説明

分析装置

【課題】連続的に測定される連続測定検体および連続測定検体に優先して測定される優先測定検体の両方の測定に対応しながら、設置面積を小さくするとともに、構造が複雑化するのを抑制することが可能な分析装置を提供する。
【解決手段】この血液分析装置1(分析装置)は、ラック110に保持されたロングバイアル101の上方を通るように第1検体セット部255aを移動させるサンプル容器移送部255と、ラック110に保持されたロングバイアル101を、第1検体セット部255aよりも高い位置まで上昇させて、上昇したロングバイアル101の下方に第1検体セット部255aを移動させるとともに、ロングバイアル101を下降させて第1検体セット部255aにセットするようにサンプル容器移送部255およびハンド部251を制御するCPU51aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続的に測定される連続測定検体および連続測定検体に優先して測定される優先測定検体の測定が可能な分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、連続的に測定される検体を収容した複数の検体容器を保持可能に構成された連続測定検体保持部と、連続的に測定される検体に優先して測定される優先測定検体を収容した検体容器を保持可能に構成された優先検体保持部とを備えた分析装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、連続的に測定される検体を収容した複数の検体容器を保持可能に構成された保持台セット部と、連続的に測定される検体に優先して測定される優先測定検体を収容した検体容器を保持可能に構成された試料容器セット部とを備えた分析装置が開示されている。この分析装置は、連続的に測定される連続測定検体および連続測定検体に優先して測定される優先測定検体の両方の測定に対応することが可能であるとともに、優先測定検体を収容した検体容器を試料容器セット部にセットする際に、試料容器セット部が保持台セット部の側方を通って優先測定検体を収容した検体容器がセットされる位置まで移動されるように構成されている。
【0004】
また、上記特許文献1に記載の分析装置は、連続測定検体を測定する際に、容器移送機構により、保持台セット部に保持された検体容器を上昇させて保持台セット部から取り出し、水平方向に移動させることによって、検体容器を保持台セット部の側方に位置する試料容器セット部上に配置させた後、検体容器を下降させて試料容器セット部にセットするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−139462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の分析装置では、連続的に測定される連続測定検体および連続測定検体に優先して測定される優先測定検体の両方の測定に対応することが可能である一方、試料容器セット部が保持台セット部の側方を通って優先測定検体を収容した検体容器がセットされる位置まで移動されるので、平面的に見て、保持台セット部が占めるスペースと、試料容器セット部が移動される際に要するスペースとを別個に設ける必要がある。その結果、分析装置の設置面積が大きくなるという問題点がある。
【0007】
また、上記特許文献1に記載の分析装置では、分析装置の設置面積を小さくするために、試料容器セット部を保持台セット部の上方を通って移動するように構成したときには、保持台セット部から上昇させた検体容器および移送機構が試料容器セット部と干渉してしまうおそれが生じる。この干渉を避けるためには、試料容器セット部と干渉しない位置で検体容器を上昇させ、上昇した検体容器を水平方向に移動させることによって試料容器セット部の上方に配置させた後、下降させることによって検体容器を試料容器セット部にセットする必要があるので、分析装置の構造が複雑化してしまうという問題点がある。
【0008】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、連続的に測定される連続測定検体および連続測定検体に優先して測定される優先測定検体の両方の測定に対応しながら、設置面積を小さくするとともに、構造が複雑化するのを抑制することが可能な分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0009】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における分析装置は、連続的に測定される連続測定検体を収容した複数の第1検体容器を保持可能に構成された第1検体保持部と、第1検体保持部に保持された第1検体容器の上端よりも高い位置に配置され、第1検体容器と、連続測定検体に優先して測定される優先測定検体を収容した第2検体容器とを保持可能に構成された第2検体保持部と、第1検体保持部に保持された第1検体容器の上方を通るように第2検体保持部を移動させる保持部移動機構と、第1検体保持部に保持される第1検体容器を、第1検体保持部上の所定位置に搬送する搬送機構と、搬送機構により所定位置に搬送された第1検体容器を第1検体保持部から第2検体保持部に移送する容器移送機構と、第1検体保持部に保持されて所定位置に搬送された第1検体容器を、第2検体保持部が第1検体容器の上方に存在しない状態で、第2検体保持部よりも高い位置まで上昇させて、上昇した第1検体容器の下方に第2検体保持部を移動させるとともに、第1検体容器を下降させることによって第1検体容器を第2検体保持部にセットするように保持部移動機構および容器移送機構を制御する制御部とを備える。
【0010】
この発明の一の局面による分析装置では、上記のように、連続的に測定される連続測定検体を収容した複数の第1検体容器を保持可能に構成された第1検体保持部と、第1検体保持部に保持された第1検体容器の上端よりも高い位置に配置され、第1検体容器と、連続測定検体に優先して測定される優先測定検体を収容した第2検体容器とを保持可能に構成された第2検体保持部とを設けることによって、連続的に測定される連続測定検体および連続測定検体に優先して測定される優先測定検体の両方の測定に対応することができる。また、第1検体保持部に保持された第1検体容器の上端よりも高い位置に配置された第2検体保持部を、第1検体保持部に保持された第1検体容器の上方を通るように移動させる保持部移動機構を設けることによって、第2検体保持部の移動時に第2検体保持部が連続測定検体を収容した第1検体容器に干渉するのを防止しながら、平面的に見て、第1検体保持部が占めるスペースと、第2検体保持部が移動される際に要するスペースとを互いに重なるように配置することができる。これにより、これら2つのスペースを平面的に見て重ならないように設ける場合に比べて、平面的な必要スペースを小さくすることができる。
【0011】
また、この一の局面による分析装置では、搬送機構により所定位置に搬送された第1検体容器を第1検体保持部から第2検体保持部に移送する容器移送機構を設けることによって、第2検体保持部を、優先測定検体を収容した第2検体容器のみならず連続測定検体を収容した第1検体容器の保持部としても用いることができるので、第1検体容器を保持する専用の保持部を設ける必要がない。これにより、分析装置を小型化することができる。さらに、第1検体保持部に保持されて所定位置に搬送された第1検体容器を、第2検体保持部が第1検体容器の上方に存在しない状態で、第2検体保持部よりも高い位置まで上昇させて、上昇した第1検体容器の下方に第2検体保持部を移動させるとともに、第1検体容器を下降させることによって第1検体容器を第2検体保持部にセットするように保持部移動機構および容器移送機構を制御する制御部を設けることによって、容器移送機構により第1検体容器を上下方向に移動させるだけで第1検体容器を第1検体保持部から第2検体保持部に移送することができるので、第1検体容器を水平方向に移動させるための水平移動機構を設ける必要がない。これにより、装置の構造が複雑化するのを抑制することができる。したがって、この分析装置では、連続的に測定される連続測定検体および連続測定検体に優先して測定される優先測定検体の両方の測定に対応しながら、分析装置の設置面積を小さくするとともに、分析装置の構造が複雑化するのを抑制することができる。
【0012】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、第2検体保持部は、第1検体容器および第2検体容器を保持する第1保持部と、第2検体容器がマイクロチューブである場合に、第2検体容器を保持する第2保持部とを含み、第2保持部は、第1保持部よりも分析装置の手前側に配置されている。このように構成すれば、第1保持部と第2保持部とにより、異なる複数種類の検体容器を保持することができる。また、比較的小型の検体容器であるマイクロチューブを保持する第2保持部を、第1保持部よりも分析装置の手前側に配置することによって、ユーザがより手元に近い位置で小型のマイクロチューブを保持部にセットすることができる。
【0013】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、分析装置の前面側に配置される前面カバーをさらに備え、制御部は、第1検体容器が第2検体保持部にセットされる位置が、前面カバーよりも分析装置の奥側になるように、保持部移動機構を制御するように構成されている。このように構成すれば、ユーザが位置する前面カバーの手前側とは反対側の前面カバーの奥側で第1検体容器が第2検体保持部にセットされるので、ユーザが移送中の第1検体容器に接触してしまうのを防止することができる。
【0014】
この場合、好ましくは、第2検体保持部は、第2検体容器を保持する保持部を含み、制御部は、第2検体保持部を移動させる指示を受け付けるとともに、指示に応じて保持部が前面カバーよりも分析装置の手前側に配置されるように第2検体保持部を移動させるように保持部移動機構を制御するように構成されている。このように構成すれば、ユーザは、第2検体保持部が前面カバーよりも手前側に位置する状態で優先測定検体を収容した第2検体容器を保持部にセットすることができるので、容易に保持部に第2検体容器をセットすることができる。
