分波器および通信装置
【課題】送信信号に対して、受信側通過帯域における高減衰特性を有しつつ送信側通過帯域より低域側における高減衰特性をも有する分波器を提供する。
【解決手段】第1の複数の共振子を含んで構成される送信側フィルタと、第2の複数の共振子を含んで構成される受信側フィルタと、インピーダンス整合用の第1のインダクタンス素子と、を備える分波器を、送信側フィルタの通過帯域よりも受信側フィルタの通過帯域の方が高周波側にあり、送信側フィルタが、第1の複数の共振子を直列腕と並列腕とに備えるとともに並列腕に設けられた並列共振子と基準電位とされる端子とを接続する第2のインダクタンス素子を備えるラダーフィルタであり、受信側フィルタの共振子のうちアンテナに最も近い直近共振子が並列腕に設けられてなるとともに、直近共振子の共振周波数が送信側フィルタの通過帯域よりも低い周波数である、ようにした。
【解決手段】第1の複数の共振子を含んで構成される送信側フィルタと、第2の複数の共振子を含んで構成される受信側フィルタと、インピーダンス整合用の第1のインダクタンス素子と、を備える分波器を、送信側フィルタの通過帯域よりも受信側フィルタの通過帯域の方が高周波側にあり、送信側フィルタが、第1の複数の共振子を直列腕と並列腕とに備えるとともに並列腕に設けられた並列共振子と基準電位とされる端子とを接続する第2のインダクタンス素子を備えるラダーフィルタであり、受信側フィルタの共振子のうちアンテナに最も近い直近共振子が並列腕に設けられてなるとともに、直近共振子の共振周波数が送信側フィルタの通過帯域よりも低い周波数である、ようにした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に移動体通信に使用される通信装置、特に該通信装置に搭載される分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯通信端末の多機能化・マルチバンド化に伴い、所謂RFフロントエンド部を構成する部品点数も増加している。その一方で、携帯通信端末自体は小型・軽量に保ちたいという要求がある。そのために、携帯通信端末を構成する各部品に対して、よりいっそうの小型・軽量化が求められている。
【0003】
また、携帯通信端末の各部品の中で、RF段及びIF段にフィルタが多用されるようになっている。これらのフィルタには、低損失かつ通過帯域外の高い減衰特性かつ広い帯域幅が要求されている。
【0004】
携帯通信端末においてアンテナの直下で使用される部品に、分波器がある。分波器とは、異なる周波数帯の信号を分離する機能を持った装置である。例えば、CDMA方式の携帯通信端末では、送信周波数帯(送信帯域)と受信周波数帯(受信帯域)とを分離する分波器が使用されている。
【0005】
分波器は、通過帯域周波数の異なる複数のフィルタ装置(共振子)を接続して構成される。従来は、分波器の各フィルタ装置には誘電体共振器フィルタが用いられていたが、小型化の要求に応えるべく、近年では、弾性表面波フィルタを用いて構成されるようになっている(例えば特許文献1参照)。弾性表面波フィルタとは、圧電基板上に設けたIDT(Inter Digital Transducer)によって励振される弾性表面波を用いたフィルタである。
【0006】
また、挿入損失の劣化を抑制しつつアイソレーション特性を改善することを目的として、ラダーフィルタにて構成した送信側フィルタの初段の共振子を並列共振子とし、その容量を他の並列腕の共振子の容量の1/2未満とした弾性表面波分波器も公知である(例えば特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−330054号公報
【特許文献2】国際公開第2004/112246号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4は、従来の分波器の一例としての分波器D10の構成を示す図である。分波器D10は、基本的構成要素として、第1のフィルタF50と第2のフィルタF60と、これらを接続する共通電極500と、該共通電極500に接続されるアンテナ端子510とを有する。具体的構成に関しては違いがあるものの、係る基本的構成要素については、分波器D10は、特許文献1および特許文献2に開示された分波器とは共通する。ここで、図4の分波器D10は、第1のフィルタF50が送信帯域を通すフィルタ(以下ではTxフィルタとも称する)であり、第2のフィルタF60が受信帯域を通すフィルタ(以下ではRxフィルタとも称する)であるものとする。
【0009】
また、図4に示すように、第1のフィルタF50が、複数の直列共振子F50sと複数の並列共振子F50pとからなるラダー型のフィルタであり、第2のフィルタF60が、複数の直列共振子F60sと複数の並列共振子F60pとからなるラダー型のフィルタであるとする。なお、並列共振子F50pはインダクタンス素子L502を介して接地され、並列共振子F60pはインダクタンス素子L503を介して接地されている。
【0010】
係る分波器D10においては、アンテナ端子510で受信された信号(受信信号)は第2のフィルタF60(Rxフィルタ)を通り、受信端子530を経て図示しない受信回路へと送られる。また、送信端子520に入力された図示しない送信回路からの信号(送信信号)は第1のフィルタF50(Txフィルタ)を通りアンテナ端子510から送信される。
【0011】
しかし、分波器がこのような基本的構成要素のみで構成される場合、送信信号が共通電極500を経てアンテナ端子510から送信されるだけでなく、受信回路側(Rxフィルタの側)に漏洩してしまうことが知られている。そこで、分波器D10には、上述の基本的構成要素に加えて、アンテナ端子510と共通電極500との間に整合回路L501が設けられてなる。整合回路L501を有することによって、分波器D10においては、受信帯域を含むRxフィルタの通過帯域ではアンテナ端子510から送信回路がほぼ無限大のインピーダンスとなるように、また、送信帯域を含むTxフィルタの通過帯域では送信回路から受信回路がほぼ無限大のインピーダンスとなるようにすることができる。整合回路L501は、複数のインダクタやキャパシタなどによって構成してもよいが、係る態様は装置の大型化につながるため、1つのインダクタによって構成する態様が一般的である。
【0012】
なお、分波器を送信帯域よりも受信帯域が高周波側に位置する通信規格に対応させる場合、上述のように1つのインダクタによって整合回路を構成しようとすると、分波器は、Rxフィルタのアンテナ側に最も近い共振子が直列共振子となるように構成される。図4においては、直列共振子F60s1がこれに該当する。係る構成を採るのは、該直列共振子F60s1が有する容量成分と整合回路L501の誘導成分とを利用してインピーダンスを調整するためである。
【0013】
受信回路側への信号の漏洩を抑制させるという点からはさらに、Txフィルタが受信帯域で高減衰性を有することが要求される。
【0014】
係る要求に対しては、図4に示す分波器D10のように、第1のフィルタF50の並列共振子F50pとグランドの間にインダクタンス素子L502を接続する構成で対応するのが一般的である。これは、係る構成を採る場合、並列共振子F50pの持つ容量成分とインダクタンス素子L502の誘導成分により共振が発生し、ある周波数に減衰極を持つ特性が得られることを利用するものである。すなわち、分波器D10を作製する際に、受信帯域にこのような減衰極が発生するように並列共振子F50pの容量成分もしくはインダクタンス素子L502の誘導成分を調整することで、受信帯域で非常に高減衰な特性を得ることができる。
【0015】
しかしながら、係る手法は、該減衰極を設けた受信帯域から離れた周波数帯域における送信信号の減衰特性を悪化させるという欠点を有する。このことは、特に、送信帯域よりも低域側であって該送信帯域の近傍における減衰特性を劣化させるという問題を生じさせる。すなわち、送信信号の入力に際して、送信帯域の低域近傍の周波数成分を有する不要な信号が、アンテナ端子側へ漏洩してしまうことになる。
【0016】
図5は、係る問題の解決策として提案された分波器D20の構成を示す図である。分波器D20は、分波器D10とほぼ同様の構成要素から構成されるが、複数の並列共振子F50pのそれぞれにインダクタンス素子L502aが接続されてなる点で、分波器D10と相違する。それぞれのインダクタンス素子502aは、複数の減衰極が生じるように、互いに異なる誘導成分を有するように設けられてなる。これにより、分波器D20は、分波器D10よりも良好な減衰特性を実現する。しかしながら、分波器D20は、複数のインダクタンス素子を具備することから分波器D10よりもサイズは大きく、小型化という市場の要求に合わないという問題がある。
【0017】
また、特許文献2に開示されている技術は、アイソレーション特性の改善を実現することを目的とするものであり、受信側通過帯域における送信信号に対する高減衰特性を確保した場合に生じる、送信帯域よりも低域側であって該送信帯域の近傍における減衰特性の劣化という問題を解決するものではない。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、減衰特性の優れた分波器、特に、受信側通過帯域における送信信号に対する高減衰特性を有するとともに、送信側通過帯域より低域側において送信信号に対する高減衰特性を有する分波器、およびこれを備える通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の共振子からなる第1の共振子群を含んで構成される送信側フィルタと、前記圧電基板上に設けられ、複数の共振子からなる第2の共振子群を含んで構成される受信側フィルタと、アンテナ接続用の信号線と基準電位とされる端子とを接続するインピーダンス整合用の第1のインダクタンス素子と、を備える分波器であって、前記送信側フィルタの通過帯域よりも前記受信側フィルタの通過帯域の方が高周波側にあり、前記送信側フィルタが、前記第1の共振子群を直列腕と並列腕とに備えるとともに当該並列腕に設けられた並列共振子と基準電位とされる端子とを接続する第2のインダクタンス素子を備えるラダーフィルタであり、前記受信側フィルタを構成する前記第2の共振子群のうちアンテナに最も近い共振子である受信側直近共振子が並列腕に設けられてなるとともに、前記受信側直近共振子の共振周波数が前記送信側フィルタの通過帯域よりも低い周波数である、ことを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1に記載の分波器であって、前記受信側フィルタが、前記第2の共振子群を直列腕と並列腕とに備えるラダーフィルタである、ことを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明は、請求項2に記載の分波器であって、前記受信側フィルタの並列腕に設けられた2以上の共振子のうち、前記受信側直近共振子の容量成分が、他の共振子の容量成分よりも小さい、ことを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明は、請求項3に記載の分波器であって、前記受信側フィルタの並列腕に設けられた前記2以上の共振子が、長手方向が前記圧電基板の弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた1対の櫛歯状電極からなるIDTを含む弾性表面波共振子であり、前記受信側直近共振子の電極対数と前記櫛歯状電極の交差幅との積が、他の共振子の電極対数と前記櫛歯状電極の交差幅との積よりも小さい、ことを特徴とする。
【0023】
請求項5の発明は、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の分波器であって、前記送信側フィルタを構成する前記第1の共振子群のうちアンテナに最も近い共振子である送信側直近共振子が並列腕に設けられてなるとともに、前記送信側直近共振子の共振周波数が前記送信側フィルタの通過帯域よりも低い周波数である、ことを特徴とする。
【0024】
請求項6の発明は、請求項5に記載の分波器であって、前記送信側直近共振子の共振周波数と前記受信側直近共振子の共振周波数とが異なる、ことを特徴とする。
【0025】
請求項7の発明は、請求項1に記載の分波器であって、前記受信側フィルタを構成する前記第2の共振子群のうち直列腕に設けられた共振子が、長手方向が前記圧電基板の弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた1対の櫛歯状電極からなるIDTを少なくとも2つ以上含む多重モード型共振子である、ことを特徴とする。
【0026】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の分波器であって、前記送信側フィルタの並列腕に設けられた共振子と基準電位とされる端子とを接続する第2のインダクタンス素子、をさらに備えることを特徴とする。
【0027】
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の分波器と、前記分波器の前記アンテナ接続用信号線に接続されるアンテナと、前記分波器の前記送信側フィルタ素子に送信信号を与えるとともに、前記分波器の前記受信側フィルタ素子から受信信号が与えられる送受信処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0028】
