説明

処理装置及び超音波洗浄装置並びに超音波洗浄方法及び超音波洗浄プログラム

【課題】超音波洗浄装置の小型化、軽量化、省電力化を図るとともに、洗浄効果を向上させること。
【解決手段】本発明では、洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄装置において、被処理体に向けて超音波を照射するための超音波振動子を被処理体の配列方向に向けて走行可能に配設することにした。また、超音波振動子は、洗浄槽の内部で被処理体を支持するための支持体に対して被処理体を挟んで反対側に配設することにした。また、超音波振動子は、洗浄槽の上部に配設することにした。また、超音波振動子は、被処理体の表面に対して傾斜させて配設することにした。さらに、超音波振動子は、被処理体への超音波の照射角度を変更可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハや液晶基板などの被処理体に対して洗浄処理を施すための処理装置及び超音波洗浄装置並びに超音波洗浄方法及び超音波洗浄プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体部品やフラットディスプレイなどの製造過程において、半導体ウエハや液晶基板などの被処理体に対して洗浄処理を施す洗浄工程が設けられている。この洗浄工程で用いられる処理装置には、洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄装置を内蔵したものが知られている(たとえば、特許文献1参照。)。
【0003】
従来の超音波洗浄装置は、上方を開口した箱型状の洗浄槽の底壁の裏側全面に超音波振動子を取付けるとともに、洗浄槽の内部に複数のウエハ(被処理体)を同時に昇降させるための昇降機構を配設しており、この昇降機構は、昇降桿の下端部に複数のウエハを水平方向に配列させた状態で垂直状に保持するウエハボートを連設した構造となっていた。
【0004】
そして、従来の超音波洗浄装置では、洗浄液を貯留した洗浄槽の内部にウエハボートで支持した複数のウエハを浸漬した後に、超音波振動子を稼動させ、ウエハボートで下側を支持したウエハに向けてウエハの下側から超音波振動子によって超音波を照射し、超音波のエネルギーによってウエハの表面から汚染物(パーティクルや金属又は有機不純物など)を除去するようにしていた。
【特許文献1】特開2003−209086号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来の超音波洗浄装置では、洗浄槽の底壁の裏側全面に取付けた超音波振動子を用いてウエハに超音波を照射するように構成していたために、超音波振動子の占有体積が大きく、超音波洗浄装置の小型化や軽量化の支障となるおそれがあり、また、超音波振動子を稼動させるための消費電力が大きく、超音波洗浄装置の省電力化の支障となるおそれがあった。
【0006】
また、洗浄槽の底壁裏側に超音波振動子を取付けていたために、超音波振動子の点検や修理などの作業が煩雑となり、超音波洗浄装置のメンテナンス性が低減してしまうおそれがあった。
【0007】
さらに、従来の超音波洗浄装置では、ウエハを下側からウエハボートで支持しており、さらにウエハボートの下側から超音波振動子によって超音波をウエハに向けて照射するように構成していたために、超音波振動子とウエハとの間にウエハボートが介在することになり、このウエハボートによって超音波振動子から放射された超音波の一部が遮断されてしまい、ウエハの表面にまで超音波が達しない部分が生じるおそれがあった。このように、ウエハの表面に部分的に超音波が照射されないと、ウエハの洗浄むらが生じてしまい、洗浄不良が生じる原因となるおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄ユニットを有する処理装置において、超音波洗浄ユニットは、被処理体に向けて超音波を照射するための超音波振動子を被処理体の配列方向に向けて走行可能に配設することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記超音波振動子は、洗浄槽の内部で被処理体を支持するための支持体に対して被処理体を挟んで反対側に配設することにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記超音波振動子は、洗浄槽の上部に配設することにした。
【0011】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項1〜請求項3のいずれかに係る本発明において、前記超音波振動子は、被処理体の表面に対して傾斜させて配設することにした。
