説明

凹凸パターン形成方法、情報記録媒体製造方法および樹脂材料硬化処理装置

【課題】凹凸パターンの形成面に汚れや傷付きが生じる事態を回避する。
【解決手段】エネルギー線硬化型の樹脂材料17を塗布すると共にA1凹凸パターン40aが形成されたAスタンパー30AをA面10aに貼り付け、B1凹凸パターン40bが形成されたBスタンパー30BをB面10bに貼り付けるスタンパー貼付け処理と、エネルギー線を照射して材料17を硬化させる樹脂材料硬化処理と、材料17からスタンパー30A,30Bを剥離するスタンパー剥離処理とを実行して、凹凸パターン40a,40bと凹凸位置関係が反転するA2凹凸パターン50aおよびB2凹凸パターン50bを両材料17に形成する際に、材料17の硬化率がA面10aおよびB面10bにおいて相違するように、エネルギー線の照射量、照射するエネルギー線の種類、および塗布する材料17の種類のうちの少なくとも1つをA面10aおよびB面10bにおいて相違させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材のA面およびB面に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成方法、形成した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する情報記録媒体製造方法、並びに、凹凸パターンの形成時に樹脂材料を硬化させる樹脂材料硬化処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2005−153091号公報には、シリコンウエハ上にポリスチレン樹脂膜が形成された基板にスタンパーを押し付けた後に剥離することによって、基板の一面にスタンパーの凹凸パターンを転写する転写装置(転写方法:凹凸パターン形成方法)が開示されている。この転写装置は、基板に対してスタンパーを押し付けるための位置合わせユニットおよび加圧ユニットや、基板からスタンパーを剥離する剥離ユニットなどを備えている。この転写装置を用いた凹凸パターンの転写処理に際しては、まず、位置合わせユニットによって互いに位置合わせした状態で密着させたスタンパーおよび基板を加圧ユニットまで搬送し、真空チャンバ内で所定温度まで加熱しつつ基板およびスタンパーを加圧(押し付け)する。続いて、加圧が完了した基板およびスタンパーを冷却した後に、その状態の基板およびスタンパーを剥離ユニットまで搬送して、吸着ステージおよび吸着ヘッドの間にセットする。
【0003】
次いで、基板の裏面(スタンパーに貼り付いている面の反対側の面)を吸着するようにして、吸着ステージに基板を固定すると共に、吸着ステージに配設された剥離用楔の先端を基板とスタンパーとの界面に挿入する。続いて、ヘッド支持板を下降させてスタンパーの裏面(基板に貼り付いている面の反対側の面)に吸着ヘッドを当接させ、その状態において、スタンパーの裏面を吸着するようにして、吸着ヘッド(ヘッド支持板)にスタンパーを固定すると共に、ヘッド支持板に配設された剥離用楔の先端を基板とスタンパーとの界面に挿入する。この状態において、吸着ステージに対してヘッド支持板を1〜10度程傾けることによって、吸着ステージに固定されている基板からヘッド支持板に固定されているスタンパーを剥離する。これにより、スタンパーの凹凸パターンが基板に転写されて、一連の転写処理が完了する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−153091号公報(第11−13頁、第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来の転写装置には、以下の問題点がある。すなわち、従来の転写装置では、基板からスタンパーを剥離する際に、基板の裏面を吸着するようにして吸着ステージに基板を固定すると共に、スタンパーの裏面を吸着するようにして吸着ヘッド(ヘッド支持板)にスタンパーを固定した状態において、吸着ステージおよび吸着ヘッドを相互に離間させることによって基板からスタンパーを剥離する構成が採用されている。一方、出願人は、基材の表裏両面に凹凸パターンによってサーボパターンやデータトラックパターンを形成したパターンド媒体(ディスクリートトラック媒体)を開発している。このパターンド媒体の製造時(凹凸パターンの形成時)に上記の転写装置におけるスタンパー剥離ユニットと同様の構成を採用した装置を用いて中間体からスタンパーを剥離したときには、中間体における凹凸パターンの形成面(スタンパーの凹凸パターンを転写した面)に油脂や塵埃が付着したり(以下、このような状態を「汚れが生じる」ともいう)、中間体が落下して凹凸パターンの形成面に傷付きが生じたりするという問題が生じる。
【0006】
具体的には、パターンド媒体の製造に際しては、まず、パターンド媒体を製造するための中間体10x(図5参照)におけるA面10aおよびB面10bに例えば紫外線硬化型の樹脂材料17を塗布した後に、凹凸パターン形成用のスタンパー30A,30B(図5参照)をA面10aおよびB面10bにそれぞれ押し付けた状態において樹脂材料17に紫外線を照射して硬化させる。次いで、複数の吸着パッド82を有するスタンパー保持部72a,72bを備えたスタンパー剥離装置8(図6参照)を用いて、中間体10xのA面10aからスタンパー30Aを剥離する。この際には、図6に示すように、まず、各吸着パッド82によってスタンパー30Aの裏面(同図における下面)を吸着するようにしてスタンパー保持部72aにスタンパー30Aを保持させると共に、各吸着パッド82によってスタンパー30Bの裏面(同図における上面)を吸着するようにしてスタンパー保持部72bにスタンパー30Bを保持させる。次いで、一例として、スタンパー保持部72aに対してスタンパー保持部72bを矢印Bの向きで移動(上昇)させる。
【0007】
この際には、複数の吸着パッド82によってスタンパー30A,30Bの裏面が吸着されて保持されているため、中間体10xから引き剥がそうとする向きの力が、両スタンパー30A,30Bの全域に対して加わる。したがって、図15に実線で示すように、スタンパー30Bに中間体10xが密着した状態を維持しつつ、その中間体10xからスタンパー30Aを剥離しようとしているにも拘わらず、同図に一点鎖線で示すように、スタンパー30Aに中間体10xが密着したまま中間体10xがスタンパー30Bから剥離してしまうことがある。このため、一連の工程を自動化したときには、実際には、中間体10xが密着した状態であるにも拘わらず、中間体10xからの剥離が完了したとしてスタンパー30Aが所定の処理完了位置に積み重ねられてしまい、この際に、スタンパー30Aに密着している中間体10xにおける凹凸パターンの形成面に汚れや傷付きが生じるおそれがある。また、同図に破線で示すように、中間体10xからスタンパー30A,30Bの双方が剥離するおそれもあり、このような状態では、両スタンパー30A,30Bから剥離した中間体10xが、スタンパー剥離装置8から脱落して、凹凸パターンの形成面に汚れや傷付きが生じることとなる。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、凹凸パターンの形成面に汚れや傷付きが生じる事態を回避し得る凹凸パターン形成方法および樹脂材料硬化処理装置、並びに、形成した凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する情報記録媒体製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく本発明に係る凹凸パターン形成方法は、エネルギー線硬化型の樹脂材料を基材のA面およびB面に塗布すると共にA1凹凸パターンが形成されたAスタンパーを当該A面に貼り付け、かつB1凹凸パターンが形成されたBスタンパーを当該B面に貼り付けるスタンパー貼付け処理と、前記A面および前記B面にエネルギー線を照射して前記樹脂材料を硬化させる樹脂材料硬化処理と、前記A面において硬化させた前記樹脂材料から前記Aスタンパーを剥離すると共に前記B面において硬化させた前記樹脂材料から前記Bスタンパーを剥離するスタンパー剥離処理とを実行して、前記A面において硬化させた前記樹脂材料に前記A1凹凸パターンと凹凸位置関係が反転するA2凹凸パターンを当該A面に形成すると共に前記B面において硬化させた前記樹脂材料に前記B1凹凸パターンと凹凸位置関係が反転するB2凹凸パターンを当該B面に形成する際に、前記A面において硬化させた前記樹脂材料の前記スタンパー剥離処理前の硬化率と前記B面において硬化させた前記樹脂材料の当該スタンパー剥離処理前の硬化率とが相違するように、前記樹脂材料硬化処理時における前記樹脂材料に対する前記エネルギー線の照射量、前記樹脂材料硬化処理時に前記樹脂材料に対して照射する前記エネルギー線の種類、および前記スタンパー貼付け処理時に塗布する前記樹脂材料の種類のうちの少なくとも1つを前記A面および前記B面において相違させて前記A2凹凸パターンおよび前記B2凹凸パターンを形成する。
【0010】
なお、「樹脂材料に対して照射するエネルギー線の種類を相違させる」との処理は、「樹脂材料の硬化反応に寄与する波長成分を含む波長領域のスペクトルが互いに相違するエネルギー線を照射する」との処理を意味する。
【0011】
この場合、本発明に係る凹凸パターン形成方法は、前記エネルギー線の照射時間、前記エネルギー線の照射パワー、および前記エネルギー線の照射源と前記基材との間の距離のうちの少なくとも1つを前記A面および前記B面において相違させて当該エネルギー線の照射量を当該A面および当該B面において相違させる。
【0012】
また、本発明に係る凹凸パターン形成方法は、前記エネルギー線の照射源の種類を前記A面および前記B面において相違させて当該エネルギー線の種類を当該A面および当該B面において相違させる。
【0013】
また、本発明に係る凹凸パターン形成方法は、含有している重合開始剤の種類、および当該重合開始剤の含有量の少なくとも一方が相違する前記樹脂材料を使用して前記スタンパー貼付け処理時に塗布する当該樹脂材料の種類を前記A面および前記B面において相違させる。
【0014】
さらに、本発明に係る凹凸パターン形成方法は、前記スタンパー剥離処理の後に、少なくとも前記硬化率が低い前記樹脂材料に前記エネルギー線を照射する。
【0015】
また、本発明に係る情報記録媒体製造方法は、上記のいずれかの凹凸パターン形成方法によって形成した前記A2凹凸パターンおよび前記B2凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する。
【0016】
また、本発明に係る樹脂材料硬化処理装置は、エネルギー線硬化型の樹脂材料がA面およびB面に塗布されると共にAスタンパーが当該A面に貼り付けられ、かつBスタンパーが当該B面に貼り付けられた基材にエネルギー線を照射して当該樹脂材料を硬化させる樹脂材料硬化処理を実行する樹脂材料硬化処理装置であって、A照射源を備えて前記A面に前記エネルギー線を照射するA照射装置と、B照射源を備えて前記B面に前記エネルギー線を照射するB照射装置とを備え、当該両照射装置は、前記A面において硬化させた前記樹脂材料の硬化率と前記B面において硬化させた当該樹脂材料の硬化率とが相違するように、前記樹脂材料硬化処理時における前記A照射源と前記A面との間の距離A、および当該樹脂材料硬化処理時における前記B照射源と前記B面との間の距離Bが互いに相違する状態で配設されると共に、前記樹脂材料硬化処理時において、前記樹脂材料に対する前記エネルギー線の照射量を前記A面および前記B面において相違させて当該エネルギー線を照射する。
【0017】
また、本発明に係る樹脂材料硬化処理装置は、エネルギー線硬化型の樹脂材料がA面およびB面に塗布されると共にAスタンパーが当該A面に貼り付けられ、かつBスタンパーが当該B面に貼り付けられた基材にエネルギー線を照射して当該樹脂材料を硬化させる樹脂材料硬化処理を実行する樹脂材料硬化処理装置であって、A照射源を備えて前記A面に前記エネルギー線を照射するA照射装置と、B照射源を備えて前記B面に前記エネルギー線を照射するB照射装置とを備え、当該両照射装置は、前記A面において硬化させた前記樹脂材料の硬化率と前記B面において硬化させた当該樹脂材料の硬化率とが相違するように、互いに種類が相違する照射源で前記A照射源および前記B照射源が構成されると共に、前記樹脂材料硬化処理時において、前記樹脂材料に対して照射する前記エネルギー線の種類を前記A面および前記B面において相違させて当該エネルギー線を照射する。
【0018】
