説明

出力信号制御装置、出力信号制御方法および出力信号制御プログラム

【課題】入力信号を遅延させて出力信号を作成する際に、入力信号の変動が原因で出力信号の遅延が規定値内に納まらない場合であっても、この出力信号によるエラーの発生の抑制が可能な出力信号制御装置、方法およびプログラムを得ること。
【解決手段】位相差許容範囲判別手段12は、位相差測定手段11が測定した出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する。出力制御手段13は、許容範囲内でないと判別する状態で出力信号の出力を遮断し、許容範囲内となった段階で出力を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力信号に対して所定の処理を行った後の出力信号の出力を制御する出力信号制御装置、出力信号制御方法および出力信号制御プログラムに関する。本発明は特に入力信号を遅延させる遅延回路あるいは遅延素子を備えた装置に好適な出力信号制御装置、出力信号制御方法および出力信号制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ある回路から入力した信号を処理して他の回路に出力信号として出力するとき、入力信号を所定の時間だけ遅延させて出力信号とする必要がある場合がある。たとえばクロック信号に本来同期しているはずのデータが、何らかの原因で遅延して送られてきたとする。このデータを本来のクロック信号の立ち上がりや立ち下がりのタイミングで読み取ろうとすると、誤った読み取りが行われる可能性がある。
【0003】
そこで、本発明に関連する関連技術として、必要な遅延時間を入力信号に与えるようにした遅延時間自動制御回路が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
図8は、この関連技術による遅延時間自動制御回路の概要を表わしたものである。この遅延時間自動制御回路100は、第1のパルス信号101を入力する遅延回路102と、この遅延回路102から遅延して出力される第2のパルス信号103および第1のパルス信号101を入力して遅延回路102に対して制御信号104を出力する制御信号発生回路105から構成されている。
【0005】
遅延回路102は、制御信号104によって第1のパルス信号101に対する第2のパルス信号103の遅延時間を変化させることができる。制御信号発生回路105は、第1のパルス信号101と第2のパルス信号103を比較することで第2のパルス信号103の遅延時間を算出することができる。そして、この算出した遅延時間を制御信号104として遅延回路102にフィードバックすることで、第1のパルス信号101と第2のパルス信号103の間の遅延時間が予め定めた時間の範囲からずれたとき、その誤差時間が最小になるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−225374号公報(公報第2ページ左下欄第10行目〜同ページ右下欄第15行目、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図8に示した遅延時間自動制御回路100では、第1のパルス信号101と第2のパルス信号103の比較結果を制御信号104として遅延回路102にフィードバックする構成となっている。このため、第1のパルス信号101の立ち上がりや立ち下がりのタイミングが一定せず時間的に変動するような場合には、第2のパルス信号103における遅延時間が規定値以内に収束するまでに多少の時間が掛かる。この収束までの時間中に遅延時間あるいは位相差が許容される範囲を超えるような場合があると、第2のパルス信号103を入力する図示しない後段の回路部分でエラーが発生してしまう場合があった。
【0008】
また、この遅延時間自動制御回路100では、第1のパルス信号101と第2のパルス信号103の位相差に応じた制御信号104を作成している。制御信号104は遅延回路102に入力されて第2のパルス信号103の作成に反映される。このため、制御信号104が第2のパルス信号103として反映されるまでに多少の時間が掛かることになる。しかしながら、この程度の時間では第2のパルス信号103の遅延が規定値に収束しない状態で出力される場合があり、同様に後段の回路に不具合を与える可能性がある。
【0009】
そこで本発明の目的は、入力信号を遅延させて出力信号を作成する際に、入力信号の変動が原因で出力信号の遅延が規定値内に納まらない場合であっても、この出力信号によるエラーの発生の抑制が可能な出力信号制御装置、方法およびプログラムを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、入力信号を遅延させて出力信号を作成する際に、入力信号に対する出力信号の遅延時間を規定値に収束させることのできる出力信号制御装置、方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、(イ)所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記した入力端子から所定の回路を経由することで前記した入力信号の遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める位相差測定手段と、(ロ)この位相差測定手段により測定した前記した出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する位相差許容範囲判別手段と、(ハ)この位相差許容範囲判別手段が前記した位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記した出力信号の出力を遮断する出力制御手段とを出力信号制御装置が具備する。
【0012】
