説明

分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマー

分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミド、ブロックコポリマー、及び当該コポリマーを製造する方法が提供される。コポリマーを製造する方法は、少なくとも1つのポリアミンを含む1種又はそれ以上のアミン化合物を、少なくとも1つのポリジオルガノシロキサンセグメント及び少なくとも2つのエステル基を有する前駆体と反応させることを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマー及び当該コポリマーの製造方法を記載する。
【背景技術】
【0002】
シロキサンポリマーは、シロキサン結合の物理的及び化学的特徴に主として由来する特有の性質を有する。これらの性質としては、低ガラス転移温度、熱安定性及び酸化安定性、紫外線耐性、低表面エネルギー及び低疎水性、多くの気体に対する高透過性、並びに生体適合性が挙げられる。しかし、シロキサンポリマーは、多くの場合、引張り強度を欠いている。
【0003】
シロキサンポリマーの低い引張り強度は、ブロックコポリマーを形成することにより改善できる。いくつかのブロックコポリマーは、「ソフトな」シロキサンポリマーブロック又はセグメント、及び任意の種々の「ハードな」ブロック又はセグメントを含有する。代表的なブロックコポリマーは、ポリジオルガノシロキサンポリアミド及びポリジオルガノシロキサンポリ尿素である。
【0004】
ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、アミノ末端化シリコーンと短鎖ジカルボン酸との縮合反応により調製される。あるいは、これらのコポリマーは、カルボキシ末端化シリコーンと短鎖ジアミンとの縮合反応により調製される。ポリジオルガノシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)及びポリアミドは、多くの場合、溶解度パラメータが著しく異なるために、高重合度の、特にポリオルガノシロキサンセグメントのより大きな同族体を有するシロキサン系ポリアミドを生成するための反応条件を見出すことは困難となる場合がある。既知のシロキサン系ポリアミドコポリマーの多くは、30個以下のジオルガノシロキシ(例えば、ジメチルシロキシ)単位を有するセグメントのような、ポリジオルガノシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)の比較的短いセグメントを含有するか、又はかかるコポリマー内のポリジオルガノシロキサンセグメントの量が比較的少ない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち、得られたコポリマー中のポリジオルガノシロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)ソフトセグメント部分(すなわち、重量に基づく量)は、少なくなる傾向がある。
【0006】
ポリジオルガノシロキサンポリ尿素は、別の種類のブロックコポリマーである。これらのブロックコポリマーは、多くの望ましい特徴を有するが、そのいくつかは、250℃以上のような高温にさらしたとき、分解する傾向がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
1つの態様では、本開示は、少なくとも2つの式I(I−a及び/又はI−b)の繰り返し単位を含むコポリマーを提供する。
【0008】
【化1】

【0009】
各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;Gは、価数qを有する多価残基であり;Rは、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;各Bは、独立して、共有結合(例えば、式I−bの繰り返し単位)、4〜20個の炭素原子を有するアルキレン、アラルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせであり;nは、独立して、0〜1500の整数であり;pは、1〜10の整数であり;qは、2より大きい整数である。少なくとも2つの式I(I−a及び/又はI−b)の繰り返し単位を有する、1種又はそれ以上のコポリマーを含む組成物及び物品(例えば、フィルム及び/又は複合フィルム)もまた、本明細書に開示される。分枝状コポリマーは、更に、例えば、式Iの繰り返し単位であるが、式中qが2に等しい繰り返し単位のような、異なる繰り返し単位を含むことができる。
【0010】
別の態様では、本開示は、式I(I−a及び/又はI−b)のコポリマーを製造する方法を提供する。方法は、a)式II−aの前駆体と、
【0011】
【化2】

【0012】
b)平均して、式G(NHRを有する1種又はそれ以上のアミン化合物と、を反応条件下で一緒に混合する工程を含む。
【0013】
式中、各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり;Gは、式G(NHRからr個の−NHR基を引いたものに等しい多価残基単位であり;Rは、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;各Bは、独立して、共有結合(例えば、式II−bの前駆体)、4〜20個の炭素を有するアルキレン、アラルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせであり;nは、独立して、0〜1500の整数であり;pは、1〜10の整数であり;rは、2より大きい数である。分枝状コポリマーは、更に、例えば、式Iの繰り返し単位であるが、式中qが2に等しい繰り返し単位のような、異なる繰り返し単位を含むことができる。
【0014】
特定の実施形態では、本開示は、混合物の製造プロセスであって、少なくとも1種の分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分及び少なくとも1種の有機ポリマーを、容器に連続的に供給する工程と;混合物を容器から運ぶ工程と、を含む。
【0015】
特定の実施形態では、混合は、実質的に無溶媒条件下で行われる。
【0016】
特定の実施形態では、本開示は、混合物の製造プロセスであって、少なくとも1種の分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミド及び、反応物成分と反応しない少なくとも1種の有機ポリマーを製造するための反応物成分を連続的に供給する工程と;成分を混合する工程と;反応物成分を反応させて、分枝状ポリジオルガノシロキサンアミドセグメント化コポリマーを形成する工程と;混合物を反応器から運ぶ工程と、を含む。
【0017】
分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマーは、高粘度及び高温(例えば、200℃〜300℃)での熱安定性の組み合わせを示すことができる。高粘度は、例えば、多層フィルムの共押出のような利用でポリマーを加工している間に遭遇する場合のある高温で、レオロジーを制御するために有用であり得る。
【0018】
分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマーは、例えば、封止剤で、接着剤で、繊維用材料として、プラスチック添加剤として、例えば、耐衝撃改質剤又は難燃剤として、消泡剤製剤用材料として、高性能ポリマーとして(熱可塑性、熱可塑性エラストマー、エラストマー)、電子部品用梱包材料として、絶縁材又は遮蔽材で、ケーブルシースで、防汚材で、磨き、洗浄、又は研磨製品用添加剤として、ボディーケア組成物用添加剤として、木材、紙及び板用コーティング材料として、離型剤として、コンタクトレンズのような医療用途での生体適合性材料として、織物繊維又は織布用コーティング材料として、皮革及び毛皮のような天然材料用コーティング材料として、例えば、膜用材料として、光活性系用材料として、例えば、石版印刷技術、光学データ保護又は光学データ伝送を含む多くの用途での使用を着想することができる。
【0019】
定義
用語「含む」及びこの変形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲中に現れる場合、制限する意味を有しない。
【0020】
用語「好ましい」及び「好ましくは」は、特定の状況下で、特定の利点をもたらし得る本発明の実施形態を指す。しかしながら、同様の又は他の状況において、他の実施形態が好まれる場合もある。更に、1つ又はそれ以上の好ましい実施形態の詳細説明は、他の実施形態が有用でないことを示すものではなく、本発明の範囲内から他の実施形態を排除することを意図するものでもない。
【0021】
用語「a」、「an」、及び「the」は、「少なくとも1つの」と互換的に用いられ、記載された要素の1つ又はそれ以上を意味する。
【0022】
本明細書で使用するとき、用語「又は」は、その内容に別段の明確な指示がなされていない場合は、一般に「及び/又は」を含む意味で用いられている。
【0023】
用語「及び/又は」は、1つ若しくは全ての列挙した要素、又は2つ以上の列挙した要素のいずれかの組み合わせを意味する。
【0024】
用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素―炭素二重結合を備えた炭化水素である、アルケンのラジカルである1価の基を意味する。アルケニルは、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には、2〜20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルケニルは、2〜18個、2〜12個、2〜10個、4〜10個、4〜8個、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を含有する。代表的なアルケニル基としては、エテニル、n−プロペニル、及びn−ブテニルが挙げられる。
【0025】
用語「アルキル」とは、飽和炭化水素である、アルカンのラジカルである1価の基を指す。アルキルは、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができ、典型的には、1〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、及びエチルヘキシルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
用語「アルキレン」とは、アルカンのラジカルである、2価の基を指す。アルキレンは、直鎖、分枝状、環状、又はこれらの組み合わせであることができる。アルキレンは、多くの場合、1〜20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレンは、1〜18個、1〜12個、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を含有する。アルキレンのラジカル中心は、同一炭素原子上に(すなわち、アルキリデン)又は異なる炭素原子上にあることができる。
【0027】
用語「アルコキシ」とは、式中、Rがアルキル基である、式−ORの1価の基を意味する。
【0028】
用語「アルコキシカルボニル」とは、式−(CO)ORの1価の基(式中、Rはアルキル基であり、(CO)は、二重結合にて酸素に結合している炭素を有するカルボニル基を意味する)を指す。
【0029】
用語「アラルキル」とは、式−R−Ar(式中、Rはアルキレンであり、Arはアリール基である)の1価の基を指す。すなわち、アラルキルは、アリールで置換されたアルキルである。
【0030】
用語「アラルキレン」とは、式−R−Ar(式中、Rはアルキレンであり、Arはアリーレンである)(すなわち、アルキレンがアリーレンに結合している)の2価の基を指す。
【0031】
用語「アリール」とは、芳香族及び炭素環式である1価の基を指す。アリールは、芳香環に結合又は縮合した1〜5個の環を有することができる。その他の環状構造は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることができる。アリール基の例としては、フェニル、ビフェニル、テルフェニル、アンスリル、ナフチル、アセナフチル、アントラキノニル、フェナンスリル、アントラセニル、ピレニル、ペリレニル、及びフルオレニルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
用語「アリーレン」とは、炭素環式及び芳香族である2価の基を指す。この基は、結合している、縮合している、又はこれらの組み合わせである1〜5個の環を有する。その他の環は、芳香族、非芳香族、又はこれらの組み合わせであることができる。いくつかの実施形態では、アリーレン基は、5個以下の環、4個以下の環、3個以下の環、2個以下の環、又は1個の芳香環を有する。例えば、アリーレン基は、フェニレンであることができる。
【0033】
用語「アリールオキシ」とは、式−OArの1価の基(式中、Arはアリール基である)を指す。
【0034】
用語「カルボニル」とは、式−(CO)−(式中、炭素原子は二重結合にて酸素原子に結合している)の2価の基を指す。
【0035】
用語「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨードを指す。
【0036】
用語「ハロアルキル」とは、ハロで置換された少なくとも1つの水素原子を有するアルキルを意味する。いくつかのハロアルキル基は、フルオロアルキル基、クロロアルキル基、又はブロモアルキル基である。
【0037】
用語「ヘテロアルキレン」とは、チオ、オキシ、又は−NR−(式中、Rはアルキルである)によって結合された、少なくとも2個のアルキレン基を含む2価の基を指す。ヘテロアルキレンは、直鎖、分枝状、環状、又はそれらの組み合わせであることができ、60個以下の炭素原子及び15個以下のヘテロ原子を含むことができる。いくつかの実施形態では、ヘテロアルキレンは、50個以下の炭素原子、40個以下の炭素原子、30個以下の炭素原子、20個以下の炭素原子、又は10個以下の炭素原子を含む。いくつかのヘテロアルキレンは、ポリアルキレンオキシドであり、ここでへテロ原子は酸素である。
【0038】
用語「オキサリル」とは、式−(CO)−(CO)−(式中、各(CO)はカルボニル基を意味する)の2価の基を指す。
【0039】
用語「オキサリルアミノ」及び「アミノオキサリル」は、互換的に用いられ、式−(CO)−(CO)−NH−(式中、各(CO)はカルボニルを意味する)の2価の基を指す。
【0040】
用語「アミノオキサリルアミノ」とは、式−NH−(CO)−(CO)−NR(式中、各(CO)はカルボニル基を意味し、Rは水素若しくはアルキルであるか、又はそれら両方が結合した窒素と一緒になった複素環基の一部である)の2価の基を指す。ほとんどの実施形態では、Rは水素又はアルキルである。多くの実施形態では、Rは水素である。
【0041】
用語「多価」は、2より大きい価数を有する基を指す。
【0042】
用語「ポリマー」及び「ポリマー材料」とは、ホモポリマーのような1種のモノマーから調製した物質、又は、コポリマー、ターポリマー等のような、2種若しくはそれ以上のモノマーから調製した物質の両方を指す。同様に、用語「重合させる」とは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等であり得るポリマー材料の製造プロセスを意味する。用語「コポリマー」及び「共重合材料」とは、少なくとも2種類のモノマーから調製したポリマー材料を指す。
【0043】
用語「ポリジオルガノシロキサン」とは、次式の2価のセグメントを意味し、
【0044】
【化3】

【0045】
式中、各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールであり;各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;下付記号nは、独立して0〜1500の整数である。
【0046】
用語「室温」及び「周囲温度」は、互換的に用いられ、20℃〜25℃の範囲の温度を意味する。
【0047】
特に指示がない限り、明細書及び特許請求の範囲に使用される機構の寸法、量、及び物理的特性を表す全ての数字は、全ての事例において用語「約」により修飾されると理解されたい。したがって、指示がない限り、本明細書の数字は、本明細書で開示される教示を使用する所望の特性に応じて変化し得る近似値である。
【0048】
本発明の上述の「課題を解決するための手段」は、本発明の開示された各実施形態又は全ての実施を記載することを目的としていない。以下の説明により、代表的な実施形態をより具体的に例示する。明細書全体にわたっていくつかの箇所で、実施例の一覧を通して説明を提供するが、実施例は各種組み合わせにて使用することが可能である。いずれの場合にも、記載した一覧は、代表的な群としてのみ役立つものであり、排他的な一覧として解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0049】
分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマー及び当該コポリマーの製造方法を提供する。分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマーは、(a)少なくとも1種のポリアミンを含む1種又はそれ以上のアミン化合物であって、1級又は2級アミノ基を有する1種又はそれ以上のアミン化合物と、(b)少なくとも1つのポリジオルガノシロキサンセグメント及び少なくとも2つのエステル基を有する前駆体と、の縮合反応生成物である。本明細書で使用するとき、用語「分枝状」は、3つ又はそれ以上の鎖セグメントを結合させる分岐点を有するポリマー鎖を指すために使用する。分枝状ポリマーの例としては、時に及び通常、主鎖(名目上分枝状ポリマーと呼ぶ)と同じ繰り返し単位を含む、短分枝を有する長鎖が挙げられる。分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーは、所望により、架橋された網状構造を形成することができる。
【0050】
特定の実施形態では、ブロックコポリマーは、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーである。このような分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマーは、(a)少なくとも1種のポリアミンを含む1種又はそれ以上のアミン化合物であって、1級又は2級アミノ基を有する1種又はそれ以上のアミン化合物と、(b)少なくとも1つのポリジオルガノシロキサンセグメント及び少なくとも2つのオキサリルアミノ基を有する前駆体と、の縮合反応生成物である。
【0051】
分枝状コポリマーは、低ガラス転移温度、熱安定性及び酸化安定性、紫外線耐性、低表面エネルギー及び低疎水性、並びに多くの気体に対する高透過性のような、ポリシロキサンの望ましい特性の多くを有することができる。更に、分枝状コポリマーは、ポリシロキサン及び直鎖ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーと比べて、向上した機械的強度及びエラストマー特性を有することができる。少なくともいくつかの分枝状コポリマーは、所望により透明であるか、低い屈折率を有するか、又はその両方である。
【0052】
ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマー
少なくとも2つの式I−aの繰り返し単位を含む、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーを提供する。
【0053】
【化4】

