説明

処理装置

【課題】処理槽の被処理体が処理される処理領域内に流入する処理液の流量をより均一化することにより、処理槽内での液相処理をより均一に行うことができる処理装置等を提供する。
【解決手段】本発明に係る処理装置は、被処理体を第1開口から収容し、側面に第2開口を有する処理槽と、前記第2開口から前記処理槽内に延び、複数の第1の孔を有する配管と、前記被処理体が配置される領域と前記配管との間に位置し、第2の孔を有し、中央部分となる第1の部分と、前記第1の部分を囲む第2の部分とを有する板と、前記板と処理槽の底面との間の処理槽の側面を覆い、前記第2の部分の一部とオーバーラップする前記壁部と、を含み、前記第1の孔は、前記底面に向かうように配置され、前記配管から前記処理液が供給される場合に、前記第2の部分の前記壁部とオーバーラップしない部分には、前記第1の部分よりも高い第2の圧力がかかる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体デバイスの製造工程における半導体ウエハーに対するエッチング処理、めっき処理、洗浄処理などのウエットプロセスを行うための処理装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示されるように、このような処理装置は、半導体ウエハーなどの被処理体を収容する処理槽に処理液を供給する複数の吐出孔を備えた配管を有する。
【0004】
このような配管では、それぞれの吐出孔が、処理槽の底面に向かって処理液を吐出した後、処理液は、処理槽の側面に沿って上昇し、複数の孔を有する整流版によって、処理液の流入圧力が減圧される。
【0005】
このとき、処理液が処理槽の側面に沿って流れる場合、整流版の側面に近い領域における処理液の流入圧力は、整流版の中央領域における流入圧力よりも高くなる。つまりは、処理液の流入圧力の圧力分布には、不均一な圧力勾配が形成される。しかしながら、整流板は、複数の孔が設けられているのみの構造である。したがって、該整流板によって、処理槽の被処理体が処理される処理領域内に流入する処理液の流量の圧力分布を均一化することはできない。よって、処理槽において、エッチングやめっきなどの液相処理を均一に行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−56321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明のいくつかの態様によれば、処理槽の被処理体が処理される処理領域内に流入する処理液の流量をより均一化することにより、液相処理をより均一に行うことができる処理装置等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本形態に係る処理装置は、底面と、前記底面に連続する側面と、前記側面と連続する第1開口と、前記側面に位置する第2開口と、を有し、処理が行われる被処理体を前記第1開口から収容する処理槽と、前記第2開口から前記処理槽内に第1の方向に沿って延び、末端部および複数の第1の孔を有し、前記第1の孔から処理液を前記処理槽内に供給する配管と、前記被処理体が配置される領域と前記配管との間に位置することで、前記処理槽を、前記被処理体が処理される処理領域と前記配管が設けられる供給領域とに分割し、中央部分となる第1の部分であって、少なくとも1以上の第2の孔が形成される前記第1の部分と、前記第1の部分を囲む第2の部分とを有する板と、前記板と前記底面との間の前記側面を覆うように位置し、前記第2の部分の一部とオーバーラップする前記壁部と、を含み、前記第1の孔は、前記配管において、前記底面に向かって前記処理液を吐出するように配置され、前記配管から前記処理液が供給される場合に、前記板の前記第1の部分には、第1の圧力がかかり、前記第2の部分の前記壁部とオーバーラップしない部分には、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力がかかる。
【0009】
本発明によれば、処理槽の被処理体が処理される処理領域内に流入する処理液の流量をより均一化することにより、処理槽内での液相処理をより均一に行うことができる処理装置を提供することができる。
【0010】