【0015】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、保持部移動機構は、第2検体保持部を第1検体保持部に保持された第1検体容器の上方で略水平方向に移動させるように構成されている。このように構成すれば、水平方向以外の他の方向にも第2検体保持部を移動させるように保持部移動機構を構成する場合に比べて、保持部移動機構の構成を簡略化することができる。
【0016】
上記一の局面による分析装置において、保持部移動機構を、搬送機構による第1検体容器の搬送経路と平面的に見て略直交するように第2検体保持部を移動させるように構成してもよい。
【0017】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、制御部は、第2検体容器がセットされる位置に第2検体保持部を配置させた状態で、第1検体保持部に保持された第1検体容器を搬送するように搬送機構を制御するように構成されている。このように構成すれば、第2検体保持部が第2検体容器のセットされる位置に配置されている場合にも、第1検体保持部に保持された第1検体容器の搬送動作を停止させることなく、搬送動作を継続することができるので、分析装置の処理速度が低下するのを抑制することができる。
【0018】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、連続測定検体および優先測定検体の両方の測定に共通に用いられる検出部をさらに備える。このように構成すれば、1つの検出部により、連続測定検体および優先測定検体の両方の測定を行うことができるので、連続測定検体および優先測定検体のそれぞれに別々の検出部を設ける必要がない。これにより、分析装置の小型化を図ることができる。
【0019】
この場合、好ましくは、連続測定検体および優先測定検体は血液であり、検出部は血液に含まれる血球を検出するように構成されている。このように構成すれば、小型化を図ることができる分析装置において、検出部により血液検体の血球を検出することができる。
【0020】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、第2検体保持部にセットされた第1検体容器および第2検体容器から検体を吸引する吸引部をさらに備え、保持部移動機構は、吸引部により検体が吸引される位置に第2検体保持部を移動するように構成されている。このように構成すれば、検体容器がセットされる位置まで第2検体保持部を移動させる保持部移動機構を用いて、第2検体保持部を検体が吸引される位置まで移動させることができるので、第2検体保持部を吸引位置に移動させるための移動機構を別途設ける必要がない。
【0021】
上記一の局面による分析装置において、好ましくは、第2検体保持部、保持部移動機構および容器移送機構は、それぞれ複数設けられており、第2検体保持部、保持部移動機構および容器移送機構を各々が有する複数の測定ユニットと、第1検体保持部および搬送機構を有し、第1検体容器を複数の測定ユニットに搬送する搬送装置と、制御部を有し、複数の測定ユニットおよび搬送装置を制御する制御ユニットとをさらに備える。このように構成すれば、分析装置の設置面積が大きくなるのを抑制し、構造が複雑化するのを抑制するとともに、複数の測定ユニットを用いることによって、連続測定検体および優先測定検体の両方の測定を迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態による血液分析装置の全体構成を示した斜視図である。
【図2】図1に示した一実施形態による血液分析装置の各部の詳細を説明するための斜視図である。
【図3】図1に示した一実施形態による血液分析装置の測定ユニットおよび検体搬送装置を示す概略図である。
【図4】図1に示した一実施形態による血液分析装置の測定ユニットおよび検体搬送装置を示す斜視図である。
【図5】図1に示した一実施形態による血液分析装置のラックおよびロングバイアルを示す斜視図である。
【図6】図1に示した一実施形態による血液分析装置のマイクロチューブを示す斜視図である。
【図7】図1に示した一実施形態による血液分析装置の検体吸引部近傍を示す斜視図である。
【図8】図1に示した一実施形態による血液分析装置の検体セット部を示す斜視図である。
【図9】図1に示した一実施形態による血液分析装置のサンプル容器移送部および固定保持部近傍を示す斜視図である。
【図10】図1に示した一実施形態による血液分析装置の移動部の位置を説明するための図である。
【図11】図1に示した一実施形態による血液分析装置の固定保持部近傍を示す斜視図である。
【図12】図1に示した一実施形態による血液分析装置の固定保持部近傍を示す斜視図である。
【図13】図1に示した一実施形態による血液分析装置の固定保持部の構成を説明するための図である。
【図14】図1に示した一実施形態による血液分析装置の固定保持部の構成を説明するための図である。
【図15】図1に示した一実施形態による血液分析装置の検体搬送装置を説明するための平面図である。
【図16】図1に示した一実施形態による血液分析装置の検体搬送装置を説明するための側面図である。
【図17】図1に示した一実施形態による血液分析装置の検体搬送装置を説明するための側面図である。
【図18】図1に示した一実施形態による血液分析装置の制御装置を説明するためのブロック図である。
【図19】図1に示した一実施形態による血液分析装置の優先検体測定指示画面を示した図である。
【図20】図1に示した一実施形態による血液分析装置の測定処理プログラムによる測定処理動作を説明するためのフロー図である。
【図21】図1に示した一実施形態による血液分析装置の優先検体測定時の動作を説明するためのフロー図である。
【図22】図1に示した一実施形態による血液分析装置の優先検体測定時の動作を説明するための状態図である。
【図23】図1に示した一実施形態による血液分析装置の優先検体測定時の動作を説明するための状態図である。
【図24】図1に示した一実施形態による血液分析装置の優先検体測定時の動作を説明するための状態図である。
【図25】図1に示した一実施形態による血液分析装置の優先検体測定時の動作を説明するための状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0024】
なお、本実施形態において、検体である血液を収容するサンプル容器100は、図5および図6に示すように、ゴム製の密閉蓋101aを有する縦長形状の検体容器であるロングバイアル101(図5参照)と、ロングバイアル101よりも小型で、主に少量の検体を収容する検体容器であるマイクロチューブ102(図6参照)とを含んでいる。本実施形態の説明では、ロングバイアル101およびマイクロチューブ102の両方に該当する場合には、ロングバイアル101およびマイクロチューブ102の両方を含む意味で「サンプル容器100」として説明し、ロングバイアル101またはマイクロチューブ102のいずれか一方にのみ該当する場合には、「ロングバイアル101」または「マイクロチューブ102」を用いて説明する。
【0025】
本実施形態による血液分析装置1は、図1および図2に示すように、第1測定ユニット2および第2測定ユニット3の2つの測定ユニットと、第1測定ユニット2および第2測定ユニット3の前面側(矢印Y1方向側)に配置された検体搬送装置(サンプラ)4と、第1測定ユニット2、第2測定ユニット3および検体搬送装置4に電気的に接続されたPC(パーソナルコンピュータ)からなる制御装置5とを備えている。また、血液分析装置1は、制御装置5によりホストコンピュータ6(図3参照)に接続されている。
【0026】
また、図1〜図4に示すように、第1測定ユニット2および第2測定ユニット3は、実質的に同種類の測定ユニットであり、互いに隣接して配置されている。具体的には、本実施形態では、第2測定ユニット3は、第1測定ユニット2と同じ測定原理を使用して、同一の測定項目について検体を測定する。さらに、第2測定ユニット3は、第1測定ユニット2が分析しない測定項目についても測定する。また、図3に示すように、第1測定ユニット2および第2測定ユニット3は、それぞれ、検体である血液をサンプル容器(試験管)100から吸引する検体吸引部21および31と、検体吸引部21および31により吸引した血液から検出用試料を調製する試料調製部22および32と、試料調製部22および32により調製された検出用試料から血液の血球を検出する検出部23および33とを含んでいる。
【0027】
また、第1測定ユニット2および第2測定ユニット3は、それぞれ、検体吸引部21および31や試料調製部22および32などを内部に収容するユニットカバー24および34と、サンプル容器100をユニットカバー24および34の内部に取り込み、検体吸引部21および31による吸引位置600および700(図3参照)までサンプル容器100を搬送するサンプル容器搬送部25および35と、サンプル容器搬送部25および35により内部に搬送されるロングバイアル101の有無を検知する有無検知部26および36と、吸引位置600および700(図3参照)でロングバイアル101を固定保持する固定保持部27および37とをさらに含んでいる。また、図1および図2に示すように、ユニットカバー24および34の前面部241および341の外側表面には、それぞれ、検体セット部開閉ボタン28および38と、優先検体測定開始ボタン29および39と、サンプル容器搬送部25および35の後述する移動部255dおよび355dが通過する開口部241aおよび341aとが設けられている。
【0028】
