説明

分岐エステル組成物

エステル化反応条件下における、カルボン酸と分岐アルコール組成物との反応により得られ、前記分岐アルコール組成物は8から36個の炭素原子および0.7から3.0の1分子当たりの平均分岐数を有し、前記分岐はメチルおよびエチル分岐を含む、分岐エステル組成物。本発明は、さらに、前記分岐エステル組成物を含む、皮膚または毛髪に局部的に塗布するためのパーソナルケア組成物に関する。本発明の分岐エステル組成物は、調合の柔軟性を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボン酸および高度に分岐した第一級アルコール組成物の反応から得られた新しいエステル組成物に関する。本発明は、また、このエステル組成物を含む、皮膚または毛髪に局部的に塗布するためのパーソナルケア組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚のモイスチャライジングクリーム、日焼け止め剤、制汗剤、シャンプーなどのパーソナルケア組成物は、普通、長鎖脂肪酸およびエステルを含有する。この点について、普通使用される線状脂肪酸エステルはステアリン酸セテアリルである。普通使用される分岐脂肪酸エステルはステアリン酸イソセチルである。そのようなエステル材料は、保湿性、湿潤性、エモリエント性、皮膚表面の見た目の改善、皮膚の鎮静および軟化、皮膚感触の改善などのスキンコンディショニングの利益をもたらすのに役立つ。長鎖脂肪酸エステルがもたらすその他の利益には、粘度および粘弾性の変更が含まれる。
【0003】
ステアリン酸セテアリルおよびステアリン酸イソセチルは、主としてその構造特性が異なっているために、すなわち、ステアリン酸セテアリルは線状脂肪酸エステルであり、ステアリン酸イソセチルは分岐脂肪酸エステルであるために、異なる物性を有する。例えば、ステアリン酸セテアリルは、通常、フレークまたはその他の固体形態で供給および出荷され、約54℃から65℃の融点範囲を有する。このことは、ステアリン酸セテアリルを、パーソナルケア組成物に調合することができるためには、前もって、加熱により液体に変換する必要があることを意味する。一方、いくつかのアルキル分岐を含有している、いわゆる「ゲルベ(Guerbet)」アルコールから得られたステアリン酸イソセチルは、通常、室温で液体であり、約−10℃の融点を有する。エステルが得られる「ゲルベ」アルコールの分岐の大部分は、炭素鎖のC位置にある。加えて、アルキル分岐は、Cおよびそれ以上の長鎖分岐になる傾向がある。
【0004】
さらに、ステアリン酸イソセチルは、ステアリン酸セテアリルより、室温で非極性溶媒に溶解しやすい。
【0005】
ステアリン酸イソセチルは、ステアリン酸セテアリル型の線状エステルに伴う溶解性の問題を克服するが、あいにく製造するのがかなり難しい。まず第1に、アルデヒドの調製およびその後のアルドール縮合を必要とするゲルベアルコールを製造しなければならない。したがって、ステアリン酸セテアリルなどの線状エステルに関わる溶解性の問題を改善し、同時に、分岐ゲルベアルコールから得られるエステルより製造しやすいエステル化合物を提供することが望ましいはずである。
【0006】
さらに、調合の柔軟性を向上させる見地から、線状ステアリン酸セテアリル型のエステルと分岐ステアリン酸イソセチル型のエステルとの間にある物理的性質を有する長鎖エステルを提供することが望ましいはずである。特に、固体フレークと均一な液体との間のどこかに存在する物理的形態を有し、ステアリン酸セテアリルとステアリン酸イソセチルとの中間の融点を有する長鎖エステルを提供することは望ましいはずである。商業的な環境における取り扱い特性に影響する上に、エモリエント剤として使用されるエステルの融点特性は、その結果として生じる生成物の皮膚感触と関係しており、完全に液体のエモリエント成分は、「軽い」皮膚感触をもたらし、固体のエモリエント成分は「重い、永続する」皮膚感触をもたらす。
【0007】
1分子当たり0.7から3.0の分岐を有する分岐第一級アルコール組成物から得られ、前記分岐はメチルおよびエチル分岐を含む、本発明の特定の分岐エステル組成物は、ステアリン酸セテアリルおよびステアリン酸イソセチル型のエステルの中間に存在する物理的性質を有することが、驚くべきことに、今、分かった。このことは、調合の柔軟性を向上させるのに有利である。加えて、本発明の分岐エステル組成物は、線状ステアリン酸セテアリル型のエステルに伴う高融点および低溶解性の問題を克服するのに役立ち、同時に、ゲルベアルコールから得られる分岐ステアリン酸イソセチル型のエステルより製造しやすいことが、思いがけず、分かった。
【0008】
米国特許第A−5,849,960号(シェルオイル社)においては、8から36個の炭素原子を有し、少なくとも0.7の1分子当たりの平均分岐数を含有し、前記分岐はメチルおよびエチル分岐を含む、分岐第一級アルコール組成物が開示されている。これらのアルコールは、次いで、アルコールのスルホン化またはエトキシ化により、それぞれ、陰イオンの洗剤または非イオンの洗剤または一般の界面活性剤に変換されうる。製造された洗剤は、高い生分解性および冷水中の高い洗浄性などの有益な性質を示す。米国特許第A−5,849,960号においては、これらのアルコールから得られたエステルは開示されておらず、これらの分岐アルコールまたはこれらから得られたエステルの、パーソナルケア組成物における使用も、また開示されていない。
【0009】
同時係属の米国特許出願第60/407724号では、そのようなアルコールをパーソナルケア組成物におけるエモリエント剤として使用することが、開示されている。
【0010】
国際公開第99/18929号、国際公開第99/18928号および国際公開第97/39089号(The Procter and Gamble Company)においては、中鎖分岐界面活性剤を含むパーソナルクレンジング組成物が開示されている。中鎖分岐界面活性剤は、中鎖分岐アルコールから製造される。しかし、その中における調合には、これらの中鎖分岐アルコール自体から得られたエステルの記述が含まれていず、対応する界面活性剤が含まれているのみである。加えて、これらの文献は、界面活性成分を比較的高水準で含むクレンジング組成物に関するものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、エステル化反応条件下における、カルボン酸および分岐アルコール組成物の反応により得られ、前記分岐第一級アルコール組成物は8から36個の炭素原子および0.7から3.0の1分子当たりの平均分岐数を有し、前記分岐はメチルおよびエチル分岐を含む、分岐エステル組成物が提供される。
【0012】
本発明のさらなる態様によれば、カルボン酸と分岐アルコール組成物との反応により得られ、前記分岐アルコール組成物は8から36個の炭素原子および0.7から3.0の1分子当たりの平均分岐数を有し、前記分岐はメチルおよびエチル分岐を含む、分岐エステル組成物を、皮膚にエモリエント性の利益を与えるために使用することが提供される。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、
(i)エステル化反応条件下における、有機酸と分岐アルコール組成物との反応により得られ、前記分岐アルコール組成物は8から36個の炭素原子および0.7から3.0の1分子当たりの平均分岐数を有し、前記分岐はメチルおよびエチル分岐を含む、分岐エステル組成物;および
(ii)化粧品として許容されるビヒクル
を含む、パーソナルケア組成物が提供される。
【0014】
本発明のさらなる態様によれば、式RCOOR’の少なくとも1つのエステル化合物を含み、式中、Rは1から30個の炭素原子を有する、直鎖または分岐、置換または非置換、アルキルまたはアルケニル基あるいは6から14個の炭素原子を有する、置換または非置換環式芳香族基であり、R’は、8から36個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基であり、前記R’基は0.7から3.0の1分子当たりの平均分岐数を有し、前記R’基の分岐は、メチルおよびエチル分岐を含む、分岐エステル組成物が提供される。
【0015】
