説明

分散剤

自動車用潤滑剤組成物での使用に適した新規な無灰高分子分散剤が請求される。この無灰高分子分散剤は1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む極性頭部基と、それぞれの繰り返し単位が少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能化された炭化水素鎖を含む単量体繰り返し単位2〜30個からなる重合体骨格を含む極性尾部基2個以上との反応から誘導される、200〜15000の数平均分子量を有する。この分散剤は、唯一の分散剤として又は他の分散剤との組合せで使用されるときに良好な分散特性を有する。本発明の分散剤は一般的な市販の分散剤と比べて、自動車用適用において促進されたシール抵抗と良好な酸化安定性を提供する。さらに、本発明の分散剤を含有する自動車用潤滑剤組成物の低温粘度は一般的な市販の分散剤を用いた組成物の低温粘度よりも優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な無灰高分子分散剤およびその自動車用潤滑剤組成物でのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用途にとって、潤滑剤基液および添加剤によって果たされるすべての機能が重要である。不溶性の汚染物質の懸濁化と表面を綺麗に保つことは添加剤の決定的に重要な機能であり、清浄剤と分散剤との組合せの存在によって保証される。分散剤は、懸濁化と綺麗に保つことの要求を果たすのにより効果的であるように典型的には清浄剤の“せっけん部分”よりも大きい分子量を有する。
【0003】
自動車用エンジンオイルにおいて、分散剤は、煤煙が原因でエンジンオイルの粘度が増加するのを軽減し、エンジンスラッジを少なくしそしてエンジンに沈殿物が形成するのを少なくするために様々な方法で潤滑剤基液中に不溶性汚染物質を浮遊させることができる。分散剤はトランスミッションの或る部分が非常に高い温度にあるとき潤滑剤基液の甚大な酸化から導かれるスラッジが増加するのを調整するためのトランスミッション液中のキーとなる添加剤である。同様に、分散剤はギヤ油内で用いられ得る。ギヤ油は典型的には熱的に不安定な超高圧添加剤を含み、高度に極性の副生物を形成して分解し得る。分散剤は腐食と沈殿物の形成を避けるためにこれらの副生成物を含むために用いられる。
【0004】
上記のように、自動車用潤滑剤組成物中の分散剤の主要な機能は煤煙、沈澱物前駆体および沈澱物を分散させることである。しかしながら、分散剤は効果的に機能するために他の特性を必要とする。これらの特性には熱的および酸化安定性、良好な低温特性、すなわち、低粘度維持、および自動車用装備内でのシールの完全性の維持を含む。
熱的安定性が不良である分散剤は、結び付く能力を失って分解され、そして潜在的に危険な生成物を浮遊させる。酸化安定性が不良である分散剤は、沈殿物の形成およびオイルの増粘へとそれ自体が貢献する。
【0005】
自動車用の潤滑剤組成物中に存在する分散剤の量の組合せ(例えば自動車用エンジンオイル中の20%まで)および粘度指数向上剤は別にしてそれがしばしば最も高分子量の添加剤であるという事実は潤滑剤組成物の粘度を変え得る。高温での粘度の伸長は好ましいが低温でのそれは不都合である。自動車用エンジンオイルは寒中運転の間にはクランキング粘度および揚水粘度として低から中程度の粘度を必要とする。自動車用潤滑剤組成物が低温クランキングの容易さ、良好な潤滑循環および燃料節約のために良好な低温特性を有することが重要である。自動車用の応用にとって燃料節約は重要な因子である。
【0006】
自動車用装備におけるシールは多くの目的のため、特に修理を行うために正常に機能していない部分へのアクセスを可能とするため、潤滑剤の汚染および損失を最小化するため、そして振動している部分又は異なる温度に曝される時に伸びるか収縮することが可能な部分を一緒に部分を結合させるために用いられる。従って、縮小、伸び又は脆くなることによって機能しなくなり得るシールの完全性の維持は自動車用の装備の持続的な性能にとって不可欠である。シール膨張剤の添加によってある程度は緩和され得るけれども、分散剤はシールの損傷を引き起こす可能性が最も高い添加剤に関係があるとされる。
【0007】