検体吸引部21および31は、それぞれ、図7に示すように、ピアサ211および311と、ピアサ移動部212および312とを含んでいる。ピアサ211および311は、先端がロングバイアル101の後述する密閉蓋101a(図5参照)を貫通可能なように形成されている。ピアサ移動部212および312は、それぞれ、ピアサ211および311を鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に移動させる機能を有している。ピアサ移動部212および312は、それぞれ、ピアサ211および311を固定保持する水平アーム213および313と、水平アーム213および313を鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に貫通するネジ軸214および314と、ネジ軸214および314に螺合するナット215および315とを有している。さらに、ピアサ移動部212および312は、それぞれ、ネジ軸214および314と平行(矢印Z1およびZ2方向)に配置されたスライドレール216および316と、スライドレール216および316に摺動可能に取り付けられた摺動部材217および317と、ステッピングモータ218および318とを有している。また、水平アーム213および313は、それぞれ、ナット215および315と、摺動部材217および317とに固定されている。
【0029】
ネジ軸214および314の上端には、それぞれ、プーリ214aおよび314aが取り付けられている。また、ステッピングモータ218および318の出力軸には、それぞれ、プーリ218aおよび318aが取り付けられている。プーリ214aおよび314aと、プーリ218aおよび318aとには、それぞれ、環状に形成されたタイミングベルト219および319が回動可能に張られている。これにより、ステッピングモータ218(318)の回転駆動がタイミングベルト219(319)を介してネジ軸214(314)に伝達されてネジ軸214(314)が回転されることにより、水平アーム213(313)が鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に移動される。そして、水平アーム213(313)の鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)への移動に伴って、ピアサ211(311)が鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に移動される。
【0030】
ステッピングモータ218(318)は、供給される電流値(駆動パルスの大きさ)に応じて回転トルクを変動可能に構成されている。また、ステッピングモータ218(318)は、モータの回転トルク以上の負荷がかかると脱調を起こすように構成されている。具体的には、ステッピングモータ218(318)は、マイクロチューブ102(図6参照)に収容された血液を吸引する場合には、ロングバイアル101(図5参照)に収容された血液を吸引する場合に比べて、回転トルクが小さくなるように制御されるとともに、ピアサ211(311)の先端がマイクロチューブ102の底部に当接すると、脱調するように構成されている。これにより、ピアサ211(311)の先端がマイクロチューブ102の底部に当接しても、マイクロチューブ102が損傷するのを抑制することが可能である。また、ピアサ211(311)の先端をマイクロチューブ102の底部まで到達させることによって、検体吸引部21(31)により、収容容量の少ないマイクロチューブ102に収容された検体をほとんど無駄なく吸引することが可能である。
【0031】
マイクロチューブ102に比べて収容容量の多いロングバイアル101に収容された血液を吸引する場合には、ステッピングモータ218(318)は、所定の回転トルクでピアサ211(311)を降下させ、ピアサ211(311)が密閉蓋101aを貫通した後、先端がロングバイアル101の底部近傍に到達するまで降下させるように制御される。この場合、ピアサ211(311)は、マイクロチューブ102の場合と異なり、先端がロングバイアル101の底部に当接する直前で移動を停止される。このように、ロングバイアル101に収容された血液を吸引する場合には、ピアサ211(311)がロングバイアル101の底部に当接されないので、ロングバイアル101はピアサ211(311)により損傷を受けない。また、ステッピングモータ218(318)は、駆動パルスの周波数に応じて回転速度が変動されるように構成されている。
【0032】
検出部23および33は、RBC検出(赤血球の検出)およびPLT検出(血小板の検出)をシースフローDC検出法により行うとともに、HGB検出(血液中の血色素の検出)をSLS−ヘモグロビン法により行うように構成されている。また、検出部23および33は、WBC検出(白血球の検出)を半導体レーザを使用したフローサイトメトリー法により行うようにも構成されている。
【0033】
検出部23および33で得られた検出結果は、検体の測定データ(測定結果)として、制御装置5に送信される。なお、この測定データは、ユーザに提供される最終的な分析結果(赤血球数、血小板数、ヘモグロビン量、白血球数など)のもととなるデータである。
【0034】
サンプル容器搬送部25および35は、図4に示すように、それぞれ、ロングバイアル101を把持することが可能なハンド部251および351と、ロングバイアル101を把持するようにハンド部251および351のそれぞれを開閉させる開閉部252および352と、ハンド部251および351のそれぞれを鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に直線移動させる鉛直移動部253および353と、ハンド部251および351のそれぞれを鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に振り子状に移動させる攪拌部254および354とを有している。さらに、サンプル容器搬送部25および35は、それぞれ、図3に示すように、サンプル容器100を矢印Y1およびY2方向に実質的に水平移動させるサンプル容器移送部255および355と、バーコード読取部256および356とを有している。
【0035】
ハンド部251(351)は、検体搬送装置4が搬送するラック110の搬送路の上方に配置されている。また、ハンド部251および351は、それぞれ、検体搬送装置4により後述する第1提供位置43aおよび第2提供位置43b(図3参照)にロングバイアル101が搬送されると、下方(矢印Z2方向)に移動した後、開閉部252および352により開閉されてラック110に収容されたロングバイアル101を把持するように構成されている。この際、サンプル容器移送部255(355)の後述する移動部255d(355d)は、ユニットカバー24(34)の前面部241(341)よりも奥側(矢印Y2方向側)に収納されているので、ハンド部251(351)は、下方への移動を妨げられない。
【0036】
また、ハンド部251(351)は、把持したロングバイアル101を上方(矢印Z1方向)に移動することによりラック110から取り出し、その後、攪拌部254(354)により振り子状に移動される(たとえば、10往復)ように構成されている。これにより、ハンド部251(351)は、把持するロングバイアル101内の血液を攪拌することが可能である。また、攪拌終了後、ハンド部251(351)は、下方(矢印Z2方向)に移動した後、開閉部252(352)によりロングバイアル101の把持を開放するように構成されている。具体的には、ハンド部251(351)は、サンプル容器移送部255(355)により検体セット位置610(710)(図3参照)に移動された第1検体セット部255a(355a)に、ロングバイアル101をセットするように構成されている。このように、ハンド部251(351)は、平面的に見てほぼ同位置で、ロングバイアル101を上下方向(矢印Z1およびZ2方向)に移動させることにより、ラック110から第1検体セット部255a(355a)にロングバイアル101を移送することが可能である。なお、図3に示すように、平面的に見て、第1提供位置43aと検体セット位置610とは、重なるように配置されているとともに、第2提供位置43bと検体セット位置710とは、重なるように配置されている。
【0037】
なお、ロングバイアル101を、検体搬送装置4によって搬送されたラック110から取り出し、第1検体セット部255a(355a)にセットする上記の動作は、制御装置5の後述するCPU51aによって、ハンド部251(351)を上下移動させるステッピングモータ253a(353a)、第1ベルト431を駆動するステッピングモータ431e、および第2ベルト432を駆動するステッピングモータ432e(図4参照)などを制御することによって実行される。
【0038】
すなわち、CPU51aは、まず、ロングバイアル101を検体搬送装置4により提供位置43a(43b)に搬送する処理を実行する。そして、CPU51aは、提供位置43a(43b)の上方に移動部255d(355d)が存在しない状態で、ロングバイアル101をハンド部251(351)により把持し、ロングバイアル101の下端が第1検体セット部255a(355a)の上端面よりも高い位置にくるまで上昇させ、ロングバイアル101を攪拌する処理を実行するように構成されている。次に、CPU51aは、第1検体セット部255a(355d)が上昇したロングバイアル101の直下に位置するまで移動部255d(355d)を移動させる処理を実行する。そして、CPU51aは、ハンド部251(351)を下降させて把持を解除することによって、ロングバイアル101を第1検体セット部255a(355d)にセットする処理を実行する。そして、CPU51aは、第1検体セット部255a(355d)にセットされたロングバイアル101が吸引位置600(700)に位置するまで移動部255d(355d)を移動させる処理を実行するように構成されている。
【0039】
開閉部252(352)は、エアシリンダ252a(352a)による動力により、ロングバイアル101を把持するようにハンド部251(351)を開閉するように構成されている。
