説明

分析装置、供給装置、攪拌装置及び攪拌方法

【課題】多量の液体に少量の液体又は固体を供給しても均一に攪拌することが可能な分析装置、供給装置、攪拌装置及び攪拌方法を提供すること。
【解決手段】複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置1、供給装置、攪拌装置及び攪拌方法。分析装置1は、容器に保持された液体を攪拌する音波を発生させる表面弾性波素子と、第一の液体を保持して搬送される容器に、第一の液体よりも少量の第二の液体又は固体を供給する供給装置5と、供給装置5による第二の液体又は固体の供給時に、第一の液体が攪拌されているように表面弾性波素子による音波の発生を制御する駆動制御部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置、供給装置、攪拌装置及び攪拌方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、分析装置は、反応容器の小型化と検体間の汚染を回避するため、外部から反応容器に超音波を照射し、反応容器が保持している液体中に音響流を発生させることで液体を非接触で攪拌混合するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】国際公開第01/77691号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された化学分析装置は、反応容器内の少量の検体に量の多い試薬を分注するのと同時に攪拌を行っている。このため、特許文献1の化学分析装置は、超音波の照射による音響流の攪拌効果の他、多量の試薬を少量の検体に分注すること自体による攪拌効果により、検体と試薬が均一に攪拌される。この場合、反応容器の容量が微量になると、液体の表面張力の影響が大きくなる。このため、特許文献1の化学分析装置の場合とは逆に、微小な反応容器に保持された多量の試薬に少量の検体を分注すると、検体が試薬の表面張力によって液面に吸着されて、液面近傍のみで拡散し、多量の試薬内部まで拡散し難くなる。この結果、引き続く攪拌工程で攪拌時間を長くし、或いは攪拌パワーを大きくする等、攪拌エネルギーを増加させることによって攪拌効率を高めないと、複数の異なる液体を均一に混合することができず、分析値の信頼性が損なわれるという問題があった。しかも、容量が微量な反応容器では、多量の液体に少量の粉状又は粒上の固体を供給して攪拌する場合にも、多量の試薬に少量の検体を分注する場合と同様の問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、多量の液体に少量の液体又は固体を供給しても均一に攪拌することが可能な分析装置、供給装置、攪拌装置及び攪拌方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る分析装置は、複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、容器に保持された液体を攪拌する音波を発生させる音波発生手段と、第一の液体を保持して搬送される容器に、当該第一の液体よりも少量の第二の液体又は固体を供給する供給手段と、前記供給手段による前記第二の液体又は固体の供給時に、前記第一の液体が攪拌されているように前記音波発生手段による音波の発生を制御する駆動制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に係る分析装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、前記容器に対する相対位置が一定に保持されていることを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に係る分析装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、前記容器の底壁に配置されていることを特徴とする。
【0009】
また、請求項4に係る分析装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、前記容器の側壁に配置されていることを特徴とする。
【0010】