請求項1ないし請求項8の発明によれば、小型化の要求に応えつつ、通過帯域以外において、特に送信帯域を含む通過帯域よりも低域側において高減衰特性を有する分波器が実現される。具体的には、送信信号のうち、受信側直近共振子の共振周波数に近い信号成分は、受信側直近共振子を経てグランドへ流れることになる。これにより、分波器においては送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性の向上が実現されてなる。すなわち、第2のインダクタンス素子を設けることに起因した、送信側通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性の劣化が抑制されてなる。
【0029】
特に、請求項3および請求項4の発明によれば、受信側直近共振子の共振周波数以外の周波数帯域におけるインピーダンスが高くなるので、送信信号のうち、受信側直近共振子の共振周波数以外の周波数帯域の信号は、受信側直近共振子を介してグランドに流れることがなくなる。これにより、送信側通過帯域での損失を増大させることなく、送信側通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性の劣化を抑制することが実現される。
【0030】
特に、請求項5の発明によれば、送信信号のうち、送信側直近共振子の共振周波数に近い信号成分が、送信側直近共振子を経てグランドへ流れることになる。係る作用が受信側直近共振子を具備することの作用に重畳することにより、減衰特性のさらなる向上が実現される。
【0031】
特に、請求項9の発明によれば、大型の分波器を用いずとも、送信回路と受信回路との間における信号の漏洩を抑えた通信装置が実現できる。すなわち、小型でかつ通話品質に優れた通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係る分波器の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図面においては、同様の構成要素については同じ符号を付している。また、図示されている電極(電極指)の大きさや距離等、あるいは電極の本数や長さや幅等については、あくまで説明のために示す模式的なものであり、実際の分波器における態様が図示された内容に限定されるものではない。
【0033】
<第1の実施の形態>
<分波器の概略構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る分波器D1を説明するための図である。図1(a)は分波器D1の回路図であり、図1(b)は分波器D1を構成する共振子の代表的な構造を模式的に示す上面図である。分波器D1は、送信端子20に接続された送信側フィルタF1と、受信端子30に接続された受信側フィルタF2とが、共通の信号線にてアンテナ端子10と接続される構成を有する。なお、図1(a)における破線および一点鎖線は、それぞれ、分波器D1の構成範囲および送信側フィルタF1と受信側フィルタF2の構成範囲を指し示すために用いたものであり、実際の分波器D1においてこれらの線分が備わっているわけではない(他の図においても同様)。
【0034】
係る分波器D1においては、アンテナ端子10で受信された信号(受信信号)は受信側フィルタF2を通り、受信端子30を経て図示しない受信回路へと送られる。また、送信端子20に入力された図示しない送信回路からの信号(送信信号)は送信側フィルタF1を通りアンテナ端子10から送信される。
【0035】
送信側フィルタF1は、複数の共振子(第1の共振子群)からなるフィルタであり、具体的には、アンテナ端子10と送信端子20とを結ぶ信号線上に直列に接続された(直列腕に設けられた)複数の共振子T1、T2、T4、T6、T8と、該信号線に対して並列に接続された(並列腕に設けられた)複数の共振子T3、T5、T7とからなるラダー型フィルタである。受信側フィルタF2も同様に、複数の共振子(第2の共振子群)からなるフィルタであり、アンテナ端子10と受信端子30とを結ぶ信号線上に直列に接続された(直列腕に設けられた)複数の共振子R2、R4、R6、R8と、該信号線に対して並列に接続された(並列腕に設けられた)複数の共振子R1、R3、R5、R7、R9とからなるラダー型フィルタである。なお、本実施の形態においては、直列腕に設けられた共振子を直列共振子と称し、並列腕に設けられた共振子を並列共振子と称する。また、送信側フィルタF1の通過帯域(送信側通過帯域)よりも受信側フィルタF2の通過帯域(受信側通過帯域)の方が高い周波数帯域となるように、分波器D1を構成するものとする。なお、送信側通過帯域は、送信帯域(送信回路からアンテナへと通過させるべき送信信号の周波数帯域)が含まれるように設定されてなる。受信側通過帯域は、受信帯域(アンテナから受信回路へと通過させるべき受信信号の周波数帯域)が含まれるように設定されてなる。
【0036】
分波器D1は、所定の圧電基板Sの上に形成されるものである。分波器D1を構成する共振子T1〜T9、およびR1〜R9はいずれも、弾性表面波フィルタであり、図1(b)に示すように、IDT1と、反射器2から構成されている。IDT1は、長手方向が圧電基板Sの弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた、1対の櫛歯状電極からなる。反射器2は、IDT1の両端に設けられてなり、IDT1と同じく、長手方向が圧電基板Sの弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた櫛歯状電極を有する。
【0037】
分波器D1の作製に係る詳細は後述する。なお、送信側フィルタF1と受信側フィルタF2との共振子の数,配置、それぞれの共振子のIDTの電極対数、交差幅、反射器の本数などは、設計に合わせて適宜選択すればよい。すなわち、それぞれの共振子が、必ずしも同一の対数や交差幅や共振周波数を有するわけではない。
【0038】
また、送信側フィルタF1および受信側フィルタF2と、アンテナ端子10との間には、アンテナに接続される信号線とグランドとの間を結ぶインピーダンス整合用のインダクタンス素子(第1のインダクタンス素子)L1を備える。すなわち、分波器D1は、受信側通過帯域ではアンテナ端子10と送信端子20に接続される送信回路との間がほぼ無限大のインピーダンスとなるように、かつ、送信側通過帯域では該送信回路と受信端子30に接続される受信回路との間がほぼ無限大のインピーダンスとなるように構成されてなる。
【0039】
加えて、送信側フィルタF1には、受信側通過帯域での減衰特性を向上させる目的で、それぞれの並列共振子T3、T5およびT7とグランドとを接続するインダクタンス素子(第2のインダクタンス素子)L2が備わっている。一方、受信側フィルタF2には、送信側通過帯域での減衰特性を向上させる目的で、それぞれの並列共振子R1、R3、R5、およびR7とグランドとを接続するインダクタンス素子L3を備える。
【0040】
<通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性>
上述のような概略構成を有する本実施の形態に係る分波器D1の特徴的な点は、受信側フィルタF2の、アンテナ側に最も近い(アンテナ端子10に最も近い)共振子を、送信側通過帯域よりも低い共振周波数を有する並列共振子R1にて構成したことである。この並列共振子R1を特に直近共振子R1と称することとする。
【0041】
例えば、分波器D1が824MHz〜849MHzの周波数帯域(送信帯域)を含む送信側通過帯域と869MHz〜894MHzの周波数帯域(受信帯域)を含む受信側通過帯域とを有するように設けられる場合であれば、810MHz前後の共振周波数を有するように直近共振子R1を設けるのが、その好適な一例である。
【0042】
このような直近共振子R1を有することにより、分波器D1においては、送信端子20から入力され送信側フィルタF1を経た送信信号のうち、直近共振子R1の共振周波数に近い信号成分は、直近共振子R1を経てグランドへ流れることになる。これにより、分波器D1においては送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性の向上が実現されてなる。すなわち、インダクタンス素子L2を上述のように設けることに起因した、送信側通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性の劣化が、直近共振子R1を設けたことで抑制されてなる。
【0043】
別の見方をすれば、分波器D1は、送信側フィルタF1の構成は従来のままに、受信側フィルタF2の構成を工夫することで、送信信号に対する減衰特性の向上を実現したものであるともいえる。
【0044】
好ましくは、直近共振子R1は、そのIDTの電極対数と、図1においては幅wで示される交差幅(1対の櫛歯状電極の交差部分の幅)との積が、受信側フィルタF2に備わる他の並列共振子R3、R5、R7、およびR9のIDTの電極対数と交差幅の積よりも小さくなるように設けられる。例えば、並列共振子R3、R5、R7、およびR9の電極対数が80対〜120対程度の範囲で定められ、交差幅が60μm〜140μm程度の範囲で定められる場合であれば、直近共振子R1の電極対数を80対とし、交差幅を12μmとすれば、電極対数と交差幅との積は、並列共振子R3、R5、R7、およびR9については4800〜16800程度となるのに対し、直近共振子R1については960となるので、十分に上述の関係をみたすことになる。
【0045】
このようにした場合、直近共振子R1の容量成分が他の並列共振子R3、R5、R7、およびR9の容量成分よりも小さくなり、直近共振子R1の共振周波数以外の周波数帯域におけるインピーダンスが高くなるので、送信端子20から入力され送信側フィルタF1を経た信号のうち、直近共振子R1の共振周波数以外の周波数帯域の信号は、直近共振子R1を介してグランドに流れることがなくなる。これは、直近共振子R1を設けることに起因して、送信側通過帯域での損失が増大することはないことを意味している。
【0046】
また、図1では送信側フィルタF1を構成する並列共振子の個数が3個の場合を例示しているが、1つの直近共振子R1を設ければ、係る個数によらず上述の効果が得られる。従って、本実施の形態に係る分波器の構成は、並列共振子のそれぞれに対応させて多数のインダクタンス素子を設けることで減衰特性を確保するという従来の態様よりも、分波器のサイズの増大が抑制されたものであるといえる。
【0047】
すなわち、本実施の形態によれば、小型化の要求に応えつつ、通過帯域以外において、特に送信帯域を含む通過帯域よりも低域側において高減衰特性を有する分波器が実現されてなる。
【0048】
<分波器の製造方法>
次に、本実施の形態に係る分波器D1における各部位の材質、および、分波器D1の製造方法について説明する。
【0049】
本実施の形態に係る分波器D1は、所定の圧電基板S上に、送信側フィルタF1および受信側フィルタF2を構成する複数の共振子を図1(b)に示したような構成の弾性表面波フィルタにて形成することにより作製することが出来る。
【0050】
圧電基板Sとしては、36°±10°Yカット−X伝搬のLiTaO3単結晶,64°±10°Yカット−X伝搬のLiNbO3単結晶,45°±10°Xカット−Z伝搬のLi2B4O7単結晶等を用いるのが好ましい。電気機械結合係数が大きく、かつ群遅延時間温度係数が小さいためである。特に、電気機械結合係数の大きな36°±10°Yカット−X伝搬のLiTaO3単結晶を用いるのがよい。また、結晶Y軸方向におけるカット角は36°±10°の範囲内であればよい。それにより十分な圧電特性が得られる。
【0051】
圧電基板Sの厚みは、0.1〜0.5mm程度がよい。0.1mm未満の厚みでは圧電基板Sが脆くなり、0.5mmを超える厚みは、材料コストが大きくなるので好ましくない。また、焦電効果による電極破壊を防ぐために、還元処理を施した圧電基板Sを使用してもよい。また、焦電効果による電極破壊を防ぐために、Fe元素が添加された圧電基板Sを使用してもよい。
【0052】
送信側フィルタF1と受信側フィルタF2とを構成する直列共振子および並列共振子のIDT1は、1対の櫛歯状電極が互いに噛み合わさるように形成する。櫛歯状電極は、複数の電極指をその長手方向が圧電基板Sの弾性表面波伝搬方向と直交するように設ける。電極指の材質としては、AlまたはAl−Cu系,Al−Ti系,Al−Mg系,Al−Cu−Mg系等のAl合金を用いることができる。またはAl−Cu/Cu/Al−Cu,Ti/Al−Cu,Ti/Al−Cu/Ti等の積層膜でIDT1を構成してもよい。また、それぞれの共振子の反射器2も、同様の材質にて形成される。
【0053】
また、これらの共振子は、蒸着法,スパッタリング法又はCVD法等の薄膜形成法により上記材質からなる金属膜を形成し、その後、フォトリソグラフィやRIE等の周知の方法により所定形状にエッチングを行うことによって形成される。各共振子のIDT1および反射器2は、上述したような電極対数および交差幅を有するとともに、電極指の線幅が0.1〜10μm程度、電極指のピッチが0.1〜10μm程度、電極指の厚みが0.1〜0.5μm程度であるのが好適である。
【0054】
