処理液吐出装置およびその動作検証方法ならびに同装置の駆動制御方法
【課題】 半導体基板等の被処理基板上にフォトレジスト液等の処理液を吐出させる場合において、処理液の吐出状態を正確にモニタリングすることができる吐出装置を提供すること。
【解決手段】 光透過性素材により断面形状が円環状に成形された処理液吐出ノズル2を横切るようにして、光投射手段4aと受光手段5aを含む光学センサによる光路6が形成される。そして、前記光投射手段と受光手段を結ぶ直線上から若干外れた位置に、前記処理液吐出ノズルの軸芯を位置させた構成にされている。前記ノズル2より処理液Rが吐出される場合には光投射手段4aからの光は屈折作用により受光手段5aには到達しない。一方、ノズル2より処理液Rが吐出されない場合には光投射手段4aからの光は屈折を受けずに受光手段5aに到達する。前記した光学的な構成によると、処理液Rの色の濃さに依存されることなく、処理液Rの吐出状態を検知することができる。
【解決手段】 光透過性素材により断面形状が円環状に成形された処理液吐出ノズル2を横切るようにして、光投射手段4aと受光手段5aを含む光学センサによる光路6が形成される。そして、前記光投射手段と受光手段を結ぶ直線上から若干外れた位置に、前記処理液吐出ノズルの軸芯を位置させた構成にされている。前記ノズル2より処理液Rが吐出される場合には光投射手段4aからの光は屈折作用により受光手段5aには到達しない。一方、ノズル2より処理液Rが吐出されない場合には光投射手段4aからの光は屈折を受けずに受光手段5aに到達する。前記した光学的な構成によると、処理液Rの色の濃さに依存されることなく、処理液Rの吐出状態を検知することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体基板上にフォトレジスト液等を塗布する場合などにおいて利用され、特に前記基板に対するフォトレジスト液等の処理液の吐出状態を正確にモニタリングすることができる処理液吐出装置およびその動作検証方法ならびに同装置の駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体装置あるいはLCDなどの製造技術分野においては、半導体ウエハやLCD基板上にフォトレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、回路パターンに対応してレジスト膜を露光してこれを現像処理するという、いわゆるフォトリソグラフィ技術が応用される。
【0003】
前記したように基板上にフォトレジスト液を塗布する場合においては、基板の直上に位置する処理液吐出装置より、所定量のレジスト液を基板面に吐出するようになされる。この場合、現状のこの種の装置においては前記レジスト液の圧送手段であるベローズ式ポンプあるいはダイヤフラム式ポンプなどのアクチェータの駆動動作をもって、基板上にレジスト液が吐出されたことを推定する間接的な検出に頼るものであった。
【0004】
このように、従来のこの種の装置においては、基板面に吐出される前記レジスト液等の処理液を直接検出するものではないために、何等かの障害により処理液がノズルより吐出されない状態、もしくは処理液内に例えば多量の気泡が混入して処理液の吐出不良が生じていても、それを知る術がないという問題を抱えている。このために、半導体基板等への処理液の吐出不良に気付かずに、その察知が遅れるなどして多量の塗布不良を発生させるという問題を招来させる。
【0005】
そこで、前記した技術的な問題を解消するために、前記レジスト液等の処理液がノズル先端部から吐出される状態を光学的に検出するようにした処理液吐出装置が、次に示す特許文献1、特許文献2等に開示されている。例えば特許文献1に開示された処理液吐出装置によると、発光部と受光部からなる光学式センサが具備され、ノズル先端部よりも僅かな下における処理液の吐出位置を横切るようにして前記センサによる光路を設定した構成が示されている。
【特許文献1】特開平3−278519号公報
【特許文献2】実開平2−133471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1の開示内容においては、前記した光学式センサを構成する発光部と受光部は浮いた状態で示されており、これらはどのような支持手段をもって配置されるのかについての具体的な例は明らかにされていない。そこで、前記特許文献1に示された光学式センサを具体的に実現させるには、例えば図1に示すような構成を採用するものと考えることができる。
【0007】
この図1は、処理液吐出装置のノズル部分の中央部において、これを縦方向に切断した状態で示した断面図である。例えば角柱状に形成されたノズルホルダ1の中央部には、処理液送出管1aが形成されており、ノズルホルダ1の下底部には処理液吐出ノズル2が取り付けられ、ノズル2に形成された軸孔2aは前記ホルダ1に形成された送出管1aに直線状に連通するように構成されている。そして、図示せぬ処理液搬送チューブ等を介してレジスト液等の処理液Rが、ノズルホルダ1における送出管1aを介して送り込まれるように構成されている。
【0008】
一方、前記処理液吐出ノズル2のほぼ半周面を取り囲むようにしてセンサ固定用ブラケット3がノズルホルダ1の下底部に取り付けられており、このブラケット3には、光透過性の樹脂により円筒状に形成された一対のカバー部材3a,3bが下向きに樹立されている。そして、前記ノズルホルダ1と各カバー部材3a,3b内を貫通するようにして光ファイバー4,5がそれぞれ挿入されている。
【0009】
その一方の光ファイバー4の先端部には、当該光ファイバーの長手方向に直交する方向に光を投射する光投射面4aが形成されており、他方の光ファイバー5の先端部には、当該光ファイバーの長手方向に直交する方向からの光を受光する受光面5aが形成されている。そして、前記各光投射面4aと受光面5aが対向し、その両者間においてノズル2の先端部よりも僅かな下における処理液の吐出位置を横切るようにして矢印6で示した光検知用の光路が形成されるように構成されている。なお、図1に示す符号7は、前記ノズル2より吐出された処理液が塗布される例えば半導体ウエハ等の被処理基板を示している。
【0010】
前記した構成によると、ノズル2の先端部よりも僅かな下における処理液の吐出位置を横切るようにして矢印6で示した光路を形成させるために、一対のカバー部材3a,3bの先端部はノズル2の先端部よりも下方に突出せざるを得ない。一方、処理液としての前記したフォトレジスト液を被処理基板7に吐出させる場合においては、ノズル2の先端部と基板7との間隔は5mm前後程度に設定される。
【0011】
この場合、ノズル先端から吐出された液が基板に届くまでの遅れ時間を無くす為には、両者間の距離は近い程よいが、両者間の距離が近すぎると液の跳ね返りなどによる汚れがノズルに付着することになる。したがって、前記した相反する理由によってノズル先端と基板との間隔が決定されることになるが、前記両者の間隔が5mm前後に設定された場合には、前記した各カバー部材3a,3bの先端部と基板7との間隔はさらに小さな間隔に設定せざるを得ず、基板7に対するノズル2の位置制御に非常に厳しい精度が要求されることになる。
【0012】
前記したような技術的な課題を解決するために、図2に示す構成を採用することが考えられる。なお、図2においてはすでに説明した図1に示す各部と同一機能を果たす部分を同一符号で示しており、したがって個々の詳細な説明は省略する。この図2に示す構成においては、矢印6で示した光路はノズル2の先端部近傍を横切るように構成されている。この場合、少なくとも前記ノズル2は光透過性の樹脂材料等で成形される。そして、ノズル2より処理液を吐出する各サイクルの動作終了毎に、減圧手段により処理液をノズル2の先端部より若干吸い戻すサックバック動作を実行するようになされる。なお、図2は前記したサックバック動作が実行された状態を示している。
【0013】
前記したサックバック機能は、ノズル先端部に残された処理液が垂れ落ちるのを防止するなどの目的においてこの種の装置において多用されるものであるが、この図2に示す構成においては、サックバックにより処理液が引き込まれる部分を横切るようにして矢印6で示した光路が設定されるように構成される。この構成によると、光センサとして機能する前記した光投射面4aおよび受光面5aの位置を、ノズル2の先端部よりも先に(下方に)配置させる必要がないため、図1に示す構成における前記した技術的な課題を解決することができる。
【0014】
図2に示した構成において、光路6に処理液Rが存在するか否か、すなわちノズル2より処理液Rが吐出されているか否かを検証する場合には、一般的にレンズ効果を利用することが考えられる。図3〜図5は前記したレンズ効果を利用して、ノズル2の所定位置(光路6が横切る位置)に処理液Rが存在するか否かを検証する原理を説明するものである。
【0015】
図3〜図5において、符号4a,5aは前記した各光ファイバーの先端部に形成された光投射面と受光面を示しており、この間に形成される光路6が前記したノズル2の先端部近傍を横切るように設定されている。なお、図3〜図5においては前記ノズル2は前記光路6が横切る位置において、軸方向に直交する面で切断され、その切断端面が見える状態で示されている。
【0016】
図3は光路6が横切るノズル位置において処理液Rが存在しない状態、すなわち図2に示したように処理液がサックバックされた状態を模式的に示している。この場合においては、光投射面4aからノズル2の方向に向かって多少放射状に広がる光束はノズル2を透過して、そのまま同方向に放射状に広がり、したがって受光面5aに到達する光量は非常に少ない。それ故、光学センサによる光検知位置において処理液Rは存在しない(または、処理液Rはノズルから吐出されていない)と判定することができる。