本発明のエステル組成物は、調合の柔軟性、特にパーソナルケア組成物の調合における柔軟性を向上させる。加えて、本発明のエステル組成物は、ステアリン酸セテアリル型の線状エステルの溶解性および物理的性質の問題を克服するのに役立ち、同時に、分岐「ゲルベ」アルコールから得られるエステルよりも製造しやすい。
【0016】
さらに、本発明のエステルは、良好なエモリエント性、皮膚感触、皮膚軟化、塗布および保湿特性と共に良好な粘度および粘弾性特性を示す。本組成物において使用される特定の分岐エステルは、また、高い生分解性を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本明細書において使用されるすべての百分率および割合は、別段の明記がない限り、全パーソナルケア組成物の重量による。
【0018】
本明細書において引用されるすべての刊行物は、別段の指示がない限り、参照により全体が組み込まれる。
【0019】
本明細書において使用される「化粧品として許容される」という用語は、組成物、またはそれらの成分が、過度の毒性、不混和性、不安定性、アレルギー性反応などを示すことなしに、人の皮膚または毛髪と接触した状態で使用するのに適していることを意味する。
【0020】
本明細書において使用される「安全で有効な量」という用語は、本明細書に開示されている利益を独立に含む、明確な利益、好ましくは明確な皮膚の外観または感触の利益を目に見えるように生じさせるのに十分な、しかし、深刻な副作用を回避するために、すなわち、適切な医学的判断の範囲内で、利益の危険に対する合理的な割合をもたらすために、十分低い、化合物、成分、または組成物の量を意味する。
【0021】
本発明の分岐エステル組成物は、以下により詳細に記述されている。
【0022】
(分岐エステル組成物)
本発明の分岐エステル組成物は、エステル化反応条件下におけるカルボン酸と分岐第一級アルコール組成物との反応により得られる。
【0023】
エステル化合物を調製する際に使用するのに適した、いずれのカルボン酸でも本明細書において適切である。
【0024】
本明細書において使用するのに適したカルボン酸には、必ずしもこれに限らないが、1から30個の炭素原子(カルボキシル基を含まない炭素原子の数)、好ましくは、10から22個の炭素原子、より好ましくは、12から18個の炭素原子を有する直鎖または分岐、置換または非置換、飽和または不飽和、脂肪族カルボン酸、および芳香環中に6から14個、好ましくは6個の炭素原子を有する置換または非置換、環式芳香族カルボン酸が含まれる。
【0025】
脂肪族カルボン酸の脂肪族炭素鎖の適切な置換基には、−OH、F、Cl、Br、I、−NHおよびフェニルが含まれる。脂肪族炭素鎖のαまたはβの位置でヒドロキシ基により置換された脂肪族カルボン酸は、それぞれ、α−ヒドロキシ酸およびβ−ヒドロキシ酸として知られている。
【0026】
環式芳香族カルボン酸の芳香環の適切な置換基には、C〜Cアルキル基、−OH、F、Cl、Br、I、および−NH、好ましくはC〜Cアルキル、特にメチルおよびエチルが含まれる。
【0027】
本明細書において使用するのに適切なカルボン酸の例には、CTFA(Cosmetics,Toiletries and Fragrances Association:化粧品、トイレタリおよび香料協会)購入者ガイド2001に記載されているものが含まれる。本明細書において使用するのに適切なカルボン酸の特定の例には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、ステアリン酸、ベヘン酸、安息香酸、アルキル化安息香酸、イソステアリン酸、イソデカン酸、イソエチルヘキサン酸、サリチル酸、リシノール酸、およびそれらの混合物が含まれる。
【0028】
本明細書において使用するためのカルボン酸の好ましい種類は、10から22個の炭素原子(カルボキシル基を含まない炭素原子の数)を有する直鎖、飽和、脂肪族カルボン酸である。この種の特に好ましいカルボン酸は、ステアリン酸である。
【0029】
本明細書において使用するためのカルボン酸の好ましい別の種類は、置換または非置換芳香族カルボン酸、特に芳香環中に6個の炭素原子を有するものである。この種の特に好ましいカルボン酸は、安息香酸である。
【0030】
所望のエステル生成物が得られるような方法でアルコールを取り扱うように、注意しなければならない。例えば、ヒドロキシカルボン酸の場合は、エステル化反応においてヒドロキシカルボン酸とアルコールを反応させるまでは、ヒドロキシ置換基を保護するための手段をとらなければならないことを当業者は理解するはずである。同様に、不飽和脂肪族カルボン酸(例えば、リノール酸)の場合は、炭素−炭素二重結合は酸化されやすく、したがってこれらの二重結合の酸化を防止するために、パーソナルケア調合においては適切な予防措置(例えば、パーソナルケア調合に酸化防止剤を添加することによる)をとらなければならないことを、当業者は理解するはずである。
【0031】
本明細書においてエステルの調製に使用するための分岐第一級アルコール組成物は、8から36個の炭素原子および0.7から3.0の1分子当たりの平均分岐数を有し、前記分岐はメチルおよびブチル分岐を含む、分岐第一級アルコール組成物である。
【0032】
本明細書において使用される「1分子鎖当たりの平均分岐数」という語句は、以下で考察される13C核磁気共鳴(13C NMR)、または場合により、HプロトンNMRにより測定された、1アルコール分子当たりの平均分岐数を指す。鎖における平均炭素原子数は、質量選択検出器を装備したガスクロマトグラフィーにより求められる。
【0033】
本明細書および特許請求の範囲の全般を通して、所与の炭素位置における分岐の百分率、分岐の型に基づく分岐の百分率、平均分岐数、および第四級原子の百分率に対して様々に言及する。これらの量は、以下の三種類の13C−NMR法の組合せを使用することによって測定し、求める。(1)第1は、45度チップ13Cパルスおよび10秒の再循環遅延を用いた標準逆ゲート法である(定量結果を確実にするために、重水素化クロロホルム中の分岐アルコール溶液に有機フリーラジカル緩和剤が添加されている)。(2)第2は、8ミリ秒の1/J遅延(Jは、これらの脂肪族アルコールの炭素とプロトンとの間の結合定数で、125Hzである)を用いた、J−変調スピンエコーNMR法(JMSE)である。このシーケンスは、奇数のプロトンを有する炭素と、偶数のプロトンを有するものとを、すなわち、CH/CHとCH/Cq(Cqは第四級炭素を指す)とを識別する。(3)第3は、4ミリ秒の1/2J遅延を用いたJMSE NMR「quat−only(第四級炭素のみ)」法であり、第四級炭素のみからの信号を含むスペクトルを生じる。第四級炭素原子を検出するためのJSME NMR quat only法は、0.3原子%という少量の第四級炭素原子の存在を検出するのに十分な感度を有する。quat only JSME NMRスペクトルの結果から得られた結論を確認しようと望む場合は、場合によりさらなる段階として、DEPT−135NMRシーケンスを実施することもできる。DEPT−135NMRシーケンスは、真の第四級炭素とブレークスループロトン化炭素とを識別するのに非常に役立つことが分かった。これは、DEPT−135シーケンスが、JMSE「quat only」実験のものと「正反対」のスペクトルを生じることによる。後者は、第四級炭素の信号を除くすべての信号をゼロにするのに対し、DEPT−135は、もっぱら第四級炭素をゼロにする。したがって、この2つのスペクトルを組み合わせることは、JMSE「quat−only」スペクトル中の非第四級炭素を見つけるのに非常に役立つ。しかし、本明細書全体を通して第四級炭素原子の存在または不存在に言及する場合は、quat only JSME NMR法により測定した第四級炭素の一定量の存在または不存在を意味する。結果を場合により確認したいときは、DEPT−135法を用いて、第四級炭素の存在および量を確認する。
【0034】
本発明のエステル化合物を調製する際に使用される第一級アルコールは、約8から約36個の炭素原子、好ましくは約11から約21個の炭素原子の間で変化する、1分子当たりの平均鎖長を有する。炭素原子の数は、主鎖に沿う炭素原子および分岐炭素を含むが、アルキレンオキシド基の炭素原子は含まない。
【0035】
第一級アルコール中の分子の、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも90重量%が、11から21個、より好ましくは14から18個の炭素原子の間で変化する鎖長を有する。