一般に市販の分散剤は、典型的には極性頭部基に結合している接続基に結合した非極性炭化水素鎖の尾部基から構成される。典型的には、極性基は極性粒子に結び付きそして非極性基はこれらの粒子をバルク潤滑剤溶液中に懸濁状態に保つ。これらの種類の分散剤の最も一般的なものの1つがポリイソブチレンスクシンイミドであり、ポリイソブチレンと無水マレイン酸との反応とそれに続いてのポリアルキレンポリアミンとの反応から導かれる。そのような生成物は良好な分散特性を有しているがシールに損傷を与えることが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、単独の分散剤として又は他の分散剤と組み合わせて用いられる時に、良好な分散特性を有しかつ一般的な市販の製品と比べて促進されたシール抵抗も提供する自動車用の応用において潤滑剤基液と一緒に用いるための分散剤を発明した。さらに、本分散剤を用いた自動車用潤滑剤組成物の低温粘度は一般的な市販の分散剤を用いた組成物のそれよりも優れている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む極性頭部基と、それぞれの繰り返し単位が少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能化された炭化水素鎖を含む単量体繰り返し単位2〜30個からなる重合体骨格を含む極性尾部基2個以上との反応から誘導される、200〜15000の数平均分子量を有する自動車用潤滑剤組成物中での使用に適した無灰高分子分散剤が提供される。
【0010】
本発明の別の態様によれば、1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む極性頭部基と、それぞれの繰り返し単位が少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能化された炭化水素鎖を含む単量体繰り返し単位2〜30個からなる重合体骨格を含む極性尾部基2個以上との反応から誘導される、200〜15000の数平均分子量を有する無灰高分子分散剤の自動車用潤滑剤組成物中での使用が提供される。
【0011】
本発明の別の態様によれば、基液および1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む極性頭部基と、それぞれの繰り返し単位が少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能化された炭化水素鎖を含む単量体繰り返し単位2〜30個からなる重合体骨格を含む極性尾部基2個以上との反応から誘導される、200〜15000の数平均分子量を有する無灰高分子分散剤を含む自動車用潤滑剤組成物中が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
無灰高分子分散剤
極性頭部基は1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む。極性部分は好適には1個より多いアミン又はアルコール部分を有する。極性部分は好適には2〜4個のアミン部分を有する。極性頭部基の例にはポリアミン、例えばテトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチレンテトラミンそしてポリオール、例えばグリセロール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコールおよびペンタエリスリトールを含む。極性頭部基は2つ以上の尾部基と反応したときに自動車用潤滑剤組成物中に分散される粒子と結びつくことができるように選ばれる。極性部分は、一旦2つ以上の尾部基と反応したときは、選択された添加剤含有基液で高分子無灰分散剤を不溶にしないように選ばれる。
【0013】
それぞれの極性尾部基は、選択された基液と自動車用潤滑剤組成物中に存在してもよい他の極性添加剤との組合せで可溶であるような極性の度合いを示す。それぞれの尾部基は同一でも異なってもよい。好適には、それぞれの尾部基は同一である。
それぞれの極性尾部基のうちの重合体骨格の各単量体繰り返し単位は少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能基化された炭化水素鎖を含む。炭化水素鎖は飽和又は不飽和の、好適には飽和の脂肪族鎖であってよい。炭化水素鎖は直鎖又は分岐であってよい。それは好適には分岐である。それは好適には2価の基である。それは好適には8〜35個、より好ましくは10〜25個の、特に12〜20個の炭素原子を含む。
【0014】