【0017】
一方、図4は光路6が横切るノズル位置において処理液Rが存在する状態を示している。この場合においては、光投射面4aからノズル2の方向に向かって多少放射状に広がる光束は、ノズル2と処理液Rを透過する際にレンズ効果により収束される。この結果、受光面5aに到達する光量は非常に多くなる。これにより、光学センサによる光検知位置において処理液Rが存在する(または、処理液Rがノズルから吐出されている)と判定することができる。
【0018】
なお、前記した作用による検知機能は、基本的には前記ノズル2より吐出される処理液がほぼ透明に近いものである場合において、その検知動作の信頼性が保証されるものである。しかしながら前記した例えばフォトレジスト液は、一般的に着色された状態のものが多く、処理液Rを透過する際に光の減衰作用が生ずる。
【0019】
図5は、たとえば色の濃い処理液を吐出する場合を模式的に示したものであり、この場合においても図4と同様にレンズ効果は得られるものの、色の濃い処理液Rを透過するために光の減衰は甚だしく、結局のところ受光面5aに到達する総光量は非常に少なくなる。したがって、図3に示した状態と図5に示した状態とにおいて、受光面5aによる受光量の差は殆どなくなる場合もあり、前記したレンズ効果を利用する検知機能はその信頼性を失うことになる。
【0020】
この発明は、前記したような技術的な観点に基づいてなされたものであり、ノズル先端部の近傍を横切るようにして光路を形成した光検知手段を利用しつつ、ノズルより吐出される処理液の色の濃さに依存されることなく、処理液の検知動作の信頼性を十分に確保することができる処理液吐出装置を提供することを課題とするものである。
【0021】
またこの発明は、前記した光検知手段を利用し、さらにこの種の装置における動作の信頼性を向上させることに寄与できる拡張した機能を備えた処理液吐出装置の動作検証方法ならびに同装置の駆動制御方法を提供することを他の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる処理液吐出装置は、光透過性素材により形成された処理液吐出ノズルを横切るようにして、光学センサによる光路を形成すると共に、前記光学センサを構成する光投射手段と受光手段を結ぶ直線上から外れた位置に、前記処理液吐出ノズルの軸芯を位置させた点に特徴を有する。
【0023】
この場合、前記光学センサによる光路が横切る前記処理液吐出ノズルの軸芯に直交する断面形状が、円環状に成形されていることが望ましい。さらに望ましくは前記光投射手段から前記受光手段側に至る光路の幅を制限する光透過スリットが、前記光投射手段と処理液吐出ノズルとの間に配置された構成にされる。
【0024】
また、好ましい実施の形態においては、前記処理液吐出ノズルより処理液を吐出する各サイクルの動作終了毎に、前記処理液をノズルの先端部より若干吸い戻すサックバック動作を実行するように構成される。そして、前記した処理液吐出装置においては好ましくは、前記光学センサにおける受光手段が、所定の光量の受光状態において、前記処理液吐出ノズルにおける前記光路位置に処理液が存在しないものと判定し、前記受光手段が所定の光量未満の受光状態において、前記処理液吐出ノズルにおける前記光路位置に処理液が存在するものと判定するように構成される。
【0025】
一方、この発明にかかる処理液吐出装置の動作検証方法は、前記した構成の処理液吐出装置を利用するものであり、その一つの好ましい動作検証方法は、処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の立上がりと、前記光学センサにおける処理液検出状態を示すセンサ信号の立上がりのタイムラグを検証し、前記タイムラグよりサックバック量を推定する点に特徴を有する。
【0026】
また、この発明にかかる他の一つの好ましい動作検証方法は、処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の印加を終了した時点からの所定時間内において、前記光学センサにおける処理液の非検出状態を示すセンサ信号が立下がり状態になるか否かを検証し、前記検証結果よりサックバック動作が実行されている否かを推定する点に特徴を有する。
【0027】
さらに、この発明にかかる他の一つの好ましい動作検証方法は、処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の継続時間に対応した前記光学センサにおける処理液検出状態を示すセンサ信号の立上がり継続時間中において、前記センサ信号の一時的な立下がり状態が存在するか否かを検証し、前記アクチェータにより圧送される処理液中における気泡の存否を推定する点に特徴を有する。
【0028】
そして、この発明にかかる処理液吐出装置の好ましい他の形態によると、前記した光学センサによる光路の設定位置よりも上流側に、前記処理液の流路を横切るようにして第2の光学センサによる光路を形成すると共に、前記第2の光学センサを構成する光投射手段と受光手段とを結ぶ直線上から外れた位置に、前記流路の軸芯を位置させた構成にされる。
【0029】
この場合、前記処理液吐出ノズルを横切る光学センサによる光路と、前記第2の光学センサによる光路との間における処理液流路内の容積が、各サイクル毎の処理液吐出動作において前記ノズルより吐出される処理液の容量よりも大きな容積に設定されていることが望ましい。
【0030】
そして、この発明にかかる処理液吐出装置の駆動制御方法は、前記した構成の処理液吐出装置を利用するものであり、その好ましい駆動制御方法は、各サイクル毎の処理液吐出動作の実行中に、前記第2の光学センサによる処理液の非検出状態を示すセンサ信号の立下がり状態が発生するか否かを検証する検証工程と、前記検証工程において、センサ信号の立下がり状態が発生したことを検証した場合、前記処理液吐出ノズルの位置を被処理基板上から外れたダミーディスペンスポジションに移動させる移動工程と、前記ノズルをダミーディスペンスポジションに移動させた状態において、当該ノズルより次のサイクルの処理液吐出動作を行う処理液吐出工程とを実行する点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0031】
前記した構成の処理液吐出装置によると、光学センサによる光路が横切る部分のノズル内に、処理液が存在する場合と存在しない場合における光の屈折度合いの相異を利用することで、処理液の存否を検証するように作用するものである。したがって、前記した処理液吐出装置によると、後で詳細にその作用を説明するとおり、ノズル内における処理液の色の濃さに左右されることなく処理液の存否を精度よく検証することができる。
【0032】
また、前記した処理液吐出装置を利用した動作検証方法によると、前記処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の立上がりと立下がりに対する前記光学センサにおける処理液検出状態を示すセンサ信号の立上がりおよび立下がりの関係から、サックバック量およびサックバック動作が確実になされているか否かの検証、ならびに処理液中における気泡の存在等を効果的に検証することができる。
【0033】
さらに、前記した処理液吐出装置の構成に加えて、第2の光学センサを備えた処理液吐出装置によると、ノズルより処理液を吐出させる動作の1つのサイクル前において処理液中に気泡が存在することを確実に把握することが可能となる。したがってこの構成を利用することで、ダミーディスペンスポジションにおいて泡抜き動作を効果的に実行させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、この発明にかかる処理液吐出装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、この発明にかかる処理液吐出装置は、基本的にはすでに説明した図2に示す構成が採用される。すなわち、光投射手段としての光投射面4aおよび受光手段としての受光面5aを含む光学センサにおける矢印6で示した光路は、光透過性素材により形成されたノズル2の先端部近傍を横切るように構成されている。
【0035】
これに加えて、この発明にかかる処理液吐出装置については、前記したとおりノズル2より処理液を吐出する各サイクルの動作終了毎に、図示せぬ減圧手段により処理液をノズル2の先端部より若干吸い戻すサックバック動作が実行されるように構成されている。
【0036】
そして、この発明にかかる処理液吐出装置に採用される光学センサにおいては、さらに図6〜図8に示した構成が具備される。なお、図6〜図8に示した構成においては、すでに説明した図3〜図5に示す各部と同一機能を果たす部分を同一符号で示しており、したがって個々の詳細な説明は省略する。
【0037】
図6〜図8に示した光学センサの構成においては、光投射面4aとノズル2との間には遮蔽板8が配置され、この遮蔽板8に形成された光透過スリット8aを介して、前記光投射面4aからの光が受光面5a側に到達されるように構成されている。すなわち、前記スリット8aは、光投射面4aから受光面5a側に至る光路6の幅を制限するように機能する。
【0038】
そして、前記光投射面4aと受光面5aを結ぶ直線上、すなわち、前記光路6から若干外れた位置に、ノズル2の軸芯Cが位置するように前記光学センサとノズル2との関係が設定されている。なお、図6〜図8に示した実施の形態においては、光学センサによる光路6が横切る前記ノズル2の軸芯に直交する断面形状は円環状に成形されている。
【0039】