【0036】
上記で定義され、求められた1アルコール分子当たりの平均分岐数は、少なくとも0.7である。好ましいアルコールは、0.7から3.0、好ましくは1.0から3.0の平均分岐数を有するものである。特に好ましいアルコールは、少なくとも1.5、特に1.5から約2.3、特別に1.7から2.1の間で変化する平均分岐数を有するものである。
【0037】
本発明の好ましい実施形態においては、第一級アルコールは、0.3原子%またはそれより良好な検出限界を有するquat−only JMSE改良型13C−NMRにより測定された、0.5原子%未満のCqを有し、好ましくはこのNMR法により測定されたCqを含有していない。そのようなアルコールは、また、第四級炭素原子をこの低濃度で有するエステルをもたらす。その理由はまだ明瞭に理解されてはいないが、アルコール分子にCqが存在すると、生物学的有機体による生分解性を防止すると考えられている。1原子%という少ない量のCqを含有するアルコールは、故障率(failure rates)で生物分解することが分かっている。
【0038】
本発明の好ましい実施形態においては、第一級アルコール中のアルコール分子の5%未満、またはより好ましくは3%未満が線状アルコールである。線状アルコールの数をそのような少量にまで効果的に減少させるには、さらに以下に記述されている効果的な触媒を使用した骨格異性化または二量化法により、オレフィン供給原料に分岐を導入することによるのであって、酸触媒によるプロピレン分子のオリゴマー化、またはゼオライト触媒によるオリゴマー化法などの方法により分岐を導入するのではない。線状分子の百分率は、ガスクロマトグラフィーにより求められ得る。
【0039】
(骨格異性化)
本明細書における好ましい実施形態において、アルコールの分岐は骨格異性化により導入される。
【0040】
分岐が骨格異性化により達成された場合は、本明細書において使用される第一級アルコールは、ヒドロキシル炭素原子に対して、C2炭素位置に5から25%の分岐を有するものとして、NMR法により特徴付けられる。より好ましい実施形態においては、NMR法により求めると、分岐の数の10から20%がC2位置に存在する。また、第一級アルコールは、これもまたNMR法により求めると、分岐数の10%から50%をC3位置に通常有し、より典型的には、15%から30%をC3位置に有する。C2位置にある分岐の数と合わせると、第一級アルコールは、C2およびC3炭素の位置に大量の分岐を含有している。
【0041】
本発明において使用される第一級アルコールは、C2およびC3位置に大数の分岐を有しているだけでなく、第一級アルコールの多くが、少なくとも5%のイソプロピル末端型の分岐を有しており、このことはヒドロキシル炭素に対して、主鎖の最後から二番目の炭素位置にメチル分岐があることを意味していることも、NMR法により分かる。第一級アルコール中に、分岐のイソプロピル末端型の少なくとも10%があり、典型的には10%から20%の範囲であることさえ分かっている。シェルケミカル社から市販されているNEODOLシリーズの典型的な、ヒドロホルミル化オレフィンにおいては、分岐の1%未満、通常0.0%が末端イソプロピル分岐である。しかし、オレフィンを骨格異性化することにより、第一級アルコールは、分岐の総数に対して末端イソプロピル分岐を高い百分率で含有する。
【0042】
C2、C3およびイソプロピル位置に生じる分岐を合わせた数を考えると、本発明の複数の実施形態で分岐の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%がこれらの位置に集中している。しかし、本発明の範囲には、炭素主鎖の長さ全体にわたって生じる分岐が含まれる。
【0043】
本明細書において使用される第一級アルコールに見られる分岐の型は、メチル、エチル、プロピルからブチルまたはそれより高級なものまで多様である。
【0044】
本発明の好ましい実施形態において、上述のNMR法により測定されたメチル分岐の総数は、分岐の総数の少なくとも40%、少なくとも50%にさえ、達する。この百分率には、ヒドロキシル基に対してC1からC3炭素位置の範囲内で、上述のNMR法により見つけられるメチル分岐の総数、およびメチル分岐の末端イソプロピル型が含まれる。
【0045】
本明細書における第一級アルコール成分は、NEODOL45などのNEODOLアルコールで見られるものよりエチル分岐の数が大幅に増加している。エチル分岐の数は、NMR法で検出されるすべての種類の分岐を基準として、5%から30%、最も典型的には10%から20%の範囲で変化しうる。したがって、オレフィンの骨格異性化により、メチルおよびエチルの両方の分岐が生成する。したがって、骨格異性化を実行するために使用することのできる触媒の種類は、メチル分岐のみを生成するはずのものに限定されることはない。様々な分岐の種類が存在すると、性質の全体的な釣り合いがより良くなると考えられている。
【0046】
骨格異性化のためのオレフィン供給原料において使用されるオレフィンは、少なくともCのモノオレフィンである。好ましい範囲においては、オレフィン供給原料はCからC35のモノオレフィンを含む。C11からC19の範囲におけるオレフィンは、C12からC20の範囲における第一級アルコール成分を製造するために、本明細書において使用するのに最も好ましいものと考えられる。
【0047】
一般に、オレフィン供給原料組成物におけるオレフィンは、大部分が線状である。第四級炭素原子または極端に大きな分岐の長さを有する、大部分が分岐したオレフィン供給原料を処理することを試みる場合は、オレフィン流れを触媒層に通した後で、所望の分岐オレフィンからこれらの種を分離するための分離方法が必要になるはずである。オレフィン供給原料は、いくらかの分岐オレフィンを含有することができるが、骨格異性化のために処理されたオレフィン供給原料は、好ましくは約50パーセントを超える、より好ましくは約70パーセントを超える、および最も好ましくは、約80モルパーセント以上を超える線状オレフィン分子を含有する。
【0048】
100%というような純度のものは市販されていないので、オレフィン供給原料は、通常、特定の炭素数の範囲内にある、100%オレフィンからなっているわけではない。通常、オレフィン供給原料は、いかに特定されていようとも、オレフィンの少なくとも50重量%が一定の炭素鎖範囲または炭素数内にある、異なる炭素長を有するモノオレフィンが分布をなしているものである。好ましくは、オレフィン供給原料は、特定の炭素数範囲(例えば、CからC、C10からC12、C11からC15、C12からC13、C15からC18など)にあるモノオレフィンを、70重量%を超えて、より好ましくは約80重量%またはそれ以上含有することになり、生成物の残りは、他の炭素数または炭素構造のオレフィン、ジオレフィン、パラフィン、芳香族、および合成過程に由来する他の不純物である。二重結合の位置は限定されていない。オレフィン供給原料組成物は、α−オレフィン、内部オレフィン、またはそれらの混合物を含みうる。
【0049】
Chevron Alpha Olefin製品シリーズ(Chevron Chemical Co.の商標であり、同社から発売されている)では、パラフィン蝋をクラッキングすることにより大部分が線状のオレフィンを製造している。エチレンのオリゴマー化により製造された市販オレフィン製品は、NEODENEの商標でシェルケミカル社から、Ethyl Alpha−Olefins(エチルα−オレフィン)としてEthyl Corporationから、合衆国内で市販されている。エチレンから、適切な線状オレフィンを調製するための詳細な手順が、米国特許第3676523号、第3686351号、第3737475号、第3825615号および第4020121号に記載されている。そのようなオレフィン製品のほとんどは、大部分がα−オレフィンから構成されているが、高級線状内部オレフィンもまた、例えば、パラフィンの塩素化−脱塩化水素により、パラフィンの脱水素により、およびα−オレフィンの異性化により、商業的に製造されている。CからC22の範囲における線状内部オレフィン製品は、シェルケミカル社およびLiquichemica Companyから市販されている。
【0050】