【0012】
また、請求項5に係る本発明では、前記請求項1〜請求項4のいずれかに係る本発明において、前記超音波振動子は、被処理体への超音波の照射角度を変更可能とすることにした。
【0013】
また、請求項6に係る本発明では、洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄装置において、被処理体に向けて超音波を照射するための超音波振動子を被処理体の配列方向に向けて走行可能に配設することにした。
【0014】
また、請求項7に係る本発明では、前記請求項6に係る本発明において、前記超音波振動子は、洗浄槽の内部で被処理体を支持するための支持体に対して被処理体を挟んで反対側に配設することにした。
【0015】
また、請求項8に係る本発明では、前記請求項6又は請求項7に係る本発明において、前記超音波振動子は、洗浄槽の上部に配設することにした。
【0016】
また、請求項9に係る本発明では、前記請求項6〜請求項8のいずれかに係る本発明において、前記超音波振動子は、被処理体の表面に対して傾斜させて配設することにした。
【0017】
また、請求項10に係る本発明では、前記請求項6〜請求項9のいずれかに係る本発明において、前記超音波振動子は、被処理体への超音波の照射角度を変更可能とすることにした。
【0018】
また、請求項11に係る本発明では、洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄方法において、被処理体に向けて超音波を照射するための超音波振動子を被処理体の配列方向に向けて走行させることによって被処理体の洗浄処理を行うことにした。
【0019】
また、請求項12に係る本発明では、前記請求項11に係る本発明において、前記洗浄槽の内部で被処理体を支持するための支持体に対して被処理体を挟んで反対側から超音波振動子によって超音波を被処理体に向けて照射することにした。
【0020】
また、請求項13に係る本発明では、前記請求項11又は請求項12に係る本発明において、前記超音波振動子によって超音波を被処理体の表面に対して傾斜状に照射することにした。
【0021】
また、請求項14に係る本発明では、前記請求項11〜請求項13のいずれかに係る本発明において、前記超音波振動子から被処理体への超音波の照射角度を変更しながら超音波を被処理体に照射することにした。
【0022】
また、請求項15に係る本発明では、洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄装置に対して洗浄処理を実行させるための超音波洗浄プログラムにおいて、被処理体に向けて超音波を照射するための超音波振動子を被処理体の配列方向に向けて走行させることによって被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄ステップを有することにした。
【0023】
また、請求項16に係る本発明では、前記請求項15に係る本発明において、前記超音波洗浄ステップは、洗浄槽の内部で被処理体を支持するための支持体に対して被処理体を挟んで反対側から超音波振動子によって超音波を被処理体に向けて照射することにした。
【0024】
また、請求項17に係る本発明では、前記請求項15又は請求項16に係る本発明において、前記超音波洗浄ステップは、超音波振動子によって超音波を被処理体の表面に対して傾斜状に照射することにした。
【0025】
また、請求項18に係る本発明では、前記請求項15〜請求項17のいずれかに係る本発明において、前記超音波洗浄ステップは、超音波振動子から被処理体への超音波の照射角度を変更しながら超音波を被処理体に照射することにした。
【発明の効果】
【0026】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0027】
すなわち、本発明では、洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄装置において、被処理体に向けて超音波を照射するための超音波振動子を被処理体の配列方向に向けて走行可能に配設しているために、小型軽量かつ低消費電力の超音波振動子を用いても洗浄槽に浸漬させた複数の被処理体全てに超音波を照射することができ、超音波洗浄装置や超音波洗浄装置を内蔵した処理装置の小型化や軽量化や省電力化を図ることができる。
【0028】
特に、洗浄槽の内部で被処理体を支持する支持体に対して被処理体を挟んで反対側に超音波振動子を配設しているために、超音波振動子から放射された超音波が支持体によって遮断されることがなくなり、被処理体の全面に超音波を照射することができるので、洗浄むらの発生を未然に防止することができる。