図6は、光学センサによる光路6が横切るノズル位置において、処理液Rが存在しない状態、すなわち図2に示したように処理液がサックバックされた状態を模式的に示している。この場合においては、前記スリット8aを介してノズル2側に到来する光は屈折されることなくノズル2を透過し、そのまま矢印6で示すように受光面5aに到達する。
【0040】
したがって、受光面5aに到達する光量のレベルは非常に大きい。それ故、受光面5aは予め定められた所定以上の光量を受光し、これにより光学センサによる光検知位置において、処理液Rは存在しない(または、処理液Rはノズルから吐出されていない)と判定することができる。
【0041】
一方、図7は光路6が横切るノズル位置において処理液Rが存在する状態を示している。この場合においては、光投射面4aからスリット8aを介してノズル2に向かう光束は、処理液Rを透過する際に、図中6aで示すように屈折作用を受ける。これは断面形状が円環状に成形されたノズル2の軸芯Cを避けた位置を通過する光の進行方向と、ノズル2と処理液Rの界面との間に、直交関係以外のある角度が形成されるために生ずるものである。
【0042】
この結果、受光面5aに到達する光量は非常に少なくなる。それ故、前記受光面5aは所定の光量未満の受光状態となり、光学センサによる光検知位置において処理液Rが存在する(または、処理液Rがノズルから吐出されている)と判定することができる。
【0043】
さらに、図8は光路6が横切るノズル位置において処理液Rが存在する状態であり、かつ色の濃い処理液が存在する例を模式的に示している。この場合においても図7に示した例と同様に、スリット8aを介してノズル2に向かう光束は、処理液Rを透過する際に、符号6aで示すように屈折作用を受ける。そして、色の濃い処理液Rを透過するために光の減衰は大きくなるものの、結果としては受光面5aに到達する光量は非常に少ない。これにより、処理液Rが存在する(または、処理液Rがノズルから吐出されている)と判定することができる。
【0044】
以上のように、図6〜図8に示した光学的な構成によると、処理液Rの色の濃さに依存されることなく、光路6が横切るノズル位置において処理液Rが存在するか否かを精度よく検証することができる。
【0045】
図9Aおよび図9Bは、図6〜図8に示した光学的な構成を具備した処理液吐出装置を利用し、当該処理液吐出装置の動作状態を検証する検証方法を説明するものである。この検証方法においては、図示せぬベローズ式ポンプあるいはダイヤフラム式ポンプなどの処理液の圧送手段であるアクチェータを駆動するディスペンス信号と、前記した光投射面4aと受光面5aを含む光学センサによるセンサ信号との関係をもって、以下のような処理液吐出装置の動作状態を検証することができる。
【0046】
図9Bに示す信号aは前記したディスペンス信号を示しており、その立上がり状態で前記アクチェータが駆動されている状態を示している。また同図の信号bは光学センサによるセンサ信号を示しており、その立上がり状態は光学的な検知位置において処理液Rが存在する(または、処理液Rがノズルから吐出されている)ことを示すものである。
【0047】
したがって、図9Aに示すようにサックバック動作が正常に働いている場合においては、図9Bにaとして示すディスペンス信号の立上がりに対してta1のタイムラグをもってセンサ信号bが立上がることになる。そして、前記ノズル2より処理液を吐出する各サイクルの動作終了毎に、前記処理液をノズルの先端部より若干吸い戻すサックバック動作が実行されるので、ディスペンス信号の立下がりに対してtr1のタイムラグをもってセンサ信号bも立下がることになる。
【0048】
図10Aおよび図10Bは、図9Aおよび図9Bと同様の動作を説明するものであるが、図10Aは図9Aに対してサックバック量がより大きな場合を例示している。この場合においては、図10Bに示すようにディスペンス信号aの立上がりに対するセンサ信号bの立上がりのタイムラグta2はより大きくなる。要するに、ディスペンス信号aの立上がりに対するセンサ信号bの立上がりのタイムラグを把握することで、その時のサックバック量を推定することができる。
【0049】
したがって、ディスペンス信号aに対するセンサ信号bの立上がりのタイムラグに基づいて、適正なサックバック量を維持するように制御することで、被処理基板に対する安定した処理液の吐出動作を実現させることができる。また、ディスペンス信号aの立下がりに応じてセンサ信号bが立下がる状態を検知することで、サックバック動作が実行されていることを確認することができる。
【0050】
また同様に、ディスペンス信号aの立下がりに対するセンサ信号bの立下がりのタイムラグ(図9Bに示すtr1もしくは図10Bに示すtr2)が変化すれば、サックバックスピートが変わったこととして検知することができ、これはサックバック機構の機械的な変化を検知することにもなり、この事実をオペレータに報知するためのアラームを出すこともできる。
【0051】
なお、図9B,図10Bにaで示すディスペンス信号が立上がっているにもかかわらず、bで示すセンサ信号が立上がらない場合においては、何等かの障害により処理液の吐出不良が発生していると認識することができる。したがって、この場合には直ちに処理液吐出装置の運転を停止させることで、被処理基板への塗布不良を多量に発生させる問題を回避することができる。
【0052】
図11Aおよび図11Bは、ノズルから吐出される処理液中に気泡が含まれている場合を例示するものである。すなわち図11Aに示すようにノズル2における光学的な検知位置において、気泡が通過した場合には図11Bに示すようにセンサ信号の一時的な立下がり状態(ai)が発生する。このようにノズル2から吐出される処理液中に気泡が存在していた場合には、被処理基板7は直ちに処理液の塗布不良になるとは言えないものの、この時の被処理基板に対してコントローラ側でソフトウエアによるマーキングを施すことにより、マーキングされた被処理基板に対する処理液の塗布状態を検査する検査のランクを上げるなどの対処を施すことができる。
【0053】
次に図12は、この発明にかかる処理液吐出装置の第2の実施の形態を示したものである。なお図12に示す構成においても基本的にはすでに説明した図2に示す構成が採用されており、光投射面4aおよび受光面5aを含む光学センサにおいては、図6〜図8に示した構成が採用されている。したがって、これらの構成は同一符号で示しており、その詳細な説明は省略する。
【0054】
図12に示す処理液吐出装置においては、図2に示す構成に加えて第2の光学センサが具備されている。この第2の光学センサは、前記した光投射面4aおよび受光面5aを含む光学センサ(これを便宜上、第1の光学センサと呼ぶ)による光路6の設定位置よりも上流側に配置されている。すなわち図12に示す実施の形態においては、符号1で示したノズルホルダが光透過性の素材により構成されており、このノズルホルダ1に形成された処理液送出管1aを挟むように光ファイバー11,12の先端部が埋設されている。
【0055】
その一方の光ファイバー11の先端部は、前記第1の光学センサの構成と同様に当該光ファイバー11の長手方向に直交する方向に光を投射する光投射面11aが形成されており、他方の光ファイバー12の先端部には、当該光ファイバーの長手方向に直交する方向からの光を受光する受光面12aが形成されている。そして、前記各光投射面11aと受光面12aが対向し、前記ノズルホルダ1に形成された処理液送出管1aを横切るようにして矢印13で示した光検知用の光路が形成されている。
【0056】
前記光投射面11aおよび受光面12aと処理液送出管1aとの位置関係は、図6〜図8に基づいて説明した光学的な検知手段と同様に構成されており、前記光投射面11aと受光面12aを結ぶ直線上、すなわち、前記光路13から若干外れた位置に、処理液送出管1aの軸芯が位置するように前記光学センサとノズル2との関係が設定されている。したがって、前記光投射面11a受光面12aを含む第2の光学センサにおいても、図6〜図8に基づいて説明した光学的な検知手段と同様の作用による検知動作を実現させることができる。
【0057】
それ故、前記した光投射面11aと受光面12aを含む第2の光学センサは、処理液送出管1aを通過する気泡を効果的に検出することができ、前記第2の光学センサは泡検知センサと言うこともできる。そして、図12に示す処理液吐出装置においては、前記第1の光学センサによる光路6と、前記第2の光学センサによる光路13との間における処理液流路内の容積が、各サイクル毎の処理液吐出動作において前記ノズル2より吐出される処理液の容量よりも大きな容積に設定されている。
【0058】
図13〜図15は、図12に示した処理液吐出装置における作用を説明するものであり、図13〜図15におけるaおよびbは、図9Bにおけるaおよびbと同様にディスペンス信号および第1の光学センサによるセンサ信号を示している。また図13〜図15におけるcは、第2の光学センサによるセンサ信号を示しており、これは第2の光学センサにより処理液中に気泡を検出した場合にセンサ出力が立下がるようになされる。
【0059】
図13に示す例は、処理液中に気泡が存在しない正常な状態を示している。また図14に示す例は処理液中に気泡が存在し、前記第2の光学センサ(泡検知センサ)により気泡の存在が検知された状態を示している。さらに、図15に示す例は処理液吐出ノズル2より処理液を吐出する1つのサイクルの動作中に、ノズル2より気泡が排出されると共に、第2の光学センサにおいても気泡の存在が検知された状態を示している。
【0060】
前記した第1および第2の光学センサによる検出パターンの組み合わせを利用することで、例えば図16に示したような処理液吐出装置の駆動制御方法を実現させることができる。なお、図16においては図示が繁雑になるために、図12に示した処理液吐出装置における各部の符号は省略して示している。