また、本発明では、(イ)所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記した入力端子から所定の遅延時間選択ステップで遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める位相差測定ステップと、(ロ)この位相差測定ステップで測定した前記した出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する位相差許容範囲判別ステップと、(ハ)この位相差許容範囲判別ステップが前記した位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記した出力信号の出力を遮断する出力制御ステップと、(ニ)前記した位相差許容範囲判別ステップで前記した位相差が許容範囲内となると、前記した出力信号の出力を開始する出力開始ステップとを出力信号制御方法が具備する。
【0013】
更に、本発明では、コンピュータに、出力信号制御プログラムとして、(イ)所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記した入力端子から所定の遅延時間選択処理で遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める位相差測定処理と、(ロ)この位相差測定処理で測定した前記した出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する位相差許容範囲判別処理と、(ハ)この位相差許容範囲判別処理が前記した位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記した出力信号の出力を遮断する出力制御処理と、(ニ)前記した位相差許容範囲判別処理で前記した位相差が許容範囲内となると、前記した出力信号の出力を開始する出力開始処理とを実行させる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように本発明によれば、入力端子から入力された入力信号と、遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を求め、この位相差が許容範囲内でないと判別する状態では、出力信号の出力を遮断するようにした。これにより、出力信号を用いる回路がエラーを発生させることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の出力信号制御装置のクレーム対応図である。
【図2】本発明の出力信号制御方法のクレーム対応図である。
【図3】本発明の出力信号制御プログラムのクレーム対応図である。
【図4】本発明の実施の形態における出力信号制御装置の構成を表わしたブロック図である。
【図5】本実施の形態におけるディレイライン部に内蔵された第1〜第5の遅延素子の遅延時間を表わした説明図である。
【図6】本実施の形態における出力信号制御装置の遅延測定比較部およびタップ選択部を中心とした一次遅延制御の様子を表わした流れ図である。
【図7】本実施の形態における出力信号制御装置の遅延時間許容判定部を中心とした二次遅延制御の様子を表わした流れ図である。
【図8】本発明の関連技術による遅延時間自動制御回路の概要を表わしたブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の出力信号制御装置のクレーム対応図を示したものである。本発明の出力信号制御装置10は、位相差測定手段11と、位相差許容範囲判別手段12と、出力制御手段13を備えている。ここで、位相差測定手段11は、所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記した入力端子から所定の回路を経由することで前記した入力信号の遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める。位相差許容範囲判別手段12は、位相差測定手段11が測定した前記した出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する。出力制御手段13は、位相差許容範囲判別手段12が前記した位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記した出力信号の出力を遮断する。
【0017】
図2は、本発明の出力信号制御方法のクレーム対応図を示したものである。本発明の出力信号制御方法20は、位相差測定ステップ21と、位相差許容範囲判別ステップ22と、出力制御ステップ23と、出力開始ステップ24を備えている。ここで、位相差測定ステップ21では、所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記した入力端子から所定の遅延時間選択ステップで遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める。位相差許容範囲判別ステップ22では、位相差測定ステップ21で測定した前記した出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する。出力制御ステップ23では、位相差許容範囲判別ステップ22が前記した位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記した出力信号の出力を遮断する。出力開始ステップ24では、位相差許容範囲判別ステップ22で前記した位相差が許容範囲内となると、前記した出力信号の出力を開始する。
【0018】
