説明

分光測定装置、分光測定方法、及び分光測定プログラム

【課題】 発光材料の評価に好適に用いることが可能な分光測定装置、方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】 試料Sが内部に配置され、励起光を入射する入射開口部21及び試料Sからの被測定光を出射する出射開口部22を有する積分球20と、被測定光を分光して波長スペクトルを取得する分光分析装置30と、データ解析装置50とを備えて分光測定装置1Aを構成する。解析装置50は、波長スペクトルにおいて励起光に対応する第1対象領域、及び試料Sからの発光に対応する第2対象領域を設定する対象領域設定部と、第1、第2対象領域を用いて波長スペクトルを解析する試料情報解析部とを有し、試料情報解析部は、励起光スペクトルについて、参照波長スペクトルでの励起光ピークを、試料の波長スペクトルでの励起光ピークに合わせ、その状態でスペクトルの減算を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積分球を備える分光測定装置、及び分光測定装置を用いて実行される分光測定方法、分光測定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料から発せられる光の強度を測定するために積分球が用いられている。積分球の内壁は、高い反射率を有しかつ拡散性に優れたコーティングまたは材料からできており、内壁面に入射した光は多重拡散反射される。そして、この拡散された試料からの光が、積分球の所定位置に設けられた出射開口部を介して光検出器に入射されて検出され、それによって試料における発光の強度などの情報を、試料での発光パターン、発光の角度特性などに依存することなく高精度で取得することができる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
積分球を用いた測定の対象となる試料の一例として、有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子がある。有機EL素子は、一般に、ガラスや透明な樹脂材料からなる基板上に陽極、発光層を含む有機層、及び陰極が積層された構造を有する発光素子である。陽極から注入される正孔と陰極から注入される電子とが発光層において再結合することで光子が発生し、発光層が発光する。
【0004】
有機EL素子の発光特性の測定、評価においては、注入された電子数に対する素子外部に放出された光子数の割合で定義される外部量子効率などが重要となる。また、有機EL素子で使用される発光材料の測定、評価においては、試料が吸収する励起光の光子数に対する試料からの発光の光子数の割合で定義される発光量子収率(内部量子効率)が重要となる。積分球を用いた光測定装置は、このような有機EL素子における量子効率の評価にも好適に用いることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3287775号公報
【特許文献2】特開2007−33334号公報
【特許文献3】特開2007−86031号公報
【特許文献4】特開2006−22331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、次世代ディスプレイや次世代照明の研究開発において、低消費電力化という観点で有機EL素子などの発光素子の発光効率を上げるため、発光素子に用いられる発光材料の発光量子収率(内部量子効率)の評価の重要性が増してきている。このような発光材料の発光量子収率の評価方法として、上記した積分球を備える光測定装置を用い、フォトルミネッセンス(PL)法によって発光材料の絶対発光量子収率を測定する方法がある。
【0007】
具体的には、PL法による発光量子収率の評価では、積分球内に配置された発光材料の試料に対して所定波長の励起光を照射し、試料が吸収する励起光の光子数に対する試料からの発光の光子数の割合で定義される発光量子収率を測定する。この場合、試料からの発光は、例えば励起光の照射によって励起された試料から発せられる蛍光であり、通常、励起光よりも長波長の光となる。
【0008】
また、このようなPL法による発光量子収率の測定においては、試料からの発光に加えて、試料で散乱、反射等された励起光成分が被測定光として検出される場合がある。これに対して、積分球から出射された被測定光の検出において、分光器を用いて被測定光の波長スペクトルを測定する方法を用いることにより、励起光と試料からの発光とを分離することができる(特許文献1参照)。
【0009】
ここで、積分球を用いた光測定装置で測定対象となる発光材料としては、近年、様々な種類の材料が開発されており、その目的や用途等に応じて励起光波長、及び蛍光波長(発光波長)も異なるものとなる。また、発光材料を用いた発光素子についても、様々な構成を有する発光素子の開発が進められつつある。
【0010】
そのような発光素子として、次世代照明として有望視されている白色LEDがある。白色LEDの構成の一例では、波長465nmの光などの青色光を発するLEDの上に黄色光を発する蛍光材料を載せ、LEDからの青色光と、LEDからの光で励起された蛍光材料からの黄色光とを混合することで白色光を得る構成が用いられている(例えば、特許文献4参照)。このような白色LEDに用いられる発光材料を評価する場合、試料からの発光を励起光から分離して測定する上記方法では、目的とする発光材料の使用状態での発光特性を充分に評価することができないという問題がある。
【0011】
本発明は、以上の問題点を解決するためになされたものであり、様々な構成の発光素子に用いられる発光材料の評価に好適に用いることが可能な分光測定装置、分光測定方法、及び分光測定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による分光測定装置は、測定対象の試料が内部に配置され、試料に照射される励起光を入射するための入射開口部、及び試料からの被測定光を出射するための出射開口部を有する積分球と、積分球の出射開口部から出射された被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得する分光手段と、分光手段によって取得された波長スペクトルに対してデータ解析を行うデータ解析手段とを備え、データ解析手段は、波長スペクトルにおいてデータ解析に用いる波長領域として、励起光に対応する第1対象領域、及び試料からの発光に対応し第1対象領域とは異なる波長領域である第2対象領域を設定する対象領域設定手段と、第1対象領域、及び第2対象領域を用いて波長スペクトルを解析して、試料についての情報を取得する試料情報解析手段とを有し、試料情報解析手段は、第1対象領域内の励起光スペクトルについて、試料とは別に取得された参照波長スペクトルでの励起光ピークを、試料に対して取得された波長スペクトルでの励起光ピークに合わせ、その状態でスペクトルの減算を行うことを特徴とする。
【0013】
また、本発明による分光測定方法は、測定対象の試料が内部に配置され、試料に照射される励起光を入射するための入射開口部、及び試料からの被測定光を出射するための出射開口部を有する積分球と、積分球の出射開口部から出射された被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得する分光手段とを備える分光測定装置を用い、分光手段によって取得された波長スペクトルに対してデータ解析を行う分光測定方法であって、波長スペクトルにおいてデータ解析に用いる波長領域として、励起光に対応する第1対象領域、及び試料からの発光に対応し第1対象領域とは異なる波長領域である第2対象領域を設定する対象領域設定ステップと、第1対象領域、及び第2対象領域を用いて波長スペクトルを解析して、試料についての情報を取得する試料情報解析ステップとを備え、試料情報解析ステップは、第1対象領域内の励起光スペクトルについて、試料とは別に取得された参照波長スペクトルでの励起光ピークを、試料に対して取得された波長スペクトルでの励起光ピークに合わせ、その状態でスペクトルの減算を行うことを特徴とする。
【0014】