【0061】
図16(A)は処理液吐出ノズル2より処理液を吐出する1つのサイクルの動作中に、第2の光学センサにより処理液中に気泡が存在することが検出される例を示している。この場合においては、先に説明した図14に示すように、第2の光学センサによるセンサ出力は瞬間的に立下がり状態になされる。
【0062】
ここで、前記したとおり第1の光学センサによる光路と、前記第2の光学センサによる光路との間における処理液流路内の容積は、各サイクル毎の処理液吐出動作において前記ノズルより吐出される処理液の容量よりも大きな容積に設定されているので、16(B)に示すように前記第2の光学センサにより検出された気泡がノズル2より吐出される前に、1つのサイクルの処理液吐出動作は終了する。そして図16(C)は、1つのサイクルの処理液吐出動作の終了後において、前記したサックバック動作が実行された休止状態を示している。
【0063】
前記したように第2の光学センサにより、処理液中に気泡の存在が検知された場合においては、前記処理液吐出装置を被処理基板上から外れたダミーディスペンスポジションに移動させる動作が実行され、このダミーディスペンスポジションにおいて処理液を吐出させる動作を実行する。この状態を図16(D)に示している。そして、図16(D)に示すように第1の光学センサにより気泡を排出したことを検知し、図16(E)に示すようにノズルより気泡が排出される状態に至った時に処理液の吐出を停止させることで、泡抜き動作を完了させることができる。この泡抜き動作の完了後には、処理液吐出装置をダミーディスペンスポジションから被処理基板上に移動させて、通常の処理液吐出動作を実行させることになる。
【0064】
また、前記した動作を実行した回数をカウントするカウンタをソフトウエアにより構築し、当該カウンタによるカウント数が所定数を超えた場合においては、配管系の接続部や、フィルタの取り付け部、液ビン接続部などの不良が考えられ、アラームを出力する構成とすることが望ましい。
【0065】
なお、図16(D)に示すように、第1の光学センサにより気泡を排出することを検知する以前に、再び第2の光学センサにより気泡を検知するような場合、すなわち図15にbおよびcで示すような検出パターンが発生した場合においては、引き続き処理液吐出装置をダミーディスペンスポジションに位置させたまま、処理液の吐出動作を実行するように制御される。前記した駆動制御方法を実行することにより、被処理基板面に対して気泡を排出させることなく、しかも最小限の処理液の排出量をもって、泡抜き作用を実現させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明は、先に説明したシリコンウエハなどの半導体基板やフォトマスク、もしくはLCD基板に対してフォトレジスト液を塗布する場合に限らず、前記基板に対する例えば現像液の吐出動作、その他の電子ディバイスやプリント基板の製造分野における有機溶剤液やポリイミド樹脂液などの塗布装置においても好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の解決課題を伴う処理液吐出装置の例を示した縦断面図である。
【図2】この発明にかかる処理液吐出装置の基本構成を示した縦断面図である。
【図3】レンズ効果を利用した光学検知センサの原理を説明する模式図である。
【図4】同じく処理液が存在する場合の例を説明する模式図である。
【図5】同じく色の濃い処理液が存在する場合の例を説明する模式図である。
【図6】この発明にかかる処理液吐出装置において利用される光学検知センサの原理を説明する模式図である。
【図7】同じく処理液が存在する場合の例を説明する模式図である。
【図8】同じく色の濃い処理液が存在する場合の例を説明する模式図である。
【図9A】処理液吐出装置の一つの状態を示す縦断面図である。
【図9B】図9Aに示す状態における検証結果を説明するタイミング図である。
【図10A】処理液吐出装置の他の一つの状態を示す縦断面図である。
【図10B】図10Aに示す状態における検証結果を説明するタイミング図である。
【図11A】処理液吐出装置のさらに他の一つの状態を示す縦断面図である。
【図11B】図11Aに示す状態における検証結果を説明するタイミング図である。
【図12】この発明にかかる処理液吐出装置の他の構成例を示した縦断面図である。
【図13】図12に示す装置による一つの検証結果を説明するタイミング図である。
【図14】同じく他の一つの検証結果を説明するタイミング図である。
【図15】同じくさらに他の一つの検証結果を説明するタイミング図である。
【図16】図12に示す処理液吐出装置を利用した制御方法の一例を説明する動作遷移図である。
【符号の説明】
【0068】
1 ノズルホルダ
1a 処理液送出管
2 処理液吐出ノズル
2a 軸孔
3 センサ固定用ブラケット
3a,3b カバー部材
4,5 光ファイバー
4a 光投射面(光投射手段)
5a 受光面(受光手段)
6 光検知用光路
7 被処理基板
8 遮蔽板
8a 光透過スリット
11,12 光ファイバー
11a 光投射面
12a 受光面
C ノズルの軸芯
R 処理液
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば半導体基板上にフォトレジスト液等を塗布する場合などにおいて利用され、特に前記基板に対するフォトレジスト液等の処理液の吐出状態を正確にモニタリングすることができる処理液吐出装置およびその動作検証方法ならびに同装置の駆動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体装置あるいはLCDなどの製造技術分野においては、半導体ウエハやLCD基板上にフォトレジスト液を塗布してレジスト膜を形成し、回路パターンに対応してレジスト膜を露光してこれを現像処理するという、いわゆるフォトリソグラフィ技術が応用される。
【0003】
前記したように基板上にフォトレジスト液を塗布する場合においては、基板の直上に位置する処理液吐出装置より、所定量のレジスト液を基板面に吐出するようになされる。この場合、現状のこの種の装置においては前記レジスト液の圧送手段であるベローズ式ポンプあるいはダイヤフラム式ポンプなどのアクチェータの駆動動作をもって、基板上にレジスト液が吐出されたことを推定する間接的な検出に頼るものであった。
【0004】
このように、従来のこの種の装置においては、基板面に吐出される前記レジスト液等の処理液を直接検出するものではないために、何等かの障害により処理液がノズルより吐出されない状態、もしくは処理液内に例えば多量の気泡が混入して処理液の吐出不良が生じていても、それを知る術がないという問題を抱えている。このために、半導体基板等への処理液の吐出不良に気付かずに、その察知が遅れるなどして多量の塗布不良を発生させるという問題を招来させる。
【0005】
そこで、前記した技術的な問題を解消するために、前記レジスト液等の処理液がノズル先端部から吐出される状態を光学的に検出するようにした処理液吐出装置が、次に示す特許文献1、特許文献2等に開示されている。例えば特許文献1に開示された処理液吐出装置によると、発光部と受光部からなる光学式センサが具備され、ノズル先端部よりも僅かな下における処理液の吐出位置を横切るようにして前記センサによる光路を設定した構成が示されている。
【特許文献1】特開平3−278519号公報
【特許文献2】実開平2−133471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、前記特許文献1の開示内容においては、前記した光学式センサを構成する発光部と受光部は浮いた状態で示されており、これらはどのような支持手段をもって配置されるのかについての具体的な例は明らかにされていない。そこで、前記特許文献1に示された光学式センサを具体的に実現させるには、例えば図1に示すような構成を採用するものと考えることができる。
【0007】
この図1は、処理液吐出装置のノズル部分の中央部において、これを縦方向に切断した状態で示した断面図である。例えば角柱状に形成されたノズルホルダ1の中央部には、処理液送出管1aが形成されており、ノズルホルダ1の下底部には処理液吐出ノズル2が取り付けられ、ノズル2に形成された軸孔2aは前記ホルダ1に形成された送出管1aに直線状に連通するように構成されている。そして、図示せぬ処理液搬送チューブ等を介してレジスト液等の処理液Rが、ノズルホルダ1における送出管1aを介して送り込まれるように構成されている。
【0008】
一方、前記処理液吐出ノズル2のほぼ半周面を取り囲むようにしてセンサ固定用ブラケット3がノズルホルダ1の下底部に取り付けられており、このブラケット3には、光透過性の樹脂により円筒状に形成された一対のカバー部材3a,3bが下向きに樹立されている。そして、前記ノズルホルダ1と各カバー部材3a,3b内を貫通するようにして光ファイバー4,5がそれぞれ挿入されている。
【0009】
その一方の光ファイバー4の先端部には、当該光ファイバーの長手方向に直交する方向に光を投射する光投射面4aが形成されており、他方の光ファイバー5の先端部には、当該光ファイバーの長手方向に直交する方向からの光を受光する受光面5aが形成されている。そして、前記各光投射面4aと受光面5aが対向し、その両者間においてノズル2の先端部よりも僅かな下における処理液の吐出位置を横切るようにして矢印6で示した光検知用の光路が形成されるように構成されている。なお、図1に示す符号7は、前記ノズル2より吐出された処理液が塗布される例えば半導体ウエハ等の被処理基板を示している。