(2)本形態に係る処理装置は、底面と、前記底面に連続する側面と、前記側面と連続する第1開口と、前記側面に位置する第2開口と、を有し、処理が行われる被処理体を前記第1開口から収容する処理槽と、前記第2開口から前記処理槽内に第1の方向に沿って延び、末端部および複数の第1の孔を有し、前記第1の孔から処理液を前記処理槽内に供給する配管と、前記被処理体が配置される領域と前記配管との間に位置することで、前記処理槽を、前記被処理体が処理される処理領域と前記配管が設けられる供給領域とに分割し、中央部分である第1の部分であって、少なくとも1以上の第2の孔が形成される前記第1の部分と、前記第1の部分を囲む第2の部分とを有する板と、を含み、前記第1の孔は、前記配管において、前記底面に向かって前記処理液を吐出するように配置され、前記配管から前記処理液が供給される場合に、前記板の前記第1の部分には、第1の圧力がかかり、前記第2の部分には、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力がかかる。
【0011】
本発明によれば、処理槽の被処理体が処理される処理領域内に流入する処理液の流量をより均一化することにより、処理槽内での液相処理をより均一に行うことができる処理装置を提供することができる。
【0012】
(3)本形態に係る処理装置において前記第2の部分の前記壁部とオーバーラップしない部分の長さであって、前記第1の方向と直交する第2の方向における長さをL1とし、前記第2の圧力は、前記壁部に近い程、圧力が高くなる圧力勾配を有し、前記長さL1は、前記第2の領域が、前記圧力勾配が形成される領域とオーバーラップするように決定されてもよい。
【0013】
(4)本形態に係る処理装置において、前記第2の部分の長さであって、前記第1の方向と直交する第2の方向における長さをL1とし、前記第2の圧力は、前記側面に近い程、圧力が高くなる圧力勾配を有し、前記長さL1は、前記第2の部分が、前記圧力勾配が形成される領域とオーバーラップするように決定されてもよい。
【0014】
(5)本形態に係る処理装置において、前記壁部から前記配管の前記第2の方向における中心位置までの長さをL2とし、前記処理液の粘度を0.01Pa・s以下とした場合、前記長さL1は、L1≦0.35L2を満たしてもよい。
【0015】
(6)本形態に係る処理装置において、前記側面から前記配管の前記第2の方向における中心位置までの長さをL2とし、前記処理液の粘度を0.01Pa・s以下とした場合、前記長さL1は、L1≦0.35L2を満たしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る処理装置を模式的に説明する図。
【図2】本実施形態に係る処理装置を模式的に説明する図。
【図3】本実施形態に係る処理装置を模式的に説明する図。
【図4】本実施形態に係る処理装置の変形例を模式的に説明する図。
【図5】本実施形態に係る処理装置の変形例を模式的に説明する図。
【図6】本実施形態に係る処理装置の変形例を模式的に説明する図。
【図7】シミュレーション結果を示す流体の圧力分布と流速分布。
【図8】シミュレーション結果を示す流体の圧力分布と流速分布。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態のみに限定されるものではない。本発明は、以下の実施の形態および変形例を自由に組み合わせたものを含むものとする。
【0018】
1. 処理装置
以下、図面を参照して、本実施の形態に係る処理装置について説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る処理装置100を模式的に説明する断面図である。図2は、図1のII−II線における断面図、図3は、図1のIII−III線における断面図である。
【0020】
なお、図1においては、図示されないウエハーキャリアなどによって保持された半導体ウエハー120が、純水、薬液(エッチャントや洗浄液)、またはめっき液などの処理液110によって液相処理されている状態における処理装置100を模式的に示す。
【0021】
本実施の形態に係る処理装置100は、図1に示すように、処理槽10と、配管20と、板30と、壁部40と、を含む。
【0022】
処理槽10は、図1に示すように、底面11と、底面11に連続する側面12と、側面12と連続する第1開口13と、側面12に位置する第2開口14と、を有する。言い換えれば、処理槽10は、底面11と側面12が内面を構成する凹部を有する。
【0023】
底面11および側面12の形状は、半導体ウエハーなどの被処理を処理槽10内に収容することができる限り特に限定されない。ここで、図1に示すように、被処理体を設ける領域を、処理領域16とする。処理槽10内に供給された処理液110は、第1開口13から処理槽10外へ排出される。
【0024】