また、本発明による分光測定プログラムは、測定対象の試料が内部に配置され、試料に照射される励起光を入射するための入射開口部、及び試料からの被測定光を出射するための出射開口部を有する積分球と、積分球の出射開口部から出射された被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得する分光手段とを備える分光測定装置に適用され、分光手段によって取得された波長スペクトルに対するデータ解析をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、波長スペクトルにおいてデータ解析に用いる波長領域として、励起光に対応する第1対象領域、及び試料からの発光に対応し第1対象領域とは異なる波長領域である第2対象領域を設定する対象領域設定処理と、第1対象領域、及び第2対象領域を用いて波長スペクトルを解析して、試料についての情報を取得する試料情報解析処理とをコンピュータに実行させ、試料情報解析処理は、第1対象領域内の励起光スペクトルについて、試料とは別に取得された参照波長スペクトルでの励起光ピークを、試料に対して取得された波長スペクトルでの励起光ピークに合わせ、その状態でスペクトルの減算を行うことを特徴とする。
【0015】
ここで、参照波長スペクトルとしては、試料とは別に参照試料に対して取得された波長スペクトルを用いることができる。
【0016】
この場合、参照試料は、所定の反射率で励起光を反射する標準反射試料であることが好ましい。また、参照試料は、試料を収容するための試料容器であることが好ましい。
【0017】
また、参照波長スペクトルとしては、試料が載置されていない状態の試料ホルダに対して取得された波長スペクトルを用いることができる。
【0018】
また、分光測定装置は、(1)測定対象の試料が内部に配置され、試料に照射される励起光を入射するための入射開口部、及び試料からの被測定光を出射するための出射開口部を有する積分球と、(2)積分球の出射開口部から出射された被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得する分光手段と、(3)分光手段によって取得された波長スペクトルに対してデータ解析を行うデータ解析手段とを備え、(4)データ解析手段は、波長スペクトルにおいてデータ解析に用いる波長領域として、励起光に対応する第1対象領域、及び試料からの発光に対応し第1対象領域とは異なる波長領域である第2対象領域を設定する対象領域設定手段と、第1対象領域内の波長スペクトル、及び第2対象領域内の波長スペクトルの少なくとも一方について、データ解析において波長スペクトルに重み付けを行うための重み係数を可変に設定する重み係数設定手段と、第1対象領域、第2対象領域、及び重み係数を用いて波長スペクトルを解析して、試料についての情報を取得する試料情報解析手段とを有する構成としても良い。
【0019】
また、分光測定方法は、(1)測定対象の試料が内部に配置され、試料に照射される励起光を入射するための入射開口部、及び試料からの被測定光を出射するための出射開口部を有する積分球と、(2)積分球の出射開口部から出射された被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得する分光手段とを備える分光測定装置を用い、(3)分光手段によって取得された波長スペクトルに対してデータ解析を行う分光測定方法であって、(4)波長スペクトルにおいてデータ解析に用いる波長領域として、励起光に対応する第1対象領域、及び試料からの発光に対応し第1対象領域とは異なる波長領域である第2対象領域を設定する対象領域設定ステップと、第1対象領域内の波長スペクトル、及び第2対象領域内の波長スペクトルの少なくとも一方について、データ解析において波長スペクトルに重み付けを行うための重み係数を可変に設定する重み係数設定ステップと、第1対象領域、第2対象領域、及び重み係数を用いて波長スペクトルを解析して、試料についての情報を取得する試料情報解析ステップとを備える構成としても良い。
【0020】
また、分光測定プログラムは、(1)測定対象の試料が内部に配置され、試料に照射される励起光を入射するための入射開口部、及び試料からの被測定光を出射するための出射開口部を有する積分球と、(2)積分球の出射開口部から出射された被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得する分光手段とを備える分光測定装置に適用され、(3)分光手段によって取得された波長スペクトルに対するデータ解析をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、(4)波長スペクトルにおいてデータ解析に用いる波長領域として、励起光に対応する第1対象領域、及び試料からの発光に対応し第1対象領域とは異なる波長領域である第2対象領域を設定する対象領域設定処理と、第1対象領域内の波長スペクトル、及び第2対象領域内の波長スペクトルの少なくとも一方について、データ解析において波長スペクトルに重み付けを行うための重み係数を可変に設定する重み係数設定処理と、第1対象領域、第2対象領域、及び重み係数を用いて波長スペクトルを解析して、試料についての情報を取得する試料情報解析処理とをコンピュータに実行させる構成としても良い。
【0021】
上記した分光測定装置、分光測定方法、及び分光測定プログラムにおいては、励起光入射用の開口部、及び被測定光出射用の開口部が設けられてフォトルミネッセンス法による試料の発光特性の測定が可能に構成された積分球と、励起光及び試料からの発光を波長スペクトルによって区別可能なように被測定光を分光測定する分光手段とを用いて分光測定装置を構成する。
【0022】
そして、分光手段によって取得された波長スペクトルに対して実行されるデータ解析について、波長スペクトルにおけるデータ解析の対象領域として、励起光に対応する波長領域と、試料からの発光に対応する波長領域との2つの対象領域を設定する。さらに、それらの対象領域の少なくとも一方に対し、対象領域内の波長スペクトルに重み付けするための重み係数を設定して、試料情報を取得するための波長スペクトルの解析を行っている。このような構成の分光測定装置等によれば、例えば有機EL素子や白色LEDなどの様々な構成の発光素子に用いられる発光材料を、その目的や用途等に応じて好適に評価することが可能となる。
【0023】
ここで、上記構成を有する分光測定装置は、データ解析手段が、第1対象領域、第2対象領域、及び重み係数を用いて波長スペクトルを解析するとともに、その解析結果から、励起光と試料からの発光とが所定割合で混合された場合に得られる色情報を取得する色情報解析手段をさらに有することが好ましい。
【0024】
同様に、分光測定方法は、第1対象領域、第2対象領域、及び重み係数を用いて波長スペクトルを解析するとともに、その解析結果から、励起光と試料からの発光とが所定割合で混合された場合に得られる色情報を取得する色情報解析ステップをさらに備えることが好ましい。
【0025】
同様に、分光測定プログラムは、第1対象領域、第2対象領域、及び重み係数を用いて波長スペクトルを解析するとともに、その解析結果から、励起光と試料からの発光とが所定割合で混合された場合に得られる色情報を取得する色情報解析処理をコンピュータにさらに実行させることが好ましい。
【0026】
このように、試料の発光特性の情報として、その波長スペクトルから色情報を取得することにより、例えば、試料の発光材料が白色LEDに用いられた場合に得られる白色光についての評価を行うなど、試料に関する様々な測定、評価を行うことが可能となる。
【0027】
また、波長スペクトルに対する対象波長領域の設定については、分光測定装置は、対象領域設定手段が、第1対象領域及び第2対象領域のそれぞれの波長領域について、波長スペクトルに含まれる強度ピークでのピーク波長、及び強度ピークを含むスペクトル部分でのピーク波形に基づいて、波長領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定することが好ましい。
【0028】