電気陰性の元素又は部分は好適には酸素、エステル(−COO−と定義される)、およびアミド(−CONH−と定義される)から選ばれる。電気陰性の元素又は部分はより好適には酸素又はエステルから、特にエステルから選ばれる。電気陰性の元素又は部分はペンダント基であるよりは単量体繰り返し単位の骨格中にある方が好ましい。単量体繰り返し単位は炭化水素鎖が
【0015】
【化1】

でありかつ電気陰性の元素又は部分がエステルであると特に好ましい。
単量体繰り返し単位数は2〜30個、好適には2〜20個、特に3〜15個である。
【0016】
分散剤にとっては、極性頭部基にそれぞれ結合された2個以上の極性尾部基、好適には2〜4の尾部基がある。それぞれの尾部基の1端は、好適には極性頭部基の極性部分と反応する官能基化された基、例えば酸、無水物、ハロゲン又はアルコール基を有する。
尾部基の他の末端は連鎖末端基で停止される。連鎖末端基の正確な構造はそれがさらされる通常の処理条件下で組成物中の他の成分に対して不活性であるならば重要ではない。それは好適には800未満、さらには500未満、特には300未満の分子量を有する。それは好適には炭素、水素および酸素のみを含む。
無灰高分子分散剤は、Aが尾部基でありそしてBが極性頭部基である場合に、ABAブロック共重合体であってよい。あるいは分散剤は星形の高分子又はくし状のグラフト高分子であってよい。
【0017】
好ましい分散剤は、それぞれの尾部基が、アルキル基が8〜35個の炭素原子、好適には10〜25個、特に12〜20個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル酸のポリエステル化によって得られる生成物である2個の尾部基のポリアミン極性頭部基との反応により誘導される。
これらの尾部基のそれぞれにとって、特に好適なヒドロキシアルキル酸は12−ヒドロキシステアリン酸である。この場合、連鎖末端基はヒドロキシアルキル酸自体から誘導できるかあるいは入手可能なヒドロキシ酸の市販グレードで一般的に存在しているヒドロキシ酸のうちの非―ヒドロキシル類似体から誘導可能である。前記連鎖末端基はポリエステル化反応混合物に加えられてよい任意の有用な酸からも同様に得られることができる。そのような有用な酸は、飽和あるいは不飽和の、好適には飽和の12〜22の炭素原子を有するモノカルボン酸を含む。具体的な例はイソステアリン酸である。極性頭部基と反応するそれぞれの尾部基の末端はカルボン酸基である。
【0018】
この好適な分散剤用のポリアミン極性頭部基の例はテトラエチレンペンタミン、エチレンジアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミンおよびトリエチルテトラミンを含む。特にテトラエチレンペンタミンが好適である。
分散剤は200〜15000、好適には500〜10000、さらに500〜7000の数平均分子量を有する。高分子の数平均分子量は多くの方法によって測定され得る。ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は本発明の分散剤の数平均分子量を測定するために用いられた周知の方法である。
【0019】
基液
基液なる語は、エンジンオイル、トランスミッションオイルおよび燃料を含む。
エンジンオイルはガソリンおよびジーゼル4ストローク(大型車両用ジーゼルを含めて)エンジンオイルを含む。エンジンオイルはアメリカ石油協会(API)によって決められたグループI〜グループVIの任意の基液又はそれらの混合物から選ばれてよい。エンジンオイルは、好適にはグループIの基液を20%以下、さらに10%以下有することが好ましい。エンジンオイルはグループVの基液を50%以下有することが好ましい。100℃における4ストロークエンジンオイルの粘度は3〜15cSt、好適には4〜8cStである。粘度指数は好適には少なくとも90であり、さらに好ましくは少なくとも105である。ASTM D−5800によって測定されたノアク(Noack)の蒸発性は好適には20%未満、より好適には15%未満である。
【0020】
エンジンオイルなる語は同様に2ストロークエンジンオイルをも含む。特に好適な2ストロークエンジンオイルはグループIの基液、特にポリイソブチレンである。他の好適な2ストロークエンジンオイルはいくつかのグループVの基液、例えばエステルおよび植物性油を含む。
トランスミッションはオートマチック車、ギア、リヤ・アクスルおよび連続可変を含む。トランスミッション油は、好適にはグループII〜グループVI、特に高粘度ポリアルファオレフィンおよび高精製鉱物油が好ましい。