図3は、本発明の出力信号制御プログラムのクレーム対応図を示したものである。本発明の出力信号制御プログラム30は、コンピュータに、位相差測定処理31と、位相差許容範囲判別処理32と、出力制御処理33と、出力開始処理34を実行させるようにしている。ここで、位相差測定処理31では、所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記した入力端子から所定の遅延時間選択処理で遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める。位相差許容範囲判別処理32では、位相差測定処理31で測定した前記した出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する。出力制御処理33では、位相差許容範囲判別処理32が前記した位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記した出力信号の出力を遮断する。出力開始処理34では、位相差許容範囲判別処理32で前記した位相差が許容範囲内となると、前記した出力信号の出力を開始する。
【0019】
<発明の実施の形態>
【0020】
次に本発明の実施の形態を説明する。
【0021】
図4は、本発明の実施の形態における出力信号制御装置の構成を表わしたものである。本実施の形態における出力信号制御装置200は、入力端子201からパルス状の入力信号202を入力するディレイライン(DL)部203を備えている。ディレイライン部203は、本実施の形態で遅延時間の異なる第1〜第5の遅延素子(共に図示せず。)を内蔵しており、出力側に配置された第1〜第5の出力ライン2041〜2045に入力信号202をそれぞれ異なる遅延時間で遅延させた遅延信号2051〜2055を出力するようになっている。遅延信号2051〜2055はタップ選択部206に供給されて、その中の1つが選択され、所定の回路としての任意回路207に遅延信号208として入力される。
【0022】
任意回路207から出力される出力信号209は、接続端子210を介して遅延時間許容判定部211に入力されて遅延時間が許容できる範囲であるかの判定が行われ、出力信号212として出力端子213から出力される。また、任意回路207から出力される出力信号209は入力信号202と共に遅延測定比較部214に入力されて比較され、その結果として得られる制御信号215がタップ選択部206に供給されることになる。制御信号215は、たとえば入力信号202と出力信号209の比較から得られる遅延時間に比例する電圧を表わした信号である。
【0023】
このような出力信号制御装置200でタップ選択部206は、第1〜第5の出力ライン2041〜2045に入力端子を1つずつ接続した出力制御素子2211〜2215と、これらの出力制御素子2211〜2215の制御端子のいずれか1つを接地するタップ選択スイッチ222を備えている。タップ選択スイッチ222は、遅延測定比較部214から出力される制御信号215によって、出力制御素子2211〜2215の制御端子に接続されたタップの1つを選択するようになっている。これにより、出力制御素子2211〜2215のうちの制御端子が接地された素子がオンとなり、これから出力される遅延信号208が、任意回路207に入力されることになる。
【0024】
任意回路207の出力信号209は、次段の遅延時間許容判定部211に入力されて、出力信号212として出力端子213から出力される。任意回路207は出力信号制御装置200内に任意に配置可能な回路であって、その回路の内容が特に制限されるものではない。任意回路207の存在によって遅延信号208が更に遅延する可能性はある。入力信号202に対する出力信号209の遅延時間は、タップ選択部206によって選択された遅延時間と任意回路207自体で発生する遅延時間の合計値となる。任意回路207は出力信号制御装置200内に存在しなくてもよく、この場合には遅延信号208が出力信号209と同一となる。
【0025】
遅延時間許容判定部211は、接続端子210に現われた出力信号209が入力信号202からどれだけ遅延したかを測定する遅延測定部231と、遅延測定部231から出力される判断信号232によって出力信号209をオン・オフする出力遮断スイッチ233によって構成されている。出力遮断スイッチ233からは最終的な出力信号212が出力端子213に出力されることになる。
【0026】
このような出力信号制御装置200でタップ選択部206は、入力信号202に対する出力信号209の遅延時間が規定の範囲内に収まるようにディレイライン部203の出力する遅延信号2051〜2055を選択する。遅延時間許容判定部211は、この結果を入力して、遅延時間が出力端子213に接続された図示しない後段の回路で許容できる範囲内にない状態であれば、タップ選択部206を用いた遅延時間の収束が十分でない段階なので、遅延測定部231は遅延が規定範囲内にないものとして、出力遮断スイッチ233をオフに保つ。これにより、出力端子213から図示しない後段の回路に出力信号212が出力されることはなく、エラーの発生が防止されることになる。
【0027】
一方、遅延時間の収束が十分行われる状態になったとき、あるいは制御当初から入力信号202に対する出力信号209の遅延時間が規定の範囲内に収まっていれば、遅延時間許容判定部211の遅延測定部231は遅延が規定範囲内にあるものとして、出力遮断スイッチ233をオンにする。これにより、出力端子213から図示しない後段の回路に出力信号212が出力される。この場合、図示しない後段の回路で出力信号212によるエラーが発生するおそれはない。
【0028】
出力信号制御装置200は、以上のような基本構成となっている。本実施の形態では、出力信号制御装置200の遅延測定比較部214等の主要部をソフトウェアで機能的に実現するようにしている。このために出力信号制御装置200はCPU(Central Processing Unit;中央演算処理ユニット)241とメモリ242を備える主制御部243を有している。メモリ242には、作業メモリとしての領域の他に、CPU241が実行する制御プログラムが格納されている。