【0054】
式中、各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールである。各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせである。下付記号nは、独立して0〜1500の整数であり、下付記号pは1〜10の整数である。基Gは価数qを有する多価残基であり、式中qは2より大きい整数である。特定の実施形態では、qは、例えば、3又は4に等しくてよい。基Rは、水素若しくはアルキル(例えば、1〜10、1〜6、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はRは、G及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成する(例えば、RHN−G−NHRはピペラジン等である)。各Bは、独立して、共有結合、4〜20個の炭素を有するアルキレン、アラルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせである。各基Bが共有結合であるとき、式I−aの繰り返し単位を有する分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーは、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーと呼ばれ、好ましくは以下に示す式I−bの繰り返し単位を有する。各アスタリスク()は、繰り返し単位の、例えば式I(I−a又はI−b)の別の繰り返し単位のような、コポリマー内の別の基への結合部位を示す。分枝状コポリマーは、例えば、式Iの繰り返し単位であるが、式中qが2に等しい繰り返し単位のような、異なる繰り返し単位を更に含むことができる。
【0055】
好ましい、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーは、少なくとも2つの式I−bの繰り返し単位を含む。
【0056】
【化5】

【0057】
式中、各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールである。各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせである。下付記号nは、独立して0〜1500の整数であり、下付記号pは1〜10の整数である。基Gは、価数qを有する多価残基であり、式中qは2より大きい整数である。特定の実施形態では、qは、例えば、3又は4に等しくてよい。基Rは、水素若しくはアルキル(例えば、1〜10、1〜6、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)であるか、又はRは、G及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成する(例えば、RHN−G−NHRはピペラジン等である)。各アスタリスク()は、繰り返し単位の、例えば式I(I−a又はI−b)の別の繰り返し単位のような、コポリマー内の別の基への結合部位を示す。
【0058】
式I(I−a又はI−b)のRの好適なアルキル基は、典型的には、1〜10、1〜6、又は1〜4個の炭素原子を有する。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、及びイソブチルが挙げられるが、これらに限定されない。Rのための好適なハロアルキル基は、多くの場合、ハロゲンで置換された、対応するアルキル基の水素原子のほんの一部しか有しない。代表的なハロアルキル基としては、1〜3個のハロ原子及び3〜10個の炭素原子を有するクロロアルキル及びフルオロアルキル基が挙げられる。Rに好適なアルケニル基は、2〜10個の炭素原子を有することが多い。代表的なアルケニル基は、多くの場合、エテニル、n−プロペニル、及びn−ブテニルのような、2〜8個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を有する。Rに好適なアリール基は、6〜12個の炭素原子を有することが多い。フェニルは、代表的なアリール基である。アリール基は、非置換であっても、又は、アルキル(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ)、若しくはハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)によって置換されていてもよい。Rに好適なアラルキル基は、通常1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基及び6〜12個の炭素原子を有するアリール基を有する。いくつかの代表的なアラルキル基においては、アリール基はフェニルであり、アルキレン基は、1〜10個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子(すなわち、アラルキルの構造は、アルキレンがフェニル基に結合しているアルキレン−フェニルである)を有する。
【0059】
式I(I−a又はI−b)のいくつかの繰り返し単位では、全てのR基は、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールのうち1つであることができる(例えば、全てのR基は、メチルのようなアルキル、又はフェニルのようなアリールである)。式IIのいくつかの化合物では、R基は、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、及び、任意の比でアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールからなる群から選択される2種又はそれ以上の混合物である。したがって、例えば、式Iの特定の化合物では、0%、1%、2、%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、又は100%のR基がメチルであることができ;100%、99%、98%、95%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、5%、2%、1%、又は0%のR基がフェニルであることができる。
【0060】
式I(I−a又はI−b)のいくつかの繰り返し単位では、少なくとも50%のR基がメチルである。例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、又は少なくとも99%のR基が、メチルであることができる。残りのR基は、少なくとも2つの炭素原子を有するアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールから選択することができる。
【0061】
式I(I−a又はI−b)の各Yは、独立してアルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせである。好適なアルキレン基は、典型的には、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、又は4個以下の炭素原子を有する。代表的なアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。好適なアラルキレン基は、通常、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6〜12個の炭素原子を有するアリーレン基を有する。いくつかの代表的なアラルキレン基においては、アリーレン部分はフェニレンである。つまり、2価アラルキレン基は、フェニレン−アルキレンであり、ここで、フェニレンは、1〜10個、1〜8個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書で使用するとき、基Yに関して、「これらの組み合わせ」とは、アルキレン基及びアラルキレン基から選択される2つ又はそれ以上の基の組み合わせを意味する。例えば、組み合わせは、単一のアルキレンに結合した単一のアラルキレン(例えば、アルキレン−アリーレン−アルキレン)であることができる。1つの代表的なアルキレン−アリーレン−アルキレンの組み合わせでは、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有する。
【0062】
式I(I−a又はI−b)の各下付記号nは、独立して0〜1500の整数である。例えば、下付記号nは、1000以下、500以下、400以下、300以下、200以下、100以下、80以下、60以下、40以下、20以下又は10以下の整数であることができる。nの値は、少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも40であることが多い。例えば、下付記号nは、40〜1500、0〜1000、40〜1000、0〜500、1〜500、40〜500、1〜400、1〜300、1〜200、1〜100、1〜80、1〜40又は1〜20の範囲であることができる。
【0063】
下付記号pは1〜10の整数である。例えば、pの値は、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下又は2以下の整数であることが多い。pの値は、1〜8、1〜6、又は1〜4の範囲であることができる。
【0064】
式I(I−a又はI−b)の基Gは、式G(NHRの1種又はそれ以上のアミン化合物から、q個のアミノ基(すなわち、−NHR基)を引いたものに等しい残基単位であり、式中qは2より大きい整数である。上記のように、分枝状コポリマーは、例えば式Iの繰り返し単位であるが、式中qは2に等しい繰り返し単位のような、異なる繰り返し単位を更に含むことができる。1種又はそれ以上のアミン化合物は、1級及び/又は2級アミノ基を有することができる。基Rは、水素若しくはアルキル(例えば、1〜10、1〜6、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)であるか又はRは、G及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成する(例えば、RHN−G−NHRはピペラジンである)。大部分の実施形態では、Rは水素又はアルキルである。多くの実施形態では、1種又はそれ以上のアミン化合物の全てのアミノ基は、1級アミノ基(すなわち、全てのR基が水素である)であり、1種又はそれ以上のアミン化合物は、式G(NHである。
【0065】
特定の実施形態では、1種又はそれ以上のアミン化合物は、(i)式RHN−G−NHRのジアミン化合物と、(ii)式G(NHR(式中qは2より大きい整数である)のポリアミン化合物と、の混合物である。このような実施形態では、式G(NHRのポリアミン化合物は、トリアミン化合物(すなわち、q=3)、テトラアミン化合物(すなわち、q=4)及びこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されない。このような実施形態では、ジアミン(i)の当量当たりのポリアミン(ii)の当量の数は、好ましくは少なくとも0.001、より好ましくは少なくとも0.005、最も好ましくは少なくとも0.01である。このような実施形態では、ジアミン(i)の当量当たりのポリアミン(ii)の当量の数は、好ましくは最大3、より好ましくは最大2、最も好ましくは最大1である。
【0066】
Gが(i)式RHN−G−NHRのジアミン化合物から2つのアミノ基(すなわち、−NHR基)を引いたものに等しい残基単位を含むとき、Gは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであることができる。好適なアルキレンは、2〜10個、2〜6個、又は2〜4個の炭素原子を有することが多い。代表的なアルキレン基としては、エチレン、プロピレン、ブチレン等が挙げられる。好適なヘテロアルキレンは、少なくとも2つのエチレン単位を有するポリオキシエチレン、少なくとも2つのプロピレン単位を有するポリオキシプロピレン、又はこれらのコポリマーのような、ポリオキシアルキレンであることが多い。好適なポリジオルガノシロキサンとしては、式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミン(以下に記載する)から2つのアミノ基を引いたものが挙げられる。代表的なポリジオルガノシロキサンとしては、アルキレンY基を有するポリジメチルシロキサンが挙げられるが、これらに限定されない。好適なアラルキレン基は、通常、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基に結合した、6〜12個の炭素原子を有するアリーレン基を含有する。いくつかの代表的なアラルキレン基は、フェニレン−アルキレンであり、ここで、フェニレンは、1〜10個の炭素原子、1〜8個の炭素原子、1〜6個の炭素原子、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキレンに結合している。本明細書で使用するとき、基Gに関して「これらの組み合わせ」とは、アルキレン、ヘテロアルキレン、ポリジオルガノシロキサン、アリーレン、及びアラルキレンから選択される2つ又はそれ以上の基の組み合わせを指す。組み合わせは、例えば、アルキレンに結合したアラルキレン(例えば、アルキレン−アリーレン−アルキレン)であることができる。1つの代表的なアルキレン−アリーレン−アルキレンの組み合わせでは、アリーレンはフェニレンであり、各アルキレンは、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有する。
【0067】
好ましい実施形態では、ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドである。分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、式−R−(CO)−NH−(式中、Rはアルキレンである)を有する基を含まない傾向がある。共重合性材料の主鎖に沿った全てのカルボニルアミノ基は、オキサリルアミノ基(すなわち、−(CO)−(CO)−NH−基)の一部である。すなわち、共重合材料の主鎖に沿った任意のカルボニル基は、別のカルボニル基に結合し、オキサリル基の一部である。より具体的には、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドは、複数のアミノキサリルアミノ基を有する。
【0068】
ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、分枝状、ブロックコポリマーであり、エラストマー材料であることができる。脆性固体又は硬質プラスチックとして一般に配合される、既知のポリジオルガノシロキサンポリアミドの多くとは異なり、ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、コポリマーの重量に基づいて、50重量%超のポリジオルガノシロキサンセグメントを含むように配合することができる。ポリジオルガノシロキサンポリアミド中のジオルガノシロキサンの重量パーセントは、より高分子量のポリジオルガノシロキサンセグメントを使用することによって増大させることができ、60重量パーセント超、70重量パーセント超、80重量パーセント超、90重量パーセント超、95重量パーセント超、又は98重量パーセント超の、ポリジオルガノシロキサンポリアミド中のポリジオルガノシロキサンセグメントを提供することができる。より多量のポリジオルガノシロキサンを使用して、妥当な強度を維持しつつ、より低弾性率のエラストマー材料を調製することができる。
【0069】
ポリジオルガノシロキサンポリアミドのいくつかは、材料を顕著に分解させることなく、200℃以下、225℃以下、250℃以下、275℃以下、又は300℃以下の温度に加熱することができる。例えば、空気の存在下で、熱重量分析器内で加熱したとき、コポリマーは、多くの場合、毎分50℃の速度にて、20℃〜350℃の範囲内でスキャンしたとき、10%未満の重量を喪失する。更に、コポリマーは、多くの場合、冷却時に、検出できるほど機械的強度が低下しないことよって決定されるとき、明らかに分解することなく、空気中にて1時間、250℃のような温度で加熱することができる。
【0070】
式I(I−a又はI−b)の繰り返し単位を有する共重合性材料は、光学的に透明であることができる。本明細書で使用するとき、用語「光学的に透明」とは、人間の目に透明に見える材料を意味する。光学的に透明な共重合材料は、多くの場合、少なくとも90%の視感透過率、2%未満の曇り度、及び400nm〜700nmの波長帯で1%未満の不透明度を有する。視感透過率及び曇り度は両方、例えば、ASTM−D 1003−95の方法を使用して決定することができる。
【0071】
更に、式I(I−a又はI−b)の繰り返し単位を有する共重合性材料は、低い屈折率を有することができる。本明細書で使用するとき、用語「屈折率」とは、材料(例えば、共重合性材料)の絶対屈折率を意味し、自由空間内での電磁放射線速度の、関心材料中での電磁放射線速度に対する比である。電磁放射線は、白色光である。屈折率は、例えばフィッシャー・インストルメンツ(Fischer Instruments)(ペンシルベニア州ピッツバーグ(Pittsburgh))から市販されているアッベ(Abbe)の屈折計を使用して測定される。屈折率の測定は、ある程度、使用する具体的な屈折計に依存する場合がある。いくつかの実施形態(例えば、コポリマーがポリジメチルシロキサンセグメントを含む実施形態)では、共重合性材料は1.41〜1.50の範囲の屈折率を有することができる。いくつかの他の実施形態(例えば、コポリマーがポリフェニルシロキサン、又はポリジフェニルシロキサンセグメントを含む実施形態)では、共重合性材料は、1.46〜1.55の範囲の屈折率を有することができる。
【0072】
ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマーの製造方法
式I−a又はI−bの繰り返し単位を有する分枝状ブロックコポリマーは、例えば、それぞれ反応スキームA−1及びA−2で表されるように、調製できる。
【0073】
【化6】