同様に、分光測定方法は、対象領域設定ステップにおいて、第1対象領域及び第2対象領域のそれぞれの波長領域について、波長スペクトルに含まれる強度ピークでのピーク波長、及び強度ピークを含むスペクトル部分でのピーク波形に基づいて、波長領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定することが好ましい。
【0029】
同様に、分光測定プログラムは、対象領域設定処理が、第1対象領域及び第2対象領域のそれぞれの波長領域について、波長スペクトルに含まれる強度ピークでのピーク波長、及び強度ピークを含むスペクトル部分でのピーク波形に基づいて、波長領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定することが好ましい。
【0030】
このように、波長スペクトル上で特定された強度ピークでのピーク波長及びピーク波形に基づいて各波長領域の両側の領域端を設定することにより、励起光と試料からの発光とにそれぞれ対応する第1、第2対象領域のそれぞれを好適かつ確実に設定することができる。また、このような波長領域の設定方法では、強度ピークの特定結果に基づいて第1、第2対象領域の設定を自動で実行することも可能である。
【0031】
この場合、分光測定装置は、対象領域設定手段が、第1対象領域及び第2対象領域のそれぞれの波長領域について、試料に対して取得された波長スペクトル、及び試料とは別に取得された参照波長スペクトルの少なくとも一方を参照して、波長領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定することが好ましい。
【0032】
同様に、分光測定方法は、対象領域設定ステップにおいて、第1対象領域及び第2対象領域のそれぞれの波長領域について、試料に対して取得された波長スペクトル、及び試料とは別に取得された参照波長スペクトルの少なくとも一方を参照して、波長領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定することが好ましい。
【0033】
同様に、分光測定プログラムは、対象領域設定処理が、第1対象領域及び第2対象領域のそれぞれの波長領域について、試料に対して取得された波長スペクトル、及び試料とは別に取得された参照波長スペクトルの少なくとも一方を参照して、波長領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定することが好ましい。
【0034】
このように、対象領域の設定において試料に対して取得された波長スペクトルとは別に取得された参照波長スペクトルを追加的に用いる場合、具体的な参照波長スペクトルとしては、例えば、所定の反射率で励起光を反射する標準反射試料を用いて取得された波長スペクトルを好適に使用することができる。あるいは、参照波長スペクトルとして、試料を収容する試料容器のみを積分球内に配置した状態で取得された波長スペクトルを好適に使用することができる。
【0035】
また、このような参照波長スペクトルを用いる場合、対象領域の設定において、この参照波長スペクトルを参照して励起光に対応する第1対象領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定するとともに、試料に対して取得された波長スペクトルを参照して試料からの発光に対応する第2対象領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明の分光測定装置、分光測定方法、及び分光測定プログラムによれば、様々な構成の発光素子に用いられる発光材料を、その目的や用途等に応じて好適に評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】分光測定装置の一実施形態の構成を模式的に示す図である。
【図2】積分球の構成の一例を示す断面図である。
【図3】積分球の構成の一例を示す断面図である。
【図4】データ解析装置の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】第1、第2対象領域、及び重み係数を用いた波長スペクトルの解析の一例を示すグラフである。
【図6】第1、第2対象領域、及び重み係数を用いた波長スペクトルの解析の他の例を示す図である。
【図7】分光測定装置の他の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【図8】波長スペクトルに対する対象領域の設定の例を示すグラフである。
【図9】分光測定方法の一実施形態の構成を示すフローチャートである。
【図10】測定モードにおける分光測定装置の動作例を示すフローチャートである。
【図11】調整モードにおける分光測定装置の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、図面とともに本発明による分光測定装置、分光測定方法、及び分光測定プログラムの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0039】
図1は、本発明による分光測定装置の一実施形態の構成を模式的に示す図である。本実施形態による分光測定装置1Aは、励起光供給部10と、積分球20と、分光分析装置30と、データ解析装置50とを備え、発光材料などの試料Sに対して所定波長の励起光を照射し、フォトルミネッセンス法によって試料Sの蛍光特性などの発光特性を測定、評価することが可能なように構成されている。
【0040】
励起光供給部10は、測定対象の試料Sに対して、その発光特性を測定するための励起光を照射する励起光供給手段である。図1に示す構成例では、励起光供給部10は、励起光源11と、励起光源11から供給された光を積分球20へと導光するライトガイド12と、励起光源11からの光のうちで所定の波長成分を選択して試料Sへと照射する励起光とする干渉フィルタなどの光フィルタ13とによって構成されている。
【0041】
積分球20は、測定対象の試料Sが内部に配置されて試料Sの発光特性の測定に用いられるものであり、試料Sに照射される励起光を積分球20内に入射するための入射開口部21と、試料Sからの被測定光を外部へと出射するための出射開口部22と、積分球20の内部に試料Sを導入する試料導入用の開口部23とを有して構成されている。また、試料導入開口部23には試料ホルダ24が固定されており、この試料ホルダ24上に試料Sが載置されている。
【0042】
積分球20の入射開口部21には、励起光入射用のライトガイド12の出射端部が固定されるとともに、ライトガイド12に対して励起光照射方向の前方側に光フィルタ13が設置されている。このライトガイド12としては、例えば光ファイバを用いることができる。また、積分球20の出射開口部22には、試料Sからの被測定光を後段の分光分析装置30へと導光するライトガイド25の入射端部が固定されている。このライトガイド25としては、例えばシングルファイバ、またはバンドルファイバを用いることができる。
【0043】
分光分析装置30は、積分球20の出射開口部22からライトガイド25を介して出射された試料Sからの被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得するための分光手段である。本構成例においては、分光分析装置30は、分光部31と、分光データ生成部32とを有するマルチチャンネル分光器として構成されている。
【0044】
分光部31は、積分球20から分光分析装置30へと入射された被測定光を波長成分に分解する分光器と、分光器からの光を検出する光検出器とによって構成されている。光検出器としては、例えば分光器によって分解された被測定光の各波長成分を検出するための複数チャンネル(例えば1024チャンネル)の画素が1次元に配列されたCCDリニアセンサを用いることができる。また、分光部31による測定波長領域は、具体的な構成、用途等に応じて適宜に設定して良いが、例えば300nm〜950nmである。
【0045】
分光データ生成部32は、分光部31を構成している光検出器の各チャンネルから出力される検出信号に対して必要な信号処理を行って、被測定光の分光データである波長スペクトルのデータを生成する分光データ生成手段である。分光データ生成部32で生成、取得された波長スペクトルのデータは、後段のデータ解析装置50へと出力される。
【0046】
