
紫外線透過率が1%以下である請求項1〜7のいずれか記載の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット。
【請求項9】
低放射フィルムにより分割された空間の厚みが5〜16mmである請求項1〜8のいずれか記載の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット。
【請求項10】
全厚みが27mm以下である請求項1〜9のいずれか記載の冷蔵庫又は冷凍庫用ガラスユニット。

【図1】
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【公開番号】特開2011−242094(P2011−242094A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−116863(P2010−116863)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(501382786)中島硝子工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】