【0040】
鉛直移動部253(353)は、ステッピングモータ253a(353a)による動力により、レール253b(353b)に沿ってハンド部251(351)を鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に移動するように構成されている。
【0041】
攪拌部254(354)は、図示しないステッピングモータによる動力により、ハンド部251(351)を鉛直方向(矢印Z1およびZ2方向)に振り子状に移動するように構成されている。
【0042】
サンプル容器移送部255および355は、それぞれ、図8および図9に示すように、第1検体セット部255aおよび355aと、第1検体セット部255aおよび355aよりも手前側(矢印Y1方向側)に配置された第2検体セット部255bおよび355bと、これら2つの検体セット部がアダプタ255cおよび355cを介して取り付けられる移動部255dおよび355dと、ステッピングモータ255eおよび355e(図9参照)と、環状のタイミングベルト255fおよび355f(図9参照)とを有している。
【0043】
また、図9に示すように、ステッピングモータ255eおよび355eの出力軸には、それぞれ、プーリ255gおよび355gが取り付けられている。そして、タイミングベルト255fおよび355fは、それぞれ、プーリ255gおよび355gと、ステッピングモータ255eおよび355eよりも前方側(矢印Y1方向側)に設けられたプーリ255hおよび355hとにより回動可能に張られている。これにより、ステッピングモータ255e(355e)が回転駆動することにより、プーリ255g(355g)とプーリ255h(355h)との間でタイミングベルト255f(355f)が回動するように構成されている。また、タイミングベルト255f(355f)の一部は、前後方向(矢印Y1およびY2方向)に延びるように配置されており、移動部255d(355d)は、後端部近傍の取付部255i(355i)により、タイミングベルト255f(355f)の前後方向に延びるように配置された部分に取り付けられている。これにより、タイミングベルト255f(355f)の回動に伴って、移動部255d(355d)を前後方向(矢印Y1およびY2方向)に移動させることが可能となる。
【0044】
そして、ステッピングモータ255e(355e)の回転駆動を制御することにより、移動部255d(355d)に取り付けられた第1検体セット部255a(355a)と、第2検体セット部255b(355b)とを、測定処理の動作に応じた所定の位置に移動させることが可能である。具体的には、サンプル容器移送部255および355により、それぞれ、各検体セット部を、図3に示す吸引位置600および700と、検体セット位置610および710と、優先検体セット位置620および720と、試験管有無検知位置630および730とに配置させることが可能である。なお、図3に示すように、上記した各位置は、血液分析装置1の手前側(矢印Y1方向側)から、ユニットカバー24(34)の前面部241(341)よりも手前側に配置された優先検体セット位置620(720)、前面部241(341)よりも奥側(矢印Y2方向側)に配置された検体セット位置610(710)、試験管有無検知位置630(730)、吸引位置600(700)の順で検体セット部の移動経路上に配置されている。
【0045】
ここで、本実施形態では、図3に示すように、サンプル容器移送部255(355)は、平面的に見て、移動部255d(355d)が検体搬送装置4により搬送されるラック110の搬送路に直交するように、ラック110の搬送路の上方を通過して各検体セット部を所定の位置まで移動するように構成されている。具体的には、図10に示すように、移動部255d(355d)は、検体搬送装置4により搬送されるラック110の上端位置H2よりも高い位置H1に配置されており、実質的に水平方向で前後方向(矢印Y1およびY2方向)に移動されるように構成されている。これにより、検体搬送装置4によるラック110の搬送動作を継続しながら、移動部255d(355d)に取り付けられた各検体セット部を所定の位置まで搬送することが可能である。
【0046】
第1検体セット部255aおよび355aは、それぞれ、図8に示すように、保持穴255jおよび355jを有し、保持穴255jおよび355jにロングバイアル101(図5参照)を保持可能に構成されている。また、第1検体セット部255aおよび355aの後方側(矢印Y2方向側)の側面には、それぞれ、保持穴255jおよび355jの後方側(矢印Y2方向側)が開放されるように切欠部255kおよび355kが形成されている。これにより、ロングバイアル101が第1検体セット部255a(355a)に保持された状態で、ロングバイアル101に貼付されたバーコード101b(図5参照)を外側から視認することが可能である。また、第1検体セット部255a(355a)は、アダプタ255c(355c)に取り外し可能に取り付けられており、ロングバイアル101の種類に応じて他の第1検体セット部に取替え可能である。
【0047】
第2検体セット部255bおよび355bは、それぞれ、上部保持部255lおよび355lと、下部保持部255mおよび355mとを有している。第2検体セット部255b(355b)は、上部保持部255l(355l)によりマイクロチューブ102(図6参照)の上部側を保持し、下部保持部255m(355m)によりマイクロチューブ102(図6参照)の下部側を保持することにより、高さの異なる2箇所でマイクロチューブ102を保持するので、安定した状態で保持可能である。上部保持部255lおよび355lには、それぞれ、保持孔255nおよび355nが形成されているとともに、保持孔255nおよび355nの前後部分には、それぞれ、上部保持部255lおよび355lを左右方向(矢印X1およびX2方向)に2つに分割する分離部255oおよび355oが形成されている。そして、左右に2つに分割された部分は、それぞれ、外側方向に弾性変形可能な2つの支持部255pおよび355pにより支持されている。これにより、左右に2つに分割された部分を支持する支持部255p(355p)を外側方向に撓ませると、保持孔255n(355n)の内径を変化させることができ、その結果、大きさの異なる複数種類のマイクロチューブ102を保持することが可能となる。
【0048】
また、下部保持部255mおよび355mは、それぞれ、平面的に見て、上部保持部255lおよび355lの保持孔255nおよび355nの位置と対応する位置に保持穴255qおよび355qを有し、マイクロチューブ102の下端部が保持穴255qおよび355qに挿入された状態でマイクロチューブ102の下部側を保持するように構成されている。また、第2検体セット部255b(355b)は、アダプタ255c(355c)に取り外し可能に取り付けられており、支持部255p(355p)の撓み変形では対応することができない種類のマイクロチューブ102に対応可能なように他の第2検体セット部に取替え可能である。
【0049】
バーコード読取部256(356)は、図5に示すような、各ロングバイアル101に貼付されたバーコード101bを読み取るように構成されている。また、バーコード読取部256(356)は、図示しない回転装置によって対象のロングバイアル101を第1検体セット部255a(355a)に保持したまま水平方向に回転させながらバーコード101bを読み取るように構成されている。これにより、ロングバイアル101のバーコード101bがバーコード読取部256(356)に対して反対側に貼付されている場合にも、ロングバイアル101を回転させることによって、バーコード101bをバーコード読取部256(356)側に向けることが可能である。また、各ロングバイアル101のバーコード101bは、各検体に固有に付されたものであり、各検体の分析結果の管理などに使用される。
【0050】
固定保持部27(37)は、図11に示すように、吸引位置600(700)に移送されたロングバイアル101を固定保持するように構成されている。また、固定保持部27(37)は、図12に示すように、吸引位置600(700)に移送されたマイクロチューブ102に対しては、固定保持しないように構成されている。なお、マイクロチューブ102を用いる場合には、上記のように、第2検体セット部255b(355b)の支持部255p(355p)の撓み変形を利用して、マイクロチューブ102が安定して保持されているため、固定保持部27(37)を用いる必要がない。固定保持部27および37は、それぞれ、図11および図12に示すように、一対の挟持部271および371と、矢印X1およびX2方向に水平に延びるように配置されたスライドレール272および372と、スライドレール272および372に摺動可能に取り付けられた摺動部材273および373とを有している。さらに、固定保持部27および37は、それぞれ、図9に示すように、ステッピングモータ274および374と、環状のタイミングベルト275および375と、複数のプーリ276および376と、位置センサ277および377とを有している。
【0051】
一対の挟持部271および371は、図11〜図14に示すように、それぞれ対向する側面が平面的に見て略V字形状に形成されており、大きさや外形などが異なるロングバイアル101に対応可能なように構成されている。また、一対の挟持部271(371)は、図11および図12に示すように、連結部278(378)により、摺動部材273(373)に取り付けられているとともに、タイミングベルト275(375)にも取り付けられている。これにより、タイミングベルト275(375)が回動するのに伴って、一対の挟持部271(371)は摺動部材273(373)と一体となって水平方向に移動される。また、環状のタイミングベルト275(375)は、ステッピングモータ274(374)が回転駆動することにより、複数のプーリ276(376)によってガイドされながら回動するように構成されている。また、図9に示すように、環状のタイミングベルト275(375)は、複数のプーリ276(376)により、所定の形状になるように回動可能に張られている。具体的には、タイミングベルト275(375)は、矢印X1およびX2方向に水平に延びるように配置された部分がプーリ276(376)により折り返されて、上下2段となるように形成されている。そのため、タイミングベルト275(375)が回動すると、上下2段の上側部分と下側部分とは、互いに矢印X1およびX2方向の相反する方向に移動される。