データ解析装置50は、測定対象の試料Sに関して分光分析装置30によって取得された波長スペクトルに対して必要なデータ解析を行って、試料Sについての情報を取得するデータ解析手段である。データ解析装置50における具体的なデータ解析の内容については後述する。また、このデータ解析装置50には、データ解析等についての指示の入力、あるいは解析条件の入力等に用いられる入力装置61と、得られたデータ解析結果の表示等に用いられる表示装置62とが接続されている。
【0047】
図2及び図3は、図1に示した分光測定装置1Aに用いられる積分球20の構成の一例を示す図であり、図2は、積分球20の励起光の照射光軸Lに沿った縦断面図を示し、図3は、照射光軸Lに沿うとともに図2の断面図とは直交する方向での縦断面図をそれぞれ示している。ここで、本構成例においては、架台201によって支持された積分球20における垂直軸が、励起光の照射光軸Lとして設定されている。
【0048】
本構成例における積分球20は、取付ねじ202によって架台201に取り付けられた積分球本体200を備えている。また、この積分球本体200には、図1に関して上述した入射開口部21、出射開口部22、及び試料導入開口部23が設けられている。入射開口部21は、励起光の照射光軸Lの一方側である積分球本体200の上部に設けられている。試料導入開口部23は、照射光軸Lの他方側であって入射開口部21と対向する積分球本体200の下部に設けられている。
【0049】
また、出射開口部22は、図2に示すように、積分球本体200の中心位置を通り照射光軸Lに垂直な面上の所定位置に設けられている。また、試料導入開口部23と出射開口部22との間の所定位置には、積分球本体200の内部へと突出する遮光板205が設けられている。この遮光板205は、試料Sからの被測定光が直接、被測定光出射用のライトガイド25に入射するのを防止するためのものである。
【0050】
積分球本体200の入射開口部21には、励起光入射用のライトガイド12を接続するためのライトガイドホルダ210が挿入されて取り付けられている。また、出射開口部22には、被測定光出射用のライトガイド25を接続するためのライトガイドホルダ220が挿入されて取り付けられている。また、試料導入開口部23には、試料Sを載置するための試料ホルダ24が挿入されて取り付けられている。なお、図2及び図3においては、ライトガイド12の図示を省略している。
【0051】
励起光入射用のライトガイド12は、ライトガイドホルダ210のライトガイド保持部211によって位置決めされた状態で保持されている。励起光源11(図1参照)からの励起光は、ライトガイド12によって積分球20へと導光され、ライトガイドホルダ210内に設置された集光レンズ212によって集光されつつ、試料ホルダ24上に載置された試料Sに照射される。また、被測定光出射用のライトガイド25は、ライトガイドホルダ220によって位置決めされた状態で保持されている。
【0052】
励起光が照射された試料Sからの光は、積分球本体200の内壁に塗布された高拡散反射粉末によって多重拡散反射される。この拡散反射された光は、ライトガイドホルダ220に接続されたライトガイド25に入射され、ライトガイド25を介して被測定光として分光分析装置30へと導かれる。これによって、試料Sからの被測定光について分光測定が行われる。被測定光となる試料Sからの光としては、励起光の照射によって試料Sで生じた蛍光などの発光、及び励起光のうちで試料Sで散乱、反射等された光成分がある。
【0053】
図4は、図1に示した分光測定装置1Aに用いられるデータ解析装置50の構成の一例を示すブロック図である。本構成例におけるデータ解析装置50は、分光データ入力部51と、試料情報解析部52と、色情報解析部55と、解析データ出力部56とを有して構成されている。また、このデータ解析装置50では、試料情報解析部52に対して、対象領域設定部53と、重み係数設定部54とが設けられている。
【0054】
分光データ入力部51は、分光分析装置30によって取得された試料Sについての分光データである波長スペクトルのデータを入力する入力手段である。分光データ入力部51から入力された波長スペクトルのデータは、試料情報解析部52へと送られる。試料情報解析部52は、入力された波長スペクトルを解析して、試料Sについての情報を取得する試料情報解析手段である。また、分光データ入力部51から入力された波長スペクトルのデータは、必要に応じて色情報解析部55へも送られる。色情報解析部55は、入力された波長スペクトルを解析するとともに、その解析結果から、励起光と試料Sからの発光とが所定割合で混合された場合に得られる色情報を取得する色情報解析手段である。
【0055】
対象領域設定部53は、測定対象の試料Sに関して取得された波長スペクトルに対し、波長スペクトルにおいてデータ解析に用いる波長領域である対象領域を設定する対象領域設定手段である。具体的には、対象領域設定部53は、試料Sからの被測定光に、励起光(試料Sで散乱、反射等された励起光成分)と試料Sからの蛍光などの発光とが含まれていることに対応して、波長スペクトルにおける対象領域として、励起光に対応する短波長側の第1対象領域と、試料Sからの発光に対応し第1対象領域とは異なる波長領域である長波長側の第2対象領域とを設定する。
【0056】
また、重み係数設定部54は、励起光に対応する第1対象領域内の波長スペクトル、及び試料Sからの発光に対応する第2対象領域内の波長スペクトルの少なくとも一方について、重み係数を可変に設定する。この重み係数は、データ解析において対象領域内の波長スペクトルに重み付けを行うための係数として用いられる。
【0057】
これらの対象領域設定部53による対象領域の設定、及び重み係数設定部54による重み係数の設定は、所定の設定アルコリズムによって自動で、または操作者による入力装置61からの入力内容に基づいて手動で実行される。また、このような構成に対応して、試料情報解析部52及び色情報解析部55は、それぞれ、対象領域設定部53において設定された第1対象領域、第2対象領域、及び重み係数設定部54において設定された重み係数を用いて、分光分析装置30で取得された波長スペクトルの解析を行う。
【0058】
解析データ出力部56は、試料情報解析部52、色情報解析部55において解析が行われた試料情報、色情報についての解析結果を示すデータを出力する出力手段である。解析部52、55による解析結果のデータが出力部56を介して表示装置62へと出力されると、表示装置62は、その解析結果を操作者に対して所定の表示画面によって表示する。また、この出力部56による解析結果の出力先については、表示装置62に限らず、その他の装置にデータを出力しても良い。図4においては、解析データ出力部56に対して、表示装置62に加えて外部装置63が接続された構成を示している。このような外部装置63としては、例えば印刷装置、外部記憶装置、他の端末装置などが挙げられる。
【0059】
図1及び図4に示したデータ解析装置50において実行される分光測定方法に対応する処理は、分光手段の分光分析装置30によって取得された波長スペクトルに対するデータ解析をコンピュータに実行させるための分光測定プログラムによって実現可能である。例えば、データ解析装置50は、分光測定の処理に必要な各ソフトウェアプログラムを動作させるCPUと、上記ソフトウェアプログラムなどが記憶されるROMと、プログラム実行中に一時的にデータが記憶されるRAMとによって構成することができる。このような構成において、CPUによって所定の分光測定プログラムを実行することにより、上記したデータ解析装置50、及び分光測定装置1Aを実現することができる。
【0060】
また、分光測定のための各処理をCPUによって実行させるための上記プログラムは、コンピュータ読取可能な記録媒体に記録して頒布することが可能である。このような記録媒体には、例えば、ハードディスク及びフレキシブルディスクなどの磁気媒体、CD−ROM及びDVD−ROMなどの光学媒体、フロプティカルディスクなどの磁気光学媒体、あるいはプログラム命令を実行または格納するように特別に配置された、例えばRAM、ROM、及び半導体不揮発性メモリなどのハードウェアデバイスなどが含まれる。
【0061】