インダクタンス素子L1、L2およびL3は、圧電基板S上に共振子と共に形成されるが、これは必須の態様ではなく、必ずしも圧電基板S上に形成されなくてもよい。例えば、分波器D1(厳密には、これらのインダクタンス素子を除く部分)を実装する基板に直接に形成される態様であってもよい。あるいは、分波器D1(同様に、これらのインダクタンス素子を除く部分)とは別に、チップインダクタンスを用意し、それらを位置の基板に実装するなどの手法によっても構成することができる。インダクタンス素子の電極の幅と線路長、及びインダクタンス素子を形成する導電材の種類や厚み等は、所望のインダクタンス値に対して適宜設計することができる。
【0055】
<通信装置への適用>
以上、説明を行ったように、本実施の形態に係る分波器D1は、小型で減衰特性の優れたものとなる。そして、本実施の形態に係る分波器D1を通信装置に適用することができる。
【0056】
図6は、係る通信装置の一例としての通信装置100の構成を模式的に示す図である。通信装置100は、主に送受信機300、アンテナ400、制御部200、操作部600、マイクロフォンMP、及びスピーカSPを備えている。
【0057】
制御部200は、通信装置100の各種動作を統括制御する部位である。この制御部200は、CPU、RAM、及びROM等を備え、ROM内等に格納されたプログラムをCPUが読み込んで実行することで、通信装置100の各種制御や機能が実現される。
【0058】
この送受信機300では、マイクロフォンMPから制御部200を介して入力されたアナログ音声信号がDSP(Digital Signal Processor)301でA/D変換(アナログ信号からデジタル信号へ変換)された後、変調器302で変調され、更に局部発振器320の発振信号を用いてミキサ303で周波数変換される。ミキサ303の出力は送信用バンドパスフィルタ304およびパワーアンプ305を通り、分波器306を通ってアンテナ400に対して送信信号として出力される。
【0059】
また、アンテナ400からの受信信号は分波器306を通ってローノイズアンプ307、受信用バンドパスフィルタ308を経てミキサ309へ入力される。ミキサ309は局部発振器320の発振信号を用いて受信信号の周波数を変換し、当該変換された信号はローパスフィルタ310を通って復調器311で復調され、更にDSP301でD/A変換(デジタル信号からアナログ信号へ変換)された後、制御部200を介してスピーカSPに対してアナログ音声信号として出力される。
【0060】
操作部600は、ユーザーによる通信装置100への各種入力を受け付ける部位であり、例えば、各種ボタン等によって構成される。
【0061】
係る通信装置100の分波器306として、本実施の形態に係る分波器D1を用いることができる。これにより、大型の分波器を用いずとも、送信回路と受信回路との間における信号の漏洩を抑えた通信装置が実現できる。すなわち、小型で通話品質に優れた通信装置を提供することができる。
【0062】
<第2の実施の形態>
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る分波器D2の回路図である。分波器D2は、送信端子20に接続された送信側フィルタF3と、受信端子30に接続された受信側フィルタF2とが、共通の信号線にてアンテナ端子10と接続される構成を有する。
【0063】
分波器D2における信号の送受信の態様は、第1の実施の形態に係る分波器D1と同様である。すなわち、アンテナ端子10で受信された信号(受信信号)は受信側フィルタF2を通り、受信端子30を経て図示しない受信回路へと送られる。また、送信端子20に入力された図示しない送信回路からの信号(送信信号)は送信側フィルタF3を通りアンテナ端子10から送信される。
【0064】
なお、本実施の形態においても、送信側フィルタF3の通過帯域(送信側通過帯域)よりも受信側フィルタF2の通過帯域(受信側通過帯域)の方が高い周波数帯域となるように、分波器D2が構成されてなるものとする。
【0065】
分波器D2は、第1の実施の形態に係る分波器D1とほぼ同様の構成を有するが、送信側フィルタF3の構成のみが分波器D1と相違する。具体的には、分波器D2においては、送信側フィルタF3のアンテナ側に最も近い共振子を送信側通過帯域よりも低い共振周波数を有する並列共振子T9(この並列共振子T9を特に直近共振子T9とも称する)にて構成している点で、これを備えていない(アンテナ側に最も近い共振子が直列共振子T8である)分波器D1と相違する。
【0066】
分波器D2においては、係る構成を有することにより、送信端子20から入力された送信信号のうち、直近共振子T9の共振周波数に近い信号成分が、直近共振子T9を経てグランドへ流れることになる。また、受信側フィルタF2には第1の実施の形態に係る分波器D1と同様に直近共振子R1を備えているので、第1の実施の形態において説明した、直近共振子R1による効果は、分波器D2においても同様に得られる。すなわち、分波器D2においては、これらの直近共振子R1、T9の効果が重畳的に作用することで、周波数特性のさらなる向上が実現される。
【0067】
例えば、それぞれの直近共振子R1、T9が上述の条件を満たしつつ相異なる共振周波数を有するようにして、複数の減衰極を発生させることによって、良好な減衰特性を得ることができる。分波器D2が824MHz〜849MHzの周波数帯域を含む送信側通過帯域と869MHz〜894MHzの周波数帯域を含む受信側通過帯域とを有するように設けられる場合であれば、直近共振子R1が810MHz前後の共振周波数を有するようにする一方、直近共振子T9が750MHz前後の共振周波数を有するようにすることで、第1の実施の形態に係る分波器D1と同程度に送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性の向上を実現しつつ、より挿入損失が小さい分波器を実現することができる。
【0068】
あるいは、直近共振子R1と直近共振子T9とがともに810MHz前後の共振周波数を有するようにするようにしてもよい。係る場合、分波器D2は、直近共振子R1のみを備える分波器D1よりも、送信側通過帯域の高域側近傍における減衰特性の向上が実現されたものとなる。
【0069】
なお、直近共振子T9についても、IDT1の電極対数と交差幅との積が、送信側フィルタF3の他の並列共振子T3、T5、およびT7より小さくすることが望ましい。例えば、並列共振子T3、T5、およびT7の電極対数が80対程度に定められ、交差幅が50μm〜130μm程度の範囲で定められる場合であれば、直近共振子T9の電極対数を80対とし、交差幅を12μmとすれば、電極対数と交差幅との積は、並列共振子T3、T5、およびT7については4000〜10400程度となるのに対し、直近共振子R1については960となるので、十分に上述の関係をみたすことになる。
【0070】
このようにした場合、直近共振子T9の容量成分が他の並列共振子T3、T5、およびT7の容量成分よりも小さくなり、直近共振子T9の共振周波数以外の周波数帯域におけるインピーダンスが高くなるので、送信端子20から入力され送信側フィルタF3を経た信号のうち、直近共振子R1の共振周波数以外の周波数帯域の信号は、直近共振子T9を介してグランドに流れることがなくなるからである。これは、直近共振子T9を設けることに起因して、送信側通過帯域での損失が増大することがないことを意味している。
【0071】
本実施の形態に係る分波器D2は、第1の実施の形態に係る分波器D1と同様の方法によって作製することができる。また、第1の実施の形態と同様に、通信装置にも適用することができる。
【0072】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、インダクタンス素子L2を設けることに起因した、送信側通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性の劣化が抑制されてなる分波器D2を、実現することができる。
【0073】
<第3の実施の形態>
第1および第2の実施の形態においては、送信側フィルタと受信側フィルタとをラダーフィルタにて構成する態様について示したが、分波器の構成態様はこれに限定されるものではない。図3は、本発明の第3の実施の形態に係る分波器D3を説明するための図である。図3(a)は分波器D3の回路図であり、図3(b)は分波器D3を構成する共振子の代表的な構造を模式的に示す上面図である。分波器D3は、送信端子20に接続された送信側フィルタF1と、受信端子30に接続された受信側フィルタF4とが、共通の信号線にてアンテナ端子10と接続される構成を有する。
【0074】
分波器D3における信号の送受信の態様は、第1の実施の形態に係る分波器D1と同様である。すなわち、アンテナ端子10で受信された信号(受信信号)は受信側フィルタF4を通り、受信端子30を経て図示しない受信回路へと送られる。また、送信端子20に入力された図示しない送信回路からの信号(送信信号)は送信側フィルタF1を通りアンテナ端子10から送信される。
【0075】
なお、本実施の形態においても、送信側フィルタF1の通過帯域(送信側通過帯域)よりも受信側フィルタF4の通過帯域(受信側通過帯域)の方が高い周波数帯域となるように、分波器D3が構成されてなるものとする。
【0076】
分波器D3は、受信側フィルタF4の構成が分波器D1と相違する。具体的には、分波器D3の受信側フィルタF4はラダーフィルタではなく、直列腕に設けられた直列共振子R10と並列腕に設けられた並列共振子R11とから構成される。
【0077】
直列共振子R10は、図3(b)に示すような多重モード型フィルタである。直列共振子R10は、フィルタR10aとR10bとが2段に接続された構造を有している。フィルタR10aは、隣り合うように配置された3つのIDT1a、1b、および1cと、これら3つのIDT1a、1b、および1cからなるIDT列の両端に設けられた2つの反射器2とから構成される。ただし、直列共振子R10はこのような2段構成を有するものには限られない。
【0078】
IDT1a、1b、および1cはそれぞれ、長手方向が圧電基板Sの弾性表面波の伝搬方向と直交するように対向配置された、1対の櫛歯状電極からなる。反射器2も、長手方向が該圧電基板Sの弾性表面波の伝搬方向と直交するように設けられた櫛歯状電極を有する。同様に、フィルタR10bは、隣り合うように配置された3つのIDT1d、1e、および1fと、これら3つのIDT1d、1e、および1fからなるIDT列の両端に設けられた2つの反射器2とから構成されてなる。IDT1d、1e、および1fも、はそれぞれ、長手方向が圧電基板Sの弾性表面波の伝搬方向と直交するように対向配置された、1対の櫛歯状電極からなる。反射器2も、長手方向が該圧電基板Sの弾性表面波の伝搬方向と直交するように設けられた櫛歯状電極を有する。
【0079】
ただし、直列共振子R10の各段のフィルタがこのように3つのIDTを有することは必須の態様ではなく、2つ以上のIDTを設ける態様であればよい。
【0080】
このように多重モード型フィルタを受信側フィルタF4の直列共振子R10として使用する態様には、受信信号が入力された場合の受信側通過帯域の低域側における急峻性を向上させることができる、という効果がある。なお、直列共振子R10の電極対数、交差幅、反射器の本数などは、設計に合わせて適宜選択すればよい。
【0081】
本実施の形態においては、このような直列共振子R10を受信側フィルタF4に有する点で相違はあるものの、アンテナ側に最も近い共振子を送信側通過帯域よりも低い共振周波数を有する並列共振子R11(この並列共振子R11を特に直近共振子R11とも称する)にて構成している点は、第1および第2の実施の形態と同様である。
【0082】
例えば、分波器D3が824MHz〜849MHzの周波数帯域を含む送信側通過帯域と869MHz〜894MHzの周波数帯域を含む受信側通過帯域とを有するように設けられる場合であれば、810MHz前後の共振周波数を有するように直近共振子R11を設けるのが、その好適な一例である。
【0083】
このような直近共振子R11を有することにより、分波器D3においても、第1の実施の形態に係る分波器D1と同様に、送信端子20から入力され送信側フィルタF1を経た送信信号のうち、直近共振子R11の共振周波数に近い信号成分は、直近共振子R11を経てグランドへ流れることになる。これにより、分波器D3においては送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性の向上が実現されてなる。すなわち、インダクタンス素子L2を第1の実施の形態のように設けることに起因した、送信側通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性の劣化が、直近共振子R11を設けたことで抑制されてなる。
【0084】
本実施の形態に係る分波器D3も、第1の実施の形態に係る分波器D1と同様の方法によって作製することができる。また、第1の実施の形態と同様に、通信装置にも適用することが出来る。
【0085】
以上、説明したように、本実施の形態によっても、小型化の要求に応えつつ、通過帯域以外において、特に送信帯域を含む通過帯域よりも低域側において高減衰特性を有する分波器が実現されてなる。
【0086】