【0052】
そして、矢印X1およびX2方向に水平に延びる上下2段の上側部分には、一対の挟持部271(371)の一方に取り付けられた連結部278(378)が固定されている。矢印X1およびX2方向に水平に延びる上下2段の下側部分には、一対の挟持部271(371)の他方に取り付けられた連結部278(378)が固定されている。これにより、図13および図14に示すように、一対の挟持部271(371)は、タイミングベルト275(375)が矢印P1方向に回動されると、互いの距離が小さくなる方向に移動され、タイミングベルト275(375)が矢印P2方向に回動されると、互いの距離が大きくなる方向に移動されるように構成されている。また、一対の挟持部271(371)は、上記のように構成されることにより、一対の挟持部271(371)により挟み込まれる領域の中心位置Oを実質的に同位置に維持した状態で移動可能である。そして、一対の挟持部271(371)は、平面的に見て、一対の挟持部271(371)により挟み込まれる領域の中心位置Oが鉛直方向に降下されるピアサ211(311)の降下位置と実質的に同位置になるように、連結部278(378)を介してタイミングベルト275(375)に取り付けられている。また、一対の挟持部271(371)は、吸引位置600(700)に移送されたロングバイアル101に対して、実質的に同距離を保ちながら両側から当接するように移動するように構成されている。これにより、平面的に見て、一対の挟持部271(371)により固定保持されるロングバイアル101の中心軸をピアサ211(311)の降下位置に実質的に一致させることが可能となる。
【0053】
位置センサ277(377)は、切欠部を有し、略U字形状に形成されている。また、位置センサ277(377)は、切欠部を横切る連結部278(378)を検知するように構成されている。位置センサ277(377)による検知結果と、ステッピングモータ274(374)のステッピング数とに基づいて、後述する制御装置5のCPU51aが一対の挟持部271(371)の位置を判断することが可能である。
【0054】
検体セット部開閉ボタン28(38)は、ラック110に保持されたロングバイアル101に収容された連続測定検体(連続的に測定される検体)に優先して測定される優先測定検体の測定を行う際に、ユーザにより押下可能なように構成されている。
【0055】
優先検体測定開始ボタン29(39)は、ユーザにより押下可能なように構成されている。ユーザが、優先測定検体を収容したロングバイアル101またはマイクロチューブ102を、第1検体セット部255a(355a)または第2検体セット部255b(355b)にセットした後、優先検体測定開始ボタン29(39)を押下すると、セットされたロングバイアル101またはマイクロチューブ102が測定ユニットの内部に取り込まれ、測定が開始される。
【0056】
また、図4および図15に示すように、検体搬送装置4は、分析が行われる前の検体を収容するロングバイアル101が収容された複数のラック110を保持することが可能な分析前ラック保持部41と、分析が行われた後の検体を収容するロングバイアル101が収容された複数のラック110を保持することが可能な分析後ラック保持部42と、ラック110を矢印X1およびX2方向に水平に直線移動するラック搬送部43と、バーコード読取部44と、ロングバイアル101の有無を検知する有無検知センサ45(図4参照)と、分析後ラック保持部42内にラック110を移動するラック送出部46とを含んでいる。
【0057】
分析前ラック保持部41は、ラック送込部411を有し、ラック送込部411が矢印Y2方向に移動することによって、分析前ラック保持部41に保持されたラック110を1つずつラック搬送部43上に押し出すように構成されている。ラック送込部411は、分析前ラック保持部41の下方に設けられた図示しないステッピングモータによって駆動するように構成されている。また、分析前ラック保持部41は、ラック搬送部43近傍に規制部412(図4参照)を有し、一度ラック搬送部43上に押し出されたラック110が分析前ラック保持部41内に戻されないようにラック110の移動を規制するように構成されている。
【0058】
分析後ラック保持部42は、ラック搬送部43の近傍に規制部421(図4参照)を有し、一度分析後ラック保持部42内に移動されたラック110がラック搬送部43側に戻されないようにラック110の移動を規制するように構成されている。
【0059】
ラック搬送部43は、図3に示すように、第1測定ユニット2に検体を提供するための第1提供位置43a、および、第2測定ユニット3に検体を提供するための第2提供位置43bに検体が搬送されるようにラック110を搬送可能に構成されている。さらに、ラック搬送部43は、有無検知センサ45が検体を収容するサンプル容器100の有無を確認するための検体有無確認位置43c、および、バーコード読取部44が検体を収容するロングバイアル101のバーコード101b(図5参照)を読み取るための読取位置43dまで検体が搬送されるようにラック110を搬送可能に構成されている。
【0060】
また、図4および図15に示すように、ラック搬送部43は、それぞれ独立して動くことが可能な第1ベルト431および第2ベルト432の2つのベルトを有している。また、第1ベルト431および第2ベルト432の矢印Y1およびY2方向の幅b1およびb2(図15参照)は、それぞれラック110の矢印Y1およびY2方向の幅Bの半分以下の大きさである。これにより、ラック搬送部43がラック110を搬送する際に、第1ベルト431および第2ベルト432は、ともにラック110の幅Bからはみ出ないように並列に配置されている。また、図16および図17に示すように、第1ベルト431および第2ベルト432は、環状に形成されており、それぞれローラ431a、431b、431c、および、ローラ432a、432b、432cを取り囲むように配置されている。また、第1ベルト431および第2ベルト432の外周部には、ラック110の矢印X1およびX2方向の幅Wよりも若干(たとえば、約1mm)大きい内幅w1(図16参照)およびw2(図17参照)を有するように突起片431dおよび432dがそれぞれ2つずつ形成されている。第1ベルト431は、突起片431dの内側にラック110を保持した状態において、ステッピングモータ431e(図4参照)によりローラ431a〜431cの外周を移動されることによって、ラック110を矢印X1およびX2方向に移動するように構成されている。また、第2ベルト432は、突起片432dの内側にラック110を保持した状態において、ステッピングモータ432e(図4参照)によりローラ432a〜432cの外周を移動されることによって、ラック110を矢印X1およびX2方向に移動するように構成されている。また、第1ベルト431および第2ベルト432は、それぞれ、互いに独立してラック110を移動することが可能なように構成されている。
【0061】
バーコード読取部44は、図5に示したロングバイアル101のバーコード101bを読み取るとともに、ラック110に貼付されたバーコード110aを読み取るように構成されている。また、バーコード読取部44は、図示しない回転装置によって対象のロングバイアル101をラック110に収容したまま水平方向に回転させながらバーコード101bを読み取るように構成されている。これにより、ロングバイアル101のバーコード101bがバーコード読取部44に対して反対側に貼付されている場合にも、ロングバイアル101を回転させることによって、バーコード101bをバーコード読取部44側に向けることが可能である。また、ラック110のバーコード110aは、各ラックに固有に付されたものであり、検体の分析結果の管理などに使用される。
【0062】
有無検知センサ45は、接触型のセンサであり、のれん形状の接触片451(図4参照)、光を出射する発光素子(図示せず)および受光素子(図示せず)を有している。有無検知センサ45は、接触片451が検知対象の被検知物に当接されることにより屈曲され、その結果、発光素子から出射された光が接触片451により反射されて受光素子に入射されるように構成されている。これにより、有無検知センサ45の下方をラック110に収容された検知対象のロングバイアル101が通過する際に、接触片451がロングバイアル101により屈曲されて、ロングバイアル101が有ることを検知することが可能である。
【0063】
ラック送出部46は、ラック搬送部43を挟んで分析後ラック保持部42に対向するように配置されており、矢印Y1方向に水平に移動するように構成されている。これにより、分析後ラック保持部42とラック送出部46との間にラック110が搬送された場合に、ラック送出部46を分析後ラック保持部42側に移動することによって、ラック110を押圧して分析後ラック保持部42内に移動することが可能である。
【0064】
制御装置5は、図1〜図3および図18に示すように、パーソナルコンピュータ(PC)などからなり、CPU、ROM、RAMなどからなる制御部51(図18参照)と、表示部52と、入力デバイス53とを含んでいる。また、表示部52は、第1測定ユニット2および第2測定ユニット3から送信されたデジタル信号のデータを分析して得られた分析結果などを表示するために設けられている。また、表示部52は、図19に示すように、他の検体に優先して測定を行う必要がある優先測定検体の測定において、ユーザが検体を識別するための検体識別番号の入力や、測定項目の設定などを行うための優先検体測定指示画面520を表示するように構成されている。