また、請求項5に係る分析装置は、上記の発明において、前記駆動制御手段は、前記容器に前記第一の液体が分注された後、前記供給手段が前記容器に前記第二の液体又は固体を供給する前に前記音波を発生するように前記音波発生手段を制御することを特徴とする。
【0011】
また、請求項6に係る分析装置は、上記の発明において、前記供給手段は、前記第一の液体を保持した容器と前記第二の液体又は固体の供給源との間を移動し、前記駆動制御手段は、前記供給手段が前記第二の液体又は固体を供給する位置に移動した場合には、前記音波が発生しているように前記音波発生手段を制御することを特徴とする。
【0012】
また、請求項7に係る分析装置は、上記の発明において、前記駆動制御手段は、前記第一の液体を保持した容器が前記第二の液体又は固体の供給位置に搬送される前に、前記音波を発生するように前記音波発生手段を制御することを特徴とする。
【0013】
また、請求項8に係る分析装置は、上記の発明において、前記音波発生手段は、表面弾性波を発生する表面弾性波素子であることを特徴とする。
【0014】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項9に係る供給装置は、液体又は固体を容器に供給する供給装置であって、第一の液体を保持した容器に第二の液体又は固体を供給する供給手段と、前記供給手段による前記容器への前記第二の液体又は固体の供給タイミングを制御する供給制御手段と、を備え、前記供給制御手段は、前記容器へ前記第一の液体が分注された後、前記第一の液体よりも少量の前記第二の液体又は固体を供給するように前記供給手段を制御することを特徴とする。
【0015】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項10に係る攪拌装置は、容器に保持された液体に音波を照射して攪拌する攪拌装置において、前記音波を発生する音波発生手段と、前記音波発生手段による前記音波の発生タイミングを制御する駆動制御手段と、を備え、前記駆動制御手段は、前記容器への第二の液体又は固体の供給時に、前記第一の液体が攪拌されているように前記音波発生手段による音波の発生を制御することを特徴とする。
【0016】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項11に係る攪拌方法は、第一の液体と前記第一の液体よりも少量の前記第二の液体又は固体とを攪拌する攪拌方法であって、前記第一の液体を攪拌しながら前記第二の液体又は固体を供給することを特徴とする。
【0017】
ここで、本明細書において、第一の液体が攪拌されているとは、音波発生手段が発生した音波によって生じた音響流によって第一の液体が攪拌されている状態をいう。但し、第一の液体が攪拌されている状態とは、必ずしも音波発生手段が作動状態である必要はなく、例えば、作動状態の音波発生手段が作動を停止しても、作動停止前に音波発生手段が発生した音波によって生じた音響流が第一の液体中に残存し、第一の液体が攪拌されている状態も含まれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の分析装置、攪拌装置及び攪拌方法は、第二の液体又は固体の供給時に、第一の液体が攪拌されているように駆動制御手段が音波発生手段による音波の発生を制御する。また、本発明の供給装置は、容器へ第一の液体が分注された後、前記第一の液体よりも少量の第二の液体又は固体を供給するように供給制御手段が供給手段を制御する。従って、本発明によれば、多量の第一の液体に少量の第二の液体又は固体を供給しても、第一の液体が攪拌されている状態で第二の液体又は固体を供給するので、第一の液体と第二の液体又は固体を均一に攪拌することが可能な分析装置、供給装置、攪拌装置及び攪拌方法を提供することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(実施の形態1)
以下、本発明の分析装置、供給装置、攪拌装置及び攪拌方法にかかる実施の形態1について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、実施の形態1の自動分析装置を供給装置と共に示す概略構成図である。図2は、図1に示す自動分析装置の反応ホイールを拡大して供給装置及び攪拌装置の概略構成と共に示す図である。図3は、反応ホイールのA部を拡大して引き出し電極を示す断面図である。図4は、実施の形態1の自動分析装置で使用する反応容器の斜視図である。図5は、図4の反応容器の底面図である。