線状オレフィンの骨格異性化は、知られているどの手段によっても実行されうる。本明細書において好ましくは、接触異性化炉を使用する米国特許第5849960号の方法を用いて骨格異性化が実行される。好ましくは、上文で定義されている異性化供給原料は、線状オレフィン組成物を、少なくとも0.7の1分子鎖当たりの平均分岐数を有するオレフィン組成物に骨格異性化するのに有効な異性化触媒と接触させられる。より好ましくは、触媒は、室温における測定で4.2オングストロームを超え、7オングストローム未満まで変化する、結晶学的な、自由に通れるチャンネル径を有する少なくとも1つのチャンネルを有し、7オングストロームを超える自由に通れるチャンネル径を有するチャンネルが実質的に存在しない、ゼオライトを含む。
【0051】
適切なゼオライトは、参照によりその内容が本明細書に組み込まれる米国特許第5510306号に記載されており、W.M.MeierおよびD.H.OlsonによるAtlas of Zeolite Structure Typesに記載されている。好ましい触媒には、フェリエライト、A1PO−31、SAPO−11、SAPO−31、SAPO−41、FU−9、NU−10、NU−23、ZSM−12、ZSM−22、ZSM−23、ZSM−35、ZSM−48、ZSM−50、ZSM−57、SUZ−4A、MeAPO−11、MeAPO−31、MeAPO−41、MeAPSO−11、MeAPSO−31、およびMeAPSO−41、MeAPSO−46、ELAPO−11、ELAPO−31、ELAPO−41、ELAPSO−11、ELAPSO−31、およびELAPSO−41、濁沸石、カンクリナイト、オフレット沸石、束沸石の水素形態、モルデン沸石およびパーシアイトのマグネシウムまたはカルシウム形態、およびそれらの同一構造型の構造物が含まれる。ゼオライトの組合せもまた、本明細書において使用されうる。これらの組合せは、混合ゼオライトのペレットおよび触媒の積層配列を含むことができ、例えば、フェリエライト上のZSM−22および/またはZSM−23、ZSM−22および/またはZSM−23上のフェリエライト、およびZSM−23上のZSM−22などがある。積層触媒は、同一形状および/または寸法または、例えば、1/32インチシリンダ上の1/8インチのトライローブ(trilobes)などの異なる形状および/または寸法でありうる。別法として、アルカリまたはアルカリ土類金属を除去または置換するように、天然ゼオライトをイオン交換法により改変し、それにより、より大きな寸法のチャンネルを導入すること、またはより大きな寸法のチャンネルを減少させることができる。そのようなゼオライトには、天然または合成フェリエライト(斜方晶系または単斜晶系でありうる)、Sr−D、FU−9(欧州特許第B−55,529号)、ISI−6(米国特許第4578259号)、NU−23(欧州特許出願公開第103,981号)、ZSM−35(米国特許第4016245号)およびZSM−38(米国特許第4375573号)が含まれる。最も好ましくは、触媒はフェリエライトである。
【0052】
骨格異性化触媒は、結合材料としての耐熱性酸化物、例えば、ベントナイト、モンモリロナイト、アタパルジャイト、およびカオリンなどの天然粘土;アルミナ;シリカ;シリカアルミナ;水和アルミナ;チタニア;ジルコニアおよびそれらの混合物により、知られている方法で適切に結合される。より好ましい結合剤は、擬ベーマイト、ガンマおよびバイヤライトアルミナなどのアルミナである。これらの結合剤は、市販されていて容易に入手することができ、アルミナベースの触媒を製造するために使用される。
【0053】
ゼオライトと結合材料の重量比は、適切には約10:90から約99.5:0.5、好ましくは約75:25から約99:1、より好ましくは約80:20から約98:2、および最も好ましくは約85:15から約95:5(無水を基準として)の間にある。
【0054】
好ましくは、骨格異性化触媒は、また、モノカルボン酸および無機酸から選択された少なくとも1種の酸、および少なくとも2つのカルボン酸基を有する少なくとも1種の有機酸(ポリカルボン酸)により調製される。適切な酸には、米国特許第A−5,849,960号において開示されたものが含まれる。
【0055】
場合により、コークス酸化促進用金属を本発明の触媒中に組み込み、約250℃を超える温度において、酸素の存在下でコークスの酸化を促進することができる。適切なコークス酸化促進用材料には、米国特許第A−5,849,960号において開示されたものが含まれる。
【0056】
好ましい方法においては、本発明の触媒は、本明細書において明確に記述されている少なくとも1種のゼオライト、アルミナ含有結合剤、水、少なくとも1種のモノカルボン酸または無機酸および少なくとも1種のポリカルボン酸の混合物を、容器または入れ物の中で混合し、混合された混合物のペレットを成形し、高温においてペレットを仮焼することにより調製されうる。触媒の調製方法は、米国特許第A−5,849,960号に記載されている。
【0057】
高変換、高選択性、および高収率が、本明細書において記述されている方法により達成される。
【0058】
本骨格異性化方法は、広範囲の条件下で操作されうる。好ましくは、骨格異性化は200℃から500℃、より好ましくは250から350℃の範囲の高温において、0.1気圧(10kPa)から10気圧(1MPa)、より好ましくは0.5から5気圧(50から500kPa)までの圧力下で実施される。オレフィンの重量空間速度(WHSV)は、1時間当たり0.1から100まで変化しうる。好ましくは、WHSVは、1時間当たり0.5から50の間、より好ましくは1から40の間、最も好ましくは2から30の間である。より低いWHSVにおいては、骨格異性化された分岐オレフィンを高収率で得ながら、より低い温度で操業することが可能である。より高いWHSVにおいては、骨格異性化された分岐オレフィンに対する、所望の変換および選択性を維持するために、温度は、通常、上昇させられる。さらに、最適の選択性は、上述のより低いオレフィン分圧において、通常、達成される。この理由により、供給原料流れを窒素または水素などの希釈気体により希釈することが、しばしば有利である。もっとも、希釈剤によりオレフィンの分圧を減少させることは、工程の選択性を改善するためには有益でありうるが、オレフィンの流れを希釈剤により希釈する必要はない。
【0059】
希釈剤が使用される場合、オレフィンと希釈剤のモル比は、0.01:1から100:1まで変化することができ、通常、0.1:1から5:1の範囲内にある。
【0060】
本発明においては、骨格異性化が好ましいが、分岐は二量化により達成されることもできる。
【0061】
大まかに言って、第一級アルコール成分は、C6〜C10の線状オレフィンを含むオレフィン供給原料を、二量化条件の下で二量化触媒の存在下において二量化し、C12〜C20のオレフィンを得ることにより得られる。工程条件、オレフィン供給原料および適切な触媒を含む、適切な二量化方法の詳細は、米国特許第A−5,780,694号に記載されている。
【0062】
(ヒドロホルミル化)
骨格異性化または二量化された、分岐オレフィンは、その後、例えばヒドロホルミル化により第一級アルコール成分へ変換される。ヒドロホルミル化においては、骨格異性化オレフィンは、オキソ法による一酸化炭素と水素との反応によりアルカノールへ変換される。最も普通に使用されるのは、ホスフィン、亜リン酸エステル、アルシンまたはピリジン配位子により修飾されたコバルトまたはロジウム触媒を使用した「改良オキソ法」であり、米国特許第3231621号、第3239566号、第3239569号、第3239570号、第3239571号、第3420898号、第3440291号、第3448158号、第3448157号、第3496203号、および第3496204号、第3501515号、および第3527818号に記載されている。また、製造方法も、Kirk Othmer、「Encyclopedia of Chemical Technology」第3版、第16巻、637〜653頁;「Monohydric Alcohols:Manufacture,Applications and Chemistry」、E.J.Wickson、Ed.Am.Chem.Soc.1981年、に記載されている。
【0063】