【0010】
前記した構成によると、ノズル2の先端部よりも僅かな下における処理液の吐出位置を横切るようにして矢印6で示した光路を形成させるために、一対のカバー部材3a,3bの先端部はノズル2の先端部よりも下方に突出せざるを得ない。一方、処理液としての前記したフォトレジスト液を被処理基板7に吐出させる場合においては、ノズル2の先端部と基板7との間隔は5mm前後程度に設定される。
【0011】
この場合、ノズル先端から吐出された液が基板に届くまでの遅れ時間を無くす為には、両者間の距離は近い程よいが、両者間の距離が近すぎると液の跳ね返りなどによる汚れがノズルに付着することになる。したがって、前記した相反する理由によってノズル先端と基板との間隔が決定されることになるが、前記両者の間隔が5mm前後に設定された場合には、前記した各カバー部材3a,3bの先端部と基板7との間隔はさらに小さな間隔に設定せざるを得ず、基板7に対するノズル2の位置制御に非常に厳しい精度が要求されることになる。
【0012】
前記したような技術的な課題を解決するために、図2に示す構成を採用することが考えられる。なお、図2においてはすでに説明した図1に示す各部と同一機能を果たす部分を同一符号で示しており、したがって個々の詳細な説明は省略する。この図2に示す構成においては、矢印6で示した光路はノズル2の先端部近傍を横切るように構成されている。この場合、少なくとも前記ノズル2は光透過性の樹脂材料等で成形される。そして、ノズル2より処理液を吐出する各サイクルの動作終了毎に、減圧手段により処理液をノズル2の先端部より若干吸い戻すサックバック動作を実行するようになされる。なお、図2は前記したサックバック動作が実行された状態を示している。
【0013】
前記したサックバック機能は、ノズル先端部に残された処理液が垂れ落ちるのを防止するなどの目的においてこの種の装置において多用されるものであるが、この図2に示す構成においては、サックバックにより処理液が引き込まれる部分を横切るようにして矢印6で示した光路が設定されるように構成される。この構成によると、光センサとして機能する前記した光投射面4aおよび受光面5aの位置を、ノズル2の先端部よりも先に(下方に)配置させる必要がないため、図1に示す構成における前記した技術的な課題を解決することができる。
【0014】
図2に示した構成において、光路6に処理液Rが存在するか否か、すなわちノズル2より処理液Rが吐出されているか否かを検証する場合には、一般的にレンズ効果を利用することが考えられる。図3〜図5は前記したレンズ効果を利用して、ノズル2の所定位置(光路6が横切る位置)に処理液Rが存在するか否かを検証する原理を説明するものである。
【0015】
図3〜図5において、符号4a,5aは前記した各光ファイバーの先端部に形成された光投射面と受光面を示しており、この間に形成される光路6が前記したノズル2の先端部近傍を横切るように設定されている。なお、図3〜図5においては前記ノズル2は前記光路6が横切る位置において、軸方向に直交する面で切断され、その切断端面が見える状態で示されている。
【0016】
図3は光路6が横切るノズル位置において処理液Rが存在しない状態、すなわち図2に示したように処理液がサックバックされた状態を模式的に示している。この場合においては、光投射面4aからノズル2の方向に向かって多少放射状に広がる光束はノズル2を透過して、そのまま同方向に放射状に広がり、したがって受光面5aに到達する光量は非常に少ない。それ故、光学センサによる光検知位置において処理液Rは存在しない(または、処理液Rはノズルから吐出されていない)と判定することができる。
【0017】
一方、図4は光路6が横切るノズル位置において処理液Rが存在する状態を示している。この場合においては、光投射面4aからノズル2の方向に向かって多少放射状に広がる光束は、ノズル2と処理液Rを透過する際にレンズ効果により収束される。この結果、受光面5aに到達する光量は非常に多くなる。これにより、光学センサによる光検知位置において処理液Rが存在する(または、処理液Rがノズルから吐出されている)と判定することができる。
【0018】
なお、前記した作用による検知機能は、基本的には前記ノズル2より吐出される処理液がほぼ透明に近いものである場合において、その検知動作の信頼性が保証されるものである。しかしながら前記した例えばフォトレジスト液は、一般的に着色された状態のものが多く、処理液Rを透過する際に光の減衰作用が生ずる。
【0019】
図5は、たとえば色の濃い処理液を吐出する場合を模式的に示したものであり、この場合においても図4と同様にレンズ効果は得られるものの、色の濃い処理液Rを透過するために光の減衰は甚だしく、結局のところ受光面5aに到達する総光量は非常に少なくなる。したがって、図3に示した状態と図5に示した状態とにおいて、受光面5aによる受光量の差は殆どなくなる場合もあり、前記したレンズ効果を利用する検知機能はその信頼性を失うことになる。
【0020】
この発明は、前記したような技術的な観点に基づいてなされたものであり、ノズル先端部の近傍を横切るようにして光路を形成した光検知手段を利用しつつ、ノズルより吐出される処理液の色の濃さに依存されることなく、処理液の検知動作の信頼性を十分に確保することができる処理液吐出装置を提供することを課題とするものである。
【0021】
またこの発明は、前記した光検知手段を利用し、さらにこの種の装置における動作の信頼性を向上させることに寄与できる拡張した機能を備えた処理液吐出装置の動作検証方法ならびに同装置の駆動制御方法を提供することを他の課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
前記した課題を解決するためになされたこの発明にかかる処理液吐出装置は、光透過性素材により形成された処理液吐出ノズルを横切るようにして、光学センサによる光路を形成すると共に、前記光学センサを構成する光投射手段と受光手段を結ぶ直線上から外れた位置に、前記処理液吐出ノズルの軸芯を位置させた点に特徴を有する。
【0023】
この場合、前記光学センサによる光路が横切る前記処理液吐出ノズルの軸芯に直交する断面形状が、円環状に成形されていることが望ましい。さらに望ましくは前記光投射手段から前記受光手段側に至る光路の幅を制限する光透過スリットが、前記光投射手段と処理液吐出ノズルとの間に配置された構成にされる。
【0024】
また、好ましい実施の形態においては、前記処理液吐出ノズルより処理液を吐出する各サイクルの動作終了毎に、前記処理液をノズルの先端部より若干吸い戻すサックバック動作を実行するように構成される。そして、前記した処理液吐出装置においては好ましくは、前記光学センサにおける受光手段が、所定の光量の受光状態において、前記処理液吐出ノズルにおける前記光路位置に処理液が存在しないものと判定し、前記受光手段が所定の光量未満の受光状態において、前記処理液吐出ノズルにおける前記光路位置に処理液が存在するものと判定するように構成される。
【0025】
一方、この発明にかかる処理液吐出装置の動作検証方法は、前記した構成の処理液吐出装置を利用するものであり、その一つの好ましい動作検証方法は、処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の立上がりと、前記光学センサにおける処理液検出状態を示すセンサ信号の立上がりのタイムラグを検証し、前記タイムラグよりサックバック量を推定する点に特徴を有する。
【0026】
また、この発明にかかる他の一つの好ましい動作検証方法は、処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の印加を終了した時点からの所定時間内において、前記光学センサにおける処理液の非検出状態を示すセンサ信号が立下がり状態になるか否かを検証し、前記検証結果よりサックバック動作が実行されている否かを推定する点に特徴を有する。
【0027】
さらに、この発明にかかる他の一つの好ましい動作検証方法は、処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の継続時間に対応した前記光学センサにおける処理液検出状態を示すセンサ信号の立上がり継続時間中において、前記センサ信号の一時的な立下がり状態が存在するか否かを検証し、前記アクチェータにより圧送される処理液中における気泡の存否を推定する点に特徴を有する。
【0028】
そして、この発明にかかる処理液吐出装置の好ましい他の形態によると、前記した光学センサによる光路の設定位置よりも上流側に、前記処理液の流路を横切るようにして第2の光学センサによる光路を形成すると共に、前記第2の光学センサを構成する光投射手段と受光手段とを結ぶ直線上から外れた位置に、前記流路の軸芯を位置させた構成にされる。
【0029】
この場合、前記処理液吐出ノズルを横切る光学センサによる光路と、前記第2の光学センサによる光路との間における処理液流路内の容積が、各サイクル毎の処理液吐出動作において前記ノズルより吐出される処理液の容量よりも大きな容積に設定されていることが望ましい。
【0030】
そして、この発明にかかる処理液吐出装置の駆動制御方法は、前記した構成の処理液吐出装置を利用するものであり、その好ましい駆動制御方法は、各サイクル毎の処理液吐出動作の実行中に、前記第2の光学センサによる処理液の非検出状態を示すセンサ信号の立下がり状態が発生するか否かを検証する検証工程と、前記検証工程において、センサ信号の立下がり状態が発生したことを検証した場合、前記処理液吐出ノズルの位置を被処理基板上から外れたダミーディスペンスポジションに移動させる移動工程と、前記ノズルをダミーディスペンスポジションに移動させた状態において、当該ノズルより次のサイクルの処理液吐出動作を行う処理液吐出工程とを実行する点に特徴を有する。