【0020】
自動分析装置1は、図1及び図2に示すように、作業テーブル2上に検体テーブル3、反応ホイール6及び試薬テーブル13が互いに離隔してそれぞれ周方向に沿って回転、かつ、位置決め自在に設けられ、攪拌装置20を備えている。また、自動分析装置1は、検体テーブル3と反応ホイール6との間に供給装置5が設けられ、反応ホイール6と試薬テーブル13との間には分注装置12が設けられている。
【0021】
検体テーブル3は、図1に示すように、駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室3aが複数設けられている。各収納室3aは、検体を収容した検体容器4が着脱自在に収納される。
【0022】
供給装置5は、反応容器9に試薬よりも少量の尿,血液等の検体を供給する手段であり、図1及び図2に示すように、供給ノズル5aによって検体テーブル3の複数の検体容器4から検体を順次反応ホイール6のホルダ6aに収納された反応容器9に分注する。供給装置5は、図2に示すように、供給ノズル5aによる反応容器9へ検体を供給する供給タイミングを制御する供給制御部5bを備えている。ここで、供給装置5は、試薬よりも少量の粉状又は粒状の固体、例えば、サンプル(検体)または試薬が修飾された磁気ビーズ,ラテックスビーズ,または,これらビーズのような粉状または粒状の固体を分散した液体等を反応容器9に供給して攪拌する場合にも使用される。
【0023】
反応ホイール6は、図1に示すように、検体テーブル3とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、外周には周方向に沿って等間隔で配置される収納室であるホルダ6aが複数設けられている。各ホルダ6aには、攪拌容器として検体を試薬と反応させる反応容器9が着脱自在に収納され、半径方向両側に光が透過する開口が形成されている。また、各ホルダ6aは、図2及び図3に示すように、反応ホイール6の底壁6bを上下に貫通した引き出し電極6cが半径方向に設けられている。反応ホイール6は、一周期で時計方向に(1周−1反応容器)/4分回転し、四周期で反時計方向に反応容器9の1個分回転する。反応ホイール6には、測定光学系10及び排出装置11が設けられている。
【0024】
反応容器9は、容量が数nL〜数十μLと微量な容器であり、光源10aから出射された分析光(340〜800nm)に含まれる光の80%以上を透過する素材、例えば、耐熱ガラスを含むガラス,環状オレフィンやポリスチレン等の合成樹脂が使用される。反応容器9は、図4及び図5に示すように、側壁9aと底壁9bとによって上部に開口9cを有する四角筒状に成形され、検体や試薬等の液体を保持する内面には液体に対する親和性処理が施されている。反応容器9は、平行に対向する一組の側壁9aの一部が分析光を透過させる窓として利用される。反応容器9は、図5に示すように、底壁9bの下面に音響整合層を介して表面弾性波素子21が取り付けられている。
【0025】
測定光学系10は、試薬と検体とが反応した反応容器9内の液体を分析するための分析光(340〜800nm)を光源10aから出射する。光源10aから出射された分析用の光ビームは、反応容器9内の液体を透過し、光源10aと対向する位置に設けた受光素子10bによって受光される。一方、排出装置11は、排出ノズルを備えており、反応容器9から反応終了後の液体を前記排出ノズルによって吸引し、排出容器(図示せず)に排出する。ここで、排出装置11を通過した反応容器9は、図示しない洗浄装置に移送されて洗浄された後、再度、新たな検体の分析に使用される。
【0026】
分注装置12は、供給装置5が供給する検体よりも多量の試薬を分注する手段であり、図1に示すように、試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬を順次反応ホイール6のホルダ6aに収納した反応容器9に分注する。ここで、試薬の量(体積)をR、検体の量(体積)をSとすると、試薬Rに対する検体Sの比S/Rは、1/1000≦S/R≦1/4の範囲となる。ここで、供給装置5が、粉状又は粒状の固体を反応容器9に供給して試薬と攪拌する場合、固体の体積をいう。
