説明

出力バッファ回路

【課題】通常動作モードに影響することなく、簡単な構成で振幅マージンテストのモードを搭載することを可能とする回路の提供。
【解決手段】データ信号を入力し出力端子から出力するデータ用の第1の出力バッファ11と、出力端子に出力端が接続された第2の出力バッファ12と、デエンファシス設定とデエンファシス非設定を指示する制御信号ENABLEを入力し、制御信号がデエンファシス非設定を示す時には、第2の出力バッファ12を非活性状態とし、前記制御信号ENABLEがデエンファシス設定を示す時には、第2の出力バッファの入力端に、前記データ信号19を遅延回路15で遅延させたエンファシスデータを入力してデエンファシス用のバッファとして動作させ、テスト制御信号TESTが振幅マージンテストを示すとき、データ信号19を選択して第2の出力バッファの入力端に供給するように切替制御する選択回路14と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体回路に関し、特に、デエンファシス機能を有する出力バッファ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
出力すべきデータ信号の論理の遷移時に強調(エンファシス)された振幅を出力し、該遷移につづくデータ信号の論理が、遷移後の論理と変化しない時に、該強調された振幅から、振幅を小さくして出力するデエンファシス機能を備えた出力バッファ回路として、例えば特許文献1、2等が参照される。このうち、特許文献1には、メインドライバと、遅延回路と、エンファシスドライバと、差動回路よりなる減算器を備えた構成が開示されている。また、特許文献2には、CMOSインバータによるエンファシス回路として、エンファシス機能の要否を制御信号に基づき切替制御するトライステート型バッファを備えた構成が開示されている。
【0003】
図5は、従来のデエンファシス機能を備えた出力バッファ回路の構成を示す図である。なお、以下では、説明のため、特許文献1に記載された構成(差動回路)に、エンファシス機能を活性化する制御信号としてENABLE信号を導入した場合の構成を例に説明する。また、特許文献1、2には、データ信号の論理が変化するトランジションビット(遷移ビット)で出力信号の振幅を強調するプリエンファシス機能と、該トランジションビットにつづくビットで論理が遷移しないノントランジションビット(非遷移ビット)では出力信号の振幅を、該トランジションビットの振幅よりも減少させるデエンファシス機能を備えた、出力バッファが開示されているが、以下では、トランジションビットでは電源電位VDDで規定される振幅を出力し、トランジションビットにつづくビットで論理が遷移しないとき、振幅を減少させるデエンファシス機能を備えた出力バッファについて説明する。
【0004】
図5を参照すると、出力バッファ回路は、データ信号を差動入力する差動入力端子(INP/INN)と、差動入力端子(INP/INN)から入力された差動信号を入力するメインデータ用プリバッファ53と、メインデータ用プリバッファ53からの差動出力(メインデータ)57を入力するメインデータ用メインバッファ51と、差動入力端子(INP/INN)に入力された差動信号を入力し遅延させて差動出力する遅延回路55と、遅延回路55からの差動出力56を入力するデエンファシス用プリバッファ54と、デエンファシス用プリバッファ54からの差動出力(デエンファシスデータ)58を入力するデエンファシス用メインバッファ52と、を備えている。メインデータ用メインバッファ51の正転出力(positive)とデエンファシス用メインバッファ52の反転出力(negative;○印)は正転出力端子OUTPに共通に接続され、メインデータ用メインバッファ51の反転出力(negative;○印)とデエンファシス用メインバッファ52の正転出力(positive)は反転出力端子OUTNに共通に接続されている。デエンファシス用プリバッファ54とデエンファシス用メインバッファ52は、制御信号ENABLEを受け、制御信号ENABLEが活性状態のとき、活性化され、動作状態となり、制御信号ENABLEが非活性状態のとき、非活性状態とされる。
【0005】
メインデータ用メインバッファ51とデエンファシス用メインバッファ52により、出力端子(OUTP/OUTN)より出力される出力信号の論理の変化時の振幅は強調して出力される。
【0006】