【0074】
【化7】

【0075】
この反応スキームでは、式II(II−a又はII−b)の前駆体を、反応条件下で、1級及び/又は2級アミン基を有し、式G(NHR(式中qは2より大きい整数である)を有する、1種又はそれ以上のアミン化合物と組み合わせる。所望により、1種又はそれ以上のアミン化合物及び追加のアミン化合物が、平均して式G(NHR(式中、rは2より大きい数である)を有するように、追加のアミン化合物(例えば、ジアミン)を組み合わせることもできる。例えば、rは2.001、2.002、2.005、2.01、2.1、2.5、3のような数、又は更に大きな数であることができる。基Rは、水素若しくはアルキル(例えば、1〜10、1〜6、又は1〜4個の炭素原子を有するアルキル)であるか又はRは、G及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基(例えば、RHN−G−NHRはピペラジンである)を形成する。ほとんどの実施形態では、Rは水素又はアルキルである。多くの実施形態では、1種又はそれ以上のアミン化合物の全てのアミノ基は、1級アミノ基(すなわち、全てのR基は水素である)であり、1種又はそれ以上のアミン化合物は、式G(NHである。ROH副生成物は、典型的には、得られたポリジオルガノシロキサンポリアミドから除去される。
【0076】
特定の実施形態では、1種又はそれ以上のアミン化合物及び任意の追加のアミン化合物は、(i)式RHN−G−NHRのジアミン化合物と、(ii)式G(NHR(式中qは2より大きい整数である)のポリアミン化合物と、の混合物である。このような実施形態では、式G(NHRのポリアミン化合物は、トリアミン化合物(すなわち、q=3)、テトラアミン化合物(すなわち、q=4)及びこれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されない。このような実施形態では、ジアミン(i)の当量当たりのポリアミン(ii)の当量の数は、好ましくは少なくとも0.001、より好ましくは少なくとも0.005、最も好ましくは少なくとも0.01である。このような実施形態では、ジアミン(i)の当量当たりのポリアミン(ii)の当量の数は、好ましくは最大3、より好ましくは最大2、最も好ましくは最大1である。
【0077】
代表的なトリアミンとしては、トリス(2−アミノエチル)アミン、ジエチレントリアミン、例えば、ハンツマン(Huntsman)(ウッドランズ(The Woodlands)、テキサス州)から、商品名ジェファミン(JEFFAMINE)T−3000(すなわち、3000g/モルの平均分子量を有するポリオキシプロピレントリアミン(polyoxypropropylene triamine))及びジェファミンT−5000(すなわち、5000g/モルの平均分子量を有するポリオキシプロピレントリアミン(polyoxypropropylene triamine))として入手可能であるもののような、ポリオキシアルキレントリアミン、アミノ官能性ポリシロキサン、並びにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なテトラアミンとしては、トリエチレンテトラアミンが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な、アミノ官能基を有するポリジメチルシロキサンとしては、例えば、ジェレスト社(モリスビル(Morrisville)、ペンシルバニア州)から商品名AMS−132、AMS−152及びAMS−162として入手可能なもののような、アミノプロピルメチルシロキサン単位を有するポリジメチルシロキサンコポリマーが挙げられる。
【0078】
1種又はそれ以上のアミン化合物が、ジアミンを含む混合物中に存在するとき、ジアミンは時に、有機ジアミン又は、例えば、アルキレンジアミン、ヘテロアルキレンジアミン、アリーレンジアミン、アラルキレンジアミン、若しくはアルキレン−アラルキレンジアミンから選択されるものを含む有機ジアミンを有するポリジオルガノシロキサンジアミンとして分類される。式II(II−a又はII−b)の前駆体とは反応しない3級アミンが存在する場合もある。更に、ジアミンは、いかなるカルボニルアミノ基も有しない。つまり、ジアミンはアミドではない。
【0079】
代表的なポリオキシアルキレンジアミン(すなわち、Gが、酸素であるへテロ原子を有するヘテロアルキレンである)としては、ハンツマン社(Huntsman)(ウッドランズ(The Woodlands)、テキサス州)から、商品名ジェファミン(JEFFAMINE)D−230(すなわち、230g/モルの平均分子量を有するポリオキシプロプロピレン(polyoxypropropylene)ジアミン)、ジェファミンD−400(すなわち、400g/モルの平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、ジェファミンD−2000(すなわち、2,000g/モルの平均分子量を有するポリオキシプロピレンジアミン)、ジェファミンHK−511(すなわち、オキシエチレン基とオキシプロピレン基の両方を備え、220g/モルの平均分子量を有するポリエーテルジアミン)、ジェファミンED−2003(すなわち、ポリプロピレンオキシドで末端保護した、2,000g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコール)、及びジェファミンEDR−148(すなわち、トリエチレングリコールジアミン)として市販されているものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
代表的なアルキレンジアミン(すなわち、Gがアルキレンである)としては、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレン−1,5−ジアミン(すなわち、デュポン社(Dupont)(ウィルミントン(Wilmington)、デラウェア州)からダイテック(DYTEK)Aの商品名で市販されている)、1,3−ペンタンジアミン(デュポン社からダイテックEPの商品名で市販されている)、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン(デュポン社からDHC−99の商品名で市販されている)、4,4’−ビス(アミノシクロヘキシル)メタン、及び3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
代表的なアリーレンジアミン(すなわち、Gがフェニレンのようなアリーレンである)としては、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、及びp−フェニレンジアミンが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアラルキレンジアミン(すなわち、Gがアルキレン−フェニルのようなアラルキレンである)としては、4−アミノメチル−フェニルアミン、3−アミノメチル−フェニルアミン、及び2−アミノメチル−フェニルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なアルキレン−アラルキレンジアミン(すなわち、Gがアルキレン−フェニレン−アルキレンのようなアルキレン−アラルキレンである)としては、4−アミノメチル−ベンジルアミン、3−アミノメチル−ベンジルアミン、及び2−アミノメチル−ベンジルアミンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
反応スキームA−1及びA−2における式II−a及びII−bの前駆体は、それぞれ、少なくとも1つのポリジオルガノシロキサンセグメント及び少なくとも2つのアミド基(例えば、オキサリルアミノ基)を有する。基R、基Y、下付記号n、及び下付記号pは、式I(I−a又はI−b)で記載したものと同じである。各基Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールである。式II(II−a又はII−b)の前駆体は、単一化合物を含むことができる(すなわち、化合物の全てがp及びnについて同一の値を有する)、又は複数の化合物を含むことができる(すなわち、化合物がpについて異なる値、nについて異なる値、又はp及びnの両方について異なる値を有する)。異なるn値を持つ前駆体は、異なる長さのシロキサン鎖を有する。少なくとも2のp値を有する前駆体は、鎖が延長されている。
【0083】
いくつかの実施形態では、前駆体は、下付記号pが1に等しい式II(II−a及び/又はII−b)の第1化合物と、下付記号pが少なくとも2に等しい式II(II−a及び/又はII−b)の第2化合物との混合物である。第1化合物は、異なるn値を有する複数の異なる化合物を含むことができる。第2化合物は、異なるp値、異なるn値、又はp及びnの両方について異なる値を有する、複数の化合物を含むことができる。混合物は、混合物中の第1及び第2化合物の重量の合計に基づいて、少なくとも50重量パーセントの、式II(II−a又はII−b)の第1化合物(すなわち、pが1に等しい)及び50重量パーセント以下の、式II(II−a又はII−b)の第2化合物(すなわち、pは少なくとも2に等しい)を含むことができる。いくつかの混合物では、第1化合物は、式IIの化合物の総量を基準にして、少なくとも55重量パーセント、少なくとも60重量パーセント、少なくとも65重量パーセント、少なくとも70重量パーセント、少なくとも75重量パーセント、少なくとも80重量パーセント、少なくとも85重量パーセント、少なくとも90重量パーセント、少なくとも95重量パーセント、又は少なくとも98重量パーセントの量で存在する。混合物は、多くの場合、50重量パーセント以下、45重量パーセント以下、40重量パーセント以下、35重量パーセント以下、30重量パーセント以下、25重量パーセント以下、20重量パーセント以下、15重量パーセント以下、10重量パーセント以下、5重量パーセント以下、又は2重量パーセント以下の第2化合物を含有する。
【0084】
混合物中の様々な量の式II(II−a又はII−b)の鎖が延長された前駆体は、式I(I−a又はI−b)の繰り返し単位を有するエラストマー材料の最終特性に影響を与える場合がある。すなわち、式II(IIa又はIIb)の第2化合物(すなわち、pは少なくとも2に等しい)の量は、種々の性質を有するエラストマー材料を提供するために、有利に変えることができる。例えば、式II(IIa又はIIb)の第2化合物の量をより多くすると、溶融レオロジーを変化させる(例えば、溶融物として存在するときにエラストマー材料をより容易に流動させることができる)、エラストマー材料の柔軟性を変化させる、エラストマー材料の弾性率を低下させる、又はこれらの組み合わせを実現することができる。
【0085】
反応スキームA−1及びA−2は、それぞれ式II−a及びII−bの複数の前駆体、複数のアミン化合物、又はこれらの組み合わせを用いて実施することができる。異なる平均分子量を有する複数の前駆体を、反応条件下で、単一のアミン化合物又はアミン化合物の混合物(例えば、1種又はそれ以上のポリアミン及び所望により1種又はそれ以上のジアミン)と組み合わせることができる。例えば、式II(IIa又はIIb)の前駆体は、異なるn値、異なるp値、又はp及びnの両方について異なる値を有する、物質の混合物を含んでもよい。複数のアミン化合物には、例えば、有機ポリアミンである第1ポリアミン及びポリジオルガノシロキサンジアミンのような第2アミン化合物を挙げることができる。同様に、単一の前駆体を、反応条件下で複数のアミン化合物と組み合わせることができる。
【0086】
式II(II−a又はII−b)の、1つ又はそれ以上のアミン化合物に対するモル比は、1:1であることが多い。例えば、モル比は、1:0.80以下、1:0.85以下、1:0.90以下、1:0.95以下、又は1:1以下であることが多い。モル比は、1:1.05以上、1:1.10以上、1:1.15以上であることが多い。例えば、モル比は、1:0.80〜1:1.20の範囲、1:0.80〜1.15の範囲、1:0.80〜1:1.10の範囲、1:0.80〜1:1.05の範囲、1:0.90〜1:1.10の範囲、又は1:0.95〜1:1.05の範囲であることができる。あるいは、式IIの前駆体の、1つ又はそれ以上のアミン化合物に対するモル比は、1:1.20未満又は1:0.80超であることができる。例えば、それは、1:0.50、1:0.55、1:0.60、1:0.65、1:0.70、若しくは1:0.75である、又は1:1.25、1:1.30、若しくは1:1.35であることができる。例えば、モル比は、1:1.20未満、1:2.00以上の範囲であることができる。あるいは、モル比は、1:0.80超、1.05以下の範囲であることができる。例えば、変動するモル比を用いて、全体的な分子量を変化させることができ、これは得られるコポリマーのレオロジーに影響を与えることができる。更に、変動するモル比を用いて、反応物がモル過剰で存在するかどうかに応じて、アミド含有末端基(例えば、オキサリルアミノ含有末端基)又はアミノ末端基を提供することができる。
【0087】
式II(II−a又はII−b)の前駆体と、1つ又はそれ以上のアミン化合物との縮合反応(すなわち、それぞれ反応スキームA−1又はA−2)は、室温又は250℃以下の温度のような高温で実施されることが多い。例えば、この反応は、多くの場合、室温又は100℃以下の温度で実施することができる。他の実施例では、反応は、少なくとも100℃、少なくとも120℃、又は少なくとも150℃の温度で実施することができる。例えば、反応温度は多くの場合、100℃〜220℃の範囲内、120℃〜220℃の範囲内、又は150℃〜200℃の範囲内である。かかる縮合反応は多くの場合、1時間未満、2時間未満、4時間未満、8時間未満、又は12時間未満で完了する。
【0088】
反応スキームA−1又はA−2は、溶媒の存在下又は非存在下で起こることができる。好適な溶媒は通常、反応のいかなる反応物又は生成物とも反応しない。更に、好適な溶媒は通常、溶液中の全ての反応物及び全ての生成物を重合プロセス中ずっと維持することができる。代表的な溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンのようなアルカン)又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0089】
存在するあらゆる溶媒は、反応終了時に、得られたポリジオルガノシロキサンポリアミドから除去することができる。アルコール副生成物を除去するために使用されるのと同一条件下で除去できる溶媒が、多くの場合、好ましい。除去プロセスは、多くの場合、少なくとも100℃、少なくとも125℃、又は少なくとも150℃の温度で実施される。除去プロセスは典型的には、300℃未満、250℃未満、又は225℃未満の温度で行われる。
【0090】
揮発性副生成物ROHのみを反応終了時に除去する必要があるため、反応スキームA−1又はA−2を溶媒の非存在下で実施することが望ましい場合がある。更に、反応物及び生成物の両方と適合性がない溶媒では、反応が完了せず、重合度が低い。
【0091】
任意の好適な反応器又はプロセスを用いて、反応スキームA−1又はA−2に従って共重合性材料を調製することができる。反応は、バッチプロセス、セミバッチプロセス、又は連続プロセスを用いて実施できる。代表的なバッチプロセスは、ブラベンダー(Brabender)ミキサーのような機械的撹拌機を備えた反応容器内で実施することができるが、但し、溶融状態にある反応生成物は、反応器から排出するのに十分低い粘度を有する。代表的なセミバッチプロセスは、連続攪拌しているチューブ、タンク、又は流動床内で実施することができる。代表的な連続プロセスは、1軸又は、吐出表面(wiped surface)逆回転若しくは共回転2軸押し出し機のような2軸押し出し機内にて実施することができる。
【0092】
多くのプロセスでは、成分を計量し、次いで共に混合して、反応混合物を形成する。成分は、例えばギア、ピストン又はプログレッシング・キャビティポンプ(progressing cavity pump)を使用して、体積測定的又は重力測定的に計量することができる。成分は、例えば、静的ミキサーのような、任意の既知の静的若しくは動的な方法、又は1軸若しくは多軸押し出し機のような配合ミキサーを使用して混合することができる。次に、反応混合物は、形成する、注ぐ、ポンピングする、コーティングする、射出成形する、噴霧する、スパッタリングする、霧化する、より線にする又はシート化する、及び部分的に又は完全に重合することができる。次に、部分的に又は完全に重合した材料は、固体ポリマーへの変換前に、所望により、粒子、液滴、ペレット、球体、ストランド、リボン、ロッド、チューブ、フィルム、シート、共押出フィルム、ウェブ、不織布、マイクロ複写構造体、又は他の連続的な若しくは分離性の形状に変換することができる。これらの工程はいずれも、熱を適用して又は熱を適用しないで実施することができる。1つの代表的なプロセスでは、成分は、重合材料を固化する前に、ギアポンプを使用して計量し、静的ミキサーを使用して混合し、及び型へ射出することができる。
【0093】
反応スキームA−2における式II−bのポリジオルガノシロキサン含有前駆体は、任意の既知の方法により調製することができる。いくつかの実施形態では、この前駆体は、反応スキームBに従って調製される。
【0094】
【化8】