【0027】
試薬テーブル13は、図1に示すように、検体テーブル3及び反応ホイール6とは異なる駆動手段によって矢印で示す方向に回転され、扇形に成形された収納室13aが周方向に沿って複数設けられている。各収納室13aは、試薬容器14が着脱自在に収納される。複数の試薬容器14は、それぞれ検査項目に応じた所定の試薬が満たされ、外面には収容した試薬に関する情報を表示するバーコードラベル(図示せず)が貼付されている。
【0028】
ここで、試薬テーブル13の外周には、読取装置15が設置されている。読取装置15は、試薬容器14に貼付した前記バーコードラベルに記録された試薬の種類,ロット及び有効期限等の情報を読み取り、制御部16へ出力する。
【0029】
制御部16は、自動分析装置1の各部の作動を制御する装置制御部16aと、供給制御部5bと駆動制御回路24の制御作動を連携させる連携部16bとを有しており、例えば、分析結果を記憶する記憶機能を備えたマイクロコンピュータ等が使用される。制御部16は、供給装置5、受光素子10b、排出装置11、読取装置15、分析部17、入力部18、表示部19及び攪拌装置20等と接続され、自動分析装置1の各部の作動を制御すると共に、前記バーコードラベルの記録から読み取った情報に基づき、試薬のロットや有効期限等が設置範囲外の場合、分析作業を規制するように自動分析装置1を制御し、或いはオペレータに警告を発する。
【0030】
分析部17は、制御部16を介して受光素子10bに接続され、受光素子10bが受光した光量に基づく反応容器9内の液体の吸光度から検体の成分濃度等を分析し、分析結果を制御部16に出力する。入力部18は、制御部16へ検査項目等を入力する操作を行う部分であり、例えば、キーボードやマウス等が使用される。表示部19は、分析内容や警報等を表示するもので、ディスプレイパネル等が使用される。
【0031】
攪拌装置20は、反応容器9に保持される液体を音波によって攪拌する装置であり、反応容器9に取り付けられる表面弾性波素子21の他、図2に示すように、端子基板22、信号発生器23及び駆動制御回路24を備えている。
【0032】
表面弾性波素子21は、図5に示すように、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)等の圧電素材からなる圧電基板21a上に櫛型電極(IDT)からなる振動子(発音部)21bが形成されている。
【0033】
端子基板22は、図2に示すように、反応ホイール6の下部に配置されるリング状の絶縁板であり、回転しない。端子基板22は、複数のホルダ6aにおける供給装置5の供給ノズル5aが反応容器9に検体Sを供給する反応ホイール6の回転方向におけるホルダ6aの位置をPNとすると、位置PNの1つ手前から2つ先までの位置PN-1〜PN+2の範囲と対応する攪拌領域に引き出し電極6cと接触して振動子21bに電力を供給する接触電極22a,22bが設けられている。ここで、攪拌領域は、位置PN-1〜PN+2の4箇所の範囲に限られるものではなく、少なくとも供給ノズル5aが検体Sを供給する位置PNを含んでいれば必要に応じて4箇所以上の広い範囲に設定し、或いは4箇所未満の狭い範囲に設定してもよい。
【0034】
信号発生器23は、図2に示すように、接触電極22a,22bとの間が配線23aによって接続され、駆動制御回路24からの制御信号に基づいて数十MHz〜数百MHz程度の高周波信号を表面弾性波素子21に出力し、振動子21bに音波を発振させる。駆動制御回路24は、メモリとタイマを内蔵した電子制御手段(ECU)が使用され、表面弾性波素子21の駆動信号を制御する。
【0035】
駆動制御回路24は、連携部16bを介して供給制御部5bと接続され、信号発生器23の作動を制御すると共に、供給制御部5bとの制御作動が連携されている。駆動制御回路24は、例えば、表面弾性波素子21が発する音波の特性(周波数,強度,位相,波の特性)、波形(正弦波,三角波,矩形波,バースト波等)或いは変調(振幅変調,周波数変調)等を分析項目または液の性状に応じて制御する。また、駆動制御回路24は、内蔵したタイマに従って信号発生器23が発振する発振信号の周波数を切り替えることができる。
【0036】