この場合、「種類が相違する照射源」には、「樹脂材料の硬化反応に寄与する波長成分を含む波長領域のスペクトルが互いに相違するエネルギー線を放射するエネルギー線源を備えて互いに種類が相違するエネルギー線を樹脂材料に対して照射可能に構成された照射源」だけでなく、「同種のスペクトルのエネルギー線を放射するエネルギー線源と、放射されたエネルギー線のスペクトルを異ならせるフィルタとを備え、エネルギー線源から放射したエネルギー線のスペクトルをフィルタによって変化させることによって互いに種類が相違するエネルギー線を樹脂材料に対して照射可能に構成された照射源」がこれに含まれる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る凹凸パターン形成方法では、基材のA面において硬化させた樹脂材料(基材のA面とAスタンパーとの間の樹脂材料)のスタンパー剥離処理前の硬化率と、基材のB面において硬化させた樹脂材料(基材のB面とBスタンパーとの間の樹脂材料)のスタンパー剥離処理前の硬化率とが相違するように、樹脂材料硬化処理時における樹脂材料に対するエネルギー線の照射量、樹脂材料硬化処理時に樹脂材料に対して照射するエネルギー線の種類、およびスタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類のうちの少なくとも1つをA面およびB面において相違させて、A面において硬化させた樹脂材料にAスタンパーのA1凹凸パターンと凹凸位置関係が反転するA2凹凸パターンを形成すると共に、B面において硬化させた樹脂材料にBスタンパーのB1凹凸パターンと凹凸位置関係が反転するB2凹凸パターンを形成する。
【0020】
したがって、本発明に係る凹凸パターン形成方法によれば、先にスタンパーを剥離すべき面(例えばA面)の側に形成する樹脂材料の層の硬化率を、後にスタンパーを剥離すべき面(この例では、B面)の側に形成する樹脂材料の層の硬化率よりも低くすることで、スタンパー剥離処理時において、後に剥離すべきスタンパー(この例では、Bスタンパー)が先に剥離すべきスタンパー(この例では、Aスタンパー)よりも先に基材から剥離する事態を招くことなく、AスタンパーおよびBスタンパーを所望の順序で基材から剥離することができる。これにより、この凹凸パターン形成方法によれば、スタンパー剥離処理時において、先に剥離すべきAスタンパーに基材が貼り付いたままAスタンパーと共に処理完了位置に搬送されて積み重ねられたり、AスタンパーおよびBスタンパーの双方が基材から同時に剥離して基材が脱落したりする事態を回避することができるため、基材におけるA2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンの形成面に汚れや傷付きが生じる事態を回避することができる。
【0021】
また、本発明に係る凹凸パターン形成方法によれば、エネルギー線の照射時間、エネルギー線の照射パワー、およびエネルギー線の照射源と基材との間の距離のうちの少なくとも1つをA面およびB面において相違させてエネルギー線の照射量をA面およびB面において相違させることにより、先にスタンパーを剥離すべき面(一例として、A面)の側に形成する樹脂材料の層の硬化率を、後にスタンパーを剥離すべき面(この例では、B面)の側に形成する樹脂材料の層の硬化率よりも確実かつ容易に低くすることができるという第1の効果を奏することができる。これにより、この凹凸パターン形成方法によれば、先に剥離すべきスタンパー(この例では、Aスタンパー)を、後に剥離すべきスタンパー(この例では、Bスタンパー)よりも先に確実に剥離することができるため、基材におけるA2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンの形成面に汚れや傷付きが生じる事態を確実に回避することができるという第2の効果を奏することができる。
【0022】
また、本発明に係る凹凸パターン形成方法によれば、エネルギー線の照射源の種類をA面およびB面において相違させてエネルギー線の種類をA面およびB面において相違させることにより、上記の凹凸パターン形成方法と同様にして、上記の第1の効果および第2の効果を奏することができる。
【0023】
また、本発明に係る凹凸パターン形成方法によれば、含有している重合開始剤の種類、および重合開始剤の含有量の少なくとも一方が相違する樹脂材料を使用してスタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類をA面およびB面において相違させることにより、上記の凹凸パターン形成方法と同様にして、上記の第1の効果および第2の効果を奏することができる。
【0024】
さらに、本発明に係る凹凸パターン形成方法によれば、スタンパー剥離処理の後に、少なくとも硬化率が低い樹脂材料にエネルギー線を照射することにより、先にスタンパーを剥離した面(一例として、A面)の側の樹脂材料の層、および後にスタンパーを剥離した面(この例では、B面)の側の樹脂材料の層の双方において、エッチング処理等を好適に実施し得る十分な硬化率のA2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンを得ることができる。
【0025】
また、本発明に係る情報記録媒体製造方法によれば、上記のいずれかに記載の凹凸パターン形成方法によって形成したA2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造することにより、汚れや傷付きが生じることなく、A2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンが高精度で形成されているため、このA2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンに対応して情報記録媒体に凹凸パターンを高精度で形成することができる。
【0026】
また、本発明に係る樹脂材料硬化処理装置によれば、A面において硬化させた樹脂材料(基材のA面とAスタンパーとの間の樹脂材料)の硬化率と、B面において硬化させた樹脂材料(基材のB面とBスタンパーとの間の樹脂材料)の硬化率とが相違するように、樹脂材料硬化処理時におけるA照射源とA面との間の距離A、および樹脂材料硬化処理時におけるB照射源とB面との間の距離Bが互いに相違する状態でA照射装置およびB照射装置が配設されると共に、樹脂材料硬化処理時において、樹脂材料に対するエネルギー線の照射量をA面およびB面において相違させてエネルギー線を照射して樹脂材料を硬化させる樹脂材料硬化処理を実行することにより、先にスタンパーを剥離すべき面(一例として、A面)の側に形成する樹脂材料の層の硬化率を、後にスタンパーを剥離すべき面(この例では、B面)の側に形成する樹脂材料の層の硬化率よりも低くすることで、後に剥離すべきスタンパー(この例では、Bスタンパー)が先に剥離すべきスタンパー(この例では、Aスタンパー)よりも先に基材から剥離する事態を招くことなく、AスタンパーおよびBスタンパーを所望の順序で基材から剥離することができる。これにより、この樹脂材料硬化処理装置によれば、スタンパー剥離処理時において、先に剥離すべきAスタンパーに基材が貼り付いたままAスタンパーと共に処理完了位置に搬送されて積み重ねられたり、AスタンパーおよびBスタンパーが基材から同時に剥離して基材が脱落したりする事態を回避することができるため、基材におけるA2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンの形成面に汚れや傷付きが生じる事態を回避することができる。
【0027】
また、本発明に係る樹脂材料硬化処理装置によれば、A面において硬化させた樹脂材料(基材のA面とAスタンパーとの間の樹脂材料)の硬化率と、B面において硬化させた樹脂材料(基材のB面とBスタンパーとの間の樹脂材料)の硬化率とが相違するように、A照射装置のA照射源とB照射装置のB照射源とが、互いに種類が相違する照射源で構成されると共に、樹脂材料硬化処理時において、樹脂材料に対して照射するエネルギー線の種類をA面およびB面において相違させてエネルギー線を照射して樹脂材料を硬化させる樹脂材料硬化処理を実行することにより、上記の樹脂材料硬化処理装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】磁気記録媒体製造システム1の構成を示す構成図である。
【図2】紫外線照射装置7の構成を示す構成図である。
【図3】スタンパー剥離装置8の構成を示す構成図である。
【図4】磁気ディスク10の断面図である。
【図5】磁気ディスク10を製造するための中間体10xおよびスタンパー30A,30Bの断面図である。
【図6】スタンパー保持部72aによってスタンパー30Aを保持すると共にスタンパー保持部72bによってスタンパー30Bを保持した状態のスタンパー剥離装置8、中間体10xおよびスタンパー30A,30Bの断面図である。
【図7】スタンパー保持部72aに対してスタンパー保持部72bを離間させることで中間体10xからスタンパー30Aを剥離した状態のスタンパー剥離装置8、中間体10xおよびスタンパー30A,30Bの断面図である。
【図8】スタンパー剥離装置8の中間体保持部73を下側(中間体10xにおけるA面10aの側)から見た平面図である。
【図9】スタンパー保持部72bによってスタンパー30Bを保持すると共に中間体保持部73によって中間体10xを保持した状態のスタンパー剥離装置8、中間体10xおよびスタンパー30Bの断面図である。
【図10】中間体10xからのスタンパー30Bの剥離が完了した状態のスタンパー剥離装置8、中間体10xおよびスタンパー30Bの断面図である。
【図11】実施例1〜7の各試料の樹脂材料の層の硬化率と、スタンパーの剥離結果との関係について説明するための説明図である。
【図12】比較例1〜7の各試料の樹脂材料の層の硬化率と、スタンパーの剥離結果との関係について説明するための説明図である。
【図13】図11,12における「硬化率」の算出方法について説明するための説明図である。
【図14】剥離抵抗測定装置8zの構成を示す構成図である。
【図15】スタンパー保持部72aに対してスタンパー保持部72bを離間させた状態のスタンパー剥離装置8、中間体10xおよびスタンパー30A,30Bの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る凹凸パターン形成方法、情報記録媒体製造方法および樹脂材料硬化処理装置の実施の形態について説明する。
【0030】
最初に、磁気記録媒体製造システム1の構成について、図面を参照して説明する。
【0031】
図1に示す磁気記録媒体製造システム1は、図4に示す磁気ディスク10(情報記録媒体の一例)を製造可能に構成された製造システムであって、マスクパターン形成システム2およびエッチング装置3を備えている。この場合、磁気ディスク10は、図示しない制御装置、磁気ヘッドおよびモータ等と共に筐体内に収容されてハードディスクドライブ(記録再生装置)を構成するディスクリートトラック媒体(パターンド媒体の一例)であって、後述するように、図5に示す中間体10xおよびスタンパー30A,30Bを使用して製造される。また、磁気ディスク10は、図4に示すように、軟磁性層12、中間層13および磁性層14がガラス基板11のA面11aおよびB面11bにこの順でそれぞれ形成されて、一例として、垂直記録方式による記録データの記録が可能に構成されている。なお、本明細書において参照する各図では、本発明についての理解を容易とするために、各層の厚みの比率を実際の比率とは相違する比率で図示している。
【0032】
この磁気ディスク10では、一例として、突端部側が磁性材料(磁性層14)で形成された複数の凸部21と、隣り合う凸部21の間の凹部22とが形成されて、データトラックパターンやサーボパターンを構成する凹凸パターン20a,20bが形成されている。さらに、凹凸パターン20a,20bの各凹部22内には、SiO、C(炭素)、Si、Ge、非磁性金属材料および樹脂材料等の非磁性材料15が埋め込まれ、これにより、磁気ディスク10の表裏両面がそれぞれ平坦化されている。また、この磁気ディスク10では、各凹部22内に埋め込まれた(隣り合う凸部21,21の間に埋め込まれた)非磁性材料15、および磁性層14(凸部21)の表面を覆うようにして、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)等によって保護層16(DLC膜)が形成されている。さらに、保護層16の表面には、磁気ヘッドおよび磁気ディスク10の双方の傷付きを回避するための潤滑剤(一例として、フッ素系の潤滑剤)が塗布されている。
【0033】
また、この磁気ディスク10を製造するための中間体10x(「基材」の一例)は、図5に示すように、軟磁性層12、中間層13および磁性層14がガラス基板11のA面11aおよびB面11bにこの順でそれぞれ形成されて、直径が48mm程度で、全体としての厚みが0.6mm程度となるように形成されている。また、図8に示すように、中間体10xの中心部には、完成状態においてモータの回転軸を挿通させるための中心孔Hが形成されている。