上記実施形態による分光測定装置、分光測定方法、及び分光測定プログラムの効果について説明する。
【0062】
図1〜図4に示した分光測定装置1A、分光測定方法、及び分光測定プログラムにおいては、励起光入射用の開口部21、及び被測定光出射用の開口部22が設けられてPL法による試料Sの発光特性の測定が可能に構成された積分球20と、励起光及び試料Sからの発光を波長スペクトルによって区別可能なように被測定光を分光測定する分光分析装置30とを用いて分光測定装置1Aを構成する。
【0063】
そして、分光分析装置30によって取得された波長スペクトルに対してデータ解析装置50で実行されるデータ解析について、対象領域設定部53において、波長スペクトルにおけるデータ解析の対象領域として、励起光に対応する波長領域と、試料Sからの発光に対応する波長領域との2つの対象波長領域を設定する。さらに、重み係数設定部54において、それらの対象領域の少なくとも一方に対し、対象領域内の波長スペクトルに重み付けするための重み係数を設定している。
【0064】
このような構成では、例えば有機EL素子に用いられる発光材料を試料Sとし、その発光特性を測定、評価する場合、励起光に対応する第1対象領域で重み係数を0(減衰率100%)に設定し、試料Sからの発光に対応する第2対象領域で重み係数を1(減衰率0%)に設定する。これにより、試料Sからの発光スペクトルを励起光スペクトルから分離して、発光材料の発光強度ピークなどの情報を高精度で取得することができる。
【0065】
また、例えば白色LEDに用いられる発光材料を試料Sとし、その発光特性を評価する場合、励起光に対応する第1対象領域で重み係数を可変に設定し、試料Sからの発光に対応する第2対象領域で重み係数を固定で1に設定する。これにより、白色LEDの構成や動作条件等に応じて、発光材料の発光特性の情報を好適に取得することができる。このように、上記構成の分光測定装置1A等によれば、様々な構成の発光素子に用いられる発光材料を、その目的や用途等に応じて好適に評価することが可能となる。なお、このように励起光の第1対象領域で重み係数を可変にして励起光スペクトルの強度調整を行う場合、重み係数を励起光ピークの減衰率等によって定義しても良い。
【0066】
また、図4に示した構成例では、データ解析装置50において、試料情報解析部52に加えて、波長スペクトルの解析結果から、励起光と試料Sからの発光とが所定割合で混合された場合に得られる色情報を取得する色情報解析部55を設けている。このように、試料Sの発光特性の情報として、励起光スペクトルと発光スペクトルとをそれぞれ所定割合で含む波長スペクトルから色情報を取得することにより、例えば、試料Sの発光材料が白色LEDに用いられた場合に全体として得られる白色光についての評価を行うなど、試料に関する様々な測定、評価を行うことが可能となる。
【0067】
特に、上記構成の分光測定装置1Aでは、重み係数設定部54において励起光の第1対象領域及び試料Sからの発光の第2対象領域に対する重み係数を変えながら、それによる色情報の変化を調べるなど、色情報についての様々の有益な情報を取得することが可能となる。このような試料Sについての解析結果は、例えば、試料Sの発光材料を用いた白色LEDを設計する際に、励起光と試料Sからの発光との混合比などについての有益な参照情報とすることができる。
【0068】
すなわち、試料Sの蛍光材料を用いて白色LEDを構成する場合、蛍光材料からの蛍光と、蛍光材料を透過した励起光の一部とが混合されることで白色光が生成される。一方、上記のように積分球20を用いた分光測定では、検出される励起光成分は励起光のうちで試料Sで散乱、反射等された光成分であり、白色LEDの場合とは励起光、及び試料Sからの発光の混合条件が異なる。また、白色LEDの設計においては、励起光波長及び試料Sの蛍光波長の組合せ、LED光源上に塗布される蛍光材料の塗布量など、様々な設計条件についての検討が必要となる。これに対して、上記のように第1、第2対象領域で波長スペクトルに重み付けしながら解析を行う方法によれば、このような白色LEDの設計についても、様々な情報を取得することが可能となる。
【0069】
重み係数設定部54による第1、第2対象領域への重み係数の設定については、具体的には様々な方法を用いることができる。例えば、発光に対応する第2対象領域については重み係数を1に固定しておき、励起光に対応する第1対象領域についての重み係数のみを可変に設定する構成を用いることができる。あるいは、第1、第2対象領域についての重み係数をそれぞれ可変に設定可能な構成としても良い。一般には、第1、第2対象領域の少なくとも一方について重み係数が可変に設定可能な構成であれば良い。また、対象領域設定部53による対象領域の設定については、例えば試料Sからの発光に対して複数の波長領域を対象領域とするなど、必要に応じて3つ以上の対象領域を設定しても良い。
【0070】
また、波長スペクトルに対する第1、第2対象領域の設定については、試料Sに対して取得された波長スペクトルに加えて、試料Sとは別に取得された参照波長スペクトルを併せて用いても良い。この場合の参照波長スペクトルとしては、例えば、試料Sとは別に参照試料(リファレンスサンプル)に対して取得された波長スペクトルを用いることができる。
【0071】
また、このように参照試料を用いる場合、具体的な参照試料としては、例えば所定の反射率で励起光を反射する標準反射試料を用いることができる。また、参照試料としては、試料Sを収容するための試料容器(例えば合成石英セル)を用いることができる。あるいは、標準反射試料などの参照試料を用いず、試料Sや参照試料等が載置されていない状態の試料ホルダ24自体を参照試料として機能させ、試料ホルダ24に対して取得された波長スペクトルを参照波長スペクトルとして用いても良い。この場合、試料ホルダ24としては、その表面が拡散反射材等で覆われた試料ホルダを用いることが好ましい。
【0072】
また、このように参照試料、試料容器、あるいは試料ホルダ24について取得された励起光の波長スペクトルである参照波長スペクトルをデータ解析に用いる場合、試料Sについて取得された励起光+発光の波長スペクトルに対する第1対象領域での励起光スペクトルの重み付けについては、参照波長スペクトルにおける励起光スペクトルを用いたスペクトルの減算によって行っても良い。
【0073】
図5は、第1、第2対象領域、及び重み係数を用いた波長スペクトルの解析の一例を示すグラフである。このグラフにおいて、横軸は分光分析装置30において分解、検出された被測定光の各成分の波長(nm)を示し、縦軸は各波長での発光強度(被測定光の検出強度、a.u.)を示している。
【0074】
本解析例では、試料Sについて分光分析装置30で取得された波長スペクトルに対し、励起光(試料Sで散乱、反射等された励起光成分)に対応する短波長(高エネルギー)側の第1対象領域R1と、試料Sからの発光に対応する長波長(低エネルギー)側の第2対象領域R2とを設定している。また、発光の第2対象領域R2内の波長スペクトルについては重み係数を1(減衰率0%)に固定するとともに、励起光の第1対象領域R1内の波長スペクトルについて重み係数を可変(減衰率0%〜100%)に設定している。
【0075】
具体的には図5においては、励起光に対する重み係数を1.0(減衰率0%)とした場合の波長スペクトルをグラフA1に、励起光に対する重み係数を0.5(減衰率50%)とした場合の波長スペクトルをグラフA2に、励起光に対する重み係数を0.0(減衰率100%)とした場合の波長スペクトルをグラフA3にそれぞれ示している。
【0076】
なお、図5の例においては、第1対象領域R1内の励起光スペクトルに対する重み付けについて、上記したように参照波長スペクトルにおける励起光スペクトルを用いたスペクトルの減算によって行っている。例えば、励起光の減衰率100%のグラフA3の場合、参照波長スペクトルでの励起光ピークを試料Sの波長スペクトルでの励起光ピークに合わせ、その状態でスペクトルの減算を行えば良い。また、励起光の減衰率50%のグラフA2の場合、参照波長スペクトルでの励起光ピークを試料Sの波長スペクトルでの励起光ピークの50%の強度に合わせ、その状態でスペクトルの減算を行えば良い。
【0077】