デエンファシス非設定時には、制御信号ENABLEは非活性状態とされ、デエンファシス用メインバッファ52、デエンファシス用プリバッファ54を非活性状態にして、メインデータ用メインバッファ51のみで伝送線路(OUTP、OUTNに接続される平衡型伝送線路)を駆動する。このため、メインデータ用メインバッファ51は単体で伝送路を駆動できる駆動能力を有する。
【0007】
出力端子(OUTP/OUTN)から出力される信号の論理が変化した直後の1ビット目の信号であるトランジションビットの振幅は、デエンファシス設定時とデエンファシス非設定時で、同じである。
【0008】
トランジションビット以降の信号であるノントランジションビットの振幅を減衰させることで、波形強調が行われる。例えばLOWレベルからHIGHレベルに遷移するトランジションビットでHIGHレベル出力電圧VOHを電源電位VDDとした場合、つづくビットがHIGHレベルの場合(ノントランジションビット)、この信号のHIGHレベル出力電圧VOHを、電源電位VDDよりも下げる。HIGHレベルからLOWレベルに遷移するトランジションビットでLOWレベル出力電圧VOLをGND電位とした場合、つづくビットがLOWレベルの場合(ノントランジションビット)、この信号のLOWレベル出力電圧VOLをGNDよりも上げ、振幅を減衰させる。
【0009】
図6は、図5のメインバッファ50(メインデータ用メインバッファ51とデエンファシス用メインバッファ52)の構成の一例を示す図である。図6において、図5のバッファ51が回路20に対応し、図5のバッファ52が回路21に対応する。
【0010】
図6を参照すると、ソースが共通接続され定電流源I1(電流値は可変に制御される)に接続され、ゲートに、図5のメインデータ57の正転信号(Main data positive)と反転信号(Main data negative)をそれぞれ入力するNチャネルMOSトランジスタ22、23と、ソースが共通接続され定電流源I2(電流値は可変に制御される)に接続され、ゲートに、図5のエンファシスデータ58の正転信号(Emphasis data positive)と反転信号(Emphasis data negative)をそれぞれ入力するNチャネルMOSトランジスタ24、25とを備え、トランジスタ22のドレインとトランジスタ25のドレインは共通接続されて出力端子の反転端子OUTNに接続されるとともに、抵抗R1を介して電源VDDに接続され、トランジスタ23のドレインとトランジスタ24のドレインは共通接続されて出力端子の正転端子OUTPに接続されるとともに、抵抗R2を介して電源VDDに接続される。NチャネルMOSトランジスタ24、25の共通ソースとグランド間には、定電流源I2とスイッチSWが直列形態に接続されており、エンファシス非設定時には、制御信号ENABLEが非活性状態とされ、スイッチSWはオフし、回路21は非活性化状態となる。以下、エンファシス設定時(制御信号ENABLEが活性状態でスイッチSWがオン)の動作を説明する。なお、以下では、HIGHレベルを論理1、LOWレベルを論理0とする。
【0011】
メインデータ57の正転信号と反転信号がそれぞれ1、0、エンファシスデータ58の正転信号、反転信号がそれぞれ0、1のとき(メインデータ57の正転信号が0から1へ変化するトランジションビット)、ドレインが共通接続されたトランジスタ22、25がオンし、トランジスタ23、24はオフし、抵抗R1には、定電流源I1とI2の電流和Iに対応する電流が流れる。OUTN=VDD−(I1+I2)×R1、OUTP=VDDとなり、出力信号の振幅は、OUTP−OUTN=(I1+I2)×R1となる。
【0012】
メインデータ57の正転信号と反転信号がそれぞれ1、0で、エンファシスデータ58の正転信号、反転信号がそれぞれ1、0のとき、トランジスタ22、24がオンし、トランジスタ23、25はオフし、抵抗R1、R2には、I1と、I2に対応する電流が流れ、OUTPとOUTNの差電圧は、OUTN=VDD−R1×I1、OUTP=VDD−R2×I2より、出力信号の振幅は、OUTP−OUTN=R1×I1−R2×I2となる。R1=R2=Rの場合、振幅は、OUTP−OUTN=R×(I1−I2)となり、図6の回路は、減算回路である。そして、OUTP−OUTNの振幅は、トランジションビットのとき((I1+I2)×R1)よりも狭まり、デエンファシスが行われる。
【0013】