【0034】
ガラス基板11は、ガラス板を表面研磨して円板状に形成されている。なお、中間体10x(磁気ディスク10)に使用する基板は、ガラス基板に限定されず、アルミニウムやセラミックなどの各種非磁性材料で円板状に形成した基材を使用することができる。軟磁性層12は、CoFeNb合金などの軟磁性材料をスパッタリングすることによって厚みが30nm〜200nm程度の薄膜状に形成されている。中間層13は、磁性層14を形成するための下地層として機能する層であって、Ru、CrおよびCoCr非磁性合金などの中間層形成用材料をスパッタリングすることによって厚みが20〜40nm程度の薄膜状に形成されている。磁性層14は、前述した凹凸パターン20a,20b(凸部21の先端部側)を構成する層であって、例えばCoCrPt合金をスパッタリングして形成した厚み10〜30nm程度の層に対してエッチング処理を実行することによって中間層13に達する深さの各凹部22が形成されている。
【0035】
この中間体10xは、後述するようにして、樹脂材料17の塗布、スタンパー30A,30Bの貼り付け、樹脂材料17の層への紫外線の照射(樹脂材料17の層の硬化処理)、およびスタンパー30A,30Bの剥離がこの順で実行されることにより、図5に破線で示すように、磁性層14に上記の各凹部22を形成するための凹凸パターン50a(マスクパターン:「A2凹凸パターン」の一例)および凹凸パターン50b(マスクパターン:「B2凹凸パターン」の一例)が形成されたマスク層(樹脂材料17の層)が形成される。この場合、樹脂材料17の層は、紫外線硬化型の樹脂材料(「エネルギー線硬化型の樹脂材料」の一例:例えば、アクリル樹脂)によって厚みが10nm〜80nm程度の薄膜状に形成される。
【0036】
スタンパー30Aは、Aスタンパーに相当し、一例として、光透過性を有する樹脂材料によって、直径80mm程度で厚み0.6mm程度の円板状に形成されている。このスタンパー30Aは、図5に示すように、磁気ディスク10における凹凸パターン20aの各凹部22に対応する複数の凸部41と、凹凸パターン20aの各凸部21に対応する複数の凹部42とが形成されて、凹凸パターン20aとは凹凸位置関係が反転する凹凸パターン40a(「A1凹凸パターン」の一例)が形成されている。また、スタンパー30Bは、Bスタンパーに相当し、上記のスタンパー30Aと同様にして、一例として、光透過性を有する樹脂材料によって、直径80mm程度で厚み0.6mm程度の円板状に形成されている。このスタンパー30Bは、磁気ディスク10における凹凸パターン20bの各凹部22に対応する複数の凸部41と、凹凸パターン20bの各凸部21に対応する複数の凹部42とが形成されて、凹凸パターン20bとは凹凸位置関係が反転する凹凸パターン40b(「B1凹凸パターン」の一例)が形成されている。この場合、スタンパー30A,30Bは、一例として、公知の製造方法に従って製造した金属スタンパーを用いた射出成形によって形成されている。なお、金属スタンパーの製造方法や、射出成形による樹脂スタンパー(スタンパー30A,30B)の製造方法については公知のため、その説明を省略する。
【0037】
一方、マスクパターン形成システム2は、ナノインプリント法(インプリント処理)によって中間体10xのA面10aおよびB面10bに上記の凹凸パターン50a,50b(エッチング処理用のマスクパターン)を形成するシステムであって、図1に示すように、樹脂材料塗布装置5、スタンパー貼付け装置6、紫外線照射装置7およびスタンパー剥離装置8を備えて構成されている。樹脂材料塗布装置5は、スタンパー貼付け装置6と相俟って「スタンパー貼付け処理」を実行する装置であって、一例として、スピンコート法によって中間体10xのA面10aおよびB面10bに樹脂材料17をそれぞれ塗布する。スタンパー貼付け装置6は、樹脂材料塗布装置5による樹脂材料17の塗布処理が完了した中間体10xのA面10aにスタンパー30Aを貼り付けると共にB面10bにスタンパー30Bを貼り付ける。
【0038】
紫外線照射装置7は、「樹脂材料硬化処理装置」の一例であって、スタンパー30A,30Bの貼り付けが完了した中間体10x(以下の説明においては、中間体10xおよびスタンパー30A,30Bが一体化したものを積層体100ともいう)に紫外線(「エネルギー線」の一例)を照射することにより、スタンパー30A,30Bを透過した紫外線によって樹脂材料17の層を硬化させる(「樹脂材料硬化処理」の実行)。具体的には、図2に示すように、紫外線照射装置7は、搬送装置61、光源62a,62bおよび制御部63を備えて構成されている。
【0039】
搬送装置61は、制御部63の制御に従って上記の積層体100を光源62a,62bによる紫外線Ba,Bbの照射処理位置に搬送する。光源62aは、「A照射源」に相当し、この紫外線照射装置7では、一例として、高圧水銀ランプを備えて構成されて、搬送装置61によって照射処理位置に搬送された積層体100における中間体10xのA面10a(A面10aに塗布された樹脂材料17の層)に対してスタンパー30Aを透過させて紫外線Baを含む光(以下、「紫外線Baを含む光」について、単に「紫外線Ba」ともいう)を照射する。光源62bは、「B照射源」に相当し、上記の光源62aと同様にして高圧水銀ランプを備えて構成されて、搬送装置61によって照射処理位置に搬送された積層体100における中間体10xのB面10b(B面10bに塗布された樹脂材料17の層)に対してスタンパー30Bを透過させて紫外線Bbを含む光(以下、「紫外線Bbを含む光」について、単に「紫外線Bb」ともいう)を照射する。
【0040】
この場合、この紫外線照射装置7では、「A照射装置」および「B照射装置」が一体的に構成されて積層体100の両面に対して紫外線Ba,Bbを同時に照射することができるように構成されている。また、この紫外線照射装置7では、照射処理位置に搬送された積層体100と光源62aとの間の距離La(積層体100における中間体10xのA面10aと光源62aとの間の距離:「距離A」)が、照射処理位置に搬送された積層体100と光源62bとの間の距離Lb(積層体100における中間体10xのB面10bと光源62bとの間の距離:「距離B」)よりも長くなるように光源62a,62bが取り付けられている。具体的には、この紫外線照射装置7では、一例として、上記の距離Laが90mmで、上記の距離Lbが60mmとなるように光源62a,62bがそれぞれ配置されている(「距離Aおよび距離Bが互いに相違する状態で配設され」との状態の一例)。この結果、後述するようにしてA面10aおよびB面10bに向けて同じ出力で点灯させた光源62a,62bから紫外線Ba,Bbを同じ時間に亘って照射したときに、B面10bに塗布されている樹脂材料17の層に対する紫外線Bbの照射量よりも、A面10aに塗布されている樹脂材料17の層に対する紫外線Baの照射量の方が少量となる。制御部63は、搬送装置61による積層体100の搬送、および光源62a,62bの点灯/消灯を制御する。
【0041】
スタンパー剥離装置8は、中間体10xからスタンパー30A,30Bを剥離するスタンパー剥離処理を実行する。このスタンパー剥離装置8は、図3に示すように、移動機構71、スタンパー保持部72a,72b、中間体保持部73および制御部74を備えている。移動機構71は、制御部74の制御に従って、スタンパー保持部72aに対してスタンパー保持部72bを離間させることにより、スタンパー30Bに貼り付いている中間体10xのA面10aからスタンパー保持部72aによって保持されているスタンパー30Aを剥離する。なお、以下の説明においては、スタンパー30Aが剥離したもの(スタンパー30BがB面10bに貼り付いて中間体10xおよびスタンパー30Bが一体化しているもの)を積層体100aともいう。また、移動機構71は、制御部74の制御に従って、中間体保持部73に対してスタンパー保持部72bを離間させることにより、中間体保持部73によって保持されている中間体10xのB面10bからスタンパー30Bを剥離する。
【0042】
スタンパー保持部72a,72bは、図6,7に示すように、ベース部81に複数の吸着パッド82が配設されて、各吸着パッド82によってスタンパー30A,30Bの裏面に接して(スタンパー30A,30Bの裏面を吸着して)スタンパー30A,30Bを保持する。なお、各吸着パッド82は、図示しないエアポンプに接続されて、このエアポンプが作動することによってスタンパー30A,30Bを吸着するように構成されている。中間体保持部73は、図8に示すように、積層体100aの中間体10xからスタンパー30Bを剥離する際に、中間体10xを挟持するようにして保持可能に構成されている。具体的には、中間体保持部73は、中間体10xの外周面(中間体10xの厚み方向に沿った面の一例)に4カ所で接して中間体10xを挟持するための4つの保持用爪部92と、この保持用爪部92を矢印Aの向き(中間体10xの中心部(中心孔H)に向かう向き)およびその反対向きに移動させる移動機構(アクチュエータ等:図示せず)とを備えている。この場合、図8に示すように、各保持用爪部92の接触面92aは、中間体10xの外形に合わせて平面視円弧状となるように湾曲させられている。
【0043】
制御部74は、スタンパー剥離装置8を総括的に制御する。具体的には、制御部74は、上記のエアポンプを制御して両スタンパー保持部72a,72bにスタンパー30A,30Bを保持させる(吸着させる)と共に、図7に示すように、移動機構71を制御してスタンパー保持部72bを移動させることで中間体10xからスタンパー30Aを剥離する。また、制御部74は、中間体保持部73の移動機構を制御して、保持用爪部92を移動させて中間体10xを保持させると共に、図10に示すように、移動機構71を制御してスタンパー保持部72bを移動させることで中間体10xからスタンパー30Bを剥離する。この場合、このスタンパー剥離装置8では、制御部74が、各保持用爪部92の接触面92a(中間体10xに接する面)を中間体10xの外周面に対して予め規定された一定の接触圧で接触させて、その接触圧が一定となるように上記の移動機構による各保持用爪部92の移動量を調整する構成が採用されている。
【0044】
一方、エッチング装置3は、スタンパー剥離装置8によってスタンパー30A,30Bの剥離処理が完了した中間体10x(両樹脂材料17の層にマスクパターンとしての凹凸パターン50a,50bが形成された中間体10x)を対象とする酸素プラズマ処理を実行することによって、マスクパターンにおける各凹部の底面に残存する樹脂材料(残渣)を除去してマスクパターンにおける凹部の底面において樹脂材料17から磁性層14の表面を露出させた後に、残渣の取り除きが完了した中間体10xを対象とするエッチング処理を実行することによって、両磁性層14に凹凸パターン20a,20bをそれぞれ形成する。なお、磁気記録媒体製造システム1は、実際には、エッチング装置3によって磁性層14に凹凸パターン20a,20bが形成された中間体10xに非磁性材料15の層を形成する装置、非磁性材料15のエッチングして中間体10xの表面を平坦化する装置、および保護層16を形成する装置などの各種装置を備えているが、これらについての図示を省略する。
【0045】
次に、磁気記録媒体製造システム1による磁気ディスク10の製造方法について、主として、マスクパターン形成システム2によるマスクパターン(凹凸パターン50a,50b)の形成処理を中心にして説明する。
【0046】
磁気ディスク10の製造に際しては、まず、マスクパターン形成システム2によって中間体10xのA面10a(A面10aに形成した樹脂材料17の層)およびB面10b(B面10bに形成した樹脂材料17の層)にスタンパー30A,30Bの凹凸パターン40a,40bを転写してエッチング処理用のマスクパターン(凹凸パターン50a,50b:図5参照)を形成する。なお、中間体10xやスタンパー30A,30Bの製造は既に完了しているものとする。
【0047】
このマスクパターンの形成に際しては、まず、樹脂材料塗布装置5およびスタンパー貼付け装置6を使用して中間体10xのA面10aおよびB面10bにスタンパー30A,30Bをそれぞれ貼り付けるスタンパー貼付け処理を実行する。具体的には、図5に一点鎖線で示すように、樹脂材料塗布装置5によって中間体10xのA面10aおよびB面10bに樹脂材料17をスピンコートする。次いで、スタンパー貼付け装置6によって中間体10xにスタンパー30A,30Bを貼り付ける。この際に、スタンパー貼付け装置6は、一例として、スタンパー30Aの裏面を吸着してスタンパー30Aを保持すると共に、中間体10xのA面10aに塗布した樹脂材料17の層に凹凸パターン40aの形成面を密着させるようにして中間体10xにスタンパー30Aを貼り付ける。また、スタンパー貼付け装置6は、スタンパー30Bの裏面を吸着してスタンパー30Bを保持すると共に、中間体10xのB面10bに塗布した樹脂材料17の層に凹凸パターン40bの形成面を密着させるようにして中間体10xにスタンパー30Bを貼り付ける。これにより、中間体10xおよびスタンパー30A,30Bが樹脂材料17の層を挟んで密着した状態となり、スタンパー貼付け処理が完了する。