処理槽10の材質としては、使用される処理液110と反応性が低いものを好適に選択する。例えば、石英ガラス、フッ素樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)、SUS(ステンレス鋼)などが挙げられる。また、処理槽10としてフッ素樹脂を用いる場合、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)などを用いてもよい。
【0025】
第2開口14が側面12に設けられる位置は、第1開口13から収容された被処理体が液相処理される処理領域16を上方に確保することができる限り、特に限定されない。また、図示はしないが、側面12には、複数の第2開口14が設けられていてもよい。
【0026】
配管20は、図2に示すように、第2開口14から処理槽10内に第1の方向(図示の例では、X軸方向)に沿って延び、末端部23および複数の第1の孔21を有し、第1の孔21から処理液110を処理槽10内に供給する。したがって、外部から配管20に供給された処理液110は、第1の孔21から処理槽10内に流入する。ここで、図1に示すように、配管20が延び、処理液110が供給される領域を、供給領域17とする。供給領域17と、処理領域16は、後述される板30によって区画される。末端部23は、配管20の配管経路の長さ(流路の長さ)において、第1開口14からの長さが最大となる部分である。
【0027】
図1に示すように、複数の第1の孔21は、底面11に向かって処理液110を吐出するように配置される。言い換えれば、複数の第1の孔21は、底面11側を向くように、配管20に設けられる。より具体的には、配管20の延びる方向(図示の例ではX軸方向)における中心Cを通り、底面11と水平な断面線II−IIよりも底面11側の配管20において、第1の孔21は配置される。これによれば、供給領域17において、配管20から処理槽10内に供給される処理液110は、まず底面11に向かって流れため、主に底面11に沿った流れとなることができる。なお、複数の第1の孔21が設けられる間隔またその個数は、特に限定されない。
【0028】
配管20の材質としては、使用される処理液110と反応性が低い材質を好適に選択する。例えば、石英ガラス、フッ素樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)、SUS(ステンレス鋼)などが挙げられる。また、処理槽10としてフッ素樹脂を用いる場合、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)などを用いてもよい。
【0029】
図2に示すように、配管20は、処理槽100外に設けられた液体供給装置200から処理液110を処理装置100に導入する部分である。配管20は、第2開口14において、液体供給装置200からの液体供給配管210と連続した配管であってもよい。ここで、液体供給装置200は、純水や薬液などの処理液を所定の圧力で供給することができる装置であって、例えば、処理液用タンクやポンプなどを備える。
【0030】
板30は、図1に示すように、処理領域16と配管20との間に位置することで、処理槽10を、処理領域16と、供給領域17と、に分割し、少なくとも1以上の第2の孔33が形成される第1の部分33aを有する。ここで、板30の供給領域17側の面を第1の面31とし、処理領域16側の面を第2の面32とする。
【0031】
第1の部分33aは、図1および図3に示すように、板30の中央部分である。第1の部分33aの形状は、特に限定されず、図3に示すように矩形であってもよいし、略円形であってもよい(図示せず)。また、図1および図3に示すように、第1の部分33aを囲む領域を第2の部分33bとする。言い換えれば、第2の部分33bは、第2の孔33が形成されない領域である。
【0032】
板30の材質としては、使用される処理液との反応性が低い材質を好適に選択する。例えば、石英ガラス、フッ素樹脂、PVC(ポリ塩化ビニル)、SUS(ステンレス鋼)などが挙げられる。また、処理槽10としてフッ素樹脂を用いる場合、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)などを用いてもよい。
【0033】
壁部40は、図1および図2に示すように、板30と底面11との間の側面12を覆うように位置し、第2の部分33bの一部とオーバーラップする(図示の例で、斜線で示す部分)。言い換えれば、第2の部分33bは、図1および図3に示すように、壁部40とオーバーラップしない第3の部分35を有する。また、図1に示すように、壁部40は、内面41を有する。壁部40の形状は特に限定されず、例えば、図2に示すように、側面12を一定の厚みW1で連続して覆う形状であってもよい。本実施形態に係る処理装置100において、壁部40を備えることにより、処理領域16に供給される処理液110の全体としての流入圧力をあげることができる。