【発明の効果】
【0031】
前記した構成の処理液吐出装置によると、光学センサによる光路が横切る部分のノズル内に、処理液が存在する場合と存在しない場合における光の屈折度合いの相異を利用することで、処理液の存否を検証するように作用するものである。したがって、前記した処理液吐出装置によると、後で詳細にその作用を説明するとおり、ノズル内における処理液の色の濃さに左右されることなく処理液の存否を精度よく検証することができる。
【0032】
また、前記した処理液吐出装置を利用した動作検証方法によると、前記処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の立上がりと立下がりに対する前記光学センサにおける処理液検出状態を示すセンサ信号の立上がりおよび立下がりの関係から、サックバック量およびサックバック動作が確実になされているか否かの検証、ならびに処理液中における気泡の存在等を効果的に検証することができる。
【0033】
さらに、前記した処理液吐出装置の構成に加えて、第2の光学センサを備えた処理液吐出装置によると、ノズルより処理液を吐出させる動作の1つのサイクル前において処理液中に気泡が存在することを確実に把握することが可能となる。したがってこの構成を利用することで、ダミーディスペンスポジションにおいて泡抜き動作を効果的に実行させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、この発明にかかる処理液吐出装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。なお、この発明にかかる処理液吐出装置は、基本的にはすでに説明した図2に示す構成が採用される。すなわち、光投射手段としての光投射面4aおよび受光手段としての受光面5aを含む光学センサにおける矢印6で示した光路は、光透過性素材により形成されたノズル2の先端部近傍を横切るように構成されている。
【0035】
これに加えて、この発明にかかる処理液吐出装置については、前記したとおりノズル2より処理液を吐出する各サイクルの動作終了毎に、図示せぬ減圧手段により処理液をノズル2の先端部より若干吸い戻すサックバック動作が実行されるように構成されている。
【0036】
そして、この発明にかかる処理液吐出装置に採用される光学センサにおいては、さらに図6〜図8に示した構成が具備される。なお、図6〜図8に示した構成においては、すでに説明した図3〜図5に示す各部と同一機能を果たす部分を同一符号で示しており、したがって個々の詳細な説明は省略する。
【0037】
図6〜図8に示した光学センサの構成においては、光投射面4aとノズル2との間には遮蔽板8が配置され、この遮蔽板8に形成された光透過スリット8aを介して、前記光投射面4aからの光が受光面5a側に到達されるように構成されている。すなわち、前記スリット8aは、光投射面4aから受光面5a側に至る光路6の幅を制限するように機能する。
【0038】
そして、前記光投射面4aと受光面5aを結ぶ直線上、すなわち、前記光路6から若干外れた位置に、ノズル2の軸芯Cが位置するように前記光学センサとノズル2との関係が設定されている。なお、図6〜図8に示した実施の形態においては、光学センサによる光路6が横切る前記ノズル2の軸芯に直交する断面形状は円環状に成形されている。
【0039】
図6は、光学センサによる光路6が横切るノズル位置において、処理液Rが存在しない状態、すなわち図2に示したように処理液がサックバックされた状態を模式的に示している。この場合においては、前記スリット8aを介してノズル2側に到来する光は屈折されることなくノズル2を透過し、そのまま矢印6で示すように受光面5aに到達する。
【0040】
したがって、受光面5aに到達する光量のレベルは非常に大きい。それ故、受光面5aは予め定められた所定以上の光量を受光し、これにより光学センサによる光検知位置において、処理液Rは存在しない(または、処理液Rはノズルから吐出されていない)と判定することができる。
【0041】
一方、図7は光路6が横切るノズル位置において処理液Rが存在する状態を示している。この場合においては、光投射面4aからスリット8aを介してノズル2に向かう光束は、処理液Rを透過する際に、図中6aで示すように屈折作用を受ける。これは断面形状が円環状に成形されたノズル2の軸芯Cを避けた位置を通過する光の進行方向と、ノズル2と処理液Rの界面との間に、直交関係以外のある角度が形成されるために生ずるものである。
【0042】
この結果、受光面5aに到達する光量は非常に少なくなる。それ故、前記受光面5aは所定の光量未満の受光状態となり、光学センサによる光検知位置において処理液Rが存在する(または、処理液Rがノズルから吐出されている)と判定することができる。
【0043】
さらに、図8は光路6が横切るノズル位置において処理液Rが存在する状態であり、かつ色の濃い処理液が存在する例を模式的に示している。この場合においても図7に示した例と同様に、スリット8aを介してノズル2に向かう光束は、処理液Rを透過する際に、符号6aで示すように屈折作用を受ける。そして、色の濃い処理液Rを透過するために光の減衰は大きくなるものの、結果としては受光面5aに到達する光量は非常に少ない。これにより、処理液Rが存在する(または、処理液Rがノズルから吐出されている)と判定することができる。
【0044】
以上のように、図6〜図8に示した光学的な構成によると、処理液Rの色の濃さに依存されることなく、光路6が横切るノズル位置において処理液Rが存在するか否かを精度よく検証することができる。
【0045】
図9Aおよび図9Bは、図6〜図8に示した光学的な構成を具備した処理液吐出装置を利用し、当該処理液吐出装置の動作状態を検証する検証方法を説明するものである。この検証方法においては、図示せぬベローズ式ポンプあるいはダイヤフラム式ポンプなどの処理液の圧送手段であるアクチェータを駆動するディスペンス信号と、前記した光投射面4aと受光面5aを含む光学センサによるセンサ信号との関係をもって、以下のような処理液吐出装置の動作状態を検証することができる。
【0046】
図9Bに示す信号aは前記したディスペンス信号を示しており、その立上がり状態で前記アクチェータが駆動されている状態を示している。また同図の信号bは光学センサによるセンサ信号を示しており、その立上がり状態は光学的な検知位置において処理液Rが存在する(または、処理液Rがノズルから吐出されている)ことを示すものである。
【0047】
したがって、図9Aに示すようにサックバック動作が正常に働いている場合においては、図9Bにaとして示すディスペンス信号の立上がりに対してta1のタイムラグをもってセンサ信号bが立上がることになる。そして、前記ノズル2より処理液を吐出する各サイクルの動作終了毎に、前記処理液をノズルの先端部より若干吸い戻すサックバック動作が実行されるので、ディスペンス信号の立下がりに対してtr1のタイムラグをもってセンサ信号bも立下がることになる。
【0048】
図10Aおよび図10Bは、図9Aおよび図9Bと同様の動作を説明するものであるが、図10Aは図9Aに対してサックバック量がより大きな場合を例示している。この場合においては、図10Bに示すようにディスペンス信号aの立上がりに対するセンサ信号bの立上がりのタイムラグta2はより大きくなる。要するに、ディスペンス信号aの立上がりに対するセンサ信号bの立上がりのタイムラグを把握することで、その時のサックバック量を推定することができる。
【0049】
したがって、ディスペンス信号aに対するセンサ信号bの立上がりのタイムラグに基づいて、適正なサックバック量を維持するように制御することで、被処理基板に対する安定した処理液の吐出動作を実現させることができる。また、ディスペンス信号aの立下がりに応じてセンサ信号bが立下がる状態を検知することで、サックバック動作が実行されていることを確認することができる。
【0050】
また同様に、ディスペンス信号aの立下がりに対するセンサ信号bの立下がりのタイムラグ(図9Bに示すtr1もしくは図10Bに示すtr2)が変化すれば、サックバックスピートが変わったこととして検知することができ、これはサックバック機構の機械的な変化を検知することにもなり、この事実をオペレータに報知するためのアラームを出すこともできる。
【0051】
なお、図9B,図10Bにaで示すディスペンス信号が立上がっているにもかかわらず、bで示すセンサ信号が立上がらない場合においては、何等かの障害により処理液の吐出不良が発生していると認識することができる。したがって、この場合には直ちに処理液吐出装置の運転を停止させることで、被処理基板への塗布不良を多量に発生させる問題を回避することができる。
【0052】
図11Aおよび図11Bは、ノズルから吐出される処理液中に気泡が含まれている場合を例示するものである。すなわち図11Aに示すようにノズル2における光学的な検知位置において、気泡が通過した場合には図11Bに示すようにセンサ信号の一時的な立下がり状態(ai)が発生する。このようにノズル2から吐出される処理液中に気泡が存在していた場合には、被処理基板7は直ちに処理液の塗布不良になるとは言えないものの、この時の被処理基板に対してコントローラ側でソフトウエアによるマーキングを施すことにより、マーキングされた被処理基板に対する処理液の塗布状態を検査する検査のランクを上げるなどの対処を施すことができる。
【0053】
次に図12は、この発明にかかる処理液吐出装置の第2の実施の形態を示したものである。なお図12に示す構成においても基本的にはすでに説明した図2に示す構成が採用されており、光投射面4aおよび受光面5aを含む光学センサにおいては、図6〜図8に示した構成が採用されている。したがって、これらの構成は同一符号で示しており、その詳細な説明は省略する。