【0065】
次に、制御装置5の構成について説明する。制御装置5は、図18に示すように、制御部51と、表示部52と、入力デバイス53とから主として構成されたコンピュータ500によって構成されている。制御部51は、CPU51aと、ROM51bと、RAM51cと、ハードディスク51dと、読出装置51eと、入出力インタフェース51fと、通信インタフェース51gと、画像出力インタフェース51hとから主として構成されている。CPU51a、ROM51b、RAM51c、ハードディスク51d、読出装置51e、入出力インタフェース51f、通信インタフェース51g、および画像出力インタフェース51hは、バス51iによって接続されている。
【0066】
CPU51aは、ROM51bに記憶されているコンピュータプログラムおよびRAM51cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム54a、54bおよび54cをCPU51aが実行することにより、コンピュータ500が制御装置5として機能する。
【0067】
ROM51bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROMなどによって構成されており、CPU51aに実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータなどが記録されている。
【0068】
RAM51cは、SRAMまたはDRAMなどによって構成されている。RAM51cは、ROM51bおよびハードディスク51dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU51aの作業領域として利用される。
【0069】
ハードディスク51dは、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムなど、CPU51aに実行させるための種々のコンピュータプログラムおよびそのコンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。第1測定ユニット2用の測定処理(1)プログラム54a、第2測定ユニット3用の測定処理(2)プログラム54bおよび検体搬送装置4用のサンプラ動作処理プログラム54cも、このハードディスク51dにインストールされている。これらのアプリケーションプログラム54a〜54cがCPU51aに実行されることによって、第1測定ユニット2、第2測定ユニット3および検体搬送装置4の各部の動作が制御される。また、ハードディスク51dには、測定結果データベース54dもインストールされている。
【0070】
読出装置51eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、またはDVD−ROMドライブなどによって構成されており、可搬型記録媒体54に記録されたコンピュータプログラムまたはデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体54には、アプリケーションプログラム54a〜54cが格納されており、コンピュータ500がその可搬型記録媒体54からアプリケーションプログラム54a〜54cを読み出し、そのアプリケーションプログラム54a〜54cをハードディスク51dにインストールすることが可能である。
【0071】
なお、上記アプリケーションプログラム54a〜54cは、可搬型記録媒体54によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ500と通信可能に接続された外部の機器から上記電気通信回線を通じて提供することも可能である。たとえば、上記アプリケーションプログラム54a〜54cがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにコンピュータ500がアクセスして、そのアプリケーションプログラム54a〜54cをダウンロードし、これをハードディスク51dにインストールすることも可能である。
【0072】
また、ハードディスク51dには、たとえば、米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)などのグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、アプリケーションプログラム54a〜54cは上記オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0073】
入出力インタフェース51fは、たとえば、USB、IEEE1394、RS−232Cなどのシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284などのパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器などからなるアナログインタフェースなどから構成されている。入出力インタフェース51fには、入力デバイス53が接続されており、ユーザがその入力デバイス53を使用することにより、コンピュータ500にデータを入力することが可能である。
【0074】
通信インタフェース51gは、たとえば、Ethernet(登録商標)インタフェースである。コンピュータ500は、その通信インタフェース51gにより、所定の通信プロトコルを使用して第1測定ユニット2、第2測定ユニット3、検体搬送装置4およびホストコンピュータ6との間でデータの送受信が可能である。
【0075】
画像出力インタフェース51hは、LCDまたはCRTなどで構成された表示部52に接続されており、CPU51aから与えられた画像データに応じた映像信号を表示部52に出力するようになっている。表示部52は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示するように構成されている。
【0076】
制御部51は、上記した構成により、第1測定ユニット2および第2測定ユニット3から送信された測定結果を用いて分析対象の成分を解析するとともに、分析結果(赤血球数、血小板数、ヘモグロビン量、白血球数など)を取得するように構成されている。
【0077】
ラック110には、図5に示すように、10本のサンプル容器100を一列に収容可能なように10個の容器収容部110bが形成されている。また、各容器収容部110bには、それぞれ収容したロングバイアル101のバーコード101bが視認可能なように開口部110cが設けられている。
【0078】
次に、図3および図20を参照して、一実施形態による血液分析装置1の測定処理プログラム54aおよび54bによる測定処理動作を説明する。なお、第1測定ユニット2および第2測定ユニット3では、それぞれ同様に分析対象の成分が測定されるので、以下では代表的な例として、第1測定ユニット2により分析対象の成分を測定する場合について説明する。
【0079】
まず、ステップS1において、図3に示す吸引位置600まで搬送されたサンプル容器100から検体吸引部21により検体の吸引が行われる。そして、ステップS2において、吸引した検体から試料調製部22により検出用試料が調製され、ステップS3で、検出用試料から分析対象の成分が検出部23により検出される。そして、ステップS4で、測定データが、第1測定ユニット2から制御装置5に送信される。その後、ステップS5において、第1測定ユニット2から送信される測定結果に基づいて、制御部51により分析対象の成分が解析される。このステップS5により、検体の分析が完了され、動作が終了される。
【0080】
次に、図1、図2、図19および図21〜図25を参照して、一実施形態による血液分析装置1の優先検体測定時の動作について説明する。なお、本実施形態では、第1測定ユニット2および第2測定ユニット3は、それぞれ互いに独立して優先測定検体の測定を行うことが可能であり、第1測定ユニット2および第2測定ユニット3における優先検体測定時の動作は同様である。したがって、ここでは、代表的な例として第1測定ユニット2における優先検体測定時の動作について説明する。
【0081】
まず、図21に示すステップS101において、CPU51aにより、検体セット部開閉ボタン28(図1および図2参照)が押下されたか否かが判断され、押下されるまでこの判断が繰り返される。押下された場合には、ステップS102において、図22に示すように、移動部255dがユニットカバー24の前面部241から外側に突出するように移動され、第1検体セット部255aおよび第2検体セット部255bが優先検体セット位置620に配置される。
【0082】
そして、ステップS103において、図19に示すように、表示部52に優先検体測定指示画面520が表示される。ステップS104において、ユーザが検体識別番号の入力や、測定項目の設定などを行った後、優先検体測定指示画面520上に表示されたOKボタン520aが押下されたか否かがCPU51aにより判断される。この判断はOKボタン520aが押下されるまで継続される。なお、キャンセルボタン520bが押下された場合には、優先検体測定指示画面520が終了される。優先検体測定指示画面520のOKボタン520aが押下された場合には、ステップS105において、CPU51aにより、優先検体測定開始ボタン29(図1および図2参照)が押下されたか否かが判断される。ユーザは、OKボタン520aを押下した後、優先測定検体を収容したロングバイアル101またはマイクロチューブ102を第1検体セット部255aまたは第2検体セット部255bにセットし、その後、優先検体測定開始ボタン29を押下する。優先検体測定開始ボタン29が押下されていない場合には、この判断が繰り返され、押下された場合には、ステップS106において、図23に示すように、第1検体セット部255aが試験管有無検知位置630に移動され、有無検知部26によりロングバイアル101の有無が検知される。なお、ユーザは、マイクロチューブ102に収容された優先測定検体を測定する場合には、マイクロチューブ102の蓋を外した状態で第2検体セット部255bにマイクロチューブ102をセットする。