メインデータ57の正転信号と反転信号がそれぞれ0、1で、エンファシスデータ58の正転信号、反転信号がそれぞれ1、0のとき(メインデータ57の正転信号が1から0へ変化するトランジションビット)、トランジスタ23、24がオンし、トランジスタ22、25はオフし、抵抗R2には、定電流源I1とI2の電流和に対応する電流が流れる。OUTP=VDD−(I1+I2)×R2、OUTN=VDDとなり、出力信号の振幅は、OUTP−OUTN=−(I1+I2)×R2となる。
【0014】
メインデータ57の正転信号と反転信号がそれぞれ0、1で、エンファシスデータ58の正転信号、反転信号がそれぞれ0、1のとき、トランジスタ23、25がオンし、トランジスタ22、24はオフし、抵抗R1、R2には、I2と、I1に対応する電流が流れ、OUTPとOUTNの差電圧は、OUTN=VDD−R1×I2、OUTP=VDD−R2×I1より、出力信号の振幅は、OUTP−OUTN=R1×I2−R2×I1となる。R1=R2=Rの場合、OUTP−OUTN=R×(I2−I1)となり、図6の回路は、減算回路である。OUTP−OUTNの振幅はトランジションビットのときよりも狭まりデエンファシスが行われることがわかる。
【0015】
エンファシス非設定時、差動回路21は非活性状態とされ、差動回路20のみ動作する。
【0016】
デエンファシス設定時には、定電流源I1、I2に流す電流は、デエンファシスレベルによって決まる比率の関係を有する電流値であり、デエンファシス非設定時にはI1にのみ伝送線路を駆動する電流が流れ、定電流源I2には電流が流れない。
【0017】
そして、デエンファシスの設定、非設定でトランジションビットの振幅が同じになる回路構成とする場合、デエンファシス設定時の定電流源I1と定電流源I2の電流の合計と、デエンファシス非設定時の定電流源I1の電流値が等しくなるように制御される。例えばデエンファシス非設定時(回路21は非活性)には、回路20の定電流源I1が、デエンファシス設定時における定電流源I1と定電流源I2の合計値Iとなるように、電流値が可変制御される。
【0018】
【特許文献1】特開2004−88693号公報
【特許文献2】特開2002−94365号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
出力バッファ回路から、小振幅の信号を出力する場合、通常の回路構成を用いて実現しようとすると、例えばメインバッファ50の電流源の電流を制御することで可能となる。すなわち、図6の定電流源I1の電流を小さくすればよい。しかし、このままでは、コモンモードレベルが上昇する。
【0020】
一方、コモンモードレベルを維持した状態にする場合、メインバッファ50に対してコモンモードレベル制御用の回路を別途追加する必要があり、レイアウト面積が大きくなるという課題がある。
【0021】
既存の出力バッファに振幅マージンテストと同等の機能を後から追加する場合、外部ピンに直接つながるところに回路が追加されるため、ESD(Electrostatic Discharge;静電破壊)やラッチアップ(Latch Up)などの信頼性の評価が改めて必要となり、設計期間の長期化、開発コストの増加につながる。
【0022】
また、図5を参照して説明した回路構成においては、
(a)デエンファシス非設定で、トランジションビットの振幅が強調されていない信号を出力する場合と、
(b)デエンファシス設定で、トランジションビットの振幅が強調された信号を出力する場合、
の2種類の状態しか実現できない。
【0023】
このため、デエンファシス特性をもたない小振幅の信号を出力するためには、メインデータ用メインバッファの駆動電流を制御して小さくするしかない。しかし、これにともない、コモンモードレベルが上がる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本願で開示される発明は、上記課題を解決するため、概略以下の構成とされる。
【0025】
本発明の1つのアスペクト(側面)に係る回路は、出力すべきデータ信号を入力し、前記データ信号の論理が変化する遷移時点では出力信号の振幅を強調して出力し、前記データ信号が前記遷移後の論理と同じ論理値をとる非遷移時では前記出力信号の振幅を減衰させて出力するデエンファシス機能を有する出力バッファ回路が、入力される制御信号が振幅マージンテストを示しているとき、前記遷移時の出力信号の振幅を、前記非遷移時の振幅と同じとなるように設定し、通常動作時と比べて、小振幅の信号を出力するように制御する回路を備えている。
【0026】