【0048】
次いで、スタンパー30A,30Bの貼り付けが完了した中間体10xに対して紫外線照射処理を実行することにより、中間体10xとスタンパー30Aとの間の樹脂材料17の層(A面10aに塗布した樹脂材料17の層)、および中間体10xとスタンパー30Bとの間の樹脂材料17の層(B面10bに塗布した樹脂材料17の層)をそれぞれ硬化させる(樹脂材料硬化処理の実行)。具体的には、スタンパー30A,30Bの貼り付けが完了した中間体10xを紫外線照射装置7の搬送装置61にセットした状態において紫外線照射処理(樹脂材料硬化処理)を開始させる。この際には、制御部63が搬送装置61を制御して中間体10xを照射処理位置(中間体10xのA面10aが光源62aと対向し、中間体10xのB面10bが光源62bと対向する位置)に移動させる。また、制御部63は、光源62a,62bを制御して中間体10xに対して紫外線Ba,Bbを照射させる。この際に、スタンパー30A,30Bが光透過性を有する材料で形成されているため、光源62aから放射された紫外線Baがスタンパー30Aを透過して中間体10xのA面10aとスタンパー30Aとの間の樹脂材料17の層に照射されると共に、光源62bから放射された紫外線Bbがスタンパー30Bを透過して中間体10xのB面10bとスタンパー30Bとの間の樹脂材料17の層に照射される。
【0049】
また、前述したように、この紫外線照射装置7では、上記の照射処理位置に配置された状態の中間体10xにおけるA面10aと光源62aとの間の距離Laが、B面10bと光源62bとの間の距離Lbよりも長くなるように(距離Lbが距離Laよりも短くなるように)光源62a,62bが取り付けられている。したがって、同じ出力で点灯させた光源62a,62bから中間体10xに対して同じ時間に亘って紫外線Ba,Bbを照射したときに、A面10aとスタンパー30Aとの間の樹脂材料17の層に対して照射された(A面10aとスタンパー30Aとの間の樹脂材料17の層が受光した)紫外線Baの量(以下、この量を「照射量」ともいう)が、B面10bとスタンパー30Bとの間の樹脂材料17の層に対する紫外線Bbの照射量よりも少量となる。したがって、A面10aとスタンパー30Aとの間の樹脂材料17の層、およびB面10bとスタンパー30Bとの間の樹脂材料17の層において、紫外線Ba,Bbの照射量に応じた重合反応が生じる結果、A面10aとスタンパー30Aとの間の樹脂材料17の層の硬化率がB面10bとスタンパー30Bとの間の樹脂材料17の層の硬化率よりも低い状態で両樹脂材料17の層が硬化させられる。
【0050】
これにより、スタンパー30Aにおける凹凸パターン40aの各凸部41が中間体10xのA面10aにおいて樹脂材料17の層に押し込まれた状態で樹脂材料17の層が硬化すると共に、スタンパー30Bにおける凹凸パターン40bの各凸部41が中間体10xのB面10bにおいて樹脂材料17の層に押し込まれた状態で樹脂材料17の層が硬化し、スタンパー30A,30Bが中間体10xと一体化して積層体100が製造される。以上により、紫外線照射処理(樹脂材料硬化処理)が完了する。
【0051】
次いで、積層体100の中間体10xからスタンパー30A,30Bをそれぞれ剥離するスタンパー剥離処理を実行する。具体的には、処理の開始を指示されたときに、制御部74は、スタンパー保持部72aにおける各吸着パッド82を積層体100におけるスタンパー30Aの裏面(中間体10xのA面10aに貼り付いている面の反対側の面)に当接させると共に、エアポンプを制御してスタンパー30Aを各吸着パッド82に吸着させる(スタンパー30Aを保持させる)。また、制御部74は、移動機構71を制御してスタンパー保持部72aによって保持されている積層体100に向けてスタンパー保持部72bを移動(この例では、下降)させ、スタンパー保持部72bにおける各吸着パッド82を積層体100におけるスタンパー30Bの裏面(中間体10xのB面10bに貼り付いている面の反対側の面)に当接させると共に、エアポンプを制御してスタンパー30Bを各吸着パッド82に吸着させる(スタンパー30Bを保持させる)。これにより、図6に示すように、スタンパー保持部72a,72bによるスタンパー30A,30Bの保持が完了する。なお、スタンパー30A,30Bの保持順序に関しては、スタンパー保持部72bによってスタンパー30Bを保持した後にスタンパー保持部72aによってスタンパー30Aを保持してもよい。
【0052】
続いて、制御部74は、スタンパー保持部72a,72bによってスタンパー30A,30Bを保持させた状態を維持しつつ、移動機構71を制御してスタンパー保持部72bを矢印Bの向き(スタンパー保持部72aから離間する向き)に移動させる(スタンパー保持部72bを上昇させる)。この場合、このスタンパー剥離処理の前工程で実行した樹脂材料硬化処理時には、中間体10xにおけるA面10a側の樹脂材料17の層に対する紫外線Baの照射量をB面10b側の樹脂材料17の層に対する紫外線Bbの照射量よりも少量とすることによってA面10a側の樹脂材料17の層の硬化率がB面10b側の樹脂材料17の層の硬化率よりも低い状態となっている。したがって、スタンパー30A,30Bをそれぞれ剥離させようとする力が積層体100に対して同時に加えられたときには、図7に示すように、硬化率が高いB面10b側の樹脂材料17の層からスタンパー30Bが剥離することなく、硬化率が低いA面10a側の樹脂材料17の層からスタンパー30Aが剥離する。これにより、スタンパー30Bに貼り付いた状態の中間体10x(積層体100)からのスタンパー30Aの剥離処理が完了する。なお、積層体100(中間体10x)からの剥離が完了したスタンパー30Aは、図示しない搬送機構によってスタンパー保持部72aによる保持位置から処理完了位置に搬送される。
【0053】
次いで、制御部74は、スタンパー保持部72bにスタンパー30B(積層体100a)を保持させた状態を維持しつつ、移動機構71を制御して、スタンパー保持部72bを中間体保持部73の上方まで移動させる。この際に、中間体保持部73の各保持用爪部92は、図8に破線で示す位置に移動させられている。続いて、制御部74は、移動機構71を制御することにより、各保持用爪部92における接触面92aと中間体10xの外周面とが対向する位置までスタンパー保持部72を下降させる。次いで、制御部74は、中間体保持部73における各移動機構を制御することにより、各保持用爪部92を図8に示す矢印Aの向き(中間体10xに対してその側方から接近する向き)でそれぞれ移動させる。この際には、図9に示すように、各保持用爪部92における接触面92aが中間体10xの外周面(中間体10xにおける厚み方向に沿った面)に対して予め規定された接触圧で接触させられて(4カ所で接して)、中間体10xが各保持用爪部92によって挟持されるようにして保持される。これにより、中間体保持部73による中間体10xの保持が完了する。この場合、中間体保持部73がA面10aに触れることなく中間体10xを保持するため、以後の剥離処理中に中間体10xのA面10aに汚れや傷付きが生じる事態が回避される。
【0054】
次いで、制御部74は、移動機構71を制御してスタンパー保持部72bを図9に示す矢印Bの向き(中間体保持部73から離間する向き)に移動させる(スタンパー保持部72bを上昇させる)。この際には、スタンパー保持部72bによって保持されたスタンパー30Bが矢印Bの向きに移動するのに伴って、中間体保持部73によって保持されている中間体10xからスタンパー30Bが剥離する。これにより、図10に示すように、中間体10xからのスタンパー30Bの剥離処理が完了する。なお、中間体10xからの剥離が完了したスタンパー30Bは、移動機構71によって処理完了位置に搬送される。
【0055】
このスタンパー30A,30Bの剥離処理が完了した状態においては、中間体10xのA面10aにスタンパー30Aの凹凸パターン40a(「A1凹凸パターン」の一例)と凹凸位置関係が反転したマスクパターン(中間体10xにおけるA面10a側の磁性層14をエッチング処理するためのエッチング処理用の凹凸パターン:「A2凹凸パターン」の一例)が形成されると共に、中間体10xのB面10bにスタンパー30Bの凹凸パターン40b(「B1凹凸パターン」の一例)と凹凸位置関係が反転したマスクパターン(中間体10xにおけるB面10b側の磁性層14をエッチング処理するためのエッチング処理用の凹凸パターン:「B2凹凸パターン」の一例)が形成される。具体的には、図5に示すように、スタンパー30Aにおける凹凸パターン40aの各凸部41に対応する複数の凹部52および凹凸パターン40aの各凹部42に対応する複数の凸部51が中間体10xにおけるA面10a側の樹脂材料17の層に形成されると共に、スタンパー30Bにおける凹凸パターン40bの各凸部41に対応する複数の凹部52および凹凸パターン40bの各凹部42に対応する複数の凸部51が中間体10xにおけるB面10b側の樹脂材料17の層に形成される。
【0056】
次いで、スタンパー30A,30Bの剥離が完了した中間体10xを紫外線照射装置7による照射処理位置に搬送し、一例として、中間体10xにおけるA面10aの側の樹脂材料17の層に対して紫外線Baを再び照射する。これにより、B面10bの側の樹脂材料17の層よりも紫外線の照射量を少量としたことに起因してB面10bの側の樹脂材料17の層よりも硬化率が低い状態となっていたA面10aの側の樹脂材料17の層が十分に硬化する。なお、スタンパー剥離処理後に実行する紫外線の照射に関しては、A面10aの側の樹脂材料17の層に対してだけでなく、A面10aの側の樹脂材料17の層およびB面10bの側の樹脂材料17の層の双方に対して実行してもよい。以上により、マスクパターン形成システム2によるマスクパターン(凹凸パターン)の形成処理が完了する。
【0057】
次いで、マスクパターン形成システム2によって形成した上記のマスクパターンを用いてエッチング装置3によって中間体10xをエッチング処理を開始する。具体的には、まず、中間体10xのA面10aおよびB面10b(両樹脂材料17の層)に対して例えば酸素プラズマ処理を実行することにより、両樹脂材料17の層に形成された凹凸パターン50a,50b(マスクパターン)における各凹部52の底面に残存する樹脂材料17(残渣)を除去して、凹凸パターン50a,50bにおける凹部52の底面において樹脂材料17の層から磁性層14を露出させる。
【0058】
次いで、凹凸パターン50a,50b(マスクパターン)が形成された両樹脂材料17の層(凹凸パターン50a,50bにおける各凸部51)をマスクとして用いて両磁性層14に対するエッチング処理を実行する。この際には、凹凸パターン50a,50bにおける各凹部52に対応して複数の凹部22が磁性層14に形成されると共に、凹凸パターン50a,50bにおける各凸部51に対応して複数の凸部21が磁性層14に形成される。これにより、複数の凸部21および複数の凹部22を有する凹凸パターン20a,20bによってデータトラックパターンおよびサーボパターンが中間層13の上(磁性層14)に形成される。続いて、各凸部21の上に残存している樹脂材料17の層をエッチング処理によって選択的に除去して各凸部21の突端面(磁性層14の表面)を露出させる。次いで、非磁性材料15としてのSiOをスパッタリングすることにより、凹凸パターン20a,20bの形成面を非磁性材料15でそれぞれ覆って非磁性材料15の層(図示せず)を形成する。
【0059】
続いて、磁性層14の上(各凸部21の上および各凹部22の上)の非磁性材料15の層に対してイオンビームエッチング処理を実行する。この際には、一例として、各凸部21における突端面が非磁性材料15から露出するまでイオンビームエッチング処理を継続する。これにより、中間体10xの表面が平坦化される。次いで、中間体10xの表面を覆うようにしてCVD法によってダイヤモンドライクカーボン(DLC)の薄膜を成膜することによって保護層16を形成する。この後、保護層16の表面にフッ素系の潤滑剤を平均厚さが例えば2nm程度となるように塗布することにより、図4に示すように、磁気ディスク10が完成する。
【0060】