【0034】
以上により、本実施形態に係る処理装置100の供給領域17が区画される。
【0035】
ここで、供給領域17では、配管20から処理液が供給される場合に、板30の第1の部分33aには、第1の圧力P1がかかり、第2の部分33bの壁部40とオーバーラップしない部分(第3の部分35)には、第1の圧力P1よりも高い第2の圧力P2がかかるように、板30は設計される。以下に詳細を説明する。
【0036】
図1および図3に示すように、第2の部分33bの壁部40とオーバーラップしない部分(第3の部分35)の長さであって、第1の方向(図示の例ではX軸方向)と直交する第2の方向(図示の例ではY軸方向)における長さをL1とする。上述のように、供給領域17に供給された処理液110は、底面11と、底面11と連続する壁部40の側面41において、最も大きな流入圧力(最大の流量)を有するように流れる。したがって、側面41と連続する面である第3の部分35には、壁部40に近い程、圧力が高くなる圧力勾配を有した第2の圧力がかかる。第3の部分35は、側面41と直交する第1の面31を有するため、処理液110は、第3の部分35において減圧された後、第2の孔33を介して処理領域16に流入する。第3の部分35は、処理液110の流入圧力勾配を実質的に減圧することができる長さL1となるように設定される。
【0037】
より具体的には、処理液110の粘度などの物性データを実際に使用される材料から決定し、供給領域17における圧力分布を求めるシミュレーションを行うことで、壁部40に近い程、圧力が高くなる圧力勾配を有した第2の圧力が発生する領域を算出することができる。例えば、処理液100の粘度を0.01Pa・s以下とし、壁部40から配管20の第2の方向(図示の例ではY軸方向)における中心位置Cまでの長さをL2とした場合、第3の部分35の長さL1は、L1≦0.35L2を満たすように設定されてもよい。
【0038】
本実施の形態に係る処理装置100は、例えば、以下の特徴を有する。
【0039】
本実施の形態に係る処理装置100は、配管20から処理液110が供給される場合に、板30の第1の部分33aには、第1の圧力P1がかかり、第2の部分33bの壁部40とオーバーラップしない部分(第3の部分35)には、第1の圧力P1よりも高い第2の圧力P2がかかる。これによれば、底面11と連続する壁部40の側面41において、最も大きな流入圧力(最大の流量)を有するように流れる処理液110を、第3の部分35において減圧することができる。したがって、処理槽10の被処理体が処理される処理領域16内に流入する処理液110の流量をより均一化することにより、処理槽10内での液相処理をより均一に行うことができる処理装置100を提供することができる。
【0040】
例えば、処理装置100は、処理液110としてエッチャントを用いるウェットエッチング装置であってもよい。これによれば、半導体ウエハーなどの被処理体を均一にエッチングすることができるエッチング装置を提供することができる。
【0041】
また、例えば、処理装置100は、処理液110として純水などの洗浄水を用いる洗浄装置であってもよい。これによれば、半導体ウエハーなどの被処理体を均一に効率よく洗浄することができる洗浄装置を提供することができる。
【0042】
また、例えば、処理装置100は、処理液110として純水などのめっき液を用いるめっき装置であってもよい。これによれば、半導体ウエハーなどの被処理体に均一な金属膜を形成することができるめっき装置を提供することができる。
【0043】
2. 変形例
なお、本実施形態に係る処理装置100は、上記において説明したものに限られない。以下において、本実施形態係る処理装置100の変形例について、図面を参照しながら説明する。
【0044】
図4は、変形例に係る処理装置101を説明する断面図である。図5は、図4のV−V線における断面図であり、図6は、図4のVI−VI線における断面図である。
【0045】
本変形例に係る処理装置101は、壁部40が形成されない点において、本実施形態に係る処理装置100と異なる。以下、変形例に係る処理装置101において、本実施形態に係る処理装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