燃料はガソリンおよびジーゼル燃料のいずれをも含む。ガソリン燃料は好適にはEN 228標準に合致すべきであり、ジーゼル燃料はEN 590標準に合致すべきである。
基液は好適にはエンジンオイルであり、より好適には4ストロークエンジンオイルである。
【0021】
自動車用潤滑剤組成物中の無灰高分子分散剤の重量%は、基液がエンジンオイルであるときには好適には1〜20%である。自動車用潤滑剤組成物中の無灰高分子分散剤の重量%は、基液がトランスミッションオイルであるときには好適には0.1〜5%である。自動車用潤滑剤組成物中の無灰高分子分散剤の重量%は、基液が燃料であるときには好適には0.001〜1%である。
【0022】
基液が4ストロークエンジンオイルであるときは、自動車用潤滑剤組成物は同様に自動車用潤滑剤組成物の全重量の0.1〜30%、さらに好ましくは1〜20%、特に2〜15%の量の既知の官能基から成る他の種類の添加剤を含む。これらは酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、摩擦調整剤、泡抑制剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、磨耗防止剤、極圧剤、灰分含有清浄剤、金属不活性化剤、乳化破壊剤およびその混合物を含むことができる。
【0023】
粘度指数向上剤はポリイソブテン、ポリメタクリレート酸エステル、ポリアクリレート酸エステル、ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエンコポリマーおよびポリオレフィンを含む。泡抑制剤はシリコーンおよび有機ポリマーを含む。流動点降下剤はポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、ジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステルおよびアルキルビニルエーテルを含む。摩擦調整剤はアミド、アミン、モリブデン含有化合物および多価アルコールの部分脂肪酸エステルを含む。灰分含有清浄剤は酸有機化合物の中性および過塩基アルカリ土類金属塩を含む。酸化防止剤はヒンダードフェノール、硫黄含有化合物およびアルキルジフェニルアミンを含む。
【0024】
磨耗防止剤はジンクジアルキルジチオホスフェート(ZDDP)、無灰および灰分含有有機リン化合物および有機硫黄化合物、ホウ素化合物、および有機モリブデン化合物を含む。金属不活性化剤はベンゾトリアゾール、メルカプトベンズイミダゾール、チアジアゾール、およびトルトリアゾール誘導体を含む。極圧剤は硫化エステル、硫化オレフィン、ジアリールジスルフィド、ジアルキルジチオフォスフェートエステル、重金属ナフテン酸塩、無灰および灰分含有ジアルキルジチオフォスフェート、無灰および灰分含有ジアルキルジチオカルバメート、無灰および灰分含有リン酸エステル塩、塩素化ワックス、複合エステル、ホウ酸エステル、およびオイル不溶性シート構造物、例えばグラファイトやモリブデンジスルフィド懸濁物を含む。乳化破壊剤はポリアルコキシル化フェノール、ポリアルコキシル化ポリオール、およびポリアルコキシル化ポリアミンを含む。
【0025】
添加剤は単一の添加剤中に1つより多い官能価を含んでよい。
基液が2ストロークエンジンオイルであるときは、自動車用潤滑剤組成物は同様に自動車用潤滑剤組成物の全重量の0.1〜30%、さらに好ましくは0.5〜20%、特に1〜10%の量の既知の官能基から成る他の種類の添加剤を含む。これらは酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、摩擦調整剤、泡抑制剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、潤滑剤、灰分含有清浄剤およびその混合物を含むことができる。
【0026】
粘度指数向上剤はポリイソブテン、ポリメタクリレート酸エステル、ポリアクリレート酸エステル、ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエンコポリマーおよびポリオレフィンを含む。泡抑制剤はシリコーンおよび有機ポリマーを含む。流動点降下剤はポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、ジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステルおよびアルキルビニルエーテルを含む。摩擦調整剤はアミド、アミン、モリブデン含有化合物および多価アルコールの部分脂肪酸エステルを含む。