【0029】
図5は、ディレイライン部に内蔵された第1〜第5の遅延素子の遅延時間を表わしたものである。図4と共に説明する。
【0030】
本実施の形態では、第1の遅延素子の遅延時間は「0」であり、実際には遅延素子が配置されていない。第2〜第5の遅延素子の遅延時間は単位時間1τずつ遅延時間が長くなっている。第5の遅延素子の遅延時間4τは、入力端子201から入力される入力信号202の通常想定される遅延の最大幅あるいはそれ以上の時間に設定されている。
【0031】
これにより、通常想定される時間幅の範囲内で入力信号202の入力するタイミングが一時的にずれたとしても、第1〜第5の遅延素子の遅延時間の選定を理想的に行うことができれば、タップ選択部206から出力される遅延信号208の相対的なずれを規定の範囲内に納めることができる。
【0032】
図6は出力信号制御装置の遅延測定比較部およびタップ選択部を中心とした一次遅延制御の様子を表わしたものである。図4および図5と共に説明する。
【0033】
出力信号制御装置200の入力端子201が入力信号202を受信すると(ステップS301:Y)、遅延測定比較部214は任意回路207からの出力信号209が入力信号202に対してどの程度遅延しているかを調べる(ステップS302)。これは、たとえば入力信号202と出力信号209の信号波形の立ち上がった部位あるいは立ち下がった部位を時間的に比較することで判別する。
【0034】
CPU241は、この結果、得られた出力信号209の遅延時間が予め定めた規定範囲よりも小さいかをチェックする(ステップS303)。小さいと判別した場合には(Y)、遅延時間に比例する電圧で表わされた制御信号215をタップ選択スイッチ222に供給することで、遅延時間が大きなタップを選択する(ステップS304)。そして、再び入力信号202の受信を待機することになる(リターン)。
【0035】
一方、出力信号209の遅延時間が規定範囲と同一かこれよりも大きいと判別した場合(ステップS303:N)、CPU241は制御信号215をタップ選択スイッチ222に供給することで、遅延時間が小さなタップを選択する(ステップS305)。そして、再び入力信号202の受信を待機することになる(リターン)。
【0036】
図7は、出力信号制御装置の遅延時間許容判定部を中心とした二次遅延制御の様子を表わしたものである。図4および図5と共に説明する。
【0037】
図6で示した処理による一次遅延制御が開始され、タップ選択スイッチ222がタップを選択したとする。遅延測定部231はこの後に入力信号202の受信を検知すると(ステップS311:Y)、これを基準として任意回路207からの出力信号209の遅延時間を測定する(ステップS312)。遅延測定部231は、測定した遅延時間(位相差)が出力端子213に接続された図示しない後段の回路との関係で、エラーを発生させない値の範囲内としての規定値内であるかを判別する(ステップS313)。この結果、エラーを発生させない値の範囲外と判別された場合(N)、判断信号232によって出力遮断スイッチ233が出力信号209の出力を遮断する(ステップS314)。この場合、出力信号212が出力端子213から出力されない状態で、処理がステップS311に戻される(リターン)。これにより、出力端子213から図示しない後段の回路に出力信号212が出力されることはなく、エラーの発生が防止される。
【0038】
入力信号202の受信が開始されてから時間が経過して一次遅延制御によるタップ選択部206を用いた遅延時間の収束が行われて来たとする。このような場合には、ステップS312による遅延時間(位相差)の測定結果が規定値内となる(ステップS313:Y)。これにより出力遮断スイッチ233がオン状態に変化して(ステップS315)、処理をステップS311に戻す(リターン)。これにより、出力遮断スイッチ233が出力信号209を遮断しなくなるので、出力端子213から出力信号212の出力が開始されることになる。
【0039】
以上説明したように本実施の形態の出力信号制御装置200では、一次遅延制御と二次遅延制御が時間的に並行して行われる。そして、一次遅延制御では、入力端子201から入力される入力信号202に時間軸上の遅延が生じても、ディレイライン部203の選択によって入力信号202と出力信号209の位相差を次第に収束させるようにしている。また、二次遅延制御では、後段の回路に位相の許容値よりもずれた出力信号が出力されることによりエラーが生じる不具合を、出力遮断スイッチ233を使用して解消している。
【0040】
このような本実施の形態の出力信号制御装置200によれば、規定範囲内に修正された信号だけを外部に出力し、規定された範囲内の遅延時間でない信号は外部に出力しないようにした。これにより、外部での信号の位相のずれによるエラーをなくすことができる。また、入力信号と出力信号の位相差を比較し、位相差が規定範囲に収まっていない場合には、出力を遮断することにしたので、入出力信号の位相がずれてしまっている状況であっても位相差が規定範囲内に収束するまで出力を遮断し、ディレイライン部203の選択によって位相差が規定範囲内に収束した場合のみ出力を行うことができる。これにより、たとえば図示しないクロックによって読み取りが不可能となるような出力信号が後段の回路に出力されることがない。
【0041】
なお、位相差が規定範囲内に収束するまで出力を遮断する場合には、出力信号を遮断された回路側でこの信号遮断を感知して、信号の伝達経路を切り替える等の次善措置(フェールセーフ)を行うようにしてもよい。
【0042】