【0029】
また、洗浄槽の上部に超音波振動子を配設しているために、洗浄槽を取出すことなく超音波振動子だけを点検や修理することができるので、超音波振動子のメンテナンス性を向上させることができる。
【0030】
また、被処理体の表面に対して傾斜させて超音波振動子を配設しているために、被処理体の表面に照射されずに配列した被処理体の間を通過してしまう超音波の量を減らすことができ、超音波振動子から放射された超音波を被処理体の表面に効率良く照射することができるので、超音波洗浄装置の洗浄効果を向上させることができる。
【0031】
さらに、超音波振動子から被処理体への超音波の照射角度を変更可能としているために、あらゆる角度から被処理体に超音波が照射されるので、被処理体の表面から汚染物をより一層良好に除去することができ、超音波洗浄装置の洗浄効果を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に本発明に係る超音波洗浄装置を内蔵した処理装置の具体的な構成について図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、超音波洗浄処理を施す被処理体としてウエハ(基板)を用いた場合について説明する。
【0033】
図1に示すように、処理装置1は、複数枚のウエハ2を収容したキャリア3の搬入及び搬出を行うキャリア搬入出部4と、複数のキャリア3に収容されたウエハ2を組合わせることによって一括処理するバッチ5を編成するバッチ編成部6と、各バッチ5ごとにウエハ2の洗浄処理及び乾燥処理を行う基板処理部7とで構成している。
【0034】
キャリア搬入出部4は、キャリア3を載置するキャリアステージ8に密閉状の開閉扉9を形成し、この開閉扉9の内側にキャリア搬送機構10を配設し、このキャリア搬送機構10によってキャリアステージ8に載置されたキャリア3を必要に応じてキャリアストック11に一時的に保管するとともに、キャリア載置台12に搬入するようにしている。
【0035】
また、キャリア搬入出部4は、基板処理部7で処理が完了したウエハ2が収容されたキャリア3に対し、上記搬入時とは逆に、キャリア載置台12に載置されたキャリア3を必要に応じてキャリア搬送機構10によってキャリアストック11に一時的に保管するとともに、キャリアステージ8に搬出するようにしている。
【0036】
バッチ編成部6は、キャリア搬入出部4との間に密閉状の開閉扉13を形成し、この開閉扉13の内側にキャリア3に収容された複数枚のウエハ2を同時に搬送するための基板搬送機構14と、この基板搬送機構14によって搬送されたウエハ2の配列間隔を半分に変更してバッチ5を形成するためのバッチ形成機構15と、基板搬送機構14によって搬送されたウエハ2の配列順序を変更する配列順序変更機構16と、バッチ形成機構15によって形成されたバッチ5をバッチ編成部6と基板処理部7との間で受渡すとともに基板処理部7の内部での搬送を行うバッチ搬送機構17とを配設している。また、バッチ編成部6は、内部にキャリア3に収容されたウエハ2の収容状態を検出するウエハ収容状態検出センサー18とキャリア3に収容された複数枚のウエハ2のノッチの位置調整を行うノッチアライナー19を配設している。
【0037】
そして、バッチ編成部6では、キャリア搬入出部4から搬入される複数個(たとえば、2個)のキャリア3にそれぞれ収容された複数枚(たとえば、25枚)のウエハ2を組合わせて基板処理部7で一括処理する複数枚(たとえば、50枚)のウエハ2で構成されたバッチ5を形成し、そのバッチ5を基板処理部7に受渡し、また、基板処理部7での処理が完了した後には、基板処理部7からバッチ5を受取り、元のキャリア3にウエハ2を収容して、そのキャリア3をキャリア搬入出部4に搬送するようにしている。
【0038】
基板処理部7は、ウエハ2の洗浄及び乾燥を行う洗浄乾燥機構20とウエハ2の洗浄を行う洗浄機構21とで構成している。そして、洗浄乾燥機構20には、バッチ5をウエハ昇降機構22で昇降することによって洗浄と乾燥とを行う基板洗浄乾燥ユニット23とバッチ搬送機構17の洗浄を行う搬送機構洗浄ユニット24とを並設している。また、洗浄機構21には、第1の洗浄ユニットとしての超音波洗浄ユニット25と第2及び第3の洗浄ユニット26,27とを並設しており、各洗浄ユニット25,26,27には、バッチ5を薬液処理するための洗浄槽28,29,30とバッチ5を純水処理するための洗浄槽31,32,33とこれらの薬液処理用の洗浄槽28,29,30と純水処理用の洗浄槽31,32,33との間でバッチ5の搬送を行う搬送機構34,35,36とを設けている。