本発明において、前記出力バッファ回路が、前記データ信号を入力して出力する第1の出力バッファと、出力が、前記第1の出力バッファと共通接続された第2の出力バッファと、を備え、デエンファシス設定時に、前記第2の出力バッファの入力端には、前記データ信号を遅延回路で所定時間遅延した信号を供給し、前記振幅マージンテストには、前記第2の出力バッファの入力端に、前記データ信号を入力するように切替制御する選択回路を備え、前記第1の出力バッファと前記第2の出力バッファとは、前記第1のバッファの出力から前記第2のバッファの出力を減算した信号を前記出力信号として出力する構成とされている。
【0027】
本発明において、デエンファシス非設定時には、前記第2のバッファはオフ状態とされ、前記データ信号の論理が変化する遷移時点では前記出力信号の振幅を強調して出力し、前記データ信号が前記遷移後の論理と同じ論理値をとる非遷移時にも前記遷移時点と同一の振幅の出力信号が出力される構成としてもよい。
【0028】
本発明の他のアスペクト(側面)に係る回路は、データ信号を入力し出力端子から出力するデータ用の第1の出力バッファと、前記出力端子に出力端が接続された第2の出力バッファと、デエンファシス設定とデエンファシス非設定を指示する制御信号を入力し、前記制御信号がデエンファシス非設定を示す時には、前記第2の出力バッファを非活性状態とし、前記制御信号がデエンファシス設定を示す時には、前記第2の出力バッファの入力端に、前記データ信号を遅延させたエンファシスデータを入力してデエンファシス用のバッファとして動作させ、テスト制御信号が振幅マージンテストを示すとき、前記データ信号を選択して前記第2の出力バッファの入力端に供給するように切替制御する選択回路と、を備えている。
【0029】
本発明において、前記データ信号は差動信号よりなり、前記第1の出力バッファが、差動回路よりなる第1のプリバッファと、前記第1のプリバッファを受ける差動回路よりなる第1のメインバッファと、を備え、前記第2の出力バッファが、差動回路よりなる第2のメインバッファを備え、前記第1のメインバッファの差動出力の正転、反転出力は、前記第2のメインバッファの差動出力の反転、正転出力とそれぞれ共通接続されて、差動出力端子の正転、反転端子に接続され、前記選択回路には、前記データ信号の差動信号と、前記データ信号を遅延回路で遅延させた差動信号とを入力し、前記制御信号がデエンファシス設定を示す時には、前記データ信号を前記遅延回路で遅延させた信号を、前記第2のメインバッファの入力端に差動入力し、前記テスト制御信号が振幅マージンテストを示すとき、前記データ信号を選択して前記第2の出力バッファの入力端に供給する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、デエンファシス(あるいはプリエンファシス)機能を有する出力バッファにおいて、出力信号の論理が変化した直後の1ビット目の信号であるトランジションビットの振幅が、トランジションビット以降の信号であるノントランジションビットの振幅と同じになり、通常動作時と比べて小振幅の信号を出力することを可能としている。
【0031】
また、本発明によれば、信号の論理変化点を強調していない小振幅の信号を出力することで、伝送線路を経由して接続される入力バッファにおける受信信号の振幅マージンの確認用テスト機能を容易に追加することができる。
【0032】
本発明によれば、テストモードにおける出力信号のコモンモードレベルは、通常動作モードと違いは無く、受信側では、受信信号の振幅マージンの確認が可能となる。
【0033】
さらに、本発明によれば、通常動作モードに影響することなく、メインバッファの回路を変えることなく簡単な構成により、振幅マージンテストのモードを搭載することを可能としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
上記した本発明についてさらに詳細に説述すべく添付図面を参照して説明する。本発明は、図1を参照すると、データ信号を入力し出力端子(OUTP、OUTN)から出力するデータ用の第1の出力バッファ(11)と、出力端子に出力端が接続された第2の出力バッファ(12)と、デエンファシス設定とデエンファシス非設定を指示する制御信号ENABLEを入力し、制御信号ENABLEがデエンファシス設定を示す時には、第2の出力バッファ(12)の入力端に、データ信号(19)を遅延回路(15)で遅延させたエンファシスデータ(16)を入力してデエンファシス用のバッファとして動作させ、テスト制御信号TESTが振幅マージンテストを示すとき、データ信号(19)を選択して第2の出力バッファ(12)の入力端に供給するように切替制御する選択回路(14)を備えている。振幅マージンテストのときは、通常動作時と比べて小振幅の信号を出力することを可能としている。また、制御信号ENABLEがデエンファシス非設定を示す時には、第2の出力バッファ(12)は非活性状態とされ、第1の出力バッファ(11)で出力端子に接続される伝送路を駆動する。以下実施例に即して説明する。