【0095】
式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミン(pモル)をモル過剰の式IVのオキサレート(p+1モル以上)と、不活性雰囲気下にて反応させて、式IIのポリジオルガノシロキサン含有前駆体及びR−OH副生成物を製造する。この反応では、R、Y、n及びpは、式I(I−a又はI−b)で既に記載したものと同じである。式IV中の各基Rは、独立してアルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールである。反応スキームBによる式IIの前駆体の調製は、米国特許公開第2007−0149745号(レイア(Leir)ら)に更に記載されている。
【0096】
反応スキームBにおける式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンは、任意の既知の方法により調製することができ、かつ、例えば700〜150,000グラム/モルの範囲の平均分子量のような、任意の好適な分子量を有することができる。好適なポリジオルガノシロキサンジアミン及びポリジオルガノシロキサンジアミンの製造方法については、例えば、米国特許第3,890,269号(マーチン(Martin))、同第4,661,577号(ジョー・レーン(Jo Lane)ら)、同第5,026,890号(ウェッブ(Webb)ら)、同第5,276,122号(アオキ(Aoki)ら)、同第5,214,119号(レイア(Leir)ら)、同第5,461,134号(レイア(Leir)ら)、同第5,512,650号(レイア(Leir)ら)、及び同第6,355,759号(シャーマン(Sherman)ら)に記載されている。いくつかのポリジオルガノシロキサンジアミンは、例えば信越シリコーン・アメリカ社(トーランス(Torrance)、カルフォルニア州)及びジェレスト社(Gelest Inc.)(モリスビル(Morrisville)ペンシルベニア州)から市販されている。
【0097】
2,000グラム/モル以上又は5,000グラム/モルより大きい分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンは、米国特許第5,214,119号(レイア(Leir)ら)、同第5,461,134号(レイア(Leir)ら)、及び同第5,512,650号(レイア(Leir)ら)に記載の方法を使用して調製できる。記載した方法の1つは、反応条件下及び不活性雰囲気下にて、(a)以下の式のアミン官能性末端ブロック剤
【0098】
【化9】

【0099】
(式中、Y及びRは、式I(I−a又はI−b)について定義したものと同一である)と、(b)アミン官能性末端ブロック剤と反応して、2,000グラム/モル未満の分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンを形成するのに十分な環状シロキサンと、(c)以下の式の無水アミノアルキルシラノレート触媒
【0100】
【化10】

【0101】
(式中、Y及びRは、式I(I−a又はI−b)で定義したものと同一であり、Mは、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン、ルビジウムイオン、又はテトラメチルアンモニウムイオンである)と、を組み合わせることを含む。実質的に全てのアミン官能性末端ブロック剤が消費されるまで、反応を継続し、次いで、追加の環状シロキサンを添加して、分子量を増大させる。追加の環状シロキサンは多くの場合、ゆっくりと添加する(例えば、滴下)。多くの場合、反応温度は80℃〜90℃の範囲内、反応時間は5〜7時間で実施される。得られたポリジオルガノシロキサンジアミンは、高純度であることができる(例えば、2重量パーセント未満、1.5重量パーセント未満、1重量パーセント未満、0.5重量パーセント未満、0.1重量パーセント未満、0.05重量パーセント未満、又は0.01重量パーセント未満のシラノール不純物)。アミン官能性末端ブロック剤の、環状シロキサンに対する比を変更することによって、得られる式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンの分子量を変えることができる。
【0102】
式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンを調製する別の方法には、反応条件下及び不活性環境下にて、(a)以下の式のアミン官能性末端ブロック剤
【0103】
【化11】

【0104】
(式中、R及びYは、式I(I−a又はI−b)について記載したものと同一であり、下付記号xは、1〜150の整数に等しい)と、(b)アミン官能性末端ブロック剤の平均分子量より大きい平均分子量を有するポリジオルガノシロキサンジアミンを得るのに十分な環状シロキサンと、(c)水酸化セシウム、セシウムシラノレート、ルビジウムシラノレート、セシウムポリシロキサノレート、ルビジウムポリシロキサノレート、及びこれらの混合物から選択される触媒と、を組み合わせることが挙げられる。実質的に全てのアミン官能性末端ブロック剤が消費されるまで、反応を継続する。この方法は更に、米国特許第6,355,759(B1)号(シャーマン(Sherman)ら)に記載されている。この手順を使用して、任意の分子量のポリジオルガノシロキサンジアミンを調製することができる。
【0105】
式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンを調製する更に別の方法は、米国特許第6,531,620(B2)号(ブレーダー(Brader)ら)に記載されている。本方法では、以下の反応に示すように、環状シラザンは、ヒドロキシ末端基を有するシロキサン材料と反応する。
【0106】
【化12】

【0107】
基R及びYは、式I(I−a又はI−b)で記載したものと同一である。下付記号mは、1より大きい整数である。
【0108】
ポリジオルガノシロキサンジアミンの例としては、ポリジメチルシロキサンジアミン、ポリジフェニルシロキサンジアミン、ポリトリフルオロプロピルメチルシロキサンジアミン、ポリフェニルメチルシロキサンジアミン、ポリジエチルシロキサンジアミン、ポリジビニルシロキサンジアミン、ポリビニルメチルシロキサンジアミン、ポリ(5−ヘキセニル)メチルシロキサンジアミン、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0109】
反応スキームBでは、式IVのオキサレートは、不活性雰囲気下にて、式IIIの前記ポリジオルガノシロキサンジアミンと反応する。式IVのオキサレート中の2つのR基は、同一であっても、異なっていてもよい。いくつかの方法では、2つのR基は異なり、反応スキームBにおける式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンとの異なる反応性を有する。
【0110】
基Rは、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであることができる。Rのための好適なアルキル基及びハロアルキル基は、多くの場合、1〜10個、1〜6個、又は1〜4個の炭素原子を有する。3級アルキル(例えば、tert−ブチル)及びハロアルキル基を使用することができるが、多くの場合、隣接するオキシ基に直接結合した(すなわち、付着した)、1級又は2級炭素原子が存在する。代表的なアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソ−プロピル、n−ブチル、及びイソ−ブチルが挙げられる。代表的なハロアルキル基としては、対応するアルキル基上の水素原子のいくつか(全てではない)が、ハロ原子で置換されている、クロロアルキル基及びフルオロアルキル基が挙げられる。例えば、クロロアルキル基又はフルオロアルキル基は、クロロメチル、2−クロロエチル、2,2,2−トリクロロエチル、3−クロロプロピル、4−クロロブチル、フルオロメチル、2−フルオロエチル、2,2,2−トリフルオロエチル、3−フルオロプロピル、4−フルオロブチル等であることができる。Rのための好適なアリール基としては、例えばフェニルのような、6〜12個の炭素原子を有するものが挙げられる。アリール基は、非置換であるか、又はアルキル(例えば、メチル、エチル、又はn−プロピルのような、1〜4個の炭素原子を有するアルキル)、アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシ、又はプロポキシのような、1〜4個の炭素原子を有するアルコキシ)、ハロ(例えば、クロロ、ブロモ、又はフルオロ)、若しくはアルコキシカルボニル(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、又はプロポキシカルボニルのような、2〜5個の炭素原子を有するアルコキシカルボニル)で置換されていてもよい。
【0111】
反応スキームBにおける式IVのオキサレートは、例えば式R−OHのアルコールをオキサリルジクロリドと反応させることにより調製できる。式IVの市販のオキサレート(例えば、シグマ−アルドリッチ(ミルウォーキー(Milwaukee)、ウィスコンシン州)及びVMR・インターナショナル(VWR International)(ブリストル(Bristol)コネチカット州)製)としては、ジメチルオキサレート、ジエチルオキサレート、ジ−n−ブチルオキサレート、ジ−tert−ブチル−オキサレート、ビス(フェニル)オキサレート、ビス(ペンタフルオロフェニル)オキサレート、1−(2,6−ジフルオロフェニル)−2−(2,3,4,5,6−ペンタクロロフェニル)オキサレート、及びビス(2,4,6−トリクロロフェニル)オキサレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
モル過剰のオキサレートが、反応スキームBにて使用される。すなわち、オキサレートのポリジオルガノシロキサンジアミンに対するモル比は、化学量論的モル比、(p+1):1より大きい。モル比は、2:1超、3:1超、4:1超、又は6:1超であることが多い。縮合反応は、典型的には、不活性雰囲気下及び室温で、成分の混合時に起こる。
【0113】
式IIの前駆体を生成するために使用される縮合反応(すなわち、反応スキームB)は、溶媒の存在下又は不存在下にて起こることができる。いくつかの方法では、反応混合物中には、溶媒が含まれないか又は少量の溶媒のみが含まれる。他の方法では、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、又は脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンのようなアルカン)のような溶媒を含んでもよい。
【0114】
反応スキームA内のジアミンとの反応前に、過剰なオキサレートを式IIの前駆体から除去することによって、光学的に透明なポリジオルガノシロキサンポリアミドを良好に形成できる傾向がある。過剰なオキサレートは、典型的には、除去プロセスを使用して前駆体から除去できる。例えば、反応済み混合物(すなわち、反応スキームBによる縮合反応の生成物)は、150℃以下、175℃以下、200℃以下、225℃以下、又は250℃以下の温度まで加熱して、過剰なオキサレートを揮発させることができる。真空引きを行って、過剰なオキサレートの除去に必要な温度を下げることができる。式IIの前駆体化合物は、200℃〜250℃以上の範囲の温度にて、ごく僅かしか分解しないか又は明らかな分解を示さない傾向がある。過剰なオキサレートを除去する任意の他の既知の方法を使用できる。
【0115】
反応スキームBに示す縮合反応の副生成物は、アルコールである(すなわち、R−OHはアルコールである)。基Rは、多くの場合、250℃以下の温度で加熱することにより、容易に除去(例えば、蒸発)することができるアルコールを形成する、1〜4個の炭素原子を有するアルキル、1〜4個の炭素原子を有するハロアルキル、又はフェニルのようなアリールに限定される。反応済み混合物を、式IVの過剰なオキサレートを除去するのに十分な温度まで加熱したとき、このようなアルコールを除去することができる。
【0116】
組成物及び構造物
分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマーを、熱溶融加工可能な熱可塑性ポリマー(エラストマー性であるか又は非エラストマー性であってよい)、熱溶融加工可能なエラストマー性熱硬化性ポリマー、シリコーンポリマー及びこれらの混合物のような、1種又はそれ以上の他のポリマー(例えば、有機ポリマー成分)とブレンドすることができる。有機ポリマーは溶媒であってもよく、又は分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドセグメント化コポリマーと溶融混合してもよい。有機ポリマーは、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分、又はポリジオルガノシロキサンセグメントを含まないポリマーであってよい。
【0117】
好適なポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分の例としては、直鎖ポリジオルガノシロキサンポリアミドコポリマーが挙げられる。代表的な共重合性材料は、少なくとも2つの式V−aの繰り返し単位を含む。
【0118】
【化13】

【0119】
式中、各Rは、独立してアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールである。各Yは、独立してアルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせである。下付記号nは、独立して0〜1500の整数であり、下付記号pは、1〜10の整数である。基Gは、式RHN−G−NHRのジアミンから2つの−NHR基(すなわち、アミノ基)を引いたものに等しい残基単位である2価の基である。基Rは、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれら両方が結合している窒素と共に複素環基を形成する。各Bは、独立して、共有結合、4〜20個の炭素のアルキレン、アラルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせである。各アスタリスクは、繰り返し単位の、別の繰り返し単位のような別の基への結合位置を示す。
【0120】
好ましい共重合性材料は、少なくとも2つの式V−bの繰り返し単位を含む。
【0121】
【化14】