以上のように構成される自動分析装置1は、以下に説明する攪拌方法により、反応ホイール6の回転によって周方向に沿って移動してくる各ホルダ6aに収容された反応容器9に、制御部16による制御の下、試薬分注機構12のノズルが試薬テーブル13の所定の試薬容器14から試薬Lrを順次分注する(図6参照)。そして、試薬を分注された反応容器9が、反応ホイール6の回転によって攪拌領域まで移動されて位置PN-1に到達すると、図7に示すように、反応ホイール6の底壁6bに設けた引き出し電極6cが接触電極22a,22bと接触し、表面弾性波素子21に電力が供給される。これにより、表面弾性波素子21は、振動子21bが音波の発生を開始し、発生した音波が圧電基板21aを伝搬して底壁9bから試薬Lr中に漏れ出し、試薬Lr中に出射される。この結果、反応容器9は、試薬Lr中に漏れ出した音波Waによって分注された試薬Lr中に音響流が発生し、この音響流によって試薬Lrが攪拌され始める。
【0037】
次に、反応ホイール6の回転によって反応容器9が、反応容器9に検体Sを供給する位置PNに移動すると、供給装置5の供給ノズル5aが、図8に示すように、検体Sを反応容器9の試薬Lr上に分注する。このとき、反応容器9に保持された試薬Lrは、それ以前の位置PN-1から攪拌が開始され、流動している状態であるため、分注された検体Sは、音響流によって素早く試薬Lrの内部へ引き込まれる。即ち、試薬Lrは、表面張力の影響が抑えられていることから、分注された検体Sが試薬Lrの表面張力によって試薬Lrの液面に吸着されることはない。このように、本発明の攪拌方法は、第一の液体である試薬Lrを攪拌しながら第二の液体である検体Sを供給することに特徴を有している。
【0038】
次いで、反応ホイール6の回転によって反応容器9が位置PN+1に移動すると、図9に示すように、試薬Lr中に漏れ出した音波Waによって生じた音響流によって攪拌されて検体Sが試薬Lr中に拡散してゆく。そして、反応容器9が位置PN+2に移動すると、図10に示すように、検体Sは、音響流によって攪拌されて検体Sが更に試薬Lr中に広範囲に拡散し、検体Sと試薬Lrとが効率良く攪拌されて反応が促進される。このため、自動分析装置1は、試薬Lrに検体Sを分注してから攪拌を開始する場合に比べると、試薬Lrと検体Sとを短時間で均一に攪拌することができる。
【0039】
このようにして反応ホイール6の回転によって反応容器9が移動して攪拌領域から外れると、図11に示すように、反応ホイール6の底壁6bに設けた引き出し電極6cと接触電極22a,22bとの接触が解除され、表面弾性波素子21への電力供給が停止する。これにより、表面弾性波素子21は、振動子21bが音波の発生を停止し、反応容器9における試薬Lrと検体Sとの攪拌が終了する。
【0040】
このように十分に攪拌された後、試薬Lrと検体Sとが反応した反応液は、測定光学系10の光源10aから出射される光束によって測光される。測光後、反応容器9は、反応ホイール6の回転によって排出装置11によって内部の反応廃液が排出され、図示しない洗浄装置によって洗浄された後、再度検体の分析に使用される。
【0041】
このように、実施の形態1の自動分析装置1は、検体Sの供給時に、試薬Lrが攪拌されているように駆動制御回路24が表面弾性波素子21による音波の発生を制御する。このため、実施の形態1の自動分析装置1、供給装置5、攪拌装置20及び攪拌方法は、多量の試薬Lrに少量の検体Sを供給しても均一に攪拌することができる。
【0042】
(実施の形態2)
次に、本発明の分析装置、供給装置、攪拌装置及び攪拌方法にかかる実施の形態2について、図面を参照しつつ詳細に説明する。実施の形態1の自動分析装置は、音波発生手段である表面弾性波素子21を反応容器9に取り付け、反応ホイール6に設けた引き出し電極6c及び端子基板22を介して信号発生器23と接続している。これに対し、実施の形態2の自動分析装置は、音波発生手段が端子基板22に対応する音波発生基板に設けられている。図11は、実施の形態2の自動分析装置の反応ホイールを拡大して供給装置及び攪拌装置の概略構成と共に示す図である。図12は、音波発生基板の音波発生手段を設けた部分を拡大して示す平面図である。ここで、実施の形態2の自動分析装置、供給装置及び攪拌装置は、音波発生基板を除き、図1に示す自動分析装置、供給装置及び攪拌装置と構成が同一であるので、構成が同一の構成要素には同一の符号を付して説明している。
