説明

出力規制された医療用皮膚下照射治療装置

【課題】経皮的レーザ治療においてレーザ放射線を制御可能に解放するための装置および方法を提供する。
【解決手段】光ファイバが皮膚の下かまたは血管ルーメン内に所定の点まで挿入される。ファイバは、レーザ等の電磁放射線の源へ接続される。次いで、放射線は治療部位へ送出され、一方、ファイバは同時に入力点へ引き抜かれる。ファイバは所定の速度で手で引き抜かれ、放射線は、一定の出力またはエネルギのレベルで投与される。一定の適切なエネルギ密度を維持するために、引き抜きの速度が測定され、制御機構へ送られる。制御機構は放出された出力、パルス長さまたはパルス繰返し数を修正し、血管または組織が一定の分量のエネルギを受け取るのを確実にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚下放射線療法の分野に関する。より詳細には、本発明は、出力規制されたレーザ皮膚下または血管療法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動出力または波長制御は公知であり、様々なレーザ用途で様々な形態に使用される。そのような公知の装置は、様々なパラメータを使用し、それによってレーザエネルギを制御する。放射線の一貫した添加を確実にするために、たとえば出力またはパルス繰返し数等の放射線パラメータを規制するための手段を提供することが有利であることが多く、または、変化する治療状態に応答してパラメータを変えるための手段を提供することが有利であることが多い。出力電力またはパルス繰返し数を適切に規制することができないと、エネルギの過剰投与のため穿孔、傷跡または皮膚の変色のリスクを高めることによって、放射線治療の安全性を危うくする可能性がある。適切な出力規制なしでは、不十分なエネルギを提供するというリスクも存在し、したがって、領域を不十分に治療し追加治療が必要になる可能性が生じる。
【0003】
一般に、フィードバック機構を使用して、治療部位に関する情報を制御ユニットへ供給し、これは次いで、最適な効果を提供するために、レーザの出力、周波数または他の特徴を調整することができる。そのようなフィードバック情報は、反射したビーム、プローブまたはファイバの温度、および、治療した組織または周囲の組織の温度を測定することを含む。一定の不変放射線パラメータを提供するために、適所にあるフィードバックシステムもあり、一方、治療効果を最大限にするために送出された放射線を修正するものもある。
【0004】
たとえば、[特許文献1]には、ビームコントローラおよび少なくとも1つの組織特徴(温度、テクスチャ、弾性、サイズおよび形状)を検出するための検出器を具備する、美容治療において表皮組織を切除するための装置が開示されている。ビームコントローラは、検出された組織の種類に関して検出器によって提供されたフィードバックに基づいてビーム特徴を変える。たとえば、ハンドピースは色を検出してもよく、コントローラは、健全な組織を切除するのを回避するために肝斑等の皮膚のマークに対してレーザを作動させるようにのみプログラムされてもよい。別の例は、組織が切除されるべきか否かを決定するために、組織の特徴をハンドピースへ中継する第2のレーザビームを特徴とする。この発明は、切除皮膚再表面づけに限定され、主に走査装置である。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,074,382号
【0006】
基準として組織パラメータを使用する別の特許は、[特許文献2]であり、これは、奇形血管を外部から照射する。検出器は、異なる色の血管を検出して、血管への照射を制限する。反射光は治療領域から装置へ移動し、これは、ビームが所定の色のついた領域上にあるときにのみ放射線の放出を可能にする。この発明は、治療領域にわたる外部走査に関与し、血管のみが治療されるのを確実にするためにレーザをオンおよびオフにする。
【0007】
【特許文献2】米国特許第5,531,740号
【0008】
[特許文献3]には、機械的エネルギおよびレーザエネルギの両方を使用して心臓組織にチャネルを形成するための装置および方法が記載されている。針を使用して肉に貫入し、ファイバが針からさらに延在し、次に照射して組織を気化させ、組織にチャネルを形成する。装置は、位置信号を制御装置へ送り、これは、針および/またはファイバ先端が所定の深さへ移動したときを示す。異なるエネルギ送出速度を選択することができるが、送出速度は、治療中は一定であるように思われ、位置では変動しない。
【0009】
【特許文献3】米国特許第6,231,568号
【0010】
Kolesaらによる[特許文献4]には、経心筋的血行再建術(TMR)および血管形成術を行う際に使用されるべき制御された前進レーザ切除装置が記載されている。TMR等の切除処置では、レーザファイバが前進する速度が非常に重要であるが、手で進める技術では制御するのが困難である。Kolesaは、前進する速度を自動的に制御するための装置を提供している。この装置では、前進する速度は、治療の前に決定される。ファイバが移動することができる深さを限定する装置もまた開示されている。この発明は切除装置に限定され、所定の出力レベルおよび前進速度を特徴とする装置を提供する。