なお、多重モード型フィルタのIDTの電極対数、交差幅、反射器の電極対数、多重モード型フィルタの個数などは、所望の設計に合わせて適宜選択すればよい。また、多重モード型フィルタの前後にさらに、共振子を信号線に対して直列または並列に接続させて受信側フィルタを構成する態様であってもよい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明の実施の形態についての実施例を示す。なお、これらの実施例はあくまで本発明の実施の形態の一例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、送信側通過帯域が824〜849MHzの周波数帯域(送信帯域)を含み、受信側通過帯域が869〜894MHzの周波数帯域(受信帯域)を含むように、分波器を設計している。
【0088】
(実施例1)
本実施例では、第1の実施の形態に係る分波器D1を作製した。
【0089】
まず、LiTaO3からなる圧電基板を用意し、その主面上に、厚みが6nmのTi薄膜層を形成し、その上に厚みが125nmのAl−Cu薄膜層を形成した。それぞれの層を交互に計3層ずつ積層し、合計6つの薄膜層からなるTi/Al−Cu積層膜を形成した。
【0090】
次に、レジスト塗布装置により、該Ti/Al−Cu積層膜の上にフォトレジストを約0.5μmの厚みに塗布した。そして、縮小投影露光装置(ステッパー)により、図1に示す配置位置を有するように、共振子や信号線、接地線、パッド電極等となるフォトレジストパターンを形成した。その後、現像装置により、不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させた。
【0091】
次に、RIE(Reactive Ion Etching)装置により、必要な箇所を残して残りをエッチングで除去し、図1(a)に示す回路構成を実現する回路パターンを形成した。表1に、その際のそれぞれの共振子の作製条件を示す。なお、より厳密に言えば、係る回路パターンの形成は、多数個取り用の母基板の状態である圧電基板上に、所望の回路パターンを2次元的に繰り返し配置することで行っている。
【0092】
【表1】
【0093】
次に、回路パターンの所定領域上に保護膜を作製した。すなわち、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置により、電極パターン及び圧電基板の主面上にSiO2膜を約0.02μmの厚みに形成した。そして、フォトリソグラフィによってフォトレジストのパターニングを行ない、RIE装置等でフリップチップ用電極部(入出力電極、接地電極などのパッド電極部分、および環状電極の部分)のSiO2膜のエッチングを行なった。
【0094】
次に、スパッタリング装置を使用し、SiO2膜を除去した部分に、Cr,Ni,Auよりなる積層電極を成膜した。このときの電極膜厚は約1μm(Cr0.01μm、Ni1μm、Au0.2μm)とした。そして、フォトレジスト及び不要箇所の積層電極をリフトオフ法により同時に除去し、積層電極が形成された部分を、フリップチップ用バンプを接続するためのフリップチップ用電極部とした。
【0095】
その後、圧電基板に設けられたダイシング線に沿ってダイシング加工を施し、圧電基板S上に電極パターンが形成されたなる状態の多数のチップを得た。
【0096】
次に、インダクタンス素子L1、L2およびL3に相当する線路を内部に設けた回路基板を用意し、その上に、銀からなるパターン電極、入出力導体、接地導体、及び環状導体の上に、導電材を印刷した。導電材としては半田を使用した。そして、フリップチップ実装装置によって、各チップを、電極形成面を下面にして該セラミック回路基板上に仮接着した。仮接着はN2雰囲気中で行った。さらに、N2雰囲気中でベークを行ない、半田を溶融することにより、チップとセラミック回路基板とを接着した。チップに形成された環状電極と回路基板に形成された環状導体とにおいて半田が溶融し、接着することで、チップ表面の電極パターンが気密封止された。
【0097】
さらに、チップが接着されたセラミック回路基板に樹脂を塗布し、N2雰囲気中でベークを行ない、チップを樹脂封止した。
【0098】
最後に、セラミック回路基板にダイシング線に沿ってダイシング加工を施して個片に分割することで、回路基板上に実装された状態の、実施例に係る分波器D1が得られた。なお、個片に分割された状態のセラミック回路基板は、平面サイズが2.5×2.0mmであり、積層構造を有してなる。
【0099】
得られた分波器D1について、送信側通過帯域の近傍における減衰特性をネットワークアナライザ装置により測定した。
【0100】
(実施例2)
本実施例では、共振子の作製条件を表2に示すものとした他は、実施例1と同様に、第1の実施の形態に係る分波器D1を作製し、測定を行った。なお、本実施例においては、直近共振子R1のIDTの電極対数と、交差幅との積が、並列共振子R3、R5、R7、およびR9のIDTの電極対数と交差幅の積よりも小さくなるように、これらの共振子を設けている。
【0101】
【表2】
【0102】
(実施例3)
本実施例では、実施例1と同様の手順で、第2の実施の形態に係る分波器D2を作製し、測定を行った。その際の共振子の作製条件を表3に示す。なお、本実施例においては、表3に示すように、直近共振子R1の共振周波数よりも直近共振子T9の共振周波数の方が小さい値となるようにしている。
【0103】
【表3】
【0104】
(実施例4)
本実施例では、共振子の作製条件を表4に示すものとした他は、実施例3と同様に、第2の実施の形態に係る分波器D2を作製し、測定を行った。なお、本実施例においては、表4に示すように、直近共振子R1の共振周波数と直近共振子T9の共振周波数とが同じ値となるようにしている。また、本実施例においては、直近共振子R1のIDTの電極対数と、交差幅との積が、並列共振子R3、R5、R7、およびR9のIDTの電極対数と交差幅の積よりも小さくなるように、かつ、直近共振子T9のIDTの電極対数と、交差幅との積が、並列共振子T3、T5、およびT7のIDTの電極対数と交差幅の積よりも小さくなるように、これらの共振子を設けている。
【0105】
【表4】
【0106】
(実施例5)
本実施例では、実施例1と同様の手順で、第3の実施の形態に係る分波器D3を作製し、測定を行った。その際の共振子の作製条件を表5に示す。
【0107】
【表5】
【0108】
(比較例1)
比較例1として、直近共振子R1を設けない他は、実施例1に係る分波器D1と同様のフィルタ構成を有する分波器を、実施例1と同様の手順で作製し、測定を行った。
【0109】
(比較例2)
比較例1として、直近共振子R11を設けない他は、実施例5に係る分波器D3と同様のフィルタ構成を有する分波器を、実施例5と同様の手順で作製し、測定を行った。
【0110】
(特性比較)
図7ないし図10は、実施例1ないし実施例4に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における周波数特性(減衰量)を、それぞれ比較例1に係る分波器の周波数特性と対比させて示す図である。また、図11は、実施例5に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における周波数特性を、比較例2に係る分波器の周波数特性と対比させて示す図である。いずれの図においても、横軸は周波数(単位:MHz)を、縦軸は減衰量(単位:dB)を表わしている。実線の特性曲線が実施例に係る分波器の結果を、破線の特性曲線が比較例に係る分波器の結果を示している。
【0111】
また、実施例および比較例についての挿入損失と、送信側通過帯域の低域側近傍における減衰量とを表6に示す。
【0112】
【表6】
【0113】
表6に示す結果からは、直近共振子R9あるいは直近共振子R11を設けた実施例1ないし実施例5に係る分波器のいずれにおいても、これを備えていない比較例1あるいは比較例2に係る分波器よりも、送信側通過帯域の低域側近傍における減衰量が大きくなっていることが分かる。この結果は、係る直近共振子を設けることが、送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性の向上に効果があることを示すものに他ならない。
【0114】
また、実施例2および実施例4の結果を実施例1、実施例3および比較例1の結果と照らし合わせると、実施例2と実施例4の送信側通過帯域の低域側近傍における減衰量は実施例1、実施例3よりは小さいものの比較例1よりも大きくなっており、かつ、実施例2と実施例4の挿入損失は比較例1と同程度となっている。すなわち、直近共振子R9の電極対数と交差幅との積を受信側フィルタF2の並列共振子よりも小さくすることで、挿入損失を維持しつつ、送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性を向上できることが、これらの実施例より確認された。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】第1の実施の形態に係る分波器D1を説明するための図である。
【図2】第2の実施の形態に係る分波器D2の回路図である。
【図3】第3の実施の形態に係る分波器D3を説明するための図である。
【図4】従来の分波器の一例としての分波器D10の構成を示す図である。
【図5】従来の分波器の一例としての分波器D20の構成を示す図である。
【図6】通信装置100の構成を模式的に示す図である。
【図7】実施例1および比較例1に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における減衰特性を示す図である。
【図8】実施例2および比較例1に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における減衰特性を示す図である。
【図9】実施例3および比較例1に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における減衰特性を示す図である。
【図10】実施例4および比較例1に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における減衰特性を示す図である。
【図11】実施例5および比較例2に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における減衰特性を示す図である。
【符号の説明】
【0116】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f IDT
2 反射器
10 アンテナ端子
20 送信端子
30 受信端子
100 通信装置
200 制御部
D1、D2、D3、D10、D20 分波器
F1、F3 送信側フィルタ
F2、F4 受信側フィルタ
L1、L2、L3 インダクタンス素子
R1、R3、R5、R7、R9、R11、T3、T5、T7 並列共振子
R2、R4、R6、R8、R10、T1、T2、T4、T6、T8 直列共振子
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に移動体通信に使用される通信装置、特に該通信装置に搭載される分波器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯通信端末の多機能化・マルチバンド化に伴い、所謂RFフロントエンド部を構成する部品点数も増加している。その一方で、携帯通信端末自体は小型・軽量に保ちたいという要求がある。そのために、携帯通信端末を構成する各部品に対して、よりいっそうの小型・軽量化が求められている。
【0003】
また、携帯通信端末の各部品の中で、RF段及びIF段にフィルタが多用されるようになっている。これらのフィルタには、低損失かつ通過帯域外の高い減衰特性かつ広い帯域幅が要求されている。
【0004】
携帯通信端末においてアンテナの直下で使用される部品に、分波器がある。分波器とは、異なる周波数帯の信号を分離する機能を持った装置である。例えば、CDMA方式の携帯通信端末では、送信周波数帯(送信帯域)と受信周波数帯(受信帯域)とを分離する分波器が使用されている。
【0005】
分波器は、通過帯域周波数の異なる複数のフィルタ装置(共振子)を接続して構成される。従来は、分波器の各フィルタ装置には誘電体共振器フィルタが用いられていたが、小型化の要求に応えるべく、近年では、弾性表面波フィルタを用いて構成されるようになっている(例えば特許文献1参照)。弾性表面波フィルタとは、圧電基板上に設けたIDT(Inter Digital Transducer)によって励振される弾性表面波を用いたフィルタである。
【0006】
また、挿入損失の劣化を抑制しつつアイソレーション特性を改善することを目的として、ラダーフィルタにて構成した送信側フィルタの初段の共振子を並列共振子とし、その容量を他の並列腕の共振子の容量の1/2未満とした弾性表面波分波器も公知である(例えば特許文献2参照)。
【0007】
【特許文献1】特開2002−330054号公報
【特許文献2】国際公開第2004/112246号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図4は、従来の分波器の一例としての分波器D10の構成を示す図である。分波器D10は、基本的構成要素として、第1のフィルタF50と第2のフィルタF60と、これらを接続する共通電極500と、該共通電極500に接続されるアンテナ端子510とを有する。具体的構成に関しては違いがあるものの、係る基本的構成要素については、分波器D10は、特許文献1および特許文献2に開示された分波器とは共通する。ここで、図4の分波器D10は、第1のフィルタF50が送信帯域を通すフィルタ(以下ではTxフィルタとも称する)であり、第2のフィルタF60が受信帯域を通すフィルタ(以下ではRxフィルタとも称する)であるものとする。