図6は、第1、第2対象領域、及び重み係数を用いた波長スペクトルの解析の他の例を示す図である。ここで、図6(a)は、波長スペクトルを色情報について解析して得られる色度座標情報を含むxy色度図を示している。また、図6(b)は、図6(a)に示したxy色度図の各解析点について具体的なデータの内容を示す表である。本解析例においても、対象領域及び重み係数の設定方法については、図5に示した例と同様である。
【0078】
具体的には図6においては、励起光に対する重み係数を1.0(減衰率0%)とした場合の色情報を解析点P1に、励起光に対する重み係数を0.5(減衰率50%)とした場合の色情報を解析点P2に、励起光に対する重み係数を0.0(減衰率100%)とした場合の色情報を解析点P3にそれぞれ示している。これらの解析点P1、P2、P3は、それぞれ図5におけるグラフA1、A2、A3に対応している。
【0079】
また、これらの測定対象の試料Sに対して取得された解析点P1〜P3に加えて、図6では、試料Sとは別に取得された参照波長スペクトルについての解析点P0を併せて示している。この解析点P0は、青色光である励起光の色情報に対応している。また、解析点P1〜P3に示すように、励起光を含む波長領域に対する重み係数を変えることにより、励起光と試料Sからの発光とを混合して得られる光の色情報(色度座標x、y)が変化していることがわかる。なお、xy色度図において、その左下の領域は青色光に対応しており、中心付近の領域が白色光に対応している。
【0080】
ここで、図1に示した分光測定装置1Aでは、試料Sに所定波長の励起光を供給する励起光供給部10を、励起光源11と、光フィルタ13とを用いて構成しているが、励起光供給部10の構成については、具体的には様々な構成を用いて良い。図7は、分光測定装置の他の実施形態の構成を模式的に示す図である。
【0081】
本実施形態による分光測定装置1Bでは、励起光源11と、励起光源11からの光のうちで所定の波長成分を選択して励起光とする分光器14と、分光器で波長成分が選択された励起光を積分球20へと導光するライトガイド12とによって励起光供給部10を構成している。このように、励起光の波長選択に分光器14を用いる構成によれば、励起光の波長を可変に設定して、試料Sに対する様々な分光測定に対応することが可能となる。なお、図7においては、分光分析装置30及びデータ解析装置50等について図示を省略している。また、図1に示した構成においても、光フィルタ13を交換することにより、励起光の波長を可変に設定することが可能である。
【0082】
また、分光測定装置を用いて白色LEDについての評価を行う場合には、励起光供給部10において、励起光源として、白色LEDで使用される蛍光材料を励起するためのLEDあるいはレーザ光源等を用いても良い。この場合、蛍光材料とそれを励起する励起光源との組合せについて、実デバイスに近い状態で発光量子収率の評価、及び重み付けによる色情報の評価を行うことが可能となる。
【0083】
データ解析装置50の対象領域設定部53における第1対象領域(励起光)、及び第2対象領域(発光)の設定方法について説明する。対象領域設定部53において実行される波長スペクトルに対する対象領域の設定については、第1、第2対象領域のそれぞれの波長領域について、波長スペクトルに含まれる強度ピークを特定するとともに、その強度ピークでのピーク波長、及び強度ピークを含むスペクトル部分でのピーク波形に基づいて、波長領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定することが好ましい。
【0084】
このように、波長スペクトル上で特定された強度ピークでのピーク波長及びピーク波形(スペクトル波形)に基づいて各波長領域の両側の領域端を設定することにより、励起光と試料Sからの発光とに対応する第1、第2対象領域のそれぞれを好適かつ確実に設定することができる。この場合の具体的な対象領域の設定方法としては、操作者が表示装置62に表示された波長スペクトルを確認し、波長スペクトルに含まれる強度ピークでのピーク波長、及びピーク波形を参照しつつ、領域端を示すカーソルを表示されたグラフ中で操作して対象領域を設定する構成を用いることができる。
【0085】
あるいは、上記した対象領域の設定方法では、強度ピークの特定、及び第1、第2対象領域の設定を、波長スペクトルに含まれる強度ピークでのピーク波長、及びピーク波形に基づいて自動で実行する構成とすることも可能である。この場合、試料Sに対する分光測定を全体として効率化することができる。
【0086】
また、波長スペクトル上で特定された強度ピークを参照して波長領域を設定する上記構成では、対象領域設定部53において、第1、第2対象領域のそれぞれの波長領域について、試料Sに対して取得された励起光+発光の波長スペクトル、及び試料Sとは別に取得された励起光についての参照波長スペクトルの少なくとも一方を参照して、波長領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定する方法を用いても良い。これにより、励起光に対応する第1対象領域の設定等を好適に実行することができる。ただし、参照波長スペクトルを用いずに、試料Sに対して取得された励起光+発光の波長スペクトルのみから第1、第2対象領域を設定する構成としても良い。
【0087】
また、上記のように励起光についての参照波長スペクトルを用いる場合、対象領域の設定において、参照波長スペクトルを参照して励起光に対応する第1対象領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定するとともに、試料Sに対して取得された波長スペクトルを参照して試料Sからの発光に対応する第2対象領域の短波長側領域端、及び長波長側領域端を設定することが好ましい。また、具体的な参照波長スペクトルについては、上述したように、標準反射試料などの参照試料に対して取得された波長スペクトル、試料容器のみに対して取得された波長スペクトル、あるいは試料Sや参照試料等を載置していない試料ホルダ24自体に対して取得された波長スペクトルを用いることが可能である。
【0088】
図8は、波長スペクトルに対する対象領域の設定の例を示すグラフであり、図8のグラフ(a)はリニアスケールでの波長スペクトルを示し、図8のグラフ(b)はログスケールでの波長スペクトルを示している。図8のグラフ(a)、(b)において、グラフB0は、励起光について取得された参照波長スペクトルを示している。また、グラフB1は、測定対象の試料Sである発光材料に対して取得された励起光+発光の波長スペクトルを示している。ここでは、参照波長スペクトルとして、試料を収容していない状態の試料容器に対して取得された波長スペクトルを用いている。
【0089】
また、グラフ中において、励起光に対応する短波長側の第1対象領域R1について、その短波長側領域端をC1、長波長側領域端をC2として示している。また、試料Sからの発光に対応する長波長側の第2対象領域R2について、その短波長側領域端をC3、長波長側領域端をC4として示している。なお、図8において、グラフ(a)とグラフ(b)とでは、第2対象領域R2の短波長側領域端C3の設定方法、及び設定された領域端の波長位置が異なるものとなっている。
【0090】
励起光に対応する第1対象領域R1の設定では、参照波長スペクトルB0を参照し、波長スペクトルB0をスキャンして励起光の強度ピークを検出して、そのピーク波長を決定する。一方、想定される励起光ピークのピーク波形に基づいて、対象領域R1の波長幅をあらかじめ決めておく。そして、求められたピーク波長に対してその波長幅を適用して、第1対象領域R1の領域端C1、C2を設定する。図8のグラフ(a)、(b)に示す例では、励起光のピーク波長に対して、波長幅を±10nmとして第1対象領域R1の領域端C1、C2を設定している。
【0091】
なお、このような励起光の第1対象領域R1の設定については、参照波長スペクトルを用いずに、測定対象の試料Sについて取得された波長スペクトルB1のみを用いて対象領域R1の設定を行っても良い。また、励起光のピーク波長に対する対象領域R1の領域端C1、C2の設定方法については、上記のようにあらかじめ決められた波長幅±Δλnmを適用する方法以外にも様々な方法を用いて良い。そのような方法としては、例えば励起光の強度ピークから短波長側、及び長波長側でそれぞれ強度変化をスキャンし、ピークに対して所定割合まで強度が低下した波長位置を領域端C1、C2に設定する方法がある。