【0011】
【特許文献4】米国特許第6,135,996号
【0012】
[特許文献5]には、様々な皮膚状態を治療するために、または、血管治療のために、レーザ源および光ファイバを使用する皮膚下治療用の装置および方法が開示されている。この方法は、挿入の方法は提供せず、ファイバ先端の位置に依存してレーザ出力を自動的に制御する方法を提供しない。さらに、出力は、手動で規制されなければならない。
【0013】
【特許文献5】米国特許第6,176,854号
【0014】
[特許文献6]には、カテーテルルーメン内にファイバを進めて引っ込めるための、且つ、エネルギ伝達を制御するための装置が記載されている。ファイバは、摺動機構に接続され、それは、ルーメンが適切に位置づけられた後に医師がファイバ先端をルーメンから露出することを可能にし、したがって、治療前にファイバ先端を露出しなければならないことを回避する。また、エネルギがファイバを通って伝達されるのを可能にする切替手段も記載されている。ファイバがルーメン内部にある間に偶然照射するのを防止するために遠位端が一定の予め選択された点を超える場合にはエネルギがファイバを通って移動するのを防止する手段を特徴とする。この発明は、位置依存レーザ制御であり、放射線パラメータを自動的に調整する手段を含まない。
【0015】
【特許文献6】米国特許第4,846,171号
【0016】
温度に依存し、したがって照射された組織を過加熱するのを避けるための安全特徴である、レーザ出力を自動的に制御するための装置は存在する。たとえば、[特許文献7]には、組織内に凝固を誘発するための間質性腫瘍温熱療法装置が記載されている。組織を過加熱するのを避けるためにサーモカップルが組織の熱を測定し、組織の過照射を防止する。好適な実施の形態において、ファイバは、一定の所定の範囲内で組織の温度を維持するのに十分な速度で引き抜かれる。モータがサーモカップルに接続され、そのため、これが応答して、温度が高くなりすぎる場合にはファイバをより速く引き、温度が低くなりすぎる場合にはファイバをより遅く引く。
【0017】
【特許文献7】米国特許第5,222,953号
【0018】
[特許文献8]には、血管または動脈の組織を切除するための装置および方法が記載されている。装置は、レーザ源、光ファイバ、カテーテル、および、ファイバを連結し回転するための装置から構成される。コンピュータ化されたモニタリングおよびガイダンスシステムが、妨害材料の測定に基づいてファイバの所望の運動を計算する。
【0019】
【特許文献8】米国特許第5,733,277号
【0020】
放射線治療用に、オペレータに依存することなく多数のパラメータに基づいて放射線送出装置の電力出力またはパルス繰返し数を効果的に規制することによって、領域の過少治療または過大治療を防止する装置および方法が必要である。本発明はこの必要性に対応する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明の目的は、皮膚下レーザ治療の治療結果を改善する装置および方法を提供することである。
【0022】
本発明の別の目的は、レーザの添加から人為的エラーを除去することによって皮膚下レーザ治療の正確さを改良する装置および方法を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、より正確な治療を確実にするためにレーザ出力の自動修正を提供する装置および方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、ファイバを手で引き抜いている間に一貫した血管照射を確実にする腔内血管治療用の装置および方法を提供することである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、放射線送出装置の運動の速度および/または位置に応答して放射線パラメータを自動的に調整する装置および方法を提供することである。
【0026】
本発明のさらに別の目的は、組織の特徴および状態に応答して放射線パラメータを自動的に調整する装置および方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0027】