【0009】
また、図4に示すように、第1のフィルタF50が、複数の直列共振子F50sと複数の並列共振子F50pとからなるラダー型のフィルタであり、第2のフィルタF60が、複数の直列共振子F60sと複数の並列共振子F60pとからなるラダー型のフィルタであるとする。なお、並列共振子F50pはインダクタンス素子L502を介して接地され、並列共振子F60pはインダクタンス素子L503を介して接地されている。
【0010】
係る分波器D10においては、アンテナ端子510で受信された信号(受信信号)は第2のフィルタF60(Rxフィルタ)を通り、受信端子530を経て図示しない受信回路へと送られる。また、送信端子520に入力された図示しない送信回路からの信号(送信信号)は第1のフィルタF50(Txフィルタ)を通りアンテナ端子510から送信される。
【0011】
しかし、分波器がこのような基本的構成要素のみで構成される場合、送信信号が共通電極500を経てアンテナ端子510から送信されるだけでなく、受信回路側(Rxフィルタの側)に漏洩してしまうことが知られている。そこで、分波器D10には、上述の基本的構成要素に加えて、アンテナ端子510と共通電極500との間に整合回路L501が設けられてなる。整合回路L501を有することによって、分波器D10においては、受信帯域を含むRxフィルタの通過帯域ではアンテナ端子510から送信回路がほぼ無限大のインピーダンスとなるように、また、送信帯域を含むTxフィルタの通過帯域では送信回路から受信回路がほぼ無限大のインピーダンスとなるようにすることができる。整合回路L501は、複数のインダクタやキャパシタなどによって構成してもよいが、係る態様は装置の大型化につながるため、1つのインダクタによって構成する態様が一般的である。
【0012】
なお、分波器を送信帯域よりも受信帯域が高周波側に位置する通信規格に対応させる場合、上述のように1つのインダクタによって整合回路を構成しようとすると、分波器は、Rxフィルタのアンテナ側に最も近い共振子が直列共振子となるように構成される。図4においては、直列共振子F60s1がこれに該当する。係る構成を採るのは、該直列共振子F60s1が有する容量成分と整合回路L501の誘導成分とを利用してインピーダンスを調整するためである。
【0013】
受信回路側への信号の漏洩を抑制させるという点からはさらに、Txフィルタが受信帯域で高減衰性を有することが要求される。
【0014】
係る要求に対しては、図4に示す分波器D10のように、第1のフィルタF50の並列共振子F50pとグランドの間にインダクタンス素子L502を接続する構成で対応するのが一般的である。これは、係る構成を採る場合、並列共振子F50pの持つ容量成分とインダクタンス素子L502の誘導成分により共振が発生し、ある周波数に減衰極を持つ特性が得られることを利用するものである。すなわち、分波器D10を作製する際に、受信帯域にこのような減衰極が発生するように並列共振子F50pの容量成分もしくはインダクタンス素子L502の誘導成分を調整することで、受信帯域で非常に高減衰な特性を得ることができる。
【0015】
しかしながら、係る手法は、該減衰極を設けた受信帯域から離れた周波数帯域における送信信号の減衰特性を悪化させるという欠点を有する。このことは、特に、送信帯域よりも低域側であって該送信帯域の近傍における減衰特性を劣化させるという問題を生じさせる。すなわち、送信信号の入力に際して、送信帯域の低域近傍の周波数成分を有する不要な信号が、アンテナ端子側へ漏洩してしまうことになる。
【0016】
図5は、係る問題の解決策として提案された分波器D20の構成を示す図である。分波器D20は、分波器D10とほぼ同様の構成要素から構成されるが、複数の並列共振子F50pのそれぞれにインダクタンス素子L502aが接続されてなる点で、分波器D10と相違する。それぞれのインダクタンス素子502aは、複数の減衰極が生じるように、互いに異なる誘導成分を有するように設けられてなる。これにより、分波器D20は、分波器D10よりも良好な減衰特性を実現する。しかしながら、分波器D20は、複数のインダクタンス素子を具備することから分波器D10よりもサイズは大きく、小型化という市場の要求に合わないという問題がある。
【0017】
また、特許文献2に開示されている技術は、アイソレーション特性の改善を実現することを目的とするものであり、受信側通過帯域における送信信号に対する高減衰特性を確保した場合に生じる、送信帯域よりも低域側であって該送信帯域の近傍における減衰特性の劣化という問題を解決するものではない。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、減衰特性の優れた分波器、特に、受信側通過帯域における送信信号に対する高減衰特性を有するとともに、送信側通過帯域より低域側において送信信号に対する高減衰特性を有する分波器、およびこれを備える通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、複数の共振子からなる第1の共振子群を含んで構成される送信側フィルタと、前記圧電基板上に設けられ、複数の共振子からなる第2の共振子群を含んで構成される受信側フィルタと、アンテナ接続用の信号線と基準電位とされる端子とを接続するインピーダンス整合用の第1のインダクタンス素子と、を備える分波器であって、前記送信側フィルタの通過帯域よりも前記受信側フィルタの通過帯域の方が高周波側にあり、前記送信側フィルタが、前記第1の共振子群を直列腕と並列腕とに備えるとともに当該並列腕に設けられた並列共振子と基準電位とされる端子とを接続する第2のインダクタンス素子を備えるラダーフィルタであり、前記受信側フィルタを構成する前記第2の共振子群のうちアンテナに最も近い共振子である受信側直近共振子が並列腕に設けられてなるとともに、前記受信側直近共振子の共振周波数が前記送信側フィルタの通過帯域よりも低い周波数である、ことを特徴とする。
【0020】
請求項2の発明は、請求項1に記載の分波器であって、前記受信側フィルタが、前記第2の共振子群を直列腕と並列腕とに備えるラダーフィルタである、ことを特徴とする。
【0021】
請求項3の発明は、請求項2に記載の分波器であって、前記受信側フィルタの並列腕に設けられた2以上の共振子のうち、前記受信側直近共振子の容量成分が、他の共振子の容量成分よりも小さい、ことを特徴とする。
【0022】
請求項4の発明は、請求項3に記載の分波器であって、前記受信側フィルタの並列腕に設けられた前記2以上の共振子が、長手方向が前記圧電基板の弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた1対の櫛歯状電極からなるIDTを含む弾性表面波共振子であり、前記受信側直近共振子の電極対数と前記櫛歯状電極の交差幅との積が、他の共振子の電極対数と前記櫛歯状電極の交差幅との積よりも小さい、ことを特徴とする。
【0023】
請求項5の発明は、請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の分波器であって、前記送信側フィルタを構成する前記第1の共振子群のうちアンテナに最も近い共振子である送信側直近共振子が並列腕に設けられてなるとともに、前記送信側直近共振子の共振周波数が前記送信側フィルタの通過帯域よりも低い周波数である、ことを特徴とする。
【0024】
請求項6の発明は、請求項5に記載の分波器であって、前記送信側直近共振子の共振周波数と前記受信側直近共振子の共振周波数とが異なる、ことを特徴とする。
【0025】
請求項7の発明は、請求項1に記載の分波器であって、前記受信側フィルタを構成する前記第2の共振子群のうち直列腕に設けられた共振子が、長手方向が前記圧電基板の弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた1対の櫛歯状電極からなるIDTを少なくとも2つ以上含む多重モード型共振子である、ことを特徴とする。
【0026】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の分波器であって、前記送信側フィルタの並列腕に設けられた共振子と基準電位とされる端子とを接続する第2のインダクタンス素子、をさらに備えることを特徴とする。
【0027】
請求項9の発明は、請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の分波器と、前記分波器の前記アンテナ接続用信号線に接続されるアンテナと、前記分波器の前記送信側フィルタ素子に送信信号を与えるとともに、前記分波器の前記受信側フィルタ素子から受信信号が与えられる送受信処理部と、を備える。
【発明の効果】
【0028】
請求項1ないし請求項8の発明によれば、小型化の要求に応えつつ、通過帯域以外において、特に送信帯域を含む通過帯域よりも低域側において高減衰特性を有する分波器が実現される。具体的には、送信信号のうち、受信側直近共振子の共振周波数に近い信号成分は、受信側直近共振子を経てグランドへ流れることになる。これにより、分波器においては送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性の向上が実現されてなる。すなわち、第2のインダクタンス素子を設けることに起因した、送信側通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性の劣化が抑制されてなる。
【0029】
特に、請求項3および請求項4の発明によれば、受信側直近共振子の共振周波数以外の周波数帯域におけるインピーダンスが高くなるので、送信信号のうち、受信側直近共振子の共振周波数以外の周波数帯域の信号は、受信側直近共振子を介してグランドに流れることがなくなる。これにより、送信側通過帯域での損失を増大させることなく、送信側通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性の劣化を抑制することが実現される。
【0030】
特に、請求項5の発明によれば、送信信号のうち、送信側直近共振子の共振周波数に近い信号成分が、送信側直近共振子を経てグランドへ流れることになる。係る作用が受信側直近共振子を具備することの作用に重畳することにより、減衰特性のさらなる向上が実現される。
【0031】
特に、請求項9の発明によれば、大型の分波器を用いずとも、送信回路と受信回路との間における信号の漏洩を抑えた通信装置が実現できる。すなわち、小型でかつ通話品質に優れた通信装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係る分波器の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図面においては、同様の構成要素については同じ符号を付している。また、図示されている電極(電極指)の大きさや距離等、あるいは電極の本数や長さや幅等については、あくまで説明のために示す模式的なものであり、実際の分波器における態様が図示された内容に限定されるものではない。
【0033】
<第1の実施の形態>
<分波器の概略構成>
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る分波器D1を説明するための図である。図1(a)は分波器D1の回路図であり、図1(b)は分波器D1を構成する共振子の代表的な構造を模式的に示す上面図である。分波器D1は、送信端子20に接続された送信側フィルタF1と、受信端子30に接続された受信側フィルタF2とが、共通の信号線にてアンテナ端子10と接続される構成を有する。なお、図1(a)における破線および一点鎖線は、それぞれ、分波器D1の構成範囲および送信側フィルタF1と受信側フィルタF2の構成範囲を指し示すために用いたものであり、実際の分波器D1においてこれらの線分が備わっているわけではない(他の図においても同様)。
【0034】
係る分波器D1においては、アンテナ端子10で受信された信号(受信信号)は受信側フィルタF2を通り、受信端子30を経て図示しない受信回路へと送られる。また、送信端子20に入力された図示しない送信回路からの信号(送信信号)は送信側フィルタF1を通りアンテナ端子10から送信される。
【0035】
送信側フィルタF1は、複数の共振子(第1の共振子群)からなるフィルタであり、具体的には、アンテナ端子10と送信端子20とを結ぶ信号線上に直列に接続された(直列腕に設けられた)複数の共振子T1、T2、T4、T6、T8と、該信号線に対して並列に接続された(並列腕に設けられた)複数の共振子T3、T5、T7とからなるラダー型フィルタである。受信側フィルタF2も同様に、複数の共振子(第2の共振子群)からなるフィルタであり、アンテナ端子10と受信端子30とを結ぶ信号線上に直列に接続された(直列腕に設けられた)複数の共振子R2、R4、R6、R8と、該信号線に対して並列に接続された(並列腕に設けられた)複数の共振子R1、R3、R5、R7、R9とからなるラダー型フィルタである。なお、本実施の形態においては、直列腕に設けられた共振子を直列共振子と称し、並列腕に設けられた共振子を並列共振子と称する。また、送信側フィルタF1の通過帯域(送信側通過帯域)よりも受信側フィルタF2の通過帯域(受信側通過帯域)の方が高い周波数帯域となるように、分波器D1を構成するものとする。なお、送信側通過帯域は、送信帯域(送信回路からアンテナへと通過させるべき送信信号の周波数帯域)が含まれるように設定されてなる。受信側通過帯域は、受信帯域(アンテナから受信回路へと通過させるべき受信信号の周波数帯域)が含まれるように設定されてなる。