ヒドロホルミル化は、当業界で使用されている用語であり、オレフィンがCOおよびH2と反応して、反応物のオレフィンより1個多い炭素原子を有するアルデヒド/アルコールを生成する反応を意味する。しばしば、当業界において、ヒドロホルミル化という用語は、アルデヒドおよびアルコールへの還元段階をすべてカバーするために使用される、すなわち、ヒドロホルミル化は、カルボニル化およびアルデヒド還元過程を経由してオレフィンからアルコールを製造することを指す。
【0064】
本明細書において使用されるように、ヒドロホルミル化は、アルコールを最終的に製造することを指す。
【0065】
例示的な触媒には、必ずしもこれに限らないが、コバルトヒドロカルボニル触媒および金属−ホスフィン配位子触媒が含まれ、前記金属には、これに限らないが、パラジウム、コバルトおよびロジウムが含まれる。課せられる様々な反応条件が、触媒の選択により決定される。これらの条件は、個々の触媒に応じて広範囲に変わりうる。例えば、温度はほぼ室温から300℃まで変化しうる。また、通常使用される、コバルトカルボニル触媒が使用される場合は、温度は150℃から250℃の範囲で変化することになる。当業者は、上記で引用した参考資料を参照することにより、またはオキソアルコールに関するよく知られた文献のいずれによっても、異性化または二量化オレフィンをヒドロホルミル化するために必要となる温度および圧力の条件を容易に決めることができる。
【0066】
しかし、典型的な反応条件は適度なものである。125℃から200℃の範囲の温度が推奨される。2170から10440kPaの範囲にある反応圧力が代表的なものであるが、より低いまたはより高い圧力を選択することもできる。1:1000から1:1の範囲にある、触媒とオレフィンの比が適切である。水素と一酸化炭素の比は、広範囲に変化しうるが、アルコール生成物に有利に働くためには、通常1から10の範囲であり、好ましくは一酸化炭素1モルに対して水素約2モルである。
【0067】
ヒドロホルミル化方法は、不活性溶媒の存在下で実行されうるが、そうする必要はない。種々の溶媒を利用することができ、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノンおよびシクロヘキサノンなど;芳香族化合物、例えばベンゼン、トルエンおよびキシレンなど;ハロゲン化芳香族化合物、例えばクロロベンゼンおよびオルトジクロロベンゼンなど;ハロゲン化パラフィン族炭化水素、例えば塩化メチレンおよび四塩化炭素など;パラフィン類、例えばヘキサン、ヘプタン、メチルシクロヘキサンおよびイソオクタンなど;およびニトリル、例えばベンゾニトリルおよびアセトニトリルなど、がある。
【0068】
触媒配位子に関して、第三級有機ホスフィンについて述べることができ、前記ホスフィンには、トリアルキルホスフィン、トリアミルホスフィン、トリヘキシルホスフィン、ジメチルエチルホスフィン、ジアミルエチルホスフィン、トリシクロペンチル(またはヘキシル)ホスフィン、ジフェニルブチルホスフィン、ジフェニルベンジルホスフィン、トリエトキシホスフィン、ブチルジエトキシホスフィン、トリフェニルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、ジメチルプロピルホスフィン、トリトリルホスフィン類および対応するアルシンおよびスチビンが含まれる。
【0069】
二座配位子として含まれるものには、テトラメチルジホスフィノエタン、テトラメチルジホスフィノプロパン、テトラエチルジホスフィノエタン、テトラブチルジホスフィノエタン、ジメチルジエチルジホスフィノエタン、テトラフェニルジホスフィノエタン、テトラペルフルオロフェニルジホスフィノエタン、テトラフェニルジホスフィノプロパン、テトラフェニルジホスフィノブタン、ジメチルジフェニルジホスフィノエタン、ジエチルジフェニルジホスフィノプロパンおよびテトラトロリルジホスフィノエタンがある。
【0070】
他の適切な配位子の例には、例えば、最小のP含有環が少なくとも5個の炭素原子を含有する、9−ヒドロカルビル−9−ホスファビシクロノナンなどのホスファビシクロ炭化水素がある。いくつかの例には、9−アリール−9−ホスファビシクロ[4.2.1]ノナン、(ジ)アルキル−9−アリール−9−ホスファビシクロ[4.2.1]ノナン、9−アルキル−9−ホスファビシクロ[4.2.1]ノナン、9−シクロアルキル−9−ホスファビシクロ[4.2.1]ノナン、9−シクロアルケニル−9−ホスファビシクロ[4.2.1]ノナン、およびそれらの[3.3.1]および[3.2.1]対応物、ならびにそれらのトリエン対応物が含まれる。
【0071】
(エトキシル化)
本発明の分岐エステル組成物を調製するために使用される分岐第一級アルコール組成物は、アルコール1モル当たりアルキレンオキシドを3モルまで、場合により含むことができる。アルキレンオキシドのモル数の上限は、本発明のエステル組成物が表面活性剤として作用してはならないということを反映している。
【0072】
適切なオキシアルキル化アルコールは、オキシアルキル化すべきアルコールまたはアルコールの混合物に、オキシアルキル化の触媒としての役割を果たす強塩基、通常は、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムなどのアルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物を、計算量、例えば、全アルコールを基準として、約0.1重量%から約0.6重量%、好ましくは約0.1重量%から約0.4重量%、添加することにより調製されうる。その結果得られた混合物は、存在するすべての水を気相として除去することなどにより乾燥され、次いで、アルコール1モル当たり約1モルから約3モルのアルキレンオキシドを供給するように計算された量のアルキレンオキシドが導入され、得られた混合物はアルキレンオキシドが消費されるまで反応することができ、反応が経過するのに伴って反応圧力は減少する。
【0073】
工程条件を含む、適切なオキシアルキル化工程のさらなる詳細は、米国特許第A−6,150,322号に記載されている。
【0074】
本明細書において使用するのに適切な他のアルコキシ化触媒には、国際公開第02/47817号に記載されている希土類リン酸塩、例えばリン酸ランタンおよびリン酸バリウムおよび同時係属の米国特許出願第60/485429号に記載されているものなどの複金属シアン化物触媒が含まれる。
【0075】
本明細書において使用するのに適切なアルキレンオキシドには、エチレンオキシド、プロピレンオキシドおよびブチレンオキシド、およびそれらの混合物、好ましくはエチレンオキシドが含まれる。
【0076】
(エステル化方法)
本発明の分岐エステル組成物は、エステル化反応条件下におけるカルボン酸と分岐アルコール組成物との反応により得られる。
【0077】
いずれのエステル化触媒でも本明細書において使用するのに適している。適切なエステル化触媒は、B.S.Furnissらにより改訂された、Vogel’s Textbook of practical organic chemistry、第5版、1989年、Longman Scientific & Technical、ハーロー、エセックス、イングランド;John Wiley & Sons,Inc.、ニューヨークによりアメリカ合衆国で1989年に共同出版されたものの695〜707頁に記載されている。
【0078】
本明細書において使用するのに適切なエステル化触媒の例には、これに限らないが、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸およびカチオン交換体が含まれる。
【0079】
本明細書において使用するのに特に好ましいエステル化触媒は、Amberlyst 15の商品名で、BDH Chemicals、プール、イングランドから市販されている強酸性カチオン交換樹脂である。
【0080】
触媒は、エステル化反応混合物の0.05重量%から5重量%の範囲の量で、本明細書において使用される。
【0081】
エステル化反応は、好ましくは0℃から250℃、より好ましくは50℃から200℃、さらに好ましくは75℃から175℃の範囲の温度において、0.1から2バール(絶対圧)の圧力、好ましくは大気圧で実行される。
【0082】