簡単に述べると、本発明は、経皮的放射線治療において放射線を制御可能に解放するためのシステムおよび方法を開示する。好適な実施の形態において、レーザは光ファイバに連結され、それは、皮膚の下または血管ルーメン内に所定の点まで挿入される。ファイバは、レーザ、非コヒーレント放射線源、高出力レーザダイオード、LEDおよび超音波源等の電磁放射線の源に接続される。次いで、放射線は治療部位へ送出され、一方、ファイバは同時に入力点へ引き抜かれる。ファイバは所定の速度で手で引き抜かれ、放射線は、一定の出力またはエネルギのレベルで照射される。一定の適切なエネルギ密度を維持するために、引き抜きの速度が測定され、制御機構へ送られる。制御機構は放出された出力、パルス長またはパルス繰返し数を修正し、血管または組織が一定の分量のエネルギを受け取るのを確実にする。1つの好適な実施の形態において、撮像装置は、ファイバまたはカテーテルの表面テクスチャ特性に基づいて、または、一連のバーコード様マーキングに基づいて、制御装置に速度情報を与える。別の好適な実施の形態において、追加情報が収集され、たとえば、治療前の血管直径、ファイバの遠位端の位置、および/または、治療中の振動または温度等の衝撃測定であり、制御機構は、所望の出力密度を維持するために測定値に応答して出力電力またはパルス繰返し数を調整する。
【0028】
本発明の上記のおよび他の目的、特徴および利点は、添付の図面と併せて下記の説明を読むことから、明らかになる(異なる図面の類似参照符号は、同一要素を示す)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、たとえば、血管治療等の放射線治療またはシワ除去等の皮膚下治療の間に治療部位へレーザまたは他の治療エネルギの一貫した投与量を確実にするための効果的で確実な方法および装置を提供する。そのような処置では、不必要な損傷なしで組織へ臨床的に効果的な投与量のエネルギを送出することが重要である。レーザの場合には特定の出力密度、またはエネルギ量を、組織へ送出することが重要であり、したがって、本発明は、医師とは無関係に必要な出力密度が送出され、したがって、人為的エラーを避けることを確実にする。
【0030】
たとえば、本発明は、内発光レーザ治療用に適しており、治療ファイバが血管内または皮膚下に挿入され、固定出力設定で(たとえば、980nmで10W)レーザ光線が放出される。照射中に、ファイバは、所望の長さの血管壁または治療領域を照射するように、手で引き出すかまたは引き抜かれる。達成される効果が投与量依存であることは明らかであり、したがって、送出される投与量は、組織または血管からファイバを引き抜く速度に依存する。引き抜き速度が変化すると、結果として、送出される出力または出力密度の望ましくない変化になることもあり、したがって、得られる結果が変化し、たとえば、チャリング(charring)、変性およびしたがって不完全な治療結果等につながる。必然的に、ファイバが手で引き抜かれるときに変化が発生し、これは、引き抜き速度が人によって制御される限り、避けることはできない。しかし、多くの医師は依然として、処置の触覚を保存し患者の反応にすぐに応答することができるように、そのような送出装置を手で制御することができることを好む。本発明は、安定した引き抜き速度を強制するように試みるのではなく、引き抜き速度に基づいた出力をモニタし変化する装置を使用することによって、新規のアプローチを取る。
【0031】
好適な実施の形態において、本発明は、照射送出装置の、たとえば光ファイバの遠位端等の、照射手段の速度を測定するための手段を提供し、その情報を、送出装置および照射手段に連結された放射線源によって放出された出力を制御する手段へフィードバックする。フィードバックおよび制御のこのシステムは、一貫した放射線量が、ファイバかまたは放射線送出装置へ接続された他の照射手段の引き抜き路に沿ってすべての組織に加えられることを確実にする。パルス放射線を使用する治療用に、制御ユニットは、代わりに、引き抜き速度に応じて、パルス繰返し数またはパルス長を制御することができる。速度情報をレーザシステムへフィードバックすることによって且つ測定された速度に応じて出力電力を制御することによって、改良された治療結果を期待することができる。この測定およびフィードバックは、たとえば、挿入されるべきファイバの所与の長さに沿ってバーコード様マーキングで、ファイバをエンコードすることによって達成することができる。次いで、選択された基準点を過ぎたこれらのマーキングの動きは、引き抜きの速度を決定するために測定装置によって読み取ることができる。
【0032】
別の好適な実施の形態において、ハンドピースまたは他の中空装置が使用され、それは、たとえば針等の送出ルーメンに接続され、ファイバ、ファイバを含むカテーテルまたは他の放射線送出装置を組織または血管構造物内に導入する。引き戻しの速度を測定する手段は、ハンドピースに組み込まれるかまたはそれに接着されることが好ましいが、測定手段は、ファイバまたはカテーテルの長さ方向に沿ったいずれの所望の点でシステム内に組み込まれてもよい。光ファイバは、調節可能なパワーレーザ源に光学的に連結される。レーザ出力を制御する手段は、測定手段とレーザ源との両方に連結される。ファイバが組織または血管から引き出されるときに、測定手段は、引き戻しの速度を決定し、この情報を制御手段へ送る。制御する手段は、予め選択されたプロトコルに基づいて適切な放出出力を決定し、それに応じて放射線出力を決定する。