【0039】
また、基板処理部7は、洗浄乾燥機構20と洗浄機構21に沿ってバッチ搬送機構17を配設しており、このバッチ搬送機構17の始端部分をバッチ編成部6に配設している。
【0040】
そして、基板処理部7は、バッチ編成部6で編成されたバッチ5をバッチ搬送機構17によって洗浄乾燥機構20のウエハ昇降機構22や洗浄機構21の搬送機構34,35,36に搬送して、各洗浄乾燥機構20や洗浄機構21においてウエハ2の処理をバッチ5ごとに行ない、その後、処理後のバッチ5を洗浄乾燥機構20のウエハ昇降機構22や洗浄機構21の搬送機構34,35,36からバッチ搬送機構17に移送し、このバッチ搬送機構17によって処理後のバッチ5をバッチ編成部6へ再び搬送するようにしている。
【0041】
このように、処理装置1は、キャリア搬入出部4によってウエハ2をキャリア3ごとバッチ編成部6に搬入し、バッチ編成部6において基板処理部7で一括処理するバッチ5を編成して基板処理部7に受渡し、基板処理部7でバッチ5ごとに一括して処理を施し、その後、処理後のバッチ5をバッチ編成部6に受渡し、バッチ編成部6でバッチ5を構成するウエハ2をキャリア3に収容してキャリア搬入出部4に搬送し、キャリア搬入出部4によって処理後のウエハ2を収容したキャリア3を搬出するようにしている。
【0042】
次に、本発明の要部となる超音波洗浄ユニット25(超音波洗浄装置)の構成について説明する。なお、以下の説明では、第1の洗浄ユニットの純水処理用の洗浄槽31に本発明を適用した場合を例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されず、第1〜第3の洗浄ユニット25,26,27の薬液処理用の洗浄槽28,29,30や純水処理用の洗浄槽31,32,33、さらには、基板洗浄乾燥ユニット23に設けられる洗浄槽にも適用できるものである。
【0043】
超音波洗浄ユニット25は、図2〜図4に示すように、上端部を開口した有底矩形箱型状の洗浄槽37の左右側壁38,39に洗浄液としての純水を供給するための洗浄液供給ノズル40〜45を上下に間隔をあけて取付けるとともに、底壁46に排水管47を連通連結し、この排水管47の中途部に開閉バルブ48を介設し、さらには、洗浄槽37の上端外側部に環状のオーバーフロー槽49を取付け、このオーバーフロー槽49の底壁50に排水管51を連通連結し、この排水管51の中途部に開閉バルブ52を介設している。
【0044】
ここで、洗浄液供給ノズル40〜45には、純水を供給するための純水供給源53が開閉バルブ54を介して接続されており、この開閉バルブ54を開放状態にすることによって、洗浄液供給ノズル40〜45から洗浄槽37の内部に純水を供給できるようにしている。また、開閉バルブ48,52,54には、制御部55が接続されており、この制御部55によって開閉バルブ48,52,54が開閉制御されている。
【0045】
また、超音波洗浄ユニット25は、搬送機構34の昇降桿56を洗浄槽37の直上方に昇降自在に配置し、この昇降桿56の下端部にウエハ2を支持するウエハボート57を形成している。このウエハボート57は、前後一対の連結体58,59の間に4本の支持体60〜63を左右に間隔をあけて取付けており、各支持体60〜63の上端部には、ウエハ2を水平方向に向けて配列させた状態で各ウエハ2を垂直状に支持するための支持溝64〜67を前後に間隔をあけて形成している。このウエハボート57は、搬送機構34によって洗浄槽37の上方位置と洗浄槽37の内部位置との間でウエハ2をバッチ5ごと昇降させることができるようになっている。なお、搬送機構34には、制御部55が接続されており、この制御部55によって搬送機構34が駆動制御されている。
【0046】
また、超音波洗浄ユニット25は、洗浄槽37の上部に超音波照射機構68を配設している。この超音波照射機構68は、オーバーフロー槽49の左側壁に沿って基台69を取付け、この基台69の上部に走行台70を基台69に沿って洗浄槽37の前端と後端との間で往復走行可能に取付け、この走行台70の右側部に左右に伸延させた支持軸71の基端部を回動可能に取付け、この支持軸71の先端部に超音波(メガソニックウェーブ)を放射する超音波振動子72を取付けている。
【0047】