【0035】
図1は、本発明の一実施例の構成を示す図である。図1に示すように、本実施例の出力バッファ回路は、データ信号を差動入力する差動入力端子(INP/INN)と、差動入力端子(INP/INN)から入力されたデータ信号19を差動で入力する差動回路よりなるメインデータ用プリバッファ13と、メインデータ用プリバッファ13の差動出力(メインデータ)17を差動で入力する差動回路よりなるメインデータ用メインバッファ11と、差動入力端子(INP/INN)から入力されたデータ信号19を差動で入力し所定の遅延時間遅延させて差動で出力する遅延回路15と、遅延回路15の差動出力16と、差動のデータ信号19とを入力し、テスト制御信号TESTにより、振幅テストモード時には、差動のデータ信号19を選択し、その他のとき(デエンファシス設定時等)は、遅延回路15の差動出力16の出力を選択して出力する選択回路14と、選択回路14からの差動出力18を差動で入力する差動回路よりなるデエンファシス用メインバッファ12と、を備えている。
【0036】
メインデータ用メインバッファ11の差動出力の正転出力とデエンファシス用メインバッファ12の差動出力の反転出力は共通接続され、差動出力端子の正転端子OUTPに接続され、メインデータ用メインバッファ11の差動出力の反転出力とデエンファシス用メインバッファ12の差動出力の正転出力は共通接続され差動出力端子の反転端子OUTNに接続され、メインデータ用メインバッファ11の出力からデエンファシス用メインバッファ12の出力を減算する減算器を構成している。
【0037】
メインデータ用メインバッファ11とデエンファシス用メインバッファ12により、出力(OUTP/OUTN)する信号の論理の変化時の振幅を広げて信号を強調して出力する。
【0038】
デエンファシス設定時には、制御信号ENABLEが活性化され、トランジションビット以降の信号であるノントランジションビットの振幅を減衰させることで波形強調が行われる。デエンファシス設定時には、遅延回路15で遅延させたデータ信号16が選択回路14で選択され、デエンファシスデータ18としてデエンファシス用メインバッファ12に供給され、メインデータ用メインバッファ11の差動出力から、デエンファシスデータ18(1ビット前の信号)をデエンファシス用メインバッファ12で差動増幅した信号の減算が行われ、図5、図6を参照して説明した従来の回路と同様の原理により、トランジションビットの振幅は、強調される。トランジションビットにつづくビットがトランジションビットの論理値と同一のノントランジションビットでは、出力信号の振幅(VOH2−VOL2)は、トランジションビットの振幅(VOH1−VOL1)から減衰される。
【0039】
すなわち、回路10は、デエンファシス設定時には、差動入力端子(INP/INN)に入力されたデータ信号19のメインデータ用プリバッファ13を経由の信号17と、差動入力端子(INP/INN)に入力されたデータ信号19を遅延回路15で遅延させたデータ信号16(デエンファシスデータ)の2つの信号の減算を行い、信号の論理の変化時の振幅が強調された信号を出力する。
【0040】
デエンファシス非設定時には、制御信号ENABLEにより、デエンファシス用メインバッファ12をディスエーブル状態(非活性状態)にして、メインデータ用メインバッファ11単体で、差動出力端子(OUTP/OUTN)に接続される伝送線路を駆動する。
【0041】
本実施例においては、メインバッファ回路10から出力(OUTP/OUTN)する信号の論理が変化した直後の1ビット目の信号であるトランジションビットの振幅(VOH1−VOL1)は、デエンファシス設定時とデエンファシス非設定時で同じである。デエンファシス非設定時は、メインデータ用メインバッファ11の電流駆動能力は、デエンファシス設定時よりも大となるように制御される。
【0042】