カルボン酸および本明細書に記載の特定の分岐アルコール組成物のエステル化反応により、特定の分岐エステル組成物が生じる。したがって、本発明の別の態様によれば、式RCOOR’を有する少なくとも1種のエステル化合物を含み、式中、Rは上文で記述したカルボン酸から得られた炭素鎖であり、R’は上文で記述した第一級アルコールから得られた炭素鎖である、分岐エステル組成物が提供される。
【0083】
本明細書における好ましい実施形態において、本発明の分岐エステル組成物は、式RCOOR’を有する少なくとも1種のエステル化合物を含み、式中、Rは1から30個の炭素原子を有する、直鎖または分岐、置換または非置換、アルキルまたはアルケニル基あるいは6から14個の炭素原子を有する、置換または非置換環式芳香族基であり、R’は、8から36個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基であり、前記R’基は0.7から3.0の1分子当たりの平均分岐数を有し、前記R’基の分岐はメチルおよびエチル分岐を含む。
【0084】
好ましい実施形態において、本発明の分岐エステル組成物は、式RCOOR’を有する少なくとも1種のエステル化合物を含み、式中、Rは10から22個の炭素原子を有する直鎖アルキル基である。
【0085】
別の好ましい実施形態において、本発明の分岐エステル組成物は、式RCOOR’を有する少なくとも1種のエステル化合物を含み、式中、Rは環式芳香族基、特に6個の炭素原子を芳香族環中に有する環式芳香族基である。
【0086】
別の好ましい実施形態において、本発明の分岐エステル組成物は、式RCOOR’を有する少なくとも1種のエステル化合物を含み、式中、R’は8から36個の炭素原子、好ましくは11から21個の炭素原子(すべてのアルキレンオキシド基を除いて)を有するアルキル基である。
【0087】
さらに別の好ましい実施形態において、本発明の分岐エステル組成物は、式RCOOR’を有する少なくとも1種のエステル化合物を含み、式中、R’は1.0から3.0、好ましくは1.5から2.3、特に1.7から2.1の1分子当たりの平均分岐数を有するアルキル基である。
【0088】
(パーソナルケア組成物)
本発明のパーソナルケア組成物は、安全で有効な量の分岐エステル化合物を含む。適切には、本発明のパーソナルケア組成物は分岐エステル化合物を、0.01から30重量%、好ましくは0.1から20重量%、より好ましくは0.5重量%から15重量%および特に1重量%から約10重量%含む。
【0089】
(化粧品として許容されるビヒクル)
本明細書におけるパーソナルケア組成物は、分岐エステル成分に加えて化粧品として許容されるビヒクルをも含む。化粧品として許容されるビヒクルは、安全で有効な量で通常存在しており、好ましくは1%から99.99%、より好ましくは約20%から約99%、特に約60%から約90%の量である。化粧品として許容されるビヒクルは、そのような組成物を化粧品的に、審美的にまたはその他の面で許容されるものとなすのに適した、またはさらなる使用上の利益をそのような組成物に付与することのできる、様々な成分を含有することができる。化粧品として許容されるビヒクルの成分は、分岐エステル成分と物理的および化学的に混和性でなければならず、本発明のパーソナルケア組成物に伴う安定性、有効性またはその他の利益を不必要に損なうべきではない。
【0090】
化粧品として許容されるビヒクルに包含されるのに適した成分は、当業者にはよく知られている。これらには、これに限らないが、エモリエント剤、オイル吸収剤、抗菌剤、結合剤、緩衝材、変成剤、化粧用収斂剤、膜形成剤、湿潤剤、表面活性剤、乳化剤、日焼け止め、植物油、鉱油およびシリコーンオイルなどの油、乳白剤、香料、着色剤、顔料、皮膚鎮静および治療剤、防腐剤、噴霧剤、皮膚浸透促進剤、溶媒、沈殿防止剤、乳化剤、クレンジング剤、増粘剤、可溶化剤、ワックス、無機日焼け防止剤、サンレスタンニング剤、酸化防止剤および/またはフリーラジカル捕捉剤、キレート剤、懸濁化剤、サンレスタンニング剤、酸化防止剤および/またはフリーラジカル捕捉剤、抗ニキビ剤、抗フケ剤、抗炎症剤、皮膚剥離/落屑剤、有機ヒドロキシ酸、ビタミン、天然エキス、シリカおよび窒化ホウ素などの無機微粒子、脱臭剤および制汗剤が含まれる。
【0091】
そのような材料の非制限的な例は、Harry’s Cosmeticology、第7版、Harry & Wilkinson(Hill Publishers、ロンドン、1982年)において;The Chemistry and Manufacture of Cosmetics、第2版、deNavarre(Van Nostrand 1962〜1965年)において;およびthe Handbook of Cosmetic Scince and Technology、第1版、Knowlton & Pearce(Elsevier 1993年);CTFA International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook、第7版、第2巻、WennigerおよびMcEwen編、(The Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Association,Inc.、ワシントンD.C.、1997年);および国際公開第01/89466号に記載されている。
【0092】
好ましい組成物は、Brookfield(ブルックフィールド)DVII RV粘度計およびTDスピンドルを使用し、5rpm、25℃および周囲気圧で測定された、5,000から約2,000,000mPa・sの間の見掛けの粘度を有する。組成物がクリームであるかまたはローションであるかに応じて、粘度は変化することになる。
【0093】
本発明の組成物は、好ましくは水性であり、より好ましくは、水中油型または油中水型エマルションなどのエマルション形態である。例えば、水中油型エマルションの場合は、油性材料を含有している疎水性の相が水相に分散されている。水中油型エマルションは、分散された疎水性の相を、通常、1重量%から50重量%、好ましくは1重量%から30重量%含み、連続した水相を1重量%から約99重量%、好ましくは40重量%から約90重量%含む。また、エマルションは、G.M.Eccelston、Application of Emulsion Stability Theories to Mobile and Semisolid O/W Emulsions、Cosmetic & Toiletries、第101巻、1996年11月、73〜92頁に記載されているような、ゲルのネットワークを含む。
【0094】
本発明の組成物は、好ましくは、約4.5から約9、より好ましくは約5から約8.5のpHを有するように調合されることになる。
【0095】
本明細書における組成物は、当業界において知られているような、様々な製品形態に調合され、様々な目的のために使用されうる。適切な製品形態には、これに限らないが、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、ペーストおよびムースが含まれる。
【0096】
本発明の組成物は、非クレンジングまたはクレンジング調合物になるように調合されうる。非クレンジング調合物の例には、ヘアコンディショナー、皮膚のモイスチャライジングクリーム、日焼け止め組成物、ナイトクリーム、制汗剤、リップスティック、化粧用ファンデーション、ボディーローションなどが含まれる。クレンジング調合物の例には、シャンプー、顔面クレンザー、シャワーゲル、バスフォーム、ハンドクレンザーなどが含まれる。通常、クレンジング調合物には、通常5%を超える、好ましくは10%を超える、比較的高水準の界面活性剤が含まれる。
【0097】
本明細書における好ましい実施形態においては、パーソナルケア組成物は、界面活性剤を好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下含む、非クレンジング調合物として調合される。
【0098】
パーソナルケア組成物において使用することが知られているいずれの界面活性剤でも、選択された試剤が組成物中の他の成分と物理的および化学的に混和性であるならば、本明細書において使用されうる。本明細書における組成物において使用するのに適切な界面活性剤には、国際公開第01/89466号に記載されているものなどの、非イオンの、陰イオンの、両性の(amphoteric)、双性イオンの(zwitterionic)および陽イオンの界面活性剤が含まれる。