【0122】
式中、各Rは、独立してアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、若しくはハロで置換されたアリールである。各Yは、独立してアルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせである。下付記号nは、独立して0〜1500の整数であり、下付記号pは、1〜10の整数である。基Gは、式RHN−G−NHRのジアミンから2つの−NHR基(すなわち、アミノ基)を引いたものに等しい残基単位である2価の基である。基Rは、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれら両方が結合している窒素と共に複素環基を形成する。各アスタリスクは、繰り返し単位の、別の繰り返し単位のような別の基への結合位置を示す。
【0123】
一般に非エラストマー性であると考えられる、本発明で有用な熱可塑性材料としては、例えば、アイソタクチックポリプロピレンのようなポリオレフィン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリブチレン、エチレン/プロピレンコポリマーのような非エラストマー性ポリオレフィンコポリマー又はターポリマー及びこれらのブレンド;デュポン・ケミカル社(DuPont Chemical Co.)から商品名「エルバックス(ELVAX)260」として入手可能なもののようなエチレン−ビニルアセテートコポリマー;エチレンアクリル酸コポリマー;デュポン・ケミカル社(DuPont Chemical Co.)から商品名「サルリン(SURLYN)1702」として入手可能なもののようなエチレンメタクリル酸コポリマー;ポリメチルメタクリレート;ポリスチレン;エチレンビニルアルコール;ポリエステル;非晶質ポリエステル;ポリアミド;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化エチレン/プロピレンコポリマー及びフッ化エチレン/プロピレンコポリマーのようなフッ素化熱可塑性プラスチック;塩素化ポリエチレンのようなハロゲン化熱可塑性材料が挙げられる。任意の単一熱可塑性材料を、少なくとも1種の分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分と混合することができる。あるいは、熱可塑性材料の混合物を用いてもよい。
【0124】
エラストマー特性を有する熱可塑性材料は、典型的には、熱可塑性エラストマー材料と呼ばれる。熱可塑性エラストマー材料は、一般に、その軟化点を超えて加熱したときに流動するが、高い弾性及び低いクリープ(creep)を示し、共有結合的に架橋されているかのように作用する材料として定義される。本発明で有用な熱可塑性エラストマー材料としては、例えば、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)(ヒューストン(Houston)、テキサス州)から商品名「クラトン(KRATON)D1107P」として入手可能なもの及び、エニケム・エラストマーズ・アメリカ社(EniChem Elastomers Americas, Inc.)(ヒューストン、テキサス州)から商品名「ユーロプレン(EUROPRENE)SOL TE 9110」として入手可能なもののような直鎖、放射状、星型、及びテーパ形状スチレン−イソプレンブロックコポリマー;シェル・ケミカル社から商品名「クラトンG1657」として入手可能なもののような直鎖スチレン−(エチレン−ブチレン)ブロックコポリマー;シェル・ケミカル社から商品名「クラトンG1657X」として入手可能なもののような直鎖スチレン−(エチレン−プロピレン)ブロックコポリマー;シェル・ケミカル社から商品名「クラトンD1118X」として入手可能なもの及び、エニケム・エラストマーズ・アメリカから商品名「ユーロプレンSOL TE 6205」として入手可能なもののような直鎖、放射状、及び星型スチレン−ブタジエンブロックコポリマー;デュポン(DuPont)から商品名「ハイトレル(HYTREL)G3548」として入手可能なもののようなポリエーテルエステル、エラストマー性エチレン−プロピレンコポリマー;モートン・インターナショナル社(Morton International, Inc.)(シカゴ(Chicago)、イリノイ州)から商品名「モータン・ウレテン(MORTHANE URETHENE)PE44−203」として入手可能なもののような熱可塑性エラストマー性ポリウレタン;例えば、イソオクチルアクリレート及び0〜20重量パーセントのアクリル酸のような他のコモノマーを含有してよい、C〜C12アルキルエステルを含む、自己粘着性又は粘着化ポリアクリレート;ポリビニルエーテル;ポリ−α−オレフィン系熱可塑性エラストマー材料、例えば式−(CHCHR)(式中、Rは2〜10個の炭素原子を有するアルキル基である)により表されるもの、及び商品名「エンゲージ(ENGAGE)EG8200」として入手可能なもののようなメタロセン触媒に基づくポリ−α−オレフィン、ダウ・プラスチック社(Dow Plastics Co.)(ミッドランド(Midland)、ミシガン州)から入手可能な、エチレン/ポリ−α−オレフィンコポリマー;並びにワッカー・ケミーAG(Wacker Chemie AG)(ドイツ)から、商品名「ゲニオマー(GENIOMER)」として入手可能な、ポリジオルガノシロキサンポリ尿素−ウレタンが挙げられる。
【0125】
熱硬化性エラストマー(すなわち、エラストマー性熱硬化性物質)は、熱の影響下で、可融性及び可溶性材料から、共有結合的に架橋された熱的に安定な網状構造の形成を介して、不融性及び不溶性材料に、不可逆的に変化する材料である。本発明で有用な熱硬化性エラストマーとしては、例えば、グッドイヤー・ケミカル(Goodyear Chemical)(アルコン(Akron)、オハイオ州)から入手可能な「CV−60」(調整された粘度グレード)のような天然ゴム、及び「SMR−5」、リブドスモークドシートゴム;エクソン・ケミカル社(Exxon Chemical Co.)より入手可能な「エクソン・ブチル(Exxon Butyl)268」のような、ブチルゴム;ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)(オランダ)から商品名「カリフレックス(CARIFLEX)IR309」として入手可能なもの、及びグッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー社(Goodyear Tire and Rubber Co.)から商品名「ナットシン(NATSYN)2210」として入手可能なもののような合成ポリイソプレン;BFグッドリッチ(BF Goodrich)(アルコン、オハイオ州)から商品名「アメリポール(AMERIPOL)1011A」として入手可能なもののようなスチレン−ブタジエンランダムコポリマーゴム;ポリブタジエン;エクソン・ケミカル社から商品名「ビスタネックス(VISTANEX)MM L−80」として入手可能なもののようなポリイソブチレン;例えば、米国特許第2,532,011号(ダールクイスト(Dahlquist)ら)に開示されているポリオクタデシルカルバメートのようなポリウレタン;非晶質ポリ−α−オレフィン、例えばC〜C10直鎖又は分枝状ポリ−α−オレフィン等;米国特許第5,214,119号(レイア(Leir)ら)に開示されているもののような、ポリジオルガノシロキサンポリ尿素含有成分が挙げられる。
【0126】
好適なシリコーンポリマーは、典型的には、流体であり、硬化性(ヒドロキシル基又は例えばアクリレート基等のエチレン性不飽和基のような好適な官能性基の組み込みを通して)又は実質的に非硬化性であってよい。好適なシリコーン流体の例は、例えば、国際公開第97/40103号、米国特許第6,441,118号、同第5,091,483号、及び米国特許公開第2005/0136266号に記載されている。特に好ましいシリコーンポリマーは、例えば、ヒドロキシル末端化ポリジオルガノシロキサン、又はローディア・シリコーンズ(Rhodia Silicones)から商品名「47V1000ロードーシル(RHODORSIL)」として入手可能なもののような、非反応性シリコーン流体等の、湿気硬化性シリコーン流体である。典型的には、既知のシリコーン封止及び接着剤組成物で用いられる、任意のヒドロキシル末端化ポリジオルガノシロキサンを、本発明の組成物で用いてもよい。好適な市販のシリコーン流体の例としては、ルブルゾル(Lubruzol Corp.)(オハイオ州)及びワッカー・ケミーAG(Wacker Chemie AG)(ドイツ)から商品名「マシル(MASIL)」として入手可能なものが挙げられる。
【0127】
本明細書に開示するような組成物及び構造物はまた、機能性成分を含むことができる。静電気防止添加剤、紫外線吸収剤(UVA)、ヒンダードアミン光安定剤(HALS)、染料、着色剤、顔料、酸化防止剤、滑り防止剤、低接着材料、導電材料、耐摩耗性材料、光学素子、寸法安定剤、接着剤、粘着付与剤、難燃剤、燐光物質、蛍光物質、ナノ粒子、抗落書き剤(anti-graffiti agent)、耐黴剤、耐荷重剤、シリケート樹脂、ヒュームドシリカ、ガラスビーズ、ガラス泡、ガラス繊維、鉱物繊維、粘土粒子、有機繊維、例えばナイロン、ケブラー(KEVLAR)、金属粒子等のような機能性成分は、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドセグメント化ポリマー成分の合計100部当たり、100部以下の量で添加することができるが、但し組み込まれる場合及び組み込まれたとき、このような添加剤は、最終ポリマー生成物の機能及び機能性にとって有害ではない。光拡散物質、光吸収物質及び蛍光増白剤、難燃剤、安定剤、酸化防止剤、適合剤(compatibilizer)、酸化亜鉛のような抗微生物剤、導電体、有機及び/若しくは無機粒子を含む、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム及びニッケル粒子のような熱導体のような他の添加剤、又は任意の数若しくはこれらの組み合わせを、これらの系にブレンドすることができる。上記に列挙した機能性成分はまた、得られる生成物のいずれにも、望ましくない程の悪影響を与えないという条件で、ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーに組み込んでよい。
【0128】
充填剤、粘着付与剤、可塑剤、及び他の改質剤を、分枝状ポリジオルガノシロキサンポリアミドセグメント化有機ポリマーに組み込んでよい。ポリマー材料に有用な粘着付与材料又は可塑剤は、好ましくは、エラストマー材料又は熱硬化性エラストマー材料のポリマーセグメントのいずれか又は全てに分子レベルで混和性であり、例えば、可溶性である。これらの粘着付与材料又は可塑剤は、一般に、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分に不混和性である。粘着付与材料が存在するとき、それは、一般に、ポリマー材料100重量部に基づいて、5〜300重量部、より典型的には200重量部以下含まれる。本発明に好適な粘着性付与剤の例としては、液体ゴム、炭化水素樹脂、ロジン、二量化又は水素添加バルサム及びエステル化アビエチン酸のような天然樹脂、ポリテルペン、テルペンフェノール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、及びロジンエステルが挙げられるが、これらに限定されない。可塑剤の例としては、ポリブテン、パラフィン系オイル、ペトロラタム、及びジトリデシルフタレートのような長鎖脂肪族側鎖を有する特定のフタレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドをシリケート粘着付与樹脂のような粘着付与剤と組み合わせることにより、感圧接着剤又は加熱活性化接着剤のいずれかを配合することができる。本明細書で使用するとき、用語「感圧接着剤」とは、以下の性質を有する接着剤を指す:(1)強力かつ恒久的粘着性;(2)指圧以下での基材への接着性;(3)被接着体上への十分な保持力;及び(4)被接着体からきれいに除去するために十分な貼着力。本明細書で使用するとき、用語「加熱活性化接着剤」とは、本質的に室温で非粘着性であるが、室温を上回る、例えば30℃より高い活性化温度になると粘着性となる、接着剤組成物を意味する。加熱活性化接着剤は、典型的には、活性化温度を上回る温度では、感圧接着剤の特性を有する。
【0130】
シリケート粘着付与樹脂のような粘着付与樹脂を、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマーに添加して、コポリマーの接着性を提供する又は高める。シリケート粘着付与樹脂は、得られた接着剤組成物の物理的特性に影響を与え得る。例えば、シリケート粘着付与樹脂含量が増加するにつれて、次第に高温になるにしたがい、接着剤組成物がガラス状からゴム状へ転移する。いくつかの代表的な接着剤組成物では、複数のシリケート粘着付与樹脂を使用して、望ましい性能を得ることができる。
【0131】
好適なシリケート粘着付与樹脂としては、以下の構造単位、M(すなわち、1価のR’SiO1/2単位)、D(すなわち、2価のR’SiO2/2単位)、T(すなわち、3価のR’SiO3/2単位)、及びQ(すなわち、4級SiO4/2単位)並びにこれらの組み合わせで構成されている樹脂が挙げられる。典型的な代表的なシリケート樹脂としては、MQシリケート粘着付与樹脂、MQDシリケート粘着付与樹脂、及びMQTシリケート粘着付与樹脂が挙げられる。これらのシリケート粘着付与樹脂は、通常、100〜50,000の範囲の又は500〜15,000の範囲の数平均分子量を有し、一般にメチルR’基を有する。
【0132】
MQシリケート粘着付与樹脂は、R’SiO1/2単位(「M」単位)及びSiO4/2単位(「Q」単位)を有する共重合性樹脂であり、ここで、M単位はQ単位に結合し、その各々が少なくとも1つの他のQ単位に結合している。SiO4/2単位(「Q」単位)のいくつかは、ヒドロキシルラジカルに結合して、HOSiO3/2単位(「TOH」単位)をもたらし、それにより、シリケート粘着付与樹脂のシリコン結合ヒドロキシル含量を説明でき、いくつかは他のSiO4/2単位にのみ結合している。
【0133】
このような樹脂は、例えば、「ポリマーサイエンス・エンジニアリング百科事典(Encyclopedia of Polymer Science and Engineering)」(第15巻、ジョン・ワイリー・アンド・サンズ社(John Wiley & Sons,Inc.)、ニューヨーク、1989年、265〜270頁)、並びに米国特許第2,676,182号(ダウト(Daudt)ら)、同第3,627,851号(ブラディ(Brady))、同第3,772,247号(フラニガン(Flannigan))、及び同第5,248,739号(シュミット(Schmidt)ら)に記載されている。他の例は、米国特許第5,082,706号(タングニィ(Tangney))に記載されている。上述の樹脂は、一般に、溶媒中で調製される。乾燥させた又は無溶媒の、Mシリコーン粘着付与樹脂は、米国特許第5,319,040号(ヴェングロヴィウス(Wengrovius)ら)、同第5,302,685号(ツムラ(Tsumura)ら)、及び同第4,935,484号(ウォルフグルーバー(Wolfgruber)ら)に記載されているように調製できる。
【0134】
特定のMQシリケート粘着付与樹脂は、米国特許第2,676,182号(ダウト(Daudt)ら)に記載され、同第3,627,851号(ブラディ(Brady))、及び同第3,772,247号(フラニガン(Flannigan))によって改良されている、シリカヒドロゾル末端保護プロセスにより調製することができる。これらの改良されたプロセスは、多くの場合、ケイ酸ナトリウム溶液の濃度、及び/又は、ケイ酸ナトリウム中のケイ素対ナトリウム比、及び/又は、中和されたケイ酸ナトリウム溶液を末端保護する前の時間を、一般にダウト(Daudt)らに開示されているものより低い値に制限することを含む。中和されたシリカヒドロゾルは、2−プロパノールのようなアルコールで安定化され、RSiO1/2シロキサン単位で、中和された後できる限り早く末端保護されることが多い。MQ樹脂上のケイ素結合ヒドロキシル基(すなわち、シラノール)の濃度は、シリケート粘着付与樹脂の重量に基づいて、1.5重量パーセント以下、1.2重量パーセント以下、1.0重量パーセント以下、又は0.8重量パーセント以下まで減らすことができる。これは、例えば、ヘキサメチルジシラザンをシリケート粘着付与樹脂と反応させることによって実現することができる。このような反応は、例えばトリフルオロ酢酸によって触媒してもよい。あるいは、トリメチルクロロシラン又はトリメチルシリルアセトアミドをシリケート粘着付与樹脂と反応させてもよく、この場合、触媒は必要ではない。
【0135】
MQDシリコーン粘着付与樹脂は、米国特許第2,736,721号(デクスター(Dexter))に教示されているような、R’SiO1/2単位(「M」単位)、SiO4/2単位(「Q」単位)、及びR’SiO2/2単位(「D」単位)を有するターポリマーである。MQDシリコーン粘着付与樹脂では、R’SiO2/2単位(「D」単位)の、メチルR’基のいくつかを、ビニル(CH=CH−)基(「DVi」単位)で置換することができる。
【0136】
MQTシリケート粘着付与樹脂は、米国特許第5,110,890号(バトラー(Butler))及び特開平2−36234号にて教示されている様に、R’SiO1/2単位、SiO4/2単位及びR’SiO3/2単位(「T」単位)を有するターポリマーである。
【0137】
好適なシリケート粘着付与樹脂は、ダウ・コーニング(Dow Corning)(ミッドランド(Midland)、ミシガン州)、ゼネラル・エレクトリック・シリコーンズ(General Electric Silicones)(ウォーターフォード(Waterford)、ニューヨーク州)及びローディア・シリコーンズ(Rhodia Silicones)(ロックヒル(Rock Hill)、サウスカロライナ州)のような供給元から市販されている。特に有用なMQシリケート粘着付与樹脂の例としては、商品名「SR−545」及び「SR−1000」として入手可能なものが挙げられ、これらは両方ともGEシリコーンズ(GE Silicones)(ウォーターフォード、ニューヨーク州)から市販されている。このような樹脂は、一般に、有機溶媒中に供給され、購入した状態のままで本発明の接着剤の配合に使用してよい。2種又はそれ以上のシリケート樹脂のブレンドを、接着剤組成物に含めることができる。
【0138】
接着剤組成物は、典型的には、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミド及びシリケート粘着付与樹脂の合計重量を基準にして、20重量パーセント〜80重量パーセントのポリジオルガノシロキサンポリオキサミド及び20重量パーセント〜80重量パーセントのシリケート粘着付与樹脂を含有する。例えば、接着剤組成物は、30重量パーセント〜70重量パーセントのポリジオルガノシロキサンポリオキサミド及び30重量パーセント〜70重量パーセントのシリケート粘着付与樹脂、35重量パーセント〜65重量パーセントのポリジオルガノシロキサンポリオキサミド及び35重量パーセント〜65重量パーセントのシリケート粘着付与樹脂、40重量パーセント〜60重量パーセントのポリジオルガノシロキサンポリオキサミド及び40重量パーセント〜60重量パーセントのシリケート粘着付与樹脂、又は45重量パーセント〜55重量パーセントのポリジオルガノシロキサンポリオキサミド及び45重量パーセント〜55重量パーセントのシリケート粘着付与樹脂を含有することができる。
【0139】
接着剤組成物は、無溶媒であるか、又は溶媒を含有することができる。好適な溶媒としては、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンのようなアルカン)、又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0140】