そして、振幅マージンテスト設定時(制御信号TESTが活性化時)には、テスト制御信号TESTによって、選択回路14は、データ信号19を選択し、デエンファシス用メインバッファ12に供給する。メインデータ用メインバッファ11は、データ信号19をメインデータ用プリバッファ13で差動増幅した信号が供給される。回路10は、メインデータ用プリバッファ13から入力される信号17と同一論理である、セレクタ14から入力される信号18の2つの信号の減算を行い、メインバッファ11とメインバッファ12のそれぞれが駆動する電流の差分(I1−I2、但し、I1>I2、;I1,I2は、図6の電流源I1、I2)で決まる振幅の信号を出力する。その振幅は、デエンファシス設定時のノントランジションビットの振幅と等しい。
【0043】
メインバッファ回路10を差動出力バッファで構成する場合、図6に示した回路構成を用いることができる。メインデータ用メインバッファ11およびデエンファシス用メインバッファ12の構成例として回路20および回路21から構成される回路26がある。図1及び図6を参照して、メインバッファ回路10の構成を説明する。
【0044】
図6を参照すると、本実施例において、ソースが共通接続され定電流源I1(電流値は可変に制御される)に接続され、ゲートに、図1のメインデータ17の正転信号(Main data positive)と反転信号(Main data negative)を入力するNチャネルMOSトランジスタ22、23と、ソースが共通接続され定電流源I2(電流値は可変に制御される)に接続され、ゲートに、図1のデエンファシスデータ18の正転信号(Emphasis data positive)と反転信号(Emphasis data negative)を入力するNチャネルMOSトランジスタ24、25とを備え、トランジスタ22のドレインとトランジスタ25のドレインは共通接続されて反転端子OUTNに接続されるとともに、抵抗R1を介して電源VDDに接続され、トランジスタ23のドレインとトランジスタ24のドレインは共通接続されて正転端子OUTPに接続されるとともに、抵抗R2を介して電源VDDに接続される。NチャネルMOSトランジスタ24、25の共通ソースとグランド間には、定電流源I2とスイッチSWが直列形態に接続されており、エンファシス非設定時、制御信号ENABLEが非活性状態でスイッチSWはオフする。
【0045】
図6を参照すると、本実施例において、デエンファシス設定時には、定電流源I1、I2にそれぞれ流す電流は、デエンファシスレベルによって決まる比率の関係を有する電流値である。
【0046】
デエンファシス非設定時には、定電流源I1にのみ、伝送線路を駆動する電流が流れ、定電流源I2には電流が流れない。
【0047】
デエンファシス設定時の定電流源I1と定電流源I2の合計の電流値と、デエンファシス設定非設定時の定電流源I1の電流値は等しくなるように、可変制御され、デエンファシス設定と、デエンファシス非設定で、トランジションビットの振幅が同じとなるように制御される。
【0048】
次に、デエンファシス設定時に、それぞれのメインバッファ11、12に流す電流の比率を具体的に計算する。
【0049】
デエンファシス非設定時に、伝送線路を駆動するために必要な電流値(駆動能力)をA、定電流源I1の定常電流をB、定電流源I2の定常電流をC、必要なエンファシスレベルをD[dB]とすると、
A=B …(1)
D=20*log[(B−C)/(B+C)] (B>C) …(2)
の関係が成り立つ。
【0050】
図2乃至図4は、デエンファシス設定時、デエンファシス非設定時、振幅マージンテスト設定時における、メインバッファ11とメインバッファ12に入力される信号の論理と、それらバッファから出力される信号の論理、振幅の関係を示す(簡単のため、正転信号のみ示す)。
【0051】
図2を参照すると、デエンファシス設定時には、信号D1は、メインバッファ11に入力される信号であり、信号D2は、遅延回路15により信号D1に対してdelayだけ遅延が加えられた信号でメインバッファ12に入力される信号であり、回路10にて、D1とD2の減算が行われ、D3に示すように、信号の論理の変化時の振幅が強調された出力信号となる。出力信号がLOWレベルからHIGHレベルへの遷移時のHIGHレベル出力電圧はVOH1、ノントランジションビットのHIGHレベル出力電圧はVOH2(VOH2<VOH1)、出力信号がHIGHレベルからLOWレベルへの遷移時のLOWレベル出力電圧はVOL1、ノントランジションビットのLOWレベル出力電圧はVOL2(VOL2>VOL1)とされる。
【0052】
図3を参照すると、デエンファシス非設定時には、信号D1がメインバッファ11に入力される信号であり、信号D4はメインバッファ12の出力をハイインピーダンス状態にする論理信号である。メインバッファ回路10から出力される信号D5の論理は、メインバッファ11に入力される信号D1の論理のみによって決まる。HIGHレベル出力電圧は、遷移、非遷移時にかかわらず常にVOH1であり、LOWレベル出力電圧は、遷移、非遷移時にかかわらず常にVOL1である。