ここで、超音波照射機構68は、基台69の内部に走行台70を走行させるための走行機構73と超音波振動子72を稼動させるための稼動機構74を配設しており、走行台70の内部に支持軸71を回動させるための回動機構75を配設している。これらの走行機構73、稼動機構74、回動機構75は、制御部55に接続されており、この制御部55によって駆動制御されている。すなわち、制御部55によって走行機構73を駆動制御すると、走行台70が基台69に沿って往復走行し、それに伴って超音波振動子72が洗浄槽37の前端と後端との間で往復走行し、また、制御部55によって稼動機構74を駆動制御すると、超音波振動子72の下端部から超音波が放射され、さらに、制御部55によって回動機構75を駆動制御すると、支持軸71が回動し、それに伴って超音波振動子72の前後の傾斜角度が変化するようになっている。
【0048】
このように、上記超音波洗浄ユニット25では、洗浄槽37の上部に超音波振動子72を配設しているために、洗浄槽37を取出すことなく超音波振動子72だけを点検や修理することができるので、超音波振動子72のメンテナンス性を向上させることができる。
【0049】
超音波洗浄ユニット25は、以上に説明したように構成しており、制御部55によって駆動制御される。この制御部55は、処理装置1とは別個に設けたホストコンピュータと通信可能に接続されており、超音波洗浄ユニット25だけでなく処理装置1の各部を駆動制御することができ、CPUからなるコントローラ76とこのコントローラ76に接続された記憶媒体77とで構成されている。この記憶媒体77には、各種の設定データや超音波洗浄プログラム78を格納している。なお、記憶媒体77は、ROMやRAMなどのメモリーでもよく、また、ハードディスクやCD−ROMなどのディスク状記憶媒体でもよい。
【0050】
制御部55は、記憶媒体77に格納した超音波洗浄プログラム78に従って超音波洗浄ユニット25を駆動制御することによって、ウエハ2の洗浄処理を行うようにしている。
【0051】
この超音波洗浄プログラム78では、図5に示すように、まず、超音波洗浄ユニット25の初期設定を行う(初期設定ステップS1)。
【0052】
具体的には、制御部55が、図6に示すように、搬送機構34を用いて洗浄槽37の上方にウエハボート57を配置し、洗浄槽37の開閉バルブ48を閉塞させた状態とするとともに、開閉バルブ54を開放させた状態にして、純水供給源53から洗浄液供給ノズル40〜45を介して洗浄槽37の内部に純水を供給する。このときに、制御部55は、オーバーフロー槽49の開閉バルブ52を開放状態として、洗浄槽37からオーバーフローした純水を排出できるようにする。
【0053】
次に、超音波洗浄プログラム78は、ウエハボート57に複数枚(たとえば、50枚)のウエハ2からなるバッチ5を受取る(ウエハ受取ステップS2)。
【0054】
具体的には、制御部55が、図7に示すように、バッチ搬送機構17を駆動制御してバッチ搬送機構17で搬送されたバッチ5を構成する各ウエハ2をウエハボート57の支持体60〜63に形成した支持溝64〜67に載置する。
【0055】
次に、超音波洗浄プログラム78は、ウエハボート57に載置されたウエハ2を洗浄槽37の内部に貯留された純水に浸漬する(ウエハ浸漬ステップS3)。
【0056】
具体的には、制御部55が、図8に示すように、搬送機構34を用いてウエハボート57を洗浄槽37の内部まで降下させることによってウエハボート57に載置されたウエハ2を洗浄槽37の内部に貯留された純水に浸漬する。
【0057】
次に、超音波洗浄プログラム78は、洗浄槽37の内部に貯留された純水に浸漬されたウエハ2に超音波を照射することによってウエハ2の超音波洗浄を行う(超音波洗浄ステップS4)。
【0058】
具体的には、制御部55が、図9に示すように、超音波照射機構68の走行機構73を駆動制御して走行台70を洗浄槽37の前端と後端との間で往復走行させるとともに、稼動機構74を駆動制御して超音波振動子72の下端面からウエハ2へ向けて超音波を放射する。
【0059】
これにより、洗浄槽37の内部に配列させた状態で浸漬した複数のウエハ2の表裏面に超音波振動子72から放射された超音波が照射され、超音波のエネルギーによってウエハ2の表裏面から汚染物が除去される。
【0060】
このように、超音波洗浄ユニット25では、ウエハ2に向けて超音波を照射するための超音波振動子72をウエハ2の配列方向に向けて走行させているために、小型軽量かつ低消費電力の超音波振動子72を用いても洗浄槽37に浸漬させた複数のウエハ2の全てに超音波を照射することができ、超音波洗浄ユニット25やこの超音波洗浄ユニット25を内蔵した処理装置1の小型化や軽量化や省電力化を図ることができる。
【0061】
しかも、上記超音波洗浄ユニット25では、洗浄槽37の内部でウエハ2を支持する支持体60〜63に対してウエハ2を挟んで反対側から超音波振動子72によってウエハ2に向けて超音波を照射しているために、超音波振動子72から放射された超音波が支持体60〜63によって遮断されることがなくなり、ウエハ2の全面に超音波を照射することができるので、洗浄むらの発生を未然に防止することができる。