【0099】
本明細書において、化粧品として許容される好ましいビヒクルは、通常、組成物の60重量%から99重量%の水準で親水性希釈剤を含有している。適切な親水性希釈剤には、水、低分子量の1価アルコール、グリコールおよびポリオールが含まれ、その中にはプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、ブチレングリコール、ソルビトールエステル、エタノール、イソプロパノール、エトキシ化エーテル、プロポキシ化エーテルおよびそれらの混合物が含まれる。好ましい希釈剤は水である。
【0100】
本明細書において化粧品として許容されるビヒクルは、連続した水相内に不連続相を分散させ、懸濁させることを助ける乳化剤を含有することができる。適切な乳化剤の例には、Uniquema Americasから市販されているPEG−30ジヒドロキシステアリン酸およびLipo Chemicals,Inc.からLipomulse165の商品名で市販されているステアリン酸グリセリルおよびPEG−100ステアリン酸エステルの混合物がある。
【0101】
本明細書において好ましい組成物は、それ自体がエモリエント性特性を有する分岐エステル成分に加えて、エモリエント材料を含む。エモリエント剤は、皮膚に潤いを与え、皮膚の軟らかさおよび滑らかさを増し、乾燥を防止または低減し、かつ/または皮膚を保護する材料である。エモリエント剤は、通常油または蝋を含んだ材料であり、水に不混和である。水中油型エマルションにおいては、したがって、エモリエント剤は、分散した油相の一部を通常形成する。適切なエモリエント剤は、Sagarin、Cosmetics,Science and Technology、第2版、第1巻、32〜43頁(1972年)および国際公開第01/89466号に記載されている。
【0102】
好ましいエモリエント剤の例には、国際公開第01/89466号において開示されているもの、例えばドデカン、スクアラン、コレステロール、イソヘキサデカンおよびC〜C40イソパラフィンなどの7から40個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖炭化水素、例えばイソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸イソプロピル、プロピオン酸ミリスチル、ステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸イソプロピル、イソステアリン酸メチル、ベヘン酸ベヘニル、パルミチン酸オクチル、マレイン酸ジオクチル、アジピン酸ジイソプロピル、およびジリノール酸ジイソプロピルなどのC〜C30カルボン酸およびC〜C30ジカルボン酸のC〜C30アルコールエステル、糖のC〜C30モノおよびポリエステルおよび国際公開第01/89466号において開示されているものなどの関連材料;およびサフラワー油、ひまし油、ココナツ油、綿実油、パーム核油、ヤシ油、ピーナツ油、大豆油、菜種油、アマニ油、ヌカ油、松根油、ゴマ油、ひまわり油、上述の部分水素化および全水素化油、およびそれらの混合物を含む植物油および水素化植物油が含まれる。
【0103】
本明細書において好ましい組成物は、揮発性または非揮発性の有機ポリシロキサン油などのシリコーンベースの成分を含有する。本明細書において使用するのに好ましいものは、ポリアルキルシロキサン、アルキル置換されたジメチコン、ジメチコノール、ポリアルキルアリールシロキサンおよびシクロメチコン、好ましくはポリアルキルシロキサンおよびシクロメチコンから選択された有機ポリシロキサンである。また、本明細書において有用なものは、ジメチコンコポリオールなどのシリコーンベースの乳化剤であり、一例として、Abil EM90の商品名でGoldschmidtにより供給されているセチルジメチコンコポリオールがある。
【0104】
本明細書における組成物は、国際公開第01/89466号に記載されたものなどの増粘剤を好ましくは含む。適切な増粘剤には、カルボン酸ポリマー、架橋ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、キサンタンガム、セルロース誘導体、およびそれらの混合物が含まれる。適切な増粘剤の例には、B.F.Goodrichから市販されているCarbopolシリーズの材料およびNatrosol 250 HR CSの商品名でHercules Aqualonにより供給されているセチルヒドロキシメチルセルロース(cetyl hydroxymethyl cellulose)が含まれる。
【0105】
本明細書において好ましい組成物は、湿潤剤を約5重量%から約30重量%の水準で含む。好ましい湿潤剤には、これに限らないが、グリセリン、ポリオキシアルキレングリコール、尿素、DまたはDLパンテノール、およびプロピレングリコールまたはブチレングリコールなどのアルキレングリコールが含まれる。
【0106】
太陽の有害な影響から保護することが望まれる場合、本明細書における組成物は、無機または有機の日焼け止めから選択された1種または複数種の日焼け止め成分を、安全で有効な量で含有することができる。適切な日焼け止めには、国際公開第01/89466号に開示されているものが含まれる。
【0107】
本明細書における組成物は、長鎖アルコールを含むことができる。適切な長鎖アルコールは、8から36個の範囲にある平均炭素原子数を有する、線状または分岐、飽和または不飽和アルコールから選択されうる。
【0108】
天然に生成された長鎖アルコールの例には、脂肪アルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコールおよびベヘニルアルコールが含まれる。
【0109】
その他の適切な長鎖アルコールには、NEODOLの商品名でシェルケミカル社から市販されているものが含まれる。NEODOLアルコールの例には、NEODOL23、NEODOL91、NEODOL1、NEODOL45およびNEODOL25が含まれる。これらのアルコールのすべては、大部分が線状アルコールである。
【0110】
その他の適切な長鎖アルコールには、米国特許第A−5,849,960号において開示され、調製されている分岐第一級アルコールが含まれる。
【0111】
その他の適切なアルコールには、SAFOL23などのSAFOLシリーズのアルコール、LIAL123などのLIALシリーズのアルコール、およびALFONICシリーズのアルコールが含まれ、これらのすべてはSasolから市販されている。
【0112】
また、本明細書において使用するのに適しているのは、いわゆる「Guerbet(ゲルベ)」アルコール、例えばEUTANOL G16、であり、Cognis Corporationから市販されている。
【0113】
本明細書における組成物は、化粧品において通常使用され、かつ当業者によく知られ、理解されている手順により調製されうる。
【0114】
以下の実施例により、本発明の性質を例示することになるが、実施例が限定的であることはまったく意図されていない。
【実施例1】
【0115】
ステアリン酸エステル組成物の調製
エステル組成物の調製は、95重量%の純度を有し、Aldrichから市販されているステアリン酸(81.7g)に対して、1分子当たり16.5個の平均炭素原子数を有し、シェルケミカル社から市販されているアルコール組成物である、過剰のNEODOL67(104.3g)を用いて、キシレン(118.7g)中で実施した。反応は、BDH Chemicals、プール、イングランドから、Amberlyst15の商品名で市販されている、強酸性カチオン交換樹脂2.8gを使用して、酸で触媒された。
【0116】
原料はすべて、マグネチックスターラ、還流冷却器、窒素導入口、およびディーン・スターク装置を装備した、ガラス製の三ツ口丸底フラスコへ直接秤込んだ。窒素の下で電気ジャケットを使用して混合物を150℃に加熱し、穏やかに還流させた。反応中に形成された水を、ディーン・スターク装置(ウォータトラップ)により除去した。除去された水の量から判断すると、エステル化反応は3時間以内の還流で完了した。
【0117】