このように、このマスクパターン形成システム2による凹凸パターン形成方法では、中間体10xのA面10aにおいて硬化させた樹脂材料17の層(中間体10xのA面10aとスタンパー30Aとの間の樹脂材料17の層)のスタンパー剥離処理前の硬化率と、中間体10xのB面10bにおいて硬化させた樹脂材料17の層(中間体10xのB面10bとスタンパー30Bとの間の樹脂材料17の層)のスタンパー剥離処理前の硬化率とが相違するように、樹脂材料硬化処理時における樹脂材料17の層に対する紫外線Ba,Bbの照射量、樹脂材料硬化処理時に樹脂材料17の層に対して照射する紫外線Ba,Bbの種類、およびスタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料17の種類のうちの少なくとも1つ(この例では、樹脂材料17の層に対する紫外線Ba,Bbの照射量)をA面10aおよびB面10bにおいて相違させて、A面10aにおいて硬化させた樹脂材料17の層にスタンパー30Aの凹凸パターン40aと凹凸位置関係が反転する凹凸パターン50aを形成すると共に、B面10bにおいて硬化させた樹脂材料17の層にスタンパー30Bの凹凸パターン40bと凹凸位置関係が反転する凹凸パターン50bを形成する。
【0061】
したがって、このマスクパターン形成システム2による凹凸パターン形成方法によれば、先にスタンパーを剥離すべき面(この例では、スタンパー30Aを貼り付けたA面10a)の側に形成する樹脂材料17の層の硬化率を、後にスタンパーを剥離すべき面(この例では、スタンパー30Bを貼り付けたB面10b)の側に形成する樹脂材料17の層の硬化率よりも低くすることで、スタンパー剥離処理時において、後に剥離すべきスタンパー30Bが先に剥離すべきスタンパー30Aよりも先に中間体10xから剥離する事態を招くことなく、スタンパー30A,30Bを所望の順序で中間体10xから剥離することができる。これにより、このマスクパターン形成システム2による凹凸パターン形成方法によれば、スタンパー剥離処理時において、先に剥離すべきスタンパー30Aに中間体10xが貼り付いたままスタンパー30Aと共に処理完了位置に搬送されて積み重ねられたり、スタンパー30A,30Bの双方が中間体10xから同時に剥離して中間体10xが脱落したりする事態を回避することができるため、中間体10xにおける凹凸パターン50a,50bの形成面に汚れや傷付きが生じる事態を回避することができる。
【0062】
また、このマスクパターン形成システム2による凹凸パターン形成方法によれば、紫外線Ba,Bbの照射時間、紫外線Ba,Bbの照射パワー、および紫外線Ba,Bbの照射源(光源62a,62b)と中間体10xとの間の距離のうちの少なくとも1つ(この例では、光源62a,62bと中間体10xとの間の距離La,Lb)をA面10aおよびB面10bにおいて相違させて紫外線Ba,Bbの照射量をA面10aおよびB面10bにおいて相違させることにより、先にスタンパーを剥離すべき面(この例では、スタンパー30Aを貼り付けたA面10a)の側に形成する樹脂材料17の層の硬化率を、後にスタンパーを剥離すべき面(この例では、スタンパー30Bを貼り付けたB面10b)の側に形成する樹脂材料17の層の硬化率よりも確実かつ容易に低くすることができる。これにより、このマスクパターン形成システム2による凹凸パターン形成方法によれば、先に剥離すべきスタンパー30Aを、後に剥離すべきスタンパー30Bよりも先に確実に剥離することができるため、中間体10xにおける凹凸パターン50a,50bの形成面に汚れや傷付きが生じる事態を確実に回避することができる。
【0063】
さらに、このマスクパターン形成システム2による凹凸パターン形成方法によれば、スタンパー剥離処理の後に、硬化率が低い樹脂材料17の層(この例では、中間体10xにおけるA面10a側の樹脂材料17の層)に紫外線Baを照射することにより、先にスタンパー30Aを剥離したA面10a側の樹脂材料17の層、および後にスタンパー30Bを剥離したB面10b側の樹脂材料17の層の双方において、エッチング処理を好適に実施し得る十分な硬化率の凹凸パターン50a,50b(マスクパターン)を得ることができる。
【0064】
また、このマスクパターン形成システム2における紫外線照射装置7によれば、A面10aにおいて硬化させた樹脂材料17の層(中間体10xのA面10aとスタンパー30Aとの間の樹脂材料17の層)の硬化率と、B面10bにおいて硬化させた樹脂材料17の層(中間体10xのB面10bとスタンパー30Bとの間の樹脂材料17の層)の硬化率とが相違するように、樹脂材料硬化処理時におけるA照射源とA面10aとの間の距離La、および樹脂材料硬化処理時におけるB照射源とB面10bとの間の距離Lbが互いに相違する状態で光源62a,62bが配設されると共に、樹脂材料硬化処理時において、樹脂材料17の層に対する紫外線Ba,Bbの照射量をA面10aおよびB面10bにおいて相違させて紫外線Ba,Bbを照射して樹脂材料17の層を硬化させる樹脂材料硬化処理を実行することにより、先にスタンパーを剥離すべき面(この例では、スタンパー30Aを貼り付けたA面10a)の側に形成する樹脂材料17の層の硬化率を、後にスタンパーを剥離すべき面(この例では、スタンパー30Bを貼り付けたB面10b)の側に形成する樹脂材料17の層の硬化率よりも低くすることで、後に剥離すべきスタンパー30Bが先に剥離すべきスタンパー30Aよりも先に中間体10xから剥離する事態を招くことなく、スタンパー30A,30Bを所望の順序で中間体10xから剥離することができる。これにより、この紫外線照射装置7によれば、スタンパー剥離装置8によるスタンパー剥離処理時において、先に剥離すべきスタンパー30Aに中間体10xが貼り付いたままスタンパー30Aと共に処理完了位置に搬送されて積み重ねられたり、スタンパー30A,30Bの双方が中間体10xから同時に剥離して中間体10xが脱落したりする事態を回避することができるため、中間体10xにおける凹凸パターン50a,50bの形成面に汚れや傷付きが生じる事態を回避することができる。
【0065】
また、この磁気記録媒体製造システム1による情報記録媒体製造方法によれば、マスクパターン形成システム2による凹凸パターン形成方法によって形成した凹凸パターン50aおよび凹凸パターン50bを用いて磁気ディスク10を製造することにより、汚れや傷付きが生じることなく、凹凸パターン50a,50bが高精度で形成されているため、この凹凸パターン50a,50bに対応して磁気ディスク10に凹凸パターン20a,20bを高精度で形成することができる。
【0066】
次いで、樹脂材料硬化処理時における樹脂材料に対するエネルギー線の照射量、樹脂材料硬化処理時に樹脂材料に対して照射するエネルギー線の種類、およびスタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類と、スタンパー剥離処理前の樹脂材料の硬化率と、スタンパー剥離処理時におけるAスタンパーおよびBスタンパーの剥離結果との関係について、実施例および比較例を挙げて説明する。
【0067】
前述した磁気ディスク10の製造に際しては、中間体10xのA面10aと光源62aとの間の距離Laが中間体10xのB面10bと光源62bとの間の距離Lbよりも長くなるように光源62a,62bを配設した紫外線照射装置7を用いて樹脂材料硬化処理を実行することにより、A面10a側の樹脂材料17に対する紫外線Baの照射量がB面10b側の樹脂材料17に対する紫外線Bbの照射量よりも少量となるように紫外線Ba,Bbを照射して樹脂材料硬化処理の完了時点(スタンパー剥離処理の開始前)におけるA面10a側の樹脂材料17の層の硬化率がB面10b側の樹脂材料17の層の硬化率よりも低くなるようにしている。これにより、上記したように、磁気ディスク10の製造に際しては、スタンパー剥離処理時に中間体10x(積層体100)からスタンパー30Aを剥離する際に、スタンパー30Aの剥離が完了する前にスタンパー30Bが中間体10xから剥離する事態が回避されている。
【0068】
一方、出願人は、上記の磁気ディスク10の製造方法において採用した凹凸パターン形成方法(「エネルギー線の照射源と基材との間の距離」をA面およびB面において相違させることによって「樹脂材料硬化処理時における樹脂材料に対するエネルギー線の照射量」をA面およびB面において相違させてA2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成方法)だけでなく、「エネルギー線の照射時間」または「エネルギー線の照射パワー」をA面およびB面において相違させることによって「樹脂材料硬化処理時における樹脂材料に対するエネルギー線の照射量」をA面およびB面において相違させてA2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成方法、「樹脂材料硬化処理時に樹脂材料に対して照射するエネルギー線の種類」をA面およびB面において相違させてA2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成方法、および「スタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類」をA面およびB面において相違させてA2凹凸パターンおよびB2凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成方法などを採用した場合においても、Aスタンパー(上記のスタンパー30Aに相当)の剥離が完了する前にBスタンパー(上記のスタンパー30Bに相当)が基板(上記の中間体10xに相当)から剥離する事態を好適に回避できるのを見出した。
【0069】
[実施例1]
スタンパー貼付け処理、樹脂材料硬化処理およびスタンパー剥離処理をこの順で実行して基材のA面およびB面にマスクパターンとしての凹凸パターンを形成した。この場合、スタンパー貼付け処理時には、アクリルオリゴマー、アクリルモノマーおよび重合開始剤を含んだ樹脂材料を基材のA面およびB面に塗布した。この際に、重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「IRGACURE907」を使用し、その含有量は、A面に塗布する樹脂材料およびB面に塗布する樹脂材料の双方とも0.1wt%とした(以下、この樹脂材料を「樹脂A」ともいう)。また、樹脂材料硬化処理時には、基材のA面およびB面の双方に対してウシオ電機社製の高圧水銀ランプ「UVL−5601H4−O」(以下、このランプを「ランプA」ともいう)を使用して紫外線を含む光を照射した(以下、「紫外線を含む光の照射」について、単に「紫外線の照射」ともいう)。この場合、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離を90mmとし、基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離を60mmとした状態において、両ランプAを5.6kWの出力で点灯させ、A面およびB面の双方に対して1秒間に亘って紫外線を照射して、A面側の樹脂材料(A面とAスタンパーとの間の樹脂材料の層)、およびB面側の樹脂材料(B面とBスタンパーとの間の樹脂材料の層)をそれぞれ硬化させた。
【0070】
[実施例2]
樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAの出力を1.6kWとし、基材のB面に対して紫外線を照射するランプAの出力を5.6kWとすると共に、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を90mmとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0071】
[実施例3]
樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAの出力を1.6kWとし、基材のB面に対して紫外線を照射するランプAの出力を5.6kWとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0072】
[実施例4]
樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を90mmとし、基材のA面に対して1秒間に亘って紫外線を照射すると共に、基材のB面に対して2秒間に亘って紫外線を照射した。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0073】
[実施例5]
樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対してウシオ電機社製のメタルハライドランプ「UVL−5601M4−O」(以下、このランプを「ランプB」ともいう)を使用して紫外線を照射すると共に、基材のB面に対してランプAを使用して紫外線を照射した(「樹脂材料の硬化反応に寄与する波長成分を含む波長領域のスペクトルが互いに相違するエネルギー線を放射するエネルギー線源を備えて互いに種類が相違するエネルギー線を樹脂材料に対して照射可能に構成されたA照射源およびB照射源を有する構成の一例)。この場合、基材のA面に対して紫外線を照射するランプBと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を60mmとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0074】
[実施例6]
スタンパー貼付け処理時において基材のA面に塗布する樹脂材料の種類を相違させた。具体的には、基材のA面に塗布する樹脂材料に含ませる重合開始剤の量を0.1wt%とし(A面に塗布する樹脂材料として樹脂Aを使用し)、B面に塗布する樹脂材料に含ませる重合開始剤(前述したチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「IRGACURE907」)の量を0.2wt%とした(以下、0.2wt%の重合開始剤を含ませた樹脂材料を「樹脂B」ともいう)。また、樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を90mmとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした(スタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類をA面およびB面において相違させる方法の一例であって、主成分(ベースとなる樹脂)の種類が同じで、重合開始剤の含有量が相違する樹脂材料を塗布する方法の例)。
【0075】
[実施例7]
スタンパー貼付け処理時において基材のA面に塗布する樹脂材料の種類を相違させた。具体的には、基材のA面に塗布する樹脂材料として、[実施例1]と同じアクリルオリゴマー、アクリルモノマーに、重合開始剤としてのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製の「IRGACURE651」を0.1wt%含ませた樹脂材料(以下、この樹脂材料を「樹脂C」ともいう)を使用し、基材のB面に塗布する樹脂材料として樹脂Aを使用した。なお、樹脂Aに含ませた重合開始剤の吸収ピークの波長が304nm付近であるのに対し、樹脂Bに含ませた重合開始剤の吸収ピークの波長が340nm付近となる。また、樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を90mmとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした(スタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類をA面およびB面において相違させる方法の一例であって、主成分(ベースとなる樹脂)の種類が同じで、重合開始剤の種類が相違する(吸収ピークの波長が相違する)樹脂材料を塗布する方法の例)。
【0076】
[比較例1]
樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を90mmとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0077】
[比較例2]
樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を60mmとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0078】
[比較例3]
樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を90mmとすると共に、両ランプAの出力をそれぞれ1.6kWとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0079】
[比較例4]
樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を90mmとし、A面およびB面の双方に対して2秒間に亘って紫外線を照射した。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0080】
[比較例5]
樹脂材料硬化処理時において、基材のA面およびB面の双方に対してランプBを用いて紫外線を照射した。この場合、基材のA面に対して紫外線を照射するランプBと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプBと基材のB面との間の距離の双方を60mmとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0081】
[比較例6]
スタンパー貼付け処理時において、基材のA面に塗布する樹脂材料、およびB面に塗布する樹脂材料としてそれぞれ樹脂Bを使用した。また、樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を90mmとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0082】
[比較例7]
スタンパー貼付け処理時において、基材のA面に塗布する樹脂材料、およびB面に塗布する樹脂材料としてそれぞれ樹脂Cを使用した。また、樹脂材料硬化処理時において、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAと基材のA面との間の距離、および基材のB面に対して紫外線を照射するランプAと基材のB面との間の距離の双方を90mmとした。また、その他の条件は[実施例1]と同様とした。
【0083】
上記の実施例1〜7および比較例1〜7について、樹脂材料硬化処理時におけるランプA(または、ランプB)の照度(mW/cm)、樹脂材料硬化処理時において樹脂材料の層に照射された紫外線の光量(mJ/cm)、樹脂材料硬化処理後の樹脂材料の硬化率(%)、スタンパー剥離処理時におけるAスタンパーおよびBスタンパーの剥離抵抗(kgf)、および、基材からAスタンパーが先に剥離したか否かの剥離結果を図11,12に示す。
【0084】
なお、照度(mW/cm)、および光量(mJ/cm)については、EIT社製の「Micro Cure」を使用して測定した。さらに、硬化率(%)については、バイオラッド(BIO−RAD)社製のFT−IR(フーリエ変換赤外分光光度計)(FTS−6000)を用いたATR法(全反射法)によって、樹脂材料の重合に寄与する2重結合に起因するピーク位置(一例として、ビニル基C−H面内変角振動に起因するピーク位置:波数=1410cm−1付近)における吸光度を測定し、測定した吸光度の紫外線の照射の前後におけるピーク強度の残存比に基づいて算出した。
【0085】
この場合、この種の測定装置を用いた吸光度の測定時には、測定処理の都度、ある程度の測定誤差が生じることがある。このため、図13に示すように、1枚の試料において紫外線照射前に測定した吸光度(破線)と、紫外線照射後に測定した吸光度(実線)とで、樹脂材料の硬化反応には直接的には関係のない結合に起因する吸光度のピーク位置(紫外線の照射前後において原理的には吸光度が殆ど変化することのないピーク位置:一例として、「C=O」伸縮振動に起因するピーク位置:波数=1730cm−1付近におけるピーク位置)における吸光度の値が互いに相違する値として測定されることがある。なお、同図では、一例として、実施例1の試料におけるA面についての紫外線照射前後の測定値を図示している。この場合、この種の樹脂材料では、紫外線照射前後(硬化処理前後)において、ピーク位置自体も僅かに変化することがある。具体的には、実施例1の試料では、例えば紫外線照射前(硬化処理前)の「C=O」伸縮振動に起因するピーク位置が1728cm−1であるのに対し、紫外線照射後(硬化処理後)の「C=O」伸縮振動に起因するピーク位置が1733cm−1となる。
【0086】
したがって、ピーク強度の残存比の算出に使用する吸光度については、測定処理毎の測定誤差の影響や、紫外線照射前後(硬化処理前後)におけるピーク位置自体の変化の影響を排除するために、測定処理によって得られた測定値における波数=1730cm−1付近におけるピーク強度(吸光度)からバックグラウンドノイズを差し引いた値と、波数=1410cm−1付近におけるピーク強度(吸光度)からバックグラウンドノイズを差し引いた値とに基づいて規格化した値を用いた。具体的には、各測定処理毎に、「波数=1410cm−1付近におけるピーク強度(吸光度)からバックグラウンドノイズを差し引いた値」を「波数=1730cm−1付近におけるピーク強度(吸光度)からバックグラウンドノイズを差し引いた値」で除した値を「ピーク強度の残存比の算出に使用する吸光度」として算出した。
【0087】
また、上記の「ピーク強度の残存比」は、「紫外線の照射後(硬化処理後)のピーク強度(規格化後の「波数=1410cm−1付近」における値)」を「紫外線の照射前(硬化処理前)のピーク強度(規格化後の「波数=1410cm−1付近」における値)」で除して算出した。さらに、硬化率(%)は、紫外線の照射前(硬化処理前)の硬化率を0%とする比率であって、「(1−残存比)×100」との式に基づいて算出した。具体的には、実施例1の試料におけるA面については、「紫外線の照射後のピーク強度」が「0.036999」で、「紫外線の照射前のピーク強度」が「0.318543」であるため、「ピーク強度の残存比」が「0.036999/0.318543≒0.116151」と算出される。したがって、実施例1の試料におけるA面の「硬化率(%)」は、「(1−0.116151)×100≒88.4」と算出される。
【0088】
また、剥離抵抗(kgf)については、実施例1〜7および比較例1〜7の各条件と同様の条件下で、各実施例および各比較例毎にA面側の樹脂材料の層およびB面側の樹脂材料の層をそれそれ形成した剥離抵抗測定用の試料を製作し、各剥離抵抗測定用の試料について、図14に示す剥離抵抗測定装置8zを使用して測定した。この場合、剥離抵抗測定装置8zは、一例として、前述した磁気記録媒体製造システム1(マスクパターン形成システム2)におけるスタンパー剥離装置8のスタンパー保持部72bおよび中間体保持部73と同様の構成によって各試料の基材およびスタンパーを保持する構成が採用されている。したがって、スタンパー剥離装置8におけるスタンパー保持部72bおよび中間体保持部73と同様の構成要素については、同一の符号を付して重複する説明を省略する。この剥離抵抗測定装置8zは、各試料の基材を中間体保持部73によって保持すると共に、各試料のスタンパーをスタンパー保持部72bによって保持し、その状態において、スタンパー保持部72bのベース部81に連結されたフォースゲージ87を移動機構71zによって引っ張るようにして移動させることにより、このフォースゲージ87によって剥離抵抗(剥離に要する引っ張り力)を測定する構成が採用されている。この場合、移動機構71zは、フォースゲージ87を直動させるリニアガイド86と、動力源としてのモータ85とを備えている。
【0089】
さらに、剥離結果については、各実施例および各比較例毎に10枚の試料を製作し、これらの試料についてスタンパー剥離処理を実行して、Aスタンパーが先に剥離した試料の枚数、Bスタンパーが先に剥離した試料の枚数、およびAB両スタンパーが同時に剥離した試料の枚数を調査した。その調査結果を図11,12に示す。
【0090】
図11に示すように、前述した磁気ディスク10の製造時に凹凸パターン50a,50bを形成した方法と同様の方法で凹凸パターンを形成した実施例1の試料(「エネルギー線の照射源と基材との間の距離」をA面およびB面において相違させてエネルギー線の照射量をA面およびB面において相違させる方法によって凹凸パターンを形成した例)では、B面側の樹脂材料の層の硬化率が93.4%となったのに対し、A面側の樹脂材料の層の硬化率が88.4%となり、A面側の樹脂材料の層がB面側の樹脂材料の層よりも5.0%だけ硬化率が低い状態となった。この結果、A面側の樹脂材料の層からAスタンパーを剥離する際の剥離抵抗が、B面側の樹脂材料の層からBスタンパーを剥離する際の剥離抵抗よりも0.9kgfだけ小さな値となり、結果として、10枚の試料のすべてにおいて、Bスタンパーよりも先にAスタンパーが剥離した。
【0091】