少量の分枝を有するポリジオルガノシロキサンポリアミドは、例えば、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンのようなアルカン)又はこれらの混合物のような、多くの一般的な有機溶媒に可溶性であることができる。より多量の分枝を有するポリジオルガノシロキサンポリアミドは、トルエン、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンのようなアルカン)又はこれらの混合物のような、多くの一般的な有機溶媒中で膨潤性であることができる。
【0141】
ポリジオルガノシロキサンポリアミドは、溶媒からフィルムとして流延する、様々な形状に成型若しくはエンボス加工する、又はフィルムに押出加工することができる。共重合性材料の高温安定性故に、それらのフィルム形成には押出法が適している。フィルムは、光学的に透明であることができる。ポリジオルガノシロキサンポリアミドブロックコポリマーを含む多層フィルムは、米国特許公開第2007−0177272号(ベンソン(Benson)ら)に更に記載されている。
【0142】
組成物及び構造物の製造プロセス
本明細書に開示する組成物及び構造物は、当該技術分野において既知である溶媒系プロセスにより、無溶媒プロセスにより、又は2種の組み合わせにより、製造することができる。
【0143】
組成物又は構造物が、例えば有機ポリマーを含む実施形態では、当業者は、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分の構造の機能及び比、有機ポリマーの構造及び比、任意の反応開始剤の構造、及び任意の充填剤、添加剤、又は改質剤を添加するかどうかのような、具体的な用途に最適な材料を予測することができる。
【0144】
組成物又は構造物が有機ポリマーを含む実施形態では、有機ポリマーは、一般に、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分、又はポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分の反応物のうち1種に、溶融流として添加される。時に、ポリマー材料は、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分が、第2容器から、(1)ペレットとして、(2)反応物として、又は(3)別の溶融流として添加される前に、別個の容器中で溶融する必要がある場合がある。別個の容器が好ましいときの例としては、例えば、(1)添加剤が有機ポリマー中で濃縮されることが好ましい、(2)有機ポリマーが高加工温度を必要とする、及び(3)有機ポリマーがエラストマー性熱硬化性材料を含むときが挙げられる。
【0145】
種々の成分を添加する順序は、混合物の形成において重要である。組成物又は構造物が有機ポリマーを含む実施形態では、有機ポリマーが、既に論じたような、ポリジオルガノシロキサンポリアミド(例えば、ジアミン)を製造するための反応物と実質的に反応しない場合、任意の添加順序を用いることができる。ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分を有機ポリマーに添加することができ、逆もまた同様であり、又はポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分を有機ポリマーの存在下で製造することができる。しかしながら、有機ポリマーがこのような成分を製造するための反応物と反応する場合、有機ポリマーは、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分がされた後に添加しなければならない。また、有機ポリマーは、有機ポリマーがポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分を分解するプロセスに温度が必要な場合、好ましくは、別個の容器中で加工可能な状態に十分に加熱され、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分の溶融流に添加される。
【0146】
可塑化物質、粘着付与材料、顔料、充填剤、反応開始剤等のような他の添加剤は、通常反応物と反応しないため、一般にプロセスの任意の点で添加することができるが、典型的にはかなりの量のポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分が形成された後に添加される。
【0147】
組成物又は構造物が有機ポリマーを含む実施形態では、非熱可塑性エラストマー材料である有機ポリマーは、一般に、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分と混合するとき、溶融加工するための特殊な条件を必要とする。溶融加工可能な非熱可塑性エラストマー材料を製造する2つの方法は、(1)粘着付与材料又は可塑化物質で膨潤させることにより、明白な溶融粘度を低下させる、又は(2)米国特許第5,539,033号に記載のように物質をどろどろにすることである。
【0148】
4つのプロセスで検討すべき事項が、無溶媒プロセスにより製造される混合物の最終特性に影響を与える場合がある。まず、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分の特性は、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分が溶媒中で製造されたか、又は本質的に無溶媒プロセスで製造されたかにより、影響を受ける場合があった。2番目に、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分は、過剰な熱及び剪断力にさらされた場合、分解する場合がある。3番目に、混合物の安定性は、どのようにポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分を有機ポリマーと混合するかにより影響を受ける。4番目に、混合物で製造される物品の形態は、加工パラメータの相互作用及び混合物中の成分の特徴により決定される。
【0149】
最初の検討事項では、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分は、前もって溶媒若しくは無溶媒プロセスのいずれかにより製造することができる、又は、有機ポリマーの存在下で製造することができる。溶媒中でのポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分の製造方法は、上記に開示した。実質的に無溶媒条件でポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分を製造する方法は、結果として分子量の大きいポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分をもたらすことができる。
【0150】
2番目の検討事項では、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分は、剪断条件下、特に酸素の存在下で、過剰に加熱された場合、分解する場合がある。ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分は、有機ポリマーの存在下で製造されるとき、特に、混合物が不活性雰囲気下で製造されるときに、最小量の熱及び剪断力にさらされる。
【0151】
3番目の検討事項では、混合物の安定性は、どのようにポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分を有機ポリマーと混合するかにより影響を受ける。ポリジオルガノシロキサンは、一般に、大部分の他のポリマー材料と不混和性である。しかしながら、本発明者らは、両方が溶融状態にあるとき、広範なポリマーを、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分と混合できることを見出した。一方の成分を軟化するのに必要な条件が、他方を分解しないように、注意しなければならない。好ましくは、混合温度は、混合物の混合及び輸送温度を上回り、かつ、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分の分解温度を下回る温度であるべきである。ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドコポリマーは通常、明らかに分解することなく、250℃以下又はそれ以上の高温に晒すことができる。
【0152】
成分を適切に加熱し、溶融状態で混合できる任意の容器は、本明細書に開示する混合物の製造に好適である。
【0153】
4番目の検討事項では、加工工程が、本明細書に開示する混合物で製造される物品の形態に影響を与える。ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分と有機ポリマーとは一般的に不混和性であるために、混合物は、一般に、一方が不連続であり、他方が連続である、少なくとも2つのドメインを有する。少相(minor phase)を含む成分は、典型的には、形状が、球状から楕円体、リボン様、繊維状のものまである、不連続なドメインを形成する。多相(major phase)を含む成分は、典型的には、不連続なドメインを取り囲む連続なドメインを形成する。一般に、混合物をフィルム又はコーティングのような物品に成形するように、混合物が十分な剪断力又は伸長力にさらされた場合、混合物の不連続なドメインは伸長する。一般に、混合物がもはや伸長力又は剪断力下にないときに、少なくとも1種の成分が使用温度において、伸長したドメインが球状に弛緩するのを防ぐのに十分な粘度を有する場合に、不連続なドメインは伸長した状態を保つ。伸長した形態は、通常、混合物が成分の軟化点を超えて再加熱されるまで、安定である。
【0154】
本明細書に開示するような混合物を製造するために、溶媒系プロセス及び無溶媒プロセスの両方を用いることができるが、2つの組み合わせが好ましい、いくつかの状況が存在する場合がある。後者の場合、ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分を、溶媒系プロセスにより製造し、その後乾燥させて、有機ポリマーと溶融混合することができる。
【0155】
物品の種類
本発明のポリマー及び組成物は、具体的な配合に応じて、例えば、剥離フィルム、光学フィルム、拡散光学物品、加工助剤、光学PSA、感圧性接着テープ、感圧性接着転写テープ、例えば経皮薬物送達装置を含む感圧性接着医療テープ、ゴム強化物品、及び所望の物品の直上の感圧性接着剤コーティングとして用いることができる、種々の物品を製造するために用いることができる。
【0156】
本明細書に開示するポリマー及び組成物は、フィルムとして溶媒から流延する、種々の形状に成型若しくはエンボス加工する、又はフィルムに押出成形することができる。それらは、種々の物品、例えば、ポリマー又は組成物と、1種又はそれ以上の任意物質を含有する層を含むものに成形できる。例えば、ポリマー又は組成物は、第1基材に隣接した層内にあるか又は第1基材と第2基材との間に位置することができる。すなわち、物品は、以下の順序:第1基材、ポリマー又は組成物を含有する層、及び第2基材で、配置することができる。本明細書で使用するとき、用語「隣接した」とは、第2層に隣接する、又は第2層に近接して位置するが、1層又はそれ以上の追加層によって第2層から分離されている第1層を意味する。
【0157】
感圧性接着剤物品は、周知の熱溶融又は溶媒コーティングプロセスにより、感圧性接着剤を適用することにより製造される。用いることができる任意の好適な基材としては、例えば、布及び繊維ガラス布、金属化フィルム及び箔、ポリマーフィルム、不織布、紙及びポリマーでコーティングされた紙、及び発泡体裏材が挙げられるが、これらに限定されない。ポリマーフィルムとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンのようなポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル;ポリカーボネート;セルロースアセテート;商品名「カプトン(KAPTON)」として入手可能なもののようなポリイミドが挙げられるが、これらに限定されない。一般にランダムに配向された繊維から製造される、不織布としては、ナイロン、ポリプロピレン、エチレン−ビニルアセテートコポリマー、ポリウレタン、レーヨン等が挙げられるが、これらに限定されない。発泡体裏材としては、アクリル、シリコーン、ポリウレタン、ポリエチレン、ネオプレンゴム及びポリプロピレンが挙げられるが、これらに限定されず、充填されていてもされていなくてもよい。ポリエチレン−アルミニウム膜複合材のような層状裏材もまた好適である。
【0158】
感圧性テープの場合、典型的には、これらの材料は、裏材上にコーティングされた感圧性接着剤物質の層を含むテープ構造物をまず製造することにより、適用される。感圧性接着剤コーティングの露出面は、続いて、それを後に剥離することができる表面に適用してもよく、又は所望の基材に直接適用してもよい。
【0159】
いくつかの感圧性接着剤物品は、剥離ライナー、すなわち、両方が剥離コーティングでコーティングされた2枚のライナーの間に組成物をコーティングすることにより製造できる転写テープを使用する。剥離ライナーは、典型的には、ポリエステル、ポリエチレン、ポリオレフィン等のようなポリマー材料、又は剥離コーティングされた紙若しくはポリエチレンでコーティングされた紙を含む。好ましくは、各剥離ライナーは、本発明で利用される接着剤物質用剥離材で、まずコーティング又は下塗りされる。組成物が、かなりの量の粘着化ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有成分を含有するとき、有用な剥離ライナーは、シリコーン接着剤とともに用いるのに好適なものを含む。一例は、欧州特許公開第433070号に記載されている、ポリフルオロポリエーテルでコーティングされたライナーである。他の有用な剥離ライナーコーティング組成物は、欧州特許公開第378420号、米国特許第4,889,753号及び欧州特許公開第311262号に記載されている。市販のライナー及び組成物としては、ダウ・コーニング社(Dow Corning Corp.)(ミッドランド(Midland)、ミシガン州)から商品名「SYL−OFF Q2−7785」フルオロシリコーン剥離コーティングとして入手可能なもの、信越シリコーン・アメリカ社(Shin-Etsu Silicones of America)(トーランス(Torrance)、カリフォルニア州)から入手可能な「X−70−029NS」フルオロシリコーン剥離コーティング;リリース・インターナショナル(Release International)(ベッドフォードパーク(Bedford Park)、イリノイ州)から商品名「S TAKE−OFF 2402」フルオロシリコーン剥離ライナーとして入手可能なもの等が挙げられる。
【0160】
本発明の組成物はまた、経皮薬物送達装置を含む医療用途で有用である。経皮薬物送達装置は、治療的に有効量の薬物を患者の皮膚を通して、又は患者の皮膚に送達するよう設計されている。経皮薬物送達装置は、注射とは異なる、非侵襲性である;経口投与とは異なり、肝臓初回通過代謝を避ける、胃腸影響を最低限に抑える、及び安定した血中濃度を提供する;といった著しい利点をもたらす。
【0161】
本発明の組成物はまた、下処理された及び下処理されていない表面、特に、保護されていない表面を浸食的に攻撃するものを含む環境汚染物質の侵入を防ぐ、非常に快適な連続界面シリコーンコーティングを提供する、金属、ポリオレフィン及びフッ素含有ポリマーフィルムに容易に結合する感圧性接着剤で用いてもよい。感圧性接着剤パッチは、典型的には、保護用ポリジオルガノシロキサンポリアミド含有感圧性接着剤組成物、及び所望によりバリア若しくは縁部接着剤(edge adhesive)、柔軟性のあるバリア若しくは裏材の層、又はこれらの材料の組み合わせからなる。いくつかの用途では、裏材が電界の向きの線を遮蔽しないことが好ましく、より好ましくは、例えば、ポリエチレン又はPVCの固体フィルムに開口構造裏材を製造する。いくつかの表面に貼り付けるとき、表面トポロジーにより適合するような、テーパ形状の又は浮き上がった接着層が好ましい場合がある。
【0162】
本発明の組成物はまた、感圧性接着剤、又は熱収縮チューブ用熱溶融接着剤として用いてもよい。これらの構造物は、熱収縮操作中に受ける高温に耐えることができ、冷却後に周辺シールをもたらす単一物品を提供する。これらの材料のレオロジー、熱安定性、粘着性、及び透明度により、それらはこの用途に特に好適になる。
【0163】
本発明の組成物はまた、異なる剥離ライナー、すなわち、ライナーの片側上の第1剥離コーティング及び反対側上にコーティングされた第2剥離コーティングを有する剥離ライナー上にコーティングすることができる。2枚の剥離コーティングは、好ましくは、異なる剥離値を有する。例えば、ある剥離コーティングは、5g/cmの剥離値(つまり、コーティングから幅1cmの材料のストリップを取り除くのに0.05N(5グラムの力)が必要である)を有してよく、一方で第2剥離コーティングは15g/cmの剥離値を有してよい。材料は、より高い剥離値を有する剥離ライナーコーティング上にコーティングすることができる。得られるテープは、ロール状に巻き取ることができる。テープの巻きを解くとき、感圧性接着剤は、より高い剥離値を有する剥離コーティングに接着する。テープが基材に適用された後、剥離ライナーを取り除いて、更に使用するために接着面を露出させることができる。
【0164】
熱溶融接着剤は、非接着性表面を複合材にまとめるために用いることができる組成物である。基材への適用中、熱溶融接着剤は、表面を完全に湿らせ、表面が粗い場合であっても空洞を残さないように、十分流体であるべきである。結果として、接着剤は、適用時に低粘度でなければならない。しかしながら、接着剤は、一般に、負担のかかる条件下で基材に接着した状態を保つよう十分な貼着力を生み出すために、固体になる。
【0165】
熱溶融接着剤では、流体から固体への変化は、いくつかの方法で達成できる。まず、熱溶融接着剤は、加熱したとき軟化及び溶融し、冷却したとき再度硬くなる熱可塑性であってよい。このような加熱は、うまく湿潤させるのに十分な高い流動性をもたらす。あるいは、熱溶融接着剤は、うまく湿潤させるのに十分、接着剤の粘度を低下させ、溶媒又はキャリアを除去したとき接着剤の粘度を上昇させる、溶媒又はキャリアに溶解してもよい。このような接着剤は、必要に応じて、熱で活性化することができる。
【0166】
本発明の組成物は、支持されていないフィルムに成形することができ、これは、例えば、剥離物品、接着転写テープ、光学接着剤、熱溶融接着剤、光学物品、拡散器、不織布ウェブ、撥水フィルム、ゴム粒子混合プラスチック、抗落書きフィルム、流延ライナー、感圧性接着剤、振動ダンパ、音響ダンパ(acoustic damper)、医療用裏材、テープの裏材、医療物品及び封止剤として用いることができる。
【0167】
本発明の組成物は、多層フィルムの1層又はそれ以上の層に組み込むことができ、これは、例えば、支持されていないフィルムに対して本明細書で上述した用途に用いることができる。更に、多層フィルムは、例えば、反射偏光子(relective polarizer)、赤外線反射器、拡散器、光学フィルタ、感圧性接着剤、振動ダンパ、音響ダンパ、反射器、及び透過性フィルムとして用いることができる。
【0168】
本発明の組成物は、溶融加工助剤に用いることができ、これは、例えば、表面改質、滑り防止剤、適合剤、屈折率改良剤、耐衝撃改質剤、光学改質剤、レオロジー調整剤、透過性改良剤、撥水剤、完全な滑らかさ、潤滑性を付与し、粘着性を低下させ、良好な触感を付与するための繊維処理のために用いることができる。
【0169】
以下の代表的な実施形態が、本開示により提供される。
【0170】
実施形態1.少なくとも2つの式I−aの繰り返し単位
【0171】
【化15】