【0053】
図4を参照すると、振幅マージンテスト設定時には、信号D1がメインバッファ11に入力される信号であり、D6はD1とタイミングがそろっていて同じ論理を有する信号でメインバッファ12に入力される信号で、回路10にて減算が行われるためそれぞれのメインバッファが駆動する電流の差から決まる振幅の信号を出力し、D7に示すように信号の論理の変化時に波形強調が行われていない信号となる。デエンファシス設定時と振幅マージンテスト設定時のノントランジションビットの振幅は等しく、トランジションビットの振幅が異なる。HIGHレベル出力電圧は、遷移、非遷移時にかかわらず常にVOH2であり、LOWレベル出力電圧は、遷移、非遷移時にかかわらず常にVOL2である。
【0054】
このように、本実施例によれば、デエンファシス機能を有する出力バッファにおいて、制御信号に基づき、振幅マージンテスト設定時には、トランジションビットの振幅が、トランジションビット以降の信号であるノントランジションビットの振幅と同じとなり、通常動作時と比べて小振幅の信号を出力することを可能としている。
【0055】
また、本実施例によれば、メインバッファを変更することなく、入力バッファにおける受信信号の振幅マージンの確認用テスト機能を容易に追加することができる。
【0056】
デエンファシス機能を実現するために設けられている減算を行う回路10を有効に活用し、デエンファシス用メインバッファに、メインデータ用メインバッファに入力する信号と同じタイミングで同じ論理の信号を入力できる仕組みを持たせることで、デエンファシス設定時のノントランジションビットと同じ振幅で波形強調が行われていない信号を送出できるようにしている。
【0057】
さらに、本実施例によれば、出力信号のコモンモードレベルを上げることなく、差動振幅を小さくして出力することができる。このため、テスト工程において、振幅マージンテストの測定精度を向上させることができる。
【0058】
なお、振幅マージンテスト機能を具備した本実施例の出力バッファ回路は、半導体装置に組み込んで好適とされ、テストの容易化、精度向上に貢献する。本実施例の出力バッファ回路をシリアル化回路に備えたSer/Desシリアルインタフェースのテスト工程において、出力バッファ回路から出力された信号(小振幅の信号)を自チャネルの入力バッファに折り返し供給してループバック方式で入力バッファの振幅マージンテストを行ってもよいし、他チャネルの入力バッファに折り返し供給して該他チャネルの入力バッファの振幅マージンテストを行ってもよいし、あるいは、振幅マージンテスト機能が正しく動作するか否かを検証するためには、出力バッファ回路からの小振幅信号を、LSIテスタに入力しそのレベルが所望のレベルであるか検証してもよい。
【0059】
本発明は、シリアル化/デシリアル化(Ser/Des)インタフェースのシリアル化回路(送信シリアルデータを伝送路に出力)の出力バッファ等に用いて好適とされる。以上、本発明を上記実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例の構成にのみに制限されるものでなく、本発明の範囲内で当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施例の構成を示す図である。
【図2】本発明において、デエンファシス設定時の動作を示す図である。
【図3】本発明において、デエンファシス非設定時の動作を示す図である。
【図4】本発明において、振幅マージンテスト設定時の動作を示す図である。
【図5】従来回路を説明する図である。
【図6】図1のメインバッファ10、図5のメインバッファ50の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
10、50 メインバッファ回路
11、51 メインデータ用メインバッファ
12、52 デエンファシス用メインバッファ
13、53 メインデータ用プリバッファ
14 セレクタ(選択回路)
15、55 遅延回路
16、56 遅延回路の出力
17、57 メインデータ(プリバッファの出力)
18 セレクタの出力
19 データ信号
20 メインデータ用メインバッファ
21 デエンファシス用メインバッファ
22、23、24、25 NチャネルMOSトランジスタ