【0083】
そして、ステップS107において、CPU51aにより、検知結果に基づいて第1検体セット部255aにロングバイアル101がセットされているか否かが判断され、セットされている場合には、ステップS108において、図24に示すように、第1検体セット部255aが吸引位置600まで移動される。その後、第1検体セット部255aに保持されたロングバイアル101が固定保持部27の一対の挟持部271により挟み込まれ、ロングバイアル101の中心軸がピアサ211の降下位置に来るようにロングバイアル101が固定保持される。そして、ピアサ211が密閉蓋101aを貫通し、ロングバイアル101の内部に挿入される。具体的には、ピアサ211は、所定の回転トルクで回転駆動するステッピングモータ218により降下され、密閉蓋101aを貫通した後、先端がロングバイアル101の底部近傍に到達するまで降下される。そして、検体吸引部21により、ロングバイアル101内の血液が吸引された後、ステップS110において、優先測定検体の測定が行われる。
【0084】
ステップS107において、CPU51aにより、第1検体セット部255aにロングバイアル101がセットされていないと判断した場合には、ステップS109において、図25に示すように、第2検体セット部255bが吸引位置600まで移動される。そして、ピアサ211が第2検体セット部255bに保持されたマイクロチューブ102の内部に挿入され、先端がマイクロチューブ102の底部に到達するまで降下される。この状態で検体吸引部21による血液の吸引動作が行われた後、ステップS110に移行されて、優先測定検体の測定が行われる。なお、ステップS109における血液の吸引量は、ステップS108における血液の吸引量よりも少ない。
【0085】
血液の吸引が完了すると、ステップS111において、図22に示すように、サンプル容器移送部255により、第1検体セット部255aおよび第2検体セット部255bが優先検体セット位置620に移動される。その後、ステップS112において、優先検体測定開始ボタン29が押下されたか否かが判断される。ユーザは、血液が吸引された後のロングバイアル101またはマイクロチューブ102を第1検体セット部255aまたは第2検体セット部255bから取り除いた後、次の新たな優先測定検体を収容したロングバイアル101またはマイクロチューブ102を第1検体セット部255aまたは第2検体セット部255bにセットし、優先検体測定開始ボタン29を押下することによって、連続して優先測定検体の測定を行うことが可能である。ユーザが次の新たな優先測定検体を収容したロングバイアル101またはマイクロチューブ102を第1検体セット部255aまたは第2検体セット部255bにセットし、優先検体測定開始ボタン29を押下した場合には、動作はステップS106に移行され、連続して次の優先測定検体の測定が行われる。
【0086】
一方、優先検体測定開始ボタン29が押下されない場合には、ステップS113において、CPU51aにより、検体セット部開閉ボタン28が押下されたか否かが判断される。ユーザは、検体セット部開閉ボタン28を押下することによって、優先測定検体の測定を終了させることが可能である。検体セット部開閉ボタン28が押下されない場合には、優先検体測定開始ボタン29または検体セット部開閉ボタン28のいずれかが押下されるまで、これらの判断が繰り返される。そして、検体セット部開閉ボタン28が押下されると、ステップS114において、移動部255dが矢印Y2方向に移動されることにより、第1検体セット部255aおよび第2検体セット部255bが、第1測定ユニット2のユニットカバー24内部に戻され、優先測定検体の測定動作が終了される。
【0087】
本実施形態では、上記のように、連続的に測定される連続測定検体を収容した複数のロングバイアル101を保持可能に構成されたラック110と、連続測定検体に優先して測定される優先測定検体を収容したサンプル容器100を保持可能に構成された第1検体セット部255a(355a)および第2検体セット部255b(355b)とを設けることによって、連続的に測定される連続測定検体および連続測定検体に優先して測定される優先測定検体の両方の測定に対応することができる。また、ラック110に保持されたロングバイアル101の上端位置H2よりも高い位置H1に配置された検体セット部255a(255b、355aおよび355b)を、ラック110に保持されたロングバイアル101の上方を通るように移動させるサンプル容器移送部255(355)を設けることによって、検体セット部255a(255b、355aおよび355b)の移動時に検体セット部255a(255b、355aおよび355b)がラック110に干渉するのを防止しながら、平面的に見て、ラック110が占めるスペースと、検体セット部255a(255b、355aおよび355b)が移動される際に要するスペースとを互いに重なるように配置することができる。これにより、これら2つのスペースを平面的に見て重ならないように設ける場合に比べて、平面的な必要スペースを小さくすることができる。
【0088】
また、本実施形態では、検体搬送装置4により提供位置43a(43b)に搬送されたロングバイアル101をラック110から第1検体セット部255a(355a)に移送するハンド部251(351)を設けることによって、第1検体セット部255a(355a)を、優先測定検体を収容したロングバイアル101のみならず連続測定検体を収容したロングバイアル101の保持部としても用いることができるので、連続測定検体を収容したロングバイアル101を保持する専用の保持部を設ける必要がない。これにより、血液分析装置1を小型化することができる。
【0089】
また、本実施形態では、ラック110に保持されて提供位置43a(43b)に搬送されたロングバイアル101を、検体セット部255a(255b、355aおよび355b)がラック110に保持されたロングバイアル101の上方に存在しない状態で、第1検体セット部255a(355a)よりも高い位置まで上昇させて、上昇したロングバイアル101の下方に第1検体セット部255a(355a)を移動させるとともに、ロングバイアル101を下降させることによってロングバイアル101を第1検体セット部255a(355a)にセットするようにサンプル容器移送部255(355)およびハンド部251(351)を制御するCPU51aを設けることによって、ハンド部251(351)によりロングバイアル101を上下方向に移動させるだけでロングバイアル101をラック110から第1検体セット部255a(355a)に移送することができるので、ロングバイアル101を水平方向に移動させるための水平移動機構を設ける必要がない。これにより、血液分析装置1の構造が複雑化するのを抑制することができる。したがって、この血液分析装置1では、連続的に測定される連続測定検体および優先測定検体の両方の測定に対応しながら、血液分析装置1の設置面積を小さくするとともに、血液分析装置1の構造が複雑化するのを抑制することができる。
【0090】
また、本実施形態では、連続測定検体を収容したロングバイアル101および優先測定検体を収容したロングバイアル101を保持する第1検体セット部255a(355a)と、マイクロチューブ102を保持する第2検体セット部255b(355b)とを設け、第2検体セット部255b(355b)を、第1検体セット部255a(355a)よりも血液分析装置1の手前側に配置することによって、異なる複数種類の検体容器(ロングバイアル101およびマイクロチューブ102)を保持することができる。また、小型の検体容器であるマイクロチューブ102を保持する第2検体セット部255b(355b)を、第1検体セット部255a(355a)よりも血液分析装置1の手前側に配置することによって、ユーザがより手元に近い位置で小型のマイクロチューブ102を保持部にセットすることができる。
【0091】
また、本実施形態では、検体セット位置610(710)がユニットカバー24(34)の前面部241(341)よりも奥側(矢印Y2方向側)に位置するように、サンプル容器移送部255(355)を制御するようにCPU51aを構成することによって、ユーザが位置する前面部241(341)の手前側とは反対側の前面部241(341)の奥側でロングバイアル101が第1検体セット部255a(355a)にセットされるので、ユーザが移送中のロングバイアル101に接触してしまうのを防止することができる。
【0092】
また、本実施形態では、検体セット部開閉ボタン28(38)が押下された場合に、ユニットカバー24(34)の前面部241(341)よりも手前側(矢印Y1方向側)に配置される優先検体セット位置620(720)に検体セット部255a(255b、355aおよび355b)を移動させるようにサンプル容器移送部255(355)を制御するようにCPU51aを構成することによって、ユーザは、検体セット部255a(255b、355aおよび355b)が前面部241(341)よりも手前側に位置する状態で優先測定検体を収容したサンプル容器100をセットすることができるので、容易に検体セット部255a(255b、355aおよび355b)にサンプル容器100をセットすることができる。
【0093】
また、本実施形態では、優先測定検体を収容したサンプル容器100がセットされる優先検体セット位置620(720)に検体セット部255a(255b、355aおよび355b)を配置させた状態で、ラック110に保持されたロングバイアル101を搬送するように検体搬送装置4を制御するようにCPU51aを構成することによって、検体セット部255a(255b、355aおよび355b)が優先検体セット位置620(720)に配置されている場合にも、ラック110に保持されたロングバイアル101の搬送動作を停止させることなく、搬送動作を継続することができるので、血液分析装置1の処理速度が低下するのを抑制することができる。