【0172】
(各Rは、独立してアルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;Gは、価数qを有する多価残基であり;Rは、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素とともに複素環基を形成し;各Yは、独立してアルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;各Bは、独立して共有結合、4〜20個の炭素を有するアルキレン、アラルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせであり;nは、独立して0〜1500の整数であり;pは1〜10の整数であり;qは2より大きい整数である)を含むコポリマー。
【0173】
実施形態2.コポリマーが、少なくとも2つの式I−bの繰り返し単位を含む、実施形態1のコポリマー。
【0174】
【化16】

【0175】
実施形態3.qが3以上の整数である、実施形態1又は2に記載のコポリマー。
【0176】
実施形態4.qが4以上の整数である、実施形態1〜3のいずれかに記載のコポリマー。
【0177】
実施形態5.qが3に等しい、実施形態1〜3のいずれかに記載のコポリマー。
【0178】
実施形態6.各Rがメチルである、実施形態1〜5のいずれかに記載のコポリマー。
【0179】
実施形態7.少なくとも50パーセントのR基がメチルである、実施形態1〜5のいずれかに記載のコポリマー。
【0180】
実施形態8.各Yが、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン、1〜10個の炭素原子を有するアルキレンに結合するフェニレン、又は1〜10個の炭素原子を有する第1アルキレン及び1〜10個の炭素原子を有する第2アルキレンに結合するフェニレンである、実施形態1〜7のいずれかに記載のコポリマー。
【0181】
実施形態9.Yが、1〜4個の炭素原子を有するアルキレンである、実施形態1〜8のいずれかに記載のコポリマー。
【0182】
実施形態10.コポリマーが、pが1に等しい第1繰り返し単位及びpが少なくとも2である第2繰り返し単位を有する、実施形態1〜9のいずれかに記載のコポリマー。
【0183】
実施形態11.nが少なくとも40である、実施形態1〜10のいずれかに記載のコポリマー。
【0184】
実施形態12.Rが水素である、実施形態1〜11のいずれかに記載のコポリマー。
【0185】
実施形態13.少なくとも2つの式I−aの繰り返し単位と異なる、1つ又はそれ以上の繰り返し単位を更に含む、実施形態1〜12のいずれかに記載のコポリマー。
【0186】
実施形態14.異なる繰り返し単位が、qが2に等しいことを除いて、式I−aである、実施形態13に記載のコポリマー。
【0187】
実施形態15.少なくとも2つの式I−aの繰り返し単位を有するコポリマーを製造する方法であって、反応条件下で、a)式II−aの前駆体と、
【0188】
【化17】

【0189】
b)平均して、式G(NHR(式中、各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり;Gは、式G(NHRからr個の−NHR基を引いたものに等しい多価残基単位であり;Rは、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;各Bは、独立して、共有結合、4〜20個の炭素を有するアルキレン、アラルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせであり;nは、独立して、0〜1500の整数であり;pは1〜10の整数であり;及びrは2より大きい数である)を有する1種又はそれ以上のアミン化合物と、を一緒に混合する工程を含む方法。
【0190】
実施形態16.1種又はそれ以上のアミン化合物がジアミンを含む、実施形態15に記載の方法。
【0191】
実施形態17.Rが水素である、実施形態15又は16に記載の方法。
【0192】
実施形態18.方法が、コポリマーから式ROHの反応副生成物を除去する工程を更に含む、実施形態15〜17のいずれかに記載の方法。
【0193】
実施形態19.Rがメチルであり、Rが水素である、実施形態15〜18のいずれかに記載の方法。
【0194】
実施形態20.前駆体と、1種又はそれ以上のアミン化合物との混合が、バッチプロセス、セミバッチプロセス、又は連続プロセスである、実施形態15〜19のいずれかに記載の方法。
【0195】
実施形態21.少なくとも2つの式I−bの繰り返し単位を有するコポリマーを製造する方法であって、反応条件下で、a)式II−bの前駆体と、
【0196】
【化18】

【0197】
b)平均して、式G(NHR(式中、各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり;Gは、式G(NHRからr個の−NHR基を引いたものに等しい多価残基単位であり;Rは、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;nは、独立して、0〜1500の整数であり;pは1〜10の整数であり;rは2より大きい数である)を有する1種又はそれ以上のアミン化合物と、を一緒に混合する工程を含む方法。
【0198】
実施形態22.式II−bの前駆体が、式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンを、
【0199】
【化19】

【0200】
モル過剰の式IVのオキサレート
【0201】
【化20】

【0202】
(式中、Rは、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ、若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールである)と反応させることにより調製される、実施形態21に記載の方法。
【0203】
実施形態23.過剰なオキサレートが、ポリジオルガノシロキサンジアミンとの反応後に除去される、実施形態22に記載の方法。
【0204】
実施形態24.実施形態1〜14のいずれかに記載のコポリマーを含む物品。
【0205】
実施形態25.基材を更に含む実施形態24に記載の物品であって、コポリマーが基材に隣接する層に存在する物品。
【0206】
実施形態26.第1基材及び第2基材を更に含む実施形態24の物品であって、コポリマーが、第1基材と第2基材との間に位置する層に存在する物品。
【0207】
実施形態27.実施形態1〜14のいずれかに記載のコポリマーを含む組成物。
【0208】
実施形態28.コポリマーとは異なるポリマー材料を更に含む、実施形態27に記載の組成物。
【0209】
実施形態29.コポリマーとは異なるポリマー材料が、少なくとも2つの式V−aの繰り返し単位を含む、実施形態28に記載の組成物
【0210】
【化21】

【0211】
(式中、各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;Gは、式RHN−G−NHRのジアミンから2個の−NHR基を引いたものに等しい多価残基であり;Rは、水素若しくはアルキルであるか、又はG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;各Bは、独立して、共有結合、4〜20個の炭素を有するアルキレン、アラルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせであり;nは、独立して、0〜1500の整数であり;pは1〜10の整数である)。
【0212】
実施形態30.コポリマーとは異なるポリマー材料が、少なくとも2つの式V−bの繰り返し単位を含む、実施形態28又は29に記載の組成物
【0213】
【化22】

【0214】
各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;Gは、式RHN−G−NHRのジアミンから2個の−NHR基を引いたものに等しい多価残基であり;Rは、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;nは、独立して、0〜1500の整数であり;pは1〜10の整数である)。
【0215】
実施形態31.粘着付与材料を更に含む、実施形態28〜30のいずれかに記載の組成物。
【0216】
実施形態32.粘着付与材料が、シリケート樹脂又は有機粘着付与剤である、実施形態31に記載の組成物。
【0217】
実施形態33.組成物が接着剤である、実施形態27〜32のいずれかに記載の組成物。
【0218】
実施形態34.1種又はそれ以上の添加剤を更に含む、実施形態27〜33のいずれかに記載の組成物。
【0219】
実施形態35.光透過性材料を含む第1フィルムと、かかる第1フィルムに隣接している第2フィルムと、を含む複合フィルムであって、第2フィルムが実施形態1〜14のいずれかに記載のコポリマーを含む、複合フィルム。
【0220】
実施形態36.第1屈折率を有する第1ポリマー材料を含む第1層と;第1層に隣接している第2層であって、第2屈折率を有し、実施形態1〜14のいずれかに記載のコポリマーを含む第2層と、を含むフィルム。
【0221】
実施形態37.第1層又は第2層のいずれかに隣接している第3層であって、第3材料を含む第3層を更に含む、実施形態36に記載のフィルム。
【0222】
実施形態38.第3層が、第1層と第2層との間に配置される、実施形態37に記載のフィルム。
【0223】
前述の事項は、現在予見されない、本発明の実質的でない修正が、本発明の均等物を表しうるにもかかわらず、本発明者らによって権能付与的記載が入手できる予見された実施形態の観点から本発明を記載している。
【実施例】
【0224】
これらの実施例は単にあくまで例示を目的としたものであり、添付した特許請求の範囲の範囲を限定するものではない。実施例における部、百分率、比等は全て、特に記載しない限り、重量基準である。使用される溶媒及びその他の試薬は、特に記載のない限り、シグマ・アルドリッチ・ケミカル社(Sigma-Aldrich Chemical Company)(ミルウォーキー(Milwaukee)、ウィスコンシン州)より入手した。
【0225】
【表1】