【0033】
制御する手段は、放射線源またはエネルギ源に取り付けられてもよく、または、遠隔的に接続されてもよい。好適な実施の形態において、制御する手段は、異なる放射線源に交換可能に接続されることができる。これは、好ましくは、ラップトップまたはデスクトップのコンピュータ等の制御ユニットであってもよい。測定手段は、ファイバ、カテーテルまたは他のエネルギ送出装置の周期的なマーキングと併せて、感光ダイオードを含むいずれの数の装置であることができ、送出装置が測定手段を通って進むときに各マーキングの間の間隔によってファイバまたは送出装置の運動の速度を測定する。遮光マーキングの間の間隔は制御ユニットへ送られ、これは速度を計算し、出力を調整して適切な線量を維持する。この測定および調整プロセスは、治療プロセス中に連続して派生し、引き戻し速度のわずかな変動を考慮に入れ補正することを確実にする。あるいは、上述の周期的なマーキングは、LEDまたは他の光源に高度に反射してもよい。次いで、感光ダイオードまたは他の測定手段を使用して、反射マーキングのためより高く測定された光強度の間の間隔を記録することによってマーキングの間の間隔を測定することができる。次いで、制御ユニットは、これらの間隔から計算された速度に基づいて放射線またはエネルギの出力を調整する。マーキングは、いずれの数の装置に配置することができ、凝固または治療のために放射線または他のエネルギを送出するために異なるサイズおよび長さの光ファイバおよびカテーテルを含む。
【0034】
測定手段の別の実施の形態は、光学速度および位置測定装置であり、それを通って、光ファイバまたはカテーテルを含む放射線送出装置を進めるかまたは引き抜くことができる。この実施の形態において、測定手段は、LED等の照明源、撮像装置、画像処理手段、および、速度または位置の情報を制御装置へ中継する手段から構成される。測定手段は静止していることが好ましい。測定手段は、上述のもの等のハンドピース内に組み込まれてもよい。好適な実施の形態において、測定手段は、透明なチューブのまわりに位置決めされ、それを通って放射線送出装置を進めるかまたは引き抜くかする。測定手段は、実際に、パソコンで頻繁に使用される光学式マウスに類似して作用する。照明源は、送出装置の表面を照明し、撮像手段は表面の一連の画像を取る。送出装置表面のテクスチャ特徴の変化に基づいて、測定手段は、送出装置の運動の速度および方向を決定する。この情報から且つ処置の開始時に入力された位置情報に基づいて、測定手段は、ベアファイバ先端またはディフューザ等の照射手段の位置を決定することもできる。この情報は、制御ユニットへ連続して中継され、それは次いで、放射線量を変えるか、または、情報をユーザへ与える。上述のようなバーコード様マーキングは、この実施の形態とも併せて使用することができる。
【0035】
本発明のさらなる実施の形態は、測定手段および制御ユニットに加えて、引き抜きモータを含むことを特徴とする。この実施の形態において、制御ユニットは、速度および出力情報に基づいて、引き抜きの速度と放出された出力との両方を制御し、処置に対するさらなる制御を可能にする。カテーテルまたは光ファイバを自動的に引き抜くために引き抜きモータが含まれ、測定手段からの情報に基づいて制御ユニットによって制御される。モータは、一定の速度で引き抜くのを維持することができるか、または、多数のパラメータに基づいて引き抜きを変える。1つのパラメータの例は、血管直径であり、放射線出力は一定に保たれ、血管直径が変わるにつれて制御ユニットは引き抜き速度を変えて、一定の出力密度を維持する。他のパラメータは、放射源によって放出される出力を含み、制御ユニットは適切な引き抜き速度を計算して維持し、所与の出力密度を生成する。出力密度は、一定であってもよく、または、治療の必要性に依存してまたはユーザの所望に応じて変動してもよい。ユーザはまた、たとえば治療時間を最小限にするために、変動する引き抜き速度および出力密度の組み合わせを使用することを好むこともある。1つの引き抜きステップで血管全体を照射するのを避けるのが望ましい場合には、モータはまた、ユーザが規定したステップでカテーテルを引き抜くために制御されてもよい。1つの例において、制御ユニットは、モータがファイバを規定されたインクレメントで引き抜くように方向づける。モータは、カテーテルまたは光ファイバを所与の長さのインクレメント(たとえば10mm)だけ引き抜き、血管のセクションを照射し、次いで、別のインクレメントを引き抜き、次の照射を行う、等である。
【0036】