【0027】
灰分含有清浄剤は酸有機化合物の中性アルカリ土類金属塩を含む。酸化防止剤はヒンダードフェノール、硫黄含有化合物およびアルキルジフェニルアミンを含む。潤滑剤は脂肪酸、ブライトストック(bright stock)、ZDDP、無灰および灰分含有有機リン化合物および有機硫黄化合物、ホウ素化合物、硫化エステル、硫化オレフィン、ジアリールジスルフィド、ジアルキルジチオフォスフェートエステル、無灰および灰分含有ジアルキルジチオフォスフェート、無灰および灰分含有ジアルキルジチオカルバメート、無灰および灰分含有リン酸エステル塩、複合エステルおよびホウ酸エステルを含む。
【0028】
基液がトランスミッションオイルであるときは、自動車用潤滑剤組成物は同様に自動車用潤滑剤組成物の全重量の0.1〜30%、さらに好ましくは0.5〜20%、特に1〜10%の量の既知の官能基から成る他の種類の添加剤を含む。これらは酸化防止剤、腐食防止剤、防錆剤、摩擦調整剤、泡抑制剤、流動点降下剤、粘度指数向上剤、磨耗防止剤、清浄剤、金属不活性化剤、極圧剤、乳化破壊剤およびその混合物を含むことができる。
【0029】
粘度指数向上剤はポリイソブテン、ポリメタクリレート酸エステル、ポリアクリレート酸エステル、ジエンポリマー、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール共役ジエンコポリマーおよびポリオレフィンを含む。泡抑制剤はシリコーンおよび有機ポリマーを含む。流動点降下剤はポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ハロパラフィンワックスと芳香族化合物との縮合生成物、ビニルカルボキシレートポリマー、ジアルキルフマレートのターポリマー、脂肪酸のビニルエステルおよびアルキルビニルエーテルを含む。摩擦調整剤はアミド、アミン、モリブデン含有化合物および多価アルコールの部分脂肪酸エステルを含む。灰分含有清浄剤は酸有機化合物の中性および過塩基アルカリ土類金属塩を含む。酸化防止剤はヒンダードフェノール、硫黄含有化合物およびアルキルジフェニルアミンを含む。
【0030】
磨耗防止剤はZDDP、無灰および灰分含有有機リン化合物および有機硫黄化合物、ホウ素化合物、および有機モリブデン化合物を含む。金属不活性化剤はベンゾトリアゾール、メルカプトベンズイミダゾール、チアジアゾール、およびトルトリアゾール誘導体を含む。極圧剤は硫化エステル、硫化オレフィン、ジアリールジスルフィド、ジアルキルジチオフォスフェートエステル、重金属ナフテン酸塩、無灰および灰分含有ジアルキルジチオフォスフェート、無灰および灰分含有ジアルキルジチオカルバメート、無灰および灰分含有リン酸エステル塩、塩素化ワックス、複合エステル、ホウ酸エステル、およびオイル不溶性シート構造合成物、例えばグラファイトやモリブデンジスルフィド懸濁物を含む。乳化破壊剤はポリアルコキシル化フェノール、ポリアルコキシル化ポリオール、およびポリアルコキシル化ポリアミンを含む。
【0031】
基液が燃料であるときは、自動車用潤滑剤組成物は同様に自動車用潤滑剤組成物の全重量の50ppm〜5%、さらに好ましくは100ppm〜3%、特に150ppm〜2%の量の既知の官能基から成る他の種類の添加剤を含む。これらはセタン価向上剤、例えばイソオクチルナイトレート、オクタン価向上剤、含酸素化合物、例えばメチルターシャリーブチルエーテル、無灰清浄剤、例えばポリイソブチレンモノスクシンイミド、潤滑添加剤、例えば脂肪酸および脂肪酸エステル、防煙剤、例えば有機金属化合物、消泡剤、例えば有機シリコーン、除氷添加剤、例えばグリコール、低温操作性添加剤、例えば高分子ワックス、抗力逓減添加剤、例えば高分子量ポリマー、酸化防止剤、例えばヒンダードフェノールおよび芳香族アミン、金属不活性化剤、例えばベンゾトリアゾール、腐食防止剤、例えばイミダゾリン、乳化破壊剤および曇り防止剤、例えばポリアルコキシル化ポリオール、摩擦調整剤、例えば脂肪酸エステル、乳化剤、例えばポリオールの部分エステル、帯電防止剤、例えばグリセロールエステルおよびその混合物を含むことができる。
【0032】