【0043】
反応ホイール6は、各ホルダ6aの底部がなく開放されている。また、音波発生手段は、反応容器9に代えて、音波発生基板26に設けられている。音波発生基板26は、端子基板22と同様に回転することはなく、図11及び図12に示すように、リング状に成形された圧電基板26aの周方向に沿った上面に櫛型電極(IDT)からなる振動子(発音部)26bが複数のホルダ6aの配置間隔に対応させて4箇所に形成され、上面には音響整合層27が設けられている。音響整合層27には、水等の液体或いはジェル等が使用される。
【0044】
従って、反応ホイール6は、音響整合層27を介して音波発生基板26に設置される。このため、自動分析装置1は、端子基板22に代えて音波発生基板26を使用しても、各ホルダ6aに反応容器9を収納すると、反応ホイール6の回転によって各反応容器9が攪拌領域の位置PN-1〜PN+2を順次移動すると、振動子26bが発生する音波が底壁9bから試薬Lr中に出射される。
【0045】
従って、実施の形態2の自動分析装置1は、試薬Lrが攪拌されている際に供給装置5が検体Sを供給するように駆動制御回路24が振動子26bを制御する。このため、実施の形態2の自動分析装置1、供給装置5、攪拌装置20及び攪拌方法は、多量の試薬Lrに少量の検体Sを供給しても均一に攪拌することができる。
【0046】
ここで、実施の形態1,2の自動分析装置1において、攪拌領域は、供給装置5の供給ノズル5aが検体Sを供給する位置PNに対して位置PN-1〜PN+2の範囲に連続して設けたが、図13に示す反応ホイール6のように、位置PNに対して位置PN-1,PN+1,PN+2を離隔配置してもよい。
【0047】
また、実施の形態1の自動分析装置1や攪拌装置20は、端子基板22を使用し、反応ホイール6の回転に伴い攪拌領域において引き出し電極6cと接触電極22a,22bとが接触することにより振動子21bに電力を供給し、反応容器9が保持した液体を攪拌している。一方、実施の形態2の自動分析装置1や攪拌装置20は、音波発生基板26を用い、反応ホイール6の回転に伴い攪拌領域において反応容器9が振動子26bと一致した場合に、反応容器9が保持した液体を攪拌している。
【0048】
このため、実施の形態1,2の自動分析装置1や攪拌装置20では、反応容器9が保持した液体は、反応ホイール6の回転に伴い反応容器9が攪拌領域の位置PN-1〜PN+2に停止した場合にのみ間欠的に攪拌されるだけである。
【0049】
そこで、例えば、実施の形態1の自動分析装置1は、攪拌装置20に代えて、図14に示す攪拌装置30を使用する。攪拌装置30は、信号伝送部31と、駆動制御部32と、複数の攪拌駆動部33とを備えている。
【0050】
信号伝送部31は、自動分析装置1の電源部1aから出力される直流の電源信号及び装置制御部16aから出力される交流の制御信号を伝送するスリップリングからなる。駆動制御部32は、駆動制御回路24に対応し、攪拌駆動部33を制御して信号伝送部31から出力される制御信号に基づいて表面弾性波素子21の攪拌動作を制御する。攪拌駆動部33は、信号発生器23に対応し、駆動制御部32から出力される制御信号に応じて反応容器9内の液体を攪拌するための駆動信号を出力する。
【0051】
各攪拌駆動部33には、表面弾性波素子21との電気的な接続状態(オン,オフ)を切り替えるスイッチ34と表面弾性波素子21との複数の組が並列に接続されている。スイッチ34は、高周波リレーや高周波半導体スイッチが使用され、駆動制御部32によって作動が制御される。但し、スイッチ34は、各攪拌駆動部33と表面弾性波素子21との間のインピーダンス整合状態を保持するため、並列に接続されている複数のスイッチ34のうち常に一つのスイッチ34はオンにされる。なお、各攪拌駆動部33に接続されるスイッチ34及び表面弾性波素子21の組み数は総て同じであっても、或いは異なっていてもよい。
【0052】