【0092】
また、試料Sからの発光に対応する第2対象領域R2の設定では、試料Sの波長スペクトルB1を参照し、波長スペクトルB1をスキャンして発光の強度ピークを検出して、そのピーク波長を決定する。この際、決定されたピーク波長が励起光のピーク波長近傍でないかどうかを確認し、励起光のピーク波長近傍であれば励起光の強度ピークを誤って検出したものとして、あらためて、さらに長波長側において発光の強度ピークの検出を行う。
【0093】
また、求められた発光のピーク波長に対して、励起光に関して上記したように、所定の波長幅を適用する方法、あるいはピークに対して所定割合まで強度が低下した波長位置を領域端に設定する方法等を用いて、第2対象領域R2の領域端C3、C4を設定する。なお、第2対象領域R2の長波長側の領域端C4については、発光の強度ピークが複数存在する可能性を考慮して、波長スペクトルでの強度変化を逆に長波長側からスキャンし、一定以上の強度に達した波長位置を領域端C4に設定する方法を用いても良い。
【0094】
また、第2対象領域R2の短波長側の領域端C3については、励起光ピーク及び発光ピークの境界に位置することを考慮して領域端の設定を行う方法を用いても良い。そのような例として、図8のグラフ(b)では、参照試料についての励起光の波長スペクトルB0と、試料Sについての励起光+発光の波長スペクトルB1とを所定条件で重ね合わせ、2つのスペクトルB0、B1の交点によって第2対象領域R2の短波長側の領域端C3を設定する方法を示している。なお、このような領域端の設定方法については、第1対象領域R1の長波長側の領域端C2に対しても同様に適用しても良い。この場合、領域端C2、C3を同一の波長位置に設定しても良い。
【0095】
また、この場合の波長スペクトルB0、B1の重ね合わせについては、例えば、マルチチャンネル分光器である分光分析装置30においてその露光時間を固定しておき、同じ条件下で試料Sの波長スペクトル及び参照波長スペクトルをそれぞれ取得する方法を用いることができる。この場合、図8に示すように、試料Sに対して取得された波長スペクトルB1では、励起光ピークの強度が参照波長スペクトルB0よりも小さくなる。これは、試料Sによって励起光の一部が吸収されるためである。あるいは、波長スペクトルB0、B1の重ね合わせの他の例として、波長スペクトルB0での励起光ピークのピーク強度が、波長スペクトルB1での励起光ピークのピーク強度の所定倍(例えば2倍)となるように重ね合わせる条件を用いても良い。
【0096】
また、上記したように波長スペクトルをスキャンして強度ピークの特定、あるいは領域端の設定等を行う場合、分光分析装置30で取得される波長スペクトルの短波長側、及び長波長側で検出感度の補正係数が大きく検出精度が低い領域があれば、そのような領域を除外して波長スペクトルのスキャンを行うことが好ましい。
【0097】
次に、分光測定装置1Aにおいて実行される分光測定方法について説明する。図9は、本発明による分光測定方法の一実施形態の構成を示すフローチャートである。本実施形態の分光測定方法では、まず、積分球20の内部に試料Sをセットする。そして、励起光源11から積分球20へと励起光を供給し、分光分析装置30で試料Sからの被測定光を測定して、試料Sの分光測定結果の波長スペクトルを取得する(ステップS101、波長スペクトル取得ステップ)。取得された波長スペクトルはデータ解析装置50に入力され、データ解析装置50において必要なデータ解析が行われる(データ解析ステップ)。
【0098】
データ解析装置50では、入力された波長スペクトルに対し、データ解析を実行するために必要な解析条件を設定する(S102、解析条件設定ステップ)。具体的には、対象領域設定部53において、励起光に対応する第1対象領域R1の領域端C1、C2が設定され、さらに、試料Sからの発光に対応する第2対象領域R2の領域端C3、C4が設定される(S103、S104、対象領域設定ステップ)。この際、必要があれば励起光について取得された参照波長スペクトルが併せて参照される。また、重み係数設定部54において、対象領域R1、R2内の波長スペクトルの少なくとも一方について、上記した重み係数が可変に設定される(S105、重み係数設定ステップ)。
【0099】
続いて、設定部53、54で設定された解析条件に基づいて、試料情報解析部52及び色情報解析部55において波長スペクトルの解析が行われ(S106)、得られた解析結果が表示装置62等に対して出力される(S107)。具体的には、試料情報解析部52において、設定された対象領域R1、R2、及び重み係数を用いて波長スペクトルを解析して、試料についての情報が取得される(試料情報解析ステップ)。この場合の試料情報としては、例えば発光材料の発光ピークについての情報がある。
【0100】
また、色情報の解析実行が指示されている場合には、色情報解析部55において、対象領域R1、R2、及び重み係数を用いて波長スペクトルを解析するとともに、その解析結果から、励起光と試料Sからの発光とが所定割合で混合された場合に得られる色情報が取得される(色情報解析ステップ)。このような色情報の解析は、上述したように、様々な発光素子に用いられる発光材料の評価等において有効である。
【0101】
図10は、測定モードにおける分光測定装置の動作例を示すフローチャートである。この測定モードの動作例では、まず、参照試料についての測定を開始するかどうかが確認され(ステップS201)、測定開始が指示されていれば参照試料について分光測定を行って、参照波長スペクトルを取得する(S202)。なお、この場合の参照試料としては、例えば、上述したように、標準反射試料などの参照試料、試料容器、あるいは試料ホルダ24自体を用いることができる。
【0102】
続いて、積分球20の試料ホルダ24に測定対象の試料Sをセットし、試料Sの分光測定を行うとともに(S203)、得られた波長スペクトルを用いて試料情報の解析を行う(S204)。この試料情報の解析では、試料Sの発光量子収率の情報を解析する例を考えると、波長スペクトルにおいて対象領域R1、R2が自動、または操作者による手動で設定される。そして、設定された対象領域R1、R2を参照して試料Sの発光量子収率が算出される。具体的な発光量子収率の算出方法としては、例えば、参照波長スペクトルでの励起光強度と、試料Sの波長スペクトルでの励起光強度との差によって試料Sが吸収する励起光の光子数を求めるとともに、試料Sの波長スペクトルでの発光強度によって試料Sからの発光の光子数を求め、それらの割合から発光量子収率を求める方法を用いることができる。
【0103】
続いて、次の試料Sについて測定を行うかどうかが確認され(S205)、測定を行う場合にはステップS203、S204が繰り返して実行される。試料Sの測定をすべて終了している場合には、積分球20から試料Sが取り出される(S206)。次に、試料Sについて色情報の解析を実行するかどうかが確認される(S207)。色情報の解析実行が指示されていれば試料Sの色情報の解析を行う(S208)。この色情報の解析では、試料情報の解析で設定済の対象領域R1、R2に対して必要な重み係数が設定され、設定された対象領域R1、R2、及び重み係数を参照して色度座標x、yなどの色情報が算出される。以上により、測定モードにおける試料Sについての分光測定を終了する。
【0104】
図11は、調整モードにおける分光測定装置の動作例を示すフローチャートである。このような調整モードは、例えば、図7に示したように励起光供給部10に分光器14を用いた構成において、励起光の照射条件を設定するために用いられる。
【0105】
この調整モードの動作例では、まず、分光器14等の設定を調整することで励起光の波長が調整され(S301)、その波長が決定される(S302)。次に、設定された励起光の特性等を参照して試料Sに対して励起光を照射する最適露光時間が決定される(S303)。続いて、分光測定装置の動作モードを調整モードから測定モードに切り替えるかどうかが確認され(S304)、切り替えが指示されれば動作モードが測定モードに切り替えられる(S305)。また、切り替えの指示がなければ、励起光の照射条件の設定が繰り返して実行される。