【0054】
図12に示す処理液吐出装置においては、図2に示す構成に加えて第2の光学センサが具備されている。この第2の光学センサは、前記した光投射面4aおよび受光面5aを含む光学センサ(これを便宜上、第1の光学センサと呼ぶ)による光路6の設定位置よりも上流側に配置されている。すなわち図12に示す実施の形態においては、符号1で示したノズルホルダが光透過性の素材により構成されており、このノズルホルダ1に形成された処理液送出管1aを挟むように光ファイバー11,12の先端部が埋設されている。
【0055】
その一方の光ファイバー11の先端部は、前記第1の光学センサの構成と同様に当該光ファイバー11の長手方向に直交する方向に光を投射する光投射面11aが形成されており、他方の光ファイバー12の先端部には、当該光ファイバーの長手方向に直交する方向からの光を受光する受光面12aが形成されている。そして、前記各光投射面11aと受光面12aが対向し、前記ノズルホルダ1に形成された処理液送出管1aを横切るようにして矢印13で示した光検知用の光路が形成されている。
【0056】
前記光投射面11aおよび受光面12aと処理液送出管1aとの位置関係は、図6〜図8に基づいて説明した光学的な検知手段と同様に構成されており、前記光投射面11aと受光面12aを結ぶ直線上、すなわち、前記光路13から若干外れた位置に、処理液送出管1aの軸芯が位置するように前記光学センサとノズル2との関係が設定されている。したがって、前記光投射面11a受光面12aを含む第2の光学センサにおいても、図6〜図8に基づいて説明した光学的な検知手段と同様の作用による検知動作を実現させることができる。
【0057】
それ故、前記した光投射面11aと受光面12aを含む第2の光学センサは、処理液送出管1aを通過する気泡を効果的に検出することができ、前記第2の光学センサは泡検知センサと言うこともできる。そして、図12に示す処理液吐出装置においては、前記第1の光学センサによる光路6と、前記第2の光学センサによる光路13との間における処理液流路内の容積が、各サイクル毎の処理液吐出動作において前記ノズル2より吐出される処理液の容量よりも大きな容積に設定されている。
【0058】
図13〜図15は、図12に示した処理液吐出装置における作用を説明するものであり、図13〜図15におけるaおよびbは、図9Bにおけるaおよびbと同様にディスペンス信号および第1の光学センサによるセンサ信号を示している。また図13〜図15におけるcは、第2の光学センサによるセンサ信号を示しており、これは第2の光学センサにより処理液中に気泡を検出した場合にセンサ出力が立下がるようになされる。
【0059】
図13に示す例は、処理液中に気泡が存在しない正常な状態を示している。また図14に示す例は処理液中に気泡が存在し、前記第2の光学センサ(泡検知センサ)により気泡の存在が検知された状態を示している。さらに、図15に示す例は処理液吐出ノズル2より処理液を吐出する1つのサイクルの動作中に、ノズル2より気泡が排出されると共に、第2の光学センサにおいても気泡の存在が検知された状態を示している。
【0060】
前記した第1および第2の光学センサによる検出パターンの組み合わせを利用することで、例えば図16に示したような処理液吐出装置の駆動制御方法を実現させることができる。なお、図16においては図示が繁雑になるために、図12に示した処理液吐出装置における各部の符号は省略して示している。
【0061】
図16(A)は処理液吐出ノズル2より処理液を吐出する1つのサイクルの動作中に、第2の光学センサにより処理液中に気泡が存在することが検出される例を示している。この場合においては、先に説明した図14に示すように、第2の光学センサによるセンサ出力は瞬間的に立下がり状態になされる。
【0062】
ここで、前記したとおり第1の光学センサによる光路と、前記第2の光学センサによる光路との間における処理液流路内の容積は、各サイクル毎の処理液吐出動作において前記ノズルより吐出される処理液の容量よりも大きな容積に設定されているので、16(B)に示すように前記第2の光学センサにより検出された気泡がノズル2より吐出される前に、1つのサイクルの処理液吐出動作は終了する。そして図16(C)は、1つのサイクルの処理液吐出動作の終了後において、前記したサックバック動作が実行された休止状態を示している。
【0063】
前記したように第2の光学センサにより、処理液中に気泡の存在が検知された場合においては、前記処理液吐出装置を被処理基板上から外れたダミーディスペンスポジションに移動させる動作が実行され、このダミーディスペンスポジションにおいて処理液を吐出させる動作を実行する。この状態を図16(D)に示している。そして、図16(D)に示すように第1の光学センサにより気泡を排出したことを検知し、図16(E)に示すようにノズルより気泡が排出される状態に至った時に処理液の吐出を停止させることで、泡抜き動作を完了させることができる。この泡抜き動作の完了後には、処理液吐出装置をダミーディスペンスポジションから被処理基板上に移動させて、通常の処理液吐出動作を実行させることになる。
【0064】
また、前記した動作を実行した回数をカウントするカウンタをソフトウエアにより構築し、当該カウンタによるカウント数が所定数を超えた場合においては、配管系の接続部や、フィルタの取り付け部、液ビン接続部などの不良が考えられ、アラームを出力する構成とすることが望ましい。
【0065】
なお、図16(D)に示すように、第1の光学センサにより気泡を排出することを検知する以前に、再び第2の光学センサにより気泡を検知するような場合、すなわち図15にbおよびcで示すような検出パターンが発生した場合においては、引き続き処理液吐出装置をダミーディスペンスポジションに位置させたまま、処理液の吐出動作を実行するように制御される。前記した駆動制御方法を実行することにより、被処理基板面に対して気泡を排出させることなく、しかも最小限の処理液の排出量をもって、泡抜き作用を実現させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明は、先に説明したシリコンウエハなどの半導体基板やフォトマスク、もしくはLCD基板に対してフォトレジスト液を塗布する場合に限らず、前記基板に対する例えば現像液の吐出動作、その他の電子ディバイスやプリント基板の製造分野における有機溶剤液やポリイミド樹脂液などの塗布装置においても好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】この発明の解決課題を伴う処理液吐出装置の例を示した縦断面図である。
【図2】この発明にかかる処理液吐出装置の基本構成を示した縦断面図である。
【図3】レンズ効果を利用した光学検知センサの原理を説明する模式図である。
【図4】同じく処理液が存在する場合の例を説明する模式図である。
【図5】同じく色の濃い処理液が存在する場合の例を説明する模式図である。
【図6】この発明にかかる処理液吐出装置において利用される光学検知センサの原理を説明する模式図である。
【図7】同じく処理液が存在する場合の例を説明する模式図である。
【図8】同じく色の濃い処理液が存在する場合の例を説明する模式図である。
【図9A】処理液吐出装置の一つの状態を示す縦断面図である。
【図9B】図9Aに示す状態における検証結果を説明するタイミング図である。
【図10A】処理液吐出装置の他の一つの状態を示す縦断面図である。
【図10B】図10Aに示す状態における検証結果を説明するタイミング図である。
【図11A】処理液吐出装置のさらに他の一つの状態を示す縦断面図である。
【図11B】図11Aに示す状態における検証結果を説明するタイミング図である。
【図12】この発明にかかる処理液吐出装置の他の構成例を示した縦断面図である。
【図13】図12に示す装置による一つの検証結果を説明するタイミング図である。
【図14】同じく他の一つの検証結果を説明するタイミング図である。
【図15】同じくさらに他の一つの検証結果を説明するタイミング図である。
【図16】図12に示す処理液吐出装置を利用した制御方法の一例を説明する動作遷移図である。
【符号の説明】
【0068】
1 ノズルホルダ
1a 処理液送出管
2 処理液吐出ノズル
2a 軸孔
3 センサ固定用ブラケット
3a,3b カバー部材
4,5 光ファイバー
4a 光投射面(光投射手段)
5a 受光面(受光手段)
6 光検知用光路
7 被処理基板
8 遮蔽板
8a 光透過スリット
11,12 光ファイバー
11a 光投射面
12a 受光面
C ノズルの軸芯
R 処理液
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性素材により形成された処理液吐出ノズルを横切るようにして、光学センサによる光路を形成すると共に、前記光学センサを構成する光投射手段と受光手段を結ぶ直線上から外れた位置に、前記処理液吐出ノズルの軸芯を位置させたことを特徴とする処理液吐出装置。
【請求項2】
前記光学センサによる光路が横切る前記処理液吐出ノズルの軸芯に直交する断面形状が、円環状に成形されていることを特徴とする請求項1に記載された処理液吐出装置。
【請求項3】
前記光投射手段から前記受光手段側に至る光路の幅を制限する光透過スリットを、前記光投射手段と処理液吐出ノズルとの間に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された処理液吐出装置。
【請求項4】