自動車用潤滑剤組成物はさらに表面活性剤添加物を含んでもよい。表面活性剤添加物は、好適には少なくとも1個のアルコキシル化部分または少なくとも1個のエステル部分を含む。界面活性剤添加物は好適には40個以下の炭素原子を有する。特に好適なエステルは、2〜8個のヒドロキシル基を有するポリオールと8〜24個の炭素原子を有する脂肪族、直鎖又は分岐、飽和又は不飽和のモノカルボン酸との反応から得られる。特に好ましいエステルの例は、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレートおよびソルビタントリオレートである。無灰高分子分散剤の重量%に対する表面活性剤添加物の重量%は0.1〜20%、好適には1〜15%である。
他の公知の分散剤、例えば、シェブロン オロナイト(Chevron Oronite)から入手可能なOLOA 774が自動車用潤滑剤組成物中に20重量%までの量で、好適には10重量%までの量で存在してもよい。
【0033】
本発明の別の態様によると、基液および1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む極性頭部基と、それぞれの繰り返し単位が少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能化された炭化水素鎖を含む単量体繰り返し単位2〜30個からなる重合体骨格を含む極性尾部基2個以上との反応から誘導される、200〜15000の数平均分子量を有する無灰高分子分散剤0.001〜20重量%を含む自動車用潤滑剤組成物のエンジンまたはトランスミッションまたは燃料供給ライン内での使用が提供される。
【0034】
本発明の別の態様によれば、1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む極性頭部基と、それぞれの繰り返し単位が少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能化された炭化水素鎖を含む単量体繰り返し単位2〜30個からなる重合体骨格を含む極性尾部基2個以上との反応から誘導される、200〜15000の数平均分子量を有する無灰高分子分散剤のエンジンまたはトランスミッションオイルまたは燃料内での使用が提供される。
【0035】
本発明の分散剤は、唯一の分散剤として又は他の分散剤との組合せで使用されるときに、自動車用用途で潤滑剤基液と一緒での使用にとって煤煙の分散のために良好な分散特性を有する。
本発明の分散剤は一般的な市販の分散剤と比べてより促進されたシール抵抗を提供する。
本発明の自動車用潤滑剤組成物の低温粘度は市販の分散剤を含む組成物のそれよりも優れている。本発明の自動車用潤滑剤組成物は−20℃で12000cSt以下、好適には10000cSt以下、特に8000cSt以下の低温粘度を有する。
本発明の分散剤を有する自動車用潤滑剤組成物は一般的な市販の分散剤を含む組成物よりも40℃および100℃のいずれでも摩擦係数が低い。
本発明は以下の実施例をほんの一例として参照してさらに説明される。
【実施例】
【0036】
実施例1
無灰高分子分散剤の例、A1の調製
a)それぞれの極性尾部基の調製
攪拌機付の1リットルの蒸留装置に窒素下、80℃で600gの市販等級12−ヒドロキシステアリン酸が装填された。次いで温度が190℃に設定された。1.2gのテトラブチルチタネートが一度に添加されて、温度が125℃を超えた。酸価が35mgKOH/gに達したとき熱が除かれそして反応物は冷却された。次いで生成物であるポリ−12−ヒドロキシステアリン酸が80℃でろ過された。
b)分散剤A1の調製
攪拌機付の1リットルの蒸留装置に窒素下、664.3g(2.1モル)のポリ−12−ヒドロキシステアリン酸と35.2g(1モル)のテトラエチレンペンタミンが装填された。次いで温度が170℃に設定された。酸価が0.32mgKOH/gに達したとき熱が除かれそして反応物は冷却された。
【0037】
実施例2
本発明の自動車用潤滑剤の煤煙沈殿物を分散させる性能が次の実験詳細に従って測定された。
無灰高分子分散剤、A1とバルカン(Vulcan)XC72Rカーボンブラックとの6重量%のカーボンブラックを含む4ストロークエンジンに用いられる自動車用潤滑剤組成物20mgが200.24cmの直径のステンレス鋼ボールベアリングが入っているポリエチレンボトルに加えられ1時間程振られた。1時間静置された後、混合物はブルックフィールド粘度計に移されそして毎分50回転(rpm)の一定の回転速度で紡錘を用いて粘度が測定された(読み1)。次いで、カーボンブラックなしの自動車用潤滑剤組成物に対して粘度が測定された(読み2)。カーボンブラックの存在に基く絶対粘度の増加は読み1から読み2を差し引いて計算された。