一方、実施例2の試料(「エネルギー線の照射パワー」をA面およびB面において相違させてエネルギー線の照射量をA面およびB面において相違させる方法によって凹凸パターンを形成した例)では、樹脂材料硬化処理時において基材のA面とランプAとの間の距離、および基材のB面とランプAとの間の距離を互いに等しい90mmとしているが、この実施例2の試料では、基材のA面に対して紫外線を照射するランプAの出力を基材のB面に対して紫外線を照射するランプAの出力よりも小さくしたことで、A面側の樹脂材料の層に照射された紫外線の光量がB面側の樹脂材料の層に照射された紫外線の光量よりも少量となっている。このため、実施例2の試料では、B面側の樹脂材料の層の硬化率が88.4%となったのに対し、A面側の樹脂材料の層の硬化率が84.1%となり、A面側の樹脂材料の層がB面側の樹脂材料の層よりも4.3%だけ硬化率が低い状態となった。この結果、A面側の樹脂材料の層からAスタンパーを剥離する際の剥離抵抗が、B面側の樹脂材料の層からBスタンパーを剥離する際の剥離抵抗よりも0.6kgfだけ小さな値となり、結果として、10枚の試料のすべてにおいて、Bスタンパーよりも先にAスタンパーが剥離した。
【0092】
また、実施例3の試料(「エネルギー線の照射源と基材との間の距離」および「エネルギー線の照射パワー」の双方をA面およびB面において相違させてエネルギー線の照射量をA面およびB面において相違させる方法によって凹凸パターンを形成した例)では、B面側の樹脂材料の層の硬化率が93.4%となったのに対し、A面側の樹脂材料の層の硬化率が84.1%となり、A面側の樹脂材料の層がB面側の樹脂材料の層よりも9.3%だけ硬化率が低い状態となった。この結果、A面側の樹脂材料の層からAスタンパーを剥離する際の剥離抵抗が、B面側の樹脂材料の層からBスタンパーを剥離する際の剥離抵抗よりも1.5kgfだけ小さな値となり、結果として、10枚の試料のすべてにおいて、Bスタンパーよりも先にAスタンパーが剥離した。
【0093】
また、実施例4の試料(「エネルギー線の照射時間」をA面およびB面において相違させてエネルギー線の照射量をA面およびB面において相違させる方法によって凹凸パターンを形成した例)では、樹脂材料硬化処理時においてA面側の樹脂材料の層に照射された紫外線の光量がB面側の樹脂材料の層に照射された紫外線の光量よりも少量(この例では、1/2)となっている。このため、実施例4の試料では、B面側の樹脂材料の層の硬化率が93.7%となったのに対し、A面側の樹脂材料の層の硬化率が88.4%となり、A面側の樹脂材料の層がB面側の樹脂材料の層よりも5.3%だけ硬化率が低い状態となった。この結果、A面側の樹脂材料の層からAスタンパーを剥離する際の剥離抵抗が、B面側の樹脂材料の層からBスタンパーを剥離する際の剥離抵抗よりも1.0kgfだけ小さな値となり、結果として、10枚の試料のすべてにおいて、Bスタンパーよりも先にAスタンパーが剥離した。
【0094】
さらに、実施例5の試料(「エネルギー線の照射源の種類」をA面およびB面において相違させて照射するエネルギー線の種類をA面およびB面において相違させる方法によって凹凸パターンを形成した例)では、樹脂材料硬化処理時においてランプBによってA面側の樹脂材料の層に照射された紫外線の光量と、ランプAによってB面側の樹脂材料の層に照射された紫外線の光量とがほぼ同量となっている。この場合、この実施例5の試料では、A面およびB面に対する紫外線照射時の光量がほぼ同量あったが、ランプBから放射される光の波長成分とランプAから放射される光の波長成分との相違に起因してランプBから放射される光による樹脂材料の硬化反応の進行がランプAから放射される光による樹脂材料の硬化反応の進行よりも遅く、これに起因して、B面側の樹脂材料の層の硬化率が93.4%となったのに対し、A面側の樹脂材料の層の硬化率が86.8%となり、A面側の樹脂材料の層がB面側の樹脂材料の層よりも6.6%だけ硬化率が低い状態となった。この結果、A面側の樹脂材料の層からAスタンパーを剥離する際の剥離抵抗が、B面側の樹脂材料の層からBスタンパーを剥離する際の剥離抵抗よりも1.3kgfだけ小さな値となり、結果として、10枚の試料のすべてにおいて、Bスタンパーよりも先にAスタンパーが剥離した。
【0095】
なお、A面およびB面の双方に同種のエネルギー線を放射するエネルギー線源(例えば、上記の「ランプA」)を配設すると共に、一例として、A面側に配設したエネルギー線源と試料との間に、樹脂材料の硬化反応に寄与する波長成分を減衰させるフィルタを配設することにより、試料のA面側およびB面側に互いに種類が相違するエネルギー線(例えば紫外線)を照射することもできる(同種のエネルギー線を放射するエネルギー線源と、放射されたエネルギー線の種類を異ならせるフィルタとを備え、エネルギー線源から放射したエネルギー線のスペクトルをフィルタによって変化させることによって互いに種類が相違するエネルギー線を樹脂材料に対して照射可能に構成されたA照射源およびB照射源を有する構成の一例)。このような構成の装置を使用した場合においても、A面側のA照射源(エネルギー線源およびフィルタ)から放射されるエネルギー線において樹脂材料の硬化反応に寄与する波長成分がフィルタによって減衰されているため、上記の実施例5の試料と同様にして、B面側の樹脂材料の硬化反応の進行がA面側の樹脂材料の硬化反応の進行よりも遅くなる結果、A面側の樹脂材料の層の硬化率がB面側の樹脂材料の層の硬化率よりも低い状態となる。この結果、A面側の樹脂材料の層からAスタンパーを剥離する際の剥離抵抗が、B面側の樹脂材料の層からBスタンパーを剥離する際の剥離抵抗よりも小さな値となり、結果として、Bスタンパーよりも先にAスタンパーが剥離することが出願人によって確認されている。
【0096】
また、実施例6の試料(主成分(ベースとなる樹脂)が同じで、重合開始剤の含有量をA面およびB面において相違させてスタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類をA面およびB面において相違させる方法によって凹凸パターンを形成した例)では、樹脂材料硬化処理時においてA面側の樹脂材料の層およびB面側の樹脂材料の層に対して照射した紫外線の光量がA面およびB面の双方において同量であるが、この実施例6の試料では、重合開始剤の含有量が多いB面側の樹脂材料(樹脂B)の層の硬化率が92.7%となったのに対し、重合開始剤の含有量が少ないA面側の樹脂材料(樹脂A)の層の硬化率が88.4%となり、A面側の樹脂材料の層がB面側の樹脂材料の層よりも4.3%だけ硬化率が低い状態となった。この結果、A面側の樹脂材料の層からAスタンパーを剥離する際の剥離抵抗が、B面側の樹脂材料の層からBスタンパーを剥離する際の剥離抵抗よりも0.6kgfだけ小さな値となり、結果として、10枚の試料のすべてにおいて、Bスタンパーよりも先にAスタンパーが剥離した。
【0097】
また、実施例7の試料(主成分(ベースとなる樹脂)が同じで、含ませる重合開始剤の種類をA面およびB面において相違させてスタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類をA面およびB面において相違させる方法によって凹凸パターンを形成した例)では、樹脂材料硬化処理時においてA面側の樹脂材料の層およびB面側の樹脂材料の層に対して照射した紫外線の光量がA面およびB面の双方において同量であるが、この実施例7の試料では、B面側の樹脂材料(樹脂A)の層の硬化率が88.4%となったのに対し、A面側の樹脂材料(樹脂C)の層の硬化率が83.2%となり、A面側の樹脂材料の層がB面側の樹脂材料の層よりも5.2%だけ硬化率が低い状態となった。この結果、A面側の樹脂材料の層からAスタンパーを剥離する際の剥離抵抗が、B面側の樹脂材料の層からBスタンパーを剥離する際の剥離抵抗よりも0.7kgfだけ小さな値となり、結果として、10枚の試料のすべてにおいて、Bスタンパーよりも先にAスタンパーが剥離した。
【0098】
これに対して、図12に示すように、樹脂材料硬化処理時におけるランプの種類、ランプ出力、およびランプと基材との間の距離や、スタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類(樹脂材料に含まれている重合開始剤の量、または、重合開始剤の種類)がA面およびB面の双方において互いに等しくなるように凹凸パターンを形成した比較例1〜7の試料では、樹脂材料硬化処理後の両樹脂材料の層の硬化率や、スタンパー剥離処理時におけるAB両スタンパーの剥離抵抗が基材のA面およびB面において互いに等しい値となった。このため、同図に示すように、比較例1〜7の試料では、10枚の試料のうちの4〜6枚においてBスタンパーよりもAスタンパーの方が先に剥離し、10枚の試料のうちの3〜5枚においてAスタンパーよりもBスタンパーの方が先に剥離すると共に、比較例1〜4,6では、数枚の試料においてAB両スタンパーが基材から同時に剥離して基材が落下する事態を招いた。このように、比較例1〜7の試料では、AB両スタンパーのいずれが先に剥離するかの剥離結果にばらつきが生じた。
【0099】
上記実施例1〜4のように、樹脂材料硬化処理時における樹脂材料に対するエネルギー線の照射量をA面およびB面において相違させることでA面において硬化させた樹脂材料のスタンパー剥離処理前の硬化率とB面において硬化させた樹脂材料のスタンパー剥離処理前の硬化率とを相違させる方法、上記実施例5のように、樹脂材料硬化処理時に樹脂材料に対して照射するエネルギー線の種類をA面およびB面において相違させることでA面において硬化させた樹脂材料のスタンパー剥離処理前の硬化率とB面において硬化させた樹脂材料のスタンパー剥離処理前の硬化率とを相違させる方法、または、上記実施例6,7のように、スタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類(この例では、重合開始剤の含有量、または、含ませる重合開始剤の種類)をA面およびB面において相違させることでA面において硬化させた樹脂材料のスタンパー剥離処理前の硬化率とB面において硬化させた樹脂材料のスタンパー剥離処理前の硬化率とを相違させる方法を採用することにより、スタンパー剥離処理時におけるスタンパーの剥離抵抗がA面およびB面において相違する状態となるのが理解できる。また、上記の各方法によってスタンパーの剥離抵抗がA面およびB面において相違する状態となることで、先に剥離すべきスタンパー(この例ではAスタンパー)を先に剥離することができるのが理解できる。
【0100】
このように、紫外線の照射源と基材との間の距離をA面およびB面において相違させることで紫外線の照射量をA面およびB面において相違させた実施例1,3の試料における凹凸パターン形成方法、紫外線の照射パワーをA面およびB面において相違させることで紫外線の照射量をA面およびB面において相違させた実施例2,3の試料における凹凸パターン形成方法、紫外線の照射時間をA面およびB面において相違させることで紫外線の照射量をA面およびB面において相違させた実施例4の試料における凹凸パターン形成方法によれば、先にスタンパーを剥離すべき面(この例では、A面)の側に形成する樹脂材料の層の硬化率を、後にスタンパーを剥離すべき面(この例では、B面)の側に形成する樹脂材料の層の硬化率よりも確実かつ容易に低くすることができるという第1の効果を奏することができる。これにより、この実施例1〜4の試料における凹凸パターン形成方法によれば、先に剥離すべきスタンパーを、後に剥離すべきスタンパーよりも先に確実に剥離することができるため、基材における凹凸パターンの形成面に汚れや傷付きが生じる事態を確実に回避することができるという第2の効果を奏することができる。
【0101】
また、紫外線の照射源の種類をA面およびB面において相違させることで紫外線の種類をA面およびB面において相違させた実施例5の試料における凹凸パターン形成方法によれば、実施例1〜4の試料における凹凸パターン形成方法と同様にして、上記の第1の効果および第2の効果を奏することができる。
【0102】
また、含有している重合開始剤の種類をA面およびB面において相違させることでスタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類をA面およびB面において相違させた実施例7の試料における凹凸パターン形成方法、および重合開始剤の含有量をA面およびB面において相違させることでスタンパー貼付け処理時に塗布する樹脂材料の種類をA面およびB面において相違させた実施例6の試料における凹凸パターン形成方法によれば、実施例1〜5の試料における凹凸パターン形成方法と同様にして、上記の第1の効果および第2の効果を奏することができる。
【0103】