図4および図5に示すように、変形例に係る処理装置101においては、壁部40が形成されない。したがって、本実施形態の係る処理装置100と同様に、板130が、第1の部分133aと、第2の部分133bとを有する。したがって、変形例に係る処理装置101においては、第3の部分35が形成されず、第2の部分133bが、本実施形態の係る処理装置100の第3の部分35と同様の構成となる。
【0047】
具体的には、配管20から供給される処理液110は、図1に示すように、供給領域17に供給された処理液110は、底面11と、底面11と連続する側面12において、最も大きな流入圧力(最大の流量)を有するように流れる。したがって、板130の第1の部分133aには、第1の圧力P1がかかり、第2の部分33bには、第1の圧力P1よりも高い第2の圧力P2がかかる。より具体的には、側面12と連続する面である第2の部分133bには、側面12に近い程、圧力が高くなる圧力勾配を有した第2の圧力P2がかかる。したがって、第2の部分133bの長さL1´は、第2の部分133bが、圧力勾配が形成される領域とオーバーラップするように決定される。第2の部分133bは、側面12と直交する第1の面131を有するため、処理液110は、第2の部分133bにおいて減圧された後、第2の孔133を介して処理領域16に流入する。第2の部分133bは、処理液110の流入圧力勾配を実質的に減圧することができる長さL1となるように設定される。
【0048】
本変形例に係る処理装置101は、例えば、以下の特徴を有する。
【0049】
本変形例に係る処理装置101は、底面11と連続する側面12において、最も大きな流入圧力(最大の流量)を有するように流れる処理液110を、第2の部分133bにおいて減圧することができる。したがって、処理槽10の被処理体が処理される処理領域16内に流入する処理液110の流量をより均一化することにより、処理槽10内での液相処理をより均一に行うことができる処理装置101を提供することができる。
【0050】
3. シミュレーション例
次に、シミュレーション例について説明する。図7および図8は、比較例に係るシミュレーション結果を示す図であり、第3の部分35が設けられていない形態を有した処理装置の供給領域における流体の圧力分布(上図)と、流速分布(下図)を示す。図7は、流体の粘度が0.001[Pa・s]である場合のシミュレーション結果であり、図8は、流体の粘度が0.01[Pa・s]である場合のシミュレーション結果である。図7および図8の流体の圧力分布(上図)では、グレースケールの濃淡で圧力分布を示す。具体的には、濃いグレー部分ほど、圧力が高いことを意味する。また、図7および図8の流体の流速分布(下図)では、矢印で流速分布を示す。具体的には、矢印が集中し、グレースケールが濃くなっている部分ほど、速度が速いことを意味する。
【0051】
本シミュレーションでは、供給される流体の流量を12[L/min]、流体の密度を1559Kg/mであると設定した。また、板30に設けられる第2の孔33の孔径は5Φと設定した。更に、乱流モデルとして、k-ε乱流モデルとk-ω乱流モデルのハイブリッドモデルを採用した。なお、本シミュレーションにおいて、本実施形態に係る処理装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0052】
以上の条件の下、本シミュレーションを実施した。以下に、その結果を、図面を用いて説明する。
【0053】
図7に示すように、第1の部分33aの側面41に近いほど、圧力が高い領域Aが形成された。また、流速分布においても、領域Aにおいて、高い流速が確認された。つまりは、配管20から供給された流体は、主に、底面11と側面41とに沿って流れ、第1の部分33aの側面41に近い部分で、壁部40に近い程、圧力が高くなる圧力勾配を有した第2の圧力P2が発生する領域Aが形成されていることが確認された。
【0054】
図8に示すように、流体の粘度が大きくなった場合であっても、図7と同様に、領域Aが確認された。
【0055】
図7に示すように、第2の圧力P2が発生する領域Aの側面41からの長さL1は、24mmであった。また、図8に示すように、第2の圧力P2が発生する領域Aの側面41からの長さL1は、37mmであった。ここで、図7に示すように、壁部40から配管20の中心位置までの長さをL2は、105mmである。これによれば、流体の粘度を0.001[Pa・s]であった場合、第3の部分35の長さL1は、L1≦0.23L2であればよいことが確認された。また、流体の粘度を0.01[Pa・s]であった場合、第3の部分35の長さL1は、L1≦0.35L2であればよいことが確認された。
【0056】