【0036】
分波器D1は、所定の圧電基板Sの上に形成されるものである。分波器D1を構成する共振子T1〜T9、およびR1〜R9はいずれも、弾性表面波フィルタであり、図1(b)に示すように、IDT1と、反射器2から構成されている。IDT1は、長手方向が圧電基板Sの弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた、1対の櫛歯状電極からなる。反射器2は、IDT1の両端に設けられてなり、IDT1と同じく、長手方向が圧電基板Sの弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた櫛歯状電極を有する。
【0037】
分波器D1の作製に係る詳細は後述する。なお、送信側フィルタF1と受信側フィルタF2との共振子の数,配置、それぞれの共振子のIDTの電極対数、交差幅、反射器の本数などは、設計に合わせて適宜選択すればよい。すなわち、それぞれの共振子が、必ずしも同一の対数や交差幅や共振周波数を有するわけではない。
【0038】
また、送信側フィルタF1および受信側フィルタF2と、アンテナ端子10との間には、アンテナに接続される信号線とグランドとの間を結ぶインピーダンス整合用のインダクタンス素子(第1のインダクタンス素子)L1を備える。すなわち、分波器D1は、受信側通過帯域ではアンテナ端子10と送信端子20に接続される送信回路との間がほぼ無限大のインピーダンスとなるように、かつ、送信側通過帯域では該送信回路と受信端子30に接続される受信回路との間がほぼ無限大のインピーダンスとなるように構成されてなる。
【0039】
加えて、送信側フィルタF1には、受信側通過帯域での減衰特性を向上させる目的で、それぞれの並列共振子T3、T5およびT7とグランドとを接続するインダクタンス素子(第2のインダクタンス素子)L2が備わっている。一方、受信側フィルタF2には、送信側通過帯域での減衰特性を向上させる目的で、それぞれの並列共振子R1、R3、R5、およびR7とグランドとを接続するインダクタンス素子L3を備える。
【0040】
<通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性>
上述のような概略構成を有する本実施の形態に係る分波器D1の特徴的な点は、受信側フィルタF2の、アンテナ側に最も近い(アンテナ端子10に最も近い)共振子を、送信側通過帯域よりも低い共振周波数を有する並列共振子R1にて構成したことである。この並列共振子R1を特に直近共振子R1と称することとする。
【0041】
例えば、分波器D1が824MHz〜849MHzの周波数帯域(送信帯域)を含む送信側通過帯域と869MHz〜894MHzの周波数帯域(受信帯域)を含む受信側通過帯域とを有するように設けられる場合であれば、810MHz前後の共振周波数を有するように直近共振子R1を設けるのが、その好適な一例である。
【0042】
このような直近共振子R1を有することにより、分波器D1においては、送信端子20から入力され送信側フィルタF1を経た送信信号のうち、直近共振子R1の共振周波数に近い信号成分は、直近共振子R1を経てグランドへ流れることになる。これにより、分波器D1においては送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性の向上が実現されてなる。すなわち、インダクタンス素子L2を上述のように設けることに起因した、送信側通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性の劣化が、直近共振子R1を設けたことで抑制されてなる。
【0043】
別の見方をすれば、分波器D1は、送信側フィルタF1の構成は従来のままに、受信側フィルタF2の構成を工夫することで、送信信号に対する減衰特性の向上を実現したものであるともいえる。
【0044】
好ましくは、直近共振子R1は、そのIDTの電極対数と、図1においては幅wで示される交差幅(1対の櫛歯状電極の交差部分の幅)との積が、受信側フィルタF2に備わる他の並列共振子R3、R5、R7、およびR9のIDTの電極対数と交差幅の積よりも小さくなるように設けられる。例えば、並列共振子R3、R5、R7、およびR9の電極対数が80対〜120対程度の範囲で定められ、交差幅が60μm〜140μm程度の範囲で定められる場合であれば、直近共振子R1の電極対数を80対とし、交差幅を12μmとすれば、電極対数と交差幅との積は、並列共振子R3、R5、R7、およびR9については4800〜16800程度となるのに対し、直近共振子R1については960となるので、十分に上述の関係をみたすことになる。
【0045】
このようにした場合、直近共振子R1の容量成分が他の並列共振子R3、R5、R7、およびR9の容量成分よりも小さくなり、直近共振子R1の共振周波数以外の周波数帯域におけるインピーダンスが高くなるので、送信端子20から入力され送信側フィルタF1を経た信号のうち、直近共振子R1の共振周波数以外の周波数帯域の信号は、直近共振子R1を介してグランドに流れることがなくなる。これは、直近共振子R1を設けることに起因して、送信側通過帯域での損失が増大することはないことを意味している。
【0046】
また、図1では送信側フィルタF1を構成する並列共振子の個数が3個の場合を例示しているが、1つの直近共振子R1を設ければ、係る個数によらず上述の効果が得られる。従って、本実施の形態に係る分波器の構成は、並列共振子のそれぞれに対応させて多数のインダクタンス素子を設けることで減衰特性を確保するという従来の態様よりも、分波器のサイズの増大が抑制されたものであるといえる。
【0047】
すなわち、本実施の形態によれば、小型化の要求に応えつつ、通過帯域以外において、特に送信帯域を含む通過帯域よりも低域側において高減衰特性を有する分波器が実現されてなる。
【0048】
<分波器の製造方法>
次に、本実施の形態に係る分波器D1における各部位の材質、および、分波器D1の製造方法について説明する。
【0049】
本実施の形態に係る分波器D1は、所定の圧電基板S上に、送信側フィルタF1および受信側フィルタF2を構成する複数の共振子を図1(b)に示したような構成の弾性表面波フィルタにて形成することにより作製することが出来る。
【0050】
圧電基板Sとしては、36°±10°Yカット−X伝搬のLiTaO3単結晶,64°±10°Yカット−X伝搬のLiNbO3単結晶,45°±10°Xカット−Z伝搬のLi2B4O7単結晶等を用いるのが好ましい。電気機械結合係数が大きく、かつ群遅延時間温度係数が小さいためである。特に、電気機械結合係数の大きな36°±10°Yカット−X伝搬のLiTaO3単結晶を用いるのがよい。また、結晶Y軸方向におけるカット角は36°±10°の範囲内であればよい。それにより十分な圧電特性が得られる。
【0051】
圧電基板Sの厚みは、0.1〜0.5mm程度がよい。0.1mm未満の厚みでは圧電基板Sが脆くなり、0.5mmを超える厚みは、材料コストが大きくなるので好ましくない。また、焦電効果による電極破壊を防ぐために、還元処理を施した圧電基板Sを使用してもよい。また、焦電効果による電極破壊を防ぐために、Fe元素が添加された圧電基板Sを使用してもよい。
【0052】
送信側フィルタF1と受信側フィルタF2とを構成する直列共振子および並列共振子のIDT1は、1対の櫛歯状電極が互いに噛み合わさるように形成する。櫛歯状電極は、複数の電極指をその長手方向が圧電基板Sの弾性表面波伝搬方向と直交するように設ける。電極指の材質としては、AlまたはAl−Cu系,Al−Ti系,Al−Mg系,Al−Cu−Mg系等のAl合金を用いることができる。またはAl−Cu/Cu/Al−Cu,Ti/Al−Cu,Ti/Al−Cu/Ti等の積層膜でIDT1を構成してもよい。また、それぞれの共振子の反射器2も、同様の材質にて形成される。
【0053】
また、これらの共振子は、蒸着法,スパッタリング法又はCVD法等の薄膜形成法により上記材質からなる金属膜を形成し、その後、フォトリソグラフィやRIE等の周知の方法により所定形状にエッチングを行うことによって形成される。各共振子のIDT1および反射器2は、上述したような電極対数および交差幅を有するとともに、電極指の線幅が0.1〜10μm程度、電極指のピッチが0.1〜10μm程度、電極指の厚みが0.1〜0.5μm程度であるのが好適である。
【0054】
インダクタンス素子L1、L2およびL3は、圧電基板S上に共振子と共に形成されるが、これは必須の態様ではなく、必ずしも圧電基板S上に形成されなくてもよい。例えば、分波器D1(厳密には、これらのインダクタンス素子を除く部分)を実装する基板に直接に形成される態様であってもよい。あるいは、分波器D1(同様に、これらのインダクタンス素子を除く部分)とは別に、チップインダクタンスを用意し、それらを位置の基板に実装するなどの手法によっても構成することができる。インダクタンス素子の電極の幅と線路長、及びインダクタンス素子を形成する導電材の種類や厚み等は、所望のインダクタンス値に対して適宜設計することができる。
【0055】
<通信装置への適用>
以上、説明を行ったように、本実施の形態に係る分波器D1は、小型で減衰特性の優れたものとなる。そして、本実施の形態に係る分波器D1を通信装置に適用することができる。
【0056】
図6は、係る通信装置の一例としての通信装置100の構成を模式的に示す図である。通信装置100は、主に送受信機300、アンテナ400、制御部200、操作部600、マイクロフォンMP、及びスピーカSPを備えている。
【0057】
制御部200は、通信装置100の各種動作を統括制御する部位である。この制御部200は、CPU、RAM、及びROM等を備え、ROM内等に格納されたプログラムをCPUが読み込んで実行することで、通信装置100の各種制御や機能が実現される。
【0058】
この送受信機300では、マイクロフォンMPから制御部200を介して入力されたアナログ音声信号がDSP(Digital Signal Processor)301でA/D変換(アナログ信号からデジタル信号へ変換)された後、変調器302で変調され、更に局部発振器320の発振信号を用いてミキサ303で周波数変換される。ミキサ303の出力は送信用バンドパスフィルタ304およびパワーアンプ305を通り、分波器306を通ってアンテナ400に対して送信信号として出力される。
【0059】
また、アンテナ400からの受信信号は分波器306を通ってローノイズアンプ307、受信用バンドパスフィルタ308を経てミキサ309へ入力される。ミキサ309は局部発振器320の発振信号を用いて受信信号の周波数を変換し、当該変換された信号はローパスフィルタ310を通って復調器311で復調され、更にDSP301でD/A変換(デジタル信号からアナログ信号へ変換)された後、制御部200を介してスピーカSPに対してアナログ音声信号として出力される。
【0060】
操作部600は、ユーザーによる通信装置100への各種入力を受け付ける部位であり、例えば、各種ボタン等によって構成される。
【0061】
係る通信装置100の分波器306として、本実施の形態に係る分波器D1を用いることができる。これにより、大型の分波器を用いずとも、送信回路と受信回路との間における信号の漏洩を抑えた通信装置が実現できる。すなわち、小型で通話品質に優れた通信装置を提供することができる。
【0062】
<第2の実施の形態>
図2は、本発明の第2の実施の形態に係る分波器D2の回路図である。分波器D2は、送信端子20に接続された送信側フィルタF3と、受信端子30に接続された受信側フィルタF2とが、共通の信号線にてアンテナ端子10と接続される構成を有する。
【0063】
分波器D2における信号の送受信の態様は、第1の実施の形態に係る分波器D1と同様である。すなわち、アンテナ端子10で受信された信号(受信信号)は受信側フィルタF2を通り、受信端子30を経て図示しない受信回路へと送られる。また、送信端子20に入力された図示しない送信回路からの信号(送信信号)は送信側フィルタF3を通りアンテナ端子10から送信される。
【0064】
なお、本実施の形態においても、送信側フィルタF3の通過帯域(送信側通過帯域)よりも受信側フィルタF2の通過帯域(受信側通過帯域)の方が高い周波数帯域となるように、分波器D2が構成されてなるものとする。
【0065】
分波器D2は、第1の実施の形態に係る分波器D1とほぼ同様の構成を有するが、送信側フィルタF3の構成のみが分波器D1と相違する。具体的には、分波器D2においては、送信側フィルタF3のアンテナ側に最も近い共振子を送信側通過帯域よりも低い共振周波数を有する並列共振子T9(この並列共振子T9を特に直近共振子T9とも称する)にて構成している点で、これを備えていない(アンテナ側に最も近い共振子が直列共振子T8である)分波器D1と相違する。
【0066】
分波器D2においては、係る構成を有することにより、送信端子20から入力された送信信号のうち、直近共振子T9の共振周波数に近い信号成分が、直近共振子T9を経てグランドへ流れることになる。また、受信側フィルタF2には第1の実施の形態に係る分波器D1と同様に直近共振子R1を備えているので、第1の実施の形態において説明した、直近共振子R1による効果は、分波器D2においても同様に得られる。すなわち、分波器D2においては、これらの直近共振子R1、T9の効果が重畳的に作用することで、周波数特性のさらなる向上が実現される。