【0038】
結果は下の表1に示される。各例において、自動車用潤滑剤組成物用の基液は7%の無灰分散剤(インフィニアム社(Infineum)から販売のC9265)を含む標準的な添加剤包装品を用いたネックスベース(Nexbase、登録商標)3060とネックスベース(Nexbase、登録商標)3043との混合物(無色、水素添加された、高イソパラフィン炭化水素を含む接触水素異性化されかつ接触脱ろうされた基液)である。OLOA774は、シェブロン オロナイト社(Chevron Oronite)から入手可能なポリイソブチレンスクシンイミドである市販の分散剤である。前記市販の分散剤は約36%の活性分散剤を含む。表1における%は添加された実際の活性分散剤に対してである。
【0039】
【表1】

【0040】
表1の結果は、本発明による無灰高分子分散剤の自動車用潤滑剤組成物での使用は一般的な市販の製品よりも煤煙粒子の分散が良好であることを示す。
【0041】
実施例3
添加された分散剤の重量%が5%である実施例2に開示された自動車用潤滑剤組成物が、シール材がAK6エラストマーであるPV3344に従ってVWシール適合性試験に供された。シールサンプルが自動車用潤滑剤組成物中に150℃で94時間浸漬された。自動車用潤滑剤組成物が置き換えられたそしてサンプルが別の94時間浸漬された。次いで再び自動車用潤滑剤組成物が置き換えられたそしてサンプルが三度目の94時間浸漬された。この三度目の浸漬の後に引張強度、破断伸び、亀裂数およびシール硬さの変化が測定された。結果は下の表2に示される。
【0042】
【表2】

【0043】
表2の結果は、本発明による自動車用潤滑剤組成物が一般的な市販の製品よりもシール試験においてより良好に機能することを示す。
【0044】
実施例4
実施例2に開示された無灰高分子分散剤を5重量%含む自動車用潤滑剤組成物の摩擦係数が、平らな鋼鉄円盤上の鋼球からなるミニトラクションマシン(MTM)を用いて40℃と100℃の温度で測定された。組成物のシュトリベック(Stribeck)曲線を測定するために適用された負荷は36Nでそして回転速度は0.01m/sから4m/sに変化された。結果は下の表3そして40℃の温度に対しては図1に、そして100℃の温度に対しては表4と図2に示される。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
表3および表4の結果は本発明による無灰高分子分散剤を含む自動車用潤滑剤組成物は、一般的な市販の分散剤製品を含む自動車用潤滑剤組成物と比べて境界、混合されたそして膜の潤滑管理において高温および低温のいずれでも低い摩擦係数を有するということを示す。
【0048】
実施例5
5%の添加された分散剤を用いた、基液ガ実施例2に開示された通りの基液である自動車用潤滑剤組成物の粘度がSVM3000スタビンガー(Stabinger)粘度計を用いて−20℃で測定された。結果は下の表5に示される。
【0049】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は、40℃で速度を変化させて、2種類の分散剤による摩擦係数の変化を、log速度m/sを横軸、摩擦係数を縦軸として比較して示す。
【図2】図2は、100℃で速度を変化させて、2種類の分散剤による摩擦係数の変化を、log速度m/sを横軸、摩擦係数を縦軸として比較して示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む極性頭部基と、それぞれの繰り返し単位が少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能化された炭化水素鎖を含む単量体繰り返し単位2〜30個からなる重合体骨格を含む2個以上の極性尾部基との反応から誘導される、200〜15000の数平均分子量を有する自動車用潤滑剤組成物中での使用に適した無灰高分子分散剤。
【請求項2】
分散剤が、500〜10000、さらに好ましくは500〜7000の数平均分子量を有する請求項1の無灰高分子分散剤。
【請求項3】
前記極性頭部基の極性部分が1個より多いアミン又はアルコールの官能基を有する請求項1又は2記載の無灰高分子分散剤。
【請求項4】
前記極性頭部基の極性部分が2〜4個のアミンの官能基を有する請求項3記載の無灰高分子分散剤。