【0226】
ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーの固有粘度(IV)
平均固有粘度(IV)は、キャノン・フェンスケ(Canon-Fenske)粘度計(型式50P296)を使用して、30℃、0.2g/dL濃度のテトラヒドロフラン(THF)溶液中にて、30℃で測定した。本発明の材料の固有粘度は、0.1〜0.4g/dLの範囲の濃度とは実質的に無関係であることが判明した。平均固有粘度は、3回以上の測定の平均とした。平均固有粘度を決定するための任意の変法は、具体例に記述されている。
【0227】
当量を決定するための滴定法
PDMSジアミン及びジエチルオキサレートの反応から得た、およそ10グラム(正確に計量した)の前駆体化合物をジャーに添加した。約50グラムのTHF溶媒(正確な計量ではない)を添加した。混合物が均質になるまで、電磁攪拌棒を使用して内容物を混合した。前駆体の理論当量を計算し、次にその当量数の3〜4倍の範囲の量のN−ヘキシルアミン(正確に計量した)を添加した。反応混合物を最低4時間撹拌した。ブロモフェノールブルー(10〜20滴)を添加し、内容物が均質になるまで混合した。混合物を黄色の終点まで1.0N(又は0.1N)塩酸で滴定した。前駆体の当量数は、試料に加えたN−ヘキシルアミンの当量数から、滴定中に加えた塩酸の当量数を差し引いたものに等しかった。当量(グラム/当量)は、前駆体のサンプル重量を前駆体の当量数で割ったものに等しかった。
【0228】
調製例1
ジエチルオキサレート(241.10グラム)を、機械式撹拌機、加熱マントル、窒素導入用チューブ(ストップコック付き)、及び排出管を装備した3リットルの3つ口樹脂フラスコ内に入れた。フラスコを窒素で15分間パージし、5k PDMS ジアミン(米国特許第5,214,119号(レイア(Leir)ら)に記載のように調製された、5,000g/モルの平均分子量を有する、ポリジメチルシロキサンジアミン)(2,028.40グラム、分子量=4,918)を、撹拌しながらゆっくりと添加した。室温にて8時間後、反応フラスコに、蒸留アダプタ及び蒸留レシーバを装着し、内容物を攪拌し、更なる留出物を回収することができなくなるまで、真空下(0.13kPa(1トール))にて150℃で4時間加熱した。残留液体を室温に冷却し、オキサミドエステル末端化生成物2,573グラムを得た。透明な流動性の液体のガスクロマトグラフィー分析は、検出可能な濃度のジエチルオキサレートが残存していないことを示した。分子量は、H NMR(分子量=5,477グラム/モル)及び滴定(2,573グラム/モル及び2,578グラム/モルの当量)によって決定した。
【0229】
調製例2
14K PDMSジアミンのサンプル(830.00グラム)を、機械的撹拌機、加熱マントル、窒素導入用チューブ(ストップコック付き)、及び排出管を装備した2リットルの3つ口樹脂フラスコ内に入れた。フラスコを窒素で15分間パージし、次に、激しく撹拌し、ジエチルオキサレート(33.56グラム)を滴加した。この反応混合物をおよそ1時間、室温で攪拌し、次に、80℃にて75分間撹拌した。反応フラスコに、蒸留アダプタ及び蒸留レシーバを装着した。反応混合物を真空下(133パスカル、1トール)、120℃にて2時間加熱し、次に、130℃にて30分間、更なる留出物を回収することができなくなるまで加熱した。反応混合物を室温に冷却して、式Iの化合物の生成物を得た。透明な流動性の液体のガスクロマトグラフィー分析は、検出可能な濃度のジエチルオキサレートが残存していないことを示した。エステル当量は、H NMR(7,916グラム/当量に等しい当量)を使用し、滴定(8,272グラム/当量に等しい当量)することによって決定した。
【0230】
(実施例1)
20℃の、37.9L(10ガロン)のステンレス鋼製反応容器に、18.1kg(40ポンド)の調製例1を入れた。容器を撹拌し(80rpm)、窒素フローでパージし、15分間真空にした。反応器を34.5kPa(5ポンド/平方インチ)に窒素加圧し、25分にわたって90℃に加熱した。0.19kg(0.44ポンド)のエチレンジアミンを反応器に添加した。この添加に続いて、80グラムのトルエンを添加した。次に、反応器を105℃の温度に加熱し、反応器の圧力を5分間にわたってゆっくり解放した。次いで、反応器を1時間真空(およそ2.7kPa(20mmHg))にさらして、エタノール及びトルエンを除去した。反応器を、次いで、13.8kPa(2psig)に再加圧し、粘稠な溶融生成物をテフロン(登録商標)加工されたトレイに流し込み、冷却させた。冷却されたシリコーンポリオキサミド生成物を、次いで、細かいペレット状に粉砕した。この物質のIVは、1.135g/dL(THF中)であると測定された。
【0231】
(実施例2)
この実施例は、0.5モル%のエチレンジアミン(EDA)を等モル数のトリス(2−アミノエチル)アミン(TFアミン)に置換したことを除いて、実施例1のように調製した。この物質のIVは、1.274g/dL(THF中)であると測定された。
【0232】
(実施例3)
この実施例は、1.0モル%のエチレンジアミン(EDA)を等モル数のトリス(2−アミノエチル)アミン(TFアミン)に置換したことを除いて、実施例1のように調製した。この物質のIVは、1.37g/dL(THF中)であると測定された。
【0233】
(実施例4)
この実施例は、2.0モル%のエチレンジアミン(EDA)を等モル数のトリス(2−アミノエチル)アミン(TFアミン)に置換したことを除いて、実施例1のように調製した。この物質のIVは、1.43g/dL(THF中)であると測定された。
【0234】
(実施例5)
20℃の、37.9L(10ガロン)のステンレス鋼製反応容器に、18158.4グラムの調製例2の前駆体、エチルオキサリルアミドプロピル末端化14k PDMSジアミン(滴定したMW=14,890)を入れた。容器を撹拌し(75rpm)、窒素フローでパージし、15分間真空にした。ケトルを、次いで、25分にわたって80℃に加熱した。73.29グラムのエチレンジアミン(GFSケミカルズ(GFS Chemicals))をケトルに真空充填し、続いて73.29グラムのトルエンもまた真空充填した。次に、ケトルを6.9kPa(1psig)に加圧し、120℃の温度に加熱した。30分後、ケトルを150℃に加熱した。一旦150℃の温度に到達させ、ケトルの圧力を5分間かけて解放(vent)した。ケトルを真空(およそ8.7kPa(65mmHg))に40分間さらして、エタノール及びトルエンを除去した。次に、ケトルを13.8kPa(2psig)に加圧し、次に粘稠な溶融ポリマーをテフロン(登録商標)加工したトレイに流し込み、冷却させた。冷却されたシリコーンポリオキサミド生成物である、ポリジオルガノシロキサンポリオキサミドブロックコポリマーを、次に細かいペレット状に粉砕した。この材料のIVは、0.829g/dL(THF中)であると測定された。
【0235】
(実施例6)
この実施例は、1.0モル%のエチレンジアミン(EDA)を、等モル数のトリス(2−アミノエチル)アミン(TFアミン)に置換したことを除いて、実施例5のように調製した。この物質のIVは、1.062g/dL(THF中)であると測定された。
【0236】
(実施例7)
この実施例は、2.0モル%のエチレンジアミン(EDA)を、等モル数のトリス(2−アミノエチル)アミン(TFアミン)に置換したことを除いて、実施例5のように調製した。この物質のIVは、1.194g/dL(THF中)であると測定された。
【0237】
本発明の範囲及び趣旨から逸脱しない本発明の様々な変更や改変が、当業者には明らかとなるであろう。本発明は、本明細書で述べる代表的な実施形態及び実施例によって不当に限定されるものではないこと、また、こうした実施例及び実施形態は、本明細書において以下に記述する特許請求の範囲によってのみ限定されると意図する、本発明の範囲に関する例示のためにのみ提示されることを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの式I−aの繰り返し単位を含むコポリマー:
【化1】

(各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;
Gは価数qを有する多価残基であり;
は、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;
各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;
各Bは、独立して、共有結合、4〜20個の炭素を有するアルキレン、アラルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせであり;
nは、独立して、0〜1500の整数であり;
pは1〜10の整数であり;及び
qは2より大きい整数である)。
【請求項2】
前記コポリマーが、少なくとも2つの式I−bの繰り返し単位を含む、請求項1に記載のコポリマー:
【化2】

【請求項3】
qが3以上の整数である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項4】
qが4以上の整数である、請求項3に記載のコポリマー。
【請求項5】
qが3に等しい、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項6】
各Rがメチルである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項7】
少なくとも50パーセントの前記R基がメチルである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項8】
各Yが、1〜10個の炭素原子を有するアルキレン、1〜10個の炭素原子を有するアルキレンに結合しているフェニレン、又は1〜10個の炭素原子を有する第1アルキレン及び1〜10個の炭素原子を有する第2アルキレンに結合しているフェニレンである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項9】
Yが、1〜4個の炭素原子を有するアルキレンである、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項10】
前記コポリマーが、pが1に等しい第1繰り返し単位及びpが少なくとも2である第2繰り返し単位を有する、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項11】
nが少なくとも40である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項12】
が水素である、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項13】
前記少なくとも2つの式I−aの繰り返し単位と異なる、1つ又はそれ以上の繰り返し単位を更に含む、請求項1に記載のコポリマー。
【請求項14】
前記異なる繰り返し単位が、qが2に等しいことを除いて、式I−aである、請求項13に記載のコポリマー。
【請求項15】
請求項1に記載のコポリマーを製造する方法であって、反応条件下で、
a)式II−aの前駆体と:
【化3】

b)平均して、式G(NHRを有する1種又はそれ以上のアミン化合物と、
(式中、
各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;
各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり;
Gは、前記式G(NHRからr個の−NHR基を引いたものに等しい多価残基単位であり;
は、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;
各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;
各Bは、独立して、共有結合、4〜20個の炭素を有するアルキレン、アラルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせであり;
nは、独立して、0〜1500の整数であり;
pは1〜10の整数であり;及び、
rは2より大きい数である)を一緒に混合する工程を含む、方法。
【請求項16】
前記1種又はそれ以上のアミン化合物がジアミンを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
が水素である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が、前記コポリマーから式ROHの反応副生成物を除去する工程を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
がメチルであり、Rが水素である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記前駆体と、前記1種又はそれ以上のアミン化合物との前記混合が、バッチプロセス、セミバッチプロセス、又は連続プロセスである、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
請求項2に記載のコポリマーを製造する方法であって、反応条件下で、
a)式II−bの前駆体と、:
【化4】

b)平均して、式G(NHRを有する1種又はそれ以上のアミン化合物と、
(式中、
各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;
各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールであり;
Gは、前記式G(NHRからr個の−NHR基を引いたものに等しい多価残基単位であり;
は、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;
各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;
nは、独立して、0〜1500の整数であり;
pは1〜10の整数であり;及び、
rは2より大きい数である)を一緒に混合する工程を含む、方法。
【請求項22】
前記1種又はそれ以上のアミン化合物がジアミンを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記式II−bの前駆体が、式IIIのポリジオルガノシロキサンジアミンと、
【化5】

モル過剰の式IVのオキサレートと
【化6】

(式中、
は、アルキル、ハロアルキル、アリール、又はアルキル、アルコキシ、ハロ若しくはアルコキシカルボニルで置換されたアリールである)を反応させることにより調製される、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記過剰なオキサレートが、前記ポリジオルガノシロキサンジアミンとの反応後に除去される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1に記載のコポリマーを含む物品。
【請求項26】
請求項2に記載のコポリマーを含む物品。
【請求項27】
基材を更に含み、請求項1に記載の前記コポリマーが、該基材に隣接する層内に存在する、請求項25に記載の物品。
【請求項28】
第1基材及び第2基材を更に含み、請求項1に記載の前記コポリマーが、該第1基材と該第2基材との間に位置する層内に存在する、請求項25に記載の物品。
【請求項29】
請求項1に記載のコポリマーを含む、組成物。
【請求項30】
請求項2に記載のコポリマーを含む、組成物。
【請求項31】
請求項1に記載の前記コポリマーとは異なるポリマー材料を更に含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項32】
請求項1に記載の前記コポリマーとは異なる前記ポリマー材料が、少なくとも2つの式V−aの繰り返し単位を含む、請求項31に記載の組成物:
【化7】

(式中、
各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;
Gは、式RHN−G−NHRのジアミンから2個の−NHR基を引いたものに等しい2価残基であり;
は、水素若しくはアルキルであるか、又はG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;
各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;
各Bは、独立して、共有結合、4〜20個の炭素を有するアルキレン、アラルキレン、アリーレン又はこれらの組み合わせであり;
nは、独立して、0〜1500の整数であり;及び、
pは1〜10の整数である)。
【請求項33】
請求項1に記載の前記コポリマーとは異なる前記ポリマー材料が、少なくとも2つの式V−bの繰り返し単位を含む、請求項32に記載の組成物:
【化8】

(各Rは、独立して、アルキル、ハロアルキル、アラルキル、アルケニル、アリール、又はアルキル、アルコキシ若しくはハロで置換されたアリールであり;
Gは、式RHN−G−NHRのジアミンから2個の−NHR基を引いたものに等しい2価残基であり;
は、水素若しくはアルキルであるか、又はRはG及びそれらが両方結合している窒素と共に複素環基を形成し;
各Yは、独立して、アルキレン、アラルキレン又はこれらの組み合わせであり;
nは、独立して、0〜1500の整数であり;及び、
pは1〜10の整数である)。
【請求項34】
粘着付与材料を更に含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項35】
前記粘着付与材料が、シリケート樹脂又は有機粘着付与剤である、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
前記組成物が接着剤である、請求項34に記載の組成物。
【請求項37】
1種又はそれ以上の添加剤を更に含む、請求項29に記載の組成物。
【請求項38】
光透過性材料を含む第1フィルムと、
前記第1フィルムに隣接している第2フィルムであって、請求項1に記載のコポリマーを含む該第2フィルムと、を含む複合フィルム。
【請求項39】
第1屈折率を有する第1ポリマー材料を含む第1層と、
前記第1層に隣接している第2層であって、第2屈折率を有し、請求項1に記載のコポリマーを含む該第2層と、を含むフィルム。
【請求項40】
前記第1層又は前記第2層のいずれかと隣接している第3層であって、第3材料を含む該第3層を更に含む、請求項39に記載のフィルム。
【請求項41】
前記第3層が、前記第1層と前記第2層との間に配置される、請求項40に記載のフィルム。

【公表番号】特表2010−530919(P2010−530919A)
【公表日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513289(P2010−513289)
【出願日】平成20年5月5日(2008.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/062631
【国際公開番号】WO2009/002611
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】