【0094】
また、本実施形態では、平面的に見て略同位置で、連続測定検体を収容したロングバイアル101を上下方向(矢印Z1およびZ2方向)に移動させることにより、連続測定検体を収容したロングバイアル101をラック110から第1検体セット部255a(355a)に移送するようにハンド部251(351)を構成することによって、平面的に見て最小限のスペースで、連続測定検体を収容したロングバイアル101をラック110から第1検体セット部255a(355a)に移送することができるので、血液分析装置1の設置面積をより小さくすることができる。
【0095】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0096】
たとえば、上記実施形態では、分析装置の一例として血液分析装置を示したが、本発明はこれに限らず、連続測定検体および優先測定検体の両方の測定に対応した分析装置であれば他の分析装置に本発明を適用してもよい。
【0097】
また、上記実施形態では、分析装置の一例として、第1測定ユニットおよび第2測定ユニットの2つの測定ユニットを備える分析装置を示したが、本発明はこれに限らず、1つの測定ユニットを備える分析装置であってもよいし、3つ以上の測定ユニットを備える分析装置であってもよい。
【0098】
また、上記実施形態では、第1測定ユニットおよび第2測定ユニットの両方のサンプル容器移送部およびハンド部を制御する制御装置の1つのCPUを示したが、本発明はこれに限らず、第1測定ユニットおよび第2測定ユニットのサンプル容器移送部およびハンド部をそれぞれ別個に制御する複数のCPUを設けてもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、保持部移動機構の一例として、水平方向に直線移動するように構成された移動部を示したが、本発明はこれに限らず、第1検体保持部の上方を通るように移動可能であれば、水平方向に対して傾斜する斜め方向に移動するように構成された保持部移動機構であってもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、容器移送機構の一例として、平面的に見て略同位置で上下方向(矢印Z1およびZ2方向)に移動するように構成されたハンド部を示したが、本発明はこれに限らず、第1検体保持部から第2検体保持部に検体容器を移送可能であれば、上下方向に対して傾斜する方向に移動するように構成された容器移送機構であってもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、吸引部の一例として、検体容器の種類に応じてピアサの降下量(降下位置)を調整するように構成された検体吸引部を示したが、本発明はこれに限らず、検体容器の種類に応じて検体の吸引量を調製するように構成された吸引部であってもよい。
【0102】
また、上記実施形態では、第2検体保持部が、第1検体セット部および第2検体セット部の2つの検体セット部を含む構成の例を示したが、本発明はこれに限らず、第2検体保持部が1つの検体セット部だけを含む構成であってもよいし、3つ以上の検体セット部を含む構成であってもよい。
【0103】
また、上記実施形態では、分析装置の一例として、各測定ユニットに対して別個のユニットカバーを備える分析装置を示したが、本発明はこれに限らず、ユニットカバーを備えない分析装置であってもよいし、複数の測定ユニットを収容する1つのユニットカバーを備える分析装置であってもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、保持部移動機構の一例として、搬送機構による検体容器の搬送経路と平面的に見て直交するように移動する移動部を示したが、本発明はこれに限らず、搬送機構による検体容器の搬送経路と平行に移動する保持部移動機構であってもよい。
【符号の説明】
【0105】
1 血液分析装置(分析装置)
2 第1測定ユニット(測定ユニット)
3 第2測定ユニット(測定ユニット)
4 検体搬送装置(搬送装置)
5 制御装置(制御ユニット)
21、31 検体吸引部(吸引部)
23、33 検出部
43 ラック搬送部(搬送機構)
43a 第1提供位置(所定位置)
43b 第2提供位置(所定位置)
51a CPU(制御部)
100 サンプル容器(第1検体容器、第2検体容器)
101 ロングバイアル(第1検体容器、第2検体容器)
102 マイクロチューブ(第2検体容器)
110 ラック(第1検体保持部)
241、341 前面部(前面カバー)
251、351 ハンド部(容器移送機構)
255、355 サンプル容器移送部(保持部移動機構)
255a、355a 第1検体セット部(第2検体保持部、第1保持部、保持部)
255b、355b 第2検体セット部(第2検体保持部、第2保持部、保持部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に測定される連続測定検体を収容した複数の第1検体容器を保持可能に構成された第1検体保持部と、
前記第1検体保持部に保持された前記第1検体容器の上端よりも高い位置に配置され、前記第1検体容器と、前記連続測定検体に優先して測定される優先測定検体を収容した第2検体容器とを保持可能に構成された第2検体保持部と、
前記第1検体保持部に保持された前記第1検体容器の上方を通るように前記第2検体保持部を移動させる保持部移動機構と、
前記第1検体保持部に保持される前記第1検体容器を、前記第1検体保持部上の所定位置に搬送する搬送機構と、
前記搬送機構により前記所定位置に搬送された前記第1検体容器を前記第1検体保持部から前記第2検体保持部に移送する容器移送機構と、
前記第1検体保持部に保持されて前記所定位置に搬送された前記第1検体容器を、前記第2検体保持部が前記第1検体容器の上方に存在しない状態で、前記第2検体保持部よりも高い位置まで上昇させて、上昇した前記第1検体容器の下方に前記第2検体保持部を移動させるとともに、前記第1検体容器を下降させることによって前記第1検体容器を前記第2検体保持部にセットするように前記保持部移動機構および前記容器移送機構を制御する制御部とを備える、分析装置。
【請求項2】
前記第2検体保持部は、前記第1検体容器および前記第2検体容器を保持する第1保持部と、前記第2検体容器がマイクロチューブである場合に、前記第2検体容器を保持する第2保持部とを含み、
前記第2保持部は、前記第1保持部よりも前記分析装置の手前側に配置されている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記分析装置の前面側に配置される前面カバーをさらに備え、
前記制御部は、前記第1検体容器が前記第2検体保持部にセットされる位置が、前記前面カバーよりも前記分析装置の奥側になるように、前記保持部移動機構を制御するように構成されている、請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記第2検体保持部は、前記第2検体容器を保持する保持部を含み、
前記制御部は、前記第2検体保持部を移動させる指示を受け付けるとともに、前記指示に応じて前記保持部が前記前面カバーよりも前記分析装置の手前側に配置されるように前記第2検体保持部を移動させるように前記保持部移動機構を制御するように構成されている、請求項3記載の分析装置。
【請求項5】
前記保持部移動機構は、前記第2検体保持部を、前記第1検体保持部に保持された前記第1検体容器の上方で略水平方向に移動させるように構成されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項6】
前記保持部移動機構は、前記搬送機構による前記第1検体容器の搬送経路と平面的に見て略直交するように前記第2検体保持部を移動させるように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記第2検体容器がセットされる位置に前記第2検体保持部を配置させた状態で、前記第1検体保持部に保持された前記第1検体容器を搬送するように前記搬送機構を制御するように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項8】
前記連続測定検体および前記優先測定検体の両方の測定に共通に用いられる検出部をさらに備える、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項9】
前記連続測定検体および前記優先測定検体は、血液であり、
前記検出部は、血液に含まれる血球を検出するように構成されている、請求項8に記載の分析装置。
【請求項10】
前記第2検体保持部にセットされた前記第1検体容器および前記第2検体容器から検体を吸引する吸引部をさらに備え、
前記保持部移動機構は、前記吸引部により検体が吸引される位置に前記第2検体保持部を移動するように構成されている、請求項1〜9のいずれか1項に記載の分析装置。
【請求項11】
前記第2検体保持部、前記保持部移動機構および前記容器移送機構は、それぞれ複数設けられており、
前記第2検体保持部、前記保持部移動機構および前記容器移送機構を各々が有する複数の測定ユニットと、
前記第1検体保持部および前記搬送機構を有し、前記第1検体容器を前記複数の測定ユニットに搬送する搬送装置と、
前記制御部を有し、前記複数の測定ユニットおよび前記搬送装置を制御する制御ユニットとをさらに備える、請求項1〜10のいずれか1項に記載の分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−32489(P2010−32489A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32162(P2009−32162)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.EEPROM
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】