【0062】
ここで、超音波洗浄ステップS4においては、図9に示すように、超音波振動子72の下端の照射面を鉛直下向きに固定した状態で超音波振動子72を往復走行させて超音波洗浄を行う場合に限られず、超音波振動子72を傾斜させた状態で往復走行させて超音波洗浄を行うようにしてもよい。
【0063】
たとえば、図10に示すように、超音波照射機構68の回動機構75を駆動制御して、超音波振動子72の下端の照射面を傾斜させた状態に固定し、その後、走行機構73を駆動制御して走行台70を洗浄槽37の前端と後端との間で往復走行させるとともに、稼動機構74を駆動制御して超音波振動子72の下端面からウエハ2へ向けて超音波を放射するようにしてもよい。
【0064】
この場合に、超音波振動子72の傾斜方向を常に一定にした状態で往復走行させてもよく、また、洗浄槽37の前端から後端までの間と後端から前端までの間とで超音波振動子72の傾斜方向を逆方向にして往復走行させてもよい。たとえば、ウエハ2の表面(主面:回路形成面)が全て同一方向を向いて配列されている場合には、超音波振動子72の傾斜方向を常に一定にするほうが望ましく、一方、ウエハ2の表面と裏面とが対向した状態で配列されている場合には、超音波振動子72の傾斜方向を変更させたほうが望ましい。
【0065】
このように、上記超音波洗浄ユニット25では、ウエハ2の表面に対して傾斜させた状態で超音波振動子72によってウエハ2に超音波を照射しているために、ウエハ2の表面に照射されずに配列したウエハ2の間を通過してしまう超音波の量を減らすことができ、超音波振動子72から放射された超音波をウエハ2の表面に効率良く照射することができるので、超音波洗浄ユニット25の洗浄効果を向上させることができる。
【0066】
また、図11に示すように、超音波照射機構68の回動機構75を駆動制御して超音波振動子72を前後に遥動させるとともに、走行機構73を駆動制御して走行台70を洗浄槽37の前端と後端との間で往復走行させ、その状態で稼動機構74を駆動制御して超音波振動子72の下端面からウエハ2へ向けて超音波を放射するようにしてもよい。
【0067】
このように、超音波振動子72を前後に遥動させながら前後に往復走行させることによって、超音波振動子72の下端の放射面からウエハ2へ向けて照射される超音波の照射角度が時間とともに変化し、ウエハ2の表面に対してあらゆる角度から超音波を照射することができる。
【0068】
この場合に、配列したウエハ2の間隔(隣接したウエハ2同士の間隔)の間で超音波振動子72が前後に少なくとも1回は遥動するようにすれば、1回の走行でウエハ2にあらゆる角度から超音波を照射することができ、超音波の照射効率を向上させることができる。
【0069】
このように、上記超音波洗浄ユニット25では、超音波振動子72からウエハ2への超音波の照射角度を変更しながらウエハ2に超音波を照射しているために、あらゆる角度からウエハ2に超音波が照射されるので、ウエハ2の表面から汚染物をより一層良好に除去することができ、超音波洗浄ユニット25の洗浄効果を向上させることができる。
【0070】
また、超音波洗浄ステップS4においては、超音波振動子72を一定の速度で往復走行させる場合に限られず、超音波照射機構68の走行機構73を駆動制御して走行台70の走行速度を増減又は停止させるようにすることもできる。たとえば、超音波振動子72から主にウエハ2の裏面に超音波が照射される区間での超音波振動子72の走行速度を、超音波振動子72から主にウエハ2の表面に超音波が照射される区間での超音波振動子72の走行速度よりも低減させたり、或いは、超音波振動子72から主にウエハ2の裏面に超音波が照射される区間で超音波振動子72を停止させて、ウエハ2の表面よりも裏面に超音波が長時間照射されるようにすることもできる。
【0071】
また、超音波洗浄ステップS4においては、超音波振動子72から一定出力の超音波を放射させる場合に限られず、超音波照射機構68の稼動機構74を駆動制御して超音波振動子72から放射される超音波の出力を増減或いは断続させるようにすることもできる。たとえば、超音波振動子72から主にウエハ2の裏面に超音波が照射される区間での超音波振動子72の出力を、超音波振動子72から主にウエハ2の表面に超音波が照射される区間での超音波振動子72の出力よりも増大させたり、或いは、超音波振動子72から主にウエハ2の表面に超音波が照射される区間で超音波振動子72の出力を部分的に停止させて、ウエハ2の表面よりも裏面に強い超音波が照射されるようにすることもできる。
【0072】