上記のように、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0057】
10 処理槽、11 底面、12 側面、13 第1開口、14 第2開口、
16 処理領域、17 供給領域、20 配管、21 第1の孔、23 末端部、
30 板、31 第1の面、32 第2の面、33 第2の孔、33a 第1の部分、
33b 第2の部分、40 壁部、41 側面、100 処理装置、110 処理液、
120 被処理体(半導体ウエハー)、200 液体供給装置、210 液体供給配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面と、前記底面に連続する側面と、前記側面に連続する第1開口と、前記側面に位置する第2開口と、を有し、被処理体を前記第1開口から収容する処理槽と、
前記第2開口から前記処理槽内に第1の方向に沿って延び、末端部および複数の第1の孔を有し、前記第1の孔から処理液を前記処理槽内に供給する配管と、
前記被処理体が配置される領域と、前記配管と、の間に位置することで、前記処理槽を、前記被処理体が処理される処理領域と、前記配管が設けられる供給領域と、に分割し、中央部分となる第1の部分であって、少なくとも1以上の第2の孔が形成される前記第1の部分と、前記第1の部分を囲む第2の部分と、を有する板と、
前記板と前記底面との間の前記側面を覆うように位置し、前記第2の部分の一部とオーバーラップする前記壁部と、
を含み、
前記第1の孔は、前記配管において、前記底面に向かって前記処理液を吐出するように配置され、
前記配管から前記処理液が供給される場合に、前記板の前記第1の部分には、第1の圧力がかかり、前記第2の部分の前記壁部とオーバーラップしない部分には、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力がかかる、処理装置。
【請求項2】
底面と、前記底面に連続する側面と、前記側面と連続する第1開口と、前記側面に位置する第2開口と、を有し、被処理体を前記第1開口から収容する処理槽と、
前記第2開口から前記処理槽内に第1の方向に沿って延び、末端部および複数の第1の孔を有し、前記第1の孔から処理液を前記処理槽内に供給する配管と、
前記被処理体が配置される領域と、前記配管と、の間に位置することで、前記処理槽を、前記被処理体が処理される処理領域と、前記配管が設けられる供給領域と、に分割し、中央部分となる第1の部分であって、少なくとも1以上の第2の孔が形成される前記第1の部分と、前記第1の部分を囲む第2の部分と、を有する板と、
を含み、
前記第1の孔は、前記配管において、前記底面に向かって前記処理液を吐出するように配置され、
前記配管から前記処理液が供給される場合に、前記板の前記第1の部分には、第1の圧力がかかり、前記第2の部分には、前記第1の圧力よりも高い第2の圧力がかかる、処理装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記第2の部分の前記壁部とオーバーラップしない部分の長さであって、前記第1の方向と直交する第2の方向における長さをL1とし、
前記第2の圧力は、前記壁部に近い程、圧力が高くなる圧力勾配を有し、
前記長さL1は、前記第2の領域が、前記圧力勾配が形成される領域とオーバーラップするように決定される、処理装置。
【請求項4】
請求項2において、
前記第2の部分の長さであって、前記第1の方向と直交する第2の方向における長さをL1とし、
前記第2の圧力は、前記側面に近い程、圧力が高くなる圧力勾配を有し、
前記長さL1は、前記第2の部分が、前記圧力勾配が形成される領域とオーバーラップするように決定される、処理装置。
【請求項5】
請求項3において、
前記壁部から前記配管の前記第2の方向における中心位置までの長さをL2とし、
前記処理液の粘度を0.01Pa・s以下とした場合、
前記長さL1は、L1≦0.35L2を満たす、処理装置。
【請求項6】
請求項4において、
前記側面から前記配管の前記第2の方向における中心位置までの長さをL2とし、
前記処理液の粘度を0.01Pa・s以下とした場合、
前記長さL1は、L1≦0.35L2を満たす、処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−199491(P2012−199491A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64030(P2011−64030)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】