追加の安全特徴は、モータを追加することによって実現することができる。モータによって必要とされる力が所与のレベルを越える場合には、制御ユニットは引き抜きを停止するようにプログラムすることができ、そのため、問題が発生した場合には治療を自動的に停止することができる。さらに、アラームまたは他の可聴または視覚の手段が含まれ、問題がある場合にはユーザに警告する。そのような問題は、光ファイバが凝固した組織に貼り付いた場合を含んでもよい。また、モータは、所与の治療用の適切な引き抜き速度に関して、より新しいユーザに指示するのに有用でありうる。制御ユニットは、所望の出力密度および所与の放射線出力に基づいて正確な引き抜き速度を決定した後に、モータを使用して光ファイバまたはカテーテルを正確な速度で引き抜くことによって、治療を行うことができる。より新しいユーザは、後の治療用に手動の引き抜きが望ましい場合に正確な引き抜き速度を観察し覚えることができる。
【0037】
この実施の形態は、上述のような引き抜きモータを含み、光学式マウスの実施の形態で特に有用である。光学式マウスは、速度および位置の連続測定を提供して正確な位置を検証することによって追加の安全特徴として作用することができ、モータは正確な速度で引き抜いている。制御ユニットは、このフィードバック情報を使用して、モータを制御し所望の出力密度を維持することができる。
【0038】
本発明のいくつかの用途において、ファイバの位置、血管の種類に基づいてエネルギ源のパラメータを変えることが望ましいこともあり、または、治療の進捗に基づいて出力が変化する治療を提供することが望ましいこともある。たとえば、予め選択された「パワーステップラダー(power step ladder)」を制御装置内にプログラムすることができる(たとえば、13、10、7、5および3ワットレベル)。制御ユニットは、治療が進むにつれて各レベルへ進み、または、血管の直径が著しく変わるにつれて変動する。治療前に、医師は、遠位開始点での血管のサイズ、血管の近位端での血管のサイズ、および、治療されるべき血管の長さ等の情報を入力する。制御ユニットは、次いで、治療されている血管長さのパーセンテージに基づいて源の電力出力を変えることができる。この装置を使用して、枝および網状脈を含むすべての種類の血管を治療することができる。
【0039】
先に述べたように、本発明は、治療前に制御ユニットに入力されたような好適な放射線量情報に基づいて放射線出力を制御する。別の実施の形態において、制御装置は、先の治療から提供された情報を使用して適切な放射線量を決定する。「学習モード」において、制御装置は、熟練した医師による治療中に受け取られた情報から学習する。たとえば、測定手段および制御ユニットは、導入器ハンドピースに嵌り、治療の種類、血管ルーメンのサイズおよび場所、放射線パラメータ(波長等)およびディフューザまたはファイバの種類に関する情報が制御装置に入力される。次いで、医師は、先の経験に基づいて治療を行う。測定手段はファイバの速度を測定し、制御ユニットは、治療パラメータに基づいて、適切な放射線量、または、「専門的な」状態を決定する。次いで、この情報は、将来の治療のために格納される。後の治療のために、治療情報は、先と同様に入力され、制御装置は、適切な投与量を維持するために送出される出力を自動的に調整することによってか、または、たとえば、「専門的な」状態を効果があるようにするために引き抜きをスピードアップするかまたはスローダウンするようにユーザを促すことによってか、のいずれかで、治療をモニタする。
【0040】
代替の実施の形態において、制御ユニットは、所望の投与量を維持するために送出される出力を自動的に変える代わりに、ユーザへ投与情報を提供する。この情報は、たとえば、音響フィードバック、たとえば、ユーザが所定の投与範囲から外れているときに鳴り出すアラームであってもよく、または、ユーザがモニタすることができるグラフィックディスプレイであってもよい。情報を提供するこれらの方法のいずれかをユーザが使用して、進める/引き抜く速度を調整し、放射線量を適切なレベル内に維持する。
【0041】
本発明は、レーザ用途に限定されず、組織を凝固する他の手段のためにも有用である。たとえば、ラジオ周波数源を様々な用途に使用して、身体の多数の領域を治療することができる。また、超音波源もまた、組織を凝固するために本発明とともに使用されてもよい。レーザ治療の文脈で上述された原則は、上記治療用電磁気放射線源に等しく適用可能である。
【0042】
本発明は、同様に、速度依存出力規制に限定されない。有効量の放射線が治療領域に加えられるのを確実にするために、治療前または治療中のいずれかでモニタすることもできる多数の測定可能なパラメータがある。放射線源の活性化の前に、適切な領域が照射されていることを確実にするために、ファイバ先端またはディフューザ等の照射手段の位置の測定を取ることができる。好適な実施の形態において、上記速度測定用に使用される遮光マークは、血管または組織を通って進められている光ファイバの長さを計算することによって、照射手段の位置を測定するためにも使用されてよい。他の前治療パラメータは、血管直径の測定を含み、これは、適切な出力密度を確実にするために、放射された出力の計算用に制御ユニットへ中継される。
【0043】