以上のように構成される攪拌装置30を使用することにより、実施の形態1の自動分析装置1は、反応ホイール6の回転位置とは無関係に、攪拌装置30に電源信号及び制御信号を常時伝送することにより、反応ホイール6の停止中だけではなく、回転中であっても反応容器9に保持された液体を連続して攪拌することができる。なお、駆動制御部32と攪拌駆動部33は、必ずしも反応ホイール6上に設けられている必要はなく、反応ホイール6の外部に配置され、即ち、信号伝達部31を介してスイッチ34と接続されていてもよい。駆動制御部32と攪拌駆動部33を反応ホイール6の外部に設けると、反応ホイール6の重量負荷を低減することができる。
【0053】
更に、音波発生手段である表面弾性波素子21は、図15に示すように、反応容器9の側壁9aに設けてもよい。この場合、反応ホイール6は、引き出し電極6cを側壁6dに半径方向に貫通させて設ける。また、端子基板22は、反応ホイール6の外周に配置し、位置PN-1〜PN+2の範囲と対応する攪拌領域に引き出し電極6cと接触して振動子21bに電力を供給する接触電極22a,22bが設けられている。ここで、攪拌領域は、位置PN-1〜PN+2の4箇所の範囲に限られるものではなく、少なくとも供給ノズル5aが検体Sを供給する位置PNを含んでいれば必要に応じて4箇所以上の広い範囲に設定し、或いは4箇所未満の狭い範囲に設定してもよい。このように、表面弾性波素子21を反応容器9の側壁9aに設け、端子基板22を反応ホイール6の外周に配置すると、自動分析装置1は、設計上の自由度が増す。
【0054】
尚、本発明の分析装置は、供給手段が供給した第二の液体又は固体が第一の液体と接触する際、駆動制御手段が、音波によって第一の液体中に音響流が生じているように音波発生手段を制御する。即ち、本発明の分析装置は、第一の液体中に音響流が生じている場合に、第二の液体又は固体を容器に供給すればよい。このため、分析装置や攪拌装置は、容器に保持された第一の液体中に音響流が生じていればよく、音波発生手段が起動していても或いは停止していてもよい。このため、分析装置や攪拌装置は、第二の液体又は固体を容器に供給するタイミングとして、音波発生手段が停止していても、それ以前に音波発生手段が発生した音波によって生じた音響流が第一の液体中に残存している場合に、第二の液体又は固体を供給するタイミング等もある。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施の形態1の自動分析装置を供給装置と共に示す概略構成図である。
【図2】図1に示す自動分析装置の反応ホイールを拡大して供給装置及び攪拌装置の概略構成と共に示す図である。
【図3】反応ホイールのA部を拡大して引き出し電極を示す断面図である。
【図4】実施の形態1の自動分析装置で使用する反応容器の斜視図である。
【図5】図4の反応容器の底面図である。
【図6】反応ホイールのホルダに収容された反応容器に試薬が分注される状態を示す断面図である。
【図7】攪拌領域の位置PN-1において、表面弾性波素子が発生した音波が反応容器の試薬中に出射され、試薬の攪拌が開始された状態を示す断面図である。
【図8】攪拌領域の位置PNにおいて、攪拌されている試薬上に検体が分注される状態を示す断面図である。
【図9】攪拌領域の位置PN+1において、音響流によって攪拌されて検体が試薬中に拡散してゆく状態を示す断面図である。
【図10】攪拌領域の位置PN+2において、音響流によって攪拌されて検体が更に試薬中に広範囲に拡散してゆく状態を示す断面図である。
【図11】実施の形態2の自動分析装置の反応ホイールを拡大して供給装置及び攪拌装置の概略構成と共に示す図である。
【図12】音波発生基板の音波発生手段を設けた部分を拡大して示す平面図である。
【図13】攪拌領域の配置の変形例を示す反応ホイールの平面図である。
【図14】攪拌装置の変形例を示す物理的構成図である。
【図15】音波発生手段を反応容器の側壁に設ける自動分析装置の変形例の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 自動分析装置
1a 電源部
2 作業テーブル
3 検体テーブル
4 検体容器
5 供給装置
5a 供給ノズル
5b 供給制御部
6 反応ホイール
6a ホルダ
6c 引き出し電極
9 反応容器
10 測定光学系
10a 光源
10b 受光素子
11 排出装置
12 分注装置
13 試薬テーブル
14 試薬容器
15 読取装置
16 制御部
16a 装置制御部
16b 連携部
17 分析部
18 入力部
19 表示部
20 攪拌装置
21 表面弾性波素子
22 端子基板