26 メインバッファ回路
54 デエンファシス用プリバッファ
58 デエンファシスデータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力すべきデータ信号を入力し、前記データ信号の論理が変化する遷移時点では出力信号の振幅を強調して出力し、前記遷移以降前記データ信号が前記遷移後の論理と同じ論理値をとる非遷移時では前記出力信号の振幅を減衰させて出力するデエンファシス機能を有する出力バッファ回路であって、
入力される制御信号が振幅マージンテストを示しているとき、前記遷移時の出力信号の振幅を、前記非遷移時の振幅と同じとなるように設定し、通常動作時と比べて、小振幅の信号を出力するように制御する回路を備えている、ことを特徴とする出力バッファ回路。
【請求項2】
前記出力バッファ回路が、前記データ信号を入力して出力する第1の出力バッファと、出力が、前記第1の出力バッファと共通接続された第2の出力バッファと、を備え、
デエンファシス設定時に、前記第2の出力バッファの入力端には、前記データ信号を遅延回路で所定時間遅延した信号を供給し、前記振幅マージンテストには、前記第2の出力バッファの入力端に、前記データ信号を入力するように切替制御する選択回路を備え、
前記第1の出力バッファと前記第2の出力バッファとは、前記第1のバッファの出力から前記第2のバッファの出力を減算した信号を前記出力信号として出力する構成とされている、ことを特徴とする請求項1記載の出力バッファ回路。
【請求項3】
デエンファシス非設定時には、前記第2のバッファはオフ状態とされ、前記データ信号の論理が変化する遷移時点では前記出力信号の振幅を強調して出力し、前記データ信号が前記遷移後の論理と同じ論理値をとる非遷移時にも前記遷移時点と同一の振幅の出力信号が出力される、ことを特徴とする請求項1記載の出力バッファ回路。
【請求項4】
データ信号を入力し出力端子から出力するデータ用の第1の出力バッファと、
前記出力端子に出力端が接続された第2の出力バッファと、
デエンファシス設定とデエンファシス非設定を指示する制御信号を入力し、前記制御信号がデエンファシス非設定を示す時には、前記第2の出力バッファを非活性状態とし、
前記制御信号がデエンファシス設定を示す時には、前記第2の出力バッファの入力端に、前記データ信号を遅延させたエンファシスデータを入力してデエンファシス用のバッファとして動作させ、
入力されるテスト制御信号が振幅マージンテストを示すとき、前記データ信号を選択して、前記第2の出力バッファの入力端に供給するように切替制御する選択回路と、
を備えている、ことを特徴とする出力バッファ回路。
【請求項5】
前記データ信号は差動信号よりなり、
前記第1の出力バッファが、差動回路よりなる第1のプリバッファと、前記第1のプリバッファを受ける差動回路よりなる第1のメインバッファと、を備え、
前記第2の出力バッファが、差動回路よりなる第2のメインバッファを備え、
前記第1のメインバッファの差動出力の正転、反転出力は、前記第2のメインバッファの差動出力の反転、正転出力とそれぞれ共通接続されて、共通接続点は、差動出力端子の正転、反転端子にそれぞれ接続され、
前記選択回路には、前記データ信号の差動信号と、前記データ信号を遅延回路で遅延させた差動信号とを入力し、前記制御信号がデエンファシス設定を示す時には、前記データ信号を前記遅延回路で遅延させた信号を、前記第2のメインバッファの入力端に差動入力し、
前記テスト制御信号が振幅マージンテストを示すとき、前記データ信号を選択して前記第2の出力バッファの入力端に供給する、ことを特徴とする請求項4記載の出力バッファ回路。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一記載の出力バッファ回路を備えた半導体装置。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか一記載の出力バッファ回路を送信系に備え、前記出力バッファ回路から出力される信号を受信する受信系の振幅マージンテスト機能を備えたインタフェース回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−60072(P2007−60072A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−240774(P2005−240774)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】