治療中に、過照射を防止するために組織に対する放射線の衝撃を測定することによって、照射された組織の状態をモニタすることが望ましい。そのような衝撃測定は、音、振動、温度、および、組織が望ましく影響を受けているか否かを決定するのに関係する他の状態を測定することを含む。たとえば、組織の温度を測定するための手段は、血管が変性されたか/破壊されたか否かを決定するために有用である。温度検知手段は、光ファイバの遠位端に位置決めされることができ、温度測定値を制御ユニットへ中継する。制御ユニットは、測定値を、血管を変性するか/破壊するのに必要な公知の温度と比較することができ、出力またはパルス繰返し数を調整して温度を達成するか、または、血管を過加熱して周囲の健全な組織を損傷するのを回避する。
【0044】
本発明に述べられたシステムの好適な実施の形態は、図1に例示される。この例において、光ファイバ101を使用して、血管103へ放射線を送出する。ファイバ101は、調節可能なレーザ源105に光学的に連結され、ハンドピース107を通って供給される。ハンドピース107は、この実施の形態では、針109および測定装置111からさらに構成される。ファイバ101は、ハンドピース107を通って且つ皮膚113を通って、血管103内に針109によって供給される。システムはまた、制御ユニット115も含み、これは、好ましくは、マイクロプロセッサかまたはコンピュータである。制御ユニット115は、測定手段111および源105の両方に接続される。ファイバ101が医師によって引き抜かれるときに、運動の速度の情報が、測定手段111から制御ユニット115へ送られる。この情報を使用して、治療前に制御ユニット115へ入力された治療プロトコルに基づいて所望の出力レベルを決定する。放出された出力が制御ユニット115によって計算された所望の出力とは異なる場合には、出力は、所望の出力に整合するように調整される。
【0045】
測定手段111の好適な実施の形態は、図2に例示される。ファイバ101は、複数の暗色マーキングまたはバー117を含む。光検出器119は、感光ダイオードであってもよく、ファイバ101の近くに位置決めされ、光源121は、低出力光をファイバ101に反射させ、検出器109によって検知される。光源121は、白色光を放出するランプまたはLEDでありうる。ファイバ101が源121および検出器119を通るときに、バー117は、反射され検出される光の量を変える。反射光の量のこれらの変化、および、バー117によるそのような変化の間の間隔は、引き戻し速度決定のために制御ユニット115へ中継される。
【0046】
本発明に述べられたシステムの他の好適な実施の形態は、図3aおよび3bに例示され、下記のように説明される。測定手段は、標準光ワイヤレスマウス301から構成され、これは、光センサ305の下に貼付された透明なガラスチューブ303を有する。カテーテル307は、レーザから血管内に放射線を伝達するための光ファイバを含み、治療放射線源から延在し、ガラスチューブ303を通って供給され、カテーテルまたは光ファイバを血管内に挿入するために、ハンドピースまたは他の手段内に延在する。任意に、基部プレート309は、マウスの下側およびガラスチューブ303を収容するように形状づけられ、マウス301の下側およびチューブ303に取り付けられる。基部プレート309は、治療されるべき血管近傍の患者の皮膚の表面等の表面に、測定手段を容易に配置するのを可能にする。基部プレート309の底部は、平らであってもよく、または、それが載置する表面に従うように形状づけられてもよい。
【0047】
次いで、カテーテル307は、血管を通って進めるか引き抜くことができ、一方、測定手段は静止であり、光学式マウス301は、運動を検出することができ、位置および運動の情報をコンピュータへ伝達することができる。先に入力された治療パラメータに基づいて、コンピュータはレーザの出力レベルを調整し、一貫した線量を確実にする。さらに、適切な放射線量を決定する際に、血管直径も考慮に入れることができる。カテーテル307を血管内に挿入するときの血管直径は、コンピュータに入力され、カテーテル307は血管内に進む。各所望の位置で、ユーザはマウス301をクリックし、その位置で血管直径を入力する。コンピュータは、各入力された位置で、血管直径および位置情報を格納する。引き抜き時に、コンピュータは、各位置におけるカテーテル307の引き抜き速度および血管の直径に基づいて、各位置における出力レベルを計算する。
【0048】
本発明の別の利点は、医師が、一貫した投与量が加えられていることを確実にすることができながら、処置に対して大きな制御を有することである。医師は、患者の可能性のある不快を含むいずれの理由で、引き戻しを速くするか遅くするかの選択肢を有し、また、引き戻しを完全に停止することによっていずれのときに照射を中断してもよい。
【0049】
本発明は、理想的には、皮膚下または腔内の治療用放射線装置とともに使用するのに適切であり、たとえば、Del Giglioによって[特許文献9]に記載された皮膚下治療装置等である。