また実施の形態では、ディレイライン部203に遅延素子を5種類配置し、そのうちの1つの遅延時間を「0」としたが、遅延素子の種類の数および各遅延素子の遅延時間は任意に設定することができる。更に実施の形態では図4に示した遅延時間許容判定部211および遅延測定比較部214等の回路をソフトウェアによって機能的に実現するようにしたが、ハードウェアで同様の回路を構成してもよいことは当然である。
【0043】
更に実施の形態では制御信号215を遅延時間に比例する電圧を表わした信号としたが、これに限るものではない。たとえば、遅延時間に比例する電流を表わした信号あるいは遅延時間に対応するパルス数を表わした信号等の各種の形態を採ることができる。
【0044】
以上説明した実施の形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されるが、以下の記載に限定されるものではない。
【0045】
(付記1)
所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記入力端子から所定の回路を経由することで前記入力信号の遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める位相差測定手段と、
この位相差測定手段により測定した前記出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する位相差許容範囲判別手段と、
この位相差許容範囲判別手段が前記位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記出力信号の出力を遮断する出力制御手段
とを具備することを特徴とする出力信号制御装置。
【0046】
(付記2)
前記出力制御手段は、前記位相差許容範囲判別手段が前記位相差が許容範囲内であると判別すると、前記出力信号の出力を開始する出力開始手段を具備することを特徴とする付記1記載の出力信号制御装置。
【0047】
(付記3)
前記所定の回路は、複数のタップから1つのタップを選択することにより複数の遅延時間の中から特定の1つの遅延時間を設定可能なディレイラインと、前記入力信号と前記ディレイラインの出力信号とを比較して出力信号の前記入力信号に対する遅延時間を規定範囲内になるように選択する遅延時間選択手段とを具備することを特徴とする付記1記載の出力信号制御装置。
【0048】
(付記4)
前記所定の回路は、前記ディレイラインと直列に接続された任意の回路によって構成されることを特徴とする付記3記載の出力信号制御装置。
【0049】
(付記5)
前記所定の回路は、前記ディレイラインのみによって構成されることを特徴とする付記3記載の出力信号制御装置。
【0050】
(付記6)
前記任意の回路はこれを通過する信号を所定時間遅延させる回路であることを特徴とする付記4記載の出力信号制御装置。
【0051】
(付記7)
所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記入力端子から所定の遅延時間選択ステップで遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める位相差測定ステップと、
この位相差測定ステップで測定した前記出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する位相差許容範囲判別ステップと、
この位相差許容範囲判別ステップが前記位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記出力信号の出力を遮断する出力制御ステップと、
前記位相差許容範囲判別ステップで前記位相差が許容範囲内となると、前記出力信号の出力を開始する出力開始ステップ
とを具備することを特徴とする出力信号制御方法。
【0052】
(付記8)
前記所定の遅延時間選択ステップは、複数のタップにそれぞれ対応した遅延時間の中から特定の1つの遅延時間を設定可能なディレイラインに入力された前記入力信号の出力信号と前記入力端子から直接入力される入力信号を比較する比較ステップと、この比較ステップにより得られた前記ディレイラインの出力信号の遅延時間が規定範囲内になるように前記複数のタップから1つのタップを選択するタップ選択ステップとを具備することを特徴とする付記7記載の出力信号制御方法。
【0053】
(付記9)
コンピュータに、
所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記入力端子から所定の遅延時間選択処理で遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める位相差測定処理と、
この位相差測定処理で測定した前記出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する位相差許容範囲判別処理と、
この位相差許容範囲判別処理が前記位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記出力信号の出力を遮断する出力制御処理と、
前記位相差許容範囲判別処理で前記位相差が許容範囲内となると、前記出力信号の出力を開始する出力開始処理
とを実行させることを特徴とする出力信号制御プログラム。
【0054】
(付記10)
前記所定の遅延時間選択処理では、複数のタップにそれぞれ対応した遅延時間の中から特定の1つの遅延時間を設定可能なディレイラインに入力された前記入力信号の出力信号と前記入力端子から直接入力される入力信号を比較する比較処理と、この比較処理により得られた前記ディレイラインの出力信号の遅延時間が規定範囲内になるように前記複数のタップから1つのタップを選択するタップ選択処理とを前記コンピュータに実行させることを特徴とする付記9記載の出力信号制御プログラム。
【符号の説明】
【0055】
10、200 出力信号制御装置
11 位相差測定手段
12 位相差許容範囲判別手段
13 出力制御手段