前記処理液吐出ノズルより処理液を吐出する各サイクルの動作終了毎に、前記処理液をノズルの先端部より若干吸い戻すサックバック動作を実行するように構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された処理液吐出装置。
【請求項5】
前記光学センサにおける受光手段が、所定の光量の受光状態において、前記処理液吐出ノズルにおける前記光路位置に処理液が存在しないものと判定し、前記受光手段が所定の光量未満の受光状態において、前記処理液吐出ノズルにおける前記光路位置に処理液が存在するものと判定するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された処理液吐出装置。
【請求項6】
前記請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された処理液吐出装置を用いた処理液吐出装置の動作検証方法であって、
前記処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の立上がりと、前記光学センサにおける処理液検出状態を示すセンサ信号の立上がりのタイムラグを検証し、前記タイムラグよりサックバック量を推定することを特徴とする処理液吐出装置の動作検証方法。
【請求項7】
前記請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された処理液吐出装置を用いた処理液吐出装置の動作検証方法であって、
前記処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の印加を終了した時点からの所定時間内において、前記光学センサにおける処理液の非検出状態を示すセンサ信号が立下がり状態になるか否かを検証し、前記検証結果よりサックバック動作が実行されている否かを推定することを特徴とする処理液吐出装置の動作検証方法。
【請求項8】
前記請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された処理液吐出装置を用いた処理液吐出装置の動作検証方法であって、
前記処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の継続時間に対応した前記光学センサにおける処理液検出状態を示すセンサ信号の立上がり継続時間中において、前記センサ信号の一時的な立下がり状態が存在するか否かを検証し、前記アクチェータにより圧送される処理液中における泡の存否を推定することを特徴とする処理液吐出装置の動作検証方法。
【請求項9】
前記光学センサによる光路の設定位置よりも上流側に、前記処理液の流路を横切るようにして第2の光学センサによる光路を形成すると共に、前記第2の光学センサを構成する光投射手段と受光手段とを結ぶ直線上から外れた位置に、前記流路の軸芯を位置させたことを特徴する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された処理液吐出装置。
【請求項10】
前記処理液吐出ノズルを横切る光学センサによる光路と、前記第2の光学センサによる光路との間における処理液流路内の容積が、各サイクル毎の処理液吐出動作において前記ノズルより吐出される処理液の容量よりも大きな容積に設定されていることを特徴とする請求項9に記載された処理液吐出装置。
【請求項11】
前記請求項10に記載された処理液吐出装置を用いた同装置の駆動制御方法であって、 各サイクル毎の処理液吐出動作の実行中に、前記第2の光学センサによる処理液の非検出状態を示すセンサ信号の立下がり状態が発生するか否かを検証する検証工程と、
前記検証工程において、センサ信号の立下がり状態が発生したことを検証した場合、前記処理液吐出ノズルの位置を被処理基板上から外れたダミーディスペンスポジションに移動させる移動工程と、
前記ノズルをダミーディスペンスポジションに移動させた状態において、当該ノズルより次のサイクルの処理液吐出動作を行う処理液吐出工程と、
を実行することを特徴とする処理液吐出装置の駆動制御方法。
【請求項1】
光透過性素材により形成された処理液吐出ノズルを横切るようにして、光学センサによる光路を形成すると共に、前記光学センサを構成する光投射手段と受光手段を結ぶ直線上から外れた位置に、前記処理液吐出ノズルの軸芯を位置させたことを特徴とする処理液吐出装置。
【請求項2】
前記光学センサによる光路が横切る前記処理液吐出ノズルの軸芯に直交する断面形状が、円環状に成形されていることを特徴とする請求項1に記載された処理液吐出装置。
【請求項3】
前記光投射手段から前記受光手段側に至る光路の幅を制限する光透過スリットを、前記光投射手段と処理液吐出ノズルとの間に配置したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載された処理液吐出装置。
【請求項4】
前記処理液吐出ノズルより処理液を吐出する各サイクルの動作終了毎に、前記処理液をノズルの先端部より若干吸い戻すサックバック動作を実行するように構成したことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載された処理液吐出装置。
【請求項5】
前記光学センサにおける受光手段が、所定の光量の受光状態において、前記処理液吐出ノズルにおける前記光路位置に処理液が存在しないものと判定し、前記受光手段が所定の光量未満の受光状態において、前記処理液吐出ノズルにおける前記光路位置に処理液が存在するものと判定するように構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載された処理液吐出装置。
【請求項6】
前記請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された処理液吐出装置を用いた処理液吐出装置の動作検証方法であって、
前記処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の立上がりと、前記光学センサにおける処理液検出状態を示すセンサ信号の立上がりのタイムラグを検証し、前記タイムラグよりサックバック量を推定することを特徴とする処理液吐出装置の動作検証方法。
【請求項7】
前記請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された処理液吐出装置を用いた処理液吐出装置の動作検証方法であって、
前記処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の印加を終了した時点からの所定時間内において、前記光学センサにおける処理液の非検出状態を示すセンサ信号が立下がり状態になるか否かを検証し、前記検証結果よりサックバック動作が実行されている否かを推定することを特徴とする処理液吐出装置の動作検証方法。
【請求項8】
前記請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された処理液吐出装置を用いた処理液吐出装置の動作検証方法であって、
前記処理液吐出ノズルに対して処理液を圧送するアクチェータを駆動するディスペンス信号の継続時間に対応した前記光学センサにおける処理液検出状態を示すセンサ信号の立上がり継続時間中において、前記センサ信号の一時的な立下がり状態が存在するか否かを検証し、前記アクチェータにより圧送される処理液中における泡の存否を推定することを特徴とする処理液吐出装置の動作検証方法。
【請求項9】
前記光学センサによる光路の設定位置よりも上流側に、前記処理液の流路を横切るようにして第2の光学センサによる光路を形成すると共に、前記第2の光学センサを構成する光投射手段と受光手段とを結ぶ直線上から外れた位置に、前記流路の軸芯を位置させたことを特徴する請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載された処理液吐出装置。
【請求項10】
前記処理液吐出ノズルを横切る光学センサによる光路と、前記第2の光学センサによる光路との間における処理液流路内の容積が、各サイクル毎の処理液吐出動作において前記ノズルより吐出される処理液の容量よりも大きな容積に設定されていることを特徴とする請求項9に記載された処理液吐出装置。
【請求項11】
前記請求項10に記載された処理液吐出装置を用いた同装置の駆動制御方法であって、 各サイクル毎の処理液吐出動作の実行中に、前記第2の光学センサによる処理液の非検出状態を示すセンサ信号の立下がり状態が発生するか否かを検証する検証工程と、
前記検証工程において、センサ信号の立下がり状態が発生したことを検証した場合、前記処理液吐出ノズルの位置を被処理基板上から外れたダミーディスペンスポジションに移動させる移動工程と、
前記ノズルをダミーディスペンスポジションに移動させた状態において、当該ノズルより次のサイクルの処理液吐出動作を行う処理液吐出工程と、
を実行することを特徴とする処理液吐出装置の駆動制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−313822(P2006−313822A)
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−135839(P2005−135839)
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年5月9日(2005.5.9)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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