さらに、超音波洗浄ステップS4においては、超音波振動子72を一定回数だけ往復走行させる場合に限られず、超音波照射機構68の走行機構73と稼動機構74とを駆動制御して往側と複側とで超音波振動子72から超音波を照射しながら走行する回数を変えることもできる。たとえば、ウエハ2の表面を全て同一方向へ向けて配列させた状態で、超音波振動子72を往側に走行させることによって主にウエハ2の表面に超音波を照射するとともに、超音波振動子72を複側に走行させることによって主にウエハ2の裏面に超音波を照射するようにし、主にウエハ2の裏面に超音波を照射しながら超音波振動子72を走行させる複側での照射回数を、主にウエハ2の表面に超音波を照射しながら超音波振動子72を走行させる往側での照射回数よりも多くなるようにすることもできる。
【0073】
このように、超音波洗浄ステップS4においては、超音波振動子72の走行速度や出力や照射回数を変化させてもよい。特に、ウエハ2の表面よりも裏面に超音波を長時間又は強く或いは多く照射することによって、超音波の過剰照射に起因するウエハ2の表面での回路パターンなどの破壊を未然に防止することができるとともに、ウエハ2の裏面に付着した汚染物を良好に除去することができる。
【0074】
なお、ウエハ2の表面と裏面とが対向した状態で配列されている場合には、ウエハ2の表面が全て同一方向を向いて配列されている場合に比べて、超音波振動子72から超音波がウエハ2の表面及び裏面に均一に照射されやすくなっているため、超音波振動子72の走行速度や出力や照射回数を変化させる場合には、ウエハ2の表面を全て同一方向へ向けて配列させておき、超音波照射機構68の回動機構75を駆動制御して超音波振動子72を傾斜させた状態で走行させるほうが望ましい。
【0075】
次に、超音波洗浄プログラム78は、ウエハボート57に載置されたウエハ2を洗浄槽37の内部から外部へ上昇させる(ウエハ上昇ステップS5)。
【0076】
具体的には、制御部55が、搬送機構34を用いてウエハボート57を洗浄槽37の内部から上昇させることによってウエハボート57に載置されたウエハ2を洗浄槽37の外部へ搬送する。
【0077】
最後に、超音波洗浄プログラム78は、洗浄処理を施したウエハ2をバッチ搬送機構17へ受渡す(ウエハ受渡ステップS6)。
【0078】
具体的には、制御部55が、バッチ搬送機構17を駆動制御してウエハボート57からウエハ2を受取る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明に係る処理装置を示す平面図。
【図2】超音波洗浄ユニットを示すブロック図。
【図3】同正面断面図。
【図4】同側面断面図。
【図5】超音波洗浄プログラムのフローチャート。
【図6】超音波洗浄ユニットの動作説明図(初期設定時)。
【図7】超音波洗浄ユニットの動作説明図(ウエハ受取時)。
【図8】超音波洗浄ユニットの動作説明図(ウエハ浸漬時)。
【図9】超音波洗浄ユニットの動作説明図(超音波洗浄時)。
【図10】超音波洗浄ユニットの動作説明図(超音波洗浄時)。
【図11】超音波洗浄ユニットの動作説明図(超音波洗浄時)。
【符号の説明】
【0080】
1 処理装置 2 ウエハ
3 キャリア 4 キャリア搬入出部
5 バッチ 6 バッチ編成部
7 基板処理部 8 キャリアステージ
9 開閉扉 10 キャリア搬送機構
11 キャリアストック 12 キャリア載置台
13 開閉扉 14 基板搬送機構
15 バッチ形成機構 16 配列順序変更機構
17 バッチ搬送機構 18 ウエハ収容状態検出センサー
19 ノッチアライナー 20 洗浄乾燥機構
21 洗浄機構 22 ウエハ昇降機構
23 基板洗浄乾燥ユニット 24 搬送機構洗浄ユニット
25 超音波洗浄ユニット 26,27 洗浄ユニット
28,29,30 薬液処理用の洗浄槽 31,32,33 純水処理用の洗浄槽
34,35,36 搬送機構 37 洗浄槽
38,39 左右側壁 40〜45 洗浄液供給ノズル
46 底壁 47 排水管
48 開閉バルブ 49 オーバーフロー槽
50 底壁 51 排水管
52 開閉バルブ 53 純水供給源
54 開閉バルブ 55 制御部
56 昇降桿 57 ウエハボート
58,59 連結体 60〜63 支持体
64〜67 支持溝 68 超音波照射機構
69 基台 70 走行台
71 支持軸 72 超音波振動子
73 走行機構 74 稼動機構
75 回動機構 76 コントローラ
77 記憶媒体 78 超音波洗浄プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄ユニットを有する処理装置において、