【0106】
本発明による分光測定装置、分光測定方法、及び分光測定プログラムは、上記した実施形態及び構成例に限られるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、試料Sに対する分光測定に用いられる積分球については、図2及び図3に示した積分球20はその一例を示すものであり、具体的には様々な構成のものを用いて良い。また、被測定光の波長スペクトルを取得する分光手段についても、図1に示した分光分析装置30以外にも、様々な構成のものを用いて良い。例えば、分光分析装置30を構成する分光部31及び分光データ生成部32については、別々に設ける構成としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、様々な構成の発光素子に用いられる発光材料の評価に好適に用いることが可能な分光測定装置、分光測定方法、及び分光測定プログラムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
1A、1B…分光測定装置、10…励起光供給部、11…励起光源、12…ライトガイド、13…光フィルタ、14…分光器、20…積分球、21…入射開口部、22…出射開口部、23…試料導入開口部、24…試料ホルダ、25…ライトガイド、30…分光分析装置、31…分光部、32…分光データ生成部、
50…データ解析装置、51…分光データ入力部、52…試料情報解析部、53…対象領域設定部、54…重み係数設定部、55…色情報解析部、56…解析データ出力部、61…入力装置、62…表示装置、63…外部装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象の試料が内部に配置され、前記試料に照射される励起光を入射するための入射開口部、及び前記試料からの被測定光を出射するための出射開口部を有する積分球と、
前記積分球の前記出射開口部から出射された前記被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得する分光手段と、
前記分光手段によって取得された前記波長スペクトルに対してデータ解析を行うデータ解析手段とを備え、
前記データ解析手段は、
前記波長スペクトルにおいてデータ解析に用いる波長領域として、前記励起光に対応する第1対象領域、及び前記試料からの発光に対応し前記第1対象領域とは異なる波長領域である第2対象領域を設定する対象領域設定手段と、
前記第1対象領域、及び前記第2対象領域を用いて前記波長スペクトルを解析して、前記試料についての情報を取得する試料情報解析手段と
を有し、
前記試料情報解析手段は、前記第1対象領域内の励起光スペクトルについて、前記試料とは別に取得された参照波長スペクトルでの励起光ピークを、前記試料に対して取得された波長スペクトルでの励起光ピークに合わせ、その状態でスペクトルの減算を行うことを特徴とする分光測定装置。
【請求項2】
前記参照波長スペクトルは、前記試料とは別に参照試料に対して取得された波長スペクトルであることを特徴とする請求項1記載の分光測定装置。
【請求項3】
前記参照試料は、所定の反射率で前記励起光を反射する標準反射試料であることを特徴とする請求項2記載の分光測定装置。
【請求項4】
前記参照試料は、前記試料を収容するための試料容器であることを特徴とする請求項2記載の分光測定装置。
【請求項5】
前記参照波長スペクトルは、前記試料が載置されていない状態の試料ホルダに対して取得された波長スペクトルであることを特徴とする請求項1記載の分光測定装置。
【請求項6】
測定対象の試料が内部に配置され、前記試料に照射される励起光を入射するための入射開口部、及び前記試料からの被測定光を出射するための出射開口部を有する積分球と、前記積分球の前記出射開口部から出射された前記被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得する分光手段とを備える分光測定装置を用い、前記分光手段によって取得された前記波長スペクトルに対してデータ解析を行う分光測定方法であって、
前記波長スペクトルにおいてデータ解析に用いる波長領域として、前記励起光に対応する第1対象領域、及び前記試料からの発光に対応し前記第1対象領域とは異なる波長領域である第2対象領域を設定する対象領域設定ステップと、
前記第1対象領域、及び前記第2対象領域を用いて前記波長スペクトルを解析して、前記試料についての情報を取得する試料情報解析ステップと
を備え、
前記試料情報解析ステップは、前記第1対象領域内の励起光スペクトルについて、前記試料とは別に取得された参照波長スペクトルでの励起光ピークを、前記試料に対して取得された波長スペクトルでの励起光ピークに合わせ、その状態でスペクトルの減算を行うことを特徴とする分光測定方法。
【請求項7】
前記参照波長スペクトルは、前記試料とは別に参照試料に対して取得された波長スペクトルであることを特徴とする請求項6記載の分光測定方法。
【請求項8】
前記参照試料は、所定の反射率で前記励起光を反射する標準反射試料であることを特徴とする請求項7記載の分光測定方法。
【請求項9】
前記参照試料は、前記試料を収容するための試料容器であることを特徴とする請求項7記載の分光測定方法。
【請求項10】
前記参照波長スペクトルは、前記試料が載置されていない状態の試料ホルダに対して取得された波長スペクトルであることを特徴とする請求項6記載の分光測定方法。
【請求項11】
測定対象の試料が内部に配置され、前記試料に照射される励起光を入射するための入射開口部、及び前記試料からの被測定光を出射するための出射開口部を有する積分球と、前記積分球の前記出射開口部から出射された前記被測定光を分光して、その波長スペクトルを取得する分光手段とを備える分光測定装置に適用され、前記分光手段によって取得された前記波長スペクトルに対するデータ解析をコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記波長スペクトルにおいてデータ解析に用いる波長領域として、前記励起光に対応する第1対象領域、及び前記試料からの発光に対応し前記第1対象領域とは異なる波長領域である第2対象領域を設定する対象領域設定処理と、
前記第1対象領域、及び前記第2対象領域を用いて前記波長スペクトルを解析して、前記試料についての情報を取得する試料情報解析処理と
をコンピュータに実行させ、
前記試料情報解析処理は、前記第1対象領域内の励起光スペクトルについて、前記試料とは別に取得された参照波長スペクトルでの励起光ピークを、前記試料に対して取得された波長スペクトルでの励起光ピークに合わせ、その状態でスペクトルの減算を行うことを特徴とする分光測定プログラム。
【請求項12】
前記参照波長スペクトルは、前記試料とは別に参照試料に対して取得された波長スペクトルであることを特徴とする請求項11記載の分光測定プログラム。
【請求項13】
前記参照試料は、所定の反射率で前記励起光を反射する標準反射試料であることを特徴とする請求項12記載の分光測定プログラム。
【請求項14】
前記参照試料は、前記試料を収容するための試料容器であることを特徴とする請求項12記載の分光測定プログラム。
【請求項15】
前記参照波長スペクトルは、前記試料が載置されていない状態の試料ホルダに対して取得された波長スペクトルであることを特徴とする請求項11記載の分光測定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−11617(P2013−11617A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−201993(P2012−201993)
【出願日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【分割の表示】特願2007−242887(P2007−242887)の分割
【原出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】