エステル化反応が完了した後、50〜60℃で濾過することにより酸性樹脂を除去し、汚染物質を中和して吸着するために、中性/塩基性Al押出し物(CriterionからAX−200の商品名で市販されている)により処理した。アルミナを、少なくとも2時間撹拌した後、50〜60℃で濾過した。
【0118】
ステアリン酸エステル生成物を以下のように精製した。キシレン溶媒の大部分を、75℃および16〜6mbarにおいてロータリエバポレータを用いて除去した。キシレン溶媒の残留物および分岐アルコール組成物、すなわちNEODOL67アルコール、(317℃の沸点を有する)、の過剰量を、170℃および0.03mbarにおいて実験室のワイパー式薄膜蒸発器(wiped film evaporator)を使用して蒸発させることにより除去した。最終エステル生成物は、室温においてオフホワイトの、半固形液体であった。NMR分光法によれば、エステル生成物はキシレンを少量(1重量%未満)含有していた。以下の実施例4においてp−TSAを触媒として使用した場合とは異なって、酸性樹脂を使用したエステルの収量は、ほぼ計量された(142.2gのエステル;理論収量の96%)。
【実施例2】
【0119】
スケールを3倍にしたことを除いて、実施例1を2回繰り返した。実施例1と類似の結果を得た。
【実施例3】
【0120】
p−トルエンスルホン酸一水和物(以後「p−TSA」)をエステル化触媒として使用し、実施例1を繰り返した。97重量%の純度を有するp−TSAは、Baker Chemicalsから市販されている。キシレン117.4g、NEODOL67すなわち実施例1において使用したアルコール組成物105.3g、およびステアリン酸79.2gの中でp−TSAを3.0g使用した。
【0121】
p−TSAの場合は、得られたエステル溶液を1M NaCO溶液により2回抽出し、次に脱塩水により1回洗浄してp−TSAを除去した。得られた溶液を、MgSO上で乾燥し、後に濾過により分離した。NMRによれば、精製したエステル中にp−TSAのNa塩が痕跡量(0.2重量%未満)存在していた。
【0122】
p−TSAを使用した場合、エステルの収量は107.0g(理論収量の75%)であった。
【0123】
(溶解性実験)
実施例1により調製したエステル製品には、下の表1〜6において示されているように、90/10、50/50および10/90重量比において、パーソナルケア調合物に通常存在する様々な溶媒と混合した。溶解性測定は、室温および65℃において実施された。比較のために、ゲルベ型分岐アルコールをベースとする市販のステアリン酸イソセチル2種類について、同一の測定を実施した。また、さらなる比較として、50/50および10/90重量比における溶解性測定を、市販の線状ステアリン酸セテアリルを使用して行った。これらの溶解性の結果を下の表1〜6に示す。
【0124】
【表1】


【0125】
【表2】


【0126】
【表3】


【0127】
【表4】


【0128】
【表5】


【0129】
【表6】


【0130】
上の溶解性データから、4種類のエステルはすべて、65℃において類似の溶解性特性を示すことが分かる。それらのエステルは、ひまし油、鉱油、ジメチルシロキサン、ステアリン酸、およびステアリルアルコールを含む無極性溶媒と、完全にまたは部分的に混和する。同一の温度において、それらのエステルは、水、グリセリン、エタノール、およびプロピレングリコールを含む極性溶媒とは混和しない。この挙動は、エステルはすべて、65℃未満の融解点範囲を有しており、したがって、65℃においては透明な液体であるという事実と相関している。
【0131】
対照的に、室温においては、線状ステアリン酸セテアリルは、蝋状の固体であり、実施例1により調製されたエステルは固体−液体のスラリであり、ゲルベアルコールをベースとした商業的エステル2種類は完全に融解された液体である。その結果、ゲルベアルコールベースのエステルは、室温において無極性溶媒への溶解性を維持し、一方、線状ステアリン酸セテアリルエステルは、溶液から固体として析出する。中間の物理的性質を有する状態であることと矛盾することなく、実施例1により調製された実験のエステルは、線状セテアリルアルコールベースのエステルと、高度に分岐したゲルベアルコールベースのエステルの性質との間の溶解性特性を示す。
【0132】
(調合物実施例)
【実施例4】
【0133】
ナイトクリーム(油中水型エマルション)
下に示す成分を有する油中水型エマルションの形態のナイトクリームを調製するために、相Aの成分を75℃で一緒にし、相Bの成分を50℃で一緒にし、次いで相Bをゆっくりと相Aに加える。均質な混合物が生じるまで、2つの相を混合する。
【0134】
【表7】

【実施例5】
【0135】
保湿剤(水中油型エマルション)
75℃において相Aを一緒にし、75℃において相Bを一緒にし、相Bを相Aに添加することにより、下に示す成分を有する水中油型保湿剤を調製することができる。その結果得られた混合物に、相Cを添加し、40℃に冷却する。最後に相Dを添加する。
【0136】
【表8】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化反応条件下における、カルボン酸と分岐アルコール組成物との反応により得られ、前記分岐アルコール組成物は8から36個の炭素原子および0.7から3.0の1分子当たりの平均分岐数を有し、前記分岐はメチルおよびエチル分岐を含む分岐エステル組成物。
【請求項2】
分岐アルコール組成物は、1.0から3.0の範囲の1分子当たりの平均分岐数を有する請求項1に記載の分岐エステル組成物。
【請求項3】
分岐アルコール組成物は、1.5から2.3の範囲の1分子当たりの平均分岐数を有する請求項1または2に記載の分岐エステル組成物。
【請求項4】
分岐第一級アルコール組成物は、第四級炭素原子を0.5原子%未満含む請求項1から3のいずれかに記載の分岐エステル組成物。
【請求項5】
分岐第一級アルコール組成物は、線状アルコールを5%未満含有する請求項1から4のいずれかに記載の分岐エステル組成物。
【請求項6】
アルコールにおける分岐数の少なくとも40%は、メチル分岐である請求項1から5のいずれかに記載の分岐エステル組成物。
【請求項7】
アルコールにおける分岐数の5%から30%は、エチル分岐である請求項1から6のいずれかに記載の分岐エステル組成物。
【請求項8】
カルボン酸は、1から30個の炭素原子を有する請求項1から7のいずれかに記載の分岐エステル組成物。
【請求項9】
カルボン酸は、1から30個の炭素原子を有する直鎖または分岐、置換または非置換、飽和または不飽和、脂肪族カルボン酸、および芳香環中に6から14個の炭素原子を有する置換または非置換環式芳香族カルボン酸から選択されている請求項1から8のいずれかに記載の分岐エステル組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの式RCOOR’のエステル化合物を含み、式中、Rは1から30個の炭素原子を有する、直鎖または分岐、置換または非置換、アルキルまたはアルケニル基あるいは6から14個の炭素原子を有する、置換または非置換環式芳香族基であり、R’は、8から36個の炭素原子を有するアルキルまたはアルケニル基であり、前記R’基は0.7から3.0の1分子当たりの平均分岐数を有し、前記R’基の分岐は、メチルおよびエチル分岐を含む、分岐エステル組成物。
【請求項11】
(i)請求項1から10のいずれかに記載の分岐エステル組成物、および
(ii)化粧品として許容されるビヒクル
を含むパーソナルケア組成物。
【請求項12】
皮膚にエモリエント性の利益を与えるための、請求項1から10のいずれかに記載の分岐エステル組成物の使用。

【公表番号】特表2007−504147(P2007−504147A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524847(P2006−524847)
【出願日】平成16年8月26日(2004.8.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/027737
【国際公開番号】WO2005/023750
【国際公開日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(590002105)シエル・インターナシヨナル・リサーチ・マートスハツペイ・ベー・ヴエー (301)
【Fターム(参考)】