【0067】
例えば、それぞれの直近共振子R1、T9が上述の条件を満たしつつ相異なる共振周波数を有するようにして、複数の減衰極を発生させることによって、良好な減衰特性を得ることができる。分波器D2が824MHz〜849MHzの周波数帯域を含む送信側通過帯域と869MHz〜894MHzの周波数帯域を含む受信側通過帯域とを有するように設けられる場合であれば、直近共振子R1が810MHz前後の共振周波数を有するようにする一方、直近共振子T9が750MHz前後の共振周波数を有するようにすることで、第1の実施の形態に係る分波器D1と同程度に送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性の向上を実現しつつ、より挿入損失が小さい分波器を実現することができる。
【0068】
あるいは、直近共振子R1と直近共振子T9とがともに810MHz前後の共振周波数を有するようにするようにしてもよい。係る場合、分波器D2は、直近共振子R1のみを備える分波器D1よりも、送信側通過帯域の高域側近傍における減衰特性の向上が実現されたものとなる。
【0069】
なお、直近共振子T9についても、IDT1の電極対数と交差幅との積が、送信側フィルタF3の他の並列共振子T3、T5、およびT7より小さくすることが望ましい。例えば、並列共振子T3、T5、およびT7の電極対数が80対程度に定められ、交差幅が50μm〜130μm程度の範囲で定められる場合であれば、直近共振子T9の電極対数を80対とし、交差幅を12μmとすれば、電極対数と交差幅との積は、並列共振子T3、T5、およびT7については4000〜10400程度となるのに対し、直近共振子R1については960となるので、十分に上述の関係をみたすことになる。
【0070】
このようにした場合、直近共振子T9の容量成分が他の並列共振子T3、T5、およびT7の容量成分よりも小さくなり、直近共振子T9の共振周波数以外の周波数帯域におけるインピーダンスが高くなるので、送信端子20から入力され送信側フィルタF3を経た信号のうち、直近共振子R1の共振周波数以外の周波数帯域の信号は、直近共振子T9を介してグランドに流れることがなくなるからである。これは、直近共振子T9を設けることに起因して、送信側通過帯域での損失が増大することがないことを意味している。
【0071】
本実施の形態に係る分波器D2は、第1の実施の形態に係る分波器D1と同様の方法によって作製することができる。また、第1の実施の形態と同様に、通信装置にも適用することができる。
【0072】
以上、説明したように、本実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様に、インダクタンス素子L2を設けることに起因した、送信側通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性の劣化が抑制されてなる分波器D2を、実現することができる。
【0073】
<第3の実施の形態>
第1および第2の実施の形態においては、送信側フィルタと受信側フィルタとをラダーフィルタにて構成する態様について示したが、分波器の構成態様はこれに限定されるものではない。図3は、本発明の第3の実施の形態に係る分波器D3を説明するための図である。図3(a)は分波器D3の回路図であり、図3(b)は分波器D3を構成する共振子の代表的な構造を模式的に示す上面図である。分波器D3は、送信端子20に接続された送信側フィルタF1と、受信端子30に接続された受信側フィルタF4とが、共通の信号線にてアンテナ端子10と接続される構成を有する。
【0074】
分波器D3における信号の送受信の態様は、第1の実施の形態に係る分波器D1と同様である。すなわち、アンテナ端子10で受信された信号(受信信号)は受信側フィルタF4を通り、受信端子30を経て図示しない受信回路へと送られる。また、送信端子20に入力された図示しない送信回路からの信号(送信信号)は送信側フィルタF1を通りアンテナ端子10から送信される。
【0075】
なお、本実施の形態においても、送信側フィルタF1の通過帯域(送信側通過帯域)よりも受信側フィルタF4の通過帯域(受信側通過帯域)の方が高い周波数帯域となるように、分波器D3が構成されてなるものとする。
【0076】
分波器D3は、受信側フィルタF4の構成が分波器D1と相違する。具体的には、分波器D3の受信側フィルタF4はラダーフィルタではなく、直列腕に設けられた直列共振子R10と並列腕に設けられた並列共振子R11とから構成される。
【0077】
直列共振子R10は、図3(b)に示すような多重モード型フィルタである。直列共振子R10は、フィルタR10aとR10bとが2段に接続された構造を有している。フィルタR10aは、隣り合うように配置された3つのIDT1a、1b、および1cと、これら3つのIDT1a、1b、および1cからなるIDT列の両端に設けられた2つの反射器2とから構成される。ただし、直列共振子R10はこのような2段構成を有するものには限られない。
【0078】
IDT1a、1b、および1cはそれぞれ、長手方向が圧電基板Sの弾性表面波の伝搬方向と直交するように対向配置された、1対の櫛歯状電極からなる。反射器2も、長手方向が該圧電基板Sの弾性表面波の伝搬方向と直交するように設けられた櫛歯状電極を有する。同様に、フィルタR10bは、隣り合うように配置された3つのIDT1d、1e、および1fと、これら3つのIDT1d、1e、および1fからなるIDT列の両端に設けられた2つの反射器2とから構成されてなる。IDT1d、1e、および1fも、はそれぞれ、長手方向が圧電基板Sの弾性表面波の伝搬方向と直交するように対向配置された、1対の櫛歯状電極からなる。反射器2も、長手方向が該圧電基板Sの弾性表面波の伝搬方向と直交するように設けられた櫛歯状電極を有する。
【0079】
ただし、直列共振子R10の各段のフィルタがこのように3つのIDTを有することは必須の態様ではなく、2つ以上のIDTを設ける態様であればよい。
【0080】
このように多重モード型フィルタを受信側フィルタF4の直列共振子R10として使用する態様には、受信信号が入力された場合の受信側通過帯域の低域側における急峻性を向上させることができる、という効果がある。なお、直列共振子R10の電極対数、交差幅、反射器の本数などは、設計に合わせて適宜選択すればよい。
【0081】
本実施の形態においては、このような直列共振子R10を受信側フィルタF4に有する点で相違はあるものの、アンテナ側に最も近い共振子を送信側通過帯域よりも低い共振周波数を有する並列共振子R11(この並列共振子R11を特に直近共振子R11とも称する)にて構成している点は、第1および第2の実施の形態と同様である。
【0082】
例えば、分波器D3が824MHz〜849MHzの周波数帯域を含む送信側通過帯域と869MHz〜894MHzの周波数帯域を含む受信側通過帯域とを有するように設けられる場合であれば、810MHz前後の共振周波数を有するように直近共振子R11を設けるのが、その好適な一例である。
【0083】
このような直近共振子R11を有することにより、分波器D3においても、第1の実施の形態に係る分波器D1と同様に、送信端子20から入力され送信側フィルタF1を経た送信信号のうち、直近共振子R11の共振周波数に近い信号成分は、直近共振子R11を経てグランドへ流れることになる。これにより、分波器D3においては送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性の向上が実現されてなる。すなわち、インダクタンス素子L2を第1の実施の形態のように設けることに起因した、送信側通過帯域の低域側近傍における送信信号の減衰特性の劣化が、直近共振子R11を設けたことで抑制されてなる。
【0084】
本実施の形態に係る分波器D3も、第1の実施の形態に係る分波器D1と同様の方法によって作製することができる。また、第1の実施の形態と同様に、通信装置にも適用することが出来る。
【0085】
以上、説明したように、本実施の形態によっても、小型化の要求に応えつつ、通過帯域以外において、特に送信帯域を含む通過帯域よりも低域側において高減衰特性を有する分波器が実現されてなる。
【0086】
なお、多重モード型フィルタのIDTの電極対数、交差幅、反射器の電極対数、多重モード型フィルタの個数などは、所望の設計に合わせて適宜選択すればよい。また、多重モード型フィルタの前後にさらに、共振子を信号線に対して直列または並列に接続させて受信側フィルタを構成する態様であってもよい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明の実施の形態についての実施例を示す。なお、これらの実施例はあくまで本発明の実施の形態の一例示であって、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例においては、送信側通過帯域が824〜849MHzの周波数帯域(送信帯域)を含み、受信側通過帯域が869〜894MHzの周波数帯域(受信帯域)を含むように、分波器を設計している。
【0088】
(実施例1)
本実施例では、第1の実施の形態に係る分波器D1を作製した。
【0089】
まず、LiTaO3からなる圧電基板を用意し、その主面上に、厚みが6nmのTi薄膜層を形成し、その上に厚みが125nmのAl−Cu薄膜層を形成した。それぞれの層を交互に計3層ずつ積層し、合計6つの薄膜層からなるTi/Al−Cu積層膜を形成した。
【0090】
次に、レジスト塗布装置により、該Ti/Al−Cu積層膜の上にフォトレジストを約0.5μmの厚みに塗布した。そして、縮小投影露光装置(ステッパー)により、図1に示す配置位置を有するように、共振子や信号線、接地線、パッド電極等となるフォトレジストパターンを形成した。その後、現像装置により、不要部分のフォトレジストをアルカリ現像液で溶解させた。
【0091】
次に、RIE(Reactive Ion Etching)装置により、必要な箇所を残して残りをエッチングで除去し、図1(a)に示す回路構成を実現する回路パターンを形成した。表1に、その際のそれぞれの共振子の作製条件を示す。なお、より厳密に言えば、係る回路パターンの形成は、多数個取り用の母基板の状態である圧電基板上に、所望の回路パターンを2次元的に繰り返し配置することで行っている。
【0092】
【表1】
【0093】
次に、回路パターンの所定領域上に保護膜を作製した。すなわち、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置により、電極パターン及び圧電基板の主面上にSiO2膜を約0.02μmの厚みに形成した。そして、フォトリソグラフィによってフォトレジストのパターニングを行ない、RIE装置等でフリップチップ用電極部(入出力電極、接地電極などのパッド電極部分、および環状電極の部分)のSiO2膜のエッチングを行なった。
【0094】
次に、スパッタリング装置を使用し、SiO2膜を除去した部分に、Cr,Ni,Auよりなる積層電極を成膜した。このときの電極膜厚は約1μm(Cr0.01μm、Ni1μm、Au0.2μm)とした。そして、フォトレジスト及び不要箇所の積層電極をリフトオフ法により同時に除去し、積層電極が形成された部分を、フリップチップ用バンプを接続するためのフリップチップ用電極部とした。
【0095】
その後、圧電基板に設けられたダイシング線に沿ってダイシング加工を施し、圧電基板S上に電極パターンが形成されたなる状態の多数のチップを得た。
【0096】
次に、インダクタンス素子L1、L2およびL3に相当する線路を内部に設けた回路基板を用意し、その上に、銀からなるパターン電極、入出力導体、接地導体、及び環状導体の上に、導電材を印刷した。導電材としては半田を使用した。そして、フリップチップ実装装置によって、各チップを、電極形成面を下面にして該セラミック回路基板上に仮接着した。仮接着はN2雰囲気中で行った。さらに、N2雰囲気中でベークを行ない、半田を溶融することにより、チップとセラミック回路基板とを接着した。チップに形成された環状電極と回路基板に形成された環状導体とにおいて半田が溶融し、接着することで、チップ表面の電極パターンが気密封止された。
【0097】
さらに、チップが接着されたセラミック回路基板に樹脂を塗布し、N2雰囲気中でベークを行ない、チップを樹脂封止した。
【0098】
最後に、セラミック回路基板にダイシング線に沿ってダイシング加工を施して個片に分割することで、回路基板上に実装された状態の、実施例に係る分波器D1が得られた。なお、個片に分割された状態のセラミック回路基板は、平面サイズが2.5×2.0mmであり、積層構造を有してなる。
【0099】
得られた分波器D1について、送信側通過帯域の近傍における減衰特性をネットワークアナライザ装置により測定した。
【0100】
(実施例2)
本実施例では、共振子の作製条件を表2に示すものとした他は、実施例1と同様に、第1の実施の形態に係る分波器D1を作製し、測定を行った。なお、本実施例においては、直近共振子R1のIDTの電極対数と、交差幅との積が、並列共振子R3、R5、R7、およびR9のIDTの電極対数と交差幅の積よりも小さくなるように、これらの共振子を設けている。
【0101】