【請求項5】
前記2個以上の極性尾部基それぞれが同じ化学を有する請求項1〜4のいずれか1項記載の無灰高分子分散剤。
【請求項6】
前記2個以上の極性尾部基の炭化水素鎖が直鎖又は分岐であってよくそして8〜35個の炭素原子を含む2価の基である請求項1〜5のいずれか1項記載の無灰高分子分散剤。
【請求項7】
炭化水素鎖が下記式
【化1】

で示される請求項6記載の無灰高分子分散剤。
【請求項8】
炭化水素鎖の電気陰性の元素又は部分が、酸素、エステル(−COO−と定義される)およびアミド(−CONH−と定義される)から選ばれそして単量体繰り返し単位に対して骨格に位置するかあるいはペンダント基に位置するかのいずれかである請求項1〜7のいずれか1項記載の無灰高分子分散剤。
【請求項9】
炭化水素鎖の電気陰性の元素または部分が、単量体繰り返し単位の骨格に位置するエステル(−COO−と定義される)である請求項8記載の無灰高分子分散剤。
【請求項10】
単量体繰り返し単位の数が、2〜30個、好ましくは2〜20個、さらに好ましくは3〜15個である請求項1〜9のいずれか1項記載の無灰高分子分散剤。
【請求項11】
高分子無灰分散剤が、アルキル基が8〜35個の炭素原子を有するヒドロキシアルキル酸のポリエステル化反応により誘導されたものである請求項1〜10のいずれか1項記載の無灰高分子分散剤。
【請求項12】
ヒドロキシアルキル酸が12−ヒドロキシステアリン酸である請求項11記載の無灰高分子分散剤。
【請求項13】
高分子無灰分散剤が、500〜10000、好ましくは500〜7000、さらに好ましくは500〜5000、特に500〜3000の数平均分子量を有する請求項1〜12のいずれか1項記載の無灰高分子分散剤。
【請求項14】
基液および1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む極性頭部基と、それぞれの繰り返し単位が少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能化された炭化水素鎖を含む単量体繰り返し単位2〜30個からなる重合体骨格を含む極性尾部基2個以上との反応から誘導される、200〜15000の数平均分子量を有する無灰高分子分散剤を含む自動車用潤滑剤組成物。
【請求項15】
さらに、無灰高分子分散剤に対して0.1〜20重量%の界面活性剤添加物を含む請求項14記載の自動車用潤滑剤組成物。
【請求項16】
さらに、20重量%までの量で存在している他の分散剤を含む請求項14又は15記載の自動車用潤滑剤組成物。
【請求項17】
基液および1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む極性頭部基と、それぞれの繰り返し単位が少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能化された炭化水素鎖を含む単量体繰り返し単位2〜30個からなる重合体骨格を含む極性尾部基2個以上との反応から誘導される、200〜15000の数平均分子量を有する無灰高分子分散剤0.001〜20重量%を含む自動車用潤滑剤組成物のエンジン又はトランスミッションオイルまたは燃料内での使用。
【請求項18】
1個より多いアミン、アルコール、酸又はハロゲンの官能基を有する極性部分を含む極性頭部基と、それぞれの繰り返し単位が少なくとも1個の電気陰性の元素または部分の存在によって官能化された炭化水素鎖を含む単量体繰り返し単位2〜30個からなる重合体骨格を含む極性尾部基2個以上との反応から誘導される、200〜15000の数平均分子量を有する無灰高分子分散剤のエンジン又はトランスミッションオイルまたは燃料内での使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−520796(P2008−520796A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542081(P2007−542081)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004284
【国際公開番号】WO2006/054045
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(506352278)クローダ インターナショナル パブリック リミティド カンパニー (24)
【Fターム(参考)】