また、実施例1,3の試料の製作時に使用した紫外線照射装置(樹脂材料硬化処理装置)によれば、A面において硬化させた樹脂材料の層の硬化率と、B面において硬化させた樹脂材料の層の硬化率とが相違するように、樹脂材料硬化処理時におけるA照射源とA面との間の距離(この例では、90mm)、および樹脂材料硬化処理時におけるB照射源とB面との間の距離(この例では、60mm)が互いに相違する状態で光源が配設されると共に、樹脂材料硬化処理時において、樹脂材料の層に対する紫外線の照射量をA面およびB面において相違させて紫外線を照射して両樹脂材料の層を硬化させる樹脂材料硬化処理を実行することにより、先にスタンパーを剥離すべき面(この例では、A面)の側に形成する樹脂材料の層の硬化率を、後にスタンパーを剥離すべき面(この例では、B面)の側に形成する樹脂材料の層の硬化率よりも低くすることで、後に剥離すべきスタンパーが先に剥離すべきスタンパーよりも先に基材から剥離する事態を招くことなく、両スタンパーを所望の順序で基材から剥離することができる。これにより、この紫外線照射装置(樹脂材料硬化処理装置)によれば、スタンパー剥離処理時において、先に剥離すべきスタンパーに基材が貼り付いたままスタンパーと共に処理完了位置に搬送されて積み重ねられたり、両スタンパーが基材から同時に剥離して基材が脱落したりする事態を回避することができるため、基材における凹凸パターンの形成面に汚れや傷付きが生じる事態を回避することができる。
【0104】
また、実施例5の試料の製作時に使用した紫外線照射装置(樹脂材料硬化処理装置)によれば、A面において硬化させた樹脂材料の層の硬化率と、B面において硬化させた樹脂材料の層の硬化率とが相違するように、A照射装置のA照射源(ランプA)とB照射装置のB照射源(ランプB)とが、互いに種類が相違する照射源で構成されると共に、樹脂材料硬化処理時において、樹脂材料に対して照射する紫外線の種類をA面およびB面において相違させて紫外線を照射して両樹脂材料の層を硬化させる樹脂材料硬化処理を実行することにより、実施例1,3の試料の製作時に使用した紫外線照射装置(樹脂材料硬化処理装置)と同様の効果を奏することができる。
【0105】
なお、中間体10xのA面10aに紫外線Baを照射するための光源62aと中間体10xのB面10bに紫外線Bbを照射するための光源62bとが対向配置されてA面10aおよびB面10bに対して紫外線Ba,Bbを同時に照射する構成の紫外線照射装置7を使用して樹脂層硬化処理を実行する例について説明したが、樹脂材料硬化処理の方法、および樹脂材料硬化処理装置の構成はこれに限定されない。例えば、基材のA面に対してエネルギー線を照射するA照射装置と、基材のB面に対してエネルギー線を照射するB照射装置とを別個に配置した(光源62aと光源62bとを対向させずに配置した)樹脂材料硬化処理装置(上記のマスクパターン形成システム2における紫外線照射装置7に対応する装置:図示せず)を用いて、A面およびB面に対して別個に(時間的に同時ではなく、ずれた時点で)エネルギー線を照射することができる。具体的には、一例として、光源62aと光源62bとを中間体10xの搬送方向においてずらして配置することができる。
【0106】
この場合、A照射装置およびB照射装置を別個に配置した樹脂材料硬化処理装置による樹脂層硬化処理時において、エネルギー線の照射時間をA面およびB面において相違させてエネルギー線の照射量をA面およびB面において相違させるには、A照射装置およびB照射装置の各照射源を点灯させた状態において基材がA照射装置内を通過する時間(すなわち、通過速度であり照射時間でもある)と基材がB照射装置内を通過する時間(すなわち、通過速度であり照射時間でもある)とを相違させる構成を採用することができる。また、A照射源とB照射源とを対向配置した樹脂材料硬化処理装置、および、A照射源とB照射源とを別個に配置した樹脂材料硬化処理装置のいずれかにおいて、エネルギー線の照射時間をA面およびB面において相違させてエネルギー線の照射量をA面およびB面において相違させるために、A照射源と基材との間、およびB照射源と基材との間にエネルギー線の通過を規制するシャッターなどの規制部材を設け、この規制部材の開閉タイミングを制御することによって、A面に対するエネルギー線の照射時間とB面に対するエネルギー線の照射時間とを相違させることもできる。
【0107】
また、前述したマスクパターン形成システム2におけるスタンパー剥離装置8では、積層体100(中間体10x)からスタンパー30Aを剥離する際に移動機構71およびスタンパー保持部72a,72bを使用し、中間体10xからスタンパー30Bを剥離する際に移動機構71、スタンパー保持部72bおよび中間体保持部73を使用する構成(スタンパー30A,30Bの剥離に際して移動機構71およびスタンパー保持部72bを共用する構成)を採用しているが、スタンパー30Aの剥離処理時、およびスタンパー30Bの剥離処理時において、別個独立したスタンパー保持部と移動機構(上記の例におけるスタンパー保持部72bおよび移動機構71)をそれぞれ使用する構成を採用することもできる。
【0108】
さらに、金属スタンパーを用いた射出成形によって樹脂材料で形成した樹脂スタンパー(スタンパー30A,30B)を使用する例について説明したが、AスタンパーおよびBスタンパーの構成は、これに限定されるものではない。具体的には、基材に塗布した樹脂材料を硬化させるためのエネルギー線を透過することができればよく、一例として、石英によって平板状に形成したスタンパーをAスタンパーおよびBスタンパーとして使用することができる。また、マスクパターン形成システム2によって形成した凹凸パターン50a,50b(マスクパターン)をマスクとして用いて磁性層14をエッチング処理して磁気ディスク10を製造する方法について説明したが、情報記録媒体(磁気ディスク)の製造方法はこれに限定されない。具体的には、一例として、中間体10xと樹脂材料17の層との間に金属マスク形成用の金属材料層を予め形成しておき、上記の凹凸パターン50a,50bを用いてこの金属材料層に対してエッチング処理を実行して中間体10xにおける磁性層14の上(金属材料層)に凹凸パターン(金属マスクパターン)を形成し、この金属マスクパターンをマスクとして用いたエッチング処理を実行して上記の磁気ディスク10と同様の磁気ディスクを製造することもできる。
【0109】
さらに、基材、AスタンパーおよびBスタンパーは、平面視形状が円形のものに限定されず、各種平面視形状の基材、AスタンパーおよびBスタンパーを用いて凹凸パターンを形成することができる。また、樹脂材料硬化処理時に照射するエネルギー線は、紫外線に限定されず、紫外線以外の放射線等の電磁波や、電子線等の粒子線がこれに含まれる。加えて、凹凸パターン形成方法、情報記録媒体製造方法および樹脂材料硬化処理装置は、磁気ディスク10のような磁気記録媒体の製造時に実行するための方法および装置に限定されるものではなく、光ディスクおよび光磁気ディスクや半導体素子の製造に際して上記の方法および装置を適用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 磁気記録媒体製造システム
2 マスクパターン形成システム
3 エッチング装置
5 樹脂材料塗布装置
6 スタンパー貼付け装置
7 紫外線照射装置
8 スタンパー剥離装置
10 磁気ディスク
10a A面
10b B面
10x 中間体
11a A面
11b B面
17 樹脂材料
20a,20b,40a,40b,50a,50b 凹凸パターン
21,41,51 凸部
22、42,52 凹部
30A,30B スタンパー
61 搬送装置
62a,62b 光源
63 制御部
71 移動機構
72a,72b スタンパー保持部
73 中間体保持部
74 制御部
100,100a 積層体
Ba,Bb 紫外線
La,Lb 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エネルギー線硬化型の樹脂材料を基材のA面およびB面に塗布すると共にA1凹凸パターンが形成されたAスタンパーを当該A面に貼り付け、かつB1凹凸パターンが形成されたBスタンパーを当該B面に貼り付けるスタンパー貼付け処理と、前記A面および前記B面にエネルギー線を照射して前記樹脂材料を硬化させる樹脂材料硬化処理と、前記A面において硬化させた前記樹脂材料から前記Aスタンパーを剥離すると共に前記B面において硬化させた前記樹脂材料から前記Bスタンパーを剥離するスタンパー剥離処理とを実行して、前記A面において硬化させた前記樹脂材料に前記A1凹凸パターンと凹凸位置関係が反転するA2凹凸パターンを当該A面に形成すると共に前記B面において硬化させた前記樹脂材料に前記B1凹凸パターンと凹凸位置関係が反転するB2凹凸パターンを当該B面に形成する際に、前記A面において硬化させた前記樹脂材料の前記スタンパー剥離処理前の硬化率と前記B面において硬化させた前記樹脂材料の当該スタンパー剥離処理前の硬化率とが相違するように、前記樹脂材料硬化処理時における前記樹脂材料に対する前記エネルギー線の照射量、前記樹脂材料硬化処理時に前記樹脂材料に対して照射する前記エネルギー線の種類、および前記スタンパー貼付け処理時に塗布する前記樹脂材料の種類のうちの少なくとも1つを前記A面および前記B面において相違させて前記A2凹凸パターンおよび前記B2凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成方法。
【請求項2】
前記エネルギー線の照射時間、前記エネルギー線の照射パワー、および前記エネルギー線の照射源と前記基材との間の距離のうちの少なくとも1つを前記A面および前記B面において相違させて当該エネルギー線の照射量を当該A面および当該B面において相違させる請求項1記載の凹凸パターン形成方法。
【請求項3】
前記エネルギー線の照射源の種類を前記A面および前記B面において相違させて当該エネルギー線の種類を当該A面および当該B面において相違させる請求項1または2記載の凹凸パターン形成方法。
【請求項4】
含有している重合開始剤の種類、および当該重合開始剤の含有量の少なくとも一方が相違する前記樹脂材料を使用して前記スタンパー貼付け処理時に塗布する当該樹脂材料の種類を前記A面および前記B面において相違させる請求項1から3のいずれかに記載の凹凸パターン形成方法。
【請求項5】
前記スタンパー剥離処理の後に、少なくとも前記硬化率が低い前記樹脂材料に前記エネルギー線を照射する請求項1から4のいずれかに記載の凹凸パターン形成方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の凹凸パターン形成方法によって形成した前記A2凹凸パターンおよび前記B2凹凸パターンを用いて情報記録媒体を製造する情報記録媒体製造方法。
【請求項7】
エネルギー線硬化型の樹脂材料がA面およびB面に塗布されると共にAスタンパーが当該A面に貼り付けられ、かつBスタンパーが当該B面に貼り付けられた基材にエネルギー線を照射して当該樹脂材料を硬化させる樹脂材料硬化処理を実行する樹脂材料硬化処理装置であって、
A照射源を備えて前記A面に前記エネルギー線を照射するA照射装置と、B照射源を備えて前記B面に前記エネルギー線を照射するB照射装置とを備え、当該両照射装置は、前記A面において硬化させた前記樹脂材料の硬化率と前記B面において硬化させた当該樹脂材料の硬化率とが相違するように、前記樹脂材料硬化処理時における前記A照射源と前記A面との間の距離A、および当該樹脂材料硬化処理時における前記B照射源と前記B面との間の距離Bが互いに相違する状態で配設されると共に、前記樹脂材料硬化処理時において、前記樹脂材料に対する前記エネルギー線の照射量を前記A面および前記B面において相違させて当該エネルギー線を照射する樹脂材料硬化処理装置。
【請求項8】
エネルギー線硬化型の樹脂材料がA面およびB面に塗布されると共にAスタンパーが当該A面に貼り付けられ、かつBスタンパーが当該B面に貼り付けられた基材にエネルギー線を照射して当該樹脂材料を硬化させる樹脂材料硬化処理を実行する樹脂材料硬化処理装置であって、
A照射源を備えて前記A面に前記エネルギー線を照射するA照射装置と、B照射源を備えて前記B面に前記エネルギー線を照射するB照射装置とを備え、当該両照射装置は、前記A面において硬化させた前記樹脂材料の硬化率と前記B面において硬化させた当該樹脂材料の硬化率とが相違するように、互いに種類が相違する照射源で前記A照射源および前記B照射源が構成されると共に、前記樹脂材料硬化処理時において、前記樹脂材料に対して照射する前記エネルギー線の種類を前記A面および前記B面において相違させて当該エネルギー線を照射する樹脂材料硬化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−804(P2011−804A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146150(P2009−146150)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】