20 出力信号制御方法
21 位相差測定ステップ
22 位相差許容範囲判別ステップ
23 出力制御ステップ
24 出力開始ステップ
30 出力信号制御プログラム
31 位相差測定処理
32 位相差許容範囲判別処理
33 出力制御処理
34 出力開始処理
201 入力端子
202 入力信号
203 ディレイライン部
205 遅延信号
206 タップ選択部
207 任意回路
209、212 出力信号
211 遅延時間許容判定部
213 出力端子
214 遅延測定比較部
215 制御信号
222 タップ選択スイッチ
231 遅延測定部
233 出力遮断スイッチ
241 CPU
242 メモリ
243 主制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記入力端子から所定の回路を経由することで前記入力信号の遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める位相差測定手段と、
この位相差測定手段により測定した前記出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する位相差許容範囲判別手段と、
この位相差許容範囲判別手段が前記位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記出力信号の出力を遮断する出力制御手段
とを具備することを特徴とする出力信号制御装置。
【請求項2】
前記出力制御手段は、前記位相差許容範囲判別手段が前記位相差が許容範囲内であると判別すると、前記出力信号の出力を開始する出力開始手段を具備することを特徴とする請求項1記載の出力信号制御装置。
【請求項3】
前記所定の回路は、複数のタップから1つのタップを選択することにより複数の遅延時間の中から特定の1つの遅延時間を設定可能なディレイラインと、前記入力信号と前記ディレイラインの出力信号とを比較して出力信号の前記入力信号に対する遅延時間を規定範囲内になるように選択する遅延時間選択手段とを具備することを特徴とする請求項1記載の出力信号制御装置。
【請求項4】
前記所定の回路は、前記ディレイラインと直列に接続された任意の回路によって構成されることを特徴とする請求項3記載の出力信号制御装置。
【請求項5】
前記所定の回路は、前記ディレイラインのみによって構成されることを特徴とする請求項3記載の出力信号制御装置。
【請求項6】
前記任意の回路はこれを通過する信号を所定時間遅延させる回路であることを特徴とする請求項4記載の出力信号制御装置。
【請求項7】
所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記入力端子から所定の遅延時間選択ステップで遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める位相差測定ステップと、
この位相差測定ステップで測定した前記出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する位相差許容範囲判別ステップと、
この位相差許容範囲判別ステップが前記位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記出力信号の出力を遮断する出力制御ステップと、
前記位相差許容範囲判別ステップで前記位相差が許容範囲内となると、前記出力信号の出力を開始する出力開始ステップ
とを具備することを特徴とする出力信号制御方法。
【請求項8】
前記所定の遅延時間選択ステップは、複数のタップにそれぞれ対応した遅延時間の中から特定の1つの遅延時間を設定可能なディレイラインに入力された前記入力信号の出力信号と前記入力端子から直接入力される入力信号を比較する比較ステップと、この比較ステップにより得られた前記ディレイラインの出力信号の遅延時間が規定範囲内になるように前記複数のタップから1つのタップを選択するタップ選択ステップとを具備することを特徴とする請求項7記載の出力信号制御方法。
【請求項9】
コンピュータに、
所定の入力端子から直接入力される入力信号と、前記入力端子から所定の遅延時間選択処理で遅延時間を調整しながらその都度出力される出力信号との間で位相差を逐次求める位相差測定処理と、
この位相差測定処理で測定した前記出力信号の位相差がこの出力信号を入力する回路で許容範囲内であるかを判別する位相差許容範囲判別処理と、
この位相差許容範囲判別処理が前記位相差が許容範囲内でないと判別する状態で、前記出力信号の出力を遮断する出力制御処理と、
前記位相差許容範囲判別処理で前記位相差が許容範囲内となると、前記出力信号の出力を開始する出力開始処理
とを実行させることを特徴とする出力信号制御プログラム。
【請求項10】
前記所定の遅延時間選択処理では、複数のタップにそれぞれ対応した遅延時間の中から特定の1つの遅延時間を設定可能なディレイラインに入力された前記入力信号の出力信号と前記入力端子から直接入力される入力信号を比較する比較処理と、この比較処理により得られた前記ディレイラインの出力信号の遅延時間が規定範囲内になるように前記複数のタップから1つのタップを選択するタップ選択処理とを前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項9記載の出力信号制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−85190(P2012−85190A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231137(P2010−231137)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(000232254)日本電気通信システム株式会社 (586)
【Fターム(参考)】