超音波洗浄ユニットは、被処理体に向けて超音波を照射するための超音波振動子を被処理体の配列方向に向けて走行可能に配設したことを特徴とする処理装置。
【請求項2】
前記超音波振動子は、洗浄槽の内部で被処理体を支持するための支持体に対して被処理体を挟んで反対側に配設したことを特徴とする請求項1に記載の処理装置。
【請求項3】
前記超音波振動子は、洗浄槽の上部に配設したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の処理装置。
【請求項4】
前記超音波振動子は、被処理体の表面に対して傾斜させて配設したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の処理装置。
【請求項5】
前記超音波振動子は、被処理体への超音波の照射角度を変更可能としたことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の処理装置。
【請求項6】
洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄装置において、
被処理体に向けて超音波を照射するための超音波振動子を被処理体の配列方向に向けて走行可能に配設したことを特徴とする超音波洗浄装置。
【請求項7】
前記超音波振動子は、洗浄槽の内部で被処理体を支持するための支持体に対して被処理体を挟んで反対側に配設したことを特徴とする請求項6に記載の超音波洗浄装置。
【請求項8】
前記超音波振動子は、洗浄槽の上部に配設したことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の超音波洗浄装置。
【請求項9】
前記超音波振動子は、被処理体の表面に対して傾斜させて配設したことを特徴とする請求項6〜請求項8のいずれかに記載の超音波洗浄装置。
【請求項10】
前記超音波振動子は、被処理体への超音波の照射角度を変更可能としたことを特徴とする請求項6〜請求項9のいずれかに記載の超音波洗浄装置。
【請求項11】
洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄方法において、
被処理体に向けて超音波を照射するための超音波振動子を被処理体の配列方向に向けて走行させることによって被処理体の洗浄処理を行うことを特徴とする超音波洗浄方法。
【請求項12】
前記洗浄槽の内部で被処理体を支持するための支持体に対して被処理体を挟んで反対側から超音波振動子によって超音波を被処理体に向けて照射することを特徴とする請求項11に記載の超音波洗浄方法。
【請求項13】
前記超音波振動子によって超音波を被処理体の表面に対して傾斜状に照射することを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の超音波洗浄方法。
【請求項14】
前記超音波振動子から被処理体への超音波の照射角度を変更しながら超音波を被処理体に照射することを特徴とする請求項11〜請求項13のいずれかに記載の超音波洗浄方法。
【請求項15】
洗浄槽に複数の被処理体を配列させた状態で浸漬するとともに、被処理体に向けて超音波を照射して被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄装置に対して洗浄処理を実行させるための超音波洗浄プログラムにおいて、
被処理体に向けて超音波を照射するための超音波振動子を被処理体の配列方向に向けて走行させることによって被処理体の洗浄処理を行う超音波洗浄ステップを有することを特徴とする超音波洗浄プログラム。
【請求項16】
前記超音波洗浄ステップは、洗浄槽の内部で被処理体を支持するための支持体に対して被処理体を挟んで反対側から超音波振動子によって超音波を被処理体に向けて照射することを特徴とする請求項15に記載の超音波洗浄プログラム。
【請求項17】
前記超音波洗浄ステップは、超音波振動子によって超音波を被処理体の表面に対して傾斜状に照射することを特徴とする請求項15又は請求項16に記載の超音波洗浄プログラム。
【請求項18】
前記超音波洗浄ステップは、超音波振動子から被処理体への超音波の照射角度を変更しながら超音波を被処理体に照射することを特徴とする請求項15〜請求項17のいずれかに記載の超音波洗浄プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−149744(P2007−149744A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338617(P2005−338617)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】