23 信号発生器
24 駆動制御回路
26 音波発生基板
26a 圧電基板
26b 振動子
27 音響整合層
30 攪拌装置
31 信号伝送部
32 駆動制御部
33 攪拌駆動部
34 スイッチ
PN-1〜PN+2 位置
Wa 音波

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異なる液体を攪拌して反応させ、反応液を分析する分析装置であって、
容器に保持された液体を攪拌する音波を発生させる音波発生手段と、
第一の液体を保持して搬送される容器に、当該第一の液体よりも少量の第二の液体又は固体を供給する供給手段と、
前記供給手段による前記第二の液体又は固体の供給時に、前記第一の液体が攪拌されているように前記音波発生手段による音波の発生を制御する駆動制御手段と、
を備えたことを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記音波発生手段は、前記容器に対する相対位置が一定に保持されていることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記音波発生手段は、前記容器の底壁に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項4】
前記音波発生手段は、前記容器の側壁に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の分析装置。
【請求項5】
前記駆動制御手段は、前記容器に前記第一の液体が分注された後、前記供給手段が前記容器に前記第二の液体又は固体を供給する前に前記音波を発生するように前記音波発生手段を制御することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項6】
前記供給手段は、前記第一の液体を保持した容器と前記第二の液体又は固体の供給源との間を移動し、
前記駆動制御手段は、前記供給手段が前記第二の液体又は固体を供給する位置に移動した場合には、前記音波が発生しているように前記音波発生手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の分析装置。
【請求項7】
前記駆動制御手段は、前記第一の液体を保持した容器が前記第二の液体又は固体の供給位置に搬送される前に、前記音波を発生するように前記音波発生手段を制御することを特徴とする請求項5に記載の分析装置。
【請求項8】
前記音波発生手段は、表面弾性波を発生する表面弾性波素子であることを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項9】
液体又は固体を容器に供給する供給装置であって、
第一の液体を保持した容器に第二の液体又は固体を供給する供給手段と、
前記供給手段による前記容器への前記第二の液体又は固体の供給タイミングを制御する供給制御手段と、
を備え、
前記供給制御手段は、前記容器へ前記第一の液体が分注された後、前記第一の液体よりも少量の前記第二の液体又は固体を供給するように前記供給手段を制御することを特徴とする供給装置。
【請求項10】
容器に保持された第一の液体に音波を照射して攪拌する攪拌装置において、
前記音波を発生する音波発生手段と、
前記音波発生手段による前記音波の発生タイミングを制御する駆動制御手段と、
を備え、
前記駆動制御手段は、前記容器への第二の液体又は固体の供給時に、前記第一の液体が攪拌されているように前記音波発生手段による音波の発生を制御することを特徴とする攪拌装置。
【請求項11】
第一の液体と前記第一の液体よりも少量の前記第二の液体又は固体とを攪拌する攪拌方法であって、
前記第一の液体を攪拌しながら前記第二の液体又は固体を供給することを特徴とする攪拌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−57318(P2007−57318A)
【公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−241191(P2005−241191)
【出願日】平成17年8月23日(2005.8.23)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】