【表2】
【0102】
(実施例3)
本実施例では、実施例1と同様の手順で、第2の実施の形態に係る分波器D2を作製し、測定を行った。その際の共振子の作製条件を表3に示す。なお、本実施例においては、表3に示すように、直近共振子R1の共振周波数よりも直近共振子T9の共振周波数の方が小さい値となるようにしている。
【0103】
【表3】
【0104】
(実施例4)
本実施例では、共振子の作製条件を表4に示すものとした他は、実施例3と同様に、第2の実施の形態に係る分波器D2を作製し、測定を行った。なお、本実施例においては、表4に示すように、直近共振子R1の共振周波数と直近共振子T9の共振周波数とが同じ値となるようにしている。また、本実施例においては、直近共振子R1のIDTの電極対数と、交差幅との積が、並列共振子R3、R5、R7、およびR9のIDTの電極対数と交差幅の積よりも小さくなるように、かつ、直近共振子T9のIDTの電極対数と、交差幅との積が、並列共振子T3、T5、およびT7のIDTの電極対数と交差幅の積よりも小さくなるように、これらの共振子を設けている。
【0105】
【表4】
【0106】
(実施例5)
本実施例では、実施例1と同様の手順で、第3の実施の形態に係る分波器D3を作製し、測定を行った。その際の共振子の作製条件を表5に示す。
【0107】
【表5】
【0108】
(比較例1)
比較例1として、直近共振子R1を設けない他は、実施例1に係る分波器D1と同様のフィルタ構成を有する分波器を、実施例1と同様の手順で作製し、測定を行った。
【0109】
(比較例2)
比較例1として、直近共振子R11を設けない他は、実施例5に係る分波器D3と同様のフィルタ構成を有する分波器を、実施例5と同様の手順で作製し、測定を行った。
【0110】
(特性比較)
図7ないし図10は、実施例1ないし実施例4に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における周波数特性(減衰量)を、それぞれ比較例1に係る分波器の周波数特性と対比させて示す図である。また、図11は、実施例5に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における周波数特性を、比較例2に係る分波器の周波数特性と対比させて示す図である。いずれの図においても、横軸は周波数(単位:MHz)を、縦軸は減衰量(単位:dB)を表わしている。実線の特性曲線が実施例に係る分波器の結果を、破線の特性曲線が比較例に係る分波器の結果を示している。
【0111】
また、実施例および比較例についての挿入損失と、送信側通過帯域の低域側近傍における減衰量とを表6に示す。
【0112】
【表6】
【0113】
表6に示す結果からは、直近共振子R9あるいは直近共振子R11を設けた実施例1ないし実施例5に係る分波器のいずれにおいても、これを備えていない比較例1あるいは比較例2に係る分波器よりも、送信側通過帯域の低域側近傍における減衰量が大きくなっていることが分かる。この結果は、係る直近共振子を設けることが、送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性の向上に効果があることを示すものに他ならない。
【0114】
また、実施例2および実施例4の結果を実施例1、実施例3および比較例1の結果と照らし合わせると、実施例2と実施例4の送信側通過帯域の低域側近傍における減衰量は実施例1、実施例3よりは小さいものの比較例1よりも大きくなっており、かつ、実施例2と実施例4の挿入損失は比較例1と同程度となっている。すなわち、直近共振子R9の電極対数と交差幅との積を受信側フィルタF2の並列共振子よりも小さくすることで、挿入損失を維持しつつ、送信側通過帯域の低域側近傍における減衰特性を向上できることが、これらの実施例より確認された。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】第1の実施の形態に係る分波器D1を説明するための図である。
【図2】第2の実施の形態に係る分波器D2の回路図である。
【図3】第3の実施の形態に係る分波器D3を説明するための図である。
【図4】従来の分波器の一例としての分波器D10の構成を示す図である。
【図5】従来の分波器の一例としての分波器D20の構成を示す図である。
【図6】通信装置100の構成を模式的に示す図である。
【図7】実施例1および比較例1に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における減衰特性を示す図である。
【図8】実施例2および比較例1に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における減衰特性を示す図である。
【図9】実施例3および比較例1に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における減衰特性を示す図である。
【図10】実施例4および比較例1に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における減衰特性を示す図である。
【図11】実施例5および比較例2に係る分波器の送信側通過帯域の近傍における減衰特性を示す図である。
【符号の説明】
【0116】
1、1a、1b、1c、1d、1e、1f IDT
2 反射器
10 アンテナ端子
20 送信端子
30 受信端子
100 通信装置
200 制御部
D1、D2、D3、D10、D20 分波器
F1、F3 送信側フィルタ
F2、F4 受信側フィルタ
L1、L2、L3 インダクタンス素子
R1、R3、R5、R7、R9、R11、T3、T5、T7 並列共振子
R2、R4、R6、R8、R10、T1、T2、T4、T6、T8 直列共振子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の共振子からなる第1の共振子群を含んで構成される送信側フィルタと、
前記圧電基板上に設けられ、複数の共振子からなる第2の共振子群を含んで構成される受信側フィルタと、
アンテナ接続用の信号線と基準電位とされる端子とを接続するインピーダンス整合用の第1のインダクタンス素子と、
を備える分波器であって、
前記送信側フィルタの通過帯域よりも前記受信側フィルタの通過帯域の方が高周波側にあり、
前記送信側フィルタが、前記第1の共振子群を直列腕と並列腕とに備えるラダーフィルタであり、
前記受信側フィルタを構成する前記第2の共振子群のうちアンテナに最も近い共振子である受信側直近共振子が並列腕に設けられてなるとともに、前記受信側直近共振子の共振周波数が前記送信側フィルタの通過帯域よりも低い周波数である、
ことを特徴とする分波器。
【請求項2】
請求項1に記載の分波器であって、
前記受信側フィルタが、前記第2の共振子群を直列腕と並列腕とに備えるラダーフィルタである、
ことを特徴とする分波器。
【請求項3】
請求項2に記載の分波器であって、
前記受信側フィルタの並列腕に設けられた2以上の共振子のうち、前記受信側直近共振子の容量成分が、他の共振子の容量成分よりも小さい、
ことを特徴とする分波器。
【請求項4】
請求項3に記載の分波器であって、
前記受信側フィルタの並列腕に設けられた前記2以上の共振子が、長手方向が前記圧電基板の弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた1対の櫛歯状電極からなるIDTを含む弾性表面波共振子であり、前記受信側直近共振子の電極対数と前記櫛歯状電極の交差幅との積が、他の共振子の電極対数と前記櫛歯状電極の交差幅との積よりも小さい、
ことを特徴とする分波器。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の分波器であって、
前記送信側フィルタを構成する前記第1の共振子群のうちアンテナに最も近い共振子である送信側直近共振子が並列腕に設けられてなるとともに、前記送信側直近共振子の共振周波数が前記送信側フィルタの通過帯域よりも低い周波数である、
ことを特徴とする分波器。
【請求項6】
請求項5に記載の分波器であって、
前記送信側直近共振子の共振周波数と前記受信側直近共振子の共振周波数とが異なる、
ことを特徴とする分波器。
【請求項7】
請求項1に記載の分波器であって、
前記受信側フィルタを構成する前記第2の共振子群のうち直列腕に設けられた共振子が、長手方向が前記圧電基板の弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた1対の櫛歯状電極からなるIDTを少なくとも2つ以上含む多重モード型共振子である、
ことを特徴とする分波器。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の分波器であって、
前記送信側フィルタの並列腕に設けられた共振子と基準電位とされる端子とを接続する第2のインダクタンス素子、
をさらに備えることを特徴とする分波器。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の分波器と、
前記分波器の前記アンテナ接続用信号線に接続されるアンテナと、
前記分波器の前記送信側フィルタ素子に送信信号を与えるとともに、前記分波器の前記受信側フィルタ素子から受信信号が与えられる送受信処理部と、
を備える通信装置。
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、複数の共振子からなる第1の共振子群を含んで構成される送信側フィルタと、
前記圧電基板上に設けられ、複数の共振子からなる第2の共振子群を含んで構成される受信側フィルタと、
アンテナ接続用の信号線と基準電位とされる端子とを接続するインピーダンス整合用の第1のインダクタンス素子と、
を備える分波器であって、
前記送信側フィルタの通過帯域よりも前記受信側フィルタの通過帯域の方が高周波側にあり、
前記送信側フィルタが、前記第1の共振子群を直列腕と並列腕とに備えるラダーフィルタであり、
前記受信側フィルタを構成する前記第2の共振子群のうちアンテナに最も近い共振子である受信側直近共振子が並列腕に設けられてなるとともに、前記受信側直近共振子の共振周波数が前記送信側フィルタの通過帯域よりも低い周波数である、
ことを特徴とする分波器。
【請求項2】
請求項1に記載の分波器であって、
前記受信側フィルタが、前記第2の共振子群を直列腕と並列腕とに備えるラダーフィルタである、
ことを特徴とする分波器。
【請求項3】
請求項2に記載の分波器であって、
前記受信側フィルタの並列腕に設けられた2以上の共振子のうち、前記受信側直近共振子の容量成分が、他の共振子の容量成分よりも小さい、
ことを特徴とする分波器。
【請求項4】
請求項3に記載の分波器であって、
前記受信側フィルタの並列腕に設けられた前記2以上の共振子が、長手方向が前記圧電基板の弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた1対の櫛歯状電極からなるIDTを含む弾性表面波共振子であり、前記受信側直近共振子の電極対数と前記櫛歯状電極の交差幅との積が、他の共振子の電極対数と前記櫛歯状電極の交差幅との積よりも小さい、
ことを特徴とする分波器。
【請求項5】
請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の分波器であって、
前記送信側フィルタを構成する前記第1の共振子群のうちアンテナに最も近い共振子である送信側直近共振子が並列腕に設けられてなるとともに、前記送信側直近共振子の共振周波数が前記送信側フィルタの通過帯域よりも低い周波数である、
ことを特徴とする分波器。
【請求項6】
請求項5に記載の分波器であって、
前記送信側直近共振子の共振周波数と前記受信側直近共振子の共振周波数とが異なる、
ことを特徴とする分波器。
【請求項7】
請求項1に記載の分波器であって、
前記受信側フィルタを構成する前記第2の共振子群のうち直列腕に設けられた共振子が、長手方向が前記圧電基板の弾性表面波伝搬方向と直交するように複数の電極指が設けられた1対の櫛歯状電極からなるIDTを少なくとも2つ以上含む多重モード型共振子である、
ことを特徴とする分波器。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の分波器であって、
前記送信側フィルタの並列腕に設けられた共振子と基準電位とされる端子とを接続する第2のインダクタンス素子、
をさらに備えることを特徴とする分波器。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載の分波器と、
前記分波器の前記アンテナ接続用信号線に接続されるアンテナと、
前記分波器の前記送信側フィルタ素子に送信信号を与えるとともに、前記分波器の前記受信側フィルタ素子から受信信号が与えられる送受信処理部と、
を備える通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−160562(P2008−160562A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348090(P2006−348090)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】
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