【0050】
【特許文献9】米国特許第6,200,332号
【0051】
本発明は、下記の実施例によってさらに例示されるが、それによって限定されない。
【実施例1】
【0052】
静脈瘤の治療において、使用される光ファイバのサイズは、治療されるべき血管の直径に依存して変動する。サイズが3または4mmまでの血管を治療するために、400ミクロンの光ファイバが血管内に挿入される。4mmよりも大きな血管用には、600ミクロンのファイバが使用される。
【0053】
レーザは、0.3秒の作業時間および0.3秒の待機時間で連続パルスモードに設定される。レーザ出力電力は、血管のサイズに依存して変動する。直径が4mm未満の血管には、7〜10ジュールのパワーが必要であり、直径が4mmよりも大きな血管には、12〜15ジュールが必要である。
【0054】
治療の前に、異常な長さの血管は、先の試験から識別される。上述のような所要電力および好適な引き出し速度が決定される。次いで、治療のマークされた線に沿って、局所麻酔が使用される。次に、血管のコースが検出され、下記のように治療される。光ファイバが血管内に挿入され、レーザが単一パルスモードに設定される。次いで、レーザ出力が投与される。血管を閉じる瘢痕を形成するのに、一連の10〜15フラッシュが十分である。次に、レーザ設定を連続パルスモードに変える。光ファイバは引っ込められ、血管の内部壁およびその血液含有量を自由にフラッシュする。制御ユニットは、ファイバの長さ方向に沿った一連のマーキングに基づいて引き出し速度を測定し、好適な引き戻し速度に基づいてパルス繰返し数を調整する。このようにして、一貫した出力が投与され、連続凝固線が血管内部に形成される。レーザフラッシュは、特に、血管を破壊する微泡破裂を形成することによって血液に影響を与え、これは、回復時に、後に吸収されるべき薄い線維を形成する。
【0055】
添付の図面を参照して本発明の好適な実施の形態を説明してきたが、本発明は厳格な実施の形態に限定されず、添付の特許請求の範囲に規定されるような本発明の範囲または精神から逸脱することなく、当業者によって様々な変更および修正がなされてもよいことを、理解するべきである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のシステムの図である。
【図2】測定手段の実施の形態の二次元側面図である。
【図3】3aは組み立てられた好適な実施の形態の図である。3bは3aの組み立てられていない好適な実施の形態の図である。
【符号の説明】
【0057】
101 光ファイバ
103 血管
105 レーザ源
107 ハンドピース
109 針
111 測定手段
113 皮膚
115 制御ユニット
117 バー
119 光検出器
301 標準光ワイヤレスマウス
303 ガラスチューブ
307 カテーテル
309 基部プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚下治療用の出力規制された医療用放射線治療装置であって、
放射線源と、
前記放射線源に連結された少なくとも1つの放射線送出装置であって、前記送出装置の遠位端で皮膚下治療領域を照射する手段を具備する装置と、
患者の皮膚下に前記送出装置の遠位端を導入する手段と、
前記照射手段の前記皮膚下治療領域に対する運動の速度および/または位置を測定する手段と、
前記照射手段の前記運動の速度および/または位置に応じて前記源によって放射された放射線のパラメータを制御する手段と、
を具備する皮膚下治療用の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項2】
前記放射線源は、レーザ源と、ハイパワーランプと、レーザダイオードと、発光ダイオードと、ダイオードアレイと、からなる群から選択される請求項1記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項3】
前記放射線送出装置は、光ファイバと、光ファイバを含むカテーテルシステムと、からなる群から選択される請求項1記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項4】
前記治療領域を照射する手段は、ベアファイバ先端と、成形ファイバ先端と、ディフューザと、からなる群から選択される請求項1記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項5】
前記放射線のパラメータは、出力レベルと、パルス長と、パルス繰返し数と、からなる群から選択される請求項1記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項6】
前記測定手段は、前記光ファイバの外側表面に周期的なマークを含む請求項3記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項7】
前記測定手段は、
測定放射線の源と、
前記放射線送出装置の表面の一連の画像を捉える手段と、
前記照射手段の前記表面の変化に基づいて、前記照射手段の速度および方向を決定する手段と、
を具備し、
速度および方向を決定する前記手段は静止であり、患者の皮膚下へ前記光ファイバを導入する前記手段の近位端に接続されている請求項3記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項8】
前記測定放射線の源は、発光ダイオードである請求項7記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項9】
前記放射線送出装置の制御された引き抜き用のモータをさらに具備し、前記モータは前記制御手段によって操作される請求項7記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項10】
前記測定手段は、光源および光検出器をさらに具備する請求項6記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記測定手段に接続されて、前記測定手段から情報を受け取り、前記情報を速度値に変換し、所望の出力密度を得るために予め選択されたパラメータに基づいて前記源から放射線出力を変える請求項10記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項12】
前記照射手段の位置を測定する手段と、前記位置が予め選択された治療位置とは異なる場合に照射を防止する手段と、をさらに具備する請求項1記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項13】
前記治療領域における前記放射線の衝撃を測定する手段をさらに具備し、前記制御手段は、測定された衝撃にしたがって前記出力を変えることができる請求項1記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項14】
前記衝撃測定値は、音の測定値と、振動の測定値と、温度の測定値と、からなる群から選択される請求項13記載の出力規制された医療用放射線治療装置。
【請求項15】
出力規制された医療用血管治療装置であって、
放射線源と、
前記放射線源に光学的に接続された少なくとも1つの光ファイバと、
前記血管内部の前記光ファイバの運動の速度を測定し、且つ、前記測定された運動の速度に応じて前記光ファイバによって受け取られている前記放射線源の出力を制御する手段と、
を具備する医療用血管治療装置。
【請求項16】
前記血管内部の前記ファイバの遠位端の位置を測定する手段と、前記測定された位置が所定の治療位置とは異なる場合に前記血管の照射を防止する手段と、をさらに具備する請求項15記載の出力規制された医療用血管治療装置。
【請求項17】
前記血管の長さ方向に沿って前記血管の直径を測定する手段と、前記測定された直径に基づいて所望の出力密度を達成するために前記放射線を変える手段と、をさらに具備する請求項15記載の出力規制された医療用血管治療装置。
【請求項18】
出力規制された医療用血管治療装置であって、
放射線源と、
前記源に光学的に接続された少なくとも1つの光ファイバと、
前記血管内部の前記光ファイバを使用して照射治療の衝撃を測定し、且つ、前記衝撃測定に応じて前記光ファイバによって受け取られている前記放射線源の出力を制御する手段と、
を具備する医療用血管治療装置。
【請求項19】
前記衝撃は、振動と、音と、温度と、からなる群から選択される請求項18記載の出力規制された医療用血管治療装置。
【請求項20】
a.適切な治療パラメータを予め選択するステップと、
b.選択された血管内の所定の位置へ放射線送出装置を挿入する装置と、
c.前記放射線源を活性化するステップと、
d.前記放射線送出装置を手で引き抜くステップと、
e.一貫した治療を確実にするために引き抜きの速度に基づいて出力を自動的に調整するステップと、
を含む請求項1記載のシステムを使用する医療用放射線治療のための方法。
【請求項21】
前記治療パラメータは、出力と、パルス繰返し数と、出力およびパルス繰返し数の両方の組み合わせと、からなる群から選択される請求項20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−521890(P2006−521890A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509510(P2006−509510)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/009827
【国際公開番号】WO2004/089462
【国際公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(502359666)セラムオプテック インダストリーズ インコーポレーテッド (20)
【Fターム(参考)】